JP2004151182A - 導光型回折格子表示体 - Google Patents

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Abstract

【課題】複写装置を用いて偽造することが困難であり、また真偽の確認が簡単に行なえる表示体を提供することにある。
【解決手段】回折格子パターンを用いた表示体において、観察側より第1透明層、第2透明層、第3透明層と順次積層された3層積層シートからなり、前記3層積層シートが、第2透明層と第3透明層の境界に回折格子パターンを1ヶ所若しくは複数ヶ所に形成し、第1透明層及び第3透明層は低屈折率の透明材料からなり、第2透明層は第1透明層及び第3透明層よりも高屈折率の透明材料からなることにより、回折格子パターンから離れた位置からの入射光が、第2透明層内を導光することで、レリーフ型回折格子パターンによる画像が現れる導光型回折格子表示体。
【選択図】図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、カード、金券、有価証券などにおいて、セキュリティ性が高く、偽造を防止するため付加する回折格子パターンを使用する導光型回折格子表示体に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、ホログラムや回折格子を用いて画像などを表示する表示体は公知である。これらの表示体は、貼付した商品(例えば、クレジットカードや商品券)のセキュリティ性を向上する効果があり、偽造・模造の防止に役立ってきた。
【0003】
しかし、ホログラムや回折格子に対しても、さらなるセキュリティ性の向上が望まれている。このため、表示体の作製方法を複雑にして、偽造や模造を一層困難にする方法が考えられている。
【0004】
一例として、コヒーレント光の二光束干渉を利用して、基板の表面に回折格子からなる複数の微小なセル(ドット)を配置し、回折格子パターンからなるディスプレイを得る方法があり、本出願人による特許文献1、特許文献2、特許文献3に例示される提案が公知である。
【0005】
【特許文献1】
特開昭60−156004号公報
【特許文献2】
特開平2−72319号公報
【特許文献3】
特開平5−72406号公報
【0006】
これらの方法は、2本のレーザービームを感光材料上で交叉させ、セル単位で露光することにより、双方のレーザービームを干渉させて、各セルに形成される微小な干渉縞からなる回折格子を、その空間周波数・方向・光強度を適宜変化させながら次々と露光記録し、回折格子セルの集まりからなるパターンを作製する方法である。(以後、2光束干渉法と称する)
【0007】
作製されたパターンの観察時には、前記空間周波数は見える色に、前記方向は見える方向に、それぞれ関係する。また、露光の際の光強度は、干渉縞の深さなどを変更することになり、観察時の明るさと関係することになる。
【0008】
従来の表示体におけるセルを構成単位とする回折格子パターンの一例を図10に示す。表示像(絵柄)は、正方形のセルの集まりによって構成されている。画素であるセルは、それぞれ絵柄を表示するのに適当な回折格子で埋められている。
【0009】
尚、本願明細書では、作製される「表示体」「ディスプレイ」は同義語として扱われる。また、その構成要素である「セル」および「ドット」も同義語として扱われるが、円形のニュアンスのある「ドット」ではなく、任意な形状を持つニュアンスのある「セル」に用いて、以後の説明を行なうこととする。
【0010】
回折格子パターンの作製方法は、上述の2光束干渉法に限定されるものではなく、電子線(エレクトロン・ビーム=EB)を用いて、基板の表面に回折格子を直接描画し、回折格子セルを配置する方法を採用しても良い。(以後、EB描画法と称する)
【0011】
EB描画法は、本出願人による特許文献4などにより公知であり、EB描画法によれば、回折格子を構成する格子線は直線に限らず、曲線とすることもできるが、何れにしろ単純な格子線を並べて構成されることに変わりはない。単純な格子線により構成される回折格子から成るセルでは、ビーム状の照明光が入射した場合に、ビーム状や発散光状などの比較的単純な性質を持つ1次回折光が生成される。
【0012】
【特許文献4】
特開平2−72320号公報
【0013】
2光束干渉法やEB描画法により作製される回折格子パターン(表示体)は、単純な回折格子から構成されるため、複雑な格子線により構成されるレインボーホログラムなどと比べて、輝度や彩度の高い画像表現が可能であり、アイキャッチ効果が高く、目視による真偽判定もより容易であるという特徴を持つている。
【0014】
一方、回折格子パターンを装飾画像の表示用としてだけではなく、機械読み取り用情報の記録にも利用する提案がされている。( 本出願人による特許文献5、特許文献6)
【0015】
【特許文献5】
特開平3−211096号公報
【特許文献6】
特開2002−90548公報
【0016】
また、複写装置の性能の向上に伴い、金券,有価証券などの複写物による不正使用(偽造)が増加してきており、その対策が望まれている。複写物であることが判別できるようにする対策として、ホログラムや回折格子を用いた複写防止に係る提案として、特許文献7が公知である。
【0017】
【特許文献7】
特開平10−278462号公報
【0018】
【発明が解決しようとする課題】
複写装置によって複写された物にはホログラム層からの回折光が複写され、ホログラム層の何らかの情報が複写されるので、明白に複写物であると判断できないという問題点があった。解決しようとする課題は、複写装置を用いて偽造することが困難であり、また真偽の確認が簡単に行なえる表示体を提供することにある。
【0019】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載に係る発明は、回折格子パターンを用いた表示体において、観察側より第1透明層、第2透明層、第3透明層と順次積層された3層積層シートからなり、前記3層積層シートが、第2透明層と第3透明層の境界に回折格子パターンを1ヶ所若しくは複数ヶ所に形成し、第2透明層は第1透明層及び第3透明層よりも高屈折率の透明材料からなり、回折格子パターンから離れた位置からの入射光が、第2透明層内を導光することで、レリーフ型回折格子パターンによる画像が現れることを特徴とする導光型回折格子表示体である。(図1、図2参照)
【0020】
請求項2記載に係る発明は、前記第1透明層が、着色若しくは散乱若しくは金属の蒸着による半透過性の層を有する個所が少なくとも1つ以上形成し、第2透明層内に光が導光していない時には回折格子パターンを隠蔽することを特徴とする請求項1記載の導光型回折格子表示体である。(図3参照)
【0021】
請求項3記載に係る発明は、前記第3透明層に形成する回折格子パターンが、第2透明層との間にアルミ若しくは銀蒸着からなる蒸着層を少なくとも1つ以上形成することを特徴とする請求項1又は請求項2記載の導光型回折格子表示体である。(図4参照)
【0022】
請求項4記載に係る発明は、前記回折格子パターンが、ブレーズド型回折格子からなることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の導光型回折格子表示体である。
【0023】
【作用】
回折格子パターンのある個所の第1透明層の表面には、着色若しくは散乱若しくは蒸着による半透過性にすることで、第2透明層に光が導光していない時には回折格子パターンを隠蔽することができる。第1透明層表面から入射される光に関しては、導光されないため、回折格子パターンまで光が届かず、画像が現れない。
【0024】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の表示体の一例を示す説明図である。第3透明層5を形成する透明層表面に、予めEB描画法により作製した回折格子パターンを、一般にホログラム製造で使用される熱エンポス法を用いて、回折格子パターン71を転写複製し、さらに予め準備した第1透明層3を形成する透明層表面3と前記透明層5とを接着剤よりなる第2透明層4を形成し、該層を介して加熱加圧により貼り合わせることで表示体を作製した。すなわち、観察側より、第1透明層3を形成する透明層、第2透明層4の前記接着剤からなる透明層、第3透明層5の回折格子パターン71を転写複製した透明層と順次積層されている。
【0025】
ここで、第1透明層3及び第2透明層4、第3透明層5において使用できる高分子材料としては表1に示した。
【0026】
【表1】
Figure 2004151182
【0027】
一方、第2透明層内4を導光させるには、シートの側面から光を入射する場合、透明層内4を導光するような角度で光を入射しなければならず、また、その導光する光の受光口(入射角)を小さく絞ることで外部からの光の影響は押さえられる。
【0028】
第1透明層3から入る光は第2透明層4を導光する能力はない。ここで受光口からとりこむことのできる光について述べる。図5に示すように、n1は、第2透明層4の屈折率であり、n2は第1透明層3及び第3透明層5の屈折率であるとした場合、本発明ではn1>n2としているので、第2透明層の中心軸に対して角度θで入射した光線のうち、例えば、光線2のような入射角が大きいものは、第1透明層若しくは第3透明層へ抜け出してしまうが、例えば、光線1のように、入射角θが全反射補角θcより小さいものは第2透明層表面で全反射され第2透明層内に閉じ込められて全反射を繰り返しながら第2透明層4内を伝送し、導光される。
【0029】
ここで全反射補角θcは、数1の式で計算できる。例えば、第1透明層及び第3透明層にアクリル樹脂(屈折率n2=1.48)、第2透明層にポリカーボネート(屈折率n1=1.59)を使用すると全反射補角θc=21.4°となる。数1の式は下記に記す。
【0030】
【数1】
Figure 2004151182
【0031】
本発明においては、回折格子パターン部は、第2透明層の導光路内に形成するため、例えば前記導光路内に光が入った時はパターンが見え、光が入らない時はパターンが見えないという隠し文字のような効果はある。また、回折格子パターンの替わりに印刷による画像等を描いた場合も本発明と同様の隠し文字の効果を得ることは可能であるが、導光路内に光が入った時の画像パターンの輝度及び視認性において印刷による画像より本発明の回折格子パターンの方がはるかに優れる。前記回折格子パターンがブレーズド型回折格子パターンにすることで、ラミナー型等に比べ回折効率が高いため、表示体(以下製品と記す)の画像の視認性も向上する。
【0032】
本発明の製品の複写機を用いて作成したコピーは、最表面の着色及び反射によって隠蔽され、また、導光されないと回折格子パターンが表示されないため、回折格子の回折光までは複写できない。
【0033】
また、この導光型回折格子に関しては、第2透明層内を光が伝播した際にのみ回折格子パターンが視認出来るため前記回折格子パターンの表示にあたっては、光を導光させるための技術や材料を必要とし、例えば入射光の種類や各透明層の屈折率等の選択に多数の方法があるために偽造することが困難となる。そのために、この製品の真偽を確認するためには、導光させるための受光口より所定の光を導入すればよく、隠し文字的な画像が鮮明に表示されることで真偽の判別ができる。
【0034】
〈実施例1〉
PET100μm厚のフィルム61にPMMA層51(屈折率1.49)の25μmを塗布しを形成した(図6a参照)。前記PMMA層51を第3透明層5とした。(以後PET/PMMAフィルムと示す)次に、EB描画法により作製した回折格子パターンを、一般にホログラム製造で使用される熱エンボス法で、前記PMMA層51に回折格子パターン71を転写複製した(図6b参照)。さらに予め準備したPET100μm厚のフィルム面61にPMMA樹脂25μmを塗布し、該PMMA層31を第1透明層3とした。前記PMMA層31と回折格子パターン71を転写複製した前記PMMA層51とをビスフェノールA型エポキシ接着剤の透明層40(屈折率1.58)を用いて貼り合わせることで請求項1の表示体を作製できた(図6c参照)。前記ビスフェノールA型エポキシ接着剤からなる透明層40は厚さ50μmとし、該透明層40を第2透明層4とした。
【0035】
〈実施例2〉
PET100μm厚のフィルム62にPMMA樹脂(屈折率1.49)を25μm塗布しPMMA層51形成した(図7a参照)。次に、EB描画法により作製した回折格子パターンを、一般にホログラム製造で使用される熱エンポス法で前記PMMA層51に回折格子パターン71を複製し(図7b参照)、さらに予め準備した片面マットPET100μm厚のフィルム62の平滑な面にPMMA樹脂25μmを塗布し、該PMMA層31の表面とをビスフェノールA型エポキシ接着剤の透明層40(屈折率1.58)を用いて貼り合わせることで請求項2の散乱による半透過性の層を有する表示体を作製できた(図7c参照)。前記ビスフェノールA型エポキシ接着剤からなる透明層40は厚さ50μmとした。
【0036】
前記片面マットPET62により散乱性を付加しているが、内部散乱性のフィルムやフィラーを表面に塗布したフィルムであってもよい。また、前記片面マットPETの代わりにアルミ半蒸着や銀半蒸着したPETを使用することで請求項2に記載の金属蒸着した半透過性の層を有する表示体ができる。この場合、半蒸着フィルムの直線透過率を1%〜10%程度にすると回折格子パターンを効果的に隠蔽できる。
【0037】
また、前記片面マットPETの代わりにPET表面に印刷や着色インキを塗布することで請求項2に記載の着色した半透過性の層を有する表示体が実現できる。
【0038】
〈実施例3〉
PET100μm厚のフィルム61にPMMA樹脂(屈折率1.49)の25μmを塗布しPMMA層51を形成した(図8a参照)。EB描画法により作製した回折格子パターンを、一般にホログラム製造で使用される熱エンポス法で前記PMMA層51に回折格子パターン71を複製した(図8b参照)。前記PMMA層51全面に抵抗加熱法で銀を真空蒸着し(図8c参照)、部分エッチングにより、不要部分を取り除き回折格子パータン付近のみ前記銀蒸着層81を形成した(図8d参照)。さらに片面マットPET100μm厚のフィルム62の平滑な面にPMMA樹脂25μmを塗布しPMMA層31を形成、該PMMA層31と前記PMMA層51とをビスフェノールA型エポキシ接着剤(屈折率1.58)を用いて貼り合わせることで請求項3の表示体を作製できた(図8e参照)。前記ビスフェノールA型エポキシ接着剤からなる透明層40は厚さ50μmとした。
【0039】
前記において回折格子パターンの複製は、熱エンボス法で複製した例を示したが、射出成形やUV樹脂成形等でもよい。また、前記の回折格子パターンをブレーズド型回折格子にすることで回折効率を理論上100%に近づけることが可能である。
【0040】
〈実施例4〉
一方、実施例の各表示体により表示状態を確認した。導光させる光について言及する。図9に示すように、導光させる光を単色光にした場合は、濃淡で回折格子パターンが表示される。また、図9aの白色光で一定角度より入射させた場合は(図中矢印の方向から)、フルカラー(またはレインボー)の回折格子パターンが表示される。しかし、図9bの白色光で広い角度で入射させる場合(図中矢印の方向から)、には白黒(濃淡)の回折格子パターンが表示される。
【0041】
ところで、図3に示す(請求項2記載)第1透明層の観察側に、散乱による半透過性の層を有する場合では見え方が異なる。白色光で一定角度より入射させた場合でもフルカラー(レインボー)ではなく、拡散効果で白色の濃淡画像となる。
【0042】
このような導光させる光を単色光にするかまたは白色光にするか、角度を一定にするかまたは広い範囲にするか、観察側に散乱性の物質を設けるかどうかの組み合わせにより、表示画像にさまざまな隠し効果やバリエーションを持たせることが可能である。
【0043】
【発明の効果】
複写機においてのコピーは、最表面の着色及び反射によって隠蔽され、また、導光されないと回折格子パターンが表示されないため、回折格子の回折光までは複写できない。
【0044】
また、この導光型回折格子に関しては、光を導光させるための技術や材料を必要とし、偽造することが困難となる。一方、この製品の真偽を確認するためには、導光させるための受光口より光を導入すればよく、隠し文字的な画像が鮮明に表示されることで真偽の判別ができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1請求項に係る一例を説明する側断面図である。
【図2】本発明の第1請求項に係る一例を説明する側断面図である。
【図3】本発明の第2請求項に係る一例を説明する側断面図である。
【図4】本発明の第3請求項に係る一例を説明する側断面図である。
【図5】本発明の第2透明層内を導光する入射光について説明する側断面図である。
【図6】(a)〜(c)は、本発明の実施例1の実施形態を説明する側断面図である。
【図7】(a)〜(c)は、本発明の実施例2の実施形態を説明する側断面図である。
【図8】(a)〜(e)は、本発明の実施例3の実施形態を説明する側断面図である。
【図9】(a)〜(b)は、本発明の実施例4の実施形態を説明する側断面図である。
【図10】従来の表示体においてセルを構成単位とする回折格子パターンの一例である。
【符号の説明】
1…1入射光
2…2入射光
3…第1透明層
31…アクリル樹脂の第1透明層
4…第2透明層
40…エポキシ樹脂の第2透明層
5…第3透明層
51…アクリル樹脂の第3透明層
61…PET
62…片面マット状PET
71…回折格子パターン(凹み状)
72…回折格子パターン(突起状)
73…金属膜が蒸着済みの回折格子パターン
80…着色層、散乱膜層、金属膜蒸着層
81…銀蒸着膜

Claims (4)

  1. 回折格子パターンを用いた表示体において、観察側より第1透明層、第2透明層、第3透明層と順次積層された3層積層シートからなり、前記3層積層シートが、第2透明層と第3透明層の境界に回折格子パターンを1ヶ所若しくは複数ヶ所に形成し、第2透明層は第1透明層及び第3透明層よりも高屈折率の透明材料からなり、回折格子パターンから離れた位置からの入射光が、第2透明層内を導光することで、レリーフ型回折格子パターンによる画像が現れることを特徴とする導光型回折格子表示体。
  2. 前記第1透明層が、着色若しくは散乱若しくは金属の蒸着による半透過性の層を有する個所が少なくとも1つ以上形成し、第2透明層内に光が導光していない時には回折格子パターンを隠蔽することを特徴とする請求項1記載の導光型回折格子表示体。
  3. 前記第3透明層に形成する回折格子パターンが、第2透明層との間にアルミ若しくは銀蒸着からなる蒸着層を少なくとも1つ以上形成することを特徴とする請求項1又は請求項2記載の導光型回折格子表示体。
  4. 前記回折格子パターンが、ブレーズド型回折格子からなることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の導光型回折格子表示体。
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