JP2004144163A - 動力伝達装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】動力伝達装置に組込まれた湿式多板クラッチの制御性の向上を図ることである。
【解決手段】エンジンの回転トルクが伝達される入力側部材1と出力軸4との間に、湿式多板クラッチ20と、その湿式多板クラッチ20の結合後に結合状態とされる二方向ローラクラッチ30とを組込む。湿式多板クラッチ20を制御するピストン25の受圧面と、そのピストン25が組込まれたシリンダ室26の閉塞端面の一方に油溝52を設け、その油溝52内に対する圧油の供給によりピストン25を移動させるようにしてピストン25の応答遅れを低減し、湿式多板クラッチ20の制御性の向上を図る。
【選択図】 図2
【解決手段】エンジンの回転トルクが伝達される入力側部材1と出力軸4との間に、湿式多板クラッチ20と、その湿式多板クラッチ20の結合後に結合状態とされる二方向ローラクラッチ30とを組込む。湿式多板クラッチ20を制御するピストン25の受圧面と、そのピストン25が組込まれたシリンダ室26の閉塞端面の一方に油溝52を設け、その油溝52内に対する圧油の供給によりピストン25を移動させるようにしてピストン25の応答遅れを低減し、湿式多板クラッチ20の制御性の向上を図る。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、エンジンの回転トルクをトランスミッションを介して車輪に伝える動力伝達装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
エンジンの回転トルクをトルクコンバータを介してトランスミッションに伝える動力伝達装置においては、トルクコンバータがクリープ機能を有しているため、スムーズな発進を可能とし、また、上りの坂道においても発進を容易としているが、入力と出力との間に滑りが生じているため、伝達効率が悪く、燃費が悪いという不都合がある。
【0003】
かかる不都合を解消するため、エンジンの回転トルクが伝達される入力軸と出力軸との間に湿式多板クラッチから成るすべり制御型クラッチと、ローラクラッチから成るくさび力制御型クラッチとを設け、発進時に、すべり制御型クラッチを結合して、入力軸の回転をすべりを生じさせつつ出力軸に伝達し、出力軸の回転トルクが設定値に達し、あるいは入・出力軸の回転数差が所定値以下になると、くさび力制御型クラッチを結合状態とし、そのくさび力制御型クラッチの結合後にすべり制御型クラッチの結合を解除するようにした動力伝達装置が提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開2000−310260号公報(第5乃至7頁、図1および図2)
【0005】
上記特許文献1に記載された動力伝達装置においては、発進時にすべり制御型クラッチを結合状態として、入力軸と出力軸の相互間ですべりを生じさせつつ回転トルクを伝達するため、スムーズな発進が得られると共に、そのすべり制御型クラッチの結合後に伝達効率の高いくさび力制御型クラッチを結合するため、すべり制御型クラッチの結合時間は短時間でよく、エネルギのロスを抑え、燃費を向上させることができるという特徴を有する。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、特許文献1に記載された動力伝達装置においては、シリンダ室に対する圧油の供給により油圧ピストンを移動させてすべり制御型クラッチを制御するようにしているが、移動開始前の状態の油圧ピストンは油圧が付与される受圧面の全体がシリンダ室の閉塞端面に密着しているため、油路からシリンダ室に圧油を供給すると、油圧ピストンは油路と対応する一部分にのみ圧力を受けて直ちに移動せず、油路内の圧力が次第に高くなるにつれて移動し始めることになる。
【0007】
このため、すべり制御型クラッチの制御に応答遅れが生じ、クラッチの制御性が悪いという不都合がある。また、油圧ポンプとして容量の大きい大型のものを必要とする不都合もある。
【0008】
そこで、油圧ピストンの受圧面とシリンダ室の閉塞端面間に間隙を設けておくと、間隙内に充満する圧油の圧力が油圧ピストンの受圧面全体に作用するため、容量の小さな小型の油圧ポンプを採用することができるが、この場合、シリンダ室内に流れ込む圧油の流量が多くなり、油圧ピストンの移動に応答遅れが生じ、すべり制御型クラッチの制御性を改善することはできない。
【0009】
この発明の課題は、圧油の供給によってクラッチを制御するようにした動力伝達装置において、クラッチを制御するピストンの応答遅れを低減し、クラッチの制御性の向上を図ることである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために、この発明においては、エンジンからの回転トルクが伝達される入力側部材と、その入力側部材と同軸上に配置され、入力側部材から伝達される回転トルクを車輪側に伝達する出力側部材と、その両部材間に組込まれてすべりを生じさせつつ入力側部材と出力側部材とを結合する制御型湿式多板クラッチと、係合子の噛み込み力を結合力とし、前記湿式多板クラッチの結合後に入力側部材と出力側部材とを結合するメカニカルタイプの制御型二方向クラッチとを有し、前記制御型湿式多板クラッチと制御型二方向クラッチのうち、少なくとも制御型湿式多板クラッチを、シリンダ室に対する圧油の供給によりピストンを摺動させて制御するようにした動力伝達装置において、前記ピストンに油圧が付与される受圧面とシリンダ室の閉塞端面の少なくとも一方に圧油の供給開始と共に圧油が流入してピストンに初期起動力を付与する油溝を設けた構成を採用したのである。
【0011】
上記のように構成すれば、シリンダ室内に圧油を供給すると、その圧油は油溝内に流入する。このとき、シリンダ室内に流れ込む圧油の流量は少なく、油溝内は圧油によって直ちに満たされることになり、その油溝が圧油によって満たされるとピストンが移動し始めることになる。
【0012】
このため、ピストンの応答性は良く、湿式多板クラッチの制御性の向上を図ることができる。
【0013】
ここで、前記油溝の底面積をS、ピストンの初期起動力をF、シリンダ室に供給される圧油の圧力をPとした場合に、S>(F/P)となるようにすると、油溝内に圧油が満たされると同時にピストンを移動させることができ、ピストンの応答性をより向上させることができる。
【0014】
また、油溝を放射状に形成すると、各油溝内に圧油を供給した際のシリンダ室内の圧力分布が良好であり、ピストンをスムーズに移動させることができる。
【0015】
上記放射状油溝の圧油流入側の端部に連通して環状の油溝を設けると、ピストン移動時、放射状の油溝および環状の油溝のそれぞれが圧油で満たされるため、圧力分布のより均一化を図ることができる。
【0016】
さらに、油溝をシリンダ室の内周部に形成された環状溝とし、その環状油溝の外周部に円錐面を設けると、前記環状油溝に供給された圧油によってピストンが移動し始め、ピストンの受圧面とシリンダ室の閉塞端面間に隙間が形成されると、環状油溝内の圧油は円錐面に案内されて上記隙間内にスムーズに流れ込むことになり、ピストンをよりスムーズに移動させることができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1および図2に示すように、エンジンからの回転トルクが伝達される入力側部材1は軸方向の両端に端板2a、2bを有する駆動輪2と、その駆動輪2のエンジン側に位置する一方の端板2aの内面中央部に取付けられた入力リング3とから成っている。
【0018】
入力側部材1と同軸上に配置された出力側部材としての出力軸4は、入力側部材1から伝達される回転トルクを図示省略したトランスミッションを介して車輪に伝達するようになっている。この出力軸4は固定配置の支持筒5内に挿入されている。
【0019】
出力軸4の駆動輪2内に位置する端部上には出力リング6が設けられている。出力リング6は前記支持筒5の端部において回転可能に支持され、前記入力リング3と軸方向で対向する一端面の中央部にはハブ7が一体に設けられている。ハブ7は出力軸4の軸端部に嵌合され、セレーション8により出力軸4に回り止めされている。上記ハブ7の外側には軸受9が設けられ、その軸受9によって入力リング3と出力リング6は相対的に回転自在に支持されている。
【0020】
また、出力リング6の一端面の外周部には入力リング3の外側に配置されるトルク伝達筒部10が一体に設けられ、かつ出力リング6の他端部外周にはフランジ11が一体に設けられている。
【0021】
出力リング6のトルク伝達筒部10と駆動輪2との間には、すべりを生じさせつつ駆動輪2と出力リング6とを結合する制御型湿式多板クラッチ20が組込まれている。また、トルク伝達筒部10と入力リング3との間にはメカニカルタイプの制御型二方向クラッチ30が組込まれている。
【0022】
図1、図2および図4に示すように、制御型湿式多板クラッチ20は、駆動輪2の内周に形成された多数の案内歯21により回り止めされ、かつ軸方向に移動可能に支持された複数の入力側の摩擦プレート22と、トルク伝達筒部10の外周に形成された多数の案内歯23により回り止めされ、かつ軸方向に移動可能に支持された出力側の摩擦プレート24を軸方向に交互に組込み、その入・出力側の摩擦プレート22、24をその一側方に設けられたピストン25の軸方向の移動により押圧して互に圧接させ、摩擦プレート22、24の接触面に作用する摩擦力を介して駆動輪2の回転トルクを出力リング6に伝えるようにしている。
【0023】
ここで、ピストン25は、出力リング6の外周およびフランジ11の外周に沿って摺動可能に支持されて、上記フランジ11との間でシリンダ室26を形成しており、そのシリンダ室26に対する圧油の供給により前進して摩擦プレート22、24を押圧し、一端部内に組込まれた弾性部材27の押圧によって後退動されるようになっている。
【0024】
シリンダ室26に対する圧油の供給に際して、出力リング6に上記シリンダ室26に連通する半径方向の通路28を形成し、前記支持筒5にはその通路28に連通する第1給油通路P1 を設け、この第1給油通路P1 からシリンダ室26内に圧油を供給するようにしている。
【0025】
図2乃至図4に示すように、制御型二方向クラッチ30は、二方向ローラクラッチから成る。この二方向ローラクラッチ30は、トルク伝達筒部10内にクラッチ外輪31を嵌合してスプライン10aにより回り止めし、そのクラッチ外輪31に形成された円筒形内面32と入力リング3の外周に設けられて上記円筒形内面32との間で楔形空間を形成する平坦なカム面33との間に係合子としてのローラ34を組込み、そのローラ34を保持器35によって保持している。
【0026】
また、入力リング3の端面に円形の凹部36を形成し、その凹部36の外周壁に切欠部37を設け、前記凹部36に円弧状のスイッチばね38を嵌合し、そのスイッチばね38の両端に形成された一対の係合片38aを上記切欠部37から保持器35の端面に形成された切欠部39内に挿入し、上記一対の係合片38aが各切欠部37、39の周方向両端を押圧する作用によって保持器35をローラ34が円筒形内面32およびカム面33に対して非係合となる中立位置に保持している。
【0027】
上記二方向ローラクラッチ30と出力リング6の相互間には、図1に示すように、その二方向ローラクラッチ30の結合および結合解除を制御する制御機構40が組込まれている。
【0028】
制御機構40は、二方向ローラクラッチ30におけるクラッチ外輪31と出力リング6の端面間にスイッチプレート41を組込み、そのスイッチプレート41に形成された係合孔42に保持器35の端面に設けられた突片43を係合して、スイッチプレート41と保持器35を相対的に回り止めし、一方、出力リング6の端面にはシリンダ室44を設け、そのシリンダ室44内にピストン45と、そのピストン45をスイッチプレート41から離反する方向に押圧する弾性部材46とを組込み、前記シリンダ室44内に対する圧油の供給によりピストン45を前進させてスイッチプレート41をクラッチ外輪31に押し付け、保持器35と入力リング3の相対的な回転によってローラ34を円筒形内面32とカム面33に係合させるようにしている。
【0029】
シリンダ室44に対する圧油の供給に際し、支持筒5に第2給油通路P2 を設け、出力リング6にはその第2給油通路P2 に連通する径方向の連通路47を形成し、上記第2給油通路P2 から連通路47に圧油を供給するようにしている。
【0030】
シリンダ室44内に組込まれたピストン45および弾性部材46は出力リング6の端面に取付けられた抜け止めプレート48によって抜け止めされている。
【0031】
ここで、ピストン45をスイッチプレート41から離反する方向に押圧する弾性部材46としてコイルスプリングを採用することができるが、コイルスプリングを採用すると動力伝達装置の軸方向長さが長くなる。そのような不都合を解消するため、弾性部材46として皿ばねを採用している。
【0032】
実施の形態で示す動力伝達装置は上記構造から成り、この動力伝達装置は、発進時に、湿式多板クラッチ20を結合状態に保持してエンジンから入力側部材1に伝達される回転トルクを上記湿式多板クラッチ20を介して出力リング6から出力軸4に伝達する。
【0033】
そして、出力軸4の回転トルクが予め設定された設定値に達し、あるいは入力側部材1と出力軸4の回転数差が所定値以下になると制御型二方向ローラクラッチ30を結合状態とし、その結合後、湿式多板クラッチ20の結合を解除する。
【0034】
湿式多板クラッチ20の結合に際しては、支持筒5に形成された第1給油通路P1 から出力リング6に設けられた通路28に圧油を供給し、その通路28からシリンダ室26内に圧油を流入させてピストン25を前進させる。そのピストン25の前進により摩擦プレート22、24は互に接触し、その接触部に作用する摩擦力によって入力側部材1の回転が出力リング6を介して出力軸4に伝達される。
【0035】
湿式多板クラッチ20はすべりを生じさせつつ入力側部材1の回転を出力リング6から出力軸4に伝達するため、出力軸4をスムーズに回転させることができる。
【0036】
湿式多板クラッチ20を介して入力側部材1の回転トルクが出力軸4に伝達されるとき、二方向ローラクラッチ30のローラ34はスイッチばね38の弾力によって図5(I)に示すように、円筒形内面32およびカム面33に非係合な中立位置に保持されているため、ローラ34および保持器35は入力側部材1の入力リング3と共に回転する。
【0037】
二方向ローラクラッチ30の結合に際しては、支持筒5に設けられた第2給油通路P2 から出力リング6に形成された連通路47を介してシリンダ室44内に圧油を供給し、その圧油によりピストン45を前進させ、スイッチプレート41をクラッチ外輪31に押し付ける。
【0038】
ここで、スイッチプレート41に形成された係合孔42には保持器35の端面に設けられた突片43が係合しているため、スイッチプレート41がクラッチ外輪31に押し付けられると、保持器35はクラッチ外輪31に対して回り止めされ、その保持器35に対して入力リング3が相対回転し、図5(II)に示すように、ローラ34がクラッチ外輪31の円筒形内面32および入力リング3のカム面33に係合し、入力リング3の回転は二方向ローラクラッチ30を介して出力リング6から出力軸4に伝達される。
【0039】
上記二方向ローラクラッチ30はメカニカルタイプのクラッチであるため、伝達効率は高く、その結果、燃費の向上を図ることができる。
【0040】
上記のような動力伝達装置においては、自動車をスムーズに発進させるために、湿式多板クラッチ20および二方向ローラクラッチ30の制御性を向上させることが重要である。図6乃至図8では湿式多板クラッチ20の制御性を向上させるため、制御用ピストン25の応答遅れの低減化を図るようにしている。
【0041】
ここで、図6(I)、(II)では、ピストン25の受圧面25aの内周にチャンファ50を形成して、そのチャンファ50とシリンダ室26の閉塞端面間に環状空間51を形成し、前記受圧面25aに放射状の油溝52を設け、弾性部材27の押圧によりピストン25が後退して、受圧面25aがシリンダ室26の閉塞端面に密着する状態で、シリンダ室26に油溝52の容積に相当する油室が確保されるようにしている。
【0042】
上記のように構成すると、第1給油通路P1 から通路28に圧油を供給すると、その圧油は環状空間51から各油溝52内に流れ込み、各油溝52内に圧油が充満すると、ピストン25の各油溝52の底面に油圧が付与され、ピストン25が移動し始める。
【0043】
ここで、ピストン25を押圧する弾性部材27の初期弾性力をFK 、各油溝52の底面の面積の総和をS1 、圧油の圧力をPとすると、FK <P×S1 となるように油溝52の大きさおよび数を規制することによって、各油溝52が圧油で満たされるとピストン25は直ちに移動することになる。
【0044】
また、ピストン25が移動してシリンダ室26の閉塞端面から離れると、ピストン25の受圧面25aとシリンダ室26の閉塞端面間に形成される隙間に圧油が流入し、ピストン25を押す押圧力はP×S2 となる。ここで、S2 は、ピストン25の受圧面25aと各油溝52の底面の面積の総和であり、上記押圧力(P×S2 )はストロークに比例して増加する弾性部材27の弾性力を上回り、ピストン25は湿式多板クラッチ20が制御する位置まで確実に移動する。
【0045】
このように、初期位置からピストン25を移動させるためには、油溝52に圧油を充満させるだけでよく、その圧油の量は比較的少量であるため、ピストン25の応答性は良好であり、湿式多板クラッチ20の制御性の向上を図ることができる。
【0046】
また、油溝52を放射状に形成することによって、シリンダ室26内の圧油の圧力分布が均一化されるため、ピストン25をスムーズに移動させることができる。
【0047】
図7(I)、(II)では、ピストン25の受圧面25aの内周部に放射状の各油溝52に連通する環状の油溝53を設けた点で図6(I)、(II)に示す場合と相違している。
【0048】
上記のように、環状の油溝53を設けると、ピストン25の移動時、放射状油溝52および環状油溝53のそれぞれが圧油によって満たされるため、シリンダ室26内の圧力分布のより均一化を図ることができる。
【0049】
図8(I)、(II)では、ピストン25の受圧面25aの内周部に環状の油溝54を設け、その油溝54の外周部に円錐面55を形成している。
【0050】
上記のように、油溝54を環状とし、その外周部に円錐面55を設けることによって、ピストン25がシリンダ室26の閉塞端面から離れると同時に、油溝54内の圧油は円錐面55に案内されてピストン25の受圧面25aとシリンダ室26の閉塞端面間に形成される隙間内にスムーズに流れ、ピストン25をよりスムーズに移動させることができる。
【0051】
なお、図7および図8に示すいずれの例においても、FK <P×S1 となるよう油溝53、54の大きさが規制されている。
【0052】
図6乃至図8で示す例では、ピストン25の受圧面25aに油溝52、53、54を形成したが、シリンダ室26の閉塞端面側に油溝を設けるようにしてもよい。
【0053】
上記のような油溝は、二方向ローラクラッチ30を制御するピストン45の受圧面と、そのピストン45が組込まれたシリンダ室44の閉塞端面の少なくとも一方に設けるようにしてもよい。
【0054】
【発明の効果】
以上のように、この発明においては、湿式多板クラッチを制御するピストンの受圧面とそのピストンが組込まれたシリンダ室の閉塞端面における少なくとも一方に油溝を形成したことにより、ピストンの応答遅れを軽減して応答性を向上させることができ、湿式多板クラッチの制御性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明に係る動力伝達装置の実施の形態を示す縦断正面図
【図2】図1の一部を拡大して示す断面図
【図3】図2のIII −III 線に沿った断面図
【図4】図2のIV−IV線に沿った断面図
【図5】(I)、(II)は二方向ローラクラッチの作動状態を示す断面図
【図6】(I)は湿式多板クラッチの制御機構を示す断面図、(II)はピストンの一部分を示す正面図
【図7】(I)は湿式多板クラッチの制御機構の他の例を示す断面図、(II)はピストンの一部分を示す正面図
【図8】(I)は湿式多板クラッチの制御機構のさらに他の例を示す断面図、(II)はピストンの一部分を示す正面図
【符号の説明】
1 入力側部材
4 出力軸(出力側部材)
20 制御型湿式多板クラッチ
25 ピストン
25a 受圧面
26 シリンダ室
30 制御型二方向ローラクラッチ(制御型二方向クラッチ)
34 ローラ(係合子)
52、53、54 油溝
55 円錐面
【発明の属する技術分野】
この発明は、エンジンの回転トルクをトランスミッションを介して車輪に伝える動力伝達装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
エンジンの回転トルクをトルクコンバータを介してトランスミッションに伝える動力伝達装置においては、トルクコンバータがクリープ機能を有しているため、スムーズな発進を可能とし、また、上りの坂道においても発進を容易としているが、入力と出力との間に滑りが生じているため、伝達効率が悪く、燃費が悪いという不都合がある。
【0003】
かかる不都合を解消するため、エンジンの回転トルクが伝達される入力軸と出力軸との間に湿式多板クラッチから成るすべり制御型クラッチと、ローラクラッチから成るくさび力制御型クラッチとを設け、発進時に、すべり制御型クラッチを結合して、入力軸の回転をすべりを生じさせつつ出力軸に伝達し、出力軸の回転トルクが設定値に達し、あるいは入・出力軸の回転数差が所定値以下になると、くさび力制御型クラッチを結合状態とし、そのくさび力制御型クラッチの結合後にすべり制御型クラッチの結合を解除するようにした動力伝達装置が提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開2000−310260号公報(第5乃至7頁、図1および図2)
【0005】
上記特許文献1に記載された動力伝達装置においては、発進時にすべり制御型クラッチを結合状態として、入力軸と出力軸の相互間ですべりを生じさせつつ回転トルクを伝達するため、スムーズな発進が得られると共に、そのすべり制御型クラッチの結合後に伝達効率の高いくさび力制御型クラッチを結合するため、すべり制御型クラッチの結合時間は短時間でよく、エネルギのロスを抑え、燃費を向上させることができるという特徴を有する。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、特許文献1に記載された動力伝達装置においては、シリンダ室に対する圧油の供給により油圧ピストンを移動させてすべり制御型クラッチを制御するようにしているが、移動開始前の状態の油圧ピストンは油圧が付与される受圧面の全体がシリンダ室の閉塞端面に密着しているため、油路からシリンダ室に圧油を供給すると、油圧ピストンは油路と対応する一部分にのみ圧力を受けて直ちに移動せず、油路内の圧力が次第に高くなるにつれて移動し始めることになる。
【0007】
このため、すべり制御型クラッチの制御に応答遅れが生じ、クラッチの制御性が悪いという不都合がある。また、油圧ポンプとして容量の大きい大型のものを必要とする不都合もある。
【0008】
そこで、油圧ピストンの受圧面とシリンダ室の閉塞端面間に間隙を設けておくと、間隙内に充満する圧油の圧力が油圧ピストンの受圧面全体に作用するため、容量の小さな小型の油圧ポンプを採用することができるが、この場合、シリンダ室内に流れ込む圧油の流量が多くなり、油圧ピストンの移動に応答遅れが生じ、すべり制御型クラッチの制御性を改善することはできない。
【0009】
この発明の課題は、圧油の供給によってクラッチを制御するようにした動力伝達装置において、クラッチを制御するピストンの応答遅れを低減し、クラッチの制御性の向上を図ることである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために、この発明においては、エンジンからの回転トルクが伝達される入力側部材と、その入力側部材と同軸上に配置され、入力側部材から伝達される回転トルクを車輪側に伝達する出力側部材と、その両部材間に組込まれてすべりを生じさせつつ入力側部材と出力側部材とを結合する制御型湿式多板クラッチと、係合子の噛み込み力を結合力とし、前記湿式多板クラッチの結合後に入力側部材と出力側部材とを結合するメカニカルタイプの制御型二方向クラッチとを有し、前記制御型湿式多板クラッチと制御型二方向クラッチのうち、少なくとも制御型湿式多板クラッチを、シリンダ室に対する圧油の供給によりピストンを摺動させて制御するようにした動力伝達装置において、前記ピストンに油圧が付与される受圧面とシリンダ室の閉塞端面の少なくとも一方に圧油の供給開始と共に圧油が流入してピストンに初期起動力を付与する油溝を設けた構成を採用したのである。
【0011】
上記のように構成すれば、シリンダ室内に圧油を供給すると、その圧油は油溝内に流入する。このとき、シリンダ室内に流れ込む圧油の流量は少なく、油溝内は圧油によって直ちに満たされることになり、その油溝が圧油によって満たされるとピストンが移動し始めることになる。
【0012】
このため、ピストンの応答性は良く、湿式多板クラッチの制御性の向上を図ることができる。
【0013】
ここで、前記油溝の底面積をS、ピストンの初期起動力をF、シリンダ室に供給される圧油の圧力をPとした場合に、S>(F/P)となるようにすると、油溝内に圧油が満たされると同時にピストンを移動させることができ、ピストンの応答性をより向上させることができる。
【0014】
また、油溝を放射状に形成すると、各油溝内に圧油を供給した際のシリンダ室内の圧力分布が良好であり、ピストンをスムーズに移動させることができる。
【0015】
上記放射状油溝の圧油流入側の端部に連通して環状の油溝を設けると、ピストン移動時、放射状の油溝および環状の油溝のそれぞれが圧油で満たされるため、圧力分布のより均一化を図ることができる。
【0016】
さらに、油溝をシリンダ室の内周部に形成された環状溝とし、その環状油溝の外周部に円錐面を設けると、前記環状油溝に供給された圧油によってピストンが移動し始め、ピストンの受圧面とシリンダ室の閉塞端面間に隙間が形成されると、環状油溝内の圧油は円錐面に案内されて上記隙間内にスムーズに流れ込むことになり、ピストンをよりスムーズに移動させることができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1および図2に示すように、エンジンからの回転トルクが伝達される入力側部材1は軸方向の両端に端板2a、2bを有する駆動輪2と、その駆動輪2のエンジン側に位置する一方の端板2aの内面中央部に取付けられた入力リング3とから成っている。
【0018】
入力側部材1と同軸上に配置された出力側部材としての出力軸4は、入力側部材1から伝達される回転トルクを図示省略したトランスミッションを介して車輪に伝達するようになっている。この出力軸4は固定配置の支持筒5内に挿入されている。
【0019】
出力軸4の駆動輪2内に位置する端部上には出力リング6が設けられている。出力リング6は前記支持筒5の端部において回転可能に支持され、前記入力リング3と軸方向で対向する一端面の中央部にはハブ7が一体に設けられている。ハブ7は出力軸4の軸端部に嵌合され、セレーション8により出力軸4に回り止めされている。上記ハブ7の外側には軸受9が設けられ、その軸受9によって入力リング3と出力リング6は相対的に回転自在に支持されている。
【0020】
また、出力リング6の一端面の外周部には入力リング3の外側に配置されるトルク伝達筒部10が一体に設けられ、かつ出力リング6の他端部外周にはフランジ11が一体に設けられている。
【0021】
出力リング6のトルク伝達筒部10と駆動輪2との間には、すべりを生じさせつつ駆動輪2と出力リング6とを結合する制御型湿式多板クラッチ20が組込まれている。また、トルク伝達筒部10と入力リング3との間にはメカニカルタイプの制御型二方向クラッチ30が組込まれている。
【0022】
図1、図2および図4に示すように、制御型湿式多板クラッチ20は、駆動輪2の内周に形成された多数の案内歯21により回り止めされ、かつ軸方向に移動可能に支持された複数の入力側の摩擦プレート22と、トルク伝達筒部10の外周に形成された多数の案内歯23により回り止めされ、かつ軸方向に移動可能に支持された出力側の摩擦プレート24を軸方向に交互に組込み、その入・出力側の摩擦プレート22、24をその一側方に設けられたピストン25の軸方向の移動により押圧して互に圧接させ、摩擦プレート22、24の接触面に作用する摩擦力を介して駆動輪2の回転トルクを出力リング6に伝えるようにしている。
【0023】
ここで、ピストン25は、出力リング6の外周およびフランジ11の外周に沿って摺動可能に支持されて、上記フランジ11との間でシリンダ室26を形成しており、そのシリンダ室26に対する圧油の供給により前進して摩擦プレート22、24を押圧し、一端部内に組込まれた弾性部材27の押圧によって後退動されるようになっている。
【0024】
シリンダ室26に対する圧油の供給に際して、出力リング6に上記シリンダ室26に連通する半径方向の通路28を形成し、前記支持筒5にはその通路28に連通する第1給油通路P1 を設け、この第1給油通路P1 からシリンダ室26内に圧油を供給するようにしている。
【0025】
図2乃至図4に示すように、制御型二方向クラッチ30は、二方向ローラクラッチから成る。この二方向ローラクラッチ30は、トルク伝達筒部10内にクラッチ外輪31を嵌合してスプライン10aにより回り止めし、そのクラッチ外輪31に形成された円筒形内面32と入力リング3の外周に設けられて上記円筒形内面32との間で楔形空間を形成する平坦なカム面33との間に係合子としてのローラ34を組込み、そのローラ34を保持器35によって保持している。
【0026】
また、入力リング3の端面に円形の凹部36を形成し、その凹部36の外周壁に切欠部37を設け、前記凹部36に円弧状のスイッチばね38を嵌合し、そのスイッチばね38の両端に形成された一対の係合片38aを上記切欠部37から保持器35の端面に形成された切欠部39内に挿入し、上記一対の係合片38aが各切欠部37、39の周方向両端を押圧する作用によって保持器35をローラ34が円筒形内面32およびカム面33に対して非係合となる中立位置に保持している。
【0027】
上記二方向ローラクラッチ30と出力リング6の相互間には、図1に示すように、その二方向ローラクラッチ30の結合および結合解除を制御する制御機構40が組込まれている。
【0028】
制御機構40は、二方向ローラクラッチ30におけるクラッチ外輪31と出力リング6の端面間にスイッチプレート41を組込み、そのスイッチプレート41に形成された係合孔42に保持器35の端面に設けられた突片43を係合して、スイッチプレート41と保持器35を相対的に回り止めし、一方、出力リング6の端面にはシリンダ室44を設け、そのシリンダ室44内にピストン45と、そのピストン45をスイッチプレート41から離反する方向に押圧する弾性部材46とを組込み、前記シリンダ室44内に対する圧油の供給によりピストン45を前進させてスイッチプレート41をクラッチ外輪31に押し付け、保持器35と入力リング3の相対的な回転によってローラ34を円筒形内面32とカム面33に係合させるようにしている。
【0029】
シリンダ室44に対する圧油の供給に際し、支持筒5に第2給油通路P2 を設け、出力リング6にはその第2給油通路P2 に連通する径方向の連通路47を形成し、上記第2給油通路P2 から連通路47に圧油を供給するようにしている。
【0030】
シリンダ室44内に組込まれたピストン45および弾性部材46は出力リング6の端面に取付けられた抜け止めプレート48によって抜け止めされている。
【0031】
ここで、ピストン45をスイッチプレート41から離反する方向に押圧する弾性部材46としてコイルスプリングを採用することができるが、コイルスプリングを採用すると動力伝達装置の軸方向長さが長くなる。そのような不都合を解消するため、弾性部材46として皿ばねを採用している。
【0032】
実施の形態で示す動力伝達装置は上記構造から成り、この動力伝達装置は、発進時に、湿式多板クラッチ20を結合状態に保持してエンジンから入力側部材1に伝達される回転トルクを上記湿式多板クラッチ20を介して出力リング6から出力軸4に伝達する。
【0033】
そして、出力軸4の回転トルクが予め設定された設定値に達し、あるいは入力側部材1と出力軸4の回転数差が所定値以下になると制御型二方向ローラクラッチ30を結合状態とし、その結合後、湿式多板クラッチ20の結合を解除する。
【0034】
湿式多板クラッチ20の結合に際しては、支持筒5に形成された第1給油通路P1 から出力リング6に設けられた通路28に圧油を供給し、その通路28からシリンダ室26内に圧油を流入させてピストン25を前進させる。そのピストン25の前進により摩擦プレート22、24は互に接触し、その接触部に作用する摩擦力によって入力側部材1の回転が出力リング6を介して出力軸4に伝達される。
【0035】
湿式多板クラッチ20はすべりを生じさせつつ入力側部材1の回転を出力リング6から出力軸4に伝達するため、出力軸4をスムーズに回転させることができる。
【0036】
湿式多板クラッチ20を介して入力側部材1の回転トルクが出力軸4に伝達されるとき、二方向ローラクラッチ30のローラ34はスイッチばね38の弾力によって図5(I)に示すように、円筒形内面32およびカム面33に非係合な中立位置に保持されているため、ローラ34および保持器35は入力側部材1の入力リング3と共に回転する。
【0037】
二方向ローラクラッチ30の結合に際しては、支持筒5に設けられた第2給油通路P2 から出力リング6に形成された連通路47を介してシリンダ室44内に圧油を供給し、その圧油によりピストン45を前進させ、スイッチプレート41をクラッチ外輪31に押し付ける。
【0038】
ここで、スイッチプレート41に形成された係合孔42には保持器35の端面に設けられた突片43が係合しているため、スイッチプレート41がクラッチ外輪31に押し付けられると、保持器35はクラッチ外輪31に対して回り止めされ、その保持器35に対して入力リング3が相対回転し、図5(II)に示すように、ローラ34がクラッチ外輪31の円筒形内面32および入力リング3のカム面33に係合し、入力リング3の回転は二方向ローラクラッチ30を介して出力リング6から出力軸4に伝達される。
【0039】
上記二方向ローラクラッチ30はメカニカルタイプのクラッチであるため、伝達効率は高く、その結果、燃費の向上を図ることができる。
【0040】
上記のような動力伝達装置においては、自動車をスムーズに発進させるために、湿式多板クラッチ20および二方向ローラクラッチ30の制御性を向上させることが重要である。図6乃至図8では湿式多板クラッチ20の制御性を向上させるため、制御用ピストン25の応答遅れの低減化を図るようにしている。
【0041】
ここで、図6(I)、(II)では、ピストン25の受圧面25aの内周にチャンファ50を形成して、そのチャンファ50とシリンダ室26の閉塞端面間に環状空間51を形成し、前記受圧面25aに放射状の油溝52を設け、弾性部材27の押圧によりピストン25が後退して、受圧面25aがシリンダ室26の閉塞端面に密着する状態で、シリンダ室26に油溝52の容積に相当する油室が確保されるようにしている。
【0042】
上記のように構成すると、第1給油通路P1 から通路28に圧油を供給すると、その圧油は環状空間51から各油溝52内に流れ込み、各油溝52内に圧油が充満すると、ピストン25の各油溝52の底面に油圧が付与され、ピストン25が移動し始める。
【0043】
ここで、ピストン25を押圧する弾性部材27の初期弾性力をFK 、各油溝52の底面の面積の総和をS1 、圧油の圧力をPとすると、FK <P×S1 となるように油溝52の大きさおよび数を規制することによって、各油溝52が圧油で満たされるとピストン25は直ちに移動することになる。
【0044】
また、ピストン25が移動してシリンダ室26の閉塞端面から離れると、ピストン25の受圧面25aとシリンダ室26の閉塞端面間に形成される隙間に圧油が流入し、ピストン25を押す押圧力はP×S2 となる。ここで、S2 は、ピストン25の受圧面25aと各油溝52の底面の面積の総和であり、上記押圧力(P×S2 )はストロークに比例して増加する弾性部材27の弾性力を上回り、ピストン25は湿式多板クラッチ20が制御する位置まで確実に移動する。
【0045】
このように、初期位置からピストン25を移動させるためには、油溝52に圧油を充満させるだけでよく、その圧油の量は比較的少量であるため、ピストン25の応答性は良好であり、湿式多板クラッチ20の制御性の向上を図ることができる。
【0046】
また、油溝52を放射状に形成することによって、シリンダ室26内の圧油の圧力分布が均一化されるため、ピストン25をスムーズに移動させることができる。
【0047】
図7(I)、(II)では、ピストン25の受圧面25aの内周部に放射状の各油溝52に連通する環状の油溝53を設けた点で図6(I)、(II)に示す場合と相違している。
【0048】
上記のように、環状の油溝53を設けると、ピストン25の移動時、放射状油溝52および環状油溝53のそれぞれが圧油によって満たされるため、シリンダ室26内の圧力分布のより均一化を図ることができる。
【0049】
図8(I)、(II)では、ピストン25の受圧面25aの内周部に環状の油溝54を設け、その油溝54の外周部に円錐面55を形成している。
【0050】
上記のように、油溝54を環状とし、その外周部に円錐面55を設けることによって、ピストン25がシリンダ室26の閉塞端面から離れると同時に、油溝54内の圧油は円錐面55に案内されてピストン25の受圧面25aとシリンダ室26の閉塞端面間に形成される隙間内にスムーズに流れ、ピストン25をよりスムーズに移動させることができる。
【0051】
なお、図7および図8に示すいずれの例においても、FK <P×S1 となるよう油溝53、54の大きさが規制されている。
【0052】
図6乃至図8で示す例では、ピストン25の受圧面25aに油溝52、53、54を形成したが、シリンダ室26の閉塞端面側に油溝を設けるようにしてもよい。
【0053】
上記のような油溝は、二方向ローラクラッチ30を制御するピストン45の受圧面と、そのピストン45が組込まれたシリンダ室44の閉塞端面の少なくとも一方に設けるようにしてもよい。
【0054】
【発明の効果】
以上のように、この発明においては、湿式多板クラッチを制御するピストンの受圧面とそのピストンが組込まれたシリンダ室の閉塞端面における少なくとも一方に油溝を形成したことにより、ピストンの応答遅れを軽減して応答性を向上させることができ、湿式多板クラッチの制御性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明に係る動力伝達装置の実施の形態を示す縦断正面図
【図2】図1の一部を拡大して示す断面図
【図3】図2のIII −III 線に沿った断面図
【図4】図2のIV−IV線に沿った断面図
【図5】(I)、(II)は二方向ローラクラッチの作動状態を示す断面図
【図6】(I)は湿式多板クラッチの制御機構を示す断面図、(II)はピストンの一部分を示す正面図
【図7】(I)は湿式多板クラッチの制御機構の他の例を示す断面図、(II)はピストンの一部分を示す正面図
【図8】(I)は湿式多板クラッチの制御機構のさらに他の例を示す断面図、(II)はピストンの一部分を示す正面図
【符号の説明】
1 入力側部材
4 出力軸(出力側部材)
20 制御型湿式多板クラッチ
25 ピストン
25a 受圧面
26 シリンダ室
30 制御型二方向ローラクラッチ(制御型二方向クラッチ)
34 ローラ(係合子)
52、53、54 油溝
55 円錐面
Claims (5)
- エンジンからの回転トルクが伝達される入力側部材と、その入力側部材と同軸上に配置され、入力側部材から伝達される回転トルクを車輪側に伝達する出力側部材と、その両部材間に組込まれてすべりを生じさせつつ入力側部材と出力側部材とを結合する制御型湿式多板クラッチと、係合子の噛み込み力を結合力とし、前記湿式多板クラッチの結合後に入力側部材と出力側部材とを結合するメカニカルタイプの制御型二方向クラッチとを有し、前記制御型湿式多板クラッチと制御型二方向クラッチのうち、少なくとも制御型湿式多板クラッチを、シリンダ室に対する圧油の供給によりピストンを摺動させて制御するようにした動力伝達装置において、前記ピストンに油圧が付与される受圧面とシリンダ室の閉塞端面の少なくとも一方に圧油の供給開始と共に圧油が流入してピストンに初期起動力を付与する油溝を設けたことを特徴とする動力伝達装置。
- 前記油溝の底面積をS、ピストンの初期起動力をF、シリンダ室に供給される圧油の圧力をPとした場合に、S>(F/P)となるようにしたことを特徴とする請求項1に記載の動力伝達装置。
- 前記油溝を放射状に形成した請求項1又は2に記載の動力伝達装置。
- 前記放射状油溝の圧油流入側の端部に連通して環状の油溝を設けた請求項3に記載の動力伝達装置。
- 前記油溝が、シリンダ室の内周部に形成された環状溝から成り、その環状油溝の外周部に円錐面を設けた請求項1又は2に記載の動力伝達装置。
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2002
- 2002-10-23 JP JP2002308425A patent/JP2004144163A/ja active Pending
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