JP2004147751A - 臭気除去剤及びそれを用いた有機性廃棄物の臭気除去法並びに有機性廃棄物収納用ボックス - Google Patents
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Abstract
【課題】強い脱臭効力を有する臭気除去剤、特に、悪臭防止法で特定悪臭物質として規制されている悪臭に対する分解能力がきわめて大きい臭気除去剤及びその用途として、その臭気除去剤の容易な使用方法及びその臭気除去剤を用いた簡便な有機性廃棄物収納用ボックスを提供することを課題とする。
【解決手段】好適活動温度を85℃以上とする好気性高温菌又はその混合菌体もしくはこれらの培養物を有効成分とする臭気除去剤。これらの好気性高温菌又はその混合菌体もしくはこれらの培養物を添加した有機物原料を通気発酵させて製した発酵生成物からなる臭気除去剤。これらの臭気除去剤を、通気性を有しかつ可撓性の容器に収納してある容器詰め臭気除去剤。この容器詰め臭気除去剤を容器本体の上部又はその蓋部の内側に取り付けてあり、容器本体の上部又はその蓋部に通気孔を設けてある有機性廃棄物収納用ボックス。この有機性廃棄物収納用ボックスを用いて有機性廃棄物の臭気を除去する方法である。
【選択図】 図2
【解決手段】好適活動温度を85℃以上とする好気性高温菌又はその混合菌体もしくはこれらの培養物を有効成分とする臭気除去剤。これらの好気性高温菌又はその混合菌体もしくはこれらの培養物を添加した有機物原料を通気発酵させて製した発酵生成物からなる臭気除去剤。これらの臭気除去剤を、通気性を有しかつ可撓性の容器に収納してある容器詰め臭気除去剤。この容器詰め臭気除去剤を容器本体の上部又はその蓋部の内側に取り付けてあり、容器本体の上部又はその蓋部に通気孔を設けてある有機性廃棄物収納用ボックス。この有機性廃棄物収納用ボックスを用いて有機性廃棄物の臭気を除去する方法である。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、臭気除去剤及びその用途に関する。詳しくは、有機性廃棄物に用いる臭気除去剤及びその臭気除去剤を用いた有機性廃棄物の臭気除去方法並びに有機性廃棄物収納用ボックスに関する。さらに詳しくは、微生物、特に高温で好適に活動する好気性高温菌の力を応用した有機性廃棄物の臭気除去剤及びその臭気除去剤を使用して有機性廃棄物の臭気を容易に除去する方法並びにその臭気除去剤を使用した簡便な有機性廃棄物収納用ボックスに関する。
【0002】
近時、モノを大量に生産し、大量に消費し、そして大量に廃棄するという社会風潮が顕著になるに伴い、家庭系ごみや事業系ごみ、し尿などの一般廃棄物や汚泥、廃油、紙屑、木屑、繊維屑、動植物性残渣(例えば、発酵かす、魚介物のあらなど)、家畜の糞尿・死体・血液などの産業廃棄物の発生量が増大している。これらの有機性廃棄物は、一般的には、家庭や事業所などの廃棄物発生場所において一時的にごみ箱やタンクなど適宜の収納容器に収納して保管し、必要に応じて廃棄物運搬専用車が巡回して回収し、焼却場や埋立地などの最終処分場に運んで処理されている。
【0003】
有機性廃棄物は、それ自体が特有の臭気を有している上、時間の経過とともに変性が進み、ますます強い臭気を発生する。例えば、糞尿は、大気中のプソイドモナス、桿菌、連鎖状球菌、乳酸菌などの腐敗性微生物により分解されると、アンモニア、メチルメルカプタン、硫化水素、トリメチルアミン、アセトアルデヒド、ノルマル吉草酸などが発生し、工業廃液からはメタンガスが発生し、これらが強烈な悪臭のもとになっている。また、血液には多種の糖タンパク質が含まれているので、これらが変性すると耐えがたい異臭を発する。さらに、動植物性の残渣や家庭系ごみや事業系ごみは、廃棄物収納容器(いわゆる「ごみ箱」)に気軽に廃棄されることが多いが、上記腐敗性微生物や酵母、カビなどが分解作用を起こすため、短時間で臭気を発生し始める。
【0004】
このため、有機性廃棄物を廃棄物収納容器に入れて一時的に保管している間、廃棄物収納容器の周辺に強い臭気を撒き散らすという問題がある。また、廃棄物の処理場はもとより、食肉処理場や魚介類市場などには、特有の臭気がしみ込んでおり、その周辺地域にまで常時異臭を放散している。したがって、有機性廃棄物によって生じる臭気は、廃棄物処理上の5大公害の一つとされており、その対策は大きな社会問題となっている。
【0005】
【従来の技術】
そのため、維持経費がきわめて安いことから、微生物の力を利用して有機性廃棄物の臭気を除去する方法や装置についても、大いに研究されている。
すなわち、有機性廃棄物を土中に埋め込んで土中の微生物の働きによって自然分解する方法の他に、微生物の力を応用して有機性廃棄物の臭気を除去する方法や装置の開発・研究は業界の関心が高く、平成5年以降でも50数件の特許出願が公開されている。しかしながら、これらの発明は、特定の微生物、特に、85℃以上を好適活動温度とする高温菌を用いるものではなく、微生物を利用して廃棄物の排ガス中に含まれる炭化水素類を処理する方法・装置(生物処理装置と呼ばれている。)に関するものや、微生物そのものを固定化する方法に特徴があるか、又は、バイオフィルター法、活性汚泥法などと称される複雑な方法や装置を用いるものが多い。
【0006】
例えば、判りやすい事例として、特開2002−273154号公報(脱臭処理装置)を挙げると、この公報には、有機性廃棄物から発生する臭気を湿式洗浄する臭気洗浄装置と臭気洗浄後の洗浄水を微生物で処理する脱臭処理装置とを組み合わせて堆肥化施設などから発生する悪臭を微生物の力で分解し、清浄な空気に換えて排出させる脱臭方法や装置が開示されているが、上記のとおり、装置自体が洗浄装置と脱臭装置とを組み合わせた大がかりなものであり、かつ、使用する微生物は、従来公知の硝化菌や脱窒菌であるから、劇的な脱臭効果を期待できるものではない。
【0007】
また、特開2001−219148号公報(有機廃棄物処理装置における脱臭装置)には、上記公報記載の装置とほぼ同様の仕組みの脱臭装置が開示されているが、好気性の低温菌(最適活動温度約10〜20℃)、中温菌(同約20〜40℃)、高温菌(同約50〜60℃、例えば、枯草菌類〔バシルス属〕)と、嫌気性菌の4種類の菌を適宜ブレンドして種菌とし、この種菌をおが屑などの菌床を形成する部材と混合して菌床を形成する例が開示されており、装置自体が複雑な構成である上、菌床の微生物構成もきわめて複雑である。さらに、高温菌を用いているとしても、50〜60℃を最適活動温度帯とする高温菌では、十分な脱臭効果を挙げることができない。
【0008】
【特許文献1】
特開2002−273154号公報
【特許文献2】
特開2001−219148号公報
【0009】
本発明者らは、かねてから、好気性高温菌及びそのの活用方法について研究を続けており、これまでに85℃以上の高温で好適に活動する好気性高温菌の一種について、後記するとおり、特許を取得している他、特許出願中のものも多い。また、好気性高温菌の働きを応用した汚泥処理法、肥料の製造方法、有機廃液の処理法、動物舎用の床敷材、ダイオキシン類低減剤、重金属の除去剤などについて特許出願中であり、本発明は、その一環として開発するに至った。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
上記の状況に鑑み、本発明は、強い脱臭効力を有する臭気除去剤を提供すること、特に、悪臭防止法で特定悪臭物質として規制されている悪臭に対する分解能力がきわめて大きい臭気除去剤を提供することを第一の課題とする。また、本発明は、その臭気除去剤の容易な使用方法を提供することを第二の課題とする。さらに、本発明は、その臭気除去剤を用いた簡便な有機廃棄物収納用ボックスを提供することを第三の課題とするものである。本発明は、もって我が国における環境問題の改善に資せんとするものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために、本発明のうち請求項1に記載する発明は、好適活動温度を85℃以上とする好気性高温菌又はその混合菌体もしくはこれらの培養物を有効成分とする臭気除去剤である。
【0012】
また、請求項2に記載する発明は、独立行政法人・産業技術総合研究所の特許微生物寄託センターに寄託している受託番号FERM P−15085、FERM P−15086、FERMP−15087、FERM P−15536、FERM P−15537、FERM P−15538、FERM P−15539、FERM P−15540、FERM P−15541、FERM P−15542及びFERM P−18598より成る群から選択される少なくとも1種の好気性高温菌又はその混合菌体もしくはこれらの培養物を有効成分とする臭気除去剤である。
【0013】
また、請求項3に記載する発明は、請求項1又は2に記載の好気性高温菌又はその混合菌体もしくはこれらの培養物を添加した有機物原料を通気発酵させて製した発酵生成物からなる臭気除去剤である。
【0014】
また、請求項4に記載する発明は、請求項1から3のいずれかに記載の臭気除去剤を、通気性を有しかつ可撓性の容器に収納してある容器詰め臭気除去剤である。
【0015】
また、請求項5に記載する発明は、容器本体の上部又はその蓋部に通気孔を設けてある有機性廃棄物収納用ボックスを用いて、請求項4に記載の容器詰め臭気除去剤を容器本体の上部又はその蓋部の内側に取り付け、容器本体に有機性廃棄物を収納して有機性廃棄物の臭気を除去する方法である。
【0016】
また、請求項6に記載する発明は、容器本体の上部又はその蓋部に通気孔を設けてあり、請求項4に記載の容器詰め臭気除去剤を容器本体の上部又はその蓋部の内側に取り付けてある有機性廃棄物収納用ボックスである。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の臭気除去剤及びそれを用いた有機廃棄物の臭気除去方法並びにその方法を用いた有機廃棄物収納用ボックスについてさらに詳細に説明する。
なお、本発明の全ての説明において、「%」や「部」の表示は、特に断らない限り、「重量%」や「重量部」を表す。
【0018】
まず、本発明に係る臭気除去剤の有効成分となる好気性高温菌又はその混合菌体もしくはこれらの培養物について説明する。本発明の臭気除去剤は、好適活動温度を85℃以上、好ましくは90℃以上とする好気性高温菌又はその混合菌体もしくはこれらの培養物を有効成分とする。好適活動温度を85℃以上とする好気性高温菌というのは、発酵などの微生物活動に最適な温度帯が85℃以上である好気性高温菌のことをいい(好気性超高温菌と称されることもある。)、本発明では、そのような好気性高温菌であれば、菌種を問わず使用できる。また、好気性高温菌そのものの他、その2種以上からなる混合菌体又はこれらの菌体の培養物を使用することでも差し支えない。
【0019】
本発明に係る臭気除去剤は、好適活動温度を85℃以上とする好気性高温菌又はその混合菌体もしくはこれらの培養物である必要があり、高温菌であっても、嫌気性のものや好適活動温度が85℃未満である好気性高温菌やこれらの混合菌体を使用しても、所期の効果を挙げることができない、。
【0020】
本発明において、好適活動温度を85℃以上とする好気性高温菌の中でも特に好適に使用できる菌は、本発明者らが鹿児島県姶良郡牧園町の霧島火山帯の土壌から採取したバチルス属に属する菌で、独立行政法人・産業技術総合研究所の特許微生物寄託センターに寄託してあり、特許第306422号として特許されている受託番号FERM P−15085 (通称:YM−01)、FERM P−15086 (YM−02)、及びFERM P−15087 (YM−03)、本発明者らが上記土壌から採取したバチルス属に属する菌で、上記特許微生物寄託センターに寄託してあり、特願平9−52312号として特許出願中である受託番号FERM P−15536 (YM−04)、FERM P−15537 (YM−05)、FERM P−15538 (YM−06)、FERM P−15539 (YM−07)、FERM P−15540 (YM−08)、FERM P−15541(YM−09)及びFERM P−15542 (YM−10)、本発明者らが上記土壌から採取したカルドトリックス属に属する菌で、上記特許微生物寄託センターに寄託してあり、特願2001−391561号として特許出願中である受託番号FERM P−18598(かカルドトリックス・サツマエ YM081) から構成される菌群の中から選択される少なくとも1種の好気性高温菌又はこれらの混合菌体もしくはこれらの培養物である。
【0021】
本発明において使用する好気性高温菌又はその混合菌体もしくはこれらの培養物は、例えば、以下のようにして製する。
好適活動温度を85℃以上とする任意の好気性高温菌を含む土壌を採取して、これに蔗糖溶液などを加えて高温下で通気しながら発酵させて菌体を培養し、好気性高温菌の培養物を作る。得られた好気性高温菌の培養物又は好気性高温菌の菌体そのものを有機性廃棄物などの有機物原料、例えば、生汚泥と混合して高温下でさらに通気しながら発酵させ、汚泥中の雑菌や種子類を死滅させて、好気性高温菌の培養物とする。本発明では、この好気性高温菌の菌体又はその混合菌体もしくはこれらの培養物を、臭気除去剤の有効成分としてそのまま用いてもよいが、通常、これらの菌体又はその培養物は、完熟肥料(いわゆる「コンポスト」の1種である。)の原料に添加して使用されるので、本発明においても、上記のようにして製した好気性高温菌の菌体又はその培養物を発酵槽内の有機物原料、例えば、生汚泥などの有機性廃棄物に添加して、空気を送り込んで発酵を進行させ、汚泥中の雑菌や種子類を死滅させ、有用な菌体のみを多数含有する発酵生成物を製造することができる。そのようにした場合には、得られた発酵生成物は、本発明に係る臭気除去剤としても、また、本発明に係る臭気除去剤の有効成分としても使用できる。
【0022】
以下、本発明に係る臭気除去剤として好適に使用できる発酵生成物の好ましい製造例について詳しく説明する。
まず、有機物原料、例えば、生汚泥に前記のように好気性高温菌又はその混合菌体もしくはこれらの培養物を添加する。混合比率は、有機物原料70〜80部程度に対して好気性高温菌の培養物20〜50部程度が好ましい。この混合物の適量を発酵槽に堆積して空気を十分に吹き込みながら通気発酵をおこなう。通気を続けていると、最初は常温であった混合物が1日ないし数日後には80〜90℃に昇温する。5〜7日間通気を継続させながら放置したた後、切返し(攪拌)をおこなう。以後は、この放置と切返しを3〜8回程度繰り返しておこない、およそ20〜50日余の間、好ましくは30日間以上、通気しながら発酵を続けると、全体がさらさらした乾燥状態の発酵生成物となる。得られた発酵生成物を所要により篩い分けした後、例えば、カリウム分を補充するなど所要の養分調整をおこなえば、完熟肥料として仕上げることができる。すなわち、この発酵生成物は、茶色の顆粒状乃至粉末状を呈しており、有機肥料の有用な基材として使用できるものである。
【0023】
本発明に係る臭気除去剤は、上記のようにして製造した発酵生成物からなるので、85℃以上を好適活動温度とする好気性高温菌を乾物グラム当たり約10億以上含んでいる。したがって、同じ発酵槽で前回に製造した発酵生成物を「好気性高温菌の培養物」として使用することによって、繰り返し発酵生成物の製造を続けることができる。すなわち、製了した発酵生成物を発酵槽から取り出して次工程に移す際に、その一部を「好気性高温菌の培養物」として発酵槽内に残留させ、いわゆる発酵の「種菌」として残し、その上に主原料である有機性廃棄物などの有機物原料を投入し、両資材を混合して次回の発酵用原料を構成し、この原料構成によって発酵を繰り返しておこなうことができる、このようにした場合、各回の発酵によって得られる発酵生成物は、本発明の臭気除去剤としてそのまま使用できるとともに、本発明の臭気除去剤の有効な原料としても使用できることとなる。
【0024】
本発明においては、臭気除去剤となる発酵生成物を製造するための原料としては、どのような有機物でも使用できるが、主として有機性廃棄物を使用するのが好ましい。本発明でいう有機性廃棄物とは、わら、落葉、糠、籾殻、樹皮、切端材、おが屑などの植物性廃棄物、家畜類や家禽類の糞尿やその死体・臓物類・血液・羽毛、魚介類とその臓物などの動物性廃棄物、し尿、下水スラッジ、各種の汚泥、都市ごみ、食用廃油、食品廃棄物などの生活廃棄物ないし産業廃棄物などの他、通常の堆肥や有機肥料の原料として処理できる全ての有機性物質を含む。本発明では、上記の有機性廃棄物の2種以上を組み合わせて使用して差し支えない。
【0025】
本発明に係る臭気除去剤、すなわち、好気性高温菌の発酵生成物の製造に用いる発酵槽は、屋根を有する建屋の中に1槽又は複数の槽として設けられる場合が多い。この場合の発酵槽は、発酵ヤードなどと称せられるものを含み、通常の堆肥製造の場合と同様のコンクリートの仕切り壁によって、例えば、1区画を幅5m×長さ10m×高さ3m程度の、有機物原料を内部に堆積させて発酵させるのに適した容積に区画したものが好ましい。発酵槽の下部には、外気を取り入れるための通風管を1本又は複数本敷設するのが好ましい。具体的には、複数の空気噴出孔を下向きに設けた送風管を発酵槽の床面又はその近傍に敷設するか又は発酵槽の床面に凹溝を設けて、その凹溝に敷設するとよい。送風管は、複数本並列に敷設してもよく、また、発酵槽の床面又は凹溝の底面にそって縦横に組み合わせて敷設してもよい。
【0026】
本発明に係る臭気除去剤、すなわち、好気性高温菌の発酵生成物の製造に使用する空気供給手段は、例えば、送風機とダクトで構成され、送風機は外部からの空気を取り込み、ダクトを通して発酵槽内に敷設した送風管に送り込み、送風管の空気噴出孔から発酵槽内の有機物原料へ噴出させる。なお、送風機と送風管の間に空気加熱機やサーモスタットを設置して、送風機が取り込んだ空気を加熱して所定の高温空気とし、この高温空気を有機物原料に供給すると、発酵を促進させることができる。また、有機物原料の性状によっては常時連続的に通気する必要はなく、間欠的に通気するようにしても差し支えない。
【0027】
上記の説明によって明らかなとおり、本発明でいう「発酵生成物」とは、発酵によって得られた生成物であり、また、植物が必要とする微量元素などを補充するなど所要の調整をおこなえば有機肥料に仕上げることができる肥料用の基材であると同時に、次回の発酵活動をおこなう微生物を多量に含有する発酵用原料でもあるので、肥料用の「培地」又は「種菌」もしくは「種菌コンポスト」などと称することもできる。
【0028】
本発明では、上記のようにして製した好気性高温菌又はその混合菌体もしくはこれらの培養物、もしくはこれらを有機物原料に添加して通気発酵をおこなって製した発酵生成物を臭気除去剤として使用する。
本発明に係る臭気除去剤は、臭気成分を分解する能力が著しく高く、例えば、強い悪臭を発する豚尿や家畜糞やし尿などであっても、本発明に係る臭気除去剤をこれらの悪臭廃棄物と混合するだけで、その臭気を減少することができ、時間が経過するとほぼ完全に臭気を消失させることができる。特に、本発明に係る臭気除去剤は、後記する試験例に示すとおり、悪臭防止法第2条第1項で規制されている特定悪臭物質(アンモニア、メチルメルカプタンその他不快なにおいの原因となり、生活環境を損なうおそれのある物質であって、政令で定めるもの)の臭気を完全に分解し、除去する能力を有する。
【0029】
次に、本発明に係る臭気除去剤の使用方法について説明する。
本発明に係る臭気除去剤は、通常、粉末状又は顆粒状のものであるため、臭気を発生する場所、例えば、食肉処理場、魚介類処理場、汚泥処理場、食肉・鮮魚市場、有機性廃棄物の一時保管場所・保管容器及びその周辺、ごみ捨て場、ごみ箱及びその周辺、汚染された池や河などにそのまま適宜量を散布すればよい。散布した後数時間ないし数日間が経過すると、臭気はいちじるしく減少し、ついにはほとんど感じなくなる。なお、本発明に係る臭気除去剤を散布するとともにその場所や容器に通気すると、臭気除去剤に含まれている好気性高温菌が活性化され、臭気除去効果はいっそう増強される。
【0030】
本発明の臭気除去剤は、通気性と可撓性を有する容器に収納して「容器詰め臭気除去剤」とすると、さらに使用しやすくなる。通気性と可撓性を兼ね備えた容器としては、第一に、布製の袋を挙げることができる。すなわち、本発明の臭気除去剤を布袋に充填すると、布には通気性があるので好気性高温菌の活動を妨げることがない上、運搬しやすくなり、かつ、臭気を発生する場所や容器内にそのまま置いておくことができるので、取り替えや補充などの管理が容易となる。また、布には可撓性があるので、容器の蓋部や壁面に貼り付けたり、床に積み重ねることができるのできわめて使用しやすくなる。なお、容器の布地としては、どのようなものでも差し支えないが、丈夫な繊維で粗い目のものが好ましく、昔からドンゴロスと呼ばれる粗い布地やトウモロコシ繊維を編んだもの布袋が好適である。また、通気性と可撓性をを兼ね備えた容器としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、一般ポリスチレン、ポリカーボネイトなどの通気性のあるプラスチック製容器も使用できる。
【0031】
本発明に係る容器詰め臭気除去剤の形状や大きさ、臭気除去剤の充填量は任意であるが、運搬の容易さを考慮すると、ピロタイプや球形状に形成するのが好ましく、ピロタイプに形成するときは、1袋を15kg詰め以下とするのが好ましい。また、さらに小型にして、例えば、1袋500g〜1kg詰め程度の袋詰めにすると、家庭用などの小型のごみ箱の中に入れたり、貼り付けたりして使用することができ、ごみ箱及びその周辺の臭気を除去するのにきわめて好適である。なお、脱臭効果が衰えたときは、容器のまましばらく空気中に晒すか、又は臭気除去剤に対して霧吹き器などで水分を与えると脱臭力が復活し、使用継続できることが多い。
【0032】
本発明に係る容器詰め臭気除去剤を用いた有機性廃棄物収納用ボックスについて説明する。本発明に係る有機性廃棄物収納用ボックスは、容器本体の上部又はその蓋部に通気孔を設けてあり、請求項4に記載の容器本体の上部又はその蓋部の内側に取り付けてある構造のものである。通気孔は複数箇所に設けるのが好ましい。「容器本体の上部」とは、容器本体の蓋部の近傍や容器本体の上縁近傍であって、有機性廃棄物の投入に支障を生じない位置をいう。
以下、実施例をもって、本発明に係る有機性廃棄物収納用ボックスについて、さらに説明する。
【0033】
【実施例1】
本発明の容器詰め臭気除去剤を使用した有機性廃棄物収納用ボックスの実施例を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の容器詰め臭気除去剤を使用した円形の有機性廃棄物収納用ボックスの断面図である。図1において、1はプラスチック製の有機性廃棄物収納用ボックスで、2はその容器本体で深さ3m程度の大きさであり、有機性廃棄物5を収納してある。3は容器本体2に嵌合する直径が1m程度の蓋部であり、蓋部3には通気孔31・31・・が複数箇所において穿ってある。なお、32は蓋部3のつまみである。
この有機性廃棄物収納用ボックス1に1袋3kg詰めに製した本発明の容器詰め臭気除去剤4を取り付けて有機廃棄物5の臭気を除去する。容器詰め臭気除去剤4の取り付け方は、図1に示すように、容器詰め臭気除去剤4の1袋又は数袋を容器本体2の上部内壁に貼り付けるか又は蓋部3の内側に貼り付けるか、もしくはその両方に貼り付けるのが好ましい。貼り付ける方法は、粘着テープで固定するなど任意の方法でよい。このような取り付け方にすると、容器詰め臭気除去剤4に対する通気が滞ることがないので好気性高温菌が活動しやすくなるとともに、有機性廃棄物5の収納に支障が生じない。なお、容器詰め臭気除去剤4を蓋部3などに貼り付けるについて、容器詰め臭気除去剤4で通気孔31・31・・の一部又は全部を塞いでも臭気の除去効果には何ら支障がない。
このように製した有機性廃棄物収納用ボックス1では、有機性廃棄物5の有する異臭がほとんど感じられない状態で、収納を続けることができる。
【0034】
【実施例2】
図2は、本発明の容器詰め臭気除去剤を使用した有機性廃棄物収納用ボックスの別の実施例の説明図である。図2において、1はどこにでも見かけるスチール製の有機性廃棄物収納用ボックス(いわゆる「ごみ箱」)で、2はその容器本体で、深さ約1m、幅40cm、奥行80cm程度の大きさであり、有機性廃棄物5を収納してある。容器本体1は、その上部の蓋部2と接する箇所をやや内すぼまりに湾曲させてあり、その湾曲部には細かい通気孔21・21・・が複数箇所において穿ってある。3は容器本体2に嵌合する蓋部であり、容器本体1の片側に開閉自在に軸支されている。
図2に示すように、この有機性廃棄物収納用ボックス1の蓋部3に1袋1kg詰めに製した本発明の容器詰め臭気除去剤4を1袋(又は複数袋)貼り付けて有機性廃棄物5の臭気を除去する。このような取り付け方にすると、容器詰め臭気除去剤4に対する通気が滞ることがないので好気性高温菌が活動しやすくなるとともに、有機性廃棄物5の収納に支障が生じない。このように製した有機性廃棄物収納用ボックス1では、有機性廃棄物5の有する異臭がほとんど感じられない状態で、収納を続けることができる。
【0035】
【実施例3】
図3は、本発明の容器詰め臭気除去剤を使用した有機性廃棄物収納用ボックスのさらに別の実施例の説明図である。図3において、1は、実施例2の有機性廃棄物収納用ボックスと同じ大きさ・形状の有機性廃棄物収納用ボックスであり、容器本体2と蓋部3を備えている。なお、実施例2とは異なり、本実施例の有機性廃棄物収納用ボックス1では、蓋部2に通気孔21・21・・が複数箇所において穿ってある。
図3に示すように、この有機性廃棄物収納用ボックス1の上部の内側に1袋1kg詰めに製した本発明の容器詰め臭気除去剤4を1袋(又は複数袋)貼り付けて有機性廃棄物5の臭気を除去する。このような取り付け方にすると、実施例2と同様、容器詰め臭気除去剤4に対する通気が滞ることがないので好気性高温菌が活動しやすくなるとともに、有機性廃棄物5の収納に支障が生じない。このように製した有機性廃棄物収納用ボックス1では、有機性廃棄物5の有する異臭がほとんど感じられない状態で、収納を続けることができる。
【0036】
以下、試験例をもって、本発明の臭気除去剤の効果についてさらに説明する。
【試験例1】
(1)試験目的
本発明の臭気除去剤を、特に腐敗しやすく、腐敗の進行とともに悪臭が強く発生する高分子凝集剤処理の下水汚泥を用いて、悪臭分解作用を確認すること
(2)試験材料
供試試料は、高知県浦戸湾東部流域下水汚泥処理場の高須浄化センターにおける高分子凝集剤による脱水処理下水汚泥を用いた。(以下、本試験例の説明において、この脱水処理下水汚泥を単に「供試試料」と称する。)
臭気除去剤は、鹿児島市の下水汚泥コンポストからなる発酵生成物を用いた。この下水汚泥コンポストは、本発明者らが鹿児島県姶良郡牧園町の霧島火山帯の土壌から採取したバチルス属に属する菌で、好適活動温度を85℃以上とする好気性高温菌を培養し、その培養物を種菌として生汚泥などの有機物原料を通気発酵させて製した発酵生成物である。(以下、本試験例の説明において、この発酵生成物を単に「本発明の臭気除去剤」と称する。)
(3)試験方法
供試試料と本発明の臭気除去剤とを重量比で1対1に混合する。この混合物を発酵槽(50トン)に仕込み、通気しながら発酵を開始し、発酵物の品温が低下するたびに7回の切返しをおこない、コンポスト製品とした。
この間工程のポイントごとに、臭気成分を熱分解ヘッドスペース・ガスクロマトグラフ質量分析計によって分析した。図4〜図8にその分析結果を示す。
【0037】
(4)試験結果
図4〜図8において、各図のピークはそれぞれ特定の化合物を表し、ピークの高さがその物質の存在量を示している。図4は発酵処理前の供試試料(原料)の含有臭気成分の分析結果であり、検出された成分のなかで悪臭防止法で特定悪臭物質として規制されているものは、その名称を四角に囲んである。すなわち、図4は、供試試料(原料)から臭気成分として悪臭防止法所定の特定悪臭物質であるアセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ノルマルブチルアルデヒド、イソバレルアルデヒド、トルエン、二硫化メチル、メチルイソブチルケトン、スチレン、プロピオン酸、ノルマル酪酸、イソ吉草酸、ノルマル吉草酸などが検出されたことを示す。供試試料(原料)は、これらが混在し、互いに影響を及ぼしあっているので、下水汚泥独特の強い悪臭が形成されている。
図5は、本発明の臭気除去剤(種菌)の臭気成分の分析結果であるが、供試試料のような悪臭起因物質は検出されていない。
図6は、供試試料と本発明の臭気除去剤を混合した状態での臭気成分の分析結果を示す。供試試料(原料)と本発明の臭気除去剤を混合すると、図6に示すように供試試料(原料)に存在していた低級脂肪酸、ケトンやアルデヒド類はほとんどなくなり、二硫化メチル及び三硫化メチルのみが検出された。すなわち、供試試料(原料)と本発明の臭気除去剤を混合するだけで、多種多様の悪臭成分のピークが急速に減少し、供試試料(原料)独特の悪臭成分が消失することが確認された。この混合物を発酵槽に堆積し、通気発酵を開始する。
図7と図8は、それぞれ切返し1回目と2回目の終了直後の臭気成分の分析結果を示す。すなわち、この混合物を発酵槽に堆積して通気を続けながら発酵させると、図7に示すように、発酵初期である切返し1回目の終了直後には悪臭成分は二硫化メチルのみとなり、さらに、図8に示すように、切返し2回目の終了直後には全ての悪臭成分が消失していることが確認された。
【0038】
(5)所見
以上の結果から、本発明の臭気除去剤は、供試試料と等量混合するだけで、供試試料特有の汚物感のある悪臭成分を著しく減少させ、発酵初期にはほとんど完全に消失させることが明らかになった。すなわち、本発明の臭気除去剤は、悪臭防止法で特定悪臭物質として規制されている悪臭の分解能力がきわめて高いことが確認された。
【0039】
【発明の効果】
以上詳しく説明のとおり、本発明に係る臭気除去剤は、有機性廃棄物に対して強い脱臭効力を有し、悪臭の分解能力がきわめて高いので、悪臭防止法で特定悪臭物質として規制されている悪臭を容易に分解することができる。
本発明に係る臭気除去剤は、臭気を発生させる容器や場所、汚染された池や河などにそのまま適宜量を散布すればよいので、手軽に、また容易に使用できる。
また、本発明の臭気除去剤を通気性と可撓性とを有する容器に充填し、容器詰め臭気除去剤とすると、好気性高温菌の活動を妨げることがない上、運搬しやすくなり、かつ、臭気を発生する場所や容器内にそのまま置いておくことができるので、取り替えや補充などの管理が容易となるなどきわめて使用しやすくなる。
さらに、本発明に係る臭気除去剤を用いた有機性廃棄物収納用ボックスは、有機性廃棄物の有する異臭がほとんど感じられない状態で、有機性廃棄物を簡便に収納・保管し続けることができる。
以上のとおりであって、本発明は、もって我が国における環境問題の改善に大いに資するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の容器詰め臭気除去剤を使用した有機性廃棄物収納用ボックス(実施例1)の断面図
【図2】本発明の容器詰め臭気除去剤を使用した有機性廃棄物収納用ボックス(実施例2)の説明図
【図3】本発明の容器詰め臭気除去剤を使用した有機性廃棄物収納用ボックス(実施例3)の説明図
【図4】試験例1において熱分解ヘッドスペース・ガスクロマトグラフ質量分析計による発酵処理前の供試試料(原料)の臭気成分の分析図
【図5】試験例1において熱分解ヘッドスペース・ガスクロマトグラフ質量分析計による発酵処理前の臭気除去剤(種菌)の臭気成分の分析図
【図6】試験例1において熱分解ヘッドスペース・ガスクロマトグラフ質量分析計による供試試料と臭気除去剤との混合物の臭気成分の分析図(発酵処理開始前)
【図7】試験例1において熱分解ヘッドスペース・ガスクロマトグラフ質量分析計による供試試料と臭気除去剤との混合物の臭気成分の分析図(切返し1回目終了直後)
【図8】試験例1において熱分解ヘッドスペース・ガスクロマトグラフ質量分析計による供試試料と臭気除去剤との混合物の臭気成分の分析図(切返し2回目終了直後)
【符号の説明】
1:有機性廃棄物収納用ボックス、
2:容器本体、 21:容器本体の通気孔
3:蓋部、 31:蓋部の通気孔、 32:蓋部のつまみ
4:容器詰め臭気除去剤
5:有機性廃棄物
【発明の属する技術分野】
本発明は、臭気除去剤及びその用途に関する。詳しくは、有機性廃棄物に用いる臭気除去剤及びその臭気除去剤を用いた有機性廃棄物の臭気除去方法並びに有機性廃棄物収納用ボックスに関する。さらに詳しくは、微生物、特に高温で好適に活動する好気性高温菌の力を応用した有機性廃棄物の臭気除去剤及びその臭気除去剤を使用して有機性廃棄物の臭気を容易に除去する方法並びにその臭気除去剤を使用した簡便な有機性廃棄物収納用ボックスに関する。
【0002】
近時、モノを大量に生産し、大量に消費し、そして大量に廃棄するという社会風潮が顕著になるに伴い、家庭系ごみや事業系ごみ、し尿などの一般廃棄物や汚泥、廃油、紙屑、木屑、繊維屑、動植物性残渣(例えば、発酵かす、魚介物のあらなど)、家畜の糞尿・死体・血液などの産業廃棄物の発生量が増大している。これらの有機性廃棄物は、一般的には、家庭や事業所などの廃棄物発生場所において一時的にごみ箱やタンクなど適宜の収納容器に収納して保管し、必要に応じて廃棄物運搬専用車が巡回して回収し、焼却場や埋立地などの最終処分場に運んで処理されている。
【0003】
有機性廃棄物は、それ自体が特有の臭気を有している上、時間の経過とともに変性が進み、ますます強い臭気を発生する。例えば、糞尿は、大気中のプソイドモナス、桿菌、連鎖状球菌、乳酸菌などの腐敗性微生物により分解されると、アンモニア、メチルメルカプタン、硫化水素、トリメチルアミン、アセトアルデヒド、ノルマル吉草酸などが発生し、工業廃液からはメタンガスが発生し、これらが強烈な悪臭のもとになっている。また、血液には多種の糖タンパク質が含まれているので、これらが変性すると耐えがたい異臭を発する。さらに、動植物性の残渣や家庭系ごみや事業系ごみは、廃棄物収納容器(いわゆる「ごみ箱」)に気軽に廃棄されることが多いが、上記腐敗性微生物や酵母、カビなどが分解作用を起こすため、短時間で臭気を発生し始める。
【0004】
このため、有機性廃棄物を廃棄物収納容器に入れて一時的に保管している間、廃棄物収納容器の周辺に強い臭気を撒き散らすという問題がある。また、廃棄物の処理場はもとより、食肉処理場や魚介類市場などには、特有の臭気がしみ込んでおり、その周辺地域にまで常時異臭を放散している。したがって、有機性廃棄物によって生じる臭気は、廃棄物処理上の5大公害の一つとされており、その対策は大きな社会問題となっている。
【0005】
【従来の技術】
そのため、維持経費がきわめて安いことから、微生物の力を利用して有機性廃棄物の臭気を除去する方法や装置についても、大いに研究されている。
すなわち、有機性廃棄物を土中に埋め込んで土中の微生物の働きによって自然分解する方法の他に、微生物の力を応用して有機性廃棄物の臭気を除去する方法や装置の開発・研究は業界の関心が高く、平成5年以降でも50数件の特許出願が公開されている。しかしながら、これらの発明は、特定の微生物、特に、85℃以上を好適活動温度とする高温菌を用いるものではなく、微生物を利用して廃棄物の排ガス中に含まれる炭化水素類を処理する方法・装置(生物処理装置と呼ばれている。)に関するものや、微生物そのものを固定化する方法に特徴があるか、又は、バイオフィルター法、活性汚泥法などと称される複雑な方法や装置を用いるものが多い。
【0006】
例えば、判りやすい事例として、特開2002−273154号公報(脱臭処理装置)を挙げると、この公報には、有機性廃棄物から発生する臭気を湿式洗浄する臭気洗浄装置と臭気洗浄後の洗浄水を微生物で処理する脱臭処理装置とを組み合わせて堆肥化施設などから発生する悪臭を微生物の力で分解し、清浄な空気に換えて排出させる脱臭方法や装置が開示されているが、上記のとおり、装置自体が洗浄装置と脱臭装置とを組み合わせた大がかりなものであり、かつ、使用する微生物は、従来公知の硝化菌や脱窒菌であるから、劇的な脱臭効果を期待できるものではない。
【0007】
また、特開2001−219148号公報(有機廃棄物処理装置における脱臭装置)には、上記公報記載の装置とほぼ同様の仕組みの脱臭装置が開示されているが、好気性の低温菌(最適活動温度約10〜20℃)、中温菌(同約20〜40℃)、高温菌(同約50〜60℃、例えば、枯草菌類〔バシルス属〕)と、嫌気性菌の4種類の菌を適宜ブレンドして種菌とし、この種菌をおが屑などの菌床を形成する部材と混合して菌床を形成する例が開示されており、装置自体が複雑な構成である上、菌床の微生物構成もきわめて複雑である。さらに、高温菌を用いているとしても、50〜60℃を最適活動温度帯とする高温菌では、十分な脱臭効果を挙げることができない。
【0008】
【特許文献1】
特開2002−273154号公報
【特許文献2】
特開2001−219148号公報
【0009】
本発明者らは、かねてから、好気性高温菌及びそのの活用方法について研究を続けており、これまでに85℃以上の高温で好適に活動する好気性高温菌の一種について、後記するとおり、特許を取得している他、特許出願中のものも多い。また、好気性高温菌の働きを応用した汚泥処理法、肥料の製造方法、有機廃液の処理法、動物舎用の床敷材、ダイオキシン類低減剤、重金属の除去剤などについて特許出願中であり、本発明は、その一環として開発するに至った。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
上記の状況に鑑み、本発明は、強い脱臭効力を有する臭気除去剤を提供すること、特に、悪臭防止法で特定悪臭物質として規制されている悪臭に対する分解能力がきわめて大きい臭気除去剤を提供することを第一の課題とする。また、本発明は、その臭気除去剤の容易な使用方法を提供することを第二の課題とする。さらに、本発明は、その臭気除去剤を用いた簡便な有機廃棄物収納用ボックスを提供することを第三の課題とするものである。本発明は、もって我が国における環境問題の改善に資せんとするものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために、本発明のうち請求項1に記載する発明は、好適活動温度を85℃以上とする好気性高温菌又はその混合菌体もしくはこれらの培養物を有効成分とする臭気除去剤である。
【0012】
また、請求項2に記載する発明は、独立行政法人・産業技術総合研究所の特許微生物寄託センターに寄託している受託番号FERM P−15085、FERM P−15086、FERMP−15087、FERM P−15536、FERM P−15537、FERM P−15538、FERM P−15539、FERM P−15540、FERM P−15541、FERM P−15542及びFERM P−18598より成る群から選択される少なくとも1種の好気性高温菌又はその混合菌体もしくはこれらの培養物を有効成分とする臭気除去剤である。
【0013】
また、請求項3に記載する発明は、請求項1又は2に記載の好気性高温菌又はその混合菌体もしくはこれらの培養物を添加した有機物原料を通気発酵させて製した発酵生成物からなる臭気除去剤である。
【0014】
また、請求項4に記載する発明は、請求項1から3のいずれかに記載の臭気除去剤を、通気性を有しかつ可撓性の容器に収納してある容器詰め臭気除去剤である。
【0015】
また、請求項5に記載する発明は、容器本体の上部又はその蓋部に通気孔を設けてある有機性廃棄物収納用ボックスを用いて、請求項4に記載の容器詰め臭気除去剤を容器本体の上部又はその蓋部の内側に取り付け、容器本体に有機性廃棄物を収納して有機性廃棄物の臭気を除去する方法である。
【0016】
また、請求項6に記載する発明は、容器本体の上部又はその蓋部に通気孔を設けてあり、請求項4に記載の容器詰め臭気除去剤を容器本体の上部又はその蓋部の内側に取り付けてある有機性廃棄物収納用ボックスである。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の臭気除去剤及びそれを用いた有機廃棄物の臭気除去方法並びにその方法を用いた有機廃棄物収納用ボックスについてさらに詳細に説明する。
なお、本発明の全ての説明において、「%」や「部」の表示は、特に断らない限り、「重量%」や「重量部」を表す。
【0018】
まず、本発明に係る臭気除去剤の有効成分となる好気性高温菌又はその混合菌体もしくはこれらの培養物について説明する。本発明の臭気除去剤は、好適活動温度を85℃以上、好ましくは90℃以上とする好気性高温菌又はその混合菌体もしくはこれらの培養物を有効成分とする。好適活動温度を85℃以上とする好気性高温菌というのは、発酵などの微生物活動に最適な温度帯が85℃以上である好気性高温菌のことをいい(好気性超高温菌と称されることもある。)、本発明では、そのような好気性高温菌であれば、菌種を問わず使用できる。また、好気性高温菌そのものの他、その2種以上からなる混合菌体又はこれらの菌体の培養物を使用することでも差し支えない。
【0019】
本発明に係る臭気除去剤は、好適活動温度を85℃以上とする好気性高温菌又はその混合菌体もしくはこれらの培養物である必要があり、高温菌であっても、嫌気性のものや好適活動温度が85℃未満である好気性高温菌やこれらの混合菌体を使用しても、所期の効果を挙げることができない、。
【0020】
本発明において、好適活動温度を85℃以上とする好気性高温菌の中でも特に好適に使用できる菌は、本発明者らが鹿児島県姶良郡牧園町の霧島火山帯の土壌から採取したバチルス属に属する菌で、独立行政法人・産業技術総合研究所の特許微生物寄託センターに寄託してあり、特許第306422号として特許されている受託番号FERM P−15085 (通称:YM−01)、FERM P−15086 (YM−02)、及びFERM P−15087 (YM−03)、本発明者らが上記土壌から採取したバチルス属に属する菌で、上記特許微生物寄託センターに寄託してあり、特願平9−52312号として特許出願中である受託番号FERM P−15536 (YM−04)、FERM P−15537 (YM−05)、FERM P−15538 (YM−06)、FERM P−15539 (YM−07)、FERM P−15540 (YM−08)、FERM P−15541(YM−09)及びFERM P−15542 (YM−10)、本発明者らが上記土壌から採取したカルドトリックス属に属する菌で、上記特許微生物寄託センターに寄託してあり、特願2001−391561号として特許出願中である受託番号FERM P−18598(かカルドトリックス・サツマエ YM081) から構成される菌群の中から選択される少なくとも1種の好気性高温菌又はこれらの混合菌体もしくはこれらの培養物である。
【0021】
本発明において使用する好気性高温菌又はその混合菌体もしくはこれらの培養物は、例えば、以下のようにして製する。
好適活動温度を85℃以上とする任意の好気性高温菌を含む土壌を採取して、これに蔗糖溶液などを加えて高温下で通気しながら発酵させて菌体を培養し、好気性高温菌の培養物を作る。得られた好気性高温菌の培養物又は好気性高温菌の菌体そのものを有機性廃棄物などの有機物原料、例えば、生汚泥と混合して高温下でさらに通気しながら発酵させ、汚泥中の雑菌や種子類を死滅させて、好気性高温菌の培養物とする。本発明では、この好気性高温菌の菌体又はその混合菌体もしくはこれらの培養物を、臭気除去剤の有効成分としてそのまま用いてもよいが、通常、これらの菌体又はその培養物は、完熟肥料(いわゆる「コンポスト」の1種である。)の原料に添加して使用されるので、本発明においても、上記のようにして製した好気性高温菌の菌体又はその培養物を発酵槽内の有機物原料、例えば、生汚泥などの有機性廃棄物に添加して、空気を送り込んで発酵を進行させ、汚泥中の雑菌や種子類を死滅させ、有用な菌体のみを多数含有する発酵生成物を製造することができる。そのようにした場合には、得られた発酵生成物は、本発明に係る臭気除去剤としても、また、本発明に係る臭気除去剤の有効成分としても使用できる。
【0022】
以下、本発明に係る臭気除去剤として好適に使用できる発酵生成物の好ましい製造例について詳しく説明する。
まず、有機物原料、例えば、生汚泥に前記のように好気性高温菌又はその混合菌体もしくはこれらの培養物を添加する。混合比率は、有機物原料70〜80部程度に対して好気性高温菌の培養物20〜50部程度が好ましい。この混合物の適量を発酵槽に堆積して空気を十分に吹き込みながら通気発酵をおこなう。通気を続けていると、最初は常温であった混合物が1日ないし数日後には80〜90℃に昇温する。5〜7日間通気を継続させながら放置したた後、切返し(攪拌)をおこなう。以後は、この放置と切返しを3〜8回程度繰り返しておこない、およそ20〜50日余の間、好ましくは30日間以上、通気しながら発酵を続けると、全体がさらさらした乾燥状態の発酵生成物となる。得られた発酵生成物を所要により篩い分けした後、例えば、カリウム分を補充するなど所要の養分調整をおこなえば、完熟肥料として仕上げることができる。すなわち、この発酵生成物は、茶色の顆粒状乃至粉末状を呈しており、有機肥料の有用な基材として使用できるものである。
【0023】
本発明に係る臭気除去剤は、上記のようにして製造した発酵生成物からなるので、85℃以上を好適活動温度とする好気性高温菌を乾物グラム当たり約10億以上含んでいる。したがって、同じ発酵槽で前回に製造した発酵生成物を「好気性高温菌の培養物」として使用することによって、繰り返し発酵生成物の製造を続けることができる。すなわち、製了した発酵生成物を発酵槽から取り出して次工程に移す際に、その一部を「好気性高温菌の培養物」として発酵槽内に残留させ、いわゆる発酵の「種菌」として残し、その上に主原料である有機性廃棄物などの有機物原料を投入し、両資材を混合して次回の発酵用原料を構成し、この原料構成によって発酵を繰り返しておこなうことができる、このようにした場合、各回の発酵によって得られる発酵生成物は、本発明の臭気除去剤としてそのまま使用できるとともに、本発明の臭気除去剤の有効な原料としても使用できることとなる。
【0024】
本発明においては、臭気除去剤となる発酵生成物を製造するための原料としては、どのような有機物でも使用できるが、主として有機性廃棄物を使用するのが好ましい。本発明でいう有機性廃棄物とは、わら、落葉、糠、籾殻、樹皮、切端材、おが屑などの植物性廃棄物、家畜類や家禽類の糞尿やその死体・臓物類・血液・羽毛、魚介類とその臓物などの動物性廃棄物、し尿、下水スラッジ、各種の汚泥、都市ごみ、食用廃油、食品廃棄物などの生活廃棄物ないし産業廃棄物などの他、通常の堆肥や有機肥料の原料として処理できる全ての有機性物質を含む。本発明では、上記の有機性廃棄物の2種以上を組み合わせて使用して差し支えない。
【0025】
本発明に係る臭気除去剤、すなわち、好気性高温菌の発酵生成物の製造に用いる発酵槽は、屋根を有する建屋の中に1槽又は複数の槽として設けられる場合が多い。この場合の発酵槽は、発酵ヤードなどと称せられるものを含み、通常の堆肥製造の場合と同様のコンクリートの仕切り壁によって、例えば、1区画を幅5m×長さ10m×高さ3m程度の、有機物原料を内部に堆積させて発酵させるのに適した容積に区画したものが好ましい。発酵槽の下部には、外気を取り入れるための通風管を1本又は複数本敷設するのが好ましい。具体的には、複数の空気噴出孔を下向きに設けた送風管を発酵槽の床面又はその近傍に敷設するか又は発酵槽の床面に凹溝を設けて、その凹溝に敷設するとよい。送風管は、複数本並列に敷設してもよく、また、発酵槽の床面又は凹溝の底面にそって縦横に組み合わせて敷設してもよい。
【0026】
本発明に係る臭気除去剤、すなわち、好気性高温菌の発酵生成物の製造に使用する空気供給手段は、例えば、送風機とダクトで構成され、送風機は外部からの空気を取り込み、ダクトを通して発酵槽内に敷設した送風管に送り込み、送風管の空気噴出孔から発酵槽内の有機物原料へ噴出させる。なお、送風機と送風管の間に空気加熱機やサーモスタットを設置して、送風機が取り込んだ空気を加熱して所定の高温空気とし、この高温空気を有機物原料に供給すると、発酵を促進させることができる。また、有機物原料の性状によっては常時連続的に通気する必要はなく、間欠的に通気するようにしても差し支えない。
【0027】
上記の説明によって明らかなとおり、本発明でいう「発酵生成物」とは、発酵によって得られた生成物であり、また、植物が必要とする微量元素などを補充するなど所要の調整をおこなえば有機肥料に仕上げることができる肥料用の基材であると同時に、次回の発酵活動をおこなう微生物を多量に含有する発酵用原料でもあるので、肥料用の「培地」又は「種菌」もしくは「種菌コンポスト」などと称することもできる。
【0028】
本発明では、上記のようにして製した好気性高温菌又はその混合菌体もしくはこれらの培養物、もしくはこれらを有機物原料に添加して通気発酵をおこなって製した発酵生成物を臭気除去剤として使用する。
本発明に係る臭気除去剤は、臭気成分を分解する能力が著しく高く、例えば、強い悪臭を発する豚尿や家畜糞やし尿などであっても、本発明に係る臭気除去剤をこれらの悪臭廃棄物と混合するだけで、その臭気を減少することができ、時間が経過するとほぼ完全に臭気を消失させることができる。特に、本発明に係る臭気除去剤は、後記する試験例に示すとおり、悪臭防止法第2条第1項で規制されている特定悪臭物質(アンモニア、メチルメルカプタンその他不快なにおいの原因となり、生活環境を損なうおそれのある物質であって、政令で定めるもの)の臭気を完全に分解し、除去する能力を有する。
【0029】
次に、本発明に係る臭気除去剤の使用方法について説明する。
本発明に係る臭気除去剤は、通常、粉末状又は顆粒状のものであるため、臭気を発生する場所、例えば、食肉処理場、魚介類処理場、汚泥処理場、食肉・鮮魚市場、有機性廃棄物の一時保管場所・保管容器及びその周辺、ごみ捨て場、ごみ箱及びその周辺、汚染された池や河などにそのまま適宜量を散布すればよい。散布した後数時間ないし数日間が経過すると、臭気はいちじるしく減少し、ついにはほとんど感じなくなる。なお、本発明に係る臭気除去剤を散布するとともにその場所や容器に通気すると、臭気除去剤に含まれている好気性高温菌が活性化され、臭気除去効果はいっそう増強される。
【0030】
本発明の臭気除去剤は、通気性と可撓性を有する容器に収納して「容器詰め臭気除去剤」とすると、さらに使用しやすくなる。通気性と可撓性を兼ね備えた容器としては、第一に、布製の袋を挙げることができる。すなわち、本発明の臭気除去剤を布袋に充填すると、布には通気性があるので好気性高温菌の活動を妨げることがない上、運搬しやすくなり、かつ、臭気を発生する場所や容器内にそのまま置いておくことができるので、取り替えや補充などの管理が容易となる。また、布には可撓性があるので、容器の蓋部や壁面に貼り付けたり、床に積み重ねることができるのできわめて使用しやすくなる。なお、容器の布地としては、どのようなものでも差し支えないが、丈夫な繊維で粗い目のものが好ましく、昔からドンゴロスと呼ばれる粗い布地やトウモロコシ繊維を編んだもの布袋が好適である。また、通気性と可撓性をを兼ね備えた容器としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、一般ポリスチレン、ポリカーボネイトなどの通気性のあるプラスチック製容器も使用できる。
【0031】
本発明に係る容器詰め臭気除去剤の形状や大きさ、臭気除去剤の充填量は任意であるが、運搬の容易さを考慮すると、ピロタイプや球形状に形成するのが好ましく、ピロタイプに形成するときは、1袋を15kg詰め以下とするのが好ましい。また、さらに小型にして、例えば、1袋500g〜1kg詰め程度の袋詰めにすると、家庭用などの小型のごみ箱の中に入れたり、貼り付けたりして使用することができ、ごみ箱及びその周辺の臭気を除去するのにきわめて好適である。なお、脱臭効果が衰えたときは、容器のまましばらく空気中に晒すか、又は臭気除去剤に対して霧吹き器などで水分を与えると脱臭力が復活し、使用継続できることが多い。
【0032】
本発明に係る容器詰め臭気除去剤を用いた有機性廃棄物収納用ボックスについて説明する。本発明に係る有機性廃棄物収納用ボックスは、容器本体の上部又はその蓋部に通気孔を設けてあり、請求項4に記載の容器本体の上部又はその蓋部の内側に取り付けてある構造のものである。通気孔は複数箇所に設けるのが好ましい。「容器本体の上部」とは、容器本体の蓋部の近傍や容器本体の上縁近傍であって、有機性廃棄物の投入に支障を生じない位置をいう。
以下、実施例をもって、本発明に係る有機性廃棄物収納用ボックスについて、さらに説明する。
【0033】
【実施例1】
本発明の容器詰め臭気除去剤を使用した有機性廃棄物収納用ボックスの実施例を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の容器詰め臭気除去剤を使用した円形の有機性廃棄物収納用ボックスの断面図である。図1において、1はプラスチック製の有機性廃棄物収納用ボックスで、2はその容器本体で深さ3m程度の大きさであり、有機性廃棄物5を収納してある。3は容器本体2に嵌合する直径が1m程度の蓋部であり、蓋部3には通気孔31・31・・が複数箇所において穿ってある。なお、32は蓋部3のつまみである。
この有機性廃棄物収納用ボックス1に1袋3kg詰めに製した本発明の容器詰め臭気除去剤4を取り付けて有機廃棄物5の臭気を除去する。容器詰め臭気除去剤4の取り付け方は、図1に示すように、容器詰め臭気除去剤4の1袋又は数袋を容器本体2の上部内壁に貼り付けるか又は蓋部3の内側に貼り付けるか、もしくはその両方に貼り付けるのが好ましい。貼り付ける方法は、粘着テープで固定するなど任意の方法でよい。このような取り付け方にすると、容器詰め臭気除去剤4に対する通気が滞ることがないので好気性高温菌が活動しやすくなるとともに、有機性廃棄物5の収納に支障が生じない。なお、容器詰め臭気除去剤4を蓋部3などに貼り付けるについて、容器詰め臭気除去剤4で通気孔31・31・・の一部又は全部を塞いでも臭気の除去効果には何ら支障がない。
このように製した有機性廃棄物収納用ボックス1では、有機性廃棄物5の有する異臭がほとんど感じられない状態で、収納を続けることができる。
【0034】
【実施例2】
図2は、本発明の容器詰め臭気除去剤を使用した有機性廃棄物収納用ボックスの別の実施例の説明図である。図2において、1はどこにでも見かけるスチール製の有機性廃棄物収納用ボックス(いわゆる「ごみ箱」)で、2はその容器本体で、深さ約1m、幅40cm、奥行80cm程度の大きさであり、有機性廃棄物5を収納してある。容器本体1は、その上部の蓋部2と接する箇所をやや内すぼまりに湾曲させてあり、その湾曲部には細かい通気孔21・21・・が複数箇所において穿ってある。3は容器本体2に嵌合する蓋部であり、容器本体1の片側に開閉自在に軸支されている。
図2に示すように、この有機性廃棄物収納用ボックス1の蓋部3に1袋1kg詰めに製した本発明の容器詰め臭気除去剤4を1袋(又は複数袋)貼り付けて有機性廃棄物5の臭気を除去する。このような取り付け方にすると、容器詰め臭気除去剤4に対する通気が滞ることがないので好気性高温菌が活動しやすくなるとともに、有機性廃棄物5の収納に支障が生じない。このように製した有機性廃棄物収納用ボックス1では、有機性廃棄物5の有する異臭がほとんど感じられない状態で、収納を続けることができる。
【0035】
【実施例3】
図3は、本発明の容器詰め臭気除去剤を使用した有機性廃棄物収納用ボックスのさらに別の実施例の説明図である。図3において、1は、実施例2の有機性廃棄物収納用ボックスと同じ大きさ・形状の有機性廃棄物収納用ボックスであり、容器本体2と蓋部3を備えている。なお、実施例2とは異なり、本実施例の有機性廃棄物収納用ボックス1では、蓋部2に通気孔21・21・・が複数箇所において穿ってある。
図3に示すように、この有機性廃棄物収納用ボックス1の上部の内側に1袋1kg詰めに製した本発明の容器詰め臭気除去剤4を1袋(又は複数袋)貼り付けて有機性廃棄物5の臭気を除去する。このような取り付け方にすると、実施例2と同様、容器詰め臭気除去剤4に対する通気が滞ることがないので好気性高温菌が活動しやすくなるとともに、有機性廃棄物5の収納に支障が生じない。このように製した有機性廃棄物収納用ボックス1では、有機性廃棄物5の有する異臭がほとんど感じられない状態で、収納を続けることができる。
【0036】
以下、試験例をもって、本発明の臭気除去剤の効果についてさらに説明する。
【試験例1】
(1)試験目的
本発明の臭気除去剤を、特に腐敗しやすく、腐敗の進行とともに悪臭が強く発生する高分子凝集剤処理の下水汚泥を用いて、悪臭分解作用を確認すること
(2)試験材料
供試試料は、高知県浦戸湾東部流域下水汚泥処理場の高須浄化センターにおける高分子凝集剤による脱水処理下水汚泥を用いた。(以下、本試験例の説明において、この脱水処理下水汚泥を単に「供試試料」と称する。)
臭気除去剤は、鹿児島市の下水汚泥コンポストからなる発酵生成物を用いた。この下水汚泥コンポストは、本発明者らが鹿児島県姶良郡牧園町の霧島火山帯の土壌から採取したバチルス属に属する菌で、好適活動温度を85℃以上とする好気性高温菌を培養し、その培養物を種菌として生汚泥などの有機物原料を通気発酵させて製した発酵生成物である。(以下、本試験例の説明において、この発酵生成物を単に「本発明の臭気除去剤」と称する。)
(3)試験方法
供試試料と本発明の臭気除去剤とを重量比で1対1に混合する。この混合物を発酵槽(50トン)に仕込み、通気しながら発酵を開始し、発酵物の品温が低下するたびに7回の切返しをおこない、コンポスト製品とした。
この間工程のポイントごとに、臭気成分を熱分解ヘッドスペース・ガスクロマトグラフ質量分析計によって分析した。図4〜図8にその分析結果を示す。
【0037】
(4)試験結果
図4〜図8において、各図のピークはそれぞれ特定の化合物を表し、ピークの高さがその物質の存在量を示している。図4は発酵処理前の供試試料(原料)の含有臭気成分の分析結果であり、検出された成分のなかで悪臭防止法で特定悪臭物質として規制されているものは、その名称を四角に囲んである。すなわち、図4は、供試試料(原料)から臭気成分として悪臭防止法所定の特定悪臭物質であるアセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ノルマルブチルアルデヒド、イソバレルアルデヒド、トルエン、二硫化メチル、メチルイソブチルケトン、スチレン、プロピオン酸、ノルマル酪酸、イソ吉草酸、ノルマル吉草酸などが検出されたことを示す。供試試料(原料)は、これらが混在し、互いに影響を及ぼしあっているので、下水汚泥独特の強い悪臭が形成されている。
図5は、本発明の臭気除去剤(種菌)の臭気成分の分析結果であるが、供試試料のような悪臭起因物質は検出されていない。
図6は、供試試料と本発明の臭気除去剤を混合した状態での臭気成分の分析結果を示す。供試試料(原料)と本発明の臭気除去剤を混合すると、図6に示すように供試試料(原料)に存在していた低級脂肪酸、ケトンやアルデヒド類はほとんどなくなり、二硫化メチル及び三硫化メチルのみが検出された。すなわち、供試試料(原料)と本発明の臭気除去剤を混合するだけで、多種多様の悪臭成分のピークが急速に減少し、供試試料(原料)独特の悪臭成分が消失することが確認された。この混合物を発酵槽に堆積し、通気発酵を開始する。
図7と図8は、それぞれ切返し1回目と2回目の終了直後の臭気成分の分析結果を示す。すなわち、この混合物を発酵槽に堆積して通気を続けながら発酵させると、図7に示すように、発酵初期である切返し1回目の終了直後には悪臭成分は二硫化メチルのみとなり、さらに、図8に示すように、切返し2回目の終了直後には全ての悪臭成分が消失していることが確認された。
【0038】
(5)所見
以上の結果から、本発明の臭気除去剤は、供試試料と等量混合するだけで、供試試料特有の汚物感のある悪臭成分を著しく減少させ、発酵初期にはほとんど完全に消失させることが明らかになった。すなわち、本発明の臭気除去剤は、悪臭防止法で特定悪臭物質として規制されている悪臭の分解能力がきわめて高いことが確認された。
【0039】
【発明の効果】
以上詳しく説明のとおり、本発明に係る臭気除去剤は、有機性廃棄物に対して強い脱臭効力を有し、悪臭の分解能力がきわめて高いので、悪臭防止法で特定悪臭物質として規制されている悪臭を容易に分解することができる。
本発明に係る臭気除去剤は、臭気を発生させる容器や場所、汚染された池や河などにそのまま適宜量を散布すればよいので、手軽に、また容易に使用できる。
また、本発明の臭気除去剤を通気性と可撓性とを有する容器に充填し、容器詰め臭気除去剤とすると、好気性高温菌の活動を妨げることがない上、運搬しやすくなり、かつ、臭気を発生する場所や容器内にそのまま置いておくことができるので、取り替えや補充などの管理が容易となるなどきわめて使用しやすくなる。
さらに、本発明に係る臭気除去剤を用いた有機性廃棄物収納用ボックスは、有機性廃棄物の有する異臭がほとんど感じられない状態で、有機性廃棄物を簡便に収納・保管し続けることができる。
以上のとおりであって、本発明は、もって我が国における環境問題の改善に大いに資するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の容器詰め臭気除去剤を使用した有機性廃棄物収納用ボックス(実施例1)の断面図
【図2】本発明の容器詰め臭気除去剤を使用した有機性廃棄物収納用ボックス(実施例2)の説明図
【図3】本発明の容器詰め臭気除去剤を使用した有機性廃棄物収納用ボックス(実施例3)の説明図
【図4】試験例1において熱分解ヘッドスペース・ガスクロマトグラフ質量分析計による発酵処理前の供試試料(原料)の臭気成分の分析図
【図5】試験例1において熱分解ヘッドスペース・ガスクロマトグラフ質量分析計による発酵処理前の臭気除去剤(種菌)の臭気成分の分析図
【図6】試験例1において熱分解ヘッドスペース・ガスクロマトグラフ質量分析計による供試試料と臭気除去剤との混合物の臭気成分の分析図(発酵処理開始前)
【図7】試験例1において熱分解ヘッドスペース・ガスクロマトグラフ質量分析計による供試試料と臭気除去剤との混合物の臭気成分の分析図(切返し1回目終了直後)
【図8】試験例1において熱分解ヘッドスペース・ガスクロマトグラフ質量分析計による供試試料と臭気除去剤との混合物の臭気成分の分析図(切返し2回目終了直後)
【符号の説明】
1:有機性廃棄物収納用ボックス、
2:容器本体、 21:容器本体の通気孔
3:蓋部、 31:蓋部の通気孔、 32:蓋部のつまみ
4:容器詰め臭気除去剤
5:有機性廃棄物
Claims (6)
- 好適活動温度を85℃以上とする好気性高温菌又はその混合菌体もしくはこれらの培養物を有効成分とする臭気除去剤。
- 独立行政法人・産業技術総合研究所の特許微生物寄託センターに寄託している受託番号FERM P−15085、FERM P−15086、FERM P−15087、FERM P−15536、FERM P−15537、FERM P−15538、FERM P−15539、FERM P−15540、FERM P−15541、FERM P−15542及びFERM P−18598より成る群から選択される少なくとも1種の好気性高温菌又はその混合菌体もしくはこれらの培養物を有効成分とする臭気除去剤。
- 請求項1又は2に記載の好気性高温菌又はその混合菌体もしくはこれらの培養物を添加した有機物原料を通気発酵させて製した発酵生成物からなる臭気除去剤。
- 請求項1から3のいずれかに記載の臭気除去剤を、通気性を有しかつ可撓性の容器に収納してある容器詰め臭気除去剤。
- 容器本体の上部又はその蓋部に通気孔を設けてある有機性廃棄物収納用ボックスを用いて、請求項4に記載の容器詰め臭気除去剤を容器本体の上部又はその蓋部の内側に取り付け、容器本体に有機性廃棄物を収納して有機性廃棄物の臭気を除去する方法。
- 容器本体の上部又はその蓋部に通気孔を設けてあり、請求項4に記載の容器詰め臭気除去剤を容器本体の上部又はその蓋部の内側に取り付けてある有機性廃棄物収納用ボックス。
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2010088302A (ja) * | 2007-11-14 | 2010-04-22 | Shinjiro Kanazawa | 臭気資化(分解)細菌の製造方法及び堆肥の製造方法及びその利用方法 |
JP2011229430A (ja) * | 2010-04-26 | 2011-11-17 | Masaji Kon | 混合菌体及び同混合菌体を用いた廃棄物の処理方法並びに処理残渣の肥料としての使用 |
-
2002
- 2002-10-29 JP JP2002314112A patent/JP2004147751A/ja active Pending
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JP2011229430A (ja) * | 2010-04-26 | 2011-11-17 | Masaji Kon | 混合菌体及び同混合菌体を用いた廃棄物の処理方法並びに処理残渣の肥料としての使用 |
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