JP2004142208A - 押出中空パイプの製造方法及び中空パイプ - Google Patents
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Abstract
【解決手段】回転軸の周囲に同心円状に水硬性組成物を押出成形し、養生・硬化させた後、回転軸を引き抜いて中空パイプを製造するにあたり、養生・硬化工程時の回転軸の熱収縮率が、水硬性組成物の熱収縮率より大きく、これにより養生・硬化工程において水硬性組成物からなるパイプ本体と回転軸の間に間隙を形成することを特徴とする。また、好適には、水硬性組成物中の水硬性粉体の含有量は20〜35重量%である。
【選択図】図4
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は中空パイプの製造方法及び中空パイプに関し、特に高精度の直進性を保持しかつ中空径の形状が変形することがない中空パイプの製造方法及び当該製造方法により得られた中空パイプに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、中空パイプとして金属製のものが使用されている一方、ニーズが多様化している現状に対応して、金属材料の欠点を補完するようなセラミックス、プラスチック、ゴム等の非金属材料を用いた中空パイプも多く市場化されている。
しかし、これらの材料では、多様化するニーズを満足することはできず、新たな特性を有する中空パイプが求められている。
【0003】
これに対し、本件出願人は、特許第3054417号で、(1)水硬性組成物から中空円筒状成形体を押出成形し、得られた押出成形体の穴に回転軸を貫通した後、養生硬化することによって回転軸とローラ部とを一体化するか、または(2)水硬性組成物から中空円筒状成形体を押出成形し、養生硬化させた後、得られた硬化体の穴に回転軸を挿通して回転軸とローラ部とを一体化するか、または(3)水硬性組成物を回転軸の回りに同心円状に押出成形し、養生硬化することにより回転軸とローラ部とを一体化する、紙送りローラの製造方法を開示している。
【0004】
しかし、上記(1)や(2)の方法により中空円筒状成形体を押出した場合、押出長が長いほど有効な直進性が得られず、中空断面厚みが大きく、中実断面厚みが小さいほど変形しやすいため、回転軸の挿通が困難であった。
また、上記(3)の方法では、水硬性組成物と回転軸とが一体成形されて硬化するため、後で回転軸を引き抜くことは難しく、中空形状を変形することなくその形状を保持した中空体を製造することは困難であった。
更に、中空異型状成形体の押出しには、特に保形性が要求されるが、従来の方法では中空体では中空異型形状の保形性が悪く、寸法精度に問題が生じていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記問題を解決し、高精度の直進性を保持し、中空径が変形することのない押出中空パイプの製造方法を提供することである。
また、本発明の他の目的は、上記押出中空パイプの製造方法を用いることにより、直進性が高く、中空径の形状が一様に保持された品質の高い中空パイプを提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の押出中空パイプの製造方法は、回転軸の周囲に同心円状に水硬性組成物を押出成形し、養生・硬化させた後、回転軸を引き抜いて中空パイプを製造するにあたり、養生・硬化工程時の回転軸の熱収縮率が、水硬性組成物の熱収縮率より大きく、これにより養生・硬化工程において水硬性組成物からなるパイプ本体と回転軸との間に間隙を形成することを特徴とする。
請求項2記載の押出中空パイプの製造方法は、請求項1記載の押出中空パイプの製造方法において、養生・硬化工程前に、押出成形工程から得られた未硬化中空パイプ本体を構成する水硬性組成物の端部を、回転軸の端部より短くなるように切断する工程を更に備えることを特徴とする。
【0007】
請求項3記載の押出中空パイプの製造方法は、請求項1又は2記載の押出中空パイプの製造方法において、養生工程を、蒸気養生及びオートクレーブ養生の2段階養生で行うことを特徴とする。
請求項4記載の押出中空パイプの製造方法は、請求項1〜3いずれかの項記載の押出中空パイプの製造方法において、水硬性組成物が、水硬性粉体と非水硬性粉体とを含有し、水硬性粉体の含有量は、水硬性組成物中20〜35重量%であることを特徴とする。
【0008】
請求項5記載の押出中空パイプは、上記請求項1〜4いずれかの項記載の製造方法により製造されたことを特徴とする。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明を以下の好適例を挙げて説明するが、これらに限定されるものではない。
本発明の押出中空パイプの製造方法は、回転軸の周囲に同心円状に水硬性組成物を一体化押出成形し、養生・硬化させた後、回転軸を引き抜いて中空パイプを製造するにあたり、養生・硬化工程時の回転軸の熱収縮率が、水硬性組成物の熱収縮率より大きく、これにより養生・硬化工程において水硬性組成物からなるパイプ本体と回転軸の間に間隙を形成して、回転軸を容易に引抜くことができる方法である。
【0010】
まず、押出中空パイプを製造するにあたり、水硬性組成物を回転軸の回りに同心円状で中空円筒状に成形体を一体押出成形し、回転軸とローラ部とが一体化した未硬化押出成形体を製造する。
【0011】
この場合には、例えば図1に示す押出成形機を用いて水硬性組成物を回転軸の回りに同心円状で中空円筒状に未硬化パイプ成形体を押出成形することができる。
図2は、図1におけるクロスヘッド5の概略断面図である。
図1および図2において、1は押出成形機であり、押出成形機の押出口の先端部にはクロスヘッド5が取付けられている。まず水硬性組成物を構成する混合物材料2を押出成形機1の材料投入口から投入し、冷却されたクロスヘッド5に混合物材料2を搬送する。
【0012】
一方、クロスヘッド5の内部の縦方向に延設した回転軸用筒状ガイド6内を、回転軸7が下方に搬送されて、クロスヘッド5の先端部から外方に出る際に水硬性組成物の混合物材料2が回転軸7の回りに一体化して押出される。押出された未硬化成形体の長さは、回転軸7の長さと整合する長さで、切断手段4により切断されて、所望する未硬化押出成形体が得られる。
【0013】
ここで、本発明に用いることができる回転軸は、熱伝導率が高く、耐熱性を有し熱変形を呈することなく表面が平滑のものであれば、素材は任意のものが使用でき、例えばSUM22LやSUS304等が挙げられる。また、回転軸の表面に無電解Ni−Pめっき等のめっきを施しても良い。回転軸の形状は特に限定されず、図4に示すように所望する種々の形状のものが使用できる。
【0014】
回転軸の熱収縮率は水硬性組成物の熱収縮率より大きくなければならず、これは養生硬化工程において、熱収縮率の差を利用して回転軸と水硬性組成物硬化体との間に間隙を発現させるためである。
【0015】
また、本発明で使用される水硬性組成物は、水硬性粉体及び非水硬性粉体を含み、例えば、水硬性粉体と非水硬性粉体とからなる無機粉体とすることもできる。
【0016】
上記水硬性粉体とは、水と接触して硬化する粉体を意味し、好ましくはポルトランドセメント、珪酸カルシウム、カルシウムアルミネート、カルシウムフルオロアルミネート、カルシウムサルフォアルミネート、カルシウムアルミノフェライト、リン酸カルシウム、半水又は無水石膏及び自硬性を有する生石灰の粉体からなる群より選ばれた少なくとも一種類の粉体が含まれる。
【0017】
前記水硬性粉体は、成形時の可使時間ならびに得られる成形体の強度の点から平均粒径10〜40μm程度のものが好ましく、また、成形体の高強度を確保する点から、ブレーン比表面積が2500cm2/g以上であることが好ましい。当該水硬性粉体は水硬性組成物中20〜35重量%、好適には25〜30重量%の量で含有される。前記するような範囲で水硬性粉体を含有することにより、養生硬化工程において、回転軸の熱収縮率よりも水硬性組成物の熱収縮率が小さくなるからであり、更に水硬性粉体が20重量%以下になると成形体の高強度確保が難しくなるからである。
【0018】
また、前記非水硬性粉体は、単体では水と接触しても硬化することがない粉体を意味するが、アルカリ性若しくは酸性状態、あるいは高圧蒸気雰囲気においてその成分が溶出し、他の既溶出成分と反応して生成物を形成する粉体も含む意である。非水硬性粉体としては、水酸化カルシウム粉末、二水石膏粉末、炭酸カルシウム粉末、スラグ粉末、フライアッシュ粉末、珪石粉末、粘土粉末及びシリカヒューム粉末からなる群より選ばれた少なくとも一種類の粉体が好ましい。
【0019】
これらの非水硬性粉体の平均粒径は、好ましくは水硬性粉体の平均粒径より1桁以上小さく、より好ましくは2桁以上小さいものが、水硬性粉体の間隙を充填し、得られる成形体が緻密かつ高強度となる点から好ましいが、細かさの下限は特に限定されず、本発明の効果を害することがなければ特に制限されることはないが、通常、水硬性粉体の平均粒径の1/500程度以上であることが成形性の点から好ましい。
このような粒径の非水硬性粉体を用いることによって、得られる中空パイプの寸法安定性を向上させることができる。
【0020】
非水硬性粉体の配合割合は、水硬性組成物中15〜35重量%、好適には20〜30重量%である。
非水硬性粉体の配合量が15重量%より少ないと、他の既溶出成分と反応して形成される生成物が少なく強度不足となる。一方35重量%を超えると、水硬性粉体の量が減少することにより、得られる中空パイプが所定の強度を発揮できなくなり、機械加工時の欠けの発生、寸法安定性に悪影響が及ぶことがある。
【0021】
また好適には、前記水硬性組成物は、上記水硬性粉体及び非水硬性粉体の他に、硬化調整剤を含有する。
本発明で使用することのできる硬化調整剤とは、水硬性組成物から形成される成形体の成形性、脱型性、切削・研削性・研削精度等の向上に寄与する材料である。
【0022】
この様な硬化調整剤を含む水硬性組成物を用いると、押出成形時に、硬化調整剤が成形助剤としての機能を発揮することによって成形性が向上する。また、脆性材料である水硬性組成物から得られる成形体は、切削の際に亀裂型メカニズムの切削状態を呈し、材料の割れ、欠け等が問題となるが、硬化調整剤を配合することによって、得られる成形体に固体材料としての機械加工性を促すための靱性が付与され、成形体の割れ、欠け等を防止することができる。
【0023】
このため、従来切削加工・研削加工等の機械加工が困難であった水硬性組成物から得られた成形体の加工性を金属材料と同レベルまで改良することが可能となり、旋盤等による切削加工、円筒研削機による研削加工を金属材料と同程度に行うことができ、所望の寸法に対してμmオーダーの精密な加工が可能となる。
【0024】
このような硬化調整剤としては、酢酸ビニル樹脂、酢酸ビニルアクリル共重合樹脂、酢酸ビニルベオバ共重合樹脂、酢酸ビニルマレート共重合樹脂、酢酸ビニルエチレン共重合樹脂、酢酸ビニルエチレン塩化ビニル共重合樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂、アクリル共重合樹脂、アクリル塩化ビニル酢酸ビニル共重合体樹脂、スチレン共重合樹脂、アクリルスチレン共重合樹脂、アクリルシリコーン共重合樹脂、酢酸ビニルベオバ三元共重合樹脂およびエポキシ樹脂から成る群より選ばれた少なくとも1種以上の樹脂からなる粉末もしくはエマルジョンを例示できる。
【0025】
硬化調整剤の配合量は、水硬性粉体、非水硬性粉体及び下記成形改良剤からなる混合粉体100重量部に対して、乾ベースで0〜30重量部であり、特に3〜15重量部とすることが好ましい。
【0026】
かかる配合量が、水硬性粉体、非水硬性粉体および成形改良剤からなる混合粉体100重量部に対して30重量部を超える場合には、良好な成形性を有するが、研削精度の低下と研削後の寸法安定性が低下する。
また粒度は分散した単一粒子径で1μm以下のものが一般的である。
【0027】
上記水硬性組成物中には、更に成形改良剤を含むことができる。
当該成形改良材は、中空パイプを得るために、水硬性組成物を成形する際に、押出成形を利用する場合には、ダイスと成形体との滑り性を向上させ、さらに品質を安定化させる作用を有する材料である。
【0028】
かかる成形改良剤としては、例えばタルク(含水珪酸マグネシウム)、マイカ等の無機質板状物質が使用できる。この無機質板状物質は配向性に優れ、成形体表面に滑り性を付与し、ダイスとの抵抗が低減されることにより品質の安定化が図れる。
【0029】
成形改良剤の配合量は、水硬性粉体、非水硬性粉体および成形改良剤からなる混合粉体の組成比率で10〜30重量%とすることが好ましく、15〜25重量%とすることがより好ましい。成形改良剤の配合量上記範囲よりが少なすぎる場合には、成形体の滑り性が低下して、ダイスとの抵抗が増大し、成形精度が低下する。一方、配合量が上記範囲より多くなる場合には、成形品の異方性が大きくなり、機械的強度、寸法安定性等に悪影響を及ぼすので好ましくない。
【0030】
また、水硬性組成物には、増粘剤が含有されることも、必要に応じて生じる。本発明に用いられる増粘剤としては、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等が挙げられる。
かかる増粘剤の配合量は、水硬性粉体、非水硬性粉体及び必要に応じて添加される成形改良剤からなる混合粉体100重量部に対して、0.5〜5重量部とすることが好ましく、3〜4重量部とすることがより好ましい。
【0031】
増粘剤の配合量が少なすぎる場合には、押出成形中空パイプの端部のひび割れ、表面の平滑性等の成形性に悪影響を及ぼし、また多すぎると、硬化時に収縮量が増大する等中空パイプの寸法安定性を低下させやすく、好ましくない。
【0032】
かかる増粘剤は押出成形に使用され、水に溶解することによって粘着性を発現する機能を有し、水硬性粉体、非水硬性粉体の粒子間の結合力を高め、成形後の成形体の形状維持、保水性の確保、密実な硬化体形成に有効な成分である。
【0033】
さらに、水硬性組成物は、上記成分に加えて、増量材として珪砂等の骨材を水硬性粉体と非水硬性粉体とからなる混合粉体100重量部に対し10〜50重量部、好ましくは20〜35重量部の割合で加えることができる。また、成形性をさらに改善するために、公知のセラミック成形助剤を、上記混合粉体100重量部に対し1〜10重量部、好ましくは3〜6重量部の割合で加えることもできる。さらに、材料の硬化時に収縮等による寸法変化を抑えるために、シリコーンオイル等の水の吸収を小さくする撥水剤を、上記混合粉体100重量部に対し0.5〜5重量部、好ましくは1〜2重量部の割合で加えることもできる。
【0034】
水硬性組成物を用いて成形用混合物を調製するには、水硬性粉体と非水硬性粉体および必要に応じて添加される上記添加剤からなる混合物100重量部に対して水が30重量部以下好ましくは25重量部以下含有されたものを混合することにより得られる。なお、乾燥収縮を小さくするには極力水を少なくするのがよい。
【0035】
混合する方法については、特に限定するものでもないが、好ましくは、強力な剪断力を混合物に加えることができる混合方法若しくは混合機がよい。非水硬性粉体粒径は水硬性粉体粒径より1桁以上小さい平均粒径を有するため、均一な混合物を得るためには、剪断力を有する混合機でなければ、混合に要する時間が非常に長くなってしまう。
【0036】
好適には、図3に示すように、押出成形工程で得られた未硬化押出成形体に関して(図3(a))、回転軸の端部の水硬性組成物を、切断手段4により、水硬性組成物よりも回転軸両端部が長くなるように、切断除去して(図3(b))、回転軸部分を露出させる(図3(c))。回転軸の全長、挿入部の長さ及び外部に露呈される長さは適宜決定することができる。
【0037】
このように回転軸の端部を露出させることにより、後に行う養生硬化後の回転軸の引抜きを容易にすることができる。
切断された水硬性組成物部分は、再び図1に示す水硬性組成物材料2として、押出成形機に再度投入して、再利用することができる。
【0038】
押出成形した未硬化パイプ成形体(図3(d))の養生・硬化は、常温養生、蒸気養生、オートクレーブ養生等の1つ若しくは組み合わせにより行うことが可能であるが、大量生産、製品の化学的安定性、寸法安定性等を考えるとオートクレーブ養生が好ましく、特に蒸気養生とオートクレーブ養生とを組み合わせた養生方法が好適である。
【0039】
例えばオートクレーブ養生は、飽和蒸気圧7.15kg/cm2、165℃以上で行うことが好ましく、飽和蒸気圧9.10kg/cm2以上で行うことが特に好ましい。養生時間は養生温度により変化するが165℃の条件下では5〜15時間程度養生すればよい。なお、押出成形後、オートクレーブ養生開始前までに、圧縮強度で5N/mm2程度発現していることが好ましい。
【0040】
さらに好適には、十分な強度が発現していない場合には、中空パイプの爆裂等の発生を防止するため、オートクレーブ養生前に蒸気養生をおこなう2段階養生を実施して、初期強度を生じせしめることが特に望ましい。蒸気養生は、養生温度によって異なるが、例えば30〜50℃で15時間以上おこなう。
【0041】
これにより、パイプ硬化体本体と回転軸との間に間隙が生じるため、容易に回転軸をパイプ本体から引き抜いて(図3(d))、回転軸よりも大きな径の中空パイプ成形体が製造できる。
その形状は、図5に示すように、回転軸の形状によって、所望する種々の形状のものを製造することができる。
【0042】
本発明における水硬性組成物からなるパイプ本体と回転軸との径の変化を、図4に模式的に表す。図4(a)は押出成形時、(b)は養生硬化時、(c)は養生硬化後のパイプ本体と回転軸との径の変化を模式的に表した図である。
押出成形時において、1は回転軸の径であってかつ水硬性組成物からなるパイプ本体部の内径を示し、2は水硬性組成物からなるパイプ本体部の外径を示す。
【0043】
養生硬化時には、水硬性組成物が熱によって水熱反応をおこして収縮し、その外径は2’となるとともに、一方回転軸は熱によって熱膨張して1’で表される外径となるため、水硬性組成物は1’で示される内径を呈することになる。
養生硬化後は、冷却されることにより回転軸の径は元の1で示される径となる。一方、水硬性組成物も収縮を起し、外径においては2’より若干小さな径2’’を呈するとともに、内径においても1’より若干小さな径1’’を呈することとなる。
この際、回転軸の熱収縮率が水硬性組成物の熱収縮率よりも大きいため、図4に示すように径1’’は径1より大きくなり、回転軸と水硬性組成物との間に間隙を発現させることとなる。
【0044】
このようにして得られた中空パイプは、その中空形状の直進性が回転軸の直進性で決まるため、中空径の変形は硬化後、回転軸を抜くため、中空径の変形がないものである。
また、異型軸を使用することによって、高度な中空異型状成形体を押出すことができる。
さらに必要に応じて、その表面をセンタレス研磨やサンドブラストを実施することで仕上げ加工を施しても良い。
【0045】
このようにして得られた押出中空パイプは、紙送りローラ、加圧ローラ、転写ローラ、帯電ローラ、現像ローラ、定着ローラ、クリーニングローラ等のOA機器及び印刷機等に使用される各種ローラや、感光ドラム、搬送ドラム、シャフト等の動力や運動伝達部品に好適に使用できる。
【0046】
【実施例】
本発明を次の実施例及び比較例により説明する。
実施例及び比較例においては、以下の材料を使用して成形体を製造した。
水硬性粉体としてポルトランドセメント(平均粒径20μm、商品名:普通ポルトランドセメント、住友大阪セメント株式会社製)、非水硬性粉体としてシリカヒューム(平均粒径0.2μm、商品名:マイクロシリカ、SKW株式会社製)及びシリカ粉(平均粒径20μm、商品名:マイクロシリカ35、秩父鉱業株式会社製)、増量材として珪砂(平均粒径90μm、商品名:珪砂8号、日瓢工業株式会社製)、成形改良剤としてタルク(平均粒径15μm、商品名:クラウンタルク、松村産業株式会社製)、増粘剤としてカルボキシメチルセルロース(商品名:マーポローズ、松本油脂株式会社製)、硬化調整剤としてアクリルエマルジョン(商品名:ポリトロン 、旭化成株式会社製)、水は水道水を各々用いた。
【0047】
これらの材料を、以下に記載する配合割合に従ってヘンシェルミキサーを用いて均一混合し、水硬性組成物を調製した。
また、回転軸として、外径8mm、長さ900mmのSUM22Lを用いた。
【0048】
(実施例1)
表1に示す配合割合で水硬性組成物を調製した。
但し、得られた水硬性水硬性組成物の熱収縮率と回転軸の熱収縮率との関係は、水硬性組成物の熱収縮率<回転軸の熱収縮率であった。
【0049】
図1に示す方法により、水硬性組成物を押出成形機の投入口に投入し、水硬性組成物を回転軸の外周部に押出成形して、外径22mm、長さ900mmの押出成形体を得た。得られた押出成形体の両端部を25mmずつ切断して、所定の長さの中央部に円形状の穴を有する円筒状のパイプ未硬化成形体を得た。
次いで、このパイプ状未硬化成形体を26〜30℃の蒸気養生室に15時間入れて、蒸気養生を行なった。
【0050】
その後蒸気養生を実施した成形体を、オートクレーブ養生した。かかるオートクレーブ養生は175℃で10時間行った。
オートクレーブ養生を実施し、室温まで冷却した後、回転軸の引き抜きを行って、中空パイプを製造した。その際、回転軸と水硬性組成物の間隙及び回転軸の引き抜きの容易さを判定した。その結果を表2示す。
【0051】
(比較例1〜2)
水硬性組成物の配合割合を表1に示す配合割合に変えた以外は、実施例1と同様にして成形硬化体を得た。
【0052】
【表1】
【0053】
実施例1及び比較例1〜2で得られた成形体の回転軸の引き抜き、成形性及び直進性についての結果を表2に示す。
【0054】
【表2】
但し、表中、
○は、成形体から回転軸が容易に引き抜けるもの
×は、成形体から回転軸が容易に引きぬけないもの
【0055】
【発明の効果】
本発明の押出中空パイプの製造方法は、高精度の直進性を保持し、中空径が変形することのない押出中空パイプを製造することができる。
したがって、水硬性組成物から中空パイプを押出した場合、高精度の直進保持性や中空径の変形しない切断を実現することが可能となる。
【0056】
具体的には、硬化した中空パイプに回転軸を挿通する場合に、硬化前の中空径と硬化後の中空径に水硬性組成物の硬化収縮が生じて、回転軸の挿通ができなくなっていた現状及び、逆に回転軸と中空径とのクリアランスが大きすぎ、接着剤で固定する場合、回転軸のズレを起し、例えばローラに用いた場合には振れ原因になっていた現状を克服することが可能となる。
【0057】
また、本発明の押出中空パイプは、切断方法に左右されず、引き取り及び搬送においても、手で持っても直進性や中空径の変形は生じない。更に回転軸と中空径とのクリアランスは一定であるため、品質の高い中空パイプを得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の押出中空パイプの製造方法及び装置に係る全体の概略図である。
【図2】図2は、本発明の押出中空パイプの製造方法及び装置に係るクロスヘッドの概略断面図である。
【図3】図3は、本発明の押出中空パイプの製造工程を模式的に表した図である。
【図4】図4は、本発明の押出中空パイプの水硬性組成物部分と回転軸の径の変化を断面で示した図である。
【図5】図5は、本発明の押出中空パイプの断面形状の例示を示した図である。
【符号の説明】
1 押出成形機
2 水硬性組成物材料
4 切断手段
5 クロスヘッド
6 回転軸用筒状ガイド
7 回転軸
Claims (5)
- 回転軸の周囲に同心円状に水硬性組成物を押出成形し、養生・硬化させた後、回転軸を引き抜いて中空パイプを製造するにあたり、養生・硬化工程時の回転軸の熱収縮率が、水硬性組成物の熱収縮率より大きく、これにより養生・硬化工程において水硬性組成物からなるパイプ本体と回転軸との間に間隙を形成することを特徴とする押出中空パイプの製造方法。
- 請求項1記載の押出中空パイプの製造方法において、養生・硬化工程前に、押出成形工程から得られた未硬化中空パイプ本体を構成する水硬性組成物の端部を、回転軸の端部より短くなるように切断する工程を更に備えることを特徴とする押出中空パイプの製造方法。
- 請求項1又は2記載の押出中空パイプの製造方法において、養生工程を、蒸気養生及びオートクレーブ養生の2段階養生で行うことを特徴とする押出中空パイプの製造方法。
- 請求項1〜3いずれかの項記載の押出中空パイプの製造方法において、水硬性組成物は、水硬性粉体と非水硬性粉体とを含有し、水硬性粉体の含有量が水硬性組成物中20〜35重量%であることを特徴とする押出中空パイプの製造方法。
- 請求項1〜4いずれかの項記載の製造方法により製造された中空パイプ。
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