JP2004157247A - 液晶光学素子とその製造方法および光学装置 - Google Patents

液晶光学素子とその製造方法および光学装置 Download PDF

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Takashi Shibuya
崇 澁谷
Masako Nagashima
雅子 長島
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Asahi Glass Co Ltd
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Abstract

【課題】印加電圧を変化させることにより散乱が少ない状態のまま透過率を変化できる液晶光学素子を得て、光学装置の絞りとして用いる。
【解決手段】液晶光学素子として二色性色素と液晶と重合体とを含む液晶/重合体複合体を用い、電極への印加電圧を変化させることにより、透過率曲線10に沿って透過率が変化せしめられ、高透過率状態である透過率Tが45%以上、低透過率状態である透過率Tが40%以下となるようにし、かつ散乱透過率Tが20%以下で、高透過率状態と低透過率状態との間の領域T10で使用し、その際の透過率比KHLを1.2以上とする。
【選択図】図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電極間に印加する電圧によって光の透過率を制御できる液晶光学素子とその製造方法および液晶光学素子を用いた光学装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、車載用の撮影カメラ、写真撮影機能付き携帯電話などにCCD撮像素子が使用されている。CCD撮像素子の理想的な使用条件は、安定した照明状態下での撮影である。
【0003】
しかし、屋内、屋外(夜間、昼間)など様々な環境下で、CCD撮像素子を使用することが求められている。一般的なCCD撮像素子のダイナミックレンジ(S/N比)は40〜65dBである。
【0004】
しかしながら、明るい屋外環境から暗い室内環境までの、すべての使用に対応するためには、80〜100dBのダイナミックレンジが必要である。そのためそれぞれの環境下で、CCD撮像素子に適した光量になるように、入射する光量を制御しなければならない。
【0005】
そのために、多数の絞り板をモータによって駆動し、連続可変的な光量調整を行う機械的絞りが用いられている。しかし、機械式の絞りでは、駆動源とするモータや絞りユニットを設けなければならないので、空間的に一定の容積を必要とする。よって、光学装置を一定の大きさ以内に小型化することが難しい。また、高精度かつ高速度の光量調整には適していない。
【0006】
そのため、電気光学的に光透過率を制御できるエレクトロクロミック素子(ECD)を絞りとして用いる方法も提案されている(特許文献1)。しかし、ECDは、酸化還元反応による着色消色システムであるために、制御信号に対する光透過状態の応答が遅く、現在に至る迄、光量の高速調整用途では実用化されていない。
【0007】
また、光量を高速かつ精度よく調整できる液晶光学素子として、特許文献2のものが知られている。インデックスマッチング法と呼ばれる原理を用いるものである。すなわち、電極間に電圧が印加されない際には、光が液晶/重合体複合体層において散乱し、乳白色に見える。電極間に電圧が印加される際には、液晶が外部電界の方向に配列する。
【0008】
このとき、液晶の常光屈折率(N)と重合体の屈折率(N)とが一致することにより、光の散乱が少なくなるため、液晶光学素子が透明に見える。このインデックスマッチング法の液晶光学素子では、液晶/重合体複合体層における光の散乱によって調光機能を担うために、原理的に光量の調整用途に適していなかった。
【0009】
また、被写界深度を変化させずに入射光量を調整し、シャッター速度とシャッタータイミングを任意に設定する液晶フィルタも知られている(特許文献3)。
【0010】
また、機械絞り機構と電子物性型光量調整素子との組み合わせを用いる絞り装置(特許文献4)や、パターニングを施した電極によって透過光量を制御するカメラの絞りも知られている(特許文献5)。
【0011】
【特許文献1】
特開平5−249503号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】
特許第3134522号公報(特許請求の範囲)
【特許文献3】
特開平5−34763号公報(特許請求の範囲)
【特許文献4】
特開平6−130465号公報(特許請求の範囲)
【特許文献5】
特開平9−80581号公報(特許請求の範囲)
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前述の問題点を解決しようとするものであり、印加電圧を変化させることにより、透過率を高速・高精度で可変制御し、高速動作を行う光学装置に適した液晶光学素子を得ようとする。
【0013】
また、厚みが薄い素子構造の液晶光学素子を用いて、コンパクト・軽量である光学装置を得ようとするものである。
【0014】
また、製造が容易で、安定した生産を連続して行うことができる液晶光学素子の製造方法を得ようとするものである。
【0015】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明の態様1は、透明な一対の電極付き基板間に、二色性色素を含む液晶/重合体複合体層が挟持され、液晶/重合体複合体層の液晶の配向状態が電極間に印加される電圧によって変化せしめられてなる液晶光学素子において、誘電率異方性Δεが+1〜+50、かつ、屈折率異方性Δnが0.20以下の液晶が用いられ、いずれか一方の基板から他方の基板に光が通過する際の光の透過率Tと、いずれか一方の基板から他方の基板に光が通過する際の光の散乱透過率Tとが、JIS R3212の規定により測定されるものとし、下記(1)および(2)の関係を満足することを特徴とする液晶光学素子を提供する。
【0016】
(1)印加電圧VAPPLが0Vの場合の透過率TをT、最大の透過率Tに対応する印加電圧VAPPLをV(V>0V)とすると、T≧45%、40%≧T≧0%であり、かつ、透過率比KHL=T/T≧1.2である。
(2)散乱透過率Tが20%以下である。
【0017】
態様2は、透明な一対の電極付き基板間に、二色性色素を含む液晶/重合体複合体層が挟持され、液晶/重合体複合体層の液晶の配向状態が電極間に印加される電圧によって変化せしめられてなる液晶光学素子において、電極付き基板の液晶/樹脂複合体と接する面に垂直配向膜が備えられ、誘電率異方性Δεが−1〜―50、かつ、屈折率異方性Δnが0.20以下の液晶が用いられ、いずれか一方の基板から他方の基板に光が通過する際の光の透過率Tと、いずれか一方の基板から他方の基板に光が通過する際の光の散乱透過率Tとが、JIS R3212の規定により測定されるものとし、下記(3)および(4)の関係を満足することを特徴とする液晶光学素子を提供する。
【0018】
(3)印加電圧VAPPLが0Vの場合の透過率TをT、最小の透過率Tに対応する印加電圧VAPPLをV(V>0V)とすると、T≧45%、40%≧T≧0%であり、かつ、透過率比KHL=T/T≧1.2である。
(4)散乱透過率Tが20%以下である。
【0019】
態様3は、透過率比KHL≧2.0である態様1または2に記載の液晶光学素子を提供する。
【0020】
態様4は、屈折率異方性Δnが0.18以下である液晶が用いられた態様1、2または3に記載の液晶光学素子を提供する。
【0021】
態様5は、メソゲン構造を有する重合体が備えられた態様1、2、3または4に記載の液晶光学素子を提供する。
【0022】
態様6は、Vが20V以下である態様1、2、3、4または5に記載の液晶光学素子を提供する。
【0023】
態様7は、態様1〜6のいずれかに記載の液晶光学素子が、CMOS撮像素子またはCCD撮像素子に入射される光量の制御に用いられた光学装置を提供する。
【0024】
態様8は、透明な一対の電極付き基板間に、二色性色素と液晶と重合性化合物と重合開始剤を含む液晶混合物を挟持し、重合性化合物を重合し、液晶/重合体複合体層を形成し、液晶/重合体複合体層の液晶の配向状態を電極間に所定の電圧を印加することによって透過率の制御を行う液晶光学素子の製造方法において、誘電率異方性Δεが+1〜+50、かつ、屈折率異方性Δnが0.2以下の液晶を用い、重合性化合物は液晶と重合性化合物との合計質量Wに対して2〜50質量%とし、二色性色素は、基板に対して垂直配向または水平配向した際に、300〜900nmの波長域のなかで吸収性を示すものであり、二色性色素は前記合計質量Wに対して、0.1〜12質量%とし、重合性化合物を15〜70℃の温度条件で重合せしめて、液晶/重合体複合体を基板間に形成し、いずれか一方の基板から他方の基板に光が通過する際の光の透過率Tと、いずれか一方の基板から他方の基板に光が通過する際の光の散乱透過率Tとが、JIS R3212の規定により測定されるものとし、下記(1)および(2)の関係を満足するように液晶/重合体複合体を形成することを特徴とする液晶光学素子の製造方法を提供する。
【0025】
(1)印加電圧VAPPLが0Vの場合の透過率TをT、最大の透過率Tに対応する印加電圧VAPPLをV(V>0V)とすると、T≧45%、40%≧T≧0%であり、かつ、透過率比KHL=T/T≧1.2である。
(2)散乱透過率Tが20%以下である。
【0026】
態様9は、透明な一対の電極付き基板間に、二色性色素と液晶と重合性化合物と重合開始剤を含む液晶混合物を挟持し、重合性化合物を重合し、液晶/重合体複合体層を形成し、液晶/重合体複合体層の液晶の配向状態を電極間に所定の電圧を印加することによって透過率の制御を行う液晶光学素子の製造方法において、電極付き基板の液晶/重合体複合体と接する面に垂直配向処理を行い、誘電率異方性Δεが−1〜−50、かつ屈折率異方性Δnが0.2以下である液晶を用い、重合性化合物は液晶と重合性化合物との合計質量Wに対して2〜50質量%とし、二色性色素は、基板に対して垂直配向または水平配向した際に、300〜900nmの波長域のなかで吸収性を示すものであり、二色性色素は前記合計質量Wに対して0.1〜12質量%とし、重合性化合物を15〜70℃の温度条件で重合せしめて液晶/重合体複合体を基板間に形成し、いずれか一方の基板から他方の基板に光が通過する際の光の透過率Tと、いずれか一方の基板から他方の基板に光が通過する際の光の散乱透過率Tとを、JIS R3212の規定により測定するものとし、下記の(3)および(4)の関係を満足するように液晶/重合体複合体を形成することを特徴とする液晶光学素子の製造方法を提供する。
【0027】
(3)印加電圧VAPPLが0Vの場合の透過率TをT、最小の透過率Tに対応する印加電圧VAPPLをV(V>0V)とすると、T≧45%、40%≧T≧0%であり、かつ、透過率比KHL=T/T≧1.2を満足する。
(4)散乱透過率Tが20%以下である。
【0028】
【発明の実施の形態】
本発明における液晶/重合体複合体層とは、二色性色素、液晶、重合体とを含む複合体が一対の電極付き基板間に挟持されたものである。この液晶/重合体複合体は、二色性色素と液晶と重合性化合物とを含む液晶性混合物を、それが液晶相を示す温度域で重合性化合物を重合させ、液晶/重合体複合体を形成したものである。
【0029】
二色性色素とは、分子の長軸方向と短軸方向とで光吸収性に大きな差がある色素である。分子の長軸方向に振動する光をより大きく吸収するポジ型(p型)色素や、分子の短軸方向に振動する光をより大きく吸収するネガ型(n型)色素がある。
【0030】
本発明において、二色性色素によって光が吸収また散乱されるので、素子全体としての光学特性、透過率に直接的に影響を与える。二色性色素の特性、二色性色素の液晶など他材料への相溶性、含有量により、透過率−印加電圧特性の特性(VT特性)を調整することができる。全般に、二色性色素を多く使用すれば、素子の透過率が低くなる傾向を示す。
【0031】
また、本発明の液晶光学素子においては、電圧の印加状態により液晶の配列状態を変化させ、液晶光学素子全体としての光の透過率を制御できる。基板に対して水平配向とすることにより二色性色素の吸光が大きくなり、その結果光の透過率を低くすることができる。また液晶を基板に対して垂直配向とすることにより、二色性色素の吸光が小さくなり、光の透過率を高くすることができる。
【0032】
本発明における二色性色素としては、基板に対して垂直配向または水平配向した際に、300〜900nmの波長域のなかで吸収性を示すものを用いる。可視光領域の光を吸収するので、可視光を利用する光学装置の素子として使用することができる。
【0033】
本発明に用いる二色性色素としては、特に限定されず種々の二色性色素が使用できる。なかでも、耐光性、耐久性のある二色性色素、すなわちアントラキノン系化合物、アゾ系化合物などが好ましく用いられる。
【0034】
二色性色素の含有量は、液晶と重合体の合計質量に対して、0.1〜12%が好ましく、0.5〜10%がより好ましい。また、1種の二色性色素でも、2種以上の二色性色素を用いてもよい。2種以上の二色性色素を混合することにより、要求される種々の色味が発現出来たり、1種の二色性色素を使用した場合とは異なるVT特性の調整が出来るので、好ましい。
【0035】
本発明における液晶は、1種または2種以上の液晶化合物からなる組成物である。この液晶化合物は、誘電率異方性(Δε)(Δε=(ε‖)−(ε⊥)、ε‖:分子軸(長軸)方向の誘電率、ε⊥:分子軸に垂直方向の誘電率)が負の化合物、正の化合物または誘電率異方性がない化合物でもよい。
【0036】
本発明において、液晶/重合体複合体の層によって、光の透過率の制御を達成できる。液晶全体としての誘電率異方性は動作モードによって異なる。
【0037】
電圧非印加時に透過率が低く、電圧印加時に透過率が高い、ノーマルモードの液晶光学素子とする場合には、誘電率異方性を正とする。好ましくは、誘電率異方性Δεを+2〜+15とする。
【0038】
動作モードがノーマルモードの場合の、印加電圧−透過率特性を図1に示す。本発明において、印加電圧(VAPPL)が0V(=V)である場合に、最低の透過率であるTを有している。
【0039】
図1に示すように、印加電圧を増加してもほぼ透過率Tが平坦である領域があり、印加電圧Vから徐々に透過率が増えていく。さらに、透過率曲線に変曲点があり、印加電圧Vでほぼ最大の透過率Tを示す。このような特性のなかで、もっぱらT〜Tの間の領域を用いて光学的動作を行うように構成する。
【0040】
ノーマルモードの場合、誘電率異方性が正の液晶を用いることによって、電圧非印加時に液晶を基板に対して水平配向させ、光の透過率を低くすることができ、電圧印加時に液晶が垂直配向するために光の透過率が高くなる。
【0041】
また、リバースモードの場合は、誘電率異方性が負の液晶を用いる。電圧非印加時に液晶を基板に対して垂直配向するように構成する。これによって透過率を高くし、電圧印加時に液晶を水平配向にすることで透過率が低くなる。
【0042】
図2に、リバースモードの印加電圧−透過率特性のグラフを示す。リバースモードの特性は上述したノーマルモードのものと対称的である。印加電圧VAPPLが0Vであるときに、最高の透過率Tを有し、印加電圧Vから透過率が徐々に下がりはじめ、印加電圧Vでほぼ最低の透過率Tを示すものである。
【0043】
本発明に用いることのできる液晶化合物は特に限定されない。誘電率異方性を正の液晶化合物とするためには、シアノ基、フッ素原子などの極性基が分子長軸方向に結合した化合物を用いることが好ましい。
【0044】
一方、誘電率異方性を負の液晶化合物とするためには、シアノ基、フッ素原子などの極性基が分子長軸方向に直交する方向に結合した化合物を用いることが好ましい。
【0045】
本発明における液晶の誘電率異方性は、その極性が正の場合でも負の場合でも絶対値が1〜50が好ましい。絶対値を2〜15にすることで、低電圧駆動の液晶光学素子を形成できるので特に好ましい。
【0046】
また、本発明における液晶の屈折率異方性Δnは0.2以下とする。0.18以下がより好ましく、0.15以下が特に好ましい。屈折率異方性Δnが0.2以下であると、電圧印加時に、液晶光学素子の光の散乱が少なくなるため好ましい。
【0047】
屈折率異方性を小さくするには、飽和炭素環を有する液晶化合物を少なくとも1種含む液晶を用いるのが好ましい。飽和炭素環とは、炭素原子と水素原子とからなる飽和の環状化合物であり、シクロヘキサン環が好ましい。
【0048】
本発明における液晶の量は、液晶と重合性化合物の合計量に対して50〜98質量%(質量基準、以下同様に記す。)であるのが好ましく、55〜95質量%がより好ましい。50質量%以上であると、液晶光学素子を低い電圧で駆動できるため好ましい。98質量%以下であると、電圧印加、非印加の繰り返しに対する耐久性や、機械的な外力に対する耐久性が高くなり、さらに高温での信頼性が高くなるため好ましい。
【0049】
本発明の液晶混合物はカイラル剤を含有してもよい。特に誘電率異方性が正の液晶を使用する場合、カイラル剤を含有することによりコントラストを向上させることができるため好ましい。カイラル剤としては、公知のものを使用することができる。
【0050】
カイラル剤の量は、液晶とカイラル剤の合計量に対して0.1〜30質量%であるのが好ましく、0.5〜20質量%がより好ましい。0.1質量%以上であるとピッチが小さくなり、二色性色素を効率的に利用することができるため好ましい。
【0051】
また、30質量%以下であると、液晶転移温度への影響があまり大きくないため好ましい。本発明におけるカイラル剤は、1種のカイラル剤を用いてもよく、2種以上のカイラル剤を用いてもよい。
【0052】
本発明における重合体とは、重合性官能基を有する化合物すなわち重合性化合物の重合性官能基の一部または全部が反応することにより該重合性化合物が2個以上重合したものをいう。また、本発明における液晶/重合体複合体には、未反応の重合性化合物が含まれていてもよい。
【0053】
本発明における重合性官能基としては、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、アリル基、エポキシ基などが挙げられ、反応性が高いことから、アクリロイル基、メタクリロイル基が好ましい。
【0054】
重合性化合物は、メソゲン構造を有する化合物であるとより好ましい。メソゲン構造を有すると、液晶と重合性化合物との相溶性が高くなり、液晶混合物の液晶温度範囲が広くなるため好ましい。メソゲン構造としては、2価の環基を2個以上有する構造が好ましい。
【0055】
より好ましくは、2〜5個有する構造である。該環基は、それぞれ直接結合していてもよく、−O−、−OCO−、−COO−、−CH−、−CHCH−などの基を介して結合していてもよい。2価の環基としては、1,4−フェニレン基、トランス−1,4−シクロヘキシレン基、が好ましい。該環基の水素原子は、炭素数1または2のアルキル基、炭素数1または2のアルコキシ基、シアノ基、ハロゲン原子で置換されていてもよい。また、メソゲン構造としては、下記の式(1)、(2)で表される構造が好ましい。
【0056】
−X−COO−X−OCO−X− ・・・(1)
−X−X−X− ・・・(2)。
【0057】
この式(1)、(2)において、
、X、X:それぞれ独立に1,4−フェニレン基またはトランス1,4−シクロヘキシレン基。ただしこれらの基の水素原子の1以上は炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜2のアルコキシ基、シアノ基またはハロゲン原子に置換されていてもよい。
【0058】
本発明における重合性化合物は、重合性官能基を1個有する化合物であっても、2個以上の重合性官能基を有する化合物であってもよい。2個以上の重合性官能基を有する場合、同じ重合性官能基であっても異なる重合性官能基であってもよい。本発明に用いる重合性化合物は、2個または3個以上の重合性官能基を有する重合性化合物であることが好ましい。重合性化合物としては、下記の化合物が好ましく挙げられる。
【0059】
−(OR−O−Z−O−(RO)−A ・・・(3)
、A:それぞれ独立にアクリロイル基、メタクリロイル基、グリシジル基、アリル基
、R:それぞれ独立に、そして水素原子の1個以上がアルキル基に置換されていてもよい、炭素数2〜18のアルキレン基
Z:メソゲン構造からなる2価の基
n、m:それぞれ独立に1〜10の整数。
【0060】
本発明における重合体は、1種類の重合性化合物を重合したものでもよく、2種以上の重合性化合物を重合したものでも良い。また、本発明における重合体は、メソゲン構造を有する重合性化合物のみを重合させたもの、メソゲン構造を有する重合性化合物とメソゲン構造を有さない重合性化合物とを重合させたものが好ましい。
【0061】
重合性化合物の量は、液晶と重合性化合物との合計量に対して2〜50質量%であることが好ましく、5〜45質量%であることがより好ましい。2質量%以上であると、液晶光学素子の、電圧印加、非印加の繰り返しに対する耐久性や、機械的な外力に対する耐久性が高くなるため好ましい。
【0062】
50質量%以下であると、液晶光学素子の駆動電圧を低くでき、さらに、二色性色素と液晶と重合性化合物との液晶混合物の液晶相を示す温度範囲が広くなるため好ましい。液晶相を示す温度範囲が広くなると、この化合物を重合させるときの温度範囲を広くとれるため好ましい。
【0063】
本発明における二色性色素と液晶と重合性化合物との液晶混合物は、重合性化合物の重合のための重合開始剤を含有していてもよい。この重合開始剤としては、光重合をさせる場合、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、アルキルアミノベンゾフェノン類、ベンジル類、ベンゾイン類、ベンゾインエーテル類、ベンジルジメチルケタール類、ベンゾイルベンゾエート類、
α−アシロキシムエステル類などのアリールケトン系光重合開始剤、スルフィド類、チオキサントン類などの含硫黄系光重合開始剤、アシルジアリールホスフィンオキシドなどのアシルホスフィンオキシド系光重合開始剤などが挙げられる。
【0064】
光重合開始剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、本発明における液晶混合物は、光重合開始剤を含む場合、アミン類などの光増感剤をさらに含ませても使用できる。
【0065】
本発明における光重合開始剤は、300〜400nmの波長域のなかの光を吸収するものが好ましい。具体的な光重合開始剤としては、たとえば以下のような化合物が挙げられる。
【0066】
4−フェノキシジクロロアセトフェノン、4−t−ブチル−ジクロロアセトフェノン、4−t−ブチル−トリクロロアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−ドデシルフェニル)−2−メチルプロパン−1−オン、1−{4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル}−2−ヒドロキシ−2−メチル−プロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−{4−(メチルチオ)フェニル}−2−モルホリノプロパン−1−オン。
【0067】
ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、アクリル化ベンゾフェノン、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラキス(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、9,10−フェナントレンキノン、カンファーキノン、ジベンゾスベロン、2−エチルアントラキノン、4’,4”−ジエチルイソフタロフェノン、α−アシロキシムエステル、メチルフェニルグリオキシレート。
【0068】
4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルスルフィド、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド。
【0069】
熱重合をさせる場合、重合部位の種類に応じて、パーオキサイド系などの重合開始剤を用いることができる。本発明における液晶混合物は、熱重合をさせる場合、必要に応じてさらにアミン類などの硬化助剤を含んでいてもよい。
【0070】
この重合開始剤の含有量は、重合性化合物に対して20質量%以下が好ましく、重合後の重合体に高い比抵抗が要求される場合には、0.01〜10質量%がより好ましい。
【0071】
本発明における液晶混合物は、必要に応じて、酸化防止剤、界面活性剤、光安定化剤、非二色性の色素、顔料、連鎖移動剤、架橋剤、消泡剤などを、液晶光学素子の調光機能を損なわない範囲で含むことができる。
【0072】
本発明の液晶光学素子に用いる基板の材質は、ガラスまたは樹脂が好ましい。
樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート(以下、PETという)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリメタクリル酸メチル、ポリエーテルイミド、セルローストリアセテート系樹脂などの透明な樹脂が好ましい。
【0073】
本発明における基板には、透明電極を積層させるのが好ましい。透明電極としては、ITO膜やSnO膜が好ましい。
【0074】
本発明における電極付き基板の液晶/重合体複合体と接する面には、必ずしも必要ではないが液晶が配向するための処理がなされていることが好ましい。この処理方法としては、公知の方法が挙げられる。たとえば、基板表面を直接研磨する方法、基板表面に樹脂の薄膜を設けた後、ラビングする方法、配向剤を基板表面に設ける方法などが挙げられる。
【0075】
本発明における、2枚の基板の間隔は、スペーサーの大きさによって適宜選択できる。この基板間隔は2〜50μmが好ましく、3〜30μmがより好ましい。基板間隔が2μm以上であると、コントラストが高くなるため好ましい。また、基板間隔が50μm以下であると、硬化反応が進みやすいため好ましい。
【0076】
本発明における重合反応としては、一般的に用いられる、光重合反応、熱重合反応などが挙げられる。光重合反応の場合、紫外線照射による重合反応が好ましい。使用する光としては、特に限定されず、紫外線、電子線、他の活性エネルギー線が挙げられるが、紫外線が好ましい。紫外線源としては、キセノンランプ、パルスキセノンランプ、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、水銀−キセノン(HgXe)ランプ、ケミカルランプ、メタルハライドランプ、カーボンアーク灯、タングステンランプなどが挙げられる。
【0077】
本発明における重合反応は、光重合反応の場合、光の照射強度、照射温度、照射時間の影響を大きく受ける。特に照射温度の影響が大きい。光の照射強度、照射温度、照射時間は、用いる二色性色素、液晶および重合性化合物などの種類、また各々の配合比などによって、適宜選択されうる。
【0078】
本発明における重合反応は、電極間に電圧を印加しない状態で行うことができる。また、印加した状態で行うこともできる。電圧を印加した状態での重合は誘電率異方性が正の液晶を用いたノーマルモードの場合に有効であり、電圧を印加すると液晶は基板に対して垂直に配向し、重合性化合物も液晶にそって基板に対して垂直に配向する。その状態で重合反応が進行すると、生成する重合体は垂直配向を維持した硬化物となる。その結果、特に電圧印加時の散乱透過率を小さくすることができる。
【0079】
本発明における重合時の印加電圧は、0.5〜300Vが好ましく、1〜100Vがさらに好ましい。0.5V以上だと重合性化合物が垂直配向できるため好ましい。300V以下だと基板間隔が不均一な場合に、その基板間隔が狭い部分で短絡を生ずることが低減できるため好ましい。
【0080】
電極間に印加する電圧の電源特性としては、直流でも交流でもよいが交流の方が好ましい。交流の場合の周波数は特に制限はないが、20〜1000Hzが好ましい。
【0081】
本発明の製造方法では、重合性化合物を完全にかつ均一に垂直配向させるために、重合を開始する前に、電圧を予備印加してもよい。
【0082】
本発明における重合反応は、液晶混合物をあらかじめ均質な溶液にした状態で一対の電極付き基板間に挟持し、液晶混合物が液晶相を示す温度で行うのが好ましい。この方法で重合させることにより、本発明における液晶/重合体複合体は、液晶が基板に対して均一に配向するので好ましい。
【0083】
また、本発明において、液晶/重合体複合体を形成するための重合を行うときの温度条件を15〜70℃に設定するのが好ましい。特に、70℃以下にすれば、基板としてPETなどの樹脂フィルムが使用できるので好ましい。
【0084】
本発明の液晶光学素子の製造方法は、基板間への液晶混合物の注入むらや挟持むらが発生せず、不純物の混入がなくかつ均一の厚さで積層できる方法であれば特に限定されない。
【0085】
たとえば、次のような方法が挙げられる。2枚の透明電極付きのガラス基板を用意し、基板の電極側に配向処理を施す。一方の基板の電極側に、直径2〜50μmの樹脂ビーズなどのスペーサーを散布し、基板の周辺にシール材を配置し、これらの基板を、それぞれの電極が向かい合うようにして重ねる。
【0086】
このようにして形成した空セルに液晶混合物を注入する。次に、本発明における液晶混合物をセルに封入した後、重合性化合物を重合させる。
【0087】
液晶混合物を封入する方法としては、セル形成の際にあらかじめ基板外周辺のシール材の1ヶ所に注入口を設けて、その注入口から液晶混合物を真空注入する方法がある。また、周辺シール材の2ヶ所以上に切り抜き部を設け、その切り抜き部のうちの一ヶ所以上を液晶混合物に浸漬し、浸漬していない切り抜き部より吸引する方法が好ましく挙げられる。
本発明の液晶光学素子において、基板として無機ガラスを用いることが、光の透過率を高くできるので好ましい。
【0088】
また、本発明の液晶光学素子は、コンパクトカメラの絞りなど、公知・周知の光学装置や、光学システムへの適用が可能である。特に、CCD撮像素子またはCMOS撮像素子を用いた光学装置に用いることが好ましい。液晶光学素子とCMOS撮像素子またはCCD撮像素子の両素子の電源供給系、制御系などを一部共用化できるので好ましい。CMOS撮像素子はCCD撮像素子に比べ小型化が可能であり、消費電力も低いので、液晶光学素子と組み合わせた場合、より小型化が可能である。
【0089】
本発明の液晶光学素子は、透明な一対の電極付き基板間に、液晶/重合体複合体が狭持された構造を備える。図3は、本発明の液晶光学素子の一例を示す断面図である。ガラス基板1A、1B、電極2A、2B、配向膜3A、3B、液晶/樹脂複合体層4、周辺シール5、引き出し電極6A、6Bが備えられている。
【0090】
本発明の液晶光学素子は、低透過率状態であるときの透過率Tの上限Tを40%以下とする。高透過率状態であるときの透過率Tの下限Tを45%以上とする。かつ、散乱透過率Tは、20%以下である。
【0091】
本発明の液晶光学素子は、高透過率状態と低透過率状態で、透過率比KHLが1.2以上である。さらに、ダイナミックレンジを確保するには、KHLが、2.0以上であることが好ましい。また、実際の使用環境と取り扱う光量の絶対量を考慮した場合、KHLが50以下であることが好ましい。
【0092】
本発明の液晶光学素子の駆動電圧は、0〜60Vであることが好ましい。60V以下であれば、基板間隔が不均一な場合に、基板間が狭い部分で短絡を生ずることが低減されるため好ましい。また、0〜45Vであることがより好ましい。
駆動電圧は液晶、重合性化合物、二色性色素、重合開始剤の種類や量、重合条件(重合温度、照射強度など)などにより調整が可能であり、適宜選択され得る。
【0093】
本発明の液晶光学素子を備えた光学装置、たとえば、液晶光学装置を絞りとして搭載したコンパクトカメラは、屋内用途、屋外用途など幅広い用途に使用することができる。以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されない。なお、例1A、2Aは実施例であり、例1B〜1E、例2B〜2F、および例3〜4は比較例である。
【0094】
【実施例】
透過率T、散乱透過率Tは、次の方法により測定した。形成した液晶光学素子を、まず、矩形波で周波数が100Hzの電圧を、0Vから60Vまで1分間かけて上昇させた。次に60Vから0Vまで1分間かけて降下させた。この操作を10回繰り返した後、透過率、散乱透過率を測定した。
【0095】
透過率T、散乱透過率Tの測定は以下のようにして行う。液晶光学素子の電極間に、0Vから5V間隔で60Vまで印加電圧を増加する。その際に、JIS R3212に記載の方法により、ヘーズメータを用いて、各印加電圧における透過率と散乱透過率とを測定する。
【0096】
(例1A)
誘電率異方性が正のネマチック液晶P(T(等方相相転移温度)=109℃、誘電率異方性Δε=3.35、屈折率異方性Δn=0.09)を液晶とカイラル剤と重合性化合物の合計量に対して81質量%、カイラル剤CN(コレステリルノナノエート)を液晶とカイラル剤と重合性化合物の合計量に対して4質量%、式1の重合性化合物を液晶とカイラル剤と重合性化合物の合計量に対して15質量%、二色性色素S428(三井化学社製)を液晶とカイラル剤と重合性化合物の合計量に対して5質量%、ベンゾインイソプロピルエーテルを液晶とカイラル剤と重合性化合物の合計量に対して0.45質量%、直径6μmの樹脂ビーズ(積水ファインケミカル社製)を液晶とカイラル剤と重合性化合物の合計量に対して1質量%含む液晶混合物Aを調整した。
【0097】
【化1】
Figure 2004157247
【0098】
次に、2枚の、ITO膜が形成されたガラス基板(縦100mm、横100mm、厚さ1.1mm、表面抵抗値30Ω/□)を準備した。2枚の基板のITO面上に、イミド系配向剤HL1110を固形分で100nmになるように塗布し、180℃で30分間、加熱硬化させラビング処理を行った。一方の基板の配向剤層上には、直径6μmの樹脂ビーズ(積水ファインケミカル社製)を30個/mm散布した。
【0099】
また、この基板には、基板の外周部の四辺(注入口部を除く。)に幅1mmで6μmのガラスファイバーを混ぜた未硬化のエポキシ樹脂を印刷した。2枚の基板をラビング方向がアンチパラレルになるように配置し、かつITO側がそれぞれ内側になるように重ね、未硬化のエポキシ樹脂を60℃で5分間加熱硬化させて空セルを形成した。
【0100】
液晶混合物Aを60℃で液晶状態を保持させながら、空セルに設けられた注入口から、液晶混合物Aをセルに真空注入した。次に、このセルを45℃まで冷却した。液晶混合物Aを45℃に保つことにより液晶状態を保持したまま、このセルの両基板の電極面に導電性粘着剤付き金属箔テープを貼り付け、その金属箔テープに周波数50Hzの交流電源を用いて、45Vの電圧を5分間印加して予備印加を行った。
【0101】
引き続き電圧を印加したままの状態で、HgXeランプを用いて、主波長が365nmの紫外線を強さ3mW/cmで10分間照射することにより、液晶/重合体複合体を基板間に形成し、液晶光学素子を製造した。この液晶光学素子は、照射前のセルと同様、外観は透明であった。
【0102】
この液晶光学素子の透過率を測定した結果は、電圧0Vでは19%、電圧20Vでは59%であった。また、Tは、電圧0Vでは0.6%、電圧20Vでは0.3%であった。透過率比KHLは、3.1であった。電圧印加時でも電圧非印加時でも、液晶光学素子は透明であった。
【0103】
また、電圧を印加した状態で重合反応を行うことにより、特に液晶光学素子の電圧印加時の散乱透過率を少なくすることができた。このように形成した液晶光学素子をCCD撮像素子(浜松ホトニクス社製:C54030)の前部に設置し、この液晶光学素子に電圧を印加しない状態で、晴天時屋外で撮影を行ったところ良好な画像が得られた。また、屋内で撮影する際には50Hzの交流電圧20Vを液晶光学素子に印加することにより良好な画像が得られた。
【0104】
本例の光学装置は、高速応答性の液晶光学素子を用いているので、20ms程度の応答速度を要する中速度での動画撮影をすることが可能となった。また、動画撮影中に絞りの条件を変化させても、電気的に駆動する液晶光学素子を用いているので、機械的絞りの場合に比べてノイズが発生しにくいことがわかった。
【0105】
(例2A)
液晶として誘電率異方性が負のネマチック液晶Q(T(等方相相転移温度)=109℃、誘電率異方性Δε=−3.35、屈折率異方性Δn=0.09)を液晶と式1に示す重合性化合物の合計量に対して95質量%、式1に示す重合性化合物を液晶と式1に示す重合性化合物の合計量に対して5質量%、二色性色素S428(三井化学社製)を液晶と重合性化合物の合計量に対して5質量%、ベンゾインイソプロピルエーテルを液晶と重合性化合物の合計量に対して0.15質量%、直径6μmの樹脂ビーズ(積水ファインケミカル社製)を液晶と重合性化合物の合計量に対して1質量%含む液晶混合物Bを調整した。
【0106】
次に、2枚の、ITO膜が形成されたガラス基板(縦100mm、横100mm、厚さ1.1mm、表面抵抗値30Ω/□)を準備した。2枚の基板のITO面上に、イミド系垂直配向剤RN1358(日産化学社製)を固形分で100nmになるように塗布し、180℃で30分間、加熱硬化させた。
【0107】
一方の基板の配向剤層上には、直径6μmの樹脂ビーズ(積水ファインケミカル社製)を30個/mm散布した。また、この基板には、基板の外周部の四辺(注入口部を除く。)に幅1mmで直径が6μmのガラスファイバーを混ぜた未硬化のエポキシ樹脂を印刷した。2枚の基板をITO側がそれぞれ内側になるように重ね、未硬化のエポキシ樹脂を60℃で5分間加熱硬化させて空セルを形成した。
液晶混合物Bを60℃で液晶状態を保持させながら、空セルに設けられた注入口から、液晶混合物Bを空セルに真空注入した。
【0108】
次に、セルを45℃まで冷却した。液晶混合物Bを45℃に保つことにより液晶状態を保持したまま、引き続き電圧を印加したままの状態で、HgXeランプを用いて、主波長が365nmの紫外線を強さ3mW/cmで10分間照射することにより、基板間に液晶/重合体複合体を形成し、液晶光学素子を製造した。このように形成した液晶光学素子は、照射前のセルと同様、外観は透明であった。
【0109】
この液晶光学素子の透過率を測定した結果は、電圧0Vでは61%、電圧20Vでは20%であった。また、Tdは、電圧0Vでは0.4%、電圧20Vでは2.9%であった。透過率比KHLは、3.5であった。電圧印加時でも電圧非印加時でも、液晶光学素子は透明であった。このように形成した液晶光学素子を光学装置20のなかの光透過率制御素子として用いた例を図4に示す。本図において、CCD撮像素子21、液晶光学素子22、電圧制御装置23および信号制御装置24が備えられている。CCD撮像素子(浜松ホトニクス社製:C54030)の前部にこの液晶光学素子を設置した。
【0110】
そして、この液晶光学素子に50Hzの交流電圧20Vを印加した状態で、晴天時屋外の撮影を行ったところ良好な画像が得られた。また、屋内で撮影する際電圧を印加しないことにより良好な画像が得られた。
【0111】
また、被写体近傍の外光の光量を検出する光検出器を設け、信号制御装置と連動するようにすることより、たとえば、屋内と屋外(昼間)のような光量の異なる環境下で、CCD撮像素子21に適した入射光量になるように液晶光学素子を制御することができる。
【0112】
また、本例の光学装置は、高速応答性の液晶光学素子を用いているので、光量の変化する環境下でも、20ms程度の応答速度を要する中速度での動画撮影をすることが可能となる。また、動画撮影中に絞りの条件を変化させても、電気的に駆動する液晶光学素子を用いているので、機械的絞りの場合に比べてノイズが発生しにくいことがわかった。
【0113】
次に、上記の例1A、例2Aに用いた材料の物性、組成比等を変更して実験を行った。その結果を下記の表1に示す。比較例については、重合温度、Wに対する重化合物の質量%、Wに対する二色性色素の質量%、屈折率異方性、誘電率異方性の各要素を変化せしめて屋内と屋外で、撮像素子におおける適正な光量が得られるかどうかを評価した。屋内は、夏の夕方で、外光を窓から採光し、うっすらと物体を視認できる室内環境とした。500lux程度の照度であった。
屋外は、真夏の晴天時で、100,000lux程度の照度であった。
【0114】
【表1】
Figure 2004157247
【0115】
(例3)
本発明の液晶光学素子を用いずに、CCD撮像素子(C54030)単独で、屋内の撮影を行うと良好な画像が得られた。しかし、晴天時屋外で撮影を行ったところ光量が多すぎ、画像全面が白くなってしまった。
【0116】
(例4)
CCD撮像素子(C54030)にNDフィルター(ND8PRO:透過率25%)を接続し晴天時屋外で撮影を行ったところ良好な画像が得られた。しかし、屋内で撮影した場合、光量が足りず不鮮明な画像しか得られなかった。
【0117】
【発明の効果】
本発明の液晶光学素子を光透過率制御用の素子として備えた光学装置は、電圧により透過率を精度よく制御できる。たとえば、CCD撮像素子などに併用する電子式の絞りとして本発明の液晶光学素子を用いることによって、部品点数を削減することができ、また光学装置そのものをコンパクトかつ軽量化することができる。
【0118】
また、使用時の環境における照度が変化しても、それに対応して撮像素子に入射される光量を適正に調整できる。また、光量を高精度かつ高速に調整できるので従来にはない高性能の光学装置を得ることができる。
【0119】
たとえば、屋内では使用環境に応じて一定の照明光が用いられており、50〜150lux、150〜300lux、300〜1000lux、750〜2000luxの照度が採用されているが、それぞれの環境下でも安定した撮影が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のノーマルモードの液晶光学素子における印加電圧−透過率特性のグラフ。
【図2】本発明のリバースモードの液晶光学素子における印加電圧−透過率特性のグラフ。
【図3】本発明の液晶光学素子の一例の模式的断面図。
【図4】本発明の液晶光学素子を備えた光学装置のブロック図。
【符号の説明】
1A、1B:ガラス基板
2A、2B:電極膜
3A、3B:配向膜
4:液晶/重合体複合体層
5:シール剤
6A、6B:電極端子
20:光学装置
21:CCD撮像素子
22:液晶光学素子
23:電圧制御装置
24:信号制御装置

Claims (9)

  1. 透明な一対の電極付き基板間に、二色性色素を含む液晶/重合体複合体層が挟持され、液晶/重合体複合体層の液晶の配向状態が電極間に印加される電圧によって変化せしめられてなる液晶光学素子において、
    誘電率異方性Δεが+1〜+50、かつ、屈折率異方性Δnが0.20以下の液晶が用いられ、
    いずれか一方の基板から他方の基板に光が通過する際の光の透過率Tと、
    いずれか一方の基板から他方の基板に光が通過する際の光の散乱透過率Tとが、JIS R3212の規定により測定されるものとし、
    下記(1)および(2)の関係を満足することを特徴とする液晶光学素子。
    (1)印加電圧VAPPLが0Vの場合の透過率TをT、最大の透過率Tに対応する印加電圧VAPPLをV(V>0V)とすると、T≧45%、40%≧T≧0%であり、かつ、透過率比KHL=T/T≧1.2である。
    (2)散乱透過率Tが20%以下である。
  2. 透明な一対の電極付き基板間に、二色性色素を含む液晶/重合体複合体層が挟持され、液晶/重合体複合体層の液晶の配向状態が電極間に印加される電圧によって変化せしめられてなる液晶光学素子において、
    電極付き基板の液晶/樹脂複合体と接する面に垂直配向膜が備えられ、誘電率異方性Δεが−1〜−50、かつ、屈折率異方性Δnが0.20以下の液晶が用いられ、
    いずれか一方の基板から他方の基板に光が通過する際の光の透過率Tと、
    いずれか一方の基板から他方の基板に光が通過する際の光の散乱透過率Tとが、JIS R3212の規定により測定されるものとし、
    下記(3)および(4)の関係を満足することを特徴とする液晶光学素子。
    (3)印加電圧VAPPLが0Vの場合の透過率TをT、最小の透過率Tに対応する印加電圧VAPPLをV(V>0V)とすると、T≧45%、40%≧T≧0%であり、かつ、透過率比KHL=T/T≧1.2である。
    (4)散乱透過率Tが20%以下である。
  3. 透過率比KHL≧2.0である請求項1または2に記載の液晶光学素子。
  4. 屈折率異方性Δnが0.18以下である液晶が用いられた請求項1、2または3に記載の液晶光学素子。
  5. メソゲン構造を有する重合体が備えられた請求項1、2、3または4に記載の液晶光学素子。
  6. が20V以下である請求項1、2、3、4または5に記載の液晶光学素子。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の液晶光学素子が、CMOS撮像素子またはCCD撮像素子に入射される光量の制御に用いられた光学装置。
  8. 透明な一対の電極付き基板間に、二色性色素と液晶と重合性化合物と重合開始剤を含む液晶混合物を挟持し、重合性化合物を重合し、液晶/重合体複合体層を形成し、液晶/重合体複合体層の液晶の配向状態を電極間に所定の電圧を印加することによって透過率の制御を行う液晶光学素子の製造方法において、
    誘電率異方性Δεが+1〜+50、かつ、屈折率異方性Δnが0.2以下の液晶を用い、
    重合性化合物は液晶と重合性化合物との合計質量Wに対して2〜50質量%とし、
    二色性色素は、基板に対して垂直配向または水平配向した際に、300〜900nmの波長域のなかで吸収性を示すものであり、
    二色性色素は前記合計質量Wに対して、0.1〜12質量%とし、
    重合性化合物を15〜70℃の温度条件で重合せしめて、液晶/重合体複合体を基板間に形成し、
    いずれか一方の基板から他方の基板に光が通過する際の光の透過率Tと、
    いずれか一方の基板から他方の基板に光が通過する際の光の散乱透過率Tとが、JIS R3212の規定により測定されるものとし、
    下記(1)および(2)の関係を満足するように液晶/重合体複合体を形成することを特徴とする液晶光学素子の製造方法。
    (1)印加電圧VAPPLが0Vの場合の透過率TをT、最大の透過率Tに対応する印加電圧VAPPLをV(V>0V)とすると、T≧45%、40%≧T≧0%であり、かつ、透過率比KHL=T/T≧1.2である。
    (2)散乱透過率Tが20%以下である。
  9. 透明な一対の電極付き基板間に、二色性色素と液晶と重合性化合物と重合開始剤を含む液晶混合物を挟持し、重合性化合物を重合し、液晶/重合体複合体層を形成し、液晶/重合体複合体層の液晶の配向状態を電極間に所定の電圧を印加することによって透過率の制御を行う液晶光学素子の製造方法において、
    電極付き基板の液晶/重合体複合体と接する面に垂直配向処理を行い、
    誘電率異方性Δεが−1〜−50、かつ屈折率異方性Δnが0.2以下である液晶を用い、
    重合性化合物は液晶と重合性化合物との合計質量Wに対して2〜50質量%とし、
    二色性色素は、基板に対して垂直配向または水平配向した際に、300〜900nmの波長域のなかで吸収性を示すものであり、
    二色性色素は前記合計質量Wに対して0.1〜12質量%とし、
    重合性化合物を15〜70℃の温度条件で重合せしめて液晶/重合体複合体を基板間に形成し、
    いずれか一方の基板から他方の基板に光が通過する際の光の透過率Tと、いずれか一方の基板から他方の基板に光が通過する際の光の散乱透過率Tとを、JIS R3212の規定により測定するものとし、
    下記の(3)および(4)の関係を満足するように液晶/重合体複合体を形成することを特徴とする液晶光学素子の製造方法。
    (3)印加電圧VAPPLが0Vの場合の透過率TをT、最小の透過率Tに対応する印加電圧VAPPLをV(V>0V)とすると、T≧45%、40%≧T≧0%であり、かつ、透過率比KHL=T/T≧1.2を満足する。
    (4)散乱透過率Tが20%以下である。
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