JP2004161860A - 水酸基含有アクリル酸エステルおよびその用途 - Google Patents
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Abstract
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、レジスト材料などの種々の用途に有用な水酸基含有アクリル酸エステルと、該水酸基含有アクリル酸エステルを用いて得られる水酸基含有アクリル酸系重合体およびレジスト組成物とに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、例えば(2−ヒドロキシメチル)アクリル酸エステルのような水酸基含有アクリル酸エステルは、各種用途における活用が期待されており、例えば、その重合体が化学増幅型レジスト材料の用途において有用であることが報告されている(特許文献1参照)。これは、そのエステル部分が酸の存在下で脱離することを利用したものである。このような(2−ヒドロキシメチル)アクリル酸エステルなどの水酸基含有アクリル酸エステルは、一般に、アクリル酸エステルにアルデヒド類を塩基性触媒の存在下で反応させる方法により製造されている。詳しくは、反応後、塩基性触媒を酸等で中和して除去した後、蒸留により精製するのが一般的であった。
【0003】
(2−ヒドロキシメチル)アクリル酸エステルなどの水酸基含有アクリル酸エステルを例えば化学増幅型レジスト材料の用途において利用する場合、そのエステル部分の脱離エネルギーはできるだけ小さい方が望ましく、エステル部分により脱離しやすい置換基をもつモノマーが優れた性能を発揮できると考えられる。しかしながら、エステル部分が脱離しやすいモノマーを製造することは非常に困難であるという問題があった。すなわち、アクリル酸エステルにアルデヒド類を塩基性触媒の存在下で反応させた後、塩基性触媒を酸等で中和して除去することが必要となるが、その際に、反応液に酸が残存することとなり、残存する酸の影響でその後の蒸留においてエステル部分が脱離してしまうこととなる。しかも、このエステル部分の脱離は、残存する酸の量が微量であっても、その微量の酸によるエステル部分の脱離でカルボン酸が生じ、該カルボン酸によって新たな脱離が引き起こされることとなるため、化学増幅的に起こることとなる。このため、目的物である水酸基含有アクリル酸エステル中に、該目的物からエステル部分が脱離してなる水酸基含有アクリル酸や、原料であるアクリル酸エステルからエステル部分が脱離してなるアクリル酸が、不純物として多量に混入することとなる。したがって、エステル部分が脱離しやすい水酸基含有アクリル酸エステルであり、しかも純度の高い水酸基含有アクリル酸エステルは、これまで実質的に得られていなかった。
【0004】
【特許文献1】
特開2000−131847号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明は、エステル部分の脱離エネルギーが小さく、酸によるエステル部分の脱離が非常に容易であり、しかも高純度な水酸基含有アクリル酸エステルと、該水酸基含有アクリル酸エステルを用いて得られる水酸基含有アクリル酸系重合体およびレジスト組成物とを提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者は上記課題を解決するべく、鋭意検討を行った。その結果、アクリル酸のカルボキシル基の酸素原子に脂環構造中の第3級炭素がエステル結合した構造を有する水酸基含有アクリル酸エステルが、エステル部分の脱離エネルギーが極めて小さく、酸による脱離が非常に容易であることを見出した。さらに、このような水酸基含有アクリル酸エステルの(共)重合体は、酸によるエステル部分の脱離性の点でレジスト用途に有用であるとともに、エステル部分の脱離によりカルボン酸と揮発性が低い脂環式オレフィンとが生じ、該脂環式オレフィンが溶媒効果を発揮して、露光の際にエキシマレーザーランプを汚すことがないという利点があることをも見出した。本発明はこれらの知見により完成したものである。
【0007】
すなわち、本発明にかかる水酸基含有アクリル酸エステルは、下記一般式(1)
【0008】
【化5】
【0009】
(式(1)中、R1は水素原子または有機残基を表し、R2は有機残基を表し、ZはR2が結合している3級炭素原子を含んで形成される脂環構造を表す。)
で表される水酸基含有アクリル酸エステルであって、不純物として含まれる下記一般式(2)
【0010】
【化6】
【0011】
(式(2)中のR1は、式(1)中のR1と同じである。)
で表されるカルボキシル基含有化合物とアクリル酸との総量が1.0重量%以下である、ことを特徴とする。
本発明にかかる水酸基含有アクリル酸系重合体は、前記本発明の水酸基含有アクリル酸エステルの(共)重合体であって、下記一般式(3)
【0012】
【化7】
【0013】
(式(3)中、R1は水素原子または有機残基を表し、R2は有機残基を表し、ZはR2が結合している3級炭素原子を含んで形成される脂環構造を表す。)
で表わされる構造単位を有し、数平均分子量が1,000〜1,000,000である、ことを特徴とする。
本発明にかかるレジスト組成物は、水酸基含有アクリル酸系重合体と、放射線照射により酸を発生する化合物とを必須とするレジスト組成物において、前記水酸基含有アクリル酸系重合体が、前記本発明の水酸基含有アクリル酸エステルの(共)重合体であって、下記一般式(3)
【0014】
【化8】
【0015】
(式(3)中、R1は水素原子または有機残基であり、R2は有機残基であり、ZはR2が結合している3級炭素原子とともに脂環構造を形成している。)
で表わされる構造単位を有し、数平均分子量が1,000〜1,000,000の重合体である、ことを特徴とする。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明の水酸基含有アクリル酸エステルは、下記一般式(1)
【0017】
【化9】
【0018】
(式(1)中、R1は水素原子または有機残基を表し、R2は有機残基を表し、ZはR2が結合している3級炭素原子を含んで形成される脂環構造を表す。)
で表されるものであり、エステル部分の酸素原子が脂環構造中の第3級炭素に結合した構造を有していることから、エステル部分の脱離エネルギーが小さく、酸により非常に容易に脱離しやすいという特徴を有する。
前記式(1)中のR1の例である有機残基としては、具体的には、例えば、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、ブチル基等)、アリール基(例えば、シクロヘキシル基、フェニル基、ナフチル基等)、ベンジル基等の置換基;前記置換基にハロゲン原子等が付加した置換基(例えば、2−クロロフェニル基、3−クロロフェニル基、4−クロロフェニル基、2,3−ジクロロベンジル基、2,4−ジクロロベンジル基、2,6−ジクロロベンジル基等);等が挙げられる。
【0019】
前記式(1)中のR2で表される有機残基としては、具体的には、例えば、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、ブチル基等)、シクロヘキシル基、アリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基等)、ベンジル基等の置換基;前記置換基にハロゲン原子等が付加した置換基(例えば、2−クロロフェニル基、3−クロロフェニル基、4−クロロフェニル基、2,3−ジクロロベンジル基、2,4−ジクロロベンジル基、2,6−ジクロロベンジル基等);等が挙げられる。
前記式(1)中、Zで表される脂環構造は、R2が結合している3級炭素原子を含んで形成されるものであり、例えば、シクロペンチル環、シクロヘキシル環、イソボルニル環、ノルボルネン環、トリシクロデカニル環、アダマンチル環、γ−ブチルラクトン環等が挙げられる。
【0020】
本発明の水酸基含有アクリル酸エステルの具体例としては、例えば、1−メチル−1−シクロペンチル(2−ヒドロキシメチル)アクリレート、1−エチル−1−シクロペンチル(2−ヒドロキシメチル)アクリレート、1−メチル−1−シクロヘキシル(2−ヒドロキシメチル)アクリレート、1−エチル−1−シクロヘキシル(2−ヒドロキシメチル)アクリレート、2−メチル−2−アダマンチル(2−ヒドロキシメチル)アクリレート、2−エチル−2−アダマンチル(2−ヒドロキシメチル)アクリレート、γ−ブチロラクトン−メチル−3−イル(2−ヒドロキシメチル)アクリレート、γ−ブチロラクトン−エチル−3−イル(2−ヒドロキシメチル)アクリレート等が挙げられる。
【0021】
本発明の水酸基含有アクリル酸エステルは、不純物として含まれる下記一般式(2)
【0022】
【化10】
【0023】
(式(2)中のR1は、式(1)中のR1と同じである。)
で表されるカルボキシル基含有化合物とアクリル酸との総量が1.0重量%以下である。これにより、本発明の水酸基含有アクリル酸エステルは、例えばレジスト材料の原料として好適に用いることができ、前述した特徴により優れた性能を発揮することができるのである。なお、前記式(2)で表されるカルボキシル基含有化合物は、目的物である水酸基含有アクリル酸エステルからエステル部分が脱離してなる不純物であり、アクリル酸は、原料であるアクリル酸エステルからエステル部分が脱離してなる不純物である。
【0024】
本発明の水酸基含有アクリル酸エステルは、アルデヒド化合物とビニル化合物とを3級アミン触媒の存在下で反応させ、得られた反応液を酸洗浄することにより前記3級アミン触媒の除去を行い、そののち、酸洗浄後の反応液に対し蒸留による精製を施すことにより、容易に製造することができる。
前記アルデヒド化合物は、下記一般式(4)
【0025】
【化11】
【0026】
(式(4)中、R1は、水素原子または有機残基である。)
で表される化合物である。式(4)中のR1の例である有機残基の具体例は、前述した式(1)中のR1の例である有機残基と同様である。
前記アルデヒド化合物としては、具体的には、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、バレルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、ピバリンアルデヒド、シクロヘキシルアルデヒド、シクロヘキセンアルデヒド、ベンズアルデヒド、トルアルデヒド、アニスアルデヒド、フルフラール、ホルムアルデヒドの重合体(8量体〜100量体)であるパラホルムアルデヒド、ホルムアルデヒドの20〜50重量%水溶液(水和ホルムアルデヒド)、ホルムアルデヒド濃度が20〜50重量%であるメタノール水溶液等が挙げられる。これらの中でも特に、アセトアルデヒド、パラホルムアルデヒド、ホルムアルデヒドの20〜50重量%水溶液、およびホルムアルデヒド濃度が20〜50重量%であるメタノール水溶液が好ましい。アルデヒド化合物は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0027】
前記ビニル化合物は、下記一般式(5)
【0028】
【化12】
【0029】
(式(5)中、R2は有機残基を表し、ZはR2が結合している3級炭素原子を含んで形成される脂環構造を表す。)
で表される化合物である。式(5)中、R2で表される有機残基およびZで表される脂環構造の具体例は、前述した式(1)中、R2で表される有機残基およびZで表される脂環構造と同様である。
前記ビニル化合物としては、具体的には、例えば、1−メチル−1−シクロペンチルアクリレート、1−エチル−1−シクロペンチルアクリレート、1−メチル−1−シクロヘキシルアクリレート、1−エチル−1−シクロヘキシルアクリレート、2−メチル−2−アダマンチルアクリレート、2−エチル−2−アダマンチルアクリレート、γ−ブチロラクトン−メチル−3−イルアクリレート、γ−ブチロラクトン−エチル−3−イルアクリレート等が挙げられる。ビニル化合物は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0030】
前記ビニル化合物に対する前記アルデヒド化合物の使用量、すなわちビニル化合物とアルデヒド化合物とのモル比(ビニル化合物/アルデヒド化合物)は、特に限定されるものではないが、0.01〜15の範囲内、より好ましくは0.5〜8の範囲内とするのがよい。該モル比が0.01未満であると、生産性が悪く、精製に多くの労力を要することとなるので好ましくない。一方、該モル比が15を超えると、生産性が悪くなる傾向があるので好ましくない。なお、ビニル化合物とアルデヒド化合物との混合方法は、特に限定されるものではない。
前記3級アミン触媒としては、具体的には、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリイソプロピルアミン等のトリアルキルアミン;N,N−ジメチルエチルアミン、N,N−ジメチルプロピルアミン、N,N−ジメチルイソプロピルアミン、N,N−ジメチルブチルアミン、N,N−ジメチルイソブチルアミン、N,N−ジメチル−t−ブチルアミン、N,N−ジメチル(トリメチルシリル)アミン等のN,N−ジメチルアルキルアミン;N,N−ジエチルメチルアミン、N,N−ジエチルプロピルアミン、N,N−ジエチルイソプロピルアミン等のN,N−ジエチルアルキルアミン;等が挙げられる。これらの中でも特に、水に対する溶解度が比較的高い化合物が好ましく、常圧における沸点が100℃以下であり、かつ、少なくとも1つのN−メチル基を有するN−メチルアルキルアミン(N−メチル化合物)がより好ましく、常圧における沸点が100℃以下であり、かつ、2つのN−メチル基を有するN,N−ジメチルアルキルアミンがさらに好ましく、トリメチルアミンが最も好ましい。3級アミン触媒は、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用して用いてもよい。なお、前記3級アミン触媒は、液体状やガス状など種々の状態であってよいが、5〜80重量%水溶液であることが好ましく、20〜60重量%水溶液であることがより好ましい。水溶液の状態であることにより、反応開始時および反応時における取り扱いが容易になる。
【0031】
前記3級アミン触媒の使用量は、特に限定されるものではないが、3級アミン触媒とアルデヒド化合物とのモル比(3級アミン触媒/アルデヒド化合物)が、0.2〜2の範囲内、より好ましくは0.2〜1の範囲内、特に好ましくは0.4〜0.8の範囲内となるようにするのがよい。該モル比が0.2未満であると、反応速度が遅くなる傾向があり、反応温度を比較的高く設定しなければならず、その結果、副反応物の生成が多くなり、目的物である水酸基含有アクリル酸エステルの選択率が低下するので好ましくない。一方、該モル比を2よりも大きくしても、反応速度や選択率などの点でさらなる向上効果が認められず、経済的に不利になるとともに、該モル比が2を超えると、反応条件にもよるが、原料であるビニル化合物もしくは生成物である水酸基含有アクリル酸エステルの加水分解反応が起こる恐れがあるので好ましくない。なお、ビニル化合物および/またはアルデヒド化合物に対する3級アミン触媒の添加方法は、特に限定されるものではない。
【0032】
前記ビニル化合物と前記アルデヒド化合物との反応は、反応終了時において水層を形成するに足る水の存在下で行うことが好ましい。好ましくは、反応開始時、反応時および反応終了時を通じて、反応液(反応系)が有機層および水層の2層系を形成することができうる量の水の存在下で反応させるのがよい。このとき、水の量は、特に限定されるものではなく、例えば、ビニル化合物、アルデヒド化合物、3級アミン触媒、後述する溶媒等の種類(性質)や組み合わせ、各使用量や、得られる水酸基含有アクリル酸エステルの性質や、反応温度などの反応条件等に応じて、最適な量となるように適宜設定すればよい。反応系に対する水の添加方法は、特に限定されるものではなく、例えば、原料等からなる混合物に水を混合する方法、アルデヒド化合物に水を予め混合し、該アルデヒド化合物の水溶液を調製して添加する方法、3級アミン触媒に水を予め混合し、該3級アミン触媒の水溶液を調製して添加する方法等を採用すればよく、さらにこれらの方法を組み合わせて実施してもよい。なお、前記有機層とは、実質的に水に不溶の化合物、具体的には、原料であるビニル化合物、生成物である水酸基含有アクリル酸エステル、および後述する溶媒等からなる混合物を示す。
【0033】
前記ビニル化合物と前記アルデヒド化合物とを反応させる際には、必要に応じて、有機層を形成するために水に不溶な有機溶媒を用いることができる。有機溶媒としては、ビニル化合物、アルデヒド化合物および生成物である水酸基含有アクリル酸エステル等を溶解し、かつ反応に対して不活性な化合物であれば、特に限定されるものではなく、例えば、ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、メチルブチルケトン、酢酸ブチル等が好ましく用いられる。また、原料であるビニル化合物を大過剰に使用し、該ビニル化合物を溶媒とすることもできる。有機溶媒は、1種のみを用いてもよく、2種以上を適宜混合して用いてもよい。有機溶媒の使用量は、特に限定されるものではなく、例えば、ビニル化合物、アルデヒド化合物、3級アミン触媒等の種類(性質)や組み合わせ、各使用量や、得られる水酸基含有アクリル酸エステルの性質や、反応温度などの反応条件等に応じて、最適な量となるように適宜設定すればよい。
【0034】
前記ビニル化合物と前記アルデヒド化合物との反応を行う際の反応条件等は、特に限定されるものではないが、原料であるビニル化合物ならびに生成物である水酸基含有アクリル酸エステルは、分子中にビニル基等を有しているので、重合し易い性質を有している。したがって、ビニル化合物とアルデヒド化合物とを反応させる際には、該ビニル化合物やアルデヒド化合物の重合を抑制するために、反応系に重合防止剤(重合禁止剤)や分子状酸素を添加することが好ましい。
前記重合防止剤としては、例えば、ヒドロキノン、メチルヒドロキノン、t−ブチルヒドロキノン、2,4−ジ−t−ブチルヒドロキノン、2,4−ジメチルヒドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル等のキノン類;フェノチアジン等のアミン化合物;2,4−ジメチル−6−t−ブチルフェノール、2,4−ジ−t−ブチルフェノール、p−メトキシフェノール等のフェノール類; p−t−ブチルカテコール等の置換カテコール類;置換レゾルシン類;等が挙げられるが、特に限定されるものではない。重合防止剤は、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。重合防止剤の添加量は、特に限定されるものではないが、例えば、ビニル化合物に対して0.01〜1重量%の範囲内となるようにすればよい。前記分子状酸素としては、例えば、空気、もしくは、分子状酸素と窒素等との混合ガスを用いることができる。この場合、反応液(有機層または水層)に分子状酸素を含有するガスを吹き込む(いわゆるバブリング)ようにすればよい。より効果的に重合を充分に抑制するためには、重合防止剤と分子状酸素とを併用することが好ましい。
【0035】
前記ビニル化合物と前記アルデヒド化合物とを反応させる際の反応温度は、特に限定されるものではないが、重合を抑制するためには、10〜150℃の範囲内が好ましく、40〜100℃の範囲内がより好ましく、40〜80℃の範囲内が特に好ましい。反応温度が10℃未満であると、反応速度が遅くなるので反応時間が長くなり過ぎ、生産性が低下するので好ましくない。一方、反応温度が150℃を超えると、重合が起こり易くなるとともに、ビニル化合物の加水分解反応が起こるので好ましくない。また、反応圧力は、特に限定されるものではなく、常圧(大気圧)、減圧、加圧のいずれであってもよい。
【0036】
前記ビニル化合物と前記アルデヒド化合物とを反応させる際の反応時間は、反応が完結するように、ビニル化合物、アルデヒド化合物、3級アミン触媒および溶媒等の種類(性質)や組み合わせ、各使用量、反応温度等に応じて適宜設定すればよい。従って、反応時間は、特に限定されるものではないが、通常、0.5〜10時間程度で充分である。
本発明の水酸基含有アクリル酸エステルを得るには、前記アルデヒド化合物と前記ビニル化合物との反応後、得られた反応液を酸洗浄することにより前記3級アミン触媒の除去を行う。具体的には、まず、反応終了後、分液等の所定の操作を行い、反応液を有機層と水層とに分離する。このとき、有機層と水層との分離性が悪ければ、必要に応じて、反応の際に用いることのできる有機溶媒として前述した溶媒を添加してもよいし、また、前記有機溶媒を用いて分離した水層に僅かに溶解している有機層を抽出し、該溶媒を有機層に加えるようにしてもよい。次に、分離した有機層に、洗浄液として酸の水溶液を添加し、3級アミン触媒を中和させた後、分液等の所定の操作を行い、有機層から洗浄液(水層)を分離する。このとき、洗浄液として酸の水溶液を用いる代わりに、有機層に酸を添加して中和させた後、水を加えるようにしてもよい。このように酸洗浄を行うことにより、反応液から3級アミン触媒を除去するとともに、有機層に含まれる未反応のアルデヒド化合物を不活性にし、蒸留の際の副反応を抑制することができる。なお、反応液から分離した水層および酸洗浄後に分離した洗浄液(水層)は、廃棄してもよいし、例えば、塩基性条件下で加熱等するなどの常法にて、含有する3級アミン触媒を分離・回収し、再利用するようにしてもよい。
【0037】
前記酸洗浄に用いることのできる酸としては、プロトン酸であれば特に限定されるものではなく、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、ホウ酸等の鉱酸類;マレイン酸、シュウ酸、クエン酸等の有機酸類;等を用いることができる。好ましくは、酸強度が高すぎると、酸洗浄の際に生成物である水酸基含有アクリル酸エステルのエステル部分の脱離を招く恐れがあるので、酸強度が高くなく、しかも安価であるリン酸を用いるのがよい。酸は、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、これら酸を水溶液とする際の酸の濃度は、0.01〜20重量%とすることが好ましい。
【0038】
前記酸洗浄の際に用いる酸(もしくは酸の水溶液)の使用量は、有機層から分離された洗浄液(水層)のpHが7.0以下、好ましくは3.0〜7.0の範囲内、より好ましくは5.0〜7.0の範囲内となるような量とすることが好ましい。洗浄液のpHが7.0を越える場合、つまり酸の使用量が少ない場合には、3級アミン触媒が有機層に残存する恐れがある。
本発明の水酸基含有アクリル酸エステルを得るには、前記酸洗浄ののち、酸洗浄後の反応液に対し蒸留による精製を施すのであるが、酸洗浄後の反応液を蒸留する前に、前記酸洗浄後の反応液から酸を除去する処理を施し、該処理により蒸留に供する反応液中の全酸成分がアクリル酸換算で0.1重量%以下となるようにしておくことが重要である。全酸成分がアクリル酸換算で0.1重量%を超える反応液を蒸留に供すると、蒸留の際に、まずこの酸によって生成物もしくは未反応原料であるアクリル酸エステルのエステル部分が脱離し、さらに該脱離で生じたカルボン酸によって新たな脱離が引き起こされることとなるため、化学増幅的に、前述した式(2)で表されるカルボキシル基含有化合物やアクリル酸が不純物として副生することとなる。
【0039】
酸を除去する処理としては、特に制限はなく、従来公知の処理方法を採用することができるが、好ましくは、水洗後の水層のpHが5〜7になるまで水洗を行う処理、アルカリ洗浄する処理、および酸を吸着剤で吸着する処理のうちの少なくとも1つを採用するのがよい。さらに好ましくは、これらのうちから2つ以上の処理を併用するのがよい。
水洗後の水層のpHが5〜7になるまで水洗を行う処理において、水洗後の水層のpHは、好ましくは5.5〜7、より好ましくは6〜7になるようにするのがよい。水洗後の水層のpHが前記範囲になるまで水洗を行う処理は、具体的には、例えば、酸洗浄後の反応液(有機層)に水を添加し、充分に攪拌するなどして洗浄した後、分液等の所定の操作により水層を有機層から分離する操作を、分離した水層のpHが前記所定の範囲になるまで繰り返し行うようにすればよい。
【0040】
アルカリ洗浄する処理は、具体的には、例えば、酸洗浄後の反応液(有機層)にアルカリ水溶液を添加し、充分に攪拌するなどして洗浄した後、分液等の所定の操作により水層を有機層から分離するようにすればよい。アルカリ水溶液としては、特に制限されないが、例えば、リチウム、カリウム、ナトリウム、カルシウム、バリウム等の水酸化物、炭酸塩または炭酸水素塩の水溶液が挙げられ、これらの中でも特に、カリウム、ナトリウムの水酸化物、炭酸塩または炭酸水素塩の水溶液が好ましい。アルカリ水溶液の濃度は0.01〜10重量%であることが好ましく、アルカリ水溶液のpHは8〜10であることが好ましい。
【0041】
アルカリ洗浄する処理を行った場合、必要に応じて、アルカリ洗浄後に水洗を行い、残存するアルカリを除去するようにしてもよい。水洗は、具体的には、例えば、アリカリ洗浄後の反応液(有機層)に水を添加し、充分に攪拌するなどした後、分液等の所定の操作により水層を有機層から分離するようにすればよい。このとき、分離した水層のpHが9以下、好ましくは8.5以下、より好ましくは8以下となるまで、水洗を繰り返すことが好ましい。
酸を吸着剤で吸着する処理は、具体的には、例えば、酸洗浄後の反応液(有機層)に酸吸着剤を添加し、充分に攪拌するなどして酸を該吸着剤に吸着させた後、該吸着剤を濾過等の所定の操作により有機層から分離するようにすればよい。このとき、有機層に酸吸着剤を添加して酸を該吸着剤に吸着させる際の処理温度は、重合性を有する水酸基含有アクリル酸エステルの重合を防止するためには、100℃以下とすることが好ましく、より好ましくは50〜80℃とするのがよい。なお、処理時間については、特に制限はなく、適宜設定すればよい。酸吸着剤としては、特に制限はなく、例えば、酸化マグネシウムや酸化カルシウムなど従来公知のものを用いることができる。また、市販品であれば、「キョウーワード100」、「キョウーワード200」、「キョウーワード300」、「キョウーワード1000」、「キョウーワード2000」(以上、協和化学製)、「トミックスAD−100」、「トミックスAD−200」(以上、富田化学製)等が好適に用いられる。酸吸着剤の使用量は、酸洗浄後の反応液(有機層)の全量に対して20重量%以下、好ましくは10重量%以下、より好ましくは5重量%以下とするのがよい。
【0042】
酸を吸着剤で吸着する処理を行った場合、必要に応じて、該処理ののち、酸吸着剤を分離した後の反応液(有機層)に対して水洗を施し、残存する吸着剤を除去するようにしてもよい。水洗は、具体的には、例えば、酸吸着剤を分離した後の反応液(有機層)に水を添加し、充分に攪拌するなどした後、分液等の所定の操作により水層を有機層から分離するようにすればよい。
本発明の水酸基含有アクリル酸エステルを得るには、酸を除去する処理を行った後、得られた反応液を蒸留により精製し、目的物である水酸基含有アクリル酸エステルを単離する。
【0043】
蒸留は、常圧蒸留や減圧蒸留などの公知の方法により行うことができる。蒸留の際の条件は、原料であるビニル化合物の蒸気圧等に応じて適宜設定すればよいのであるが、蒸留時の釜内温度が150℃を超えると、重合が起きる恐れがあるので、好ましくは150℃以下とするのがよい。なお、目的物である水酸基含有アクリル酸エステルの蒸気圧が低い場合には、蒸留を複数回繰り返して行うこともできる。
蒸留の際には、反応時と同様に、重合防止剤を添加しておくのが好ましい。このとき用いることのできる重合防止剤としては、反応の際に用いることのできる重合防止剤として前述したものと同様のものが挙げられ、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。なお、蒸留の際に用いる重合防止剤の添加量は、蒸留に供する液の5重量%以下とすることが好ましく、より好ましくは1重量%以下、さらに好ましくは0.5重量%以下とするのがよい。また、蒸留の際には、反応時と同様に、蒸留に供する液に前述した分子状酸素を含有するガスを吹き込むようにすることが好ましい。
【0044】
本発明の水酸基含有アクリル酸系重合体は、前記本発明の水酸基含有アクリル酸エステルの(共)重合体であり、下記一般式(3)
【0045】
【化13】
【0046】
(式(3)中、R1は水素原子または有機残基を表し、R2は有機残基を表し、ZはR2が結合している3級炭素原子を含んで形成される脂環構造を表す。)
で表わされる構造単位を有するものである。式(3)中のR1の例である有機残基、R2で表される有機残基、およびZで表される脂環構造の具体例は、それぞれ、前述した式(1)中のR1の例である有機残基、式(1)中、R2で表される有機残基、およびZで表される脂環構造と同様である。なお、本発明の水酸基含有アクリル酸系重合体は、少なくとも前記一般式(3)で示される構造単位を有するものであればよく、これ以外の構造単位は、特に限定されるものではない。具体的には、前記一般式(3)で示される構造単位以外の構造単位は、例えば、後述する水酸基含有アクリル酸エステルと共重合可能な単量体に由来する構造単位となる。また、前記一般式(3)で示される構造単位と、これ以外の構造単位との比率も、特に限定されるものではない。
【0047】
本発明の水酸基含有アクリル酸系重合体の数平均分子量は、1,000〜1,000,000の範囲である。特に、数平均分子量5,000〜500,000の水酸基含有アクリル酸系重合体は、通常のラジカル重合により容易に得られるとともに、取り扱い易いので有用である。また、本発明の水酸基含有アクリル酸系重合体を後述するレジスト組成物の原料に用いる場合には、水酸基含有アクリル酸系重合体の数平均分子量は、1,000〜500,000の範囲であるのが好ましく、5,000〜100,000の範囲であるのがより好ましい。レジスト組成物の原料に用いる場合には、数平均分子量が前記範囲よりも小さすぎると、コールドフローを起こし易く、逆に大きすぎると、粘度が上昇して取り扱い難く、エッチングされ難くなる傾向がある。
【0048】
本発明の水酸基含有アクリル酸系重合体は、前記一般式(1)で表わされる本発明の水酸基含有アクリル酸エステルを単独で重合させるか、あるいは、前記一般式(1)で表わされる本発明の水酸基含有アクリル酸エステルと、該水酸基含有アクリル酸エステルと共重合可能な他の単量体とを共重合させること等により、容易に得ることができる。水酸基含有アクリル酸エステルと共重合可能な単量体としては、例えば、アダマンチル(メタ)アクリレート、2−メチル−2−アダマンチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、メバロノラクトン(メタ)アクリレート、γ−ブチロラクトン−3−イル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸およびそのエステル類;スチレン、α−メチルスチレン、4−ヒドロキシスチレン、4−tert−ブトキシスチレン等のスチレン系化合物;(メタ)アクリロニトリル、2−ヒドロキシメチルアクリル酸およびそのエステル類;5−ノルボルネン−2−カルボン酸およびそのエステル類;無水5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸およびそのエステル類;5−ノルボルネン−2−メタノール、無水マレイン酸およびそのエステル類;マレイミド類;等が挙げられる。水酸基含有アクリル酸エステルと共重合可能な単量体は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。なお、水酸基含有アクリル酸エステルと共重合可能な単量体をも共重合させる場合、これら単量体の使用割合は特に限定されるものではない。
【0049】
本発明の水酸基含有アクリル酸系重合体を得る際の重合方法は、特に限定されるものではなく、例えば、2、2’−アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物や過酸化物などのラジカル重合開始剤等の重合開始剤を用いる重合方法;イオン化放射線、電子線等の放射線や紫外線を照射する重合方法;加熱による重合方法等、従来公知の種々の方法を採用することができる。なお、重合は、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。
本発明のレジスト組成物は、前記本発明の水酸基含有アクリル酸系重合体と、放射線照射により酸を発生する化合物(以下、光酸発生剤と称する。)とを必須とするものである。
【0050】
本発明のレジスト組成物における前記本発明の水酸基含有アクリル酸系重合体の含有割合は、水酸基含有アクリル酸系重合体の共重合組成等に応じて適宜設定すればよいのであるが、通常、前記本発明の水酸基含有アクリル酸系重合体は、レジスト組成物中10〜90モル%であることが好ましい。
前記光酸発生剤としては、放射線の照射により酸を発生する化合物であれば、特に限定されるものではなく、例えば、トリアリールスルホニウム塩(例えば、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート等)、ジアリールヨードニウム塩、スルホネート類、ハロゲン化物類など公知の酸発生剤を用いることができる。
【0051】
前記光酸発生剤の含有割合は、前記水酸基含有アクリル酸系重合体に対して、0.1〜5重量%の範囲であることが好ましく、0.2〜2重量%の範囲であることがより好ましい。光酸発生剤が0.1重量%未満であると、反応に必要な酸の量が少なく、レジストパターンの形成精度が低下する恐れがある。一方、光酸発生剤が5重量%を越えると、解像度および感度が低下する傾向がある。
本発明のレジスト組成物においては、前記本発明の水酸基含有アクリル酸系重合体を必須の膜形成材料とするが、本発明の水酸基含有アクリル酸系重合体のほかにも、例えば、(メタ)アクリル酸エステル系重合体、ヒドロキシスチレン系重合体、脂環式モノマーの(共)重合体(例えば、ジシクロペンタジエンと無水マレイン酸との共重合体、ジシクロペンタジエンとマレイミド類との共重合体等)などを、膜形成材料として、本発明の効果を損なわない範囲で含有していてもよい。
【0052】
本発明のレジスト組成物は、前記本発明の水酸基含有アクリル酸系重合体を必須とする膜形成材料および光酸発生剤以外の成分として、必要に応じて、希釈溶剤を含有していてもよい。前記希釈溶剤としては、前記本発明の水酸基含有アクリル酸系重合体を充分に溶解させうる溶媒であればよく、例えば、乳酸エチルなどの乳酸エステル類;メトキジプロピレングリコール、エトキシポリエチレングリコール等のポリプロピレングリコールのエーテル類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤;n−ヘプタン、n−オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂肪族系溶剤類;エチルアセテート、ブチルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート等の酢酸エステル;メチル−3−メトキシプロピオネート、エチル−3−エトキシプロピオネート等のプロピオン酸エステル類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;γ−ブチロラクトン;等が好適に使用される。希釈溶剤は、1種のみを用いてもよく、2種以上を適宜混合して使用してもよい。なお、前記希釈溶剤をも含有する場合、その配合量は、前記膜形成材料に対して20〜90重量%の範囲とすることが可能であるが、スピンコーター塗布機において2500〜4000rpmの回転数で前記膜形成材料を0.5μm程度塗布できるだけの量とすることが好ましい。
【0053】
本発明のレジスト組成物は、必要に応じて、その他の添加物、例えば、染料、密着性付与剤、安定剤、界面活性剤、難燃剤など従来からレジスト組成物に使用されている常用の添加剤等を、本発明の効果を阻害しない範囲で含んでいてもよい。
本発明のレジスト組成物は、前記水酸基含有アクリル酸系重合体を必須とする膜形成材料を、必要に応じて希釈溶剤にて希釈した後、光酸発生剤を混合することにより容易に得ることができる。なお、膜形成材料と光酸発生剤との混合方法および混合装置は、通常用いられている方法および装置をそのまま利用することができる。
【0054】
本発明のレジスト組成物は、膜形成材料として前記本発明の水酸基含有アクリル酸系重合体を含有しているため、シリコン基板等の基板に対する密着性に優れ、かつレジスト材料としての耐エッチング性、アルカリ剥離性に優れた性能を発揮する。しかも、前記本発明の水酸基含有アクリル酸エステルは、そのエステル部分が脱離することによりカルボン酸と揮発性が低い脂環式オレフィンとになり、該脂環式オレフィンが溶媒効果を発揮しうることから、本発明のレジスト組成物は、露光の際にエキシマレーザーランプを汚すことがないという利点がある。また、本発明のレジスト組成物は、ArFエキシマレーザの透過が可能で、ArFエキシマレーザに対する透明性が高く、かつ、感度、レジストパターン形状、耐ドライエッチング性、基板への密着性にも優れた性能を発揮する。さらに、本発明のレジスト組成物は、放射線の照射により発生した酸の触媒作用を利用することで、高感度並びに高解像性を有している。
【0055】
【実施例】
以下に、実施例により、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。
<水酸基含有アクリル酸エステル>
(実施例1−1)
温度計、ガス吹き込み管、冷却管、攪拌装置および水浴を備えた1Lの4つ口フラスコに、ビニル化合物として1−メチル−1−シクロヘキシルアクリレート276.7g(1.65モル)、アルデヒド化合物として92%パラホルムアルデヒド41.3g(1.27モル)、3級アミン触媒としてトリエチレンジアミン71.0g(0.63モル)、水82.2g(4.56モル)、および重合防止剤としてp−メトキシフェノール0.277gを仕込んだ。1−メチル−1−シクロヘキシルアクリレートに対するp−メトキシフェノールの割合は、1000ppmである。その後、該反応溶液を70℃で11時間攪拌して反応させた。
【0056】
反応終了後、反応溶液を有機層と水層とに分液した。該有機層に5重量%リン酸水溶液100gを添加して充分に攪拌した後、有機層と水層とを分液した。次に、該有機層に0.1重量%水酸化ナトリウム水溶液100gを添加して充分に攪拌した後、有機層と水層とを分液した。その後さらに、得られた有機層に水100gを添加して充分に攪拌した後、有機層と水層とを分液することを2回行った。このとき、2回目の水層のpHは8.6であり、得られた有機層中の全酸成分は、アルカリ滴定(0.1Nエタノール性水酸化カリウム溶液による中和滴定)で測定した結果、アクリル酸換算で0.05重量%であった。
【0057】
次に、前記有機層に、重合防止剤としてヒドロキノンモノメチルエーテル0.20gを添加し、空気を吹き込みながら減圧蒸留を行い、初留(未反応原料である1−メチル−1−シクロヘキシルアクリレート)として120gを留去(このときの減圧度は666.6Pa)した後、無色の透明液体165gを精留として得た(このときの減圧度は666.6Pa)。
得られた無色の透明液体について、 1H−NMR分析および赤外吸収スペクトル(IR)分析を行った結果、該透明液体は、1−メチル−1−シクロヘキシル(2−ヒドロキシメチル)アクリレートであることを確認した。
【0058】
また、得られた無色の透明液体について、ガスクロマトグラフィー(内部標準法)での測定を行った結果、不純物である(2−ヒドロキシメチル)アクリレートとアクリル酸との合計含有量は、0.42重量%であった。
(比較例1−1)
実施例1−1と同様にして反応を行い、反応終了後、反応溶液を有機層と水層とに分液した。該有機層に5重量%リン酸水溶液100gを添加して充分に攪拌した後、有機層と水層とを分液した。次に、該有機層に水100gを添加して充分に攪拌した後、有機層と水層とを分液することを1回行った。このとき、水層のpHは4.2であり、得られた有機層中の全酸成分は、実施例1−1と同様に測定した結果、アクリル酸換算で0.7重量%であった。
【0059】
次に、前記有機層に、重合防止剤としてヒドロキノンモノメチルエーテル0.20gを添加し、空気を吹き込みながら減圧蒸留を行い、初留(未反応原料である1−メチルシクロヘキシルアクリレート)として92gを留去(このときの減圧度は666.6Pa)した後、無色の透明液体89gを精留として得た(このときの減圧度は666.6Pa)。
得られた無色の透明液体について、1H−NMR分析および赤外吸収スペクトル(IR)分析を行った結果、該透明液体は、1−メチル−1−シクロヘキシル(2−ヒドロキシメチル)アクリレートであることを確認した。
【0060】
また、得られた無色の透明液体について、実施例1−1と同様の測定を行った結果、不純物である(2−ヒドロキシメチル)アクリレートとアクリル酸との合計含有量は、5.2重量%であった。
(実施例1−2)
温度計、ガス吹き込み管、冷却管、攪拌装置および水浴を備えた1Lの4つ口フラスコに、ビニル化合物として2−エチル−2−アダマンチルアクリレート400g(1.7モル)、アルデヒド化合物として92%パラホルムアルデヒド111.4g(3.4モル)、3級アミン触媒としてトリエチレンジアミン191.5g(1.7モル)、水144.8g(8モル)、および重合防止剤としてp−メトキシフェノール0.4gを仕込んだ。2−エチル−2−アダマンチルアクリレートに対するp−メトキシフェノールの割合は、1000ppmである。その後、該反応溶液を80℃で72時間攪拌して反応させた。
【0061】
反応終了後、反応溶液を有機層と水層とに分液した。該有機層にシクロヘキサン600gと5重量%リン酸水溶液750gとを添加して充分に攪拌した後、有機層と水層とを分液した。次に、該有機層に1重量%水酸化ナトリウム水溶液750gを添加して充分に攪拌した後、有機層と水層とを分液することを2回繰り返した。その後さらに、得られた有機層に水750gを添加して充分に攪拌した後、有機層と水層とを分液することを3回繰り返した。このとき、3回目の水層のpHは8.3であり、得られた有機層中の全酸成分は、実施例1−1と同様に測定した結果、アクリル酸換算で0.03重量%であった。
【0062】
次に、前記有機層に、重合防止剤としてヒドロキノンモノメチルエーテル0.42gを添加し、空気を吹き込みながら減圧蒸留を行い、未反応原料である2−エチル−2−アダマンチルアクリレート204gを留去(このときの減圧度は400Pa)した後、無色の透明液体130gを得た。
得られた無色の透明液体について、1H−NMR分析および赤外吸収スペクトル(IR)分析を行った結果、該透明液体は、2−エチル−2−アダマンチル(2−ヒドロキシメチル)アクリレートであることを確認した。
また、得られた無色の透明液体について、実施例1−1と同様の測定を行った結果、不純物である(2−ヒドロキシメチル)アクリレートとアクリル酸との合計含有量は、0.4重量%であった。
【0063】
<水酸基含有アクリル酸系重合体>
(実施例2−1)
温度計、窒素ガス吹き込み管、冷却管、攪拌装置および水浴を備えた50m1lの3つ口フラスコに、実施例1−1で得られた1−メチル−1−シクロヘキシル(2−ヒドロキシメチル)アクリレート1.01g(5.07ミリモル)、スチレン0.83g(7.96ミリモル)、触媒として2、2’−アゾビスイソブチロニトリル0.21g(1.27ミリモル)、および溶媒としてトルエン2.27gを仕込み、窒素ガスで反応系内を置換後、80℃で4時間重合を行った。その後、得られた重合液にトルエン10mlを加えて均一なトルエン溶液とした。次いで、該トルエン溶液をヘキサン200mlの中に徐々に滴下し、白色の析出物を析出させ、該析出物をろ過した後、減圧乾燥して、0.77gの1−メチル−1−シクロヘキシル(2−ヒドロキシメチル)アクリレート/スチレン共重合体を得た。
【0064】
得られた共重合体をテトラヒドロフランに溶解させ、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで分析したところ、数平均分子量(Mn)は標準ポリスチレン換算で13,600であり、数平均分子量(Mn)/重量平均分子量(Mw)は1.87であった。また、得られた共重合体について、ガスクロマトグラフィー(内部標準法)で分析したところ、該共重合体の組成は、1−メチル−1−シクロヘキシル(2−ヒドロキシメチル)アクリレート由来の構造単位/スチレン由来の構造単位=40/60(モル比)であった。
(比較例2−1)
実施例1−1で得られた1−メチル−1−シクロヘキシル(2−ヒドロキシメチル)アクリレートの代わりに、比較例1−1で得られた1−メチル−1−シクロヘキシル(2−ヒドロキシメチル)アクリレートを用いたこと以外は、実施例2−1と同様にして、0.72gの1−メチル−1−シクロヘキシル(2−ヒドロキシメチル)アクリレート/スチレン共重合体を得た。
【0065】
得られた共重合体をテトラヒドロフランに溶解させ、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで分析したところ、数平均分子量(Mn)は標準ポリスチレン換算で13,200であり、数平均分子量(Mn)/重量平均分子量(Mw)は1.87であった。また、得られた共重合体について、ガスクロマトグラフィー(内部標準法)で分析したところ、該共重合体の組成は、1−メチル−1−シクロヘキシル(2−ヒドロキシメチル)アクリレート由来の構造単位/スチレン由来の構造単位=40/60(モル比)であった。
(実施例2−2)
温度計、窒素ガス吹き込み管、冷却管、攪拌装置および水浴を備えた50m1lの3つ口フラスコに、実施例1−1で得られた1−メチル−1−シクロヘキシル(2−ヒドロキシメチル)アクリレート0.98g(4.97ミリモル)、イソボルニルアクリレート1.52g(7.32ミリモル)、および溶媒としてトルエン2.55gを仕込み、窒素ガスで反応系内を置換後、さらに、触媒として2、2’−アゾビスイソブチロニトリル0.2g(1.22ミリモル)をトルエン0.98gに溶解させて仕込み、80℃で4時間重合を行った。その後、得られた重合液にトルエン10mlを加えて均一なトルエン溶液とした。次いで、該トルエン溶液をヘキサン200mlの中に徐々に滴下し、白色の析出物を析出させ、該析出物をろ過した後、減圧乾燥して、0.83gの1−メチル−1−シクロヘキシル(2−ヒドロキシメチル)アクリレート/イソボルニルアクリレート共重合体を得た。
【0066】
得られた共重合体をテトラヒドロフランに溶解させ、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで分析したところ、数平均分子量(Mn)は標準ポリスチレン換算で8,200であり、数平均分子量(Mn)/重量平均分子量(Mw)は1.87であった。また、得られた共重合体について、ガスクロマトグラフィー(内部標準法)で分析したところ、該共重合体の組成は、1−メチル−1−シクロヘキシル(2−ヒドロキシメチル)アクリレート由来の構造単位/イソボルニルアクリレート由来の構造単位=35/65(モル比)であった。
(比較例2−2)
実施例1−1で得られた1−メチル−1−シクロヘキシル(2−ヒドロキシメチル)アクリレートの代わりに、比較例1−1で得られた1−メチル−1−シクロヘキシル(2−ヒドロキシメチル)アクリレートを用いたこと以外は、実施例2−2と同様にして、0.79gの1−メチル−1−シクロヘキシル(2−ヒドロキシメチル)アクリレート/イソボルニルアクリレート共重合体を得た。
【0067】
得られた共重合体をテトラヒドロフランに溶解させ、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで分析したところ、数平均分子量(Mn)は標準ポリスチレン換算で8,500であり、数平均分子量(Mn)/重量平均分子量(Mw)は1.87であった。また、得られた共重合体について、ガスクロマトグラフィー(内部標準法)で分析したところ、該共重合体の組成は、1−メチル−1−シクロヘキシル(2−ヒドロキシメチル)アクリレート由来の構造単位/イソボルニルアクリレート由来の構造単位=35/65(モル比)であった。
<レジスト組成物>
(実施例3−1)
実施例2−1で得られた共重合体を乳酸エチルに溶解させて13重量%の溶液とした。該溶液に、光酸発生剤として、前記共重合体に対して2重量%のトリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネートを添加して、レジスト組成物を得た。
【0068】
次に、得られたレジスト組成物を、ヘキサメチルジラザン処理を施したSiO2基板上にスピンコートした後、60℃で20分間ペークして、厚さ0.6μmの薄膜(レジスト膜)を形成した。次いで、この薄膜をレジストエキシマレーザステッパー(KrF)を使用して20秒間露光した後、110℃で60分間ペークし、アルカリ現像液としてテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドの2.38重量%水溶液を用いて現像を行った。その結果、解像状態は良好であり、レジスト膜の剥離も認められず、クラックの発生もなかった。
(比較例3−1)
実施例2−1で得られた共重合体の代わりに、比較例2−1で得られた共重合体を用いたこと以外は実施例3−1と同様にして、レジスト組成物を得た。
【0069】
次に、得られたレジスト組成物を用いて、実施例3−1と同様の方法でレジスト膜を形成し現像を行った。その結果、クラックの発生はなかったものの、解像状態は不良であり、レジスト膜に一部剥離が生じていた。
(実施例3−2)
実施例2−1で得られた共重合体の代わりに、実施例2−2で得られた共重合体を用いたこと以外は実施例3−1と同様にして、レジスト組成物を得た。
次に、レジストエキシマレーザステッパー(KrF)に替えてレジストエキシマレーザステッパー(ArF)を用いたこと以外は実施例3−1と同様の方法で、得られたレジスト組成物を用いてレジスト膜を形成し現像を行った。その結果、解像状態は良好であり、レジスト膜の剥離も認められず、クラックの発生もなかった。
【0070】
(比較例3−2)
実施例2−1で得られた共重合体の代わりに、比較例2−2で得られた共重合体を用いたこと以外は実施例3−1と同様にして、レジスト組成物を得た。
次に、得られたレジスト組成物を用いて、実施例3−2と同様の方法でレジスト膜を形成し現像を行った。その結果、クラックの発生はなかったものの、解像状態は不良であり、レジスト膜に一部剥離が生じていた。
【0071】
【発明の効果】
本発明によれば、エステル部分の脱離エネルギーが小さく、酸によるエステル部分の脱離が非常に容易であり、しかも高純度な水酸基含有アクリル酸エステルと、該水酸基含有アクリル酸エステルを用いて得られる水酸基含有アクリル酸系重合体およびレジスト組成物とを提供することができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、レジスト材料などの種々の用途に有用な水酸基含有アクリル酸エステルと、該水酸基含有アクリル酸エステルを用いて得られる水酸基含有アクリル酸系重合体およびレジスト組成物とに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、例えば(2−ヒドロキシメチル)アクリル酸エステルのような水酸基含有アクリル酸エステルは、各種用途における活用が期待されており、例えば、その重合体が化学増幅型レジスト材料の用途において有用であることが報告されている(特許文献1参照)。これは、そのエステル部分が酸の存在下で脱離することを利用したものである。このような(2−ヒドロキシメチル)アクリル酸エステルなどの水酸基含有アクリル酸エステルは、一般に、アクリル酸エステルにアルデヒド類を塩基性触媒の存在下で反応させる方法により製造されている。詳しくは、反応後、塩基性触媒を酸等で中和して除去した後、蒸留により精製するのが一般的であった。
【0003】
(2−ヒドロキシメチル)アクリル酸エステルなどの水酸基含有アクリル酸エステルを例えば化学増幅型レジスト材料の用途において利用する場合、そのエステル部分の脱離エネルギーはできるだけ小さい方が望ましく、エステル部分により脱離しやすい置換基をもつモノマーが優れた性能を発揮できると考えられる。しかしながら、エステル部分が脱離しやすいモノマーを製造することは非常に困難であるという問題があった。すなわち、アクリル酸エステルにアルデヒド類を塩基性触媒の存在下で反応させた後、塩基性触媒を酸等で中和して除去することが必要となるが、その際に、反応液に酸が残存することとなり、残存する酸の影響でその後の蒸留においてエステル部分が脱離してしまうこととなる。しかも、このエステル部分の脱離は、残存する酸の量が微量であっても、その微量の酸によるエステル部分の脱離でカルボン酸が生じ、該カルボン酸によって新たな脱離が引き起こされることとなるため、化学増幅的に起こることとなる。このため、目的物である水酸基含有アクリル酸エステル中に、該目的物からエステル部分が脱離してなる水酸基含有アクリル酸や、原料であるアクリル酸エステルからエステル部分が脱離してなるアクリル酸が、不純物として多量に混入することとなる。したがって、エステル部分が脱離しやすい水酸基含有アクリル酸エステルであり、しかも純度の高い水酸基含有アクリル酸エステルは、これまで実質的に得られていなかった。
【0004】
【特許文献1】
特開2000−131847号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明は、エステル部分の脱離エネルギーが小さく、酸によるエステル部分の脱離が非常に容易であり、しかも高純度な水酸基含有アクリル酸エステルと、該水酸基含有アクリル酸エステルを用いて得られる水酸基含有アクリル酸系重合体およびレジスト組成物とを提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者は上記課題を解決するべく、鋭意検討を行った。その結果、アクリル酸のカルボキシル基の酸素原子に脂環構造中の第3級炭素がエステル結合した構造を有する水酸基含有アクリル酸エステルが、エステル部分の脱離エネルギーが極めて小さく、酸による脱離が非常に容易であることを見出した。さらに、このような水酸基含有アクリル酸エステルの(共)重合体は、酸によるエステル部分の脱離性の点でレジスト用途に有用であるとともに、エステル部分の脱離によりカルボン酸と揮発性が低い脂環式オレフィンとが生じ、該脂環式オレフィンが溶媒効果を発揮して、露光の際にエキシマレーザーランプを汚すことがないという利点があることをも見出した。本発明はこれらの知見により完成したものである。
【0007】
すなわち、本発明にかかる水酸基含有アクリル酸エステルは、下記一般式(1)
【0008】
【化5】
【0009】
(式(1)中、R1は水素原子または有機残基を表し、R2は有機残基を表し、ZはR2が結合している3級炭素原子を含んで形成される脂環構造を表す。)
で表される水酸基含有アクリル酸エステルであって、不純物として含まれる下記一般式(2)
【0010】
【化6】
【0011】
(式(2)中のR1は、式(1)中のR1と同じである。)
で表されるカルボキシル基含有化合物とアクリル酸との総量が1.0重量%以下である、ことを特徴とする。
本発明にかかる水酸基含有アクリル酸系重合体は、前記本発明の水酸基含有アクリル酸エステルの(共)重合体であって、下記一般式(3)
【0012】
【化7】
【0013】
(式(3)中、R1は水素原子または有機残基を表し、R2は有機残基を表し、ZはR2が結合している3級炭素原子を含んで形成される脂環構造を表す。)
で表わされる構造単位を有し、数平均分子量が1,000〜1,000,000である、ことを特徴とする。
本発明にかかるレジスト組成物は、水酸基含有アクリル酸系重合体と、放射線照射により酸を発生する化合物とを必須とするレジスト組成物において、前記水酸基含有アクリル酸系重合体が、前記本発明の水酸基含有アクリル酸エステルの(共)重合体であって、下記一般式(3)
【0014】
【化8】
【0015】
(式(3)中、R1は水素原子または有機残基であり、R2は有機残基であり、ZはR2が結合している3級炭素原子とともに脂環構造を形成している。)
で表わされる構造単位を有し、数平均分子量が1,000〜1,000,000の重合体である、ことを特徴とする。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明の水酸基含有アクリル酸エステルは、下記一般式(1)
【0017】
【化9】
【0018】
(式(1)中、R1は水素原子または有機残基を表し、R2は有機残基を表し、ZはR2が結合している3級炭素原子を含んで形成される脂環構造を表す。)
で表されるものであり、エステル部分の酸素原子が脂環構造中の第3級炭素に結合した構造を有していることから、エステル部分の脱離エネルギーが小さく、酸により非常に容易に脱離しやすいという特徴を有する。
前記式(1)中のR1の例である有機残基としては、具体的には、例えば、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、ブチル基等)、アリール基(例えば、シクロヘキシル基、フェニル基、ナフチル基等)、ベンジル基等の置換基;前記置換基にハロゲン原子等が付加した置換基(例えば、2−クロロフェニル基、3−クロロフェニル基、4−クロロフェニル基、2,3−ジクロロベンジル基、2,4−ジクロロベンジル基、2,6−ジクロロベンジル基等);等が挙げられる。
【0019】
前記式(1)中のR2で表される有機残基としては、具体的には、例えば、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、ブチル基等)、シクロヘキシル基、アリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基等)、ベンジル基等の置換基;前記置換基にハロゲン原子等が付加した置換基(例えば、2−クロロフェニル基、3−クロロフェニル基、4−クロロフェニル基、2,3−ジクロロベンジル基、2,4−ジクロロベンジル基、2,6−ジクロロベンジル基等);等が挙げられる。
前記式(1)中、Zで表される脂環構造は、R2が結合している3級炭素原子を含んで形成されるものであり、例えば、シクロペンチル環、シクロヘキシル環、イソボルニル環、ノルボルネン環、トリシクロデカニル環、アダマンチル環、γ−ブチルラクトン環等が挙げられる。
【0020】
本発明の水酸基含有アクリル酸エステルの具体例としては、例えば、1−メチル−1−シクロペンチル(2−ヒドロキシメチル)アクリレート、1−エチル−1−シクロペンチル(2−ヒドロキシメチル)アクリレート、1−メチル−1−シクロヘキシル(2−ヒドロキシメチル)アクリレート、1−エチル−1−シクロヘキシル(2−ヒドロキシメチル)アクリレート、2−メチル−2−アダマンチル(2−ヒドロキシメチル)アクリレート、2−エチル−2−アダマンチル(2−ヒドロキシメチル)アクリレート、γ−ブチロラクトン−メチル−3−イル(2−ヒドロキシメチル)アクリレート、γ−ブチロラクトン−エチル−3−イル(2−ヒドロキシメチル)アクリレート等が挙げられる。
【0021】
本発明の水酸基含有アクリル酸エステルは、不純物として含まれる下記一般式(2)
【0022】
【化10】
【0023】
(式(2)中のR1は、式(1)中のR1と同じである。)
で表されるカルボキシル基含有化合物とアクリル酸との総量が1.0重量%以下である。これにより、本発明の水酸基含有アクリル酸エステルは、例えばレジスト材料の原料として好適に用いることができ、前述した特徴により優れた性能を発揮することができるのである。なお、前記式(2)で表されるカルボキシル基含有化合物は、目的物である水酸基含有アクリル酸エステルからエステル部分が脱離してなる不純物であり、アクリル酸は、原料であるアクリル酸エステルからエステル部分が脱離してなる不純物である。
【0024】
本発明の水酸基含有アクリル酸エステルは、アルデヒド化合物とビニル化合物とを3級アミン触媒の存在下で反応させ、得られた反応液を酸洗浄することにより前記3級アミン触媒の除去を行い、そののち、酸洗浄後の反応液に対し蒸留による精製を施すことにより、容易に製造することができる。
前記アルデヒド化合物は、下記一般式(4)
【0025】
【化11】
【0026】
(式(4)中、R1は、水素原子または有機残基である。)
で表される化合物である。式(4)中のR1の例である有機残基の具体例は、前述した式(1)中のR1の例である有機残基と同様である。
前記アルデヒド化合物としては、具体的には、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、バレルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、ピバリンアルデヒド、シクロヘキシルアルデヒド、シクロヘキセンアルデヒド、ベンズアルデヒド、トルアルデヒド、アニスアルデヒド、フルフラール、ホルムアルデヒドの重合体(8量体〜100量体)であるパラホルムアルデヒド、ホルムアルデヒドの20〜50重量%水溶液(水和ホルムアルデヒド)、ホルムアルデヒド濃度が20〜50重量%であるメタノール水溶液等が挙げられる。これらの中でも特に、アセトアルデヒド、パラホルムアルデヒド、ホルムアルデヒドの20〜50重量%水溶液、およびホルムアルデヒド濃度が20〜50重量%であるメタノール水溶液が好ましい。アルデヒド化合物は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0027】
前記ビニル化合物は、下記一般式(5)
【0028】
【化12】
【0029】
(式(5)中、R2は有機残基を表し、ZはR2が結合している3級炭素原子を含んで形成される脂環構造を表す。)
で表される化合物である。式(5)中、R2で表される有機残基およびZで表される脂環構造の具体例は、前述した式(1)中、R2で表される有機残基およびZで表される脂環構造と同様である。
前記ビニル化合物としては、具体的には、例えば、1−メチル−1−シクロペンチルアクリレート、1−エチル−1−シクロペンチルアクリレート、1−メチル−1−シクロヘキシルアクリレート、1−エチル−1−シクロヘキシルアクリレート、2−メチル−2−アダマンチルアクリレート、2−エチル−2−アダマンチルアクリレート、γ−ブチロラクトン−メチル−3−イルアクリレート、γ−ブチロラクトン−エチル−3−イルアクリレート等が挙げられる。ビニル化合物は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0030】
前記ビニル化合物に対する前記アルデヒド化合物の使用量、すなわちビニル化合物とアルデヒド化合物とのモル比(ビニル化合物/アルデヒド化合物)は、特に限定されるものではないが、0.01〜15の範囲内、より好ましくは0.5〜8の範囲内とするのがよい。該モル比が0.01未満であると、生産性が悪く、精製に多くの労力を要することとなるので好ましくない。一方、該モル比が15を超えると、生産性が悪くなる傾向があるので好ましくない。なお、ビニル化合物とアルデヒド化合物との混合方法は、特に限定されるものではない。
前記3級アミン触媒としては、具体的には、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリイソプロピルアミン等のトリアルキルアミン;N,N−ジメチルエチルアミン、N,N−ジメチルプロピルアミン、N,N−ジメチルイソプロピルアミン、N,N−ジメチルブチルアミン、N,N−ジメチルイソブチルアミン、N,N−ジメチル−t−ブチルアミン、N,N−ジメチル(トリメチルシリル)アミン等のN,N−ジメチルアルキルアミン;N,N−ジエチルメチルアミン、N,N−ジエチルプロピルアミン、N,N−ジエチルイソプロピルアミン等のN,N−ジエチルアルキルアミン;等が挙げられる。これらの中でも特に、水に対する溶解度が比較的高い化合物が好ましく、常圧における沸点が100℃以下であり、かつ、少なくとも1つのN−メチル基を有するN−メチルアルキルアミン(N−メチル化合物)がより好ましく、常圧における沸点が100℃以下であり、かつ、2つのN−メチル基を有するN,N−ジメチルアルキルアミンがさらに好ましく、トリメチルアミンが最も好ましい。3級アミン触媒は、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用して用いてもよい。なお、前記3級アミン触媒は、液体状やガス状など種々の状態であってよいが、5〜80重量%水溶液であることが好ましく、20〜60重量%水溶液であることがより好ましい。水溶液の状態であることにより、反応開始時および反応時における取り扱いが容易になる。
【0031】
前記3級アミン触媒の使用量は、特に限定されるものではないが、3級アミン触媒とアルデヒド化合物とのモル比(3級アミン触媒/アルデヒド化合物)が、0.2〜2の範囲内、より好ましくは0.2〜1の範囲内、特に好ましくは0.4〜0.8の範囲内となるようにするのがよい。該モル比が0.2未満であると、反応速度が遅くなる傾向があり、反応温度を比較的高く設定しなければならず、その結果、副反応物の生成が多くなり、目的物である水酸基含有アクリル酸エステルの選択率が低下するので好ましくない。一方、該モル比を2よりも大きくしても、反応速度や選択率などの点でさらなる向上効果が認められず、経済的に不利になるとともに、該モル比が2を超えると、反応条件にもよるが、原料であるビニル化合物もしくは生成物である水酸基含有アクリル酸エステルの加水分解反応が起こる恐れがあるので好ましくない。なお、ビニル化合物および/またはアルデヒド化合物に対する3級アミン触媒の添加方法は、特に限定されるものではない。
【0032】
前記ビニル化合物と前記アルデヒド化合物との反応は、反応終了時において水層を形成するに足る水の存在下で行うことが好ましい。好ましくは、反応開始時、反応時および反応終了時を通じて、反応液(反応系)が有機層および水層の2層系を形成することができうる量の水の存在下で反応させるのがよい。このとき、水の量は、特に限定されるものではなく、例えば、ビニル化合物、アルデヒド化合物、3級アミン触媒、後述する溶媒等の種類(性質)や組み合わせ、各使用量や、得られる水酸基含有アクリル酸エステルの性質や、反応温度などの反応条件等に応じて、最適な量となるように適宜設定すればよい。反応系に対する水の添加方法は、特に限定されるものではなく、例えば、原料等からなる混合物に水を混合する方法、アルデヒド化合物に水を予め混合し、該アルデヒド化合物の水溶液を調製して添加する方法、3級アミン触媒に水を予め混合し、該3級アミン触媒の水溶液を調製して添加する方法等を採用すればよく、さらにこれらの方法を組み合わせて実施してもよい。なお、前記有機層とは、実質的に水に不溶の化合物、具体的には、原料であるビニル化合物、生成物である水酸基含有アクリル酸エステル、および後述する溶媒等からなる混合物を示す。
【0033】
前記ビニル化合物と前記アルデヒド化合物とを反応させる際には、必要に応じて、有機層を形成するために水に不溶な有機溶媒を用いることができる。有機溶媒としては、ビニル化合物、アルデヒド化合物および生成物である水酸基含有アクリル酸エステル等を溶解し、かつ反応に対して不活性な化合物であれば、特に限定されるものではなく、例えば、ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、メチルブチルケトン、酢酸ブチル等が好ましく用いられる。また、原料であるビニル化合物を大過剰に使用し、該ビニル化合物を溶媒とすることもできる。有機溶媒は、1種のみを用いてもよく、2種以上を適宜混合して用いてもよい。有機溶媒の使用量は、特に限定されるものではなく、例えば、ビニル化合物、アルデヒド化合物、3級アミン触媒等の種類(性質)や組み合わせ、各使用量や、得られる水酸基含有アクリル酸エステルの性質や、反応温度などの反応条件等に応じて、最適な量となるように適宜設定すればよい。
【0034】
前記ビニル化合物と前記アルデヒド化合物との反応を行う際の反応条件等は、特に限定されるものではないが、原料であるビニル化合物ならびに生成物である水酸基含有アクリル酸エステルは、分子中にビニル基等を有しているので、重合し易い性質を有している。したがって、ビニル化合物とアルデヒド化合物とを反応させる際には、該ビニル化合物やアルデヒド化合物の重合を抑制するために、反応系に重合防止剤(重合禁止剤)や分子状酸素を添加することが好ましい。
前記重合防止剤としては、例えば、ヒドロキノン、メチルヒドロキノン、t−ブチルヒドロキノン、2,4−ジ−t−ブチルヒドロキノン、2,4−ジメチルヒドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル等のキノン類;フェノチアジン等のアミン化合物;2,4−ジメチル−6−t−ブチルフェノール、2,4−ジ−t−ブチルフェノール、p−メトキシフェノール等のフェノール類; p−t−ブチルカテコール等の置換カテコール類;置換レゾルシン類;等が挙げられるが、特に限定されるものではない。重合防止剤は、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。重合防止剤の添加量は、特に限定されるものではないが、例えば、ビニル化合物に対して0.01〜1重量%の範囲内となるようにすればよい。前記分子状酸素としては、例えば、空気、もしくは、分子状酸素と窒素等との混合ガスを用いることができる。この場合、反応液(有機層または水層)に分子状酸素を含有するガスを吹き込む(いわゆるバブリング)ようにすればよい。より効果的に重合を充分に抑制するためには、重合防止剤と分子状酸素とを併用することが好ましい。
【0035】
前記ビニル化合物と前記アルデヒド化合物とを反応させる際の反応温度は、特に限定されるものではないが、重合を抑制するためには、10〜150℃の範囲内が好ましく、40〜100℃の範囲内がより好ましく、40〜80℃の範囲内が特に好ましい。反応温度が10℃未満であると、反応速度が遅くなるので反応時間が長くなり過ぎ、生産性が低下するので好ましくない。一方、反応温度が150℃を超えると、重合が起こり易くなるとともに、ビニル化合物の加水分解反応が起こるので好ましくない。また、反応圧力は、特に限定されるものではなく、常圧(大気圧)、減圧、加圧のいずれであってもよい。
【0036】
前記ビニル化合物と前記アルデヒド化合物とを反応させる際の反応時間は、反応が完結するように、ビニル化合物、アルデヒド化合物、3級アミン触媒および溶媒等の種類(性質)や組み合わせ、各使用量、反応温度等に応じて適宜設定すればよい。従って、反応時間は、特に限定されるものではないが、通常、0.5〜10時間程度で充分である。
本発明の水酸基含有アクリル酸エステルを得るには、前記アルデヒド化合物と前記ビニル化合物との反応後、得られた反応液を酸洗浄することにより前記3級アミン触媒の除去を行う。具体的には、まず、反応終了後、分液等の所定の操作を行い、反応液を有機層と水層とに分離する。このとき、有機層と水層との分離性が悪ければ、必要に応じて、反応の際に用いることのできる有機溶媒として前述した溶媒を添加してもよいし、また、前記有機溶媒を用いて分離した水層に僅かに溶解している有機層を抽出し、該溶媒を有機層に加えるようにしてもよい。次に、分離した有機層に、洗浄液として酸の水溶液を添加し、3級アミン触媒を中和させた後、分液等の所定の操作を行い、有機層から洗浄液(水層)を分離する。このとき、洗浄液として酸の水溶液を用いる代わりに、有機層に酸を添加して中和させた後、水を加えるようにしてもよい。このように酸洗浄を行うことにより、反応液から3級アミン触媒を除去するとともに、有機層に含まれる未反応のアルデヒド化合物を不活性にし、蒸留の際の副反応を抑制することができる。なお、反応液から分離した水層および酸洗浄後に分離した洗浄液(水層)は、廃棄してもよいし、例えば、塩基性条件下で加熱等するなどの常法にて、含有する3級アミン触媒を分離・回収し、再利用するようにしてもよい。
【0037】
前記酸洗浄に用いることのできる酸としては、プロトン酸であれば特に限定されるものではなく、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、ホウ酸等の鉱酸類;マレイン酸、シュウ酸、クエン酸等の有機酸類;等を用いることができる。好ましくは、酸強度が高すぎると、酸洗浄の際に生成物である水酸基含有アクリル酸エステルのエステル部分の脱離を招く恐れがあるので、酸強度が高くなく、しかも安価であるリン酸を用いるのがよい。酸は、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、これら酸を水溶液とする際の酸の濃度は、0.01〜20重量%とすることが好ましい。
【0038】
前記酸洗浄の際に用いる酸(もしくは酸の水溶液)の使用量は、有機層から分離された洗浄液(水層)のpHが7.0以下、好ましくは3.0〜7.0の範囲内、より好ましくは5.0〜7.0の範囲内となるような量とすることが好ましい。洗浄液のpHが7.0を越える場合、つまり酸の使用量が少ない場合には、3級アミン触媒が有機層に残存する恐れがある。
本発明の水酸基含有アクリル酸エステルを得るには、前記酸洗浄ののち、酸洗浄後の反応液に対し蒸留による精製を施すのであるが、酸洗浄後の反応液を蒸留する前に、前記酸洗浄後の反応液から酸を除去する処理を施し、該処理により蒸留に供する反応液中の全酸成分がアクリル酸換算で0.1重量%以下となるようにしておくことが重要である。全酸成分がアクリル酸換算で0.1重量%を超える反応液を蒸留に供すると、蒸留の際に、まずこの酸によって生成物もしくは未反応原料であるアクリル酸エステルのエステル部分が脱離し、さらに該脱離で生じたカルボン酸によって新たな脱離が引き起こされることとなるため、化学増幅的に、前述した式(2)で表されるカルボキシル基含有化合物やアクリル酸が不純物として副生することとなる。
【0039】
酸を除去する処理としては、特に制限はなく、従来公知の処理方法を採用することができるが、好ましくは、水洗後の水層のpHが5〜7になるまで水洗を行う処理、アルカリ洗浄する処理、および酸を吸着剤で吸着する処理のうちの少なくとも1つを採用するのがよい。さらに好ましくは、これらのうちから2つ以上の処理を併用するのがよい。
水洗後の水層のpHが5〜7になるまで水洗を行う処理において、水洗後の水層のpHは、好ましくは5.5〜7、より好ましくは6〜7になるようにするのがよい。水洗後の水層のpHが前記範囲になるまで水洗を行う処理は、具体的には、例えば、酸洗浄後の反応液(有機層)に水を添加し、充分に攪拌するなどして洗浄した後、分液等の所定の操作により水層を有機層から分離する操作を、分離した水層のpHが前記所定の範囲になるまで繰り返し行うようにすればよい。
【0040】
アルカリ洗浄する処理は、具体的には、例えば、酸洗浄後の反応液(有機層)にアルカリ水溶液を添加し、充分に攪拌するなどして洗浄した後、分液等の所定の操作により水層を有機層から分離するようにすればよい。アルカリ水溶液としては、特に制限されないが、例えば、リチウム、カリウム、ナトリウム、カルシウム、バリウム等の水酸化物、炭酸塩または炭酸水素塩の水溶液が挙げられ、これらの中でも特に、カリウム、ナトリウムの水酸化物、炭酸塩または炭酸水素塩の水溶液が好ましい。アルカリ水溶液の濃度は0.01〜10重量%であることが好ましく、アルカリ水溶液のpHは8〜10であることが好ましい。
【0041】
アルカリ洗浄する処理を行った場合、必要に応じて、アルカリ洗浄後に水洗を行い、残存するアルカリを除去するようにしてもよい。水洗は、具体的には、例えば、アリカリ洗浄後の反応液(有機層)に水を添加し、充分に攪拌するなどした後、分液等の所定の操作により水層を有機層から分離するようにすればよい。このとき、分離した水層のpHが9以下、好ましくは8.5以下、より好ましくは8以下となるまで、水洗を繰り返すことが好ましい。
酸を吸着剤で吸着する処理は、具体的には、例えば、酸洗浄後の反応液(有機層)に酸吸着剤を添加し、充分に攪拌するなどして酸を該吸着剤に吸着させた後、該吸着剤を濾過等の所定の操作により有機層から分離するようにすればよい。このとき、有機層に酸吸着剤を添加して酸を該吸着剤に吸着させる際の処理温度は、重合性を有する水酸基含有アクリル酸エステルの重合を防止するためには、100℃以下とすることが好ましく、より好ましくは50〜80℃とするのがよい。なお、処理時間については、特に制限はなく、適宜設定すればよい。酸吸着剤としては、特に制限はなく、例えば、酸化マグネシウムや酸化カルシウムなど従来公知のものを用いることができる。また、市販品であれば、「キョウーワード100」、「キョウーワード200」、「キョウーワード300」、「キョウーワード1000」、「キョウーワード2000」(以上、協和化学製)、「トミックスAD−100」、「トミックスAD−200」(以上、富田化学製)等が好適に用いられる。酸吸着剤の使用量は、酸洗浄後の反応液(有機層)の全量に対して20重量%以下、好ましくは10重量%以下、より好ましくは5重量%以下とするのがよい。
【0042】
酸を吸着剤で吸着する処理を行った場合、必要に応じて、該処理ののち、酸吸着剤を分離した後の反応液(有機層)に対して水洗を施し、残存する吸着剤を除去するようにしてもよい。水洗は、具体的には、例えば、酸吸着剤を分離した後の反応液(有機層)に水を添加し、充分に攪拌するなどした後、分液等の所定の操作により水層を有機層から分離するようにすればよい。
本発明の水酸基含有アクリル酸エステルを得るには、酸を除去する処理を行った後、得られた反応液を蒸留により精製し、目的物である水酸基含有アクリル酸エステルを単離する。
【0043】
蒸留は、常圧蒸留や減圧蒸留などの公知の方法により行うことができる。蒸留の際の条件は、原料であるビニル化合物の蒸気圧等に応じて適宜設定すればよいのであるが、蒸留時の釜内温度が150℃を超えると、重合が起きる恐れがあるので、好ましくは150℃以下とするのがよい。なお、目的物である水酸基含有アクリル酸エステルの蒸気圧が低い場合には、蒸留を複数回繰り返して行うこともできる。
蒸留の際には、反応時と同様に、重合防止剤を添加しておくのが好ましい。このとき用いることのできる重合防止剤としては、反応の際に用いることのできる重合防止剤として前述したものと同様のものが挙げられ、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。なお、蒸留の際に用いる重合防止剤の添加量は、蒸留に供する液の5重量%以下とすることが好ましく、より好ましくは1重量%以下、さらに好ましくは0.5重量%以下とするのがよい。また、蒸留の際には、反応時と同様に、蒸留に供する液に前述した分子状酸素を含有するガスを吹き込むようにすることが好ましい。
【0044】
本発明の水酸基含有アクリル酸系重合体は、前記本発明の水酸基含有アクリル酸エステルの(共)重合体であり、下記一般式(3)
【0045】
【化13】
【0046】
(式(3)中、R1は水素原子または有機残基を表し、R2は有機残基を表し、ZはR2が結合している3級炭素原子を含んで形成される脂環構造を表す。)
で表わされる構造単位を有するものである。式(3)中のR1の例である有機残基、R2で表される有機残基、およびZで表される脂環構造の具体例は、それぞれ、前述した式(1)中のR1の例である有機残基、式(1)中、R2で表される有機残基、およびZで表される脂環構造と同様である。なお、本発明の水酸基含有アクリル酸系重合体は、少なくとも前記一般式(3)で示される構造単位を有するものであればよく、これ以外の構造単位は、特に限定されるものではない。具体的には、前記一般式(3)で示される構造単位以外の構造単位は、例えば、後述する水酸基含有アクリル酸エステルと共重合可能な単量体に由来する構造単位となる。また、前記一般式(3)で示される構造単位と、これ以外の構造単位との比率も、特に限定されるものではない。
【0047】
本発明の水酸基含有アクリル酸系重合体の数平均分子量は、1,000〜1,000,000の範囲である。特に、数平均分子量5,000〜500,000の水酸基含有アクリル酸系重合体は、通常のラジカル重合により容易に得られるとともに、取り扱い易いので有用である。また、本発明の水酸基含有アクリル酸系重合体を後述するレジスト組成物の原料に用いる場合には、水酸基含有アクリル酸系重合体の数平均分子量は、1,000〜500,000の範囲であるのが好ましく、5,000〜100,000の範囲であるのがより好ましい。レジスト組成物の原料に用いる場合には、数平均分子量が前記範囲よりも小さすぎると、コールドフローを起こし易く、逆に大きすぎると、粘度が上昇して取り扱い難く、エッチングされ難くなる傾向がある。
【0048】
本発明の水酸基含有アクリル酸系重合体は、前記一般式(1)で表わされる本発明の水酸基含有アクリル酸エステルを単独で重合させるか、あるいは、前記一般式(1)で表わされる本発明の水酸基含有アクリル酸エステルと、該水酸基含有アクリル酸エステルと共重合可能な他の単量体とを共重合させること等により、容易に得ることができる。水酸基含有アクリル酸エステルと共重合可能な単量体としては、例えば、アダマンチル(メタ)アクリレート、2−メチル−2−アダマンチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、メバロノラクトン(メタ)アクリレート、γ−ブチロラクトン−3−イル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸およびそのエステル類;スチレン、α−メチルスチレン、4−ヒドロキシスチレン、4−tert−ブトキシスチレン等のスチレン系化合物;(メタ)アクリロニトリル、2−ヒドロキシメチルアクリル酸およびそのエステル類;5−ノルボルネン−2−カルボン酸およびそのエステル類;無水5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸およびそのエステル類;5−ノルボルネン−2−メタノール、無水マレイン酸およびそのエステル類;マレイミド類;等が挙げられる。水酸基含有アクリル酸エステルと共重合可能な単量体は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。なお、水酸基含有アクリル酸エステルと共重合可能な単量体をも共重合させる場合、これら単量体の使用割合は特に限定されるものではない。
【0049】
本発明の水酸基含有アクリル酸系重合体を得る際の重合方法は、特に限定されるものではなく、例えば、2、2’−アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物や過酸化物などのラジカル重合開始剤等の重合開始剤を用いる重合方法;イオン化放射線、電子線等の放射線や紫外線を照射する重合方法;加熱による重合方法等、従来公知の種々の方法を採用することができる。なお、重合は、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。
本発明のレジスト組成物は、前記本発明の水酸基含有アクリル酸系重合体と、放射線照射により酸を発生する化合物(以下、光酸発生剤と称する。)とを必須とするものである。
【0050】
本発明のレジスト組成物における前記本発明の水酸基含有アクリル酸系重合体の含有割合は、水酸基含有アクリル酸系重合体の共重合組成等に応じて適宜設定すればよいのであるが、通常、前記本発明の水酸基含有アクリル酸系重合体は、レジスト組成物中10〜90モル%であることが好ましい。
前記光酸発生剤としては、放射線の照射により酸を発生する化合物であれば、特に限定されるものではなく、例えば、トリアリールスルホニウム塩(例えば、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート等)、ジアリールヨードニウム塩、スルホネート類、ハロゲン化物類など公知の酸発生剤を用いることができる。
【0051】
前記光酸発生剤の含有割合は、前記水酸基含有アクリル酸系重合体に対して、0.1〜5重量%の範囲であることが好ましく、0.2〜2重量%の範囲であることがより好ましい。光酸発生剤が0.1重量%未満であると、反応に必要な酸の量が少なく、レジストパターンの形成精度が低下する恐れがある。一方、光酸発生剤が5重量%を越えると、解像度および感度が低下する傾向がある。
本発明のレジスト組成物においては、前記本発明の水酸基含有アクリル酸系重合体を必須の膜形成材料とするが、本発明の水酸基含有アクリル酸系重合体のほかにも、例えば、(メタ)アクリル酸エステル系重合体、ヒドロキシスチレン系重合体、脂環式モノマーの(共)重合体(例えば、ジシクロペンタジエンと無水マレイン酸との共重合体、ジシクロペンタジエンとマレイミド類との共重合体等)などを、膜形成材料として、本発明の効果を損なわない範囲で含有していてもよい。
【0052】
本発明のレジスト組成物は、前記本発明の水酸基含有アクリル酸系重合体を必須とする膜形成材料および光酸発生剤以外の成分として、必要に応じて、希釈溶剤を含有していてもよい。前記希釈溶剤としては、前記本発明の水酸基含有アクリル酸系重合体を充分に溶解させうる溶媒であればよく、例えば、乳酸エチルなどの乳酸エステル類;メトキジプロピレングリコール、エトキシポリエチレングリコール等のポリプロピレングリコールのエーテル類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤;n−ヘプタン、n−オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂肪族系溶剤類;エチルアセテート、ブチルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート等の酢酸エステル;メチル−3−メトキシプロピオネート、エチル−3−エトキシプロピオネート等のプロピオン酸エステル類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;γ−ブチロラクトン;等が好適に使用される。希釈溶剤は、1種のみを用いてもよく、2種以上を適宜混合して使用してもよい。なお、前記希釈溶剤をも含有する場合、その配合量は、前記膜形成材料に対して20〜90重量%の範囲とすることが可能であるが、スピンコーター塗布機において2500〜4000rpmの回転数で前記膜形成材料を0.5μm程度塗布できるだけの量とすることが好ましい。
【0053】
本発明のレジスト組成物は、必要に応じて、その他の添加物、例えば、染料、密着性付与剤、安定剤、界面活性剤、難燃剤など従来からレジスト組成物に使用されている常用の添加剤等を、本発明の効果を阻害しない範囲で含んでいてもよい。
本発明のレジスト組成物は、前記水酸基含有アクリル酸系重合体を必須とする膜形成材料を、必要に応じて希釈溶剤にて希釈した後、光酸発生剤を混合することにより容易に得ることができる。なお、膜形成材料と光酸発生剤との混合方法および混合装置は、通常用いられている方法および装置をそのまま利用することができる。
【0054】
本発明のレジスト組成物は、膜形成材料として前記本発明の水酸基含有アクリル酸系重合体を含有しているため、シリコン基板等の基板に対する密着性に優れ、かつレジスト材料としての耐エッチング性、アルカリ剥離性に優れた性能を発揮する。しかも、前記本発明の水酸基含有アクリル酸エステルは、そのエステル部分が脱離することによりカルボン酸と揮発性が低い脂環式オレフィンとになり、該脂環式オレフィンが溶媒効果を発揮しうることから、本発明のレジスト組成物は、露光の際にエキシマレーザーランプを汚すことがないという利点がある。また、本発明のレジスト組成物は、ArFエキシマレーザの透過が可能で、ArFエキシマレーザに対する透明性が高く、かつ、感度、レジストパターン形状、耐ドライエッチング性、基板への密着性にも優れた性能を発揮する。さらに、本発明のレジスト組成物は、放射線の照射により発生した酸の触媒作用を利用することで、高感度並びに高解像性を有している。
【0055】
【実施例】
以下に、実施例により、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。
<水酸基含有アクリル酸エステル>
(実施例1−1)
温度計、ガス吹き込み管、冷却管、攪拌装置および水浴を備えた1Lの4つ口フラスコに、ビニル化合物として1−メチル−1−シクロヘキシルアクリレート276.7g(1.65モル)、アルデヒド化合物として92%パラホルムアルデヒド41.3g(1.27モル)、3級アミン触媒としてトリエチレンジアミン71.0g(0.63モル)、水82.2g(4.56モル)、および重合防止剤としてp−メトキシフェノール0.277gを仕込んだ。1−メチル−1−シクロヘキシルアクリレートに対するp−メトキシフェノールの割合は、1000ppmである。その後、該反応溶液を70℃で11時間攪拌して反応させた。
【0056】
反応終了後、反応溶液を有機層と水層とに分液した。該有機層に5重量%リン酸水溶液100gを添加して充分に攪拌した後、有機層と水層とを分液した。次に、該有機層に0.1重量%水酸化ナトリウム水溶液100gを添加して充分に攪拌した後、有機層と水層とを分液した。その後さらに、得られた有機層に水100gを添加して充分に攪拌した後、有機層と水層とを分液することを2回行った。このとき、2回目の水層のpHは8.6であり、得られた有機層中の全酸成分は、アルカリ滴定(0.1Nエタノール性水酸化カリウム溶液による中和滴定)で測定した結果、アクリル酸換算で0.05重量%であった。
【0057】
次に、前記有機層に、重合防止剤としてヒドロキノンモノメチルエーテル0.20gを添加し、空気を吹き込みながら減圧蒸留を行い、初留(未反応原料である1−メチル−1−シクロヘキシルアクリレート)として120gを留去(このときの減圧度は666.6Pa)した後、無色の透明液体165gを精留として得た(このときの減圧度は666.6Pa)。
得られた無色の透明液体について、 1H−NMR分析および赤外吸収スペクトル(IR)分析を行った結果、該透明液体は、1−メチル−1−シクロヘキシル(2−ヒドロキシメチル)アクリレートであることを確認した。
【0058】
また、得られた無色の透明液体について、ガスクロマトグラフィー(内部標準法)での測定を行った結果、不純物である(2−ヒドロキシメチル)アクリレートとアクリル酸との合計含有量は、0.42重量%であった。
(比較例1−1)
実施例1−1と同様にして反応を行い、反応終了後、反応溶液を有機層と水層とに分液した。該有機層に5重量%リン酸水溶液100gを添加して充分に攪拌した後、有機層と水層とを分液した。次に、該有機層に水100gを添加して充分に攪拌した後、有機層と水層とを分液することを1回行った。このとき、水層のpHは4.2であり、得られた有機層中の全酸成分は、実施例1−1と同様に測定した結果、アクリル酸換算で0.7重量%であった。
【0059】
次に、前記有機層に、重合防止剤としてヒドロキノンモノメチルエーテル0.20gを添加し、空気を吹き込みながら減圧蒸留を行い、初留(未反応原料である1−メチルシクロヘキシルアクリレート)として92gを留去(このときの減圧度は666.6Pa)した後、無色の透明液体89gを精留として得た(このときの減圧度は666.6Pa)。
得られた無色の透明液体について、1H−NMR分析および赤外吸収スペクトル(IR)分析を行った結果、該透明液体は、1−メチル−1−シクロヘキシル(2−ヒドロキシメチル)アクリレートであることを確認した。
【0060】
また、得られた無色の透明液体について、実施例1−1と同様の測定を行った結果、不純物である(2−ヒドロキシメチル)アクリレートとアクリル酸との合計含有量は、5.2重量%であった。
(実施例1−2)
温度計、ガス吹き込み管、冷却管、攪拌装置および水浴を備えた1Lの4つ口フラスコに、ビニル化合物として2−エチル−2−アダマンチルアクリレート400g(1.7モル)、アルデヒド化合物として92%パラホルムアルデヒド111.4g(3.4モル)、3級アミン触媒としてトリエチレンジアミン191.5g(1.7モル)、水144.8g(8モル)、および重合防止剤としてp−メトキシフェノール0.4gを仕込んだ。2−エチル−2−アダマンチルアクリレートに対するp−メトキシフェノールの割合は、1000ppmである。その後、該反応溶液を80℃で72時間攪拌して反応させた。
【0061】
反応終了後、反応溶液を有機層と水層とに分液した。該有機層にシクロヘキサン600gと5重量%リン酸水溶液750gとを添加して充分に攪拌した後、有機層と水層とを分液した。次に、該有機層に1重量%水酸化ナトリウム水溶液750gを添加して充分に攪拌した後、有機層と水層とを分液することを2回繰り返した。その後さらに、得られた有機層に水750gを添加して充分に攪拌した後、有機層と水層とを分液することを3回繰り返した。このとき、3回目の水層のpHは8.3であり、得られた有機層中の全酸成分は、実施例1−1と同様に測定した結果、アクリル酸換算で0.03重量%であった。
【0062】
次に、前記有機層に、重合防止剤としてヒドロキノンモノメチルエーテル0.42gを添加し、空気を吹き込みながら減圧蒸留を行い、未反応原料である2−エチル−2−アダマンチルアクリレート204gを留去(このときの減圧度は400Pa)した後、無色の透明液体130gを得た。
得られた無色の透明液体について、1H−NMR分析および赤外吸収スペクトル(IR)分析を行った結果、該透明液体は、2−エチル−2−アダマンチル(2−ヒドロキシメチル)アクリレートであることを確認した。
また、得られた無色の透明液体について、実施例1−1と同様の測定を行った結果、不純物である(2−ヒドロキシメチル)アクリレートとアクリル酸との合計含有量は、0.4重量%であった。
【0063】
<水酸基含有アクリル酸系重合体>
(実施例2−1)
温度計、窒素ガス吹き込み管、冷却管、攪拌装置および水浴を備えた50m1lの3つ口フラスコに、実施例1−1で得られた1−メチル−1−シクロヘキシル(2−ヒドロキシメチル)アクリレート1.01g(5.07ミリモル)、スチレン0.83g(7.96ミリモル)、触媒として2、2’−アゾビスイソブチロニトリル0.21g(1.27ミリモル)、および溶媒としてトルエン2.27gを仕込み、窒素ガスで反応系内を置換後、80℃で4時間重合を行った。その後、得られた重合液にトルエン10mlを加えて均一なトルエン溶液とした。次いで、該トルエン溶液をヘキサン200mlの中に徐々に滴下し、白色の析出物を析出させ、該析出物をろ過した後、減圧乾燥して、0.77gの1−メチル−1−シクロヘキシル(2−ヒドロキシメチル)アクリレート/スチレン共重合体を得た。
【0064】
得られた共重合体をテトラヒドロフランに溶解させ、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで分析したところ、数平均分子量(Mn)は標準ポリスチレン換算で13,600であり、数平均分子量(Mn)/重量平均分子量(Mw)は1.87であった。また、得られた共重合体について、ガスクロマトグラフィー(内部標準法)で分析したところ、該共重合体の組成は、1−メチル−1−シクロヘキシル(2−ヒドロキシメチル)アクリレート由来の構造単位/スチレン由来の構造単位=40/60(モル比)であった。
(比較例2−1)
実施例1−1で得られた1−メチル−1−シクロヘキシル(2−ヒドロキシメチル)アクリレートの代わりに、比較例1−1で得られた1−メチル−1−シクロヘキシル(2−ヒドロキシメチル)アクリレートを用いたこと以外は、実施例2−1と同様にして、0.72gの1−メチル−1−シクロヘキシル(2−ヒドロキシメチル)アクリレート/スチレン共重合体を得た。
【0065】
得られた共重合体をテトラヒドロフランに溶解させ、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで分析したところ、数平均分子量(Mn)は標準ポリスチレン換算で13,200であり、数平均分子量(Mn)/重量平均分子量(Mw)は1.87であった。また、得られた共重合体について、ガスクロマトグラフィー(内部標準法)で分析したところ、該共重合体の組成は、1−メチル−1−シクロヘキシル(2−ヒドロキシメチル)アクリレート由来の構造単位/スチレン由来の構造単位=40/60(モル比)であった。
(実施例2−2)
温度計、窒素ガス吹き込み管、冷却管、攪拌装置および水浴を備えた50m1lの3つ口フラスコに、実施例1−1で得られた1−メチル−1−シクロヘキシル(2−ヒドロキシメチル)アクリレート0.98g(4.97ミリモル)、イソボルニルアクリレート1.52g(7.32ミリモル)、および溶媒としてトルエン2.55gを仕込み、窒素ガスで反応系内を置換後、さらに、触媒として2、2’−アゾビスイソブチロニトリル0.2g(1.22ミリモル)をトルエン0.98gに溶解させて仕込み、80℃で4時間重合を行った。その後、得られた重合液にトルエン10mlを加えて均一なトルエン溶液とした。次いで、該トルエン溶液をヘキサン200mlの中に徐々に滴下し、白色の析出物を析出させ、該析出物をろ過した後、減圧乾燥して、0.83gの1−メチル−1−シクロヘキシル(2−ヒドロキシメチル)アクリレート/イソボルニルアクリレート共重合体を得た。
【0066】
得られた共重合体をテトラヒドロフランに溶解させ、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで分析したところ、数平均分子量(Mn)は標準ポリスチレン換算で8,200であり、数平均分子量(Mn)/重量平均分子量(Mw)は1.87であった。また、得られた共重合体について、ガスクロマトグラフィー(内部標準法)で分析したところ、該共重合体の組成は、1−メチル−1−シクロヘキシル(2−ヒドロキシメチル)アクリレート由来の構造単位/イソボルニルアクリレート由来の構造単位=35/65(モル比)であった。
(比較例2−2)
実施例1−1で得られた1−メチル−1−シクロヘキシル(2−ヒドロキシメチル)アクリレートの代わりに、比較例1−1で得られた1−メチル−1−シクロヘキシル(2−ヒドロキシメチル)アクリレートを用いたこと以外は、実施例2−2と同様にして、0.79gの1−メチル−1−シクロヘキシル(2−ヒドロキシメチル)アクリレート/イソボルニルアクリレート共重合体を得た。
【0067】
得られた共重合体をテトラヒドロフランに溶解させ、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで分析したところ、数平均分子量(Mn)は標準ポリスチレン換算で8,500であり、数平均分子量(Mn)/重量平均分子量(Mw)は1.87であった。また、得られた共重合体について、ガスクロマトグラフィー(内部標準法)で分析したところ、該共重合体の組成は、1−メチル−1−シクロヘキシル(2−ヒドロキシメチル)アクリレート由来の構造単位/イソボルニルアクリレート由来の構造単位=35/65(モル比)であった。
<レジスト組成物>
(実施例3−1)
実施例2−1で得られた共重合体を乳酸エチルに溶解させて13重量%の溶液とした。該溶液に、光酸発生剤として、前記共重合体に対して2重量%のトリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネートを添加して、レジスト組成物を得た。
【0068】
次に、得られたレジスト組成物を、ヘキサメチルジラザン処理を施したSiO2基板上にスピンコートした後、60℃で20分間ペークして、厚さ0.6μmの薄膜(レジスト膜)を形成した。次いで、この薄膜をレジストエキシマレーザステッパー(KrF)を使用して20秒間露光した後、110℃で60分間ペークし、アルカリ現像液としてテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドの2.38重量%水溶液を用いて現像を行った。その結果、解像状態は良好であり、レジスト膜の剥離も認められず、クラックの発生もなかった。
(比較例3−1)
実施例2−1で得られた共重合体の代わりに、比較例2−1で得られた共重合体を用いたこと以外は実施例3−1と同様にして、レジスト組成物を得た。
【0069】
次に、得られたレジスト組成物を用いて、実施例3−1と同様の方法でレジスト膜を形成し現像を行った。その結果、クラックの発生はなかったものの、解像状態は不良であり、レジスト膜に一部剥離が生じていた。
(実施例3−2)
実施例2−1で得られた共重合体の代わりに、実施例2−2で得られた共重合体を用いたこと以外は実施例3−1と同様にして、レジスト組成物を得た。
次に、レジストエキシマレーザステッパー(KrF)に替えてレジストエキシマレーザステッパー(ArF)を用いたこと以外は実施例3−1と同様の方法で、得られたレジスト組成物を用いてレジスト膜を形成し現像を行った。その結果、解像状態は良好であり、レジスト膜の剥離も認められず、クラックの発生もなかった。
【0070】
(比較例3−2)
実施例2−1で得られた共重合体の代わりに、比較例2−2で得られた共重合体を用いたこと以外は実施例3−1と同様にして、レジスト組成物を得た。
次に、得られたレジスト組成物を用いて、実施例3−2と同様の方法でレジスト膜を形成し現像を行った。その結果、クラックの発生はなかったものの、解像状態は不良であり、レジスト膜に一部剥離が生じていた。
【0071】
【発明の効果】
本発明によれば、エステル部分の脱離エネルギーが小さく、酸によるエステル部分の脱離が非常に容易であり、しかも高純度な水酸基含有アクリル酸エステルと、該水酸基含有アクリル酸エステルを用いて得られる水酸基含有アクリル酸系重合体およびレジスト組成物とを提供することができる。
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US7041846B2 (en) | 2003-03-07 | 2006-05-09 | Shin-Etsu Chemical Co., Ltd. | Alicyclic methacrylate having oxygen substituent group on α-methyl |
WO2006070694A1 (ja) * | 2004-12-27 | 2006-07-06 | Tokyo Ohka Kogyo Co., Ltd. | アクリル系共重合ポリマー |
JP2007086514A (ja) * | 2005-09-22 | 2007-04-05 | Fujifilm Corp | レジスト組成物及びそれを用いたパターン形成方法 |
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2002
- 2002-11-12 JP JP2002328488A patent/JP2004161860A/ja active Pending
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