JP2004141082A - シャーベット及びその製造法 - Google Patents

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Abstract

【課題】脂肪や蛋白の使用量を低いレベル、より好ましくは使用しなくても、容易に50〜200%程度の広範囲のオーバーランがとれ、さじ通りが良く、風味が良好で多様な食感を有するシャーベット、及びその製造法を提供すること。
【解決手段】オクテニルコハク酸澱粉を含有するオーバーラン50〜200%のシャーベット、シャーベットミックス中にオクテニルコハク酸澱粉を0.05〜1.5質量%添加することを特徴とするオーバーラン50〜200%のシャーベットの製造法。

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、シャーベット、より具体的にはオーバーランが大きく、さじ通りが良く、風味の良好な、多様な食感を有するシャーベット、及びその製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】
シャーベットは、アイスクリーム類より淡白でフレッシュ感や爽やか感が賞味されるアイスクリーム類と並ぶ代表的な冷菓である。
上記のような冷菓では、ミックスを攪拌しながら含気させるフリージング工程において、ミックス中の水分を微細な氷結晶にすると同時に空気が気泡として取り込まれ、「オーバーラン」により表現される空気の量がこれらの冷菓の組織や食感を形成する上で極めて重要な因子となっている。
フリージング前のアイスクリーム類ミックスには、起泡性を向上させる乳蛋白や微細な脂肪球などの量が多く、ミックス中の脂肪、乳蛋白、乳化剤などとの相互作用による解乳化などの現象によって、オーバーランの程度を比較的自由に変更でき、さっぱり感をもたせるためにオーバーラン130%を越え、150%程度にするケースもみられる。また、プレミアムアイスクリーム類にみられるように、極端に乳脂肪の多いアイスクリームでは、オーバーランを20%程度にしてもクリーミー感があり、リッチな風味をもたせることができる。
【0003】
一方、シャーベットミックスは、アイスクリーム類ミックスに比して脂肪、乳蛋白などの含量が少なく、一般的にオーバーランは50%程度が限度でそれ以上は困難であるとされていた。また、これらの乳製品を増やすと、シャーベットのもつフレッシュ感や爽やか感が弱くなる傾向は避けようがなかった。
脂肪や乳製品を用いずに、シャーベットのオーバーランを高める方法としては、卵白、卵白アルブミンなどの起泡剤及びカラギーナン、キサンタンガム、ローカストビーンガムなどの増粘安定剤、或いはグルテン、ゼラチンなどの動植物性蛋白などの気泡安定剤を含有するシロップを含気させ、次いで含気されたシロップと氷を混合し、さらに含気させてオーバーラン20〜100%にするソフト冷菓の製法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかしこの方法では、含気工程を2回行うだけでなく、予めシロップとは別に氷を用意する必要があり、氷結晶を生成させながら含気させるフリージング工程を別々に行うことになり、製造工程が煩雑になるという問題はさけられなかった。
【0004】
また、エリスリトールを含むシャーベットミックスに気泡安定剤を添加し含気することでオーバーラン50〜130%に高めたシャーベットとし、さじ通りがよく、ソフトな食感になり、カロリーオフも可能とする提案もされている(例えば、特許文献2参照)。気泡安定剤としては、カラギーナン、グアーガム、ペクチン、キサンタンガムなどの増粘安定剤やゼラチン、卵白などの蛋白を使用し、実施例では、ゼラチン、或いは、ペクチンと卵白の組合せの例が記載してあり、特にゼラチンが効果的であるとしている。本発明者らもこれらの気泡安定剤を検討した結果、オーバーランを高めているのは、増粘多糖類というより、卵白やゼラチンなど蛋白による効果が大きいことを確認した.さらに、蔗糖やグルコースなどエリスリトール以外の糖類を使用してもエリスリトールと同じようにオーバーランが高められることも確認した。
【0005】
確かにゼラチンなどの蛋白を使用することで、シャーベットのオーバーランを高めることは可能であるが、これらの蛋白摂取によりアレルギーを引き起こす問題も提起されており、医療分野ではゼラチンを使用しないワクチンまで開発されており、蛋白を使用しなくてもオーバーランを高くすることのできるシャーベットが求められている。
蛋白質や脂肪を使用しない方法として、少量のポリグリセリン脂肪酸エステルを配合した乳化剤を添加したシャーベットミックスを用いてオーバーランを80%までの範囲まで調製することができ、風味に影響することなく、従来にないフレッシュ感の強いシャーベットが作れることも報告されている(非特許文献1参照)。しかし、オーバーランの程度は必ずしも充分に高いものではなかった。
このように、アレルギーの原因となったり、フレッシュ感や爽やか感に対してマイナスとされる脂肪や蛋白の使用量を極力減じる、或いは使用しないで、オーバーランを自由に変えることのできる、シャーベットを得ることは困難であるとされてきた。
【0006】
【特許文献1】
特開平6−70689号公報(第2〜3頁)
【特許文献2】
特開平10−117693号公報(第2〜4頁)
【非特許文献1】「乳化剤・安定剤の冷菓への応用」(ジャパンフードサイエンス、5月号、47〜48頁、2002年)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
従って本発明の目的は、脂肪や蛋白の使用量を低いレベル、より好ましくは使用しなくても、容易に50〜200%程度の広範囲のオーバーランがとれ、種々の食感を有する風味に優れたシャーベットを提供することである。
本発明の他の目的は上記シャーベットの製造法を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者は上記目的を達成するために鋭意検討した結果、オクテニルコハク酸澱粉をシャーベットミックスに含有させることで高いオーバーランを有するシャーベットが得られることを見出し本発明を完成した。
即ち、本発明は、オクテニルコハク酸澱粉を含有するオーバーラン50〜200%のシャーベットを提供するものである。
本発明はさらにオクテニルコハク酸澱粉を含有するオーバーラン80〜200%のシャーベットを提供するものである。
本発明はさらにまた、シャーベットミックス中にオクテニルコハク酸澱粉を0.05〜1.5質量%添加することを特徴とするオーバーラン50〜200%のシャーベットの製造法を提供するものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下本発明をさらに詳細に説明する。
冷菓は、乳固形分含量によってアイスクリーム類と氷菓に大別され、アイスクリーム類(乳固形分含量:3%以上)は乳製品として「乳等省令」、氷菓(乳固形分含量:3%未満)は一般食品として「食品、添加物の規格基準」で規制されている。本発明のシャーベットは、氷菓に属し、一般にはグレープフルーツやメロンなどの果汁を主体に、少量の牛乳やクリームなどの乳製品、砂糖、果糖、異性化糖などの甘味料、必要に応じて、ピーチ、イチゴ、リンゴ、ナシなどのピューレ、乳蛋白、ゼラチン、卵蛋白などの蛋白、キサンタンガム、ローカストビーンガム、グアーガムなどの多糖類、或いはタピオカ澱粉や馬鈴薯澱粉などの天然澱粉やそれらに、エーテル化やエステル化した加工澱粉などを加えて混合後、溶解し、凍結させて製造される氷菓を意味する。本発明のシャーベットは、乳蛋白、卵蛋白、ゼラチンなどの蛋白を含まない氷菓であることがより好ましい。
【0010】
本発明に用いるオクテニルコハク酸澱粉は、澱粉に無水オクテニルコハク酸を常法に従ってエステル化して得られる。エステル化の程度は米国のFDA(Food andDrug Administration)で食品用として規定されているもの、即ち澱粉に無水オクテニルコハク酸を3質量%を越えない量で使用してエステル化して得られるものが有効である。また、無水オクテニルコハク酸を反応させる前、又は反応後に、酸、酸化剤、酵素、熱で処理して澱粉の部分分解物或はデキストリンにしたものも有効である。
【0011】
オクテニルコハク酸澱粉には、熱水可溶タイプと冷水可溶タイプの2通りがあり、本発明では何れのタイプを用いても同じように効果を発揮する。
天然澱粉に無水オクテニルコハク酸を反応させたオクテニルコハク酸澱粉は熱水には溶解するが冷水には不溶であり、酸や酸化剤で処理した澱粉の部分分解物も同様である。これを冷水に可溶なタイプにするにはドラムドライヤー、噴霧乾燥機、エクストルーダーを用いて糊化、乾燥してα−化澱粉とする、或は糊化して酵素及び/又は酸で分解してデキストリンタイプにするなどの方法を利用する。
【0012】
このオクテニルコハク酸澱粉を製造するのに用いる原料澱粉は、市販の澱粉、例えば馬鈴薯澱粉、コーンスターチ、小麦澱粉、タピオカ澱粉、米澱粉、ワキシーコーンスターチ、サゴ澱粉など何れの澱粉を用いたものも本発明の効果を有するが、得られたオクテニルコハク酸澱粉の透明性が優れ、透明性が求められるシャーベットにも使用できることから、ワキシーコーンスターチ、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、糯種の米澱粉から選択されたものが好ましい。
【0013】
従来のシャーベット、特に、脂肪や蛋白を殆ど使用しないシャーベットでは、オーバーランが50%程度くらいまでが限度とされていた。
本発明は、上記のオクテニルコハク酸澱粉をシャーベットミックスに含有させることにより、脂肪や蛋白を使用しないでもオーバーランが50〜200%のシャーベットの製造を可能としたものである。
【0014】
本発明のシャーベットは、シャーベットミックス中にオクテニルコハク酸澱粉を好ましくは0.05〜1.5質量%、さらに好ましくは0.15〜1.5質量%含有せしめることにより製造される。オクテニルコハク酸澱粉の含有量が0.05質量%に満たないとオーバーランの値が50%に達しないでさじ通りが悪くなる場合があり、1.5質量%を越えるとオーバーランがピーク(200%程度)となり、それ以上では、オーバーランの値が低下する場合があり、不経済である。
オクテニルコハク酸澱粉を、好ましくは上記のような割合でシャーベットミックス中に含有させることで、オーバーランを50〜200%程度のシャーベットの製造が可能となる。しかし、さらに種々の食感を有するシャーベットにするためには、適当なオーバーランを選択することが必要になる。
【0015】
例えば、本発明のオーバーランとシャーベットの食感の関係をみると、オーバーランが50%でソフト感がでるようになり、80%でよりソフトな食感になり、130%でふわふわした食感になり、160%を越えると雪のようにふわふわした食感となる。尚、オーバーランの値を50%、80%、130%、160%にするシャーベットミックス中のオクテニルコハク酸澱粉の量は、それぞれ、約0.05質量%、約0.15質量%、約0.3質量%、約1.0質量%である。
【0016】
本発明のシャーベットはオクテニルコハク酸澱粉を使用することを除いて、従来の方法に従って製造される。即ち、水にグレープフルーツ、レモン、メロン、アンズ、イチゴ、ミカン、リンゴ等の果汁を主体にし、甘味を調整するための砂糖、水飴、異性化糖などの甘味料、本発明のオクテニルコハク酸澱粉をシャーベットミックス中に好ましくは0.05〜1.5質量%程度になるような割合で混合し、80〜90℃程度に達するまで加熱を行って溶解後、冷却してシャーベットミックスとする。要すればシャーベットミックス中に果実などをベースとするフレーバーや着色料、或いは気泡安定剤などを添加してホモジナイザー(均質機)にかけて均質化してシャーベットミックスを調製し、フリージング、硬化工程を経て、オーバーラン50〜200%で種々の食感を有するシャーベットが製造できる。
【0017】
尚、本発明において、気泡安定剤はシャーベットのオーバーランの値を高めるのに直接関与するのでなく、シャーベットのオーバーランの値を保持する作用をしている。従って本発明に使用する気泡安定剤としては、効果はあってもアレルギーなどの問題があるゼラチンなどの蛋白よりも、キサンタンガム、ローカストビーンガム、グアーガムなどの増粘多糖類やエーテル化澱粉やエステル化澱粉などの加工澱粉の方が好ましい。
以下、本発明の詳細を参考例及び実施例そ示して説明するが、これらの例において、他に明記しない限り、部は質量部、%は質量%を示す。
【0018】
【参考例1】
ワキシーコーンスターチ100部を水120部に懸濁し、3%苛性ソーダ水溶液を用いてpH7.5〜9.3に維持しながら無水オクテニルコハク酸2.5部を添加し、25℃で2.5時間反応させてエステル化した後、塩酸で中和し、水洗、脱水、乾燥して、5%、30℃の粘度が9700mPa.sの試料1のオクテニルコハク酸澱粉を得た。
【参考例2】
4%硫酸水溶液130部にタピオカ澱粉を懸濁し、45℃で8時間処理した後、苛性ソ−ダでpH9.3に中和し、参考例1と同様にエステル化して20%、30℃の粘度が125mPa.sの試料2のオクテニルコハク酸澱粉を得た。
【0019】
【参考例3】
参考例2の試料2のオクテニルコハク酸澱粉を40%濃度の水懸濁液とし、ドラムドライヤーを用いてα−化して冷水に溶解するタイプで、20%、30℃の粘度が43mPa.sの試料3のオクテニルコハク酸澱粉を得た。
【参考例4】
30℃の水125部にもち米澱粉100部を分散した澱粉乳液を調製し、撹拌下で3%水酸化ナトリウム水溶液を添加し、pHを8〜9に維持しながら、無水オクテニルコハク酸3部を添加し、澱粉乳液のpHが変化しなくなるまで30℃で2.5時間反応させた後、5%硫酸水溶液で中和し、水洗後脱水した。この脱水ケーキを水に分散させてボーメ18の澱粉乳液とし、澱粉乳液のpHが6±0.2になっていることを確認した後、クライスターゼL1(大和化成製のアルファアミラーゼ)を澱粉に対して、0.1%添加し85℃まで昇温後10分間保持した後、さらに95℃まで昇温して澱粉を液化した。得られた水溶液を87℃まで冷却し、クライスターゼL1を対澱粉0.05%添加し、87±1℃で30分間反応後、10%塩酸水溶液を投入してpHを3.5まで低下して酵素を失活させ、10%カセイソーダ水溶液で中和し、活性炭で脱色後、噴霧乾燥し、20%、30℃の粘度が23mPa・sの試料4のオクテニルコハク酸澱粉を得た。
【0020】
【参考例5】
水130部に硫酸ナトリウム20部を溶解し、タピオカ澱粉100部を分散させ、撹拌下で3%カセイソーダ水溶液33部を滴下後、プロピレンオキサイド7部を加えて41℃で20時間反応させ、10%硫酸水溶液で中和し、水洗、脱水してケーキとした。このケーキを水に分散し、40%濃度の水分散液としてから、ドラムドライヤーを用いてα化し、5%、30℃の粘度が8200mPa.sの試料5の水溶性のヒドロキシプルピルタピオカ澱粉を得た。
【0021】
【実施例1】
参考例2で得られた試料2のオクテニルコハク酸澱粉を用いて、シャーベットを製造し、オーバーランを求めた。即ち、砂糖と試料2のオクテニルコハク酸澱粉以外の原料は表1の割合、砂糖と試料2のオクテニルコハク酸澱粉については表2の割合にして混合し、85℃まで加熱して溶解し、60℃でTKホモミキサ−(特殊機械工業製)を用いて10000rpmで15分間攪拌して均質化し、5℃まで冷却してシャーベットミックスとする。これらシャーベットミックスをバッチフリーザーに入れ、−3.5℃までフリージングして半固体のシャーベットを得る。得られたシャーベットをカップ(口径74.2mm、高さ51.2mm、底径59.3mm)に充填して−35℃の冷凍庫で3時間硬化させた後、シャーベットの重量を測定し、次式によりオーバーラン(%)を求めた。結果を、表2に記載した。
オーバーラン(%)=〔(WM−WS)/WS〕×100
WMは単位容量のシャーベットミックスの質量
WSは単位容量のシャーベットの質量
【0022】
オーバーラン測定後のシャーベットを−20℃の冷凍庫で2週間保持した後、冷凍庫から取り出し、シャーベットのさじ通り、風味及び食感を評価した。結果を表2に記載した。尚、表2において、シャーベットのさじ通り、風味については下記の基準で評価した。また、「さじ」としてはステンレス製のティースプーンを使用した。
<さじ通り>
◎  さじ通りが非常に良い。
○  さじ通りがよい
△  やや硬くてさじが通りにくい
×  非常に硬くてさじが通らない
<風味>
◎  グレープフルーツの風味が非常に強い
○  グレープフルーツの風味が強い
△  グレープフルーツの風味がやや弱い
【表1】
Figure 2004141082
【0023】
【表2】
Figure 2004141082
【0024】
【実施例2】
実施例1において、オクテニルコハク酸澱粉として、試料2の代わりに、試料1、試料2、試料4を用い、実施例1に準じて同じようにシャーベットを製造して評価したところ、ほぼ同じような結果が得られた。
【0025】
【実施例3】
表3の割合にした原材料を85℃まで加熱して溶解し、60℃でTKホモミキサ−(特殊機械工業製)を用いて10000rpmで15分間攪拌して均質化し、5℃まで冷却したシャーベットミックスをバッチフリーザーに入れ、−3.5℃までフリージングして半固体のシャーベットとした。得られたシャーベットをカップ(口径74.2mm、高さ51.2mm、直径59.3mm)に充填して−35℃の冷凍庫で3時間硬化させた後、オーバーラン(%)を測定し、そのまま−20℃の冷凍庫で2週間保持した後、実施例1に準じて評価した。結果を表3に示した。
尚、表3において、試料3は参考例3のオクテニルコハク酸澱粉、試料5は参考例5のヒドロキシプロピル澱粉である。
【表3】
Figure 2004141082

Claims (3)

  1. オクテニルコハク酸澱粉を含有するオーバーラン50〜200%のシャーベット。
  2. オクテニルコハク酸澱粉を含有するオーバーラン80〜200%のシャーベット。
  3. シャーベットミックス中にオクテニルコハク酸澱粉を0.05〜1.5質量%添加することを特徴とするオーバーラン50〜200%のシャーベットの製造法。
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