JP2004149597A - 粉末成形用パウダーおよび粉末成形体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】下記成分(I)100重量部と、下記成分(II)0.1〜10重量部と、下記成分(III)0.01〜10重量部とをドライブレンドしてなる粉末成形用パウダー。
(I):平均粒径が30〜1000μmであり、JIS K−7210(1976)に従い、荷重21.18N、温度230℃で測定されるメルトフローレートが、10〜200g/10分である熱可塑性エラストマーパウダー
(II):平均粒径が0.01〜20μmであり、ガラス転移温度が60〜200℃である熱可塑性樹脂粉体
(III):1次粒径が0.1〜10μmである無機粉体
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、粉末成形用パウダーおよび粉末成形体に関するものである。更に詳しくは、本発明は、粉体流動性、作業性及び粉末成形時における脱型性に優れる粉末成形用パウダー及び該パウダーを粉末成形してなる粉末成形体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
自動車内装部品などの表皮材には、表面に皮しぼ、ステッチ等の複雑な凹凸模様を有すること、柔軟性に優れることが求められており、該表皮材には、粉末成形体が主に用いられている。該粉末成形体の成形に用いられる粉末成形用パウダーとしては、例えば、熱可塑性エラストマーペレットを機械的方法(例えば冷凍粉砕法が挙げられる)により粉砕した粉体が知られている(例えば、特許文献1参照。)。また、該粉体の粉体流動性を改良したパウダーとして、該粉体と顔料等の微細粉体とを配合したパウダーが知られている(例えば、特許文献2、特許文献3参照。)。更には、該粉体と顔料等の微細粉体とを配合したパウダーよりも優れた粉体流動性を有し、厚みムラが小さい粉末成形体が得られるパウダーとして、該粉体とガラス転移温度が特定の温度である熱可塑性樹脂粉体(ポリメタクリル酸メチル粉体やポリスチレン粉体など)とを配合したパウダーが知られている(例えば、特許文献4参照。)。
【0003】
【特許文献1】
特開平5−5050号公報
【特許文献2】
特開平5−70601号公報
【特許文献3】
特開平11−286578号公報
【特許文献4】
特開2001−123019号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記パウダーでは、ポリエチレン製などの袋に保管した該パウダーを粉末成形機のパウダーボックスへ投入する際に、該パウダーが袋の内面に付着するため作業性が低下することがあり、また、上記パウダーを用いて粉末成形を行った際に脱型に時間がかかることや、脱型により粉末成形体に折れじわ等の外観不良が発生することがあり、脱型性が十分満足のいくものではなかった。かかる状況のもと、本発明が解決しようとする課題は、粉体流動性、作業性及び粉末成形時における脱型性に優れる粉末成形用パウダー及び該パウダーを粉末成形してなる粉末成形体を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明の第一は、下記成分(I)100重量部と、下記成分(II)0.1〜10重量部と、下記成分(III)0.01〜10重量部とをドライブレンドしてなる粉末成形用パウダーに係るものである。
(I):平均粒径が30〜1000μmであり、JIS K−7210(1976)に従い、荷重21.18N、温度230℃で測定されるメルトフローレートが、10〜200g/10分である熱可塑性エラストマーパウダー
(II):平均粒径が0.01〜20μmであり、ガラス転移温度が60〜200℃である熱可塑性樹脂粉体
(III):1次粒径が0.1〜10μmである無機粉体
また、本発明の第二は、上記粉末成形用パウダーを粉末成形してなる粉末成形体に係るものである。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明の熱可塑性エラストマーパウダーは、熱可塑性エラストマーを含有してなるパウダーである。該熱可塑性エラストマーとしては、例えばオレフィン系熱可塑性エラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリ塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー等が挙げられる(例えば、松崎昭二著 化学工業日報社1991年発行 「熱可塑性エラストマー組成物」を参照)。これらは、単独または2種以上組み合わせて用いられる。
【0007】
ここで、オレフィン系熱可塑性エラストマーとしては、ポリオレフィン系樹脂及びポリオレフィン系ゴムからなる組成物等が挙げられる。該オレフィン系熱可塑性エラストマーは、例えば特開平5−5050号公報、特開平10−30036号公報、特開平10−231392号公報、特開2001―49052号公報等に記載されている方法で製造することができる。
【0008】
ポリオレフィン系樹脂とは、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセンなどの炭素原子数2〜10のオレフィン1種または2種以上から誘導される繰り返し単位を50重量%以上含有する重合体であって、JIS K−6253(1997)のA硬度が98を超える重合体である。ポリオレフィン系樹脂はオレフィン以外の単量体から誘導される繰り返し単位を含有していてもよく、オレフィン以外の単量体としては、たとえば、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン(イソプレン)、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエンなどの炭素数4〜8の共役ジエン;ジシクロペンタジエン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、1,4−ヘキサジエン、1,5−ジシクロオクタジエン、7−メチル−1,6−オクタジエン、5−ビニル−2−ノルボルネンなどの炭素原子数5〜15の非共役ジエン;酢酸ビニルなどのビニルエステル化合物;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチルなどの不飽和カルボン酸エステル;アクリル酸、メタクリル酸などの不飽和カルボン酸があげられる。
【0009】
ポリオレフィン系樹脂としては、たとえば、エチレン単独重合体、プロピレン単独重合体、1−ブテン単独重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−1−ブテン共重合体、エチレン−1−ヘキセン共重合体、エチレン−1−オクテン共重合体、プロピレン−1−ブテン共重合体、プロピレン−1−ヘキセン共重合体、プロピレン−1−オクテン共重合体、エチレン−プロピレン−1−ブテン共重合体、エチレン−プロピレン−1−ヘキセン共重合体、エチレン−プロピレン−1−オクテン共重合体が挙げられる。これらポリオレフィン系樹脂は1種または2種以上組み合わせて用いられる。
【0010】
ポリオレフィン系樹脂の中では、得られる粉末成形体の耐熱性の観点から、プロピレンから誘導される繰り返し単位の含有量が80重量%以上であるポリプロピレン系樹脂が好ましく使用される。該ポリプロピレン系樹脂のプロピレンから誘導される繰り返し単位の含有量は、より好ましくは90重量%以上であり、更に好ましくは95重量%以上である。
【0011】
ポリオレフィン系樹脂のメルトフローレート(MFR)は、粉末成形用パウダーの溶融性、成形体の機械的強度、脱型性をより高める観点から、好ましくは10〜500g/10分であり、より好ましくは50〜400g/10分であり、更に好ましくは100〜300g/10分である。なお、MFRは、JIS K−7210(1976)に従って、温度230℃、荷重21.18Nの条件で測定される。
【0012】
上記ポリオレフィン系ゴムとは、エチレン、プロピレン、1−ブテン、2−メチルプロピレン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセンなどの炭素原子数2〜10のオレフィン1種または2種以上から誘導される繰り返し単位を50重量%以上含有する重合体であって、JIS K−6253(1997)のA硬度が98以下の重合体である。ポリオレフィン系ゴムはオレフィン以外の単量体から誘導される繰り返し単位を含有していてもよく、オレフィン以外の単量体としては、たとえば、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン(イソプレン)、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエンなどの炭素数4〜8の共役ジエン;ジシクロペンタジエン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、1,4−ヘキサジエン、1,5−ジシクロオクタジエン、7−メチル−1,6−オクタジエン、5−ビニル−2−ノルボルネンなどの炭素原子数5〜15の非共役ジエン;酢酸ビニルなどのビニルエステル化合物;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチルなどの不飽和カルボン酸エステル;アクリル酸、メタクリル酸などの不飽和カルボン酸があげられる。
【0013】
ポリオレフィン系ゴムとしては、たとえば、プロピレン単独重合体、1−ブテン単独重合体、2−メチルプロパン単独重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−1−ブテン共重合体、エチレン−3−メチル−1−ブテン共重合体、エチレン−1−ヘキセン共重合体、エチレン−1−オクテン共重合体、プロピレン−1−ブテン共重合体、プロピレン−1−ヘキセン共重合体、プロピレン−1−オクテン共重合体、エチレン−プロピレン−5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体、エチレン−プロピレン−1−ブテン共重合体、エチレン−プロピレン−1−ヘキセン共重合体、エチレン−プロピレン−1−オクテン共重合体があげられ、これらポリオレフィン系ゴムは1種または2種以上組み合わせて用いられる。これらは公知の方法で製造することができる。
【0014】
ポリオレフィン系ゴムの中では、成形体の機械的強度をより高める観点から、エチレン−α−オレフィン共重合体が好ましく使用される。ここで、α−オレフィンとしては、入手容易性の観点から、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンが好ましい。
【0015】
ポリオレフィン系ゴムの中では、成形体の柔軟性をより高める観点から、JIS K−6253(1997)のA硬度が80以下であるポリオレフィン系ゴムが好ましい(要件▲1▼)。該硬度が80を超える場合、得られる粉末成形体の機械的強度及び柔軟性に劣る場合がある。
【0016】
ポリオレフィン系ゴムのメルトフローレート(MFR)は、粉末成形用パウダーの溶融性、成形体の機械的強度、脱型性をより高める観点から、好ましくは0.5〜50g/10分であり、より好ましくは1〜30g/10分である。なお、MFRは、JIS K−7210(1976)に従って、温度190℃、荷重21.18Nの条件で測定される。
【0017】
オレフィン系熱可塑性エラストマーにおけるポリオレフィン系樹脂及びポリオレフィン系ゴムの含有量は、通常ポリオレフィン系樹脂100重量部に対して20〜300重量部であるが、得られる粉末成形体の柔軟性、耐熱性及び耐寒衝撃性の観点から、好ましくは25〜150重量部である。
【0018】
熱可塑性エラストマーパウダーが、ポリオレフィン系樹脂及びエチレン−α−オレフィン系ゴムを含有する場合、さらに水添共役ジエン重合体を含有することにより、粉末成形体の機械的強度を向上させることができる。
【0019】
水添共役ジエン重合体としては、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、ペンタジエン、2−3−ジメチルブタジエンなどの炭素原子数4〜8の共役ジエン1種又は2種以上の重合体である原料共役ジエン重合体を水添したものをあげることができ、ポリブタジエンの水添物、ポリイソプレンの水添物などを用いることができる。原料共役ジエン重合体を水添することにより、共役ジエン単位の不飽和結合が飽和されるが、該飽和されてなる単量体単位を単位Zとした場合、水添共役ジエン重合体としては、得られる成形体の柔軟性の観点から、側鎖の炭素数が2以上である単位Zの含有量が50重量%を超えることが好ましい。ただし、水添共役ジエン重合体中の単位Zの含有量を100重量%とする。水添共役ジエン重合体は、該割合が異なる2以上のブロックから構成されていてもよい。このような水添共役ジエン重合体としては、特開平3―74409号公報に記載の重合体、JSR株式会社製の「ダイナロンCEBC6200」などの市販品等があげられる。
【0020】
水添共役ジエン重合体を含有する場合、その含有量は得られる粉末成形体の引張強度および柔軟性の観点から、ポリオレフィン系樹脂及びエチレン−α−オレフィン系ゴムの合計量100重量部に対し、好ましくは1〜20重量部であり、より好ましくは2〜10重量部である。
【0021】
熱可塑性エラストマーパウダーがオレフィン系熱可塑性エラストマーを含有する場合、得られる粉末成形体の耐摩耗性をより高める観点から、分子中にシロキサン結合を有するシリコーン化合物を熱可塑性エラストマーパウダーに含有せしめることが好ましい。該シリコーン化合物は、アクリル、エポキシ、カルボン酸、アミン、ウレタン等で変性されていてもよい。
【0022】
熱可塑性エラストマーパウダーにシリコーン化合物を含有せしめる場合、その含有量は該オレフィン系熱可塑性エラストマー100重量部に対して、通常は0.1〜10重量部であり、好ましくは0.3〜7重量部であり、より好ましくは0.5〜5重量部である。該含有量が多すぎると粉末成形用パウダーの溶融性が低下し、得られる粉末成形体の機械的強度が劣ることがある。
【0023】
スチレン系熱可塑性エラストマーとは、ビニル芳香族化合物−共役ジエン共重合体又はその水添物である。
【0024】
スチレン系熱可塑性エラストマーに用いられるビニル芳香族化合物としては、例えば、炭素原子数8〜12のビニル芳香族化合物が用いられ、そのビニル基の1位又は2位がメチル基などのアルキル基などで置換されていてもよく、具体的には、スチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレンなどをあげることができ、これらは1種又は2種以上組み合わせて用いられる。これらの中では、得られる粉末成形体の機械的強度をより高める観点から、スチレンが好ましい。
【0025】
共役ジエンとしては、例えば、炭素原子数4〜8の共役ジエンが用いられ、1,3−ブタジエン、イソプレン、ペンタジエン、2−3−ジメチルブタジエンなどをあげることができ、これらは1種又は2種以上組み合わせて用いられる。これらの中では、得られる粉末成形体の機械的強度をより高める観点から、1,3−ブタジエン及び/又はイソプレンが好ましい。
【0026】
ビニル芳香族化合物−共役ジエン共重合体としては、たとえば、スチレン−1,3−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体などがあげられ、これらは1種又は2種以上組み合わせて用いられる。また、これらは公知の方法により製造することができる。
【0027】
ビニル芳香族化合物−共役ジエン共重合体は、構造が1つのブロックからなるものでもよく、構造が異なる2以上のブロックから構成されてもよい。構造が1つのブロックからなるものとしては、ビニル芳香族化合物と共役ジエンとがランダムに配列した構造の共重合体、たとえば、スチレン−ブタジエンランダム共重合体、スチレン−イソプレンランダム共重合体があげられる。構造が異なる2以上のブロックから構成されるものとしては、たとえば、スチレン単独重合体ブロック−ブタジエン単独重合体から構成される共重合体、スチレン単独重合体ブロック−イソプレン単独重合体ブロックから構成される共重合体、スチレン単独重合体ブロック−ブタジエン単独重合体ブロック−スチレン単独重合体ブロックから構成される共重合体、スチレン単独重合体ブロック−イソプレン単独重合体ブロック−スチレン単独重合体ブロックから構成される共重合体、スチレン単独重合体ブロック−ブタジエン・イソプレン共重合体ブロック−スチレン単独重合体ブロックから構成される共重合体、スチレン単独重合体ブロック−スチレン・ブタジエン共重合体ブロック−スチレン単独重合体ブロックから構成される共重合体等が挙げられ、かかる共重合体においてスチレン・ブタジエン共重合体ブロックはスチレンとブタジエンとがランダムに共重合した構造のブロックであってもよいし、スチレン単位の含有量が徐々に減少又は増加するテーパー状の構造のブロックであってもよい。
【0028】
ビニル芳香族化合物−共役ジエン共重合体水添物とは、前述のビニル芳香族化合物−共役ジエン共重合体を水素添加することにより得られる重合体であり、ビニル芳香族化合物−共役ジエン共重合体と同様、構造が1つのブロックからなるものでもよく、構造が異なる2以上のブロックから構成されてもよい。ビニル芳香族化合物と共役ジエンの共重合体の水添物としては、たとえば、スチレン−1,3−ブタジエン共重合体水添物、スチレン−イソプレン共重合体水添物があげられ、これらは1種または2種以上組み合わせて用いられる。
【0029】
スチレン系熱可塑性エラストマーのJIS K−7210に従って230℃、荷重21.18Nで測定したメルトフローレート(MFR)は、得られる粉末成形体の機械的強度、脱型性及び得られる粉末成形用パウダーの溶融性をより高める観点から、好ましくは1〜200g/10分であり、より好ましくは2〜100g/10分であり、更に好ましくは3〜80g/10分である。
【0030】
スチレン系熱可塑性エラストマーは、官能基で変性されていてもよく、官能基としては、酸無水物基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アミノ基、イソシアネート基及びエポキシ基から選ばれた少なくとも一種の官能基を用いることができる。これら官能基で変性したスチレン系熱可塑性エラストマーを用いた場合、例えば得られる粉末成形体をポリウレタン発泡層と接着して二層成形体又は多層成形体を製造する場合に、ポリウレタン発泡層との接着性が向上するという利点を得ることが可能である。
【0031】
スチレン系熱可塑性エラストマーの中では、得られる粉末成形体の機械的強度の観点から、下記要件▲2▼を充足するビニル芳香族化合物−共役ジエン共重合体水添物であることが好ましい。
▲2▼:下記(a)及び(b)の構造単位を含有するビニル芳香族化合物−共役ジエン共重合体を水添してなること
(a):ビニル芳香族化合物重合体ブロック
(b):下記(b1)及び(b2)から選ばれる少なくとも一種類のブロック
(b1):ビニル芳香族化合物と共役ジエンの共重合体ブロック
(b2):共役ジエン重合体ブロック
【0032】
該ビニル芳香族化合物−共役ジエン共重合体水添物は、一般式[(a)−(b)]n、[(a)−(b)]n−(a)、[(b)−(a)]n−(b)(ただし、nは1以上の整数であり、(a)及び(b)が複数の場合、複数の(a)及び(b)はそれぞれ同じであっても異なっていてもよい。)で表わされる構成を有し、例えば[(a)−(b1)]n−(a)、[(a)−(b2)]n−(a)で表わされるものがあげられる。
【0033】
該ビニル芳香族化合物−共役ジエン共重合体水添物の中では、得られる粉末成形体の機械的強度の観点から、(a)−(b1)−(a)、(a)−(b2)−(a)で表わされるスチレン−ジエン系共重合体が好ましく、例えばスチレン単独重合体ブロック−ブタジエン・スチレン共重合体ブロック(ランダム共重合ブロックまたはスチレンが漸増するテーパー状ブロック)−スチレン単独重合体ブロックから構成された重合体の水添物、スチレン単独重合体ブロック−ブタジエン単独重合体ブロック−スチレン単独重合体ブロックから構成された重合体の水添物、スチレン単独重合体ブロック−イソプレン・スチレン共重合体ブロック(ランダム共重合ブロックまたはスチレンが漸増するテーパー状ブロック)−スチレン単独重合体ブロックから構成された重合体の水添物、スチレン単独重合体ブロック−イソプレン単独重合体ブロック−スチレン単独重合体ブロックから構成された重合体の水添物などがあげられ、これらの中では、(a)−(b2)−(a)で表わされるスチレン−ジエン系共重合体がより好ましく、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体水添物が特に好ましい。
【0034】
該ビニル芳香族化合物−共役ジエン共重合体水添物の全ビニル芳香族化合物単位含有量(T:重量%)は、得られる粉末成形体の柔軟性、耐折り曲げ白化性及び耐熱性(成形体表面の光沢およびブリード物防止)の観点から、10〜18重量%であることが好ましく(要件▲3▼)、12〜17重量%であることがより好ましい。なお、全ビニル芳香族化合物単位含有量は、該ビニル芳香族化合物−共役ジエン共重合体水添物の四塩化炭素等溶液を用いて、1H−NMR測定により求めることができる。
【0035】
該ビニル芳香族化合物−共役ジエン共重合体水添物としては、得られる粉末成形体の得られる粉末成形体の柔軟性、耐折り曲げ白化性及び耐光性の観点から、ビニル芳香族化合物−共役ジエン共重合体水添物中の水添共役ジエン単位の含有量100重量%に対し、側鎖の炭素原子数が2以上である水添共役ジエン単位の含有量(V:重量%)が60重量%を超えるビニル芳香族化合物−共役ジエン共重合体水添物が好ましく(要件▲4▼)、側鎖の炭素原子数が2以上である水添共役ジエン単位の含有量が65〜85重量%であるビニル芳香族化合物−共役ジエン共重合体水添物がより好ましく、側鎖の炭素原子数が2以上である水添共役ジエン単位の含有量が70〜80重量%であるビニル芳香族化合物−共役ジエン共重合体水添物が更に好ましい。なお、ビニル芳香族化合物−共役ジエン共重合体を水添することにより共役ジエン単位の不飽和結合が飽和されるが、該飽和されてなる単量体単位を水添共役ジエン単位とし、該単位の含有量は、赤外分析を用い、モレロ法により求めることができる。
【0036】
該ビニル芳香族化合物−共役ジエン共重合体水添物としては、得られる粉末成形体の耐熱性(成形体表面の光沢およびブリード物防止)の観点から、(a)ビニル芳香族化合物重合体ブロック中のビニル芳香族化合物単位の含有量(S:重量% ただし、ビニル芳香族化合物−共役ジエン共重合体中のビニル芳香族化合物単位の含有量を100重量%とする。)、条件▲3▼の(T)、条件▲4▼の(V)の関係が、下記式(1)を満足すること(要件▲5▼)を充足することが好ましい。
V≦0.375×S+1.25×T+40 (1)
【0037】
これらのうち、上記要件▲2▼〜▲5▼を充足する該ビニル芳香族化合物−共役ジエン共重合体水添物を使用した場合は、機械的強度、柔軟性、耐折り曲げ白化性、耐熱性(成形体表面の光沢およびブリード物防止)、耐光性に優れた粉末成形体を得ることができる。
【0038】
要件▲2▼〜▲5▼を充足する該ビニル芳香族化合物−共役ジエン共重合体水添物は、たとえば特開平3―72512号公報、特開平5―271325号公報、特開平5―271327号公報、特開平6−287365号公報などに記載された方法によって製造することができる。
【0039】
また、上記スチレン系熱可塑性エラストマーに、上記のポリオレフィン系樹脂を含有させて使用することもでき、該ポリオレフィン系樹脂の含有量は、スチレン系熱可塑性エラストマー100重量部に対し、通常500重量部以下であり、好ましくは50〜400重量部である。
【0040】
ポリウレタン系熱可塑性エラストマーとは、ポリウレタンをハードセグメントに、ポリオールやポリエステルをソフトセグメントに有する熱可塑性エラストマーである。必要に応じて、安定剤や顔料が配合されてなる。また、ポリウレタン系熱可塑性エラストマーからなるパウダーとしては、三洋化成工業株式会社製のメルテックスLA等が挙げられる。
【0041】
ポリ塩化ビニル系熱可塑性エラストマーとは、ポリ塩化ビニル樹脂、可塑剤及び必要に応じて安定剤や顔料が配合されなる熱可塑性エラストマーである。ポリ塩化ビニル系熱可塑性エラストマーとしては、例えば住友化学工業株式会社製スミリットFLX等が挙げられる。また、塩化ビニル系熱可塑性エラストマーは、さらにNBR(アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ゴム)や、EVA(エチレン−酢酸ビニル共重合体ゴム)等のポリマーが配合されていてもよい。この場合、耐寒衝撃性の優れた粉末成形体を得ることができる。
【0042】
ポリアミド系熱可塑性エラストマーとは、結晶性で溶融温度の高いポリアミドをハードセグメントとして有し、非結晶性でガラス転移温度の低いポリエーテルやポリエステルをソフトセグメントとして有するブロックコポリマーである。必要に応じて、顔料や安定剤が配合される。ポリアミド系熱可塑性エラストマーは、ポリエーテルエステルタイプ及びポリエステルアミドタイプの2種類に大別される、また、ポリアミド系熱可塑性エラストマーは、さらにNBR(アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ゴム)や、EVA(エチレン−酢酸ビニル共重合体ゴム)等のポリマーが配合されていてもよい。この場合、耐寒衝撃性の優れた粉末成形体を得ることができる。
【0043】
熱可塑性エラストマーとしては、得られる粉末成形体の機械的強度、耐折り曲げ白化性、耐熱性(成形体表面の光沢及びブリード物防止)及び耐光性を高める観点から、オレフィン系熱可塑性エラストマー及びスチレン系熱可塑性エラストマーを含有する熱可塑性エラストマーが好ましく、ポリプロピレン系樹脂及び上記▲1▼の要件を充足するエチレン−α−オレフィン共重合体からなるオレフィン系熱可塑性エラストマー及び上記▲2▼〜▲5▼のすべてを充足するビニル芳香族化合物−共役ジエン共重合体水添物を含有する熱可塑性エラストマーがより好ましい。
【0044】
この場合、エチレン−α−オレフィン共重合体の含有量は、得られる粉末成形体の柔軟性、耐寒衝撃性、耐熱性及び耐光性をより高める観点から、ポリオレフィン系樹脂100重量部に対し、好ましくは20〜200重量部であり、より好ましくは25〜150重量部である。
【0045】
また、ビニル芳香族化合物−共役ジエン共重合体水添物の含有量は、得られる粉末成形体の機械的強度、耐折り曲げ白化性、耐熱性及び耐光性をより高める観点から、ポリオレフィン系樹脂100重量部に対し、好ましくは20〜300重量部であり、より好ましくは25〜150重量部である。
【0046】
本発明の粉末成形用パウダーに用いられる熱可塑性エラストマーパウダーは、上記の熱可塑性エラストマーの他に、共役ジエン重合体、天然ゴム、ブチルゴム、クロロプレンゴム、エピクロロヒドリンゴム、アクリルゴム等のゴム質重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体及びこれらのけん化物、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸グリシジル−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メタクリル酸グリシジル−酢酸ビニル共重合体等の他の重合体成分を、本発明の効果を損なわない範囲で含有していてもよい。その含有量は、熱可塑性エラストマー100重量部に対して、通常50重量部以下である。
【0047】
本発明の粉末成形用パウダーに用いられる熱可塑性エラストマーパウダーは、たとえば鉱物油系軟化剤や、フェノール系、サルファイト系、フェニルアルカン系、フォスファイト系、アミン系、アミド系等の耐熱安定剤、耐候安定剤、帯電防止剤、顔料、シリコーン化合物、金属石鹸、パラフィン系、マイクロクリスタリン系、水添テルペン樹脂等のワックス、防かび剤、抗菌剤、フィラー、発泡剤などの各種添加剤などを含有していてもよい。
【0048】
本発明の粉末成形用パウダーに用いられる熱可塑性エラストマーパウダーが顔料を含有する場合、所望の色の粉末成形体を得ることができる。顔料としては、アゾ系、フタロシアン系、スレン系、染色レーキ等の有機顔料、酸化チタン等の酸化物系、クロモ酸モリブデン酸系、硫化セレン化合物、フェロシアン化合物、カーボンブラック等の無機顔料が用いられる。
【0049】
熱可塑性エラストマーパウダーに用いられる熱可塑性エラストマーを含有する重合体組成物を得るためには、熱可塑性エラストマーを構成する上記の重合体成分及び必要に応じて他の重合体成分及び/又は添加剤とを溶融混練すればよい。また、上記の成分の全種類あるいは数種類を選択して混練又は動的架橋した後に、選択しなかった成分を溶融混練することによっても製造することができる。ここで、溶融混練には、一軸押出機、二軸押出機、ニーダー、ロール等の公知の混練設備を用いることができる。なお、先述のその他の重合体成分や添加剤は、これらが予め配合された上記の重合体成分を用いることによって配合することもできるし、上記成分の混練や動的架橋の際に配合することもできる。
【0050】
これら熱可塑性エラストマーパウダーのメルトフローレート(MFR)は、10〜200g/10分であり、好ましくは30〜100g/10分である。該MFRが低すぎると、粉末成形用パウダーの溶融性に劣ることがあり、得られる粉末成形体に欠肉やピンホール等が発生し、機械的強度が劣る場合や、粉末成形時における脱型性に劣る場合がある。また、該MFRが高すぎると得られる成形体の機械的強度が劣る場合や、粉末成形時における脱型性に劣る場合がある。なお、MFRは、JIS K−7210(1976)に従って、温度230℃、荷重21.18Nの条件で測定される。
【0051】
本発明の粉末成形用パウダーに用いられる熱可塑性エラストマーパウダーは、上記の熱可塑性エラストマーを含有する重合体組成物を機械的に粉砕する方法、ストランドカット法、ダイフェースカット法又は溶剤処理法等の方法によって製造することができる(例えば、特開2001−49052号公報等を参照)。
【0052】
上記の熱可塑性エラストマーを含有する重合体組成物を機械的に粉砕する方法としては、冷凍粉砕法又は常温粉砕法があげられる。冷凍粉砕法は、該重合体組成物を熱可塑性エラストマーのガラス転移温度以下、好ましくは−70℃以下、さらに好ましくは−90℃以下に冷却し、冷却状態を保ったまま粉砕する方法である。熱可塑性エラストマーパウダーの粒径をより均一にし、粉末成形性を高める観点から、冷凍粉砕法が好ましい。
【0053】
上記の熱可塑性エラストマーパウダーの平均粒径は、30〜1000μmであり、好ましくは100〜600μmであり、より好ましくは200〜500μmである。該粒径が大きすぎると、得られる粉末成形体の肉厚を薄厚に制御するのが困難となったり、得られる粉末成形体に欠肉やピンホールが発生する場合や、粉末成形時における脱型性に劣る場合がある。また、該平均粒径が小さすぎると得られる粉末成形用パウダーの粉体流動性が低下したり、得られる粉末成形体に欠肉やピンホールが発生する場合や、作業性、粉末成形時における脱型性に劣る場合がある。なお、熱可塑性エラストマーパウダーの平均粒径は、JIS Z−8801(1976)に規定される標準篩を用い、JIS R−6002(1978)に従い、篩い分け法により測定される。
【0054】
本発明の熱可塑性樹脂粉体に用いられる熱可塑性樹脂は、ガラス転移温度が60〜200℃である熱可塑性樹脂であり、好ましくはガラス転移温度が80〜150℃である熱可塑性樹脂である。該ガラス転移温度が低すぎると、得られる粉末成形用パウダーの作業性や粉体流動性が不十分となることがあり、また粉末成形時における脱型性が低下する場合がある。また、ガラス転移温度が高すぎると粉末成形時の溶融性が低下したり、得られる粉末成形体の柔軟性や機械的強度が低下したり、粉末成形時における脱型性が低下する場合がある。なお、ガラス転移温度は、DSC法を用いて10℃/分で昇温することにより測定される。
【0055】
このような熱可塑性樹脂粉体に用いられる熱可塑性樹脂としては、たとえば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、メチルメタアクリレート、エチルメタアクリレート、イソプロピルメタアクリレート、t−ブチルメタアクリレート、フェニルメタアクリレートなどのアクリレートやメタアクリレートからなる繰り返し単位を含有する重合体であるアクリレート系重合体;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエンなどのビニル芳香族化合物からなる繰り返し単位を含有する重合体であるビニル芳香族系重合体;アクリロニトリル、シアン化ビニリデンなどのシアン化ビニルからなる繰り返し単位を含有する重合体であるシアン化ビニル系重合体;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステルからなる繰り返し単位を含有する重合体であるビニルエステル系重合体;メチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテルなどのビニルエーテルからなる繰り返し単位を含有する重合体であるビニルエーテル系重合体などがあげられる。また、これらは単独重合体であっても共重合体であってもよい。これらの中では、入手容易性及び作業性の観点から、アクリル系重合体が好ましい。なお、熱可塑性樹脂のガラス転移温度は、JIS K−7121(1987)に従い測定される。
【0056】
熱可塑性樹脂粉体の平均粒径は、0.01〜20μmであり、好ましくは0.03〜15μm、より好ましくは0.05〜10μmである。平均粒径が小さすぎる場合、得られる粉末成形用パウダーの作業性や粉体流動性に劣る場合がある。また、大きすぎる場合、得られる粉末成形用パウダーの作業性や粉体流動性に劣る場合がある。
【0057】
なお、熱可塑性樹脂粉体の平均粒径は、該無機粉体を2000〜30000倍の倍率で電子顕微鏡にて観察し、その中から任意に50個程度の熱可塑性樹脂粉体の直径を測定し、その数平均値より求められる。
【0058】
該熱可塑性樹脂粉体の含有量は、上記熱可塑性エラストマーからなるパウダー100重量部に対して0.1〜10重量部であり、好ましくは0.2〜5重量部、より好ましくは0.5〜3重量部である。該配合量が少なすぎる場合は、得られる粉末成形用パウダーの粉体流動性、粉末成形時における脱型性に劣る場合がある。また、該配合量が多すぎる場合は、得られる粉末成形用パウダーの作業性や粉体流動性に劣る場合があり、得られる粉末成形体に欠肉、ピンホール等が発生し、機械的強度に劣る場合もある。
【0059】
熱可塑性樹脂粉体は、公知の方法により製造することができるが、たとえば、乳化重合法、懸濁重合法、粉砕法などをあげることができる。また、熱可塑性樹脂粉体は、単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0060】
本発明に用いられる無機粉体は、1次粒径が0.1〜10μmである無機粉体である。該無機粉体としては、アルミナ、シリカ、アルミナシリカ、炭酸カルシウム等の粉体があげられる。該粉体の表面はジメチルシリコーンオイル等でコーティングされていてもよいし、トリメチルシリル基等で表面処理されていてもよい。該無機粉体の1次粒径は0.1〜10μmであり、好ましくは0.5〜8 μmであり、更に好ましくは2〜5μmである。平均粒径が小さすぎる場合、粉末成形用パウダーの作業性や粉末成形時における脱型性が劣る場合がある。また、大きすぎる場合は、得られる粉末成形用パウダーの作業性が劣る場合がある。
【0061】
なお、該無機粉体の1次粒径は、熱可塑性樹脂粉体を2000〜30000倍の倍率で電子顕微鏡にて観察し、その中から任意に50個程度の無機粉体の直径を測定し、その数平均値より求められる。
【0062】
該無機粉体の含有量は、上記熱可塑性エラストマーからなるパウダー100重量部に対して0.01〜10重量部であり、好ましくは0.1〜5重量部、より好ましくは0.2〜3重量部である。該配合量が少なすぎる場合は、得られる粉末成形用パウダーの作業性、粉体流動性に劣る場合がある。また、該配合量が多すぎる場合は、得られる粉末成形用パウダーの粉体流動性に劣る場合があり、得られる粉末成形体に欠肉、ピンホール等が発生し、機械的強度に劣る場合や、粉末成形時における脱型性が劣る場合がある。
【0063】
また、該無機粉体は、単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0064】
上記熱可塑性エラストマーからなるパウダーに、上記熱可塑性樹脂粉体及び無機粉体をドライブレンドする方法としては、該熱可塑性樹脂粉体及び該無機粉体が熱可塑性エラストマーからなるパウダー上に均一付着する方法であれば、特に限定されるものではない。例えば、ジャケットのついたブレンダーや高速回転型ミキサー、ナウターミキサー、ユニバーサルミキサー等を使用してブレンドする方法などがあげられる。また、配合は通常常温で行われる。
【0065】
本発明の粉末成形用パウダーは、粉末スラッシュ成形法、流動浸漬法、静電塗装法、粉末溶射法、粉末回転成形法などの種々の粉末成形法に適用することができるが、中でも粉末スラッシュ成形法に好適である。
【0066】
例えば、粉末スラッシュ成形法では、以下に示す第一工程から第五工程からなる方法により製造される。
第一工程:熱可塑性エラストマーの溶融温度以上に加熱された金型の成形面上に、粉末成形用パウダーを供給する工程
通常、金型温度は160〜320℃であり、金型の加熱方法は、ガス加熱炉方式、熱媒体油循環方式、熱媒体油内又は熱流動砂内への浸漬方式、高周波誘導加熱方式などが用いられる。
第二工程:第一工程の成形面上で粉末成形用パウダーを所定の時間加熱し、少なくともその表面が溶融したパウダーを互いに融着させる工程
第三工程:第二工程において所定時間経過した後に、融着しなかった粉末成形用パウダーを回収する工程
第四工程:必要に応じて、溶融した粉末成形用パウダーがのっている金型をさらに加熱する工程
第五工程:第四工程の後、金型を冷却して、その上に形成された成形体を金型から脱型する工程
本発明の粉末成形用パウダーを用いて粉末スラッシュ成形を行った場合、第五工程における脱型性に優れる。
【0067】
また、上記の脱型性をより高めるため、第一工程で熱可塑性エラストマーの溶融温度以上に金型を加熱する前に、該金型の成形面上に、フッ素系及び/又はシリコーン系離型剤をコートしておいてもよい。フッ素系スプレーとしては、ダイキン社製のダイフリーGA−6010(有機溶剤希釈品)、ME−413(水希釈品)等が、シリコーン系スプレーとしては、例えば信越シリコーン社製のKF96SP(有機溶剤希釈品)、フリリース800(水希釈品)等が挙げられる。
【0068】
本発明の粉末成形体は単層成形体として使用してもよく、成形体の片面及び/又は両面に他の層を積層した多層成形体として使用してもよい。該他の層としては、合成樹脂層や金属層などがあげられ、該合成樹脂層を構成する合成樹脂としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン樹脂、熱可塑性エラストマー、ポリアミド樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリエステル樹脂、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体)、接着性樹脂などをあげることができる。なお、これらの層は発泡処理されていてもよい。
【0069】
また、本発明の成形体は、たとえばインストルメントパネル、ドアトリム、コンソールボックス、ピラー等の自動車内装部品等に最適に使用することができる。
【0070】
【実施例】
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。
はじめに、本発明における各種評価方法および原料について説明する。
[1]評価方法
(1)メルトフローレート(MFR)
JIS K−7210(1976)に従い、荷重21.18N、温度230℃にて測定した。
(2)A硬度
JIS K−6253(1997)に従い測定を行った。
【0071】
(3)ビニル芳香族化合物−共役ジエン共重合体水添物中のビニル芳香族化合物単位の含有量(T:重量%)
ビニル芳香族化合物−共役ジエン共重合体水添物の四塩化炭素溶液を用いて、1H−NMR測定法(周波数90MHz)より求めた。
(4)(a)ビニル芳香族化合物重合体ブロック中のビニル芳香族化合物単位の含有量(S:重量%)
ビニル芳香族化合物−共役ジエン共重合体水添物の四塩化炭素溶液を用いて、1H−NMR測定法(周波数90MHz)より求めた。
(5)側鎖の炭素数が2以上である水添共役ジエン単位の含有量(V:重量%)赤外分析を用い、モレロ法により求めた。
(6)ビニル芳香族化合物−共役ジエン共重合体水添物の水添率
ビニル芳香族化合物−共役ジエン共重合体の四塩化炭素溶液、ビニル芳香族化合物−共役ジエン共重合体水添物の四塩化炭素溶液を用いて、1H−NMR測定法(周波数90MHz)より求めた。
(7)熱可塑性樹脂粉体のガラス転移温度
セイコーインスツルメンツ株式会社製DSC(型番RDC220)を用い、10℃/分で昇温することにより求めた。
【0072】
(8)熱可塑性エラストマーパウダーの平均粒径
JIS Z−8801(1976)にて規定されている標準篩を用いて、JIS R−6602(1978)に従い、篩い分け法により測定した。
(9)熱可塑性樹脂粉体の平均粒径及び無機粉体の1次粒径
熱可塑性樹脂粉体又は無機粉体を2000〜5000倍の倍率で電子顕微鏡にて観察し、その中から任意に50個の粉体の直径を測定し、数平均値より求めた。
【0073】
(10)粉末成形用パウダーの作業性
後述の方法で製造した粉末成形用パウダー1kgを、ポリエチレン製透明袋(サーモ株式会社製、26cm×38cm×0.03mm厚)に投入し、室温で1時間放置した。次いで、該粉末成形用パウダーを該ポリエチレン製袋の開口部を下に向けることにより排出した後、該ポリエチレン製袋の内側の様子を観察し、下記の基準によって評価した。
1:熱可塑性樹脂粉体の付着が観察された。
2:熱可塑性樹脂粉体の付着がほとんど観察されなかった。
(11)粉末成形用パウダーの粉体流動性
JIS K−6722(1977)に記載の、かさ比重測定装置の漏斗に100cm3の粉末成形用パウダーを入れた後、ダンパーを開いてから全パウダーが漏斗から抜け出るまでの時間を測定した。
【0074】
(12)粉末成形時における脱型性
<1>表面に微細模様を有するニッケル製金型(15cm×30cm×3mm厚)を、砂及びガラスビーズからなる混合物を用いてホーニング処理(洗浄処理)を行った。
<2>該金型を雰囲気温度350℃のオーブンに14分間入れて加熱した後、取り出した。該金型の表面温度が280℃になった時点で後述する粉末成形用パウダーをふりかけ、該粉末成形用パウダーを該金型上で溶融させ、互いに融着させた。10秒後、融着しなかった該粉末成形用パウダーを払い落とした。該金型を雰囲気温度280℃のオーブン内に1分間入れた後に該金型を水冷し、得られた粉末成形体の脱型を測定した。この時、該金型に形成された成形シートの端部を予め剥離し、粉末成形体13cm幅辺りの脱型に要した力を、ばねばかりを用いて測定した。なお、脱型時において、粉末成形体を引張る方向と金型内面とのなす角度は90°とした。
(13)粉末成形体の機械的強度(引張強度)
JIS K−7113(1981)に従い、3号試験片、試験速度200mm/分の条件で、破断伸び率、破断強度の測定を行った。
(14)粉末成形体の耐寒衝撃性
レオメトリクス社製高速衝撃試験装置HRIT−8000を用いて−15℃雰囲気下で測定した。後述の粉末スラッシュ成形法によって得られた1mm厚の粉末成形体を、9cm×9cmに切断した。恒温槽内のフォルダーに該粉末成形体を固定した後、該恒温槽の槽内温度が−15℃の状態で、該成形粉末成形体に5m/秒の速度でステンレススチール製のダート(5/8インチφ製)を衝突させ、該成形体に衝撃を与えた。耐寒衝撃性を下記の基準によって評価した。
1:該成形シートが脆性破壊した
2:該成形シートが延性破壊した。
【0075】
[2]原料
▲1▼熱可塑性エラストマー
ポリオレフィン樹脂:プロピレン−エチレンランダム共重合体樹脂(住友化学工業株式会社製 PPD200、エチレン単位含有量5重量%、MFR=220g/10分)
エチレン−α−オレフィン共重合体:エチレン−オクテン共重合体(デュポンダウエラストマー社製 エンゲージ8411、MFR=18g/10分(但し荷重21.18N、温度190℃にて測定)、A硬度76)
ビニル芳香族化合物−共役ジエン共重合体水添物:スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体の水添物(全スチレン単位含有量15重量%、ビニル芳香族化合物重合体ブロック中のビニル芳香族化合物単位の含有量100重量、側鎖の炭素数が2以上である水添共役ジエン単位の含有量80重量%、共役ジエン単位の二重結合の水添率98%)
▲2▼添加剤
水添テルペン樹脂:ヤスハラケミカル(株)社製、クリアロンM115
酸化防止剤:チバスペシャリティーケミカルズ(株)社製 IRGANOX1076
滑剤:日本精化(株)社製 ニュートロンS(エルカ酸アミド)
顔料:グレー色顔料(住化カラー(株)社製 グレーPPM8Y1853)
▲3▼熱可塑性樹脂粉体
メチルメタアクリレート単独重合体パウダー(日本ゼオン(株)社製 F−325、平均粒径1.0μm、ガラス転移温度117℃)
▲4▼無機粉体
アルミナシリカ:水澤化学工業(株)社製 JC30、1次粒径3μm
シリカ:日本アエロジル(株)社製 OX50、1次粒径50nm
【0076】
実施例1
[[粉末成形用パウダーの製造]
プロピレン−エチレン共重合体樹脂100重量部、エチレン−オクテン共重合体84重量部、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体の水添物113重量部、水添テルペン樹脂16重量部、酸化防止剤1.8重量部、滑剤0.6重量部、顔料9重量部を、二軸混練機(日本製鋼所(株)社製、TEX−44HCT)を用いて、シリンダー温度150℃で混練して熱可塑性エラストマーを作成し、これを切断機で切断してペレットとした。なお、該熱可塑性エラストマーのメルトフローレート(MFR)は、80g/10分であった。
該ペレットを液体窒素により−120℃に冷却後、冷却状態を保ったまま粉砕し、更に粉砕物をタイラー標準篩(目開き600μm×600μm)により篩うことにより熱可塑性エラストマーパウダーを得た。該パウダーの平均粒径は、268μmであった。
次いで、この熱可塑性エラストマーパウダー100重量部あたりに、メチルメタアクリレート単独重合体パウダー2重量部及びアルミナシリカ2重量部をヘンシェルミキサー(川田製作所社製、20リッタースーパーミキサー)で配合し、粉末成形用パウダーを得た。得られた粉末成形用パウダーの粉体流動性及び作業性の評価結果を表1に示す。
【0077】
[粉末スラッシュ成形法による粉末成形体の製造]
得られた粉末成形用パウダーを、290℃に加熱されたしぼ模様付き金型(30cm角)の成形面上に供給し、次いで15秒間放置した後、余剰のパウダーを払い落とし、280℃のオーブン内に1分間保管した。その後、シート状に溶融した熱可塑性エラストマー組成物からなるパウダーの乗った金型を水冷し、該金型からシートを脱型することにより、粉末成形体を得た。得られた粉末成形体の機械的強度(引張強度)、粉末成形体の耐寒衝撃性の評価結果を表1に示す。
【0078】
[粉末成形時における脱型性]
また、上記の方法により粉末成形時における脱型性を測定した結果についても表1に示した。
【0079】
実施例2
実施例1において、メチルメタアクリレート単独重合体パウダーの配合量を1重量部とした以外は、実施例1と同様の方法で粉末成形用パウダーを得た。評価結果を表1に示す。
【0080】
実施例3
実施例1において、メチルメタアクリレート単独重合体パウダーの配合量を1重量部、アルミナシリカの配合量を1重量部とした以外は、実施例1と同様の方法で粉末成形用パウダーを得た。評価結果を表1に示す。
【0081】
比較例1
実施例1において、アルミナシリカを配合しなかった以外は、実施例1と同様の方法で粉末成形用パウダーを得た。評価結果を表2に示す。
【0082】
比較例2
実施例1において、メチルメタアクリレート単独重合体パウダーを配合せず、無機粉体として、アルミナシリカ2重量部に加え、シリカを熱可塑性エラストマーパウダー100重量部あたり1重量部配合した以外は、実施例1と同様の方法で粉末成形用パウダーを得た。評価結果を表2に示す。
【0083】
【表1】
【0084】
【表2】
【0085】
【発明の効果】
本発明により、粉体流動性、作業性及び粉末成形時における脱型性に優れる粉末成形用パウダー及び該パウダーを粉末成形してなる粉末成形体を提供することができた。更には、該パウダーを粉末成形してなる粉末成形体は、機械的強度、耐寒衝撃性、柔軟性、耐折り曲げ白化性、耐熱性(成形体表面の光沢およびブリード物防止)、耐光性にも優れうる。そのため、該粉末成形体は、インストルメントパネル、ドアトリム、コンソールボックス、ピラー等の自動車内装部品等に使用される。
Claims (6)
- 下記成分(I)100重量部と、下記成分(II)0.1〜10重量部と、下記成分(III)0.01〜10重量部とをドライブレンドしてなる粉末成形用パウダー。
(I):平均粒径が30〜1000μmであり、JIS K−7210(1976)に従い、荷重21.18N、温度230℃で測定されるメルトフローレートが、10〜200g/10分である熱可塑性エラストマーパウダー
(II):平均粒径が0.01〜20μmであり、ガラス転移温度が60〜200℃である熱可塑性樹脂粉体
(III):1次粒径が0.1〜10μmである無機粉体 - 熱可塑性樹脂粉体がアクリル系重合体である請求項1記載の粉末成形用パウダー。
- 無機粉体がアルミナ、シリカまたはアルミナシリカから選ばれる少なくとも一種類である請求項1または2に記載の粉末成形用パウダー。
- 熱可塑性エラストマーパウダーが、オレフィン系熱可塑性エラストマー及びスチレン系熱可塑性エラストマーを含有するパウダーである請求項1〜3いずれかに記載の粉末成形用パウダー
- 熱可塑性エラストマーパウダーが下記成分(1)〜(3)を含有するパウダーである請求項1〜3いずれかに記載の粉末成形用パウダー。
(1):ポリオレフィン系樹脂
(2):下記要件▲1▼を充足するエチレン−α−オレフィン共重合体
▲1▼:JIS K−6253(1997)に従い測定されるA硬度が80以下であること
(3):下記要件▲2▼〜▲5▼のすべてを充足するビニル芳香族化合物−共役ジエン共重合体水添物
▲2▼:下記(a)及び(b)の構造単位を含有するビニル芳香族化合物−共役ジエン共重合体を水添してなること
(a):ビニル芳香族化合物重合体ブロック
(b):下記(b1)及び(b2)から選ばれる少なくとも一種類のブロック
(b1):ビニル芳香族化合物と共役ジエンの共重合体ブロック
(b2):共役ジエン重合体ブロック
▲3▼:ビニル芳香族化合物−共役ジエン共重合体水添物中のビニル芳香族化合物単位の含有量(T:重量%)が10〜18重量%であること
▲4▼:ビニル芳香族化合物−共役ジエン共重合体水添物中の水添共役ジエン単位の含有量100重量%に対し、側鎖の炭素原子数が2以上である水添共役ジエン単位の含有量(V:重量%)が60重量%を超えること
▲5▼:(a)ビニル芳香族化合物重合体ブロック中のビニル芳香族化合物単位の含有量(S:重量% ただし、水添ジエン系共重合体中のビニル芳香族化合物単位の含有量を100重量%とする。)、条件▲3▼の(T)、条件▲4▼の(V)の関係が、下記式(イ)を満足すること
V≦0.375×S+1.25×T+40 (イ) - 請求項1〜5いずれかに記載の粉末成形用パウダーを粉末成形してなる粉末成形体。
Priority Applications (1)
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