JP2004149477A - ベンゾシクロヘプテン誘導体の製造法 - Google Patents
ベンゾシクロヘプテン誘導体の製造法 Download PDFInfo
- Publication number
- JP2004149477A JP2004149477A JP2002318036A JP2002318036A JP2004149477A JP 2004149477 A JP2004149477 A JP 2004149477A JP 2002318036 A JP2002318036 A JP 2002318036A JP 2002318036 A JP2002318036 A JP 2002318036A JP 2004149477 A JP2004149477 A JP 2004149477A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- compound
- benzocycloheptene
- represented
- salt
- reaction
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Pending
Links
- 0 *C(CCCC1C=C2)CC1C=C2O Chemical compound *C(CCCC1C=C2)CC1C=C2O 0.000 description 7
- XVOAKYWNZDLJHP-UHFFFAOYSA-N OC(C1Cc2cc(O)ccc2CCC1)=O Chemical compound OC(C1Cc2cc(O)ccc2CCC1)=O XVOAKYWNZDLJHP-UHFFFAOYSA-N 0.000 description 2
- WKGOBXRZWAIPHV-UHFFFAOYSA-N NC(CCC1)Cc2c1ccc(O)c2 Chemical compound NC(CCC1)Cc2c1ccc(O)c2 WKGOBXRZWAIPHV-UHFFFAOYSA-N 0.000 description 1
- QYSCVGJPONKGEH-UHFFFAOYSA-N OC(C(CC1)=Cc2cc(O)ccc2C1=O)=O Chemical compound OC(C(CC1)=Cc2cc(O)ccc2C1=O)=O QYSCVGJPONKGEH-UHFFFAOYSA-N 0.000 description 1
Abstract
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、一般式:
【化36】
[式中、R1は低級アルキル基、Aは低級アルキレン基、Xはハロゲン原子をそれぞれ意味する]
で表されるベンゾシクロヘプテン誘導体またはその塩の製造法、およびその製造法における新規中間体に関するものである。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】
本発明の最終目的化合物であるベンゾシクロヘプテン誘導体(VIII)は、β3アドレナリン受容体アゴニスト(以下、「β3アゴニスト」という)活性および抗頻尿作用を有することが知られている[例えば、特表平6−506955号公報(特許文献1)および特開平7−228543号公報(特許文献2参照)]。
【0003】
このベンゾシクロヘプテン誘導体(VIII)の製造法は、特許文献1に記載されているが、光学活性な化合物は、該公報に記載の方法により得られるラセミ体を光学分割して得られており、その結果、目的とする光学活性な化合物の収率が低下するという問題があり、さらに、高価な原料を用いるので製造コスト上の問題があった。
【0004】
【特許文献1】
特表平6−506955号公報
【特許文献2】
特開平7−228543号公報
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明の発明者らは、ベンゾシクロヘプテン誘導体(VIII)の光学活性体を選択的に効率良く製造する方法を開発すべく鋭意研究の結果、光学活性なベンゾシクロヘプテン化合物(I)または光学活性なベンゾシクロヘプテン化合物(IX)を経ることにより、光学活性なベンゾシクロヘプテン誘導体(VIII)またはその塩が選択的に効率よく得られることを見出した。
なお、本発明のベンゾシクロヘプテン化合物(I)、(II)、(III)、(V)、(VI)および(IX)ならびにベンゾシクロヘプテン誘導体(VIII)において用いられている「光学活性」という用語は、ベンゾシクロヘプテン環に置換しているアミノ基がS配置またはR配置のいずれか一方の配置であることをいい、さらに、ベンゾシクロヘプテン誘導体(VIII)においては、アミノ基に置換しているフェニルエチル基がS配置またはR配置のいずれか一方の水酸基を有することをいう。
【0006】
本発明によれば、一般式:
【化37】
[式中、R3は低級アルキル基、R4はアリール基をそれぞれ意味する]
で表される光学活性なベンゾシクロヘプテン化合物(I)またはその塩を基 −CH(R3)R4の脱離反応に付し、式:
【化38】
で表される光学活性なベンゾシクロヘプテン化合物(II)またはその塩とし、この化合物(II)またはその塩をアミノ保護基の導入反応に付して、一般式:
【化39】
[式中、R2はアミノ保護基を意味する]
で表される光学活性なベンゾシクロヘプテン化合物(III)またはその塩とし、この化合物(III)またはその塩に、一般式:
【化40】
X’−A−CO2R1 (IV)
[式中、R1およびAはそれぞれ上記のとおりであり、X’は酸残基を意味する]で表される化合物(IV)を反応させて、一般式:
【化41】
[式中、R1、R2およびAはそれぞれ上記のとおりである]
で表される光学活性なベンゾシクロヘプテン化合物(V)とし、この化合物(V)をアミノ保護基の脱離反応に付して、一般式:
【化42】
[式中、R1およびAはそれぞれ上記のとおりである]
で表される光学活性なベンゾシクロヘプテン化合物(VI)またはその塩とし、この化合物(VI)またはその塩に、一般式:
【化43】
[式中、Xは上記のとおりである]
で表されるエポキシド化合物(VII)を反応させて、一般式:
【化44】
[式中、R1、AおよびXはそれぞれ上記のとおりである]
で表される光学活性なベンゾシクロヘプテン誘導体(VIII)またはその塩を得ることからなるベンゾシクロヘプテン誘導体(VIII)の製造法(以下、製造法(1)という)、ならびにこの製造法(1)において中間体として用いられる新規化合物(III)および(V)が提供される。
【0007】
また、本発明によれば、上記製造法(1)における中間体であるベンゾシクロヘプテン化合物(VI)の製造法も提供される。
すなわち、本発明によれば、前記の一般式:
【化45】
[式中、R3およびR4はそれぞれ上記のとおりである]
で表される光学活性なベンゾシクロヘプテン化合物(I)またはその塩に、一般式:
【化46】
X’−A−CO2R1 (IV)
[式中、R1、AおよびX’はそれぞれ上記のとおりである]
で表される化合物(IV)を反応させて、一般式:
【化47】
[式中、R1、R3、R4およびAはそれぞれ上記のとおりである]
で表される光学活性なベンゾシクロヘプテン化合物(IX)またはその塩とし、この化合物(IX)またはその塩を基 −CH(R3)R4の脱離反応に付して、一般式:
【化48】
[式中、R1およびAはそれぞれ上記のとおりである]
で表される光学活性なベンゾシクロヘプテン化合物(VI)またはその塩の製造法(以下、製造法(2)という)が提供される。
この化合物(VI)またはその塩を上記の製造法(1)と同様に処理して、光学活性なベンゾシクロヘプテン誘導体(VIII)を得ることができる。
【0008】
また、本発明によれば、前記の製造法(1)において中間体として用いられるベンゾシクロヘプテン化合物(III)のラセミ体(IIIa)を経ることによりベンゾシクロヘプテン誘導体(VIII)のラセミ体(VIIIa)製造法も提供される。
すなわち、本発明によれば、式:
【化49】
で表されるベンゾシクロヘプテノン化合物(X)またはその塩を触媒の存在下に還元反応に付して、式:
【化50】
で表されるベンゾシクロヘプテン化合物(XI)またはその塩とし、この化合物(XI)またはその塩に塩基およびアミノ保護基の導入試剤の存在下にアジド化合物を反応させて、一般式:
【化51】
[式中、R2は上記のとおりである]
で表されるベンゾシクロヘプテン化合物(IIIa)またはその塩を得ることからなるベンゾシクロヘプテン誘導体(IIIa)の製造法(以下、製造法(3)という)、ならびにこの製造法(3)における新規ラセミ化合物(XI)および(IIIa)が提供される。
【0009】
この製造法(3)で得られるベンゾシクロヘプテン化合物(IIIa)を、前記の製造法(1)における化合物(III)と同様に処理し、かつ適当な段階で光学分割することにより、光学活性なベンゾシクロヘプテン誘導体(VIII)を得ることができる。
なお本発明において、光学分割は、当該技術分野において公知の方法により、またはその方法に準じて行なうことができる。
具体的には、例えば、特許文献1に記載の方法に準じておこなうことができる。
【0010】
さらに、本発明によれば、前記製造法(1)において中間体として用いられるベンゾシクロヘプテン化合物(VI)のラセミ体(VIa)の別の製造法も提供される。
すなわち、本発明によれば、上記の式:
【化52】
で表されるベンゾシクロヘプテン化合物(XI)またはその塩をエステル化反応に付し、次いで反応生成物をヒドラジンと反応させて、式:
【化53】
で表されるベンゾシクロヘプテン化合物(XII)またはその塩とし、この化合物(XII)またはその塩を亜硝酸塩と反応させ、次いで反応生成物にアミノ保護基の導入試剤を反応させて、一般式:
【化54】
[式中、R2は上記のとおりである]
で表されるベンゾシクロヘプテン化合物(IIIa)またはその塩とし、この化合物(IIIa)またはその塩を、一般式:
【化55】
X’−A−CO2R1 (IV)
[式中、R1、AおよびX’はそれぞれ上記のとおりである]
で表される化合物(IV)と反応させて、一般式:
【化56】
[式中、R1、R2およびAはそれぞれ上記のとおりである]
で表されるベンゾシクロヘプテン化合物(Va)とし、この化合物(Va)をアミノ保護基の脱離反応に付して、一般式:
【化57】
[式中、R1およびAはそれぞれ上記のとおりである]
で表されるベンゾシクロヘプテン化合物(VIa)またはその塩を得ることからなるベンゾシクロヘプテン化合物(VIa)の製造法(以下、製造法(4)という)、ならびにこの製造法(4)における中間体である新規ラセミ化合物(Va)も提供される。
【0011】
この製造法(4)で得られるベンゾシクロヘプテン化合物(VIa)を前記の製造法(1)における化合物(VI)と同様に処理し、かつ適当な段階で光学分割することにより、光学活性なベンゾシクロヘプテン誘導体(VIII)を得ることができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の各一般式におけるR1、R2、R3、R4、A、X、およびX’の定義の好ましい例について、以下に詳細に説明する。
【0013】
R1およびR3で表される「低級アルキル基」およびAで表される「低級アルキレン基」における「低級」とは、特に断りのないかぎり、1〜6の炭素原子を有する直鎖状または分枝鎖状の基を意味する。
【0014】
R1およびR3で表される「低級アルキル基」としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ヘキシルなどの、直鎖状または分枝鎖状の、C1〜C6のアルキル基が挙げられ、なかでも好ましいのはメチルまたはエチルである。
【0015】
R2で表される「アミノ保護基」としては、ベンジルオキシカルボニル、p−ニトロベンジルオキシカルボニル、p−メトキシベンジルオキシカルボニル、p−クロロベンジルオキシカルボニル、m−クロロベンジルオキシカルボニル、p−ブロモベンジルオキシカルボニル、p−メチルベンジルオキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル、イソボルニルオキシカルボニル、2−フェニルイソプロポキシカルボニル、p−ビフェニルイソプロポキシカルボニル、3,5−ジメトキシ−α,α−ジメチルベンジルオキシカルボニル、p−メチルフェニルイソプロポキシカルボニル、トリフェニルメチル、9−フルオレニルメトキシカルボニル、メチルスルホニルエトキシカルボニル、イソニコチニルオキシカルボニル、2,2,2−トリクロロエトキシカルボニル、2−(トリメチルシリル)−エトキシカルボニル、o−ニトロフェニルスルフェニル、3−ニトロ−2−ピリジンスルフェニル、ジフェニルホスフィニル、ジフェニルホスフィノチオイル、ジメチルホスフィノチオイル基などが挙げられる。なかでも容易に脱保護されるt−ブトキシカルボニル基が好ましい。
【0016】
R4で表される「アリール基」としては、フェニル、ナフチル、トリル、キシリル、クメニルなどが挙げられ、なかでも好ましいのはフェニルである。
【0017】
Aで表される「低級アルキレン基」としては、メチレン、エチレン、トリメチレン、プロピレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、エチルエチレンなどの、直鎖状または分枝鎖状の、C1〜C6の低級アルキレン基が挙げられ、なかでも好ましいのはメチレンである。
【0018】
Xで表される「ハロゲン」としては、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素が挙げられ、なかでも好ましいのは塩素または臭素である。
【0019】
X’で表される「酸残基」としては、上記のようなハロゲン、ベンゼンスルホニルオキシ、トルエンスルホニルオキシのようなアレーンスルホニルオキシ、メシルオキシ、エタンスルホニルオキシのようなアルカンスルホニルオキシなどが挙げられ、なかでも好ましいのはハロゲンである。
【0020】
本発明の製造法(1)を反応式で示すと、次のとおりである。
製造法(1):
【化58】
[式中、R1、R2、R3、R4、A、XおよびX’はそれぞれ前記のとおりである]
【0021】
上記の製造法(1)を工程順に以下に説明する。
第1工程:
第1工程の反応は、ベンゾシクロヘプテン化合物(I)またはその塩を、基 −CH(R2)R3の脱離反応に付すことにより行われる。
上記の基 −CH(R2)R3の脱離は、化合物(I)またはその塩を例えば化学還元または接触還元することにより行われる。
【0022】
化学還元は、通常、溶媒中で冷却下ないし加熱下に行われ、溶媒としては、例えば水、メタノール、エタノール、プロパノール、N,N−ジメチルホルムアミド、クロロベンゼン、ブロモベンゼンなど、およびこれらの混合溶媒が挙げられる。
還元剤としては、例えば錫、亜鉛、鉄などの金属もしくは塩化クロム、酢酸クロムなどの金属化合物と、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、トリフルオロ酢酸、p−トルエンスルホン酸などの有機酸もしくは塩酸、臭化水素酸などの無機酸との組合せ、および金属ナトリウム―液体アンモニアなどが好ましい。なお、化学還元に使用する上記の酸が液状である場合には、その酸を溶媒を兼ねて使用することもできる。
【0023】
接触還元は、通常、溶媒中で冷却下ないし加熱下に行われ、溶媒としては、例えば上記の化学還元で用いられる溶媒のほか、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、およびそれらの混合溶媒が挙げられる。これら溶媒に塩酸、ギ酸、酢酸などを添加して反応を促進することもできる。
接触還元に使用される好適な触媒としては、例えば白金板、海綿状白金、白金黒、コロイド白金、酸化白金、白金線などの白金触媒、海綿状パラジウム、パラジウム黒、酸化パラジウム、パラジウム炭、コロイドパラジウム、パラジウム/硫酸バリウム、パラジウム/炭酸バリウムなどのパラジウム触媒、還元ニッケル、酸化ニッケル、ラネーニッケルなどのニッケル触媒、還元コバルト、ラネーコバルトなどのコバルト触媒、還元鉄、ラネー鉄などの鉄触媒、還元銅、ラネー銅、ウルマン銅などの銅触媒などが挙げられる。
また、例えばパラジウム黒、パラジウム炭などのパラジウム触媒とギ酸もしくはギ酸アンモニウムなどとの組合せも、接触還元の触媒として用いることができる。
なお、この工程で用いたベンゾシクロヘプテン化合物(I)またはその塩は、特許文献1の製造例14または製造例73に記載の方法に従って得られるベンゾシクロヘプテン化合物を、例えば(S)−1−フェニルエチルアミンと反応させ、この反応生成物を還元反応に付すことにより得ることができる。
【0024】
第2工程:
第2工程の反応は、上記で得られるベンゾシクロヘプテン化合物(II)またはその塩をアミノ保護基の導入反応に付すことにより得られる。
この反応は、通常、塩基の存在下に、溶媒中、氷冷下ないし室温下で、アミノ保護基の導入試剤を用いて行なわれる。
この反応で用いられる塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムのような無機塩基、トリエチルアミン、ピリジン、N,N−ジメチルアミンのようなルイス塩基などが挙げられる。溶媒としては、テトラヒドロフラン、ジオキサン、N,N−ジメチルホルムアミド、水などの不活性溶媒およびこれらの混合溶媒が挙げられる。
【0025】
この反応におけるアミノ保護基の導入試剤としては、ベンジルオキシカルボニルクロライド、p−ニトロベンジルオキシカルボニルクロライド、p−メトキシベンジルオキシカルボニルクロライド、p−クロロベンジルオキシカルボニルクロライド、m−クロロベンジルオキシカルボニルクロライド、p−ブロモベンジルオキシカルボニルクロライド、p−メチルベンジルオキシカルボニルクロライド、t−ブトキシカルボニルクロライド、t−ブトキシカルボニルヒドラジン、2−t−ブトキシカルボニル−オキシイミノ−2−フェニルアセトニトリル、S−t−ブトキシカルボニル−4,6−ジメチル−2−チオピリミジン、ジ−t−ブチルジカルボネート、イソボルニルオキシカルボニルクロライド、2−フェニルイソプロポキシカルボニルクロライド、p−ビフェニルイソプロポキシカルボニルクロライド、3,5−ジメトキシ−α,α−ジメチルベンジルオキシカルボニルクロライド、p−メチルフェニルイソプロポキシカルボニルクロライド、トリフェニルメチルクロライド、9−フルオレニルメトキシカルボニルクロライド、メチルスルホニルエトキシカルボニルクロライド、イソニコチニルオキシカルボニルクロライド、2,2,2−トリクロロエトキシカルボニルクロライド、2−(トリメチルシリル)−エトキシカルボニルクロライド、o−ニトロフェニルスルフェニルクロライド、3−ニトロ−2−ピリジンスルフェニルクロライド、ジフェニルホスフィニルクロライド、ジフェニルホスフィノチオイルクロライド、ジメチルホスフィノチオイルクロライドなどが挙げられる。なかでも容易に脱保護されるt−ブトキシカルボニル基を有するものが好ましい。
【0026】
第3工程:
第3工程の反応は、上記で得られるベンゾシクロヘプテン化合物(III)またはその塩に化合物(IV)を反応させることにより行われる。
この反応は、通常、溶媒中で冷却下ないし加熱下に行われる。
溶媒としては、例えば塩化メチレン、クロロホルムのようなハロゲン化アルキル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトン、酢酸エチル、およびベンゼン、トルエン、キシレンのような芳香族炭化水素、ならびにこれらの混合溶媒が挙げられる。なお、化合物(IV)が液状である場合には、この化合物(IV)を溶媒を兼ねて使用することもできる。
また、この反応は芳香族炭化水素またはハロゲン化アルキルのような有機溶媒と水との2相系で行うこともできる。
【0027】
この反応は、ヒドロキシ基の活性化剤の存在下に行うのが好ましい。ヒドロキシ基の活性化剤としては、たとえばリチウム、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属、水酸化リチウムのような水酸化アルカリ金属、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどの炭酸アルカリ金属、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムなどの炭酸水素アルカリ金属、水素化ナトリウムなどの水素化アルカリ金属、水素化カルシウムなどの水素化アルカリ土類金属、ナトリウムメトキサイド、ナトリウムエトキサイド、カリウムt−ブトキシドなどのアルカリ金属アルコキサイド、マグネシウムメトキサイド、マグネシウムエトキサイドなどのアルカリ土類金属アルコキサイドなどの塩基、あるいはヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウムなどのヨウ化アルカリ金属などが挙げられる。
また、この反応を上記のような2相系で行なうときには、例えば臭化テトラ−n−ブチルアンモニウムまたは塩化ベンジルトリエチルアンモニウムのような相間移動触媒の存在下に反応を行うと、反応が円滑に進行するので好ましい。
【0028】
第4工程
第4工程の反応は上記で得られるベンゾシクロヘプテン化合物(V)をアミノ保護基の脱離反応に付すことにより行なわれる。
この反応は、通常、溶媒中で接触還元反応、液体アンモニア中で金属ナトリウムによる還元反応、または溶媒中で酸の存在下における加水分解反応により行なわれる。
接触還元により脱保護を行なう場合の触媒としては、上記の第1工程に記載のような触媒が挙げられ、溶媒としては、メタノール、エタノール、エーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、水、ギ酸、酢酸、液体アンモニア、ならびにこれらの混合溶媒が挙げられる。
【0029】
また、酸の存在下に加水分解反応により脱保護を行なう場合の酸としては、塩酸、硫酸、硫酸水素カリウム、臭化水素酸、フッ化水素酸のような無機酸、ギ酸、酢酸、クエン酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸のような有機酸、ボロントリフルオライドエーテル錯体のようなルイス酸が挙げられる。これら酸は単独で、またはこれらの混酸として溶媒を兼ねて、あるいは上記の接触還元におけるような溶媒と共に用いることができる。
とりわけ、ベンゾシクロヘプテン化合物(V)のアミノ保護基がt−ブトキシカルボニル基である場合、この反応は、アルコール溶媒(例えば、メタノール、エタノールなど)中で塩化トリメチルシランを添加するか、または、塩化水素を溶解させた溶媒(例えば、メタノール、エタノール、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなど)中で行われる。
【0030】
第5工程:
第5工程の反応は、上記で得られるベンゾシクロヘプテン化合物(VI)またはその塩をエポキシド化合物(VII)と反応させることにより行われる。
この反応は、通常、溶媒中で、冷却下ないし加熱下に行われる。
溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールなどのアルコール類、ジエチルエーテル、テロラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類、塩化メチレン、酢酸エチル、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどが挙げられる。
【0031】
この反応は、N,N’−ビス(トリメチルシリル)尿素、N−(トリメチルシリル)アセトアミド、1,1,1,3,3,3−ヘキサメチルジシラザンなどのシリル化剤でシリル化後、エポキシド化合物(VII)と反応させるのが好ましい。
また、この反応は、例えば炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどの炭酸アルカリ金属、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウムなどの炭酸アルカリ土類金属、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムなどの炭酸水素アルカリ金属、トリメチルアミン、トリエチルアミンなどのトリアルキルアミン、ピコリンなどの塩基、あるいは塩化アルミニウム、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体、四塩化スズ、四塩化チタン、イットリウムトリフラート、スカンチウムトリフラートのようなルイス酸の存在下に行うこともできる。
【0032】
上記の一連の方法で中間体として得られる化合物(II)、(III)、(V)および(VI)ならびに最終目的化合物(VIII)またはそれらの塩は、常法により単離、精製できるが、中間体化合物はいずれも単離、精製することなく次の反応に用いてもよい。
最終目的化合物(VIII)の塩としては、例えば塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、リン酸塩などの無機酸塩、ギ酸塩、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、シュウ酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩などの有機酸塩などが挙げられる。
また、中間体化合物(II)および(VI)の塩としても、上記と同様のものが挙げられる。
【0033】
また、本発明によれば、前記の製造法(1)における中間体、ベンゾシクロヘプテン化合物(VI)は、次の製造法(2)によっても製造することができる。
製造法(2):
【化59】
[式中、R1、R3、R4、AおよびX’はそれぞれ前記のとおりである]
【0034】
上記の製造法(2)を工程順に以下に説明する。
第1工程:
第1工程の反応は、上記の製造法(1)の第3工程と同様の方法で、ベンゾシクロヘプテン化合物(I)またはその塩に化合物(IV)を反応させることにより行われる。
【0035】
第2工程:
第2工程の反応は、前記の製造法(1)の第1工程と同様の方法で、上記の化合物(IX)またはその塩を、基 −CH(R2)R3の脱離反応に付すことにより行われる。
上記の工程で中間体として得られる化合物(IX)および化合物(VI)は、常法により単離、精製できるが、いずれも単離、精製することなく次の反応に用いてもよい。この中間体(IX)の塩としては、上記の製造法(1)の最終目的化合物(VIII)の塩として挙げられたものが挙げられる。
【0036】
また、本発明によれば、前記の製造法(1)の中間体として用いられるベンゾシクロヘプテン化合物(III)のラセミ体(IIIa)は、次の製造法(3)によって製造することができる。
製造法(3):
【化60】
[式中、R2は前記のとおりである]
【0037】
上記の製造法(3)を工程順に以下に説明する。
第1工程
第1工程は、ベンゾシクロヘプテン化合物(X)またはその塩を触媒と共に水素雰囲気下、常圧または加圧下で還元反応に付すことにより行なわれる。
この工程の還元反応を触媒の存在下に行う際の触媒としては、例えば白金板、海綿状白金、白金黒、コロイド白金、酸化白金、白金線のような白金触媒、海綿状パラジウム、パラジウム黒、酸化パラジウム、パラジウム炭、コロイドパラジウム、パラジウム/硫酸バリウム、パラジウム/炭酸バリウムのようなパラジウム触媒、還元ニッケル、酸化ニッケル、ラネーニッケルのようなニッケル触媒、還元コバルト、ラネーコバルトのようなコバルト触媒、還元鉄、ラネー鉄のような鉄触媒、還元銅、ラネー銅、ウルマン銅のような銅触媒などが挙げられる。
【0038】
この反応は、酸の存在下または非存在下に行うことにより促進される。この反応を酸の存在下に行う際の酸としては、有機酸、無機酸が挙げられる。有機酸としてはp−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、スルホサリチル酸などが挙げられ、無機酸としては硫酸、塩酸などが挙げられ、なかでも塩酸が特に好ましい。
この還元反応は、通常、溶媒中で冷却下ないし加温下に行われる。
溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、プロパノールなどのアルコール類、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル類、ベンゼン、トルエンなどの芳香族炭化水素、酢酸エチル、N,N−ジメチルホルムアミドなど、あるいはこれらの混合溶媒が挙げられる。
【0039】
第2工程:
第2工程の反応は、クルチウス転位反応に準じて行なわれる。
この工程は、上記で得られるベンゾシクロヘプテン化合物(XI)またはその塩に、塩基およびアミノ保護基の導入試剤の存在下にアジド化合物を作用させることにより行なわれる。
この反応は、通常、溶媒中で冷却下ないし加熱下に行われる。溶媒としては、テトラヒドロフラン、ベンゼン、トルエンなどの不活性溶媒およびこれらの混合溶媒が挙げられる。
塩基としては、水酸化アルカリ金属、炭酸水素アルカリ金属または炭酸アルカリ金属などの無機塩基、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、N,N−ジメチルアミノピリジンのようなルイス塩基が挙げられる。
【0040】
この反応におけるアミノ保護基の導入試剤としては、t−ブチルアルコール、ベンジルアルコール、p−ニトロベンジルアルコール、p−メチルベンジルアルコール、p−メトキシベンジルアルコール、p−クロロベンジルアルコール、m−クロロベンジルアルコール、p−ブロモベンジルアルコール、イソボルネオール、2−フェニルイソプロピルアルコール、2−フェニルイソプロパノール、p−ビフェニルイソプロパノール、3,5−ジメトキシ−α,α−ジメチルベンジルアルコール、p−メチルフェニルイソプロパノール、9−フルオレニルマタノール、メチルスルホニルエタノール、メチルスルホニルエタノール、4−ピリジンメタノール、2,2,2−トリクロロエタノール、2−(トリメチルシリル)エタノールなどが挙げられる。
アジド化合物としては、ジフェニルリン酸アジド、アジ化ナトリウムなどが挙げられる。
【0041】
上記の方法で中間体として得られる化合物(XI)および化合物(IIIa)またはそれらの塩は、常法により単離、精製できるが、これらの化合物はいずれも単離、精製することなく次の反応に用いてもよい。これらの中間体(XI)および(IIIa)の塩としては、上記の製造法(1)の最終目的化合物(VIII)の塩として挙げられたものが挙げられる。
なお、この製造法(3)で出発物質として用いられる化合物(X)は新規化合物であり、後記の製造例に記載の方法またはそれに準じた方法で製造することができる。
【0042】
さらに本発明によれば、前記の製造法(1)の中間体として用いられるベンゾシクロヘプテン化合物(VI)のラセミ体(VIa)を、次の製造法(4)に従って製造することもできる。
製造法(4):
【化61】
[式中、R1、R2、AおよびX’は上記のとおりである]
【0043】
この製造法(4)を工程順に以下に説明する。
第1工程:
第1工程および第2工程はクルチウス転位反応に準じて行われる。
第1工程の反応は、ベンゾシクロヘプテン化合物(XI)またはその塩をエステル化することにより活性化し、得られる反応生成物をヒドラジンと反応させることにより行なわれる。
第一段階の反応は、通常、酸の存在下にアルコールと共に40℃〜溶媒の沸点の間の温度で加熱することにより行なわれる。
【0044】
この反応で用いられる酸としては、塩酸、硫酸のような無機酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸のような有機酸が挙げられる。
アルコールとしては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、t−ブチルアルコールなどが挙げられる。これらのアルコールを溶媒として用いることができるが、ベンゼン、トルエンのような非水和性の溶媒を併用してもよい。この反応では、生成する水をディーン・スタークまたはモレキュラーシーブなどを用いて反応系から除去することもできる。
【0045】
第2段階の反応は、第1段階の反応生成物を無水ヒドラジンまたはヒドラジンの水和物と反応させることにより行なわれる。
この反応は、通常、冷却下ないし加熱下に行なわれる。この反応では、上記の第1段階の反応混合物をそのまま無水ヒドラジンまたはヒドラジンの水和物と反応させることができる。上記の第1段階の反応生成物を単離した場合には、この反応は単離した生成物をメタノール、エタノールなどのアルコール中で、無水ヒドラジンまたはヒドラジンの水和物と反応させることにより行なわれる。
【0046】
第2工程
第2工程の反応は、上記の工程で得られるベンゾシクロヘプテンのヒドラジド化合物(XII)またはその塩を、亜硝酸塩と反応させてベンゾシクロヘプテンのアジド化合物とし、次いでこの化合物をアミノ保護基の導入試剤と反応させることにより行なわれる。
第1段階の反応は、通常、溶媒中で酸の存在下に、冷却下ないし室温下で亜硝酸塩を用いて行われる。
この反応で用いられる溶媒としては、水、酢酸エチル、エーテル、テトラヒドロフラン、ベンゼン、トルエンおよびこれらの混合溶媒が挙げられる。
この反応で用いられる酸としては、塩酸、硫酸などの無機酸が挙げられ、亜硝酸塩としては、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウム、亜硝酸カルシウムなどが挙げられる。
【0047】
第2段階の反応は、第1段階で得られる化合物を溶媒中で、アミノ保護基の導入試剤と共に加熱することにより行われる。アミノ保護基の導入試剤としては、前記の製造法(3)の第2工程で用いられるものと同様のものが挙げられる。
溶媒としては、エーテル、ベンゼン、トルエンおよびこれらの混合溶媒が挙げられる。
あるいは、第2工程の反応は、上記の第1段階で得られる化合物を溶媒中で加熱し、次いで前記のようなアミノ保護基の導入試剤と共に、酸の存在下に加熱することにより行なわれる。
この反応で用いられる溶媒としては、酢酸エチル、ベンゼン、トルエンおよびこれらの混合溶媒が挙げられる。
この反応で用いられる酸としては、硫酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸などが挙げられる。
またこの第2工程の反応は、上記の第1段階および第2段階に用いるすべての反応試剤を最初から用いて、ワンポット反応で行なうこともできる。
【0048】
第3工程
第3工程の反応は、前記の製造法(1)の第3工程と同様の方法で、上記の第2工程で得られる化合物(IIIa)を、化合物(IV)と反応させ(第1段階)、次いでその反応生成物(Va)を、前記の製造法(1)の第4工程と同様にして、アミノ保護基の脱離反応に付す(第2段階)ことにより行なわれる。
なお、この第1段階の反応生成物(Va)は常法により単離することができるが、単離せずに第2段階の反応に付してもよい。
【0049】
【実施例】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0050】
製造例1
(1’S,6S)−3−メトキシ−6−(1−フェニルエチルアミノ)−6,7,8,9−テトラヒドロ−5H−ベンゾシクロヘプテン塩酸塩の製造
3−メトキシ−6,7,8,9−テトラヒドロ−5H−ベンゾシクロヘプテン−6−オン(5.0g)および(S)−α−メチルベンジルアミン(3.18g)をp−トルエンスルホン酸1水和物(0.05g)の存在下にトルエン(40mL)中で、生成する水を留去しながら約6時間加熱還流した。反応混合物を冷却し、溶媒を減圧下に留去した後、残渣をメタノール(50mL)に溶解した。窒素雰囲気下、この溶液にラネーニッケル(川研ファインケミカル(株)、NDT−90)(8mL)を加え、水素置換後、水素圧3.5〜4.5kgf/cm2の水素雰囲気下、室温で約5時間撹拌した。反応終了後、ラネーニッケルをろ別し、残渣をメタノール、次いで50%含水メタノールで洗浄し、洗液をろ液と合わせ、減圧下に濃縮した。得られた残渣を酢酸エチル(100ml)に溶解した後、溶液量が半分になるまで減圧濃縮した。得られた溶液に酢酸エチル(50ml)を加えた後、これに4N塩酸−酢酸エチル溶液を室温で撹拌下に滴下して、(1’S,6S)−3−メトキシ−6−(1’−フェニルエチル)アミノ−6,7,8,9−テトラヒドロ−5H−ベンゾシクロヘプテン塩酸塩の結晶(6.30g)を72.2%の収率で得た。
得られた生成物の6位におけるジアステレオマーの比率を液体クロマトグラフィーで分析したところ、6S体:6R体の生成比は、93.3:6.7であり、所望の6S体すなわち標記化合物のジアステレオマー過剰率は86.6%であった。
【0051】
1H−NMR(DMSO−d6)δ:0.95−1.20(1H,m),1.64(3H,d,J=6.6Hz),1.70−2.05(2H,m),2.20−2.45(2H,m),2.55−2.70(2H,m),2.85−3.25(2H,m),3.70(3H,s),4.70−4.95(1H,m),6.60−6.66(1H,dd,J=2.6Hz,8.3Hz),6.79(1H,d,J=2.6Hz),6.96(1H,d,H=8.3Hz),7.31−7.76(5H,m).
MASS(m/z):296[M−HCl+1]+
【0052】
製造例2
(1’S,6S)−3−メトキシ−6−(1−フェニルエチルアミノ)−6,7,8,9−テトラヒドロ−5H−ベンゾシクロヘプテン D−酒石酸塩の製造
(1’S,6S)−3−メトキシ−6−(1−フェニルエチルアミノ)−6,7,8,9−テトラヒドロ−5H−ベンゾシクロヘプテン塩酸塩(102.0kg)に酢酸エチル(510L)および水(510L)を加えて撹拌した。この混液に室温で撹拌下に28%アンモニア水(204L)を加えた。この混合物を同温度で約20分間撹拌し、結晶が完全に溶解したのを確認し、静置した後、酢酸エチル層を分取した。水相を酢酸エチル(306L)で抽出し、この抽出液を先に分取した有機相に合わせ、10%(W/V)食塩水(255L)で2回洗浄し、乾燥し、溶媒を減圧下に留去した。得られた油状物質を、n−プロパノール(1530L)に溶解した後、D−酒石酸(50.74kg)を加えて、約90℃で均一な溶液となるまで撹拌した。この溶液を一時間かけて液温が30〜40℃になるまで緩やかに冷却した。この混液をさらに氷温まで冷却し、氷冷下に一時間撹拌した後、析出した結晶をろ取した。ろ取した結晶をn−プロパノールで洗浄後、乾燥して標記化合物(90.90kg)を66.4%の収率で得た。この化合物のジアステレオマー過剰率は99.4%以上であった。
【0053】
1H−NMR(DMSO−d6)δ:0.84(3H,t,J=7.3Hz),0.90−1.25(1H,m),1.40(3H,d,J=6.6Hz),1.55−1.95(2H,m),1.95−2.35(2H,m),2.55−2.75(2H,m),2.75−3.20(2H,m),3.70(3H,s),4.03(2H,s),4.35−4.45(1H,m),6.57−6.63(1H,dd,J=2.6Hz,8.3Hz),6.75(1H,d,J=2.6Hz),6.94(1H,d,J=8.3Hz),7.20−7.53(5H,m).
MASS(m/z):296[M−酒石酸+1]+
【0054】
製造例3
(1’S,6S)−3−ヒドロキシ−6−(1−フェニルエチルアミノ)−6,7,8,9−テトラヒドロ−5H−ベンゾシクロヘプテン臭化水素酸塩の製造
(1’S,6S)−3−メトキシ−6−(1−フェニルエチルアミノ)−6,7,8,9−テトラヒドロ−5H−ベンゾシクロヘプテン酒石酸塩(90.0kg)、酢酸エチル(360L)および水(450L)の混合物に、約15℃で24%水酸化ナトリウム水溶液(207L)を撹拌下に加えた。この混合物を同温度で約20分間撹拌し、結晶が溶解したのを確認し、10分以上静置した後、酢酸エチル層を分取した。水相を酢酸エチル(180L)で抽出し、この抽出液を先に分取した有機相と合わせ、飽和食塩水(180L)で洗浄し、乾燥し、溶媒を減圧下に留去した。得られた油状残渣を塩化メチレン(270L)に溶解した。
一方、三臭化ホウ素(101.2kg)の塩化メチレン(405L)溶液を約10℃に冷却下に調製した。この溶液を窒素雰囲気下に液温約5℃とし、先に得た油状物質の塩化メチレン溶液に、−13〜0℃に冷却下、滴下した。滴下終了後、反応混合物を約−3℃で1時間撹拌した。反応混合物を15℃以下で、予め約10℃以下に冷却した水(900L)へ撹拌下に滴下した。滴下終了後、反応混合物を0〜5℃で1時間撹拌し、さらに同温度で一夜静置した。
析出した結晶をろ取し、約35℃で真空乾燥し、標記化合物(75.23kg)を97.5%の収率で得た。
【0055】
1H−NMR(DMSO−d6)δ:0.95−1.25(1H,m),1.63(3H,d,J=6.6Hz),1.65−2.00(2H,m),2.15−2.35(1H,m),2.35−2.70(3H,m),2.80−3.20(2H,m),4.75−4.95(1H,m),6.46−6.51(1H,dd,J=2.4Hz,8.1Hz),6.60(1H,d,J=2.4Hz),6.84(1H,d,J=8.1Hz),7.33−7.69(5H,m),9.18(1H,s).
MASS(m/z):282[M−HBr+1]+
【0056】
製造例4
(E)−2−(3−ヒドロキシベンジリデン)グルタル酸の製造
約5℃に冷却したカリウムt−ブトキシド(114.9g)のテトラヒドロフラン(400mL)溶液に、窒素雰囲気下、m−ヒドロキシベンズアルデヒド(50g)およびグルタル酸ジメチル(72.1g)のテトラヒドロフラン(100mL)溶液を撹拌下に滴下して、室温で一夜静置した。反応混合物に水(100mL)および水酸化ナトリウムの24%水溶液(50mL)を加え、50℃で3時間加熱撹拌した。反応終了後、反応混合物を室温に冷却し、水(100mL)を加え撹拌して静置した。分取した下層に、トルエン(50mL)を加え、60℃で加熱撹拌下に濃塩酸(117mL)を滴下し、さらに1時間撹拌した。この混合物を20℃に冷却し、一夜静置した。析出物をろ取し、トルエン(100mL)、水(200mL)およびトルエン(100mL)で順次洗浄し、真空乾燥して、淡黄色結晶として標記化合物(66.9g)を69.2%の収率で得た。
【0057】
1H−NMR(DMSO−d6)δ:2.37−2.49(2H, m), 2.62−2.70(2H, m), 6.76−6.86(3H, m), 7.19−7.27(1H, m), 7.52(1H, s), 9.61(1H, br.s), 12.4(2H, br.s).
MS(API−ES):235.1[M−1]−
【0058】
製造例5
8−カルボキシ−2−ヒドロキシ−6,7−ジヒドロ−5H−ベンゾシクロヘプテン−5−オンの製造
(E)−2−(3−ヒドロキシベンジリデン)グルタル酸(20.00g)およびメタンスルホン酸(60mL)の混合物を、約60℃で約6時間加熱撹拌し、反応終了後、反応混合物を40℃まで冷却した。この反応混合物に、40〜60℃の温度範囲で水(80mL)を撹拌下に滴下し、反応混合物を20℃まで冷却し、一夜静置した。析出物をろ取し、水(200mL)で洗浄し、真空乾燥して、褐色結晶として標記化合物(15.75g)を85.2%の収率で得た。
【0059】
1H−NMR(DMSO−d6)δ:2.46−2.68(2H, m), 2.73−2.79(2H, m), 6.85−6.91(2H, m), 7.88(1H, d, J=9.3Hz), 10.51(1H, s), 12.8(1H, br.s).
MS(API−ES):217.2[M−1]−
【0060】
実施例1
(6S)−6−アミノ−3−ヒドロキシ−6,7,8,9−テトラヒドロ−5H−ベンゾシクロヘプテンの製造
(1’S,6S)−3−ヒドロキシ−6−(1−フェニルエチルアミノ)−6,7,8,9−テトラヒドロ−5H−ベンゾシクロヘプテン(1.0g)のメタノール(20mL)溶液に、ギ酸アンモニウム(0.52g)および10%パラジウム炭素(50%含水、0.1g)を加え、30分間加熱還流した。反応終了後、この反応混合物を室温に冷却し、触媒をろ別し、触媒をメタノールで洗浄し、ろ液と洗液を合わせ減圧下に濃縮した。得られた濃縮残渣に炭酸水素ナトリウムの飽和水溶液(5mL)を加え、この塩基性混合物を酢酸エチル(10mL)で抽出し、さらに酢酸エチル(5mL)で6回抽出した。有機相を合わせ、減圧下に濃縮し、白色結晶の標記化合物(340mg)を77.3%の収率で得た。
【0061】
1H−NMR(CDCl3)δ:1.55−2.15(4H, m), 2.18(3H, br.s), 2.65−2.72(2H, m), 2.82−2.92(2H, m), 3.02−3.18(1H, m), 6.59(1H, dd, J=8.1, 2.6Hz), 6.70(1H, d, J=2.6Hz), 6.96(1H, d, J=8.1Hz).
MS(API−ES):178.3[M+1]+
【0062】
実施例2
(6S)−6−(t−ブトキシカルボニルアミノ)−3−ヒドロキシ−6,7,8,9−テトラヒドロ−5H−ベンゾシクロヘプテンの製造
(6S)−6−アミノ−3−ヒドロキシ−6,7,8,9−テトラヒドロ−5H−ベンゾシクロヘプテン(100mg)のテトラヒドロフラン(2mL)溶液に、ジ−t−ブチルジカルボネート(123mg)を加え、室温で15時間撹拌した。反応終了後、この反応混合物に酢酸エチル(5mL)を加え、炭酸水素ナトリウムの飽和水溶液および飽和食塩水(各2mL)で順次洗浄した。有機相を減圧下に濃縮して、標記化合物を無色のアモルファスとして定量的に得た。
【0063】
1H−NMR(CDCl3)δ:1.43(9H, s), 1.55−1.68(2H, m), 1.82−1.98(2H, m), 2.62−2.72(2H, m), 2.82(1H, dd, J=13.7, 8.0Hz), 2.92(1H, dd, J=13.7, 1.6Hz),3.72−3.92(1H, m), 4.35−4.48(1H, m), 5.35(1H, br.s), 6.64(1H, dd, J=7.9, 2.6Hz), 6.64(1H, d, J=2.6Hz),6.94(1H, d, J=7.9Hz).
MS(API−ES):276.2[M−1]−
【0064】
実施例3
(6S)−6−(t−ブトキシカルボニルアミノ)−3−エトキシカルボニルメトキシ−6,7,8,9−テトラヒドロ−5H−ベンゾシクロヘプテンの製造
(6S)−6−(t−ブトキシカルボニルアミノ)−3−ヒドロキシ−6,7,8,9−テトラヒドロ−5H−ベンゾシクロヘプテン(350mg)、粉砕した炭酸カリウム(580mg)、塩化ベンジルトリエチルアンモニウム(60mg)、ブロモ酢酸エチル(335mg)および酢酸エチル(3mL)の混合物を、40℃で4時間加熱撹拌した。反応終了後、反応液を室温に冷却し、水および飽和食塩水(各1.5mL)で順次洗浄し、溶媒を減圧下に留去した。得られた油状物質をn−ヘプタン−酢酸エチル混液(3:1)で溶出するシリカゲルクロマトグラフィーにより精製し、減圧下に濃縮し、標記化合物(337mg)を淡黄色のアモルファスとして73.4%の収率で得た。
【0065】
1H−NMR(CDCl3)δ:1.30(3H, t, J=7.2Hz), 1.49(9H,s), 1.52−1.68(2H, m), 1.82−1.96(2H, m), 2.65−2.75(2H, m), 2.76−3.04(2H, m), 3.72−3.95(1H, m), 4.27(2H, q, J=7.2Hz), 4.32(1H, br.s), 4.59(2H, s), 6.65(1H, dd, J=8.2, 2.7Hz), 6.74(1H, d, J=2.7Hz), 7.00(1H, d, J=8.2Hz).
MS(API−ES):386.2[M+Na]+
【0066】
実施例4
(6S)−6−アミノ−3−エトキシカルボニルメトキシ−6,7,8,9−テトラヒドロ−5H−ベンゾシクロヘプテンの製造
(6S)−6−(t−ブトキシカルボニルアミノ)−3−エトキシカルボニルメトキシ−6,7,8,9−テトラヒドロ−5H−ベンゾシクロヘプテン(140mg)のエタノール(1.4mL)溶液に、濃塩酸(0.14mL)を室温で加え、60℃で2時間加熱撹拌した。反応終了後、反応液を室温に冷却し、減圧下に濃縮乾固した。濃縮残渣に炭酸水素ナトリウムの飽和水溶液(2mL)を加え、酢酸エチル(5mL)で2回抽出した。有機相を合わせ、飽和食塩水(1mL)で洗浄し、減圧下に濃縮して、標記化合物(87mg)を無色結晶として86%の収率で得た。
【0067】
1H−NMR(CDCl3)δ:1.29(3H, t, J=7.1Hz), 1.38−1.62(1H, m), 1.82−2.04(2H, m), 2.11−2.30(1H, m), 2.62−2.80(2H, m), 2.92−3.32(3H, m), 4.26(2H, q, J=7.1Hz), 4.30(2H, br.s), 4.57(2H, s), 6.65(1H, dd, J=8.3, 2.7Hz), 6.82(1H, d, J=2.7Hz), 7.01(1H, d, J=8.3Hz).
MS(API−ES):264.2[M+1]+
【0068】
実施例5
(1’S,6S)−3−エトキシカルボニルメトキシ−6−(1−フェニルエチルアミノ)−6,7,8,9−テトラヒドロ−5H−ベンゾシクロヘプテン塩酸塩の製造
(1’S,6S)−3−ヒドロキシ−6−(1−フェニルエチルアミノ)−6,7,8,9−テトラヒドロ−5H−ベンゾシクロヘプテン臭化水素酸塩(75.0kg)、塩化メチレン(750L)、水(375L)、塩化ベンジルトリエチルアンモニウム(9.37kg)、炭酸カリウム(171.6kg)およびブロモ酢酸エチル(52.0kg)の混合物を、9時間撹拌還流した。反応終了後、反応混合物を室温で一夜静置し、水(375L)を加え、撹拌後静置して有機層を分取した。水相を塩化メチレン(375L)で抽出し、先に得た塩化メチレン相と合わせ、10%(W/V)食塩水(375L)で洗浄し、減圧下に濃縮し、油状物質を得た。油状物質の酢酸エチル(900L)溶液に、4N塩酸−酢酸エチル溶液(51.9L)を約15℃で滴下した。この混合物をさらに同温度で約30分間撹拌した後、撹拌下に約30分間加熱還流した。混合物を約0℃までゆっくりと冷却し、氷温下で約1時間撹拌し、析出した結晶をろ取した。ろ取した結晶を冷酢酸エチル(375L)で洗浄し、約40℃で真空乾燥して、標記化合物(74.19kg)を収率93.8%で得た。この化合物のHPLC純度は98.0%以上であった。
【0069】
1H−NMR(DMSO−d6)δ:0.95−1.15(1H,m),1.23(3H,t,J=7.1Hz),1.65(3H,d,J=6.6Hz),1.70−2.25(2H,m),2.20−2.45(2H,m),2.55−2.70(2H,m),2.85−3.30(2H,m),4.20(2H,q,J=7.1Hz),4.70(2H,s),4.75−4.90(1H,m),6.60−6.65(1H,dd,J=2.5Hz,8.3Hz),6.84(1H,d,J=2.5Hz),6.97(1H,d,J=8.3Hz),7.31−7.76(5H,m).
MASS(m/z):368[M−HCl+1]+
【0070】
実施例6
(6S)−6−アミノ−3−エトキシカルボニルメトキシ−6,7,8,9−テトラヒドロ−5H−ベンゾシクロヘプテン塩酸塩の製造
(1’S,6S)−3−エトキシカルボニルメトキシ−6−(1−フェニルエチルアミノ)−6,7,8,9−テトラヒドロ−5H−ベンゾシクロヘプテン塩酸塩(100g)、エタノール(1000mL)、ギ酸アンモニウム(46.8g)および10%パラジウム炭素(50%含水、5g)の混合物を、撹拌下、2時間加熱還流して、室温に冷却した。触媒をろ別し、エタノール(100mL)で洗浄し、ろ液と合わせた。ろ液を減圧下に濃縮乾固した。濃縮残渣を酢酸エチル(1000mL)に溶解し、炭酸水素ナトリウムの飽和溶液(300mL)、水(100mL)および飽和食塩水(100mL)で順次洗浄した。有機相を、減圧下に濃縮乾固して、エタノール(500mL)に溶解した。この溶液に、塩化トリメチルシラン(53.79g)を撹拌下に加え、十分に混合して、減圧下に濃縮乾固した。濃縮残渣に酢酸エチル(800mL)を加え、室温で30分撹拌して、析出物をろ取し、酢酸エチル(200mL)で洗浄後、真空乾燥し、無色結晶の標記化合物(45.80g)を61.7%の収率で得た。
【0071】
1H−NMR(DMSO−d6)δ:1.20−1.40(1H,m),1.22(3H,t,J=7.2Hz),1.60−2.00(2H,m),2.10−2.25(1H,m),2.55−2.80(2H,m),2.88−3.12(3H,m),4.17(2H,q,J=7.2Hz),4.72(2H,s),6.62−6.72(2H,m),7.04(1H,d,J=8.0Hz),8.24(3H,br.s).
MASS(API−ES):264.2[M−HCl+1]+
【0072】
実施例7
(6S)−6−アミノ−3−エトキシカルボニルメトキシ−6,7,8,9−テトラヒドロ−5H−ベンゾシクロヘプテンの製造
(6S)−6−アミノ−3−エトキシカルボニルメトキシ−6,7,8,9−テトラヒドロ−5H−ベンゾシクロヘプテン塩酸塩(20g)、酢酸エチル(400mL)の混合物に、撹拌下、水(40mL)と水酸化ナトリウムの24%水溶液(11.12g)の混液を滴下し、撹拌を継続した。反応終了後、有機相を分取し、水相を酢酸エチル(400mL)で洗浄し、先の有機相と合わせ、減圧下に濃縮乾固した。濃縮残渣に酢酸エチル(20mL)を加え、再度濃縮乾固することにより、標記化合物(18.3g)を無色の結晶として定量的に得た。
【0073】
1H−NMR(CDCl3)δ:1.29(3H, t, J=7.1Hz), 1.38−1.62(1H, m), 1.82−2.04(2H, m), 2.11−2.30(1H, m), 2.62−2.80(2H, m), 2.92−3.32(3H, m), 4.26(2H, q, J=7.1Hz), 4.30(2H, br.s), 4.57(2H, s), 6.65(1H, dd, J=8.3, 2.7Hz), 6.82(1H, d, J=2.7Hz), 7.01(1H, d, J=8.3Hz).
MS(API−ES):264.2[M+1]+
【0074】
実施例8
(2’R,6S)−6−(2−(3−クロロフェニル)−2−ヒドロキシエチルアミノ)−3−エトキシカルボニルメトキシ−6,7,8,9−テトラヒドロ−5H−ベンゾシクロヘプテン塩酸塩の製造
(6S)−6−アミノ−3−エトキシカルボニルメトキシ−6,7,8,9−テトラヒドロ−5H−ベンゾシクロヘプテン(260mg)のジメチルスルホキシド(0.5mL)溶液に、N−(トリメチルシリル)アセトアミド(143mg)を室温で加え、同温度で30分間撹拌した。反応終了後、この反応混合物に(R)−m−クロロスチレンオキシド(160mg)を加え、60℃で24時間加熱撹拌して、室温に冷却した。この反応混合物に水(1mL)および1N塩酸(1.2mL)を加え、室温で撹拌した。反応終了後、この反応混合物に炭酸水素ナトリウムの飽和水溶液(2mL)を加え、酢酸エチル(2mL)で抽出し、有機相を飽和食塩水で洗浄した。この有機相に濃塩酸(0.1mL)を撹拌下に加え、減圧下に濃縮した。得られた残渣を酢酸エチル−エタノール混液(10:1)で溶出するシリカゲルクロマトグラフィーで精製して、標記化合物(160mg)を無色結晶として35.7%の収率で得た。
【0075】
1H−NMR(DMSO−d6)δ:1.12−1.36(1H, m), 1.19(3H, t,J=7.1Hz), 1.75−2.08(2H, m), 2.20−2.40(1H, m), 2.58−2.78(2H, m), 2.90−3.24(5H, m), 4.15(2H, q, J=7.1Hz), 4.71(2H, s), 4.98−5.10(1H, m), 6.34(1H, br.s), 6.67(1H, dd, J=8.2, 2.6Hz), 6.88(1H, d, J=2.6Hz), 7.03(1H, d, J=8.2Hz), 7.35−7.55(4H, m), 8.97(2H, br.s).
MS(API−ES):418.3[M−HCl+1]+
【0076】
実施例9
(2’R,6S)−6−(2−(3−クロロフェニル)−2−ヒドロキシエチルアミノ)−3−エトキシカルボニルメトキシ−6,7,8,9−テトラヒドロ−5H−ベンゾシクロヘプテン塩酸塩の製造
(6S)−6−アミノ−3−エトキシカルボニルメトキシ−6,7,8,9−テトラヒドロ−5H−ベンゾシクロヘプテン(250mg)のジメチルスルホキシド(0.5mL)溶液にN,N’−ビス(トリメチルシリル)尿素(213mg)を室温で加え、60℃で30分間加熱撹拌した。反応終了後、この反応混合物に、(R)−m−クロロスチレンオキシド(155mg)を加え、60℃で24時間加熱撹拌し、室温に冷却した。この反応混合物に、1N塩酸(3mL)を加え、室温で撹拌した。反応終了後、この反応混合物をトルエン(10mL)で抽出し、有機相を水(5mL)で洗浄し、乾燥し、減圧下に濃縮し、標記化合物(194mg)を無色アモルファスとして45%の収率で得た。この物質は酢酸エチル−イソプロピルエーテル−水の混液から結晶化した。
この物質の1H−NMRおよびMS(API−ES)のそれぞれのデータは実施例8で得られた物質のものと完全に一致した。
【0077】
実施例10
6−カルボキシ−3−ヒドロキシ−6,7,8,9−テトラヒドロ−5H−ベンゾシクロヘプテンの製造
8−カルボキシ−2−ヒドロキシ−6,7−ジヒドロ−5H−ベンゾシクロヘプテン−5−オン(12.0g)のメタノール(120mL)溶液に、室温で濃塩酸(4mL)および10%パラジウム炭素(50%含水、1.2g)を加え、水素ガスで置換し、水素加圧下(0.45MPa)に、室温で約17時間接触還元を行った。反応終了後、触媒をろ別し、ろ液を減圧下に濃縮した。得られた濃縮残渣にトルエン(24mL)を加え、減圧下に濃縮する操作を3回繰り返した。得られた濃縮残渣を水(36mL)および水酸化ナトリウムの24%水溶液(14.4mL)の混液に溶解し、60℃で30分間加熱撹拌した。反応液を冷却し、濃塩酸(10mL)を加え、酢酸エチル(200mL)で抽出し、この抽出液を、酢酸エチルを溶出溶媒とするシリカゲルクロマトグラフィーにより精製し、溶出溶液を減圧下に濃縮した。得られた濃縮残渣をトルエン(40mL)に分散し、減圧下に濃縮する操作を2回繰り返して結晶化させた。この結晶性物質をトルエン(40mL)に再度懸濁し、60℃で30分間加熱撹拌後、室温に冷却し、さらに2時間撹拌した。得られた析出物をろ取し、真空乾燥して、淡褐色結晶の標記化合物(9.99g)を88.1%の収率で得た。
【0078】
1H−NMR(DMSO−d6)δ:1.15−1.40(1H, m), 1.62−1.95(2H, m), 1.95−2.10(1H, m), 2.18−2.32(1H, m), 2.58−2.66(2H, m), 2.82−2.92(2H, m), 6.46(1H, dd, J=7.9, 2.5Hz), 6.55(1H, d, J=2.5Hz), 6.86(1H, d, J=7.9Hz), 9.06(1H, br.s), 12.1(H, br.s).
MS(API−ES):205.3[M−1]−
【0079】
実施例11
6−(t−ブトキシカルボニルアミノ)−3−ヒドロキシ−6,7,8,9−テトラヒドロ−5H−ベンゾシクロヘプテンの製造
6−カルボキシ−3−ヒドロキシ−6,7,8,9−テトラヒドロ−5H−ベンゾシクロヘプテン(100mg)を、トルエン(1mL)、t−ブチルアルコール(1mL)およびトリエチルアミン(49mg)の混液に溶解し、120℃で加熱撹拌下にジフェニルリン酸アジド(133mg)を滴下した。反応混合物を撹拌下に12時間加熱還流し、室温に冷却した。反応液に炭酸水素ナトリウムの飽和水溶液(1mL)を加え、酢酸エチル(2mL)で抽出し、有機相を減圧下に濃縮した。得られた残渣をn−ヘプタン−酢酸エチル混液(1:1)で溶出するシリカゲルクロマトグラフィーに付し、粗生成物(114mg)を得た。この粗生成物をn−ヘプタン−酢酸エチル混液(2:1)で溶出するシリカゲルクロマトグラフィーに再度付し、淡黄色アモルファスの標記化合物(76mg)を56.5%の収率で得た。
【0080】
1H−NMR(CDCl3)δ:1.43(9H, s), 1.55−1.68(2H, m), 1.82−1.98(2H, m), 2.62−2.72(2H, m), 2.82(1H, dd, J=13.7, 8.0Hz), 2.92(1H, dd, J=13.7, 1.6Hz), 3.72−3.92(1H, m), 4.35−4.48(1H, m), 5.35(1H, br.s), 6.64(1H, dd, J=7.9, 2.6Hz), 6.64(1H, d, J=2.6Hz), 6.94(1H, d, J=7.9Hz).
MS(API−ES):276.2[M−1]−
【0081】
実施例12
6−(N−アミノカルバモイル)−3−ヒドロキシ−6,7,8,9−テトラヒドロ−5H−ベンゾシクロヘプテンの製造
6−カルボキシ−3−ヒドロキシ−6,7,8,9−テトラヒドロ−5H−ベンゾシクロヘプテン(25.0g)、メタノール(50mL)および濃塩酸(2.5mL)の混合物を45℃で6時間加熱撹拌し、反応終了後、室温に冷却した。この反応混合物にヒドラジン一水和物(80%、50mL)を室温で撹拌下に滴下した。滴下終了後、室温で20時間撹拌を継続した。反応終了後、反応混合物に水(125mL)を室温で撹拌下に加え、同温度で2時間撹拌後して5℃に冷却し、同温度で2時間撹拌した。析出物をろ取し、水(125mL)で洗浄し、40℃で真空乾燥して、白色結晶の標記化合物(23.0g)を86.1%の収率で得た。
【0082】
1H−NMR(DMSO−d6)δ:1.00−1.28(1H, m), 1.65−2.10(4H, m), 2.40−2.75(3H, m), 2.91(1H, dd, J=13.9, 10.7Hz), 4.15(2H, br.s), 6.45(1H, dd, J=7.9, 2.5Hz), 6.51(1H, d, J=2.5), 6.86(1H, d, J=7.9Hz),8.92(1H, br.s), 9.06(1H, br.s).
MS(API−ES):243.3[M+Na]+
【0083】
実施例13
6−(t−ブトキシカルボニルアミノ)−3−ヒドロキシ−6,7,8,9−テトラヒドロ−5H−ベンゾシクロヘプテンの製造
6−(N−アミノカルバモイル)−3−ヒドロキシ−6,7,8,9−テトラヒドロ−5H−ベンゾシクロヘプテン(22.0g)を、氷冷下、水(110mL)に撹拌懸濁し、同温度で濃塩酸(19.9mL)を滴下した。この反応混合物に亜硝酸ナトリウム(8.27g)の水(66mL)溶液を氷冷撹拌下に1時間にわたり滴下し、次いで同温度で1時間撹拌を継続した。反応混合物にトルエン(440mL)および酢酸エチル(88mL)を10℃以下で加え、同温度で抽出し有機層を分離した。有機相を、水、炭酸水素ナトリウムの9%水溶液および飽和食塩水(各110mL)で順次洗浄した。この有機相の約1/3量を撹拌下に80℃で加熱し、ガスの発生の開始後、残りの有機相を撹拌下に、ガスの発生を維持するように滴下した。ガスの発生の終了後、反応液を約120℃まで加熱し、約3/4の容量まで常圧で濃縮し、次いで約70℃まで冷却した。この反応液にt−ブチルアルコール(220mL)およびp−トルエンスルホン酸一水和物(0.66g)を加え、撹拌下に3時間加熱還流し、次いで室温まで冷却した。この反応液を炭酸水素ナトリウムの9%水溶液で洗浄し、減圧下に濃縮乾固した。得られた濃縮残渣をn−ヘプタン(110mL)に溶解し、減圧下に濃縮乾固し、残渣をn−ヘプタンから結晶化した。析出物をろ取し、真空乾燥して、淡黄色結晶の標記化合物(24.1g)を87.0%の収率で得た。
【0084】
1H−NMR(CDCl3)δ:1.43(9H, s), 1.55−1.68(2H, m), 1.82−1.98(2H, m), 2.62−2.72(2H, m), 2.82(1H, dd, J=13.7, 8.0Hz), 2.92(1H, dd, J=13.7, 1.6Hz), 3.72−3.92(1H, m), 4.35−4.48(1H, m), 5.35(1H, br.s), 6.64(1H, dd, J=7.9, 2.6Hz), 6.64(1H, d, J=2.6Hz), 6.94(1H, d, J=7.9Hz).
MS(API−ES):276.2[M−1]−
【0085】
実施例14
6−アミノ−3−エトキシカルボニルメトキシ−6,7,8,9−テトラヒドロ−5H−ベンゾシクロヘプテン塩酸塩の製造
6−(t−ブトキシカルボニルアミノ)−3−ヒドロキシ−6,7,8,9−テトラヒドロ−5H−ベンゾシクロヘプテン(30.0g)、粉砕した炭酸カリウム(44.85g)、塩化ベンジルトリエチルアンモニウム(4.93g)、クロロ酢酸エチル(26.5g)、酢酸エチル(300mL)の混合物を、2時間撹拌還流し、室温に冷却した。反応混合物を水(90mL)で2回洗浄し、有機相を減圧下に濃縮した。油状の濃縮残渣にエタノール(30mL)を加え、減圧下に再度濃縮し、ラセミ混合物の化合物(VI)を油状の形態で得た。この化合物のエタノール(150mL)溶液に、塩化トリメチルシラン(23.5g)を加え、還流下に1時間撹拌した。反応混合物を室温に冷却し、減圧下に濃縮した。得られた油状の濃縮残渣に酢酸エチル(150mL)を加え、室温で、1時間撹拌した。析出物をろ取し、酢酸エチル(30mL)で洗浄し、真空乾燥して、白色結晶の標記化合物(25.77g)を79.5%の収率で得た。
【0086】
この物質の1H−NMRおよびMS(API−ES)のそれぞれのデータは実施例6で得られた物質のものと完全に一致した。
【0087】
【発明の効果】
本発明によれば、最終目的化合物(VIII)と同じ立体配位を有する光学活性なベンゾシクロヘプテン化合物(I)またはその塩を出発物質とすることにより、一般的な合成法でベンゾシクロヘプテン化合物(II)、(III)および(V)を経て、ベンゾシクロヘプテン化合物(VI)から光学活性なベンゾシクロヘプテン誘導体(VIII)を効率よく製造することができる。
また、本発明によれば、光学活性なベンゾシクロヘプテン化合物(I)またはその塩を出発物質とすることにより、ベンゾシクロヘプテン化合物(IX)を経てベンゾシクロヘプテン化合物(VI)に導くことにより、光学活性なベンゾシクロヘプテン誘導体(VIII)を効率よく製造することができる。
さらに、本発明によれば、より安価な原料から製造できるベンゾシクロヘプテン化合物(XI)のカルボキシル基を、クルチウス転位反応に付した後アミノ基の保護を行なうことにより、最終目的化合物(VIII)の製造の鍵となる中間体であるベンゾシクロヘプテン化合物(III)のラセミ化合物(IIIa)を、効率よくかつ安価に製造することができる。また、この製造過程の適当な段階で光学分割することにより、光学活性なベンゾシクロヘプテン誘導体(VIII)を効率よくかつ安価に製造することができる。
【発明の属する技術分野】
この発明は、一般式:
【化36】
[式中、R1は低級アルキル基、Aは低級アルキレン基、Xはハロゲン原子をそれぞれ意味する]
で表されるベンゾシクロヘプテン誘導体またはその塩の製造法、およびその製造法における新規中間体に関するものである。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】
本発明の最終目的化合物であるベンゾシクロヘプテン誘導体(VIII)は、β3アドレナリン受容体アゴニスト(以下、「β3アゴニスト」という)活性および抗頻尿作用を有することが知られている[例えば、特表平6−506955号公報(特許文献1)および特開平7−228543号公報(特許文献2参照)]。
【0003】
このベンゾシクロヘプテン誘導体(VIII)の製造法は、特許文献1に記載されているが、光学活性な化合物は、該公報に記載の方法により得られるラセミ体を光学分割して得られており、その結果、目的とする光学活性な化合物の収率が低下するという問題があり、さらに、高価な原料を用いるので製造コスト上の問題があった。
【0004】
【特許文献1】
特表平6−506955号公報
【特許文献2】
特開平7−228543号公報
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明の発明者らは、ベンゾシクロヘプテン誘導体(VIII)の光学活性体を選択的に効率良く製造する方法を開発すべく鋭意研究の結果、光学活性なベンゾシクロヘプテン化合物(I)または光学活性なベンゾシクロヘプテン化合物(IX)を経ることにより、光学活性なベンゾシクロヘプテン誘導体(VIII)またはその塩が選択的に効率よく得られることを見出した。
なお、本発明のベンゾシクロヘプテン化合物(I)、(II)、(III)、(V)、(VI)および(IX)ならびにベンゾシクロヘプテン誘導体(VIII)において用いられている「光学活性」という用語は、ベンゾシクロヘプテン環に置換しているアミノ基がS配置またはR配置のいずれか一方の配置であることをいい、さらに、ベンゾシクロヘプテン誘導体(VIII)においては、アミノ基に置換しているフェニルエチル基がS配置またはR配置のいずれか一方の水酸基を有することをいう。
【0006】
本発明によれば、一般式:
【化37】
[式中、R3は低級アルキル基、R4はアリール基をそれぞれ意味する]
で表される光学活性なベンゾシクロヘプテン化合物(I)またはその塩を基 −CH(R3)R4の脱離反応に付し、式:
【化38】
で表される光学活性なベンゾシクロヘプテン化合物(II)またはその塩とし、この化合物(II)またはその塩をアミノ保護基の導入反応に付して、一般式:
【化39】
[式中、R2はアミノ保護基を意味する]
で表される光学活性なベンゾシクロヘプテン化合物(III)またはその塩とし、この化合物(III)またはその塩に、一般式:
【化40】
X’−A−CO2R1 (IV)
[式中、R1およびAはそれぞれ上記のとおりであり、X’は酸残基を意味する]で表される化合物(IV)を反応させて、一般式:
【化41】
[式中、R1、R2およびAはそれぞれ上記のとおりである]
で表される光学活性なベンゾシクロヘプテン化合物(V)とし、この化合物(V)をアミノ保護基の脱離反応に付して、一般式:
【化42】
[式中、R1およびAはそれぞれ上記のとおりである]
で表される光学活性なベンゾシクロヘプテン化合物(VI)またはその塩とし、この化合物(VI)またはその塩に、一般式:
【化43】
[式中、Xは上記のとおりである]
で表されるエポキシド化合物(VII)を反応させて、一般式:
【化44】
[式中、R1、AおよびXはそれぞれ上記のとおりである]
で表される光学活性なベンゾシクロヘプテン誘導体(VIII)またはその塩を得ることからなるベンゾシクロヘプテン誘導体(VIII)の製造法(以下、製造法(1)という)、ならびにこの製造法(1)において中間体として用いられる新規化合物(III)および(V)が提供される。
【0007】
また、本発明によれば、上記製造法(1)における中間体であるベンゾシクロヘプテン化合物(VI)の製造法も提供される。
すなわち、本発明によれば、前記の一般式:
【化45】
[式中、R3およびR4はそれぞれ上記のとおりである]
で表される光学活性なベンゾシクロヘプテン化合物(I)またはその塩に、一般式:
【化46】
X’−A−CO2R1 (IV)
[式中、R1、AおよびX’はそれぞれ上記のとおりである]
で表される化合物(IV)を反応させて、一般式:
【化47】
[式中、R1、R3、R4およびAはそれぞれ上記のとおりである]
で表される光学活性なベンゾシクロヘプテン化合物(IX)またはその塩とし、この化合物(IX)またはその塩を基 −CH(R3)R4の脱離反応に付して、一般式:
【化48】
[式中、R1およびAはそれぞれ上記のとおりである]
で表される光学活性なベンゾシクロヘプテン化合物(VI)またはその塩の製造法(以下、製造法(2)という)が提供される。
この化合物(VI)またはその塩を上記の製造法(1)と同様に処理して、光学活性なベンゾシクロヘプテン誘導体(VIII)を得ることができる。
【0008】
また、本発明によれば、前記の製造法(1)において中間体として用いられるベンゾシクロヘプテン化合物(III)のラセミ体(IIIa)を経ることによりベンゾシクロヘプテン誘導体(VIII)のラセミ体(VIIIa)製造法も提供される。
すなわち、本発明によれば、式:
【化49】
で表されるベンゾシクロヘプテノン化合物(X)またはその塩を触媒の存在下に還元反応に付して、式:
【化50】
で表されるベンゾシクロヘプテン化合物(XI)またはその塩とし、この化合物(XI)またはその塩に塩基およびアミノ保護基の導入試剤の存在下にアジド化合物を反応させて、一般式:
【化51】
[式中、R2は上記のとおりである]
で表されるベンゾシクロヘプテン化合物(IIIa)またはその塩を得ることからなるベンゾシクロヘプテン誘導体(IIIa)の製造法(以下、製造法(3)という)、ならびにこの製造法(3)における新規ラセミ化合物(XI)および(IIIa)が提供される。
【0009】
この製造法(3)で得られるベンゾシクロヘプテン化合物(IIIa)を、前記の製造法(1)における化合物(III)と同様に処理し、かつ適当な段階で光学分割することにより、光学活性なベンゾシクロヘプテン誘導体(VIII)を得ることができる。
なお本発明において、光学分割は、当該技術分野において公知の方法により、またはその方法に準じて行なうことができる。
具体的には、例えば、特許文献1に記載の方法に準じておこなうことができる。
【0010】
さらに、本発明によれば、前記製造法(1)において中間体として用いられるベンゾシクロヘプテン化合物(VI)のラセミ体(VIa)の別の製造法も提供される。
すなわち、本発明によれば、上記の式:
【化52】
で表されるベンゾシクロヘプテン化合物(XI)またはその塩をエステル化反応に付し、次いで反応生成物をヒドラジンと反応させて、式:
【化53】
で表されるベンゾシクロヘプテン化合物(XII)またはその塩とし、この化合物(XII)またはその塩を亜硝酸塩と反応させ、次いで反応生成物にアミノ保護基の導入試剤を反応させて、一般式:
【化54】
[式中、R2は上記のとおりである]
で表されるベンゾシクロヘプテン化合物(IIIa)またはその塩とし、この化合物(IIIa)またはその塩を、一般式:
【化55】
X’−A−CO2R1 (IV)
[式中、R1、AおよびX’はそれぞれ上記のとおりである]
で表される化合物(IV)と反応させて、一般式:
【化56】
[式中、R1、R2およびAはそれぞれ上記のとおりである]
で表されるベンゾシクロヘプテン化合物(Va)とし、この化合物(Va)をアミノ保護基の脱離反応に付して、一般式:
【化57】
[式中、R1およびAはそれぞれ上記のとおりである]
で表されるベンゾシクロヘプテン化合物(VIa)またはその塩を得ることからなるベンゾシクロヘプテン化合物(VIa)の製造法(以下、製造法(4)という)、ならびにこの製造法(4)における中間体である新規ラセミ化合物(Va)も提供される。
【0011】
この製造法(4)で得られるベンゾシクロヘプテン化合物(VIa)を前記の製造法(1)における化合物(VI)と同様に処理し、かつ適当な段階で光学分割することにより、光学活性なベンゾシクロヘプテン誘導体(VIII)を得ることができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の各一般式におけるR1、R2、R3、R4、A、X、およびX’の定義の好ましい例について、以下に詳細に説明する。
【0013】
R1およびR3で表される「低級アルキル基」およびAで表される「低級アルキレン基」における「低級」とは、特に断りのないかぎり、1〜6の炭素原子を有する直鎖状または分枝鎖状の基を意味する。
【0014】
R1およびR3で表される「低級アルキル基」としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ヘキシルなどの、直鎖状または分枝鎖状の、C1〜C6のアルキル基が挙げられ、なかでも好ましいのはメチルまたはエチルである。
【0015】
R2で表される「アミノ保護基」としては、ベンジルオキシカルボニル、p−ニトロベンジルオキシカルボニル、p−メトキシベンジルオキシカルボニル、p−クロロベンジルオキシカルボニル、m−クロロベンジルオキシカルボニル、p−ブロモベンジルオキシカルボニル、p−メチルベンジルオキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル、イソボルニルオキシカルボニル、2−フェニルイソプロポキシカルボニル、p−ビフェニルイソプロポキシカルボニル、3,5−ジメトキシ−α,α−ジメチルベンジルオキシカルボニル、p−メチルフェニルイソプロポキシカルボニル、トリフェニルメチル、9−フルオレニルメトキシカルボニル、メチルスルホニルエトキシカルボニル、イソニコチニルオキシカルボニル、2,2,2−トリクロロエトキシカルボニル、2−(トリメチルシリル)−エトキシカルボニル、o−ニトロフェニルスルフェニル、3−ニトロ−2−ピリジンスルフェニル、ジフェニルホスフィニル、ジフェニルホスフィノチオイル、ジメチルホスフィノチオイル基などが挙げられる。なかでも容易に脱保護されるt−ブトキシカルボニル基が好ましい。
【0016】
R4で表される「アリール基」としては、フェニル、ナフチル、トリル、キシリル、クメニルなどが挙げられ、なかでも好ましいのはフェニルである。
【0017】
Aで表される「低級アルキレン基」としては、メチレン、エチレン、トリメチレン、プロピレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、エチルエチレンなどの、直鎖状または分枝鎖状の、C1〜C6の低級アルキレン基が挙げられ、なかでも好ましいのはメチレンである。
【0018】
Xで表される「ハロゲン」としては、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素が挙げられ、なかでも好ましいのは塩素または臭素である。
【0019】
X’で表される「酸残基」としては、上記のようなハロゲン、ベンゼンスルホニルオキシ、トルエンスルホニルオキシのようなアレーンスルホニルオキシ、メシルオキシ、エタンスルホニルオキシのようなアルカンスルホニルオキシなどが挙げられ、なかでも好ましいのはハロゲンである。
【0020】
本発明の製造法(1)を反応式で示すと、次のとおりである。
製造法(1):
【化58】
[式中、R1、R2、R3、R4、A、XおよびX’はそれぞれ前記のとおりである]
【0021】
上記の製造法(1)を工程順に以下に説明する。
第1工程:
第1工程の反応は、ベンゾシクロヘプテン化合物(I)またはその塩を、基 −CH(R2)R3の脱離反応に付すことにより行われる。
上記の基 −CH(R2)R3の脱離は、化合物(I)またはその塩を例えば化学還元または接触還元することにより行われる。
【0022】
化学還元は、通常、溶媒中で冷却下ないし加熱下に行われ、溶媒としては、例えば水、メタノール、エタノール、プロパノール、N,N−ジメチルホルムアミド、クロロベンゼン、ブロモベンゼンなど、およびこれらの混合溶媒が挙げられる。
還元剤としては、例えば錫、亜鉛、鉄などの金属もしくは塩化クロム、酢酸クロムなどの金属化合物と、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、トリフルオロ酢酸、p−トルエンスルホン酸などの有機酸もしくは塩酸、臭化水素酸などの無機酸との組合せ、および金属ナトリウム―液体アンモニアなどが好ましい。なお、化学還元に使用する上記の酸が液状である場合には、その酸を溶媒を兼ねて使用することもできる。
【0023】
接触還元は、通常、溶媒中で冷却下ないし加熱下に行われ、溶媒としては、例えば上記の化学還元で用いられる溶媒のほか、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、およびそれらの混合溶媒が挙げられる。これら溶媒に塩酸、ギ酸、酢酸などを添加して反応を促進することもできる。
接触還元に使用される好適な触媒としては、例えば白金板、海綿状白金、白金黒、コロイド白金、酸化白金、白金線などの白金触媒、海綿状パラジウム、パラジウム黒、酸化パラジウム、パラジウム炭、コロイドパラジウム、パラジウム/硫酸バリウム、パラジウム/炭酸バリウムなどのパラジウム触媒、還元ニッケル、酸化ニッケル、ラネーニッケルなどのニッケル触媒、還元コバルト、ラネーコバルトなどのコバルト触媒、還元鉄、ラネー鉄などの鉄触媒、還元銅、ラネー銅、ウルマン銅などの銅触媒などが挙げられる。
また、例えばパラジウム黒、パラジウム炭などのパラジウム触媒とギ酸もしくはギ酸アンモニウムなどとの組合せも、接触還元の触媒として用いることができる。
なお、この工程で用いたベンゾシクロヘプテン化合物(I)またはその塩は、特許文献1の製造例14または製造例73に記載の方法に従って得られるベンゾシクロヘプテン化合物を、例えば(S)−1−フェニルエチルアミンと反応させ、この反応生成物を還元反応に付すことにより得ることができる。
【0024】
第2工程:
第2工程の反応は、上記で得られるベンゾシクロヘプテン化合物(II)またはその塩をアミノ保護基の導入反応に付すことにより得られる。
この反応は、通常、塩基の存在下に、溶媒中、氷冷下ないし室温下で、アミノ保護基の導入試剤を用いて行なわれる。
この反応で用いられる塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムのような無機塩基、トリエチルアミン、ピリジン、N,N−ジメチルアミンのようなルイス塩基などが挙げられる。溶媒としては、テトラヒドロフラン、ジオキサン、N,N−ジメチルホルムアミド、水などの不活性溶媒およびこれらの混合溶媒が挙げられる。
【0025】
この反応におけるアミノ保護基の導入試剤としては、ベンジルオキシカルボニルクロライド、p−ニトロベンジルオキシカルボニルクロライド、p−メトキシベンジルオキシカルボニルクロライド、p−クロロベンジルオキシカルボニルクロライド、m−クロロベンジルオキシカルボニルクロライド、p−ブロモベンジルオキシカルボニルクロライド、p−メチルベンジルオキシカルボニルクロライド、t−ブトキシカルボニルクロライド、t−ブトキシカルボニルヒドラジン、2−t−ブトキシカルボニル−オキシイミノ−2−フェニルアセトニトリル、S−t−ブトキシカルボニル−4,6−ジメチル−2−チオピリミジン、ジ−t−ブチルジカルボネート、イソボルニルオキシカルボニルクロライド、2−フェニルイソプロポキシカルボニルクロライド、p−ビフェニルイソプロポキシカルボニルクロライド、3,5−ジメトキシ−α,α−ジメチルベンジルオキシカルボニルクロライド、p−メチルフェニルイソプロポキシカルボニルクロライド、トリフェニルメチルクロライド、9−フルオレニルメトキシカルボニルクロライド、メチルスルホニルエトキシカルボニルクロライド、イソニコチニルオキシカルボニルクロライド、2,2,2−トリクロロエトキシカルボニルクロライド、2−(トリメチルシリル)−エトキシカルボニルクロライド、o−ニトロフェニルスルフェニルクロライド、3−ニトロ−2−ピリジンスルフェニルクロライド、ジフェニルホスフィニルクロライド、ジフェニルホスフィノチオイルクロライド、ジメチルホスフィノチオイルクロライドなどが挙げられる。なかでも容易に脱保護されるt−ブトキシカルボニル基を有するものが好ましい。
【0026】
第3工程:
第3工程の反応は、上記で得られるベンゾシクロヘプテン化合物(III)またはその塩に化合物(IV)を反応させることにより行われる。
この反応は、通常、溶媒中で冷却下ないし加熱下に行われる。
溶媒としては、例えば塩化メチレン、クロロホルムのようなハロゲン化アルキル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトン、酢酸エチル、およびベンゼン、トルエン、キシレンのような芳香族炭化水素、ならびにこれらの混合溶媒が挙げられる。なお、化合物(IV)が液状である場合には、この化合物(IV)を溶媒を兼ねて使用することもできる。
また、この反応は芳香族炭化水素またはハロゲン化アルキルのような有機溶媒と水との2相系で行うこともできる。
【0027】
この反応は、ヒドロキシ基の活性化剤の存在下に行うのが好ましい。ヒドロキシ基の活性化剤としては、たとえばリチウム、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属、水酸化リチウムのような水酸化アルカリ金属、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどの炭酸アルカリ金属、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムなどの炭酸水素アルカリ金属、水素化ナトリウムなどの水素化アルカリ金属、水素化カルシウムなどの水素化アルカリ土類金属、ナトリウムメトキサイド、ナトリウムエトキサイド、カリウムt−ブトキシドなどのアルカリ金属アルコキサイド、マグネシウムメトキサイド、マグネシウムエトキサイドなどのアルカリ土類金属アルコキサイドなどの塩基、あるいはヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウムなどのヨウ化アルカリ金属などが挙げられる。
また、この反応を上記のような2相系で行なうときには、例えば臭化テトラ−n−ブチルアンモニウムまたは塩化ベンジルトリエチルアンモニウムのような相間移動触媒の存在下に反応を行うと、反応が円滑に進行するので好ましい。
【0028】
第4工程
第4工程の反応は上記で得られるベンゾシクロヘプテン化合物(V)をアミノ保護基の脱離反応に付すことにより行なわれる。
この反応は、通常、溶媒中で接触還元反応、液体アンモニア中で金属ナトリウムによる還元反応、または溶媒中で酸の存在下における加水分解反応により行なわれる。
接触還元により脱保護を行なう場合の触媒としては、上記の第1工程に記載のような触媒が挙げられ、溶媒としては、メタノール、エタノール、エーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、水、ギ酸、酢酸、液体アンモニア、ならびにこれらの混合溶媒が挙げられる。
【0029】
また、酸の存在下に加水分解反応により脱保護を行なう場合の酸としては、塩酸、硫酸、硫酸水素カリウム、臭化水素酸、フッ化水素酸のような無機酸、ギ酸、酢酸、クエン酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸のような有機酸、ボロントリフルオライドエーテル錯体のようなルイス酸が挙げられる。これら酸は単独で、またはこれらの混酸として溶媒を兼ねて、あるいは上記の接触還元におけるような溶媒と共に用いることができる。
とりわけ、ベンゾシクロヘプテン化合物(V)のアミノ保護基がt−ブトキシカルボニル基である場合、この反応は、アルコール溶媒(例えば、メタノール、エタノールなど)中で塩化トリメチルシランを添加するか、または、塩化水素を溶解させた溶媒(例えば、メタノール、エタノール、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなど)中で行われる。
【0030】
第5工程:
第5工程の反応は、上記で得られるベンゾシクロヘプテン化合物(VI)またはその塩をエポキシド化合物(VII)と反応させることにより行われる。
この反応は、通常、溶媒中で、冷却下ないし加熱下に行われる。
溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールなどのアルコール類、ジエチルエーテル、テロラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類、塩化メチレン、酢酸エチル、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどが挙げられる。
【0031】
この反応は、N,N’−ビス(トリメチルシリル)尿素、N−(トリメチルシリル)アセトアミド、1,1,1,3,3,3−ヘキサメチルジシラザンなどのシリル化剤でシリル化後、エポキシド化合物(VII)と反応させるのが好ましい。
また、この反応は、例えば炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどの炭酸アルカリ金属、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウムなどの炭酸アルカリ土類金属、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムなどの炭酸水素アルカリ金属、トリメチルアミン、トリエチルアミンなどのトリアルキルアミン、ピコリンなどの塩基、あるいは塩化アルミニウム、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体、四塩化スズ、四塩化チタン、イットリウムトリフラート、スカンチウムトリフラートのようなルイス酸の存在下に行うこともできる。
【0032】
上記の一連の方法で中間体として得られる化合物(II)、(III)、(V)および(VI)ならびに最終目的化合物(VIII)またはそれらの塩は、常法により単離、精製できるが、中間体化合物はいずれも単離、精製することなく次の反応に用いてもよい。
最終目的化合物(VIII)の塩としては、例えば塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、リン酸塩などの無機酸塩、ギ酸塩、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、シュウ酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩などの有機酸塩などが挙げられる。
また、中間体化合物(II)および(VI)の塩としても、上記と同様のものが挙げられる。
【0033】
また、本発明によれば、前記の製造法(1)における中間体、ベンゾシクロヘプテン化合物(VI)は、次の製造法(2)によっても製造することができる。
製造法(2):
【化59】
[式中、R1、R3、R4、AおよびX’はそれぞれ前記のとおりである]
【0034】
上記の製造法(2)を工程順に以下に説明する。
第1工程:
第1工程の反応は、上記の製造法(1)の第3工程と同様の方法で、ベンゾシクロヘプテン化合物(I)またはその塩に化合物(IV)を反応させることにより行われる。
【0035】
第2工程:
第2工程の反応は、前記の製造法(1)の第1工程と同様の方法で、上記の化合物(IX)またはその塩を、基 −CH(R2)R3の脱離反応に付すことにより行われる。
上記の工程で中間体として得られる化合物(IX)および化合物(VI)は、常法により単離、精製できるが、いずれも単離、精製することなく次の反応に用いてもよい。この中間体(IX)の塩としては、上記の製造法(1)の最終目的化合物(VIII)の塩として挙げられたものが挙げられる。
【0036】
また、本発明によれば、前記の製造法(1)の中間体として用いられるベンゾシクロヘプテン化合物(III)のラセミ体(IIIa)は、次の製造法(3)によって製造することができる。
製造法(3):
【化60】
[式中、R2は前記のとおりである]
【0037】
上記の製造法(3)を工程順に以下に説明する。
第1工程
第1工程は、ベンゾシクロヘプテン化合物(X)またはその塩を触媒と共に水素雰囲気下、常圧または加圧下で還元反応に付すことにより行なわれる。
この工程の還元反応を触媒の存在下に行う際の触媒としては、例えば白金板、海綿状白金、白金黒、コロイド白金、酸化白金、白金線のような白金触媒、海綿状パラジウム、パラジウム黒、酸化パラジウム、パラジウム炭、コロイドパラジウム、パラジウム/硫酸バリウム、パラジウム/炭酸バリウムのようなパラジウム触媒、還元ニッケル、酸化ニッケル、ラネーニッケルのようなニッケル触媒、還元コバルト、ラネーコバルトのようなコバルト触媒、還元鉄、ラネー鉄のような鉄触媒、還元銅、ラネー銅、ウルマン銅のような銅触媒などが挙げられる。
【0038】
この反応は、酸の存在下または非存在下に行うことにより促進される。この反応を酸の存在下に行う際の酸としては、有機酸、無機酸が挙げられる。有機酸としてはp−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、スルホサリチル酸などが挙げられ、無機酸としては硫酸、塩酸などが挙げられ、なかでも塩酸が特に好ましい。
この還元反応は、通常、溶媒中で冷却下ないし加温下に行われる。
溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、プロパノールなどのアルコール類、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル類、ベンゼン、トルエンなどの芳香族炭化水素、酢酸エチル、N,N−ジメチルホルムアミドなど、あるいはこれらの混合溶媒が挙げられる。
【0039】
第2工程:
第2工程の反応は、クルチウス転位反応に準じて行なわれる。
この工程は、上記で得られるベンゾシクロヘプテン化合物(XI)またはその塩に、塩基およびアミノ保護基の導入試剤の存在下にアジド化合物を作用させることにより行なわれる。
この反応は、通常、溶媒中で冷却下ないし加熱下に行われる。溶媒としては、テトラヒドロフラン、ベンゼン、トルエンなどの不活性溶媒およびこれらの混合溶媒が挙げられる。
塩基としては、水酸化アルカリ金属、炭酸水素アルカリ金属または炭酸アルカリ金属などの無機塩基、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、N,N−ジメチルアミノピリジンのようなルイス塩基が挙げられる。
【0040】
この反応におけるアミノ保護基の導入試剤としては、t−ブチルアルコール、ベンジルアルコール、p−ニトロベンジルアルコール、p−メチルベンジルアルコール、p−メトキシベンジルアルコール、p−クロロベンジルアルコール、m−クロロベンジルアルコール、p−ブロモベンジルアルコール、イソボルネオール、2−フェニルイソプロピルアルコール、2−フェニルイソプロパノール、p−ビフェニルイソプロパノール、3,5−ジメトキシ−α,α−ジメチルベンジルアルコール、p−メチルフェニルイソプロパノール、9−フルオレニルマタノール、メチルスルホニルエタノール、メチルスルホニルエタノール、4−ピリジンメタノール、2,2,2−トリクロロエタノール、2−(トリメチルシリル)エタノールなどが挙げられる。
アジド化合物としては、ジフェニルリン酸アジド、アジ化ナトリウムなどが挙げられる。
【0041】
上記の方法で中間体として得られる化合物(XI)および化合物(IIIa)またはそれらの塩は、常法により単離、精製できるが、これらの化合物はいずれも単離、精製することなく次の反応に用いてもよい。これらの中間体(XI)および(IIIa)の塩としては、上記の製造法(1)の最終目的化合物(VIII)の塩として挙げられたものが挙げられる。
なお、この製造法(3)で出発物質として用いられる化合物(X)は新規化合物であり、後記の製造例に記載の方法またはそれに準じた方法で製造することができる。
【0042】
さらに本発明によれば、前記の製造法(1)の中間体として用いられるベンゾシクロヘプテン化合物(VI)のラセミ体(VIa)を、次の製造法(4)に従って製造することもできる。
製造法(4):
【化61】
[式中、R1、R2、AおよびX’は上記のとおりである]
【0043】
この製造法(4)を工程順に以下に説明する。
第1工程:
第1工程および第2工程はクルチウス転位反応に準じて行われる。
第1工程の反応は、ベンゾシクロヘプテン化合物(XI)またはその塩をエステル化することにより活性化し、得られる反応生成物をヒドラジンと反応させることにより行なわれる。
第一段階の反応は、通常、酸の存在下にアルコールと共に40℃〜溶媒の沸点の間の温度で加熱することにより行なわれる。
【0044】
この反応で用いられる酸としては、塩酸、硫酸のような無機酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸のような有機酸が挙げられる。
アルコールとしては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、t−ブチルアルコールなどが挙げられる。これらのアルコールを溶媒として用いることができるが、ベンゼン、トルエンのような非水和性の溶媒を併用してもよい。この反応では、生成する水をディーン・スタークまたはモレキュラーシーブなどを用いて反応系から除去することもできる。
【0045】
第2段階の反応は、第1段階の反応生成物を無水ヒドラジンまたはヒドラジンの水和物と反応させることにより行なわれる。
この反応は、通常、冷却下ないし加熱下に行なわれる。この反応では、上記の第1段階の反応混合物をそのまま無水ヒドラジンまたはヒドラジンの水和物と反応させることができる。上記の第1段階の反応生成物を単離した場合には、この反応は単離した生成物をメタノール、エタノールなどのアルコール中で、無水ヒドラジンまたはヒドラジンの水和物と反応させることにより行なわれる。
【0046】
第2工程
第2工程の反応は、上記の工程で得られるベンゾシクロヘプテンのヒドラジド化合物(XII)またはその塩を、亜硝酸塩と反応させてベンゾシクロヘプテンのアジド化合物とし、次いでこの化合物をアミノ保護基の導入試剤と反応させることにより行なわれる。
第1段階の反応は、通常、溶媒中で酸の存在下に、冷却下ないし室温下で亜硝酸塩を用いて行われる。
この反応で用いられる溶媒としては、水、酢酸エチル、エーテル、テトラヒドロフラン、ベンゼン、トルエンおよびこれらの混合溶媒が挙げられる。
この反応で用いられる酸としては、塩酸、硫酸などの無機酸が挙げられ、亜硝酸塩としては、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウム、亜硝酸カルシウムなどが挙げられる。
【0047】
第2段階の反応は、第1段階で得られる化合物を溶媒中で、アミノ保護基の導入試剤と共に加熱することにより行われる。アミノ保護基の導入試剤としては、前記の製造法(3)の第2工程で用いられるものと同様のものが挙げられる。
溶媒としては、エーテル、ベンゼン、トルエンおよびこれらの混合溶媒が挙げられる。
あるいは、第2工程の反応は、上記の第1段階で得られる化合物を溶媒中で加熱し、次いで前記のようなアミノ保護基の導入試剤と共に、酸の存在下に加熱することにより行なわれる。
この反応で用いられる溶媒としては、酢酸エチル、ベンゼン、トルエンおよびこれらの混合溶媒が挙げられる。
この反応で用いられる酸としては、硫酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸などが挙げられる。
またこの第2工程の反応は、上記の第1段階および第2段階に用いるすべての反応試剤を最初から用いて、ワンポット反応で行なうこともできる。
【0048】
第3工程
第3工程の反応は、前記の製造法(1)の第3工程と同様の方法で、上記の第2工程で得られる化合物(IIIa)を、化合物(IV)と反応させ(第1段階)、次いでその反応生成物(Va)を、前記の製造法(1)の第4工程と同様にして、アミノ保護基の脱離反応に付す(第2段階)ことにより行なわれる。
なお、この第1段階の反応生成物(Va)は常法により単離することができるが、単離せずに第2段階の反応に付してもよい。
【0049】
【実施例】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0050】
製造例1
(1’S,6S)−3−メトキシ−6−(1−フェニルエチルアミノ)−6,7,8,9−テトラヒドロ−5H−ベンゾシクロヘプテン塩酸塩の製造
3−メトキシ−6,7,8,9−テトラヒドロ−5H−ベンゾシクロヘプテン−6−オン(5.0g)および(S)−α−メチルベンジルアミン(3.18g)をp−トルエンスルホン酸1水和物(0.05g)の存在下にトルエン(40mL)中で、生成する水を留去しながら約6時間加熱還流した。反応混合物を冷却し、溶媒を減圧下に留去した後、残渣をメタノール(50mL)に溶解した。窒素雰囲気下、この溶液にラネーニッケル(川研ファインケミカル(株)、NDT−90)(8mL)を加え、水素置換後、水素圧3.5〜4.5kgf/cm2の水素雰囲気下、室温で約5時間撹拌した。反応終了後、ラネーニッケルをろ別し、残渣をメタノール、次いで50%含水メタノールで洗浄し、洗液をろ液と合わせ、減圧下に濃縮した。得られた残渣を酢酸エチル(100ml)に溶解した後、溶液量が半分になるまで減圧濃縮した。得られた溶液に酢酸エチル(50ml)を加えた後、これに4N塩酸−酢酸エチル溶液を室温で撹拌下に滴下して、(1’S,6S)−3−メトキシ−6−(1’−フェニルエチル)アミノ−6,7,8,9−テトラヒドロ−5H−ベンゾシクロヘプテン塩酸塩の結晶(6.30g)を72.2%の収率で得た。
得られた生成物の6位におけるジアステレオマーの比率を液体クロマトグラフィーで分析したところ、6S体:6R体の生成比は、93.3:6.7であり、所望の6S体すなわち標記化合物のジアステレオマー過剰率は86.6%であった。
【0051】
1H−NMR(DMSO−d6)δ:0.95−1.20(1H,m),1.64(3H,d,J=6.6Hz),1.70−2.05(2H,m),2.20−2.45(2H,m),2.55−2.70(2H,m),2.85−3.25(2H,m),3.70(3H,s),4.70−4.95(1H,m),6.60−6.66(1H,dd,J=2.6Hz,8.3Hz),6.79(1H,d,J=2.6Hz),6.96(1H,d,H=8.3Hz),7.31−7.76(5H,m).
MASS(m/z):296[M−HCl+1]+
【0052】
製造例2
(1’S,6S)−3−メトキシ−6−(1−フェニルエチルアミノ)−6,7,8,9−テトラヒドロ−5H−ベンゾシクロヘプテン D−酒石酸塩の製造
(1’S,6S)−3−メトキシ−6−(1−フェニルエチルアミノ)−6,7,8,9−テトラヒドロ−5H−ベンゾシクロヘプテン塩酸塩(102.0kg)に酢酸エチル(510L)および水(510L)を加えて撹拌した。この混液に室温で撹拌下に28%アンモニア水(204L)を加えた。この混合物を同温度で約20分間撹拌し、結晶が完全に溶解したのを確認し、静置した後、酢酸エチル層を分取した。水相を酢酸エチル(306L)で抽出し、この抽出液を先に分取した有機相に合わせ、10%(W/V)食塩水(255L)で2回洗浄し、乾燥し、溶媒を減圧下に留去した。得られた油状物質を、n−プロパノール(1530L)に溶解した後、D−酒石酸(50.74kg)を加えて、約90℃で均一な溶液となるまで撹拌した。この溶液を一時間かけて液温が30〜40℃になるまで緩やかに冷却した。この混液をさらに氷温まで冷却し、氷冷下に一時間撹拌した後、析出した結晶をろ取した。ろ取した結晶をn−プロパノールで洗浄後、乾燥して標記化合物(90.90kg)を66.4%の収率で得た。この化合物のジアステレオマー過剰率は99.4%以上であった。
【0053】
1H−NMR(DMSO−d6)δ:0.84(3H,t,J=7.3Hz),0.90−1.25(1H,m),1.40(3H,d,J=6.6Hz),1.55−1.95(2H,m),1.95−2.35(2H,m),2.55−2.75(2H,m),2.75−3.20(2H,m),3.70(3H,s),4.03(2H,s),4.35−4.45(1H,m),6.57−6.63(1H,dd,J=2.6Hz,8.3Hz),6.75(1H,d,J=2.6Hz),6.94(1H,d,J=8.3Hz),7.20−7.53(5H,m).
MASS(m/z):296[M−酒石酸+1]+
【0054】
製造例3
(1’S,6S)−3−ヒドロキシ−6−(1−フェニルエチルアミノ)−6,7,8,9−テトラヒドロ−5H−ベンゾシクロヘプテン臭化水素酸塩の製造
(1’S,6S)−3−メトキシ−6−(1−フェニルエチルアミノ)−6,7,8,9−テトラヒドロ−5H−ベンゾシクロヘプテン酒石酸塩(90.0kg)、酢酸エチル(360L)および水(450L)の混合物に、約15℃で24%水酸化ナトリウム水溶液(207L)を撹拌下に加えた。この混合物を同温度で約20分間撹拌し、結晶が溶解したのを確認し、10分以上静置した後、酢酸エチル層を分取した。水相を酢酸エチル(180L)で抽出し、この抽出液を先に分取した有機相と合わせ、飽和食塩水(180L)で洗浄し、乾燥し、溶媒を減圧下に留去した。得られた油状残渣を塩化メチレン(270L)に溶解した。
一方、三臭化ホウ素(101.2kg)の塩化メチレン(405L)溶液を約10℃に冷却下に調製した。この溶液を窒素雰囲気下に液温約5℃とし、先に得た油状物質の塩化メチレン溶液に、−13〜0℃に冷却下、滴下した。滴下終了後、反応混合物を約−3℃で1時間撹拌した。反応混合物を15℃以下で、予め約10℃以下に冷却した水(900L)へ撹拌下に滴下した。滴下終了後、反応混合物を0〜5℃で1時間撹拌し、さらに同温度で一夜静置した。
析出した結晶をろ取し、約35℃で真空乾燥し、標記化合物(75.23kg)を97.5%の収率で得た。
【0055】
1H−NMR(DMSO−d6)δ:0.95−1.25(1H,m),1.63(3H,d,J=6.6Hz),1.65−2.00(2H,m),2.15−2.35(1H,m),2.35−2.70(3H,m),2.80−3.20(2H,m),4.75−4.95(1H,m),6.46−6.51(1H,dd,J=2.4Hz,8.1Hz),6.60(1H,d,J=2.4Hz),6.84(1H,d,J=8.1Hz),7.33−7.69(5H,m),9.18(1H,s).
MASS(m/z):282[M−HBr+1]+
【0056】
製造例4
(E)−2−(3−ヒドロキシベンジリデン)グルタル酸の製造
約5℃に冷却したカリウムt−ブトキシド(114.9g)のテトラヒドロフラン(400mL)溶液に、窒素雰囲気下、m−ヒドロキシベンズアルデヒド(50g)およびグルタル酸ジメチル(72.1g)のテトラヒドロフラン(100mL)溶液を撹拌下に滴下して、室温で一夜静置した。反応混合物に水(100mL)および水酸化ナトリウムの24%水溶液(50mL)を加え、50℃で3時間加熱撹拌した。反応終了後、反応混合物を室温に冷却し、水(100mL)を加え撹拌して静置した。分取した下層に、トルエン(50mL)を加え、60℃で加熱撹拌下に濃塩酸(117mL)を滴下し、さらに1時間撹拌した。この混合物を20℃に冷却し、一夜静置した。析出物をろ取し、トルエン(100mL)、水(200mL)およびトルエン(100mL)で順次洗浄し、真空乾燥して、淡黄色結晶として標記化合物(66.9g)を69.2%の収率で得た。
【0057】
1H−NMR(DMSO−d6)δ:2.37−2.49(2H, m), 2.62−2.70(2H, m), 6.76−6.86(3H, m), 7.19−7.27(1H, m), 7.52(1H, s), 9.61(1H, br.s), 12.4(2H, br.s).
MS(API−ES):235.1[M−1]−
【0058】
製造例5
8−カルボキシ−2−ヒドロキシ−6,7−ジヒドロ−5H−ベンゾシクロヘプテン−5−オンの製造
(E)−2−(3−ヒドロキシベンジリデン)グルタル酸(20.00g)およびメタンスルホン酸(60mL)の混合物を、約60℃で約6時間加熱撹拌し、反応終了後、反応混合物を40℃まで冷却した。この反応混合物に、40〜60℃の温度範囲で水(80mL)を撹拌下に滴下し、反応混合物を20℃まで冷却し、一夜静置した。析出物をろ取し、水(200mL)で洗浄し、真空乾燥して、褐色結晶として標記化合物(15.75g)を85.2%の収率で得た。
【0059】
1H−NMR(DMSO−d6)δ:2.46−2.68(2H, m), 2.73−2.79(2H, m), 6.85−6.91(2H, m), 7.88(1H, d, J=9.3Hz), 10.51(1H, s), 12.8(1H, br.s).
MS(API−ES):217.2[M−1]−
【0060】
実施例1
(6S)−6−アミノ−3−ヒドロキシ−6,7,8,9−テトラヒドロ−5H−ベンゾシクロヘプテンの製造
(1’S,6S)−3−ヒドロキシ−6−(1−フェニルエチルアミノ)−6,7,8,9−テトラヒドロ−5H−ベンゾシクロヘプテン(1.0g)のメタノール(20mL)溶液に、ギ酸アンモニウム(0.52g)および10%パラジウム炭素(50%含水、0.1g)を加え、30分間加熱還流した。反応終了後、この反応混合物を室温に冷却し、触媒をろ別し、触媒をメタノールで洗浄し、ろ液と洗液を合わせ減圧下に濃縮した。得られた濃縮残渣に炭酸水素ナトリウムの飽和水溶液(5mL)を加え、この塩基性混合物を酢酸エチル(10mL)で抽出し、さらに酢酸エチル(5mL)で6回抽出した。有機相を合わせ、減圧下に濃縮し、白色結晶の標記化合物(340mg)を77.3%の収率で得た。
【0061】
1H−NMR(CDCl3)δ:1.55−2.15(4H, m), 2.18(3H, br.s), 2.65−2.72(2H, m), 2.82−2.92(2H, m), 3.02−3.18(1H, m), 6.59(1H, dd, J=8.1, 2.6Hz), 6.70(1H, d, J=2.6Hz), 6.96(1H, d, J=8.1Hz).
MS(API−ES):178.3[M+1]+
【0062】
実施例2
(6S)−6−(t−ブトキシカルボニルアミノ)−3−ヒドロキシ−6,7,8,9−テトラヒドロ−5H−ベンゾシクロヘプテンの製造
(6S)−6−アミノ−3−ヒドロキシ−6,7,8,9−テトラヒドロ−5H−ベンゾシクロヘプテン(100mg)のテトラヒドロフラン(2mL)溶液に、ジ−t−ブチルジカルボネート(123mg)を加え、室温で15時間撹拌した。反応終了後、この反応混合物に酢酸エチル(5mL)を加え、炭酸水素ナトリウムの飽和水溶液および飽和食塩水(各2mL)で順次洗浄した。有機相を減圧下に濃縮して、標記化合物を無色のアモルファスとして定量的に得た。
【0063】
1H−NMR(CDCl3)δ:1.43(9H, s), 1.55−1.68(2H, m), 1.82−1.98(2H, m), 2.62−2.72(2H, m), 2.82(1H, dd, J=13.7, 8.0Hz), 2.92(1H, dd, J=13.7, 1.6Hz),3.72−3.92(1H, m), 4.35−4.48(1H, m), 5.35(1H, br.s), 6.64(1H, dd, J=7.9, 2.6Hz), 6.64(1H, d, J=2.6Hz),6.94(1H, d, J=7.9Hz).
MS(API−ES):276.2[M−1]−
【0064】
実施例3
(6S)−6−(t−ブトキシカルボニルアミノ)−3−エトキシカルボニルメトキシ−6,7,8,9−テトラヒドロ−5H−ベンゾシクロヘプテンの製造
(6S)−6−(t−ブトキシカルボニルアミノ)−3−ヒドロキシ−6,7,8,9−テトラヒドロ−5H−ベンゾシクロヘプテン(350mg)、粉砕した炭酸カリウム(580mg)、塩化ベンジルトリエチルアンモニウム(60mg)、ブロモ酢酸エチル(335mg)および酢酸エチル(3mL)の混合物を、40℃で4時間加熱撹拌した。反応終了後、反応液を室温に冷却し、水および飽和食塩水(各1.5mL)で順次洗浄し、溶媒を減圧下に留去した。得られた油状物質をn−ヘプタン−酢酸エチル混液(3:1)で溶出するシリカゲルクロマトグラフィーにより精製し、減圧下に濃縮し、標記化合物(337mg)を淡黄色のアモルファスとして73.4%の収率で得た。
【0065】
1H−NMR(CDCl3)δ:1.30(3H, t, J=7.2Hz), 1.49(9H,s), 1.52−1.68(2H, m), 1.82−1.96(2H, m), 2.65−2.75(2H, m), 2.76−3.04(2H, m), 3.72−3.95(1H, m), 4.27(2H, q, J=7.2Hz), 4.32(1H, br.s), 4.59(2H, s), 6.65(1H, dd, J=8.2, 2.7Hz), 6.74(1H, d, J=2.7Hz), 7.00(1H, d, J=8.2Hz).
MS(API−ES):386.2[M+Na]+
【0066】
実施例4
(6S)−6−アミノ−3−エトキシカルボニルメトキシ−6,7,8,9−テトラヒドロ−5H−ベンゾシクロヘプテンの製造
(6S)−6−(t−ブトキシカルボニルアミノ)−3−エトキシカルボニルメトキシ−6,7,8,9−テトラヒドロ−5H−ベンゾシクロヘプテン(140mg)のエタノール(1.4mL)溶液に、濃塩酸(0.14mL)を室温で加え、60℃で2時間加熱撹拌した。反応終了後、反応液を室温に冷却し、減圧下に濃縮乾固した。濃縮残渣に炭酸水素ナトリウムの飽和水溶液(2mL)を加え、酢酸エチル(5mL)で2回抽出した。有機相を合わせ、飽和食塩水(1mL)で洗浄し、減圧下に濃縮して、標記化合物(87mg)を無色結晶として86%の収率で得た。
【0067】
1H−NMR(CDCl3)δ:1.29(3H, t, J=7.1Hz), 1.38−1.62(1H, m), 1.82−2.04(2H, m), 2.11−2.30(1H, m), 2.62−2.80(2H, m), 2.92−3.32(3H, m), 4.26(2H, q, J=7.1Hz), 4.30(2H, br.s), 4.57(2H, s), 6.65(1H, dd, J=8.3, 2.7Hz), 6.82(1H, d, J=2.7Hz), 7.01(1H, d, J=8.3Hz).
MS(API−ES):264.2[M+1]+
【0068】
実施例5
(1’S,6S)−3−エトキシカルボニルメトキシ−6−(1−フェニルエチルアミノ)−6,7,8,9−テトラヒドロ−5H−ベンゾシクロヘプテン塩酸塩の製造
(1’S,6S)−3−ヒドロキシ−6−(1−フェニルエチルアミノ)−6,7,8,9−テトラヒドロ−5H−ベンゾシクロヘプテン臭化水素酸塩(75.0kg)、塩化メチレン(750L)、水(375L)、塩化ベンジルトリエチルアンモニウム(9.37kg)、炭酸カリウム(171.6kg)およびブロモ酢酸エチル(52.0kg)の混合物を、9時間撹拌還流した。反応終了後、反応混合物を室温で一夜静置し、水(375L)を加え、撹拌後静置して有機層を分取した。水相を塩化メチレン(375L)で抽出し、先に得た塩化メチレン相と合わせ、10%(W/V)食塩水(375L)で洗浄し、減圧下に濃縮し、油状物質を得た。油状物質の酢酸エチル(900L)溶液に、4N塩酸−酢酸エチル溶液(51.9L)を約15℃で滴下した。この混合物をさらに同温度で約30分間撹拌した後、撹拌下に約30分間加熱還流した。混合物を約0℃までゆっくりと冷却し、氷温下で約1時間撹拌し、析出した結晶をろ取した。ろ取した結晶を冷酢酸エチル(375L)で洗浄し、約40℃で真空乾燥して、標記化合物(74.19kg)を収率93.8%で得た。この化合物のHPLC純度は98.0%以上であった。
【0069】
1H−NMR(DMSO−d6)δ:0.95−1.15(1H,m),1.23(3H,t,J=7.1Hz),1.65(3H,d,J=6.6Hz),1.70−2.25(2H,m),2.20−2.45(2H,m),2.55−2.70(2H,m),2.85−3.30(2H,m),4.20(2H,q,J=7.1Hz),4.70(2H,s),4.75−4.90(1H,m),6.60−6.65(1H,dd,J=2.5Hz,8.3Hz),6.84(1H,d,J=2.5Hz),6.97(1H,d,J=8.3Hz),7.31−7.76(5H,m).
MASS(m/z):368[M−HCl+1]+
【0070】
実施例6
(6S)−6−アミノ−3−エトキシカルボニルメトキシ−6,7,8,9−テトラヒドロ−5H−ベンゾシクロヘプテン塩酸塩の製造
(1’S,6S)−3−エトキシカルボニルメトキシ−6−(1−フェニルエチルアミノ)−6,7,8,9−テトラヒドロ−5H−ベンゾシクロヘプテン塩酸塩(100g)、エタノール(1000mL)、ギ酸アンモニウム(46.8g)および10%パラジウム炭素(50%含水、5g)の混合物を、撹拌下、2時間加熱還流して、室温に冷却した。触媒をろ別し、エタノール(100mL)で洗浄し、ろ液と合わせた。ろ液を減圧下に濃縮乾固した。濃縮残渣を酢酸エチル(1000mL)に溶解し、炭酸水素ナトリウムの飽和溶液(300mL)、水(100mL)および飽和食塩水(100mL)で順次洗浄した。有機相を、減圧下に濃縮乾固して、エタノール(500mL)に溶解した。この溶液に、塩化トリメチルシラン(53.79g)を撹拌下に加え、十分に混合して、減圧下に濃縮乾固した。濃縮残渣に酢酸エチル(800mL)を加え、室温で30分撹拌して、析出物をろ取し、酢酸エチル(200mL)で洗浄後、真空乾燥し、無色結晶の標記化合物(45.80g)を61.7%の収率で得た。
【0071】
1H−NMR(DMSO−d6)δ:1.20−1.40(1H,m),1.22(3H,t,J=7.2Hz),1.60−2.00(2H,m),2.10−2.25(1H,m),2.55−2.80(2H,m),2.88−3.12(3H,m),4.17(2H,q,J=7.2Hz),4.72(2H,s),6.62−6.72(2H,m),7.04(1H,d,J=8.0Hz),8.24(3H,br.s).
MASS(API−ES):264.2[M−HCl+1]+
【0072】
実施例7
(6S)−6−アミノ−3−エトキシカルボニルメトキシ−6,7,8,9−テトラヒドロ−5H−ベンゾシクロヘプテンの製造
(6S)−6−アミノ−3−エトキシカルボニルメトキシ−6,7,8,9−テトラヒドロ−5H−ベンゾシクロヘプテン塩酸塩(20g)、酢酸エチル(400mL)の混合物に、撹拌下、水(40mL)と水酸化ナトリウムの24%水溶液(11.12g)の混液を滴下し、撹拌を継続した。反応終了後、有機相を分取し、水相を酢酸エチル(400mL)で洗浄し、先の有機相と合わせ、減圧下に濃縮乾固した。濃縮残渣に酢酸エチル(20mL)を加え、再度濃縮乾固することにより、標記化合物(18.3g)を無色の結晶として定量的に得た。
【0073】
1H−NMR(CDCl3)δ:1.29(3H, t, J=7.1Hz), 1.38−1.62(1H, m), 1.82−2.04(2H, m), 2.11−2.30(1H, m), 2.62−2.80(2H, m), 2.92−3.32(3H, m), 4.26(2H, q, J=7.1Hz), 4.30(2H, br.s), 4.57(2H, s), 6.65(1H, dd, J=8.3, 2.7Hz), 6.82(1H, d, J=2.7Hz), 7.01(1H, d, J=8.3Hz).
MS(API−ES):264.2[M+1]+
【0074】
実施例8
(2’R,6S)−6−(2−(3−クロロフェニル)−2−ヒドロキシエチルアミノ)−3−エトキシカルボニルメトキシ−6,7,8,9−テトラヒドロ−5H−ベンゾシクロヘプテン塩酸塩の製造
(6S)−6−アミノ−3−エトキシカルボニルメトキシ−6,7,8,9−テトラヒドロ−5H−ベンゾシクロヘプテン(260mg)のジメチルスルホキシド(0.5mL)溶液に、N−(トリメチルシリル)アセトアミド(143mg)を室温で加え、同温度で30分間撹拌した。反応終了後、この反応混合物に(R)−m−クロロスチレンオキシド(160mg)を加え、60℃で24時間加熱撹拌して、室温に冷却した。この反応混合物に水(1mL)および1N塩酸(1.2mL)を加え、室温で撹拌した。反応終了後、この反応混合物に炭酸水素ナトリウムの飽和水溶液(2mL)を加え、酢酸エチル(2mL)で抽出し、有機相を飽和食塩水で洗浄した。この有機相に濃塩酸(0.1mL)を撹拌下に加え、減圧下に濃縮した。得られた残渣を酢酸エチル−エタノール混液(10:1)で溶出するシリカゲルクロマトグラフィーで精製して、標記化合物(160mg)を無色結晶として35.7%の収率で得た。
【0075】
1H−NMR(DMSO−d6)δ:1.12−1.36(1H, m), 1.19(3H, t,J=7.1Hz), 1.75−2.08(2H, m), 2.20−2.40(1H, m), 2.58−2.78(2H, m), 2.90−3.24(5H, m), 4.15(2H, q, J=7.1Hz), 4.71(2H, s), 4.98−5.10(1H, m), 6.34(1H, br.s), 6.67(1H, dd, J=8.2, 2.6Hz), 6.88(1H, d, J=2.6Hz), 7.03(1H, d, J=8.2Hz), 7.35−7.55(4H, m), 8.97(2H, br.s).
MS(API−ES):418.3[M−HCl+1]+
【0076】
実施例9
(2’R,6S)−6−(2−(3−クロロフェニル)−2−ヒドロキシエチルアミノ)−3−エトキシカルボニルメトキシ−6,7,8,9−テトラヒドロ−5H−ベンゾシクロヘプテン塩酸塩の製造
(6S)−6−アミノ−3−エトキシカルボニルメトキシ−6,7,8,9−テトラヒドロ−5H−ベンゾシクロヘプテン(250mg)のジメチルスルホキシド(0.5mL)溶液にN,N’−ビス(トリメチルシリル)尿素(213mg)を室温で加え、60℃で30分間加熱撹拌した。反応終了後、この反応混合物に、(R)−m−クロロスチレンオキシド(155mg)を加え、60℃で24時間加熱撹拌し、室温に冷却した。この反応混合物に、1N塩酸(3mL)を加え、室温で撹拌した。反応終了後、この反応混合物をトルエン(10mL)で抽出し、有機相を水(5mL)で洗浄し、乾燥し、減圧下に濃縮し、標記化合物(194mg)を無色アモルファスとして45%の収率で得た。この物質は酢酸エチル−イソプロピルエーテル−水の混液から結晶化した。
この物質の1H−NMRおよびMS(API−ES)のそれぞれのデータは実施例8で得られた物質のものと完全に一致した。
【0077】
実施例10
6−カルボキシ−3−ヒドロキシ−6,7,8,9−テトラヒドロ−5H−ベンゾシクロヘプテンの製造
8−カルボキシ−2−ヒドロキシ−6,7−ジヒドロ−5H−ベンゾシクロヘプテン−5−オン(12.0g)のメタノール(120mL)溶液に、室温で濃塩酸(4mL)および10%パラジウム炭素(50%含水、1.2g)を加え、水素ガスで置換し、水素加圧下(0.45MPa)に、室温で約17時間接触還元を行った。反応終了後、触媒をろ別し、ろ液を減圧下に濃縮した。得られた濃縮残渣にトルエン(24mL)を加え、減圧下に濃縮する操作を3回繰り返した。得られた濃縮残渣を水(36mL)および水酸化ナトリウムの24%水溶液(14.4mL)の混液に溶解し、60℃で30分間加熱撹拌した。反応液を冷却し、濃塩酸(10mL)を加え、酢酸エチル(200mL)で抽出し、この抽出液を、酢酸エチルを溶出溶媒とするシリカゲルクロマトグラフィーにより精製し、溶出溶液を減圧下に濃縮した。得られた濃縮残渣をトルエン(40mL)に分散し、減圧下に濃縮する操作を2回繰り返して結晶化させた。この結晶性物質をトルエン(40mL)に再度懸濁し、60℃で30分間加熱撹拌後、室温に冷却し、さらに2時間撹拌した。得られた析出物をろ取し、真空乾燥して、淡褐色結晶の標記化合物(9.99g)を88.1%の収率で得た。
【0078】
1H−NMR(DMSO−d6)δ:1.15−1.40(1H, m), 1.62−1.95(2H, m), 1.95−2.10(1H, m), 2.18−2.32(1H, m), 2.58−2.66(2H, m), 2.82−2.92(2H, m), 6.46(1H, dd, J=7.9, 2.5Hz), 6.55(1H, d, J=2.5Hz), 6.86(1H, d, J=7.9Hz), 9.06(1H, br.s), 12.1(H, br.s).
MS(API−ES):205.3[M−1]−
【0079】
実施例11
6−(t−ブトキシカルボニルアミノ)−3−ヒドロキシ−6,7,8,9−テトラヒドロ−5H−ベンゾシクロヘプテンの製造
6−カルボキシ−3−ヒドロキシ−6,7,8,9−テトラヒドロ−5H−ベンゾシクロヘプテン(100mg)を、トルエン(1mL)、t−ブチルアルコール(1mL)およびトリエチルアミン(49mg)の混液に溶解し、120℃で加熱撹拌下にジフェニルリン酸アジド(133mg)を滴下した。反応混合物を撹拌下に12時間加熱還流し、室温に冷却した。反応液に炭酸水素ナトリウムの飽和水溶液(1mL)を加え、酢酸エチル(2mL)で抽出し、有機相を減圧下に濃縮した。得られた残渣をn−ヘプタン−酢酸エチル混液(1:1)で溶出するシリカゲルクロマトグラフィーに付し、粗生成物(114mg)を得た。この粗生成物をn−ヘプタン−酢酸エチル混液(2:1)で溶出するシリカゲルクロマトグラフィーに再度付し、淡黄色アモルファスの標記化合物(76mg)を56.5%の収率で得た。
【0080】
1H−NMR(CDCl3)δ:1.43(9H, s), 1.55−1.68(2H, m), 1.82−1.98(2H, m), 2.62−2.72(2H, m), 2.82(1H, dd, J=13.7, 8.0Hz), 2.92(1H, dd, J=13.7, 1.6Hz), 3.72−3.92(1H, m), 4.35−4.48(1H, m), 5.35(1H, br.s), 6.64(1H, dd, J=7.9, 2.6Hz), 6.64(1H, d, J=2.6Hz), 6.94(1H, d, J=7.9Hz).
MS(API−ES):276.2[M−1]−
【0081】
実施例12
6−(N−アミノカルバモイル)−3−ヒドロキシ−6,7,8,9−テトラヒドロ−5H−ベンゾシクロヘプテンの製造
6−カルボキシ−3−ヒドロキシ−6,7,8,9−テトラヒドロ−5H−ベンゾシクロヘプテン(25.0g)、メタノール(50mL)および濃塩酸(2.5mL)の混合物を45℃で6時間加熱撹拌し、反応終了後、室温に冷却した。この反応混合物にヒドラジン一水和物(80%、50mL)を室温で撹拌下に滴下した。滴下終了後、室温で20時間撹拌を継続した。反応終了後、反応混合物に水(125mL)を室温で撹拌下に加え、同温度で2時間撹拌後して5℃に冷却し、同温度で2時間撹拌した。析出物をろ取し、水(125mL)で洗浄し、40℃で真空乾燥して、白色結晶の標記化合物(23.0g)を86.1%の収率で得た。
【0082】
1H−NMR(DMSO−d6)δ:1.00−1.28(1H, m), 1.65−2.10(4H, m), 2.40−2.75(3H, m), 2.91(1H, dd, J=13.9, 10.7Hz), 4.15(2H, br.s), 6.45(1H, dd, J=7.9, 2.5Hz), 6.51(1H, d, J=2.5), 6.86(1H, d, J=7.9Hz),8.92(1H, br.s), 9.06(1H, br.s).
MS(API−ES):243.3[M+Na]+
【0083】
実施例13
6−(t−ブトキシカルボニルアミノ)−3−ヒドロキシ−6,7,8,9−テトラヒドロ−5H−ベンゾシクロヘプテンの製造
6−(N−アミノカルバモイル)−3−ヒドロキシ−6,7,8,9−テトラヒドロ−5H−ベンゾシクロヘプテン(22.0g)を、氷冷下、水(110mL)に撹拌懸濁し、同温度で濃塩酸(19.9mL)を滴下した。この反応混合物に亜硝酸ナトリウム(8.27g)の水(66mL)溶液を氷冷撹拌下に1時間にわたり滴下し、次いで同温度で1時間撹拌を継続した。反応混合物にトルエン(440mL)および酢酸エチル(88mL)を10℃以下で加え、同温度で抽出し有機層を分離した。有機相を、水、炭酸水素ナトリウムの9%水溶液および飽和食塩水(各110mL)で順次洗浄した。この有機相の約1/3量を撹拌下に80℃で加熱し、ガスの発生の開始後、残りの有機相を撹拌下に、ガスの発生を維持するように滴下した。ガスの発生の終了後、反応液を約120℃まで加熱し、約3/4の容量まで常圧で濃縮し、次いで約70℃まで冷却した。この反応液にt−ブチルアルコール(220mL)およびp−トルエンスルホン酸一水和物(0.66g)を加え、撹拌下に3時間加熱還流し、次いで室温まで冷却した。この反応液を炭酸水素ナトリウムの9%水溶液で洗浄し、減圧下に濃縮乾固した。得られた濃縮残渣をn−ヘプタン(110mL)に溶解し、減圧下に濃縮乾固し、残渣をn−ヘプタンから結晶化した。析出物をろ取し、真空乾燥して、淡黄色結晶の標記化合物(24.1g)を87.0%の収率で得た。
【0084】
1H−NMR(CDCl3)δ:1.43(9H, s), 1.55−1.68(2H, m), 1.82−1.98(2H, m), 2.62−2.72(2H, m), 2.82(1H, dd, J=13.7, 8.0Hz), 2.92(1H, dd, J=13.7, 1.6Hz), 3.72−3.92(1H, m), 4.35−4.48(1H, m), 5.35(1H, br.s), 6.64(1H, dd, J=7.9, 2.6Hz), 6.64(1H, d, J=2.6Hz), 6.94(1H, d, J=7.9Hz).
MS(API−ES):276.2[M−1]−
【0085】
実施例14
6−アミノ−3−エトキシカルボニルメトキシ−6,7,8,9−テトラヒドロ−5H−ベンゾシクロヘプテン塩酸塩の製造
6−(t−ブトキシカルボニルアミノ)−3−ヒドロキシ−6,7,8,9−テトラヒドロ−5H−ベンゾシクロヘプテン(30.0g)、粉砕した炭酸カリウム(44.85g)、塩化ベンジルトリエチルアンモニウム(4.93g)、クロロ酢酸エチル(26.5g)、酢酸エチル(300mL)の混合物を、2時間撹拌還流し、室温に冷却した。反応混合物を水(90mL)で2回洗浄し、有機相を減圧下に濃縮した。油状の濃縮残渣にエタノール(30mL)を加え、減圧下に再度濃縮し、ラセミ混合物の化合物(VI)を油状の形態で得た。この化合物のエタノール(150mL)溶液に、塩化トリメチルシラン(23.5g)を加え、還流下に1時間撹拌した。反応混合物を室温に冷却し、減圧下に濃縮した。得られた油状の濃縮残渣に酢酸エチル(150mL)を加え、室温で、1時間撹拌した。析出物をろ取し、酢酸エチル(30mL)で洗浄し、真空乾燥して、白色結晶の標記化合物(25.77g)を79.5%の収率で得た。
【0086】
この物質の1H−NMRおよびMS(API−ES)のそれぞれのデータは実施例6で得られた物質のものと完全に一致した。
【0087】
【発明の効果】
本発明によれば、最終目的化合物(VIII)と同じ立体配位を有する光学活性なベンゾシクロヘプテン化合物(I)またはその塩を出発物質とすることにより、一般的な合成法でベンゾシクロヘプテン化合物(II)、(III)および(V)を経て、ベンゾシクロヘプテン化合物(VI)から光学活性なベンゾシクロヘプテン誘導体(VIII)を効率よく製造することができる。
また、本発明によれば、光学活性なベンゾシクロヘプテン化合物(I)またはその塩を出発物質とすることにより、ベンゾシクロヘプテン化合物(IX)を経てベンゾシクロヘプテン化合物(VI)に導くことにより、光学活性なベンゾシクロヘプテン誘導体(VIII)を効率よく製造することができる。
さらに、本発明によれば、より安価な原料から製造できるベンゾシクロヘプテン化合物(XI)のカルボキシル基を、クルチウス転位反応に付した後アミノ基の保護を行なうことにより、最終目的化合物(VIII)の製造の鍵となる中間体であるベンゾシクロヘプテン化合物(III)のラセミ化合物(IIIa)を、効率よくかつ安価に製造することができる。また、この製造過程の適当な段階で光学分割することにより、光学活性なベンゾシクロヘプテン誘導体(VIII)を効率よくかつ安価に製造することができる。
Claims (9)
- 一般式:
で表される光学活性なベンゾシクロヘプテン化合物(I)またはその塩を基 −CH(R3)R4の脱離反応に付して、式:
で表される光学活性なベンゾシクロヘプテン化合物(III)またはその塩とし、この化合物(III)またはその塩に、一般式:
【化7】
X’−A−CO2R1 (IV)
[式中、R1は低級アルキル基、Aは低級アルキレン基、X’は酸残基をそれぞれ意味する]
で表される化合物(IV)を反応させて、一般式:
で表される光学活性なベンゾシクロヘプテン化合物(V)とし、この化合物(V)をアミノ保護基の脱離反応に付して、一般式:
で表される光学活性なベンゾシクロヘプテン化合物(VI)またはその塩とし、この化合物(VI)またはその塩に、一般式:
で表されるエポキシド化合物(VII)を反応させて、一般式:
で表される光学活性なベンゾシクロヘプテン誘導体(VIII)またはその塩を得ることを特徴とするベンゾシクロヘプテン誘導体の製造法。 - 一般式:
で表される光学活性なベンゾシクロヘプテン化合物(I)またはその塩に、一般式:
【化13】
X’−A−CO2R1 (IV)
[式中、R1は低級アルキル基、Aは低級アルキレン基、X’は酸残基をそれぞれ意味する]
で表される化合物(IV)を反応させて、一般式:
で表される光学活性なベンゾシクロヘプテン化合物(IX)またはその塩とし、この化合物(IX)またはその塩を基−CH(R3)R4の脱離反応に付して、一般式:
で表される光学活性なベンゾシクロヘプテン化合物(VI)またはその塩とし、この化合物(VI)またはその塩に、一般式:
で表されるエポキシド化合物(VII)を反応させて、一般式:
で表される光学活性なベンゾシクロヘプテン誘導体(VIII)またはその塩を得ることを特徴とするベンゾシクロヘプテン誘導体の製造法。 - 式:
で表されるベンゾシクロヘプテン化合物(IIIa)またはその塩とし、この化合物(IIIa)またはその塩に、一般式:
【化21】
X’−A−CO2R1 (IV)
[式中、R1は低級アルキル基、Aは低級アルキレン基、X’は酸残基をそれぞれ意味する]
で表される化合物(IV)を反応させて、一般式:
で表されるベンゾシクロヘプテン化合物(Va)とし、この化合物(Va)をアミノ保護基の脱離反応に付して、一般式:
で表されるベンゾシクロヘプテン化合物(VIa)またはその塩とし、この化合物(VIa)またはその塩に、一般式:
で表されるエポキシド化合物(VII)を反応させて、一般式:
で表されるベンゾシクロヘプテン誘導体(VIIIa)またはその塩を得ることを特徴とするベンゾシクロヘプテン誘導体の製造法。 - 式:
で表されるベンゾシクロヘプテン化合物(IIIa)またはその塩とし、この化合物(IIIa)またはその塩に、一般式:
【化29】
X’−A−CO2R1 (IV)
[式中、R1は低級アルキル基、Aは低級アルキレン基、X’は酸残基をそれぞれ意味する]
で表される化合物(IV)を反応させ、次いで反応生成物をアミノ保護基の脱離反応し付して、一般式:
で表されるベンゾシクロヘプテン化合物(VIa)またはその塩とし、この化合物(VIa)またはその塩に、一般式:
で表されるエポキシド化合物(VII)を反応させて、一般式:
で表されるベンゾシクロヘプテン誘導体(VIIIa)またはその塩を得ることを特徴とするベンゾシクロヘプテン誘導体の製造法。 - 光学活性体(6S)である請求項6に記載のベンゾシクロヘプテン化合物。
- 光学活性体(6S)である請求項8に記載のベンゾシクロヘプテン化合物。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002318036A JP2004149477A (ja) | 2002-10-31 | 2002-10-31 | ベンゾシクロヘプテン誘導体の製造法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002318036A JP2004149477A (ja) | 2002-10-31 | 2002-10-31 | ベンゾシクロヘプテン誘導体の製造法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2004149477A true JP2004149477A (ja) | 2004-05-27 |
Family
ID=32461280
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2002318036A Pending JP2004149477A (ja) | 2002-10-31 | 2002-10-31 | ベンゾシクロヘプテン誘導体の製造法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2004149477A (ja) |
-
2002
- 2002-10-31 JP JP2002318036A patent/JP2004149477A/ja active Pending
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
TWI464165B (zh) | 用於製備藥劑之方法及中間物 | |
US7309803B2 (en) | Clean, High-yield preparation of S,S and R,S amino acid isosteres | |
EP0529842B1 (en) | Production of fluoxetine and new intermediates | |
EA019431B1 (ru) | Способ и промежуточные соединения для получения ингибиторов интегразы | |
EP2238152B1 (en) | Processes for preparation of dutasteride | |
TWI438188B (zh) | 用於合成醫藥品之中間化合物的製造方法 | |
JP2818763B2 (ja) | N−(ヒドロキシ)アラルキルフェニルエタノールアミン類のo−アルキル化された化合物 | |
EP1129066A1 (en) | Production of 2-amino-2- 2-(4-c 2-20?-alkyl-phenyl)ethyl]propane-1,3-diols | |
JPH11310556A (ja) | 2−アミノ−2−[2−(4−オクチルフェニル)エチル]プロパン−1,3−ジオールの新規な製造法 | |
JP2002516313A (ja) | 2−置換ピペリジン立体異性体を製造するための方法及び中間体 | |
JP2002524550A (ja) | N−置換ヒドロキシシクロアルキルアミン誘導体の製造方法 | |
JP4874122B2 (ja) | トルテロジンを得るための方法 | |
JP2835413B2 (ja) | フェノチアジン誘導体およびその製造方法 | |
JP2004149477A (ja) | ベンゾシクロヘプテン誘導体の製造法 | |
EP0490970B1 (en) | New route of synthesis for protected nitrogen mustard prodrugs | |
US5463051A (en) | Process for preparing benzazepine intermediates for the synthesis of D1 antagonists | |
EP1926709A1 (en) | Process for the preparation of chiral 3-hydroxy pyrrolidine compound and derivatives thereof having high optical purity | |
JP2009507783A (ja) | 高光学純度を有するキラル3−ヒドロキシピロリジン化合物及びその誘導体の製造方法 | |
US6444851B1 (en) | Process for the preparation of Midodrine | |
WO2001060795A1 (fr) | Procedes pour preparer des derives d'aminoacides a activite optique | |
JPH05140157A (ja) | フエノチアジン誘導体 | |
JP4829418B2 (ja) | 光学活性なハロヒドリン誘導体およびその使用方法 | |
JPWO2004099136A1 (ja) | ピロリジン誘導体の製造方法 | |
JP2829306B2 (ja) | 2―アミノ―7―ヒドロキシテトラリンエーテル誘導体 | |
JPH0559045A (ja) | ピリジルオキシ誘導体の製造方法 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A711 | Notification of change in applicant |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A712 Effective date: 20050520 |