JP2004142722A - 車輪支持用転がり軸受ユニット - Google Patents

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Abstract

【課題】フランジ6の軸方向外側面側の付け根部分を焼き入れする事なく、この付け根部分の疲労強度を向上させる。そして、上記フランジ6の薄肉化を可能にし、車輪支持用転がり軸受ユニット1の軽量化を可能にする。
【解決手段】ハブ輪2を、Cを0.5〜0.8重量%含む炭素鋼製とする。そして、このハブ輪2のうちで、少なくとも上記フランジ6の軸方向外側面側の付け根部分の表面硬度を、ロックウェル硬さで24〜35とする。又は、この付け根部分の表面粗さを、算術平均粗さRaで0.1〜1.0μm、或は、最大高さRyで1.0〜10μmとする。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車の車輪を懸架装置に対し回転自在に支持する為の車輪支持用転がり軸受ユニットの改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車の車輪を懸架装置に対し回転自在に支持する為に、例えば図1〜2に示す様な車輪支持用転がり軸受ユニット1、1aが、広く使用されている。このうちの図1に示した第1例の車輪支持用転がり軸受ユニット1は、特許請求の範囲に記載した回転輪を構成するハブ輪2及び内輪3と、特許請求の範囲に記載した静止輪である外輪4と、複数個の転動体5、5とを備える。このうちのハブ輪2の外周面の外端部(軸方向に関して外とは、自動車への組み付け状態で幅方向外寄りとなる側を言い、図1〜2の左側。反対に幅方向中央寄りとなる側を、軸方向に関する内と言い、図1〜2の右側。本明細書全体で同じ。)には、車輪を支持する為のフランジ6を形成している。又、このハブ輪2の中間部外周面には第一の内輪軌道7aを、同じく内端部には外径寸法が小さくなった段部8を、それぞれ形成している。そして、この段部8に、外周面に第二の内輪軌道7bを形成した、上記内輪3を外嵌して、上記回転輪を構成している。又、この内輪3の内端面は、上記ハブ輪2の内端部に形成した円筒部を直径方向外方にかしめ広げる事で形成したかしめ部9により抑え付けて、上記内輪3を上記ハブ輪2の所定位置に固定している。又、上記外輪4の内周面には複列の外輪軌道10、10を形成し、これら両外輪軌道10、10と上記両内輪軌道7a、7bとの間に上記各転動体5、5を、それぞれ複数個ずつ設けている。
【0003】
次に、図2に示した第2例の車輪支持用転がり軸受ユニット1aは、図示しない支持軸に外嵌された状態で回転しない、特許請求の範囲に記載した静止輪である1対の内輪3a、3aの周囲に、外周面に車輪を支持する為のフランジ6aを形成した、特許請求の範囲に記載した回転輪であるハブ輪2aを配置している。そして、このハブ輪2aの内周面に形成した外輪軌道10a、10aと上記各内輪3a、3aの外周面に形成した各内輪軌道7、7との間に、それぞれ複数個ずつの転動体5、5を設けている。
尚、図1〜2に示した例は何れも、転動体5、5として玉を使用しているが、重量の嵩む自動車用の転がり軸受ユニットの場合には、これら転動体としてテーパころを使用する場合もある。
【0004】
上述の様な車輪支持用転がり軸受ユニット1、1aを自動車に組み付けるには、外輪4の外周面に形成した外向フランジ状の取付部11をナックル等の懸架装置の構成部品にねじ止め固定する事により(図1の構造の場合)、或は1対の内輪3a、3aを支持軸に外嵌固定する事により(図2の構造の場合)、静止輪である上記外輪4或は内輪3a、3aを懸架装置に支持する。又、ハブ輪2、2aの外周面に形成したフランジ6、6aに車輪を固定する。この結果、この車輪を懸架装置に対し回転自在に支持する事ができる。
【0005】
上述の様な車輪支持用転がり軸受ユニット1、1aを構成するハブ輪2、2aは、熱間鍛造性や切削性を確保する事を考慮して、S53Cの如き機械構造用炭素鋼等の中炭素鋼で造っている。製造時には、先ず、所定長さに切断した棒状の素材を、高周波誘導加熱により1100〜1200℃程度のオーステナイト域まで加熱してから、熱間鍛造により所定の形状とした後、放冷する。この加工作業の際、オーステナイト粒界から初析フェライトが析出した後、室温程度に冷却されるまでの間に起こるパーライト変態によって、初析フェライトとパーライトとが複合した組織が得られる。この様な組織の大部分は、焼き入れ、焼き戻し等の熱処理を施す事なく、そのまま使用される。これに対して、図1に示す構造の場合、同図に斜格子で示す様に、フランジ6の軸方向内側面側の付け根部分及び前記第一の内輪軌道7aから段部8までの領域に、転がり疲れ寿命確保、及び、嵌合部のフレッチング防止の為に、高周波焼き入れによる硬化層を形成する事が行なわれている。
【0006】
又、近年、自動車の燃費向上並びに走行性能の向上の為、車輪支持用転がり軸受ユニット1、1aの軽量化に関する要求が高くなっており、車輪を支持する為のフランジ6、6aの薄肉化に就いても考慮されている。但し、このフランジ6、6aを薄肉化すると、このフランジ6、6aの付け根部分の強度が弱くなる為、薄肉化するに就いては、強度確保の為に十分な配慮を行なう必要がある。
【0007】
特に、上記フランジ6、6aの外側面側の付け根部分には、旋回走行時等に、懸架装置と車輪との間で上記車輪支持用転がり軸受ユニット1、1aに加わるモーメント荷重によって、曲げ応力が集中する。この為、何らの対策も施さない場合には、金属疲労に基づいて、亀裂等の損傷が生じる可能性がある。一方、上記フランジ6、6aの内側面側の付け根部分は、前述した通り、高周波焼き入れによる硬化層が形成されて高強度になっている為、上記外側面側の付け根部分よりも、疲労強度が高くなっており、亀裂等の損傷が生じる可能性は低い。
この様な事情に鑑みて、特許文献1には、フランジの外側面側の付け根部分にも、内側面側の付け根部分と同様に、高周波焼き入れによる表面硬化層を形成する事によって、このフランジの外側面側の付け根部分の強度向上を図った構造が記載されている。
【0008】
【特許文献1】
特開2002−87008号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
但し、上述した特許文献1に記載された構造の場合には、高周波焼き入れ部が1個所増加する事により、車輪支持用転がり軸受ユニットの製造コストが上昇する。しかも、フランジの付け根部分を、内外両側面側から焼き入れ硬化する事に伴って、この付け根部分の靱性が低下し、この付け根部分の耐衝撃性が低下する事が懸念される。
【0010】
この様な耐衝撃性の低下を防止すべく、上記付け根部分の外側面側を焼き入れ硬化させずに上記フランジの薄肉化を図る為には、素材を鍛造した後の疲労強度を向上させる事が必要になる。更に、切削性も考慮すると、耐久比(疲労限強度/引張り強度)を向上させる事も必要になる。
本発明は、この様な事情に鑑みて、高周波焼き入れ部を増加させる事なく、即ち、フランジの軸方向外側面側の付け根部分を焼き入れする事なく、この付け根部分の疲労強度を向上させる事により、上記フランジの薄肉化を可能にし、車輪支持用転がり軸受ユニットの軽量化を可能にすべく発明したものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明の車輪支持用転がり軸受ユニットは何れも、前述した従来から知られている車輪支持用転がり軸受ユニットと同様に、静止輪と、回転輪と、外輪軌道と、内輪軌道と、複数個の転動体と、フランジとを備える。
このうちの静止輪は、使用時に懸架装置に支持されて回転しない。
又、上記回転輪は、上記静止輪と同心に配置され、使用時に車輪を結合固定して、この車輪と共に回転する。
又、上記外輪軌道は、上記回転輪と上記静止輪とのうちの一方で、径方向外方に存在する外径側軌道輪の内周面に設けられている。
又、上記内輪軌道は、上記回転輪と上記静止輪とのうちの他方で、径方向内方に存在する内径側軌道輪の外周面に設けられている。
又、上記各転動体は、上記内輪軌道と上記外輪軌道との間に設けられている。
又、上記フランジは、上記車輪を結合固定する為のもので、上記回転輪の外周面に設けられている。
【0012】
特に、本発明の車輪支持用転がり軸受ユニットのうち、請求項1に記載した車輪支持用転がり軸受ユニットに於いては、上記回転輪のうちで少なくとも上記フランジを設けた部分が、Cを0.5〜0.8重量%含む炭素鋼製である。そして、この回転輪のうちで、少なくとも上記フランジの軸方向外側面側の付け根部分の表面の硬度が、ロックウェル硬さCスケール(150kg荷重、ダイヤモンド角すい)で24〜35、ビッカース硬さで260〜345である。
又、請求項3に記載した車輪支持用転がり軸受ユニットに於いては、上記回転輪のうちで、少なくとも上記フランジの軸方向外側面側の付け根部分の表面粗さが、算術平均粗さRaで0.1〜1.0μmである。
更に、請求項4に記載した車輪支持用転がり軸受ユニットに於いて、上記回転輪のうちで、少なくとも上記フランジの軸方向外側面側の付け根部分の表面粗さが、最大高さRyで10μm以下(より好ましくは1〜6μmRy)である。
尚、請求項3に記載した発明と請求項4に記載した発明とは、同時に実施する場合もある。又、請求項1(及び請求項2)に記載した発明と、請求項3と請求項4とに記載した発明の一方又は双方とを、同時に実施する事もできる。
【0013】
【作用】
上述の様に構成する本発明の車輪支持用転がり軸受ユニットによれば、回転輪の外周面に形成したフランジの軸方向外側面側の付け根部分の疲労強度を、この付け根部分を焼き入れ硬化する事なく向上させる事ができる。以下、この理由に就いて詳細に説明する。
【0014】
走行時に車輪と共に回転輪が回転している状態で、路面に接した車輪と車体に支持された懸架装置との間に設けた車輪支持用転がり軸受ユニットには、ラジアル荷重が加わる。そして、このラジアル荷重と回転モーメントとにより上記フランジの付け根部分に、回転曲げ応力が発生する。
【0015】
上記フランジをその外周面に設けた回転輪は、S53C等の中炭素鋼に熱間鍛造加工を施す事により造っている。中炭素鋼を使用した理由は、熱間鍛造性や切削性を考慮した為である。本発明の発明者が、この様な中炭素鋼により回転輪を熱間鍛造により造った後、上記フランジの軸方向外側面側の付け根部分の硬度を詳細に調べたところ、ロックウェル硬さCスケール(H C)で18〜23程度であった。回転曲げ応力に対する疲労強度は、材料表面近傍の硬度が高い(硬い)程高くなる(強くなる)傾向にある。従って、上記フランジの軸方向外側面側の付け根部分の表面近傍は、硬い方が好ましい。請求項1に記載した発明の場合には、この付け根部分の表面硬度をH C24(Hv260)以上としている為、上記回転曲げ応力に対する疲労強度を十分に高くして、上記フランジの薄肉化が容易になる。逆に言えば、上記付け根部分の表面硬度がH C24未満であると、疲労強度が低い為、フランジを十分に薄肉化する事が難しい。
【0016】
一方、車輪支持用転がり軸受ユニットは、悪路走行時等に車輪から加わる衝撃荷重を受ける為、上記フランジの付け根部分には耐衝撃性(靱性)も要求される。耐衝撃性は、疲労強度に相反し、材料の硬さが高い程低下する傾向にある。上記フランジの内側面側の付け根部分は、前述の図1から明らかな通り、内輪軌道7aに近く、シールリング12のシールリップの先端縁が摺接する部分でもある。この為、この内輪軌道7aの硬度確保と上記付け根部分の摩耗防止との為に、高周波焼き入れによって硬化層を形成する必要がある。従って、上記フランジの付け根部分は、内側面側に関しては硬度が高くなる事が避けられない。
【0017】
これに伴って、上記フランジの付け根部分の外側面側の硬度が高くなり過ぎると、このフランジの付け根部分の内外両側面側の硬度が高くなってしまい、この付け根部分の耐衝撃性が過度に低下する可能性がある。又、上記フランジの付け根部分の外側面側の切削加工性も低下する。請求項1に記載した発明の場合には、この付け根部分の疲労強度を向上させつつ、耐衝撃性の低下の抑制と切削加工性の確保とを考慮して、上記フランジの軸方向外側面側の付け根部分の表面硬さを、H C35(Hv345)以下に抑えている。
【0018】
要するに、請求項1に記載した発明の場合には、上記フランジの軸方向外側面側の付け根部分の表面硬さをH C24以上35以下として、耐衝撃性と切削加工性とを確保しつつ、上記付け根部分の疲労強度向上を図っている。尚、この様な作用・効果をより高次元で得る為には、上記フランジの軸方向外側面側の付け根部分の表面硬さをH C26以上33以下とする事が好ましい。
【0019】
次に、請求項3及び請求項4に記載した発明が、回転曲げ応力に対する疲労強度を向上させる理由に就いて説明する。本発明の発明者が、この回転曲げ応力によってフランジ付け根部分に生じた、疲労に基づく亀裂を観察した結果、この亀裂は、表面起点によるものである事が分かった。この様な表面起点による亀裂の発生は、表面粗さを向上させ、表面の微小な凹凸に生じる局所的な応力集中を緩和する事で抑える事ができ、結果として当該部分の疲労強度が向上する。
【0020】
請求項3及び請求項4に記載した発明の場合には、上記フランジの軸方向外側面側の付け根部分の表面粗さを、算術平均粗さRaで1.0μm以下(請求項3の場合)又は最大高さRyで10μm以下(請求項4の場合)と低く抑え、この部分の表面を平滑にしている為、上記局所的な応力集中を緩和する事ができる。そして、応力集中に基づく亀裂の発生を抑える事ができ、上記付け根部分の疲労強度を向上させる事ができる。この部分の疲労強度を向上させる面からは、上記付け根部分の表面粗さは低い程好ましいが、この部分の表面粗さが、算術平均粗さRaで0.1μm未満、最大高さRyで1.0μm未満になっても、それ以上疲労強度が向上する事は殆どなくなる(効果が飽和する)。そして、何れの場合でも、上記部分の表面粗さを向上させる為の表面処理に要するコストが徒に嵩む事になる。即ち、この表面粗さを0.1μmRa未満、1.0μmRy未満にする為には、粗さの異なる2種以上の砥石又はバイトを順次交換しつつ使用して上記付け根部分を研磨又は切削する必要があり、加工コストが徒に嵩む原因となる。この為、請求項3及び請求項4に記載した発明の場合には、上記付け根部分の表面粗さを、算術平均粗さRaで0.1μm以上、或は最大高さRyで1.0μm以上とする事が、加工コストを抑える面からは好ましい。
【0021】
又、本発明の車輪支持用転がり軸受ユニットを造る場合、上記回転輪のうちで少なくとも上記フランジを設けた部分(図1の構造でハブ輪2、図2の構造でハブ輪2a)を構成する金属材料は、Cを0.5〜0.8重量%含む炭素鋼を用いる。尚、この様な炭素鋼を用いる事は、請求項1に記載した発明に関しては必須であり、請求項3及び請求項4に記載した発明に関しては、必須ではないが用いる事が好ましい。尚、これら請求項3及び請求項4に記載した発明を実施する場合に好適な、炭素鋼中のCの含有量に関しては、後で詳しく述べる。
【0022】
上記炭素鋼中に含まれるCの量が0.5重量%未満の場合には、高周波焼き入れ後の硬度が不十分となり、炭化物の析出も少なくなる為、軌道面部分(図1の構造で内輪軌道7a、図2の構造で外輪軌道10a、10a)の転がり疲れ寿命が不十分となる。又、上記フランジの軸方向外側面側の付け根部分の硬さを安定的に確保する事が難しくなる。即ち、この付け根部分の硬さを、請求項1に記載した発明の技術的範囲である、ロックウェル硬さCスケールで24〜35、ビッカース硬さで260〜345とする事が難しくなる。以上の理由から、上記炭素鋼中に含まれるCの量を0.5重量%以上とした。尚、上記軌道面部分の転がり疲れ寿命をより十分に確保し、且つ、上記付け根部分の硬さをより安定して確保する事を考慮した場合、上記炭素鋼中のCの含有量を0.55重量%以上とする事が好ましい。即ち、炭素鋼中に含まれるCは、熱間鍛造後の硬さに大きな影響を与える合金元素であり、含有量を0.55重量%以上にすれば、上記回転輪のうちで上記フランジを設けた部分を熱間鍛造により加工した後の硬さを高くして、上記付け根部分の硬さを上記範囲に安定して収める事ができる。
【0023】
一方、この炭素鋼中のCの含有量が0.8重量%を超えると、上記回転輪のうちで少なくとも上記フランジを設けた部分の熱間鍛造性、切削性を含む加工性が低下し、生産性が低下してコスト上昇の原因となる。これらの理由から、回転輪のうちで上記フランジを設けた部分を構成する炭素鋼中に含まれるCの含有量を0.5重量%(好ましくは0.55重量%)以上、0.8重量%以下とした。
【0024】
【発明の実施の形態】
本発明の特徴は、ハブの外周面に形成するフランジの外側面側の付け根部分の疲労強度を、この付け根部分を焼き入れする事なく向上させる点にある。図面に現れる構造に就いては、例えば前述の図1〜2に示した従来構造と同様であるから、重複する説明は省略する。
尚、図1に示した車輪支持用転がり軸受ユニット1aの場合には、ハブ輪2の外周面に形成したフランジ6の内側面側の付け根部分の疲労強度は、前述した様に、焼き入れに基づいて確保される。
これに対して、図2に示した車輪支持用転がり軸受ユニット1aの場合には、ハブ輪2aの外周面に形成したフランジ6aの内側面側の付け根部分の疲労強度は、別途焼き入れにより確保する。上記フランジ6aの内側面側の付け根部分から上記ハブ輪2aの内周面までの距離は、同じく外側面側の付け根部分から内周面までの距離よりも長い為、焼き入れ効果に伴う靱性(耐衝撃性)の低下は、問題となりにくい。
【0025】
尚、請求項1に係る発明を実施する場合に於いて、上記各フランジ6、6aの軸方向外側面側の付け根部分の硬さを、ロックウェル硬さCスケールで24〜35、ビッカース硬さで260〜345の範囲にする為の方法は特に限定しない。但し、次述する様な方法を、単独で、或は適宜組み合わせて用いる事が好ましい。
先ず、基本的には、上記フランジ6、6aをその外周面に設けたハブ輪2、2aを、熱間鍛造により造ってから冷却する。熱間鍛造後の冷却は、一般的には空気中に放置する放冷により行なう場合が多いが、上記請求項1に記載した発明を実施する場合に好ましくは、冷却ファン等を用いて冷却速度を速くする。
【0026】
熱間鍛造直後の上記ハブ輪2、2aは高温である為、このハブ輪2、2aを構成する炭素鋼の金属組織がオーステナイトとなっているが、冷却過程で、フェライト及びパーライトに変態する。この変態は650℃程度で完了するが、この時、冷却速度が遅いと、フェライトが粗大化して上記ハブ輪2、2aの硬度が低下する。従って、このフェライトの粗大化を防止して硬度を確保する為に、熱間鍛造後の上記ハブ輪2、2aの冷却速度は速い方が好ましく、上記変態が完了する650℃程度まで、ファン冷却を行なう事が好ましい。この際、上記ハブ輪2、2aの芯部の温度が650℃以下になるまでの冷却速度を速くする為には、表面温度が600℃以下になるまで、ファン冷却を継続する事が好ましい。
【0027】
又、上記ハブ輪2、2aを構成する炭素鋼として、Vを0.03〜0.3重量%含むものを使用する事は、上記ハブ輪2、2aの強度を確保する面から好ましい。Vは、初析フェライト及びパーライト中に層状に析出している、フェライトを強化する性質がある。従って、適正量添加する事で、上記ハブ輪2、2aの強度をより向上させる事ができる。但し、Vの添加量が0.03重量%未満の場合には、フェライトを強化する効果が小さい。これに対して、0.3重量%を超えて添加すると、熱間鍛造性、切削性等の加工性が低下する。従って、上記ハブ輪2、2aを形成する炭素鋼中にVを添加する場合には、その添加量を0.03〜0.3重量%の範囲に規制する事が好ましい。
【0028】
又、請求項3及び請求項4に係る発明を実施する場合に、前記フランジ6、6aの軸方向外側面側の付け根部分の表面粗さを所定範囲(算術平均粗さRaで0.1〜1.0μm、最大高さRyで1.0〜10μm)にする為の方法は特に限定しない。但し、次述する様な手段を、単独で、或は適宜組み合わせて用いる事が好ましい。
一般的な車輪支持用転がり軸受ユニットの場合、上記付け根部分は、熱間鍛造後に切削加工を施す事により所定の形状に加工したままとしており、この状態での表面粗さは、上記範囲よりも遥かに大きい。そこで、上記請求項3に記載した発明を実施する場合には、上記付け根部分を切削加工した後、この付け根部分に研削加工を施す事によって、この付け根部分の表面粗さを0.5μmRa以下とする。又、この付け根部分に関して、切削加工後にバニッシング加工を施す事で、この付け根部分の表面粗さを0.5μmRa以下とする事ができる。特に、バニッシング加工を施した場合には、上記付け根部分を含む加工部分の表面近傍が加工硬化して、この加工部分の疲労強度が向上する。
【0029】
又、請求項4に係る発明を実施する場合に、最大高さRyの値は、加工部分の周速、送り速度、及び切り込み深さ等の旋盤加工の加工条件によって変える事ができる。上記最大高さRyを小さくする為には、上記送り速度及び切り込み深さの値を、生産性を考慮した範囲で、できるだけ小さくする。具体的には、仕上旋削加工時の送り速度を0.3mm/rev 以下、切り込み深さを1mm以下とする事が好ましい。又、周速の値は、構成刃先の発生を防止する面から、或る程度大きくする事が好ましい。具体的には、100m/min以上とする事が好ましい。
【0030】
上記最大高さRyの値が10μmを超えると、前述の様に凹凸の最深部に生じる応力集中が高くなって、回転曲げに対する疲労強度が低下するだけでなく、加工面にむしれが生じて、凹凸の形状が鋭くなり、応力集中が著しく高くなる場合がある。しかも、旋盤の刃先に構成刃先が生じて、発熱が大きくなり、表面に熱影響層が生じ、疲労強度が低下する場合がある。
【0031】
この様な理由から、請求項4に係る発明を実施する場合には、前記軸方向外側面側の付け根部分の表面粗さの値を、最大高さRyで10μm以下にする。この付け根部分の疲労強度をより向上させる為に好ましくは、この最大高さRyの値を6μm以下にする。但し、上記付け根部分の表面粗さを、最大高さRyで1μm未満にすると、疲労強度向上の効果がほぼ飽和してそれ以上疲労強度が向上しないのに対して、加工に要する時間が著しく長くなって生産性が低下する。従って、上記付け根部分の表面粗さの値は、好ましくは1μmRy以上とする。
【0032】
又、請求項3及び請求項4に係る発明(特に請求項4に係る発明)を実施する場合に、フランジを備える回転輪は、Cを0.45〜1.1重量%含む鋼で形成する事が好ましい。Cが0.45重量%未満の場合には、熱間鍛造後の金属組織中のフェライト分率が著しく増加するだけでなく、硬度が低くなる事に起因して、旋盤加工によるむしれが生じ易くなり、表面粗さの最大高さRyの値が大きくなり易くなり、しかも、硬度低下による疲労強度の低下も生じる。これに対して、Cの含有量が1.1重量%を超えると、金属組織中のセメンタイトが増加し、加工性が著しく低下する。従って、上記回転輪を構成する鋼中のCの含有量は0.45〜1.1重量%、より好ましくは、0.45〜0.65重量%とする。Cの含有量をこの範囲に規制する事によって、熱間鍛造後の硬さ及び金属組織が好適になり、熱間鍛造後の焼鈍工程を要しないで、上記請求項3及び請求項4(特に請求項4)に係る発明を実施する為に必要とされる、良好な加工性を得られる。
【0033】
又、何れの請求項に係る発明を実施する場合でも、外輪軌道及び内輪軌道は、各転動体から高面圧を受ける為、転がり疲労寿命向上の為には、この高面圧に耐え得る高い硬度が必要になる。上記外輪軌道及び内輪軌道の表面の硬さがHv660未満の場合には、硬度が不足する事により、転がり疲れ寿命が低下する。これに対して、上記各軌道の表面の硬さがHv760を超えると、靭性が低下する。従って、何れの請求項に係る発明を実施する場合でも、好ましくは、上記外輪軌道及び内輪軌道の表面硬さを、Hv660以上Hv760以下とする。尚、転がり疲れ寿命向上の為により好ましくは、上記外輪軌道及び内輪軌道の表面硬さを、Hv700以上とする。
【0034】
尚、本発明を実施する場合に、ハブ輪2と共に回転輪を構成する内輪3(図1)並びに静止輪である内輪3a、3a(図2)の材質は特に限定しない。但し、これら各内輪3、3aの周面に形成した内輪軌道7b、7の転がり疲れ寿命を充分に確保する為には、Cを0.9〜1.1重量%程度含む炭素鋼を用いる事が好ましい。この場合に使用可能な炭素鋼としては、SUJ2等の高炭素クロム軸受鋼を例示できる。又、本発明を図1に記載した構造で実施する場合に、静止輪である外輪4を構成する金属材料としては、Cを0.45〜0.8重量%程度含有する炭素鋼を用いる事が好ましい。この理由は、上記外輪4には、ハブ輪2、2aの場合と同様に、熱間鍛造性、切削性等の加工性が求められる為である。又、転動体5、5として玉を使用する場合、SUJ2等の高炭素クロム軸受鋼製のもの、或は高炭素クロム軸受鋼製で表面に浸炭窒化処理を施したものが、それぞれ好ましく使用できる。
【0035】
【実施例】
本発明の効果を確認する為に行なった実験に就いて説明する。尚、実験は、何れも、図1に示した構造で背面組み合わせ型の接触角を有する、複列玉軸受型式の車輪支持用転がり軸受ユニットに就いて行なった。
[第一の実験]
第一の実験では、請求項1に記載した発明に関して、ハブ輪2の外端部外周面に形成したフランジ6の、軸方向外側面側の付け根部分の硬さの影響を調べた。この為に、先ず、転動体5、5のピッチ円直径が56mm、この転動体5、5の数が12個である、図1に示す様な車輪支持用転がり軸受ユニットのハブ輪2を、次の表1に示す様な材料により造った。
【0036】
【表1】
Figure 2004142722
【0037】
この表1に示したA〜Jの10種類の炭素鋼のうちから選択した何れかの炭素鋼によりハブ輪2を、熱間鍛造により造った。この際、鍛造後の冷却工程を変える、即ち、放冷にするか冷却ファンを使用した空冷にするかにより、上記ハブ輪2の性状を変えた。そして、熱間鍛造及び冷却後、切削加工及び孔あけ加工を施して、所定の形状を有する上記ハブ輪2とした。その後、図1に斜格子で示した、フランジ6の軸方向内側面側の付け根部分及び前記第一の内輪軌道7aから段部8までの領域に、高周波焼き入れによる硬化層を形成した後、仕上の為の研削加工を施した。一方、外輪4は機械構造用炭素鋼(中炭素鋼)であるS53Cにより、内輪3及び各転動体5、5はSUJ2により、それぞれ造った。
【0038】
この様にして造った車輪支持用転がり軸受ユニット(試料)を、6000Nのアキシアル荷重と、5000〜9600Nのラジアル荷重(試験毎に変更)とを加えた状態で、400 min−1の回転速度で50時間回転させ続ける回転試験を、同一の試料に就いて複数個ずつ、ラジアル荷重を変えて行なった。この様な、試験を行なった後に、上記フランジ6の外側面の付け根分にクラックが発生した試料に付与したラジアル荷重の最小値を、当該試料に就いての耐久荷重と判定した。この様な条件で行なった実験の結果を、次の表2に示す。
【0039】
【表2】
Figure 2004142722
【0040】
この表2には、請求項1に係る発明の技術的範囲に属する9種類の試料(実施例1〜9)と、本発明の技術的範囲からは外れる4種類の試料(比較例1〜4)との、合計13種類の試料に就いて、ハブ輪2に用いた材料、熱間鍛造後の冷却方法、フランジ6の外側付け根部分の硬さ(Hv)、及び耐久荷重を示している。尚、表中の耐久荷重は、比較例3の耐久荷重を1.0として、それに対する比で表している。又、上記付け根部分の硬さは、ハブ輪2を切断してその切断面を鏡面状にし、表面から0.1mmの位置をビッカース硬さ試験機で測定して求めた。
【0041】
この様にして行なった第一の実験の結果を示す表2から明らかな通り、請求項1に記載した発明の技術的範囲に属する実施例1〜9は、上記フランジ6の付け根部分の硬さを本発明で規定する範囲(Hv260〜345)内にしている為、回転曲げ応力に対する疲労強度が高く、耐久荷重が高い。又、切削加工性が低下する事もない。尚、実施例1〜3は、主に熱間鍛造後の冷却速度を速くする事によって材料強度を高めたものである。又、実施例4、5は、主に材料中のCの含有量を増やす事によって材料強度を高めたものである。又、実施例6、7は、主に材料にVを添加すると共に冷却速度を速くする事によって材料強度を高めたものである。更に、実施例8、9は、バニッシング加工による加工硬化によって材料表面の強度を高めたものである。
これに対して、請求項1に記載した発明の技術的範囲からは外れる、比較例1〜3は、フランジ6の付け根部分の硬さが、上記請求項1に記載した発明で規定する範囲より小さい為、回転曲げに対する疲労強度が低く、耐久荷重が低い結果となった。逆に、比較例4は、フランジ6の付け根部分の硬さが、上記請求項1に記載した発明で規定する範囲より大きい為、耐久荷重は高いが切削加工性が低下した。
【0042】
[第二の実験]
第二の実験では、請求項3に係る発明に関して、ハブ輪2の外端部外周面に形成したフランジ6の、軸方向外側面側の付け根部分の表面粗さの影響を調べた。この様な第二の実験に使用した車輪支持用転がり軸受ユニットの構造及び大きさは、焼き入れ部分を含めて、上述した第一の実験の場合と同じである。但し、ハブ輪2は、何れも機械構造用炭素鋼であるS53Cにより造った。又、このハブ輪2を造る場合に、熱間鍛造後の冷却は、冷却ファンを使用した空冷で行った。外輪4、内輪3、転動体5、5の材質に関しても、上記第一の実験の場合と同様である。この様な車輪支持用転がり軸受ユニットに関して、フランジ6の軸方向外側面側の付け根部分の表面粗さを、通常行なう切削加工の切削速度を変えたり、研削加工を加えたり、バニッシング加工を加えたりする事で、種々変化させた。
【0043】
この様にして造った車輪支持用転がり軸受ユニット(試料)を、6000Nのアキシアル荷重と、8000Nのラジアル荷重とを加えた状態で、400 min−1の回転速度で50時間回転させ続ける回転試験を行った。この様な、試験を行なった後に、上記フランジ6の外側面の付け根部分にクラック(亀裂)が発生したか否かを検査した。この様な条件で行なった実験の結果を、次の表3に示す。
【0044】
【表3】
Figure 2004142722
【0045】
この表3には、請求項3に係る発明の技術的範囲に属する5種類の試料(実施例11〜15)と、本発明の技術的範囲からは外れる2種類の試料(比較例11〜12)との、合計7種類の試料に就いて、フランジ6の外側面の付け根部分の表面粗さ、フランジ6の外側付け根部分の硬さ(Hv)、試験後に於ける亀裂の有無を記載している。上記表3中の符号のうち、「○」はクラックを生じなかった事を、「×」はクラックが生じた事を、それぞれ表している。上記付け根部分の硬さに関しては、前述した第一の実験の場合と同様にして求めた。
【0046】
この様にして行なった第二の実験を結果を示す表3から明らかな通り、請求項3に記載した発明の技術的範囲に属する実施例11〜15は、上記フランジ6の軸方向外側面側の付け根部分の表面粗さが本発明で規定する範囲である、算術平均粗さで0.1〜1.0μmRaの範囲内に収まっている為、回転曲げ応力に対する疲労強度が高く、試験後、上記付け根部分にクラックを生じなかった。
これに対して、請求項3に記載した発明の技術的範囲からは外れる比較例11、12は、表面粗さが請求項3に記載した発明で規定する範囲より悪い為、試験後クラックが生じた。
【0047】
[第三の実験]
第三の実験では、請求項4に係る発明に関して、ハブ輪2の外端部外周面に形成したフランジ6の、軸方向外側面側の付け根部分の表面粗さの影響を調べた。この様な第三の実験に使用した車輪支持用転がり軸受ユニットの構造及び大きさは、焼き入れ部分を含めて、前述した第一の実験及び上述した第二の実験の場合と同じである。
【0048】
但し、上記第三の実験では、ハブ輪2を、次の表4に示す合金成分を含有した鋼により造った。
【表4】
Figure 2004142722
【0049】
この表4に示した組成を有する鋼製の素材に、1000〜1200℃で熱問鍛造を施して得た中間素材に、切削加工及び孔あけ加工を施し、所定の形状及び表面粗さを有するハブ輪2を得た。特に、フランジ6の外側面側の付け根部分を切削加工する際には、旋盤の周速、送り速度、切り込み深さを変える事によって、表面粗さRy(最大高さ)が異なる試験片を製作した。その後、内輪軌道7bの周辺部から段部8の周辺部まで高周波焼き入れ及び焼き戻しを施す事により、表面に硬度がHv660〜Hv760の硬化層を形成した。次いで、上記内輪軌道7b部分に、研削により仕上加工を施した。尚、上記フランジ6の外側面側の付け根部分には、研削加工は施さず、切削加工を施したままとした。
【0050】
下記の表5に、高周波焼き入れを施した上記内輪軌道7a部分の表面硬度と、高周波焼き入れを施していない非調質部の表面硬度と、フランジ6の外側面側の付け根部分の表面粗さRy(最大高さ)との測定値を記載した。又、図3に、上記フランジ6の外側面側の付け根部分の表面粗さを測定した際の形状の2例を記載した。この図3のうちの(A)は最大高さRyが9μmの場合の、(B)は同じく5μmである場合の、それぞれの表面形状を表している。
【0051】
【表5】
Figure 2004142722
【0052】
尚、外輪4はS53Cにより造り、1対の外輪軌道10、10の周辺に高周波焼き入れ及び焼き戻し処理を施し、これら各外輪軌道10、10の表面に、硬度がHv660〜Hv760の硬化層を形成した。又、内輪3及び転動体5は、SUJ2製で、通常の焼き入れ処理により、表面から芯部まで硬化したものを使用した。この様な内輪3及び転動体5と、上述の様なハブ輪2とにより、図1に示す様な構造の車輪支持用転がり軸受ユニットを造った。各列の転動体5、5の数は12個、これら各転動体5、5のピッチ円直径は49mmとした。
【0053】
そして、この様な車輪支持用転がり軸受ユニットに、下記の条件で回転試験を施した。
ラジアル荷重:8800N
アキシアル荷重:5900N
回転速度:300min−1
そして、内輪軌道7a、7b、外輪軌道10、10の何れかに剥離が生じ、その結果車輪支持用転がり軸受ユニットの回転に伴って異常な振動が発生した時点、或は、前記フランジ6の周辺部にクラックが発生した事を確認した時点を、当該車輪支持用転がり軸受ユニット寿命と判定する事とした。但し、比較例13〜14に関しては、何れもクラック発生により寿命に達した。この様な条件で行なった回転試験の結果を、前記表5に記載した。尚、この表5に記載した寿命は、比較例13の寿命を1.0として、これに対する比で表している。
【0054】
この表5の記載から明らかな通り、請求項4に係る発明の技術的範囲に属する、実施例16〜25は、フランジ6の外側面側の付け根部分の表面粗さ(最大高さ)Ryが何れも10μm以下である為、回転曲げに対する疲労強度が高く、優れた耐久性を得られた。特に、実施例16〜18、21、23及び25は、Ryの値が小さい為、著しく優れた耐久性を有する。
これに対して、本発明の技術的範囲からは外れる、比較例13〜15は、何れも、上記フランジ6の外側面側の付け根部分の表面粗さ(最大高さ)Ryが10μmを越えて大きい為、回転曲げに対する疲労強度が劣る。
【0055】
図4に、上記表5に記載した、上記フランジ6の外側面側の付け根部分の表面粗さ(最大高さ)Ryと、上記回転試験での寿命との関係を表している。この様な図4から明らかな様に、上記付け根部分の表面粗さRyの値を10μm以下に規制すると、この値が10μmを越える場合に比べて、疲労寿命が向上する。特に、上記表面粗さの最大高さRyの値が6μm以下の範囲で、疲労寿命向上の効果が著しい。
尚、請求項4に係る発明に関しても、前述の図2に示す様に、外輪2aの外周面にフランジ6aを設けた構造で実施した場合にも、同様の作用・効果を得られる事は勿論である。
【0056】
以上に述べた、第一〜第三の実験の結果から明らかな通り、車輪を固定する為にハブ輪2(2a)の外周面に形成した、フランジ6の軸方向外側面側の付け根部分の硬さをHv260以上Hv345以下とする事により、或は、この付け根部分の表面粗さを算術平均粗さRaで1.0μm以下、最大高さRyで10μm以下とする事により、この付け根部分の疲労強度が向上する。この為、車輪支持用転がり軸受ユニットの薄肉化(軽量化)が可能になる。尚、上記付け根部分の硬さをHv260以上Hv345以下とすると同時に、この付け根部分の表面粗さを算術平均粗さRaで1.0μm以下、最大高さRyで10μm以下とすれば、上記疲労強度をより向上させて、上記車輪支持用転がり軸受ユニットの薄肉化(軽量化)をより図れる事は勿論である。
【0057】
【発明の効果】
本発明は、以上に述べた通り、車輪を取り付ける為に回転輪の外周面に形成したフランジの外側面側の付け根部分の性状を適正にする事により、このフランジの形状及び寸法を変える事なく、且つ、製造コストを高くする事なく、回転曲げモーメントによる疲労に関する最弱部である、上記付け根部分の強度を高くする事が可能になる。この結果、上記フランジの薄肉化が可能となり、車輪支持用転がり軸受ユニットの軽量化を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の対象となる車輪支持用転がり軸受ユニットの第1例を示す半部断面図。
【図2】同第2例を示す半部断面図。
【図3】フランジの軸方向外側面側の付け根部分の表面形状の2例を示す線図。
【図4】第三の実験によ求められた、フランジの軸方向外側面側の付け根部分の表面粗さと耐久寿命との関係を示すグラフ。
【符号の説明】
1、1a 車輪支持用転がり軸受ユニット
2、2a ハブ輪
3、3a 内輪
4  外輪
5  転動体
6、6a フランジ
7、7a、7b 内輪軌道
8  段部
9  かしめ部
10、10a 外輪軌道
11  取付部
12  シールリング

Claims (4)

  1. 使用時に懸架装置に支持されて回転しない静止輪と、この静止輪と同心に配置されて、使用時に車輪を結合固定してこの車輪と共に回転する回転輪と、この回転輪と上記静止輪とのうちの一方で径方向外方に存在する外径側軌道輪の内周面に設けられた外輪軌道と、上記回転輪と上記静止輪とのうちの他方で径方向内方に存在する内径側軌道輪の外周面に設けられた内輪軌道と、この内輪軌道と上記外輪軌道との間に設けられた複数個の転動体と、上記回転輪の外周面に設けられた、上記車輪を結合固定する為のフランジとを備えた車輪支持用転がり軸受ユニットに於いて、上記回転輪のうちで少なくとも上記フランジを設けた部分が、Cを0.5〜0.8重量%含む炭素鋼製であり、上記回転輪のうちで、少なくとも上記フランジの軸方向外側面側の付け根部分の表面の硬度が、ロックウェル硬さCスケールで24〜35、ビッカース硬さで260〜345である事を特徴とする車輪支持用転がり軸受ユニット。
  2. 炭素鋼がVを0.03〜0.3重量%含むものである、請求項1に記載した車輪支持用転がり軸受ユニット。
  3. 使用時に懸架装置に支持されて回転しない静止輪と、この静止輪と同心に配置されて、使用時に車輪を結合固定してこの車輪と共に回転する回転輪と、この回転輪と上記静止輪とのうちの一方で径方向外方に存在する外径側軌道輪の内周面に設けられた外輪軌道と、上記回転輪と上記静止輪とのうちの他方で径方向内方に存在する内径側軌道輪の外周面に設けられた内輪軌道と、この内輪軌道と上記外輪軌道との間に設けられた複数個の転動体と、上記回転輪の外周面に設けられた、上記車輪を結合固定する為のフランジとを備えた車輪支持用転がり軸受ユニットに於いて、上記回転輪のうちで、少なくとも上記フランジの軸方向外側面側の付け根部分の表面粗さが、算術平均粗さRaで0.1〜1.0μmである事を特徴とする車輪支持用転がり軸受ユニット。
  4. 使用時に懸架装置に支持されて回転しない静止輪と、この静止輪と同心に配置されて、使用時に車輪を結合固定してこの車輪と共に回転する回転輪と、この回転輪と上記静止輪とのうちの一方で径方向外方に存在する外径側軌道輪の内周面に設けられた外輪軌道と、上記回転輪と上記静止輪とのうちの他方で径方向内方に存在する内径側軌道輪の外周面に設けられた内輪軌道と、この内輪軌道と上記外輪軌道との間に設けられた複数個の転動体と、上記回転輪の外周面に設けられた、上記車輪を結合固定する為のフランジとを備えた車輪支持用転がり軸受ユニットに於いて、上記回転輪のうちで、少なくとも上記フランジの軸方向外側面側の付け根部分の表面粗さが、最大高さRyで10μm以下である事を特徴とする車輪支持用転がり軸受ユニット。
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