JP2004160511A - 鋼板の表面疵除去方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】従来より知られている表面疵の低減はもとより白色模様の表面疵の発生を防止した鋼板の表面疵除去方法を提供する。
【解決手段】酸洗後の鋼板を、通板長さをトラッキングしながら鋼板表面に残存する表面疵を疵検査装置により検出し、検出した疵のコイル長手方向及び幅方向の位置情報を疵除去装置に受け渡し、疵除去装置が受け取った疵の位置情報とトラッキング情報に基づいて、コイル表面の疵を含む一部領域を除去した後、鋼板を冷間圧延する鋼板の表面疵除去方法において、前記冷間圧延を、下記(1)式を満たす条件で冷間圧延するものである。
D/(To−T)≦0.07 −−−−−−−−(1)
ただし、D:疵除去深さ(mm)、To:酸洗後の鋼板厚み(mm)、T:冷間圧延後の鋼板厚み(mm)
【選択図】 なし
【解決手段】酸洗後の鋼板を、通板長さをトラッキングしながら鋼板表面に残存する表面疵を疵検査装置により検出し、検出した疵のコイル長手方向及び幅方向の位置情報を疵除去装置に受け渡し、疵除去装置が受け取った疵の位置情報とトラッキング情報に基づいて、コイル表面の疵を含む一部領域を除去した後、鋼板を冷間圧延する鋼板の表面疵除去方法において、前記冷間圧延を、下記(1)式を満たす条件で冷間圧延するものである。
D/(To−T)≦0.07 −−−−−−−−(1)
ただし、D:疵除去深さ(mm)、To:酸洗後の鋼板厚み(mm)、T:冷間圧延後の鋼板厚み(mm)
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、連続鋳造により製造されたスラブ、又はストリップ鋳造により溶鋼から直接製造された鋼板を、熱間圧延し、鋼板表面に生じた酸化スケールを酸洗により除去した後、除去しきれずに残存する鋼板の表面疵を除去する表面疵除去方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、熱間圧延工程を経て製造された鋼板表面には酸化スケールが生じており、塩酸等により酸洗除去されているが、酸洗除去後の鋼板表面に表面疵が残存することがある。このような表面疵の原因としては、鋳造段階から存在したスラグやアルミナ等の非金属介在物や、酸洗工程で除去しきれなかった酸化スケール等の異物が上げられる。このような異物を伴う表面疵が除去されないまま冷間圧延工程に持ち込まれると、冷間圧延時に鋼板表面が異物によって荒らされる結果、冷間圧延後の製品にも許容できない表面疵が現れ、製品の等級低下や、歩留まり低下を招いていた。
【0003】
特に、Ti添加極低炭素鋼はFeO等の異物を伴う疵が残留しやすい問題がある。更に、冷間圧延後に亜鉛めっき(又は合金化亜鉛めっき)を施す鋼板では、めっき前の段階では殆ど目立たない深さの10μm以下の浅い線状疵であっても、亜鉛めっき厚みのむらや合金むらが生じてめっき後に疵が顕在化しやすいため、製品歩留まりを低下させる要因となっていた。また一方、出荷前検査で疵を見逃し、ユーザークレームを発生させることも皆無ではなかった。
【0004】
そこで、酸洗後の冷間圧延前の半製品段階で表面疵を検査し、疵を除去した後、冷間圧延により疵除去跡を消すことにより、製品での表面疵発生を防止する、以下のような発明が提案されている。(例えば、特許文献1〜5参照)
【0005】
特許文献1(特開昭61−219403号公報)に提案の発明は、熱延鋼帯の連続酸洗ライン出側で酸洗処理後の鋼帯の表裏面の傷の位置および大きさを検出し、その検出疵情報に基づいて冷間圧延前にその鋼帯の表面疵を砥粒入りブラシロールを用いて研削加工し、疵を除去する方法である。この方法による疵除去では、圧延後の鋼帯の平坦度の悪化を防止するため鋼帯の全幅方向に均一に加工することが好ましいとされている(特許文献1の第2頁右下段第17〜19行)。また、この発明の方法によれば、圧延母材の疵を除去することにより、後工程での品質の確保を図ることができ、連続ラインを停止または減速させずに疵除去ができるとされている(特許文献1の第3頁左上段第17〜20行)。しかしながら、この発明の方法では、前述の効果が期待されるものの、砥粒入りブラシロールによる板全面加工では、疵除去深さが制限され、深さ数十μm〜百μm程度に達する深い表面疵を除去することは困難である。また、除去深さを大きくするために砥粒入りブラシロールの動力を大きくすると、加工抵抗が増加する結果、鋼板が破断し、連続圧延ができなくなる問題が懸念される。また、疵の幅が鋼板幅に比して狭くても、鋼板全幅を加工するので、疵部以外の鋼板正常部まで必要以上に除去され、歩留が低下する問題も懸念される。
【0006】
特許文献2(特開2001−191206号公報)には、上記特許文献1の問題を改善する発明の提案がなされている。その発明は、鋼板の表面疵を疵検査装置により検知し、疵部のみを切削加工により除去し、圧延により加工痕を消去する鋼板の表面疵除去方法というものである。この方法によれば、検知した疵部のみを、研削加工ではなく、超音波切削ないしフライス加工などの切削加工で切削除去することにより、鋼板を破断させることなく、深さ200μm以上の切削深さを確保して疵を除去することが可能とされている。
【0007】
一方、特許文献3(特開2001−191106号公報)には、鋼帯の表面及び/又は裏面に形成された疵を研削する研削手段、該研削手段を鋼帯に対して離接する離接手段、前記疵の位置あるいはさらに深さを検知する疵検知手段、前記疵をトラッキングするトラッキング手段、及び前記疵検知手段、トラッキング手段からの疵位置信号あるいはさらに深さ信号に基づいて前記離接手段の作動を制御する制御手段を設置した冷間圧延設備が提案されている。そして、この提案の発明によれば、疵検知手段により疵の位置あるいはさらに深さが検知され、トラッキング手段により疵がトラッキングされ、制御手段により、疵検知手段からの疵位置信号あるいはさらに深さ信号に基づいて、研削手段を鋼帯に対して接離する接離手段を制御するので、研削手段の研削タイミングを疵の位置あるいはさらに深さに合わせ、鋼帯に対する板厚方向の位置又は押圧力を調整する。このため、熱間圧延中又は冷間圧延中に突発的に形成される、鋼帯の表面及び/又は裏面にところどころに点在して種々の深さに形成された疵を、確実、適切に除去することができる、という効果があるとされている。
【0008】
【特許文献1】
特開昭61−219403号公報(第1−2頁、手続補正書の第1図、第2図)
【特許文献2】
特開2001−191206号公報(第1頁、図3、図7)
【特許文献3】
特開2001−191106号公報(特許請求の範囲、段落[0015]−[0032]、[0047]、図1、図2)
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述した特許文献1乃至3に提案の発明は、酸洗後の鋼帯を表面疵検出装置に通して表面疵を検出するとともに、その表面疵を研削あるいは切削等の加工により除去した後に冷間圧延を施すものであって、表面疵の除去とともに、冷間圧延によって研削あるいは切削等の加工痕をも消去し得る利点を有する。しかし、近年、上述の如き工程を経て製造した鋼板に、図3に示すような淡い筋状の白色模様の表面疵11が発生する場合があることが判った。
【0010】
本発明は、上記の問題点を解消するためになしたものであって、その目的は、従来より知られている表面疵の低減はもとより白色模様の表面疵の発生を防止した鋼板の表面疵除去方法を提供するものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、本発明(請求項1)に係る鋼板の表面疵除去方法は、酸洗後の鋼板を、通板長さをトラッキングしながら鋼板表面に残存する表面疵を疵検査装置により検出し、検出した疵のコイル長手方向及び幅方向の位置情報を疵除去装置に受け渡し、疵除去装置が受け取った疵の位置情報とトラッキング情報に基づいて、コイル表面の疵を含む一部領域を除去した後、鋼板を冷間圧延する鋼板の表面疵除去方法において、前記冷間圧延を、下記(1)式を満たす条件で冷間圧延するものである。
D/(To−T)≦0.07 −−−−−−−−(1)
ただし、D:疵除去深さ(mm)、To:酸洗後の鋼板厚み(mm)、T:冷間圧延後の鋼板厚み(mm)
【0012】
本発明者等は、この新たな白色模様の表面疵は、従来の表面疵を研削あるいは切削等して除去した裏面に発生していること、及び、この白色模様の表面疵の発生には疵除去深さや冷間圧延の圧下率が影響していることを見出し、本発明を完成したものである。
【0013】
そして、その後に更なる実験を行った。すなわち、板厚To=2.6mmの鋼板を用い、その表面に疵除去深さD=0.12mmと0.08mmを加工して供試材とし、その供試材に対して圧下率[(To−T)/To]23%、41%、54%、67%、73%の各圧下率の冷間圧延を行い、白色模様の表面疵の発生の有無を調査した。その結果を図1に示す。
【0014】
図1から明らかなように、上記(1)式[D/(To−T)≦0.07]を満たすものであれば白色模様の表面疵が発生しないことがわかる。その理由は、推測ではあるが、疵除去深さDが深い場合に、その深さに比して冷間圧延での圧下率が小さい[肉厚減少量(To−T)が少ない]と、疵を除去した部位の裏面で圧延ロールの密着性が悪化し、その結果、冷間圧延後の裏面の肌が荒れ、白色模様の表面疵となって現れるものと思われる。これにより、実操業において、白色模様の表面疵を防止するためには、予め判明している製品板厚Tと表面疵の深さに対する疵除去深さDとから前記(1)式を満たすように冷間圧延前の板厚Toを定めることで、従来より知られている表面疵はもとより白色模様の表面疵を防止することができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図2は、本発明に係る鋼板の表面疵除去方法を適用するための表面疵除去装置の概要図である。本例の表面疵除去装置は、ペイオフリール1、酸洗入側ルーパ2、酸洗ライン3、酸洗出側ルーパ4、疵検査装置5、疵除去装置6、冷延入側ルーパ7、冷間圧延機8、テンションリール9をこの順に備えて構成されている。
【0016】
ペイオフリ−ル1から巻き戻されて搬送されてくる鋼板Sは、酸洗入側ルーパ2に所定量蓄積された後、酸洗ライン3により酸洗され、酸洗出側ルーパ4に所定量蓄積される。次いで、酸洗出側ルーパ4を経た後は、疵検査装置5により表面疵の検査を受け、表面疵が存在する場合には疵除去装置6により表面疵が除去され、冷延入側ルーパ7に所定量蓄積される。そして更に、冷延入側ルーパ7を経た後は、冷間圧延機8により冷間圧延が施され、テンションリール9に巻き取られる。
【0017】
また、上記表面疵除去装置は、制御装置10が設けられ、その制御装置10には、疵検査装置5、疵除去装置6がそれぞれ接続されるとともに、酸洗後の鋼板Sの通板長さを測定するトラッキング装置(図示せず)が接続されている。また、操業に際しては、白色模様の表面疵を防止するための、(1)式[D/(To−T)≦0.07]を満たす製品板厚T、疵除去深さD及び冷間圧延前の板厚Toなどの必要な値が設定される。そして、操業中にあっては、疵検査装置5により鋼板Sの表面に表面疵が検出された場合には、その表面疵の鋼板Sの長手方向及び幅方向の位置情報を疵除去装置6に受け渡し、疵除去装置6ではその受け取った疵の位置情報とトラッキング情報に基づいて、鋼板S表面の表面疵を含む一部領域を前記疵除去深さDだけ除去する。これにより、鋼板Sに存在する従来より知られている表面疵はもとよりその表面疵を除去した切削などの加工痕に起因する白色模様の表面疵を防止することができる。
【0018】
なお、上記表面疵除去装置の疵検査装置5は、冷間圧延後に疵として残存する有害な表面疵を、酸洗段階で見逃しなく確実に検出する必要がある。このため、CCDカメラと高速画像解析装置を組合せた従来の疵検査装置では、疵の検出精度が十分でなく、見逃しを無くそうと判定基準を厳しくすると、本来除去する必要のない表面の模様まで除去すべき疵と判定してしまうため、疵除去加工の負荷が増大し、一定の通板速度での疵除去が間に合わなくなる問題が懸念される。そこで、特に限定するものではないが、上記疵検査装置5としては、コイルの幅方向及び長手方向の分解能が1000μmより細かい、高解像度の可視光CCDカメラと、前記CCDカメラの出力に基づいてオンラインで疵を検出するための画像解析装置とを有し、更に、酸洗通板速度で検査面全体について、高速度に疵の一次判定を行う一次判定装置と、一次判定装置が除去すべき疵の疑いがあると判断した部位の画像データについて疵除去を実施するかどうかを最終判定する高精度な二次判定装置とを有する疵検査装置が好ましく、この疵検査装置によれば、全体として高速且つ高精度な疵判定を行うことができる。
【0019】
また、上記疵検出装置の場合、省力化の観点からは、一次判定、二次判定ともに完全な自動判定とすることが望ましいが、一次判定のみ完全な自動判定とし、二次判定にオペレータが介入することも可能である。この一次判定、二次判定に係る疵検査方式は、本発明者等が調査研究する過程で見出したもので、次の如き考え方に基づく。すなわち、熱間圧延鋼板を酸洗した後に異物が残存する表面疵には、色の濃い(明度が低い)酸化スケールや鋳型フラックスを伴う表面疵と、色が薄いアルミナ等の非金属介在物しか存在しない表面疵とがある。前者は、鋳造段階で生じた鋳型フラックスの噛み込み疵や表面割れ、鋳片溶削手入(スカーフ)により生じた凹凸、加熱炉内での酸化、熱間圧延中に生じた疵等様々な要因があるが、疵部の色が濃い上、疵の幅も広い(1000μm以上)ことが多いので、疵検出装置で容易に検出することができる。一方後者は、主に鋳型内で浮上しきれずに鋳片に捕捉された気泡の表面に吸着していたアルミナ等の非金属介在物が圧延によって表面に露出したことに起因する疵と考えられるが、異物の色が薄い上に疵の幅が狭い(1000μm以下)ことが多く、疵検出装置で見逃しが生じやすい。
【0020】
後者のような見逃しやすい疵を精度良く検出するためには、鋳片段階ではほぼ球形であったという形状の特徴にもとづいて疵を判定することが望ましい。すなわち、鋳片段階で幅と長さが等しかった気泡は熱間圧延時に幅は殆ど変化せず長さのみ延伸されるが、その延伸率は圧延で板厚が減少した比率によって定まる。したがって熱間圧延後の疵の縦横比がこの延伸率に等しい表面疵は鋳片の気泡に起因する疵である可能性が高い。
【0021】
このような考え方に基づき、一次判定で検出された疵候補の色が濃く幅が広い場合は直ちに除去すべき疵であると判断するが、そうでない場合には更に以下のような二次判定を行うことができる。すなわち、酸洗後の疵の幅:W(mm)、酸洗後の疵の長さ:L(mm)、熱間圧延前の鋳片厚み:Tc(mm)、酸洗後の鋼板厚み:To(mm)とした場合に、この疵の鋳片段階での縦横比:X(−)は下記(2)式で推定される。
X=(L/W)×(To/Tc) −−−−−−−−(2)
この疵が鋳片段階で、球形の気泡であるためには、Xが1.0に近い値となる必要があるので、Xが下記(3)式を満たす場合に除去すべき疵であると判断することができる。
0.7<X<1.5 −−−−−−−−(3)
【0022】
なお、上記の疵検査装置の外に、漏洩磁気探傷装置、高周波磁気探傷装置、レーザー光を照射するカメラ方式、超音波を用いた検査方式などを採用することもできる。
【0023】
また、上記表面疵除去装置の疵除去装置6も、特に限定するものではないが、フライス式、エンドミル式の切削加工や、回転円盤状の砥石やベルトによるグラインダー研削加工、レーザー加工などの加工手段を用いることができる。また、上記表面疵除去装置における疵除去装置6の設置についても、特に限定するものではないが、コイルの片面について複数の疵除去装置を配置し、コイル長手方向の位置がほぼ同一である複数の表面疵を除去できるようにすることも望ましい実施形態である。また、比較的幅が広くて深さが浅い疵から、幅が狭くて深い疵まで、複数の疵除去装置を配置して疵形態により使い分けることが望ましい。
【0024】
また、上記表面疵除去装置は、酸洗装置3から冷間圧延8までを連続的に通板する場合を例に説明したが、途中でコイルに巻き取ってもよい。ただし、連続的に通板した場合には、酸洗ライン3と疵除去装置6の間に鋼板Sを蓄積可能な酸洗出側ルーパ4を、及び疵除去装置6と冷間圧延機8との間に鋼板Sを蓄積可能な冷延入側ルーパ7を配置することが望ましい。このような配置により、疵検査装置5が検出した疵を除去する際には、疵除去装置6における通板速度を一時的に酸洗ライン3の出側での通板速度や冷間圧延機8の入側での通板速度より遅い速度に減速しても、酸洗ライン3の酸洗出側ルーパ4では鋼板Sを蓄積し、冷間圧延機8の冷延入側ルーパ7では蓄積していた鋼板Sを払い出すことで、全体の通板速度をそのまま維持して疵除去をすることができる。
【0025】
【実施例】
(実施例1)
C:0.002質量%、Ti:0.05質量%を含む極低炭素鋼を熱間圧延しコイルに巻き取った後、図2に示す表面疵除去装置を用いて、表裏面の疵を除去した。この時の酸洗後の鋼板厚みToは3.0mmとした。また、疵検査装置5には、分解能300μmの高解像度の可視光CCDカメラを用い、幅3mm、長さ30mm分の画像ウインドウに対する二次元フィルターで表面疵の一次判定を行った。一次判定で表面疵が有ると判断された部位の内、疵の幅が1mm以上で且つ疵部の色が濃い部位は直ちに画像をモニターに出力したが、疵の幅が1mm未満であるか疵部の色が薄い部位については、周辺部を含めたより広範囲の画像データから、鋳片段階での疵の縦横比Xを(2)式によって推定計算し、Xが(3)式を満たすかどうかを判定し、(3)式を満たした疵画像のみをモニターに出力した。モニターに画像を表示した疵は、最終的にはオペレータが疵除去を行うかどうかを判断した。疵除去をすることになった表面疵は、表面、裏面ともに各2台のグラインダーを設置した疵除去装置5により、深さD:50μmの研削加工を行って除去した。疵除去後の鋼板はコイルに巻き取ることなくタンデム式の冷間圧延機8に直送し、厚みT:0.7mmまで圧延後、コイルに巻き取った。巻き取ったコイルは、図示しない焼鈍設備と溶融亜鉛めっき装置により、厚み約20μmの合金亜鉛めっきを施し、表面疵について出荷検査を行った。
【0026】
上記の検査の結果、比較のために行った、疵除去を行わない従来のTi添加極低炭素鋼の合金亜鉛めっき鋼板製造プロセスでは、異物に起因する疵が、鋼板1000m当たり約1個発生していたのに対し、本発明の疵除去方法を用いた場合は1000m当たり0.05個となり、異物に起因する疵発生をほぼ完全に防止できた。この時、(1)式のD/(To−T)=0.05/2.3=0.022となり、疵除去部裏面の白色模様発生は認められなかった。
【0027】
なお、上記実施例においては、疵除去深さDを50μmとしたが、上記(1)式[D/(To−T)≦0.07]を満たす疵除去深さDをもって疵除去することは可能で、更に疵除去部裏面の白色模様発生を防止しつつ表面疵の除去量の向上が期待されるものの、研削加工に時間を要するなどの不具合も懸念され、研削加工や切削加工の能力とのバランスで、且つ(1)式を満たす範囲で疵除去深さを決定することが望ましい。また、上記実施例のように、最終製品厚み(T=0.7mm)が決まっている鋼板で、疵除去のために冷間圧延での圧下率を過大に設定すると、冷間圧延の負荷が増大し、鋼板の製造コストが上昇するのでこの点も考慮する必要がある。
【0028】
[実施例2]
C:0.05質量%含む鋼を、厚みTo=3.2mmに熱間圧延した後、塩酸でスケールを除去しコイルに巻き取った。このコイルを、鋼板両面の疵を検査する疵検査装置6と、各面の疵を同時に2本研削できる疵除去装置5とを備えた冷間圧延装置を用いて、最終厚みT=2.8mmまで圧延した。研削深さDを30μmとした比較例{(1)式のD/(To−T)=0.075}では、疵除去を行わない場合に比して、異物に起因する疵発生頻度が18%に低下したが、疵除去部の裏面には白色模様が発生したため、製品歩留は改善できなかった。一方、研削深さDを25μmに抑制した本件発明{(1)式のD/(To−T)=0.063}では、異物に起因する疵発生頻度は疵除去を行わない場合の25%に低減するにとどまったが、白色模様の発生が認められなかったので、製品歩留が改善できた。
【0029】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係る鋼板の表面疵除去方法によれば、従来より知られている表面疵を研削や切削などの加工手段で除去しても、その除去した部分の裏面に発生する白色模様の表面疵を生じることなく、冷間圧延して鋼板を製造でき、従来より知られている表面疵はもとより白色模様の表面疵を防止した冷延鋼板が製造できる
【図面の簡単な説明】
【図1】縦軸に疵除去深さと肉厚減少量との比率、横軸に冷間圧延の圧下率を取った場合の、疵除去深さと肉厚減少量との比率による白色模様の表面疵の発生の有無を示すグラフ図である。
【図2】本発明に係る鋼板の表面疵除去方法を適用するための表面疵除去装置の概要図である。
【図3】表面疵を除去した裏面に生じる白色模様の表面疵を示す説明図である。
【符号の説明】
1:ペイオフリール 2:酸洗入側ルーパ 3:酸洗ライン
4:酸洗出側ルーパ 5:疵検査装置 6:疵除去装置
7:冷延入側ルーパ 8:冷間圧延機 9:テンションリール
10:制御装置 11:白色模様疵 S:鋼板
【発明の属する技術分野】
本発明は、連続鋳造により製造されたスラブ、又はストリップ鋳造により溶鋼から直接製造された鋼板を、熱間圧延し、鋼板表面に生じた酸化スケールを酸洗により除去した後、除去しきれずに残存する鋼板の表面疵を除去する表面疵除去方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、熱間圧延工程を経て製造された鋼板表面には酸化スケールが生じており、塩酸等により酸洗除去されているが、酸洗除去後の鋼板表面に表面疵が残存することがある。このような表面疵の原因としては、鋳造段階から存在したスラグやアルミナ等の非金属介在物や、酸洗工程で除去しきれなかった酸化スケール等の異物が上げられる。このような異物を伴う表面疵が除去されないまま冷間圧延工程に持ち込まれると、冷間圧延時に鋼板表面が異物によって荒らされる結果、冷間圧延後の製品にも許容できない表面疵が現れ、製品の等級低下や、歩留まり低下を招いていた。
【0003】
特に、Ti添加極低炭素鋼はFeO等の異物を伴う疵が残留しやすい問題がある。更に、冷間圧延後に亜鉛めっき(又は合金化亜鉛めっき)を施す鋼板では、めっき前の段階では殆ど目立たない深さの10μm以下の浅い線状疵であっても、亜鉛めっき厚みのむらや合金むらが生じてめっき後に疵が顕在化しやすいため、製品歩留まりを低下させる要因となっていた。また一方、出荷前検査で疵を見逃し、ユーザークレームを発生させることも皆無ではなかった。
【0004】
そこで、酸洗後の冷間圧延前の半製品段階で表面疵を検査し、疵を除去した後、冷間圧延により疵除去跡を消すことにより、製品での表面疵発生を防止する、以下のような発明が提案されている。(例えば、特許文献1〜5参照)
【0005】
特許文献1(特開昭61−219403号公報)に提案の発明は、熱延鋼帯の連続酸洗ライン出側で酸洗処理後の鋼帯の表裏面の傷の位置および大きさを検出し、その検出疵情報に基づいて冷間圧延前にその鋼帯の表面疵を砥粒入りブラシロールを用いて研削加工し、疵を除去する方法である。この方法による疵除去では、圧延後の鋼帯の平坦度の悪化を防止するため鋼帯の全幅方向に均一に加工することが好ましいとされている(特許文献1の第2頁右下段第17〜19行)。また、この発明の方法によれば、圧延母材の疵を除去することにより、後工程での品質の確保を図ることができ、連続ラインを停止または減速させずに疵除去ができるとされている(特許文献1の第3頁左上段第17〜20行)。しかしながら、この発明の方法では、前述の効果が期待されるものの、砥粒入りブラシロールによる板全面加工では、疵除去深さが制限され、深さ数十μm〜百μm程度に達する深い表面疵を除去することは困難である。また、除去深さを大きくするために砥粒入りブラシロールの動力を大きくすると、加工抵抗が増加する結果、鋼板が破断し、連続圧延ができなくなる問題が懸念される。また、疵の幅が鋼板幅に比して狭くても、鋼板全幅を加工するので、疵部以外の鋼板正常部まで必要以上に除去され、歩留が低下する問題も懸念される。
【0006】
特許文献2(特開2001−191206号公報)には、上記特許文献1の問題を改善する発明の提案がなされている。その発明は、鋼板の表面疵を疵検査装置により検知し、疵部のみを切削加工により除去し、圧延により加工痕を消去する鋼板の表面疵除去方法というものである。この方法によれば、検知した疵部のみを、研削加工ではなく、超音波切削ないしフライス加工などの切削加工で切削除去することにより、鋼板を破断させることなく、深さ200μm以上の切削深さを確保して疵を除去することが可能とされている。
【0007】
一方、特許文献3(特開2001−191106号公報)には、鋼帯の表面及び/又は裏面に形成された疵を研削する研削手段、該研削手段を鋼帯に対して離接する離接手段、前記疵の位置あるいはさらに深さを検知する疵検知手段、前記疵をトラッキングするトラッキング手段、及び前記疵検知手段、トラッキング手段からの疵位置信号あるいはさらに深さ信号に基づいて前記離接手段の作動を制御する制御手段を設置した冷間圧延設備が提案されている。そして、この提案の発明によれば、疵検知手段により疵の位置あるいはさらに深さが検知され、トラッキング手段により疵がトラッキングされ、制御手段により、疵検知手段からの疵位置信号あるいはさらに深さ信号に基づいて、研削手段を鋼帯に対して接離する接離手段を制御するので、研削手段の研削タイミングを疵の位置あるいはさらに深さに合わせ、鋼帯に対する板厚方向の位置又は押圧力を調整する。このため、熱間圧延中又は冷間圧延中に突発的に形成される、鋼帯の表面及び/又は裏面にところどころに点在して種々の深さに形成された疵を、確実、適切に除去することができる、という効果があるとされている。
【0008】
【特許文献1】
特開昭61−219403号公報(第1−2頁、手続補正書の第1図、第2図)
【特許文献2】
特開2001−191206号公報(第1頁、図3、図7)
【特許文献3】
特開2001−191106号公報(特許請求の範囲、段落[0015]−[0032]、[0047]、図1、図2)
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述した特許文献1乃至3に提案の発明は、酸洗後の鋼帯を表面疵検出装置に通して表面疵を検出するとともに、その表面疵を研削あるいは切削等の加工により除去した後に冷間圧延を施すものであって、表面疵の除去とともに、冷間圧延によって研削あるいは切削等の加工痕をも消去し得る利点を有する。しかし、近年、上述の如き工程を経て製造した鋼板に、図3に示すような淡い筋状の白色模様の表面疵11が発生する場合があることが判った。
【0010】
本発明は、上記の問題点を解消するためになしたものであって、その目的は、従来より知られている表面疵の低減はもとより白色模様の表面疵の発生を防止した鋼板の表面疵除去方法を提供するものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、本発明(請求項1)に係る鋼板の表面疵除去方法は、酸洗後の鋼板を、通板長さをトラッキングしながら鋼板表面に残存する表面疵を疵検査装置により検出し、検出した疵のコイル長手方向及び幅方向の位置情報を疵除去装置に受け渡し、疵除去装置が受け取った疵の位置情報とトラッキング情報に基づいて、コイル表面の疵を含む一部領域を除去した後、鋼板を冷間圧延する鋼板の表面疵除去方法において、前記冷間圧延を、下記(1)式を満たす条件で冷間圧延するものである。
D/(To−T)≦0.07 −−−−−−−−(1)
ただし、D:疵除去深さ(mm)、To:酸洗後の鋼板厚み(mm)、T:冷間圧延後の鋼板厚み(mm)
【0012】
本発明者等は、この新たな白色模様の表面疵は、従来の表面疵を研削あるいは切削等して除去した裏面に発生していること、及び、この白色模様の表面疵の発生には疵除去深さや冷間圧延の圧下率が影響していることを見出し、本発明を完成したものである。
【0013】
そして、その後に更なる実験を行った。すなわち、板厚To=2.6mmの鋼板を用い、その表面に疵除去深さD=0.12mmと0.08mmを加工して供試材とし、その供試材に対して圧下率[(To−T)/To]23%、41%、54%、67%、73%の各圧下率の冷間圧延を行い、白色模様の表面疵の発生の有無を調査した。その結果を図1に示す。
【0014】
図1から明らかなように、上記(1)式[D/(To−T)≦0.07]を満たすものであれば白色模様の表面疵が発生しないことがわかる。その理由は、推測ではあるが、疵除去深さDが深い場合に、その深さに比して冷間圧延での圧下率が小さい[肉厚減少量(To−T)が少ない]と、疵を除去した部位の裏面で圧延ロールの密着性が悪化し、その結果、冷間圧延後の裏面の肌が荒れ、白色模様の表面疵となって現れるものと思われる。これにより、実操業において、白色模様の表面疵を防止するためには、予め判明している製品板厚Tと表面疵の深さに対する疵除去深さDとから前記(1)式を満たすように冷間圧延前の板厚Toを定めることで、従来より知られている表面疵はもとより白色模様の表面疵を防止することができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図2は、本発明に係る鋼板の表面疵除去方法を適用するための表面疵除去装置の概要図である。本例の表面疵除去装置は、ペイオフリール1、酸洗入側ルーパ2、酸洗ライン3、酸洗出側ルーパ4、疵検査装置5、疵除去装置6、冷延入側ルーパ7、冷間圧延機8、テンションリール9をこの順に備えて構成されている。
【0016】
ペイオフリ−ル1から巻き戻されて搬送されてくる鋼板Sは、酸洗入側ルーパ2に所定量蓄積された後、酸洗ライン3により酸洗され、酸洗出側ルーパ4に所定量蓄積される。次いで、酸洗出側ルーパ4を経た後は、疵検査装置5により表面疵の検査を受け、表面疵が存在する場合には疵除去装置6により表面疵が除去され、冷延入側ルーパ7に所定量蓄積される。そして更に、冷延入側ルーパ7を経た後は、冷間圧延機8により冷間圧延が施され、テンションリール9に巻き取られる。
【0017】
また、上記表面疵除去装置は、制御装置10が設けられ、その制御装置10には、疵検査装置5、疵除去装置6がそれぞれ接続されるとともに、酸洗後の鋼板Sの通板長さを測定するトラッキング装置(図示せず)が接続されている。また、操業に際しては、白色模様の表面疵を防止するための、(1)式[D/(To−T)≦0.07]を満たす製品板厚T、疵除去深さD及び冷間圧延前の板厚Toなどの必要な値が設定される。そして、操業中にあっては、疵検査装置5により鋼板Sの表面に表面疵が検出された場合には、その表面疵の鋼板Sの長手方向及び幅方向の位置情報を疵除去装置6に受け渡し、疵除去装置6ではその受け取った疵の位置情報とトラッキング情報に基づいて、鋼板S表面の表面疵を含む一部領域を前記疵除去深さDだけ除去する。これにより、鋼板Sに存在する従来より知られている表面疵はもとよりその表面疵を除去した切削などの加工痕に起因する白色模様の表面疵を防止することができる。
【0018】
なお、上記表面疵除去装置の疵検査装置5は、冷間圧延後に疵として残存する有害な表面疵を、酸洗段階で見逃しなく確実に検出する必要がある。このため、CCDカメラと高速画像解析装置を組合せた従来の疵検査装置では、疵の検出精度が十分でなく、見逃しを無くそうと判定基準を厳しくすると、本来除去する必要のない表面の模様まで除去すべき疵と判定してしまうため、疵除去加工の負荷が増大し、一定の通板速度での疵除去が間に合わなくなる問題が懸念される。そこで、特に限定するものではないが、上記疵検査装置5としては、コイルの幅方向及び長手方向の分解能が1000μmより細かい、高解像度の可視光CCDカメラと、前記CCDカメラの出力に基づいてオンラインで疵を検出するための画像解析装置とを有し、更に、酸洗通板速度で検査面全体について、高速度に疵の一次判定を行う一次判定装置と、一次判定装置が除去すべき疵の疑いがあると判断した部位の画像データについて疵除去を実施するかどうかを最終判定する高精度な二次判定装置とを有する疵検査装置が好ましく、この疵検査装置によれば、全体として高速且つ高精度な疵判定を行うことができる。
【0019】
また、上記疵検出装置の場合、省力化の観点からは、一次判定、二次判定ともに完全な自動判定とすることが望ましいが、一次判定のみ完全な自動判定とし、二次判定にオペレータが介入することも可能である。この一次判定、二次判定に係る疵検査方式は、本発明者等が調査研究する過程で見出したもので、次の如き考え方に基づく。すなわち、熱間圧延鋼板を酸洗した後に異物が残存する表面疵には、色の濃い(明度が低い)酸化スケールや鋳型フラックスを伴う表面疵と、色が薄いアルミナ等の非金属介在物しか存在しない表面疵とがある。前者は、鋳造段階で生じた鋳型フラックスの噛み込み疵や表面割れ、鋳片溶削手入(スカーフ)により生じた凹凸、加熱炉内での酸化、熱間圧延中に生じた疵等様々な要因があるが、疵部の色が濃い上、疵の幅も広い(1000μm以上)ことが多いので、疵検出装置で容易に検出することができる。一方後者は、主に鋳型内で浮上しきれずに鋳片に捕捉された気泡の表面に吸着していたアルミナ等の非金属介在物が圧延によって表面に露出したことに起因する疵と考えられるが、異物の色が薄い上に疵の幅が狭い(1000μm以下)ことが多く、疵検出装置で見逃しが生じやすい。
【0020】
後者のような見逃しやすい疵を精度良く検出するためには、鋳片段階ではほぼ球形であったという形状の特徴にもとづいて疵を判定することが望ましい。すなわち、鋳片段階で幅と長さが等しかった気泡は熱間圧延時に幅は殆ど変化せず長さのみ延伸されるが、その延伸率は圧延で板厚が減少した比率によって定まる。したがって熱間圧延後の疵の縦横比がこの延伸率に等しい表面疵は鋳片の気泡に起因する疵である可能性が高い。
【0021】
このような考え方に基づき、一次判定で検出された疵候補の色が濃く幅が広い場合は直ちに除去すべき疵であると判断するが、そうでない場合には更に以下のような二次判定を行うことができる。すなわち、酸洗後の疵の幅:W(mm)、酸洗後の疵の長さ:L(mm)、熱間圧延前の鋳片厚み:Tc(mm)、酸洗後の鋼板厚み:To(mm)とした場合に、この疵の鋳片段階での縦横比:X(−)は下記(2)式で推定される。
X=(L/W)×(To/Tc) −−−−−−−−(2)
この疵が鋳片段階で、球形の気泡であるためには、Xが1.0に近い値となる必要があるので、Xが下記(3)式を満たす場合に除去すべき疵であると判断することができる。
0.7<X<1.5 −−−−−−−−(3)
【0022】
なお、上記の疵検査装置の外に、漏洩磁気探傷装置、高周波磁気探傷装置、レーザー光を照射するカメラ方式、超音波を用いた検査方式などを採用することもできる。
【0023】
また、上記表面疵除去装置の疵除去装置6も、特に限定するものではないが、フライス式、エンドミル式の切削加工や、回転円盤状の砥石やベルトによるグラインダー研削加工、レーザー加工などの加工手段を用いることができる。また、上記表面疵除去装置における疵除去装置6の設置についても、特に限定するものではないが、コイルの片面について複数の疵除去装置を配置し、コイル長手方向の位置がほぼ同一である複数の表面疵を除去できるようにすることも望ましい実施形態である。また、比較的幅が広くて深さが浅い疵から、幅が狭くて深い疵まで、複数の疵除去装置を配置して疵形態により使い分けることが望ましい。
【0024】
また、上記表面疵除去装置は、酸洗装置3から冷間圧延8までを連続的に通板する場合を例に説明したが、途中でコイルに巻き取ってもよい。ただし、連続的に通板した場合には、酸洗ライン3と疵除去装置6の間に鋼板Sを蓄積可能な酸洗出側ルーパ4を、及び疵除去装置6と冷間圧延機8との間に鋼板Sを蓄積可能な冷延入側ルーパ7を配置することが望ましい。このような配置により、疵検査装置5が検出した疵を除去する際には、疵除去装置6における通板速度を一時的に酸洗ライン3の出側での通板速度や冷間圧延機8の入側での通板速度より遅い速度に減速しても、酸洗ライン3の酸洗出側ルーパ4では鋼板Sを蓄積し、冷間圧延機8の冷延入側ルーパ7では蓄積していた鋼板Sを払い出すことで、全体の通板速度をそのまま維持して疵除去をすることができる。
【0025】
【実施例】
(実施例1)
C:0.002質量%、Ti:0.05質量%を含む極低炭素鋼を熱間圧延しコイルに巻き取った後、図2に示す表面疵除去装置を用いて、表裏面の疵を除去した。この時の酸洗後の鋼板厚みToは3.0mmとした。また、疵検査装置5には、分解能300μmの高解像度の可視光CCDカメラを用い、幅3mm、長さ30mm分の画像ウインドウに対する二次元フィルターで表面疵の一次判定を行った。一次判定で表面疵が有ると判断された部位の内、疵の幅が1mm以上で且つ疵部の色が濃い部位は直ちに画像をモニターに出力したが、疵の幅が1mm未満であるか疵部の色が薄い部位については、周辺部を含めたより広範囲の画像データから、鋳片段階での疵の縦横比Xを(2)式によって推定計算し、Xが(3)式を満たすかどうかを判定し、(3)式を満たした疵画像のみをモニターに出力した。モニターに画像を表示した疵は、最終的にはオペレータが疵除去を行うかどうかを判断した。疵除去をすることになった表面疵は、表面、裏面ともに各2台のグラインダーを設置した疵除去装置5により、深さD:50μmの研削加工を行って除去した。疵除去後の鋼板はコイルに巻き取ることなくタンデム式の冷間圧延機8に直送し、厚みT:0.7mmまで圧延後、コイルに巻き取った。巻き取ったコイルは、図示しない焼鈍設備と溶融亜鉛めっき装置により、厚み約20μmの合金亜鉛めっきを施し、表面疵について出荷検査を行った。
【0026】
上記の検査の結果、比較のために行った、疵除去を行わない従来のTi添加極低炭素鋼の合金亜鉛めっき鋼板製造プロセスでは、異物に起因する疵が、鋼板1000m当たり約1個発生していたのに対し、本発明の疵除去方法を用いた場合は1000m当たり0.05個となり、異物に起因する疵発生をほぼ完全に防止できた。この時、(1)式のD/(To−T)=0.05/2.3=0.022となり、疵除去部裏面の白色模様発生は認められなかった。
【0027】
なお、上記実施例においては、疵除去深さDを50μmとしたが、上記(1)式[D/(To−T)≦0.07]を満たす疵除去深さDをもって疵除去することは可能で、更に疵除去部裏面の白色模様発生を防止しつつ表面疵の除去量の向上が期待されるものの、研削加工に時間を要するなどの不具合も懸念され、研削加工や切削加工の能力とのバランスで、且つ(1)式を満たす範囲で疵除去深さを決定することが望ましい。また、上記実施例のように、最終製品厚み(T=0.7mm)が決まっている鋼板で、疵除去のために冷間圧延での圧下率を過大に設定すると、冷間圧延の負荷が増大し、鋼板の製造コストが上昇するのでこの点も考慮する必要がある。
【0028】
[実施例2]
C:0.05質量%含む鋼を、厚みTo=3.2mmに熱間圧延した後、塩酸でスケールを除去しコイルに巻き取った。このコイルを、鋼板両面の疵を検査する疵検査装置6と、各面の疵を同時に2本研削できる疵除去装置5とを備えた冷間圧延装置を用いて、最終厚みT=2.8mmまで圧延した。研削深さDを30μmとした比較例{(1)式のD/(To−T)=0.075}では、疵除去を行わない場合に比して、異物に起因する疵発生頻度が18%に低下したが、疵除去部の裏面には白色模様が発生したため、製品歩留は改善できなかった。一方、研削深さDを25μmに抑制した本件発明{(1)式のD/(To−T)=0.063}では、異物に起因する疵発生頻度は疵除去を行わない場合の25%に低減するにとどまったが、白色模様の発生が認められなかったので、製品歩留が改善できた。
【0029】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係る鋼板の表面疵除去方法によれば、従来より知られている表面疵を研削や切削などの加工手段で除去しても、その除去した部分の裏面に発生する白色模様の表面疵を生じることなく、冷間圧延して鋼板を製造でき、従来より知られている表面疵はもとより白色模様の表面疵を防止した冷延鋼板が製造できる
【図面の簡単な説明】
【図1】縦軸に疵除去深さと肉厚減少量との比率、横軸に冷間圧延の圧下率を取った場合の、疵除去深さと肉厚減少量との比率による白色模様の表面疵の発生の有無を示すグラフ図である。
【図2】本発明に係る鋼板の表面疵除去方法を適用するための表面疵除去装置の概要図である。
【図3】表面疵を除去した裏面に生じる白色模様の表面疵を示す説明図である。
【符号の説明】
1:ペイオフリール 2:酸洗入側ルーパ 3:酸洗ライン
4:酸洗出側ルーパ 5:疵検査装置 6:疵除去装置
7:冷延入側ルーパ 8:冷間圧延機 9:テンションリール
10:制御装置 11:白色模様疵 S:鋼板
Claims (1)
- 酸洗後の鋼板を、通板長さをトラッキングしながら鋼板表面に残存する表面疵を疵検査装置により検出し、検出した疵のコイル長手方向及び幅方向の位置情報を疵除去装置に受け渡し、疵除去装置が受け取った疵の位置情報とトラッキング情報に基づいて、コイル表面の疵を含む一部領域を除去した後、鋼板を冷間圧延する鋼板の表面疵除去方法において、前記冷間圧延を、下記(1)式を満たす条件で冷間圧延することを特徴とする鋼板の表面疵除去方法。
D/(To−T)≦0.07 −−−−−−−−(1)
ただし、D:疵除去深さ(mm)、To:酸洗後の鋼板厚み(mm)、T:冷間圧延後の鋼板厚み(mm)
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JP2002330932A JP2004160511A (ja) | 2002-11-14 | 2002-11-14 | 鋼板の表面疵除去方法 |
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KR100957915B1 (ko) | 2008-06-24 | 2010-05-13 | 주식회사 포스코 | 스트립 표면 결함 제거 방법 및 시스템 |
JP7127408B2 (ja) | 2018-07-27 | 2022-08-30 | 日本製鉄株式会社 | 鋼材の圧延方法および圧延設備 |
-
2002
- 2002-11-14 JP JP2002330932A patent/JP2004160511A/ja active Pending
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