次に、発明の実施の形態を説明する。図1はハイブリッドシステムの構成を示す図、図2はハイブリッドシステムの動作モードの一覧を示す図、図3はハイブリッドシステムのスタータ機能を示す説明図、図4はハイブリッドシステムのアシスト機能を示す説明図、図5はハイブリッドシステムの充電(発電)機能を示す説明図、図6はVVVFインバータコンバータ用制御ブロック図、図7は昇降圧チョッパ用制御ブロック図、図8は負荷パターンを示す図、図9は模擬負荷パターンの実施方法を示す図、図10は機関及びモータ出力と等馬力線の関係を示す図、図11はドループ特性線を示す図、図12は機関及びモータ出力と等馬力線の関係を示す図、図13はエンジンの負荷変動による機関回転変動の軽減を示す説明図、図14はバッテリ液の比重とバッテリ回路電圧の関係を示す図、図15はバッテリ液の比重とバッテリの放電深度(DOD)の関係を示す図である。
まず、ハイブリッドシステムの構成について図1を用いて説明する。本ハイブリッドシステムでは、エンジン2の出力軸部4の駆動を、エンジン2と、電動機(モータ)として機能するモータジェネレータ40との、両方により可能としている。出力軸部4から取り出された駆動力は、クラッチ部4aを介して出力部6に伝達され、動力伝達装置などを介して、作業機などの各種作業部、また、移動体などにおける走行車輪や船舶の水中推進用プロペラ等を駆動する。
モータジェネレータ40は、エンジン2のクランク軸にその駆動軸が連結されたエンジン直結のホイールインモータであり、エンジン2の本体側と出力軸部4との間に介装されている。モータジェネレータ40は、発電機またはモータとして機能し、インバータ部41の可変電圧可変周波数(以下、VVVF)インバータコンバータ42と接続されている。このVVVFインバータコンバータ42は、昇降圧チョッパ44を介して蓄電装置であるバッテリ14に接続されている。そして、モータジェネレータ40がモータとして機能する場合には、バッテリ14の給電電力がインバータ部41を介してモータジェネレータ40に供給される。一方、モータジェネレータ40が発電機として機能する場合には、エンジン2の駆動により該モータジェネレータ40で発電された電力がインバータ部41を介してバッテリ14に蓄電される。
インバータ部41は、VVVFインバータコンバータ42と昇降圧チョッパ44とから構成され、これらVVVFインバータコンバータ42及び昇降圧チョッパ44は、シーケンサ43を介してシステムコントローラ7と接続されている。このシーケンサ43を含むシステムコントローラ7が制御手段となる。システムコントローラ7は、制御対象の状態や、機関回転数や各種アクチュエータ等の外部からの信号に基づき、制御対象に与える操作やその順序などを制御する。そのため、システムコントローラ7とシーケンサ43との間では各種制御信号の通信が行われており、システムコントローラ7と、VVVFインバータコンバータ42及び昇降圧チョッパ44との信号のやりとりは、シーケンサ43を介して行われる。システムコントローラ7からVVVFインバータコンバータ42へは、起動信号や後述する速度指令(モータ指令)などの信号が送信されており、システムコントローラ7と昇降圧チョッパ44との間では、起動信号や充電開始・充電電流に関する信号が通信されている。また、インバータ部41には電圧センサ45が接続されており、この電圧センサ45によってインバータ部41のインバータ直流電圧やバッテリ電圧など各部の電圧を検出する。
モータジェネレータ40は、モータとしての機能(図2のM1・M2、図3及び図4参照)、及び発電機としての機能(図2のM3〜M5及び図5参照)を有しており、作業状況などに応じて各機能を発揮する。つまり、本ハイブリッドシステムにおいては、モータジェネレータ40をモータとして作動させる場合には、VVVFインバータコンバータ42をインバータとして作動させるとともに、バッテリ14からの給電電力を、昇降圧チョッパ44により昇圧してモータジェネレータ40に供給する。モータジェネレータ40を発電機として作動させる場合には、VVVFインバータコンバータ42をコンバータとして作動させるとともに、モータジェネレータ40による発電電力を、昇降圧チョッパ44により降圧してバッテリ14に蓄電することを特徴としている。
すなわち、モータジェネレータ40がモータとして機能する場合には、バッテリ14からの給電電力がモータジェネレータ40に供給され、これにより、該モータジェネレータ40が作動する。バッテリ14から給電される直流電力は昇降圧チョッパ44を介してVVVFインバータコンバータ42に入力される。このとき、昇降圧チョッパ44は昇圧チョッパとして機能し、バッテリ14の給電電圧を所定の電圧に昇圧して、VVVFインバータコンバータ42に出力する。この際、VVVFインバータコンバータ42はインバータとして機能して、入力された直流電力を所定の電圧及び周波数の交流電力に変換し、この変換された交流電力をモータジェネレータ40に供給する。
また、VVVFインバータコンバータ42は、システムコントローラ7からの指令(速度指令・制御信号)に従い、モータとして作動するモータジェネレータ40の回転数及びトルクを制御する。前述したように、モータジェネレータ40の駆動軸はエンジン2のクランク軸と連結されており、モータジェネレータ40がモータとして作動することにより、該モータジェネレータ40の駆動力がエンジン2に伝達されて、後述するモータジェネレータ40によるスタータ機能及びアシスト機能が発揮される。
一方、モータジェネレータ40が発電機として機能する場合には、エンジン2の駆動力の一部または全部がモータジェネレータ40の作動に用いられ、このエンジン2からの駆動力によりモータジェネレータ40が作動して、発電が行われる。エンジン2の駆動によりモータジェネレータ40で発電された電力は、三相交流電力としてVVVFインバータコンバータ42に入力される。この際、VVVFインバータコンバータ42はコンバータとして機能し、モータジェネレータ40から入力された交流電力を整流・平滑化して直流電力に変換する。VVVFインバータコンバータ42によって変換された直流電力は、昇降圧チョッパ44を介してバッテリ14に入力され、これによりバッテリ14に蓄電される。このとき、昇降圧チョッパ44は降圧チョッパとして機能し、VVVFインバータコンバータ42から出力される直流電力を所定の電圧に降圧してバッテリ14に蓄電する。
なお、以上に述べたように、VVVFインバータコンバータ42は、モータジェネレータ40がモータとして作動する場合には、バッテリ14から給電される直流電力を交流電力に変換するインバータとして機能し、モータジェネレータ40が発電機として作動する場合には、該モータジェネレータ40により発電された交流電力を直流電力に変換するコンバータとして機能する双方向電力変換装置となっている。
このように、インバータ部41に昇降圧チョッパ44を使用することにより、バッテリ14からモータジェネレータ40へ供給される電圧を昇圧することができるため、バッテリ14からの出力(電力)が同じであれば、電圧が高くなった分、小電流化を図ることが可能となる(電力=電流×電圧)。これにより、昇降圧チョッパ44とVVVFインバータコンバータ42とを接続する配線、及びVVVFインバータコンバータ42とモータジェネレータ40とを接続する配線において、負荷をかけたとき流れる負荷電流の配線の抵抗によって失われる損失(銅損)を低減することができる。
また、昇降圧チョッパ44を使用することにより、バッテリ14の小型化が図れる。つまり、モータとして駆動するモータジェネレータ40に供給する電圧は、高いほどモータジェネレータ40のモータ機能を発揮するためには有利であり、高い電圧で供給しようとすると、バッテリ14を大きくする必要があるが、昇降圧チョッパ44を使用することでバッテリ14から供給する電圧が低くても昇圧することが可能となるので、バッテリ14を大きくする必要がなくなるのである。これにより、本ハイブリッドシステムを搭載する機体における省スペース化、及び軽量化を図ることができる。
一方、エンジン2の駆動力(回転数)の調節は、操作部8に配設されるレギュレータレバー等の操作レバー9を操作することによって行われる。また、操作レバー9には、該操作レバー9のレバー位置を検出する位置センサ(図示略)が付設されており、この位置センサはシステムコントローラ7と接続されている。また、操作部8には、切り換え操作手段として、VVVF起動(回転数)指示スイッチ、CVCF(定電圧定周波数)起動スイッチ、昇降圧チョッパ起動スイッチ、蓄電開始スイッチ、蓄電電流指示スイッチ等の各種スイッチが配設されており、これらの各種スイッチはシステムコントローラ7と接続されている。
操作レバー9を操作すると、該操作レバー9のレバー位置が前記位置センサにより検出され、レバー位置に応じた信号がシステムコントローラ7に入力される。そして、システムコントローラ7は入力された信号に基づいてシフトアクチュエータ21及びスロットルアクチュエータ22を作動させる。
シフトアクチュエータ21は、前記クラッチ部4aに接続されており、このシフトアクチュエータ21の作動によりクラッチ部4aのクラッチを作動させるように制御している。このようにしてクラッチを作動させることにより、出力軸部4から出力部6への駆動力の断接が行われる。また、シフトアクチュエータ21には、そのシフト位置を検出するポテンショメータ(図示略)が付設されている。ポテンショメータは、システムコントローラ7と接続されており、このポテンショメータにより検出されたシフト位置がシステムコントローラ7に入力される。
スロットルアクチュエータ22は、ラックピニオン式のDCモータ(スロットルモータ)により構成され、エンジン2のスロットルに接続されている。このスロットルアクチュエータ22の作動により、スロットル位置(スロットル開度)が変化する。このスロットル位置の変化によりエンジン2における燃料噴射量を調節して、エンジン2の駆動力(回転数)を調節可能としている。すなわち、スロットルアクチュエータ22は、エンジン2の回転数調節手段として機能する。そして、このスロットルアクチュエータ22を構成する前記DCモータは、システムコントローラ7に接続されており、該システムコントローラ7から送られる指令によって該DCモータが制御される。また、スロットルアクチュエータ22には、そのスロットル位置を検出するポテンショメータ(図示略)が付設されている。ポテンショメータは、システムコントローラ7と接続されており、このポテンショメータにより検出されたスロットルアクチュエータ22のスロットル位置がシステムコントローラ7に入力される。このように、操作レバー9を操作して、そのレバー位置を調節することにより、エンジンの駆動力(回転数)の調節を行っている。ただし、後述するモータジェネレータ40の各制御が行われているときには、操作レバー9を操作することによる燃料噴射量の調節は行われない。つまり、モータジェネレータ40の制御は、操作レバー9のレバー位置から要求される燃料噴射量(指示回転数)が一定の状態で行われる。
以上のように構成されるハイブリッドシステムにおいて、メインコントローラとしてのシステムコントローラ7は、次のように機能して本ハイブリッドシステムの制御を行う。システムコントローラ7には、前述したように、操作部8における操作レバー9に付設される位置センサが接続され、また、シフトアクチュエータ21及びスロットルアクチュエータ22と、これらシフトアクチュエータ21及びスロットルアクチュエータ22にそれぞれ付設されるポテンショメータとが接続されている。
また、システムコントローラ7は、エンジン2と接続されており、該エンジン2からシステムコントローラ7に機関回転数が入力される。機関回転数は、エンジン2に付設される回転数センサ(図示略)により検出される。また、この回転センサにより検出される機関回転数は、VVVFインバータコンバータ42へも入力される。
また、システムコントローラ7は、VVVFインバータコンバータ42と接続されており、システムコントローラ7は、VVVFインバータコンバータ42に対し、モータとしてのモータジェネレータ40の起動信号、及び予め決定される速度指令を送る。そして、VVVFインバータコンバータ42は、これらの信号に基づいて、モータとして作動する場合のモータジェネレータ40を制御する。一方、VVVFインバータコンバータ42は、システムコントローラ7へモータとして作動するモータジェネレータ40の回転数、トルク、及び交流電圧値などの信号を送る。モータジェネレータ40の回転数は、該モータジェネレータ40をモータとして作動させるときの回転数であり、前記回転センサにより検出される。つまり、モータジェネレータ40は、エンジン2のクランク軸と常時同期回転する構成としているため、回転数センサでモータジェネレータ40の回転数を検出することにより、エンジン2の回転数を知ることができる。よって、回転数センサは、機関回転数検出手段として機能することとなる。また、モータジェネレータ40の交流電圧は、該モータジェネレータ40をモータとして作動させるときにVVVFインバータコンバータ42から供給される交流電圧である。
また、システムコントローラ7は昇降圧チョッパ44と接続されており、該システムコントローラ7は昇降圧チョッパ44に対し、起動信号、充電開始指示、充電電流(リミッタ)指示などを送り、昇降圧チョッパ44に接続されるバッテリ14を制御する。一方、昇降圧チョッパ44は、システムコントローラ7へバッテリ14の電圧、充放電電流などに関する信号を送る。システムコントローラ7は、前記電圧センサ45によって検出されるバッテリ14の電圧や、充放電電流を検出することによりバッテリ14の状態を知ることができる。
以上のように構成されるハイブリッドシステムは、例えば、図2に示すような動作モードを備えており、各動作モードの動作状態におけるモータジェネレータ40の機能として、スタータ機能(図3参照)、アシスト機能(図4参照)、及び充電(発電)機能(図5参照)を有している。以下、各動作モードについて説明する。
図3には、エンジン2起動(始動)時における電気回路の作動及び駆動力の伝達状態を示している。エンジン2は、バッテリ14からモータジェネレータ40に電力を供給して、該モータジェネレータ40をモータとして機能させることにより始動する。エンジン2を始動する際には、オペレータによる始動キーの操作により図示せぬリレーがオンされ、システムコントローラ7にエンジン始動の指令が入力される。システムコントローラ7は、VVVFインバータコンバータ42及び昇降圧チョッパ44にエンジン2の起動信号を送る。これにより、バッテリ14からの給電電力は、昇圧チョッパとして機能する昇降圧チョッパ44によって昇圧され、インバータとして機能するVVVFインバータコンバータ42によって所要の電圧及び周波数に変換されて、交流電力としてモータジェネレータ40に供給される。このようにして、モータジェネレータ40はモータとして作動する。このモータジェネレータ40の駆動軸は、前述したようにエンジン2のクランク軸と連結されており常時同期回転するため、モータジェネレータ40をモータとして駆動することにより、停止状態のエンジン2を始動させる。
このように、モータとして作動するモータジェネレータ40にスタータ機能を兼ね備え、該モータジェネレータ40をエンジン2の起動時におけるスタータとして利用することにより、別途セルモータ(スタータモータ)等を設ける必要がなくなるので、省スペース化を図ることが可能となり、本ハイブリッドシステムが適用される機体において動力機関の搭載スペースを小さくすることができる。また、製造コストを低減することもできる。さらに、セルモータと比較して、エンジン起動時の騒音の低減、及び迅速な起動が可能となる。
そして、エンジン2の起動終了後は、モータジェネレータ40を発電機として作動させ、常時バッテリ14への充電を行っており、後述する「トルクアシスト要求」が発生した場合にのみ、モータジェネレータ40をモータとして作動させてトルクアシストを行う。
図4には、モータジェネレータ40によるトルクアシスト時における電気回路の作動及び駆動力の伝達状態を示している。なお、「トルクアシスト」とは、モータジェネレータ40をモータとして作動させ、このモータジェネレータ40によってエンジン2の駆動負荷の一部を賄うことを意味する。
トルクアシストを行う際、システムコントローラ7は、VVVFインバータコンバータ42に対して予め決定される速度指令を出力し、昇降圧チョッパ44に対して起動信号を出力する。これにより、バッテリ14が放電状態となり、このバッテリ14からの給電電力は、昇圧チョッパとして機能する昇降圧チョッパ44によって昇圧され、インバータとして機能するVVVFインバータコンバータ42によって所要の電圧及び周波数に変換されて、交流電力としてモータジェネレータ40に供給される。このようにして、モータジェネレータ40が作動する。このトルクアシストを行う場合には、エンジン2に高い負荷がかかった場合や加速を行う場合等で、機関回転数が速度指令よりも低くなるような場合やトルク変動が生じた場合等において、モータジェネレータ40をモータとして駆動させる。この時エンジン2も駆動しており、モータジェネレータ40及びエンジン2の駆動力の和が出力軸部4の駆動力となる。
このように、モータとして機能するモータジェネレータ40によって、トルクアシスト要求に従った適切なトルクアシストを行うことにより、エンジン2の出力が補われるので、エンジン2の小型化を図ることができる。また、このモータジェネレータ40による適切なトルクアシストによって、作業機などの加速性及び駆動性の向上が図れるとともに、燃費の向上、騒音の低減、及び排気色の改善を図ることが可能となる。
図5には、モータジェネレータ40により発電された電力により、バッテリ14の蓄電を行うとき、即ち、モータジェネレータ40を発電機として作動させてバッテリ14を充電するときの電気回路の作動及び駆動力の伝達状態を示している。このとき、エンジン2により出力軸部4及びモータジェネレータ40が駆動される。この状態においては、エンジン2にかかる負荷トルクが、該エンジン2の出力トルクよりも小さくなっており、このエンジン2の余剰トルク分をモータジェネレータ40による発電に用いている。つまり、エンジン2のみによって作業負荷に対応しており、このエンジン2の駆動によってモータジェネレータ40が発電機として作動して発電が行われ、このモータジェネレータ40による発電によってバッテリ14の蓄電が行われている状態である。
発電機としてのモータジェネレータ40によってバッテリ14の蓄電を行う場合には、システムコントローラ7はVVVFインバータコンバータ42と昇降圧チョッパ44に充電開始指示を出力する。モータジェネレータ40による発電電力は、VVVFインバータコンバータ42により整流・平滑化されて直流電力に変換された後、昇降圧チョッパ44により降圧されて、バッテリ14に蓄電される。この際、VVVFインバータコンバータ42はコンバータとして機能する。
また、本ハイブリッドシステムにおいては、このようにモータジェネレータ40を発電機として作動させて行うバッテリ14の蓄電には、該モータジェネレータ40の回生発電による蓄電を含むことを特徴としている。この回生発電が発生する場合としては、例えば、本ハイブリッドシステムを油圧ショベル等の油圧建設機械に適用した場合には、ブーム・アーム・バケット等を有するフロント作業機のブーム下げ時や、このフロント作業機が取付けられる旋回体の旋回動作の制動時などである。
このように、発電機として作動するモータジェネレータ40によるバッテリ14の蓄電に、該モータジェネレータ40による回生発電による蓄電を含むことにより、前述したようなブーム下げ時や旋回体の旋回動作の制動時の慣性エネルギーを回生電力として有効に取り出すことができ、モータジェネレータ40によるバッテリ14の充電効率の向上を図ることができる。
また、同じくモータジェネレータ40が発電機として作動している場合において、モータジェネレータ40に電気負荷がかかってない状態、即ち無電負荷の作動状態がある。この動作モードでは、VVVFインバータコンバータ42及び昇降圧チョッパ44は停止状態となっており、発電機としてのモータジェネレータ40は実質停止状態となり、エンジン2のみが単体で作動している状態となる。つまり、この動作モードにおいては、エンジン2の出力と該エンジン2に対する負荷とが均衡状態となっており、エンジン2のみによって効率の良い動作が行われている。なお、このモータジェネレータ40による発電によってバッテリ14が満充電状態となったときも、インバータ部41とバッテリ14との電位差が小さくなることでバッテリ14からの給電及びバッテリ14への充電は停止状態となり、エンジン2のみが単体で作動している状態となる。
以上の図3から図5を用いて説明した本ハイブリッドシステムの有する機能は、図2に示す動作モードと次のように対応している。図2に示すM1は、図3を用いて説明したモータとして機能するモータジェネレータ40によるスタータ機能が発揮される動作モードである。M2は、図4を用いて説明した同じくモータとして機能するモータジェネレータ40によるアシスト機能が発揮される動作モードである。M3からM5は、図5を用いて説明した発電機として機能するモータジェネレータ40による充電(発電)機能が発揮される動作モードであり、M3は、モータジェネレータ40が無電負荷の作動状態であり、エンジン2のみ単体で作動している動作モード、M4は、モータジェネレータ40による発電を行いつつエンジン2には作業負荷がかかっている状態で、モータジェネレータ40による回生発電が行われた場合は、この回生電力をバッテリ14に蓄電する動作モード、そしてM5は、M4の動作モードにおいてアイドル状態となったときの動作モードである。このアイドル状態においては、作業負荷はかかっておらず、モータジェネレータ40によるバッテリ14の充電のみが行われる。
以上の説明のような、各モードにおいて好適に作動するハイブリッドシステムを作業機などに適用することにより、前述した各作動時における効果に加え、一連の作動においてエンジン2にかかる負荷を一定にすることができ、負荷率の向上(後述する負荷平準化)を図ることができる。これにより、最大負荷時の出力を見込んで搭載されるエンジンの小型化を図ることができる。また、低速域におけるエンジンの特性として、機関回転数が低いほどトルクが小さく不安定であること等があるが、モータジェネレータ40によるトルクアシストによって、この低速域におけるトルクの向上を図ることができる。これにより、燃費の向上や排気色の改善などの機関性能の向上を図ることができ、また、作業機として低速かつ正確な動作が要求される軽負荷の作業時での操作性を向上及び騒音の低減を図ることができる。
また、このような構成のハイブリッドシステムを小型の作業機などに適用する場合は、バッテリ14に出入力される電圧を昇降圧する昇降圧チョッパ44を使用しない構成とすることもできる。つまり、小型の作業機などのように、モータとして作動するモータジェネレータ40の出力が比較的小さくてもその作動に影響がないような場合、モータジェネレータ40のモータ機能を発揮するためには高い電圧は必要なく、昇降圧チョッパ44を使用せずとも本ハイブリッドシステムによる効果を得ることができる。この場合、バッテリ14はVVVFインバータコンバータ42に直接接続され、バッテリ14のバッテリ容量はモータとして作動するモータジェネレータ40のモータ出力に対応したものとなる。
このように、本ハイブリッドシステムを昇降圧チョッパ44を使用しない構成とすることにより、小型の作業機などにおいても、本ハイブリッドシステムによる効率の良い運転が可能となり、ランニングコストの低減効果を得ることが可能となる。
続いて、モータ及び発電機として作動するモータジェネレータ40の制御方法について図6及び図7を用いて説明する。本ハイブリッドシステムにおけるモータジェネレータ40の制御は、システムコントローラ7からの速度指令に基づき、VVVFインバータコンバータ42によって行われるものであり、図6に示すような、VVVFインバータコンバータ42からモータジェネレータ40に対して出力するトルク指令(電流指令)を制御する基本的な制御としての速度制御、及び前記トルク指令の自動補正を行う電圧制御が連動して行われる。また、このモータジェネレータ40の制御においては、昇降圧チョッパ44によるバッテリ14への充電・放電電流に対する制御が連動して行われる。つまり、図7に示すような、昇降圧チョッパ44が電圧指令に基づき充電電流指令を制御する直流電圧制御、及び前記充電電流指令の自動補正を行う充電電流制御が、前記速度制御及び電圧制御と連動して行われる。
前記速度制御では、モータジェネレータ40をモータとして作動させる場合と発電機として作動させる場合との判断・制御を行っており、この判断・制御を行う際の基準として、エンジン2の負荷に基づいて決定される速度指令を用い、エンジン2の実回転数と速度指令としての機関回転数とを比較することによって行っている。つまり、この速度制御は、VVVFインバータコンバータ42にて、エンジン2の回転数を検出する前記回転センサよって検出されるエンジン2の実回転数と、エンジン2の負荷に基づいて算出され、システムコントローラ7からVVVFインバータコンバータ42に入力される速度指令としての機関回転数とを比較し、エンジン2の実回転数が、速度指令よりも小さい(閾値を越えて設定回転数よりも低い)場合は、VVVFインバータコンバータ42からモータジェネレータ40に対するトルク指令を増加させ、該モータジェネレータ40をモータとして作動さる。逆に、エンジン2の実回転数が、速度指令よりも大きい場合は、VVVFインバータコンバータ42からモータジェネレータ40に対するトルク指令を減少させ、該モータジェネレータ40を発電機として作動させるように制御することを特徴としている。なお、前述の「トルクアシスト要求」とは、VVVFインバータコンバータ42によってモータジェネレータ40によるトルクアシストが必要と判断された場合に、該VVVFインバータコンバータ42からモータジェネレータ40へ送られる信号であり、この速度制御でのトルク指令を増加させる信号が相当する。そして、エンジン2の実回転数が速度指令よりも小さい場合が、「トルクアシスト要求」が発生した場合に相当する。
言い換えると、この速度制御では、速度指令>実回転数のときは、トルクアシスト要求が発生してモータジェネレータ40へのトルク指令を増加し、モータジェネレータ40に対して正のトルクを加え、該モータジェネレータ40をモータとして作動させ、一方、速度指令<実回転数のときは、モータジェネレータ40へのトルク指令を減少し、モータジェネレータ40に対して負のトルクを加え、該モータジェネレータ40を発電機として作動させるように制御する。
前記速度指令は、図1に示すように、システムコントローラ7からシーケンサ43を介してVVVFインバータコンバータ42へと入力される。そして、VVVFインバータコンバータ42は、この速度指令に基づき、後述する制御方法によってモータジェネレータ40に対するトルク指令を出力する。なお、速度指令の決定方法については、後に詳細に説明する。
以下、速度制御について図6に示す制御ブロック図に従って説明する。速度制御においては、まず、速度指令(速度指令値Nvとする)と、エンジン2の実回転数Nrとが演算部30にて比較され、比較結果として偏差Nv−Nrが求められる。そして、この偏差Nv−NrがPI制御部31に入力される。PI制御部31は、偏差Nv−Nrに基づいて、PI(比例積分)制御演算を行うPI制御器31aと、このPI制御器31aからの出力信号を一定範囲内に制限するリミッタ31bとを備えている。このPI制御部31により、演算部30にて求められた偏差Nv−Nrが、PI制御器31aによって演算されて出力され、この出力がリミッタ31bを通り上下限値を制限されて、PI制御値Npiとして生成される。
一方、エンジン2の実回転数Nrは、前記演算部30での速度指令値Nvに対する比較対象となるとともに、VVVFインバータコンバータ42のROM等に格納されているトルクマップ32によって制限を受ける。トルクマップ32とは、エンジンの馬力などを考慮し、予め測定した結果に基づいて作成された、機関回転数と出力トルクとの関係を、スロットル開度に応じたエンジントルク特性としてマップで表すものであり、このトルクマップ32によって実回転数Nrは、エンジン2の回転数に応じた限度値の範囲内に制限され、回転数Ntmとして出力される。
そして、前記PI制御値Npiと回転数Ntmとが比較部36において比較されて、値の小さい方が選択され、トルクリミッタ33によって、入力される値が予め設定された出力トルクの範囲内に属するか否かが判定され、属する場合にはその入力値が採用され、属しない場合には入力値に代えて上限値(上回る場合)、または下限値(下回る場合)が採用される。そして、このPI制御値Npiと回転数Ntmとの比較において選択された小さい値の方が、負(−)の値である場合、即ちエンジン2の実回転数が速度指令より大きい場合は、前述の速度指令と実回転数の大小関係とモータジェネレータ40の作動との対応から、モータジェネレータ40は必ず発電機として作動することとなる。このようにして、トルクリミッタ33を通って出力された出力値Nsが、モータジェネレータ40に対するトルク指令出力となり、この出力値Nsが正(+)の値であるときは、モータジェネレータ40はモータとして作動し、負(−)の値であるときは、モータジェネレータ40は発電機として作動する。この出力値Nsは、後述する電圧制御による補正がなされた後、最終的なモータジェネレータ40へのトルク指令出力となる。
このように、エンジン2の実回転数と、モータジェネレータ40への速度指令とを比較することにより、モータジェネレータ40をモータとして作動させるかまたは発電機として作動させるかを制御するので、インバータ部41の各装置に対して別々の制御を行う必要がなく、システムコントローラ7からVVVFインバータコンバータ42に入力される速度指令のみを制御することにより、モータジェネレータ40の作動の切り換え制御を容易に行うことが可能となる。また、本制御は、エンジン2にかかる負荷に応じて算出される速度指令に従うので、モータジェネレータ40による適切なトルクアシスト及び発電が可能となり、エンジンの負荷平準化が図れるので、エンジンの小型化や燃費の向上を図ることができる。
このような速度制御において、VVVFインバータコンバータ42と昇降圧チョッパ44との間の直流電圧を一定範囲内にするため、速度制御によって出力されるトルク指令の自動補正が行われる。すなわち、本制御方法においては、VVVFインバータコンバータ42のインバータ直流電圧を用いて電圧制御を行い、前記トルク指令の補正を行うことを特徴としている。
次に、この電圧制御について、同じく図6に示す制御ブロック図に従って説明する。電圧制御においては、まず、インバータ部41の各部の耐電圧などを考慮して決められる設定電圧Vaに対応して設定され、VVVFインバータコンバータ42のROM等に記憶される設定値Xa(例えば、設定電圧Va=320Vに対して設定値Xa=3200)と、実際に電圧センサ45によって検出されるVVVFインバータコンバータ42と昇降圧チョッパ44間のインバータ直流電圧Vdcに対応する値Xdc(例えば、インバータ直流電圧Vdcを10倍した値)とが演算部34にて比較され、比較結果として偏差Xa−Xdcが求められる。そして、この偏差Xa−XdcがPI制御部35に入力される。PI制御部35は、偏差Xa−Xdcに基づいて、PI(比例積分)制御演算を行うPI制御器35aと、このPI制御器35aからの出力信号を一定範囲内に制限するリミッタ35bとを備えている。このPI制御部35により、演算部34にて求められた偏差Xa−Xdcが、PI制御器35aによって演算され出力され、この出力がリミッタ35bを通り上下限値を制限されて、PI制御値Xpiとして生成される。
一方、このように生成されたPI制御値Xpiの比較対象として、インバータ部41の各部の耐電圧などに基づいた電圧Vmに対応する電圧設定値Xm(例えば、電圧Vm=600Vに対して電圧設定値Xm=6000)が予め設定されている。そして、この電圧設定値Xmと前記PI制御値Xpiとを比較部37にて比較し、値の小さい方が選択され、正負が反転されて補正値Xcとして出力される。つまり、電圧設定値Xmは、実質的に、PI制御部35から出力されるPI制御値Xpiの上限値を制限するリミッタとしての役割を果たすように設定される。
速度制御により出力されるトルク指令の補正を行うこの電圧制御では、VVVFインバータコンバータ42のインバータ直流電圧Vdcが設定電圧Vaよりも高ければ、モータジェネレータ40へのトルク指令を増加させ、モータジェネレータ40による発電を抑制し、逆に、インバータ直流電圧Vdcが設定電圧Vaよりも低ければ、モータジェネレータ40へのトルク指令を減少させ、モータジェネレータ40による発電を促すように制御される。
このようにして電圧制御において生成される補正値Xcと、前述の速度制御において生成される出力値Nsとが比較部38にて比較されて、値の大きい方が選択され、この値が最終的なモータジェネレータ40へのトルク指令出力となる。そして、モータジェネレータ40に対して必要なトルクを発生させるために、VVVFインバータコンバータ42にて出力電流の大きさや周波数、位相などを制御するベクトル制御が行われる。このように、電圧制御によって補正されながら出力されるトルク指令により、モータジェネレータ40の作動が制御される。
この電圧制御によるトルク指令の補正の態様を、モータジェネレータ40の作動状況に応じて説明する。まず、モータジェネレータ40が発電機として作動している場合について説明する。この場合、前述の速度制御により、速度指令とエンジン2の実回転数とは、速度指令<実回転数の条件を満たす。この条件成立後の発電時においては、バッテリ14を充電する電流がVVVFインバータコンバータ42からバッテリ14側へと流れ、VVVFインバータコンバータ42のインバータ直流電圧Vdcは、前記設定電圧Vaよりも高くなる。すなわち、インバータ直流電圧Vdc>設定電圧Vaとなる。この条件の場合、前記電圧制御による補正により、モータジェネレータ40へのトルク指令を増加しようとする。これを図6に示したブロック図に対応させると、モータジェネレータ40が発電機として作動している場合、速度制御による出力値Nsは、負(−)の値となり、電圧制御による補正値Xcは、正(+)の値となる。つまり、トルク指令出力としては、補正値Xcが選択され、トルク指令が増加されることとなるので、モータジェネレータ40へは正のトルクが加えられる。この結果、モータジェネレータ40による発電出力が抑制され、インバータ直流電圧Vdcも減少して行く。
このように、減少して行くインバータ直流電圧Vdcは、設定電圧Vaに落ち着いて行くこととなる。すなわち、Vdc=Vaの関係を保とうとするのである。つまり、インバータ直流電圧Vdcが設定電圧Vaよりも高い場合は、前述のように減少され、インバータ直流電圧Vdcが設定電圧Vaより低くなると、電圧制御による補正値Xcが負(−)の値となり、トルク指令が減少され、モータジェネレータ40による発電が促される。この発電により、電圧制御による補正値Xcが小さくなって行っても、トルク指令出力としては速度制御による出力値Nsが選択されることとなり、発電は継続される。そしてまた、モータジェネレータ40による発電によってインバータ直流電圧Vdcが設定電圧Vaよりも高くなると、電圧制御によってモータジェネレータ40による発電出力が抑制される。このように電圧制御を行うことによって、インバータ直流電圧Vdcが、設定電圧Vaへと収束されるように、トルク指令の自動補正が行われるのである。
次に、モータジェネレータ40がモータとして作動している場合について説明する。この場合、前述の速度制御により、速度指令とエンジン2の実回転数とは、速度指令>実回転数の条件を満たす。この条件成立後のトルクアシスト時においては、バッテリ14から給電される電流がバッテリ14からVVVFインバータコンバータ42側へと流れ、VVVFインバータコンバータ42のインバータ直流電圧Vdcは、前記設定電圧Vaよりも低くなる。すなわち、インバータ直流電圧Vdc<設定電圧Vaとなる。この条件の場合、前記電圧制御による補正により、モータジェネレータ40へのトルク指令を減少しようとする。これを図6に示したブロック図に対応させると、モータジェネレータ40がモータとして作動している場合、速度制御による出力値Nsは、正(+)の値となり、電圧制御による補正値Xcは、モータジェネレータ40による発電は行われていないため、常に負(−)の値となる。つまり、トルク指令出力としては、出力値Nsが選択され、トルク指令が減少されることとなるので、モータジェネレータ40へは負のトルクが加えられる。この結果、モータジェネレータ40によるモータ出力が抑制されていき、インバータ直流電圧Vdcも減少して行く。そして、インバータ直流電圧Vdcは、後述する直流電圧制御によって、昇降圧チョッパ44における設定電圧Vbに落ち着いて行く。
このように、VVVFインバータコンバータ42のインバータ直流電圧Vdcを用いて電圧制御を行い、速度制御により出力されるトルク指令の自動補正を行うことによって、モータジェネレータ40をモータとして作動させるかまたは発電機として作動させるかの切り換えを制御するとともに、該モータジェネレータ40に対するトルク指令の増減の制御を自動的に行うことができるので、モータジェネレータ40のモータまたは発電機としての作動状況に応じて適切な制御を行うことが可能となる。また、VVVFインバータコンバータ42のインバータ直流電圧が許容範囲を超えることを防止することができる。
以上説明した、速度制御及び電圧制御に連動して、昇降圧チョッパ44によるバッテリ14への充電・放電電流に対する制御が行われている。つまり、昇降圧チョッパ44が電圧指令に基づき充電電流指令を制御する直流電圧制御、及び前記充電電流指令の自動補正を行う充電電流制御が、前記速度制御及び電圧制御と連動して行われる。
前記直流電圧制御においては、昇降圧チョッパ44が充電電流指令によってバッテリ14への充電電流の制御を行っており、この制御を行う際の基準として、昇降圧チョッパ44に対する電圧指令による電圧指令値としての設定電圧Vbと、インバータ直流電圧Vdcとを比較することによって行われる。なお、ここでの設定電圧Vbは、前述の電圧制御における設定電圧Vaよりも若干低く設定される。つまり、この直流電圧制御は、インバータ直流電圧Vdcが、昇降圧チョッパ44に対する電圧指令値である設定電圧Vbよりも低い場合は、昇降圧チョッパ44は、充電電流指令値を減少して、バッテリ14への充電量を減少し、またはバッテリ14を放電させ、逆に、インバータ直流電圧Vdcが、昇降圧チョッパ44に対する電圧指令値である設定電圧Vbよりも高い場合は、昇降圧チョッパ44は、充電電流指令値を増加し、バッテリ14への充電量を増加することを特徴としている。
言い換えると、この直流電圧制御では、インバータ直流電圧Vdc>設定電圧Vbのときは、バッテリ14を充電させ、インバータ直流電圧Vdc<設定電圧Vbのときは、バッテリ14を放電させるように制御する。
以下、直流電圧制御について図7に示す制御ブロック図に従って説明する。直流電圧制御においては、まず、昇降圧チョッパ44に対する電圧指令による設定電圧Vbに基づいて予め設定され、昇降圧チョッパ44のROM等に記憶される設定値Yb(例えば、設定電圧Vb=300に対して設定値1500)と、インバータ直流電圧Vdcに対応する値Xdc(前述の電圧制御と同様の値)とが演算部51にて比較され、比較結果として偏差Yb−Xdcが求められる。この比較の前段階において、設定値Ybとインバータ直流電圧Vdcに対応する値Xdcとの均衡を図るため、設定値Yb及び値Xdcは、各乗算部50及び52において、予め設定された定数C1及びC2がそれぞれ乗算される。
そして、前記偏差Yb−XdcがPI制御部53に入力される。PI制御部53は、偏差Yb−Xdcに基づいて、PI(比例積分)制御演算を行うPI制御器53aと、このPI制御器53aからの出力信号を一定範囲内に制限するリミッタ53bとを備えている。このPI制御部53により、演算部51にて求められた偏差Yb−Xdcが、PI制御器53aによって演算されて出力され、この出力がリミッタ53bを通り上下限値を制限されて、PI制御値Ypi(以下、充電電流指令値Ypi)として生成される。この充電電流指令値Ypiは、バッテリ14の充電時においては、インバータ直流電圧Vdcが設定電圧Vbよりも高くなるため、負(−)の値となる。
このようにして出力された充電電流指令値Ypiは、演算部54にて、後述する補正値が加えられ、充電電流リミッタ55によって入力される値が予め設定された充電電流値の範囲内に属するか否かが判定され、属する場合にはその入力値が採用され、属しない場合には入力値に代えて上限値(上回る場合)、または下限値(下回る場合)が採用される。そして、正負が反転されて、出力値Ysとして出力される。この出力値Ysが昇降圧チョッパ44における充電電流指令の指令値となり、出力値Ysが正(+)の値であるときは、インバータ直流電圧Vdcが設定電圧Vbよりも高いということで、昇降圧チョッパ44は充電電流指令値を増加してバッテリ14の充電量を増加し、負(−)の値であるときは、インバータ直流電圧Vdcが設定電圧Vbよりも低いということで、昇降圧チョッパ44は充電電流指令値を減少してバッテリ14への充電量を減少(放電)するように制御する。
ここで、前述した、速度制御に対する電圧制御による補正において、モータジェネレータ40がモータとして作動している場合について、「インバータ直流電圧Vdcは、後述する直流電圧制御によって、昇降圧チョッパ44における設定電圧Vbに落ち着いて行く」との記載があるが、これはつまり、モータジェネレータ40がモータとして作動しているときは、バッテリ14は放電時であり、インバータ直流電圧Vdcは設定電圧Vbよりも低くなっている。そのため、昇降圧チョッパ44は充電電流指令値を減少してバッテリ14から放電し、これによってインバータ直流電圧Vdcは設定電圧Vbまで上昇していく。このときモータジェネレータ40は発電していないため、バッテリ14の充電は行われず、インバータ直流電圧Vdcは設定電圧Vbより高くなることはない。このようにしてインバータ直流電圧Vdcは設定電圧Vbに落ち着くのである。
このように、昇降圧チョッパ44に対する電圧指令による設定電圧Vbとインバータ直流電圧Vdcとを比較することにより、バッテリ14への充電量を増加させるか減少させるかを制御するので、インバータ直流電圧Vdcに応じて、バッテリ14の充電量を制御することが可能となり、モータジェネレータ40が発電機として作動するときの、バッテリ14の適切な充電・放電を行うことができる。また、このバッテリ14の充電量の制御は、モータジェネレータ40の作動制御と連動して行われるので、前述の速度指令のみを制御することによる容易な制御が可能となる。
このような直流電圧制御において、バッテリ14への充電量を一定範囲内にし、バッテリ14の過充電・過放電を防止するため、前述の直流電圧制御によって出力される充電電流指令の自動補正が行われる。すなわち、本制御方法においては、バッテリ14の実際のバッテリ電圧を用いて充電電流制御を行い、前記充電電流指令の補正を行うことを特徴としている。
次に、この充電電流制御について同じく図7に示す制御ブロック図に従って説明する。充電電流制御においては、まず、バッテリ14のバッテリ電圧Vbatと、バッテリ14の容量などを考慮して予め設定されるバッテリ電圧の設定電圧Vcとが、演算部57にて比較され、比較結果として偏差Vbat−Vcが求められる。この比較の前段階において、バッテリ電圧Vbatと設定電圧Vcとの均衡を図るため、バッテリ電圧Vbatは、乗算部56において、予め設定された定数C3が乗算される。
そして、前記偏差Vbat−VcがP制御部58に入力される。P制御部58は、偏差Vbat−Vcに基づいて、P(比例)制御演算を行うP制御器58aと、このP制御器58aからの出力信号を一定範囲内に制限するリミッタ58bとを備えている。このP制御部58により、演算部57にて求められた偏差Vbat−Vcが、P制御器58aによって演算され出力され、この出力がリミッタ58bを通り上下限値を制限されて、P制御値Vpとして生成される。このP制御値Vp(以下、補正値Vp)が、前述の充電電流指令値Ypiに対する補正値となる。
直流電圧制御により出力される充電電流指令の補正を行うこの充電電流制御では、バッテリ電圧Vbatが設定電圧Vcより低ければ、充電方向の電流を増加させ、放電電流を抑制して過放電を防止する。また、バッテリ電圧Vbatが設定電圧Vcより高ければ、放電方向の電流を増加させ、充電電流を抑制して過充電を防止する。
このようにして出力される補正値Vpは、演算部54にて直流電圧制御による出力である充電電流指令値Ypiに加算され、この演算結果としての加算値Ypi+Vpが、充電電流リミッタ55を通り上下限値を制限されて、正負が反転され、この値が最終的な昇降圧チョッパ44による充電電流指令の出力となる。
このような充電電流制御による充電電流指令の補正の態様を、モータジェネレータ40の作動状況に応じて説明する。まず、モータジェネレータ40が発電機として作動している場合について、図7に示したブロック図に対応させて説明する。この場合、バッテリ14の充電が行われているので、インバータ直流電圧Vdc>設定電圧Vbとなり、直流電圧制御による出力である充電電流指令値Ypiは負(−)の値となる。この場合において、バッテリ電圧Vbatが設定電圧Vcよりも高くなると、充電電流制御から出力される補正値Vpは、正(+)の値となる。この正(+)の値である補正値Vpが、負(−)の値である充電電流指令値Ypiに演算部54にて加算されるので、最終的な出力値Ysは小さくなり、充電電流指令値は減少し、充電電流が抑制されてバッテリ14の過充電が防止される。なお、この場合、インバータ直流電圧Vdcが高くなったとしても、前述の電圧制御によって、インバータ直流電圧Vdcが設定電圧Vaよりも高くなると、モータジェネレータ40へのトルク指令が増加されて、モータジェネレータ40による発電が抑えられるので、インバータ直流電圧Vdcが高くなり過ぎるのを防止できる。
次に、モータジェネレータ40がモータとして作動している場合について説明する。この場合、バッテリ14からの給電が行われているので、インバータ直流電圧Vdc<設定電圧Vbとなり、直流電圧制御による出力である充電電流指令値Ypiは正(+)の値となる。この場合において、バッテリ電圧Vbatが設定電圧Vcよりも低くなると、充電電流制御から出力される補正値Vpは、負(−)の値となる。この負(−)の値である補正値Vpが、正(+)の値である充電電流指令値Ypiに演算部54にて加算されるので、最終的な出力値Ysは大きくなり、充電電流指令値は増加し、給電電流が抑制されてバッテリ14の過放電が防止される。
このように、バッテリ電圧Vbatを用いて充電電流制御を行い、直流電流制御により出力される充電電流指令の自動補正を行うことによって、バッテリ14への充電量を増加させるか減少させるかを制御するとともに、バッテリ14の過充電・過放電を自動的に防止することができる。
以上のインバータ部41にて行われる各制御、すなわち、VVVFインバータコンバータ42によって行われる速度制御と電圧制御、及びこれらに連動して昇降圧チョッパ44によって行われる直流電圧制御と充電電流制御は、モータジェネレータ40の作動を制御するとともに、インバータ部41各部の電圧及びバッテリ14の充電状況を制御するものであり、これら連動して行われる一連の制御は、インバータ部41外部からの信号としては、システムコントローラ7から入力される速度指令のみによって行われる。
次に、前述の速度指令の決定方法について説明する。速度指令は、前記システムコントローラ7において算出され決定されるものであり、該システムコントローラ7からシーケンサ43を介してVVVFインバータコンバータ42に送信され、該VVVFインバータコンバータ42において、前記回転センサによって検出されるエンジン2の実回転数の比較対象となるものである。つまり、前述のように、VVVFインバータコンバータ42において速度指令とエンジン2の実回転数とを比較し、この比較結果によってモータジェネレータ40をモータとして作動させるかまたは発電機として作動させるかを制御する。
速度指令とは、操作レバー9のレバー位置から要求される燃料噴射量が一定の状態、即ち操作レバー9による指示回転数が一定状態での、ある時間におけるエンジン2の負荷に対する平均出力時の機関回転数に対応する指令のことである。以下、この速度指令の決定方法の具体例について、図8を用いて説明する。
本ハイブリッドシステムにおける速度指令は、システムコントローラ7により、操作レバー9による指示回転数が一定状態で、作業1サイクル時間(単位時間U(例えば、15秒))中にエンジン2にかかる作業負荷を実負荷パターンPrとし、この実負荷パターンPrに基づいて模擬負荷パターンPsを算出し、この模擬負荷パターンPsより、前記単位時間U内での作業負荷に対するエンジン2の平均出力A(kW)を算出し、この平均出力A出力時の機関回転数Naを求め、この機関回転数Naに基づいて決定される。
図8に示すように、実負荷パターンPrとは、操作レバー9による指示回転数が一定状態で、ある内容の作業(例えば、建設機械の場合の掘削積込み等)を行った際に、エンジン2にかかる作業負荷の実際の測定値を、単位時間Uごとに1サイクルとしてパターン化したものである。この操作レバー9による指示回転数が一定状態においては、エンジン2にかかる負荷によって機関回転数は変化することとなる。つまり、エンジン2にかかる作業負荷が高いときは、エンジン2の出力が高くなるとともに機関回転数が低くなり、逆に、作業負荷が低いときは、エンジン2の出力が低くなるとともに機関回転数が高くなる。
また、模擬負荷パターンPsとは、実負荷パターンPrに基づいて算出されるものであり、この実負荷パターンPrを予め決められた近似方法によって近似したものである。以下、模擬負荷パターンPsの算出方法の一例について説明する。
まず、前述の実負荷パターンPrに基づいて、エンジン2に一定値以上高い作業負荷がかかったときの出力値の近似値としての高負荷時出力値H、前記一定値より低い作業負荷がかかったときの出力値の近似値としての低負荷時出力値L、及び作業停止時での出力値の近似値としての停止時出力値Sをそれぞれ決める。ここで、停止時出力値Sのときのエンジン2の回転数が、操作レバー9による指示回転数と略同じとなる。そして、実負荷パターンPrにおける各時間の出力値を、作業負荷がかかっている状態(作業時)は高負荷時出力値Hまたは低負荷時出力値Lのいずれかに対応させ、作業負荷がかかってない状態(作業停止時)は停止時出力値Sに対応させて実負荷パターンPrを近似し、模擬負荷パターンPsを求める。つまり、実負荷パターンPrを前記各状態における出力値(高負荷時出力値H、低負荷時出力値L、及び停止時出力値S)の連続となるように近似し、この実負荷パターンPrに対応する出力値の連続を模擬負荷パターンPsとする。
次に、前述のようにして算出される模擬負荷パターンPsから、作業負荷に対するエンジン2の平均出力Aを算出する。平均出力Aは、模擬負荷パターンPsにおける出力を積分して時間平均をとったものとなる。言い換えると、模擬負荷パターンPsにおいて、単位時間Uは、高負荷時出力値Hである時間の合計T1、低負荷時出力値Lである時間の合計T2、停止時出力値Sである時間の合計T3として各出力値に対応して三つの時間に分けられ(U=T1+T2+T3)、それぞれの出力値と時間との積の合計の、単位時間Uにおける平均値が平均出力Aとなる。そして、この操作レバー9による指示回転数が一定状態での平均出力A出力時における機関回転数Naが速度指令値とされる。つまり、速度指令とは、模擬負荷パターンPsにおける平均出力時の機関回転数に基づく指令であり、速度指令値が前述のVVVFインバータコンバータ42で行われる速度制御におけるエンジン2の実回転数Nrの比較対象となる(図6参照)。
このようにして速度指令が決定され、エンジン2の駆動力を調節する操作レバー9のレバー位置は、エンジン2の作業負荷に対する出力が平均出力Aの時に機関回転数Naとなる位置に決定される。この平均出力Aと模擬負荷パターンPsとの関係に対応するモータジェネレータ40の作動について、図9を用いて説明する。模擬負荷パターンPsにおいて、エンジン2の出力が高負荷時出力値Hの場合、つまり、エンジン2に対する作業負荷が、エンジン2の平均出力A出力時の作業負荷よりも高く、エンジン2の回転数が低くなる場合、この平均出力Aを超える分の出力を、モータジェネレータ40をモータとして作動させトルクアシストを行うことによって補う。逆に、エンジン2の出力が低負荷時出力値L及び停止時出力値Sの場合、つまり、エンジン2に対する作業負荷が、エンジン2の平均出力A出力時の作業負荷よりも低く、エンジン2の回転数が高くなる場合、実際の出力値から平均出力Aまでの余剰出力分により、モータジェネレータ40を発電機として作動させ発電(充電)を行う。
このようなモータジェネレータ40の作動を機関回転数に対応させて説明すると、速度指令として決定された機関回転数Na(以下、速度指令値Na)を基準として、作業負荷が高くエンジン2の実回転数が速度指令値Naよりも低いときは、モータジェネレータ40をモータとして作動させトルクアシストを行うことによって補う。逆に、作業負荷が低くエンジン2の実回転数が速度指令値Naよりも高いときは、モータジェネレータ40を発電機として作動させ発電(充電)を行う。このように、速度指令として決定された速度指令値Naを基準として、エンジン2の回転数に応じてモータジェネレータ40の作動を制御する構成としている。
そして、図9に示すグラフにおいて、平均出力Aを基準として、この平均出力Aよりもエンジン2の出力が高い状態、即ち高負荷時出力値H側を正(+)の値とし、平均出力Aよりもエンジン2の出力が低い状態、即ち低負荷時出力値L側を負(−)の値とすると、単位時間Uにおける出力値の積分値はゼロとなる。つまり、エンジン2の出力を一定の平均出力Aにすることによって、モータジェネレータ40のモータとして作動した分の出力は、該モータジェネレータ40が発電機として作動した際にバッテリ14に蓄電される電力によって補われることとなり、モータジェネレータ40のエネルギー収支がゼロになる。
以上のように、エンジン2に実際にかかる実負荷パターンPrから模擬負荷パターンPsを算出し、この模擬負荷パターンPsに基づく平均出力A出力時の機関回転数を速度指令値Naとする方法によって速度指令を決定することにより、実際にエンジン2にかかる作業負荷に応じた機関回転数の目標値である速度指令を自動的に算出することができる。これにより、モータジェネレータ40によるトルクアシスト及び発電が、作業状態などに応じた適切なものとなる。また、速度指令として決定される速度指令値Naを基準として、モータジェネレータ40によるトルクアシスト及び発電を行うことによって、エンジン2は、平準化された一定の出力(平均出力A)を行うこととなり、エンジン2の負荷率の向上、即ち、負荷平準化を図ることができる。このエンジン2の負荷平準化を図ることにより、従来、要求されていた最大負荷時の出力(高負荷時出力値H)を見込んで搭載されるエンジンの小型化を図ることができる。
また、前述の速度指令は、ある単位時間Uにおける実負荷パターンPrに基づいて決定されるが、この単位時間Uが経過するごとに各単位時間Uのエンジン2の平均出力Aを算出し、それまでの単位時間Uごとの平均出力Aをさらに平均していくように制御することもできる。すなわち、この場合の負荷分担制御方法においては、単位時間U内でのエンジン2の平均出力Aを順次繰り返して計測し、その都度移動平均をとっていき、作業時の最終的な平均出力を算出することで、速度指令値を収束させていくのである。
具体的には、ある単位時間U1における実負荷パターンPr1から、模擬負荷パターンPs1を算出する。この模擬負荷パターンPs1から平均出力A1を算出する。そして、この平均出力A1出力時の機関回転数を単位時間U1経過時の速度指令値Na1とする。次に、単位時間U1経過後の次の単位時間U2においても同様にして、平均出力A2を算出する。そして、単位時間U2経過時において、前記平均出力A1と平均出力A2の平均値を算出する。この各平均出力A1及びA2の平均値が、単位時間U2経過時の平均出力となる。そして、この平均出力時の機関回転数を単位時間U2経過時の速度指令値とする。以下、エンジン2作動中は、同様にして単位時間経過ごとにそれまでの各平均出力を順次算出し、この平均出力時の機関回転数を各単位時間経過時における速度指令値としていき、速度指令値を収束させていく。
このように、単位時間ごとのエンジン2の平均出力を順次計測し、各単位時間経過時にそれまでの各平均出力の平均値を算出することによって速度指令値を収束させていくことにより、速度指令を作業負荷に応じて経時的に変化させることができる。これにより、速度指令の作業負荷に対する追従性を向上することができ、モータジェネレータ40によるアシスト及び発電をより適切なものとすることが可能となる。
続いて、エンジン2にかかる作業負荷に応じた機関回転制御方法について説明する。この機関回転制御方法においては、エンジン2にかかる負荷に基づき、システムコントローラ7で算出される速度指令値と、エンジン2の実回転数とを比較し、この比較結果からモータジェネレータ40によるトルクアシスト及び発電の制御を行い、エンジン2の負荷平準化を図ろうとするものである。すなわち、機関回転制御方法は、本ハイブリッドシステムにおいて、システムコントローラ7により、操作レバー9による指示回転数が一定状態での作業負荷に対する平均出力を算出し、前記回転センサによって検出されるエンジン2の実回転数が、前記平均出力時の機関回転数(速度指令値)よりも下がった場合は、VVVFインバータコンバータ42からモータジェネレータ40に対するトルク指令を増加させ、該モータジェネレータ40によってトルクアシストを行い、逆に、エンジン2の実回転数が、前記平均出力時の機関回転数よりも上がった場合は、VVVFインバータコンバータ42からモータジェネレータ40に対するトルク指令を減少させ、モータジェネレータ40によって発電される電力をバッテリ14に蓄電するように制御することを特徴としている。
図10において、横軸はエンジン2及びモータジェネレータ40の回転数であり、左側縦軸はブレーキ・ミーン・プレッシャー(Brake Mean Pressure:正味平均有効圧力)をトルクに換算したものである。また、右側縦軸をエンジン2の馬力(出力)としている。機関最大トルク曲線TPeは、排ガス規制などから許容される範囲での、エンジン2の回転数と最大のトルク(駆動力)との関係を示すものである。等馬力線は、各馬力E1・E2・・・に対して、エンジンの回転数とトルクのグラフ上で機関回転数とトルクとの積から求められる馬力(出力)の等しくなる点の連続からなる曲線であり、エンジンの特性を示すものである。この馬力(出力)は、作業機などにおいて備えられる、エンジンによって駆動され各種アクチュエータへ圧油を供給する可変容量形油圧ポンプ等のポンプ負荷(作業負荷)から求められる。つまり、ある回転数でエンジンが駆動している場合の、一定馬力(出力)を出すために必要なトルクを示している。
ドループ特性線D1・D2は、図11(b)に示すように、エンジン2があるアイドル回転数で負荷がかかった際の機関回転数と、燃費等を考慮して決定される前記スロットルアクチュエータ22を構成するラックピニオン式のDCモータのラックギアのラック位置との関係をプロットしたものである。この図に示すように、エンジン2に負荷がかかった際に燃料噴射量は増えるが、機関回転数は減少する制御をドループ制御といい、このドループ制御の特性を示すドループ特性線は、操作レバー9を燃料噴射量が増加する方向に操作することによって、機関回転数が増加する方向に移動する(D1→D2)。
エンジン2には、該エンジン2にかかる負荷が変化した場合、エンジン2の回転数が変わるため、エンジン2が操作レバー9の操作による指示回転数になるように自動的に燃料噴射ポンプの燃料噴射量を調節して、機関回転数を一定に保つための調速装置としてのメカニカルガバナ(図示略)がエンジン2に備えられている。このメカニカルガバナは、エンジン2の回転と連動して回転するガバナウエイトとガバナスプリングとガバナレバーとを備え、エンジン2が回転するときにガバナウエイトに生じる遠心力とガバナスプリングの弾性力とのつり合いによって燃料の噴射量を調節する構造となっている。このメカニカルガバナにおいては、エンジン2の回転数が高くなるとガバナウエイトにはたらく遠心力は大きくなり、ガバナスプリングが圧縮されるとともにガバナレバーが噴射量を減らす方向に作動され、逆に、エンジン2の回転数が低くなるとガバナウエイトにはたらく遠心力は小さくなり、ガバナスプリングの弾性力によってガバナレバーが噴射量を増やす方向に作動される構成となっており、このような構成によってエンジン2の回転数は一定に保たれる。このため、メカニカルガバナを備えたエンジン2のドループ特性線は、図11(b)に示すように略直線になるのである。
図11(b)において、横軸は機関回転数であり、縦軸はコントロールラックのラック位置である。Raは無負荷ラック位置であり、エンジン2に負荷がかかってない状態でのラック位置、即ちエンジン2が操作レバー9により要求される本来の燃料噴射量及び回転数での状態である。また、Rbは制限ラック位置であり、エンジン2が高負荷状態でのラック位置、即ちエンジン2の回転数が低くなり、燃料の噴射量が最も多い状態である。つまり、操作レバー9による指示回転数が一定状態で、エンジン2にかかる負荷が大きくなると、エンジン2の状態は、ドループ特性線上での上方の状態に移動し、逆に負荷が小さくなると、ドループ特性線上での下方の状態に移動することとなる。ドループ特性線D1上の任意の点Dp1におけるエンジン2の出力と同じ出力の点を、ドループ特性線D2上にとると、点Dp2の位置のようになる。つまり、エンジン2の出力が一定の状態で、操作レバー9を燃料噴射量増加方向に操作すると、ラック位置も噴射量増加方向に移動する。
図11(a)は、図11(b)における縦軸が示すラック位置を、エンジン2の軸トルクに換算したものを示す図である。この図から、前記点Dp1から点Dp2への移動によって軸トルクは減少するということがわかる。すなわち、エンジン2の出力が一定の状態で、操作レバー9を燃料噴射量増加方向に操作すると、機関回転数は上がり、軸トルクは低くなるということである。
このようなドループ特性線D1、D2と前記等馬力線との関係を示した図10を用いて、機関回転制御について説明する。本制御においては、まず、システムコントローラ7により、操作レバー9による指示回転数が一定状態での作業負荷に対するエンジン2の平均出力を算出する。ここでの平均出力は、前述の平均出力Aと同様にして算出されるものであり、同一の符号を用いて説明する。エンジン2の平均出力Aでの等馬力線は、図10において馬力Eaの等馬力線とする。また、操作レバー9は、エンジン2の出力が平均出力Aとなる位置とし、操作レバー9がこの位置でのドループ特性線をD1とする。つまり、馬力Eaの等馬力線とドループ特性線D1との交点である点Ceにおける機関回転数が、前述の速度指令としての速度指令値Naとなる。本制御の目的としては、モータジェネレータ40によるトルクアシスト及び発電により、エンジン2の作動状態を、出力を平均出力A、回転数を速度指令値Naの状態に保つことで、エンジン2にかかる負荷の平準化を図ることである。
図10において、馬力Eaの等馬力線とドループ特性線D1との交点である点Ceにおけるエンジン2の状態が、エンジン2の実回転数と速度指令値Naとが一致している状態である。この状態では、モータジェネレータ40によるトルクアシストも発電も行われない。つまり、この点Ceにおけるエンジン2の状態を基準として、この状態から作業負荷が高くなり、機関回転数が下がるとモータジェネレータ40によるトルクアシストを行い、作業負荷が低くなり、機関回転数が上がるとモータジェネレータ40によるバッテリ14の蓄電を行うように制御する。
具体的には、エンジン2が点Ceでの状態から、高い負荷がかかると、機関回転数が低くなり、エンジン2の状態はドループ特性線D1に沿って上方に移動する。この場合にエンジン2にかかる負荷に対する馬力をE3とすると、エンジン2の状態としては、ドループ特性線D1と馬力E3の等馬力線との交点である点Ce1に移動するので、機関回転数はN1まで下がり、トルクは機関回転数N1における機関最大トルクTeを上回ってしまう。つまり、点Ce1での状態は、その機関回転数N1においてエンジン2によって発揮できる機関最大トルクTeを上回る過負荷状態となってしまう。このような状態を回避するため、モータジェネレータ40によりトルクアシストを行い、エンジン2の回転数を速度指令値Naに保ったままトルクを向上させて不足分の出力を補う。この場合、エンジン2では速度指令値Naで回転するための燃料の噴射は行われているため、負荷がかかって機関回転数が下がったとしても、モータジェネレータ40によってトルクの不足分を補うことにより、速度指令値Naを保つことができる。
モータジェネレータ40によるトルクアシストを行うことにより、点Ceにおいて馬力E3に相当する負荷がかかると、エンジン2は、点Ce1の状態を回避して点Cemの状態に移動することになる。この点Cemは、エンジン2が点Ceの状態から機関回転数を速度指令値Naに保ったまま、モータジェネレータ40によってトルクが加えられ、エンジン2とモータジェネレータ40の合計トルクで出力E3を行っている状態を示す。言い換えると、エンジン2単体では、点Ceの状態から馬力E3に相当する負荷がかかると、点Ce1の状態に移動することとなるが、モータジェネレータ40によってトルクアシストを行うことで、機関回転数としては、(Na−N1)分引き上げられ、馬力としては、(E3−Ea)分が補われることとなる。さらに言うと、エンジン2は見かけ上、点Ceの位置で作動している状態となるが、モータジェネレータ40によるトルクアシストによって、機関回転数を速度指令値Naに保った状態で、ドループ特性線D1から、操作レバー9による指示回転数を上げた状態であるドループ特性線D2における出力を得ることができる。要するに、操作レバー9による指示回転数が一定状態において、作業負荷がかかり、エンジン2の実回転数が速度指令値Naよりも下がった場合は、VVVFインバータコンバータ42からモータジェネレータ40へ送信されるトルク指令を増加させ、該モータジェネレータ40によるトルクアシストを行うのである。
エンジン2が点Ceでの状態から、負荷が低くなると、機関回転数が高くなり、エンジン2の状態はドループ特性線D1に沿って下方に移動する。この場合、例えば、エンジン2の負荷に対する馬力をE1とすると、エンジン2の状態としては、ドループ特性線D1と馬力E1の等馬力線との交点である点Ce2に移動するので、機関回転数はN2まで上がることとなる。しかし、エンジン2は、出力を平均出力A、回転数を速度指令値Naに保つように制御されるので、この余剰出力によってモータジェネレータ40による発電を行い、バッテリ14を充電する。要するに、操作レバー9による指示回転数が一定状態において、作業負荷が低くなり、エンジン2の実回転数が速度指令値Naよりも上がった場合は、VVVFインバータコンバータ42からモータジェネレータ40へ送信されるトルク指令を減少させ、モータジェネレータ40によって発電される電力をバッテリ14に蓄電するのである。
このように、作業負荷に対する平均出力時の機関回転数を基準とする機関回転制御を行うことによって、エンジン2の負荷平準化を図ることができる。これにより、燃費の向上が図れるとともに、エンジン2の機関最大トルク以上のトルクを発揮することが可能となり、最大負荷時の出力を見込んで搭載されるエンジン2の小型化を図ることができる。
また、この機関回転制御において、前述の平均出力Aが大きくなり、速度指令値Naが低速域でとられた場合でも、エンジン2の実回転数が速度指令値Naよりも下がった場合には、モータジェネレータ40によるトルクアシストが行われるので、作業負荷の高さに応じたモータジェネレータ40の制御を行うことが可能となり、作業内容に即したトルクアシストを行うことができる。これにより、低速域でのトルクの向上が図れ、燃費の向上や排気色改善などのエンジン2の機関性能の向上を図ることができる。
以上のような機関回転制御において、電流の流れの面から説明する。つまり、本制御においては、エンジン2の実回転数が、前記速度指令値Naよりも下がった場合は、バッテリ14からモータジェネレータ40へと電力を供給して該モータジェネレータ40を駆動させてトルクアシストを行い、逆に、エンジン2の実回転数が、速度指令値Naよりも上がった場合は、エンジン2の駆動力を用いてモータジェネレータ40によって発電し、この発電された電力をバッテリ14に蓄電するように制御する。
具体的には、前記回転センサによって検出されるエンジン2の実回転数が、前記速度指令値Naよりも下がった場合は、バッテリ14から給電される直流電流が昇降圧チョッパ44を介してVVVFインバータコンバータ42に入力される。このとき、昇降圧チョッパ44は昇圧チョッパとして機能し、バッテリ14の放電電圧を所定の電圧に昇圧して、VVVFインバータコンバータ42に出力する。この際、VVVFインバータコンバータ42はインバータとして機能して、入力された直流電力を所定の電圧及び周波数の交流電力に変換し、この変換された交流電力をモータジェネレータ40に供給する。そして、モータジェネレータ40によるトルクアシストが行われる。
逆に、前記回転センサによって検出されるエンジン2の実回転数が、速度指令値Naよりも上がった場合は、エンジン2の駆動力の一部または全部が発電機としてのモータジェネレータ40の作動に用いられ、該モータジェネレータ40により発電が行われる。モータジェネレータ40で発電された電力は、三相交流電力としてVVVFインバータコンバータ42に出力される。この際、VVVFインバータコンバータ42はコンバータとして機能して、モータジェネレータ40から入力された交流電力を整流・平滑化して直流電力に変換する。VVVFインバータコンバータ42によって変換された直流電力は、昇降圧チョッパ44を介してバッテリ14に入力され、これによりバッテリ14に蓄電する。このとき、昇降圧チョッパ44は降圧チョッパとして機能し、VVVFインバータコンバータ42から入力される直流電力を所定の電圧に降圧してバッテリ14に蓄電する。
このように、機関回転制御を行うことにより、エンジン2の負荷平準化が図れるとともに、モータジェネレータ40の作動とバッテリ14の充放電とが連動することによって、モータジェネレータ40のエネルギー収支を合わせることが可能となり、燃費の向上を図ることができる。
続いて、エンジン2の低速域における機関回転制御について説明する。一般的に、エンジンの低速域における特性として、機関回転数が低いほど出力が低下し、トルクが小さく不安定であるということがある。そのため、エンジン2の始動時や、高い作業負荷がかかって機関回転数が下がった場合などのエンジン2の低速域においては、エンジン2に対する負荷が過負荷となり易く、排ガスやスモークが発生し易い。また、例えば、トラクタ等の作業機における、機体を低速で移動しながらの作業時、船舶等における、低速航行を行いながらのトローリング時、及び、油圧ショベル等の油圧建設機械における、ブーム・アーム・バケット等を有するフロント作業機のブーム上げ時などのように、エンジンが低速域で高トルクを要する場面もある。このような点に鑑み、本制御では、エンジン2の低速域においてモータジェネレータ40によるトルクアシストを行う機関回転制御によって、エンジン2の低速域でのトルクの向上を図っている。以下、エンジン2の低速域における機関回転制御について図12を用いて説明する。
図12は、図11に示した機関最大トルク曲線TPeに加え、モータとしてのモータジェネレータ40の回転数と最大のトルク(駆動力)との関係を示すモータ最大トルク曲線TPmを示したものである。なお、機関最大トルク曲線TPeが、本制御におけるトルクマップに相当する。この図からもわかるように、エンジン2の回転数が機関回転数R2より低い場合を低速域とすると、エンジン2の低速域における機関最大トルクは、機関回転数が低くなるほどトルクが低下している。一方、モータとしてのモータジェネレータ40のモータ最大トルクは、低速域で安定しており、ある回転数より高くなると、回転数が高いほどトルクが低下する特性を有している。本制御においては、これらエンジン2及びモータジェネレータ40の低速域において相反するトルク特性を利用し、エンジン2の低速域での機関性能の向上を図っている。
すなわち、本制御では、前記回転センサによって検出される機関回転数が、予め設定された低速域となった場合、VVVFインバータコンバータ42からモータとして作動するモータジェネレータ40に対するトルク指令を増加させ、該モータジェネレータ40によりトルクアシストを行うように制御する。具体的には、VVVFインバータコンバータ42にエンジン2の低速域としての回転数を予め設定し記憶させる。本実施例では、エンジン2の低速域を機関回転数R1からR2まで(例えば、略1000から2000rpm)とする。エンジン2の回転数は、前述のように機関回転数検出手段としての回転センサにより検出され、VVVFインバータコンバータ42に入力される。そして、VVVFインバータコンバータ42にて入力された機関回転数が低速域にあると判断された場合、VVVFインバータコンバータ42からモータジェネレータ40に対するトルク指令を増加させ、該モータジェネレータ40によるトルクアシストを行うように制御する。
このようにして、機関回転数R1からR2までの低速域において、モータジェネレータ40によるトルクアシストを行うことにより、エンジン2とモータとして作動するモータジェネレータ40との合計トルクが最大トルクとなる。この低速域における最大トルクは、図12において、機関回転数R1からR2までの範囲での、機関最大トルク曲線TPeとモータ最大トルク曲線TPmとの和をあらわす機関+モータ最大トルク曲線TPemのようになる。
このように、エンジン2の低速域における機関回転制御を行うことにより、低速域における出力低下を防止することができ、低速域でのトルクの向上を図ることができる。これにより、燃費の向上や排気色の改善などの機関性能の向上を図ることができ、また、作業機として低速かつ高トルクが要求される作業時での操作性の向上及び騒音の低減を図ることができる。さらに、エンジン2の始動立ち上がり時の黒煙排出の抑制が図れるという効果も得ることができる。
次に、このエンジン2の低速域における機関回転制御方法において、エンジン2にかかる負荷トルクに基づいて行う場合について説明する。この場合、エンジン2の低速域での機関回転制御を、トルクマップとしての機関最大トルク曲線TPeに基づいて行い、エンジン2にかかる負荷トルクが、機関最大トルク曲線TPeの値を上回った場合、モータジェネレータ40によるトルクアシストを行う。すなわち、前記回転センサによって検出される機関回転数が、前記低速域にある場合、予め記憶された機関回転数と機関最大トルクとの関係を示す機関最大トルク曲線TPeに基づき、エンジン2にかかる負荷トルクが、機関最大トルクを上回った場合、VVVFインバータコンバータ42からモータジェネレータ40に対するトルク指令を増加させ、該モータジェネレータ40によりトルクアシストを行うように制御する。
具体的には、システムコントローラ7に、機関回転数とエンジン2の機関最大トルクとの関係を示す機関最大トルク曲線TPeをトルクマップとして予め記憶させる。なお、システムコントローラ7には、機関回転数に応じた上限値に対応する負荷トルクを、最低限記憶させておけばよい。ここで、エンジン2にかかる負荷トルクは、前述の馬力(出力)をトルクに換算することによって求められる。そして、システムコントローラ7において、VVVFインバータコンバータ42にて入力された機関回転数が低速域にあると判断された場合、さらに、エンジン2にかかる負荷トルクがその機関回転数での機関最大トルクを上回っているか否かが判断される。この判断の結果、エンジン2にかかる負荷トルクがその機関回転数での機関最大トルクを上回っていると判断された場合、システムコントローラ7からVVVFインバータコンバータ42への速度指令を増加させ、前述のように速度指令が増加することによってVVVFインバータコンバータ42からモータジェネレータ40に対するトルク指令が増加され、該モータジェネレータ40によるトルクアシストを行うように制御する。
図12を用いて説明すると、機関回転数がR1からR2までの低速域で、エンジン2に高い負荷がかかると、前記ドループ特性線D1上を移動するエンジン2の状態を示す点Ceが、該ドループ特性線D1に沿って上方に移動する。そして、エンジン2にかかる負荷がある一定以上になり、点Ceが機関最大トルク曲線TPeより上方に移動した場合(図中Ce3参照)、モータジェネレータ40によるトルクアシストが行われる。
このように、エンジン2の低速域で、エンジン2にかかる負荷トルクが機関最大トルクを上回った場合にモータジェネレータ40によるトルクアシストを行うことによって、作業時などにおいて、実際にエンジン2の機関最大トルク以上の負荷トルクがかかる場合にのみモータジェネレータ40によるトルクアシストを行うことができるので、エンジン2にかかる作業負荷に対応したトルクアシストが可能となる。これにより、低速域におけるエンジン2の出力低下を補うことができるので、エンジン2の過負荷状態を防止でき、エンジン2の低速域でのトルクの向上が図れるとともに、燃費の向上や排気色の改善などの機関性能の向上を図ることができる。
さらに、エンジン2の低速域における機関回転制御を、エンジン2にかかる負荷トルクに基づいて行う場合、次のように制御することもできる。この場合は、エンジン2にかかる負荷トルクが、機関最大トルク曲線TPeの値にある一定以上近付いた場合、モータジェネレータ40によるトルクアシストを行う。すなわち、前記回転センサによって検出される機関回転数が、前記低速域となった場合、予め記憶された機関回転数と機関最大トルクとの関係を示す機関最大トルク曲線TPeに基づき、機関最大トルクとエンジン2にかかる負荷トルクとの差が、予め設定された値よりも小さくなった場合、VVVFインバータコンバータ42からモータジェネレータ40に対するトルク指令を増加させ、該モータジェネレータ40によりトルクアシストを行うように制御する。
具体的には、VVVFインバータコンバータ42にて入力された機関回転数が低速域にあると判断された場合、その機関回転数での機関最大トルクとエンジン2にかかる負荷トルクとの差が、システムコントローラ7に予め設定され記憶されたトルク差dよりも小さいか否かが判断される。この判断の結果、その機関回転数での機関最大トルクとエンジン2にかかる負荷トルクとの差がトルク差dよりも小さいと判断された場合、システムコントローラ7からVVVFインバータコンバータ42への速度指令を増加させ、前述のように速度指令が増加することによってVVVFインバータコンバータ42からモータジェネレータ40に対するトルク指令が増加され、該モータジェネレータ40によるトルクアシストを行うように制御する。
図12を用いて説明すると、前述のエンジン2にかかる負荷トルクに基づいて行う機関制御方法における機関最大トルク曲線TPeをトルク差dだけ下方に平行移動した曲線を、この場合の模擬機関最大トルク曲線TPe´とし、エンジン2にかかる負荷トルクが本来の機関最大トルクに達する前にモータジェネレータ40によるトルクアシストを行うように制御している。つまり、機関回転数がR1からR2までの低速域で、エンジン2に高い負荷がかかると、前記ドループ特性線D1上を移動するエンジン2の状態を示す点Ceが、該ドループ特性線D1に沿って上方に移動する。そして、エンジン2にかかる負荷がある一定以上になり、点Ceが模擬機関最大トルク曲線TPe´より上方に移動した場合(図中Ce4参照)、モータジェネレータ40によるトルクアシストが行われる。
なお、前述のトルクマップとしての機関最大トルク曲線TPeは、VVVFインバータコンバータ42に予め記憶させていてもよく、この場合、エンジン2にかかる負荷トルクと機関最大トルクとの比較は、VVVFインバータコンバータ42によって行われ、この比較結果によって、VVVFインバータコンバータ42からモータジェネレータ40に対するトルク指令を増加させるか否かが判断される構成となる。
このように、エンジン2にかかる負荷トルクが、機関最大トルクにある一定以上近付いた場合、モータジェネレータ40によるトルクアシストを行うことによって、エンジン2にかかる負荷トルクが機関最大トルクに対して余裕のある状態からモータジェネレータ40によるトルクアシストが行われるので、エンジン2の低速域でのトルクの向上が図れるとともに、エンジン2の機関最大トルク付近でのスモーク低減を図ることができる。これにより、燃費の向上や排気色の改善などの機関性能の向上を図ることができる。
ところで、本ハイブリッドシステムにおいては、上述の作業負荷に対して比較的短い時間の負荷がエンジン2にかかった際に、負荷がかかった瞬間と負荷が解除された瞬間に発生するエンジン2の回転数の変動(機関回転変動)に対しても、モータジェネレータ40によるトルクアシスト及び発電を行うことによって、機関回転変動を軽減し、エンジン2の負荷平準化を図ることも可能としている。この場合、蓄電装置として、バッテリ14の代わりに電気二重層キャパシタを利用することが望ましい。以下、機関回転変動の軽減、及び蓄電装置として電気二重層キャパシタを用いることついて図13を用いて説明する。
図13(a)上図は、エンジン2に負荷がかかってない状態から、エンジン2に大きさw1の負荷Wが一定時間かかった場合を示している。この場合、機関回転数は、同下図に示すように変動する。すなわち、負荷がかかってない状態のエンジン2の回転数n0から、負荷Wがかかった瞬間、この負荷Wの大きさw1に対応するエンジン2の回転数n1よりも急激に機関回転数が低下し、その後、前記回転数n1に落ち着く。そして、負荷Wが解除された瞬間、負荷がかかってない状態の回転数n0よりも急激に機関回転数が上昇する。このように、エンジン2に負荷がかかる際、負荷がかかった瞬間と負荷が解除された瞬間に、負荷の慣性力による負荷変動によって短い時間で微細なエンジンの脈動(機関回転変動)が生じる。
この機関回転変動が発生する場合において、エンジン2に負荷がかかった瞬間の機関回転数の急激な低下を、前述のようにモータジェネレータ40によるトルクアシストを行うことによって抑制する。また、エンジン2にかかっている負荷が解除された瞬間の機関回転数の急激な上昇時(回生時)には、モータジェネレータ40による発電を行う。つまり、作業負荷以外の短い時間での微細な負荷がかかることによるエンジン2の機関回転変動時にも、モータジェネレータ40によるトルクアシスト及び発電を行うことで、機関回転変動を抑制する。
具体的には、エンジン2にかかる負荷に対応する機関回転数を目標回転数とし、前記回転センサによって検出されるエンジン2の実回転数の、前記目標回転数からの変動値が一定値以上となると、モータジェネレータ40によるトルクアシストまたは発電を行い、エンジン2の負荷変動による機関回転変動率を一定範囲内に保持する。つまり、エンジン2に負荷がかかった瞬間に、機関回転数が低下して、目標回転数とのずれ(変動)が一定値以上となった場合、モータジェネレータ40をモータとして作動させてトルクアシストを行い、逆に、エンジン2にかかった負荷が解除された瞬間に、機関回転数が上昇して、目標回転数とのずれ(変動)が一定値以上となった場合、モータジェネレータ40を発電機として作動させて発電を行い、この発電電力によってバッテリ14の充電を行う。なお、前記目標回転数は、操作レバー9のレバー位置による指示回転数に対応したものとなり、システムコントローラ7またはVVVFインバータコンバータ42に予め設定される。そして、機関回転数の目標回転数からの変動は、システムコントローラ7またはVVVFインバータコンバータ42にて検知される。また、前記機関回転変動率とは、エンジン2の実回転数の目標回転数からの変動値の、目標回転数に対する割合のことをいう。
これを、例えば前述した図13(a)に対応させた場合、エンジン2にかかる負荷Wの大きさw1に対応する回転数n1が、負荷Wに対応する目標回転数となり、負荷がかかってない状態の回転数n0が、エンジン2の無負荷状態での目標回転数となる。そして、エンジン2に負荷Wがかかった瞬間に機関回転数が低下し、機関回転数の負荷Wに対応する目標回転数n1からの変動値、即ち目標回転数n1と機関回転数との差が、予め設定される規定値δnよりも大きくなった場合、モータジェネレータ40をモータとして作動させて瞬時のトルクアシストを行い、この場合のエンジン2の負荷変動を低減する。逆に、エンジン2にかかった負荷Wが解除された瞬間に機関回転数が上昇し、機関回転数のエンジン2の無負荷状態に対応する目標回転数n0からの変動値、即ち目標回転数n0と機関回転数との差が前記規定値δnよりも大きくなった場合、モータジェネレータ40を発電機として作動させて瞬時の発電を行い、この場合のエンジン2の負荷変動を低減する。なお、前記規定値δnは、エンジンの特性などによって、機関回転数が目標回転数から低下する側に変動する場合と上昇する側に変動する場合とで異なる値を設定することも可能である。
このように、エンジン2の短い時間における微細な負荷変動による機関回転変動に対しても、モータジェネレータ40によるトルクアシスト及び発電を行うことによって、エンジン2の脈動を抑制することができる。これにより、エンジン効率の向上が図れるとともに、燃費の向上及び排気ガスの低減を図ることができる。
また、図13(b)上図は、前述の機関回転変動時に行われるモータジェネレータ40によるトルクアシスト及び発電を行うことによる、機関回転数に影響する変動量を示している。すなわち、モータジェネレータ40をモータとして作動させてトルクアシストを行う場合には、エンジン2に対するアシスト量を示し、モータジェネレータ40を発電機として作動させて発電を行う場合には、この発電に用いられるエンジン2の回転数の消費量を示すこととなる。このようにモータジェネレータ40を作動させて短い時間における負荷平準化を行うことで、機関回転数は同下図に示すように変化する。すなわち、負荷変動時の機関回転変動が、モータジェネレータ40によるトルクアシスト及び発電によって抑制され、機関回転数の目標回転数からの変動値が、前記規定値δnよりも小さく抑えられている。このように、短い時間における瞬時のモータジェネレータ40によるトルクアシスト及び発電を行うためには、蓄電装置による給電及び充電も短い時間にその機能が発揮されるように行われる必要がある。つまり、蓄電装置としても、短い時間における瞬時のモータジェネレータ40によるトルクアシスト及び発電に対する応答性と充放電効率が要求されるのである。そこで、バッテリと比較して充放電効率がよく、瞬時の充放電に対応可能な電気二重層キャパシタを用いる。
バッテリでは、化学変化を利用して蓄電するが、この電気二重層キャパシタでは、化学変化をともなわず、静電作用により電気を電子のまま蓄える。そのため、充放電効率が高く、瞬時の充放電に対応することが可能である。つまり、蓄電装置としてバッテリを用いた場合、モータジェネレータ40によるトルクアシストを行う際の給電は比較的応答性が高いが、モータジェネレータ40による発電電力を蓄電する際は時間的な遅れが生じる。言い換えると、短い時間での負荷変動による機関回転変動に対応しようとした場合、蓄電装置としてバッテリを用いると、給電した電気と同量の電気を蓄電しようとすると放電時間よりも充電時間の方が長くなり、バッテリとしての電力量の収支が合わなくなっていく。しかし、蓄電装置として電気二重層キャパシタを用いることにより、このような不具合を解消することができる。すなわち、エンジン2に対する短い時間での負荷変動による機関回転変動の抑制にともなう蓄電装置の充放電収支の不均衡を低減し、蓄電装置の充電を良好に行うことが可能となり、蓄電装置の充電量不足を防止することができる。
さらに、本ハイブリッドシステムにおける蓄電装置として、電気二重層キャパシタを用いることにより、次のような効果を得ることができる。電気二重層キャパシタは、繰り返しの充放電に強く、蓄電装置の長寿命化が図れる。また、電気二重層キャパシタは、原料も無害に近い電解液と炭素でできているため低公害である。加えて、電気二重層キャパシタは、広範囲の耐久温度特性を有しているため、低温では性能が低下するバッテリと比較して、使用温度範囲において安定した作動が可能になるという効果を得ることもできる。
また、前記電気二重層キャパシタは、バッテリと併用することも可能である。この場合は、蓄電装置として電気二重層キャパシタとバッテリを並列に接続する。このように、ハイブリッドシステムにおける蓄電装置として、電気二重層キャパシタとバッテリを併用することにより、バッテリよりも比較的蓄電できるエネルギー密度が低いという特性を有する電気二重層キャパシタの蓄電容量を、バッテリによって補うことができる。これにより、前述の短い時間での負荷変動による機関回転変動に対応することができるとともに、十分な蓄電容量を確保することが可能となる。
また、このようなエンジンの脈動を抑制する技術を、ガソリンエンジンよりもクリーンで、ディーゼルエンジン並みの燃料効率を有するが、ガソリンエンジンやディーゼルエンジン等と比較して脈動が大きく不安定な予混合圧縮自着火(HCCI)エンジンを備えたハイブリッドシステムにおいて適用することで、その効果がより発揮されることが期待できる。
続いて、本ハイブリッドシステムにおける機関制御方法としてのオートデセル機能について説明する。オートデセル機能とは、作業機などにおいて、作業や走行を行っていない負荷低下状態が一定時間以上継続すると、エンジン2の回転数を省燃費用のデセル回転数にして低燃費状態(アイドリング状態)とし、作業や走行の開始時には、直ちに機関回転数を元の設定回転数に復帰させるという機能である。このようなオートデセル機能において、本ハイブリッドシステムでは、エンジン2の回転数を前記デセル回転数にする代わりに、エンジン2を停止状態にすることを特徴としている。以下、具体的に説明する。
本ハイブリッドシステムにおいては、前述のように、VVVFインバータコンバータ42にて、エンジン2の実回転数と、システムコントローラ7からVVVFインバータコンバータ42に入力される速度指令とを比較し、この比較結果に基づいてモータジェネレータ40の制御を行っている。そして、低負荷状態が続き、ここで行われるエンジン2の実回転数と速度指令値との比較により、エンジン2の実回転数が速度指令値を上回った状態が、予め設定された遅延時間以上継続すると、エンジン2を停止させるように制御する。つまり、前述したモータジェネレータ40によるスタータ機能は、エンジン2の迅速な起動が可能であるため、エンジン2を停止状態がから再び起動する際の応答性が高いので、エンジン2の低負荷状態が一定時間以上続くと、エンジン2を停止させることとしても作業及び走行に支障がないのである。
このように、オートデセル機能におけるエンジン2の低燃費状態を、エンジン2の停止状態とすることで、従来のオートデセル機能における低燃費状態であるアイドリング状態と比較して、このアイドリング状態となっていた分、エンジンが作動している時間が少なくなるので、燃費の向上及び騒音の低減が図れ、排気ガスの環境に及ぼす影響を低減することができる。また、モータジェネレータ40の有する静音性のため、エンジン2を停止状態から復帰させる際の起動時の騒音の低減を図ることができる。
次に、前記オートデセル機能におけるエンジン2の停止状態から、再びエンジン2を起動させる場合について説明する。本ハイブリッドシステムにおけるオートデセル機能においては、一旦停止状態となったエンジン2は、少なくとも一つの操作レバー9が操作されると、モータジェネレータ40をモータとして作動させてエンジン2の起動が行われる。
少なくとも一つの操作レバー9とは、操作部8に配設される、例えば、エンジン2の駆動力の調節を行うレギュレータレバー、スロットルレバーやシフトレバー等のレバーのうち、少なくとも一つのことであり、これらのうち一つが操作されることにより、モータジェネレータ40によるエンジン2の起動が行われる。つまり、オートデセル機能によるエンジン2の停止状態から、操作レバー9を操作することにより、そのレバー位置に対応した信号がシステムコントローラ7に入力される。このレバー操作に係る信号を受けたシステムコントローラ7は、VVVFインバータコンバータ42及び昇降圧チョッパ44にエンジン2の起動信号を送る。これにより、放電状態となったバッテリ14からの給電電力は、昇降圧チョッパ44によって昇圧され、VVVFインバータコンバータ42によって所要の電圧及び周波数に変換されて、交流電力としてモータジェネレータ40に供給される。このようにして、モータジェネレータ40がスタータとして作動し、停止状態のエンジン2が再び起動される。
このように、オートデセル機能によるエンジン2の停止状態から、前述したようにモータジェネレータ40をスタータとして機能させることにより、エンジン2起動時の騒音の低減、及び迅速な起動が図れるため、オートデセル機能におけるエンジン2の低燃費状態をエンジン2の停止状態とすることによる燃費の向上や騒音及び排気ガスの低減が図れるとともに、モータジェネレータ40の有する高い応答性により、作業時や走行時におけるオートデセル機能による違和感を生じることなくスムーズな作業や走行が可能となる。
また、本ハイブリッドシステムにおいては、バッテリ14の充電状態に基づき、エンジン2及びモータジェネレータ40の制御を行うこともできる。以下、このバッテリ14の充電状態に基づくエンジン2及びモータジェネレータ40の制御方法について説明する。本制御方法は、バッテリ14の充電量が規定値を下回ると、モータジェネレータ40によるトルクアシストを行わず、通常、操作レバー9を操作することによって調節するエンジン2の回転数を、システムコントローラ7によって自動的に制御することで、機関出力(機関回転数)を一定に制御しようとするものである。すなわち、本制御方法は、バッテリ14の充電状態が、予め設定された規定値を下回った場合、モータジェネレータ40によるトルクアシストを行わず、スロットルアクチュエータ22を構成する前記DCモータを制御することによってエンジン2の回転数を調節して機関出力を一定に保持するように制御することを特徴としている。
まず、バッテリ14の充電状態(以下、SOC(State of Charge))を演算する方法について説明する。前述したように、エンジン2の駆動によりモータジェネレータ40にて発電された交流電力は、VVVFインバータコンバータ42にて整流・平滑化され直流電力に変換された後、昇降圧チョッパ44により所定の電圧に変圧されて、バッテリ14に蓄電される。また、バッテリ14からの給電電力によりモータジェネレータ40への電力供給を行い、該モータジェネレータ40を駆動可能としている。
バッテリ14のSOCは、バッテリ14の起電力とバッテリ14のバッテリ液(電解液)の比重との関係から、システムコントローラ7にて演算される。具体的に説明すると、充放電中のバッテリ電圧(バッテリ14の端子電圧)Vbatは、次式(1)により表される。
Vbat=E0 ±ICD・R0 ・・・(1)
この式を用いてバッテリ14のSOCを算出する。式(1)において、E0 はバッテリ14の起電力(バッテリ開路電圧)、ICDはバッテリ14の充放電電流、R0 はバッテリ14の内部抵抗である。バッテリ14の充放電電流ICDは、電流の向きによって充電電流または放電電流となり、式(1)においては、正(+)の場合には、充電電流であり、負(−)の場合には放電電流である。
電圧センサ45によって検出されるバッテリ電圧Vbat、及び充放電電流ICDは、昇降圧チョッパ44からシーケンサ43を介してシステムコントローラ7に送信される。システムコントローラ7は、入力されたバッテリ電圧Vbat及び充放電電流ICDに基づいてバッテリ14の内部抵抗R0 を演算する。この算出された内部抵抗R0 に基づき、式(1)からバッテリ開路電圧E0 を演算する。そして、予めシステムコントローラ7には、図14に示すような、バッテリ開路電圧E0 とバッテリ14のバッテリ液(電解液)の比重との関係と、図15に示すような、バッテリ液の比重とバッテリ14の放電深度(以下、DOD(Depth of Discharge))との関係が記憶されている。なお、システムコントローラ7には、バッテリ液とDODとの関係に代えて、バッテリ液とSOCとの関係を予め記憶させておいてもよい。このDODとSOCとは、ともにバッテリの充電状態を表す量であり、両者の間には、DOD+SOC=100%という関係がある。
バッテリ開路電圧E0 が分かると、システムコントローラ7は、バッテリ開路電圧E0 とバッテリ液の比重との関係により、あるバッテリ温度(周囲温度)に対するバッテリの比重が算出される。そして、算出されたバッテリ液の比重から、バッテリ液の比重とDODとの関係によりバッテリ14のDODが演算され、このDODに対するバッテリ14のSOCが演算される。なお、このバッテリ14のSOCの演算方法は一例であり、システムコントローラ7によって一定以上の正確性を有するバッテリ14のSOCが随時演算できる方法であれば前記演算方法に限定されるものではない。
そして、システムコントローラ7にて、演算されたバッテリ14のSOCと、該システムコントローラ7に予め記憶されている規定値SOCmin とが比較され、バッテリ14のSOCが規定値SOCmin を下回っているか否かが判断される。ここで、バッテリ14のSOCが規定値SOCmin を下回っている判断された場合、前述したエンジン2に一定以上高い作業負荷がかかった際のモータジェネレータ40によるトルクアシストを行わないようにし、その代わりに、エンジン2自体の出力を増加させることで、作業負荷に対するエンジン2の負荷平準化を行うように制御する。つまり、バッテリ14の充電量が低下し、モータジェネレータ40による十分なトルクアシストが行われない状態となった場合は、モータジェネレータ40によるトルクアシストを行わないようにすることでバッテリ14の放電を停止し、モータジェネレータ40によるトルクアシストの代わりに、エンジン2の燃料噴射量を調節するスロットルアクチュエータ22を制御することにより、機関出力(機関回転数)を一定に保持する。
具体的にスロットルアクチュエータ22を制御することによるエンジン2の負荷平準化は次のようにして行われる。スロットルアクチュエータ22は、前述したようにラックピニオン式のDCモータで構成されており、このスロットルアクチュエータ22のラックギアは、前述したメカニカルガバナのガバナレバーと接続されている。そして、このDCモータをシステムコントローラ7によって自動制御することにより、エンジン2の燃料噴射量を調節するとともに、機関回転数を調節する。
すなわち、システムコントローラ7にて、前述のように演算されるバッテリ14のSOCが、規定値SOCmin を下回った状態で、エンジン2に高い作業負荷がかかり、エンジン2の実回転数が前記速度指令値よりも小さくなった場合は、システムコントローラ7からスロットルアクチュエータ22のDCモータへ燃料噴射量を増やす方向にガバナレバーを作動させるように指令を送り、機関出力が一定となるように機関回転数を速度指令値に保持する。そして、モータジェネレータ40による発電によってバッテリ14のSOCが規定値SOCmin を下回った状態から、規定値SOCmin を上回った場合は、通常のモータジェネレータ40によるトルクアシストの制御に移行する。
このように、バッテリ14の充電量が不足した状態ではモータジェネレータ40によるトルクアシストを行わず、エンジン2のスロットルアクチュエータ22を制御することによって機関出力を一定に保つようにすることで、エンジン2が長時間高負荷状態となってモータジェネレータ40によるトルクアシストが連続して行われた場合などのように、バッテリ14の充電量が不足した状態でも、作業負荷に対するエンジン2の特性(作業速度など)が変化することなく、作業中にバッテリ14の充電量不足にともなうモータジェネレータ40のトルクアシストのトルク不足による違和感(機関回転数の急激な低下など)を解消することができる。また、バッテリ14の過放電を防止することができるので、バッテリ14の過放電によるバッテリ性能の低下を防止して長寿命化を図ることができる。
また、このようなシステムコントローラ7によるスロットルアクチュエータ22の自動制御を、バッテリ14による給電が終了した時から一定時間行うように制御することもできる。すなわち、この場合、モータジェネレータ40のトルクアシストにともなうバッテリ14からの給電が終了した時から、予め設定された時間が経過するまでは、モータジェネレータ40によるトルクアシストを行わず、スロットルアクチュエータ22を制御することによってエンジン2の回転数を調節して機関出力を一定に保持するように制御する。
具体的には、エンジン2に高い作業負荷がかかってエンジン2の実回転数が速度指令値よりも低くなると、モータジェネレータ40によるトルクアシストが行われるが、その後、作業負荷が解除されてエンジン2の実回転数が速度指令値よりも高くなった時、即ちバッテリ14による給電が終了した時から、予め定められた時間が経過するまでは、モータジェネレータ40によるトルクアシストは行わず、前述のようにシステムコントローラ7によってスロットルアクチュエータ22の自動制御を行うことで、機関出力を一定に保ち、エンジン2の負荷平準化を図るのである。
そして、例えば、バッテリ14による給電が終了した時から一定時間スロットルアクチュエータ22の自動制御を行う場合を、本ハイブリッドシステムにおける「節電モード」とし、操作部8にこの「節電モード」のON/OFFを切り換えるスイッチ等を設け、本ハイブリッドシステムが適用される作業機などのオペレータによって任意に選択可能な構成とすることもできる。
このように制御することで、バッテリ14による給電が終了した時から一定時間は少なくともバッテリ14の放電が行われることはないので、バッテリ14の過放電を予め防止することが可能となる。また、このような制御が行われる場合を「節電モード」とし、切換え可能とすることによって、作業状態に即してバッテリ14の過放電を防止できるとともに、エンジン2の負荷平準化を図ることが可能となる。