JP2004151434A - 光ドロップケーブル - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明は、光ファイバ心線が収納されている収納部の水の浸入を防止することで光伝送特性の安定化を図る光ドロップケーブルを提供することにある。
【解決手段】8本の光ファイバ素線3−1〜3−8を準備しておき、これら光ファイバ素線3−1〜3−8を並列に並べてなる面に吸水性テープ13を上下から挟み込むようにして縦添えし、ケーブルシース9に設けられた収納部5内に収容配置する。ケーブルシース9には、収納部5断面の長手方向に対して直交する面に分割位置を示す略V字形状のノッチ部11を設け、更にケーブルシース9の収納部15の断面両端近傍にケーブルの伸長方向の張力を吸収する抗張力体7が設けることで、光ファイバ心線が収納されている収納部に水が浸入しても吸水性テープが水と反応して止水ダムを形成するので、収納部内への水走りを防止することができる。その結果、伝送特性の低減を抑制することができる。
【選択図】 図1
【解決手段】8本の光ファイバ素線3−1〜3−8を準備しておき、これら光ファイバ素線3−1〜3−8を並列に並べてなる面に吸水性テープ13を上下から挟み込むようにして縦添えし、ケーブルシース9に設けられた収納部5内に収容配置する。ケーブルシース9には、収納部5断面の長手方向に対して直交する面に分割位置を示す略V字形状のノッチ部11を設け、更にケーブルシース9の収納部15の断面両端近傍にケーブルの伸長方向の張力を吸収する抗張力体7が設けることで、光ファイバ心線が収納されている収納部に水が浸入しても吸水性テープが水と反応して止水ダムを形成するので、収納部内への水走りを防止することができる。その結果、伝送特性の低減を抑制することができる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光ファイバネットワークの支線系に接続されているクロージャから例えば集合住宅の構内に引き落とすためのドロップケーブルに関し、特に、光ドロップケーブルの切断面若しくは側面亀裂からの水の浸入を防止することができる光ドロップケーブルに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、高度情報通信社会の推進に向けて、FTTH(Fiber to the Home)が提唱されている。このFTTHは、個々の家庭まで光ファイバを引き込んで、電話、コンピュータ通信、CATV(ケーブル・テレビや光ネットワークの配線方法)などの通信サービスを統合して提供するネットワークであり、電話局の末端にリモート端末を設置しておき、そのリモート端末から幹線系の光ケーブルを敷設し、幹線上に設けられたクロージャから各家庭や集合住宅に光ドロップケーブルを敷設するものである。
【0003】
従来の光ドロップケーブルは、1心または2心ケーブルであり、支線系に接続されているクロージャから例えば集合住宅に設けられた光成端箱にこの光ドロップケーブルを引き込み、さらに、光成端箱を経由して光ドロップケーブルを例えば集合住宅の各家庭に設けられたローゼットまで配線するものである。
【0004】
このような従来の光ドロップケーブルは、例えば特開2000−171673号公報に開示されたものがある。この光ドロップケーブル101は、図6に示すように、1心の素線又は2心のテープ心線からなる光ファイバ111が長尺形状のケーブルシース107に設けられた収納部103に収納されており、ケーブルシース107の収納部103の近傍に伸長方向の張力を吸収する抗張力体105が設けられている。
【0005】
【特許文献1】
特開2000−171673号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、図6で示した従来の光ドロップケーブルを使用して、架空用クロージャから一戸建住宅等まで光ファイバを引き落とす場合、光ファイバ心線が収納されている収納部は、パイプ構造を有していることから収納部内に空隙が生じており、雨が降ると架空用クロージャの隙間又は光成端箱の隙間から浸入した雨水がこの空隙内を水走りするという問題がある。
【0007】
これにより水がケーブルの空隙内を伝ってシステムに達すると光伝送システム等に障害を及ぼす可能性がある。更にケーブルの接続部分などで浸水部位が拡大すると、これに伴い光伝送システムの障害規模が更に拡大してしまうという問題がある。
【0008】
また、一般に良く知られているように、光ファイバに欠陥が生じていた場合、この欠陥部と水とが接触することでファイバの寿命を低下させる問題がある。また、水素の発生によりコア内を伝送する光の伝送特性を低下させてしまう。
【0009】
このような水の浸入によるファイバ寿命の低下及び水素発生による損失増加は、架空用クロージャに限らず、布設された光ドロップケーブルの側面に亀裂が生じた場合であっても同じである。
【0010】
本発明は、上記問題を鑑みてなされたものであり、その目的としては、光ファイバ心線が収納されている収納部の水の浸入を防止することで光伝送特性の安定化を図る光ドロップケーブルを提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記問題を解決するために、請求項1記載の本発明は、複数の素線又はテープ心線を一列に並列配置してなる光ファイバと、前記光ファイバに縦添えする吸水性テープと、前記光ファイバと前記吸水性テープと一体に収納する収納部の中央部を2分割するための分割位置を示す略V字形状のノッチ部を設けた長尺形状のケーブルシースと、前記ケーブルシースの収納部の近傍に設けられ伸長方向の張力を吸収する抗張力体とを備えたことを要旨とする。
【0012】
また、請求項2記載の本発明は、複数の素線又はテープ心線を一列に並列配置してなる光ファイバと、前記光ファイバに縦添えする吸水性テープと、前記光ファイバと前記吸水性テープを交互に積層させて一体に収納する収納部の中央部を2分割するための分割位置を示す略V字形状のノッチ部を設けた長尺形状のケーブルシースと、前記ケーブルシースの収納部の近傍に設けられ伸長方向の張力を吸収する抗張力体とを備えたことを要旨とする。
【0013】
更に、請求項3記載の本発明は、請求項1又は2記載の発明において、前記ケーブルシースの短面に接続して前記光ファイバを支持する支持線を備えることを要旨とする。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0015】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る光ドロップケーブル1の構成を示す断面図である。
【0016】
図1に示す光ドロップケーブル1は、光ファイバ3−1〜3−8、収納部5、抗張力体7、ケーブルシース9、ノッチ部11、吸水性テープ13から構成されている。
【0017】
光ファイバ3−1〜3−8は、ファイバ径が0.25mmのシングルモード光ファイバ素線であり、ケーブルシース9に設けられた収納部5にこの光ファイバが一列に互いに隣接して直線状に配置されている。
【0018】
ケーブルシース9は、断面寸法が横4.0mm,縦2.0mmの長尺形状を有し、低密度の難燃ポリエチレンからなり、収納部5に光ファイバ3−1〜3−8を収納して被覆している。またケーブルシース9は、光ファイバの配列方向に対して直交するように収納部5の中央部を2分割するための分割位置を示す略V字形状のノッチ部11を2箇所有している。
【0019】
さらにケーブルシース9は、収納部5の縦断面両端近傍に伸長方向の張力を吸収する外径0.4mmの亜鉛めっきなどの防食処理が施された鋼線からなる2本の抗張力体7をそれぞれ被覆している。なお抗張力体7は、0.4mmの鋼線の代わりに、ガラスFRPやケブラーなどのアラミド繊維を用いることも可能である。
【0020】
ケーブルシース9の断面中央に位置する収納部5には、一列に並列配置させた8本の光ファイバ3−1〜3−8に吸水性テープ13を上面と下面に縦添えしたものが配置されている。この吸水性テープ13は、脱脂綿、紙(パルプ)、布、不織布、熱可塑性樹脂などをテープ状に加工したものに、吸水剤としてデンプン、セルロース、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸塩の吸水性高分子を塗布して接着させたり、吸水剤をテープで包んだり、練り込んだりして吸水性を高めたものである。ここで熱可塑性樹脂とは、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)等である。
【0021】
次に、図1を参照して、光ドロップケーブル1の作用効果について説明する。
【0022】
まず、図1に示すように、複数の素線又はテープ心線からなる光ファイバ3−1〜3−8を準備しておく。
【0023】
次いで、これら光ファイバ3−1〜3−8を並列に並べてなる面に吸水性テープ13を上下から挟み込むようにして縦添えし、ケーブルシース9に設けられた収納部5内に収容配置する。
【0024】
このケーブルシース9には、収納部5断面の長手方向に対して直交する面に分割位置を示す略V字形状のノッチ部11が形成されると共に、ケーブルシース9の収納部15の断面両端近傍にケーブルの伸長方向の張力を吸収する抗張力体7が設けられる。
【0025】
このように本実施の形態では、収納部5に吸水性テープ13が縦添えされた光ファイバ3−1〜3−8を一列に収容配置して被覆し、また光ファイバの配列方向に対して直交するように、収納部5の中央部を2分割するための分割位置を示す略V字形状のノッチ部11が形成されているので、ノッチ部11を切っ掛けにして裂くことで、簡単にケーブルシース9を引き裂いて2分割でき、収納部5中の光ファイバ3−1〜3−8を容易に取り出すことができる。
【0026】
また、並列に配置された8本の光ファイバ3−1〜3−8を挟み込むようにして吸水性テープ13を一体収納しているので、ケーブルの断面に対する光ファイバの移動を1次元化することができる。更に、ケーブルの断面から水が浸入した場合に、吸着剤と水が反応して止水ダムを形成するので水の流れを防止することができる。その結果、ケーブル内での水素の発生を防止できるので、光ファイバの損失増大を抑制することができる。
【0027】
また、本実施の形態では、光ドロップケーブル1を2分割しても、光ファイバ3−1〜3−8の両端近傍に抗張力体7が縦添えされているので、ケーブルの伸長方向の張力を吸収することができる。
【0028】
さらに、本実施の形態では、ケーブルシース9の収納部5に複数の光ファイバ3−1〜3−8を収納したことにより、1本のケーブルで複数のユーザに配線することができる。その複数の光ファイバ3−1〜3−8は、収納部5に一列に収容配置されているので、ケーブルの厚さが薄くなり、狭い場所へ配線がし易くなる。
【0029】
(止水特性)
このような構成の光ドロップケーブル1の止水特性を以下の方法で評価した。
【0030】
図2は、IEC60794−1−2に基づく止水試験装置を示す図である。
【0031】
止水試験方法には、次の2つの方法(F5A、F5B)があり、図2(a)に示す方法(F5A)は、コアとシースの間の介在物の止水性を試験するものである。一方、図2(b)に示す方法F5Bは、防水性をもたせた断面構造全体の透水性を試験するものである。
【0032】
具体的にF5Aは、光ドロップケーブル長の一端から3mのところでシースと上巻きを円周にわたって25mmの幅で取り除き、そのシースの切れ目のむき出しのコアの部分を覆うように水密製の管41を被せて、1mの高さの水圧を負荷できるようにする。ここで光ドロップケーブルの一端にはキャップ43を嵌めておく。
【0033】
F5Bは、試験長より1m長い光ドロップケーブル1(ただし、3mを超えないもの。)を用意する。L型塩化ビニル樹脂管47の一端に、端部にゴム栓を外挿させた内径18mmの透明アクリル管45を挿入する一方、他端に光ドロップケーブル1の端部をセルボンテープを巻きつけて挿入し、いずれも隙間を生じないように接着剤等で密封固定した。このとき光ドロップケーブル1の片端を水密性をもたせて水封止し、1mの高さの水圧を負荷できるようにする。次いで、光ドロップケーブル1が水平に、透明アクリル管45が垂直になるように保持し、透明アクリル管45内に水を加えて光ドロップケーブル1端面に0.1気圧の水圧を印加し、24時間経過後の走水長を測定した。
【0034】
この防水試験を実施した結果、光ドロップケーブルの端面から漏水が無いことを確認した。また、光伝送特性は、従来型の光ドロップケーブルと同等であることを確認した。
【0035】
この結果、光ファイバドロップケーブル1のケーブルシース7に亀裂が生じ、そこから水が浸入しても吸水剤が水を吸着して止水ダムを形成するので、収納部5内での急速な水走りを抑え、且つケーブルの取り替え工事まで時間を稼ぐことができる。これにより光ファイバの取替え時期まで正常に伝送することができる光ドロップケーブル1であることが確認された。
【0036】
(第2の実施の形態)
図3は、本発明の第2の実施の形態に係る光ドロップケーブル21の構成を示す断面図である。
【0037】
図3に示す光ドロップケーブル21は、図1に示す光ドロップケーブル1に対して、ケーブルシース9を形成する際にネック17を介してテンションメンバとして支持線15を付け加えている。この支持線15には、1.2mmの鋼線を使用している。
【0038】
すなわち、本実施の形態の光ドロップケーブル21は、ケーブルシース9の一側面、つまり2本の抗張力体7の延長線上の面に、ネック17を介して光ファイバ3−1〜3−8を支持する支持線15が一体成形により形成されている。
【0039】
次に、図3を参照して、光ドロップケーブル21の作用効果について説明する。
【0040】
まず、図3に示すように、複数の素線又はテープ心線からなる光ファイバ3−1〜3−8を準備しておく。
【0041】
次いで、これら一列の光ファイバ3−1〜3−8に対して吸水性テープ13を縦添えしてケーブルシース9に設けられた収納部5内に収容配置する。
【0042】
このケーブルシース9には、収納部5の形成方向に対して直交する面に、分割位置を示す略V字形状のノッチ部11が2箇所形成され、ケーブルシース9の収納部5の断面両端近傍にケーブルの伸長方向の張力を吸収する抗張力体7が設けられる。また、ケーブルシース9を形成する際にネック17を介して支持線15を付け加える。
【0043】
このように本実施の形態では、収納部5に光ファイバ3−1〜3−8を一列に収容配置してケーブルシース9で被覆し、また光ファイバの配列方向に対して直交するように、収納部5の中央部を2分割するための分割位置を示す略V字形状のノッチ部11を形成し、さらに支持線15を被覆しているので、支線系に設けられたクロージャ(図示しない)から集合住宅に設けられた光成端箱(図示しない)まで光ドロップケーブル21を引き込むことができる。
【0044】
また、集合住宅内では、ノッチ部11を中心に上下方向に逆の力を加えてケーブルシース9を引き裂いて2分割することができ、光ファイバ3−1〜3−8を容易に取り出すことができる。
【0045】
また、本実施の形態では、光ドロップケーブル3を2分割しても、光ファイバ3−1〜3−8が抗張力体7を有しているので、ケーブルの伸長方向の張力を吸収することができる。更にケーブルシース9の側面に光ファイバ3−1〜3−8を支持する支持線15を備えたので、ケーブル自体の引張強度を高めることができ、敷設する際の取扱い性及び信頼性を向上させることができる。そして、光ファイバ3−1〜3−8と吸水性テープ13とを一体にして収納部5に収納するので、ケーブルの断面から水が浸入しても吸水剤と水が反応して止水ダムを形成し、水の流れを防止することができる。
【0046】
さらに、本実施の形態では、ケーブルシース9の収納部5に複数の光ファイバ3−1〜3−8を収納したことにより、1本のケーブルで複数のユーザに配線することができる。その複数の光ファイバ3−1〜3−8は、収納部5に一列に収容配置されているので、ケーブルの厚さが薄くなり、狭い場所へ配線がし易くなる。
【0047】
(第3の実施の形態)
図4は、本発明の第3の実施の形態に係る光ドロップケーブル31の構成を示す断面図である。
【0048】
図4に示す光ドロップケーブル31は、図3に示した光ドロップケーブル21において、光ファイバ素線を8本並列に配置していたことに代えて、光ファイバ素線を4本並列に配置したものを1組とし、これを縦に3組平行に積層させている。このとき各組の上面と下面には吸水性テープ13が挟み込まれている。
【0049】
すなわち、本実施の形態の光ドロップケーブル31は、4本の光ファイバ素線3a−1〜3a−4を並列接続してなる第1の素線列と、光ファイバ素線3b−1〜3b−4を並列接続してなる第2の素線列と、光ファイバ素線3c−1〜3c−4を並列接続してなる第3の素線列を吸水性テープ13を挟み込みながら平行に積層させて収納部5に収納し、光ファイバ素線の積層方向に直交し且つ収納部5を挟むようにして配置されている2本の抗張力体7をケーブルシース9で一括成形する際に、ケーブルシース9上の光ファイバ素線の積層方向に分割位置を示す略V字形状のノッチ部11を設ける。また、ケーブルシース9の一側面、つまり2本の抗張力体7の延長線上の面に、ネック17を介して光ファイバ素線を支持する支持線15を一体化して設けることで形成されている。
【0050】
次に、図4を参照して、光ドロップケーブル31の作用効果について説明する。
【0051】
まず、図4に示すように、4本の光ファイバ素線3a−1〜3a−4からなる第1の素線列と、光ファイバ素線3b−1〜3b−4からなる第2の素線列と、光ファイバ素線3c−1〜3c−4からなる第3の素線列を準備しておく。
【0052】
次いで、これら素線列を平行に積層する際に、各素線列の間に吸水性テープ13を挿入してケーブルシース9に設けられた収納部5内に収容配置する。
【0053】
このケーブルシース9には、素線列の積層方向に分割位置を示す略V字形状のノッチ部11が2箇所形成されており、ケーブルシース9の収納部5の断面両端近傍にケーブルの伸長方向の張力を吸収する抗張力体7が設けられている。またケーブルシース9を形成する際にネック17を介して支持線15が付け加えられている。
【0054】
このように本実施の形態では、収納部5に光ファイバ素線を並列してなる素線列を複数枚平行に積層させて収容し、これをケーブルシース9で被覆して、更に光ファイバの配列方向に対して直交するように、収納部5の中央部を2分割するための分割位置を示す略V字形状のノッチ部11を形成し、またさらに支持線15を被覆しているので、支線系に設けられたクロージャ(図示しない)から集合住宅に設けられた光成端箱(図示しない)まで光ドロップケーブル31を引き込むことができる。
【0055】
また、集合住宅内では、ノッチ部11を中心に上下方向に逆の力を加えてケーブルシース9を引き裂いて2分割することができ、光ファイバ素線3a−1〜3a−4、3b−1〜3b−4、3c−1〜3c−4を容易に取り出すことができる。
【0056】
また、本実施の形態では、光ドロップケーブル31を2分割しても、光ファイバ3a−1〜3a−4、3b−1〜3b−4、3c−1〜3c−4が抗張力体7を有しているので、ケーブルの伸長方向の張力を吸収することができる。更にケーブルシース9の側面に光ファイバ3a−1〜3a−4、3b−1〜3b−4、3c−1〜3c−4を支持する支持線15を設けたので、ケーブル自体の引張強度を高めることができ、敷設する際の取扱い性及び信頼性を向上させることができる。
【0057】
そして、光ファイバ素線3a−1〜3a−4、3b−1〜3b−4、3c−1〜3c−4と吸水性テープ13とを一体にして収納部5に収納するので、ケーブルの断面から水が浸入しても、吸着剤と水が反応して止水ダムを形成するので水の流れを防止し、これによりケーブル内での水素の発生することを防止することができるので、光ファイバ3a−1〜3a−4、3b−1〜3b−4、3c−1〜3c−4にの損失増大を抑制することができる。
【0058】
さらに、本実施の形態では、ケーブルシース9の収納部5に複数本の光ファイバ素線3a−1〜3a−4、3b−1〜3b−4、3c−1〜3c−4を収納したことにより、1本のケーブルで複数のユーザに配線することができる。その複数の光ファイバ素線3a−1〜3a−4、3b−1〜3b−4、3c−1〜3c−4は、収納部5に3列に収容配置されているので、ケーブル断面の長手方向の寸法を短くすることができ、更にこれに伴い風圧荷重を小さくできる。尚、本実施の形態においては、光ファイバ素線を4本並列に並べているが、光ファイバ素線の本数はこれに限らず、3本、5本、6本・・であってもよい。また、積層数も3層に限らず、4層、5層・・・であってもよい。
【0059】
(実施例)
図5は、第1〜3の実施の形態に係る光ドロップケーブルを布設した様子を示す図である。
【0060】
図5に示すように、電話局(図示せず)から延線された光ファイバケーブル53の端が電柱51上の架空用クロージャ55に接続されている。この架空用クロージャ55と集合住宅との間に配置される光ドロップケーブル21,31は、一端が架空用クロージャ55に接続され、他端が集合住宅の管理室に設置されている光成端箱59に接続されている。
【0061】
架空用クロージャ55と光成端箱59とを接続するためには、光ドロップケーブル21,31のネック17を一部切り裂いて光ファイバが収納された本体と支持線15とを分離し、分離された支持線15の一端19Aを電柱51の屋外線引き止め具57に固定し、他端19Bを管理室の屋外引き止め具(図示せず)に固定する。
【0062】
また、本体の一端15Aは、電柱51上の架空用クロージャ55に接続し、他端15Bは管理室の光成端箱59に接続する。
【0063】
続いて、光成端箱59を介して管理室まで布設された光ドロップケーブル1は、管理室に設置されているルータ及び光用ハブに接続される。そして、光用ハブで多数本に分岐された光伝送路の出力端に第1の実施の形態に係る光ドロップケーブル1を接続し、他端を集合住宅内の管路に沿わせて各戸まで布設する。このようにして各戸まで布設された光ドロップケーブル1は戸内に設置されている配電盤(FD)61に接続される。この時、ノッチ部11を切っ掛けにケーブルシース9を2分に引き裂くだけで、収納されている光ファイバ3−1〜3−8を容易に取り出すことができる。
【0064】
【発明の効果】
請求項1記載の本発明によれば、複数の素線又はテープ心線を一列に並列配置してなる光ファイバと、光ファイバに縦添えする吸水性テープと、光ファイバと吸水性テープを一体にして収納する収納部の中央部を2分割するための分割位置を示す略V字形状のノッチ部を設けた長尺形状のケーブルシースと、このケーブルシースの収納部の近傍に設けられ伸長方向の張力を吸収する抗張力体とを備えたので、水が浸入しても吸水性テープが水と反応して止水ダムを形成することができ、収納部内の水走りを防止することができる。その結果、伝送特性の低減を抑制することができる。
【0065】
また、請求項2記載の本発明は、複数の素線又はテープ心線を一列に並列配置してなる光ファイバと、光ファイバに縦添えする吸水性テープと、光ファイバと吸水性テープを交互に積層させて一体に収納する収納部の中央部を2分割するための分割位置を示す略V字形状のノッチ部を設けた長尺形状のケーブルシースと、ケーブルシースの収納部の近傍に設けられ伸長方向の張力を吸収する抗張力体とを備えたので、水が浸入しても吸水性テープが水と反応して止水ダムを形成することができ、収納部内の水走りを防止することができる。その結果、伝送特性の低減を抑制することができる。
【0066】
また、並列配列された光ファイバと吸水性テープを交互に積層させて一体化することで、所定断面積内に複数の光ファイバを収納させることができるので、1本の光ドロップケーブルで複数の戸数に対して布設を行うことができる。
【0067】
請求項3記載の本発明によれば、ケーブルシースの短面に接続して光ファイバを支持する支持線を備えたので、ケーブル自体の引張強度を高めることができ、敷設する際の取扱い性及び信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る光ドロップケーブルの構成を示す断面図である。
【図2】止水試験を行う止水試験装置図であり、(a)コアとシースの間の介在物の止水性を試験する方法、(b)断面構造全体の透水性を試験する方法を示す図である。
【図3】本発明の第2の実施の形態に係る光ドロップケーブルの構成を示す断面図である。
【図4】本発明の第3の実施の形態に係る光ドロップケーブルの構成を示す断面図である。
【図5】第1〜第3の実施の形態に示す光ドロップケーブルを敷設した様子を示す概略図である。
【図6】従来の光ドロップケーブルの構成を示す断面図である。
【符号の説明】
1 、21、31 光ドロップケーブル
3−1〜3−8、3a−1〜3a−4、3b−1〜3b−4、
3c−1〜3c−4、3d−1〜3d−4 光ファイバ
5 収納部
7 抗張力体
9 ケーブルシース
11 ノッチ部
13 吸水性テープ
15 支持線
17 ネック
【発明の属する技術分野】
本発明は、光ファイバネットワークの支線系に接続されているクロージャから例えば集合住宅の構内に引き落とすためのドロップケーブルに関し、特に、光ドロップケーブルの切断面若しくは側面亀裂からの水の浸入を防止することができる光ドロップケーブルに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、高度情報通信社会の推進に向けて、FTTH(Fiber to the Home)が提唱されている。このFTTHは、個々の家庭まで光ファイバを引き込んで、電話、コンピュータ通信、CATV(ケーブル・テレビや光ネットワークの配線方法)などの通信サービスを統合して提供するネットワークであり、電話局の末端にリモート端末を設置しておき、そのリモート端末から幹線系の光ケーブルを敷設し、幹線上に設けられたクロージャから各家庭や集合住宅に光ドロップケーブルを敷設するものである。
【0003】
従来の光ドロップケーブルは、1心または2心ケーブルであり、支線系に接続されているクロージャから例えば集合住宅に設けられた光成端箱にこの光ドロップケーブルを引き込み、さらに、光成端箱を経由して光ドロップケーブルを例えば集合住宅の各家庭に設けられたローゼットまで配線するものである。
【0004】
このような従来の光ドロップケーブルは、例えば特開2000−171673号公報に開示されたものがある。この光ドロップケーブル101は、図6に示すように、1心の素線又は2心のテープ心線からなる光ファイバ111が長尺形状のケーブルシース107に設けられた収納部103に収納されており、ケーブルシース107の収納部103の近傍に伸長方向の張力を吸収する抗張力体105が設けられている。
【0005】
【特許文献1】
特開2000−171673号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、図6で示した従来の光ドロップケーブルを使用して、架空用クロージャから一戸建住宅等まで光ファイバを引き落とす場合、光ファイバ心線が収納されている収納部は、パイプ構造を有していることから収納部内に空隙が生じており、雨が降ると架空用クロージャの隙間又は光成端箱の隙間から浸入した雨水がこの空隙内を水走りするという問題がある。
【0007】
これにより水がケーブルの空隙内を伝ってシステムに達すると光伝送システム等に障害を及ぼす可能性がある。更にケーブルの接続部分などで浸水部位が拡大すると、これに伴い光伝送システムの障害規模が更に拡大してしまうという問題がある。
【0008】
また、一般に良く知られているように、光ファイバに欠陥が生じていた場合、この欠陥部と水とが接触することでファイバの寿命を低下させる問題がある。また、水素の発生によりコア内を伝送する光の伝送特性を低下させてしまう。
【0009】
このような水の浸入によるファイバ寿命の低下及び水素発生による損失増加は、架空用クロージャに限らず、布設された光ドロップケーブルの側面に亀裂が生じた場合であっても同じである。
【0010】
本発明は、上記問題を鑑みてなされたものであり、その目的としては、光ファイバ心線が収納されている収納部の水の浸入を防止することで光伝送特性の安定化を図る光ドロップケーブルを提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記問題を解決するために、請求項1記載の本発明は、複数の素線又はテープ心線を一列に並列配置してなる光ファイバと、前記光ファイバに縦添えする吸水性テープと、前記光ファイバと前記吸水性テープと一体に収納する収納部の中央部を2分割するための分割位置を示す略V字形状のノッチ部を設けた長尺形状のケーブルシースと、前記ケーブルシースの収納部の近傍に設けられ伸長方向の張力を吸収する抗張力体とを備えたことを要旨とする。
【0012】
また、請求項2記載の本発明は、複数の素線又はテープ心線を一列に並列配置してなる光ファイバと、前記光ファイバに縦添えする吸水性テープと、前記光ファイバと前記吸水性テープを交互に積層させて一体に収納する収納部の中央部を2分割するための分割位置を示す略V字形状のノッチ部を設けた長尺形状のケーブルシースと、前記ケーブルシースの収納部の近傍に設けられ伸長方向の張力を吸収する抗張力体とを備えたことを要旨とする。
【0013】
更に、請求項3記載の本発明は、請求項1又は2記載の発明において、前記ケーブルシースの短面に接続して前記光ファイバを支持する支持線を備えることを要旨とする。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0015】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る光ドロップケーブル1の構成を示す断面図である。
【0016】
図1に示す光ドロップケーブル1は、光ファイバ3−1〜3−8、収納部5、抗張力体7、ケーブルシース9、ノッチ部11、吸水性テープ13から構成されている。
【0017】
光ファイバ3−1〜3−8は、ファイバ径が0.25mmのシングルモード光ファイバ素線であり、ケーブルシース9に設けられた収納部5にこの光ファイバが一列に互いに隣接して直線状に配置されている。
【0018】
ケーブルシース9は、断面寸法が横4.0mm,縦2.0mmの長尺形状を有し、低密度の難燃ポリエチレンからなり、収納部5に光ファイバ3−1〜3−8を収納して被覆している。またケーブルシース9は、光ファイバの配列方向に対して直交するように収納部5の中央部を2分割するための分割位置を示す略V字形状のノッチ部11を2箇所有している。
【0019】
さらにケーブルシース9は、収納部5の縦断面両端近傍に伸長方向の張力を吸収する外径0.4mmの亜鉛めっきなどの防食処理が施された鋼線からなる2本の抗張力体7をそれぞれ被覆している。なお抗張力体7は、0.4mmの鋼線の代わりに、ガラスFRPやケブラーなどのアラミド繊維を用いることも可能である。
【0020】
ケーブルシース9の断面中央に位置する収納部5には、一列に並列配置させた8本の光ファイバ3−1〜3−8に吸水性テープ13を上面と下面に縦添えしたものが配置されている。この吸水性テープ13は、脱脂綿、紙(パルプ)、布、不織布、熱可塑性樹脂などをテープ状に加工したものに、吸水剤としてデンプン、セルロース、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸塩の吸水性高分子を塗布して接着させたり、吸水剤をテープで包んだり、練り込んだりして吸水性を高めたものである。ここで熱可塑性樹脂とは、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)等である。
【0021】
次に、図1を参照して、光ドロップケーブル1の作用効果について説明する。
【0022】
まず、図1に示すように、複数の素線又はテープ心線からなる光ファイバ3−1〜3−8を準備しておく。
【0023】
次いで、これら光ファイバ3−1〜3−8を並列に並べてなる面に吸水性テープ13を上下から挟み込むようにして縦添えし、ケーブルシース9に設けられた収納部5内に収容配置する。
【0024】
このケーブルシース9には、収納部5断面の長手方向に対して直交する面に分割位置を示す略V字形状のノッチ部11が形成されると共に、ケーブルシース9の収納部15の断面両端近傍にケーブルの伸長方向の張力を吸収する抗張力体7が設けられる。
【0025】
このように本実施の形態では、収納部5に吸水性テープ13が縦添えされた光ファイバ3−1〜3−8を一列に収容配置して被覆し、また光ファイバの配列方向に対して直交するように、収納部5の中央部を2分割するための分割位置を示す略V字形状のノッチ部11が形成されているので、ノッチ部11を切っ掛けにして裂くことで、簡単にケーブルシース9を引き裂いて2分割でき、収納部5中の光ファイバ3−1〜3−8を容易に取り出すことができる。
【0026】
また、並列に配置された8本の光ファイバ3−1〜3−8を挟み込むようにして吸水性テープ13を一体収納しているので、ケーブルの断面に対する光ファイバの移動を1次元化することができる。更に、ケーブルの断面から水が浸入した場合に、吸着剤と水が反応して止水ダムを形成するので水の流れを防止することができる。その結果、ケーブル内での水素の発生を防止できるので、光ファイバの損失増大を抑制することができる。
【0027】
また、本実施の形態では、光ドロップケーブル1を2分割しても、光ファイバ3−1〜3−8の両端近傍に抗張力体7が縦添えされているので、ケーブルの伸長方向の張力を吸収することができる。
【0028】
さらに、本実施の形態では、ケーブルシース9の収納部5に複数の光ファイバ3−1〜3−8を収納したことにより、1本のケーブルで複数のユーザに配線することができる。その複数の光ファイバ3−1〜3−8は、収納部5に一列に収容配置されているので、ケーブルの厚さが薄くなり、狭い場所へ配線がし易くなる。
【0029】
(止水特性)
このような構成の光ドロップケーブル1の止水特性を以下の方法で評価した。
【0030】
図2は、IEC60794−1−2に基づく止水試験装置を示す図である。
【0031】
止水試験方法には、次の2つの方法(F5A、F5B)があり、図2(a)に示す方法(F5A)は、コアとシースの間の介在物の止水性を試験するものである。一方、図2(b)に示す方法F5Bは、防水性をもたせた断面構造全体の透水性を試験するものである。
【0032】
具体的にF5Aは、光ドロップケーブル長の一端から3mのところでシースと上巻きを円周にわたって25mmの幅で取り除き、そのシースの切れ目のむき出しのコアの部分を覆うように水密製の管41を被せて、1mの高さの水圧を負荷できるようにする。ここで光ドロップケーブルの一端にはキャップ43を嵌めておく。
【0033】
F5Bは、試験長より1m長い光ドロップケーブル1(ただし、3mを超えないもの。)を用意する。L型塩化ビニル樹脂管47の一端に、端部にゴム栓を外挿させた内径18mmの透明アクリル管45を挿入する一方、他端に光ドロップケーブル1の端部をセルボンテープを巻きつけて挿入し、いずれも隙間を生じないように接着剤等で密封固定した。このとき光ドロップケーブル1の片端を水密性をもたせて水封止し、1mの高さの水圧を負荷できるようにする。次いで、光ドロップケーブル1が水平に、透明アクリル管45が垂直になるように保持し、透明アクリル管45内に水を加えて光ドロップケーブル1端面に0.1気圧の水圧を印加し、24時間経過後の走水長を測定した。
【0034】
この防水試験を実施した結果、光ドロップケーブルの端面から漏水が無いことを確認した。また、光伝送特性は、従来型の光ドロップケーブルと同等であることを確認した。
【0035】
この結果、光ファイバドロップケーブル1のケーブルシース7に亀裂が生じ、そこから水が浸入しても吸水剤が水を吸着して止水ダムを形成するので、収納部5内での急速な水走りを抑え、且つケーブルの取り替え工事まで時間を稼ぐことができる。これにより光ファイバの取替え時期まで正常に伝送することができる光ドロップケーブル1であることが確認された。
【0036】
(第2の実施の形態)
図3は、本発明の第2の実施の形態に係る光ドロップケーブル21の構成を示す断面図である。
【0037】
図3に示す光ドロップケーブル21は、図1に示す光ドロップケーブル1に対して、ケーブルシース9を形成する際にネック17を介してテンションメンバとして支持線15を付け加えている。この支持線15には、1.2mmの鋼線を使用している。
【0038】
すなわち、本実施の形態の光ドロップケーブル21は、ケーブルシース9の一側面、つまり2本の抗張力体7の延長線上の面に、ネック17を介して光ファイバ3−1〜3−8を支持する支持線15が一体成形により形成されている。
【0039】
次に、図3を参照して、光ドロップケーブル21の作用効果について説明する。
【0040】
まず、図3に示すように、複数の素線又はテープ心線からなる光ファイバ3−1〜3−8を準備しておく。
【0041】
次いで、これら一列の光ファイバ3−1〜3−8に対して吸水性テープ13を縦添えしてケーブルシース9に設けられた収納部5内に収容配置する。
【0042】
このケーブルシース9には、収納部5の形成方向に対して直交する面に、分割位置を示す略V字形状のノッチ部11が2箇所形成され、ケーブルシース9の収納部5の断面両端近傍にケーブルの伸長方向の張力を吸収する抗張力体7が設けられる。また、ケーブルシース9を形成する際にネック17を介して支持線15を付け加える。
【0043】
このように本実施の形態では、収納部5に光ファイバ3−1〜3−8を一列に収容配置してケーブルシース9で被覆し、また光ファイバの配列方向に対して直交するように、収納部5の中央部を2分割するための分割位置を示す略V字形状のノッチ部11を形成し、さらに支持線15を被覆しているので、支線系に設けられたクロージャ(図示しない)から集合住宅に設けられた光成端箱(図示しない)まで光ドロップケーブル21を引き込むことができる。
【0044】
また、集合住宅内では、ノッチ部11を中心に上下方向に逆の力を加えてケーブルシース9を引き裂いて2分割することができ、光ファイバ3−1〜3−8を容易に取り出すことができる。
【0045】
また、本実施の形態では、光ドロップケーブル3を2分割しても、光ファイバ3−1〜3−8が抗張力体7を有しているので、ケーブルの伸長方向の張力を吸収することができる。更にケーブルシース9の側面に光ファイバ3−1〜3−8を支持する支持線15を備えたので、ケーブル自体の引張強度を高めることができ、敷設する際の取扱い性及び信頼性を向上させることができる。そして、光ファイバ3−1〜3−8と吸水性テープ13とを一体にして収納部5に収納するので、ケーブルの断面から水が浸入しても吸水剤と水が反応して止水ダムを形成し、水の流れを防止することができる。
【0046】
さらに、本実施の形態では、ケーブルシース9の収納部5に複数の光ファイバ3−1〜3−8を収納したことにより、1本のケーブルで複数のユーザに配線することができる。その複数の光ファイバ3−1〜3−8は、収納部5に一列に収容配置されているので、ケーブルの厚さが薄くなり、狭い場所へ配線がし易くなる。
【0047】
(第3の実施の形態)
図4は、本発明の第3の実施の形態に係る光ドロップケーブル31の構成を示す断面図である。
【0048】
図4に示す光ドロップケーブル31は、図3に示した光ドロップケーブル21において、光ファイバ素線を8本並列に配置していたことに代えて、光ファイバ素線を4本並列に配置したものを1組とし、これを縦に3組平行に積層させている。このとき各組の上面と下面には吸水性テープ13が挟み込まれている。
【0049】
すなわち、本実施の形態の光ドロップケーブル31は、4本の光ファイバ素線3a−1〜3a−4を並列接続してなる第1の素線列と、光ファイバ素線3b−1〜3b−4を並列接続してなる第2の素線列と、光ファイバ素線3c−1〜3c−4を並列接続してなる第3の素線列を吸水性テープ13を挟み込みながら平行に積層させて収納部5に収納し、光ファイバ素線の積層方向に直交し且つ収納部5を挟むようにして配置されている2本の抗張力体7をケーブルシース9で一括成形する際に、ケーブルシース9上の光ファイバ素線の積層方向に分割位置を示す略V字形状のノッチ部11を設ける。また、ケーブルシース9の一側面、つまり2本の抗張力体7の延長線上の面に、ネック17を介して光ファイバ素線を支持する支持線15を一体化して設けることで形成されている。
【0050】
次に、図4を参照して、光ドロップケーブル31の作用効果について説明する。
【0051】
まず、図4に示すように、4本の光ファイバ素線3a−1〜3a−4からなる第1の素線列と、光ファイバ素線3b−1〜3b−4からなる第2の素線列と、光ファイバ素線3c−1〜3c−4からなる第3の素線列を準備しておく。
【0052】
次いで、これら素線列を平行に積層する際に、各素線列の間に吸水性テープ13を挿入してケーブルシース9に設けられた収納部5内に収容配置する。
【0053】
このケーブルシース9には、素線列の積層方向に分割位置を示す略V字形状のノッチ部11が2箇所形成されており、ケーブルシース9の収納部5の断面両端近傍にケーブルの伸長方向の張力を吸収する抗張力体7が設けられている。またケーブルシース9を形成する際にネック17を介して支持線15が付け加えられている。
【0054】
このように本実施の形態では、収納部5に光ファイバ素線を並列してなる素線列を複数枚平行に積層させて収容し、これをケーブルシース9で被覆して、更に光ファイバの配列方向に対して直交するように、収納部5の中央部を2分割するための分割位置を示す略V字形状のノッチ部11を形成し、またさらに支持線15を被覆しているので、支線系に設けられたクロージャ(図示しない)から集合住宅に設けられた光成端箱(図示しない)まで光ドロップケーブル31を引き込むことができる。
【0055】
また、集合住宅内では、ノッチ部11を中心に上下方向に逆の力を加えてケーブルシース9を引き裂いて2分割することができ、光ファイバ素線3a−1〜3a−4、3b−1〜3b−4、3c−1〜3c−4を容易に取り出すことができる。
【0056】
また、本実施の形態では、光ドロップケーブル31を2分割しても、光ファイバ3a−1〜3a−4、3b−1〜3b−4、3c−1〜3c−4が抗張力体7を有しているので、ケーブルの伸長方向の張力を吸収することができる。更にケーブルシース9の側面に光ファイバ3a−1〜3a−4、3b−1〜3b−4、3c−1〜3c−4を支持する支持線15を設けたので、ケーブル自体の引張強度を高めることができ、敷設する際の取扱い性及び信頼性を向上させることができる。
【0057】
そして、光ファイバ素線3a−1〜3a−4、3b−1〜3b−4、3c−1〜3c−4と吸水性テープ13とを一体にして収納部5に収納するので、ケーブルの断面から水が浸入しても、吸着剤と水が反応して止水ダムを形成するので水の流れを防止し、これによりケーブル内での水素の発生することを防止することができるので、光ファイバ3a−1〜3a−4、3b−1〜3b−4、3c−1〜3c−4にの損失増大を抑制することができる。
【0058】
さらに、本実施の形態では、ケーブルシース9の収納部5に複数本の光ファイバ素線3a−1〜3a−4、3b−1〜3b−4、3c−1〜3c−4を収納したことにより、1本のケーブルで複数のユーザに配線することができる。その複数の光ファイバ素線3a−1〜3a−4、3b−1〜3b−4、3c−1〜3c−4は、収納部5に3列に収容配置されているので、ケーブル断面の長手方向の寸法を短くすることができ、更にこれに伴い風圧荷重を小さくできる。尚、本実施の形態においては、光ファイバ素線を4本並列に並べているが、光ファイバ素線の本数はこれに限らず、3本、5本、6本・・であってもよい。また、積層数も3層に限らず、4層、5層・・・であってもよい。
【0059】
(実施例)
図5は、第1〜3の実施の形態に係る光ドロップケーブルを布設した様子を示す図である。
【0060】
図5に示すように、電話局(図示せず)から延線された光ファイバケーブル53の端が電柱51上の架空用クロージャ55に接続されている。この架空用クロージャ55と集合住宅との間に配置される光ドロップケーブル21,31は、一端が架空用クロージャ55に接続され、他端が集合住宅の管理室に設置されている光成端箱59に接続されている。
【0061】
架空用クロージャ55と光成端箱59とを接続するためには、光ドロップケーブル21,31のネック17を一部切り裂いて光ファイバが収納された本体と支持線15とを分離し、分離された支持線15の一端19Aを電柱51の屋外線引き止め具57に固定し、他端19Bを管理室の屋外引き止め具(図示せず)に固定する。
【0062】
また、本体の一端15Aは、電柱51上の架空用クロージャ55に接続し、他端15Bは管理室の光成端箱59に接続する。
【0063】
続いて、光成端箱59を介して管理室まで布設された光ドロップケーブル1は、管理室に設置されているルータ及び光用ハブに接続される。そして、光用ハブで多数本に分岐された光伝送路の出力端に第1の実施の形態に係る光ドロップケーブル1を接続し、他端を集合住宅内の管路に沿わせて各戸まで布設する。このようにして各戸まで布設された光ドロップケーブル1は戸内に設置されている配電盤(FD)61に接続される。この時、ノッチ部11を切っ掛けにケーブルシース9を2分に引き裂くだけで、収納されている光ファイバ3−1〜3−8を容易に取り出すことができる。
【0064】
【発明の効果】
請求項1記載の本発明によれば、複数の素線又はテープ心線を一列に並列配置してなる光ファイバと、光ファイバに縦添えする吸水性テープと、光ファイバと吸水性テープを一体にして収納する収納部の中央部を2分割するための分割位置を示す略V字形状のノッチ部を設けた長尺形状のケーブルシースと、このケーブルシースの収納部の近傍に設けられ伸長方向の張力を吸収する抗張力体とを備えたので、水が浸入しても吸水性テープが水と反応して止水ダムを形成することができ、収納部内の水走りを防止することができる。その結果、伝送特性の低減を抑制することができる。
【0065】
また、請求項2記載の本発明は、複数の素線又はテープ心線を一列に並列配置してなる光ファイバと、光ファイバに縦添えする吸水性テープと、光ファイバと吸水性テープを交互に積層させて一体に収納する収納部の中央部を2分割するための分割位置を示す略V字形状のノッチ部を設けた長尺形状のケーブルシースと、ケーブルシースの収納部の近傍に設けられ伸長方向の張力を吸収する抗張力体とを備えたので、水が浸入しても吸水性テープが水と反応して止水ダムを形成することができ、収納部内の水走りを防止することができる。その結果、伝送特性の低減を抑制することができる。
【0066】
また、並列配列された光ファイバと吸水性テープを交互に積層させて一体化することで、所定断面積内に複数の光ファイバを収納させることができるので、1本の光ドロップケーブルで複数の戸数に対して布設を行うことができる。
【0067】
請求項3記載の本発明によれば、ケーブルシースの短面に接続して光ファイバを支持する支持線を備えたので、ケーブル自体の引張強度を高めることができ、敷設する際の取扱い性及び信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る光ドロップケーブルの構成を示す断面図である。
【図2】止水試験を行う止水試験装置図であり、(a)コアとシースの間の介在物の止水性を試験する方法、(b)断面構造全体の透水性を試験する方法を示す図である。
【図3】本発明の第2の実施の形態に係る光ドロップケーブルの構成を示す断面図である。
【図4】本発明の第3の実施の形態に係る光ドロップケーブルの構成を示す断面図である。
【図5】第1〜第3の実施の形態に示す光ドロップケーブルを敷設した様子を示す概略図である。
【図6】従来の光ドロップケーブルの構成を示す断面図である。
【符号の説明】
1 、21、31 光ドロップケーブル
3−1〜3−8、3a−1〜3a−4、3b−1〜3b−4、
3c−1〜3c−4、3d−1〜3d−4 光ファイバ
5 収納部
7 抗張力体
9 ケーブルシース
11 ノッチ部
13 吸水性テープ
15 支持線
17 ネック
Claims (3)
- 複数の素線又はテープ心線を一列に並列配置してなる光ファイバと、
前記光ファイバに縦添えする吸水性テープと、
前記光ファイバと前記吸水性テープと一体に収納する収納部の中央部を2分割するための分割位置を示す略V字形状のノッチ部を設けた長尺形状のケーブルシースと、
前記ケーブルシースの収納部の近傍に設けられ伸長方向の張力を吸収する抗張力体とを備えたことを特徴とする光ドロップケーブル。 - 複数の素線又はテープ心線を一列に並列配置してなる光ファイバと、
前記光ファイバに縦添えする吸水性テープと、
前記光ファイバと前記吸水性テープを交互に積層させて一体に収納する収納部の中央部を2分割するための分割位置を示す略V字形状のノッチ部を設けた長尺形状のケーブルシースと、
前記ケーブルシースの収納部の近傍に設けられ伸長方向の張力を吸収する抗張力体とを備えたことを特徴とする光ドロップケーブル。 - 前記ケーブルシースの短面に接続して前記光ファイバを支持する支持線を備えたことを特徴とする請求項1又は2記載の光ドロップケーブル。
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2002
- 2002-10-31 JP JP2002317355A patent/JP2004151434A/ja active Pending
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