JP2004151242A - レンズ鏡筒の回転伝達機構及び回転伝達機構 - Google Patents
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Abstract
【構成】光軸と平行な回転伝達溝を内周面に有する回転環と、該回転伝達溝に対し回転方向に相対移動不能かつ光軸方向に摺動可能に係合する回転伝達突起を有する環状部材と、該環状部材に支持される可動要素とを有するレンズ鏡筒において、回転環を、互いの端面が対向する一対の回転環に分割し、該一対の回転環の対向端面の一方と他方に、光軸方向へ突出する係合凸部と、該係合凸部が係合する係合凹部とを形成し、このうち係合凸部を有する一方の回転環の内周面に、該係合凸部と回転方向位置を一致させ、かつその光軸方向の一部領域を該係合凸部上に位置させて回転伝達溝を形成したことを特徴とするレンズ鏡筒の回転伝達機構。
【選択図】 図25
Description
【技術分野】
本発明は、レンズ鏡筒などの回転伝達機構に関する。
【0002】
【従来技術及びその問題点】
レンズ鏡筒では、光軸方向へ相対移動可能な2つの回転部材を、回転方向には常に一体に回転させるような回転伝達機構を用いる場合がある。この種の回転伝達機構の代表的な構造としては、一方の回転部材に回転伝達溝として光軸方向への直線溝を形成し、この回転伝達溝に対して、他方の回転部材に設けたローラ等の突起物(回転伝達突起)が摺動可能に係合する構造となっている。ところで、回転伝達溝を有する側の回転部材が複数の回転環の結合体として構成される場合、回転伝達溝が複数の回転環にまたがって形成されていると、回転環相互のクリアランス等が原因となって回転伝達溝の途中で回転方向の段差が生じ、回転伝達に支障をきたすおそれがあった。一方、回転部材が複数の回転環の結合体として構成される場合において、単一の回転環のみで回転伝達溝を得ようとすると、直線溝の長さに応じてこの回転環の光軸方向長が増大してしまい、コンパクト性が損なわれるおそれがあった。
【0003】
【発明の目的】
本発明は、回転伝達溝を有する回転環が複数の回転環の結合体からなっているレンズ鏡筒などにおいて、回転伝達性能とコンパクト性を両立した回転伝達機構を提供することを目的とする。
【0004】
【発明の概要】
本発明のレンズ鏡筒の回転伝達機構は、光軸と平行な複数の回転伝達溝を内周面に有する回転環と、該複数の回転伝達溝に対し回転方向に相対移動不能かつ光軸方向に摺動可能に係合する複数の回転伝達突起を有する環状部材と、該環状部材に支持される可動要素とを有するレンズ鏡筒において、回転環を互いの端面が対向する一対の回転環に分割し、該一対の回転環の対向端面の一方と他方に、光軸方向へ突出する係合凸部と、該係合凸部が係合して回転方向の力を伝達する係合凹部とを形成した上で、係合凸部を有する一方の回転環の内周面に、該係合凸部と回転方向位置を一致させ、かつその光軸方向の一部領域を該係合凸部上に位置させて上記回転伝達溝を形成したことを特徴としている。
【0005】
本発明のレンズ鏡筒ではさらに、一対の回転環の内側に光軸方向へ直進移動可能に支持された直進環を有し、該直進環に光軸方向成分と周方向成分の両方を含む複数の貫通リード溝が形成され、複数の回転伝達突起をそれぞれ、貫通リード溝と回転伝達溝の両方に対し摺動可能に係合させてもよい。
この直進環はさらに、貫通リード溝に連通し周方向成分のみからなる貫通周方向溝を有し、回転伝達突起は、該貫通周方向溝との係合状態では、回転環に対して光軸方向に相対移動することなく該回転環と一体に回転方向に移動するようにしてもよい。
【0006】
回転伝達突起を有する環状部材は、例えば、回転によって可動レンズ群に光軸方向へ所定の移動軌跡を与えるカム溝を有するカム環とすることができる。
【0007】
回転伝達溝は、係合凸部上の形成領域では該係合凸部を径方向に貫通する貫通溝であり、該係合凸部を除く形成領域では有底溝とすることが可能である。
【0008】
本発明は、環状部材の回転に応じて光軸方向に進退する可動レンズ群を少なくとも2つ有し、該少なくとも2つの可動レンズ群の光軸方向の相対移動により変倍動作を行うズームレンズ鏡筒に適用可能である。
【0009】
本発明はまた、レンズ鏡筒以外における回転伝達機構に適用することもできる。
【0010】
【発明の実施の形態】
[レンズ鏡筒の全体の説明]
まず、図1ないし図19について、本実施形態のズームレンズ鏡筒71の全体構造を説明する。この実施形態は、デジタルカメラ70用のズームレンズ鏡筒に本発明を適用した実施形態であり、撮影光学系は、物体側から順に、第1レンズ群LG1、シャッタS及び絞りA、第2レンズ群LG2、第3レンズ群LG3、ローパスフィルタ(フィルタ類)LG4及び固体撮像素子(CCD)60からなっている。撮影光学系の光軸はZ1である。この撮影光軸Z1は、ズームレンズ鏡筒71の中心軸Z0と平行であり、かつ該鏡筒中心軸Z0に対して偏心している。ズーミングは、第1レンズ群LG1と第2レンズ群LG2を撮影光軸Z1方向に所定の軌跡で進退させ、フォーカシングは同方向への第3レンズ群LG3の移動で行う。なお、以下の説明中で「光軸方向」という記載は、特に断りがなければ撮影光軸Z1と平行な方向を意味している。
【0011】
図6及び図7に示すように、カメラボディ72内に固定環22が固定され、この固定環22の後部にCCDホルダ21が固定されている。CCDホルダ21上にはCCDベース板62を介して固体撮像素子60が支持され、固体撮像素子60の前部に、フィルタホルダ73とパッキン61を介してローパスフィルタLG4が支持されている。
【0012】
固定環22内には、第3レンズ群LG3を保持するAFレンズ枠(3群レンズ枠)51が光軸方向に直進移動可能に支持されている。すなわち、固定環22とCCDホルダ21には、撮影光軸Z1と平行な一対のAFガイド軸52、53の前端部と後端部がそれぞれ固定されており、このAFガイド軸52、53に対してそれぞれ、AFレンズ枠51に形成したガイド孔が摺動可能に嵌まっている。本実施形態では、AFガイド軸52がメインのガイド軸で、AFガイド軸53はAFレンズ枠51の回転規制用に設けられている。AFレンズ枠51に固定したAFナット54に対し、AFモータ160のドライブシャフトに形成した送りねじが螺合しており、該ドライブシャフトを回転させると、送りねじとAFナット54の螺合関係によってAFレンズ枠51が光軸方向に進退される。AFレンズ枠51は、AF枠付勢ばね55によって光軸方向の前方に付勢されている。
【0013】
図5に示すように、固定環22の上部には、ズームモータ150と減速ギヤボックス74が支持されている。減速ギヤボックス74は内部に減速ギヤ列を有し、ズームモータ150の駆動力をズームギヤ28に伝える。ズームギヤ28は、撮影光軸Z1と平行なズームギヤ軸29によって固定環22に枢着されている。ズームモータ150とAFモータ160は、固定環22の外周面に配設したレンズ駆動制御FPC(フレキシブルプリント回路)基板75を介して、カメラの制御回路により制御される。
【0014】
固定環22の内周面には、雌ヘリコイド22a、撮影光軸Z1と平行な3本の直進案内溝22b、雌ヘリコイド22aと平行な3本のリード溝22c、及び各リード溝22cの前端部に連通する周方向への回転摺動溝22dが形成されている。雌ヘリコイド22aは、回転摺動溝22dが形成されている固定環22前部の一部領域には形成されていない(図8参照)。
【0015】
ヘリコイド環18は、雌ヘリコイド22aに螺合する雄ヘリコイド18aと、リード溝22c及び回転摺動溝22dに係合する回転摺動突起18bとを外周面に有している(図4、図9)。雄ヘリコイド18a上には、撮影光軸Z1と平行なギヤ歯を有するスパーギヤ部18cが形成されており、スパーギヤ部18cはズームギヤ28に対して螺合する。従って、ズームギヤ28によって回転力を与えたときヘリコイド環18は、雌ヘリコイド22aと雄ヘリコイド18aが螺合関係にある状態では回転しながら光軸方向へ進退し、ある程度前方に移動すると、雄ヘリコイド18aが雌ヘリコイド22aから外れ、回転摺動溝22dと回転摺動突起18bの係合関係によって鏡筒中心軸Z0を中心とする周方向回転のみを行う。なお、雌ヘリコイド22aは、各リード溝22cを挟む一対のヘリコイド山の周方向間隔が他のヘリコイド山の周方向間隔よりも広くなっており、雄ヘリコイド18aは、この周方向間隔の広いヘリコイド山に係合するべく、回転摺動突起18bの後方に位置する3つのヘリコイド山18a−Wが他のヘリコイド山よりも周方向に幅広になっている(図8、図9)。固定環22には、回転摺動溝22dと外周面とを貫通するストッパ挿脱孔22eが形成され、このストッパ挿脱孔22eに対し、撮影領域を越えるヘリコイド環18の回動を規制するための鏡筒ストッパ26が着脱可能となっている。
【0016】
ヘリコイド環18の前端部内周面に形成した回転伝達凹部18d(図4、図10)に対し、第3外筒15の後端部から後方に突設した回転伝達突起15a(図11)が嵌入されている。回転伝達凹部18dと回転伝達突起15aはそれぞれ、周方向に位置を異ならせて3箇所設けられており、周方向位置が対応するそれぞれの回転伝達突起15aと回転伝達凹部18dは、鏡筒中心軸Z0に沿う方向への相対摺動は可能に結合し、該鏡筒中心軸Z0を中心とする周方向には相対回動不能に結合されている。すなわち、第3外筒15とヘリコイド環18は一体に回転する。また、ヘリコイド環18には、回転摺動突起18bの内径側の一部領域を切り欠いて嵌合凹部18eが形成されており、該嵌合凹部18eに嵌合する嵌合突起15bは、回転摺動突起18bが回転摺動溝22dに係合するとき、同時に回転摺動溝22dに係合する(図6のズームレンズ鏡筒上半断面参照)。
【0017】
第3外筒15とヘリコイド環18の間には、互いを光軸延長上での離間方向へ付勢する3つの離間方向付勢ばね25が設けられている。離間方向付勢ばね25は圧縮コイルばねからなり、その後端部がヘリコイド環18の前端部に開口するばね挿入凹部18fに収納され、前端部が第3外筒15のばね当付凹部15cに当接している。この離間方向付勢ばね25によって、回転摺動溝22dの前側壁面に向けて嵌合突起15bを押圧し、かつ回転摺動溝22dの後側壁面に向けて回転摺動突起18bを押圧することで、固定環22に対する第3外筒15とヘリコイド環18の光軸方向のバックラッシュが除去される。
【0018】
第3外筒15の内周面には、内径方向に突設された相対回動案内突起15dと、鏡筒中心軸Z0を中心とする周方向溝15eと、撮影光軸Z1と平行な3本のローラ嵌合溝15fとが形成されている(図4、図11)。相対回動案内突起15dは、周方向に位置を異ならせて複数設けられている。ローラ嵌合溝15fは、回転伝達突起15aに対応する周方向位置に形成されており、その後端部は、回転伝達突起15aを貫通して後方へ向け開口されている。また、ヘリコイド環18の内周面には鏡筒中心軸Z0を中心とする周方向溝18gが形成されている(図4、図10)。この第3外筒15とヘリコイド環18の結合体の内側には直進案内環14が支持される。直進案内環14の外周面には光軸方向の後方から順に、該径方向へ突出する3つの直進案内突起14aと、それぞれ周方向に位置を異ならせて複数設けた相対回動案内突起14b及び14cと、鏡筒中心軸Z0を中心とする周方向溝14dとが形成されている(図4、図12)。直進案内環14は、直進案内突起14aを直進案内溝22bに係合させることで、固定環22に対し光軸方向に直進案内される。また第3外筒15は、周方向溝15eを相対回動案内突起14cに係合させ、相対回動案内突起15dを周方向溝14dに係合させることで、直進案内環14に対して相対回動可能に結合される。周方向溝15e、14dと相対回動案内突起14c、15dはそれぞれ、光軸方向には若干相対移動可能なように遊嵌している。さらにヘリコイド環18も、周方向溝18gを相対回動案内突起14bに係合させることで、直進案内環14に対して相対回動は可能に結合される。周方向溝18gと相対回動案内突起14bは光軸方向には若干相対移動可能なように遊嵌している。
【0019】
直進案内環14には、内周面と外周面を貫通する3つのローラ案内貫通溝14eが形成されている。各ローラ案内貫通溝14eは、図12に示すように、周方向へ向け形成された平行な前後の周方向溝部14e−1、14e−2と、この両周方向溝部14e−1及び14e−2を接続する、上記雌ヘリコイド22aと平行なリード溝部14e−3とを有する。それぞれのローラ案内貫通溝14eに対し、カム環11の外周面に設けたカム環ローラ32が嵌まっている。カム環ローラ32は、ローラ固定ねじ32aを介してカム環11に固定されており、周方向へ位置を異ならせて3つ設けられている。カム環ローラ32はさらに、ローラ案内貫通溝14eを貫通して第3外筒15内周面のローラ嵌合溝15fに嵌まっている。各ローラ嵌合溝15fの前端部付近には、ローラ付勢ばね17に設けた3つのローラ押圧片17aが嵌っている(図11)。ローラ押圧片17aは、カム環ローラ32が周方向溝部14e−1に係合するときに該カム環ローラ32に当接して後方へ押圧し、カム環ローラ32とローラ案内貫通溝14e(周方向溝部14e−1)との間のバックラッシュを取る。
【0020】
以上の構造から、固定環22からカム環11までの繰り出しの態様が理解される。すなわち、ズームモータ150によってズームギヤ28を鏡筒繰出方向に回転駆動すると、雌ヘリコイド22aと雄ヘリコイド18aの関係によってヘリコイド環18が回転しながら前方に繰り出される。ヘリコイド環18と第3外筒15はそれぞれ、周方向溝14d、15e及び18gと相対回動案内突起14b、14c及び15dの係合関係によって、直進案内環14に対して相対回動可能かつ回転軸方向(鏡筒中心軸Z0に沿う方向)へは共に移動するように結合されているため、ヘリコイド環18が回転繰出されると、第3外筒15も同方向に回転しながら前方に繰り出され、直進案内環14はヘリコイド環18及び第3外筒15と共に前方へ直進移動する。また、第3外筒15の回転力はローラ嵌合溝15fとカム環ローラ32を介してカム環11に伝達される。カム環ローラ32はローラ案内貫通溝14eにも嵌まっているため、直進案内環14に対してカム環11は、リード溝部14e−3の形状に従って回転しながら前方に繰り出される。前述の通り、直進案内環14自体も第3外筒15及びヘリコイド環18と共に前方に直進移動しているため、結果としてカム環11には、リード溝部14e−3に従う回転繰出分と、直進案内環14の前方への直進移動分とを合わせた光軸方向移動量が与えられる。
【0021】
以上の繰出動作は雄ヘリコイド18aが雌ヘリコイド22aと螺合した状態で行われ、このとき回転摺動突起18bはリード溝22c内を移動している。ヘリコイドによって所定量繰り出されると、雄ヘリコイド18aと雌ヘリコイド22aの螺合が解除されて、やがて回転摺動突起18bがリード溝22cから回転摺動溝22d内へ入る。このとき同時に、カム環ローラ32はローラ案内貫通溝14eの周方向溝部14e−1に入る。すると、ヘリコイド環18及び第3外筒15は、ヘリコイドによる回転繰出力が作用しなくなるため、ズームギヤ28の駆動に応じて光軸方向の一定位置で回動のみを行うようになる。この状態では直進案内環14が停止し、かつカム環ローラ32が周方向溝部14e−1内に移行したため、カム環11にも前方への移動力が与えられなくなり、カム環11は第3外筒15の回転に応じて一定位置で回動のみ行うようになる。
【0022】
ズームギヤ28を鏡筒収納方向に回転駆動させると、以上と逆の動作が行われる。カム環ローラ32がローラ案内貫通溝14eの周方向溝部14e−2に入るまでヘリコイド環18に回転を与えると、以上の各鏡筒部材が図7に示す位置まで後退する。
【0023】
カム環11より先の構造をさらに説明する。直進案内環14の内周面には、撮影光軸Z1と平行な3つの第1直進案内溝14f及び6つの第2直進案内溝14gが、それぞれ周方向に位置を異ならせて形成されている。第1直進案内溝14fは、6つのうち3つの第2直進案内溝14gの両側に位置する一対の溝部からなっており、この3つの第1直進案内溝14fに対し、2群直進案内環10に設けた3つの股状突起10a(図3、図15)が摺動可能に係合している。一方、第2直進案内溝14gに対しては、第2外筒13の後端部外周面に突設した6つの直進案内突起13a(図2、図17)が摺動可能に係合している。したがって、第2外筒13と2群直進案内環10はいずれも、直進案内環14を介して光軸方向に直進案内されている。
【0024】
2群直進案内環10は、第2レンズ群LG2を支持する2群レンズ移動枠8を直進案内するための部材であり、第2外筒13は、第1レンズ群LG1を支持する第1外筒12を直進案内するための部材である。
【0025】
まず第2レンズ群LG2の支持構造を説明する。2群直進案内環10は、3つの股状突起10aを接続するリング部10bから前方へ向けて、3つの直進案内キー10cを突出させている(図3、図15)。図6及び図7に示すように、リング部10bの外縁部は、カム環11の後端部内周面に形成した周方向溝11eに対し相対回転は可能で光軸方向の相対移動は不能に係合しており、直進案内キー10cはカム環11の内側に延出されている。各直進案内キー10cは、撮影光軸Z1と平行な一対のガイド面を側面に有しており、このガイド面を、カム環11の内側に支持された2群レンズ移動枠8の直進案内溝8aに係合させることによって、2群レンズ移動枠8を軸方向に直進案内している。直進案内溝8aは、2群レンズ移動枠8の外周面側に形成されている。
【0026】
カム環11の内周面には2群案内カム溝11aが形成されている。図14に示すように、2群案内カム溝11aは、光軸方向及び周方向に位置を異ならせた前方カム溝11a−1と後方カム溝11a−2からなっている。前方カム溝11a−1と後方カム溝11a−2はいずれも、同形状の基礎軌跡αをトレースして形成されたカム溝であるが、それぞれが基礎軌跡α全域をカバーしているのではなく、前方カム溝11a−1と後方カム溝11a−2では基礎軌跡α上に占める領域の一部が異なっている。基礎軌跡とは、ズーム領域及び収納用領域を含む全ての鏡筒使用領域(使用領域)と、鏡筒の組立分解用領域とを含む概念上のカム溝形状である。鏡筒使用領域とは、言い換えれば、カム機構によって移動が制御されうる領域のことであり、カム機構の組立分解領域と区別する意味で用いられている。また、ズーム領域とは、鏡筒使用領域の中でも特にワイド端とテレ端の間の移動を制御するための領域であり、収納用領域と区別する意味で用いられている。カム環11には、一対の前方カム溝11a−1と後方カム溝11a−2を1グループとした場合、周方向に等間隔で3グループの2群案内カム溝11aが形成されている。
【0027】
2群案内カム溝11aに対して、2群レンズ移動枠8の外周面に設けた2群用カムフォロア8bが係合している。2群案内カム溝11aと同様に2群用カムフォロア8bも、光軸方向及び周方向に位置を異ならせた一対の前方カムフォロア8b−1と後方カムフォロア8b−2を1グループとして周方向に等間隔で3グループが設けられており、各前方カムフォロア8b−1は前方カム溝11a−1に係合し、各後方カムフォロア8b−2は後方カム溝11a−2に係合するように光軸方向及び周方向の間隔が定められている。
【0028】
2群レンズ移動枠8は2群直進案内環10を介して光軸方向に直進案内されているため、カム環11が回転すると、2群案内カム溝11aに従って、2群レンズ移動枠8が光軸方向へ所定の軌跡で移動する。
【0029】
2群レンズ移動枠8の内側には、第2レンズ群LG2を保持する2群レンズ枠6が支持されている。2群レンズ枠6は、一対の2群レンズ枠支持板36、37に対し、2群回動軸33を介して軸支されており、2群枠支持板36、37が支持板固定ビス66によって2群レンズ移動枠8に固定されている。2群回動軸33は撮影光軸Z1と平行でかつ撮影光軸Z1に対して偏心しており、2群レンズ枠6は、2群回動軸33を回動中心として、第2レンズ群LG2の光軸Z2を撮影光軸Z1と一致させる撮影用位置(図6)と、2群光軸Z2を撮影光軸Z1から偏心させる収納用退避位置(図7)とに回動することができる。2群レンズ移動枠8には、2群レンズ枠6を上記撮影用位置で回動規制する回動規制ピン35が設けられていて、2群レンズ枠6は、2群レンズ枠戻しばね39によって該回動規制ピン35との当接方向へ回動付勢されている。軸方向押圧ばね38は、2群レンズ枠6の光軸方向のバックラッシュ取りを行う。
【0030】
2群レンズ枠6は、光軸方向には2群レンズ移動枠8と一体に移動する。CCDホルダ21には2群レンズ枠6に係合可能な位置にカム突起21a(図4)が前方に向けて突設されており、図7のように2群レンズ移動枠8が収納方向に移動してCCDホルダ21に接近すると、該カム突起21aの先端部に形成したカム面が、2群レンズ枠6に係合して上記の収納用退避位置に回動させる。
【0031】
続いて第1レンズ群LG1の支持構造を説明する。直進案内環14を介して光軸方向に直進案内された第2外筒13の内周面には、周方向に位置を異ならせて3つの直進案内溝13bが光軸方向へ形成されており、各直進案内溝13bに対し、第1外筒12の後端部付近の外周面に形成した3つの係合突起12aが摺動可能に嵌合している(図2、図17及び図18参照)。すなわち、第1外筒12は、直進案内環14と第2外筒13を介して光軸方向に直進案内されている。また、第2外筒13は後端部付近の内周面に、周方向へ向かう内径フランジ13cを有し、この内径フランジ13cがカム環11の外周面に設けた周方向溝11cに摺動可能に係合することで、第2外筒13は、カム環11に対して相対回転可能かつ光軸方向の相対移動は不能に結合されている。一方、第1外筒12は、内径方向に突出する3つの1群用ローラ(カムフォロア)31を有し、それぞれの1群用ローラ31が、カム環11の外周面に3本形成した1群案内カム溝11bに摺動可能に嵌合している。
【0032】
第1外筒12内には、1群調整環2を介して1群レンズ枠1が支持されている。1群レンズ枠1には第1レンズ群LG1が固定され、その外周面に形成した雄調整ねじ1aが、1群調整環2の内周面に形成した雌調整ねじ2aに螺合している。この調整ねじの螺合位置を調整することよって、1群レンズ枠1は1群調整環2に対して光軸方向に位置調整可能となっている。
【0033】
1群調整環2は外径方向に突出する一対の(図2には一つのみを図示)ガイド突起2bを有し、この一対のガイド突起2bが、第1外筒12の内周面側に形成した一対の1群調整環ガイド溝12bに摺動可能に係合している。1群調整環ガイド溝12bは撮影光軸Z1と平行に形成されており、該1群調整環ガイド溝12bとガイド突起2bの係合関係によって、1群調整環2と1群レンズ枠1の結合体は、第1外筒12に対して光軸方向の前後移動が可能になっている。第1外筒12にはさらに、ガイド突起2bの前方を塞ぐように、1群抜止環3が抜止環固定ビス64によって固定されている。1群抜止環3のばね受け部3aとガイド突起2bとの間には、圧縮コイルばねからなる1群付勢ばね24が設けられ、該1群付勢ばね24によって1群調整環2は光軸方向後方に付勢されている。1群調整環2は、その前端部付近の外周面に突設した係合爪2cを、1群抜止環3の前面(図2に見えている側の面)に係合させることによって、第1外筒12に対する光軸方向後方への最大移動位置が規制される(図6の上半断面参照)。一方、1群付勢ばね24を圧縮させることによって、1群調整環2は光軸方向前方に若干量移動することができる。
【0034】
第1レンズ群LG1と第2レンズ群LG2の間には、シャッタSと絞りAを有するシャッタユニット76が支持されている。シャッタユニット76は、2群レンズ移動枠8の内側に支持されており、シャッタSと絞りAは、第2レンズ群LG2との空気間隔が固定となっている。シャッタユニット76を挟んだ前後位置には、シャッタSと絞りAを駆動する2つのアクチュエータ(不図示)が、それぞれ一つずつ配置されており、シャッタユニット76からはこれらアクチュエータをカメラの制御回路と接続するための露出制御FPC(フレキシブルプリント回路)基板77が延出されている。
【0035】
第1外筒12の前端部には、シャッタSとは別に、非撮影時に撮影開口を閉じて撮影光学系(第1レンズ群LG1)を保護するためのレンズバリヤ機構が設けられる。レンズバリヤ機構は、鏡筒中心軸Z0に対して偏心した位置に設けた回動軸を中心として回動可能な一対のバリヤ羽根104及び105と、該バリヤ羽根104、105を閉じ方向に付勢する一対のバリヤ付勢ばね106と、鏡筒中心軸Z0を中心として回動可能で所定方向の回動によってバリヤ羽根104、105に係合して開かせるバリヤ駆動環103と、該バリヤ駆動環103をバリヤ開放方向に回動付勢するバリヤ駆動環付勢ばね107と、バリヤ羽根104、105とバリヤ駆動環103の間に位置するバリヤ押さえ板102とを備えている。バリヤ駆動環付勢ばね107の付勢力はバリヤ付勢ばね106の付勢力よりも強く設定されており、ズームレンズ鏡筒71がズーム領域(図6)に繰り出されているときには、バリヤ駆動環付勢ばね107がバリヤ駆動環103をバリヤ開放用の角度位置に保持して、バリヤ付勢ばね106に抗してバリヤ羽根104、105が開かれる。そしてズームレンズ鏡筒71がズーム領域から収納位置(図7)へ移動する途中で、カム環11のバリヤ駆動環押圧面11d(図3、図13)がバリヤ駆動環103をバリヤ開放方向と反対方向に強制回動させ、バリヤ駆動環103がバリヤ羽根104、105に対する係合を解除して、該バリヤ羽根104、105がバリヤ付勢ばね106の付勢力によって閉じられる。レンズバリヤ機構の前部は、バリヤカバー101(化粧板)によって覆われている。
【0036】
以上の構造のズームレンズ鏡筒71の全体的な繰出及び収納動作を、図6、図7及び図19を参照して説明する。図19は、ズームレンズ鏡筒71の主要な部材の関係を概念的に示したものであり、各部材の符号の後の括弧内の「S」は固定部材、「L」は光軸方向の直線移動のみ行う部材、「R」は回転のみ行う部材、「RL」は回転しながら光軸方向に移動する部材であることをそれぞれ意味している。また、括弧内に二つの記号が併記されている部材は、繰出時及び収納時にその動作態様が切り換わることを意味している。
【0037】
カム環11が収納位置から定位置回転状態に繰り出される段階までは既に説明しているので簡潔に述べる。図7の鏡筒収納状態では、ズームレンズ鏡筒71はカメラボディ72内に完全に格納されており、カメラボディ72の前面は、ズームレンズ鏡筒71が突出しないフラット形状になっている。この鏡筒収納状態からズームモータ150によりズームギヤ28を繰出方向に回転駆動させると、ヘリコイド環18と第3外筒15の結合体がヘリコイド(雄ヘリコイド18a、雌ヘリコイド22a)に従って回転繰出される。直進案内環14は、第3外筒15及びヘリコイド環18と共に前方に直進移動する。このとき、第3外筒15により回転力が付与されるカム環11は、直進案内環14の前方への直進移動分と、該直進案内環14との間に設けたリード構造(カム環ローラ32、リード溝部14e−3)による繰出分との合成移動を行う。ヘリコイド環18とカム環11が前方の所定位置まで繰り出されると、それぞれの回転繰出構造(ヘリコイド、リード)の機能が解除されて、鏡筒中心軸Z0を中心とした周方向回転のみを行うようになる。
【0038】
カム環11が回転すると、その内側では、2群直進案内環10を介して直進案内された2群レンズ移動枠8が、2群用カムフォロア8bと2群案内カム溝11aの関係によって光軸方向に所定の軌跡で移動される。図7の鏡筒収納状態では、2群レンズ移動枠8内の2群レンズ枠6は、CCDホルダ21に突設したカム突起21aの作用によって、2群光軸Z2が撮影光軸Z1から偏心する収納用退避位置に保持されており、該2群レンズ枠6は、2群レンズ移動枠8がズーム領域まで繰り出される途中でカム突起21aから離れて、2群レンズ枠戻しばね39の付勢力によって2群光軸Z2を撮影光軸Z1と一致させる撮影用位置(図6)に回動する。以後、ズームレンズ鏡筒71を再び収納位置に移動させるまでは、2群レンズ枠6は撮影用位置に保持される。
【0039】
また、カム環11が回転すると、該カム環11の外側では、第2外筒13を介して直進案内された第1外筒12が、1群用ローラ31と1群案内カム溝11bの関係によって光軸方向に所定の軌跡で移動される。
【0040】
すなわち、撮像面(CCD受光面)に対する第1レンズ群LG1と第2レンズ群LG2の繰出位置はそれぞれ、前者が、固定環22に対するカム環11の前方移動量と、該カム環11に対する第1外筒12のカム繰出量との合算値として決まり、後者が、固定環22に対するカム環11の前方移動量と、該カム環11に対する2群レンズ移動枠8のカム繰出量との合算値として決まる。ズーミングは、この第1レンズ群LG1と第2レンズ群LG2が互いの空気間隔を変化させながら撮影光軸Z1上を移動することにより行われる。図7の収納位置から鏡筒繰出を行うと、まず図6の下半断面に示すワイド端の繰出状態になり、さらにズームモータ150を鏡筒繰出方向に駆動させると、同図の上半断面に示すテレ端の繰出状態となる。図6から分かるように、本実施形態のズームレンズ鏡筒71は、ワイド端では第1レンズ群LG1と第2レンズ群LG2の間隔が大きく、テレ端では、第1レンズ群LG1と第2レンズ群LG2が互いの接近方向に移動して間隔が小さくなる。このような第1レンズ群LG1と第2レンズ群LG2の空気間隔の変化は、2群案内カム溝11aと1群案内カム溝11bの軌跡によって与えられるものである。このテレ端とワイド端の間のズーム領域(ズーミング使用領域)では、カム環11、第3外筒15及びヘリコイド環18は、前述の定位置回転のみを行い、光軸方向へは進退しない。
【0041】
ズーム領域では、被写体距離に応じてAFモータ160を駆動することにより、第3レンズ群LG3(AFレンズ枠51)が撮影光軸Z1に沿って移動してフォーカシングがなされる。
【0042】
ズームモータ150を鏡筒収納方向に駆動させると、ズームレンズ鏡筒71は、前述の繰り出し時とは逆の収納動作を行い、カメラボディ72の内部に完全に格納される収納位置(図7)まで移動される。この収納位置への移動の途中で、2群レンズ枠6がカム突起21aによって収納用退避位置に回動され、2群レンズ移動枠8と共に後退する。ズームレンズ鏡筒71が収納位置まで移動されると、第2レンズ群LG2は、光軸方向において第3レンズ群LG3やローパスフィルタLG4と同位置に格納される(鏡筒の径方向に重なる)。この収納時の第2レンズ群LG2の退避構造によってズームレンズ鏡筒71の収納長が短くなり、図7の左右方向におけるカメラボディ72の厚みを小さくすることが可能となっている。
【0043】
デジタルカメラ70は、ズームレンズ鏡筒71に連動してするズームファインダを備えている。ズームファインダは、ファインダギヤ30をスパーギヤ部18cに噛合させてヘリコイド環18から動力を得ており、該ヘリコイド環18がズーム領域において前述の定位置回転を行うと、その回転力を受けてファインダギヤ30が回転する。ファインダ光学系は、対物窓81a、第1の可動変倍レンズ81b、第2の可動変倍レンズ81c、プリズム81d、接眼レンズ81e、接眼窓81fを有し、第1と第2の可動変倍レンズ81b、81cをファインダ対物系の光軸Z3に沿って所定の軌跡で移動させることで変倍を行う。ファインダ対物系の光軸Z3は、撮影光軸Z1と平行である。可動変倍レンズ81b及び81cの保持枠は、ガイドシャフト82によって光軸Z3方向に移動可能に直進案内され、かつガイドシャフト82と平行なシャフトねじから駆動力を受けるようになっている。このシャフトねじとファインダギヤ30の間に減速ギヤ列が設けられており、ファインダギヤ30が回転するとシャフトねじが回転し、可動変倍レンズ81b、81cが進退する。以上のズームファインダの構成要素は、図5に示すファインダユニット80としてサブアッシされ、固定環22の上部に取り付けられる。
【0044】
[本発明の特徴部分の説明]
続いて、図20以下を参照して本発明の特徴部分を説明する。なお、図20ないし図23では、直進案内環14と第3外筒15の一部やローラ付勢ばね17は実際には見えない位置にあるが実線で表している。また、図24ないし図26は鏡筒内径側から見た状態であるため、リード溝部14e−3の傾斜方向などが図20ないし図23とは逆になっている。
【0045】
ズームレンズ鏡筒71では、固定環22側から見て一段目の回転環が一対の第3外筒15とヘリコイド環18に分割されている。符号は付さないが、説明の便宜上、この第3外筒15とヘリコイド環18を合わせて回転環KZとする。第3外筒15とヘリコイド環18は、離間方向付勢ばね25によって離間方向に付勢され、それぞれの嵌合突起15bと回転摺動突起18bが回転摺動溝22dに係合するとき、該離間方向付勢ばね25の付勢力によって回転摺動溝22dの前壁面と後壁面に押し付けられることで、固定環22に対するバックラッシュ取りがなされる。このように、実質的に一体の環体として機能する回転環(KZ)を2つの回転環(第3外筒15とヘリコイド環18)に分け、両回転環の間に挟着保持した付勢部材(離間方向付勢ばね25)と、両回転環の回転案内部分(嵌合突起15b、回転摺動突起18b及び回転摺動溝22d)とによってバックラッシュ取りを行うと、機構をコンパクトかつ簡単にすることができる。
【0046】
一方、回転環KZ(第3外筒15及びヘリコイド環18)の基本的な機能は、カム環(環状部材)11のカム環ローラ(回転伝達突起)32に対して回転方向の力を伝えることである。カム環11は、カム環ローラ32を介して回転方向及び光軸方向の移動力が与えられることにより、第1レンズ群(可動要素、可動レンズ群)LG1と第2レンズ群(可動要素、可動レンズ群)LG2を光軸方向に移動させる。このカム環ローラ32に対する回転環KZの係合部分、すなわちローラ嵌合溝15fには、次のような条件を満たしていなければならない。
【0047】
まず、カム環ローラ32は、図20に示す収納位置と図21及び図22に示すズーム領域との間で、回転のみならず、直進案内環14のリード溝部14e−3によって第3外筒15及びヘリコイド環18に対する光軸方向への相対移動も与えられるため、カム環ローラ32が係合するローラ嵌合溝15fは、該カム環ローラ32の光軸方向の移動域に対応する長さを有していなければならない。
【0048】
また、第3外筒15とヘリコイド環18は、回転伝達突起(係合凸部)15aと回転伝達凹部(係合凹部)18dの係合関係によって相対回動が規制されて実質上は一つの回転環KZとして機能するが、実際には第3外筒15とヘリコイド環18が別部材であるが故に(組立及び分解を可能にするために)、回転伝達突起15aと回転伝達凹部18dは回転方向に嵌合クリアランスを有する。具体的には、図26に示すように、回転伝達凹部18dの一対の平行な対向面18d−sの回転方向における間隔は、回転伝達突起15aの両側面15a−sの回転方向における間隔よりも若干大きくなるように形成されている。このクリアランスによって第3外筒15とヘリコイド環18は、回転方向の力を与えたときに僅かながら回転方向の位相が変化する。例えば、鏡筒収納状態である図24の状態から、図25に矢印で示す繰出方向の回転をヘリコイド環18に与えると、図25のように、ヘリコイド環18は第3外筒15に対してθだけ回転方向に移動してから回転伝達凹部18dの一方の対向面18d−sを回転伝達突起15aの一方の側面15a−sに当接させる。したがって、カム環ローラ32が係合するローラ嵌合溝15fは、第3外筒15とヘリコイド環18の回転方向位相のずれに関係なく、カム環ローラ32を常にスムーズに光軸方向に移動させる構造でなければならない。なお、図24ないし図26では、回転伝達突起15aと回転伝達凹部18dの嵌合クリアランスは、視認しやすくするために実際よりも大きく描かれている。
【0049】
本実施形態のズームレンズ鏡筒71は、ヘリコイド環18(回転伝達凹部18d)に対する係合部分として、光軸方向後方に突出する回転伝達突起15aが第3外筒15に設けられていることに着目し、この回転伝達突起15aを利用してローラ嵌合溝15fを形成したことに特徴を有する。より詳細には、3つのローラ嵌合溝15fはそれぞれ、3つの回転伝達突起15aと回転方向位置が一致するように第3外筒15の内周面に形成され、かつその光軸方向の最後方領域が各回転伝達突起15a上に延長して形成されている。このローラ嵌合溝15fによれば、コンパクトな構造で以上の条件を満たすことができる。
【0050】
まず、ローラ嵌合溝15fは、ヘリコイド環18には形成されず、第3外筒15のみに形成された溝部である。よって、図25のように回転伝達突起15aと回転伝達凹部18dの間の嵌合クリアランスによって第3外筒15とヘリコイド環18の回転位相が若干変化しても、ローラ嵌合溝15fにおける両側の対向ガイド面15f−sの形状は変わることがない。つまり、カム環ローラ32の光軸方向移動を妨げることなく、常に確実に案内することができる。
【0051】
また、第3外筒15における光軸方向への突出部である回転伝達突起15aを利用してローラ嵌合溝15fを形成することで、ローラ嵌合溝15f自体に必要十分な光軸方向の長さを与えることができる。図20ないし図22に示すように、カム環ローラ32の光軸方向の可動領域D1(図20)は、回転伝達突起15aを除いた第3外筒15の本体部における光軸方向への溝形成可能領域D2(図20)よりも長く、特に図20及び図24の鏡筒収納状態では、カム環ローラ32が、第3外筒15の本体部よりも後方のヘリコイド環18の内側位置まで後退する。しかし、ローラ嵌合溝15fが形成されている回転伝達突起15aは、回転伝達凹部18dと係合する関係上このカム環ローラ32の後退位置まで延出されているので、当該後退位置にあってもローラ嵌合溝15fとカム環ローラ32の係合を継続させることができる。すなわち、回転環KZを構成する一方の第3外筒15にのみカム環ローラ32との係合部(ローラ嵌合溝15f)を形成しても、第3外筒15とヘリコイド環18にまたがる光軸方向領域で該カム環ローラ32を案内することができる。
【0052】
なお、第3外筒15の内周面にはローラ嵌合溝15fと交差する周方向溝15eが形成されているが、この周方向溝15eはローラ嵌合溝15fよりも浅いため、カム環ローラ32に対するローラ嵌合溝15fの案内性能が損なわれることはない。
【0053】
図27と図28は、本実施形態に対する比較例を示している。この比較例では、本実施形態の第3外筒15とヘリコイド環18に対応する前方環15′と後方環18′のそれぞれに、光軸方向への直線溝であるローラ嵌合溝15f′とローラ嵌合溝18xが形成されており、回転伝達ローラ32′は、この2部材にまたがって形成されたローラ嵌合溝15f′及び18x内を移動するようになっている。前方環15′と後方環18′は互いの対向端面に設けた回転伝達突起15a′と回転伝達凹部18d′を係合させており、回転伝達突起15a′と回転伝達凹部18d′の間には回転方向に若干の嵌合クリアランスがある。従って、このクリアランスを原因として図28のように前方環15′と後方環18′の回転位相が若干ずれた場合、ローラ嵌合溝15f′のガイド面とローラ嵌合溝18xのガイド面との間に段差が生じ、回転伝達ローラ32′のスムーズな移動を妨げるおそれがある。段差が大きい場合には、ローラ嵌合溝15f′とローラ嵌合溝18xの接続部分を回転伝達ローラ32′が通過できなくなるおそれも出てくる。
【0054】
また、この比較例においてローラ嵌合溝15f′とローラ嵌合溝18xの間に段差ができることを嫌って、ローラ嵌合溝15f′とローラ嵌合溝18xのいずれか一方を省略しようとすると、その分だけ他方のローラ嵌合溝を光軸方向に長くする必要が生じ、結果として前方環15′と後方環18′のいずれかの光軸方向サイズが大きくなってしまう。例えば、ローラ嵌合溝18xを省略するためには、その長さ分だけローラ嵌合溝15f′を有する前方環15′を光軸方向前方に長くしなければならないので、鏡筒が大型化してしまう。
【0055】
これに対し、光軸方向後方に突出する回転伝達突起15aが第3外筒15に設けられていることに着目し、この回転伝達突起15aをローラ嵌合溝15fの形成領域として利用した本実施形態の構造によれば、ローラ嵌合溝15fの途中に段差を生じることなく確実にカム環ローラ32をガイドすることができ、しかも第3外筒15を光軸方向前方に延長することなく、ローラ嵌合溝15fの十分なガイド長を稼ぐことができる。
【0056】
以上、図示実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明はこの実施形態に限定されるものではない。例えば図示実施形態では、光軸方向前方の第3外筒15に回転伝達突起15aとローラ嵌合溝15fが設けられ、後方のヘリコイド環18に回転伝達凹部18dが設けられているが、光軸方向後方の回転環に回転伝達突起15aに相当する係合凸部とローラ嵌合溝15fに相当する回転伝達溝を形成してもよい。但し、係合凸部と回転伝達溝を設ける回転環は、一対の回転環のうち、本体部分の光軸方向長が大きい方の回転環(図示実施形態では第3外筒15)とする方が、係合凸部の光軸方向長さが短くて済むので鏡筒構成上好ましい。
【0057】
また、図示実施形態のローラ嵌合溝15fは、回転伝達突起15a上では該回転伝達突起15aを径方向に貫通する貫通溝であり、その他の領域では有底溝であるが、本発明の回転伝達溝は有底溝と貫通溝のいずれであってもよいし、また実施形態のように有底溝部分と貫通溝部分が混在していてもよい。
【0058】
また実施形態はズームレンズ鏡筒に関しているが、本発明は単焦点のレンズ鏡筒にも適用することができる。例えば、図示実施形態におけるカム環11は収納位置からズーム域までの回転繰出後にズーミング用の定位置回転を行うが、こうした定位置回転はせずに回転繰出のみ行うような環状部材への回転伝達構造としても本発明は適用可能である。
【0059】
また本発明は、回転伝達される環状部材が支持する対象を、レンズ枠などの光学要素以外の可動要素とすることによって、レンズ鏡筒以外における回転伝達機構にも適用することができる。
【0060】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、回転伝達溝を有する回転環が複数の回転環の結合体からなっているレンズ鏡筒になどおいて、回転伝達性能とコンパクト性を両立した回転伝達機構を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のカム繰出機構を適用したズームレンズ鏡筒の分解斜視図である。
【図2】図1のズームレンズ鏡筒における、第1レンズ群の支持機構に関する部分の分解斜視図である。
【図3】図1のズームレンズ鏡筒における、第2レンズ群の支持機構に関する部分の分解斜視図である。
【図4】図1のズームレンズ鏡筒における、固定環から第3外筒までの繰出機構に関する部分の分解斜視図である。
【図5】図1のズームレンズ鏡筒に、ズームモータとファインダユニットを加えた完成状態の斜視図である。
【図6】図1のズームレンズ鏡筒のワイド端とテレ端を示す、該ズームレンズ鏡筒を搭載したカメラの縦断面図である。
【図7】図6カメラの鏡筒収納状態の縦断面図である。
【図8】固定環の平面図である。
【図9】ヘリコイド環の平面図である。
【図10】ヘリコイド環の内周面側の構成要素を透視して示す平面図である。
【図11】第3外筒の平面図である。
【図12】直進案内環の平面図である。
【図13】カム環の平面図である。
【図14】カム環の内周面側の2群案内カム溝を透視して示す平面図である。
【図15】直進案内環の平面図である。
【図16】2群レンズ移動枠の平面図である。
【図17】第2外筒の平面図である。
【図18】第1外筒の平面図である。
【図19】本実施形態のズームレンズ鏡筒の主要な部材の関係を概念的に示す図である。
【図20】鏡筒収納状態におけるヘリコイド環、第3外筒及び直進案内環の関係を示す平面図である。
【図21】ワイド端におけるヘリコイド環、第3外筒及び直進案内環の関係を示す平面図である。
【図22】テレ端におけるヘリコイド環、第3外筒及び直進案内環の関係を示す平面図である。
【図23】鏡筒分解状態におけるヘリコイド環、第3外筒及び直進案内環の関係を示す平面図である。
【図24】第3外筒の回転伝達突起とヘリコイド環の回転伝達凹部の係合部分付近を拡大して示す、レンズ鏡筒内面側から見た展開平面図である。
【図25】図24においてヘリコイド環に回転力が作用した状態を示す、レンズ鏡筒内面側から見た展開平面図である。
【図26】図24及び図25の係合状態を解除して分割した、レンズ鏡筒内面側から見た第3外筒とヘリコイド環の展開平面図である。
【図27】本発明実施形態との比較例を示す、前方環と後方環の係合部分付近を拡大した展開平面図である。
【図28】図27の比較例において、後方環が回転して前方環との回転位相が変化した状態を示す展開平面図である。
【符号の説明】
LG1 第1レンズ群(可動要素、可動レンズ群)
LG2 第2レンズ群(可動要素、可動レンズ群)
LG3 第3レンズ群
LG4 ローパスフィルタ
S シャッタ
A 絞り
Z0 鏡筒中心軸
Z1 撮影光軸
Z2 2群光軸
Z3 ファインダ対物系の光軸
1 1群レンズ枠
1a 雄調整ねじ
2 1群調整環
2a 雌調整ねじ
2b ガイド突起
2c 係合爪
3 1群抜止環
3a ばね受け部
6 2群レンズ枠
8 2群レンズ移動枠
8a 直進案内溝
8b 2群用カムフォロア
8b−1 前方カムフォロア
8b−2 後方カムフォロア
10 2群直進案内環
10a 股状突起
10b リング部
10c 直進案内キー
11 カム環(環状部材)
11a 2群案内カム溝
11a−1 前方カム溝
11a−2 後方カム溝
11b 1群案内カム溝
11c 11e 周方向溝
11d バリヤ駆動環押圧面
12 第1外筒
12a 係合突起
12b 1群調整環ガイド溝
13 第2外筒
13a 直進案内突起
13b 直進案内溝
13c 内径フランジ
14 直進案内環
14a 直進案内突起
14b 14c 相対回動案内突起
14d 周方向溝
14e ローラ案内貫通溝
14e−1 14e−2 周方向溝部
14e−3 リード溝部
14f 第1直進案内溝
14g 第2直進案内溝
15 第3外筒(回転環)
15a 回転伝達突起(係合凸部)
15a−s 側面
15b 嵌合突起
15c ばね当付凹部
15d 相対回動案内突起
15e 周方向溝
15f ローラ嵌合溝(回転伝達溝)
17 ローラ付勢ばね
17a ローラ押圧片
18 ヘリコイド環(回転環)
18a 雄ヘリコイド
18b 回転摺動突起
18c スパーギヤ部
18d 回転伝達凹部(係合凹部)
18d−s 対向面
18e 嵌合凹部
18f ばね挿入凹部
18g 周方向溝
21 CCDホルダ
21a カム突起
22 固定環
22a 雌ヘリコイド
22b 直進案内溝
22c リード溝
22d 回転摺動溝
22e ストッパ挿脱孔
24 1群付勢ばね
25 離間方向付勢ばね
26 鏡筒ストッパ
28 ズームギヤ
29 ズームギヤ軸
30 ファインダギヤ
31 1群用ローラ
32 カム環ローラ(回転伝達突起)
32a ローラ固定ねじ
33 2群回動軸
35 回動規制ピン
36 37 2群レンズ枠支持板
38 軸方向押圧ばね
39 2群レンズ枠戻しばね
51 AFレンズ枠(3群レンズ枠)
52 53 AFガイド軸
54 AFナット
55 AF枠付勢ばね
60 固体撮像素子(CCD)
61 パッキン
62 CCDベース板
64 抜止環固定ビス
66 支持板固定ビス
70 デジタルカメラ
71 ズームレンズ鏡筒
72 カメラボディ
73 フィルタホルダ
74 減速ギヤボックス
75 レンズ駆動制御FPC基板
76 シャッタユニット
77 露出制御FPC基板
80 ファインダユニット
81a 対物窓
81b 81c 可動変倍レンズ
81d プリズム
81e 接眼レンズ
81f 接眼窓
82 ガイドシャフト
101 バリヤカバー
102 バリヤ押さえ板
103 バリヤ駆動環
104 105 バリヤ羽根
106 バリヤ付勢ばね
107 バリヤ駆動環付勢ばね
150 ズームモータ
160 AFモータ
Claims (7)
- 光軸と平行な複数の回転伝達溝を内周面に有する回転環と、該複数の回転伝達溝に対し回転方向に相対移動不能かつ光軸方向に摺動可能に係合する複数の回転伝達突起を有する環状部材と、該環状部材に支持される可動要素とを有するレンズ鏡筒において、
上記回転環を、互いの端面が対向する一対の回転環に分割し、
該一対の回転環の対向端面の一方と他方に、光軸方向へ突出する係合凸部と、該係合凸部が係合して回転方向の力を伝達する係合凹部とを形成し、
上記回転伝達溝を、上記係合凸部を有する一方の回転環の内周面に、該係合凸部と回転方向位置を一致させ、かつその光軸方向の一部領域を該係合凸部上に位置させて形成したことを特徴とするレンズ鏡筒の回転伝達機構。 - 請求項1記載のレンズ鏡筒の回転伝達機構において、上記一対の回転環の内側に光軸方向へ直進移動可能に支持された直進環を有し、該直進環に光軸方向成分と周方向成分の両方を含む複数の貫通リード溝が形成され、
上記複数の回転伝達突起はそれぞれ、上記貫通リード溝と上記回転伝達溝の両方に対し摺動可能に係合しているレンズ鏡筒の回転伝達機構。 - 請求項2記載のレンズ鏡筒の回転伝達機構において、上記直進環はさらに、上記貫通リード溝に連通し周方向成分のみからなる貫通周方向溝を有し、上記回転伝達突起は、該貫通周方向溝との係合状態では、回転環に対して光軸方向に相対移動することなく該回転環と一体に回転方向に移動するレンズ鏡筒の回転伝達機構。
- 請求項1ないし3のいずれか1項記載のレンズ鏡筒の回転伝達機構において、上記回転伝達突起を有する環状部材は、回転によって可動レンズ群に光軸方向へ所定の移動軌跡を与えるカム溝を有するカム環であるレンズ鏡筒の回転伝達機構。
- 請求項1ないし4のいずれか1項記載のレンズ鏡筒の回転伝達機構において、上記回転伝達溝は、上記係合凸部上の形成領域では該係合凸部を径方向に貫通する貫通溝であり、該係合凸部を除く形成領域では有底溝であるレンズ鏡筒の回転伝達機構。
- 請求項1ないし5のいずれか1項記載のレンズ鏡筒の回転伝達機構において、上記環状部材の回転に応じて光軸方向に進退する可動レンズ群を少なくとも2つ有し、該少なくとも2つの可動レンズ群の光軸方向の相対移動により変倍動作を行うレンズ鏡筒の回転伝達機構。
- 回転軸と平行な複数の回転伝達溝を内周面に有する回転環と、該複数の回転伝達溝に対し回転方向に相対移動不能かつ回転軸方向に摺動可能に係合する複数の回転伝達突起を有する環状部材と、該環状部材に支持される可動要素とを有する回転伝達機構において、
上記回転環を、互いの端面が対向する一対の回転環に分割し、
該一対の回転環の対向端面の一方と他方に、回転軸方向へ突出する係合凸部と、該係合凸部が係合して回転方向の力を伝達する係合凹部とを形成し、
上記回転伝達溝を、上記係合凸部を有する一方の回転環の内周面に、該係合凸部と回転方向位置を一致させ、かつその回転軸方向の一部領域を該係合凸部上に位置させて形成したことを特徴とする回転伝達機構。
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