JP2004146496A - 発光装置 - Google Patents
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Abstract
【構成】レーザダイオードチップと、レーザダイオードチップの筐体と、筐体内に配置された光触媒とを備えてなる発光装置であって、レーザダイオードチップから放出された光により前記光触媒を活性化し、発光装置内の有機物を分解してこれがチップの端面に堆積しないようにする。
【選択図】 図2
Description
【産業上の利用分野】
本発明は発光装置に関し、更に詳しくはレーザダイオードチップ(以下、「LDチップ」と略することがある)を内蔵する発光装置の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
LDチップを内蔵する発光装置は、支持体のマウント部にLDチップがマウントされ、当該LDチップをカバーするキャップが支持体に固定される構造である。キャップには窓が形成され、LDチップから放出されたレーザ光はこの窓から外部へ放出される。かかる発光装置の構造については特許文献1等を参照されたい。
【0003】
【特許文献1】
特開2000−164967
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らはこのような発光装置の性能を向上させるべく検討を重ねてきた。その結果、下記の課題を見出すに至った。
LDチップの劣化原因、信頼性低下原因の一つにLDチップの端面損傷がある。この端面損傷の原因として発光装置のパッケージ内の有機物が当該端面に堆積することが考えられる。この有機物はパッケージ内に浮遊する微量なものであるが、特にIII族窒化物系化合物半導体からなるLDチップにおいては短波長光による光反応が促進されてLDチップ端面へ有機物が堆積し易くなる。
【0005】
【課題を解決するための手段】
そこで、この発明はLDチップの端面における有機物の堆積を防止し、もって長寿命及び高信頼性の発光装置を提供することを目的とする。
この発明はかかる目的を達成するものであり、その構成は次の通りである。即ち、レーザダイオードチップと、該レーザダイオードチップの筐体と、該筐体内に配置された光触媒とを備えてなる発光装置であって、
前記レーザダイオードチップから放出された光により前記光触媒が活性化される、ことを特徴とする発光装置。
【0006】
このように構成された発光装置では、筐体内の光触媒がレーザダイオードチップからの光を受けて活性化し、筐体内の有機物を酸化分解する。よって、LDチップの端面に有機物が堆積することを確実に防止できる。
【0007】
以下、この発明の各要素について詳細に説明をする。
(レーザダイオードチップ)
LDチップには汎用的なものを用いることができる。LDチップは一般的に基板、nコンタクト層、nクラッド層、nガイド層、MQW層、pガイド層、pコンタクト層を順次積層した構成である。
LDチップのタイプは特に限定されるものではなく、電極ストライプタイプ、メサストライプタイプ、ヘテロアイソレーションタイプ等の利得導波型ストライプタイプレーザや埋込みヘテロタイプ、CSPタイプ、リブガイドタイプ等の造り付け導波ストライプタイプレーザを挙げることができる。
【0008】
III族窒化物系化合物半導体によりLDチップを形成した場合には、比較的短波長のレーザ光を生成することができる。かかるLDチップの場合、光のエネルギーが高く、またチップ自体が熱を持ちやすいのでその端面に有機物が堆積しやすかった。
ここに、III族窒化物系化合物半導体は、一般式としてAlXGaYIn1−X−YN(0≦X≦1、0≦Y≦1、0≦X+Y≦1)で表され、AlN、GaN及びInNのいわゆる2元系、AlxGa1−xN、AlxIn1−xN及びGaxIn1−xN(以上において0<x<1)のいわゆる3元系を包含する。III族元素の少なくとも一部をボロン(B)、タリウム(Tl)等で置換しても良く、また、窒素(N)の少なくとも一部もリン(P)、ヒ素(As)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)等で置換できる。
III族窒化物系化合物半導体は任意のドーパントを含むものであっても良い。n型不純物として、シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)、セレン(Se)、テルル(Te)、カーボン(C)等を用いることができる。p型不純物として、マグネシウム(Mg)、亜鉛(Zn)、ベリリウム(Be)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)等を用いることができる。なお、p型不純物をドープした後にIII族窒化物系化合物半導体を電子線照射、プラズマ照射若しくは炉等による加熱にさらすことができるが必須ではない。
【0009】
V族元素としてP(リン)やAs(ヒ素)等を用いたIII−V族化合物半導体によりLDチップを形成した場合には比較的長波長の光を生成することができる。III族元素はGa(ガリウム)、In(インジウム)、Al(アルミニウム)などから任意に選択することができる。即ち、III−V族化合物半導体層は一般式としてAlXGaYIn1−X−YV(0≦X≦1、0≦Y≦1、0≦X+Y≦1、V:V族元素)で表され、AlV、GaV及びInVのいわゆる2元系、AlxGa1−xV、AlxIn1−xV及びGaxIn1−xV(以上において0<x<1)のいわゆる3元系を包含する。III族元素の少なくとも一部をボロン(B)、タリウム(Tl)等で置換しても良く、また、VはAsやPのほかにその少なくとも一部も窒素(N)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)等で置換できる。
III−V族化合物半導体層は任意のドーパントを含むものであっても良い。n型不純物として、シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)、セレン(Se)、テルル(Te)、カーボン(C)等を用いることができる。p型不純物として、マグネシウム(Mg)、亜鉛(Zn)、ベリリウム(Be)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)等を用いることができる。
【0010】
これら半導体層は周知の成膜方法で形成することができる。例えば、有機金属気相成長法(MOCVD法)のほか、分子線結晶成長法(MBE法)、ハライド系気相成長法(HVPE法)、スパッタ法、イオンプレーティング法を用いることができる。
【0011】
このようにして形成されたLDチップにおいては、その側面からレーザ光を放出することとなるが、発光層で生成された光が全てレーザ発振に供されるものではなく、その一部はチップから漏れてしまう。この漏れた光が光触媒の活性化に用いられる。
また、LDチップはこれに印加される電流が閾値以下のときには、発光ダイオードとして機能する。このとき、チップのほぼ全周から光が放出される。この光により光触媒を活性化することができる。従ってこの発明の一の実施例では、レーザ発振前後における閾値以下の電流の印加時間を意識的に長くして、光触媒を活性化させている。
【0012】
LDチップ中にダイオード発光をする領域を作りこむことも可能である。例えばレーザ発光の発光層として多重量子井戸構造(MQW;主光生成領域)を採用し、当該MQWとは別に第2のMQW(若しくはSQW、ヘテロ構造等の発光構造;第2の光生成領域)を形成して、この部分から、レーザ光とは別に、光触媒を好適に活性化する光を放出させる。
【0013】
(筐体)
かかるLDチップは気密な筐体内に配置される。実施例の筐体はマウント部を有する支持体とキャップから構成され、当該マウント部へLDチップがマウントされ、更にリードへ電気的に接続される。
キャップには窓が設けられ、LDチップから発振されたレーザ光はこの窓を通過して外部へ放出される。窓はガラスや樹脂等、少なくともレーザ光を透過させる光透過性材料で形成される。窓の形状は任意に選択することができる。
筐体の形状は任意に選択でき、汎用的な筐体をそのまま用いることができる。筐体の材質も特に限定されないが、アルミ合金、鉄合金等の金属材料若しくは樹脂材料を用いることができる。
【0014】
(光触媒)
光触媒はLDチップから放出された光により活性化されて発光装置の筐体内に浮遊する有機物を分解できるものであればよい。つまり、光触媒はLDチップから放出される光の波長に応じて適宜選択される。例えば短波長光(例えば400nm以下の波長光)を放出するIII族窒化物系化合物半導体からなるLDチップに対応する光触媒としては、アナターゼ型の酸化チタンが好ましい。助触媒としてこれに貴金属を担持させることもできる。
この光触媒は実施例ではキャップの内周面とLDチップの上面へ層状に形成しているが、筐体内においてLDチップから放出された光が照射される部分に配置されればよい。例えば、支持体やマウント部に光触媒を担持させてもよい。この場合、当該部分の光触媒へ光が効率よく到達するようにキャップの内面を鏡面とすることができる。
【0015】
(他の実施の形態)
上記の説明では、LDチップからの光を用いて光触媒を活性化させている。光触媒を活性化させるための光を放出するLEDチップを、LDチップとは別個に、筐体内に配置することもできる。
また、光がなくとも有機物を酸化可能な触媒として特開2001−187343号公報に開示の常温浄化触媒がある。この常温浄化触媒は還元処理によって酸素欠損が導入された酸化物に貴金属を担持させたものであり、例えば酸素欠損の酸化セリウムに白金を担持させたものを用いることができる。かかる触媒を用いても、発光装置筐体中に浮遊する有機物を酸化してLDチップの端面損傷を未然に防止することができる。
【0016】
【実施例】
以下、この発明の実施例について説明する。
半導体レーザの例を図1に示す。
図1の各層のスペックは次ぎの通りである。
【0017】
上記において、第1のn型層3はn型コンタクト層、第2のn型層4はn型クラッド層、第3のn型層5はn型ガイド層、MQW層6は発光層、第1のp型層7はp型ガイド層、第2のp型層8はn型クラッド層、第3のp型層9はn型コンタクト層としてそれぞれ機能する。
【0018】
上記においてバッファ層の材料としてGaN、InN、AlGaN、InGaN及びAlInGaN等を用いることができる。さらに基板とバッファ層は半導体素子形成後に、必要に応じて、除去することもできる。
ここでn型層3、4、5にはGaN、AlGaN、InGaN若しくはAlInGaNを用いることができる。
また、n型層3、4、5にはn型不純物としてSiをドープしたが、このほかにn型不純物として、Ge、Se、Te、C等を用いることもできる。
MQW層6にはInGaN/GaNの多重量子井戸構造の他、AlGaN/AlGaInN等の多重量子井戸構造を採用することができる。量子井戸層の数は5〜30とすることが好ましい。
【0019】
p型層7、8、9はGaN、AlGaN、InGaN又はInAlGaNとすることもできる、また、p型不純物としてはMgの代わりにZn、Be、Ca、Sr、Baを用いることもできる。p型不純物の導入後に、電子線照射、炉による加熱、プラズマ照射等の周知の方法により低抵抗化することも可能である。
【0020】
上記構成の発光素子において、第1のn型層3より上のIII族窒化物系化合物半導体層はMOCVD法の他、分子線結晶成長法(MBE法)、ハライド系気相成長法(HVPE法)、スパッタ法、イオンプレーティング法等の方法で形成することもできる。
n電極12はAlを含む材料で形成され、第3のp型層9を形成した後、半導体層9〜4及び第1の半導体層3の一部をエッチングにより除去し、蒸着により表出した第1のn型層3上に形成される。
p電極13はNiを含む材料で構成されており、蒸着により形成される。
【0021】
図2Aはこの実施例の発光装置20の構造を示す。この発光装置20は支持体21にマウント部23が立設され、当該マウント部にLDチップがマウントされている。キャップ24には窓25が形成されており、LDチップで生成されたレーザ光は当該窓25から外部に放出される。
キャップ24は金属薄板からなり、その内周面に酸化チタンの粉末からなる光触媒がバインダとともに塗布されて光触媒層27を形成している。また、LDチップの上面にも同様に酸化チタンを含んだ光触媒層27が形成されている。なお、LDチップの保護膜10を酸化チタンで形成してこれに光触媒作用を付与することもできる。
【0022】
このように構成された実施例の発光装置20によれば、LDチップから放出されたレーザ光は窓25を介して外部へ放出され、発光装置としての本来の機能を奏する。そして、LDチップから漏れ出た光が光触媒層27に到達し、酸化チタンからなる光触媒を活性化させる。これにより、発光装置20内に浮遊する有機物29を酸化分解する。よって、LDチップの端面に有機物が堆積することがなく、もってLDチップひいては発光装置の寿命及び信頼性が向上する。
【0023】
なお、図2Bに示す従来例では光触媒層が存在しないので、発光装置筐体内に浮遊する有機物がLDチップの端面に堆積するおそれがある。図2Bにおいて図2Aと同一の要素には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0024】
図3は他の実施例における電流の印加パターンを示す。発光装置の構成は図2Aのものと同一である。
この実施例ではLDチップに印加する電流を制御する。即ち、レーザ発振が生じてレーザ光が生成出力される前に、閾値電流以下の電流を所定時間(1〜10秒)印加する。そして、レーザ光の生成を終了した後にも同様に閾値電流以下の電流を所定時間(1〜60秒)印加する。LDチップに印加される電流が閾値以下のときLDチップは発光ダイオードとして動作し、ほぼ全周から光を放出する。この光を用いて光触媒を活性化させ、筐体内の有機物を酸化分解する。
なお、電流印加からレーザ光の出力までのリードタイムを短くするには、図4のように電流を制御する。即ち、この例では発光装置のスイッチをオフした後のみに閾値電流以下の電流を所定時間印加し、このとき生成される光で光触媒を活性化する。
勿論、図3及び4の例のレーザ光生成時においてもLDチップから光が漏れ出て、この光により光触媒が活性化されることがある。
【0025】
この発明は、上記発明の実施の形態及び実施例の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1はLDチップの構成を示す模式図である。
【図2】図2Aはこの発明の実施例の発光装置を示し、図2Bは従来例の発光装置を示す。
【図3】図3はこの発明の一の実施例における電流印加パターンを示すチャート図である。
【図4】図4はこの発明の一の実施例における電流印加パターンを示すチャート図である。
【符号の説明】
20 発光装置
21 支持体
23 マウント部
24 キャップ
25 窓
27 光触媒層
29 有機物
Claims (5)
- レーザダイオードチップと、該レーザダイオードチップの筐体と、該筐体内に配置された光触媒とを備えてなる発光装置であって、
前記レーザダイオードチップから放出された光により前記光触媒が活性化される、ことを特徴とする発光装置。 - 前記レーザダイオードチップはIII族窒化物系化合物半導体からなる、ことを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
- 前記光触媒は前記筐体の内周面に層状に形成されている、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の発光装置。
- 前記レーザダイオードチップはレーザ光を生成する主光生成領域と、前記光触媒を活性化させるダイオード光を生成する第2の光生成領域と、を有する、ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の発光装置。
- 前記レーザダイオードチップには、レーザ発振の前に及び/又は後で、レーザ光を生成するための閾値電流よりも小さい電流が印加され、該電流に基づいて生成される光が前記光触媒を活性化する、ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の発光装置。
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