JP2004150306A - エンジンの制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】発電電動機の最大出力を小さくすることにより、発電電動機を小型化にしコストを低減する。
【解決手段】単位時間当たりのレバー操作量ΔS/τから、回転指令値に上乗せすべき回転数増分ΔN(負荷増分予測値)が演算される。油機負荷LRから目標回転数NDが得られたならば、この目標回転数NDに、回転数増分(負荷増分予測値)ΔNを加算した回転指令値ND+ΔN(N0+ΔN)が生成され、この回転指令値ND+ΔN(N0+ΔN)がガバナ3に出力される。
【選択図】 図12

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はエンジンの回転数制御装置に関し、特に駆動源としてエンジンと発電電動機とを併用するハイブリッドシステムに適用して好適なエンジン制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
油圧ショベル、ブルドーザ、ダンプトラック、ホイールローダなどの建設機械には、ディーゼルエンジンが搭載されている。
【0003】
図1を用いて従来の建設機械1の構成を概略説明すると、同図1に示すように、ディーゼルエンジン2を駆動源として油圧ポンプ6が駆動される。油圧ポンプ6は可変容量型の油圧ポンプが用いられ、その斜板6aの傾転角等を変化させることで容量D(cc/rev)が変化する。油圧ポンプ6から吐出圧P、流量Q(cc/min)で吐出された圧油は操作弁21〜25を介してブーム用油圧シリンダ31等の各油圧アクチュエータ31〜35に供給される。これら各油圧アクチュエータ31〜35に圧油が供給されることで、各油圧アクチュエータ31〜35が駆動され、各油圧アクチュエータ31〜35に接続されたブーム、アーム、バケットからなる作業機、下部走行体が作動する。
【0004】
上記操作弁21〜25のそれぞれに対応して操作レバーが設けられている。
【0005】
操作レバーが中立位置から操作されることによって操作弁21〜25が開口し各油圧アクチュエータ31〜35に圧油が供給される。
【0006】
建設機械1が稼動している間、作業機、下部走行体にかかる負荷は掘削土質、走行路勾配等に応じて絶えず変化する。これに応じて油圧機器(油圧ポンプ6)の負荷(以下油機負荷)、つまりエンジン2にかかる負荷が変化する。
【0007】
ディーゼルエンジン2の出力(馬力;kw)の制御は、シリンダ内へ噴射する燃料量を調整して行われる。この調整はエンジン1の燃料噴射ポンプに付設したガバナ3を制御することで行われる。ガバナ3としては、一般的にオールスピード制御方式のガバナが用いられ、燃料ダイヤルで設定されたエンジン目標回転数が維持されるように、負荷に応じてエンジン回転数Nと燃料噴射量(トルクT)とが調整される。すなわちガバナ3は、目標回転数とエンジン回転数との差がなくなるよう燃料噴射量を増減する。
【0008】
図14はエンジン1のトルク線図を示しており横軸にエンジン回転数N(rpm;rev/min)をとり縦軸にトルクT(N・m)をとっている。
【0009】
図14において最大トルク線R2で規定される領域がエンジン1が出し得る性能を示す。ガバナ3はトルクTが最大トルク線R2を超えて排気煙限界とならないように、またエンジン回転数Nがハイアイドル回転数NHを超えて過回転とならないようにエンジン2を制御する。最大トルク線R2上の定格点V2でエンジン2の出力(馬力)が最大になる。Jは油圧ポンプ6で吸収される馬力が等馬力になっている等馬力曲線を示している。
【0010】
燃料ダイヤルで最大目標回転数が設定されると、ガバナ3は定格点V2とハイアイドル点NHとを結ぶ最高速レギュレーションラインFe上で調速を行う。
【0011】
油機負荷が大きくなるにつれて、エンジン2の出力とポンプ吸収馬力とが釣り合うマッチング点は、最高速レギュレーションラインFe上を定格点V2側に移動する。マッチング点が定格点V2側に移動するときエンジン回転数Nは徐々に減じられ定格点V2ではエンジン回転数Nは定格回転数NRになる。
【0012】
なお燃料ダイヤルで設定される目標回転数が小さくなるに伴ってレギュレーションラインFe−1、Fe−2…が順次定められ、各レギュレーションライン上で調速が行われる。
【0013】
ところで近年乗用車などにおいて、駆動源としてエンジンと電気モータを併用するハイブリッドシステムが実用化されており、建設機械などの作業機械の分野においてもハイブリッドシステムを取り入れる試みがされている。
【0014】
たとえば特開2001−99103号公報には、油圧ポンプの駆動源にエンジンと電気モータを併用するハイブリッド油圧システムが開示されている。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
上述した既存の建設機械の構成にハイブリッドシステムが組み込まれると、油機負荷がエンジンの出力を超えた場合に発電電動機の出力によってエンジン出力がアシストされることになる。なお本明細書において、油圧モータとの混同を避けるために発電作用とモータ作用を行う電気モータのことを発電電動機と称する。また本発明は、シリーズハイブリッドシステムではなく、エンジンの出力軸に発電電動機が連結され出力軸から動力を取り出すパラレルハイブリッドシステムを対象とする。
【0016】
ここで発電電動機によってアシストする出力を小さくできれば、発電電動機を小型化することができ、発電電動機を取付けるスペースを小さくできコストを低減することができる。
【0017】
本発明はこうした実状に鑑みてなされたものであり、発電電動機の最大出力を小さくすることにより、発電電動機を小型化にしコストを低減することを解決課題とするものである。
【0018】
【課題を解決するための手段および作用効果】
本発明は、
エンジンの出力軸に連結され、発電作用と電動作用を行う発電電動機と、
前記出力軸が駆動されるに応じて作動する作業機と、
操作量に応じて、前記作業機の作動速度を変化させる作業機用操作子と、
前記作業機用操作子の単位時間当たりの操作量または操作量を計測し、この計測した単位時間当たりの操作量または操作量に基づいて前記出力軸にかかる負荷の増分を予測する負荷増分予測手段と、
前記負荷増分予測手段で予測した負荷増分に応じたエンジン出力が得られるようエンジンを制御するエンジン制御手段と
を具えたことを特徴とする。
【0019】
図11は建設機械1のエンジン出力、油機負荷(ポンプ吸収馬力)、バッテリ(キャパシタ)出力の状態を示すグラフであり横軸に時間をとり縦軸に出力(kW)をとっている。エンジン出力の特性をK1で示し油機負荷の特性をK2で示しバッテリ出力の特性をK3で示している。
【0020】
図11のB1に示すように、掘削作業が開始されると操作レバー41aが中立位置から操作され油機負荷K2が上昇するが、エンジン出力K1は油機負荷K2に遅れて立ち上がる。これは図3に示すように、油機負荷LRを演算し(ステップ101)、この油機負荷LRに対応するエンジン出力LDを求め(ステップ104)、このエンジン出力LDが得られるようガバナ3が動作し(ステップ106)、エンジン2の出力が実際に上昇するが、この間に時間遅れがあり、エンジン2の出力が実際に上昇したときには、既に実際の油機負荷は、演算した油機負荷以上に上昇しているからである。
【0021】
図11のB1に示される操作レバー投入時における油機負荷K2とエンジン出力K1との差は、下記(11)式に示されるように発電電動機4の出力によって補填される。
【0022】
発電電動機出力EM=油機負荷LR−実際のエンジン出力Lc …(11)
したがって操作レバー投入時における油機負荷K2とエンジン出力K1との差を小さくできれば、上記(11)式より、発電電動機4の出力EMを小さくでき、その分発電電動機4を小型化することができる。
【0023】
図12は操作レバー41aの操作特性Cを示しており横軸にレバー操作量Sをとり、縦軸に作業機(ブーム、アーム、バケット)の速度をとっている。
【0024】
操作レバー41aが中立位置から操作されると、油圧ポンプ6の斜板6aは最小傾転角から上昇し(容量Dが上昇し)、ポンプ吸収馬力が上昇する。オペレータは油機負荷の上昇分を予測し負荷上昇分に応じた速度で操作レバー41aを操作する。このため操作レバー41aを操作する速度から油機負荷LRの増分を予測することができる。
【0025】
具体的には、コントローラ7は、操作センサ41bから操作レバー41aの操作量Sを示す信号を取り込み、図12に示すように、中立位置から、しきい値Scまで到達する時間τを計測し、単位時間当たりのレバー操作量ΔS/τを演算する。
【0026】
つぎに単位時間当たりのレバー操作量ΔS/τから、回転指令値に上乗せすべき回転数増分ΔN(負荷増分予測値)が演算される。
【0027】
図3のステップ101で油機負荷LRが演算され、この油機負荷LRから目標回転数NDが得られたならば(ステップ104)、この目標回転数NDに、回転数増分(負荷増分予測値)ΔNを加算した回転指令値ND+ΔN(N0+ΔN)が生成され(ステップ105)、この回転指令値ND+ΔN(N0+ΔN)がガバナ3に出力される。
【0028】
この結果操作レバー投入に伴いエンジン出力が迅速に上昇することなり、操作レバー投入時における油機負荷K2とエンジン出力K1との差が小さくなる。このため発電電動機4で出し得る最大出力EMを小さくでき、その分発電電動機4を小型化することができる。
【0029】
また単位時間当たりのレバー操作量ΔS/τの代わりにレバー操作量ΔSから、回転指令値に上乗せすべき回転数増分ΔN(負荷増分予測値)を演算してもよい。
【0030】
【発明の実施の形態】
以下図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0031】
なお本実施形態では、油圧ショベル、ブルドーザ、ダンプトラック、ホイールローダなどの建設機械に搭載されるディーゼルエンジンを制御する場合を想定して説明する。
【0032】
図1は実施形態の建設機械1の全体構成を示している。建設機械1は油圧ショベルを想定している。図2は図1に示すコントローラ7に入出力される信号を示している。
【0033】
建設機械1は、上部旋回体W2と下部走行体を備え、下部走行体は左右の履帯からなる。車体にはブーム、アーム、バケットからなる作業機が取り付けられている。ブーム用油圧シリンダ31が駆動することによりブームW1が作動し、アーム用油圧シリンダ32が駆動することによりアームが作動し、バケット用油圧シリンダ33が駆動することによりバケットが作動する。また左走行用油圧モータ34、右走行用油圧モータ35がそれぞれ駆動することにより左履帯、右履帯が回転する。
【0034】
スイングマシナリ12が駆動すると、スイングピニオン、スイングサークル等を介して上部旋回体W2が旋回する。
【0035】
エンジン2はディーゼルエンジンであり、その出力(馬力;kw)の制御は、シリンダ内へ噴射する燃料量を調整することで行われる。この調整はエンジン2の燃料噴射ポンプに付設したガバナ3を制御することで行われる。
【0036】
コントローラ7は後述するようにガバナ3に対して、エンジン回転数を目標回転数NDにするための回転指令値N0を出力し、ガバナ3は、目標トルク線L1上で目標回転数NDと、この目標回転数NDに対応するエンジン出力LDが得られるように燃料噴射量を増減する。
【0037】
エンジン2の出力軸5には発電電動機4が連結されている。たとえば出力軸5にギア等を介して発電電動機4の駆動軸が連結される。発電電動機4は発電作用と電動作用を行う。つまり発電電動機4は電動機(モータ)として作動し、また発電機としても作動する。また発電電動機4はエンジン2を始動させるスタータとしても機能する。スタータスイッチがオンされると発電電動機4が電動作用し出力軸5を低回転(たとえば400〜500rpm)で回転させエンジン2を始動させる。
【0038】
発電電動機4は、インバータ8によってトルク制御される。インバータ8は後述するように、コントローラ7から出力されるトルク指令値TDに応じて発電電動機4をトルク制御する。
【0039】
スイングマシナリ12の駆動軸には旋回用発電電動機11が連結されている。
【0040】
旋回用発電電動機11は発電作用と電動作用を行う。つまり旋回用発電電動機11は電動機(モータ)として作動し、また発電機としても作動する。上部旋回体W2が停止したときに上部旋回体W2のトルクが吸収され発電が行われる。
【0041】
旋回用発電電動機11はインバータ9によってトルク制御される。インバータ9はコントローラ7から出力されるトルク指令値に応じて旋回用発電電動機11をトルク制御する。
【0042】
インバータ8、インバータ9はそれぞれ直流電源線を介してバッテリ10に電気的に接続されている。またインバータ8、インバータ9同士は直流電源線を介して直接電気的に接続されている。なおコントローラ7はバッテリ10を電源として動作する。
【0043】
バッテリ10は、キャパシタや蓄電池などによって構成され、発電電動機7、旋回用発電電動機11が発電作用した場合に発電した電力を蓄積する(充電する)。またバッテリ10は同バッテリ10に蓄積された電力をインバータ8、インバータ9に供給する。なお本明細書では静電気として電力を蓄積するキャパシタや鉛電池、ニッケル水素電池、リチウムイオン電池等の蓄電池(バッテリ)も含めて「蓄電器」と称するものとする。
【0044】
エンジン2の出力軸5には油圧ポンプ6が接続されており、出力軸5が回転することにより油圧ポンプ6が駆動する。油圧ポンプ6は可変容量型の油圧ポンプであり、斜板6aの傾転角が変化することで容量D(cc/rev)が変化する。
【0045】
油圧ポンプ6から吐出圧P、流量Q(cc/min)で吐出された圧油は、ブーム用操作弁21、アーム用操作弁22、バケット用操作弁23、左走行用操作弁24、右走行用操作弁25にそれぞれ供給される。
【0046】
ブーム用操作弁21、アーム用操作弁22、バケット用操作弁23、左走行用操作弁24、右走行用操作弁25から出力された圧油はそれぞれ、ブーム用油圧シリンダ31、アーム用油圧シリンダ32、バケット用油圧シリンダ33、左走行用油圧モータ34、右走行用油圧モータ35に供給される。これによりブーム用油圧シリンダ31、アーム用油圧シリンダ32、バケット用油圧シリンダ33、左走行用油圧モータ34、右走行用油圧モータ35にそれぞれ駆動され、ブームW1、アーム、バケット、左履帯、右履帯が作動する。
【0047】
図2は各油圧アクチュエータ31、32、33、34、35のうちブーム用油圧シリンダ31を代表させて示し、ブーム用操作弁21とブーム用操作レバー装置41との接続態様を示している。操作レバー装置41には操作レバー41aが設けられており、操作レバー41aが中立位置から操作されるに応じてその操作量Sに応じたパイロット圧が操作弁21のパイロットポートに加えられる。
【0048】
操作弁21は流量方向制御弁であり、操作レバー41aの操作方向に応じた方向にスプールを移動させるとともに、操作レバー41aの操作量に応じた開口面積Aだけ油路が開口するようにスプールを移動させる。
【0049】
サーボ弁13はLS弁14から出力される信号圧によって動作し、サーボピストンを介して油圧ポンプ6の斜板6aを変化させる。
【0050】
LS弁14の対向するパイロットポートにはそれぞれ、油圧ポンプ6の吐出圧Pと、油圧シリンダ31の負荷圧PLSとが加えられる。また負荷圧PLSが作用する側には、一定差圧ΔPLSを付与するバネ14aが設けられている。
【0051】
LS弁14は、油圧ポンプ6の吐出圧Pと、油圧シリンダ31の負荷圧PLSとの差圧ΔPが一定差圧ΔPLSとなるように動作し、弁位置に応じた信号圧をサーボ弁13に出力する。これによりサーボ弁13は油圧ポンプ6の斜板6aを変化させて油圧ポンプ6の吐出圧Pを変化させ、油圧ポンプ6の吐出圧Pと油圧シリンダ31の負荷圧PLSとの差圧ΔPを一定差圧ΔPLSに調整する。
【0052】
操作弁21のスプールの開口面積をA、抵抗係数をcとすると、油圧ポンプ6の吐出流量Qは、下記(2)式で表される。
【0053】
Q=C・A・√(ΔP) …(2)
差圧ΔPはLS弁14により一定になるのでポンプ流量Qは操作弁21のスプールの開口面積Aによってのみ変化する。
【0054】
作業機用操作レバー41aを中立位置から操作すると操作量に応じて操作弁21のスプールの開口面積Aが増加し、開口面積Aの増加に応じてポンプ流量Qが増加する。このときポンプ流量Qは油機負荷の大きさには影響を受けず作業機用操作レバー41aの操作量のみによって定まる。このようにLS弁14を設けたことにより、ポンプ流量Qは負荷によって増減することなくオペレータの意思通りに(操作レバーの操作位置に応じて)変化しファインコントロール性つまり中間操作領域における操作性が向上する。
【0055】
なお油圧アクチュエータが1つの場合について説明したが、複数の油圧アクチュエータ31〜35が設けられている場合には、LS弁14は、油圧ポンプ6の吐出圧Pと、油圧アクチュエータ31〜35の負荷圧(最大負荷圧)PLSとの差圧ΔPが一定差圧ΔPLSとなるように動作することになる。
【0056】
また複数の操作弁21〜25が同時操作された場合に負荷の軽い油圧アクチュエータに多くの圧油が供給されないように圧力補償弁が設けられ、各操作弁21〜25の前後差圧ΔPが同一に調整される。
【0057】
操作レバー装置41には、操作レバー41aの中立位置からの操作量S、中立位置に位置されたことを検出する操作センサ41bが付設されており、操作センサ41bで検出される操作量S、中立位置を示す操作信号はコントローラ7に入力される。
【0058】
操作レバー41aのノブには、「掘削力アップ制御」のスイッチ42が設けられている。スイッチ42がオンされた場合には、オン信号ONがコントローラ7に入力される。
【0059】
モニタパネル50には、オートデセルの各制御モード、停止制御モードを選択する選択スイッチ51、52、53が配置されているとともに、作業モードとして「パワーモード」、「エコノミーモード」を選択する選択スイッチ54、55が配置されている。選択スイッチ51、52はオートデセルの制御モードとして「燃費優先モード」、「応答性優先モード」をそれぞれ選択するスイッチであり、選択スイッチ53は「停止制御モード」を選択するスイッチである。選択スイッチ54、55は建設機械が行う作業モードとして「パワーモード」、「エコノミーモード」をそれぞれ選択するスイッチである。オートデセルの制御モードとして選択スイッチ51、52、53のいずれかが選択操作されると、選択された内容を示す信号がコントローラ7に入力される。また作業モードとして選択スイッチ54、55のいずれかが選択操作されると、選択された内容を示す信号がコントローラ7に入力される。
【0060】
燃料ダイヤル17ではエンジン2の指示回転数が設定される。燃料ダイヤル17を最大に操作すると指示回転数として定格回転数NRが設定される。燃料ダイヤル17の設定内容を示す信号はコントローラ7に入力される。
【0061】
エンジン2の出力軸5にはエンジン2の現在の実回転数Nc(rpm)を検出する回転センサ15が付設されている。回転センサ15で検出されるエンジン回転数Ncを示す信号はコントローラ7に入力される。
【0062】
油圧ポンプ6には、油圧ポンプ6の吐出圧Pを検出する吐出圧センサ61が付設されているとともに、油圧ポンプ6の容量Dを斜板傾転角度として検出する斜板角センサ62が付設されている。吐出圧センサ61で検出される吐出圧Pを示す信号、斜板角センサ62で検出される容量Dを示す信号はそれぞれコントローラ7に入力される。
【0063】
上部旋回体W2の負荷つまり旋回負荷Leは、バッテリ10とインバータ9とを接続する直流電源線の電圧を電圧センサ60で検出することで、計測することができる。電圧センサ60で検出される電圧を示す信号はコントローラ7に入力され入力された電圧から旋回負荷Leが演算される。なお上部旋回体W2にトルクセンサを付設することにより旋回負荷を直接検出してもよい。
【0064】
バッテリ10がキャパシタで構成されている場合には、バッテリ10の電圧を電圧センサ16で検出することで、バッテリ10の現在の蓄積電力つまりバッテリ残量Eを検出することができる。電圧センサ16で検出されるバッテリ10の残量Eを示す信号はコントローラ7に入力される。
【0065】
コントローラ7は、ガバナ3に対して、回転指令値N0を出力して、現在の油機負荷に応じた目標回転数が得られるように燃料噴射量を増減して、エンジン2の回転数NとトルクTを調整する。
【0066】
またコントローラ7は、インバータ8に発電電動機トルク指令値TDを出力し発電電動機4を発電作用または電動作用させる。コントローラ7からインバータ8に対して負(−)極性のトルク指令値TDが与えられると、インバータ8は発電電動機4が発電機として作動するように制御する。すなわちエンジン2で発生した出力トルクの一部は、エンジン出力軸5を介して発電電動機4の駆動軸に伝達されてエンジン2のトルクを吸収して発電が行われる。そして発電電動機4で発生した交流電力はインバータ8で直流電力に変換されて直流電源線を介してバッテリ10に電力が蓄積される(充電される)。あるいは発電電動機4で発生した交流電力はインバータ8で直流電力に変換されて直流電源線を介して直接他のインバータ9に供給される。
【0067】
またコントローラ7からインバータ8に対して正(+)極性のトルク指令値TDが与えられると、インバータ8は発電電動機4が電動機として作動するように制御する。すなわちバッテリ10から電力が出力され(放電され)バッテリ10に蓄積された直流電力がインバータ8で交流電力に変換されて発電電動機4に供給され、発電電動機4の駆動軸を回転作動させる。あるいは他のインバータ9から供給される直流電力がインバータ8で交流電力に変換されて発電電動機4に供給され、発電電動機4の駆動軸を回転作動させる。これにより発電電動機4でトルクが発生し、このトルクは、発電電動機4の駆動軸を介してエンジン出力軸5に伝達されて、エンジン2の出力トルクに加算される(エンジン2の出力がアシストされる)。この加算した出力トルクは、油圧ポンプ6で吸収される。
【0068】
発電電動機4の発電量(吸収トルク量)、電動量(アシスト量;発生トルク量)は、上記トルク指令値TDの内容に応じて変化する。
【0069】
上部旋回体W2は図示しない旋回用操作レバーの操作によって操作される。
【0070】
旋回用操作レバーの操作に応じてコントローラ7は上部旋回体W2を作動させる正極性のトルク指令値をインバータ9に出力する。コントローラ7からインバータ9に対して正(+)極性のトルク指令値が与えられると、インバータ9は旋回用発電電動機11が電動機として作動するように制御する。すなわちバッテリ10に蓄積された直流電力あるいは他のインバータ8から供給される直流電力はインバータ9で交流電力に変換されて旋回用発電電動機11に供給され、スイングマシナリ12の駆動軸を回転作動させ上部旋回体W2を旋回作動させる。
【0071】
上部旋回体W2が停止すると、スイングマシナリ12で発生したトルクは、旋回用発電電動機11の駆動軸に伝達、吸収され発電が行われる。そして旋回用発電電動機11で発生した交流電力はインバータ9で直流電力に変換されて直流電源線を介してバッテリ10に電力が蓄積される(充電される)。あるいは旋回用発電電動機11で発生した交流電力はインバータ9で直流電力に変換されて直流電源線を介して直接他のインバータ8に供給される。
【0072】
またコントローラ7は警報指令をブザー19に出力してブザー19を鳴動させ、表示指令をモニタパネル50に出力してモニタパネル50の表示画面50aに建設機械1の内部状態、制御状態、警報内容等を表示させる。
【0073】
以下コントローラ7で実行される制御内容について説明する。
【0074】
・第1の制御
図4はエンジン2のトルク線図を示しており横軸にエンジン回転数N(rpm;rev/min)をとり縦軸にトルクT(N・m)をとっている。
【0075】
図4において最大トルク線R1で規定される領域がエンジン2が出し得る性能を示す。ハイアイドル点NHでエンジン2は無負荷になりエンジン回転数Nはハイアイドル回転数NHとなる。ハイアイドル回転数NHはエンジン2が無負荷のときの最大回転数である。最大トルク線R1上の定格点V1でエンジン2の出力(馬力)が最大になり、エンジン回転数Nは定格回転数NRとなる。Jは油圧ポンプ6で吸収される馬力が等馬力になっている等馬力曲線を示している。
【0076】
図4においてMは等燃費曲線を示している。等燃費曲線Mの谷となるM1で燃費が最小となり、燃費最小点M1から外側に向かうにつれて燃費は大きくなる。なお、この場合の燃費とは、1時間、出力1kW当たりの燃料の消費量をいい、エンジン2の効率の一指標である。
【0077】
オートデセル時のデセル点N1でエンジン2は無負荷になりエンジン回転数Nはデセル回転数N1となる。ここでオートデセルとは、操作レバー41aを含む全ての操作レバーが中立位置に戻されたときにエンジン回転数Nを中速のデセル回転数N1に低下させ、いずれかの操作レバーが中立位置から操作されるとエンジン回転数Nをデセル回転数N1から負荷に応じた回転数まで上昇させる制御のことである。
【0078】
燃料ダイヤル17が最大に操作されると、エンジン最大回転数が定格回転数NRに設定され、この定格回転数NRに対応する定格点V1と、燃費最小点M1と、オートデセル時のデセル点N1とを結ぶ線分が目標トルク線L1として設定される。
【0079】
コントローラ7はガバナ3に対して、目標トルク線L1上に調速を行わせるための指示回転数指令値N0を出力する。これによりガバナ3は、油機負荷に応じて燃料噴射量を増減して、目標トルク線L1上の点でマッチンさせる。
【0080】
油機負荷が大きくなるにつれて、エンジン2の出力とポンプ吸収馬力とが釣り合うマッチング点は、目標トルク線L1上を定格点V1側に移動する。マッチング点が定格点V1側に移動するときエンジントルクT、エンジン回転数Nは徐々に増加し定格点V1ではエンジン出力は最大になりエンジン回転数Nは定格回転数NRになる。
【0081】
燃料ダイヤル17が操作され定格回転数NRよりも小さい回転数N0がエンジン最大回転数として設定されると、この回転数N0に対応する点V0と、燃費最小点M1と、オートデセル時のデセル点N1とを結ぶ線分が目標トルク線として設定される。
【0082】
コントローラ7がガバナ3に対して、回転数N0を上限の回転数として目標トルク線L1上の点にマッチングさせるために回転指令値N0を出力する。これによりガバナ3は、油機負荷に応じて燃料噴射量を増減して、回転数N0を上限の回転数として目標トルク線L1上でマッチング点を移動させる。
【0083】
油機負荷が大きくなるにつれてマッチング点は、目標トルク線L1上を定格点V1側に移動し点V0に到達する。
【0084】
コントローラ7とガバナ3は、目標トルク線L1上の点でマッチングするようにエンジン2をつぎのように制御する。
【0085】
コントローラ7には図19に示す内容が設定、記憶されている。図19は、図4に対応する図である。
【0086】
図19に示すように、コントローラ7には、目標トルク線L1上の各マッチング目標回転数N0t、N1t、…N1t…NR(定格点)が設定されている。各マッチング目標回転数N0t、N1t、…N1t…NR(定格点)には、各指示回転数N0d、N1d、…Nnd…Nedがそれぞれ対応づけられ設定されている。なおエンジン2には摩擦馬力が存在するため燃料噴射量が0になるポイントはトルク線図のエンジントルク0のラインよりも下方に存在する。
【0087】
またトルク線図上のエンジンの最大トルク線R1と目標トルク線L1との間には、燃料の最大噴射量を規定する上限ラインUが設定されている。
【0088】
上限ラインU上の各上限回転数N0m、N1m、…Nnm…Nemは各指示回転数N0d、N1d、…Nnd…Nedに対応づけられて設定されている。
【0089】
また各上限回転数N0m、N1m、…Nnm…Nemと、各マッチング目標回転数N0t、N1t、…N1t…NR(定格点)と、各指示回転数N0d、N1d、…Nnd…Nedとをそれぞれ結ぶ各レギュレーションラインF0、F1、…Fn…Fe(最高速レギュレーションライン)が設定されている。
【0090】
コントローラ7は、指示回転数、マッチング目標回転数、上限回転数が対応づけられたマップデータ(N0d、N0t、N0m)、(N1d、N1t、N1m)…(Nnd、Nnt、Nnm)…を記憶テーブルに記憶している。
【0091】
今、エンジン2にかかる負荷が小さくなり、エンジン2の実際の回転数Nnrがマッチング目標回転数Nntよりも高くなった場合を想定する。
【0092】
この場合、図20に示すように、ガバナ3は、指示回転数Nndと実際の回転数Nnrとの差に応じた噴射量α(Nnd−Nnr)の燃料をエンジン2に噴射する。
【0093】
またコントローラ7は、マッチング目標回転数Nntと実際の回転数Nnrとの差Nnt−Nnrに応じた分だけ指示回転数NndをN′ndに変化させる指令をガバナ3に与える。
【0094】
これによりレギュレーションラインはFnから、現在の回転数Nnrと同じ等馬力曲線J上にあって目標トルク線L1上を通るレギュレーションラインF′nに移行し、レギュレーションラインF′n上のマッチング点N′nt(マッチング目標回転数N′nt)でマッチングする。このようにしてマッチング点は目標トルク線L1上の点Nntから、より馬力の低い点N′ntへと移動する。
【0095】
エンジン2にかかる負荷が小さくなった場合について説明したが、エンジン2にかかる負荷が大きくなった場合も同様にして、負荷の変化に応じてマッチング点が目標トルク線L1に沿って移動する。
【0096】
以上のようにして、エンジン2の負荷が変化するに応じて、目標トルク線L1に沿ってマッチング点を順次移動させることができる。
【0097】
なお本実施形態では、上述したように「指示回転数Nndと実際の回転数Nnrとの差に応じた噴射量α(Nnd−Nnr)の燃料をエンジン2に噴射する」制御と、「マッチング目標回転数Nntと実際の回転数Nnrとの差Nnt−Nnrに応じた分だけ指示回転数NndをN′ndに変化させる」制御とを行うようにしているが、「マッチング目標回転数Nntと実際の回転数Nnrとの差Nnt−Nnrに応じた分だけ指示回転数NndをN′ndに変化させる」制御は、両者の制御の干渉を防ぎ精度よくマッチングさせるために、「指示回転数Nndと実際の回転数Nnrとの差に応じた噴射量α(Nnd−Nnr)の燃料をエンジン2に噴射する」制御に比較して十分遅く実行することが望ましい。
【0098】
つぎにエンジン2の負荷が急激に大きくなった場合の動作について説明する。
【0099】
図21に示すように、エンジン2の負荷が急激に大きくなりエンジン2を加速させるとき、指示回転数Nndと実際の回転数Nnrとの差Nnd−Nnrが大きくなる。ここで、仮に要求された加速性を満足させるために、ガバナ3から、指示回転数Nndと実際の回転数Nnrとの差に応じた大きな噴射量α(Nnd−Nnr)の燃料をエンジン2に噴射したとすると、燃料に対して相対的に空気量が不足してエンジン2の燃焼効率が悪化するとともに黒煙が排気されることになる。
【0100】
そこで、指示回転数Nndと実際の回転数Nnrとの差Nnd−Nnrに応じた噴射量α(Nnd−Nnr)が、上限ラインUにより規定される最大噴射量α(Nnd−Nnm)を超えた場合には、ガバナ3は制限した最大噴射量α(Nnd−Nnm)の燃料をエンジン2に噴射させることにし、コントローラ7は発電電動機4を電動作用させ、残りのトルク分(α(Nnd−Nnr)−α(Nnd−Nnm)=α(Nnm−Nnr))を発電電動機4によってアシストさせる。
【0101】
具体的にはコントローラ7は、図22に示すように、エンジン実回転数Nnrが上限回転数Nnmよりも低くなった場合に、噴射量α(Nnd−Nnr)が上限ラインUで規定される最大噴射量α(Nnd−Nnm)を超えたと判断し、上限回転数Nnmと実回転数Nnrとの差Nnm−Nnrに応じたトルク α(Nnm−Nnr)が発電電動機4で発生するようにインバータ8に対して正のトルク指令を与える。
【0102】
このように急負荷時にエンジン2の出力を発電電動機4によってアシストするようにしたので、加速性を維持しつつエンジン効率向上、黒煙減少を図ることができる。
【0103】
つぎに第1の制御の効果について説明する。
【0104】
図14は従来のエンジン制御方法を示している。
【0105】
すなわち燃料ダイヤル17で最大目標回転数が設定されると、ガバナ3は定格点V2とハイアイドル点NHとを結ぶ最高速レギュレーションラインFe上で調速を行う。油機負荷が大きくなるにつれて、マッチング点は、最高速レギュレーションラインFe上を定格点V2側に移動する。マッチング点が定格点V2側に移動するときエンジン回転数Nは徐々に減じられ定格点V2ではエンジン回転数Nは定格回転数NRになる。なお燃料ダイヤル17で設定される目標回転数が小さくなるに伴ってレギュレーションラインFe−1、Fe−2…が順次定められ、各レギュレーションライン上で調速が行われる。
【0106】
建設機械1のエンジン2に要求されるのは、油機負荷が高くなったときのエンジン2の応答性である。つまりレギュレーションラインFe上でマッチング点が無負荷のハイアイドル点NHから最大負荷の定格点V2まで移動するまでの時間が短時間であるほどエンジンの応答性がよい。
【0107】
この点、従来のエンジン制御方法では、上述したようにレギュレーションラインFe上を高負荷側にマッチング点が移動するときエンジン回転数Nが徐々に減じられる。エンジン回転数Nが低下することでエンジン2のフライホイールに溜まっていた出力が瞬間的に外にでていき、エンジン2の実際の出力以上に見かけ上の出力が大きくなる。このため従来のエンジン制御方法は応答性が良いといわれている。
【0108】
上述したように従来のエンジン制御方法によれば、油機負荷に対して応答性よくエンジン2を追従させることができるのであるが、燃費が大きく(悪く)、ポンプ効率が低いという問題がある。ポンプ効率とは、容積効率、トルク効率で規定される油圧ポンプ6の効率のことである。
【0109】
図14からも明らかなように、レギュレーションラインFeは、等燃費曲線M上で燃費が比較的大きい領域に相当する。このため従来のエンジン制御方法によれば燃費が大きく(悪く)エンジン効率上望ましくないという問題があった。
【0110】
一方、可変容量型の油圧ポンプ6の場合、一般的に、同じ吐出圧Pであればポンプ容量D(斜板傾転角度)が大きいほど容積効率、トルク効率が高くポンプ効率が高いということが知られている。
【0111】
また下記(1)式からも明らかなように、油圧ポンプ6から吐出される圧油の流量Qが同じであれば、エンジン2の回転数Nを低くすればするほどポンプ容量Dを大きくすることができる。このためエンジン2を低速化すればポンプ効率を高くすることができる。
【0112】
Q=N・D …(1)
したがって油圧ポンプ6のポンプ効率を高めるためには、エンジン2を回転数Nが低い低速領域で稼動させればよい。
【0113】
しかし図14からも明らかなように、レギュレーションラインFeは、エンジン2の高回転領域に相当する。このため従来のエンジン制御方法によればポンプ効率が低いという問題があった。
【0114】
これに対して本第1の制御によれば、図4に示すように、等燃費曲線M上で燃費が比較的小さい領域に目標トルク線L1が設定され、この目標トルク線L1に沿ってマッチング点が移動する。
【0115】
このため第1の制御によれば、エンジン2が燃費が小さい(良い)領域で稼動するのでエンジン効率を高めることができる。
【0116】
また図4に示す目標トルク線L1は、図14のレギュレーションラインFeと比較して、エンジン2の回転数Nが低くなり油圧ポンプ6の容量Dを大きくする領域に相当する。
【0117】
第1の制御によれば、エンジン2の回転数Nが低くなり油圧ポンプ6の容量Dを大きくする目標トルク線L1上をマッチング点が移動するので、油圧ポンプ6の効率を高めることができる。
【0118】
また本実施形態の場合にはLS弁14が設けられており、操作レバー41aの操作量Sが同じであれば流量Qが同じであり、上記(1)式(Q=N・D)より、エンジン2の回転数Nを低くすればするほどポンプ容量Dを大きくすることができ、ポンプ効率を高くすることができる。
【0119】
第1の制御によれば、エンジン2の回転数Nが低くなり油圧ポンプ6の容量Dを大きくする目標トルク線L1上をマッチング点が移動するので、エンジン2の低速化により、操作レバー41aの操作中、常にポンプ容量Dが高い状態を維持でき、ポンプ効率を高く維持することができる。このように第1の制御によれば、LS弁14と組み合わせることによりファインコントロール性を向上させつつポンプ効率を高く維持できる操作特性が実現される。
【0120】
ところで図4で矢印で示すように目標トルク線L1上でマッチング点が、無負荷の状態から高負荷側つまり定格点V1側に移動するとき、図14に示す従来のエンジン制御方法と異なりエンジン回転数Nは上昇する。
【0121】
ここで仮に目標トルク線L1上で無負荷の回転数を中速のデセル回転数N1ではなくて、極めて低い回転数に設定すると、つまりデセル点N1よりもローアイドル点NL側に移動すると、エンジン2のフライホイールを極低回転から高回転の定格回転数NRに加速させるのに長時間を要することになり、エンジン2の応答性が低下する。逆に、無負荷の回転数を中速のデセル回転数N1よりも高く設定すると、つまりデセル点N1よりもハイアイドル点NH側に移動すると、定格回転数NRに達するまでの時間を短くできエンジン2の応答性が向上する。しかし無負荷の回転数を高速側に設定すると従来(図14)と同様に燃費の大きい(悪い)領域でエンジン2が稼動することになる。
【0122】
このようなトレードオフを考慮して、目標トルク線L1上における無負荷の回転数は、中速のデセル回転数N1に設定されている。
【0123】
デセル回転数N1(たとえば1400rpm)は、いずれかの操作レバーが中立位置から操作され油機負荷が投入された際に無負荷状態から定格回転数NRに達するに短時間(たとえば1秒程度)で済むことが補償されている無負荷回転数である。
【0124】
したがってデセル回転数N1を無負荷時のエンジン回転数に設定することで、このデセル点N1から高負荷の定格点V1にマッチング点が移動するに短時間で済む。このため、上述したように燃費良好な領域でマッチング点を移動させることにより燃費向上を図りエンジン効率を高めるとともにエンジン2を低速化することによりポンプ効率を高めつつも、エンジン2の応答性の低下を防止することができる。
【0125】
・第2の制御
上記第1の制御では、定格点V1と、燃費最小点M1と、デセル点N1とを結ぶ線分を目標トルク線L1として設定し、この目標トルク線L1上でマッチングさせているが、厳密に燃費最小点M1を通過する線分でなくてもよく燃費最小点M1近傍を通過する線分を目標トルク線に設定し、この目標トルク線上でマッチングさせてもよい。また厳密にデセル点N1を通過する線分でなくてもよくデセル点N1近傍を通過する線分を目標トルク線に設定し、この目標トルク線上でマッチングさせてもよい。
【0126】
具体的には図5に示すように目標トルク線L1の近傍、エンジン回転数で概ね±300rpmの領域A1内に目標トルク線を設定すればよい。たとえば定格点V1と、燃費最小点M1と、燃費最小点M1と同一回転数の無負荷点とを結ぶ線分を目標トルク線L′1として設定することができる。領域A1内で目標トルク線を設定すれば、第1の制御と同様の効果が得られる。
【0127】
・第3の制御
上記第1の制御では、定格点V1と、燃費最小点M1と、デセル点N1とを結ぶ線分を目標トルク線L1として設定し、この目標トルク線L1上でマッチングさせているが、定格点V1と、燃費最小点M1とを結ぶ線分を少なくとも含む目標トルク線であればよく、必ずしも図5に示すようなデセル点N1若しくはデセル点N1近傍を通過する目標トルク線でなくてもよい。
【0128】
たとえば図6に示すように定格点V1と、燃費最小点M1とを結ぶ線分を延長した線分を目標トルク線L2として設定し、この目標トルク線L2上でマッチングさせてもよい。
【0129】
また図6に示すように目標トルク線L2の近傍、エンジン回転数で概ね±300rpmの領域A2内に目標トルク線を設定してもよい。
【0130】
第3の制御によれば、第1の制御と比較してエンジン2の応答性は多少低下するものの、第1の制御と同様に、エンジン2が燃費が小さい(良い)領域で稼動するのでエンジン効率を高めることができる。また第1の制御以上にエンジン2が低速化するため、よりポンプ効率が高い領域でエンジン2を稼動させることができ、油圧ポンプ6の効率を更に高めることができる。
【0131】
・第4の制御
上記第1の制御では、定格点V1と、燃費最小点M1と、デセル点N1とを結ぶ線分を目標トルク線L1として設定し、この目標トルク線L1上でマッチング点を移動させているが、図7に示すように定格点V1と、デセル点N1とを結ぶ線分を目標トルク線L3として設定し、この目標トルク線L3上でマッチングさせてもよい。
【0132】
また図7に示すように目標トルク線L3の近傍、エンジン回転数で概ね±300rpmの領域A3内に目標トルク線を設定してもよい。
【0133】
第4の制御によれば、第1の制御と比較してエンジン2がより高速化しているためポンプ効率の点で多少低下するもののエンジン2の応答性を更に向上させることができる。
【0134】
・第5の制御
上記第1の制御では、定格点V1と、燃費最小点M1と、デセル点N1とを結ぶ線分を目標トルク線L1として設定し、この目標トルク線L1上でマッチングさせているが、図8に示すように定格点V1と同一トルクが維持されるエンジン回転数軸に平行な線分を目標トルク線L4として設定し、この目標トルク線L4上でマッチングさせてもよい。
【0135】
第5の制御によれば、第1の制御と比較してエンジン2の応答性は低下するものの、第1の制御と同様に、エンジン2が燃費が小さい(良い)領域で稼動するのでエンジン効率を高めることができる。また第1の制御や第3の制御以上にエンジン2が低速化するため、よりポンプ効率が高い領域でエンジン2を稼動させることができ、油圧ポンプ6の効率を更に高めることができる。
【0136】
・第6の制御
上記第1の制御では、定格点V1と、燃費最小点M1と、デセル点N1とを結ぶ線分を目標トルク線L1として設定し、この目標トルク線L1上でマッチングさせているが、図17に示すように、トルク線図の各等馬力曲線J1、J2、J3…上で燃料消費率が最小となる燃費最小点V1、V12、V13…または当該燃費最小点V1、V12、V13…近傍を通る目標トルク線L11を設定し、この目標トルク線L11上の点でマッチングするように、エンジン2を上述した第1の制御と同様に制御してもよい。
【0137】
第6の制御によれば、エンジン2の負荷が変化するに応じて、目標トルク線L11上をマッチング点が移動した場合に、常に燃費が最小あるいはほぼ最小な状態でエンジン2を稼動させることができるので、エンジン効率を高めることができる。
【0138】
・第7の制御
また図18に示すように、トルク線図の各等馬力曲線J1、J2、J3…上で燃料消費率が最小となる燃費最小点V1、V12、V13…または当該燃費最小点V1、V12、V13…近傍を通る第1の目標トルク線L11に対して、エンジン2の回転数Nが低くなり油圧ポンプ6の容量Dが大きくなる第2の目標トルク線L12を設定し、この目標トルク線L12上の点でマッチングするように、エンジン2を上述した第1の制御と同様に制御してもよい。
【0139】
第2の目標トルク線L12上の点でマッチングした場合には、第1の目標トルク線L11上の点でマッチングさせた場合と比較して、燃費は大きくなるものの、より低回転となり油圧ポンプ6の容量Dを大きくできるので油圧ポンプ6の効率は向上するとともに、同じエンジン回転数であれば、より大きなエンジン馬力が得られる。この結果、エンジン2と油圧ポンプ6の総合的な効率が向上し、より大きなエンジンパワーで効率よく作業を行うことができる。
【0140】
・第8の制御
また図18に示すように、トルク線図の各等馬力曲線J1、J2、J3…上で燃料消費率が最小となる燃費最小点V1、V12、V13…または当該燃費最小点V1、V12、V13…近傍を通る第1の目標トルク線L11を設定するとともに、この第1の目標トルク線L11に対して、エンジン2の回転数Nが低くなり油圧ポンプ6の容量Dが大きくなる第2の目標トルク線L12を設定し、両者を建設機械1が行う作業内容に応じて選択する実施も可能である。
【0141】
図2のモニタパネル50上には「パワーモード」、「エコノミーモード」の選択スイッチ54、55が設けられている。選択スイッチ54、55により、第1の目標トルク線L11および第2の目標トルク線L12のいずれかが選択されると、コントローラ7は、選択された目標トルク線上の点でマッチングするように、ガバナ3に指令を与えエンジン2を制御する。
【0142】
第2の目標トルク線L12が選択されると、第2の目標トルク線L12上の点でマッチングする。第2の目標トルク線L12上の点でマッチングする場合には、第1の目標トルク線L11上の点でマッチングさせた場合と比較して、燃費は大きくなるものの、より低回転となり油圧ポンプ6の容量Dを大きくできるので油圧ポンプ6の効率は向上するとともに、同じエンジン回転数であれば、より大きなエンジン馬力が得られる。この結果、エンジン2と油圧ポンプ6の総合的な効率が向上し、より大きなエンジンパワーで効率よく作業を行うことができる(パワーモード)。
【0143】
また第1の目標トルク線L11が選択されると、第1の目標トルク線L11上の点でマッチングする。第1の目標トルク線L11上の点でマッチングした場合には、第2の目標トルク線L12上の点でマッチングさせた場合と比較して、エンジンパワーが低下し作業効率は低下するものの、常に燃費が最小あるいはほぼ最小な状態でエンジン2を稼動させることができエンジン効率を高めることができる(エコノミーモード)。
【0144】
このため作業状況が変化したとしても、選択により常に最適なモードでエンジン2を稼動させることができ、作業状況の変化に対処することができる。
【0145】
なお上述した第1の制御〜第8の制御は、図1、図2に示される駆動源としてエンジン2と発電電動機4とを併用するハイブリッドシステムにおいて実施されることを前提として説明したが、エンジン2のみを油機負荷の駆動源とするシステムにおいて上記第1の制御〜第8の制御を実施してもよい。
【0146】
・第9の制御
上述した第1の制御によれば、中速のデセル回転数N1を無負荷時のエンジン回転数に設定しているので目標トルク線L1上を高負荷側にマッチング点が移動するときのエンジン2の応答性を高くできるのであるが、発電電動機4によってエンジン出力をアシストすることでエンジン2の応答性を更に向上させてもよい。
【0147】
すなわち図4に矢印で示すように、目標トルク線L1上で、出力軸5にかかる油機負荷が大きくなる方向にマッチング点が移動することがコントローラ7で判断されると、コントローラ7からインバータ8に対して正(+)極性のトルク指令値TDが与えられ、発電電動機4が電動機として作動する。
【0148】
たとえばエンジン目標回転数(指示回転数)NRと回転センサ15で検出されるエンジン実回転数Ncとの偏差を求め、この偏差から目標トルク線L1上で油機負荷が大きくなる方向にマッチング点が移動するものと判断することができる。
【0149】
また油機負荷LRを計測し油機負荷LRが上昇している場合に、目標トルク線L1上で油機負荷が大きくなる方向にマッチング点が移動するものと判断してもよく、操作センサ41bで検出される操作レバー操作量Sが大きくなっている場合に、目標トルク線L1上で油機負荷が大きくなる方向にマッチング点が移動するものと判断してもよい。
【0150】
第9の制御では、無負荷のデセル点N1から高負荷の定格点V1にマッチング点が移動する際に発電電動機4の出力がエンジン2の出力に加算される。発電電動機4の出力によってエンジン出力がアシストされた分だけ、エンジン2のフライホイールを加速させる時間が短くなり、定格点V1まで短時間で移動させることができる。このため本第9の制御によれば、第1の制御と比較してエンジン2の応答性を更に高めることができる。
【0151】
また、この第9の制御は、上述した第2の制御、第3の制御、第4の制御、第5の制御、第6の制御、第7の制御、第8の制御のいずれかと組み合わせて実施することができる。すなわち図5、図6、図7に示される領域A1、A2、A3内で設定される目標トルク線上を高負荷側にマッチング点が移動する際に発電電動機4の出力によってエンジン出力をアシストしてもよく、図8に示される目標トルク線L4上を高負荷側にマッチング点が移動する際に発電電動機4の出力によってエンジン出力をアシストしてもよい。また図17に示される目標トルク線L11上を高負荷側にマッチング点が移動する際に発電電動機4の出力によってエンジン出力をアシストしてもよい。また図18に示される目標トルク線L12上を高負荷側にマッチング点が移動する際に発電電動機4の出力によってエンジン出力をアシストしてもよい。
【0152】
ここで図1、図2の装置構成におけるエネルギーの関係式について説明する。
【0153】
発電電動機4の出力EM、油機負荷LR、エンジン出力LD(またはLc)の間には、下記のエネルギー保存の関係式が成立する。
【0154】
発電電動機出力EM=油機負荷LR−エンジン出力LD(Lc) …(11)
ただし上記(11)式で発電電動機4が電動作用しているときのEMの極性を正とする。上記(11)式はつぎのように書き換えることができる。
【0155】
エンジン出力LD(Lc)+発電電動機出力EM=油機負荷LR …(11a)
またバッテリ10の出力CD、発電電動機4の出力EM、旋回用発電電動機11の出力Leの間には、下記のエネルギー保存の関係式が成立する。
【0156】
バッテリ出力CD=発電電動機出力EM+旋回用発電電動機出力Le …(12)
ただし上記(12)式でバッテリ10が放電しているとき、つまりバッテリ10から電力を出力しているときのCDの極性を正、発電電動機4が電動作用しているときのEMの極性を正、旋回用発電電動機11が電動作用しているときのLeの極性を正とする。
【0157】
上記(11)式(または(11a)式)と(12)式を用いて、発電電動機出力EMを消去すると、エンジン2の出力LD、バッテリ10の出力CD、油機負荷LR、旋回用発電電動機11の出力Leの間には、下記のエネルギー保存の関係式が成立する。
【0158】
エンジン出力LD(Lc)+バッテリ出力CD=油機負荷LR+旋回用発電電動機出力Le …(13)
なお旋回用発電電動機11の出力Leは上部旋回体W2の負荷つまり旋回負荷Leを表す。
【0159】
上記(11)〜(13)式は上部旋回体W2が電気モータによって駆動されることを前提としているが、図1、図2の構成においてインバータ9、旋回用発電電動機11を取り除き上部旋回体W2を他のブームW1等と同様に油圧アクチュエータによって作動させるようにした場合にも同様なエネルギー保存式の成立する。この場合には上記(11)、(12)、(13)式それぞれに対応して下記(21)、(22)、(23)式が成立する。
【0160】
発電電動機出力EM=油機負荷LR−エンジン出力LD(Lc) …(21)
バッテリ出力CD=発電電動機出力EM …(22)
エンジン出力LD(Lc)+バッテリ出力CD=油機負荷LR …(23)
以下に説明する制御は、(11)、(12)、(13)式が成立する場合を前提としているが、上部旋回体W2を油圧アクチュエータによって作動させることとし(21)、(22)、(23)式が成立している場合にも同様に以下の制御を適用することができる。
【0161】
以下図3を併せ参照して説明する。
【0162】
・第10の制御
つぎに図1、図2のハイブリッドシステムにおいてエネルギーロスを低減することができる実施例について説明する。
【0163】
すなわちコントローラ7では、電圧センサ60で検出される電圧から旋回負荷つまり旋回用発電電動機11の出力Leが演算される。また吐出圧センサ61で検出される吐出圧P、斜板角センサ62で検出される容量Dとに基づき油圧ポンプ6の吸収トルクが演算され、このポンプ吸収トルクと、回転センサ15で検出される油圧ポンプ6の回転数Nc(エンジン2の回転数Nc)とに基づいて油圧ポンプ6の吸収馬力である油機負荷LRが演算される(ステップ101)。
【0164】
ここで図1、図2の構成でバッテリ10の充放電ロス、発電電動機4の発電ロス、モータロスを最小にしエネルギーロスを最小にするには、上記(13)式(エンジン出力LD(Lc)+バッテリ出力CD=油機負荷LR+旋回用発電電動機出力Le)において、バッテリ出力CDを最小にすればよく、上記(13)式でバッテリ出力CDを零にした下記(14)式が成立すればよい。
【0165】
エンジン出力LD=油機負荷LR+旋回用発電電動機出力Le …(14)
そこで上記ステップ101で演算された油機負荷LRと、旋回用発電電動機出力Leを加算したものをアクチュエータ側要求出力とみなし、これら油機負荷LR、旋回用発電電動機出力Leからなるアクチュエータ側要求出力を記(14)式に代入して、エンジン出力LDを求め、このエンジン出力LDが得られるようにコントローラ7はエンジン2を制御する。
【0166】
なお上部旋回体W2を油圧アクチュエータによって作動させることにした場合には、上記(23)式でバッテリ出力CDを零にした下記(24)式、
エンジン出力LD=油機負荷LR …(24)
が成立すればよく、上記ステップ101で演算された油機負荷LRを上記(24)式に代入して、エンジン出力LDを求め、このエンジン出力LDが得られるようにエンジン2を制御すればよい。
【0167】
具体的なエンジン制御内容は図3のステップ103、104、106を用いて説明される。
【0168】
エンジン2は図4に示す目標トルク線L1に沿って稼動されるものとする。
【0169】
すなわち目標トルク線L1はメモリに記憶されており、この目標トルク線L1が読み出され(ステップ103)、目標トルク線L1がエンジン出力線Gに変換される。つまりエンジン回転数NとトルクTの対応関係L1は、エンジン出力LDとエンジン目標回転数NDの対応関係Gに変換される。そこで上記(14)式から演算されたエンジン出力LDに対応するエンジン目標回転数NDが、エンジン出力線Gから求められる(ステップ104)。コントローラ7は、エンジン回転数Nをエンジン目標回転数NDにする回転指令値N0をガバナ3に出力する。この結果、燃料噴射量が増減され目標トルク線L1上でマッチングしエンジン回転数Nがエンジン目標回転数NDに一致しエンジン2でエンジン出力LDが発生する(ステップ106)。
【0170】
上記(12)式(バッテリ出力CD=発電電動機出力EM+旋回用発電電動機出力Le)において、バッテリ出力CDが零であるので、発電電動機4が発電作用している場合には発電電動機4で発生した電力はバッテリ10に蓄積されることなく旋回用発電電動機11の回転作動に直接使用される。すなわち発電電動機4で発電が行われると、発電電動機4で発生した交流電力はインバータ8で直流電力に変換されて直流電源線を介して直接他のインバータ9に供給され旋回用発電電動機11が電動作用する。
【0171】
同様に旋回用発電電動機11が発電作用している場合には旋回用発電電動機11で発生した電力はバッテリ10に蓄積されることなく発電電動機4の回転作動に直接使用される。すなわち旋回用発電電動機11で発電が行われると、旋回用発電電動機11で発生した交流電力はインバータ9で直流電力に変換されて直流電源線を介して直接他のインバータ8に供給され発電電動機4が電動作用する。
【0172】
このように第10の制御によれば、バッテリ出力CDが零になるようにエンジン2を制御しているので、バッテリ10の充放電ロス、発電電動機4の発電ロス、モータロスを最小にしエネルギーロスを最小にでき、エンジン2の燃費を低くすることができる。
【0173】
・第11の制御
つぎにエンジン2の小型化を図ることができる実施例について説明する。
【0174】
図4は本実施例におけるエンジン2の最大トルク線R1、従来のエンジンの最大トルク線R2(図14参照)、本実施例の発電電動機4の最大トルク線を本実施例のエンジン2の最大トルク線R1に加算した最大トルク線R3、R′3を示している。最大トルク線R3は発電電動機4の1時間定格出力時の最大トルク線であり定格点V3で最大出力が得られる。最大トルク線R′3は発電電動機4の1分間定格出力時の最大トルク線であり定格点V′3で最大出力が得られる。
【0175】
同図4に示すように本実施例のエンジン2は従来のエンジンよりも小型化にされており、従来の定格点V2よりもエンジン出力が低い定格点V1で稼動する。この定格点V1におけるエンジン2の出力つまり出力上限をLMとする(図3のステップ104参照)。
【0176】
ステップ101で油機負荷LR、旋回用発電電動機出力Leが演算されると、上記(14)式よりこれら油機負荷LR、旋回用発電電動機出力Leを加算したものをアクチュエータ側要求出力とみなし、このアクチュエータ側要求出力LR+Leがエンジン出力LDの上限LMを超えているか否かが判断される。
【0177】
この結果、アクチュエータ側要求出力LR+Leがエンジン出力LDの上限LMを超えた場合には、超えた負荷相当分の出力(LR+Le−LM)が発電電動機4の出力EMとして得られるように、コントローラ7からインバータ8に正(+)極性のトルク指令値TDが与えられる。この結果、発電電動機4が電動機として作動し、発電電動機4では、エンジン出力上限LMを超えた負荷相当分の出力(LR+Le−LM)が発電電動機出力EMとして発生する。
【0178】
発電電動機4が1時間定格出力で連続稼動している場合には、負荷最大時に定格点V3でマッチングしエンジン2の出力をアシストしている。図4に示すように定格点V3では、従来のエンジンの定格点V2と比較してエンジン出力で同等かそれ以上の馬力を発生している。発電電動機4が1分間定格出力で短時間稼動している場合には、負荷最大時に定格点V′3でマッチングし1時間定格時の定格点V3よりも大きい馬力を発生するとともに、従来のエンジンよりも遙かに大きい馬力を発生する。
【0179】
なお上部旋回体W2を油圧アクチュエータによって作動させることにした場合には、上記(24)式より油機負荷LRをアクチュエータ側要求出力とみなし、このアクチュエータ側要求出力LRがエンジン出力LDの上限LMを超えているか否かが判断される。そしてアクチュエータ側要求出力LRがエンジン出力LDの上限LMを超えた場合には、超えた負荷相当分の出力(LR−LM)が発電電動機4の出力EMとして得られるように、コントローラ7からインバータ8に正(+)極性のトルク指令値TDが与えられることになる。
【0180】
このように第11の制御によれば、エンジン2の小型化により原価改善、後方視界改善、騒音低減を図りつつ、作業中に大きな負荷が発生した場合に適切に対処することができる。
【0181】
・第12の制御
つぎにエンジン2の燃費を低減できる実施例について説明する。
【0182】
エンジン2の燃費を低減するには前述した第1の制御〜第8の制御で説明したように等燃費曲線M上で燃料消費率が小さい領域に目標トルク線を設定しこの目標トルク線上でマッチング点が移動するようにエンジン2を制御すればよい。
【0183】
以下目標トルク線として図4、図5に示す目標トルク線L1を想定する(図3のステップ103参照)。
【0184】
図10に示すように、コントローラ7からガバナ3に回転数N0を指示する回転指令値N0が出力されると、エンジン2の回転数Nが回転数N0にされ目標トルク線L1上の点V0でマッチングし、エンジン2はエンジン出力Lcを発生する。
【0185】
油機負荷LRが小さく油機負荷LRが実際のエンジン出力Lc以下である場合には、上記(11)式または(21)式(発電電動機出力EM=油機負荷LR−エンジン出力Lc)より、コントローラ7は、それらの差分Lc−LRに相当する出力が発電電動機4に吸収されるよう発電電動機4を制御する。
【0186】
これに対して図9に示すように、エンジン2が目標トルク線L1上のV0で稼動しているときに、作業中に大きな油機負荷LRが発生し油機負荷LRが実際のエンジン出力Lcを超えると、上記(11)式または(21)式(発電電動機出力EM=油機負荷LR−エンジン出力Lc)より、コントローラ7は、それらの差分LR−Lcに相当する出力EMを発電電動機4で発生させエンジン出力Lcをアシストするように発電電動機4を制御する。
【0187】
具体的な制御内容は図3のステップ107、108、109、110を用いて説明される。
【0188】
コントローラ7には、回転センサ15の検出値Ncが取り込まれこのエンジン実回転数Ncに対応する実際のエンジン出力Lcがエンジン出力線Gから求められる(ステップ107)。
【0189】
つぎにステップ107で演算された実際のエンジン出力Lc、ステップ101で演算された油機負荷LRが、上記(11)式または(21)式(発電電動機出力EM=油機負荷LR−エンジン出力Lc)に代入されて、発電電動機出力EMが演算される(ステップ108)。
【0190】
発電電動機4の実際の回転数Nc(エンジン実回転数Nc)と発電電動機4のトルクTD(発生トルク(正)、吸収トルク(負))の対応関係は、発電電動機出力EMの大きさ、極性(正、負)毎に各発電電動機一定曲線Uとしてメモリに記憶されている。
【0191】
そこで上記演算された発電電動機出力EMの極性(正、負)と、EMの大きさに応じた出力一定曲線が、各発電電動機出力一定曲線Uの中から選択される。そして回転センサ15の検出値Ncが取り込まれこの発電電動機実回転数Ncに対応するトルクTDが、上記選択された出力一定曲線上から求められる。たとえば図3の109内で破線として示すように、油機負荷LRが実際のエンジン出力Lcよりも大きく、EMの極性が正である場合にはこれらの差分LR−Lcに相当する大きさのEMに相当する出力一定曲線U1が選択され、この選択された出力一定曲線U1上で発電電動機実回転数Ncに対応する正のトルク値TD(発生トルク)が求められる(ステップ109)。
【0192】
つぎにステップ109で求められたトルク指令値TDが、コントローラ7からインバータ8に出力される。すなわち油機負荷LRが実際のエンジン出力Lc以下である場合には、発電電動機4にそれらの差分Lc−LRに相当する出力を吸収させるための負のトルク指令値TDがインバータ8に与えられる。この結果、発電電動機4は発電作用し、トルクTDを吸収し、差分Lc−LRに相当する出力EMを吸収する。
【0193】
これに対し油機負荷LRが実際のエンジン出力Lcを超えている場合には、発電電動機4でそれらの差分LR−Lcに相当する出力を発生させるための正のトルク指令値TDがインバータ8に与えられる。この結果、発電電動機4は電動作用し、トルクTDを発生し、差分LR−Lcに相当する出力EMを発生する。発電電動機4で発生した出力EMが現在のエンジン出力Lcが加算されてエンジン出力がアシストされる。発電電動機4によってエンジン2の出力がアシストされると図9に示すように、エンジン2と発電電動機4で発生した馬力と負荷はマッチング点V4でマッチングし、従来のエンジンと同等かそれ以上の馬力が発生して急増する負荷に対処することができる。
【0194】
このように第12の制御によれば、エンジン2の燃費低減によりエンジン効率の向上を図りつつ、作業中に大きな油機負荷LRが発生した場合に適切に対処することができる。
【0195】
なお、目標トルク線L1上でエンジン2が稼動する場合に(第1の制御)、発電電動機4の出力によってエンジン出力をアシストするものとして説明したが、本第12の制御は、上述した第2の制御、第3の制御、第4の制御、第5の制御、第6の制御、第7の制御、第8の制御のいずれかと組み合わせて実施することができる。すなわち図5、図6、図7に示される領域A1、A2、A3内で設定される目標トルク線上でエンジン2が稼動する場合に発電電動機4の出力によってエンジン出力をアシストしてもよく、図8に示される目標トルク線L4上でエンジン2が稼動する場合に発電電動機4の出力によってエンジン出力をアシストしてもよい。また図17に示される目標トルク線L11上を高負荷側にマッチング点が移動する際に発電電動機4の出力によってエンジン出力をアシストしてもよい。また図18に示される目標トルク線L12上を高負荷側にマッチング点が移動する際に発電電動機4の出力によってエンジン出力をアシストしてもよい。
【0196】
・第13の制御
つぎに負荷急上昇時(急加速時)の燃費を低減できる実施例について説明する。
【0197】
すなわち上述した第10の制御と同様にして、図3に示すように、油機負荷LR、旋回負荷Leが演算され(ステップ101)、これらアクチュエータ側要求出力LR+Leに対応するエンジン出力LDが求められ、このエンジン出力LDに対応するエンジン2の目標回転数NDがエンジン出力線Gから求められる(ステップ104)。
【0198】
このため本来であれば油機負荷LRが急上昇している場合には、図3の105内でH1で示すように、ガバナ3に対してエンジン回転数Nを目標回転数NDに急加速させる回転指令値NDが出力されるのであるが、ターボラグを考慮して、エンジン2のシリンダ内への燃料供給を遅らせる急加速回避制御が実行される。すなわち急加速回避フィルタによって、破線H2に示すように、エンジン目標回転数NDまでエンジン2の回転数Nを徐々に上昇させる回転指令値N0が生成される。たとえばエンジン目標回転数NDに到達するまでの時間をたとえば0.5秒程度遅らせる回転指令値N0が生成される(ステップ105)。そしてガバナ3に回転指令値N0が出力される。この結果、エンジン2のシリンダ内への燃料供給が遅らされ、エンジン2の回転数Nが徐々に上昇して目標回転数LDに到達しエンジン出力LDが発生する(ステップ106)。
【0199】
このようにターボラグを考慮して、エンジン2のシリンダ内への燃料供給を遅らせる急加速回避制御が実行されるので、負荷急上昇時(急加速時)におけるエンジン2の燃費向上が図られる。
【0200】
なお急加速回避フィルタは、加速時にのみ使用され減速時には使用されない。また加速時であっても急加速時のみに使用される。たとえばエンジン最大トルクの10%程度をしきい値とし、目標回転数NDと現在のエンジン回転数Nとの差分に相当するトルク増分が、このしきい値を超えている場合に急加速であると判断される。
【0201】
急加速回避フィルタを使用しエンジン目標回転数NDまでエンジン2の回転数Nを徐々に上昇させる急加速回避制御を実行すると、急加速回避制御実行中、急激に増加する油機負荷LRに対してエンジン出力が追いつかなくなる。すなわち図3の105内に示すように、エンジン目標回転数NDと現在ガバナ3に指示されている回転指令値N0との回転数差分ΔHに相当するエンジン出力が不足する。
【0202】
そこで上述した第12の制御と同様にして、コントローラ7は、上記回転数差分ΔHに相当する出力差分LR−Lcを求め、上記(11)式または(21)式(発電電動機出力EM=油機負荷LR−エンジン出力Lc)より、出力差分LR−Lcに相当する出力EMが発電電動機4で発生しエンジン出力Lcをアシストするように発電電動機4を制御する。
【0203】
具体的には、実際のエンジン出力Lcがエンジン出力線Gから演算され(ステップ107)、このステップ107で演算された実際のエンジン出力Lc、ステップ101で演算された油機負荷LRが、上記(11)式または(21)式(発電電動機出力EM=油機負荷LR−エンジン出力Lc)に代入されて、発電電動機出力EMが演算される(ステップ108)。そしてこのステップ108で演算された発電電動機出力EMに対応するトルク指令値TDが求められ(ステップ109)、このステップ109で求められたトルク指令値TDがインバータ8に出力されて発電電動機4が電動作用する(ステップ110)。この結果発電電動機4から上記回転数差分ΔHに相当する出力EM(=LR−Lc)が発生し、エンジン2の出力がアシストされる。
【0204】
このように第13の制御によれば、負荷急上昇時の燃費の低減を図りつつ、急激に増加する負荷に対するエンジン出力の不足分を補填することができる。
【0205】
・第14の制御
つぎにバッテリ10の残量を確保することができる実施例について説明する。
【0206】
第10の制御で説明したように、エンジン出力LDがアクチュエータ側要求出力に一致するようにエンジン2が制御されている場合、つまり下記(14)式、
エンジン出力LD=アクチュエータ側要求出力(旋回用電動機負荷Le+油機 負荷LR) …(14)
あるいは、下記(24)式、
エンジン出力LD=アクチュエータ側要求出力(油機負荷LR) …(24)
が成立している場合には、エンジン2は発電電動機4を発電作用させる馬力の余裕がなく、バッテリ10の残量E(電力蓄積量)が不足するおそれがある。
【0207】
本実施例の制御は、図3のステップ111、112、113、101、102、103、104、106を用いて説明される。
【0208】
まず電圧センサ16の検出値Eがバッテリ10の現残量Eとしてコントローラ7に取り込まれ(ステップ111)、バッテリ10の目標残量Epと現残量Eとの残量偏差ΔEGが演算される(ステップ112)。
【0209】
ここで残留偏差ΔEGは、遅れフィルタを用いて求められる。たとえば過去2秒間の残量Eの平均値を求め、目標残量Epとこの平均値との偏差が残量偏差ΔEGとされる。これはバッテリ残量Eは短時間で大きく変動するため遅れフィルタにより変動を吸収して安定した値を得るためである。また図23に示すように目標残量Epに所定幅ΔE(Epに対して±1/2ΔEp)の不感帯を設けてもよい。現残量Eが目標残量範囲Ep±1/2ΔEp内に入っている場合には残量偏差ΔEGは0とみなされる(ステップ114)。
【0210】
つぎにエンジン出力LDが、アクチュエータ側要求出力(上記(14)式におけるLe+LR)に、残量偏差相当分の出力ΔEGを加えた値となるように、上記(14)式が下記(14)′式のように修正され、
エンジン出力LD=旋回用電動機負荷Le+油機負荷LR+バッテリ残量偏差ΔEG …(14)′
この(14)′式に、上記ステップ101で演算された油機負荷LR、旋回用発電電動機出力Le、ステップ112で得られた残量偏差相当分の出力ΔEGが代入されて、エンジン出力LDが求められる(ステップ102)。
【0211】
以下第10の制御と同様に、ステップ102で求められたエンジン出力LDが得られるようにコントローラ7はガバナ3に回転指令値N0を出力してエンジン2を制御する(ステップ103、104、106)。
【0212】
なお上部旋回体W2を油圧アクチュエータによって作動させることにした場合には、上記(24)式を、エンジン出力LDが、アクチュエータ側要求出力(上記(24)式におけるLR)に、残量偏差相当分の出力ΔEGを加えた値となるように修正した下記(24)′式、
エンジン出力LD=油機負荷LR+バッテリ残量偏差ΔEG …(24)′
を用いてエンジン出力LDを求め、このエンジン出力LDが得られるようにエンジン2を制御すればよい。
【0213】
この結果、負荷に対して、バッテリ10の残量偏差ΔEGに相当する余裕をもったエンジン出力が発生する。残量偏差ΔEG相当分の出力は発電電動機4に吸収され、インバータ8を介してバッテリ10に残量偏差ΔEG相当分の電力が蓄積される。このためバッテリ10の残量が常時、目標残量Ep近辺あるいは図23の目標残量範囲Ep±1/2ΔEpに維持される。
【0214】
このため油機負荷LR、旋回負荷Leが増大し実際のエンジン出力Lcを超えた際には、バッテリ10から電力が発電電動機4に確実に供給され、発電電動機4が電動作用し発電電動機4の出力EMによってエンジン2の出力をアシストすることが保証される。
【0215】
このように第14の制御によれば、バッテリ10の残量を常時一定レベル以上に保持することができるので、負荷増大時には、発電電動機4によってエンジン出力を確実にアシストすることができる。
【0216】
またこの第14の制御は、前述した第11の制御、第12の制御、第13の制御と適宜組み合わせて実施することができる。
【0217】
上述した説明ではアクチュエータ側要求出力を演算しているが、アクチュエータ側要求出力を演算しない実施も可能である。
【0218】
この場合は、演算残量偏差ΔEG相当分の出力を発生させるトルク指令がコントローラ7からインバータ8に与えられる。このため発電電動機4によってエンジン2にかかる負荷は、バッテリ残量偏差ΔEGに応じたものとなる。エンジン2はガバナ3の動作により、図20で説明したのと同様に目標トルク線L1上でエンジン2の出力と負荷とが釣り合いマッチングする。すなわちエンジン出力LDは、アクチュエータ側要求出力(旋回用電動機負荷Le+油機負荷LR)と発電電動機4の負荷(バッテリ残量偏差ΔEG)とを加算した負荷に釣り合い目標トルク線L1上でマッチングすることになる。
【0219】
具体的な制御内容について図22を参照して説明する。
【0220】
・上限ラインUを超えた場合
図22で既に説明したように、エンジン実回転数Nnrが上限回転数Nnmよりも低くなった場合には、噴射量α(Nnd−Nnr)が上限ラインUで規定される最大噴射量α(Nnd−Nnm)を超えたと判断し、上限回転数Nnmと実回転数Nnrとの差Nnm−Nnrに応じたトルク α(Nnm−Nnr)が発電電動機4で発生するようにインバータ8に対して正のトルク指令を与える。すなわちバッテリ残量偏差ΔEGの値いかんにかかわらず、不足したトルク分α(Nnm−Nnr)を発生させる正のトルク指令がコントローラ7からインバータ8に与えられる。このため発電電動機4が電動作用しエンジン出力がアシストされる。
【0221】
ただし演算残量偏差ΔEGが負の場合には目標残量Epに対して現残量Eが大きくバッテリ10の蓄電量に余裕がある場合なので、不足したトルク分α(Nnm−Nnr)に、残量偏差ΔEG分を加算した出力を発生させる正のトルク指令をインバータ8に与え発電電動機4のアシスト量を増やしてもよい。
【0222】
・上限ラインUを超えない場合
エンジン実回転数Nnrが上限回転数Nnm以上の場合には、噴射量α(Nnd−Nnr)が上限ラインUで規定される最大噴射量α(Nnd−Nnm)以下と判断し、演算残量偏差ΔEG相当分の正負の出力を発生させるトルク指令がインバータ8に対して与えられる。このため演算残量偏差ΔEGが正である場合には、演算残量偏差ΔEG相当分のトルクを吸収させる負のトルク指令がインバータ8に与えられて、発電電動機4で演算残量偏差ΔEG相当分のトルクが吸収され発電電動機4が発電作用する。
【0223】
また演算残量偏差ΔEGが負である場合には、演算残量偏差ΔEG相当分のトルクを発生させる正のトルク指令がインバータ8に与えられて、発電電動機4が電動作用し、発電電動機4で演算残量偏差ΔEG相当分のトルクが発生する。
【0224】
・第15の制御
つぎにバッテリ10の残量が下限を下回った場合に緊急措置をとることができる実施例について説明する。
【0225】
本実施例におけるエンジン2は、第11の制御で説明したのと同様に、図4に示すように従来のエンジンの定格点V2よりもエンジン出力が低い定格点V1で稼動する小型のエンジン2が使用される。
【0226】
同図4に示すように本実施例のエンジン2の定格点V1は従来のエンジンの定格点V2よりも等燃費曲線M上で燃費が小さい(良好な)領域に存在する。
【0227】
本実施例の制御は、図3のステップ111、112、113、114、101、102、103、104、106を用いて説明される。
【0228】
すなわち第11の制御と同様にして、バッテリ10の目標残量Epと現残量Eとの残量偏差ΔEGが演算される(ステップ111、112、113)。つぎに残量偏差ΔEGが残量偏差しきい値ΔE0よりも大きいか否かが判断される。つまりバッテリ10の現残量Eが下限値E0を下回っているか否かが判断される(ステップ114)。この結果、バッテリ残量Eが下限値E0以上であると判断された場合には(ステップ114の判断NO)、ステップ102に移行され、以下第11の制御と同様の制御が実行される。このとき図4に示すように、エンジン2は、第11の制御で説明したように、定格点をV1としエンジン出力の上限値を第1の上限値LMとして、エンジン2が制御される(ステップ103、104、106)。これにより通常、エンジン2は、従来のエンジン(定格点V2)よりもエンジン出力が小さいものの燃費が良好な定格点V1で稼動する。
【0229】
しかしエンジン出力が不足しがちの定格点V1でエンジン2が常時稼動していると、バッテリ10への電力蓄積が不足しがちとなりバッテリ残量Eが下限値E0を下回り、バッテリ10から発電電動機4に電力が供給されなくなるおそれがある。
【0230】
そこで、バッテリ残量Eが下限値E0を下回っていると判断された場合には(ステップ114の判断YES)、エンジン2の出力の上限値が第1の上限値LMよりも大きい第2の上限値L′Mとなるように、目標トルク線L1が修正され、エンジン出力線Gも書き換えられる。すなわち図4に示すように定格回転数NRを、より高い定格回転数N′Rに上昇させ、定格点V1を、より高いエンジン出力L′Mが得られる定格点V′1に移行させ(図4参照、ステップ115)、定格点V′1と燃費最小点M1とデセル点N1とを結ぶ線分が新たな目標トルク線として設定され、この目標トルク線に応じたエンジン出力線が新たに求められる(ステップ103、104)。
【0231】
これにより燃費の点では悪化するものの高いエンジン出力L′Mが得られる定格点V′1でエンジン2が稼動する(ステップ106)。この結果、上昇した分のエンジン出力が発電電動機4に吸収され、発電電動機4で発電された電力が、インバータ8を介してバッテリ10に蓄積される。
【0232】
このように第15の制御によれば、通常はエンジン2を燃費が良好な定格点V1で稼動させつつも、バッテリ10の残量が下限を下回った場合には、定格点V1を定格点V′1に移行させて燃費は悪化するもののエンジン出力を高くする緊急措置をとることで、バッテリ10で電力が蓄積できるようにし、バッテリ10から発電電動機4に供給する電力が不足するという事態を回避することができる。
【0233】
またこの第15の制御は、前述した第12の制御、第13の制御と適宜組み合わせて実施することができる。
【0234】
また上述したエンジン2の出力の上限値を短期的に上昇させる制御は、手動操作で行うようにしてもよい。すなわちオペレータは作業中にエンジン出力の不足を感じると、操作レバー41aのノブに設けられたスイッチ42をオン操作する。コントローラ7に、スイッチ42がオンされたことを示すオン信号ONが入力されると、コントローラ7では上述したのと同様に目標トルク線、エンジン出力線を修正する処理が行われ(図3のステップ115、103、104)、エンジン2の出力上限値がLMからL′Mに移行され、より高いエンジン出力が得られる定格点V′1でエンジン2が稼動する(ステップ106)。
【0235】
なおバッテリ残量Eが下限値E0を下回っていると判断された場合には(ステップ114の判断YES)、その旨をオペレータ等に知らしめるべく、コントローラ7からモニタパネル50に表示指令が出力され、モニタパネル50の表示画面50aに、「バッテリ10の残量が不足している」旨の警告表示がなされる。
【0236】
・第16の制御
上述した第15の制御では、バッテリ残量Eが下限値E0を下回っている場合にエンジン2の出力の上限値を短期的に上昇させる緊急措置をとるようにしているが、エンジン2の出力の上限値を上げることで対処するのではなく、建設機械1のアクチュエータの出力を制限することで対処してもよい。
【0237】
たとえばバッテリ残量Eが下限値E0を下回っていると判断された場合に、油圧ポンプ6の斜板6aの最大傾転角を制限しポンプ吸収馬力を制限することが考えられる。また図24に示すように油圧ポンプ6のP−QカーブLN1を、より低い吸収馬力となるP−QカーブLN2に設定してポンプ吸収馬力を制限することが考えられる。またバッテリ残量Eが下限値E0を下回っていると判断された場合に、旋回用電動機11の出力上限値を低い値に制限することが考えられる。
【0238】
これにより油機負荷LR、旋回負荷Leが減少し、その減少分だけエンジン2の出力に発電電動機4を発電させる余裕が発生し、発電電動機4で吸収したエンジン出力をバッテリ10に電力として蓄積することができる。
【0239】
・第17の制御
図11は建設機械1のエンジン2の出力Lc、油機負荷(ポンプ吸収馬力)LR、バッテリ(キャパシタ)10の出力CDの状態を示すグラフであり横軸に時間をとり縦軸に出力(kW)をとっている。図11は図3に示す制御内容を実施した場合を示している。
【0240】
図11において、エンジン出力Lcの特性をK1で示し油機負荷LRの特性をK2で示しバッテリ出力CDの特性をK3で示している。
【0241】
図11に示すB2ではブーム用操作レバー41aを最大操作量まで操作して重負荷の掘削作業が行われており、油機負荷K2がエンジン出力K1を上回っている。このときバッテリ10で放電が行われ発電電動機4が電動作用しており油機負荷K2に対して不足しているエンジン出力を発電電動機4の出力でアシストしている。
【0242】
図11に示すB3ではブーム用操作レバー41aが戻されて比較的軽負荷の作業が行われており、エンジン出力K1が油機負荷K2を上回っている。このとき発電電動機4が発電作用しており、残量偏差ΔEG相当分の電力がバッテリ10に充電される。エンジン出力K1が油機負荷K2を大きく上回ると、B5に示すようにバッテリ10への充電量が大きくなる。
図11に示すB4では旋回用操作レバーが操作され旋回作業が行われており、エンジン出力K1が油機負荷K2を上回っている。このとき発電電動機4が発電作用しており、発電電動機4から電力が旋回用発電電動機11に供給され旋回用発電電動機11が電動作用している。
【0243】
図11のB1に示すように、掘削作業が開始されると操作レバー41aが中立位置から操作され油機負荷K2が上昇するが、エンジン出力K1は油機負荷K2に遅れて立ち上がる。これは図3に示すように、油機負荷LRを演算し(ステップ101)、この油機負荷LRに対応するエンジン出力LDを求め(ステップ102)、このエンジン出力LDに対応する目標回転数NDを求め(ステップ104)、この目標回転数NDが得られるようガバナ3が動作することで(ステップ105、106)、エンジン2の出力が実際に、演算したエンジン出力LDまで上昇するが、この間に時間遅れがあり、エンジン2の出力が実際に上昇したときには、既に実際の油機負荷は、演算した油機負荷LR以上に上昇しているからである。
【0244】
こうした操作レバー投入時における油機負荷K2とエンジン出力K1との差は、上記(11)式(発電電動機出力EM=油機負荷LR−実際のエンジン出力Lc)に示されるように発電電動機4の出力EMによって補填されている。つまりバッテリ10で放電が行われて発電電動機4が電動作用し発電電動機出力EMが発生し、この発電電動機出力EMによって、図11にB1で示す実際の油機負荷K2と実際のエンジン出力K1との差分がアシストされる。
【0245】
このため操作レバー投入時の油機負荷K2とエンジン出力K1との差分に相当する最大出力が得られるよう発電電動機4を設計する必要がある。
【0246】
したがって操作レバー投入時における油機負荷K2とエンジン出力K1との差を小さくすることができれば、発電電動機4の最大出力を小さくでき、その分発電電動機4を小型化することができる。
【0247】
以下、発電電動機4を小型化することができる実施例について説明する。
【0248】
図12は操作レバー41aの操作特性Cを示しており横軸にレバー操作量Sをとり、縦軸に作業機(ブーム)の速度をとっている。なおブーム以外のアーム、バケットについても同様である。
【0249】
操作レバー41aが中立位置から操作されると、油圧ポンプ6の斜板6aは最小傾転角から上昇し(容量Dが上昇し)、ポンプ吸収馬力が上昇する。オペレータは油機負荷の上昇分を予測し負荷上昇分に応じた速度で操作レバー41aを操作する。このため操作レバー41aを操作する速度から油機負荷LRの増分を予測することができる。
【0250】
コントローラ7は、操作センサ41bから操作レバー41aの操作量Sを示す信号を取り込み、図12に示すように、中立位置から、しきい値Scまで到達する時間τを計測し、単位時間当たりのレバー操作量ΔS/τを演算する。
【0251】
つぎに単位時間当たりのレバー操作量ΔS/τから、回転指令値N0に上乗せすべき回転数増分ΔN(負荷増分予測値)が演算される。
【0252】
図3のステップ101で油機負荷LRが演算され、この油機負荷LRから目標回転数NDが得られたならば(ステップ104)、この目標回転数NDに、回転数増分(負荷増分予測値)ΔNを加算した回転指令値ND+ΔN(N0+ΔN)が生成され(ステップ105)、この回転指令値ND+ΔN(N0+ΔN)がガバナ3に出力される。
【0253】
この結果操作レバー投入に伴いエンジン出力が迅速に上昇することなり、操作レバー投入時における油機負荷K2とエンジン出力K1との差が小さくなる。このため発電電動機4で出し得る最大出力EMを小さくでき、その分発電電動機4を小型化することができる。
【0254】
なお実施例の制御は、操作レバー投入時など負荷が急上昇する場合に行うことが望ましい。このため回転数増分(負荷増分予測値)ΔNにしきい値が設定され、回転数増分(負荷増分予測値)ΔNがしきい値(たとえばエンジン出力で20kw/秒相当の増加)を超えた場合に本実施例の制御が行われる。
【0255】
また単位時間当たりのレバー操作量ΔS/τの代わりにレバー操作量ΔSから、回転指令値に上乗せすべき回転数増分ΔN(負荷増分予測値)を演算してもよい。
【0256】
さて図15はオートデセルの制御内容を説明する図であり、横軸に操作レバーの状態の時間変化(秒)をとり縦軸にエンジン回転数Nをとっている。オートデセルの制御は、エンジン回転数Nがデセル回転数N1(1400rpm)以上になっているときに実行される。また図15は燃料ダイヤル17で定格回転数NRに設定されている場合を基準としている。
【0257】
すなわち同図15に示すように、全ての操作レバーが中立位置に戻されると、エンジン回転数Nは、Δt1秒で燃料ダイヤル17で設定されている定格回転数NRよりも約100rpm低い第1デセル回転数まで低下する。さらにΔt2秒経過するとエンジン回転数Nは第1デセル回転数よりも低い第2デセル回転数N1(以下単にデセル回転数という;1400rpm)までΔt3秒で低下し、いずれかの操作レバーが操作されるまでそのデセル回転数N1を維持する。
【0258】
エンジン回転数Nがデセル回転数N1に維持されている状態で、いずれかの操作レバーが中立位置から操作されると、エンジン回転数NはΔt0(たとえば1秒)で燃料ダイヤル17で設定されている定格回転数NRまで上昇する。
【0259】
デセル回転数N1の1400rpmという回転数は、ローアイドル回転数NLの1000rpmとハイアイドル回転数NHの2200rpmとの中間の中速の回転数として設定される。この理由は操作レバーが中立位置から操作されたときのエンジン2の応答性を確保するためである。建設機械を設計する際には、操作レバーが中立から操作され油機負荷が投入された際に無負荷状態から定格回転数NRに達するに所定時間Δt0(たとえば1秒)以内であるということが、品質保証上要求される。デセル回転数N1を低く設定すると上記要求に応えられないことから、デセル回転数N1をローアイドル回転数NLよりも高い中速の回転数に設定して、操作レバー操作開始時におけるエンジン2の高い応答性を確保している。
【0260】
しかし燃費低減の点からみると、デセル回転数N1を中速回転数(1400rpm)に設定することは、必ずしも適切であるとは言い難い。
【0261】
図16は建設機械で積込み掘削作業を所定のサイクルタイム行ったときの燃費を計測したデータを例示している。図16の横軸は時間(sec)を示し縦軸は単位時間当たりの燃料消費量(kg/h)を示している。
【0262】
同図16に示すように掘削積込作業機の消費燃料は、横軸の時間と横軸の燃料消費率を積算した面積FL1で表され、デセル時つまり全操作レバーが中立位置に戻されデセル回転数N1に維持されている時の消費燃料は同様にして積算した面積FL2で表される。作業時の全消費燃料はFL1とFL2とを合計したものである。、全消費燃料FL1+FL2に占めるデセル時の消費燃料FL2の割合FL2/(FL1+FL2)は、油圧ポンプの連れ回りトルクもあることから、5〜10%に達する。以上は燃費について述べたが騒音に関しても同様である。
【0263】
以下、操作レバーが中立位置に戻されたときの燃費、騒音を従来よりも低減させつつ、操作レバーが中立位置から操作されたときにエンジンを短時間(たとえば1秒)で目標回転数(定格回転数NR)に上昇させることができる実施例について説明する。
【0264】
・第18の制御
まずオペレータは図2に示すモニタパネル50上で「燃費優先モード」、「応答性優先モード」のいずれかを、選択スイッチ51、52のいずれかを選択操作することによって選択する。選択スイッチ51はデセル回転数N′1をローアイドル回転数NLよりも低い回転数(たとえば700rpm)に設定する選択スイッチであり、選択スイッチ52はデセル回転数N′1を上記選択スイッチ51で選択される回転数よりも高めの回転数に設定する選択スイッチである。
【0265】
選択スイッチ51、52のいずれかが選択操作されると、選択された内容を示す信号がコントローラ7に入力される。
【0266】
一方、コントローラ7には、ブーム用操作レバー41aの操作センサ41bを含む各操作センサから操作信号が取り込まれる。
【0267】
コントローラ7では操作信号に基づき、全ての操作レバーが中立位置に戻されたか否かが判断される。この結果、全ての操作レバーが中立位置に戻されたと判断された場合には、図15と同様にして、エンジン回転数Nが、選択スイッチ51、52によって選択されたデセル回転数N′1(たとえば700rpm)まで低下させるようガバナ3に回転指令値を出力し、いずれかの操作レバーが操作されるまでそのデセル回転数N′1を維持する。このため操作レバー中立時における燃費が従来よりも向上する。
【0268】
エンジン回転数Nがデセル回転数N′1に維持されている状態で、いずれかの操作レバーが中立位置から操作されたと判断された場合には、コントローラ7はガバナ3に対して、エンジン回転数Nを現在の負荷に応じたエンジン回転数NDまで(燃料ダイヤル17で設定されている定格回転数NRまで)上昇させるよう回転指令値を出力するとともに、インバータ8に対して正(+)極性のトルク指令値TDを出力し発電電動機4を電動機として作動させる。
【0269】
このため無負荷のデセル点N′1から高負荷の定格点V1にマッチング点が移動する際に発電電動機4の出力がエンジン2の出力に加算される。発電電動機4の出力によってエンジン出力がアシストされるため、従来と同様に短時間(たとえば約1秒)で応答性よく定格点V1まで移動する。
【0270】
図13を用いて本実施例の効果について説明する。
【0271】
図13は従来のエンジンの最大トルク線R2、エンジン2の最大トルク線R1に発電電動機4の最大トルク線を加算した本実施例の最大トルク線R3(1時間定格)、R′3(1分間定格)を比較して示している。
【0272】
操作レバー操作時にエンジンを加速させる時間は、図13(b)に示すように最大トルク線から油機負荷γを減算したハッチングで示す面積で規定される。最大トルク線から油機負荷γを減算した面積が大きいほど、エンジンを加速させるトルクの余裕が大きいということであり、より短時間で目標回転数NRまで到達させることができる。
【0273】
従来最大トルク線R2から油機負荷γを減算した面積はε1であるのに対して、本実施例の最大トルク線R′3(1分間定格)から油機負荷γを減算した面積はε1にε3を加算した面積であり、エンジン2を加速させるトルク余裕が従来のエンジンよりも大きい。同様に本実施例の最大トルク線R3(1時間定格)から油機負荷γを減算した面積はε1にε2を加算した面積であり、エンジン2を加速させるトルク余裕が従来のエンジンよりも大きい。
【0274】
しかも発電電動機4はエンジン2と比較して低回転で大きなトルクを発生するのでエンジン回転の立ち上がり時に大きなトルク余裕が生じている。
【0275】
このためデセル回転数N′1を、従来のデセル回転数N1(1400rpm)よりも低くし更にアイドル回転数NLよりも低い極低速の回転数N1′(たとえば700rpm)に設定したとしても、本実施例の場合には操作レバー41aが中立位置から操作されると、加速トルク軌跡αにて示すようにエンジン回転数Nは迅速に立ち上がり従来と同様に短時間(たとえば1秒以下)で定格点V1に到達する。
【0276】
このように本実施例によれば、操作レバー中立時のデセル回転数を極低速の回転数N1′(たとえば700rpm)に設定して、操作レバー操作時のエンジン2の加速を発電電動機4で発生するトルクによってアシストするようにしたので、操作レバーが中立位置に戻されたときの燃費、騒音を従来よりも低減させつつ、操作レバーが中立位置から操作されたときにエンジン2を短時間(たとえば1秒)で目標回転数(定格回転数NR)に上昇させることができる。
【0277】
ただし選択スイッチ51によって低めのデセル回転数N′1が設定された場合には燃費は向上するもののエンジン2の応答性は相対的に悪化し、選択スイッチ52によって高めのデセル回転数N′1が設定された場合にはエンジン2の応答性は向上するものの燃費は相対的に悪化する。
【0278】
なお選択スイッチ51、52によってデセル回転数N′1を2段階に変化させているが、ダイヤル等によって連続的にデセル回転数N′1を変化させるようにしてもよい。
【0279】
また気象状態やエンジン暖気状態等の条件によってデセル回転数N′1を低く設定することが望ましくない場合があるので、条件に応じてデセル回転数N′1を高めに変化させてもよい。
【0280】
たとえばエンジン2の冷却水温が検出され冷却水温が規定値(たとえば70゜C)以下ではデセル回転数N′1が高めの回転数に設定される。またバッテリ10の残量が検出されバッテリ残量が規定値(たとえばSOC 20%)以下ではデセル回転数N′1が高めの回転数に設定される。また大気圧が検出され大気圧が規定値(たとえば700mmHg)以下ではデセル回転数N′1が高めの回転数に設定される。またエンジン2に吸入される空気の温度が検出され吸入空気温度が規定値(たとえば45゜C)以上ではデセル回転数N′1が高めの回転数に設定される。
【0281】
・第19の制御
上述した第18の制御では、操作レバー中立時にエンジン2を回転させているが、エンジン2を停止させてもよい。
【0282】
この場合、オペレータは図2に示すモニタパネル50上で選択スイッチ53を選択操作して「停止制御モード」を選択する。
【0283】
選択スイッチ53が選択操作されると、停止制御を実行すべきことを示す信号がコントローラ7に入力される。ただし選択スイッチ53の選択操作は、1回の停止制御のみ有効であることが望ましい。つまり1回の停止制御が実行された後は、再度選択スイッチ54を選択操作しなければ次回の停止制御を実行しないようにすることが望ましい。なお、ここで「停止制御」とは全ての操作レバーが中立位置に戻された場合にエンジン2を停止させいずれかの操作レバーが中立位置から操作された場合にエンジン2を始動させて負荷に応じた回転数まで上昇させる一連の制御内容のことである。
【0284】
一方、コントローラ7には、ブーム用操作レバー41aの操作センサ41bを含む各操作センサから操作信号が取り込まれる。
【0285】
コントローラ7では操作信号に基づき、全ての操作レバーが中立位置に戻されたか否かが判断される。この結果、全ての操作レバーが中立位置に戻されたと判断された場合には、エンジン2を停止させるよう、つまり燃料供給を停止するようガバナ3に指令を出力し、いずれかの操作レバーが操作されるまでエンジン停止状態を維持する。このため操作レバー中立時における燃費が従来よりも大幅に向上する。
【0286】
エンジン2が停止している状態で、いずれかの操作レバーが中立位置から操作されたと判断された場合には、コントローラ7はガバナ3に対して、エンジン回転数Nを現在の負荷に応じたエンジン回転数NDまで(燃料ダイヤル17で設定されている定格回転数NRまで)上昇させるよう回転指令値を出力するとともに、インバータ8に対して正(+)極性のトルク指令値TDを出力し発電電動機4を電動機として作動させる。
【0287】
このため発電電動機4が回転することによってエンジン2が始動し、発電電動機4で発生した出力によってエンジン出力がアシストされて、定格点V1まで従来と同様に短時間(たとえば約1秒)で応答性よく移動する。
【0288】
ここで、図13(b)に示すように発電電動機4はエンジン2と比較して発電電動機4の起動時(エンジン2の始動時)から大きなトルクを発生するので、エンジン回転の立ち上がり時に大きなトルク余裕が生じている。
【0289】
したがってエンジン2を停止させたとしても、操作レバー41aが中立位置から操作されると、エンジン回転数Nは迅速に立ち上がり従来と同様に短時間(たとえば1秒以下)で定格点V1に到達することを担保することができる。
【0290】
このように本実施例によれば、操作レバー中立時にエンジン2を停止させ、操作レバー操作時に発電電動機4で回転させてエンジン2を始動させエンジン2の加速を発電電動機4で発生するトルクによってアシストするようにしたので、操作レバーが中立位置に戻されたときの燃費、騒音を従来よりも低減させつつ、操作レバーが中立位置から操作されたときにエンジン2を短時間(たとえば1秒)で目標回転数(定格回転数NR)に上昇させることができる。
【0291】
また発電電動機4は、エンジン始動用のスタータの機能を兼用しているので、スタータを別に設ける必要がなくなり部品点数削減、コスト低減が図られる。また既存のスタータを、エンジン2の出力をアシストできるよう改変して発電電動機4を構成すれば、既存の装置に大きな改変を加えることなく本実施形態のシステムを構成することができる。
【0292】
ところで停止制御が実行されるとエンジン2が自動的に停止しエンジン2が自動的に始動するため、オペレータおよび周囲の人間に注意を喚起する必要がある。
【0293】
そこで停止制御の実行が開始されると、コントローラ7からブザー19に対して警報指令が出力され、ブザー19が鳴動する。これによりオペレータおよび建設機械1の周囲の人間に、「停止制御実行中;操作レバーが操作されたときに作業機が動くので危険である」旨の注意が喚起される。なおスピーカ等でメロディや音声を発生させてもよい。またコントローラ7からモニタパネル50に表示指令が出力されモニタパネル50の表示画面50aに、同様に「停止制御実行中」であることを示す表示がなされる。また建設機械1の外部に設けた表示器に同様の表示を行うようにしてもよい。表示は単にパイロットランプを点灯ないしは点滅させるだけでもよく、文字、符号、絵などを点灯ないしは点滅させるようにしてもよい。
【0294】
また選択スイッチ53が選択操作されてから停止制御が終了するに至るまで、音または表示で警報を発生させてもよく、エンジン2が停止して待機しているときのみ、音または表示で警報を発生させてもよい。
【0295】
また気象状態やエンジン暖気状態等の条件によってエンジン2を停止することが望ましくない場合があるので、条件に応じてエンジン2を停止させないようにしてもよい。
【0296】
たとえばエンジン冷却水温が規定値(たとえば70゜C)以下の場合、バッテリ残量が規定値(たとえばSOC 20%)以下の場合、大気圧が規定値(たとえば700mmHg)以下の場合、エンジン吸入空気温度が規定値(たとえば45゜C)以上の場合には、全ての操作レバーが中立位置に戻されたとしてもエンジン2は停止されず、その代わりに、上述した第16の制御が実行され、エンジン回転数がデセル回転数N′1まで低下される。
【0297】
・第20の制御
つぎの上述した第19の制御の変形例について説明する。
【0298】
本実施形態の装置は図2に示すようにLS弁14を備えている。LS弁14は、油圧ポンプ6の吐出圧Pと、油圧シリンダ31の負荷圧PLSとの差圧ΔPが一定差圧ΔPLSとなるように動作する。
【0299】
操作弁21のスプールの開口面積をA、抵抗係数をcとすると、油圧ポンプ6の吐出流量Qは、前述した(2)式(Q=C・A・√(ΔP))で表される。
【0300】
差圧ΔPはLS弁14により一定になるのでポンプ流量Qは操作弁21のスプールの開口面積Aによってのみ変化する。
【0301】
作業機用操作レバー41aを中立位置から操作すると操作量に応じて操作弁21のスプールの開口面積Aが増加し、開口面積Aの増加に応じてポンプ流量Qが増加する。このときポンプ流量Qは油機負荷の大きさには影響を受けず作業機用操作レバー41aの操作量のみによって定まる。このようにLS弁14を設けたことにより、ポンプ流量Qは負荷によって増減することなくオペレータの意思通りに(操作レバーの操作位置に応じて)変化しファインコントロール性つまり中間操作領域における操作性が向上する。
【0302】
油圧ポンプ6の吐出流量Qとエンジン2の回転数Nと油圧ポンプ6の容量Dとの間には、前述した(1)式(Q=N・D)なる関係が成立する。
【0303】
ここで油圧ポンプ6の斜板6aの傾転角に制限がなく最大傾転角で最大容量が得られるものと仮定する。
【0304】
作業機用操作レバー41aが操作されると、上記(2)式よりスプール開口面積Aが増大し油圧ポンプ6から、増大した開口面積Aに応じた大流量Qを吐出しようとする。ところが作業機用操作レバー41aの操作開始時点ではエンジン停止状態にあり、上記(1)式(Q=N・D)より、エンジン回転立ち上がり時で回転数がほぼ0の極低回転数Nにもかかわらず要求される大流量Qを吐出させるべくポンプ容量Dは最大容量に維持される。
【0305】
操作レバー操作時にはエンジン2の加速が発電電動機4で発生するトルクによってアシストされるものの、油圧ポンプ6を最大容量に維持して操作レバー41aの操作量に応じた大流量Qの圧油を吐出しようとするため、エンジン2のトルクはエンジン2の加速に使われる分の余裕がなく油圧ポンプ6に吸収されて、エンジン回転立ち上がり時の加速性が悪化する。
【0306】
そこで本第20の制御では、作業機用操作レバー41aが中立位置から操作された場合には、所定時間に達するまで、またはエンジン回転数が所定回転数に達するまでは、油圧ポンプ6の容量を最大容量よりも小さい値に制限する。具体的には油圧ポンプ6の斜板6aの傾転角を最大傾転角よりも小さな傾転角に制限する。
【0307】
これにより油圧ポンプ6で要求される流量Qが制限され、エンジン2のトルクに余裕が生じ、そのトルク余裕分がエンジン2の加速に使われエンジン回転立ち上がり時の加速性が向上する。
【0308】
以上のように本第20の制御によれば、操作レバーのファインコントロール性を向上させつつ、エンジン停止状態から操作レバー投入時のエンジンの加速性を向上させることができる。
【0309】
なお第18の制御、第19の制御、第20の制御は、前述した第1、第2、第4、第6〜第17の制御と適宜組み合わせて実施することができる。すなわち図4等に示されるデセル点N1が、より回転数の低いデセル点N′1に変更されて、目標トルク線L1など、デセル点を通る目標トルク線が設定され、各種制御が実行される。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は実施形態の構成を示す図である。
【図2】図2は図1に示すコントローラに入出力される信号を説明する図である。
【図3】図3は図1に示すコントローラで実行される制御内容を示す図である。
【図4】図4はエンジンのトルク線図を示す図である。
【図5】図5はエンジンのトルク線図を示す図である。
【図6】図6はエンジンのトルク線図を示す図である。
【図7】図7はエンジンのトルク線図を示す図である。
【図8】図8はエンジンのトルク線図を示す図である。
【図9】図9はエンジンのトルク線図を示す図である。
【図10】図10はエンジンのトルク線図を示す図である。
【図11】図11は図3の制御内容を実行した結果を説明する図である。
【図12】図12は操作レバーの操作特性を示す図である。
【図13】図13(a)、(b)はトルク線図を示す図でエンジンが加速される様子を説明する図である。
【図14】図14は従来のエンジンのトルク線図を示す図である。
【図15】図5はオートデセルを説明する図である。
【図16】図16は従来のオートデセル実行時の燃料消費率を説明する図である。
【図17】図17はエンジンのトルク線図を示す図である。
【図18】図18はエンジンのトルク線図を示す図である。
【図19】図19はエンジンのトルク線図を示す図である。
【図20】図20はエンジンのトルク線図を示す図である。
【図21】図21はエンジンのトルク線図を示す図である。
【図22】図22はエンジンのトルク線図を示す図である。
【図23】図23はバッテリの目標残量範囲を示す図である。
【図24】図24は油圧ポンプのP−Qカーブを示す図である。
【符号の説明】
2 エンジン
4 発電電動機
5 出力軸
6 油圧ポンプ
7 コントローラ
10 バッテリ
11 旋回用発電電動機
14 LS弁
19 ブザー
41a 操作レバー
50a 表示画面
51、52、53 選択スイッチ

Claims (1)

  1. エンジンの出力軸に連結され、発電作用と電動作用を行う発電電動機と、
    前記出力軸が駆動されるに応じて作動する作業機と、
    操作量に応じて、前記作業機の作動速度を変化させる作業機用操作子と、
    前記作業機用操作子の単位時間当たりの操作量または操作量を計測し、この計測した単位時間当たりの操作量または操作量に基づいて前記出力軸にかかる負荷の増分を予測する負荷増分予測手段と、
    前記負荷増分予測手段で予測した負荷増分に応じたエンジン出力が得られるようエンジンを制御するエンジン制御手段と
    を具えたことを特徴とするエンジンの制御装置。
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