JP2004150350A - 車載用電子制御装置における信号処理回路 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】増幅回路4における増幅度及び信号処理回路8におけるしきい値は、それぞれの回路に設けられた抵抗6,7,10〜12の抵抗値の比によって決定される。そのため、それぞれの回路の抵抗6,7,10〜12を、同一の半導体基板上に同様の抵抗材料を用いて形成した。このため、温度特性や経年変化による抵抗値の変動が生じた場合でも、各抵抗6,7,10〜12は同じ変動傾向を示すので、各抵抗6,7,10〜12の抵抗値の比の変動を抑えることができる。従って、増幅度やしきい値の変化を抑制することができ、結果として、増幅度及びしきい値を高精度に設定することができる。
【選択図】 図2
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両に搭載されたセンサから出力された検出信号の増幅処理及びパルス信号への変換処理を行なう車両用電子制御装置における信号処理回路に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来の信号処理回路の構成を図5に示す。この信号処理回路2は、例えばエンジンECU1内に設けられ、エンジン(図示せず)の回転数等を検出するセンサ14の検出信号を増幅する増幅回路4、及び増幅された検出信号をパルス信号に変換する信号変換回路8から構成される。
【0003】
なお、センサ信号に高周波ノイズが重畳された場合等を考慮し、センサ14の検出信号は、高周波成分を除去するローパスフィルタ15及び過大な電圧値の信号の入力を防止する入力保護回路16を介して増幅回路4に入力される。
【0004】
センサ14は、磁気ピックアップとして構成され、例えばエンジンのクランク軸に固定され、かつ外周に所定の間隔で突起が形成されたロータの近傍に配置され、そのロータの回転数に応じた周期、及び振幅の検出信号を出力する。
【0005】
増幅回路4は、OPアンプ5及び増幅回路4の増幅度を決定する素子である2個の抵抗6,7から構成される。ちなみに、この増幅回路4における増幅度Aは、抵抗6の抵抗値をR1,抵抗7の抵抗値をR2とした場合、下記の式によって示される
【0006】
【数1】A=(R1+R2)/R1
ここで、図6(a)の波形図に示すように、センサ14の検出信号は、一般的に、そのダイナミックレンジが小さいので、増幅回路4によって増幅した後に後段の回路に出力するように構成されている。
【0007】
また、信号変換回路8は、コンパレータ9と、コンパレータ9における判定しきい値を決定する素子である3個の抵抗10,11,12とから構成される。なお、信号変換回路8において3個の抵抗10,11,12によって判定しきい値を決定しているのは、コンパレータ9の出力がHiレベルのときとLoレベルのときとで、その判定しきい値にヒステリシスを持たせて、コンパレータ9から出力されるパルス信号がハンチングすることを防止するためである。
【0008】
すなわち、コンパレータ9の出力がLoレベルである場合には、抵抗11と抵抗12とが並列接続されることになるので、電源電圧をV0、抵抗10,11,12の抵抗値をそれぞれR3,R4,R5とすると、判定しきい値V1は下記の式によって示される。
【0009】
【数2】V1=V0×(R4//R5)/(R3+(R4//R5))
また、コンパレータ9の出力がHiレベルである場合には、抵抗10と抵抗12とが並列接続されることになるので、判定しきい値V2は下記の式によって示される。
【0010】
【数3】V2=V0×R4/((R3//R5)+R4)
数式2及び数式3から明らかなように、コンパレータ9の出力がLoレベルであるときの判定しきい値V1が、コンパレータ9の出力がHiレベルであるときの判定しきい値V2よりも小さくなる。従って、信号変換回路8では、図6(b)の波形図に示すように、増幅回路4によって増幅された後のセンサ信号に対して、2種類のしきい値V1,V2を用いて大小判定を行なうことになる。そして、図6(c)に示すように、センサ信号がしきい値V1を下回ってからしきい値V2を上回る間、コンパレータ9からHiレベルの信号が出力され、センサ信号がしきい値V2を上回ってからしきい値V1よりも低下するまでLoレベルの信号が出力される。このようにして、信号変換回路8は、センサ14の検出信号(正弦波信号)をパルス信号に変換する。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
上述した従来の信号処理回路では、増幅回路4の抵抗6,7及び信号変換回路8の抵抗10,11,12が、それぞれディスクリート部品で構成され、個々の抵抗素子が独立してプリント基板に実装されていた。
【0012】
しかしながら、ディスクリート部品としての一般的な抵抗は、その抵抗値の初期公差として例えば5%程度の範囲でのずれは見込む必要があり、さらに、温度特性として例えば±1000ppm/℃程度の抵抗値変化も生ずる。
【0013】
従って、増幅回路4の増幅度や、信号変換回路8の判定しきい値を設定する際の誤差範囲として、上述した初期公差や温度特性による抵抗値変化による影響をも加味して設計する必要がある。このような場合、所定値以上の増幅度、及び2種類の判定しきい値V1,V2の差を保証するような設計を行なおうとすると、上記した抵抗値の変動要因によって種々の問題が発生することになる。
【0014】
例えば、初期公差等の影響で増幅度が比較的小さい値に設定され、判定しきい値V1,V2が比較的大きな値に設定されると、センサ14の検出信号のレベルがかなり大きくならない限り、パルス信号が出力されない事態となる。これにより、センサ14の検出感度が低下し、特に低回転数域における検出精度が悪化する。逆に、増幅度が比較的大きな値に設定され、判定しきい値が比較的小さな値に設定された場合には、本来の検出信号以外のノイズによっても判定しきい値V2を超え易くなり、この場合も検出精度の悪化を招く。
【0015】
このような問題に対して、センサ自体が大きなレベルの検出信号を出力可能なセンサを採用したり、センサ14とロータとの組み付け距離を高精度に設定して、安定的に大きなレベルの検出信号を出力できるようにすることにより、検出精度の悪化を抑制することができる。ただし、大きなレベルの検出信号を出力可能なセンサを採用したり、高精度な組み付けを行なおうとするとコストが増加するとのデメリットが生ずる。
【0016】
また、増幅回路4及び信号変換回路8に使用する抵抗6,7,10〜12として、高精度かつ温度特性の良いものを採用することも考えられるが、そのような特性の抵抗は高価であり、同様にコストの増加を招く。
【0017】
さらに、温度特性による抵抗値変化を補正する回路等を付加した場合にも、部品点数の増加によるコストの上昇、及び回路規模が大きくなることにより小型化が困難になるとの問題が生じる。
【0018】
本発明は、かかる従来の問題点を鑑みてなされたもので、高価な部品や付加的な回路を用いることなく、増幅回路の増幅度及び信号変換回路のしきい値を高精度に設定することが可能な車載用電子制御装置における信号処理回路を提供することを目的とする。
【0019】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の車載用電子制御装置における信号処理回路は、
車両に搭載されたセンサの検出信号を入力し、その検出信号の信号振幅を所定の増幅度で増幅する増幅回路と、
増幅回路によって増幅された検出信号を所定のしきい値と比較することにより、検出信号をパルス信号に変換して出力するパルス信号変換回路とを備えた車載用電子制御装置における信号処理回路であって、
増幅回路において増幅度を決定する複数の素子及びパルス信号変換回路においてしきい値を決定する複数の素子を、それぞれ同じ半導体基板上に同様の素子材料を用いて形成したことを特徴とする。
【0020】
ここで、増幅回路における増幅度及びパルス信号変換回路におけるしきい値は、それぞれの回路に設けられた複数の素子が有する物理値(例えば抵抗値)の比によって決定される。請求項1に記載の信号処理回路では、同じ半導体基板上に同様の素子材料を用いて、増幅度を決定する複数の素子及びしきい値を決定する複数の素子をそれぞれ形成したので、温度特性や経年変化による物理値の特性変動は、各素子において同様の傾向で生ずる。このため、そのような特性変動が生じた場合であっても、各回路における複数の素子が有する物理値の比の変動を抑制することができる。その結果、温度特性や経年変化による特性変動が生じた場合でも、増幅度やしきい値の変化を抑制することができ、増幅度やしきい値を維持することができるので、結果として、増幅度及びしきい値を高精度に設定することができる。
【0021】
さらに、同じ半導体基板上に複数の素子を形成することで、それら複数の素子は近接した位置に配置されることになる。この場合、複数の素子の各々に同様な温度変化が生じ易くなる。従って、温度変化に応じて複数の素子の物理値はほぼ同様に変動するため、一層、その物理値の比の変動を抑制することができる。
【0022】
請求項2に記載したように、増幅回路の増幅度を決定する複数の素子は、異なる増幅度を実現するために複数セット用意され、その複数セット用意された複数の素子の中から、任意セットの複数の素子の接続を有効にするための端子を備えることが好ましい。これにより、異なる増幅度が必要となるセンサに対しても共通の増幅回路を使用することができる。
【0023】
同様の理由から、請求項3に記載したように、パルス信号変換回路のしきい値を決定する複数の素子は、異なるしきい値を実現するために複数セット用意され、その複数セット用意された複数の素子の中から、任意セットの複数の素子の接続を有効にするための端子を備えることが好ましい。
【0024】
また、請求項4に記載したように、増幅回路の増幅度を決定する複数の素子及びパルス信号変換回路のしきい値を決定する複数の素子は、それぞれ同じ半導体基板上に形成された複数の抵抗体であることが好ましい。抵抗体を用いることにより、増幅度及びしきい値を任意の値に容易に設定することが可能となる。
【0025】
請求項5に記載したように、複数の抵抗体は、同一の工程によって形成されることが好ましい。この場合、抵抗材料を半導体基板上に所定のパターンに蒸着させたり、一様な蒸着膜をエッチング等によって所定のパターンにパターニングすることにより、複数の抵抗体が形成される。そして、同一の工程によって複数の抵抗体を形成すれば、初期公差のばらつきの傾向も各抵抗体で共通とすることができる。このため、その複数の抵抗体の抵抗値の比によって決定される増幅度やしきい値をさらに高精度に設定することができる。
【0026】
請求項6に記載したように、センサは、被測定体の回転数に応じて、少なくとも周波数が変化する検出信号を出力するものであることが好ましい。また、請求項7に記載したように、センサの検出信号は、さらに、被測定体の回転数に応じて振幅が変化するものであることが好ましい。このような検出信号を出力するセンサは、一般的に、検出信号のダイナミックレンジが小さいため、増幅回路によって増幅することが必要であるとともに、例えばエンジンECU等の演算処理に用いるためには、パルス信号に変換されることが必要であるためである。
【0027】
上述した車載用電子制御装置における信号処理回路は、車両への搭載場所によっては環境温度が大きく変化するとともに、車両の使用期間は長期に渡ることもある。従って、増幅度を決定する複数の素子及びしきい値を決定する複数の素子の温度特性や経年変化による特性変動に対する対策を施すことは非常に重要となる。そして、上述したような構成を採用することにより、特性変動が生じた場合であっても、増幅度及びしきい値を高精度に設定することができるので、結果として、センサの検出信号を適切にパルス信号に変換することができる。これにより、例えばエンジン制御装置等の車両用電子制御装置は、そのパルス信号に基づいて車両の制御対象であるエンジン等を好適に制御することが可能となる。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0029】
図1は、本実施形態における電子制御装置1の概略構成を示す構成図である。図1に示すように、本実施形態における電子制御装置1は、外部電源27からの電源電圧を所望の電圧に変換し、その電圧を電子制御装置1のマイコン3、信号処理回路2、駆動回路25等の内部回路に供給する電源回路22を備える。
【0030】
電子制御装置1は、各種のセンサからの検出信号に対して増幅処理、及びパルス信号への変換処理等を行なう信号処理回路2を有している。この信号処理回路回路2によって処理されたセンサ信号は、マイコン3に入力される。そして、マイコン3は、入力されたセンサ信号等に基づいて、所定の演算を行い、その演算結果に応じて各種の電子負荷26を駆動する為の制御値を決定する。その制御値に応じた制御信号が、駆動回路25に出力され、これにより、各種の電子負荷26が駆動回路25によって駆動される。
【0031】
なお、本実施形態における電子制御装置1は、車両のエンジンを制御するエンジン制御装置等、エンジン回転数や、車輪やドライブシャフトの回転数を検出する回転検出センサを備える制御装置に適用されるものである。この制御装置が、例えば車両のエンジンルーム内に設置された場合には、その環境温度は大きく変化する。
【0032】
次に、信号処理回路2の構成に関して、図2に基づいて詳細に説明する。ただし、図5に示した従来の信号処理回路と同様の構成に対しては同じ参照番号を付すことにより、詳細な説明は省略する。
【0033】
図2において、エンジンの回転数等を検出するセンサ14の検出信号は、ローパスフィルタ15,及び入力保護回路16を介して増幅回路4に入力される。増幅回路4は、OPアンプ5及び増幅回路4の増幅度を決定する素子である2個の抵抗6,7から構成される。
【0034】
増幅回路4によって増幅された検出信号は、信号変換回路8に入力され、パルス信号に変換される。信号変換回路8は、コンパレータ9と、コンパレータ9における判定しきい値を決定する素子である3個の抵抗10,11,12とから構成される。なお、信号変換回路8において、判定しきい値にヒステリシスを持たせる必要がない場合には、コンパレータ9の非反転入力端子に、単に2個の抵抗10,11によって分圧された電圧を入力すればよい。
【0035】
信号処理回路2として、このような増幅回路4及び信号変換回路8を用いることにより、従来の信号処理回路と同様に、図6(a)、(b)、(c)に示す如く、センサの検出信号が所定の増幅度で増幅された後、大小2種類の判定しきい値V1、V2と比較され、その結果、センサ検出信号がパルス信号に変換される。
【0036】
ここで、本実施形態においては、増幅回路4を構成するOPアンプ5及び抵抗6,7、さらに信号変換回路8を構成するコンパレータ9及び抵抗10〜12を同じ半導体基板に集積化したICとして構成した。
【0037】
特に、増幅回路4において、増幅度を決定する素子である抵抗6,7、及び信号変換回路8において判定しきい値を決定する素子である抵抗10〜12を、それぞれ同一の抵抗材料を用いて、かつ同じ製造工程によって同時に形成した。
【0038】
ここで、抵抗材料としては、例えばタンタル(Ta),窒化タンタル(TaN),ニッケルクロム(NiCr)等、一般に半導体基板上に抵抗を形成する場合に用いられる材料を使用することができる。そして、その製造工程としては、例えば抵抗材料を半導体基板上にマスクパターンを用いて所定のパターンに蒸着させたり、一様な蒸着膜をエッチング等によって所定のパターンにパターニングすることにより、複数の抵抗6,7,10〜12が同時に半導体基板上に形成される。
【0039】
このように、同一の工程によって複数の抵抗6,7,10〜12を形成すれば、各抵抗6,7,10〜12の初期公差のばらつきの傾向を共通化することができる。このため、抵抗6,7の抵抗値の比によって決定される増幅度や抵抗10〜12の抵抗値の比によって決定されるしきい値を高精度に設定することができる。
【0040】
また、同じ抵抗材料によって各抵抗6,7,10〜12を形成することにより、温度特性や経年変化による抵抗値の特性変動は、各抵抗6,7,10〜12において同様の傾向で生ずる。このため、そのような特性変動が生じた場合であっても、上述した数式1に示される抵抗6,7の抵抗値の比、及び上述した数式2及び数式3に示される分母,分子の比、つまり抵抗10〜12の抵抗値の比の変動を抑制することができる。その結果、温度特性や経年変化による特性変動が生じた場合でも、増幅回路4の増幅度や信号変換回路における判定しきい値の変化を抑制することができ、結果として、増幅度及びしきい値を高精度に設定することができる。
【0041】
また、同じ半導体基板上に複数の抵抗6,7,10〜12を形成することで、それら複数の抵抗6,7,10〜12は近接した位置に配置されることになる。この場合、温度変化が生じる環境に置かれたとしても、複数の抵抗6,7,10〜12の各々には同様な温度変化が生じ易くなる。従って、温度変化が生じた場合でも、数式1に示される抵抗6,7の抵抗値の比や数式2及び数式3の分母,分子の比の変動を抑制することができる。
【0042】
ここで、本実施形態における信号処理回路2の増幅回路4の増幅度と、従来技術による信号処理回路の増幅回路の増幅度との温度特性の相違を図3のグラフに示す。
【0043】
従来技術の増幅回路は、ディスクリート部品による抵抗を使用しており、その抵抗値は±1000ppm/℃の温度特性を有しているものとする。また、本実施形態における抵抗6,7の抵抗値も±1000ppm/℃の温度特性を有しているものと仮定する。さらに、各抵抗6,7の抵抗値はともに100Ωとする。
【0044】
増幅回路4における増幅度Aは数式1に示したように、抵抗6の抵抗値をR1、抵抗7の抵抗値をR2とした場合、(R1+R2)/R1となる。ここで、従来技術においては、各抵抗がディスクリート部品によって構成されるので、抵抗6と抵抗7との温度特性は、個々の部品で異なる。従って、抵抗6が−1000ppm/℃の温度特性を持ち、抵抗7が+1000ppm/℃の温度特性を持つワーストケースを想定すると、常温(20℃)においては抵抗6、7ともその抵抗値が100Ωであり、増幅度Aが2であったものが、その温度が上昇するにつれて増幅度Aが増加し(図3の実線A参照)、120℃では、2.22となる。なお、本実施形態における電子制御装置1が、車両のエンジンルーム内に配設された場合、その雰囲気温度の影響により、抵抗温度は120℃程度まで上昇することもある。
【0045】
逆に、抵抗6が+1000ppm/℃の温度特性を持ち、抵抗7が−1000ppm/℃の温度特性を持つワーストケースを想定すると、その温度が上昇するにつれて増幅度Aが減少し(図3の実線B参照)、120℃では、1.82となる。このように、従来技術による増幅回路4では、温度変化によって、その増幅度Aが10%前後も変動する場合がありえる。
【0046】
これに対して、本実施形態による増幅回路4では、各抵抗6,7が±1000ppm/℃の温度特性を持っていたとしても、各抵抗6,7が同じ抵抗材料によって、同一の製造工程により同じ半導体基板上に形成されるので、温度変化に対して同様の抵抗値変化を示すようになる。このため、図3のグラフの実線Cに示すように、増幅回路の増幅度Aは、温度変化によらずほぼ一定値を示すことになる。
【0047】
つまり、上述した増幅回路4や信号変換回路8において、それらの増幅度や判定しきい値は、数式1に示す各抵抗6,7の比や、数式2及び数式3の分母、分子の比、つまり各抵抗10〜12の抵抗値の比で決まり、各抵抗6,7,10〜12の抵抗値における絶対精度はそれほど重要ではない。そのため、本実施形態では、初期公差や温度特性による抵抗値変化の傾向が同じになるように、各抵抗6,7,10〜12を形成したのである。
【0048】
また、本実施形態では、増幅回路4と信号変換回路8とを同じ半導体基板上に形成したので、両回路において例えば定電流回路等を共用することが可能となる。これにより、全体として回路を簡素化することができるようになり、半導体基板のチップサイズの小型化、消費電力の低減、及びコストの低減に寄与できる。さらに、増幅回路4と信号変換回路8とをそれぞれ別のICとした場合には、それらのICを実装するためにプリント基板も大きな面積のものが必要になるが、本実施形態によれば、プリント基板の面積も低減できる。
【0049】
ただし、抵抗6,7の抵抗値の比、及び抵抗10〜12の抵抗値の比が変動しないことが重要であるため、必ずしも全ての抵抗6,7,10〜12を同じ半導体基板に形成する必要はなく、増幅回路4と信号変換回路8とを別の半導体基板に形成しても良い。
【0050】
(変形例)
上述した実施形態では、増幅回路4及び信号変換回路8に、それぞれの回路における増幅度及び判定しきい値を設定するための抵抗6,7,10〜12を予め結線した状態で設けていた。
【0051】
しかしながら、抵抗値の異なる複数の抵抗を形成し、後に外部端子を介して任意の抵抗を結線することで、複数種類のセンサに対応する信号処理回路とすることが可能になる。
【0052】
すなわち、図4に示す例では、増幅回路4においては、抵抗6とともに増幅度を決定する抵抗として抵抗値の異なる抵抗7a,7bを備えている。抵抗7a、抵抗7bの一端はそれぞれ短絡パターン回路19における外部端子17a,17bに接続され、抵抗6の一端は、外部端子18a,18bに接続されている。短絡パターン回路19におけるこれらの外部端子(17aと18a、17bと18b)は、それぞれ対向して配置されており、例えばジャンパ線によって容易に接続可能に構成されている。すなわち、この増幅回路4では抵抗6と抵抗7aとを第1セット、抵抗6と抵抗7bとを第2セットとし、その複数セットから任意のセットを選択できるように構成されている。このため、この増幅回路4では、複数種類の増幅度から任意の増幅度を設定することが可能になる。
【0053】
なお、図4では、抵抗7a,7bを2つ設ける例を示しているが、抵抗6を2つの抵抗として、抵抗7a,7bを1つの抵抗としても良いし、2つの抵抗7a,7bに合わせて抵抗6を2つの抵抗としても良い。さらに、抵抗の数を増やして3以上のセットを構成し、それら3種類以上の増幅度から任意の増幅度を選択するように構成することも可能である。
【0054】
また、図4に示す例では、信号処理回路8においても、判定しきい値を設定するための抵抗として、抵抗10a,10bと抵抗11a、11bとが短絡パターン回路20、21によって選択可能に構成されている。従って、この場合、抵抗10a,10bの選択と抵抗11a、11bの選択との組み合わせにより、4種類の判定しきい値の設定が可能になる。もちろん、それ以上の数の抵抗及び短絡パターン回路を形成すれば、さらに選択可能な判定しきい値の数を増やすことができる。
【0055】
また、上述した実施形態においては、増幅回路4及び信号変換回路8において、増幅度及び判定しきい値を決定する素子として、抵抗を用いる例について説明したが、ダイオード等の他の素子を用いることも可能である。例えば、同一工程によって形成し、特性の揃ったダイオードを直列に接続し、その接続個数によって信号変換回路の判定しきい値を決定してもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態に係わる電子制御装置の概略構成を示すブロック構成図である。
【図2】本実施形態による信号処理回路の回路構成を示す回路図である。
【図3】本実施形態による増幅回路の、温度変化に伴う増幅度の変化を、従来技術による増幅回路の増幅度の変化と対比して示すグラフである。
【図4】変形例による信号処理回路の回路構成を示す回路図である。
【図5】従来技術による信号処理回路の回路構成を示す回路図である。
【図6】(a),(b),(c)は、それぞれセンサの検出信号、増幅回路による増幅後の信号、及び信号変換回路によって変換されたパルス信号を示すタイムチャートである。
【符号の説明】1 電子制御装置2 信号処理回路3 マイコン4 増幅回路5 OPアンプ6、7 抵抗8 信号変換回路9 コンパレータ10〜12 抵抗14 センサ19,20,21 短絡パターン回路
Claims (7)
- 車両に搭載されたセンサの検出信号を入力し、その検出信号の信号振幅を所定の増幅度で増幅する増幅回路と、
前記増幅回路によって増幅された検出信号を所定のしきい値と比較することにより、前記検出信号をパルス信号に変換して出力するパルス信号変換回路とを備えた車載用電子制御装置における信号処理回路であって、
前記増幅回路において増幅度を決定する複数の素子及び前記パルス信号変換回路において前記しきい値を決定する複数の素子を、それぞれ同じ半導体基板上に同様の素子材料を用いて形成したことを特徴とする車載用電子制御装置における信号処理回路。 - 前記増幅回路の増幅度を決定する複数の素子は、異なる増幅度を実現するために複数セット用意され、その複数セット用意された複数の素子の中から、任意セットの複数の素子の接続を有効にするための端子を備えることを特徴とする請求項1に記載の車載用電子制御装置における信号処理回路。
- 前記パルス信号変換回路のしきい値を決定する複数の素子は、異なるしきい値を実現するために複数セット用意され、その複数セット用意された複数の素子の中から、任意セットの複数の素子の接続を有効にするための端子を備えることを特徴とする請求項1に記載の車載用電子制御装置における信号処理回路。
- 前記増幅回路の増幅度を決定する複数の素子及び前記パルス信号変換回路のしきい値を決定する複数の素子は、同一の半導体基板上に形成された複数の抵抗体であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の車載用電子制御装置における信号処理回路。
- 前記複数の抵抗体は、同一の工程によって形成されることを特徴とする請求項4に記載の車載用電子制御装置における信号処理回路。
- 前記センサは、被測定体の回転数に応じて、少なくとも周波数が変化する検出信号を出力するものであることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の車載用電子制御装置における信号処理回路。
- 前記センサの検出信号は、さらに、被測定体の回転数に応じて振幅が変化することを特徴とする請求項6に記載の車載用電子制御装置における信号処理回路。
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JP2006140345A (ja) * | 2004-11-12 | 2006-06-01 | Mitsubishi Electric Corp | 電子制御装置 |
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