しかしながら、上述した図17,図18の管体90の外周面のフレ測定と肉厚測定器等を用いた肉厚の測定による管体の形状測定方法によると、以下の問題がある。
(a)すなわち、外周面のフレの測定と肉厚の測定をそれぞれ別個の測定器によって行うため、測定器の機器バラツキ、それを使用する測定者の測定器の使い方に起因する誤差、さらに測定者間のバラツキ等が累積されてしまい、高い測定精度を得にくい。
(b)また、外周面のフレと肉厚の分布は互いに幾何学的に相殺される場合があるにもかかわらず、これらを別個に測定しているために、このような場合を考慮することができず、結果として過剰品質を要求することになっている可能性もある。
また、上述した種々の公開特許には、そのいずれにも簡便かつ高精度に管体の外周面のフレを測定する技術についての開示がない。
また、従来の真円度計測器を用いた管体の形状測定方法も考えられるが、この場合、管体が置かれる測定テーブルの回転軸と測定対象である管体の中心軸位置を合わせる芯出し、および測定テーブルの回転軸と管体の中心軸とを平行に合わせる水平出しを、各管体ごとに繰り返し行うことが必要であり、非常に時間と手間がかかるという問題がある。
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、簡素にかつ高い精度で管体の形状を測定できる管体の形状測定方法および同装置等を提供することを目的とする。
本発明は、下記の手段を提供する。すなわち、
(1)管体の両側端部近傍の内側に一対の膨張クランプを挿入し、
前記一対の膨張クランプを膨張させて、前記管体の内周面の全周にわたって接触させ、
前記一対の膨張クランプの中心軸を回転軸として前記膨張クランプとともに前記管体を回転させ、
前記管体の外側であって、前記管体の周方向について固定された少なくとも1の位置において、前記管体の回転に伴う前記管体の外周面の半径方向の変位量を検出することを特徴とする管体の形状測定方法。
(2)前記一対の膨張クランプは、前記管体の使用時における支持予定位置に接触させることを特徴とする前項1に記載の管体の形状測定方法。
(3)前記一対の膨張クランプは、前記管体の内周面の全周にわたって所定の接触幅で面接触することを特徴とする前項1または2に記載の管体の形状測定方法。
(4)前記一対の膨張クランプは、前記管体の内周面の全周を略均等に半径方向外向きに押圧することを特徴とする前項1〜3のいずれかに記載の管体の形状測定方法。
(5)前記一対の膨張クランプは、前記管体の内周面を半径方向外向きに押圧することにより前記管体を拡管変形させることを特徴とする前項4に記載の管体の形状測定方法。
(6)前記一対の膨張クランプによる前記管体の拡管変形は、前記管体の使用時における前記管体の拡管変形と略同程度にすることを特徴とする前項5に記載の管体の形状測定方法。
(7)前記一対の膨張クランプが前記管体の内周面を押圧する押圧力は、前記管体の使用時に前記管体に作用する拡管圧力と略同等であることを特徴とする前項4〜6のいずれかに記載の管体の形状測定方法。
(8)前記一対の膨張クランプによる前記管体の拡管変形は、前記管体の使用時における前記管体の拡管変形より小さいことを特徴とする前項5に記載の管体の形状測定方法。
(9)前記一対の膨張クランプが前記管体の内周面を押圧する押圧力は、前記管体の使用時に前記管体に作用する拡管圧力より小さいことを特徴とする前項4,5,8のいずれかに記載の管体の形状測定方法。
(10)前記一対の膨張クランプによる前記管体の拡管変形は、前記管体の弾性変形領域内で行われることを特徴とする前項5〜9のいずれかに記載の管体の形状測定方法。
(11)前記一対の膨張クランプによる前記管体の拡管変形は、前記管体の塑性変形領域まで達することを特徴とする前項5〜9のいずれかに記載の管体の形状測定方法。
(12)
前記一対の膨張クランプは、流体圧により膨張するものであることを特徴とする前項1〜11のいずれかに記載の管体の形状測定方法。
(13)前記一対の膨張クランプは、弾性を有する膨張リングを有し、この膨張リングをその内側から流体圧で半径方向外向きに膨出させ、この膨張リングにおいて管体の内周面と接触するものであることを特徴とする前項1〜12のいずれかに記載の管体の形状測定方法。
(14)管体の両側端部近傍の内側に一対の膨張クランプを挿入し、
前記一対の膨張クランプの内部に流体を圧入し、この流体圧により前記一対の膨張クランプを膨張させて前記管体の内周面の全周を略均等に半径方向外向きに押圧して前記管体を拡管変形させ、
前記一対の膨張クランプの中心軸を回転軸として前記膨張クランプとともに前記管体を回転させ、
前記管体の外側であって、前記管体の周方向について固定された少なくとも1の位置において、前記管体の回転に伴う前記管体の外周面の半径方向の変位量を検出することを特徴とする管体の形状測定方法。
(15)前記一対の膨張クランプは、水平方向に並べて配置されたことを特徴とする前項1〜14のいずれかに記載の管体の形状測定方法。
(16)前記一対の膨張クランプは、鉛直方向に並べて配置されたことを特徴とする前項1〜14のいずれかに記載の管体の形状測定方法。
(17)前記変位量の検出位置には、前記管体の外側から前記一対の膨張クランプに対峙する位置以外の位置を含むことを特徴とする前項1〜16のいずれかに記載の管体の形状測定方法。
(18)前記変位量の検出位置には、前記管体の外側の複数の位置を含むことを特徴とする前項1〜17のいずれかに記載の管体の形状測定方法。
(19)前記変位量の検出位置には、前記管体の軸方向位置が異なる複数の位置を含むことを特徴とする前項18記載の管体の形状測定方法。
(20)前記変位量の検出位置には、前記管体の軸方向位置が一致し、周方向位置が異なる複数の位置を含むことを特徴とする前項18または19に記載の管体の形状測定方法。
(21)前記変位量の検出位置には、前記管体の軸方向位置が一致し、周方向位置が半周分異なる2つの位置を含むことを特徴とする前項18〜20のいずれかに記載の管体の形状測定方法。
(22)前記変位量の検出位置には、前記一対の膨張クランプの少なくともいずれか一方に対峙する前記管体の外側の位置を含むことを特徴とする前項18〜21のいずれかに記載の管体の形状測定方法。
(23)前記管体の回転は、1回転以上とすることを特徴とする前項1〜22のいずれかに記載の管体の形状測定方法。
(24)前記変位量の検出は、前記管体を回転させる全期間または一部期間において連続的に行うことを特徴とする前項1〜23のいずれかに記載の管体の形状測定方法。
(25)前記変位量の検出は、前記管体を回転させる間に断続的に行うことを特徴とする前項1〜23のいずれかに記載の管体の形状測定方法。
(26)前記管体の回転は断続的に停止させ、前記変位量の検出は、前記管体の回転が停止しているときに行うことを特徴とする前項1〜23のいずれかに記載の管体の形状測定方法。
(27)前記変位量の検出は、前記管体の外周面に接触する検出器を用いて行うことを特徴とする前項1〜26のいずれかに記載の管体の形状測定方法。
(28)前記変位量の検出は、前記管体の外周面と接触しない検出器を用いて行うことを特徴とする前項1〜26のいずれかに記載の管体の形状測定方法。
(29)前記変位量の検出は、前記管体に対してその外側から光を照射し、前記管体によって遮られず透過した光を検出することによって行うことを特徴とする前項28に記載の管体の形状測定方法。
(30)前記管体は感光ドラム用の基体であることを特徴とする前項1〜29のいずれかに記載の管体の形状測定方法。
(31)前項1〜30のいずれかに記載の管体の形状測定方法により管体の形状を測定し、この測定結果に基づいて、前記管体の形状が予め設定された所定の許容範囲内にあるか否かを検査することを特徴とする管体の検査方法。
(32)管体を製管し、前項31に記載の管体の検査方法により前記管体の形状を検査し、この検査結果において前記管体の形状が前記所定の許容範囲内にある場合には、その管体を完成品と判定することを特徴とする管体の製造方法。
(33)前項32に記載の管体の製造方法によって製造されたことを特徴とする管体。
(34)前項32に記載の管体の製造方法によって製造されたことを特徴とする感光ドラム用基体。
(35)前項32に記載の管体の製造方法によって製造され、
その回転に伴う前記管体の外周面の半径方向の変位量が30μm以下であることを特徴とする管体。
(36)複数本の管体の集合であって、
前項32に記載の管体の製造方法によって製造され、
当該集合に含まれるすべての管体は、その回転に伴う前記管体の外周面の半径方向の変位量が30μm以下であることを特徴とする管体の集合。
(37)管体の両側端部近傍の内側に挿入され、膨張して前記管体の内周面に接触する一対の膨張クランプと、
前記管体の外側に設けられ、前記管体の外周面の半径方向の変位量を検出する少なくとも1の変位検出器と、を備え、
前記変位検出器は、前記一対の膨張クランプの中心軸を回転軸として前記膨張クランプとともに前記管体が回転したときに、この管体の回転に伴う変位量を検出することを特徴とする管体の形状測定装置。
(38)前項37記載の管体の形状測定装置と、前記変位検出器によって検出された前記変位量に基づいて、前記管体の形状が予め設定された所定の許容範囲内にあるか否かを検査する比較手段とを備えたことを特徴とする管体の検査装置。
(39)管体を製管する製管装置と、
前項38記載の管体の検査装置と、
前記検査装置による検査結果において前記管体の形状が前記所定の許容範囲内にある場合には、その管体を完成品と判定する合否判定手段と、
を備えたことを特徴とする管体の製造システム。
本発明にかかる管体の形状測定方法によると、管体の両側端部近傍の内側に一対の膨張クランプを挿入し、前記一対の膨張クランプを膨張させて、前記管体の内周面の全周にわたって接触させ、前記一対の膨張クランプの中心軸を回転軸として前記膨張クランプとともに前記管体を回転させ、前記管体の外側であって、前記管体の周方向について固定された少なくとも1の位置において、前記管体の回転に伴う前記管体の外周面の半径方向の変位量を検出するようにしたため、一対の膨張クランプの中心軸位置は管体の内周面がなす円の中心にほぼ位置することとなる。そして、この一対の膨張クランプの中心軸回りに回転させることにより、内周面で支持されて回転する用途に供される管体が実際の使用されるときに極めて近似した回転状態が実現できる。したがって、この回転のもとで検出される管体の挙動は、実際の使用時における管体の挙動とほぼ同等なものが表れてくる。具体的には、このとき検出される外周面の半径方向の変位量は、そのまま実際に使用されるときのフレが表現されている。すなわち、この検出される外周面の半径方向の変位量は、管体の両端近傍の内周面がなす円のほぼ中心を基準とした外周面のフレであるから、管体の曲がり、偏肉、その他、管体の断面形状(真円度)等の影響をすべて統合したものとなっている。
このように、測定される外周面のフレには偏肉の影響が加味されているから、管体の肉厚を別途測定する場合のような測定機器バラツキの累積や過剰品質の要求を防止できる。また、測定される外周面のフレには偏肉の影響が加味されているから、測定の短時間化を図ることができる。
また、一対の膨張クランプは管体の内周面の全周にわたって接触するため、一対の膨張クランプの中心軸位置を管体の内周面がなす円の中心により確実に位置させ、実際の使用時の回転状態に近似した状態を実現することができる。
また、一対の膨張クランプは管体の内周面の全周にわたって接触するため、管体により大きな押圧力をもって接触しても、その押圧力を周方向について略均等に分布させることができ、正確な形状測定に寄与することができる。
また、管体の内側に一対の膨張クランプを挿入して膨張させ、この膨張クランプごと管体を回転させて外周面の変位量を検出するだけであるから、簡素な構成で実現でき、測定誤差の累積を可及的に低減して、形状測定の高い精度を得ることができる。
また、前記一対の膨張クランプは、前記管体の使用時における支持予定位置に接触するようにすると、管体の実際の使用時に回転動作等の基準となる部分を基準として形状測定することができるため、より実際に即した測定を行うことができる。
また、前記一対の膨張クランプは、前記管体の内周面の全周にわたって所定の接触幅で面接触するようにすると、管体の内周面に一対の膨張クランプが局所的に接触することで管体が実際の使用時とは異なる形状に変形することを防止して、正確な形状測定に寄与することができる。また、管体に不適正な変形を与えることなく、管体により大きな押圧力をもって接触することができる。
また、前記一対の膨張クランプは、前記管体の内周面の全周を略均等に半径方向外向きに押圧するようにすると、一対の膨張クランプを管体の内周面に確実に接触させて、実際の使用時の回転状態に近似した状態をより確実に実現することができる。
また、前記一対の膨張クランプは、前記管体の内周面を半径方向外向きに押圧することにより前記管体を拡管変形させるようにすると、実際の使用時に管体の両端近傍にフランジ等を圧入される管体が実際の使用されるときに極めて近似した支持状態が実現でき、これにより、実際の使用時の回転状態により近似した状態を実現することができる。したがって、この状態で外周面の半径方向の変位量を検出することにより、実際に使用されるときに生じるフレをより正確に検出することができる。
また、前記一対の膨張クランプによる前記管体の拡管変形は、前記管体の使用時における前記管体の拡管変形と略同程度にすると、実際の使用時に管体の両端近傍にフランジ等を圧入される管体が実際の使用されるときにさらに近似した支持状態が実現でき、これにより、実際の使用時の回転状態にさらに近似した状態を実現することができる。したがって、この状態で外周面の半径方向の変位量を検出することにより、実際に使用されるときに生じるフレをさらに正確に検出することができる。
また、前記一対の膨張クランプが前記管体の内周面を押圧する押圧力は、前記管体の使用時に前記管体に作用する拡管圧力と略同等であるようにすると、実際の使用時に管体の両端近傍にフランジ等を圧入される管体が実際の使用されるときにさらに近似した支持状態が実現でき、これにより、実際の使用時の回転状態にさらに近似した状態を実現することができる。したがって、この状態で外周面の半径方向の変位量を検出することにより、実際に使用されるときに生じるフレをさらに正確に検出することができる。
また、前記一対の膨張クランプによる前記管体の拡管変形は、前記管体の使用時における前記管体の拡管変形より小さいようにすると、実際の使用時に管体の両端近傍にフランジ等を圧入される管体が実際の使用されるときに近似した支持状態が実現でき、これにより、実際の使用時の回転状態にさらに近似した状態を実現することができる。したがって、この状態で外周面の半径方向の変位量を検出することにより、実際に使用されるときに生じるフレをさらに正確に検出することができる。また、管体の使用時における拡管変形より小さい拡管変形しか行わないため、形状測定によって管体に与える影響を小さく抑えることができる。
また、前記一対の膨張クランプが前記管体の内周面を押圧する押圧力は、前記管体の使用時に前記管体に作用する拡管圧力より小さいようにすると、実際の使用時に管体の両端近傍にフランジ等を圧入される管体が実際の使用されるときに近似した支持状態が実現でき、これにより、実際の使用時の回転状態にさらに近似した状態を実現することができる。したがって、この状態で外周面の半径方向の変位量を検出することにより、実際に使用されるときに生じるフレをさらに正確に検出することができる。また、管体の使用時における拡管変形より小さい拡管変形しか行わないため、形状測定によって管体に与える影響を小さく抑えることができる。
また、前記一対の膨張クランプによる前記管体の拡管変形は、前記管体の弾性変形領域内で行われるようにすると、形状測定時の管体の拡管変形は形状測定後に戻り、形状測定によって管体に与える影響を確実に小さく押さえることができる。
また、前記一対の膨張クランプによる前記管体の拡管変形は、前記管体の塑性変形領域まで達するようにすると、管体が実際に使用される際には塑性変形に至る拡管変形が加えられる場合にも、その実際の拡管変形の程度に応じた適当な形状測定のための拡管変形を適宜施すことができる。
また、前記一対の膨張クランプは、流体圧により膨張するものとすると、周方向について略均等で十分に大きな膨張力を得て、管体の内周面に確実に接触することができる。また、管体の内周面を押圧する押圧力も十分に得ることができる。
また、前記一対の膨張クランプは、弾性を有する膨張リングを有し、この膨張リングをその内側から流体圧で半径方向外向きに膨出させ、この膨張リングにおいて管体の内周面と接触するものとすると、周方向について略均等で十分に大きな膨張力を得て、膨張リングを管体の内周面に確実に接触させることができる。また、管体の内周面を押圧する押圧力も十分に得ることができる。
また、本発明にかかる管体の形状測定方法によると、管体の両側端部近傍の内側に一対の膨張クランプを挿入し、前記一対の膨張クランプの内部に流体を圧入し、この流体圧により前記一対の膨張クランプを膨張させて前記管体の内周面の全周を略均等に半径方向外向きに押圧して前記管体を拡管変形させ、前記一対の膨張クランプの中心軸を回転軸として前記膨張クランプとともに前記管体を回転させ、前記管体の外側であって、前記管体の周方向について固定された少なくとも1の位置において、前記管体の回転に伴う前記管体の外周面の半径方向の変位量を検出するため、一対の膨張クランプの中心軸位置は管体の内周面がなす円の中心にほぼ位置することとなる。そして、この一対の膨張クランプの中心軸回りに回転させることにより、内周面で支持されて回転する用途に供される管体が実際の使用されるときに極めて近似した回転状態が実現できる。したがって、この回転のもとで検出される管体の挙動は、実際の使用時における管体の挙動とほぼ同等なものが表れてくる。具体的には、このとき検出される外周面の半径方向の変位量は、そのまま実際に使用されるときのフレが表現されている。すなわち、この検出される外周面の半径方向の変位量は、管体の両端近傍の内周面がなす円のほぼ中心を基準とした外周面のフレであるから、管体の曲がり、偏肉、その他、管体の断面形状(真円度)等の影響をすべて統合したものとなっている。このように、測定される外周面のフレには偏肉の影響が加味されているから、管体の肉厚を別途測定する場合のような測定機器バラツキの累積や過剰品質の要求を防止できる。また、測定される外周面のフレには偏肉の影響が加味されているから、測定の短時間化を図ることができる。また、一対の膨張クランプは管体の内周面の全周にわたって接触するため、一対の膨張クランプの中心軸位置を管体の内周面がなす円の中心により確実に位置させ、実際の使用時の回転状態に近似した状態を実現することができる。また、一対の膨張クランプは管体の内周面の全周にわたって接触するため、管体により大きな押圧力をもって接触しても、その押圧力を周方向について略均等に分布させることができ、正確な形状測定に寄与することができる。また、管体の内側に一対の膨張クランプを挿入して膨張させ、この膨張クランプごと管体を回転させて外周面の変位量を検出するだけであるから、簡素な構成で実現でき、測定誤差の累積を可及的に低減して、形状測定の高い精度を得ることができる。また、内部に圧入した流体の流体圧により一対の膨張クランプを膨張させるため、周方向について略均等で十分に大きな膨張力を得て、管体の内周面に確実に接触することができる。また、管体の内周面を押圧する押圧力も十分に得ることができる。
また、前記一対の膨張クランプは、水平方向に並べて配置すると、管体はその軸方向を略水平にした姿勢となるが、管体がこの姿勢で使用される場合には、その使用時に近似した測定結果を得ることができる。
また、前記一対の膨張クランプは、鉛直方向に並べて配置すると、重力により管体の軸方向中央部がたわむことを防止して、管体本来の形状を測定することができる。
また、前記変位量の検出位置には、前記管体の外側から前記一対の膨張クランプに対峙する位置以外の位置を含むようにすると、管体の肉厚を加味した外周面の変位量を測定することができる。
また、前記変位量の検出位置には、前記管体の外側の複数の位置を含むようにすると、管体の外側の複数の位置における外周面のフレを測定することができ、これらを組み合わせることで管体の形状をより具体的に把握することができる。
また、前記変位量の検出位置には、前記管体の軸方向位置が異なる複数の位置を含むようにすると、管体の軸方向位置が異なる複数の位置において外周面のフレを測定することができ、これらを組み合わせることで管体の軸方向についての形状の変化を把握することができる。
また、前記変位量の検出位置には、前記管体の軸方向位置が一致し、周方向位置が異なる複数の位置を含むようにすると、これら複数の位置で検出される変位量を組み合わせることにより、この軸方向位置における管体の断面形状をより具体的に把握することができる。
また、前記変位量の検出位置には、前記管体の軸方向位置が一致し、周方向位置が半周分異なる2つの位置を含むようにすると、これら2つの位置において検出される変位量を組み合わせることにより、これら2つの位置を通る管体の直径を求めることができ、これにより、より具体的に管体の形状を把握することができる。
また、前記変位量の検出位置には、前記一対の膨張クランプの少なくともいずれか一方に対峙する前記管体の外側の位置を含むようにすると、膨出クランプと当接している部分における管体の肉厚を検出することができる。そして、この肉厚を他の検出位置における検出結果と組み合わせることで、より具体的に管体の形状を把握することができる。たとえば、管体の両端近傍の外周面を基準として他の部位の外周面の変位を計測する従来の検査に準じた検査結果も算出することが可能である。
また、前記管体の回転は、1回転以上とすると、管体の周方向について全周の形状を検出することができる。
また、前記変位量の検出は、前記管体を回転させる全期間または一部期間において連続的に行うこととすると、管体の周方向について局部的な形状変化も検出することができる。
また、前記変位量の検出は、前記管体を回転させる間に断続的に行うこととすると、管体の外周面の変位量を簡易に検出することができる。
また、前記管体の回転は断続的に停止させ、前記変位量の検出は、前記管体の回転が停止しているときに行うようにすると、管体の外周面の変位量について安定した検出ができる。
また、前記変位量の検出は、前記管体の外周面に接触する検出器を用いて行うこととすると、管体の外周面の変位量について確実な検出ができる。
また、前記変位量の検出は、前記管体の外周面と接触しない検出器を用いて行うこととすると、管体の外周面を傷めるおそれなく、管体の外周面の変位量を検出することができる。
また、前記変位量の検出は、前記管体に対してその外側から光を照射し、前記管体によって遮られず透過した光を検出することによって行うこととすると、管体の外周面の変位量を容易かつ正確に検出することができる。
また、上記の管体の形状測定方法を好適に適用できる管体としては、具体的には、たとえば感光ドラム用の基体を挙げることができる。
また、本発明にかかる管体の検査方法によると、上記のいずれかに記載の管体の形状測定方法により管体の形状を測定し、この測定結果に基づいて、前記管体の形状が予め設定された所定の許容範囲内にあるか否かを検査するため、管体の形状が許容範囲内にあるか否かを判別することができる。
また、本発明にかかる管体の製造方法によると、管体を製管し、上記の管体の検査方法により前記管体の形状を検査し、この検査結果において前記管体の形状が前記所定の許容範囲内にある場合には、その管体を完成品と判定するため、過剰品質に陥ることなく、必要十分な形状精度を持った管体を提供することができる。
また、本発明にかかる管体によると、上記の管体の製造方法によって製造されるため、その形状が許容範囲内に収まり、各種用途に好適に使用することができる。
また、本発明にかかる感光ドラム用基体によると、上記の管体の製造方法によって製造されるため、その形状が許容範囲内に収まり、電子写真システムにおける優れた画像形成に貢献することができる。
また、本発明にかかる管体によると、記載の管体の製造方法によって製造され、
その回転に伴う前記管体の外周面の半径方向の変位量が30μm以下であるため、感光ドラム用の基体等の用途に好適に使用することができる。
また、本発明にかかる複数本の管体の集合によると、上記の管体の製造方法によって製造され、当該集合に含まれるすべての管体は、その回転に伴う前記管体の外周面の半径方向の変位量が30μm以下であるため、感光ドラム用の基体等の用途に好適に使用することができる。
また、本発明にかかる管体の形状測定装置によると、管体の両側端部近傍の内側に挿入され、膨張して前記管体の内周面に接触する一対の膨張クランプと、前記管体の外側に設けられ、前記管体の外周面の半径方向の変位量を検出する少なくとも1の変位検出器と、を備え、前記変位検出器は、前記一対の膨張クランプの中心軸を回転軸として前記膨張クランプとともに前記管体が回転したときに、この管体の回転に伴う変位量を検出するため、一対の膨張クランプの中心軸位置は管体の内周面がなす円の中心にほぼ位置することとなる。そして、この一対の膨張クランプの中心軸回りに回転させることにより、内周面で支持されて回転する用途に供される管体が実際の使用されるときに極めて近似した回転状態が実現できる。したがって、この回転のもとで検出される管体の挙動は、実際の使用時における管体の挙動とほぼ同等なものが表れてくる。具体的には、このとき検出される外周面の半径方向の変位量は、そのまま実際に使用されるときのフレが表現されている。すなわち、この検出される外周面の半径方向の変位量は、管体の両端近傍の内周面がなす円のほぼ中心を基準とした外周面のフレであるから、管体の曲がり、偏肉、その他、管体の断面形状(真円度)等の影響をすべて統合したものとなっている。このように、測定される外周面のフレには偏肉の影響が加味されているから、管体の肉厚を別途測定する場合のような測定機器バラツキの累積や過剰品質の要求を防止できる。また、測定される外周面のフレには偏肉の影響が加味されているから、測定の短時間化を図ることができる。また、一対の膨張クランプは管体の内周面の全周にわたって接触するため、一対の膨張クランプの中心軸位置を管体の内周面がなす円の中心により確実に位置させ、実際の使用時の回転状態に近似した状態を実現することができる。また、一対の膨張クランプは管体の内周面の全周にわたって接触するため、管体により大きな押圧力をもって接触しても、その押圧力を周方向について略均等に分布させることができ、正確な形状測定に寄与することができる。また、管体の内側に一対の膨張クランプを挿入して膨張させ、この膨張クランプごと管体を回転させて外周面の変位量を検出するだけであるから、簡素な構成で実現でき、測定誤差の累積を可及的に低減して、形状測定の高い精度を得ることができる。
また、本発明にかかる管体の検査装置によると、上記の管体の形状測定装置と、前記変位検出器によって検出された前記変位量に基づいて、前記管体の形状が予め設定された所定の許容範囲内にあるか否かを検査する比較手段とを備えたため、管体の形状が許容範囲内にあるか否かを判別することができる。
また、本発明にかかる管体の製造システムによると、管体を製管する製管装置と、上記の管体の検査装置と、前記検査装置による検査結果において前記管体の形状が前記所定の許容範囲内にある場合には、その管体を完成品と判定する合否判定手段と、を備えたため、過剰品質に陥ることなく、必要十分な形状精度を持った管体を提供することができる。
以下、本発明にかかる管体の形状測定方法および装置について実施形態に基づいて、図面を参照しながら説明する。
図1は本発明にかかる管体の形状測定方法のための管体の形状測定装置5を示す正面断面図、図2は同じく側面断面図、図3は膨張クランプ20の断面図、図4は動作説明図、図5は形状測定対象である管体(ワーク)10の使用状態を示す説明斜視図、図6は同じく使用状態を示す正面断面図である。
<管体>
本発明における形状測定対象としての管体は、内周面および外周面とも各断面において円をなす円筒形状のものを想定している。さらに、この実施形態において例示する管体(ワーク)10は、図5に示すように、その両端の内側に挿入されるフランジ80,80によって内側から支持され、適宜回転させて使用されるものである。このフランジ80,80が管体10に接触して、管体10を回転支持する位置は、たとえば管体10の両端から幅dだけ内側に至る領域S(図5中にハッチングを施した領域)となっている。
また、このフランジ80,80は、図6に示すように、管体10の両端部分13,13を若干拡管しながら圧入される。このため、管体10の両端部分13,13は他の断面よりも若干大径に変形しているとともに、フランジ80,80が圧入されることで、その断面形状が矯正されている。
このような管体(ワーク)10の素材は、たとえばアルミニウム合金等を挙げることができる。ただし、これに限定されるものではなく、各種金属や合成樹脂等であってもよい。
また、その製造方法としては、後述するように、押出成形および引き抜き成形の組み合わせを挙げることができる。ただし、これに限定されるものではなく、押出成形、引き抜き成形、鋳造、鍛造、射出成形、切削加工またはこれらの組み合わせなど、管体を製管できる方法であればよい。
このような管体10としては、具体的には、電子写真システムを採用した複写機やプリンタ等における感光ドラム用の基体や素管等を挙げることができる。なお、感光ドラム用の基体とは、切削加工や引抜き加工等が行われた後の管体であって、感光層の形成前の管体をいう。また、感光ドラム用の基体に感光層を形成した後の管体も、本発明の形状測定等を行う対象たる管体とできる。
<全体概略>
図1〜図4に示すように、本発明にかかる管体の形状測定方法は、このような管体(ワーク)10に対して、その両側端部近傍の内側に一対の膨張クランプ20,20を挿入し、これを膨張させて管体10の内周面11の全周にわたって接触させ、この状態で一対の膨張クランプ20,20の中心軸を回転軸として一対の膨張クランプ20,20とともに管体10を回転させ、このときの管体10の外周面12の半径方向の変位量を管体10の外側に配置された変位検出器30…によって検出するものである。
<膨張クランプ>
一対の膨張クランプ20,20は、管体10の形状測定の基準を定めるものである。
この一対の膨張クランプ20,20は略水平に並べて配置され、形状測定対象である管体10は、この一対の膨張クランプ20,20によって略水平姿勢で支持されるようになっている。
この一対の膨張クランプ20,20は、図3に示すように、円柱形状で大径部211と小径部212を有するクランプ本体21と、前記クランプ本体21の小径部212の外周面を覆うように取り付けられた膨張リング(筒体)25とを備えている。
一対の膨張クランプ20,20は、クランプ本体21,21の大径部211の両外側において、図1等に示すように、回転駆動源26,26に取り付けられており、膨張クランプ20,20の中心軸回りに正確に回転できるように支持されている。
また、膨張クランプ20,20の少なくとも一方は、図示しない出没駆動手段により、管体10をセットする際にその邪魔にならないように軸方向外向きに退避移動できるようになっている。
クランプ本体21には、作動油が充填される油路22が形成されている。この油路22は、クランプ本体21の小径部212内において放射状に広がる複数の管路によって膨張リング25の内側に形成された膨張室223に連通している。
この膨張室223は、クランプ本体21の小径部212の外周面と、膨張リング25の内周面との間に形成されている。後述するように、この膨張室223に作動油が供給され、作動油圧(流体圧)によってこの膨張室223が膨張し、膨張リング25が半径方向に膨出した場合であっても、膨張室223が密閉された状態を維持するため、この膨張室223の軸方向の両端部には密閉手段が設けられている。
この実施形態では、具体的には、クランプ本体21の全周にわたって形成された溝部にOリング24,24がはめ込まれ、このOリング24,24が、クランプ本体21の外周面(溝部)および膨張リング25の内周面と密着する構造により、膨張室223が密閉されるようになっている。このOリング24,24は、常時は膨張リング25によって内側に押しつぶされた形態となっており、膨張リング25が膨張して半径方向に膨出したときには、Oリング24,24は膨張リング25の内周面に密着したままその外径が大きくなるように変形し、膨張リング25とクランプ本体21の小径部212の外周面との密閉状態を維持できるようになっている。このOリング24,24の材質としては、たとえばゴムを挙げることができるが、上記Oリングとしての機能を果たすことができる弾性体であれば、任意の材料を採用することができる。
クランプ本体21の大径部211内の油路22は、大径部211の外側端面の中心位置においてクランプ本体21の外部に連通している。この大径部211内の油路22の端部には雌ねじ部221が形成されており、ここに操作ネジ222が装着されている。この操作ネジ222は、図示しないモータ等の駆動源により、任意の方向に任意の量だけ回転操作することができるようになっている。
この膨張クランプ20,20においては、この操作ネジ222を回転操作して雌ねじ部221内を進退させることにより、雌ねじ部221内の作動油(流体)を油路22の奥部に送り込み、上述した膨張室223を含む油路22内の作動油圧(流体圧)を上げ、これにより膨張室223に作動油を送り込んで膨張室223を膨張させることができるようになっている。膨張室223が膨張するとは、具体的には、上述した膨張リング25が周方向に延び、その外径が大きくなり、半径方向について膨出することである。
膨張リング25は、所定の弾性を有する弾性体から形成されている。この膨張リングの材質としては、たとえば、合金鋼等の金属、合成樹脂、合成ゴム等を挙げることができるが、膨張リングとしての機能を果たすことができる弾性体であれば、任意の材料を採用することができる。
この膨張リング25は、その内側の膨張室223に作動油が送り込まれると、送り込まれる作動油による半径方向外向きの圧力(作動油圧、流体圧)を受けると、周方向について均等に膨張し、その外径が大きくなるように変形する。この膨張変形により、膨張リング25の外周面は、管体10の内周面と全周にわたって接触するようになっている。
この膨張リング25は、軸方向について所定の長さを有している。図4(b)に示すように、膨張時においてもその外周面が軸方向についてほぼ同一直径を保ったままで膨張変形するようになっている。このため、管体10は、膨張リング25と軸方向について所定の接触幅で面接触する。したがって、膨張クランプ20,20が管体10の内周面11に局所的に接触することで管体10が実際の使用時とは異なる形状に変形することを防止して、正確な形状測定に寄与することができる。また、管体10に不適正な変形を与えることなく、大きな押圧力をもって接触させることも可能となる。
また、この膨張リング25の外周表面は十分に平滑化されており、管体10の内周面11に密着状態で接触するようになっている。
この一対の膨張クランプ20,20は、管体10の実際の使用時における支持予定位置(図5でハッチングを施した領域S内)で、管体10と当接するようになっている。これにより管体10が実際に使用されるときに回転動作の基準となる部分を、形状測定における基準とすることができ、より実際に即した測定を実現することができる。
このような膨張クランプ20,20によると、膨張クランプ20,20は膨張リング25が周方向について均等に膨出して管体10の内周面11と全周にわたって当接するから、管体10は実際の使用時にフランジによって支持される場合とほぼ同一の条件で支持された状態となる。すなわち、一対の膨張クランプ20,20の中心軸位置は、管体10の内周面11がなす円の中心にほぼ一致することとなる。
そして、この状態で一対の膨張クランプ20,20をその中心軸回りに回転させれることにより、フランジによってその内周面11で支持される管体10が実際に使用されるときに極めて近似した回転状態が実現でき、この回転のもとでの管体10の挙動は、実際の使用時とほぼ同一となる。したがって、このようにして回転させた管体10の外周面の変位量を検出すれば、後述するように、管体の曲がり、偏肉、その他、管体の断面形状(真円度)等の影響をすべて統合したフレを検出することができる。
また、一対の膨張クランプ20,20は管体10の内周面11の全周にわたって接触するため、一対の膨張クランプ20,20の中心軸位置を管体10の内周面11がなす円の中心により確実に位置させ、実際の使用時の回転状態に近似した状態を実現することができる。
また、一対の膨張クランプ20,20は管体10の内周面11の全周にわたって接触するため、管体10により大きな押圧力をもって接触しても、その押圧力を周方向について略均等に分布させることができ、正確な形状測定に寄与することができる。
たとえば、一般的なクランプとして、いわゆる割れツメタイプのクランプ、すなわち、複数のツメ部において管体10の内周面11に接触し、複数のツメ部の間隔を拡げることで、管体10の内周面11の複数箇所を半径方向外向きに押圧して支持するクランプがある。しかしながら、このような割れツメタイプのクランプでは、管体10の内周面11のうち、周方向について局所的にツメ部が接触するため、管体10の断面を周方向について不均等に変形させてしまう恐れがある。とくに、管体10が薄肉であったり、柔らかい材質の場合には管体10が不均等に変形してしまうことで正確な形状測定ができない。これに対し、本発明にかかる管体の形状測定方法における膨張クランプ20,20では、膨張クランプ20,20は管体10の内周面の全周にわたって接触するため、前記従来の一般的な割れツメタイプのクランプのような不具合がない。
また、管体10の内側に一対の膨張クランプ20,20を挿入して膨張させ、この膨張クランプ20,20ごと管体10を回転させて外周面12の変位量を検出するだけであるから、簡素な構成で実現でき、測定誤差の累積を可及的に低減して、形状測定の高い精度を得ることができる。
また、一対の膨張クランプ20,20は、流体圧(作動油圧)により膨張するものとしたので、周方向について略均等で十分に大きな膨張力を得て、膨張クランプ20,20が管体10の内周面11を半径方向外向きに十分に大きな押圧力で押圧することができる。これにより、膨張クランプ20,20を管体10の内周面11に確実に接触することができる。
また、この実施形態では、十分に大きな押圧力により、管体10の両端部13を拡管変形させるようになっている。
そして、この拡管変形は、管体10の使用時にフランジ80,80が圧入される際における管体10の拡管変形と略同程度になっている。これにより、実際の使用時にさらに近似した支持状態が実現でき、これにより、実際の使用時の回転状態にさらに近似した状態を実現することができる。
また、一対の膨張クランプ20,20が管体10の内周面を押圧する押圧力は、管体10の使用時にフランジ80,80が圧入されることにより管体10に作用する拡管圧力と略同等となっている。これにより、実際の使用時に管体10の両端近傍にフランジ80,80等を圧入される管体10が実際の使用されるときにさらに近似した支持状態が実現でき、これにより、実際の使用時の回転状態にさらに近似した状態を実現することができる。
とくに、管体10は、実際の使用時にフランジ80,80が圧入されることにより、その両端近傍の断面形状(内周円)は、フランジ80,80の形状によってほぼ真円に矯正されることになるが、流体圧で周方向に均等に膨張する膨張フランジ20,20によって管体10を拡管するため、実際の使用時と同様に管体10の両端近傍を矯正した状態で管体10の形状測定を行うことができる。
また、一対の膨張クランプ20,20による管体10の拡管変形は、管体10の実際の使用時における管体10の拡管変形の程度に応じて、管体10の弾性変形領域内で行われるようにしても、管体10の塑性変形領域まで達するようにしてもよい。管体10の拡管変形を弾性変形領域内に留めると、形状測定時の管体の拡管変形は形状測定後に戻り、形状測定によって管体に与える影響を確実に小さく押さえることができる。一方、実際の使用時に塑性変形領域まで達する拡管変形が与えられる場合には、これと同様の拡管変形を施すことにより、実際の使用時とほぼ同等の条件で形状測定を行うことができる。
<変位検出器>
変位検出器30…は、管体10の外周面12の半径方向の変位量を検出するものである。この変位検出器30…は、管体10の外側に配置され、少なくとも管体10を回転させるときには、管体10の周方向についての位置(変位量の検出位置31…,32…)が固定されるようになっている。すなわち、管体10が回転するとき、変位検出器30…による変位量の検出位置31…,32…は、管体10の外周面12上を周方向にずれていくことになる。
この変位検出器30…によって検出される管体10の外周面12の半径方向の変位量とは、いわゆるフレ(外径フレ)である。
図1に示す実施形態では、管体10の軸方向位置が異なる5箇所を変位量(フレ)の検出位置31…,32…とできるように、5個の変位検出器30…を配置した場合を例示している。
そして特に外側の2つの変位検出器30,30は、管体10の両端近傍で上述した一対の膨張クランプ20,20に対峙する位置31,31を変位量の検出位置とするように配置されている。これらの位置31,31では、膨張クランプ20,20と変位検出器30,30で挟み込まれた管体10の肉厚を計測することができる。
一方、他の3つの変位検出器30…は、前記一対の膨張クランプ20,20に対峙する位置31,31以外の位置32…を変位量の検出位置とするように配置されている。これらの位置32…では、各位置における管体10の外周面のフレを検出することができる。
このような変位検出器30としては、具体的には、管体10の外周面12に接触する接触子を有し、この接触子の動きを検出して管体10の外周面12の変位量を検出する接触型の変位検出器のほか、後述する非接触型の変位検出器を採用してもよい。
このように管体10の内周面11に一対の膨張クランプ20,20を接触させ、管体10を膨張クランプ20,20で支持した状態で管体10を回転させたとき、管体10が完全な円筒形であれば管体の外周面12は半径方向に全く変位しない。逆に、管体10が完全な円筒形からの逸脱があれば、変位検出器30…に外周面の変位量として検出されることになる。
(不良管の例)
次に、管体10の代表的な不良について図7〜図9を参照して説明し、これらの不良を有する管を上記管体の形状測定方法によって測定した場合について、図10に示す変位量検出結果のグラフを参照して具体的に説明する。
なお、図10において、横軸は管体(ワーク)の回転角度を示し、縦軸は変位検出器30…によって検出される管体10の外周面12の半径方向の変位量の検出値を示している。
<曲がり管>
図7(a)は、管体の不良例である曲がり管101の斜視図である。曲がり管101とは、管体の軸が屈曲したものである。ここでは、他の不良要因を排除するように、その全長にわたって各断面では内周面がなす円(内周円)および外周面がなす円(外周円)がともに真円であり、内周円と外周円の中心が一致(同心)し、したがって管体の肉厚は均一である場合を想定している。
このような曲がり管101が実際に使用されるとき、図5において説明したように、管体両端の内側に挿入したフランジによって回転させると、図7(a)に示すように、曲がり管101は両端近傍の内周円の中心を通る直線T1を軸として回転し、曲がり管101の軸方向の中央部にフレ(振れ)が生じる。なお、図7(a)の二点鎖線は、実線の状態から180度回転させた状態を示している。
図7(b)は、この曲がり管101の軸方向中央部の断面図であり、二点鎖線は、実線の状態から180度回転させた状態における外周面(外周円)を示している。この図に示すように、管体101は、実線の状態では上方に持ち上がっているが、180度回転したところで二点鎖線に示すように下方に押し下げられ、さらに180度回転したところで実線の状態に戻る。すなわち360度周期のフレが生じている。
このようなフランジによる回転では、フランジによって支持される管体の一方の端部近傍の内周円の中心と他方の端部近傍の内周円の中心とを通る直線が回転軸T1となるが、曲がり管101の軸方向の中央部では、外周円の中心とこの回転軸T1とがずれてしまう。曲がり管101の軸方向の中央部のフレは、管体101の両端近傍の内周円によって決定される回転軸T1と、着目する断面における外周円の中心とのずれに起因する。
このような曲がり管101を測定対象としてその形状測定を行うと、膨張クランプ20,20は、実際の使用時のフランジと同様に曲がり管101の両端部を支持するため、曲がり管101は、膨張クランプ20,20の中心軸回りに回転させる測定時においても、図7(a),(b)に示すように回転する。
したがって、管体101の軸方向中央部分の変位量検出位置32…、すなわち一対の膨張クランプ20,20に対向する位置31,31以外の3つの変位量検出位置32…では、図10(b)に示すような周期360度の外周面12のフレが検出される。すなわち、この管体101の形状測定法法によれば、管体101の曲がりに起因する外周面のフレを検出することができる。
また、管体101の中央の3つの変位量検出位置32…のうち、真ん中の検出位置において、最も大きい変位(フレ)が検出される。このような各検出位置32…でのフレ量の程度比較により、管体101の不良が曲がりによるものであること、また、その曲がりの程度を推測することも可能である。
一方、一対の膨張クランプ20,20に対向する変位量検出位置31,31では、この位置31,31における管体101の肉厚が検出されるが、上述したように図7の曲がり管101では肉厚が一定である管体を想定したことから図10(a)に示すような変化のない検出結果が得られることとなる。
<偏肉管>
図8(a)は、管体の不良例である偏肉がある管(以下、偏肉管と呼ぶ。)102の斜視図である。偏肉管102とは、管体の断面において、周方向に肉厚が変化するものである。ここでは、他の不良要因を排除するように、管体の軸は直線であり、その断面は全長にわたって内周面がなす円(内周円)および外周面がなす円(外周円)がともに真円であるが、内周円と外周円の中心がずれている(偏心している)ために偏肉が生じている場合を想定している。また、管体の軸方向についてその断面形状は一定であり、かつ、ねじれていない場合を想定している。
このような偏肉管102が実際に使用されるとき、図5において説明したように管体両端の内側に挿入したフランジによって回転されると、図8(a)に示すように、偏肉管102は両端近傍の内周円の中心を通る直線T2を軸として回転し、偏肉管102はその軸方向の全長にわたって振れ(フレ)が生じる。なお、図8(a)の二点鎖線は、実線の状態から180度回転させた状態を示している。
図8(b)は、この偏肉管102の任意の断面の断面図であり、二点鎖線は、実線の状態から180度回転させた状態における外周面(外周円)を示している。この図に示すように、偏肉管102は、実線の状態では上部に厚肉部が位置しているため、その外周面は全体的に上方に持ち上がっているが、180度回転したところでは二点鎖線に示すように厚肉部が下部に移動し、上部には薄肉部が位置するため、全体的に下方に押し下げられ、さらに180度回転したところで実線の状態に戻る。すなわち360度周期のフレが生じている。
このようなフランジによる回転では、フランジによって支持される管体の一方の端部近傍の内周円の中心と他方の端部近傍の内周円の中心とを通る直線が回転軸T2となるのは、上述した曲がり管と同様である。偏肉管102では、その全長にわたって内周円と外周円の中心がずれているために、その全長にわたって内周円を基準に決定される回転軸T2と外周円の中心とがずれてしまう。偏肉管102の全長にわたるフレは、管体102の両端近傍の内周円によって決定される回転軸T2と、着目する断面における外周円の中心とのずれに起因する。
このような偏肉管102を測定対象としてその形状測定を行うと、膨張クランプ20,20は、実際の使用時のフランジと同様に曲がり管101の両端部を支持するため、偏肉管102は、膨張クランプ20,20の中心軸回りに回転させる測定時においても、図8(a),(b)に示すように回転する。
したがって、一対の膨張クランプ20,20に対向する管体102の両端近傍の検出位置31,31、およびそれ以外の中央の3つの検出位置32…の全てにおいて、図10(b)に示すような周期360度の外周面12のフレが検出される。すなわち、この管体の形状測定法法によれば、管体の偏肉に起因する外周面のフレを検出することができる。
とくに、一対の膨張クランプ20,20に対向する検出位置31,31では管体102の肉厚が直接的に検出されるものであるため、この位置31,31で検出されたフレから、管体102の周方向にわたる肉厚分布を得ることも可能である。
また、一般に管体は曲がりや偏肉といった不良要因が複合的に備わっているものであるが、この管体の形状測定方法によれば、これらの影響を重ね合わせた結果を1回の形状測定で得ることができる。
また、偏肉が管体の全長にわたってほぼ同じであると仮定するならば、管体10の膨張クランプ20,20に対峙する検出位置31,31で検出される変位量から判明する管体10の周方向についての肉厚分布が、管体10の全長にわたって同じであると推定することができる。この場合、一対の膨張クランプ20,20に対峙する検出位置31,31以外の検出位置32…において検出される変位量には、偏肉に起因する変位量が含まれているが、これから検出位置31、31で検出される変位量を引き算することによって消去して偏肉以外の原因に起因する不良の影響のみを取り出すことも可能である。このようにすれば、たとえば曲がりと偏肉の不要要因を複合的に有する管体に対して、これらの影響を重ね合わせた結果を得られると共に、これら不良による影響を分離して、それぞれの不良の程度を検討することも可能である。
このような偏肉が管体の全長にわたってほぼ同じであるとする仮定は、管体の製造方法の特性等に基づいて行える場合が多い。たとえば、押出によって連続的に製管され、これを所定長さに切断して製造された管体であれば、各管体の全長程度はその断面形状がほぼ同じと仮定できる場合が多い。
<扁平管>
図9(a)は、管体の不良例として断面が真円ではない管であって、特に断面が扁平な管(以下、扁平管と呼ぶ。)103の斜視図である。扁平管103とは、管体の断面が真円でなく、上下あるいは左右からはさみ付けて押しつぶしたような楕円状の断面をもつものである。ここでは、他の不良要因を排除するように、管体の軸は直線であり、その断面は内周円と外周円とがほぼ相似形で肉厚が一定であり、断面形状が全長にわたって一定であって、かつ、ねじれていない場合を想定している。
このような扁平管103が実際に使用されるとき、図5において説明したように、管体両端の内側にフランジを挿入すると、管体(扁平管)に対してどのようにフランジがセットされるか、言い換えればフランジの中心という回転軸に対して管体(扁平管)103の位置や姿勢がどうなるかは、管体の扁平度や強度、フランジの大きさや強度等の関係によって決まるため、一意に決められない。ここで、管体103の両端ともフランジの中心が扁平管の断面の内周円の中心に相当する位置にセットされた場合を想定し、この状態でこの管体(扁平管)103を回転させると、図9(a)に示すように、内周円の中心に相当する位置を通る直線T3を軸にして回転し、扁平管103はその軸方向の全長にわたって振れ(フレ)が生じる。なお、図9(a)の二点鎖線は、実線の状態から90度回転させた状態を示している。
図9(b)は、この扁平管103の任意の断面の断面図であり、二点鎖線は、実線の状態から90度回転させた状態における外周面(外周円)を示している。
この図に示すように、管体103は、実線の状態で縦長姿勢となっているが、90度回転したところでは二点鎖線に示すように横長姿勢となり、さらに90度回転したところで実線の状態に戻る。よって外周面では外側に膨らんだり内側にへこんだりを繰り返し、180度周期のフレが生じている。
この扁平管103の回転の回転軸T3は、上述したように、管体(扁平管)103の両端の断面において内周円の中心を通ることを想定している。さらに、全長にわたって一定断面であることを想定しているこの例では、任意の断面においてもその外周円(真円ではない)の中心を通る。したがって、扁平管103の全長にわたるフレは、管体103の各断面における外周円が真円からずれていることに起因する。
このような扁平管103を測定対象としてその形状測定を行うと、膨張クランプ20,20は、実際の使用時のフランジと同様に曲がり管101の両端部を支持する。このような内周円が真円でない扁平管のような非円形断面管では、上述したように、実際の使用時にフランジによってどのように支持されることになるかは一意には決められない。しかしながら、上述したように、本発明にかかる管体の形状測定方法によれば、実際の使用時とほぼ同様の条件で管体を支持し、回転させることができるため、実際の使用時に管体がどのように支持されるにしても、形状測定時にはそれと同様の支持状態および回転状態を現出することができることになる。
ここでは、上述した実際の使用時と同様に、一対の膨張クランプ20,20の両方が、扁平管103の断面の内周円の中心に相当する位置にセットされた場合を想定すると、扁平管103は図9(a),(b)に示すように回転する。
したがって、一対の膨張クランプ20,20に対向する管体103の両端近傍の検出位置31,31、およびそれ以外の中央の3つの検出位置32…の全てにおいて、図10(c)に示すような周期180度の外周面12のフレが検出される。すなわち、この管体の形状測定法法によれば、管体の断面が非円形であることに起因する不良をも検出することができる。
また、この検出される変位の変化の状態(図10(c)のグラフの形状)等から、測定対象の管体103の断面形状を推測することも可能である。
また、上述したように、この方法では、管体の曲がりや偏肉等の不良をも検出することができるが、前記の管体断面が非円形であることに伴う不良をも併せて、これらの不良の影響を重ね合わせた結果を得ることができる。
また逆に、これらの各不良の典型的な検出パターンを考慮することにより、各不良毎の程度や大きさ、内容(非円形断面の場合の断面形状)等を分別することもできる。これにより、各不良の解消対策にも寄与できる。
<両端潰れ形状管>
次に、本発明にかかる管体の形状測定方法の利点が特に発揮される管体の形状および状態の例を2つ説明する。
まず第1の例は、図11に示すように、管体10の両端部13,13のみが扁平な断面形状をなしているが、その中央部14は適正な真円形状をなしている場合である。
感光ドラム素管等に供される管体10は、長尺の管材料を所定長さに切断して製造されることが多いが、この場合、管体の両端近傍のみが切断によって扁平に変形してしまう場合が往々にしてある。
このように両端近傍が扁平に変形した形状では、たとえば図17および図18等に示した従来の形状測定を行うと、完全な円筒管形状からかけ離れた形状として判定されてしまう。所定の合格基準のある形状検査では不良品と判定されてしまう可能性も高い。
しかしながら、このような管体10は、実際の使用時には図5に示したようにその両端にフランジ等を圧入することで、両端近傍が真円形状に矯正され、その形状不良は解消され、実際の使用時の形態は完全な円筒形となり、全く使用するのに問題がない場合もある。一方、実際の使用時にフランジ等を圧入しても完全な円筒形とは成らない本当の不良管もありうるが、従来の形状測定方法では、これらを判別しようがなく、本来は良品と判定しうるものを不良と判定してしまう可能性があった。
これに対し、本発明にかかる形状測定方法によれば、管体10の両端近傍に膨張クランプ20,20を挿入し、これを膨張させて管体10の内周面に接触させ、実際の使用時により近似した拡管変形を施した状態で管体の形状測定を行うことができるため、図11のような両端近傍に実際の使用時には解消される擬似不良が存在する管体に対しても、実際の使用時に残る不良であるのか否かを正確に判別することのできる形状測定結果を得ることができる。
このため、従来は、不良と判別せざるを得なかった管体についても正確に形状測定を行い、真の形状測定結果を提供することができる。
<材質分布不均一管>
本発明にかかる管体の形状測定方法の利点が特に発揮される第2の例は、実際の使用時にフランジを圧入する前は、完全な円筒形状をなしているが、その材質分布が周方向に不均一である場合である。
図12は、このような周方向に材質分布が不均一な管体の例であり、図12(a)はフランジを圧入する前の状態、図12(b)はフランジ80を圧入した後の状態を示している。
この図12(a)に示すように、この管体は、その全周の肉厚は均一である。しかしながら、その約左半分部分Wが他の部分に比べて延び変形しやすいものとなっている。このような管体が製造される原因としては、たとえば管体を押出成形する時点で押出材料にムラがあった場合や、管体に成形された後の温度条件等の環境条件が周方向にばらついていた場合を挙げることができる。
このような管体10の内側にフランジ80を圧入すると、元は図12(a)のように内周面がなす円(内周円)の直径がDであった管体10が、たとえば図12(b)に示すように、内周面のなす円の直径がD’まで大きくなるように拡管変形される。このとき、他の部分に比べて延び変形しやすい部分Wは、他の部分より大きく延び変形してしまい、他の部分より肉薄の部分W’となる。
すなわち、この第2の例は、上記第1の例とは逆に、実際の使用前は正常としか判別のしようがない形状であるにもかかわらず、実際に使用する時には、少なくともフランジ80によって支持され、回転中心が決定される管体の両端近傍部分が偏肉管となってしまい、その結果、不良管となってしまう例といえる。
このような管体は、たとえば図17および図18等に示した従来の形状測定では、形状測定時には完全な円筒管形状をなしているのであるから、完全な円筒形状であると判定せざるを得ず、このような不良管は検出することができなかった。
これに対し、本発明にかかる形状測定方法によれば、管体10の両端近傍に膨張クランプ20,20を挿入し、これを膨張させて管体10の内周面に接触させ、実際の使用時により近似した拡管変形を施した状態で管体の形状測定を行うことができるため、図12のような両端近傍に実際の使用時に発生する隠れた不良をも検出して、真の形状測定結果を提供することができる。
具体的に、管体の内周面を基準とした外周面のフレ量の許容範囲が、たとえば管体10の不良要因である曲がり、偏肉および真円度のそれぞれの加工限界精度レベルの合計である30μm以下であった場合には、この30μmから測定誤差の最大値を引いた値より、フレ量の測定結果が小さいものを良品として選別する検査を行えばよい。このようにすると、不良品と誤判定される数を抑えながら、検査で良品とされた全数が確実に許容範囲の例である30μm以下に収まっている管体の集合を得ることができる。
さらに、計測誤差を考慮してしきい値を設定し、管体を選別することにより、フレ量が20μm以下に収まっている好適な管体の集合を得ることができる。また、従来の管体の製法では極めて加工が困難なレベルであるフレ量が10μm以下に収まっている特に好適な管体の集合や、さらにフレ量が5μm以下に収まっている極めて好適な管体の集合を得ることができる。究極には、フレ量が測定誤差の最大値以下に収まっている管体の集合も得ることができる。
なお、この管体の形状測定方法におkる測定誤差は、種々の変位量を有する複数の管体のそれぞれに対して複数回の形状測定を行って、各回の測定結果のバラツキの最大量を求めれることによって得ることができる。
また、この管体の形状測定方法では、管体10の両側に挿し入れた膨張クランプ20,20を膨張させるだけで、然るべき形状測定位置に管体をセットすることができ、高速で管体の形状測定を行うことができるため、製造される全ての管体の形状測定および合否判定を容易に行うことができ、ひいては、公知の加工精度の限界レベルにおいて出荷する管体の全数についてフレ量等が所定範囲内にあることを保証できる。
たとえば、感光ドラム用基体は、一般に複数本を一単位として、ケース等に収容されて搬送され、取引され、通常は、一単位は10本以上であり、たとえば、80本や140本である。この形状測定方法によれば、この全数についてフレ量がたとえば30μm以下であることを保証できる。
(検査装置)
次に、本発明にかかる管体の検査装置について説明する。
図13は、この検査装置6の構成を示す機能ブロック図である。
この検査装置6は、上述した形状測定装置5と、形状測定装置5によって検出された管体10の外周面の変位量データから外周面のフレ量を算出するフレ量算出部61と、管体10の外周面12のフレ量の許容範囲が設定され、記憶される許容範囲記憶部62と、フレ量算出部61において算出された管体10のフレ量が許容範囲内にあるか否かを検査する比較部63と、この検査結果を出力する出力部64とを備えている。
フレ量算出部61、許容範囲記憶部62、比較部63、および出力部64は、具体的には、コンピュータ上でそれぞれの機能を果たすソフトウェアおよびハードウェアから構成される。
これらフレ量算出部61、許容範囲記憶部62および比較部63において取り扱われるフレ量は、は、たとえば形状測定装置5により管体10の軸方向について5箇所(5断面)における外周面12の変位量を検出する場合であれば、5箇所すべてのフレ量としても、あるいは、そのうちの一部としてもよい。
また、複数箇所(例えば5箇所)のフレ量を用いる場合であっても、最終検査結果で合格とする条件としては、全てのフレ量がそれぞれが所定の許容範囲内にあることとしても、複数箇所のフレ量を組み合わせた結果が所定の許容範囲内にあることとしてもよい。フレ量の組み合わせとは、たとえば、複数箇所のフレ量のいずれもが所定の範囲内にあり、かつこれらフレ量の合計が所定の範囲内にあること等を挙げることができる。
なお、ここでは、形状測定装置5で検出された管体10の外周面の変位量の生データを加工して、外周面のフレ量等の管体10の形状を表現する指標値等を算出する算出手段を、形状測定装置5の外側に表現したが、形状測定装置5自身がこのような算出手段を有していてもよいことはいうまでもない。また、その算出結果を出力する出力手段を有していてもよい。
このような検査装置6によれば、所定の形状精度を有する管体、および管体の集合を容易、かつ確実に選別することができる。
(製造システム)
次に、本発明にかかる管体の製造システムについて説明する。
図14は、この製造システム7の構成を示す機能ブロック図である。
この製造システム7は、管体10を製管する製管装置71と、上述した検査装置6と、検査装置6の検査結果に基づいて管体10を完成品とするか否かを判定する合否判定部72とを備えている。
製管装置71は、たとえば感光ドラム素管を押出成形および引き抜き成形を組み合わせることによって製管するものである。具体的には、アルミニウム合金製の感光ドラム素管を製管する場合であれば、原料を溶解させて押出加工材料を製造する工程、押出工程、引き抜き加工工程、矯正工程、所定長さへの切断工程、洗浄工程等を実行する各機械装置の集合として構成されている。
こうして製管された管体10は、上述した検査装置6において形状が所定の許容範囲内にあるか否かが検査され、合否判定部72は、この検査結果に基づいて所定の許容範囲内にあるのであれば、その管体10を完成品と判定する。
この製造システム7においては、製管装置71から検査装置6の形状測定装置5に管体10を自動搬送する自動搬送装置を備えていることが望ましい。
また、合否判定部72において合格とされた完成品と、不合格と判定された不良被疑品とを異なる場所に選別して搬送する搬送装置を備えることが望ましい。 また、検査装置6が備える管体の形状測定装置5において、管体10に発生している不良の種類や特徴等が判別された場合には、これを製管装置71にフィードバックするフィードバック機能を備え、これにより不良管の発生を未然に防止するようにすることが好ましい。
このような製造システム7によれば、所定の形状精度を有する管体、および管体の集合を確実に得ることができる。
(その他の実施形態)
以上、本発明を実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記に限定されず、以下のように構成してもよい。
(1)上記実施形態では、一対の膨張クランプ20,20を管体の使用時における支持予定位置に当接させたが、管体の内周面であれば他の位置であってもよい。ただし、支持予定位置の近傍であることが望ましい。支持予定位置と断面形状が近似している可能性が高いためである。
(2)上記実施形態においては、管体10の軸方向を略水平方向にして形状測定を行ったが、管体10の軸方向を略鉛直方向に立てて形状測定を行うようにしてもよい。このようにすると、管体10が自重でたわむことが軽減されるため、管体10本来の形状を測定することができる。
(3)上記実施形態では、変位検出器30…を管体10の複数の断面に1つずつ配置して管体10の複数の断面(軸方向位置)における外周面の変位量を検出したが、1あるいは複数の断面において、複数の変位検出器30…を配置し、一断面について複数の変位を検出してもよい。このようにすると、一断面について複数検出される変位量から、その断面形状についてより詳しく正確に知ることが可能となる。
また、図15に示すように、管体10の任意の断面(軸方向位置)において周方向位置が半周分異なる2つの位置31…,32…,33…,34…(対向する位置)において外周面の変位を検出するようにすれば、その断面における管体10の直径を直接的に得ることができる。すなわち、管体10を膨張クランプ20,20で支持し、膨張クランプ20,20の中心軸回りに回転させる場合、任意の断面(軸方向位置)において1の変位検出器30の変位検出量から、回転角度が180度異なる位置における変位検出量を合わせることにより、管体10の直径は理論的に得ることが可能である。しかしながら、この理論的に得られる直径の精度は、管体10の回転角度の制御や回転角度の検出等の精度に影響を受ける。これに対し、図15に示すように周方向位置が半周分異なる位置において外周面の変位量を検出するようにすると、形状測定の各瞬間において2つの変位量を取り出してこれらを比較することで管体10の直径が得られるため、管体10の回転角度の影響を受けない。したがって、このような管体10の回転角度の精度等の影響を受けることなく、正確な直径を容易に得ることができる。
(4)上記実施形態においては、管体10の外周面の変位量の検出位置を複数設けたが、少なくとも1つあればよい。
(5)上記実施形態においては、形状測定対象である管体10として感光ドラム素管を挙げたが、これに限らず、複写機等に用いられる搬送ローラ、現像ローラ、転写ローラでも好適に適用できる。その他、管体であれば本発明の測定対象となりうる。
(6)上記実施形態においては、膨張クランプ20,20を回転駆動源26,26で回転させるようにして、これにより管体10を回転させが、管体10の回転は、測定作業者が手で管体10や一対の膨張クランプ20,20をつかんで回転させてもよい。また、図示しない駆動ローラ等を管体10に接触させて回転させてもよい。また、膨張クランプ20,20の一方にのみ回転駆動源を連結して他方は連れ回りするようにしてもよい。
(7)上記実施形態においては、管体10の外周面に接触する接触型検出器を例示したが、変位検出器としては、管体10の外周面12の半径方向の変位量が得られればこれらに限定するものではない。
変位検出器としては、たとえば管体10の外周面に接触しない光透過型の検出器(透過式の光学式センサ)を採用してもよい。この光透過型の検出器とは、たとえば図16に示すように、管体10の軸方向に直交する方向から管体10を挟み込むように配置された光照射部38と受光部39とが一組となって配置されたものである。この光透過型の変位検出器では、光照射部38から照射された光(たとえばレーザ光)のうち管体10によって遮られず透過した光を受光部39によって検出し、これによって管体10の外周面12の表面位置を検出するようになっている。
この変位検出器の検出域(高さ幅)を、図16に示すように、管体10の直径を超える高さ方向の幅を有するようにすれば、変位検出器は、管体10の外周面の一箇所の変位量だけではなく、それに対向する位置(管体10の周方向について半周分異なる位置、180度回転した位置、あるいは逆位相位置)の変位量も同時に検出できるようになる。
このような非接触型の変位検出器によれば、管体10の外表面に損傷を与えることがない利点がある。
また、光透過型の変位検出器によれば、光を遮る管体10の外周面12近傍では光が回折して受光部39に到達し、必要以上に微細な外周面12の形状凹凸を捨象した検出結果が得られる。このため、必要以上に微細な表面欠陥による外周面12の変位量を除いた適切な検出結果を容易に得ることできるという利点もある。
また、その他の変位検出器としては、たとえば、非接触で検出できる反射型の光学式センサ、非接触で検出でき、材料を選ばず汎用的な画像処理用のCCDカメラやラインカメラ、非接触で検出でき、高精度、高速、環境に強く、かつ安価なうず電流式の変位センサ、非接触で検出でき、高精度な静電容量式の変位センサ、非接触で検出できるエアー(差圧)式の変位センサ、あるいは、非接触で検出でき、長距離計測が可能な超音波式変位センサ等、種々の測定原理に基づく検出器を採用することができる。
(8)上記実施形態においては、一対の膨張クランプ20,20によって実際の使用時の拡管変形と同程度に管体10を拡管変形させたが、一対の膨張クランプ20,20による管体10の拡管変形は、管体10の使用時における管体10の拡管変形より小さいようにしてもよい。このようにすると、実際10の使用時に管体10の両端近傍にフランジ80,80を圧入される管体10が実際の使用されるときに近似した支持状態を実現しながら、管体10の使用時における拡管変形より小さい拡管変形しか行わないため、形状測定によって管体10に与える影響を小さく抑えることができる。
とくに、実際の使用時には、管体10がフランジ80,80が圧入されることによって塑性変形を受ける場合であっても、形状測定時には一対の膨張クランプ20,20が弾性変形領域内の変形のみを与えるようにすると、管体を形状測定を行った後においても、形状測定前と同様の形状を保たせることができる。
(9)上記実施形態においては、実際の使用時にフランジ80,80が圧入されることによって管体10に作用する押圧力と同程度の押圧力を一対の膨張クランプ20,20によって管体10に作用させたが、一対の膨張クランプ20,20によって管体10に作用させる押圧力は、管体10の使用時に管体10に作用する拡管圧力より小さくしてもよい。このようにすると、実際の使用時に管体10の両端近傍にフランジ80,80等を圧入される管体が実際の使用されるときに近似した支持状態が実現しながら、管体10の使用時における拡管変形より小さい拡管変形しか生じないため、形状測定によって管体10に与える影響を小さく抑えることができる。
(10)上記実施形態においては、膨張クランプ20,20を作動油による流体圧で膨張リングを膨出させるように構成したものを例として示したが、本発明は流体圧に限定されない。膨張させる駆動原理機構としては、膨張動作が、クランプした時に前述した押圧力を得られるものであれば良い。膨張させる駆動原理機構としては、膨張クランプを構成する材料が体積変化し、温度、電気などにより変化量を制御できるものを用いることもできる。例えば、膨張クランプ内に設けた膨張部を加熱して熱膨張させ、この膨張力をもって管体の内周面に接触し、さらには拡管変形させるようにしてもよい。あるいは、通電されることにより膨張する材料を利用したいわゆるピエゾアクチュエータを用いて管体の内周面に接触し、さらには拡管変形させるようにしても良い。