JP2004143000A - 半導体基板のダメージ層厚さおよび抗折強度の測定方法ならびにそれらの測定に使用する薄層化装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明は、半導体基板の薄層化過程で生じるダメージ層厚さを測定する方法を提供する。また、薄層化条件に対する半導体基板の抗折強度を測定する方法をも提供する。
【解決手段】本発明の測定方法は、半導体基板を真空吸引作用により真空吸着固定した状態で薄層化する装置を用いており、半導体基板の薄層化過程において、真空吸引作用を受けない状態にて固定された半導体基板が割れる時の半導体基板厚さからダメージ層厚さを求める。その一方、真空吸引作用を受ける状態にて固定された半導体基板が薄層過程にて割れる時の半導体基板厚さから、薄層化条件に対する半導体基板の抗折強度を得ることができる。
【選択図】 図1
【解決手段】本発明の測定方法は、半導体基板を真空吸引作用により真空吸着固定した状態で薄層化する装置を用いており、半導体基板の薄層化過程において、真空吸引作用を受けない状態にて固定された半導体基板が割れる時の半導体基板厚さからダメージ層厚さを求める。その一方、真空吸引作用を受ける状態にて固定された半導体基板が薄層過程にて割れる時の半導体基板厚さから、薄層化条件に対する半導体基板の抗折強度を得ることができる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体基板のダメージ層厚さおよび抗折強度の測定方法ならびにそれらの測定に使用する装置に関し、より詳細には、半導体基板を薄層化することによって半導体基板表面に生じるダメージ層の厚さ、および、そのような薄層化過程にある半導体基板の強度を求める方法、ならびにその方法の実施に使用する薄層化装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、半導体、特に化合物半導体の分野では、パワートランジスタ素子の高密度化、集積化が進められている。特に移動体通信機器が小型化および軽量化するのに伴い、素子が微細化する傾向にある。
【0003】
一般的に、素子が小さくなるに従って、素子の熱抵抗が増加する傾向がある。素子の熱抵抗が増加すると、高周波増幅効率の低下および素子の寿命の短縮につながり、素子の高性能性および高信頼性等が損なわれる。従って、高性能性で高信頼性な素子を実現するためには、素子の熱抵抗を下げることが不可欠であり、素子の放熱効果を改善する様々な方法が考えられている。
【0004】
その一つの方法として、半導体基板表面上に集積回路素子パターンを形成した後、パターンが形成されてない裏面から半導体基板を薄層化した素子を作製することによって、素子の裏面からの放熱を増加させる方法がある。
【0005】
この方法では、半導体基板表面を研削および/または研磨することによって、半導体基板を薄層化している。研削では、砥石を用いて半導体基板表面を削ることにより半導体基板を薄層化しており、研磨では、研磨材を用いて半導体基板表面を磨くことにより半導体基板を薄層化している。
【0006】
一般的に、半導体基板の薄層化は、薄層化後の半導体基板の厚さがハンドリングに関して支障がない程度にまで行なわれる。例えば、GaAs基板を約150μmの厚さまで薄層化する場合は、砥石(粒径:約100μm)を用いた研削のみで加工することができる一方、厚さが150μmより小さくなるように薄層化する場合は、研磨材(粒径:約3〜9μm)を用いた研磨によって加工する必要がある。
【0007】
このような研削または研磨では、半導体基板の表面を機械的に加工しているので、半導体基板の表面近傍にある結晶が破壊され、残留応力が結晶内部に発生し、従って、半導体基板の表面からその内部に向かってダメージ層(または加工変質層)が生じることになる。ダメージ層厚さは、薄層化条件にもよるが、一般的に研削および/または研磨後の半導体基板表面の凹凸構造サイズに比例するものであり、例えば、GaAsから成る半導体基板を薄層化する場合では、ダメージ層厚さは、半導体基板表面の凹凸構造サイズの約5〜10倍であると推測されている(例えば、非特許文献1参照)。
【0008】
このダメージ層が半導体基板に残留すると、機械的強度が低下する原因ならびに半導体デバイス・プロセスの熱処理過程において転位が発生する原因となる。また、半導体基板をハンドリングする観点からは薄層化可能な厚さでも、薄層化によって生じるダメージ層の厚さによって、半導体基板の薄層化が制限されてしまう。従って、半導体基板表面に生じるダメージ層の厚さをできる限り小さくすることが求められている。
【0009】
そこで、例えば、研磨過程においては、半導体基板表面に与えるダメージが小さくなる滑らかな油性研磨材を用いており、研磨によって生じるダメージ層の厚さを小さくしている。
【0010】
また、一般的に、半導体基板のダメージ層厚さは、研削表面および/または研磨表面の凹凸構造サイズに大きく依存し、その凹凸構造サイズが大きくなれば、それに比例してダメージ層厚さも大きくなる。従って、半導体基板を研削および/または研磨する表面の凹凸構造サイズを小さくすることによって、ダメージ層厚さを小さくできる。例えば、砥石および/または研磨材の粒径、例えば、2または3μm以下と微細なものに限定することによって、半導体基板と砥石および/または研磨材との衝突が和らげられ、半導体基板のダメージ層厚さが小さくなる。
【0011】
このようにダメージ層は、半導体基板の薄層化条件に関して影響を及ぼし、特に、薄層半導体基板を量産する際の薄層化条件に関して影響を及ぼす。例えば、半導体基板厚さを数十μmにまで薄層化する場合、その薄層化された半導体基板の凹凸構造によっては、生じたダメージ層により半導体基板が割れてしまうことがある。従って、ダメージ層厚さを把握した上で半導体基板を薄層化することによって、薄層半導体基板の量産歩留まりを大きく改善することができる。
【0012】
そこで、半導体基板の薄層化によって半導体基板表面に生じるダメージ層の厚さを、予め定量的に把握しておくことが必要とされるが、ダメージ層は、半導体基板の表面にのみ生じるものでなく、半導体基板の表面から内部に向かっても生じている等の理由から、ダメージ層厚さを定量的かつ直接的に測定する方法は、未だ確立されてはいない。また、薄層化過程において、薄層化条件に対する半導体基板の抗折強度を測定する方法も確立されていない。
【0013】
【非特許文献1】
「セラミックス」、27、20、1992年、p.948−952
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の課題は、半導体基板の薄層化過程で生じるダメージ層(または加工変質層)の厚さおよび薄層化条件に対する半導体基板の抗折強度を測定する方法を提供することにある。
【0015】
また、本発明の課題は、そのようなダメージ層厚さおよび抗折強度の測定に使用する装置を提供することにもある。
【0016】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を達成するために、本発明のダメージ層厚さの測定方法は、
半導体基板に支持基板を接合させる工程と、
支持基板と真空吸着用台座とが接するように、半導体基板と一体化した支持基板を真空吸引作用によって真空吸着用台座に固定する工程と、
半導体基板が割れるまで薄層化する工程と、
半導体基板が割れた時の半導体基板厚さを求める工程と
を含んでいる。
【0017】
また、そのような測定方法を実施するために、本発明では、
開口部を有する真空吸着用台座と、
開口部内を減圧する手段と、
半導体基板に対して相対的に回転する薄層化手段と、
を備えた薄層化装置(図1(c)参照)を用いている。
【0018】
なお、本明細書で用いる「半導体基板」とは、移動体通信機器等の素子に使用する半導体基板であり、GaAs、Si、InP、またはGaN等から成るものである。また、本明細書で用いる「ダメージ層」とは、研削および/または研磨という半導体基板表面を機械的に加工する薄層化過程において、半導体基板の表面からその内部に向かって生じる加工変質層をいう。更に、本明細書で用いる「抗折強度」とは、ある加工(薄層化)条件で薄層化された半導体基板の強度をいう。
【0019】
本発明のダメージ層厚さの測定方法は、真空吸引作用により薄層化装置に真空吸着固定した半導体基板を薄層化し、その薄層化過程において割れた時点の半導体基板の厚さからダメージ層厚さを得ることを特徴としている。図1において、まず、両面粘着シート2によって半導体基板1に支持基板3を接合させた後、支持基板1と真空吸着用台座4とが接するように、支持基板3と一体化した半導体基板1を真空吸着用台座4を介して薄層化台6に配置する。そして、真空吸着用台座4の開口部5内を減圧して真空圧力にすることによって、その真空圧力と半導体基板の周囲の大気圧との差圧により、支持基板3と一体化した半導体基板1を真空吸着用台座4に真空吸着固定させる。その後、支持基板3と一体化した半導体基板を真空吸着用台座4に真空吸着固定させた状態で、薄層化手段6を一定速度で回転させ、研削および/または研磨により半導体基板を薄層化する。薄層化過程においては、半導体基板は経時的に薄くなっていくが、最終的に、ある厚さになった時点で半導体基板が割れることになる。そして、この「割れた時の半導体基板厚さ」というのが、後ほど説明するが、ダメージ層厚さに相当するものと擬制されるので、そのような厚さから半導体基板のダメージ層厚さを得ることができる。
【0020】
以下において、まず、このような測定方法に使用する薄層化装置について説明する(支持基板が接合されてない半導体基板の薄層化を前提に説明する)。薄層化装置の真空吸着用台座は、真空吸着用台座の開口部内を減圧して真空圧力にすることによって、その真空圧力と半導体基板の周囲の大気圧との差圧でもって半導体基板を薄層化装置に真空吸着固定させる機能を供する。例えば、真空吸着用台座は、セラミック、ガラス、アルミニウムまたはステンレス金属等から成形されているが、例えば表面凹凸が1μm以内の平坦度を有しており、半導体基板と真空吸着用台座との間の真空吸着に有利なものとなっている。また、図2に示すように、真空吸着用台座に形成されている開口部は、例えば、1〜10mm、好ましくは5mm〜10mmの直径を有しており、真空吸着用台座に3〜10個、好ましくは3〜5個、同心円状に対称的に供されている。なお、各々の開口部は、下方にて相互に連通しており、1つのラインに繋がっている。
【0021】
開口部内に供される真空圧力は、半導体基板に及ぼされる真空吸引作用のみで半導体基板が割れない程度の圧力であると共に、研削および/または研磨過程で半導体基板を真空吸着用台座に保持できる程度の圧力であればよく、例えば、開口部内の真空圧力は、0.3〜1kg/cm2、好ましくは、0.3〜0.7kg/cm2である。従って、本明細書で用いる「真空」とは、圧力が大気圧より実質的に小さい状態を意味し、「真空圧力」とは、例えば、大気圧の1/3〜2/3程度の圧力を意味するものである。なお、本発明においては、図1(c)に示すように、開口部と連通するラインと略直角に交わるように連通するライン内にガス(例えば、窒素ガス、圧力4kg/cm2)を流すことによって、開口部内を減圧して真空状態にする。従って、ガスの流量に伴って圧力を変えることにより開口部内の真空圧力を容易に調節することができ(例えば、ガス流量が大きくなると、開口部内の圧力が下がり、半導体基板に及ぼされる真空吸引作用が大きくなる)、半導体基板を真空吸着用台座に固定するのに適当な真空吸引作用を随時供することができる。
【0022】
薄層化装置の薄層化手段は、砥石および/または研磨材を用いており、500〜4000rpm、好ましくは500〜2000rpmの一定の回転速度で回転する。一般的に薄層化過程では、砥石等が回転するが、半導体基板が固定される真空吸着用台座が配置されている薄層化台も薄層化手段に対して相対的に回転してもよい。
【0023】
薄層化手段の砥石および/または研磨材を有する面が、回転しながら半導体基板の上方から半導体基板表面に接することにより、半導体基板表面の全面を実質的に均等に研削および/または研磨する。従って、半導体基板表面が研削および/または研磨されるのに伴って、半導体基板厚さが次第に薄くなっていく。研削においては、例えば、粒径が0.5〜40μm、好ましくは1〜3μmの砥石を用い、研磨においては、例えば、粒径が0.5〜10μm、好ましくは3〜9μmの研磨材を用いる。また、このような半導体基板の研削および/または研磨は、冷却水等を研削面および/または研磨面に供給することによって湿式にて行うことが好ましい。
【0024】
以上、上述のような特徴を有した薄層化装置を用いることによって、半導体基板のダメージ層厚さおよび抗折強度を測定する。
【0025】
薄層化過程において、半導体基板は、真空吸着用台座に真空吸着固定され、ある一定の薄層化速度の下、研削および/または研磨される。従って、薄層化過程においては、半導体基板の厚さが、経時的に減り続けることになる。
【0026】
支持基板を半導体基板に接合させずに、半導体基板を真空吸着用台座に直接的に接するように真空吸着固定した状態における薄層化では、半導体基板が、真空吸引作用に耐えることができ、かつ、薄層化によって生じる損傷に耐えることができる厚さ以下になった時点で割れ、その結果、固定のために供されていた真空吸着状態が解かれることになる。この場合の厚さは、以下でも説明するが、半導体基板の「臨界厚さ」を示している。なお、ここでいう「臨界厚さ」は、真空吸引作用を受けた状態の半導体基板が薄層化過程で割れる時の半導体基板厚さを示すので、この「臨界厚さ」とは、「真空吸引作用に耐える強度を有した半導体基板自体の厚さ」と「薄層化によって生じる損傷に耐えることができる厚さ」とが足し合わされた厚さと考えることができる。そして、「薄層化によって生じる損傷に耐えることができる厚さ」とは、「ダメージ層厚さ」に等しい厚さと考えることができる(以下の実施例にて本仮定の妥当性を説明する)ことから、「臨界厚さ」から「真空吸引作用に耐える強度を有した半導体基板の厚さ」を差し引くことによって、「ダメージ層厚さ」を得ることができる。
【0027】
そこで、本発明では、物理的手段を用いることによって、実質的に半導体基板に真空吸引作用を及ぼさないようにできることに着目し、「臨界厚さ」から「真空吸引作用に耐える強度を有した半導体基板厚さ」を取り除くことを行なっている。例えば、真空吸着用台座の開口部を小さくして、半導体基板に作用する真空吸引作用を弱くすると、薄層化過程にある半導体基板は真空吸引作用に起因しては割れにくくなる。更に、ある程度小さくすると、半導体基板に作用する真空吸引作用が実質的に殆どなくなることになる。従って、このような真空吸引作用を受けていない半導体基板の薄層化過程においては、その半導体基板が割れる時の半導体基板厚さというものが、ダメージ層厚さを示すものと考えることができる。
【0028】
本発明では、半導体基板が真空吸引作用を受けない状態を、半導体基板と真空吸着用台座との間に支持基板を介在させることによって供し、好ましくは半導体基板に支持基板を接合させることによって供している。支持基板を接合させる場合、真空吸着用台座に面する半導体基板面に支持基板が接合される。従って、半導体基板と支持基板とが一体となって真空吸着用台座に固定され、半導体基板の下面に支持基板が存在するために、半導体基板自体は真空吸引作用を直接的に受けずに真空吸着用台座に固定されることになる。そして、このように半導体基板が真空吸引作用を受けていない薄層化過程において、半導体基板が割れる時の半導体基板厚さを測定すれば、上述の「臨界厚さ」から「真空吸引作用に耐える強度を有した半導体基板厚さ」を取り除くことができ、ダメージ層厚さを得ることができる。
【0029】
半導体基板と接する支持基板面は、好ましくは半導体基板の底面と同様の形状を有するのが好ましい。また、支持基板は、真空吸引作用に耐えることができる材料強度を有したガラス、セラミックまたはシリコン等から成り、その厚さは半導体基板に真空吸引作用がおよばない程度である必要があり、例えば、ガラス製の支持基板では、好ましくは200〜600μmである。支持基板は、半導体基板と支持基板との間に介される両面粘着シート等の接着手段によって半導体基板に接合させられる。しかしながら、そのような接着手段は、半導体基板と支持基板とを接合させ、半導体基板の薄層化過程において半導体基板と支持基板とを一体に保持できるものであればよい。
【0030】
以上のように、支持基板が接合され、真空吸引作用を受けていない半導体基板が割れる時の厚さを測定すれば、ダメージ層厚さを求めることができるが、この半導体基板の割れは、薄層化によって半導体基板表面に生じる亀裂によって判断する。例えば、半導体基板を20μm、好ましくは10μm、より好ましくは5μm薄層化する毎に半導体基板表面を確認し、その半導体基板表面に、例えば、0.1cm、好ましくは0.5cm、より好ましくは1cmの長さの亀裂が入った時点をもって半導体基板が割れたと判断する。
【0031】
なお、上述のようなダメージ層厚さの測定に関して、砥石および/または研磨剤の粒径を一定にした状態で薄層化速度をパラメータとして変化させることによって、薄層化速度とダメージ層厚さとの相関関係を示すグラフ(一例として、図3の中抜き三角を通る直線を参照)を得ることができる。従って、このグラフから、砥石および/または研磨材の粒径が一定の場合、薄層半導体基板を量産する際の薄層化速度に対してダメージ層厚さを求めることができる。同様に、薄層化速度を一定にした状態で、砥石および/または研磨材の粒径を変えることにより、砥石および/または研磨材の粒径とダメージ層厚さとの相関関係を示すグラフを得ることができる。従って、そのグラフから、薄層化速度が一定の場合、薄層半導体基板を量産する際の砥石および/または研磨材の粒径に対してダメージ層厚さを求めることができる。
【0032】
以上のように、薄層化条件とダメージ層厚さとの相関関係を把握しておくことにより、適用する薄層化速度または砥石および/もしくは研磨材の粒径という薄層化条件に対するダメージ層を随時求めることができ、薄層半導体基板を量産する際の歩留まりの向上に寄与できる。
【0033】
また、予めダメージ層厚さを把握すれば、薄層化する半導体基板の厚さを調節することによって、半導体基板中におけるダメージ層厚さの割合を相対的に小さくすることもできる。
【0034】
更に、薄層化の後、抗折強度を増加させる目的で、半導体基板に生じたダメージ層をエッチング処理により除去することがあるが、生じたダメージ層厚さが予め判っていると、エッチング処理に用いるエッチング液の量等、エッチング条件が定まり、効率よくダメージ層を除去することができる。例えば、生じたダメージ層厚さが約10μmと判っていれば、そのダメージ層をその表面から1μm程度除去するだけで、半導体基板の抗折強度を20〜30%上げることができる。
【0035】
なお、上述のダメージ層厚さの測定方法においては、真空吸引作用を受けていない半導体基板が薄層化過程で割れる時の厚さを測定しているが、支持基板を半導体基板に接合させず、真空吸引作用を受けるように真空吸着用台座に直接的に真空吸着固定された半導体基板が薄層化過程で割れた時の半導体基板厚さから、上記で説明した半導体基板の「臨界厚さ」を得ることができる。なお、この方法においては、支持基板が半導体基板に接合されていないため、薄層化過程にある半導体基板が割れると、半導体基板の固定のために供している真空吸着状態が解かれることになる。従って、半導体基板の割れを客観的に正確に判断することができる。
【0036】
なお、この臨界厚さに関しても、ダメージ層厚さと同様に、砥石および/または研磨材の粒径を一定にした状態で半導体基板の薄層化速度をパラメータとして変化させることによって、薄層化速度と臨界厚さとの相関関係を示すグラフ(一例として、図3の塗りつぶし三角、塗りつぶし丸、塗りつぶし四角をそれぞれ通る直線を参照のこと)を得ることができる。従って、そのグラフから、砥石および/または研磨材の粒径が一定の場合、適用する薄層化速度に対する臨界厚さを求めることができる。更に、同様に薄層化速度を一定した状態で砥石および/または研磨材の粒径を変えることにより、砥石および/または研磨材の粒径と臨界厚さとの相関関係を示すグラフを得ることができ、薄層化速度が一定の場合、適用する砥石および/または研磨材の粒径に対する臨界厚さを随時求めることができる。そして、この臨界厚さのグラフに関して、そのグラフより左上の領域に該当する薄層化条件(即ち、適用する薄層化速度ならびに砥石および/もしくは研磨材の粒径)では、薄層化される半導体基板が割れない薄層化条件を示しており、薄層化条件を選定する際の指針となり得る。
【0037】
ここで、上述のダメージ層厚さの測定においては、基板の割れを目視確認により判断するのに対して、臨界厚さの測定においては、基板の割れを、半導体基板の固定のために供している真空吸着状態が解かれることにより判断するので、臨界厚さの測定の方が、客観的に正確に「割れた時点の基板厚さ」を得ることができる。また、「臨界厚さ」は、「真空吸引作用に耐えることができる半導体基板厚さ」と「薄層化によって生じる損傷に耐えることができる厚さ」とが足し合わされたものであり、「薄層化によって生じる損傷に耐えることができる厚さ」は、上述の通り「ダメージ層厚さ」に等しい厚さと考えることができる。しかるに、この「臨界厚さ」から、上述の測定方法で測定した「ダメージ層厚さ」を差し引くことによって、「真空吸引作用に耐えることができる半導体厚さ」を求めることができる。従って、一旦、この「真空吸引作用に耐えることができる半導体基板厚さ」を求めておけば、同じ真空吸引作用の下、客観的で正確となり得る臨界厚さグラフ(または臨界厚さ)から、「真空吸引に耐えることができる半導体基板厚さ」を差し引くことによって、ダメージ層厚さを容易に求めることができる。
【0038】
またその一方で、上述の臨界厚さから、薄層化条件に対する半導体基板の抗折強度を求めることができ、以下の式により算出される。この抗折強度が判ると、薄い素子を補強するために行われる裏面メッキの量、または、素子実装時における持ち上げもしくは押さえる力等の指針となり、割れのない素子(または製品)として完成度を高めることができる。
【数2】
S=3pF/2πt2
(S[MPa]:抗折強度、t[μm]:真空吸引作用が半導体基板に及ぼされている薄層化過程で半導体基板が割れる時の半導体基板厚さ、p[−]:半導体基板のポアソン比、F[N]:真空吸引に基づいて半導体基板に作用する力(開口部内の真空圧力と半導体基板の周囲の圧力との差圧))
【0039】
なお、本発明のダメージ層厚さおよび抗折強度の測定方法は、半導体基板を薄層化することによって生じるダメージ層の厚さ、および、薄層化条件に対する半導体基板の抗折強度を測定するのに好適であるが、このような半導体基板に限らず、光学部材または金属板等の他の基板に対しても適用することができる。
【0040】
【発明の実施の形態】
以下、薄層化装置を用いて、本発明の半導体基板のダメージ層厚さおよび抗折強度を測定する方法を図面に基づいて説明する。
【0041】
まず、図1(a)に示すように、薄層化台6にセットするのに適当な形状、好ましくは円盤形状を有する半導体基板1を作製する。そして、半導体基板1が薄層化過程で直接的に真空吸引作用を受けることのないように、図1(b)に示すように、半導体基板面にガラス製の支持基板3を両面粘着シート2によって接合させる。
【0042】
次に、図1(c)に示すように、支持基板3が真空吸着用台座4に接するように、支持基板と一体となった半導体基板を薄層化台6上に配置する。そして、真空吸着用台座4の開口部に連通するラインと略直角に交わるように連通するライン内を流れる窒素ガス9を流すことによって、真空吸着用台座4の開口部5内を減圧して、半導体基板を真空吸着用台座4に真空吸着固定する。その後、砥石および/もしくは研磨材を有する薄層化手段7ならびに/または薄層化台6をそれぞれ一定の回転速度で回転させることによって、薄層化手段7を半導体基板1に対して相対的に回転させる。そして、薄層化手段7の砥石および/または研磨材を有する面を半導体基板1の表面に上方より接触させることによって、半導体基板1を研削および/または研磨する。なお、研削および/または研磨は、研削面および/または研磨面に冷却水8が供給される湿式にて行なうことが好ましい。
【0043】
その後、半導体基板の薄層化過程において、半導体基板1の厚さは、薄層化手段7と接する半導体基板面から経時的に減り続けるが、半導体基板1の厚さが、薄層化によって生じる損傷に耐えることができる厚さ以下になった時点で半導体基板1が割れることになる。なお、この半導体基板の割れは、例えば、5μmずつ毎に目視確認にて行ない、半導体基板表面上に、例えば、約1cm程の長さの亀裂が入った時点をもって判断する。
【0044】
半導体基板1が割れると、研削および/または研磨を停止し、割れた半導体基板を取り出し、デジタル膜厚測定計等の測定器によって、その半導体基板の厚さを測定する。
【0045】
以上の操作で得られる半導体基板厚さの値が、用いた薄層化条件で生じるダメージ層の厚さ、即ち、薄層化に用いた砥石および/もしくは研磨材の粒径ならびに薄層化速度に対するダメージ層厚さとなる。
【0046】
砥石および/または研磨材の粒径を一定にし、半導体基板の薄層化速度をパラメータとして変化させることによって、また、薄層化速度を一定にし、砥石および/または研磨材の粒径をパラメータとして変化させることによって、上述と同様な操作でダメージ層厚さを測定する。そして、得られる測定値をそれぞれ直線でフィッティングさせ、薄層化速度とダメージ厚さとの相関関係を示すグラフならびに砥石および/または研磨材の粒径とダメージ層厚さとの相関関係を示すグラフを得る(図3では、一例として、薄層化速度とダメージ層厚さとの相関関係を示すグラフ(中抜き三角を通る直線)を示す)。
【0047】
従って、砥石および/または研磨材の粒径が一定の場合、薄層化速度とダメージ層厚さとの相関関係を示すグラフから、薄層半導体基板を量産する際の薄層化速度に対してダメージ層厚さを随時求めることができる。同様に、薄層化速度が一定の場合、砥石および/または研磨材の粒径とダメージ層厚さとの相関関係を示すグラフから、薄層半導体基板を量産する際の砥石および/または研磨材の粒径に対してダメージ層厚さを随時求めることができる。
【0048】
ここで、一般的に、ダメージ層厚さは、研削および/または研磨後の半導体基板表面の凹凸構造の平均サイズに比例し、凹凸構造の平均サイズの5〜10倍と理論的に推測されているが(例えば、上述の非特許文献1参照)、半導体基板表面の凹凸構造サイズと本発明の測定方法で測定したダメージ層厚さとの相関関係は一致し、本発明の測定方法で測定したダメージ層厚さが、実質的に薄層化過程で生じているダメージ層厚さと考えても支障がないことは確認されている。
【0049】
次に、支持基板が接合されていない状態の半導体基板を真空吸着用台座に直接的に固定し、半導体基板が真空吸引作用を受けた状態で、上述と同様な操作でもって半導体基板を薄層化する。
【0050】
そして、半導体基板の薄層化過程において、半導体基板の厚さが経時的に減り続けることになるが、半導体基板厚さが、真空吸引力に耐えることができ、かつ、薄層化によって生じる損傷に耐えることができる厚さ以下になった時点で半導体基板が割れる。この半導体基板の割れは、半導体基板を固定するために供されている真空吸着状態が解かれることによって判断する。
【0051】
半導体基板が割れると薄層化装置を停止し、割れた半導体基板を薄層化装置から取り出し、デジタル膜厚測定計等の測定器によって、割れた半導体基板の厚さを測定する。
【0052】
なお、このとき測定される値は、その薄層化条件において半導体基板が薄層化される際の臨界厚さを示すものであり、この臨界厚さに関しても、上述と同様に薄層化速度と臨界厚さ(「真空吸引作用に耐えることができる半導体基板厚さ」と「ダメージ層厚さ」とを足し合せた厚さ)との相関関係を示すグラフ、ならびに、砥石および/もしくは研磨材の粒径と臨界厚さとの相関関係を示すグラフを得ることができる。従って、これらのグラフより左上領域に該当する薄層化条件では、半導体基板が割れない条件であることが示され、半導体基板の薄層化条件を選択する上での指針となり得る。更に、この臨界厚さから、同じ真空吸引作用の下、前述で測定したダメージ層厚さを差し引くことによって、「真空吸引作用に耐えることができる半導体基板厚さ」を求めることができ、従って、一旦、この「真空吸引作用に耐えることができる半導体基板厚さ」を求めておけば、同じ真空吸引作用の下、客観的で正確となり得る臨界厚さグラフ(または臨界厚さ)から、「真空吸引に耐えることができる半導体基板厚さ」を差し引くことで、ダメージ層厚さを容易に求めることができる。
【0053】
その一方で、臨界厚さt(即ち、真空吸引力を受けている半導体基板が薄層化過程で割れる時の半導体基板厚さ)から、以下の関係式に従って、ある薄層化条件で薄層化された半導体基板の抗折強度を算出できる。
【数3】
S=3pF/2πt2
(S[MPa]:抗折強度、t[μm]:真空吸引作用が半導体基板に及ぼされている薄層化過程で半導体基板が割れる時の半導体基板厚さ、p[−]:半導体基板のポアソン比、F[N]:真空吸引に基づいて半導体基板に作用する力(開口部内の真空圧力と半導体基板の周囲の大気圧との差圧))
【0054】
【実施例】
(実施例1)
半導体基板に素子が形成されていないダミーフラット基板として、GaAs半導体基板を用いた。また、薄層化装置として、ナノファクター社NVG−200A卓上研削装置を改良したものを用いた。まず、薄層化台6への設置に適当となるように、円盤形状(直径3インチ、厚さ600μm)の半導体基板1を作製した。そして、半導体基板1が薄層化過程で真空吸引作用を受けないように、半導体基板面にガラス製の支持基板3を両面粘着シート2によって接合させた。次に、支持基板3がセラミック製の真空吸着用台座4(直径5mmの開口部を9個有する)に接するように、支持基板3と一体となった半導体基板1を薄層化台6に配置し、真空吸着用台座4の開口部5内を減圧して、1kg/cm2の真空吸引力に付すことによって、半導体基板1を真空吸着用台座4に固定した。
【0055】
なお、支持基板3と真空吸着用台座4との間にて良好な真空吸着が保たれるように、1μmの以内の平坦度を有する真空吸着用台座4を用いた。その後、粒径40μmの400番砥石を用いて、薄層化速度が15μm/minとなるように550rpmの一定回転速度で薄層化手段7を高速回転させて、半導体基板1を研削した。なお、この研削は、切削面に冷却水8を供する湿式で行なった。
【0056】
その後、半導体基板1の薄層化過程において、半導体基板厚さが経時的に減り続けたが、5μm研削する毎に半導体基板表面を確認し、半導体基板表面に約1cmの長さの亀裂が入った時点で半導体基板が割れたと判断し、研削を停止した。
【0057】
そして、薄層化装置から割れた半導体基板を取り出し、デジタル膜厚測定計によって、その半導体基板厚さを測定した結果、その厚さは60μmであった。従って、この薄層化条件に対するダメージ層厚さは、60μmであることが判った(図3において中抜き三角にて示す)。
【0058】
同様な操作を行なうことによって、30μm/minの薄層化速度に対するダメージ層厚さを測定すると、70μmであった(図3において中抜き三角にて示す)。そして、これらの2つの測定値を直線でフィッティングさせることにより、薄層化速度とダメージ層厚さとの相関関係を示すグラフ(図3の中抜き三角を通る直線)を得た。
【0059】
また、粒径8μmの1200番砥石を用い、薄層化速度が15μm/minとなる薄層化条件の下、上述と同様な操作を行なうことによってダメージ層厚さを測定すると、約35μmであった(図3において中抜き丸にて示す)。更に、粒径2μmの4000番砥石を用い、薄層化速度を15μm/minとなる薄層化条件の下、上述と同様な操作を行なうことによってダメージ層厚さを測定すると、約20μmであった(図3において中抜き四角にて示す)。
【0060】
以上より、薄層化速度または砥石の粒径とダメージ層厚さとの相関関係が判り、薄層半導体基板を量産する際の薄層化速度または砥石の粒径に対してダメージ層厚さを求めることが可能となった。
【0061】
(実施例2)
次に、半導体基板にガラス製の支持基板を接合させず、半導体基板が直接的に真空吸引作用を受けて真空吸着用台座に固定された状態で、実施例1と同様な操作を行なう薄層化を実施した。なお、この場合の半導体基板の割れは、半導体基板を固定するために供されている真空吸着状態が解かれることによって判断した。
【0062】
粒径40μmの400番砥石を用いて、薄層化速度が、それぞれ15μm/min、30μm/min、および45μm/minとなる薄層化条件の下、半導体基板が薄層化過程で割れた時点の半導体基板厚さを測定した。その結果、その厚さは薄層化条件に対して、それぞれ約80μm、約95μm、および約110μmであった(図3において塗りつぶし三角にて示す)。
【0063】
また、粒径8μmの1200番砥石を用いて、薄層化速度が、それぞれ15μm/min、30μm/min、および45μm/minとなる薄層化条件の下、また、粒径2μmの4000番砥石を用いて、薄層化速度が、それぞれ15μm/minおよび30μm/minとなる薄層化条件の下、半導体基板が薄層化過程で割れた時点の半導体基板厚さを測定した。その結果、粒径8μmの1200番砥石を用いた場合では、その厚さが、そのような薄層化条件に対して、それぞれ約55μm、約60μm、および約65μmであり(図3において塗りつぶし丸にて示す)、粒径2μmの4000番砥石を用いた場合では、その厚さが、そのような薄層化条件に対して、それぞれ約40μm、約45μmであった(図3において塗りつぶし四角にて示す)。
【0064】
この場合の「割れた時点の半導体基板厚さ」というものは、「薄層化過程で生じるダメージ層厚さ」と「真空吸引作用に耐える強度を有した半導体基板自体の厚さとが足し合わされた厚さ」であり、薄層化条件に対する「臨界厚さ」を規定しているが、このような臨界厚さに関して、実施例1と同様に、測定値を直線でフィッティングさせることにより、薄層化速度および砥石の粒径と臨界厚さとの相関関係を示すグラフが得ることができ、従って、半導体基板の薄層化に適用すべき薄層化速度および砥石の粒径の指針となった。更に、この臨界厚さから、実施例1で測定したダメージ層厚さを差し引くことによって、「真空吸引作用に耐えることができる半導体基板厚さ」を求めることができ、従って、一旦、この「真空吸引作用に耐えることができる半導体基板厚さ」を求めておくことによって、同じ真空吸引作用の下、客観的で正確となり得る臨界厚さグラフ(または臨界厚さ)から、「真空吸引に耐えることができる半導体基板厚さ」を差し引くことで、ダメージ層厚さを容易に求めることが可能となった。例えば、粒径8μmの1200番砥石、15μm/minの薄層化速度の薄層化条件では、「臨界厚さ」が55μm、「ダメージ層厚さ」が35μmであるので、「真空吸引作用に耐えることができる半導体基板厚さ」は、20μmであることを把握することができ、同じ真空吸引作用の下、臨界厚さグラフ上の条件から20μmを差し引くことによって、ダメージ層厚さを容易に求めることが可能となった。
【0065】
更に、砥石粒径が2μm(4000番砥石)で、薄層化速度が15μm/minという薄層化条件に対する臨界厚さtが40μmであった結果を用いて、半導体基板のポアソン比pを0.29(常套の圧縮試験により測定)、GaAsの半導体基板に作用する力Fを2Nの下、半導体基板の抗折強度を以下の式より求めると、約170MPaであることが判った。
【数4】
S=3pF/2πt2
(S[MPa]:抗折強度、t[μm]:真空吸引作用が半導体基板に及ぼされている薄層化過程で半導体基板が割れる時の半導体基板厚さ、p[−]:半導体基板のポアソン比、F[N]:真空吸引に基づいて半導体基板に作用する力(開口部内の真空圧力と半導体基板の周囲の大気圧との差圧))
【0066】
以上の実施例により、砥石の粒径が2μm(4000番砥石)で、薄層化速度が15μm/minという薄層化条件に対しては、ダメージ層厚さが20μmとなることを把握した上で、同一の薄層化条件で、薄層半導体基板の量産を実施した。なお、薄層化する半導体基板には、素子が形成されているが、真空吸着用台座に面する半導体基板面に両面粘着シートにより支持基板が取り付けられ、半導体基板が真空吸引作用を受けないようになっているため、その薄層化速度と半導体基板の臨界厚さとの相関関係を示すグラフは、図3のCで示す直線より20μm低い直線に相当する。それゆえ、その直線より左上の領域に該当する薄層化条件は、半導体基板が割れない条件となることを予め把握しており、従って、ダメージ層厚さおよび臨界厚さの双方を把握した上で、臨界厚さ厚さ30μmまで薄層化する薄層半導体基板の量産を実施した。その結果、薄層半導体基板の量産歩留まりは、略100%を達成することができた。
【0067】
【発明の効果】
本発明の測定方法により、薄層化速度ならびに砥石および/もしくは研磨材の粒径という薄層化条件に対して半導体基板のダメージ層厚さを測定することができる。また、その測定方法と同様な操作を行なうことにより、薄層化される半導体基板の臨界厚さを求めることができ、更に、その臨界厚さから、薄層化条件に対する半導体基板の抗折強度も測定することができる。従って、適用する薄層化条件に対して、ダメージ層厚さ、臨界厚さおよび抗折強度を把握した上で、薄層半導体基板の量産を行なうことが可能であり、また、その量産歩留まりを改善でき、好ましくは略100%にまで改善することができる。また更には、薄層化後のエッチング処理によるダメージ層の除去の際、エッチングに用いるエッチング液の量等、エッチング条件が定まり、効率よくダメージ層を除去することもできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の半導体基板のダメージ層厚さおよび抗折強度の測定方法の一実施態様を模式的に示す。
【図2】本発明の薄層化装置に供される真空吸着用台座を模式的に上面図および断面図により示す。
【図3】本発明の測定方法により得られた薄層化速度とダメージ層厚さもしくは臨界厚さとの相関関係を示すグラフ、または、砥石の粒径とダメージ層厚さもしくは臨界厚さとの相関関係を示す。
【符号の説明】
1…半導体基板、2…両面粘着シート、3…支持基板、4…真空吸着用台座、5…開口部、6…薄層化台、7…薄層化手段、8…冷却水、9…窒素ガス。
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体基板のダメージ層厚さおよび抗折強度の測定方法ならびにそれらの測定に使用する装置に関し、より詳細には、半導体基板を薄層化することによって半導体基板表面に生じるダメージ層の厚さ、および、そのような薄層化過程にある半導体基板の強度を求める方法、ならびにその方法の実施に使用する薄層化装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、半導体、特に化合物半導体の分野では、パワートランジスタ素子の高密度化、集積化が進められている。特に移動体通信機器が小型化および軽量化するのに伴い、素子が微細化する傾向にある。
【0003】
一般的に、素子が小さくなるに従って、素子の熱抵抗が増加する傾向がある。素子の熱抵抗が増加すると、高周波増幅効率の低下および素子の寿命の短縮につながり、素子の高性能性および高信頼性等が損なわれる。従って、高性能性で高信頼性な素子を実現するためには、素子の熱抵抗を下げることが不可欠であり、素子の放熱効果を改善する様々な方法が考えられている。
【0004】
その一つの方法として、半導体基板表面上に集積回路素子パターンを形成した後、パターンが形成されてない裏面から半導体基板を薄層化した素子を作製することによって、素子の裏面からの放熱を増加させる方法がある。
【0005】
この方法では、半導体基板表面を研削および/または研磨することによって、半導体基板を薄層化している。研削では、砥石を用いて半導体基板表面を削ることにより半導体基板を薄層化しており、研磨では、研磨材を用いて半導体基板表面を磨くことにより半導体基板を薄層化している。
【0006】
一般的に、半導体基板の薄層化は、薄層化後の半導体基板の厚さがハンドリングに関して支障がない程度にまで行なわれる。例えば、GaAs基板を約150μmの厚さまで薄層化する場合は、砥石(粒径:約100μm)を用いた研削のみで加工することができる一方、厚さが150μmより小さくなるように薄層化する場合は、研磨材(粒径:約3〜9μm)を用いた研磨によって加工する必要がある。
【0007】
このような研削または研磨では、半導体基板の表面を機械的に加工しているので、半導体基板の表面近傍にある結晶が破壊され、残留応力が結晶内部に発生し、従って、半導体基板の表面からその内部に向かってダメージ層(または加工変質層)が生じることになる。ダメージ層厚さは、薄層化条件にもよるが、一般的に研削および/または研磨後の半導体基板表面の凹凸構造サイズに比例するものであり、例えば、GaAsから成る半導体基板を薄層化する場合では、ダメージ層厚さは、半導体基板表面の凹凸構造サイズの約5〜10倍であると推測されている(例えば、非特許文献1参照)。
【0008】
このダメージ層が半導体基板に残留すると、機械的強度が低下する原因ならびに半導体デバイス・プロセスの熱処理過程において転位が発生する原因となる。また、半導体基板をハンドリングする観点からは薄層化可能な厚さでも、薄層化によって生じるダメージ層の厚さによって、半導体基板の薄層化が制限されてしまう。従って、半導体基板表面に生じるダメージ層の厚さをできる限り小さくすることが求められている。
【0009】
そこで、例えば、研磨過程においては、半導体基板表面に与えるダメージが小さくなる滑らかな油性研磨材を用いており、研磨によって生じるダメージ層の厚さを小さくしている。
【0010】
また、一般的に、半導体基板のダメージ層厚さは、研削表面および/または研磨表面の凹凸構造サイズに大きく依存し、その凹凸構造サイズが大きくなれば、それに比例してダメージ層厚さも大きくなる。従って、半導体基板を研削および/または研磨する表面の凹凸構造サイズを小さくすることによって、ダメージ層厚さを小さくできる。例えば、砥石および/または研磨材の粒径、例えば、2または3μm以下と微細なものに限定することによって、半導体基板と砥石および/または研磨材との衝突が和らげられ、半導体基板のダメージ層厚さが小さくなる。
【0011】
このようにダメージ層は、半導体基板の薄層化条件に関して影響を及ぼし、特に、薄層半導体基板を量産する際の薄層化条件に関して影響を及ぼす。例えば、半導体基板厚さを数十μmにまで薄層化する場合、その薄層化された半導体基板の凹凸構造によっては、生じたダメージ層により半導体基板が割れてしまうことがある。従って、ダメージ層厚さを把握した上で半導体基板を薄層化することによって、薄層半導体基板の量産歩留まりを大きく改善することができる。
【0012】
そこで、半導体基板の薄層化によって半導体基板表面に生じるダメージ層の厚さを、予め定量的に把握しておくことが必要とされるが、ダメージ層は、半導体基板の表面にのみ生じるものでなく、半導体基板の表面から内部に向かっても生じている等の理由から、ダメージ層厚さを定量的かつ直接的に測定する方法は、未だ確立されてはいない。また、薄層化過程において、薄層化条件に対する半導体基板の抗折強度を測定する方法も確立されていない。
【0013】
【非特許文献1】
「セラミックス」、27、20、1992年、p.948−952
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の課題は、半導体基板の薄層化過程で生じるダメージ層(または加工変質層)の厚さおよび薄層化条件に対する半導体基板の抗折強度を測定する方法を提供することにある。
【0015】
また、本発明の課題は、そのようなダメージ層厚さおよび抗折強度の測定に使用する装置を提供することにもある。
【0016】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を達成するために、本発明のダメージ層厚さの測定方法は、
半導体基板に支持基板を接合させる工程と、
支持基板と真空吸着用台座とが接するように、半導体基板と一体化した支持基板を真空吸引作用によって真空吸着用台座に固定する工程と、
半導体基板が割れるまで薄層化する工程と、
半導体基板が割れた時の半導体基板厚さを求める工程と
を含んでいる。
【0017】
また、そのような測定方法を実施するために、本発明では、
開口部を有する真空吸着用台座と、
開口部内を減圧する手段と、
半導体基板に対して相対的に回転する薄層化手段と、
を備えた薄層化装置(図1(c)参照)を用いている。
【0018】
なお、本明細書で用いる「半導体基板」とは、移動体通信機器等の素子に使用する半導体基板であり、GaAs、Si、InP、またはGaN等から成るものである。また、本明細書で用いる「ダメージ層」とは、研削および/または研磨という半導体基板表面を機械的に加工する薄層化過程において、半導体基板の表面からその内部に向かって生じる加工変質層をいう。更に、本明細書で用いる「抗折強度」とは、ある加工(薄層化)条件で薄層化された半導体基板の強度をいう。
【0019】
本発明のダメージ層厚さの測定方法は、真空吸引作用により薄層化装置に真空吸着固定した半導体基板を薄層化し、その薄層化過程において割れた時点の半導体基板の厚さからダメージ層厚さを得ることを特徴としている。図1において、まず、両面粘着シート2によって半導体基板1に支持基板3を接合させた後、支持基板1と真空吸着用台座4とが接するように、支持基板3と一体化した半導体基板1を真空吸着用台座4を介して薄層化台6に配置する。そして、真空吸着用台座4の開口部5内を減圧して真空圧力にすることによって、その真空圧力と半導体基板の周囲の大気圧との差圧により、支持基板3と一体化した半導体基板1を真空吸着用台座4に真空吸着固定させる。その後、支持基板3と一体化した半導体基板を真空吸着用台座4に真空吸着固定させた状態で、薄層化手段6を一定速度で回転させ、研削および/または研磨により半導体基板を薄層化する。薄層化過程においては、半導体基板は経時的に薄くなっていくが、最終的に、ある厚さになった時点で半導体基板が割れることになる。そして、この「割れた時の半導体基板厚さ」というのが、後ほど説明するが、ダメージ層厚さに相当するものと擬制されるので、そのような厚さから半導体基板のダメージ層厚さを得ることができる。
【0020】
以下において、まず、このような測定方法に使用する薄層化装置について説明する(支持基板が接合されてない半導体基板の薄層化を前提に説明する)。薄層化装置の真空吸着用台座は、真空吸着用台座の開口部内を減圧して真空圧力にすることによって、その真空圧力と半導体基板の周囲の大気圧との差圧でもって半導体基板を薄層化装置に真空吸着固定させる機能を供する。例えば、真空吸着用台座は、セラミック、ガラス、アルミニウムまたはステンレス金属等から成形されているが、例えば表面凹凸が1μm以内の平坦度を有しており、半導体基板と真空吸着用台座との間の真空吸着に有利なものとなっている。また、図2に示すように、真空吸着用台座に形成されている開口部は、例えば、1〜10mm、好ましくは5mm〜10mmの直径を有しており、真空吸着用台座に3〜10個、好ましくは3〜5個、同心円状に対称的に供されている。なお、各々の開口部は、下方にて相互に連通しており、1つのラインに繋がっている。
【0021】
開口部内に供される真空圧力は、半導体基板に及ぼされる真空吸引作用のみで半導体基板が割れない程度の圧力であると共に、研削および/または研磨過程で半導体基板を真空吸着用台座に保持できる程度の圧力であればよく、例えば、開口部内の真空圧力は、0.3〜1kg/cm2、好ましくは、0.3〜0.7kg/cm2である。従って、本明細書で用いる「真空」とは、圧力が大気圧より実質的に小さい状態を意味し、「真空圧力」とは、例えば、大気圧の1/3〜2/3程度の圧力を意味するものである。なお、本発明においては、図1(c)に示すように、開口部と連通するラインと略直角に交わるように連通するライン内にガス(例えば、窒素ガス、圧力4kg/cm2)を流すことによって、開口部内を減圧して真空状態にする。従って、ガスの流量に伴って圧力を変えることにより開口部内の真空圧力を容易に調節することができ(例えば、ガス流量が大きくなると、開口部内の圧力が下がり、半導体基板に及ぼされる真空吸引作用が大きくなる)、半導体基板を真空吸着用台座に固定するのに適当な真空吸引作用を随時供することができる。
【0022】
薄層化装置の薄層化手段は、砥石および/または研磨材を用いており、500〜4000rpm、好ましくは500〜2000rpmの一定の回転速度で回転する。一般的に薄層化過程では、砥石等が回転するが、半導体基板が固定される真空吸着用台座が配置されている薄層化台も薄層化手段に対して相対的に回転してもよい。
【0023】
薄層化手段の砥石および/または研磨材を有する面が、回転しながら半導体基板の上方から半導体基板表面に接することにより、半導体基板表面の全面を実質的に均等に研削および/または研磨する。従って、半導体基板表面が研削および/または研磨されるのに伴って、半導体基板厚さが次第に薄くなっていく。研削においては、例えば、粒径が0.5〜40μm、好ましくは1〜3μmの砥石を用い、研磨においては、例えば、粒径が0.5〜10μm、好ましくは3〜9μmの研磨材を用いる。また、このような半導体基板の研削および/または研磨は、冷却水等を研削面および/または研磨面に供給することによって湿式にて行うことが好ましい。
【0024】
以上、上述のような特徴を有した薄層化装置を用いることによって、半導体基板のダメージ層厚さおよび抗折強度を測定する。
【0025】
薄層化過程において、半導体基板は、真空吸着用台座に真空吸着固定され、ある一定の薄層化速度の下、研削および/または研磨される。従って、薄層化過程においては、半導体基板の厚さが、経時的に減り続けることになる。
【0026】
支持基板を半導体基板に接合させずに、半導体基板を真空吸着用台座に直接的に接するように真空吸着固定した状態における薄層化では、半導体基板が、真空吸引作用に耐えることができ、かつ、薄層化によって生じる損傷に耐えることができる厚さ以下になった時点で割れ、その結果、固定のために供されていた真空吸着状態が解かれることになる。この場合の厚さは、以下でも説明するが、半導体基板の「臨界厚さ」を示している。なお、ここでいう「臨界厚さ」は、真空吸引作用を受けた状態の半導体基板が薄層化過程で割れる時の半導体基板厚さを示すので、この「臨界厚さ」とは、「真空吸引作用に耐える強度を有した半導体基板自体の厚さ」と「薄層化によって生じる損傷に耐えることができる厚さ」とが足し合わされた厚さと考えることができる。そして、「薄層化によって生じる損傷に耐えることができる厚さ」とは、「ダメージ層厚さ」に等しい厚さと考えることができる(以下の実施例にて本仮定の妥当性を説明する)ことから、「臨界厚さ」から「真空吸引作用に耐える強度を有した半導体基板の厚さ」を差し引くことによって、「ダメージ層厚さ」を得ることができる。
【0027】
そこで、本発明では、物理的手段を用いることによって、実質的に半導体基板に真空吸引作用を及ぼさないようにできることに着目し、「臨界厚さ」から「真空吸引作用に耐える強度を有した半導体基板厚さ」を取り除くことを行なっている。例えば、真空吸着用台座の開口部を小さくして、半導体基板に作用する真空吸引作用を弱くすると、薄層化過程にある半導体基板は真空吸引作用に起因しては割れにくくなる。更に、ある程度小さくすると、半導体基板に作用する真空吸引作用が実質的に殆どなくなることになる。従って、このような真空吸引作用を受けていない半導体基板の薄層化過程においては、その半導体基板が割れる時の半導体基板厚さというものが、ダメージ層厚さを示すものと考えることができる。
【0028】
本発明では、半導体基板が真空吸引作用を受けない状態を、半導体基板と真空吸着用台座との間に支持基板を介在させることによって供し、好ましくは半導体基板に支持基板を接合させることによって供している。支持基板を接合させる場合、真空吸着用台座に面する半導体基板面に支持基板が接合される。従って、半導体基板と支持基板とが一体となって真空吸着用台座に固定され、半導体基板の下面に支持基板が存在するために、半導体基板自体は真空吸引作用を直接的に受けずに真空吸着用台座に固定されることになる。そして、このように半導体基板が真空吸引作用を受けていない薄層化過程において、半導体基板が割れる時の半導体基板厚さを測定すれば、上述の「臨界厚さ」から「真空吸引作用に耐える強度を有した半導体基板厚さ」を取り除くことができ、ダメージ層厚さを得ることができる。
【0029】
半導体基板と接する支持基板面は、好ましくは半導体基板の底面と同様の形状を有するのが好ましい。また、支持基板は、真空吸引作用に耐えることができる材料強度を有したガラス、セラミックまたはシリコン等から成り、その厚さは半導体基板に真空吸引作用がおよばない程度である必要があり、例えば、ガラス製の支持基板では、好ましくは200〜600μmである。支持基板は、半導体基板と支持基板との間に介される両面粘着シート等の接着手段によって半導体基板に接合させられる。しかしながら、そのような接着手段は、半導体基板と支持基板とを接合させ、半導体基板の薄層化過程において半導体基板と支持基板とを一体に保持できるものであればよい。
【0030】
以上のように、支持基板が接合され、真空吸引作用を受けていない半導体基板が割れる時の厚さを測定すれば、ダメージ層厚さを求めることができるが、この半導体基板の割れは、薄層化によって半導体基板表面に生じる亀裂によって判断する。例えば、半導体基板を20μm、好ましくは10μm、より好ましくは5μm薄層化する毎に半導体基板表面を確認し、その半導体基板表面に、例えば、0.1cm、好ましくは0.5cm、より好ましくは1cmの長さの亀裂が入った時点をもって半導体基板が割れたと判断する。
【0031】
なお、上述のようなダメージ層厚さの測定に関して、砥石および/または研磨剤の粒径を一定にした状態で薄層化速度をパラメータとして変化させることによって、薄層化速度とダメージ層厚さとの相関関係を示すグラフ(一例として、図3の中抜き三角を通る直線を参照)を得ることができる。従って、このグラフから、砥石および/または研磨材の粒径が一定の場合、薄層半導体基板を量産する際の薄層化速度に対してダメージ層厚さを求めることができる。同様に、薄層化速度を一定にした状態で、砥石および/または研磨材の粒径を変えることにより、砥石および/または研磨材の粒径とダメージ層厚さとの相関関係を示すグラフを得ることができる。従って、そのグラフから、薄層化速度が一定の場合、薄層半導体基板を量産する際の砥石および/または研磨材の粒径に対してダメージ層厚さを求めることができる。
【0032】
以上のように、薄層化条件とダメージ層厚さとの相関関係を把握しておくことにより、適用する薄層化速度または砥石および/もしくは研磨材の粒径という薄層化条件に対するダメージ層を随時求めることができ、薄層半導体基板を量産する際の歩留まりの向上に寄与できる。
【0033】
また、予めダメージ層厚さを把握すれば、薄層化する半導体基板の厚さを調節することによって、半導体基板中におけるダメージ層厚さの割合を相対的に小さくすることもできる。
【0034】
更に、薄層化の後、抗折強度を増加させる目的で、半導体基板に生じたダメージ層をエッチング処理により除去することがあるが、生じたダメージ層厚さが予め判っていると、エッチング処理に用いるエッチング液の量等、エッチング条件が定まり、効率よくダメージ層を除去することができる。例えば、生じたダメージ層厚さが約10μmと判っていれば、そのダメージ層をその表面から1μm程度除去するだけで、半導体基板の抗折強度を20〜30%上げることができる。
【0035】
なお、上述のダメージ層厚さの測定方法においては、真空吸引作用を受けていない半導体基板が薄層化過程で割れる時の厚さを測定しているが、支持基板を半導体基板に接合させず、真空吸引作用を受けるように真空吸着用台座に直接的に真空吸着固定された半導体基板が薄層化過程で割れた時の半導体基板厚さから、上記で説明した半導体基板の「臨界厚さ」を得ることができる。なお、この方法においては、支持基板が半導体基板に接合されていないため、薄層化過程にある半導体基板が割れると、半導体基板の固定のために供している真空吸着状態が解かれることになる。従って、半導体基板の割れを客観的に正確に判断することができる。
【0036】
なお、この臨界厚さに関しても、ダメージ層厚さと同様に、砥石および/または研磨材の粒径を一定にした状態で半導体基板の薄層化速度をパラメータとして変化させることによって、薄層化速度と臨界厚さとの相関関係を示すグラフ(一例として、図3の塗りつぶし三角、塗りつぶし丸、塗りつぶし四角をそれぞれ通る直線を参照のこと)を得ることができる。従って、そのグラフから、砥石および/または研磨材の粒径が一定の場合、適用する薄層化速度に対する臨界厚さを求めることができる。更に、同様に薄層化速度を一定した状態で砥石および/または研磨材の粒径を変えることにより、砥石および/または研磨材の粒径と臨界厚さとの相関関係を示すグラフを得ることができ、薄層化速度が一定の場合、適用する砥石および/または研磨材の粒径に対する臨界厚さを随時求めることができる。そして、この臨界厚さのグラフに関して、そのグラフより左上の領域に該当する薄層化条件(即ち、適用する薄層化速度ならびに砥石および/もしくは研磨材の粒径)では、薄層化される半導体基板が割れない薄層化条件を示しており、薄層化条件を選定する際の指針となり得る。
【0037】
ここで、上述のダメージ層厚さの測定においては、基板の割れを目視確認により判断するのに対して、臨界厚さの測定においては、基板の割れを、半導体基板の固定のために供している真空吸着状態が解かれることにより判断するので、臨界厚さの測定の方が、客観的に正確に「割れた時点の基板厚さ」を得ることができる。また、「臨界厚さ」は、「真空吸引作用に耐えることができる半導体基板厚さ」と「薄層化によって生じる損傷に耐えることができる厚さ」とが足し合わされたものであり、「薄層化によって生じる損傷に耐えることができる厚さ」は、上述の通り「ダメージ層厚さ」に等しい厚さと考えることができる。しかるに、この「臨界厚さ」から、上述の測定方法で測定した「ダメージ層厚さ」を差し引くことによって、「真空吸引作用に耐えることができる半導体厚さ」を求めることができる。従って、一旦、この「真空吸引作用に耐えることができる半導体基板厚さ」を求めておけば、同じ真空吸引作用の下、客観的で正確となり得る臨界厚さグラフ(または臨界厚さ)から、「真空吸引に耐えることができる半導体基板厚さ」を差し引くことによって、ダメージ層厚さを容易に求めることができる。
【0038】
またその一方で、上述の臨界厚さから、薄層化条件に対する半導体基板の抗折強度を求めることができ、以下の式により算出される。この抗折強度が判ると、薄い素子を補強するために行われる裏面メッキの量、または、素子実装時における持ち上げもしくは押さえる力等の指針となり、割れのない素子(または製品)として完成度を高めることができる。
【数2】
S=3pF/2πt2
(S[MPa]:抗折強度、t[μm]:真空吸引作用が半導体基板に及ぼされている薄層化過程で半導体基板が割れる時の半導体基板厚さ、p[−]:半導体基板のポアソン比、F[N]:真空吸引に基づいて半導体基板に作用する力(開口部内の真空圧力と半導体基板の周囲の圧力との差圧))
【0039】
なお、本発明のダメージ層厚さおよび抗折強度の測定方法は、半導体基板を薄層化することによって生じるダメージ層の厚さ、および、薄層化条件に対する半導体基板の抗折強度を測定するのに好適であるが、このような半導体基板に限らず、光学部材または金属板等の他の基板に対しても適用することができる。
【0040】
【発明の実施の形態】
以下、薄層化装置を用いて、本発明の半導体基板のダメージ層厚さおよび抗折強度を測定する方法を図面に基づいて説明する。
【0041】
まず、図1(a)に示すように、薄層化台6にセットするのに適当な形状、好ましくは円盤形状を有する半導体基板1を作製する。そして、半導体基板1が薄層化過程で直接的に真空吸引作用を受けることのないように、図1(b)に示すように、半導体基板面にガラス製の支持基板3を両面粘着シート2によって接合させる。
【0042】
次に、図1(c)に示すように、支持基板3が真空吸着用台座4に接するように、支持基板と一体となった半導体基板を薄層化台6上に配置する。そして、真空吸着用台座4の開口部に連通するラインと略直角に交わるように連通するライン内を流れる窒素ガス9を流すことによって、真空吸着用台座4の開口部5内を減圧して、半導体基板を真空吸着用台座4に真空吸着固定する。その後、砥石および/もしくは研磨材を有する薄層化手段7ならびに/または薄層化台6をそれぞれ一定の回転速度で回転させることによって、薄層化手段7を半導体基板1に対して相対的に回転させる。そして、薄層化手段7の砥石および/または研磨材を有する面を半導体基板1の表面に上方より接触させることによって、半導体基板1を研削および/または研磨する。なお、研削および/または研磨は、研削面および/または研磨面に冷却水8が供給される湿式にて行なうことが好ましい。
【0043】
その後、半導体基板の薄層化過程において、半導体基板1の厚さは、薄層化手段7と接する半導体基板面から経時的に減り続けるが、半導体基板1の厚さが、薄層化によって生じる損傷に耐えることができる厚さ以下になった時点で半導体基板1が割れることになる。なお、この半導体基板の割れは、例えば、5μmずつ毎に目視確認にて行ない、半導体基板表面上に、例えば、約1cm程の長さの亀裂が入った時点をもって判断する。
【0044】
半導体基板1が割れると、研削および/または研磨を停止し、割れた半導体基板を取り出し、デジタル膜厚測定計等の測定器によって、その半導体基板の厚さを測定する。
【0045】
以上の操作で得られる半導体基板厚さの値が、用いた薄層化条件で生じるダメージ層の厚さ、即ち、薄層化に用いた砥石および/もしくは研磨材の粒径ならびに薄層化速度に対するダメージ層厚さとなる。
【0046】
砥石および/または研磨材の粒径を一定にし、半導体基板の薄層化速度をパラメータとして変化させることによって、また、薄層化速度を一定にし、砥石および/または研磨材の粒径をパラメータとして変化させることによって、上述と同様な操作でダメージ層厚さを測定する。そして、得られる測定値をそれぞれ直線でフィッティングさせ、薄層化速度とダメージ厚さとの相関関係を示すグラフならびに砥石および/または研磨材の粒径とダメージ層厚さとの相関関係を示すグラフを得る(図3では、一例として、薄層化速度とダメージ層厚さとの相関関係を示すグラフ(中抜き三角を通る直線)を示す)。
【0047】
従って、砥石および/または研磨材の粒径が一定の場合、薄層化速度とダメージ層厚さとの相関関係を示すグラフから、薄層半導体基板を量産する際の薄層化速度に対してダメージ層厚さを随時求めることができる。同様に、薄層化速度が一定の場合、砥石および/または研磨材の粒径とダメージ層厚さとの相関関係を示すグラフから、薄層半導体基板を量産する際の砥石および/または研磨材の粒径に対してダメージ層厚さを随時求めることができる。
【0048】
ここで、一般的に、ダメージ層厚さは、研削および/または研磨後の半導体基板表面の凹凸構造の平均サイズに比例し、凹凸構造の平均サイズの5〜10倍と理論的に推測されているが(例えば、上述の非特許文献1参照)、半導体基板表面の凹凸構造サイズと本発明の測定方法で測定したダメージ層厚さとの相関関係は一致し、本発明の測定方法で測定したダメージ層厚さが、実質的に薄層化過程で生じているダメージ層厚さと考えても支障がないことは確認されている。
【0049】
次に、支持基板が接合されていない状態の半導体基板を真空吸着用台座に直接的に固定し、半導体基板が真空吸引作用を受けた状態で、上述と同様な操作でもって半導体基板を薄層化する。
【0050】
そして、半導体基板の薄層化過程において、半導体基板の厚さが経時的に減り続けることになるが、半導体基板厚さが、真空吸引力に耐えることができ、かつ、薄層化によって生じる損傷に耐えることができる厚さ以下になった時点で半導体基板が割れる。この半導体基板の割れは、半導体基板を固定するために供されている真空吸着状態が解かれることによって判断する。
【0051】
半導体基板が割れると薄層化装置を停止し、割れた半導体基板を薄層化装置から取り出し、デジタル膜厚測定計等の測定器によって、割れた半導体基板の厚さを測定する。
【0052】
なお、このとき測定される値は、その薄層化条件において半導体基板が薄層化される際の臨界厚さを示すものであり、この臨界厚さに関しても、上述と同様に薄層化速度と臨界厚さ(「真空吸引作用に耐えることができる半導体基板厚さ」と「ダメージ層厚さ」とを足し合せた厚さ)との相関関係を示すグラフ、ならびに、砥石および/もしくは研磨材の粒径と臨界厚さとの相関関係を示すグラフを得ることができる。従って、これらのグラフより左上領域に該当する薄層化条件では、半導体基板が割れない条件であることが示され、半導体基板の薄層化条件を選択する上での指針となり得る。更に、この臨界厚さから、同じ真空吸引作用の下、前述で測定したダメージ層厚さを差し引くことによって、「真空吸引作用に耐えることができる半導体基板厚さ」を求めることができ、従って、一旦、この「真空吸引作用に耐えることができる半導体基板厚さ」を求めておけば、同じ真空吸引作用の下、客観的で正確となり得る臨界厚さグラフ(または臨界厚さ)から、「真空吸引に耐えることができる半導体基板厚さ」を差し引くことで、ダメージ層厚さを容易に求めることができる。
【0053】
その一方で、臨界厚さt(即ち、真空吸引力を受けている半導体基板が薄層化過程で割れる時の半導体基板厚さ)から、以下の関係式に従って、ある薄層化条件で薄層化された半導体基板の抗折強度を算出できる。
【数3】
S=3pF/2πt2
(S[MPa]:抗折強度、t[μm]:真空吸引作用が半導体基板に及ぼされている薄層化過程で半導体基板が割れる時の半導体基板厚さ、p[−]:半導体基板のポアソン比、F[N]:真空吸引に基づいて半導体基板に作用する力(開口部内の真空圧力と半導体基板の周囲の大気圧との差圧))
【0054】
【実施例】
(実施例1)
半導体基板に素子が形成されていないダミーフラット基板として、GaAs半導体基板を用いた。また、薄層化装置として、ナノファクター社NVG−200A卓上研削装置を改良したものを用いた。まず、薄層化台6への設置に適当となるように、円盤形状(直径3インチ、厚さ600μm)の半導体基板1を作製した。そして、半導体基板1が薄層化過程で真空吸引作用を受けないように、半導体基板面にガラス製の支持基板3を両面粘着シート2によって接合させた。次に、支持基板3がセラミック製の真空吸着用台座4(直径5mmの開口部を9個有する)に接するように、支持基板3と一体となった半導体基板1を薄層化台6に配置し、真空吸着用台座4の開口部5内を減圧して、1kg/cm2の真空吸引力に付すことによって、半導体基板1を真空吸着用台座4に固定した。
【0055】
なお、支持基板3と真空吸着用台座4との間にて良好な真空吸着が保たれるように、1μmの以内の平坦度を有する真空吸着用台座4を用いた。その後、粒径40μmの400番砥石を用いて、薄層化速度が15μm/minとなるように550rpmの一定回転速度で薄層化手段7を高速回転させて、半導体基板1を研削した。なお、この研削は、切削面に冷却水8を供する湿式で行なった。
【0056】
その後、半導体基板1の薄層化過程において、半導体基板厚さが経時的に減り続けたが、5μm研削する毎に半導体基板表面を確認し、半導体基板表面に約1cmの長さの亀裂が入った時点で半導体基板が割れたと判断し、研削を停止した。
【0057】
そして、薄層化装置から割れた半導体基板を取り出し、デジタル膜厚測定計によって、その半導体基板厚さを測定した結果、その厚さは60μmであった。従って、この薄層化条件に対するダメージ層厚さは、60μmであることが判った(図3において中抜き三角にて示す)。
【0058】
同様な操作を行なうことによって、30μm/minの薄層化速度に対するダメージ層厚さを測定すると、70μmであった(図3において中抜き三角にて示す)。そして、これらの2つの測定値を直線でフィッティングさせることにより、薄層化速度とダメージ層厚さとの相関関係を示すグラフ(図3の中抜き三角を通る直線)を得た。
【0059】
また、粒径8μmの1200番砥石を用い、薄層化速度が15μm/minとなる薄層化条件の下、上述と同様な操作を行なうことによってダメージ層厚さを測定すると、約35μmであった(図3において中抜き丸にて示す)。更に、粒径2μmの4000番砥石を用い、薄層化速度を15μm/minとなる薄層化条件の下、上述と同様な操作を行なうことによってダメージ層厚さを測定すると、約20μmであった(図3において中抜き四角にて示す)。
【0060】
以上より、薄層化速度または砥石の粒径とダメージ層厚さとの相関関係が判り、薄層半導体基板を量産する際の薄層化速度または砥石の粒径に対してダメージ層厚さを求めることが可能となった。
【0061】
(実施例2)
次に、半導体基板にガラス製の支持基板を接合させず、半導体基板が直接的に真空吸引作用を受けて真空吸着用台座に固定された状態で、実施例1と同様な操作を行なう薄層化を実施した。なお、この場合の半導体基板の割れは、半導体基板を固定するために供されている真空吸着状態が解かれることによって判断した。
【0062】
粒径40μmの400番砥石を用いて、薄層化速度が、それぞれ15μm/min、30μm/min、および45μm/minとなる薄層化条件の下、半導体基板が薄層化過程で割れた時点の半導体基板厚さを測定した。その結果、その厚さは薄層化条件に対して、それぞれ約80μm、約95μm、および約110μmであった(図3において塗りつぶし三角にて示す)。
【0063】
また、粒径8μmの1200番砥石を用いて、薄層化速度が、それぞれ15μm/min、30μm/min、および45μm/minとなる薄層化条件の下、また、粒径2μmの4000番砥石を用いて、薄層化速度が、それぞれ15μm/minおよび30μm/minとなる薄層化条件の下、半導体基板が薄層化過程で割れた時点の半導体基板厚さを測定した。その結果、粒径8μmの1200番砥石を用いた場合では、その厚さが、そのような薄層化条件に対して、それぞれ約55μm、約60μm、および約65μmであり(図3において塗りつぶし丸にて示す)、粒径2μmの4000番砥石を用いた場合では、その厚さが、そのような薄層化条件に対して、それぞれ約40μm、約45μmであった(図3において塗りつぶし四角にて示す)。
【0064】
この場合の「割れた時点の半導体基板厚さ」というものは、「薄層化過程で生じるダメージ層厚さ」と「真空吸引作用に耐える強度を有した半導体基板自体の厚さとが足し合わされた厚さ」であり、薄層化条件に対する「臨界厚さ」を規定しているが、このような臨界厚さに関して、実施例1と同様に、測定値を直線でフィッティングさせることにより、薄層化速度および砥石の粒径と臨界厚さとの相関関係を示すグラフが得ることができ、従って、半導体基板の薄層化に適用すべき薄層化速度および砥石の粒径の指針となった。更に、この臨界厚さから、実施例1で測定したダメージ層厚さを差し引くことによって、「真空吸引作用に耐えることができる半導体基板厚さ」を求めることができ、従って、一旦、この「真空吸引作用に耐えることができる半導体基板厚さ」を求めておくことによって、同じ真空吸引作用の下、客観的で正確となり得る臨界厚さグラフ(または臨界厚さ)から、「真空吸引に耐えることができる半導体基板厚さ」を差し引くことで、ダメージ層厚さを容易に求めることが可能となった。例えば、粒径8μmの1200番砥石、15μm/minの薄層化速度の薄層化条件では、「臨界厚さ」が55μm、「ダメージ層厚さ」が35μmであるので、「真空吸引作用に耐えることができる半導体基板厚さ」は、20μmであることを把握することができ、同じ真空吸引作用の下、臨界厚さグラフ上の条件から20μmを差し引くことによって、ダメージ層厚さを容易に求めることが可能となった。
【0065】
更に、砥石粒径が2μm(4000番砥石)で、薄層化速度が15μm/minという薄層化条件に対する臨界厚さtが40μmであった結果を用いて、半導体基板のポアソン比pを0.29(常套の圧縮試験により測定)、GaAsの半導体基板に作用する力Fを2Nの下、半導体基板の抗折強度を以下の式より求めると、約170MPaであることが判った。
【数4】
S=3pF/2πt2
(S[MPa]:抗折強度、t[μm]:真空吸引作用が半導体基板に及ぼされている薄層化過程で半導体基板が割れる時の半導体基板厚さ、p[−]:半導体基板のポアソン比、F[N]:真空吸引に基づいて半導体基板に作用する力(開口部内の真空圧力と半導体基板の周囲の大気圧との差圧))
【0066】
以上の実施例により、砥石の粒径が2μm(4000番砥石)で、薄層化速度が15μm/minという薄層化条件に対しては、ダメージ層厚さが20μmとなることを把握した上で、同一の薄層化条件で、薄層半導体基板の量産を実施した。なお、薄層化する半導体基板には、素子が形成されているが、真空吸着用台座に面する半導体基板面に両面粘着シートにより支持基板が取り付けられ、半導体基板が真空吸引作用を受けないようになっているため、その薄層化速度と半導体基板の臨界厚さとの相関関係を示すグラフは、図3のCで示す直線より20μm低い直線に相当する。それゆえ、その直線より左上の領域に該当する薄層化条件は、半導体基板が割れない条件となることを予め把握しており、従って、ダメージ層厚さおよび臨界厚さの双方を把握した上で、臨界厚さ厚さ30μmまで薄層化する薄層半導体基板の量産を実施した。その結果、薄層半導体基板の量産歩留まりは、略100%を達成することができた。
【0067】
【発明の効果】
本発明の測定方法により、薄層化速度ならびに砥石および/もしくは研磨材の粒径という薄層化条件に対して半導体基板のダメージ層厚さを測定することができる。また、その測定方法と同様な操作を行なうことにより、薄層化される半導体基板の臨界厚さを求めることができ、更に、その臨界厚さから、薄層化条件に対する半導体基板の抗折強度も測定することができる。従って、適用する薄層化条件に対して、ダメージ層厚さ、臨界厚さおよび抗折強度を把握した上で、薄層半導体基板の量産を行なうことが可能であり、また、その量産歩留まりを改善でき、好ましくは略100%にまで改善することができる。また更には、薄層化後のエッチング処理によるダメージ層の除去の際、エッチングに用いるエッチング液の量等、エッチング条件が定まり、効率よくダメージ層を除去することもできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の半導体基板のダメージ層厚さおよび抗折強度の測定方法の一実施態様を模式的に示す。
【図2】本発明の薄層化装置に供される真空吸着用台座を模式的に上面図および断面図により示す。
【図3】本発明の測定方法により得られた薄層化速度とダメージ層厚さもしくは臨界厚さとの相関関係を示すグラフ、または、砥石の粒径とダメージ層厚さもしくは臨界厚さとの相関関係を示す。
【符号の説明】
1…半導体基板、2…両面粘着シート、3…支持基板、4…真空吸着用台座、5…開口部、6…薄層化台、7…薄層化手段、8…冷却水、9…窒素ガス。
Claims (9)
- 半導体基板の薄層化過程で生じる半導体基板のダメージ層厚さを測定する方法であって、
半導体基板に支持基板を接合させる工程と、
該支持基板と真空吸着用台座とが接するように、該半導体基板と一体化した該支持基板を真空吸引作用によって該真空吸着用台座に固定する工程と、
該半導体基板が割れるまで薄層化する工程と、
該半導体基板が割れた時の半導体基板厚さを求める工程と、
を含むことを特徴とする、ダメージ層厚さの測定方法。 - 請求項1に記載のダメージ層厚さの測定方法において、
前記真空吸引作用は、前記真空吸着用台座の開口部内を減圧することによってもたらされることを特徴とする、ダメージ層厚さの測定方法。 - 請求項1または2に記載のダメージ層厚さの測定方法において、
砥石を用いる研削によって、および/または、研磨材を用いる研磨によって、前記半導体基板を薄層化することを特徴とする、ダメージ層厚さの測定方法。 - 請求項1乃至3のいずれか1つに記載のダメージ層厚さの測定方法において、
前記半導体基板は、GaAs系、Si系、InP系またはGaN系であることを特徴とする、ダメージ層厚さの測定方法。 - 請求項1乃至4のいずれか1つに記載のダメージ層厚さの測定方法において、
前記半導体基板の薄層化速度をパラメータとして変化させることによって、該薄層化速度と前記ダメージ層厚さとの相関関係を得る工程と、
該相関関係から、適用する薄層化速度に対するダメージ層厚さを求める工程と、
を含むことを特徴とする、ダメージ層厚さの測定方法。 - 請求項5に記載のダメージ層厚さの測定方法において、
前記砥石および/または前記研磨材の粒径をパラメータとして変化させることによって、該砥石および/または該研磨材の該粒径と前記ダメージ層厚さとの相関関係を得る工程と、
該相関関係から、適用する砥石および/または研磨材の粒径に対するダメージ層厚さを求める工程と、
を含むことを特徴とする、ダメージ層厚さの測定方法。 - 半導体基板を薄層化する装置であって、
開口部を有する真空吸着用台座と、
該開口部内を減圧する手段と、
半導体基板に対して相対的に回転する薄層化手段と、
を備えたことを特徴とする薄層化装置。 - 請求項8に記載の薄層化装置であって、
請求項1〜請求項7のダメージ層厚さまたは抗折強度の測定方法に使用する薄層化装置。
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JP2002310774A Pending JP2004143000A (ja) | 2002-10-25 | 2002-10-25 | 半導体基板のダメージ層厚さおよび抗折強度の測定方法ならびにそれらの測定に使用する薄層化装置 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2004143000A (ja) |
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
US7554175B2 (en) | 2006-03-15 | 2009-06-30 | Sumitomo Electric Industries, Ltd. | Gallium nitride substrate, and gallium-nitride-substrate testing and manufacturing methods |
JP2010285288A (ja) * | 2009-06-09 | 2010-12-24 | Panasonic Corp | 結晶製造方法および結晶製造装置 |
JP2014212326A (ja) * | 2005-07-01 | 2014-11-13 | フライベルガー・コンパウンド・マテリアルズ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツングFreiberger Compound Materials Gmbh | Iアニールiii−v族半導体単結晶ウェーハ |
-
2002
- 2002-10-25 JP JP2002310774A patent/JP2004143000A/ja active Pending
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2014212326A (ja) * | 2005-07-01 | 2014-11-13 | フライベルガー・コンパウンド・マテリアルズ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツングFreiberger Compound Materials Gmbh | Iアニールiii−v族半導体単結晶ウェーハ |
US7554175B2 (en) | 2006-03-15 | 2009-06-30 | Sumitomo Electric Industries, Ltd. | Gallium nitride substrate, and gallium-nitride-substrate testing and manufacturing methods |
JP2010285288A (ja) * | 2009-06-09 | 2010-12-24 | Panasonic Corp | 結晶製造方法および結晶製造装置 |
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