JP2004147781A - 弁装置及び圧力調整用の弁装置と圧力調整用の弁装置を備える手動搾乳器 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】弾性変形可能な端面を有する開口形成部12と、前記端面に形成され、気体または液体の通過量を調整するための開口14とを備える弁体11と、前記開口形成部に対して、前記端面の面方向に沿った複数の異なる方向に関して、選択的に変形力を付与する手段18とを備える。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、気体や液体の通過量を調整するための弁装置に係り、特に、所定の空間の圧力を調整するための圧力調整用に好適に使用できる弁装置と、このような弁装置を備えた手動搾乳器に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、例えば、搾乳器等の負圧形成空間の圧力を調整するための装置としては、本出願人の提案による図27に示すような圧力調整手段1が知られている(特許文献1参照)。
圧力調整手段1は、図27の断面側面図に示すように、略円筒状のボディ281の端面側に開口した凹陥部281aに、通気路281bが連通されている。凹陥部281aの底面の中央には軸受穴281cが設けられ、この軸受穴281cの外側には通気路281bに連通し、かつ周方向に延びる円弧状の連通溝281dが設けられ、この連通溝281dが途切れた部分には位置決め用の突起281eが設けられている。そして、凹陥部281aの開口端の内側にはV字状に切り欠いたノッチ281fが周方向に等間隔に複数個設けられていると共に、開口端の外側にはツマミ282の抜けを防止するためのフランジ281gが形成されている。
【0003】
凹陥部281a内には、ノズル板283、通路体284及び弁体となる回転部材285が底面側から収納されている。
ノズル板283は、円形の薄板材から成り、その中心には軸受穴281cと同径の中心穴283aが設けられていると共に、その外側には突起281eが貫通する貫通穴283bと、連通溝281dに連通されるよう同心上に配置された互いに径の異なる複数個のノズル孔283cとが設けられている。
通路体284は、円盤形を成し、その一面の中央には中心穴283aを貫通して軸受穴281cに嵌合される軸284aが突出形成されていると共に、その他面の貫通穴283bとノズル孔283cとに対応する位置には突部284bが突出形成されている。この突部284bには、突起281eを挿入できる通気孔284cが貫装されており、挿入された突起281eにより通路体284の回動を防止している。通気孔284cの開口端は回転部材285の背面により閉鎖可能となっている。
【0004】
弁体である回転部材285は、凹陥部281aに緩くはまり合う円盤部285aと、その円盤部285aの上面中央に立設された角柱部285bと、円盤部285aの上面周縁に立設され、かつ上端部を円弧状に湾曲させたアーム部285cとを有している。アーム部285cの先端には、外側に突出するノッチ突起285dが設けられている。円盤部285aの下面には、通路体284の複数個の通気孔284cのうちの1個とのみ連通可能な扇形を成す切り欠き通路285eが設けられている。
ツマミ282は、互いに同心を成すように設けられた内筒部282a及び外筒部282bを有している。内筒部282aの中央には回転部材285の角柱部285bがはまり合う角柱穴282cが設けられ、これによりツマミ282と回転部材285を回転方向に一体としている。外筒部282bの内側にはボディ281からの抜けを防止するためフランジ281gに係合される爪部282dが設けられている。
【0005】
以上の構成において、ツマミ282を回転すると、回転部材285も同方向に回転するので、回転部材285の裏面に設けた切り欠き通路285eが周方向に回転変位して、通路体284の通気孔284cに連通する。通路体284の通気孔284cは、ノズル板283に設けた互いに径の異なるノズル孔283cを介して通気路281bと連通しているので、ノズル孔283cの径の大きさに応じた外気が通気路281bに流れ込む。従って、ノズル孔283cを選択して通気路281bに流れ込む空気量を調節することにより、フード部10の筒状部分12内の負圧の大きさを適宜に調節することができるというものである。
【0006】
【特許文献1】
特開平9−66099号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、従来の圧力調整手段1は、上述のように、弁体である回転部材285以外に多数の部品と複雑な構造を有しており、例えば、搾乳器等の適用した場合には、清潔にたもつために、分解し、洗浄しようとする場合には、きわめて煩雑な構造であった。
【0008】
本発明は、このような問題を解決するためになされたもので、部品点数を少なくすることができ、分解したり洗浄することが容易で、しかも確実に動作する弁装置と、このような弁装置を備える手動搾乳器を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的は、請求項1の発明にあっては、弾性変形可能な端面を有する開口形成部と、前記端面に形成され、気体または液体の通過量を調整するための開口とを備える弁体と、前記開口形成部に対して、前記端面の面方向に沿った複数の異なる方向に関して、選択的に変形力を付与する手段とを備える、弁装置により、達成される。
請求項1の構成によれば、弁体の開口形成部は弾性を有しているので、その端面に開口を形成して、端面の面方向に沿った複数の異なる方向に関して、変形力を付与すると、開口が拡がったり、つぶされたりすることになる。このため、開口の断面積を変化させることで、開口を通過する気体や液体の通過量を調整することができる。ここで、変形力を付与する手段は、前記端面を面方向に沿って、前記端面を拡張する方向か圧縮する方向に変形力を付与する。拡張する方向に変形力を付与すると、端面はその弾性により広がり、開口はその面積を変化させる。圧縮する方向に変形力を付与すると、端面はその弾性により収縮し、開口はその面積を変化させる。開口は所定の丸孔、幾何学形の孔、切れ目ないしはスリット状の貫通孔である。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1の構成において、前記変形力を付与する手段が、前記弁体の少なくとも前記開口形成部と係合する枠体で形成されており、この枠体が大きさの異なる複数の径を備えることを特徴とする。
請求項2の構成によれば、前記変形力を付与する手段を、前記弁体の少なくとも前記開口形成部と係合する枠体により形成することで、前記弁体を、この枠体に沿って回動させると、枠体が大きさの異なる径を備えることから、回動位置により開口形成部に加わる圧縮または引っ張り方向の力が変化する。つまり、枠体が開口形成部を包囲し、大きさの異なる内径を有する構成とすると、小さな内径位置に回動された場合には、その径方向に沿って強い圧縮力が加えられ、その分つぶされることになる。これよりも大きな内径位置では、その径方向に加わる圧縮力は弱まる。これに対応して、開口形成部の端面に設けた開口は、つぶされることにより開口断面積が小さくされたり、これより大きくされたりすることになる。また、枠体が、開口形成部の周縁に内接し、大きさの異なる外径を有する構成とすると、大きな外径位置に回動された場合には、その径方向に沿って強い引っ張り力が加えられ、その分材料が延びることになる。これよりも小さな外径位置では、その径方向に加わる引っ張り力は弱まる。これに対応して、開口形成部の端面に設けた開口は、材料が引っ張られることにより開口断面積が大きくされたり、これより小さくされたりすることになる。
【0011】
請求項3の発明は、請求項2の構成において、前記枠体の前記開口形成部と係合する周縁が長円または楕円状とされていることを特徴とする。
請求項3の構成によれば、前記開口形成部を包囲する枠体の前記開口形成部と係合する周縁が長円または楕円状とされている。このため、上記した周縁としての内径または外径について、径の大きさが異なる回動位置を容易に設けることができる。
【0012】
上記目的は、請求項4の発明にあっては、圧力調整の対象となる空間と外部とを繋ぐ連通口に設けられ、短径と長径でなる異なる内径を備えた筒状の枠体と、この枠体に圧入されて内接するとともに、弾性変形可能な端面を有する開口形成部を含む弁体とを備えており、前記弁体の前記開口形成部は、前記枠体の前記内径の短径よりも大きな外径を有し、さらに、前記弁体の前記開口形成部が前記枠体に対して相対的に回動されることにより、前記連通口を閉止される位置において、前記長径方向に沿って延びるスリット状開口を有している圧力調整用の弁装置により、達成される。
【0013】
請求項4の構成によれば、筒状の枠体が、この枠体に圧入されて内接した弁体に変形力を付与する手段となる。弁体の開口形成部は、前記枠体の前記内径の短径よりも大きな外径を有していることから、この内径位置では、径方向に大きな圧縮力が加えられる。圧力調整を行おうとする空間との連通口を閉止しようとする場合、もしくはほぼ閉止しようとする場合には、弁体を枠体に沿って回動した回動位置において、開口形成部に設けたスリット状開口が、この長径方向に延びるようにする。これにより、スリット状開口はつぶれた形態とされるので、その開口断面積は最小となる。一方、他の回動位置では、当該スリット状開口はより開かれて開口断面積がより大きくなるので、気体もしくは液体の通過量は大きくなる。このようにして、圧力調整の対象となる空間内の気圧等を調整することができる。
【0014】
請求項5の発明は、請求項4の構成において、前記弁体の前記開口形成部は円形であり、この開口形成部の外径は前記枠体の短径よりも大きく、長径とほぼ同等に形成されているとともに、前記開口形成部の外周は、前記枠体の内周よりも大きく形成されていることを特徴とする。
請求項5の構成によれば、前記弁体の開口形成部の外周は、前記枠体の内周よも大きく形成されている分だけ、弁体の開口形成部が枠体内に大きく変形されて圧入されるため、枠体と弁体との隙間が完全に塞がれるので、完全な密閉状態を形成することができる。
【0015】
また、上記目的は、請求項6の発明によれば、使用者の乳房に当接されるほぼ円錐状の搾乳部を備え、ボトルと連通するように着脱される着脱部を備えた搾乳器本体と、一方向に長い形状を有し、その中間付近が前記搾乳器本体に軸止め手段によって軸止めされるとともに、この軸止め箇所を中心に、正逆に回動可能に支持されるレバーとを備え、前記レバーは、前記回動による前記レバーの一端側の動きにより、ピストンの相対的な往復運動を行い、ピストンが収容される所定の内部空間の容積を変更することで、この内部空間内に負圧を形成して、この内部空間と連通された前記搾乳部から母乳を吸引し、前記ボトル内に落とし込む構成とされ前記負圧を発生するための手段が、前記搾乳部と連通された通気路と、この通気路の端部に設けた固定ピストンと、前記レバーの一端に一体に設けられ、前記搾乳器本体の前記固定ピストンが挿入されて、前記通気路と連絡されるとともに、前記レバーの回動により、挿入された固定ピストンが内部で褶動されるスリーブとを備え、前記スリーブ内面と前記固定ピストンの一面により仕切られる空間に、前記レバーの回動によって負圧を形成する構成とされており、さらに、前記スリーブに、圧力調整用の弁装置を備えるとともに、この弁装置が、弾性変形可能な端面を有する開口形成部と、前記端面に形成され、気体または液体の通過量を調整するための開口とを備える弁体と、前記開口形成部に対して、前記端面の面方向に沿った複数の異なる方向に関して、選択的に変形力を付与する手段とを備える手動搾乳器により、達成される。
【0016】
請求項6の構成によれば、搾乳器本体は、着脱部によりボトルに対して取付け、取り外しされる。また、この搾乳器はレバーを操作することで、ピストンが収容される空間側であるスリーブを動かして負圧を形成するようにされている。そして、従来のように、手入れ時等の取り扱いに不便な長い通気管等は備えていない。レバーは搾乳器本体から取り外しされて、レバーと搾乳器本体はそれぞれ洗浄できるようになっている。
しかも、レバーの一端にスリーブが一体に形成されていることから、レバーを取り外すだけで、固定ピストンを挿入するための開口が露出したスリーブを洗浄することができる。したがって、負圧を形成するための空間の構成が簡単で、洗浄しやすい。また、レバーを外せば、搾乳器本体側には、スリーブが除かれた固定ピストンが露出するので、洗浄しやすい。つまり、搾乳器本体からレバーを取り外す簡単な作業だけで、負圧を形成する機構を洗浄可能に露出することができる。
さらに、このような手動搾乳器において、スリーブに前記圧力調整用の弁装置を設けることで、この弁装置は、前記負圧を適切に調整できるとともに、部品点数が少なく、確実に動作し、分解したり洗浄することが容易である。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の好適な実施形態を添付図面を参照しながら、詳細に説明する。
尚、以下に述べる実施形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。図1ないし図3は、本発明の実施形態による弁装置を示しており、図1は第1の実施形態の要部を示す概略斜視図、図2は図1の弁装置を垂直な断面で切断した状態の切断端面図、図3は、図2のA−A線方向の概略底面図である。
図1において、弁装置10は、弁本体16と、この弁本体16と組み合わされる弁箱部17とを備えている。
【0018】
弁本体16は、開口形成部となる端面12が、例えば円形に形成され、この端面12を先端に備える有底の筒体でなる弁体11と、弁体11の側壁部13の周囲を所定の隙間15aを隔てて囲むように配置された筒状の支持部15とを備えている。
この実施形態では、弁体11の開口形成部である端面12、側壁部13、支持部15は全て一体の同一の材料で形成されているが、必ずしも一体の構成でなくてもよい。この実施形態は、これらを構成する材料が、特に弾性に富んだ性質の材料で形成されており、柔軟で、弾性変形しやすく、繰り返し変形しても復元力を失わない耐久性に優れたゴム弾性を備えるものが適している。例えば、シリコーンゴムやエラストマー、天然ゴム等が使用できる。そして、この材料は、少なくとも、開口形成部、すなわち、端面12とその少なくとも外周を形成するために使用される。
さらに、弁体11の側壁部13と支持部15の奥側の端面15bは塞がれており、側壁部13の端面12の反対の奥側の端面12aは開放されている。
【0019】
開口形成部である端面12に設けられる開口14は、所定の丸孔、幾何学形の孔、切れ目ないしはスリット状の貫通孔が利用できる。この実施形態では、図1に示すように、一方向(図の左右方向)に延びるスリット状開口が利用されている。
すなわち、この発明の弁装置では、種々の形態の開口を利用することができるが、図示のように、上記一方向に開口径が大きく、これと交差する方向、すなわち、例えば直交する方向に関しては極めて開口径を小さくした形態であるスリット(切れ目)状の開口を形成すると、弁体11の通過流量を制限する上で、特に密閉時に、密閉状態を確実とする調整を行いやすい利点がある。
【0020】
一方、弁箱部17の内側は、変形力付与手段としての枠体18を備えている。この枠体18は、図1の矢印方向に弁体11を嵌入して、弁装置10を組み立てた状態においては、少なくとも開口形成部、この実施形態では弁体11全体に周囲から変形力を与える機能を発揮する。
このために、枠体18は上述の開口形成部とは異なる変形しない剛性のある材料で形成されており、例えば、合成樹脂を成形して形成されたり、金属により形成することができる。本実施形態では、弁箱部17である枠体18の外形は円筒状の外面をされ、その壁厚を図1に示すように変えることにより、大きさの異なる複数の内径L1,L2を備えるようにされている。
【0021】
すなわち、枠体18の厚みT1は、この厚みT1の箇所と直交する径位置の厚みT2よりも小さく形成されている。これにより、枠体18である弁箱17の外周は円形でありながら、枠体18の内周は、長円もしくは楕円形となるように形成されている。
これにより、枠体18は、長径L1と短形L2を備える楕円形とされている。
【0022】
そして、枠体18の垂直壁部は、図2に示すように、弁本体16の隙間15aに緊密に挿入される。つまり、枠体18である弁箱部17の外径は、隙間15aの内径とほぼ同じか、これより僅かに小さく形成されることにより、弾性を有する支持部15は、弁箱部17の外面に密着することができ、これにより挿入状態が安定的に保持されて、密閉状態を保つことができる。この場合、支持部15の内壁面と枠体18の外壁は、それぞれ円筒状とされているため、弁本体16を弁箱部17に対して、回動させて相対的な位置を変えられる。
【0023】
この弁本体16の隙間15aに緊密な挿入と同時に、その内側に位置する外周が円形の弁体11は、枠体18の内側に強制的に嵌入される。これにより、開口形成部である端面12の外周は、枠体18の内面に内接される。この場合、開口形成部である端面12と壁部13は弾性に富んだ材料で形成されるため、枠体18の内側の形状に適合されるように大きく変形されつつ、枠体18の内側に嵌入される。
【0024】
こうして、図2及び図3の状態に組み立てられた弁装置10は、例えば、支持部15を保持して、開口形成部12が図2の弁箱部17の周囲に、図3に示す矢印Rの方向に沿って、P1の位置に回動されることにより、枠体18が、開口形成部である端面12の周囲に対して、この回動位置に対応して選択的に変形力Fを付与することになる。この場合の変形力は、端面12の周囲を内方に圧縮する力として作用する。
【0025】
具体的には、図1における枠体18の短径L2の方向に沿って変形力が作用した場合には、図3に示すように、開口14のスリットが長径L1に沿って位置することになり、開口14を潰すように力が加わり、開口14はその開口面積が小さくされ、開口14を通過する気体や液体(図示せず)の通過流量は、ほとんどなくなり、ほぼ通過流量はゼロとされる。これが弁装置10の密閉状態である。
【0026】
これに対して、弁装置10は、支持部15が図2の弁箱部17の周囲に、図4に示す矢印Rの方向に沿って、図3のP1の位置から、例えば、90度回動されたP2の位置に移動される。これにより、枠体18は、スリット状開口14の切れ目の延びる方向と同じ方向に沿って、開口形成部である端面12の周囲に対して圧縮する方向に力Fを付与する。このため、スリット状開口14は短径L2に沿って位置することになり、図示のように開かれるので、その開口面積は大きくなり、開口14を通過する気体や液体(図示せず)の通過流量は最大とされる。つまり、弁装置10の全開状態である。
そして、支持部15が図2の弁箱部17の周囲に、矢印Rの方向に沿って、図3から図4にいたる位置の間にある際には、弁装置10は、密閉状態から前回状態の間で順次開口面積を増大するように流量調整されることになる。
【0027】
このように、本実施形態の弁装置10によれば、弁体11の開口形成部の開口14を通過する気体や液体の通過量は、支持部15を弁箱部17の周囲に、矢印Rの方向に沿って、回動させるだけの簡単な操作により容易に調整することができる。
しかも、図1に示されているように、弁装置10は、弁本体11を弁箱部17の枠体18から引き抜くだけの簡単な作業により分解することができる。このため、部品点数が少なくて、分解したり洗浄することが容易で、しかも密閉状態から全開状態まで確実に動作する弁装置を得ることができる。
【0028】
また、上述の説明から明らかなように、開口形成部の端面12に設ける開口14の形状は、スリット状の開口ではなく、所定の丸孔、幾何学形の孔、切れ目ないしはスリット状の貫通孔等を用いてもよい。この場合には、調整する通過流量を変化させることができる。
【0029】
次に、図5及び図6を参照して、本発明の第2の実施形態に係る弁装置40について説明する。図5及び図6の弁装置40において、図1ないし図4と同一の符号を付した箇所は共通する構成であるから、重複する説明は省略し、相違点を中心に説明する。
図5は、弁装置40に関する図2と対応した図であり、図6は弁装置40に関する図3と対応した図である。
【0030】
これらの図において、弁装置40の開口形成部42の周縁に起立した壁部13が枠体18の外側に装着されることにより、枠体18は開口形成部42の周縁である壁部13の内面に内接している。
そして、枠体18は、内面でなく外面が、図1で説明したような長円形もしくは楕円形状に形成されている。これにより、枠体18が図1で説明したのと同様に短径と長径でなる大きさの異なる複数の外径を備えている。
【0031】
これにより、弁体11とともに、壁部13を枠体18の外周に沿って回動させると、枠体18が大きさの異なる外径を備えることから、回動位置により開口形成部42に加わる引っ張り方向の力が変化する。つまり、第1の実施形態の場合と異なり、開口形成部42に加えられる変形力は、圧縮力ではなく径方向外向きに作用する引っ張り力となる。
そして、枠体18の大きな外径位置ではその径方向に沿って強い引っ張り力が加えられ、その分弁体11の材料が延びることになる。これよりも枠体18の小さな外径位置では、その径方向に加わる引っ張り力は弱まる。これに対応して、枠体18の大きな外径方向に沿った位置に、スリットの方向が配置されると、開口形成部の端面に設けた開口14は、そのスリット状の延長方向が長径と一致するために、スリットの長さ方向に材料が引っ張られることにより、スリット形状が潰れて、密閉状態とされる。
なお、壁部13を枠体18の外周に沿って枠体18の短径方向に沿ってスリットの方向が位置するように回動させると、開口14が全開位置となることは言うまでもない。
このように、第2の実施形態も、第1の実施形態と同様の作用効果を発揮することができる。
【0032】
次に、図7及び図8を参照して、本発明の第3の実施形態に係る弁装置50について説明する。図7及び図8の弁装置50において、図1ないし図4と同一の符号を付した箇所は共通する構成であるから、重複する説明は省略し、相違点を中心に説明する。
図7は、弁装置50に関する図2と対応した図であり、図8は弁装置50に関する図3と対応した図である。
【0033】
この弁装置50は、第1の実施形態と比較すると、弁本体の構造が異なっており、弁体11の周囲の支持部15を不要としたものであり、それ以外の構成、すなわち、枠体18の内側に、弁体11を嵌入した構成は第1の実施形態と同じである。
このような構成によれば、例えば、本体側を弾性体で形成し、弁体11を設け、その外周に配置されるように弁箱部17を係合させ、弁箱部17の枠体18を一方向に長い内径を有するように形成して、弁箱部17を弁体11が設けられたベース部Bに対して回動することで、圧力を調整可能とされる。
【0034】
図9ないし図13は、本発明の弁装置における開口形成部12と枠体18に対する開口14の構造に関する変形例を示しており、図示した構造以外の箇所は、第1の実施形態、第2の実施形態、第3の実施形態のいずれかの構成をとることができる。すなわち、これらの構成に共通に採用することができる。
図9は、第1の実施形態で説明した枠体18と一方向に長いスリット状開口14の構成であり、この構成は第2及び第3の実施形態でも共通に採用することができる。
図10は、図9に対応した箇所の第1の変形例を示している。
この場合、枠体18の構成は同じで、開口の構成のみが異なる。第1の変形例では、開口44が互いに直交する2つのスリットで形成された十字状の開口とされており、枠体18の径の変化に伴い、少ない回動で開口14の開き量を変更することができる。
【0035】
図11は、第2の変形例を示している。
第2の変形例では、開口45は、図において、左右の方向に延びるスリットであるとともに、このスリットは波状に曲折された形態で形成されている。
図12は、第3の変形例を示している。
第3の変形例では、開口46は、図において、左右の方向に延びるスリットであるとともに、このスリットはジグザグ状に曲折された形態で形成されている。
図13は、第4の変形例を示している。
第4の変形例では、開口47は、図において、左右の方向に小さな複数の開口47a,47a,47a,47aが列状に並んで形成されている。各開口47aはスリットではなく、点線状に示す孔とされているが、枠体18の圧縮もしくは引っ張りに伴い、実線で示すようなスリット状に閉鎖された状態となる。これにより、複数の開口を介して、気体または液体が通過するようになっている。
【0036】
図14ないし図18は本発明の弁装置における開口形成部12と、枠体18の関係に関する変形例を示しており、図示した構造以外の箇所は、第1ないし第3の実施形態のいずれかの構成が適用される。
図14は、第5の変形例を示している。
図14において、第5の変形例では、図1で説明したものと異なり、弁体11の開口形成部42である端面12の外周が点線で示されるように、円形ではなく、楕円または長円形である場合について示している。
図15は、第6の変形例である。この場合にも、弁体11の開口形成部42である端面12の外周が円形ではなく、楕円または長円形である。図14の変形例と異なるのは、第2の実施形態と同様に、枠体18が開口形成部42に対して、引っ張り力を付与する構成とされている点である。
【0037】
図16は、第7の変形例である。
この変形例では、枠体及び開口形成部が楕円や長円でなくほぼ長方形の枠体68とされている点である。この場合には、特に、枠体68に対する弁体である開口形成部42の相対的な回動位置を変化させる場合において、矢印R方向に沿って、枠体68の各辺に対応して、90度づつ回動して、位置決めすることができるようにされている。
図17は、第8の変形例である。
この変形例では、枠体が楕円や長円でなく、ほぼ長方形とされているのに対して、開口形成部42の外周が一方向に長い8角形の枠体78とされている。この場合には、特に、枠体78に対する弁体である開口形成部42の相対的な回動位置を変化させる場合において、矢印R方向に沿って、開口形成部42の各辺に対応して、45度づつ回動して、位置決めすることができるようにされている。同様にして、位置決め角度に対応して、開口形成部42及び枠体78はあらゆる幾何学形の内面または外面を備えるようにすることができる。
【0038】
図18は、第9の変形例である。
この変形例では、枠体及び開口形成部が楕円や長円でなく、一方向に長い形態で、これらが当接する壁面が多数の極歯状もしくは波線状のようになだらかな曲面を多数形成した形状の外面を備える位置決め手段を有する枠体88及び開口形成部42とされている。この場合には、特に、枠体88に対する弁体である開口形成部42の相対的な回動位置を変化させる場合において、矢印R方向に沿って、枠体88の多数の位置決め手段88の数に応じて、きわめて細かい段階ごとに回動して、位置決めすることができるようにされている。
尚、気体または液体の圧力調整については、閉止時に完全に密閉してもよく、あるいは僅かに通過できるようにしてもよい。このような相違は、開口形成部の弾性体の硬度や、スリットの構造を適宜変更して調整できる。
【0039】
また、枠体18の大きさに対する長径L1や短径L2の各長さやバランスを調整することも可能である。そして、開口14の方向における開口形成部の径よりも長径L1が僅かに大きい場合には、開口形成部に対して、開口14の長さ方向に沿った変形力は殆ど作用しないので、短径方向に沿って開口形成部が変形されて開口14の合わせ目は完全に閉じるから、密閉度が向上する。これに対して、開口14の方向における開口形成部の径よりも長径L1が僅かに小さい場合には、開口形成部に対して、開口14の長さ方向に沿った変形力が作用し、弾性に富んだ開口形成部は、例えば図2の上下の方向にも変形することで、枠体内に収容される。この状態では、開口14自体にも変形力が作用して、開口14の合わせ目が図3のように直線状ではなく、厳密には、曲線的に変形することで、密閉度合いが低下する。あるいは、回動位置を変化させた際の開口14の開き動作が早くなるといった調整をすることができる。
【0040】
次に、本発明の圧力調整用の弁装置の好適な実施形態について説明する。
先ず、圧力調整用の弁装置が設けられる機器の一例としての手動搾乳器について説明する。
図19は搾乳器20の全体を示す概略斜視図であり、図21は、図19の搾乳器の概略断面図である。
この搾乳器20は、使用者の乳房に当接されるほぼ円錐状の搾乳部を備え、ボトルと連通するように着脱される着脱部を備えた搾乳器本体と、一方向に長い形状を有し、その中間付近が前記搾乳器本体に軸止め手段によって軸止めされるとともに、この軸止め箇所を中心に、正逆に回動可能に支持されるレバーとを備え、前記レバーは、前記回動による前記レバーの一端側の動きにより、ピストンの相対的な往復運動を行い、ピストンが収容される所定の内部空間の容積を変更することで、この内部空間内に負圧を形成して、この内部空間と連通された前記搾乳部から母乳を吸引し、前記ボトル内に落とし込む構成を有する搾乳器である。
【0041】
しかも、この搾乳器20は、さらに、前記軸止め手段が、前記レバー側に設けた軸受部と前記搾乳器本体側に設けられた軸受部とを備えるとともに、各軸受部が重ねられて貫通される軸孔に対して、支軸部材が挿入されることにより軸止めされており、かつ前記支軸部材には、前記各軸受部のいずれかの軸受部に対して、係合する手段を備えるものである。
以下、これらの構成について詳しく説明する。
【0042】
図19及び図21において、搾乳器20は、搾乳器本体21(以下、「本体」という)と、レバー(もしくは「把手」、もしくは「ハンドル」)30とを備えており、レバー30は搾乳器本体21と着脱できるようになっている。
本体21は、全体が、比較的軽く、丈夫な合成樹脂材料により成形されており、例えば、ポリカーボネート、ポリシクロオレフィン、ポリエーテルサルフォン等により形成されている。本体21は、搾乳した母乳を貯留するためのボトル41と着脱する着脱部25を備えている。着脱部25は、例えば、偏平な筒状部分であって、内側に雌ネジ部25aを備えており、ボトル41の瓶口の周囲に形成された雄ネジ部と螺合されるようになっている。尚、ボトル41は、搾乳器20の専用品でもよいし、着脱部25に適合した哺乳瓶等を利用してもよい。
【0043】
本体21の着脱部25の上部には、斜めに傾斜した状態で外方に開く円錐状もしくはラッパ状の搾乳部22が設けられている。搾乳部22の開口側には、シリコンやエラストマー、天然ゴム等の弾性体でなる緩衝部28が着脱可能に取付けられている。緩衝部28は搾乳時に搾乳部22が乳房へ当接することによる刺激を低減し、痛みを与えないようにするものである。緩衝部28の内周面には凸部28aが複数箇所設けられている。搾乳部22の搾乳部通気路22aは、通気及び搾乳した母乳の通路とされ、下方に曲折してボトル41側に向かうようにされている。また、搾乳部22の搾乳部通気路22aの開口周囲は、本体21とボトル41との着脱部25の内側であり、小室弁26が取付けられている。搾乳部通気路22aと隣接して、もうひとつの通気路27が設けられている。通気路27の下端開口は、図示されているように小室弁26の小室26a内で搾乳部通気路22aと連通しており、通気路27の上端開口は上方に延びてピストンロッド24を貫通している。この場合、通気路27の下端よりも搾乳部通気路22aの下端の方が延伸されていることで、通気路27に母乳が入りにくい。
【0044】
上記小室弁26は、図19及び図21に示されているように、全体がシリコンやエラストマー、天然ゴム等の弾性体で形成されたキャップ状の形態であり、図21の両側壁26b,26cは下端に向けて互いに幅が徐々に接近するように形成された弾性体の傾斜壁となっている。両側壁26b,26cの接近した下端には、スリット26dが設けられており、搾乳した母乳が小室26aに所定量まで貯留されると、その重量や、後述するように負圧が解除された際の圧力の変化に伴い、両側壁26b,26cの先端側が開き、スリット26dが開いて、母乳はボトル41内に落とされるようになっている。また、傾斜壁の下端にスリット26dを形成したことにより、負圧時にボトル41内の空気が小室26aに入ることを防ぐようになっている。
【0045】
本体21の固定ピストン23は、上記したピストンロッド24の上端に一体に設けられている。この実施形態では、ピストン及びピストンロッドは動かない構成とされているが、ピストン側が駆動されるようになっていてもよい。固定ピストン23は、ピストンロッド24の上端にて、搾乳部22の延びる方向とほぼ反対の方向に横向きに形成されている。この固定ピストン23は、例えば、円盤状もしくは楕円状に形成されている。
【0046】
レバー30は、図21において、ほぼ斜め上下に長く延びる形態であり、その一端、図示の場合上端部には、上記した固定ピストン23と対向して開口したスリーブ32が一体に設けられている。すなわち、レバー30も全体として、比較的丈夫で軽量な合成樹脂により一体に成形されており、例えば、ポリカーボネート、ポリシクロオレフィン、ポリエーテルサルフォン等で成形された成形品である。
レバー30の他端は図21の下方に長く延びる柄状の部分であり、操作部としてのレバー本体31を形成している。
【0047】
レバー30は後述する構成に基づいて、本体21に対して着脱されるようになっており、固定状態では、レバー30の長さ方向の中央付近を本体21に対して軸止めされることで、軸止めされた箇所を中心として、図21の矢印A1方向と矢印B1方向の正逆両方に回転もしくは回動あるいは揺動されるようになっている。
そして、レバー30の内側には、付勢手段としての例えば長尺の板バネ33が配置されている。板バネ33は、一端が曲折されて、本体21側の着脱部25に一体に設けた係止手段25aに曲折された部分が挟み込まれることで係止され、他端がレバー30のレバー本体31の先端付近に配置されたバネ受け34に当接されることにより、固定されており、レバー30のレバー本体31を矢印B1と反対の方向へ付勢するようになっている。
【0048】
レバー30の一端、すなわち図21において、上端側に一体に設けられたスリーブ32は、終端部32bが閉止された閉塞端とされ、固定ピストン23側が開口32aとされて、この開口32aの周囲の壁部32cにより、一端が開口されたシリンダ状の内部空間S1,S2を形成している。この内部空間S1,S2はひとつの空間であるが、図示のように固定ピストン23が、開口32aからスリーブ32内に挿入されることにより、大気開放された空間S2とスリーブ32の(内)壁部32c及び終端部32bの内側により形成される閉空間S1に区分される。
【0049】
スリーブ32の閉塞端である終端部32bの外面には、圧力調整手段37が取付けられており、内部空間S1の圧力を調整できるようにされている。
この圧力調整手段37には、後述するように、本実施形態の圧力調整用の弁装置が採用されている。
なお、内部空間S1の空気量を減らし、使用時の負圧の発生を高めるように、スリーブ32の終端部32bの内壁側に、複数の凸部をピストン23に当たらない高さの範囲で設けてもよい。また、スリーブ32の少なくとも内壁32dは、レバー30の上端及び下端側の回動軌跡とほぼ一致する曲面形状とされている。このため、スリーブ32がレバー30の上端及び下端側の回動軌跡に適合されているので、レバー30による回動操作がしやすく、スムーズである。
【0050】
これに対応して、本体21側の固定ピストン23は、スリーブ32の内壁に密着する形状であり、フランジ状の端部において、ピストンリングとしての弾性体によるリング状のパッキン23aが取付けられている。このパッキン23aの外周の少なくとも一部が、レバー30側(図21の左側)に向かって縮径するように傾斜している。したがって、後述するように、固定ピストン23がスリーブ32内を後述するように、相対的に往復運動する際に、この傾斜に基づいて、弾性体でなるパッキン23aの最外周が内壁23dの全周に当たることで、密閉が維持されることとなり、レバー30の操作を軽くすることができる。
【0051】
さらに、図19に示されているように、レバー30のスリーブ32の上端付近には、壁部を部分的に内側に凹ませることで、リーク部38を設けている。この部分は、後述する固定ピストン23の相対的な往復動作におけるスリーブ32の終端に位置しており、負圧が最も高くなった状態において機能する。
このため、負圧を破壊する動作を行う上で、リーク部38の箇所に固定ピストン23が移動しただけで、リーク部38から部分的に大気開放されるから、極端に大きな力を必要とせず、操作が容易である。なお、負圧を破壊する動作を行う上で、固定ピストン23の全周縁またはその上部領域のみが、同時にスリーブ32を抜ける構成としてもよい。
また、レバー本体31が、後述するように、ボトル41に近接する方向に移動して負圧が増大した後で、エアリークさせることで、負圧の高まりを困難なく急激に下降させることとなり負圧を円滑に脈動変化させることができる。
【0052】
図20は、搾乳器20におけるレバー30を、着脱部25に対して固定する構造の一例を示している。
すなわち、着脱部25には、本体21側軸受部85,85が一体に形成されている。一方、この軸受部85,85の幅の外側に位置するように、レバー30には、一対の軸受部75,75が設けられている。
一方向に長い支軸部材81は、ベース部72と、突起もしくは凸条74を備えており、その支軸83は、レバー側の軸受部75,75と、着脱部側軸受部85,85を貫通するように挿入されている。また、支軸部材81の突起もしくは凸状74の先端には係止爪74aが設けられており、支軸部材81が、軸受部側から不用意に抜けてしまうことを防止するようになっている。
【0053】
すなわち、最初は支軸部材81を傾斜させて長い支軸83をレバー側の軸受部75,75と、着脱部側軸受部85,85を貫通するように挿入し、その後で支軸83を中心として支軸部材81を回動させると、係合手段としての突起74が、カバー側の軸受部75の水平な係合面75bに係合もしくは係止される。
これにより、レバー30を本体21に対して軸止めすることができ、係止爪74aは、カバー側の軸受部75の水平な係合面75bの箇所を挟むように係止される。このため、レバー30は、支軸83の軸回りに自由に回動できる状態で、確実に係止されるとともに、突起もしくは凸状74と係止爪74aをカバー側の軸受部75の水平な係合面75bから外しだけで、容易にレバー30を本体側から取り外しできるようにすることができる。
【0054】
図22ないし図26は、上記実施形態の搾乳器のスリーブ32の外面に設けた圧力調整手段37を構成するための弁装置10を示す説明図である。
図22は圧力調整手段37の一部である弁本体85を示し、この弁本体85は、図1の弁本体16に対応している。図23は弁本体85と組み合せられる弁箱部87を示しており、この弁箱部87は、図1の弁箱部17と対応している。
弁箱部87の弁箱91は、枠体を構成するための筒体である。この弁箱91の部分は、図21に示すように、レバー30の負圧が形成される空間S1と連通するようにして、外部に露出するように、レバー30と一体に形成されている。弁箱91の枠体18を構成する内面には互いに向かい合う二組の内壁88,88と89,89を備えている。向かいあう一対の対向する内壁88,88の距離L1は、向かいあう他の一対の対向する内壁89,89の距離L2よりも大きく設定されており、円形状の弁体86の開口形成部(開口としてのスリット94を形成した外周面)の直径に対して、L1は僅かに小さく、距離L2も小さくされている。例えば、開口形成部の先端は突縁(フランジ)とされ、このフランジ部を除く外周が直径9.5mmであるのに対して、長径L1は9.4mm、短径L2は8.7mmとされている。さらに、弁体86の開口形成部の外周は、枠体18を構成する弁箱91の内周よりも大きく形成されている。この距離L1は、図1の長径L1に対応しており、距離L2は図1の短径L2に対応している。
【0055】
このような弁箱91に挿入される弁本体85は、図15に示されているように、硬質材からなるやや偏平な円柱状の支持部92の内側に、弁体86を有している。支持部92は、図1の支持部15に対応している。弁体86は先端部がフランジ状に拡径された開口形成部であり、その外周が円形で、中心にスリット状の開口としてのスリット94を備えており、図1の開口形成部と同様に弾力あるゴム体などで形成されている。
この弁体86が図23の弁箱91に挿入された状態について、弁体86の状態と、ストッパの状態の概略を示す断面状態を図24で示す。
図24において、支持部92の内周には、内方に突出するストッパ86aが設けられている。一方弁箱91側において、ストッパ86aが入り込む案内溝93が、弁箱91の基部に位置している。案内溝93は、外方に突出する第1の位置決め部93aと、そこから1/4周強の間隔をおいて第2の位置決め部93bが設けられている。
尚、開口形成部の径を僅かに大きくしたことにより、スリット94が長径L1と同じ方向になった際に、閉じた状態を維持しつつ、僅かに開口形成部となる弁体86に変形をつくり出し、内部空間S1に負圧が発生した際に、スリット94の開き動作を速くして、速やかに外気を導入し、このことにより、乳房への必要以上の刺激を防止するようにしている。
【0056】
図24に示すように、例えば、ストッパ86aが第1の位置決め部93aに当接している場合には、弁本体86が弁箱91内で、スリット94が内壁88,88を結ぶように位置していることとなり、スリット94の長さ方向が長い距離L1と同じ方向となるので、スリット94は閉じている。さらに、円盤状の弁体86に対して、距離L2の大きさは小さいため、スリット94は押し付けられる方向に押圧される。したがって、圧力調整手段37は閉じていて、内部空間S1と外気とは遮断されている。この状態は、図3のP1の位置に対応している。
これに対して、図25に示すように、弁本体86が弁箱91内で回転され、ベース部93側が相対的に矢印方向に移動すると、スリット94の長さ方向が存在する距離が次第に小さくなり、押しつぶされていたスリット94の両短部94a,94aが開き、僅かに通気される。これにより、スリーブ32の内部空間S1の負圧がやや下がる。
次いで、図26に示すように、弁本体86が弁箱91内でさらに回転され、ストッパ86aが第2の位置決め部93bに当接するまで矢印方向に移動すると、スリット94の長さ方向が存在する距離がさらに小さくなり、スリット94の長さ方向が短い距離L2の間にあるので、スリット94は完全に開かれる。これにより、通気量が増大し、スリーブ32の内部空間S1の負圧を大きく下げることができる。この状態は、図3のP2の位置に対応している。
【0057】
本実施形態の搾乳器20は以上のように構成されており、次に搾乳器20の使用方法を説明する。
図21の本体21には、レバー30が取付けられており、また、本体21には、着脱部25を利用してボトル41が装着されている。
この状態においては、レバー30のスリーブ32側は、板バネ33の機能により、固定ピストン23はスリーブ32内に深く入り込んでいる。
【0058】
次いで、使用者が搾乳部22の開口で乳房の周囲を包囲するように、乳房に当てて、ボトル41に一方の手の親指を当て、レバー30のレバー31に同じ手の残りの指を複数当てる(図示せず)。この状態で手を閉じるようにして、レバー本体31を操作すると、板バネ33の付勢力に抗して、レバー30は、上述した軸止め箇所を中心に矢印A1及び矢印B1方向に回動する。この過程で、スリーブ32の内部空間S1が増大する。これにより、スリーブ32の内部空間S1において負圧が増大し、この負圧は通気路27及び小室26aを介して、搾乳部通気路22aに伝えられる。このため、搾乳部22内が負圧となって、使用者の乳房から母乳が搾乳され、搾乳された母乳は搾乳部通気路22aを通り小室26aに貯留される。この時、搾乳部22に設けられた緩衝部28の凸部28aにより、搾乳部22内に負圧によってひかれつつ当接された乳房が、押圧されてあたかもマッサージを受けたような効果を得ることができる。
この際、小室26a内は負圧となっているので、小室弁26の両側壁26b,26cは上方に引かれ、スリット26dは閉じている。
【0059】
次いで、使用者がレバー本体31側を、ボトル41の外縁に当接するまで握ると、さらに固定ピストン23が相対的に移動することになる。このため、固定ピストン23の相対的移動の終端部に至り、リーク部38からスリーブ32の内部空間S1内に大気が浸入する。これにより、内部空間S1の負圧は急激に低下し、通気路27により内部空間S1と連絡されている小室26a内も大気圧に近づくので、小室弁26の両側壁26b,26cを上方に引く力は低下し、小室26a内に貯留された母乳の重量により、両側壁26b,26cの下端に設けたスリット26dが開いて、小室26a内に貯留されている母乳が、ボトル41の内部S3に落としこまれる。
この過程では、搾乳部22の使用者の乳房に対する搾乳圧力が低下する。
【0060】
次に、板バネ33の付勢力により、レバー30は、ふたたび、図21の状態まで戻されるので、使用者はこの作業を繰り返すことにより、搾乳作業を継続することができる。この際、使用者が負圧が大きいことに伴う痛みを感じた場合や、逆に負圧が小さくて搾乳できない場合には、圧力調整手段37を調整し、発生する負圧を変更することができる。
したがって、本実施形態の搾乳器20においては、従来の搾乳器(図示せず)のように、搾乳作業を行うために搾乳器を両手を使って取り扱う必要がなく、例えば、利き手だけを使用して上述の作業を行うことができるので、作業が簡単である。
また、従来の長い通気管等を利用していないので、長い管体が取り扱い上邪魔になることがなく、洗浄しやすく、収納や携帯にも便利で使い勝手において格段に優れている。
【0061】
また、上述したように、レバー30が本体21に取付けられて、本体21にボトル41が装着されている状態においては、図20で説明したように、支軸部材81の突起もしくは凸状74の先端には係止爪74aが設けられており、支軸部材81が、軸受部側から不用意に抜けてしまうことを防止するようになっている。
これにより、操作中にレバー30が外れることがなく、搾乳作業を安心して行うことができる。また、ボトル41を本体21から取り外せば、きわめて簡単な作業により、レバー30を本体21から取り外しことができるので、取り扱いがきわめて簡単で確実である。
【0062】
さらに、搾乳器20では、付勢手段としての板バネ33も、上述したように一端が本体21側の係止手段に係止され、他端がレバー30のレバー本体31の先端付近に配置されたバネ受け34に当接される構成であるから、本体21からレバー30を取り外す際に、同時に簡単に取り外して洗浄することができる。付勢手段が板バネ33のように、金属、特に、ステンレス材(SUS304)で形成されている場合には、耐久性に優れ、確実に反発することができる。また板バネ33を取り外し、次亜塩素酸ナトリウム等の薬液を使用して、その他の搾乳器20の部品を消毒することができる。この場合、板バネ33もレバー30を本体21から取り外さないと、外れないようになっているので、取り扱い上安全である。
【0063】
さらに、搾乳器20では、レバー30の一端にスリーブ32が一体に形成されていることから、レバー30を取り外すだけで、固定ピストン23を挿入するための開口と内部空間が露出したスリーブ32を洗浄することができる。したがって、負圧を形成するための空間の構成が簡単で、洗浄しやすい。また、レバー30を外せば、本体21側には、スリーブ32が除かれた固定ピストン23が露出するので、洗浄しやすい。この場合、特にスリーブ32側を移動させ、ピストン側を固定としたので、固定ピストン23のピストンロッド24にも、リンク等の継ぎ目が不要で、母乳等のカス等の汚れが付着して、落ちにくい箇所が少なく、その分洗浄が簡単で、衛生的である。
つまり、本体21からレバー30を取り外す簡単な作業だけで、負圧を形成する機構を洗浄等のために露出することができる。
【0064】
しかも、圧力調整手段37を構成する弁装置は、その枠体18を構成する弁箱91が、図21に示されているように、レバー30のスリーブ32の外面から露出しており、この弁箱91に対して、弁本体85を圧入した構成とされている。このため、分解の際には、弁箱91から弁本体85を取り外すだけの簡単な作業で、空気が通過する内側が露出され、内部まで容易に洗浄するすることができる。
また、弁体86の開口形成部の外周は、枠体18を構成する弁箱91の内周よりも大きく形成されている分だけ、枠体内に弁体86が大きく変形して圧入されることで、枠体と弁体との隙間が完全に塞がれるので、完全な密閉状態を形成することができる。
【0065】
本発明は上述の実施形態に限定されない。
図1の弁本体16の構成は、過度に複雑にならない程度で、複数の部品に分割して構成することができる。同様に弁箱部17の構成も過度に複雑にならない程度で、複数の部品に分割して構成することができる。
弁体の開口形成部は、枠体の内外の周囲で回動もしくは回転される構成であれば、上述の各形態に限らず、種々の形状や構造を用いることができる。
【0066】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によれば、部品点数を少なくすることができ、分解したり洗浄することが容易で、しかも確実に動作する弁装置と、このような弁装置を備える手動搾乳器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による弁装置の第1の実施形態を示す概略斜視図。
【図2】図1の弁装置を組み立てた状態の縦方向の概略断面図。
【図3】図2のA−A線方向の概略底面図。
【図4】図2のA−A線方向の概略底面図。
【図5】本発明による弁装置の第2の実施形態を示す概略断面図。
【図6】図5のB−B線方向の概略底面図。
【図7】本発明による弁装置の第3の実施形態を示す概略断面図。
【図8】図5のC−C線方向の概略底面図。
【図9】図1の弁装置の枠体と開口の構成を示す説明図。
【図10】図1の弁装置の第1の変形例の枠体と開口の構成を示す説明図。
【図11】図1の弁装置の第2の変形例の枠体と開口の構成を示す説明図。
【図12】図1の弁装置の第3の変形例の枠体と開口の構成を示す説明図。
【図13】図1の弁装置の第4の変形例の枠体と開口の構成を示す説明図。
【図14】図1の弁装置の第5の変形例の枠体と開口の構成を示す説明図。
【図15】図1の弁装置の第6の変形例の枠体と開口の構成を示す説明図。
【図16】図1の弁装置の第7の変形例の枠体と開口の構成を示す説明図。
【図17】図1の弁装置の第8の変形例の枠体と開口の構成を示す説明図。
【図18】図1の弁装置の第9の変形例の枠体と開口の構成を示す説明図。
【図19】本発明の実施形態に係る圧力調整用の弁装置を適用した搾乳器の一例を示す概略斜視図。
【図20】図19の搾乳器のレバー30を本体側着脱部に対して固定する構造の一例を示す概略断面図。
【図21】図19の搾乳器の概略断面図。
【図22】図19の搾乳器のスリーブの外面に設けた圧力調整手段を構成するための弁装置の一部である弁本体を示す概略斜視図。
【図23】図19の搾乳器のスリーブの外面に設けた圧力調整手段を構成するための弁装置の一部である弁本体と組み合せられる弁箱部を示す概略斜視図。
【図24】図22及び図23で示す弁装置の動作の様子を示す説明図。
【図25】図22及び図23で示す弁装置の動作の様子を示す説明図。
【図26】図22及び図23で示す弁装置の動作の様子を示す説明図。
【図27】従来の圧力調整用の弁装置の一例を示す概略断面図。
【符号の説明】
10・・・弁装置、11・・・弁体、12・・・端面(開口形成部)、14・・・開口、15・・・支持部、17・・・弁箱部、18・・・枠体。
Claims (6)
- 弾性変形可能な端面を有する開口形成部と、
前記端面に形成され、気体または液体の通過量を調整するための開口と
を備える弁体と、
前記開口形成部に対して、前記端面の面方向に沿った複数の異なる方向に関して、選択的に変形力を付与する手段と
を備えることを特徴とする、弁装置。 - 前記変形力を付与する手段が、前記弁体の少なくとも前記開口形成部と係合する枠体で形成されており、この枠体が大きさの異なる複数の径を備えることを特徴とする請求項1に記載の弁装置。
- 前記枠体の前記開口形成部と係合する周縁が長円または楕円状とされていることを特徴とする請求項2に記載の弁装置。
- 圧力調整の対象となる空間と外部とを繋ぐ連通口に設けられ、短径と長径でなる異なる内径を備えた筒状の枠体と、
この枠体に圧入されて内接するとともに、弾性変形可能な端面を有する開口形成部を含む弁体と
を備えており、
前記弁体の前記開口形成部は、
前記枠体の前記内径の短径よりも大きな外径を有し、
さらに、前記弁体の前記開口形成部が前記枠体に対して相対的に回動されることにより、前記連通口を閉止される位置において、前記長径方向に沿って延びるスリット状開口を有している
ことを特徴とする圧力調整用の弁装置。 - 前記弁体の前記開口形成部は円形であり、この開口形成部の外径は前記枠体の短径よりも大きく、長径とほぼ同等に形成されているとともに、前記開口形成部の外周は、前記枠体の内周よりも大きく形成されていることを特徴とする請求項4に記載の圧力調整用の弁装置。
- 使用者の乳房に当接されるほぼ円錐状の搾乳部を備え、ボトルと連通するように着脱される着脱部を備えた搾乳器本体と、
一方向に長い形状を有し、その中間付近が前記搾乳器本体に軸止め手段によって軸止めされるとともに、この軸止め箇所を中心に、正逆に回動可能に支持されるレバーと
を備え、
前記レバーは、
前記回動による前記レバーの一端側の動きにより、ピストンの相対的な往復運動を行い、ピストンが収容される所定の内部空間の容積を変更することで、この内部空間内に負圧を形成して、この内部空間と連通された前記搾乳部から母乳を吸引し、前記ボトル内に落とし込む構成とされ、
前記負圧を発生するための手段が、前記搾乳部と連通された通気路と、この通気路の端部に設けた固定ピストンと、前記レバーの一端に一体に設けられ、前記搾乳器本体の前記固定ピストンが挿入されて、前記通気路と連絡されるとともに、前記レバーの回動により、挿入された固定ピストンが内部で褶動されるスリーブとを備え、前記スリーブ内面と前記固定ピストンの一面により仕切られる空間に、前記レバーの回動によって負圧を形成する構成とされており、
さらに、前記スリーブに、圧力調整用の弁装置を備えるとともに、
この弁装置が、
弾性変形可能な端面を有する開口形成部と、
前記端面に形成され、気体または液体の通過量を調整するための開口と
を備える弁体と、
前記開口形成部に対して、前記端面の面方向に沿った複数の異なる方向に関して、選択的に変形力を付与する手段と
を備えることを特徴とする、手動搾乳器。
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