JP2004143485A - 金属微粉の製造方法及び製造装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】反応管内部で金属ハロゲン化物ガスを還元性ガスで還元して、粗大粒子が極力混在しない金属微粉の製造技術を提供する。
【解決手段】反応管1の内部に金属ハロゲン化物ガス含有ガス20を流し、反応管1の内部にガス噴射ノズル17を設けて還元性ガス19aを噴射させ、還元性ガス19aの噴射方向と金属ハロゲン化物ガスを含有するガス20の気流方向とがなす角度θ1を、30゜超90゜未満とする。上記において、金属ハロゲン化物ガスを含有するガス20と還元性ガス19aとを入れ替えて、両ガスの気流方向がなす角度θ2を、30゜超90゜以下とする。上記において、θ1又はθ2を45゜乃至85゜とすることが好ましい。また、金属ハロゲン化物ガス11としてNiCl2ガスを、還元性ガスとして水素ガスを使用することができる。
【選択図】 図1
【解決手段】反応管1の内部に金属ハロゲン化物ガス含有ガス20を流し、反応管1の内部にガス噴射ノズル17を設けて還元性ガス19aを噴射させ、還元性ガス19aの噴射方向と金属ハロゲン化物ガスを含有するガス20の気流方向とがなす角度θ1を、30゜超90゜未満とする。上記において、金属ハロゲン化物ガスを含有するガス20と還元性ガス19aとを入れ替えて、両ガスの気流方向がなす角度θ2を、30゜超90゜以下とする。上記において、θ1又はθ2を45゜乃至85゜とすることが好ましい。また、金属ハロゲン化物ガス11としてNiCl2ガスを、還元性ガスとして水素ガスを使用することができる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子部品等に使用される導電ペーストフィラー、積層セラミックスコンデンサー等の内部電極材料、チタン材の接合材又は触媒等に適したCr、Fe、Cu、Ni、Co、Ag又はW等の金属微粉を気相化学反応により合成する金属微粉の製造方法及び製造装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
積層セラミックスコンデンサー(以下、MLCC(Multilayer Ceramic Capacitor)という)の内部電極材料としては、従来Pd又はAg−Pd等の粉末が使用されていたが、このような貴金属粉を使用したのではコストが高くなるという問題点があり、特に携帯電話を始めとする小型電子機器の普及によりMLCCの需要が大幅に増加するにつれて、貴金属に替る安価で信頼性の高い電極材料として、Ni粉末が使用されるようになった。
【0003】
MLCCは、セラミックスの誘電体層と金属の内部電極層とを多層化したものであるが、MLCCの小型化且つ大容量化という観点から、内部電極層の薄層化及び低抵抗化に対する要求が徐々に進み、現在では粒径が1μm以下のNi粉、更には粒径が0.5乃至0.2μmのNi超微粉が主流となっている。なお、MLCC用金属超微粉に求められる特性としては、下記(1)乃至(4)に示すものがある。(1)ペーストに良く分散し、乾燥後に均一で高密度の金属膜が得られることが必要である。そのためには、凝集要素が少ない表面性状を有し、タップ密度及び圧縮密度が大きいことが必要である。(2)脱媒温度である300乃至500℃付近で耐酸化性が優れていることが必要である。そのためには、単結晶のように表面積が小さい球形であることが必要である。(3)焼結開始温度が誘電体の焼結開始温度に近いことが必要である。(4)電極としての金属膜を薄層化することができ、表面粗さが小さいことが必要である。そのためには、粒度分布が狭く、ペーストへの分散性がよいこと、及び1μm以上の粗粒を含まないことが必要である。
【0004】
上述したような特性を有するNi超微粉を工業的レベルで製造する方法は、塩化ニッケルガスを気相中で水素還元する気相化学反応法と、塩化ニッケル水溶液をヒドラジン等の還元剤で還元する液相還元析出法とに大別することができ、特に気相化学反応法の中の気相水素還元法により金属Ni粉を合成した場合には、粒子の球状性及び分散性が優れた高品質のNi超微粉が得られるので、この製造方法により得られるNi超微粉は緻密で欠陥の少ない高信頼性電極材料としての需要が拡大している。
【0005】
気相化学反応法によりNi超微粉又はその他の種々の金属微粉を作製する方法が種々提案されている。これらの提案の中には、金属微粉の合成反応を起こさせる反応管の内部に還元性ガスの導入管を設置し、この導入管の外側に原料ガスとして塩化ニッケルガス等の金属ハロゲン化物ガスを流すか、又は反応管の内部に原料ガスの導入管を設置し、この導入管の外側に還元性ガスを流しながら、両ガスの界面部においてNi等金属元素を気相析出させ、その超微粉を得るものがある。この場合、内側を流す還元性ガスと外側を流す原料ガス、又は内側を流す原料ガスと外側を流す還元性ガスとを、平行又は交差させ、また原料ガスの濃度及び合成温度等を制御することにより、粒度分布が狭い球状の金属超微粉粒子が得られるとしている。
【0006】
例えば、特開2001−89804号公報には、金属塩化物ガスを還元炉内に供給すると共に、このガス気流の横断面中心部に還元性ガスを還元炉の長手方向に平行方向に流すに際して、還元性ガスの吐出口を金属塩化物ガスの吐出口よりも吐出方向の後方側、即ち上流側に配置し、金属塩化物ガスの供給ノズルを還元ガス供給ノズルの外側に複数本配置して、還元性ガス供給ノズルからのガス吐出方向に対して、15乃至30゜傾斜させる(同公報、段落番号0017参照)こと、還元ガスであるH2ガスの吐出量は、金属塩化物ガスとの気相化学反応に必要な理論値の40乃至120モル%とし、また、金属塩化物ガスであるNiCl2ガスの吐出線速度は、0.3乃至5.0m/秒であることが好ましいこと、一方、還元温度は950乃至1200の範囲内で適宜の温度、例えば1000℃で行うことが記載されている。更に、還元炉内へのガスの供給方式について、還元炉頂部に外管と内管とからなる二重管を設け、その外管から金属塩化物ガスを、内管から還元性ガスを夫々炉内へ供給することが記載されている。
【0007】
【特許文献1】
特開2001−89804号公報(第3乃至4頁の段落番号0016乃至0023、図1乃至4)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述の従来技術によれば、平均粒径が例えば0.3μmの金属Ni粉末が得られ、平均粒径を有するNi微粉が大半を占める。そして、この平均粒径の数倍の粒径を有する粗大粒子も含まれることが多い。このようなNiの粗大粒子が存在すると、前述したMLCCの製造過程において、内部電極材としてペーストに分散させ、乾燥後に均一で高密度の金属膜を得難い等の問題点があり、特に平均粒径が小さいNi超微粉、例えば0.2μm前後の平均粒径のNi粉で薄層化をする際には、重大な障害になるという問題点がある。
【0009】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであって、気相化学反応法により平均粒径の数倍の粒径を有する粗大粒子が極力存在しない金属微粉の製造方法及び製造装置を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本願第1発明に係る金属微粉の製造方法は、反応管内を通流する金属ハロゲン化物ガスを還元性ガスにより還元して金属微粉を製造する方法において、反応管の内部に金属ハロゲン化物ガスを含有する原料ガスを流し、前記反応管内にノズル本体と気流方向調整部材とからなるガス噴射ノズルを設け、前記ノズル本体と前記気流方向調整部材との隙間から、前記原料ガスの気流方向とのなす角度θ1が、30゜超90゜未満となる方向に還元性ガスを噴射することを特徴とする。この発明において、前記θ1は45゜乃至85゜であることが好ましい。また、上記金属ハロゲン化物ガスとして塩化ニッケルガスを使用することができ、上記還元性ガスとして水素ガスを使用することができる。
【0011】
本願第2発明に係る金属微粉の製造方法は、反応管内を通流する金属ハロゲン化物ガスを還元性ガスにより還元して金属微粉を製造する方法において、反応管の内部に還元性ガスを流し、前記反応管内にノズル本体と気流方向調整部材とからなるガス噴射ノズルを設け、前記ノズル本体と前記気流方向調整部材との隙間から、前記還元性ガスの気流方向とのなす角度θ2が、30゜超90゜以下となる方向に、金属ハロゲン化物ガスを含有する原料ガスを噴射することを特徴とする。この発明において、前記θ2は45゜乃至85゜であることが好ましい。また、上記金属ハロゲン化物ガスとして塩化ニッケルガスを使用することができ、上記還元性ガスとして水素ガスを使用することができる。
【0012】
本願第3発明に係る金属微粉の製造装置は、還元反応部における反応管の内部の気相中で、金属ハロゲン化物ガスの気流に還元性ガスの気流を混合し、気相化学反応により金属微粉を製造する金属微粉の製造装置において、反応管内に還元性ガス噴射ノズルが設けられており、この噴射ノズルはノズル本体と気流方向調整部材とからなり、前記ノズル本体と前記気流方向調整部材との隙間から噴射されたガスの噴射方向は、前記反応管内を流れる金属ハロゲン化物ガスを含有する原料ガスの気流の方向となす角度θ1が30゜超90゜未満となるものであることを特徴とする。この発明において、前記θ1は45゜乃至85゜であることが好ましい。
【0013】
本願第4発明に係る金属微粉の製造装置は、還元反応部における反応管の内部の気相中で、還元性ガスの気流に金属ハロゲン化物ガスの気流を混合し、気相化学反応により金属微粉を製造する金属微粉の製造装置において、反応管内に金属ハロゲン化物ガスを含有する原料ガスの噴射ノズルが設けられており、この噴射ノズルはノズル本体と気流方向調整部材とからなり、前記ノズル本体と前記気流方向調整部材との隙間から噴射されたガスの噴射方向は、前記反応管内を流れる還元性ガスの気流の方向となす角度θ2が30゜超90゜以下となるものであることを特徴とする。この発明において、前記θ2は45゜乃至85゜であることが好ましい。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態に係る金属微粉の製造方法及び製造装置について説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係る金属微粉の製造装置を示す図であって、製造装置の反応管長手方向の軸芯線を含む鉛直断面図である。反応管1は円筒状石英製であり、これには、キャリアガス導入ゾーン2、原料気化ゾーン3、ガス混合ゾーン4、気相反応ゾーン5及び冷却ゾーン6が配設されている。キャリアガス導入ゾーン2は、同図で左側に相当する反応管1の最も上流部に配設され、その下流側に向かって順に、原料を気化させる原料気化ゾーン3、気化した原料ガスとキャリアガスとを混合するガス混合ゾーン4、混合ガス中の原料ガスと還元性ガスとで気相化学反応をさせる気相反応ゾーン5、並びに反応後の生成物及び未反応ガスを冷却する冷却ゾーン6が配設されている。冷却ゾーン6を通過した反応管1の出口1bの下流側には金属粉末捕集器7及び金属粉末回収装置8が接続されており、生成した金属粉をこれらにより捕集し、回収する。上記原料ガスとしては、NiCl2ガス等の金属ハロゲン化物ガスを使用し、キャリアガスとしては、Arガス等の不活性ガスを使用する。
【0015】
上記原料気化ゾーン3には石英製の原料気化容器9が設けられており、原料気化容器9内の金属ハロゲン化物10を加熱し、気化させて金属ハロゲン化物ガス11を得るための溶融加熱装置12が、原料気化ゾーン3並びにこれの上流側に隣接する不活性ガス導入ゾーン2及び下流側に隣接するガス混合ゾーン4の一部領域を含む反応管1の外周部を取り囲んで設けられている。
【0016】
なお、上記反応管1の入口1aの上流側には、不活性ガス供給装置(図示せず)に接続する不活性ガス供給管13が設けられており、これより不活性ガス14が反応管1内へ導入される。不活性ガス14は、ガス混合ゾーン4で得られる金属ハロゲン化物ガス11と不活性ガス14との混合ガス中の金属ハロゲン化物ガス11の分圧が目標値に保持されるように、不活性ガス14の流量を制御しつつ反応管1のキャリアガス導入ゾーン2に供給する。
【0017】
一方、還元性ガス供給管15がキャリアガス導入ゾーン2から反応管1の内部に挿入され、反応管1の内部をその長手方向のガス通流方向下流側に延長し、その先端がガス混合ゾーン4の後端部で反応管1の中央に位置するように配設されている。この還元性ガス供給管15の先端には還元性ガス噴射ノズル17が設けられており、還元性ガス噴射ノズル17の位置は、気相反応ゾーン5の入口に位置している。気相反応ゾーン5及びこれの上流側に隣接するガス混合ゾーン4の一部領域を含む反応管1の外周部を取り囲んで気相加熱装置18が設けられており、還元性ガス噴射ノズル17から噴射される還元性ガス19aによる金属ハロゲン化物ガス11の還元反応を促進して金属粉を得るために、気相反応ゾーン5の雰囲気温度を適切な温度に保持する。
【0018】
なお、図1の例において、還元性ガス供給管15は反応管1内の原料気化ゾーン3及びガス混合ゾーン4に敷設されているので、還元性ガス19bはこれらを通過する間に、例えば800℃程度の高温に予熱されるので、気相加熱装置18の省エネルギー化にも寄与する。但し、この場合には反応管内の還元性ガス供給管15は石英製等耐熱性を有する材料で製作されたものとする。
【0019】
次に、還元性ガス噴射ノズル17の形状について説明する。還元性ガス噴射ノズル17は、還元性ガス供給管15を通ってその先端から噴射させる還元性ガス19aを、反応管1の気相反応ゾーン5を長手方向にほぼ平行に流れている金属ハロゲン化物ガス11と不活性ガス14とが混合されたガス(以下、「金属ハロゲン化物ガス含有ガス」という)20の気流に対して、角度θ1(゜)をなす方向で且つ当該噴射ノズルの軸芯線を中心として周囲360°にわたりカーテン状に所望の流量を噴射させる機能を有するものである。但し、角度θ1(゜)は、図2及び図3に示すように、金属ハロゲン化物ガス含有ガス20の気流の下流方向と還元性ガス噴射ノズル17から噴射された還元性ガス19aの噴射方向とのなす角度をいう。この還元性ガス噴射ノズル17は、角度θ1(゜)が30゜超90゜未満である。また、この角度θ1(゜)は、好ましくは45゜乃至85゜である。
【0020】
図3は、気相反応ゾーン5を流れる金属ハロゲン化物ガス含有ガス20の気流方向と還元性ガス噴射ノズル17から噴射された還元性ガス19aの噴射方向とのなす角度をθ1(゜)(但し、30゜<θ1<90゜、好ましくは45゜≦θ1≦85゜)とするための還元性ガス噴射ノズル17の一例を示し、その軸芯線を含み還元性ガス供給管15aの長手方向に平行な縦断面図である。還元性ガス噴射ノズル17は、横断面が円管形状を有するノズル本体17aと、そのガス通流方向の下流側に配設された気流方向調整部材17bと、ノズル本体17aと気流方向調整部材17bとを連結して気流方向調整部材17bをノズル本体17aに対して固定する複数の細いが剛性を有する支持部材17cとを有する。気流方向調整部材17bは、砲弾状をなし、ノズル本体17a側の部分は円錐状をなしてその尖端がノズル本体17aのガス出口中心に位置している。ノズル本体17aの中心及び気流方向調整部材17bの前記尖端は還元性ガス供給管15aの軸芯線105a上にある。一方、気流方向調整部材17bのガス通流方向下流側の部分は、円柱状をなしてガス通流方向に延びる部分と、そのガス通流方向の後端で絞られた部分とから形成されている。
【0021】
このように構成された還元性ガス噴射ノズル17は、その後方端部(上流側の端部)が還元性ガス供給管15の先端部と締付けボルト22により夫々のフランジ23、24で密閉接合されている。還元性ガス19aは、ノズル本体17aと気流方向調整部材17bとの間隙を、気流方向調整部材17bの円錐台の斜面に沿って噴出される。このとき、気流方向調整部材17bは砲弾状をなしているので、ノズル17から吐出される還元性ガス19aの気流は気流方向調整部材17bの後端部で循環渦が発生することなく、一様な流れが得られる。
【0022】
上記金属ハロゲン化物ガス含有ガス20の気流方向と還元性ガス19aの噴射方向とのなす角度θ1(゜)を、30゜超90゜未満の範囲の所望する角度にするためには、ノズル本体17aの先端面のノズル本体長手方向に対する傾斜角度をその所望する角度に一致させ、且つ気流方向調整部材17bの円錐台斜面と底面との交線におけるその円錐台の斜面下向き方向と金属ハロゲン化物ガス含有ガス20とのなす角度を、上記所望する角度に一致させた形状にすればよい。
【0023】
次に、上述の如く構成された本発明の第1実施形態に係る金属微粉の製造装置を使用して金属微粉を製造する方法について説明する。
【0024】
図1に示したように、気相化学反応を起こさせる反応管1の内部に設けられた原料気化容器9中の金属ハロゲン化物10を溶融加熱装置12で加熱して気化させ、得られた金属ハロゲン化物ガス11を、キャリアガスの不活性ガス14で反応管1内に流す。反応管1中を流れる過程で、金属ハロゲン化物ガス11と不活性ガス14とは混合されて、金属ハロゲン化物ガス含有ガス20を形成して流れ続ける。一方、金属ハロゲン化物ガス含有ガス20がほぼ反応管1内で均一ガス組成になった反応管1の長手方向位置で、反応管1の内部に設けられた還元性ガス噴射ノズル17から、その反応管の内部を流れる上記金属ハロゲン化物ガス含有ガス20の気流の中に、還元性ガス19aを噴射する。この還元性ガス19aの噴射方向は、この還元性ガス19aの噴射方向と金属ハロゲン化物ガス含有ガス20の気流の方向とのなす角度をθ1で表記すると(図2及び3参照)、角度θ1が30゜超90゜未満となるように調節する。ここで、角度θ1の調節は、図3に示したように、還元性ガス噴射ノズル17のノズル本体17aの先端面の傾斜角度及び気流方向調整部材17bの円錐台の傾斜面の底面に対する傾斜角度を、角度θ1が所望する値に製作された還元性ガス噴射ノズル17に取り替えることにより行う。
【0025】
「角度θ1:30゜超90゜未満、好ましくは45゜乃至85゜」
本発明の第1実施形態において、角度θ1を30゜超90゜未満とするのは、下記理由による。角度θ1を小さくするにつれて、上記製造装置で製造される金属微粉の中に含まれるその金属微粉の平均粒径の数倍の粒径を有する粗大粒子の個数が増加し、角度θ1が30゜以下になると、MLCCの製造過程においては、内部電極材としてペーストに分散させた場合、乾燥後に均一で高密度の金属膜が得られ難い。特に超微粉の金属粉、例えば平均粒径が0.2μm前後のNi粉を使用してMLCCを薄層化しようとする場合には、上記粗大粒子の個数を少なくするために、角度θ1を45゜以上にすることが好ましい。一方、角度θ1が90゜以上になると、反応管1の壁への金属Ni膜の付着量が多くなり、金属微粉の収率が低下し、また付着した金属Ni膜が多量に蓄積すると、これを壁から剥離させて操業しなければならなくなり、生産性が低下する。このような現象の発生を防止するためには、角度θ1は90゜未満であることが必要であり、更に金属Ni膜の付着量を少なくするために、角度θ1は85゜以下であることが好ましい。従って、角度θ1は30゜超90゜未満であることが必要であり、好ましくは45゜乃至85゜であることが望ましい。
【0026】
「還元性ガスは反応管の内部に設けられた噴射ノズルから、反応管の内部を流れる金属ハロゲン化物ガス含有ガスの気流の中に噴射すること」
本発明の第1実施形態において、還元性ガスは反応管の内部に設けられた噴射ノズルから、反応管の内部を流れる金属ハロゲン化物ガス含有ガスの気流の中に噴射する理由は、周囲を広い横断面積にわたって流れている金属ハロゲン化物ガス含有ガス中へ還元性ガスを吹き込むことにより、還元性ガスが反応効率よく作用する点において効果的であるからである。
【0027】
次に、本発明の第2実施形態に係る金属微粉の製造方法及び製造装置について説明する。図4は、本発明の第2実施形態に係る金属微粉の製造装置を示す図であって、製造装置の反応管長手方向の軸芯線を含む鉛直断面図である。但し、同図中の原料気化装置21は、反応管1長手方向に直角方向の鉛直断面図を示す。反応管1は円筒状石英製であり、これには、気相反応ゾーン5及び冷却ゾーン6が配設されている。反応管1には同図で左側に相当する反応管1の上流側から、還元性ガス供給管15を通って還元性ガス19が反応管1へ導入される。反応管1へ導入された還元性ガス19は、反応管1の長手方向中央部の気相反応ゾーン5に供給される。気相反応ゾーン5の周囲を、気相加熱装置18が取り巻いて設けられている。気相反応ゾーン5の下流側には、反応後の生成物及び未反応ガスを冷却する冷却ゾーン6が設けられている。冷却ゾーン6を通過した反応管1の出口1bの下流側には、金属粉末捕集器7及び金属粉末回収装置8が接続されており、生成した金属粉をこれらにより捕集し、回収する。上記原料ガスとしては、NiCl2ガス等の金属ハロゲン化物ガスを使用し、キャリアガスとしては、Arガス等の不活性ガスを使用する。
【0028】
一方、原料気化装置21が反応管1とは別に配設されている。原料気化装置21は、原料気化容器9及び溶融加熱装置12からなり、原料気化容器9内の金属ハロゲン化物10を溶融加熱装置12で加熱・溶融してこれを気化させる。原料気化装置21においては、全体を所定の気化温度に保持する必要があるので、原料気化容器9の他に、不活性ガス供給管13及び金属ハロゲン化物ガス含有ガス供給管25も加熱する。このため、不活性ガス供給管13及び金属ハロゲン化物ガス含有ガス供給管25を覆うようにして、加熱装置12aを設け、この加熱装置12aにより、各配管を加熱するようになっている。この加熱装置12aは例えば抵抗ヒータである。気化した金属ハロゲン化物ガス11は、原料気化容器9の上流側入口から導入されるキャリアガスとしての不活性ガス14と混合し、組成が均一化されて金属ハロゲン化物ガス含有ガス20となる。その際、不活性ガス14は、金属ハロゲン化物ガス含有ガス20中の金属ハロゲン化物ガス11の分圧が目標値に保持されるように、不活性ガス14の流量を制御して供給する。このようにして、原料ガスである金属ハロゲン化物ガス11とこれのキャリアガスである不活性ガス14との混合ガスである金属ハロゲン化物ガス含有ガス20が、原料気化装置21において調製される。原料気化装置21で調製された金属ハロゲン化物ガス含有ガス20は、原料気化容器9の出口に接続された金属ハロゲン化物ガス含有ガス供給管25を通って反応管1内の気相反応ゾーン5へ供給される。
【0029】
金属ハロゲン化物ガス含有ガス供給管25は、反応管1の入口近傍の周壁を貫通して内部に入り、そこから向きを変えて反応管1の長手方向に平行に延設され、気相反応ゾーン5の入口まで敷設され、その先端に金属ハロゲン化物ガス含有ガスを噴射させるノズル(以下、「金属ハロゲン化物ガス含有ガス噴射ノズル」という)26が設けられている。金属ハロゲン化物ガス含有ガス噴射ノズル26から噴射される金属ハロゲン化物ガス含有ガス20aが気相反応ゾーン5を流れる還元性ガス19cの気流の中に噴射される。そのとき、還元反応が促進されるように、気相加熱装置18により気相反応ゾーン5の雰囲気が適切な温度に保持される。
【0030】
次に、金属ハロゲン化物ガス含有ガス噴射ノズル26の形状について説明する。金属ハロゲン化物ガス含有ガス噴射ノズル26は、金属ハロゲン化物ガス含有ガス供給管25を通ってその先端から噴射させる金属ハロゲン化物ガス含有ガス20aを、反応管1の気相反応ゾーン5を長手方向にほぼ平行に流れている還元性ガス19cの気流に対して、角度θ2(゜)をなす方向で且つ当該噴射ノズルの軸芯線を中心として周囲360°にわたりカーテン状に所望の流量を噴射させる機能を有するものである。但し、角度θ1(゜)は、図5に示すように還元性ガス19cの気流の下流方向と金属ハロゲン化物ガス含有ガス噴射ノズル26から噴射された金属ハロゲン化物ガス含有ガス20aの噴射方向とのなす角度をいう。この金属ハロゲン化物ガス含有ガス噴射ノズル26は、角度θ2(゜)が30゜超90゜以下である。また、この角度θ2(゜)は、好ましくは45゜乃至85゜である。
【0031】
図6は、気相反応ゾーン5を流れる還元性ガス19cの気流方向と金属ハロゲン化物ガス含有ガス噴射ノズル26から噴射された金属ハロゲン化物ガス含有ガス20aの噴射方向とのなす角度をθ2(゜)(但し、30゜<θ2≦90゜、好ましくは45゜≦θ2≦85゜)とするための金属ハロゲン化物ガス含有ガス噴射ノズル26の例について、その軸芯線を含み金属ハロゲン化物ガス含有ガス供給管25aの長手方向に平行な縦断面図を示す。金属ハロゲン化物ガス含有ガス噴射ノズル26は、横断面が円管形状を有するノズル本体26aと、これの前方に剛性を有する複数の細い支持部材26cで接合・固定された気流方向調整部材26bとで構成されている。気流方向調整部材26bは、円錐台形状であり、円錐台の先端が金属ハロゲン化物ガス含有ガス供給管25aの軸芯線205a上にあって、金属ハロゲン化物ガス含有ガス20aの上流方向を向き、且つ金属ハロゲン化物ガス含有ガス供給管25a及びノズル本体26aと同心円上に設置されている。このように構成された金属ハロゲン化物ガス含有ガス噴射ノズル26は、その後方端部(上流側の端部)が金属ハロゲン化物ガス含有ガス供給管25aの先端部と締付けボルト22により夫々のフランジ23、24で密閉接合されている。金属ハロゲン化物ガス含有ガス20aは、ノズル本体26aと気流方向調整部材26bとの間隙を、気流方向調整部材26bの円錐台の斜面に沿って噴出される。
【0032】
上記還元性ガス19cの気流方向と金属ハロゲン化物ガス含有ガス20aの噴射方向とのなす角度θ2(゜)を、30゜超90゜以下の範囲の所望する角度にするためには、ノズル本体26aの先端面のノズル本体長手方向に対する傾斜角度をその所望する角度に一致させ、且つ気流方向調整部材26bの円錐台斜面と底面との交線におけるその円錐台の斜面下向き方向と還元性ガス19cとのなす角度を、上記所望する角度に一致させた形状にすればよい。
【0033】
次に、上述の如く構成された本発明の第2実施形態に係る金属微粉の製造装置を使用して金属微粉を製造する方法について説明する。
【0034】
図4に示したように、還元性ガス19を反応管1の上流側から導入し、反応管1の気相反応ゾーン5へ流し、還元性ガス19cの気流を形成させる。一方、原料気化装置21で調製された金属ハロゲン化物ガス含有ガス20を、反応管1の内部まで挿入された金属ハロゲン化物ガス含有ガス供給管25aを通して、気相反応ゾーン5の入口であって反応管1の内部に設けられた金属ハロゲン化物ガス含有ガス噴射ノズル26から、その反応管内部を流れる上記還元性ガス19cの気流の中に噴射する。この金属ハロゲン化物ガス含有ガス噴射ノズル26から噴射させる金属ハロゲン化物ガス含有ガス20aの噴射方向は、この金属ハロゲン化物ガス含有ガス20aの噴射方向と還元性ガス19cのガス気流の方向とのなす角度を、θ2で表記すると(図5及び6参照)、角度θ2が30゜超90゜以下となるように調節する。ここで、角度θ2の調節は、図6に示したように、金属ハロゲン化物ガス含有ガス噴射ノズル26のノズル本体26aの先端面の傾斜角度及び気流方向調整部材26bの円錐台の傾斜面の底面に対する傾斜角度を、角度θ2が所望する値に製作された金属ハロゲン化物ガス含有ガス噴射ノズル26に取り替えることにより行う。
【0035】
「角度θ2:30゜超90゜以下、好ましくは45゜乃至85゜」
本発明の第2実施形態において、角度θ2を30゜超90゜以下とするのは、下記理由による。角度θ2を小さくするにつれて、上記製造装置で製造される金属微粉の中に含まれるその金属微粉の平均粒径の数倍の粒径を有する粗大粒子の個数が増加し、角度θ2が30゜以下になると、MLCCの製造過程においては、内部電極材としてペーストに分散させた場合、乾燥後に均一で高密度の金属膜が得られ難い。特に超微粉の金属粉、例えば平均粒径が0.2μm前後のNi粉を使用してMLCCを薄層化しようとする場合には、上記粗大粒子の個数を少なくするために、角度θ2を45゜以上にすることが好ましい。しかしながら、角度θ2が大きくなり90゜を超えると、反応管1の壁への金属Ni膜の付着量が増加し、金属微粉の収率が低下し、また付着した金属Ni膜が多量に蓄積すると、これを壁から剥離させて操業しなければならなくなり、生産性が低下する。このような現象の発生を防止するためには、角度θ2は90゜以下であることが必要であり、更に金属Ni膜の付着量を少なくするために、角度θ2は85゜以下であることが好ましい。従って、角度θ2は30゜超90゜以下であることが必要であり、好ましくは45゜乃至85゜であることが望ましい。
【0036】
「金属ハロゲン化物ガス含有ガスは反応管の内部に設けられた噴射ノズルから、反応管の内部を流れる還元性ガスの気流の中に噴射すること」
本発明の第2実施形態において、金属ハロゲン化物ガス含有ガスは反応管の内部に設けられた噴射ノズルから、反応管の内部を流れる還元性ガスの気流の中に噴射する理由は、周囲を広い横断面積にわたって流れている還元性ガス気流の中へ金属ハロゲン化物ガス含有ガスを吹き込むことにより、金属ハロゲン化物ガス含有ガスが反応効率よく作用する点において効果的であるからである。更に具体的には、下記において述べるように、NiCl2ガスが還元されて生成するNiが原子レベルの大きさのガス状態で存在しているときに、この周囲にはH2ガスの存在量が多いので、NiガスのNi粒子への成長が抑制されて、得られるNi微粉中に混在するNiの粗大粒子の個数が多くなるのが抑制される。従って、第1実施形態におけるように、NiCl2ガス含有ガスの気流の中へ、このガス気流の横断面中央部からH2ガスを噴射させて吹き込むという方式よりも、この第2実施形態におけるように、H2ガスの気流の中へ、このガス気流の内部からNiCl2ガス含有ガスを噴射する方式の方が、得られるNi微粉中に混在する粗大粒子の個数が少なくなると共に、反応管の内壁へのNi膜付着量も少なくなるからである。
【0037】
以上述べたとおり、本発明者等は、本発明に係る金属微粉の製造方法及び製造装置においては、製造される金属微粉中にこの金属微粉の平均粒子の数倍径の粗大粒子が混在する個数を極力減らすためには、第1及び第3発明において反応管内を流れる金属ハロゲン化物ガス含有ガスの気流方向とこのガス気流に対して噴射する還元性ガスの噴射方向とのなす角度θ1(゜)、並びに第2及び第4発明において反応管内を流れる還元性ガスの気流方向とこのガス気流に対して噴射する金属ハロゲン化物ガス含有ガスの噴射方向とのなす角度θ2(゜)は、いずれも30゜よりも大きくすべきであることを知見した。例えば、NiCl2ガスのH2ガスによる還元反応は、NiCl2+H2=Ni(s)+2HCl(g)で表すことができ、これらの両ガス間の反応においては、ガス噴射ノズルの噴射口の形状、反応管の内径、反応管を流れる一方のガスの流量及び線速度、噴射ノズルから噴射される他方のガスの流量及び線速度並びに反応ゾーンの温度によって影響を受けるが、少なくとも1秒以内の極めて短時間で反応が完了すると考えられるので、これらの両ガス間の反応は、ガス噴射ノズル先端部から数cm以内の領域で完了していると仮定し、そして、この反応直後には原子レベルの大きさのNiガスが生成しており、この原子レベルのNiガスが、与えられた微小反応時間とこのNiガス濃度とをパラメータとしてNi粒子に成長し、その結果、金属Ni微粒子が得られる。本発明におけるように、反応管内を流れる一方のガス(NiCl2ガス又はH2ガス)に対して、ノズルから噴射された他方のガス(夫々H2ガス又はNiCl2ガス)が反応するという条件下では、NiCl2ガスのような原料ガスとH2ガスのような還元性ガスのガス気流に注目し、特に両ガス気流が交差するときに両ガス気流の方向がなす角度が混合性に及ぼす影響の大きさに着眼し、この両ガス気流の方向がなす角度、即ち本発明における角度θ1又はθ2が大きいほど(但し、θ1は90°未満、θ2は90°以下のとき)、両ガスが当量同士で反応するための接触・混合が行われ易く、従って、上記原子レベルの大きさのNiガスによる金属Ni微粒子への成長が抑制される、即ち粗大粒子の混在個数が少なくなると考え、反応生成したNi微粒子中に混在する粗大粒子の個数に及ぼす角度θ1又はθ2の影響について試験・調査した。その結果、上記知見を得たものである。
【0038】
以上のように構成された金属微粉の製造方法を使用し、また上記製造装置を使用して気相化学反応法により、金属ハロゲン化物ガスと還元性ガスとを接触・混合させて水素還元反応を起こさせることにより、粒度分布範囲が狭く且つ粗大粒子の混在個数が少ない金属微粉を、反応管内壁への金属Ni膜の付着を抑制しつつ得ることができる。
【0039】
【実施例】
次に、本発明の実施例の効果について、本発明の範囲から外れる比較例と比較して説明する。
【0040】
本発明の第1実施形態におけるように、反応管内を流れるNiCl2ガスを含有するガス気流に対して、ガス噴射ノズルからH2ガスを噴射させて、両ガスを接触・混合する方式(以下、「ガス噴射混合方式1」という)、又は第2実施形態におけるように、反応管内を流れるH2ガスの気流に対して、ガス噴射ノズルからNiCl2ガスを含有するガスを噴射させて、両ガスを接触・混合する方式(以下、「ガス噴射混合方式2」という)により金属Ni微粉を製造する方法について試験した(実施例)。これら噴射混合方式1及び2の夫々の場合について、NiCl2ガス含有ガスの気流方向と噴射ノズルから噴射されたH2ガスの噴射方向とのなす角度θ(1)を変化させた場合、及びH2ガスの気流方向と噴射ノズルから噴射されたNiCl2ガス含有ガスの噴射方向とのなす角度θ(2)を変化させた場合について、金属Ni微粉の製造試験を行った。なお、本発明の範囲外の試験として、上記角度θ(1)又はθ(2)が本発明の条件範囲から外れる場合の試験も行った(比較例)。
【0041】
表1に、実施例及び比較例の夫々におけるガス噴射混合方式の種別並びに両ガスの気流の方向がなす角度θ(1)又はθ(2)の設定値を示す。
【0042】
【表1】
【0043】
その他に、ガス噴射混合方式1及び2のいずれの場合においても、実施例及び比較例に共通の試験条件を下記の通り設定した。即ち、NiCl2の気化温度を900℃、NiCl2ガスのキャリアガスとしてArガスを使用し、その流量を5リットル/分、NiCl2ガスとArガスとからなるNiCl2ガス含有ガス中のNiCl2ガスの分圧を0.4、気相反応ゾーンにおける水素還元反応温度を1050℃とし、そしてH2ガス流量を5リットル/分とした。
【0044】
上記条件で金属Niの微粉製造試験を行い、金属粉末回収装置で得られた金属Ni微粉粒子の平均粒径、Ni微粉粒子中に混在する粗大粒子の個数及び反応管内壁への金属Ni膜の付着量について調査した。金属Ni微粉粒子の平均粒径は、レーザー回折法により所定の測定試料中の全粒子数を求め、次いで小さい側の粒子から粒子数を積算して50粒子数%に達したときの粒子径であると定義し、そして、粗大粒子は、上記平均粒径の2倍以上の粒径を有するものと定義し、粗大粒子の混在個数の測定方法は、走査型電子顕微鏡(SEM=Scanning Electron Microscope)により縦横が10×10μmの視野中に観察された粗大粒子の個数をSEM写真上で観察・測定し、10視野についての測定値の平均値を、粗大粒子の混在個数と定義した。また、反応管内壁への金属Ni膜の付着量の評価は、内壁に付着したNi膜を機械的に回収するとともに、反応管を硝酸洗浄した洗浄水中のNiイオン濃度からNi重量を見積る方法で行った。上記各測定結果を、上記表1に併記する。
【0045】
上記試験結果より下記のことがわかる。比較例1及び2は、両ガスの気流方向のなす角度θ(1)が夫々0°及び30°であって本発明の規定範囲を外れて小さいので、ガス噴射ノズルから噴射されたH2ガスが、反応管内を流れるNiCl2ガス含有ガスの気流に対する混合性が小さいため、Ni微粉中の粗大粒子の混在個数が多い。ところが、比較例3は、両ガスの気流方向のなす角度θ(1)が90°であって本発明の規定範囲を外れて大きいために、両ガスの混合性は良好であったため、Ni微粉中の粗大粒子の混在個数は少なくて良好ではあるが、反応管炉壁へのNi膜付着量が多いため、操業上生産性を低下させることになり、望ましくない。
【0046】
比較例4及び5は、上記比較例1及び2と類似した傾向があり、両ガスの気流方向のなす角度θ(2)が夫々0°及び30°であって本発明の規定範囲を外れて小さいので、ガス噴射ノズルから噴射されたNiCl2ガス含有ガスが、反応管内を流れるH2ガスの気流に対する混合性が小さいため、Ni微粉中の粗大粒子の混在個数が多い。
【0047】
これに対して、ガス噴射方式1(NiCl2ガス含有ガスの気流に対してH2ガスを噴射させる方式)の実施例1乃至3、及びガス噴射方式2(H2ガスの気流に対してNiCl2ガス含有ガスを噴射させる方式)の実施例4乃至7はいずれも、夫々両ガスの気流方向のなす角度θ(1)、及びθ(2)が本発明の条件の規定範囲内にあるので、Ni微粉の平均粒径は小さく、粗大粒子の混在個数は少なくて良好であり、しかも反応管内壁へのNi膜付着量が抑制されており望ましい。
【0048】
なお、ガス噴射方式が1における比較例3と、ガス噴射方式が2における実施例7とを、両ガスの気流方向のなす角度のみについて比較すると、いずれも90°であって同一であるが、粗大粒子の混在個数及び反応管内壁へのNi付着膜量共に、実施例7の方が優れている。これは、ガス噴射方式が2である還元性ガスであるH2ガスの気流の中に原料ガス含有ガスであるNiCl2ガス含有ガスを噴射して両ガスを混合した場合(実施例7)の方が、NiCl2ガスが還元されて生成する前述した原子レベルの大きさのNiガスの周囲に存在するH2ガスの量が多いために、NiガスのNi粒子への成長が抑制されたために、粗大粒子の混在個数が少なくなったと同時に、金属Ni膜としての析出量も少なかったためであると考えられる。
【0049】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明によれば、気相化学反応法により金属ハロゲン化物ガスを還元性ガスで還元することにより、平均粒径の数倍の粒径を有するような粗大粒子の混在個数が極めて少ない金属微粉を生産性よく製造する方法及び製造装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態に係る金属微粉の製造装置を示す反応管長手方向の軸芯線を含む縦断面図である。
【図2】図1中の気相反応ゾーンにおいて金属ハロゲン化物ガス含有ガスの気流方向とノズルから噴射される還元性ガスの噴射方向とのなす角度(θ1(゜))を説明する図である。
【図3】金属ハロゲン化物ガス含有ガスの気流方向と還元性ガスの噴射方向とのなす角度がθ1(゜)(但し、30゜<θ1<90゜)である場合の還元性ガス噴射ノズルの例について、そのノズルの軸芯線を含み、還元性ガス供給管の長手方向に平行な縦断面図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係る金属微粉の製造装置を示す反応管長手方向の軸芯線を含む縦断面、一部その長手方向に直角な縦断面図である。
【図5】図4中の気相反応ゾーンにおいて還元性ガスの気流方向とノズルから噴射される金属ハロゲン化物ガス含有ガスの噴射方向とのなす角度(θ2(゜))を説明する図である。
【図6】還元性ガスの気流方向と金属ハロゲン化物ガス含有ガスの噴射方向とのなす角度がθ2(゜)(但し、30゜<θ2≦90゜)である場合の金属ハロゲン化物ガス含有ガス噴射ノズルの例について、その軸芯線を含み、金属ハロゲン化物ガス含有ガス供給管の長手方向に平行な縦断面図である。
【符号の説明】
1:反応管
1a:反応管入口
1b:反応管出口
2:キャリアガス導入ゾーン
3:原料気化ゾーン
4:ガス混合ゾーン
5:気相反応ゾーン
6:冷却ゾーン
7:金属粉末捕集器
8:金属粉末回収装置
9:原料気化容器
10:金属ハロゲン化物
11:金属ハロゲン化物ガス
11a:還元性ガス(リング状スリット型ガス噴射ノズルから噴射される)
12:溶融加熱装置
13:不活性ガス供給管
14:不活性ガス
15:還元性ガス供給管
15a:(気相反応ゾーンに入る前の)還元性ガス供給管
105a:(還元性ガス供給管15aの)軸芯線
16:反応管の軸芯線
17:還元性ガス噴射ノズル
17a:ノズル本体
17b:気流方向調整部材
17c:支持部材
18:気相加熱装置
19:還元性ガス
19a:(噴射ノズル17から噴射される)還元性ガス
19b:(反応管内の還元性ガス供給管内部で予熱される)還元性ガス
19c:(気相反応ゾーンを流れる)還元性ガス
20:(気相反応ゾーンを流れる)金属ハロゲン化物ガス含有ガス
20a:(噴射ノズル26から噴射される)金属ハロゲン化物ガス含有ガス
21:原料気化装置
22:締付けボルト
23、24:フランジ
25:金属ハロゲン化物ガス含有ガス供給管
25a(気相反応ゾーンに入る前の)金属ハロゲン化物ガス含有ガス供給管
205a:(金属ハロゲン化物ガス含有ガス供給管25aの)軸芯線
26:金属ハロゲン化物ガス含有ガス噴射ノズル
26a:ノズル本体
26b:気流方向調整部材
26c:支持部材
27:排ガス
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子部品等に使用される導電ペーストフィラー、積層セラミックスコンデンサー等の内部電極材料、チタン材の接合材又は触媒等に適したCr、Fe、Cu、Ni、Co、Ag又はW等の金属微粉を気相化学反応により合成する金属微粉の製造方法及び製造装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
積層セラミックスコンデンサー(以下、MLCC(Multilayer Ceramic Capacitor)という)の内部電極材料としては、従来Pd又はAg−Pd等の粉末が使用されていたが、このような貴金属粉を使用したのではコストが高くなるという問題点があり、特に携帯電話を始めとする小型電子機器の普及によりMLCCの需要が大幅に増加するにつれて、貴金属に替る安価で信頼性の高い電極材料として、Ni粉末が使用されるようになった。
【0003】
MLCCは、セラミックスの誘電体層と金属の内部電極層とを多層化したものであるが、MLCCの小型化且つ大容量化という観点から、内部電極層の薄層化及び低抵抗化に対する要求が徐々に進み、現在では粒径が1μm以下のNi粉、更には粒径が0.5乃至0.2μmのNi超微粉が主流となっている。なお、MLCC用金属超微粉に求められる特性としては、下記(1)乃至(4)に示すものがある。(1)ペーストに良く分散し、乾燥後に均一で高密度の金属膜が得られることが必要である。そのためには、凝集要素が少ない表面性状を有し、タップ密度及び圧縮密度が大きいことが必要である。(2)脱媒温度である300乃至500℃付近で耐酸化性が優れていることが必要である。そのためには、単結晶のように表面積が小さい球形であることが必要である。(3)焼結開始温度が誘電体の焼結開始温度に近いことが必要である。(4)電極としての金属膜を薄層化することができ、表面粗さが小さいことが必要である。そのためには、粒度分布が狭く、ペーストへの分散性がよいこと、及び1μm以上の粗粒を含まないことが必要である。
【0004】
上述したような特性を有するNi超微粉を工業的レベルで製造する方法は、塩化ニッケルガスを気相中で水素還元する気相化学反応法と、塩化ニッケル水溶液をヒドラジン等の還元剤で還元する液相還元析出法とに大別することができ、特に気相化学反応法の中の気相水素還元法により金属Ni粉を合成した場合には、粒子の球状性及び分散性が優れた高品質のNi超微粉が得られるので、この製造方法により得られるNi超微粉は緻密で欠陥の少ない高信頼性電極材料としての需要が拡大している。
【0005】
気相化学反応法によりNi超微粉又はその他の種々の金属微粉を作製する方法が種々提案されている。これらの提案の中には、金属微粉の合成反応を起こさせる反応管の内部に還元性ガスの導入管を設置し、この導入管の外側に原料ガスとして塩化ニッケルガス等の金属ハロゲン化物ガスを流すか、又は反応管の内部に原料ガスの導入管を設置し、この導入管の外側に還元性ガスを流しながら、両ガスの界面部においてNi等金属元素を気相析出させ、その超微粉を得るものがある。この場合、内側を流す還元性ガスと外側を流す原料ガス、又は内側を流す原料ガスと外側を流す還元性ガスとを、平行又は交差させ、また原料ガスの濃度及び合成温度等を制御することにより、粒度分布が狭い球状の金属超微粉粒子が得られるとしている。
【0006】
例えば、特開2001−89804号公報には、金属塩化物ガスを還元炉内に供給すると共に、このガス気流の横断面中心部に還元性ガスを還元炉の長手方向に平行方向に流すに際して、還元性ガスの吐出口を金属塩化物ガスの吐出口よりも吐出方向の後方側、即ち上流側に配置し、金属塩化物ガスの供給ノズルを還元ガス供給ノズルの外側に複数本配置して、還元性ガス供給ノズルからのガス吐出方向に対して、15乃至30゜傾斜させる(同公報、段落番号0017参照)こと、還元ガスであるH2ガスの吐出量は、金属塩化物ガスとの気相化学反応に必要な理論値の40乃至120モル%とし、また、金属塩化物ガスであるNiCl2ガスの吐出線速度は、0.3乃至5.0m/秒であることが好ましいこと、一方、還元温度は950乃至1200の範囲内で適宜の温度、例えば1000℃で行うことが記載されている。更に、還元炉内へのガスの供給方式について、還元炉頂部に外管と内管とからなる二重管を設け、その外管から金属塩化物ガスを、内管から還元性ガスを夫々炉内へ供給することが記載されている。
【0007】
【特許文献1】
特開2001−89804号公報(第3乃至4頁の段落番号0016乃至0023、図1乃至4)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述の従来技術によれば、平均粒径が例えば0.3μmの金属Ni粉末が得られ、平均粒径を有するNi微粉が大半を占める。そして、この平均粒径の数倍の粒径を有する粗大粒子も含まれることが多い。このようなNiの粗大粒子が存在すると、前述したMLCCの製造過程において、内部電極材としてペーストに分散させ、乾燥後に均一で高密度の金属膜を得難い等の問題点があり、特に平均粒径が小さいNi超微粉、例えば0.2μm前後の平均粒径のNi粉で薄層化をする際には、重大な障害になるという問題点がある。
【0009】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであって、気相化学反応法により平均粒径の数倍の粒径を有する粗大粒子が極力存在しない金属微粉の製造方法及び製造装置を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本願第1発明に係る金属微粉の製造方法は、反応管内を通流する金属ハロゲン化物ガスを還元性ガスにより還元して金属微粉を製造する方法において、反応管の内部に金属ハロゲン化物ガスを含有する原料ガスを流し、前記反応管内にノズル本体と気流方向調整部材とからなるガス噴射ノズルを設け、前記ノズル本体と前記気流方向調整部材との隙間から、前記原料ガスの気流方向とのなす角度θ1が、30゜超90゜未満となる方向に還元性ガスを噴射することを特徴とする。この発明において、前記θ1は45゜乃至85゜であることが好ましい。また、上記金属ハロゲン化物ガスとして塩化ニッケルガスを使用することができ、上記還元性ガスとして水素ガスを使用することができる。
【0011】
本願第2発明に係る金属微粉の製造方法は、反応管内を通流する金属ハロゲン化物ガスを還元性ガスにより還元して金属微粉を製造する方法において、反応管の内部に還元性ガスを流し、前記反応管内にノズル本体と気流方向調整部材とからなるガス噴射ノズルを設け、前記ノズル本体と前記気流方向調整部材との隙間から、前記還元性ガスの気流方向とのなす角度θ2が、30゜超90゜以下となる方向に、金属ハロゲン化物ガスを含有する原料ガスを噴射することを特徴とする。この発明において、前記θ2は45゜乃至85゜であることが好ましい。また、上記金属ハロゲン化物ガスとして塩化ニッケルガスを使用することができ、上記還元性ガスとして水素ガスを使用することができる。
【0012】
本願第3発明に係る金属微粉の製造装置は、還元反応部における反応管の内部の気相中で、金属ハロゲン化物ガスの気流に還元性ガスの気流を混合し、気相化学反応により金属微粉を製造する金属微粉の製造装置において、反応管内に還元性ガス噴射ノズルが設けられており、この噴射ノズルはノズル本体と気流方向調整部材とからなり、前記ノズル本体と前記気流方向調整部材との隙間から噴射されたガスの噴射方向は、前記反応管内を流れる金属ハロゲン化物ガスを含有する原料ガスの気流の方向となす角度θ1が30゜超90゜未満となるものであることを特徴とする。この発明において、前記θ1は45゜乃至85゜であることが好ましい。
【0013】
本願第4発明に係る金属微粉の製造装置は、還元反応部における反応管の内部の気相中で、還元性ガスの気流に金属ハロゲン化物ガスの気流を混合し、気相化学反応により金属微粉を製造する金属微粉の製造装置において、反応管内に金属ハロゲン化物ガスを含有する原料ガスの噴射ノズルが設けられており、この噴射ノズルはノズル本体と気流方向調整部材とからなり、前記ノズル本体と前記気流方向調整部材との隙間から噴射されたガスの噴射方向は、前記反応管内を流れる還元性ガスの気流の方向となす角度θ2が30゜超90゜以下となるものであることを特徴とする。この発明において、前記θ2は45゜乃至85゜であることが好ましい。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態に係る金属微粉の製造方法及び製造装置について説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係る金属微粉の製造装置を示す図であって、製造装置の反応管長手方向の軸芯線を含む鉛直断面図である。反応管1は円筒状石英製であり、これには、キャリアガス導入ゾーン2、原料気化ゾーン3、ガス混合ゾーン4、気相反応ゾーン5及び冷却ゾーン6が配設されている。キャリアガス導入ゾーン2は、同図で左側に相当する反応管1の最も上流部に配設され、その下流側に向かって順に、原料を気化させる原料気化ゾーン3、気化した原料ガスとキャリアガスとを混合するガス混合ゾーン4、混合ガス中の原料ガスと還元性ガスとで気相化学反応をさせる気相反応ゾーン5、並びに反応後の生成物及び未反応ガスを冷却する冷却ゾーン6が配設されている。冷却ゾーン6を通過した反応管1の出口1bの下流側には金属粉末捕集器7及び金属粉末回収装置8が接続されており、生成した金属粉をこれらにより捕集し、回収する。上記原料ガスとしては、NiCl2ガス等の金属ハロゲン化物ガスを使用し、キャリアガスとしては、Arガス等の不活性ガスを使用する。
【0015】
上記原料気化ゾーン3には石英製の原料気化容器9が設けられており、原料気化容器9内の金属ハロゲン化物10を加熱し、気化させて金属ハロゲン化物ガス11を得るための溶融加熱装置12が、原料気化ゾーン3並びにこれの上流側に隣接する不活性ガス導入ゾーン2及び下流側に隣接するガス混合ゾーン4の一部領域を含む反応管1の外周部を取り囲んで設けられている。
【0016】
なお、上記反応管1の入口1aの上流側には、不活性ガス供給装置(図示せず)に接続する不活性ガス供給管13が設けられており、これより不活性ガス14が反応管1内へ導入される。不活性ガス14は、ガス混合ゾーン4で得られる金属ハロゲン化物ガス11と不活性ガス14との混合ガス中の金属ハロゲン化物ガス11の分圧が目標値に保持されるように、不活性ガス14の流量を制御しつつ反応管1のキャリアガス導入ゾーン2に供給する。
【0017】
一方、還元性ガス供給管15がキャリアガス導入ゾーン2から反応管1の内部に挿入され、反応管1の内部をその長手方向のガス通流方向下流側に延長し、その先端がガス混合ゾーン4の後端部で反応管1の中央に位置するように配設されている。この還元性ガス供給管15の先端には還元性ガス噴射ノズル17が設けられており、還元性ガス噴射ノズル17の位置は、気相反応ゾーン5の入口に位置している。気相反応ゾーン5及びこれの上流側に隣接するガス混合ゾーン4の一部領域を含む反応管1の外周部を取り囲んで気相加熱装置18が設けられており、還元性ガス噴射ノズル17から噴射される還元性ガス19aによる金属ハロゲン化物ガス11の還元反応を促進して金属粉を得るために、気相反応ゾーン5の雰囲気温度を適切な温度に保持する。
【0018】
なお、図1の例において、還元性ガス供給管15は反応管1内の原料気化ゾーン3及びガス混合ゾーン4に敷設されているので、還元性ガス19bはこれらを通過する間に、例えば800℃程度の高温に予熱されるので、気相加熱装置18の省エネルギー化にも寄与する。但し、この場合には反応管内の還元性ガス供給管15は石英製等耐熱性を有する材料で製作されたものとする。
【0019】
次に、還元性ガス噴射ノズル17の形状について説明する。還元性ガス噴射ノズル17は、還元性ガス供給管15を通ってその先端から噴射させる還元性ガス19aを、反応管1の気相反応ゾーン5を長手方向にほぼ平行に流れている金属ハロゲン化物ガス11と不活性ガス14とが混合されたガス(以下、「金属ハロゲン化物ガス含有ガス」という)20の気流に対して、角度θ1(゜)をなす方向で且つ当該噴射ノズルの軸芯線を中心として周囲360°にわたりカーテン状に所望の流量を噴射させる機能を有するものである。但し、角度θ1(゜)は、図2及び図3に示すように、金属ハロゲン化物ガス含有ガス20の気流の下流方向と還元性ガス噴射ノズル17から噴射された還元性ガス19aの噴射方向とのなす角度をいう。この還元性ガス噴射ノズル17は、角度θ1(゜)が30゜超90゜未満である。また、この角度θ1(゜)は、好ましくは45゜乃至85゜である。
【0020】
図3は、気相反応ゾーン5を流れる金属ハロゲン化物ガス含有ガス20の気流方向と還元性ガス噴射ノズル17から噴射された還元性ガス19aの噴射方向とのなす角度をθ1(゜)(但し、30゜<θ1<90゜、好ましくは45゜≦θ1≦85゜)とするための還元性ガス噴射ノズル17の一例を示し、その軸芯線を含み還元性ガス供給管15aの長手方向に平行な縦断面図である。還元性ガス噴射ノズル17は、横断面が円管形状を有するノズル本体17aと、そのガス通流方向の下流側に配設された気流方向調整部材17bと、ノズル本体17aと気流方向調整部材17bとを連結して気流方向調整部材17bをノズル本体17aに対して固定する複数の細いが剛性を有する支持部材17cとを有する。気流方向調整部材17bは、砲弾状をなし、ノズル本体17a側の部分は円錐状をなしてその尖端がノズル本体17aのガス出口中心に位置している。ノズル本体17aの中心及び気流方向調整部材17bの前記尖端は還元性ガス供給管15aの軸芯線105a上にある。一方、気流方向調整部材17bのガス通流方向下流側の部分は、円柱状をなしてガス通流方向に延びる部分と、そのガス通流方向の後端で絞られた部分とから形成されている。
【0021】
このように構成された還元性ガス噴射ノズル17は、その後方端部(上流側の端部)が還元性ガス供給管15の先端部と締付けボルト22により夫々のフランジ23、24で密閉接合されている。還元性ガス19aは、ノズル本体17aと気流方向調整部材17bとの間隙を、気流方向調整部材17bの円錐台の斜面に沿って噴出される。このとき、気流方向調整部材17bは砲弾状をなしているので、ノズル17から吐出される還元性ガス19aの気流は気流方向調整部材17bの後端部で循環渦が発生することなく、一様な流れが得られる。
【0022】
上記金属ハロゲン化物ガス含有ガス20の気流方向と還元性ガス19aの噴射方向とのなす角度θ1(゜)を、30゜超90゜未満の範囲の所望する角度にするためには、ノズル本体17aの先端面のノズル本体長手方向に対する傾斜角度をその所望する角度に一致させ、且つ気流方向調整部材17bの円錐台斜面と底面との交線におけるその円錐台の斜面下向き方向と金属ハロゲン化物ガス含有ガス20とのなす角度を、上記所望する角度に一致させた形状にすればよい。
【0023】
次に、上述の如く構成された本発明の第1実施形態に係る金属微粉の製造装置を使用して金属微粉を製造する方法について説明する。
【0024】
図1に示したように、気相化学反応を起こさせる反応管1の内部に設けられた原料気化容器9中の金属ハロゲン化物10を溶融加熱装置12で加熱して気化させ、得られた金属ハロゲン化物ガス11を、キャリアガスの不活性ガス14で反応管1内に流す。反応管1中を流れる過程で、金属ハロゲン化物ガス11と不活性ガス14とは混合されて、金属ハロゲン化物ガス含有ガス20を形成して流れ続ける。一方、金属ハロゲン化物ガス含有ガス20がほぼ反応管1内で均一ガス組成になった反応管1の長手方向位置で、反応管1の内部に設けられた還元性ガス噴射ノズル17から、その反応管の内部を流れる上記金属ハロゲン化物ガス含有ガス20の気流の中に、還元性ガス19aを噴射する。この還元性ガス19aの噴射方向は、この還元性ガス19aの噴射方向と金属ハロゲン化物ガス含有ガス20の気流の方向とのなす角度をθ1で表記すると(図2及び3参照)、角度θ1が30゜超90゜未満となるように調節する。ここで、角度θ1の調節は、図3に示したように、還元性ガス噴射ノズル17のノズル本体17aの先端面の傾斜角度及び気流方向調整部材17bの円錐台の傾斜面の底面に対する傾斜角度を、角度θ1が所望する値に製作された還元性ガス噴射ノズル17に取り替えることにより行う。
【0025】
「角度θ1:30゜超90゜未満、好ましくは45゜乃至85゜」
本発明の第1実施形態において、角度θ1を30゜超90゜未満とするのは、下記理由による。角度θ1を小さくするにつれて、上記製造装置で製造される金属微粉の中に含まれるその金属微粉の平均粒径の数倍の粒径を有する粗大粒子の個数が増加し、角度θ1が30゜以下になると、MLCCの製造過程においては、内部電極材としてペーストに分散させた場合、乾燥後に均一で高密度の金属膜が得られ難い。特に超微粉の金属粉、例えば平均粒径が0.2μm前後のNi粉を使用してMLCCを薄層化しようとする場合には、上記粗大粒子の個数を少なくするために、角度θ1を45゜以上にすることが好ましい。一方、角度θ1が90゜以上になると、反応管1の壁への金属Ni膜の付着量が多くなり、金属微粉の収率が低下し、また付着した金属Ni膜が多量に蓄積すると、これを壁から剥離させて操業しなければならなくなり、生産性が低下する。このような現象の発生を防止するためには、角度θ1は90゜未満であることが必要であり、更に金属Ni膜の付着量を少なくするために、角度θ1は85゜以下であることが好ましい。従って、角度θ1は30゜超90゜未満であることが必要であり、好ましくは45゜乃至85゜であることが望ましい。
【0026】
「還元性ガスは反応管の内部に設けられた噴射ノズルから、反応管の内部を流れる金属ハロゲン化物ガス含有ガスの気流の中に噴射すること」
本発明の第1実施形態において、還元性ガスは反応管の内部に設けられた噴射ノズルから、反応管の内部を流れる金属ハロゲン化物ガス含有ガスの気流の中に噴射する理由は、周囲を広い横断面積にわたって流れている金属ハロゲン化物ガス含有ガス中へ還元性ガスを吹き込むことにより、還元性ガスが反応効率よく作用する点において効果的であるからである。
【0027】
次に、本発明の第2実施形態に係る金属微粉の製造方法及び製造装置について説明する。図4は、本発明の第2実施形態に係る金属微粉の製造装置を示す図であって、製造装置の反応管長手方向の軸芯線を含む鉛直断面図である。但し、同図中の原料気化装置21は、反応管1長手方向に直角方向の鉛直断面図を示す。反応管1は円筒状石英製であり、これには、気相反応ゾーン5及び冷却ゾーン6が配設されている。反応管1には同図で左側に相当する反応管1の上流側から、還元性ガス供給管15を通って還元性ガス19が反応管1へ導入される。反応管1へ導入された還元性ガス19は、反応管1の長手方向中央部の気相反応ゾーン5に供給される。気相反応ゾーン5の周囲を、気相加熱装置18が取り巻いて設けられている。気相反応ゾーン5の下流側には、反応後の生成物及び未反応ガスを冷却する冷却ゾーン6が設けられている。冷却ゾーン6を通過した反応管1の出口1bの下流側には、金属粉末捕集器7及び金属粉末回収装置8が接続されており、生成した金属粉をこれらにより捕集し、回収する。上記原料ガスとしては、NiCl2ガス等の金属ハロゲン化物ガスを使用し、キャリアガスとしては、Arガス等の不活性ガスを使用する。
【0028】
一方、原料気化装置21が反応管1とは別に配設されている。原料気化装置21は、原料気化容器9及び溶融加熱装置12からなり、原料気化容器9内の金属ハロゲン化物10を溶融加熱装置12で加熱・溶融してこれを気化させる。原料気化装置21においては、全体を所定の気化温度に保持する必要があるので、原料気化容器9の他に、不活性ガス供給管13及び金属ハロゲン化物ガス含有ガス供給管25も加熱する。このため、不活性ガス供給管13及び金属ハロゲン化物ガス含有ガス供給管25を覆うようにして、加熱装置12aを設け、この加熱装置12aにより、各配管を加熱するようになっている。この加熱装置12aは例えば抵抗ヒータである。気化した金属ハロゲン化物ガス11は、原料気化容器9の上流側入口から導入されるキャリアガスとしての不活性ガス14と混合し、組成が均一化されて金属ハロゲン化物ガス含有ガス20となる。その際、不活性ガス14は、金属ハロゲン化物ガス含有ガス20中の金属ハロゲン化物ガス11の分圧が目標値に保持されるように、不活性ガス14の流量を制御して供給する。このようにして、原料ガスである金属ハロゲン化物ガス11とこれのキャリアガスである不活性ガス14との混合ガスである金属ハロゲン化物ガス含有ガス20が、原料気化装置21において調製される。原料気化装置21で調製された金属ハロゲン化物ガス含有ガス20は、原料気化容器9の出口に接続された金属ハロゲン化物ガス含有ガス供給管25を通って反応管1内の気相反応ゾーン5へ供給される。
【0029】
金属ハロゲン化物ガス含有ガス供給管25は、反応管1の入口近傍の周壁を貫通して内部に入り、そこから向きを変えて反応管1の長手方向に平行に延設され、気相反応ゾーン5の入口まで敷設され、その先端に金属ハロゲン化物ガス含有ガスを噴射させるノズル(以下、「金属ハロゲン化物ガス含有ガス噴射ノズル」という)26が設けられている。金属ハロゲン化物ガス含有ガス噴射ノズル26から噴射される金属ハロゲン化物ガス含有ガス20aが気相反応ゾーン5を流れる還元性ガス19cの気流の中に噴射される。そのとき、還元反応が促進されるように、気相加熱装置18により気相反応ゾーン5の雰囲気が適切な温度に保持される。
【0030】
次に、金属ハロゲン化物ガス含有ガス噴射ノズル26の形状について説明する。金属ハロゲン化物ガス含有ガス噴射ノズル26は、金属ハロゲン化物ガス含有ガス供給管25を通ってその先端から噴射させる金属ハロゲン化物ガス含有ガス20aを、反応管1の気相反応ゾーン5を長手方向にほぼ平行に流れている還元性ガス19cの気流に対して、角度θ2(゜)をなす方向で且つ当該噴射ノズルの軸芯線を中心として周囲360°にわたりカーテン状に所望の流量を噴射させる機能を有するものである。但し、角度θ1(゜)は、図5に示すように還元性ガス19cの気流の下流方向と金属ハロゲン化物ガス含有ガス噴射ノズル26から噴射された金属ハロゲン化物ガス含有ガス20aの噴射方向とのなす角度をいう。この金属ハロゲン化物ガス含有ガス噴射ノズル26は、角度θ2(゜)が30゜超90゜以下である。また、この角度θ2(゜)は、好ましくは45゜乃至85゜である。
【0031】
図6は、気相反応ゾーン5を流れる還元性ガス19cの気流方向と金属ハロゲン化物ガス含有ガス噴射ノズル26から噴射された金属ハロゲン化物ガス含有ガス20aの噴射方向とのなす角度をθ2(゜)(但し、30゜<θ2≦90゜、好ましくは45゜≦θ2≦85゜)とするための金属ハロゲン化物ガス含有ガス噴射ノズル26の例について、その軸芯線を含み金属ハロゲン化物ガス含有ガス供給管25aの長手方向に平行な縦断面図を示す。金属ハロゲン化物ガス含有ガス噴射ノズル26は、横断面が円管形状を有するノズル本体26aと、これの前方に剛性を有する複数の細い支持部材26cで接合・固定された気流方向調整部材26bとで構成されている。気流方向調整部材26bは、円錐台形状であり、円錐台の先端が金属ハロゲン化物ガス含有ガス供給管25aの軸芯線205a上にあって、金属ハロゲン化物ガス含有ガス20aの上流方向を向き、且つ金属ハロゲン化物ガス含有ガス供給管25a及びノズル本体26aと同心円上に設置されている。このように構成された金属ハロゲン化物ガス含有ガス噴射ノズル26は、その後方端部(上流側の端部)が金属ハロゲン化物ガス含有ガス供給管25aの先端部と締付けボルト22により夫々のフランジ23、24で密閉接合されている。金属ハロゲン化物ガス含有ガス20aは、ノズル本体26aと気流方向調整部材26bとの間隙を、気流方向調整部材26bの円錐台の斜面に沿って噴出される。
【0032】
上記還元性ガス19cの気流方向と金属ハロゲン化物ガス含有ガス20aの噴射方向とのなす角度θ2(゜)を、30゜超90゜以下の範囲の所望する角度にするためには、ノズル本体26aの先端面のノズル本体長手方向に対する傾斜角度をその所望する角度に一致させ、且つ気流方向調整部材26bの円錐台斜面と底面との交線におけるその円錐台の斜面下向き方向と還元性ガス19cとのなす角度を、上記所望する角度に一致させた形状にすればよい。
【0033】
次に、上述の如く構成された本発明の第2実施形態に係る金属微粉の製造装置を使用して金属微粉を製造する方法について説明する。
【0034】
図4に示したように、還元性ガス19を反応管1の上流側から導入し、反応管1の気相反応ゾーン5へ流し、還元性ガス19cの気流を形成させる。一方、原料気化装置21で調製された金属ハロゲン化物ガス含有ガス20を、反応管1の内部まで挿入された金属ハロゲン化物ガス含有ガス供給管25aを通して、気相反応ゾーン5の入口であって反応管1の内部に設けられた金属ハロゲン化物ガス含有ガス噴射ノズル26から、その反応管内部を流れる上記還元性ガス19cの気流の中に噴射する。この金属ハロゲン化物ガス含有ガス噴射ノズル26から噴射させる金属ハロゲン化物ガス含有ガス20aの噴射方向は、この金属ハロゲン化物ガス含有ガス20aの噴射方向と還元性ガス19cのガス気流の方向とのなす角度を、θ2で表記すると(図5及び6参照)、角度θ2が30゜超90゜以下となるように調節する。ここで、角度θ2の調節は、図6に示したように、金属ハロゲン化物ガス含有ガス噴射ノズル26のノズル本体26aの先端面の傾斜角度及び気流方向調整部材26bの円錐台の傾斜面の底面に対する傾斜角度を、角度θ2が所望する値に製作された金属ハロゲン化物ガス含有ガス噴射ノズル26に取り替えることにより行う。
【0035】
「角度θ2:30゜超90゜以下、好ましくは45゜乃至85゜」
本発明の第2実施形態において、角度θ2を30゜超90゜以下とするのは、下記理由による。角度θ2を小さくするにつれて、上記製造装置で製造される金属微粉の中に含まれるその金属微粉の平均粒径の数倍の粒径を有する粗大粒子の個数が増加し、角度θ2が30゜以下になると、MLCCの製造過程においては、内部電極材としてペーストに分散させた場合、乾燥後に均一で高密度の金属膜が得られ難い。特に超微粉の金属粉、例えば平均粒径が0.2μm前後のNi粉を使用してMLCCを薄層化しようとする場合には、上記粗大粒子の個数を少なくするために、角度θ2を45゜以上にすることが好ましい。しかしながら、角度θ2が大きくなり90゜を超えると、反応管1の壁への金属Ni膜の付着量が増加し、金属微粉の収率が低下し、また付着した金属Ni膜が多量に蓄積すると、これを壁から剥離させて操業しなければならなくなり、生産性が低下する。このような現象の発生を防止するためには、角度θ2は90゜以下であることが必要であり、更に金属Ni膜の付着量を少なくするために、角度θ2は85゜以下であることが好ましい。従って、角度θ2は30゜超90゜以下であることが必要であり、好ましくは45゜乃至85゜であることが望ましい。
【0036】
「金属ハロゲン化物ガス含有ガスは反応管の内部に設けられた噴射ノズルから、反応管の内部を流れる還元性ガスの気流の中に噴射すること」
本発明の第2実施形態において、金属ハロゲン化物ガス含有ガスは反応管の内部に設けられた噴射ノズルから、反応管の内部を流れる還元性ガスの気流の中に噴射する理由は、周囲を広い横断面積にわたって流れている還元性ガス気流の中へ金属ハロゲン化物ガス含有ガスを吹き込むことにより、金属ハロゲン化物ガス含有ガスが反応効率よく作用する点において効果的であるからである。更に具体的には、下記において述べるように、NiCl2ガスが還元されて生成するNiが原子レベルの大きさのガス状態で存在しているときに、この周囲にはH2ガスの存在量が多いので、NiガスのNi粒子への成長が抑制されて、得られるNi微粉中に混在するNiの粗大粒子の個数が多くなるのが抑制される。従って、第1実施形態におけるように、NiCl2ガス含有ガスの気流の中へ、このガス気流の横断面中央部からH2ガスを噴射させて吹き込むという方式よりも、この第2実施形態におけるように、H2ガスの気流の中へ、このガス気流の内部からNiCl2ガス含有ガスを噴射する方式の方が、得られるNi微粉中に混在する粗大粒子の個数が少なくなると共に、反応管の内壁へのNi膜付着量も少なくなるからである。
【0037】
以上述べたとおり、本発明者等は、本発明に係る金属微粉の製造方法及び製造装置においては、製造される金属微粉中にこの金属微粉の平均粒子の数倍径の粗大粒子が混在する個数を極力減らすためには、第1及び第3発明において反応管内を流れる金属ハロゲン化物ガス含有ガスの気流方向とこのガス気流に対して噴射する還元性ガスの噴射方向とのなす角度θ1(゜)、並びに第2及び第4発明において反応管内を流れる還元性ガスの気流方向とこのガス気流に対して噴射する金属ハロゲン化物ガス含有ガスの噴射方向とのなす角度θ2(゜)は、いずれも30゜よりも大きくすべきであることを知見した。例えば、NiCl2ガスのH2ガスによる還元反応は、NiCl2+H2=Ni(s)+2HCl(g)で表すことができ、これらの両ガス間の反応においては、ガス噴射ノズルの噴射口の形状、反応管の内径、反応管を流れる一方のガスの流量及び線速度、噴射ノズルから噴射される他方のガスの流量及び線速度並びに反応ゾーンの温度によって影響を受けるが、少なくとも1秒以内の極めて短時間で反応が完了すると考えられるので、これらの両ガス間の反応は、ガス噴射ノズル先端部から数cm以内の領域で完了していると仮定し、そして、この反応直後には原子レベルの大きさのNiガスが生成しており、この原子レベルのNiガスが、与えられた微小反応時間とこのNiガス濃度とをパラメータとしてNi粒子に成長し、その結果、金属Ni微粒子が得られる。本発明におけるように、反応管内を流れる一方のガス(NiCl2ガス又はH2ガス)に対して、ノズルから噴射された他方のガス(夫々H2ガス又はNiCl2ガス)が反応するという条件下では、NiCl2ガスのような原料ガスとH2ガスのような還元性ガスのガス気流に注目し、特に両ガス気流が交差するときに両ガス気流の方向がなす角度が混合性に及ぼす影響の大きさに着眼し、この両ガス気流の方向がなす角度、即ち本発明における角度θ1又はθ2が大きいほど(但し、θ1は90°未満、θ2は90°以下のとき)、両ガスが当量同士で反応するための接触・混合が行われ易く、従って、上記原子レベルの大きさのNiガスによる金属Ni微粒子への成長が抑制される、即ち粗大粒子の混在個数が少なくなると考え、反応生成したNi微粒子中に混在する粗大粒子の個数に及ぼす角度θ1又はθ2の影響について試験・調査した。その結果、上記知見を得たものである。
【0038】
以上のように構成された金属微粉の製造方法を使用し、また上記製造装置を使用して気相化学反応法により、金属ハロゲン化物ガスと還元性ガスとを接触・混合させて水素還元反応を起こさせることにより、粒度分布範囲が狭く且つ粗大粒子の混在個数が少ない金属微粉を、反応管内壁への金属Ni膜の付着を抑制しつつ得ることができる。
【0039】
【実施例】
次に、本発明の実施例の効果について、本発明の範囲から外れる比較例と比較して説明する。
【0040】
本発明の第1実施形態におけるように、反応管内を流れるNiCl2ガスを含有するガス気流に対して、ガス噴射ノズルからH2ガスを噴射させて、両ガスを接触・混合する方式(以下、「ガス噴射混合方式1」という)、又は第2実施形態におけるように、反応管内を流れるH2ガスの気流に対して、ガス噴射ノズルからNiCl2ガスを含有するガスを噴射させて、両ガスを接触・混合する方式(以下、「ガス噴射混合方式2」という)により金属Ni微粉を製造する方法について試験した(実施例)。これら噴射混合方式1及び2の夫々の場合について、NiCl2ガス含有ガスの気流方向と噴射ノズルから噴射されたH2ガスの噴射方向とのなす角度θ(1)を変化させた場合、及びH2ガスの気流方向と噴射ノズルから噴射されたNiCl2ガス含有ガスの噴射方向とのなす角度θ(2)を変化させた場合について、金属Ni微粉の製造試験を行った。なお、本発明の範囲外の試験として、上記角度θ(1)又はθ(2)が本発明の条件範囲から外れる場合の試験も行った(比較例)。
【0041】
表1に、実施例及び比較例の夫々におけるガス噴射混合方式の種別並びに両ガスの気流の方向がなす角度θ(1)又はθ(2)の設定値を示す。
【0042】
【表1】
【0043】
その他に、ガス噴射混合方式1及び2のいずれの場合においても、実施例及び比較例に共通の試験条件を下記の通り設定した。即ち、NiCl2の気化温度を900℃、NiCl2ガスのキャリアガスとしてArガスを使用し、その流量を5リットル/分、NiCl2ガスとArガスとからなるNiCl2ガス含有ガス中のNiCl2ガスの分圧を0.4、気相反応ゾーンにおける水素還元反応温度を1050℃とし、そしてH2ガス流量を5リットル/分とした。
【0044】
上記条件で金属Niの微粉製造試験を行い、金属粉末回収装置で得られた金属Ni微粉粒子の平均粒径、Ni微粉粒子中に混在する粗大粒子の個数及び反応管内壁への金属Ni膜の付着量について調査した。金属Ni微粉粒子の平均粒径は、レーザー回折法により所定の測定試料中の全粒子数を求め、次いで小さい側の粒子から粒子数を積算して50粒子数%に達したときの粒子径であると定義し、そして、粗大粒子は、上記平均粒径の2倍以上の粒径を有するものと定義し、粗大粒子の混在個数の測定方法は、走査型電子顕微鏡(SEM=Scanning Electron Microscope)により縦横が10×10μmの視野中に観察された粗大粒子の個数をSEM写真上で観察・測定し、10視野についての測定値の平均値を、粗大粒子の混在個数と定義した。また、反応管内壁への金属Ni膜の付着量の評価は、内壁に付着したNi膜を機械的に回収するとともに、反応管を硝酸洗浄した洗浄水中のNiイオン濃度からNi重量を見積る方法で行った。上記各測定結果を、上記表1に併記する。
【0045】
上記試験結果より下記のことがわかる。比較例1及び2は、両ガスの気流方向のなす角度θ(1)が夫々0°及び30°であって本発明の規定範囲を外れて小さいので、ガス噴射ノズルから噴射されたH2ガスが、反応管内を流れるNiCl2ガス含有ガスの気流に対する混合性が小さいため、Ni微粉中の粗大粒子の混在個数が多い。ところが、比較例3は、両ガスの気流方向のなす角度θ(1)が90°であって本発明の規定範囲を外れて大きいために、両ガスの混合性は良好であったため、Ni微粉中の粗大粒子の混在個数は少なくて良好ではあるが、反応管炉壁へのNi膜付着量が多いため、操業上生産性を低下させることになり、望ましくない。
【0046】
比較例4及び5は、上記比較例1及び2と類似した傾向があり、両ガスの気流方向のなす角度θ(2)が夫々0°及び30°であって本発明の規定範囲を外れて小さいので、ガス噴射ノズルから噴射されたNiCl2ガス含有ガスが、反応管内を流れるH2ガスの気流に対する混合性が小さいため、Ni微粉中の粗大粒子の混在個数が多い。
【0047】
これに対して、ガス噴射方式1(NiCl2ガス含有ガスの気流に対してH2ガスを噴射させる方式)の実施例1乃至3、及びガス噴射方式2(H2ガスの気流に対してNiCl2ガス含有ガスを噴射させる方式)の実施例4乃至7はいずれも、夫々両ガスの気流方向のなす角度θ(1)、及びθ(2)が本発明の条件の規定範囲内にあるので、Ni微粉の平均粒径は小さく、粗大粒子の混在個数は少なくて良好であり、しかも反応管内壁へのNi膜付着量が抑制されており望ましい。
【0048】
なお、ガス噴射方式が1における比較例3と、ガス噴射方式が2における実施例7とを、両ガスの気流方向のなす角度のみについて比較すると、いずれも90°であって同一であるが、粗大粒子の混在個数及び反応管内壁へのNi付着膜量共に、実施例7の方が優れている。これは、ガス噴射方式が2である還元性ガスであるH2ガスの気流の中に原料ガス含有ガスであるNiCl2ガス含有ガスを噴射して両ガスを混合した場合(実施例7)の方が、NiCl2ガスが還元されて生成する前述した原子レベルの大きさのNiガスの周囲に存在するH2ガスの量が多いために、NiガスのNi粒子への成長が抑制されたために、粗大粒子の混在個数が少なくなったと同時に、金属Ni膜としての析出量も少なかったためであると考えられる。
【0049】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明によれば、気相化学反応法により金属ハロゲン化物ガスを還元性ガスで還元することにより、平均粒径の数倍の粒径を有するような粗大粒子の混在個数が極めて少ない金属微粉を生産性よく製造する方法及び製造装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態に係る金属微粉の製造装置を示す反応管長手方向の軸芯線を含む縦断面図である。
【図2】図1中の気相反応ゾーンにおいて金属ハロゲン化物ガス含有ガスの気流方向とノズルから噴射される還元性ガスの噴射方向とのなす角度(θ1(゜))を説明する図である。
【図3】金属ハロゲン化物ガス含有ガスの気流方向と還元性ガスの噴射方向とのなす角度がθ1(゜)(但し、30゜<θ1<90゜)である場合の還元性ガス噴射ノズルの例について、そのノズルの軸芯線を含み、還元性ガス供給管の長手方向に平行な縦断面図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係る金属微粉の製造装置を示す反応管長手方向の軸芯線を含む縦断面、一部その長手方向に直角な縦断面図である。
【図5】図4中の気相反応ゾーンにおいて還元性ガスの気流方向とノズルから噴射される金属ハロゲン化物ガス含有ガスの噴射方向とのなす角度(θ2(゜))を説明する図である。
【図6】還元性ガスの気流方向と金属ハロゲン化物ガス含有ガスの噴射方向とのなす角度がθ2(゜)(但し、30゜<θ2≦90゜)である場合の金属ハロゲン化物ガス含有ガス噴射ノズルの例について、その軸芯線を含み、金属ハロゲン化物ガス含有ガス供給管の長手方向に平行な縦断面図である。
【符号の説明】
1:反応管
1a:反応管入口
1b:反応管出口
2:キャリアガス導入ゾーン
3:原料気化ゾーン
4:ガス混合ゾーン
5:気相反応ゾーン
6:冷却ゾーン
7:金属粉末捕集器
8:金属粉末回収装置
9:原料気化容器
10:金属ハロゲン化物
11:金属ハロゲン化物ガス
11a:還元性ガス(リング状スリット型ガス噴射ノズルから噴射される)
12:溶融加熱装置
13:不活性ガス供給管
14:不活性ガス
15:還元性ガス供給管
15a:(気相反応ゾーンに入る前の)還元性ガス供給管
105a:(還元性ガス供給管15aの)軸芯線
16:反応管の軸芯線
17:還元性ガス噴射ノズル
17a:ノズル本体
17b:気流方向調整部材
17c:支持部材
18:気相加熱装置
19:還元性ガス
19a:(噴射ノズル17から噴射される)還元性ガス
19b:(反応管内の還元性ガス供給管内部で予熱される)還元性ガス
19c:(気相反応ゾーンを流れる)還元性ガス
20:(気相反応ゾーンを流れる)金属ハロゲン化物ガス含有ガス
20a:(噴射ノズル26から噴射される)金属ハロゲン化物ガス含有ガス
21:原料気化装置
22:締付けボルト
23、24:フランジ
25:金属ハロゲン化物ガス含有ガス供給管
25a(気相反応ゾーンに入る前の)金属ハロゲン化物ガス含有ガス供給管
205a:(金属ハロゲン化物ガス含有ガス供給管25aの)軸芯線
26:金属ハロゲン化物ガス含有ガス噴射ノズル
26a:ノズル本体
26b:気流方向調整部材
26c:支持部材
27:排ガス
Claims (10)
- 反応管内を通流する金属ハロゲン化物ガスを還元性ガスにより還元して金属微粉を製造する方法において、反応管の内部に金属ハロゲン化物ガスを含有する原料ガスを流し、前記反応管内にノズル本体と気流方向調整部材とからなるガス噴射ノズルを設け、前記ノズル本体と前記気流方向調整部材との隙間から、前記原料ガスの気流方向とのなす角度θ1が、30゜超90゜未満となる方向に還元性ガスを噴射することを特徴とする金属微粉の製造方法。
- 前記θ1が45゜乃至85゜であることを特徴とする請求項1に記載の金属微粉の製造方法。
- 反応管内を通流する金属ハロゲン化物ガスを還元性ガスにより還元して金属微粉を製造する方法において、反応管の内部に還元性ガスを流し、前記反応管内にノズル本体と気流方向調整部材とからなるガス噴射ノズルを設け、前記ノズル本体と前記気流方向調整部材との隙間から、前記還元性ガスの気流方向とのなす角度θ2が、30゜超90゜以下となる方向に、金属ハロゲン化物ガスを含有する原料ガスを噴射することを特徴とする金属微粉の製造方法。
- 前記θ2が45゜乃至85゜であることを特徴とする請求項3に記載の金属微粉の製造方法。
- 前記金属ハロゲン化物ガスは塩化ニッケルガスであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の金属微粉の製造方法。
- 前記還元性ガスは水素ガスであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の金属微粉の製造方法。
- 還元反応部における反応管の内部の気相中で、金属ハロゲン化物ガスの気流に還元性ガスの気流を混合し、気相化学反応により金属微粉を製造する金属微粉の製造装置において、反応管内に還元性ガス噴射ノズルが設けられており、この噴射ノズルはノズル本体と気流方向調整部材とからなり、前記ノズル本体と前記気流方向調整部材との隙間から噴射されたガスの噴射方向は、前記反応管内を流れる金属ハロゲン化物ガスを含有する原料ガスの気流の方向となす角度θ1が30゜超90゜未満となるものであることを特徴とする金属微粉の製造装置。
- 前記θ1が45゜乃至85゜であることを特徴とする請求項7に記載の金属微粉の製造装置。
- 還元反応部における反応管の内部の気相中で、還元性ガスの気流に金属ハロゲン化物ガスの気流を混合し、気相化学反応により金属微粉を製造する金属微粉の製造装置において、反応管内に金属ハロゲン化物ガスを含有する原料ガスの噴射ノズルが設けられており、この噴射ノズルはノズル本体と気流方向調整部材とからなり、前記ノズル本体と前記気流方向調整部材との隙間から噴射されたガスの噴射方向は、前記反応管内を流れる還元性ガスの気流の方向となす角度θ2が30゜超90゜以下となるものであることを特徴とする金属微粉の製造装置。
- 前記θ2が45゜乃至85゜であることを特徴とする請求項9に記載の金属微粉の製造装置。
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JP2002307462A JP2004143485A (ja) | 2002-10-22 | 2002-10-22 | 金属微粉の製造方法及び製造装置 |
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CN113579247A (zh) * | 2021-08-17 | 2021-11-02 | 化学与精细化工广东省实验室潮州分中心 | 一种纳米镍粉的制备方法 |
JP7400021B1 (ja) | 2022-06-13 | 2023-12-18 | Jfeミネラル株式会社 | 金属粉およびその製造方法 |
-
2002
- 2002-10-22 JP JP2002307462A patent/JP2004143485A/ja active Pending
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