JP2004161184A - ケーブル布設台船 - Google Patents
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Abstract
【課題】係留する度にアンカーを打設する必要がなく定置維持制御ができる複数のスラスタ装置を、台船上に引き込み収納した状態でタグボートに曳かれての移動が速やかにできるケーブル布設台船を提供することにある。
【解決手段】海上に浮揚し、所要の面積を有する台船(1)であって、台船(1)上に配置したスラスタ装置の本体を、台船(1)上において回転自在に配置し、舷側から外方に延出したスラスタ装置のアームを台船(1)上に移動させ、台船(1)上に移動させたアームをその位置に安定させるようにしたことを特徴とした。
【選択図】 図1
【解決手段】海上に浮揚し、所要の面積を有する台船(1)であって、台船(1)上に配置したスラスタ装置の本体を、台船(1)上において回転自在に配置し、舷側から外方に延出したスラスタ装置のアームを台船(1)上に移動させ、台船(1)上に移動させたアームをその位置に安定させるようにしたことを特徴とした。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、主として海底(水底)に布設する電力、通信等の各種ケーブルや送水管、オイルパイプ等のパイプ類等を海底に布設するケーブル布設台船に関し、特に布設作業中台船の位置を安定に維持するケーブル布設台船に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、電力、通信等の各種ケーブルや送水管、オイルパイプ等の各種パイプ類を海底、水底に布設するケーブル布設台船は公知である。ケーブル布設台船は、所望の面積のほぼ平坦な上面を有した喫水が浅い構造であり、そのケーブル布設台船の上面にはケーブル或いはパイプ類をコイル状に巻回して収容するケーブル収容装置と、該ケーブルを海中に繰り出すケーブル繰出装置が配設されている。ケーブル布設台船は、ケーブル布設作業に応じて、一定の位置に安定させたり、或いは所望の方向にゆっくりした速度で移動させなければならない。例えば、島と島、または島と本島の間などに電力および通信ケーブル等を海底に布設する場合において、先ず、ケーブル布設台船をケーブル陸揚げ地点において係留させておき、予定長だけケーブルの一端を陸揚げする。この場合には、ケーブル布設台船は一定の位置に安定させておくことが必要となる。また、このケーブルの一端の陸揚げが完了後は、海中にケーブルストッパを取付けた上で、ケーブル布設台船を移動させつつケーブルを布設する。この場合にはタグボートでケーブル布設台船を曳航若しくはアンカーリングにより移動させている。海底へのケーブルの布設完了後、対岸に到着すれば、再びケーブル陸揚げ地点においてケーブル布設台船を係留させておき、ケーブル端末の陸揚げを行っていた。
【0003】
従来このようにケーブル布設作業時においてケーブル布設台船を一定の位置に係留しておくには、特開平06−017970号公報に開示されているように、海底にアンカーを設置しアンカーからケーブル布設台船までワイヤロープを布設して固定する方法が採られている。しかしながら、かかる係留地点の海中に数点のアンカーを打設し、その打設したアンカーとケーブル布設台船とをワイヤロープによって固定する方法では、アンカーの打設及び係留のために、非常に多くの時間と労力および多大な費用を必要としていた。特に、海底ケーブルの陸揚げ地点の潮流が激しく、あるいは、海苔網、かき養殖筏、岩石等の障害物が係留地点のすぐ近くにある場合には、そこにアンカーを打設することができないために、アンカーによるケーブル布設台船の係留は不可能となってしまう。そのため、ケーブル布設ルートを変更するか、または養殖筏等を撤去するか、撤去されるまでその工事を延期する必要性があった。従って、ケーブル布設台船の係留のためには係留地点の周囲の状況にかかわらず、短時間に、且つ簡易にいつでも係留可能にすることが望まれていた。
【0004】
予定長のケーブル陸揚げの完了後海底へのケーブル布設作業となり、タグボートにて布設台船を曳航して布設に移るが、かかるタグボートによる曳航は、風や潮流等の影響を受けてケーブル布設台船が予定ルートから逸脱したり、所定の速度を維持することが極めて困難であった。また、曳航によるケーブル布設が完了して対岸に到着した場合においても、上述と同じ数点のアンカーを打設して係留した後に、ケーブル陸揚げの作業が行われる。これらの場合に、布設台船をアンカーにより係留しているため迅速に行動することができず、緊急時における事態の回避が困難となっている。
【0005】
【特許文献1】
特開平06−017970号公報(第1−3頁、第1−3図)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
この発明は、ケーブル布設台船上に設置した複数のスラスタ装置を操船支援装置により制御して、台船を所定の位置に安定に維持させるとともに、スラスタ装置から舷側外に伸び出すアームを台船上に移動可能として、岸壁等への接岸に際しスラスタ装置が邪魔とならないようにすることを課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記問題を解決するためにこの発明が採った手段は、所要の面積を有する台船であって、該台船上に配置したスラスタ装置の本体を台船上において回転自在に配置し、スラスタ装置は舷側から外方に延出するアームを備え、該アームはその先端にプロペラを有し海中に向かって垂直方向に旋回自在であり、台船上におけるスラスタ装置本体の回転に伴ってアームを台船上に移動させ、台船上に移動させたアームをその位置に安定させるようにしたことを特徴とする。
【0008】
前記スラスタ装置のアームを船上に回転させる回転手段は、手動で駆動回転させるハンドルが好ましいが、電動モータであっても良い。スラスタ装置の本体は、台船上に回転自在に軸支されており、前記駆動回転手段で駆動回転される回転体を備えている。
【0009】
アームを台船上に安定に保持する手段は、台船上に設置されたストッパー手段からなり、アームを含むスラスタ装置の意図しない回転による危険の発生を防止している。
【0010】
【発明の実施の形態】
この発明の好ましい実施の形態を、以下に詳細に説明する。この発明のケーブル布設台船は、海上に浮揚する所定の面積を有した台船からなり、好ましくは浅い喫水を有し、海岸において可能な限り陸地に接近可能に構成されている。台船上には電力、通信等の各種ケーブル、或いは送水管、オイルパイプ等のパイプ類をコイル状に巻回して収容するケーブル収容装置と、該ケーブル等を台船の後方から海中に繰り出すケーブル繰り出し装置並びにスラスタ装置とを備えている。
【0011】
スラスタ装置は、人工衛星による地球位置測位システムからの位置情報を受信し利用する操船支援装置及び該操船支援装置からの情報に基づいてスラスタ装置のプロペラをコントロールする操船コントロール手段により、プロペラの方向と回転速度とが制御されるようになっている。操船コントロール手段は、潮流、風、波等による台船の実際の位置を操船支援装置からの情報に基づいて作業予定位置とのずれを検出し、修正するために必要なコントロール情報をスラスタ装置に入力する。
【0012】
スラスタ装置は、台船上の両舷側前後に間隔を置いて少なくとも二個、全部で四個配置され、各スラスタ装置を前述の操船コントロール手段により個別にコントロールして、台船を所望の定置に保持させることが出来る。また、スラスタ装置は、台船の舷側内側近傍に配置された装置本体を含み、該装置本体から船外に延出するアーム及び該アームの先端に取付けられたプロペラを有する。そして、該プロペラは任意の方向への転回と、回転速度の任意の調整が可能であり、前記人工衛星利用測位システムから得られた位置情報に基づいて操船コントロール手段により、各スラスタ装置を制御するようになっている。
【0013】
前記スラスタ装置のアームは、先端のプロペラが海中に没する長さを有しており、台船の上面から海中に向かって垂直方向に旋回することが出来る。また、装置本体を台船上で回転することにより、装置本体とともに水平方向に旋回して台船上に移動させることが出来、台船上においてストッパー手段により安定に保持される。
【0014】
前記装置本体を台船上において回転させる手段は、好ましくは手動で回転させるハンドルであり、手動により駆動回転されるが、電動モータによって駆動回転しても良い。手動による駆動回転手段によれば、意図しないプロペラの回転移動による危険の発生を防止することが出来る。スラスタ装置本体は、台船上に軸支された軸を中心に回動自在である。装置本体は、好ましくは台船上に配置された旋回台上に前記回転軸が軸支されるとともに、該旋回台上を転動する回転体を備えている。前記ストッパー手段は、好ましくは装置本体に設けられる。
【0015】
【実施例】
以下、この発明の一実施例を図面を参照しつつ説明する。図1は本発明に係る台船の概要を示しスラスタ装置を台船上面に収納した状態を示す側面図であり、図2は図1の状態を上面から見た図である。図3は本発明に係る台船の概要を示しスラスタ装置を台船の側部から海中に降ろした状態を示す側面図であり、図4は図3の状態を上面から見た図である。図5はスラスタ装置のアームを台船上に収納した位置から舷側の外方、海面上へ90度移動させる状態を説明する図であり、図6は本発明のスラスタ装置のアームを海中に降ろした状態から上方向へ水平位置まで持ち上げた状態を説明する図である。
【0016】
図1〜図4において、(1)はコイル状にしたケーブル(53)をテーブル(12)上に収容した台船であり、その操舵室にはコンピュータにて制御されたDGPS(Differential Global Positioning System) 等の人工衛星利用測位システムを採用した操船支援装置が備えられており、その操船支援装置によって常に台船(1)はその位置が精度高く観測できるシステムになっている。
【0017】
また、この台船(1)は、その両舷側に所定の間隔をおいて少なくとも二個、全部で四個配置され、台船を定置に安定に維持させるためのスラスタ(20)を含むスラスタ装置を備えている。以下にこのスラスタ装置の構造とその動作について図5および図6を用いて説明する。
【0018】
まず、スラスタ装置は図5および図6に示したように、スラスタ(20)と呼ばれる本体からトランザム(29)と呼ばれる長いアームを延出したその先端に水かき用のプロペラ(30)が取付けられている。そして、このプロペラ(30)が取付けられているプロペラヘッド(h)の首部(m)は360度自由自在に転回が可能な構造となっており、そのプロペラ(30)の回転速度およびプロペラヘッド(h)の回転角度を決定する首部(m)の転回方向は、上述した操舵室からコンピュータにて制御されるようになっている。
【0019】
次に、このような構造のスラスタ装置本体であるスラスタ(20)を動作させて台船(1)を制御する方法を説明すると、図5に示したようにスラスタ装置本体のスラスタ(20)は台船(1)上の舷側内側近傍にそれぞれ設置されている。そして、そのスラスタ装置の下には安定的に制御できるようにするために設置台となる旋回ベース(27)が配置されており、その上面には軸(23)が本体装置を軸支として取付られている。そして、フレーム(21)にはこの軸(23)に操作用の旋回ハンドル(28)や旋回減速機(25)を備えた旋回テーブル(24)と、その旋回テーブル(24)に軸(t)を介してトランザム(29)が取付られた構造になっている。そして、またこのフレーム(21)には上述した軸支の軸(23)を中心に台船(1)上で所定の角度でスラスタ装置本体とともに水平方向に旋回して、台船(1)上を移動させることが容易なように下側に車輪(22)がついており、その車輪(22)は旋回ベース(27)の上面に形成された案内レール(31)の上に対応して載るように設置されている。そして、例えば、台船(1)が自然発生波や航路波等により動揺したためによって起こりうる不用意な回転を防止するためにストッパ(26)によって歯止めさ安定的に保持される。
【0020】
このようにトランザム(29)がフレーム(21)を介してスラスタ装置に取付られている状態で、トランザム(29)はフレーム(21)の旋回にともなって案内レール(31)の上を回転することができる。このように旋回するトランザム(29)の動作は、旋回ハンドル(28)を手動で回すことによって行うことができ、さらにその動作は旋回減速機(25)によって一定の速度で行えるように工夫されている。そして、このトランザム(29)の動作角度としては、図5に示したように台船(1)の舷側に対して船外方向に少なくとも90度の動作ができるようになっている。しかし、このトランザム(29)の収納位置は図2に示したように台船(1)のそれぞれ前後舷側近傍に互いに対向させて収納してあるので実際の回転角度は少なくとも180度の動作が可能になっている。
【0021】
次に、図6に示したようにトランザム(29)をフレーム(21)に設けてある軸(t)を中心にして90度に下側方向に下降する構造およびその動作を説明すると、まず、この作動は図示しない油圧ポンプによって油圧シリンダ(32)に加圧動作させることによって行うことができ、台船(1)の舷側に対して船外90度の位置で、且つ水平方向に延出するトランザム(29)は、その位置から少なくとも下側に90度に旋回出来るようになっている。
【0022】
次に、このように左右および上下に回転自在に動くプロペラ(30)を先端に取付け、トランザム(29)を具備したスラスタ(20)からなるスラスタ装置を、前後両舷側に少なくとも二つ前後に間隔をおいて配置した台船(1)について、その動作を以下に説明する。
【0023】
まず、台船(1)がタグボートよって作業現場に到着し、その作業のために台船(1)を定置に係留させたい場合は、スラスタ装置であるスラスタ(20)の旋回ハンドル(28)を回すことによって、台船(1)の上面に収納されていたトランザム(29)をゆっくりと収納されていた位置から舷側から船外方向に90度回転させる。そして、次に、図示しない油圧ポンプを動作させて油圧シリンダ(32)を加圧することによって、今度はトランザム(29)をゆっくりと下方向つまり海面方向に90度回転させ、その先端のプロペラ(30)を海中に没するようにする。同様にこの作業をそれぞれに配置されているスラスタ装置に対して行う。
【0024】
そして、この状態で前述した操舵室から各プロペラ(30)の回転数およびプロペラヘッド(h)の方向を首部(m)に対してコンピュータ制御を行うようになっている。さらに、これらの制御はDGPS等からの位置情報を基にして常にその精度が保たれるように設定されている。つまり、各スラスタ装置の制御は全て自動化され台船(1)がその係留ポイントから外れた場合においては、直ちに上述したコンピュータ制御が行われて常に位置補正が行われるようになっている。
【0025】
次に、発明の使用例として、例えば布設したケーブルに防護管を装着する作業の場合において、所定長の防護管を所定長に装着する度、その作業に必要な移動距離分に対し、その係留ポイントから作業に合わせた所定長の距離を前進する移動先地点のデータをコンピュータに指示するだけで良い。つまり、コンピュータはDGPSから受けている位置情報と指示された移動先地点の位置情報とを比較し、コンピュータは各スラスタ装置に対してその移動先地点までの位置補正分の制御信号を送り直ちに制御を行うことができるようにしている。
【0026】
次に、台船(1)での作業が終了しタグボートに曳かれる場合においては、まず、図6に示したように油圧シリンダ(32)を作動させてトランザム(29)を少なくとも海面から90度回転させて持ち上げてから、今度は、旋回ハンドル(28)を手動で回してトランザム(29)を少なくとも90度水平方向に回転させて台船(1)の上に引き込み収納する。そして、このトランザム(29)の収納後にトランザム(29)の不用意な回転を防止するためにストッパ(26)で歯止めをしておく。そのようにしてトランザム(29)を台船(1)の上に引き込み収納することで、タグボートに曳かれ移動する場合においては、航行抵抗が減るのでスピードを上げて航行することが可能となる。
【0027】
なお、この一実施例では旋回ハンドル(28)は手動で回していたが、これらの操作は手動に限るものではなく、電動モータ等の動力を用いて操作させるようにしても良い。
【0028】
【発明の効果】
以上説明してきたように、本発明のスラスタの構造によれば、その構成を海上に浮揚し、所要の面積を有する台船であって、台船上に配置したスラスタ装置の本体を、台船上において回転自在に配置し、舷側から外方に延出するスラスタ装置のアームを台船上に移動させ、台船上に移動させたアームをその位置に安定させるようにしたため、タグボートによって曳かれ移動する場合においては、航行抵抗が減るのでスピードを上げて目的地への移動ができるという効果を得ることができる。
【0029】
また、前記スラスタ装置本体を台船上に回転自在に軸支、該回転自在に軸支された本体に、手動で駆動される回転駆動手段と、該回転駆動手段の駆動力により台船上を転動する回転体とを設けたため、手動でも容易にスラスタ装置を動作させることができるという効果を得ることができる。
【0030】
また、台船上に移動されたアームを安定させる手段が、台船上に配置されたストッパーであるため、簡単な構造で安定性が良く確実な動作を得ることができる。 また、前記回転体がローラまたはギアであるため、簡単に取付ができるという効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る台船の概要を示しスラスタ装置を台船上面に収納した状態側面図である。
【図2】図1の状態を上面から見た図である。
【図3】本発明に係る台船の概要を示しスラスタ装置を台船の側部から降ろし海中に浸した状態を示した側面図である
【図4】図3の状態を上面から見た図である。
【図5】本発明の台船上面に収納したスラスタ装置を海面の上方向へ90度回転させる状態を説明する図である。
【図6】本発明のスラスタ装置を台船の側部から降ろし海中に浸した状態から海面上方向へ持ち上げた動作を説明した図である。
【符号の説明】
(1) 台船
(20) スラスタ
(21) フレーム
(22) 車輪
(23) 軸
(24) 旋回テーブル
(25) 旋回減速機
(27) 旋回ベース
(28) 旋回ハンドル
(29) トランザム
(30) プロペラ
(31) 案内レール
【発明の属する技術分野】
本発明は、主として海底(水底)に布設する電力、通信等の各種ケーブルや送水管、オイルパイプ等のパイプ類等を海底に布設するケーブル布設台船に関し、特に布設作業中台船の位置を安定に維持するケーブル布設台船に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、電力、通信等の各種ケーブルや送水管、オイルパイプ等の各種パイプ類を海底、水底に布設するケーブル布設台船は公知である。ケーブル布設台船は、所望の面積のほぼ平坦な上面を有した喫水が浅い構造であり、そのケーブル布設台船の上面にはケーブル或いはパイプ類をコイル状に巻回して収容するケーブル収容装置と、該ケーブルを海中に繰り出すケーブル繰出装置が配設されている。ケーブル布設台船は、ケーブル布設作業に応じて、一定の位置に安定させたり、或いは所望の方向にゆっくりした速度で移動させなければならない。例えば、島と島、または島と本島の間などに電力および通信ケーブル等を海底に布設する場合において、先ず、ケーブル布設台船をケーブル陸揚げ地点において係留させておき、予定長だけケーブルの一端を陸揚げする。この場合には、ケーブル布設台船は一定の位置に安定させておくことが必要となる。また、このケーブルの一端の陸揚げが完了後は、海中にケーブルストッパを取付けた上で、ケーブル布設台船を移動させつつケーブルを布設する。この場合にはタグボートでケーブル布設台船を曳航若しくはアンカーリングにより移動させている。海底へのケーブルの布設完了後、対岸に到着すれば、再びケーブル陸揚げ地点においてケーブル布設台船を係留させておき、ケーブル端末の陸揚げを行っていた。
【0003】
従来このようにケーブル布設作業時においてケーブル布設台船を一定の位置に係留しておくには、特開平06−017970号公報に開示されているように、海底にアンカーを設置しアンカーからケーブル布設台船までワイヤロープを布設して固定する方法が採られている。しかしながら、かかる係留地点の海中に数点のアンカーを打設し、その打設したアンカーとケーブル布設台船とをワイヤロープによって固定する方法では、アンカーの打設及び係留のために、非常に多くの時間と労力および多大な費用を必要としていた。特に、海底ケーブルの陸揚げ地点の潮流が激しく、あるいは、海苔網、かき養殖筏、岩石等の障害物が係留地点のすぐ近くにある場合には、そこにアンカーを打設することができないために、アンカーによるケーブル布設台船の係留は不可能となってしまう。そのため、ケーブル布設ルートを変更するか、または養殖筏等を撤去するか、撤去されるまでその工事を延期する必要性があった。従って、ケーブル布設台船の係留のためには係留地点の周囲の状況にかかわらず、短時間に、且つ簡易にいつでも係留可能にすることが望まれていた。
【0004】
予定長のケーブル陸揚げの完了後海底へのケーブル布設作業となり、タグボートにて布設台船を曳航して布設に移るが、かかるタグボートによる曳航は、風や潮流等の影響を受けてケーブル布設台船が予定ルートから逸脱したり、所定の速度を維持することが極めて困難であった。また、曳航によるケーブル布設が完了して対岸に到着した場合においても、上述と同じ数点のアンカーを打設して係留した後に、ケーブル陸揚げの作業が行われる。これらの場合に、布設台船をアンカーにより係留しているため迅速に行動することができず、緊急時における事態の回避が困難となっている。
【0005】
【特許文献1】
特開平06−017970号公報(第1−3頁、第1−3図)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
この発明は、ケーブル布設台船上に設置した複数のスラスタ装置を操船支援装置により制御して、台船を所定の位置に安定に維持させるとともに、スラスタ装置から舷側外に伸び出すアームを台船上に移動可能として、岸壁等への接岸に際しスラスタ装置が邪魔とならないようにすることを課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記問題を解決するためにこの発明が採った手段は、所要の面積を有する台船であって、該台船上に配置したスラスタ装置の本体を台船上において回転自在に配置し、スラスタ装置は舷側から外方に延出するアームを備え、該アームはその先端にプロペラを有し海中に向かって垂直方向に旋回自在であり、台船上におけるスラスタ装置本体の回転に伴ってアームを台船上に移動させ、台船上に移動させたアームをその位置に安定させるようにしたことを特徴とする。
【0008】
前記スラスタ装置のアームを船上に回転させる回転手段は、手動で駆動回転させるハンドルが好ましいが、電動モータであっても良い。スラスタ装置の本体は、台船上に回転自在に軸支されており、前記駆動回転手段で駆動回転される回転体を備えている。
【0009】
アームを台船上に安定に保持する手段は、台船上に設置されたストッパー手段からなり、アームを含むスラスタ装置の意図しない回転による危険の発生を防止している。
【0010】
【発明の実施の形態】
この発明の好ましい実施の形態を、以下に詳細に説明する。この発明のケーブル布設台船は、海上に浮揚する所定の面積を有した台船からなり、好ましくは浅い喫水を有し、海岸において可能な限り陸地に接近可能に構成されている。台船上には電力、通信等の各種ケーブル、或いは送水管、オイルパイプ等のパイプ類をコイル状に巻回して収容するケーブル収容装置と、該ケーブル等を台船の後方から海中に繰り出すケーブル繰り出し装置並びにスラスタ装置とを備えている。
【0011】
スラスタ装置は、人工衛星による地球位置測位システムからの位置情報を受信し利用する操船支援装置及び該操船支援装置からの情報に基づいてスラスタ装置のプロペラをコントロールする操船コントロール手段により、プロペラの方向と回転速度とが制御されるようになっている。操船コントロール手段は、潮流、風、波等による台船の実際の位置を操船支援装置からの情報に基づいて作業予定位置とのずれを検出し、修正するために必要なコントロール情報をスラスタ装置に入力する。
【0012】
スラスタ装置は、台船上の両舷側前後に間隔を置いて少なくとも二個、全部で四個配置され、各スラスタ装置を前述の操船コントロール手段により個別にコントロールして、台船を所望の定置に保持させることが出来る。また、スラスタ装置は、台船の舷側内側近傍に配置された装置本体を含み、該装置本体から船外に延出するアーム及び該アームの先端に取付けられたプロペラを有する。そして、該プロペラは任意の方向への転回と、回転速度の任意の調整が可能であり、前記人工衛星利用測位システムから得られた位置情報に基づいて操船コントロール手段により、各スラスタ装置を制御するようになっている。
【0013】
前記スラスタ装置のアームは、先端のプロペラが海中に没する長さを有しており、台船の上面から海中に向かって垂直方向に旋回することが出来る。また、装置本体を台船上で回転することにより、装置本体とともに水平方向に旋回して台船上に移動させることが出来、台船上においてストッパー手段により安定に保持される。
【0014】
前記装置本体を台船上において回転させる手段は、好ましくは手動で回転させるハンドルであり、手動により駆動回転されるが、電動モータによって駆動回転しても良い。手動による駆動回転手段によれば、意図しないプロペラの回転移動による危険の発生を防止することが出来る。スラスタ装置本体は、台船上に軸支された軸を中心に回動自在である。装置本体は、好ましくは台船上に配置された旋回台上に前記回転軸が軸支されるとともに、該旋回台上を転動する回転体を備えている。前記ストッパー手段は、好ましくは装置本体に設けられる。
【0015】
【実施例】
以下、この発明の一実施例を図面を参照しつつ説明する。図1は本発明に係る台船の概要を示しスラスタ装置を台船上面に収納した状態を示す側面図であり、図2は図1の状態を上面から見た図である。図3は本発明に係る台船の概要を示しスラスタ装置を台船の側部から海中に降ろした状態を示す側面図であり、図4は図3の状態を上面から見た図である。図5はスラスタ装置のアームを台船上に収納した位置から舷側の外方、海面上へ90度移動させる状態を説明する図であり、図6は本発明のスラスタ装置のアームを海中に降ろした状態から上方向へ水平位置まで持ち上げた状態を説明する図である。
【0016】
図1〜図4において、(1)はコイル状にしたケーブル(53)をテーブル(12)上に収容した台船であり、その操舵室にはコンピュータにて制御されたDGPS(Differential Global Positioning System) 等の人工衛星利用測位システムを採用した操船支援装置が備えられており、その操船支援装置によって常に台船(1)はその位置が精度高く観測できるシステムになっている。
【0017】
また、この台船(1)は、その両舷側に所定の間隔をおいて少なくとも二個、全部で四個配置され、台船を定置に安定に維持させるためのスラスタ(20)を含むスラスタ装置を備えている。以下にこのスラスタ装置の構造とその動作について図5および図6を用いて説明する。
【0018】
まず、スラスタ装置は図5および図6に示したように、スラスタ(20)と呼ばれる本体からトランザム(29)と呼ばれる長いアームを延出したその先端に水かき用のプロペラ(30)が取付けられている。そして、このプロペラ(30)が取付けられているプロペラヘッド(h)の首部(m)は360度自由自在に転回が可能な構造となっており、そのプロペラ(30)の回転速度およびプロペラヘッド(h)の回転角度を決定する首部(m)の転回方向は、上述した操舵室からコンピュータにて制御されるようになっている。
【0019】
次に、このような構造のスラスタ装置本体であるスラスタ(20)を動作させて台船(1)を制御する方法を説明すると、図5に示したようにスラスタ装置本体のスラスタ(20)は台船(1)上の舷側内側近傍にそれぞれ設置されている。そして、そのスラスタ装置の下には安定的に制御できるようにするために設置台となる旋回ベース(27)が配置されており、その上面には軸(23)が本体装置を軸支として取付られている。そして、フレーム(21)にはこの軸(23)に操作用の旋回ハンドル(28)や旋回減速機(25)を備えた旋回テーブル(24)と、その旋回テーブル(24)に軸(t)を介してトランザム(29)が取付られた構造になっている。そして、またこのフレーム(21)には上述した軸支の軸(23)を中心に台船(1)上で所定の角度でスラスタ装置本体とともに水平方向に旋回して、台船(1)上を移動させることが容易なように下側に車輪(22)がついており、その車輪(22)は旋回ベース(27)の上面に形成された案内レール(31)の上に対応して載るように設置されている。そして、例えば、台船(1)が自然発生波や航路波等により動揺したためによって起こりうる不用意な回転を防止するためにストッパ(26)によって歯止めさ安定的に保持される。
【0020】
このようにトランザム(29)がフレーム(21)を介してスラスタ装置に取付られている状態で、トランザム(29)はフレーム(21)の旋回にともなって案内レール(31)の上を回転することができる。このように旋回するトランザム(29)の動作は、旋回ハンドル(28)を手動で回すことによって行うことができ、さらにその動作は旋回減速機(25)によって一定の速度で行えるように工夫されている。そして、このトランザム(29)の動作角度としては、図5に示したように台船(1)の舷側に対して船外方向に少なくとも90度の動作ができるようになっている。しかし、このトランザム(29)の収納位置は図2に示したように台船(1)のそれぞれ前後舷側近傍に互いに対向させて収納してあるので実際の回転角度は少なくとも180度の動作が可能になっている。
【0021】
次に、図6に示したようにトランザム(29)をフレーム(21)に設けてある軸(t)を中心にして90度に下側方向に下降する構造およびその動作を説明すると、まず、この作動は図示しない油圧ポンプによって油圧シリンダ(32)に加圧動作させることによって行うことができ、台船(1)の舷側に対して船外90度の位置で、且つ水平方向に延出するトランザム(29)は、その位置から少なくとも下側に90度に旋回出来るようになっている。
【0022】
次に、このように左右および上下に回転自在に動くプロペラ(30)を先端に取付け、トランザム(29)を具備したスラスタ(20)からなるスラスタ装置を、前後両舷側に少なくとも二つ前後に間隔をおいて配置した台船(1)について、その動作を以下に説明する。
【0023】
まず、台船(1)がタグボートよって作業現場に到着し、その作業のために台船(1)を定置に係留させたい場合は、スラスタ装置であるスラスタ(20)の旋回ハンドル(28)を回すことによって、台船(1)の上面に収納されていたトランザム(29)をゆっくりと収納されていた位置から舷側から船外方向に90度回転させる。そして、次に、図示しない油圧ポンプを動作させて油圧シリンダ(32)を加圧することによって、今度はトランザム(29)をゆっくりと下方向つまり海面方向に90度回転させ、その先端のプロペラ(30)を海中に没するようにする。同様にこの作業をそれぞれに配置されているスラスタ装置に対して行う。
【0024】
そして、この状態で前述した操舵室から各プロペラ(30)の回転数およびプロペラヘッド(h)の方向を首部(m)に対してコンピュータ制御を行うようになっている。さらに、これらの制御はDGPS等からの位置情報を基にして常にその精度が保たれるように設定されている。つまり、各スラスタ装置の制御は全て自動化され台船(1)がその係留ポイントから外れた場合においては、直ちに上述したコンピュータ制御が行われて常に位置補正が行われるようになっている。
【0025】
次に、発明の使用例として、例えば布設したケーブルに防護管を装着する作業の場合において、所定長の防護管を所定長に装着する度、その作業に必要な移動距離分に対し、その係留ポイントから作業に合わせた所定長の距離を前進する移動先地点のデータをコンピュータに指示するだけで良い。つまり、コンピュータはDGPSから受けている位置情報と指示された移動先地点の位置情報とを比較し、コンピュータは各スラスタ装置に対してその移動先地点までの位置補正分の制御信号を送り直ちに制御を行うことができるようにしている。
【0026】
次に、台船(1)での作業が終了しタグボートに曳かれる場合においては、まず、図6に示したように油圧シリンダ(32)を作動させてトランザム(29)を少なくとも海面から90度回転させて持ち上げてから、今度は、旋回ハンドル(28)を手動で回してトランザム(29)を少なくとも90度水平方向に回転させて台船(1)の上に引き込み収納する。そして、このトランザム(29)の収納後にトランザム(29)の不用意な回転を防止するためにストッパ(26)で歯止めをしておく。そのようにしてトランザム(29)を台船(1)の上に引き込み収納することで、タグボートに曳かれ移動する場合においては、航行抵抗が減るのでスピードを上げて航行することが可能となる。
【0027】
なお、この一実施例では旋回ハンドル(28)は手動で回していたが、これらの操作は手動に限るものではなく、電動モータ等の動力を用いて操作させるようにしても良い。
【0028】
【発明の効果】
以上説明してきたように、本発明のスラスタの構造によれば、その構成を海上に浮揚し、所要の面積を有する台船であって、台船上に配置したスラスタ装置の本体を、台船上において回転自在に配置し、舷側から外方に延出するスラスタ装置のアームを台船上に移動させ、台船上に移動させたアームをその位置に安定させるようにしたため、タグボートによって曳かれ移動する場合においては、航行抵抗が減るのでスピードを上げて目的地への移動ができるという効果を得ることができる。
【0029】
また、前記スラスタ装置本体を台船上に回転自在に軸支、該回転自在に軸支された本体に、手動で駆動される回転駆動手段と、該回転駆動手段の駆動力により台船上を転動する回転体とを設けたため、手動でも容易にスラスタ装置を動作させることができるという効果を得ることができる。
【0030】
また、台船上に移動されたアームを安定させる手段が、台船上に配置されたストッパーであるため、簡単な構造で安定性が良く確実な動作を得ることができる。 また、前記回転体がローラまたはギアであるため、簡単に取付ができるという効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る台船の概要を示しスラスタ装置を台船上面に収納した状態側面図である。
【図2】図1の状態を上面から見た図である。
【図3】本発明に係る台船の概要を示しスラスタ装置を台船の側部から降ろし海中に浸した状態を示した側面図である
【図4】図3の状態を上面から見た図である。
【図5】本発明の台船上面に収納したスラスタ装置を海面の上方向へ90度回転させる状態を説明する図である。
【図6】本発明のスラスタ装置を台船の側部から降ろし海中に浸した状態から海面上方向へ持ち上げた動作を説明した図である。
【符号の説明】
(1) 台船
(20) スラスタ
(21) フレーム
(22) 車輪
(23) 軸
(24) 旋回テーブル
(25) 旋回減速機
(27) 旋回ベース
(28) 旋回ハンドル
(29) トランザム
(30) プロペラ
(31) 案内レール
Claims (4)
- 所要の面積を有する台船であって、該台船上に配置したスラスタ装置の本体を台船上において回転自在に配置し、スラスタ装置は舷側から外方に延出するアームを備え、該アームはその先端にプロペラを有し海中に向かって垂直方向に旋回自在であり、台船上におけるスラスタ装置本体の回転に伴ってアームを台船上に移動させ、台船上に移動させたアームをその位置に安定させるようにしたことを特徴とするケーブル布設台船。
- 前記スラスタ装置本体を台船上に回転自在に軸支、該回転自在に軸支された本体に、手動で駆動される回転駆動手段と、該回転駆動手段の駆動力によりスラスタ装置本体を支持しつつ台船上を転動する回転体とを設けたことを特徴とする請求項1記載のケーブル布設台船。
- 台船上に移動されたアームを安定させる手段が、台船上に配置されたストッパーであることを特徴とする請求項1記載のケーブル布設台船。
- 前記回転体がローラまたはギアであることを特徴とする請求項2記載のケーブル布設台船。
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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2002
- 2002-11-14 JP JP2002331320A patent/JP2004161184A/ja active Pending
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