JP2004136861A - 自動車エアバッグ装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】車両衝突時の衝撃力の大きさとその衝撃形態を単一のセンサで直接且つリアルタイムに検知し、車両衝突からエアバッグ装置起動までの時間遅れが無く、同一センサからの出力信号から乗員の各座席シートへの着座状況を判別して、誤判定の無い適正なエアバッグのみを起動する自動車エアバッグ装置を提供する。
【解決手段】車両サスペンション2に設けられた孔20に埋設固着された応力検知センサ3からの路面摩擦力情報、横力情報及び垂直抗力情報とに基づいて、各輪毎の衝撃力Pを演算するP演算手段40と、車両の衝突角度Θを演算するΘ演算手段41と、各座席シート毎の乗員の着座状況を判断する乗車状況識別手段42と、車両の衝突形態や座席シートの乗員の着座状況に応じて最適なエアバッグ5の起動を選定するエアバッグ選定手段43と、上記エアバッグ選定手段で起動が選定されたエアバッグ5に対し、膨張展開させるガス圧制御手段44とを備える。
【選択図】 図8
【解決手段】車両サスペンション2に設けられた孔20に埋設固着された応力検知センサ3からの路面摩擦力情報、横力情報及び垂直抗力情報とに基づいて、各輪毎の衝撃力Pを演算するP演算手段40と、車両の衝突角度Θを演算するΘ演算手段41と、各座席シート毎の乗員の着座状況を判断する乗車状況識別手段42と、車両の衝突形態や座席シートの乗員の着座状況に応じて最適なエアバッグ5の起動を選定するエアバッグ選定手段43と、上記エアバッグ選定手段で起動が選定されたエアバッグ5に対し、膨張展開させるガス圧制御手段44とを備える。
【選択図】 図8
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、衝突等に伴う車両事故発生による衝撃から乗員を保護し、そのダメージを効果的に抑制する自動車エアバッグ装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、車両には衝突時の衝撃から乗員を保護するためのエアバッグ装置が搭載されている。このエアバッグ装置は、車両衝突時の衝撃力に応じた衝撃力情報を検知するセンサを有し、このセンサにより検出した衝撃力情報に基づいて起動され、起動時にはガス発生器から噴出する高圧ガスをエアバッグの内部に導入することにより、エアバッグを乗員に向けて急速に膨張展開させ、乗員を着座位置で拘束し、衝突時の衝撃を緩和させるようにしたものである。また、車両の衝突形態には正突や斜突、オフセット衝突等さまざまな衝突形態があるが、例えば特開2000−296755号公報に記載の発明では、車両の前部に設けられた複数の加速度センサからなるフロントセンサ30から出力された減速度信号G′(t)のそれぞれの立ち上がり変化に基づいて車両の衝突形態を特定し、車両中心のフロアトンネルに設けられたフロアセンサ32からの減速度信号G(t)と車両の衝突形態に応じて特定された閾値とを比較することによってエアバッグ装置の起動の是非を判定することによって、車両の衝突形態に応じた適正なエアバッグを展開させる構成が開示されている。
【0003】
一方では、エアバッグの展開による衝撃が車両に搭乗する子供や幼児等体重の軽い人に対して危害を与えるという報告も広くなされており、例えば特開平11−001153号公報に記載の発明では、車両の座席シートに着座した搭乗者の体重を座席シート下に設けられた荷重センサが検知して、その検知信号に応じてエアバッグ装置のガス発生量を制御することによって、エアバッグの展開速度を抑制する構成が開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来例では、様々な車両の衝突形態を特定するために多数の加速度センサを設ける構成としなければならず、装置自体の複雑化を招くと共にコスト的にも高価になるという問題があった。
【0005】
また、フロントセンサ30を構成する加速度センサは、車両の前後方向の減速度しか検知しておらず、オフセット衝突やORD衝突に代表される不規則衝突または側面からの衝突に対しては、精度の高い識別が困難である。さらに、従来のエアバッグ装置では、各加速度センサからの減速度信号の立ち上がりや最大値、若しくは時間積分値をそれぞれ比較することによって種々の衝突形態を特定する構成としているが、これらはあくまでも1つの衝突形態のみが車両に発生した場合の前後方向の減速度の変化傾向に基づくものであって、実際の衝突事故のように幾つかの衝突形態が複合的に発生する状況に対応したものではない。
【0006】
さらに、加速度センサから得られた減速度信号を、エアバッグの起動に係わる制御パラメータとして使用するためには、衝突発生から終了までに要する時間だけ時間積分やカルマンフィルタによる整形処理等の演算処理を施して、衝突発生からの速度変化(減速速度)に変換する必要がある。換言すると、衝突発生から終了するまでに要する時間として、予め設定された時間だけエアバッグの起動タイミングが遅れることを意味しており、リアルタイムな制御判断を実行することはできず、場合によっては車両衝突時にエアバッグ装置による乗員への十分な保護が果たせない危険性を備えている。
【0007】
また、従来例では、車両に搭乗する乗員が子供であるかを判別するために、上記の加速度センサとは別個に、座席シート下に設けられた荷重センサからの出力を利用する構成としているが、乗員の着座姿勢やシートベルトの張力の影響を受けて荷重センサの出力傾向が大きく変動するため、乗員の有無や乗員の体重を正確に判定することができない。例えば、幼児の安全を確保するためのチャイルドシートは一般にシートベルトを利用して座席シートに固定する構成となっているので、チャイルドシートの自重及びシートベルトの張力による荷重がセンサに作用し、これに起因して座席シート及びチャイルドシートに乗員が着座していないにも係わらず乗員が着座していると誤って判定したり、チャイルドシートに幼児が着座している状況において大人が着座していると誤判定される危険性がある。
【0008】
本願発明は、上記した事情のもとで考え出されたものであって、車両衝突時の衝撃力の大きさとその方向(衝撃形態)を単一のセンサで直接且つリアルタイムに検知し、車両衝突からエアバッグ装置の起動までの時間遅れが無く、乗員が被るダメージを効果的に抑制すると共に、同一センサからの出力信号から乗員の乗車状況を判別して、誤判定の無い適正なエアバッグのみの起動を実現する自動車用エアバッグ装置を提供することを、その課題とする。
【0009】
【発明の開示】
上記課題を解決するため、本願発明では、次の技術的手段を講じている。
【0010】
本願発明の第1の側面によれば、車両衝突時に乗員へのダメージを軽減させる複数のエアバッグを備えた自動車エアバッグ装置において、車両衝突時の衝撃力に応じた衝撃力情報と、車両の各座席に搭乗する乗員重量に応じた乗員重量情報とを直接的に検知することができるセンサ部と、センサ部から得られる衝撃力情報と乗員重量情報とに基づいて、衝突時の衝撃方向と各衝撃方向毎の衝撃力、及び各座席毎の乗員の乗車状況を求める衝突状況識別手段と、衝突状況識別手段からの衝撃方向及び衝撃方向毎の衝撃力、乗員重量に応じて、乗員へのダメージの軽減に最適なエアバッグを選定し作動させる制御手段とを備える、自動車エアバッグ装置を提供する。
【0011】
本願発明の好適な実施の形態によれば、制御手段は、衝突状況認識手段によって求められた衝撃方向と乗員の乗車状況とに基づいて、複数のエアバッグのうち、最適なエアバッグの起動を決定するエアバッグ選定手段と、衝突状況識別手段によって求められた衝撃力と乗員の乗車状況とに基づいて、選定されたエアバッグのガス爆発圧力を調整する調整手段とを備える。
【0012】
乗員の乗車状況とは、例えば車両の運転座席、助手座席、後部右座席及び後部左座席それぞれに対し、乗員の着座の有無、子供や幼児等の体重の軽い人が着座しているか否かといった各座席毎の着座状況を意味する。
【0013】
本願発明の好適な実施の形態によれば、エアバッグのガス圧力調整手段は、衝突状況識別手段から得られる衝突時の各衝撃方向毎の衝撃力の大小関係と、乗員の乗車状況とに基づいて、選定されたエアバッグの膨張速度を制御する。
【0014】
本願発明の好適な実施の形態によれば、センサ部は、車両衝突時に作用する衝撃力と、各座席毎の乗員の乗車に応じて作用する垂直抗力とを、車両サスペンション構造体に作用する剪断応力として検知する応力検知センサである。
【0015】
本願発明の更に好適な実施の形態によれば、応力検知センサは、車両サスペンション構造体の任意の位置に設けられた孔内部に埋設固定されており、孔は、車両サスペンション構造体に存在する応力中心帯に内包する位置に形成される。
【0016】
応力中心帯とは、構造体、例えば本願発明ではサスペンション構造体(ステアリングナックル)を指すものであるが、これに複数方向からの外力が作用したときの内部応力の分布を考えた場合、測定を目的とする方向成分の外力による応力のみが存在し、且つそれ以外の方向成分の外力により作用する内部応力の影響が無いか、若しくは極めて小さいような分布帯を示すものである。
【0017】
本願発明の更に好適な実施の形態によれば、応力検知センサは、車両サスペンション構造体と同等の金属材質若しくはセラミック系材料、樹脂材料からなる立方体あるいは平板形状の基体の表面に歪検知部が形成されることにより構成され、その歪検知部の貼着面が、孔の中心軸に対して垂直な互いに向かい合う二面であって、その中心面に対して面対称となる位置に歪検知部が形成される。
【0018】
応力検知センサとしては、基体にある一方向から外力が負荷された場合、この外力により発生する内部歪に対応して、歪感知部の抵抗薄膜が変形することによる電気抵抗変動を出力値として検知する歪ゲージ式を用いることができるが、これに限るものではない。
【0019】
本願発明の好適な実施の形態によれば、応力検知センサは、少なくとも二軸の歪検知部により構成され、かつ両者が車両サスペンション構造体に作用する剪断方向に対して互いに45°の傾きを為して直交する関係にある。
【0020】
本願発明の好適な実施の形態によれば、衝突状況識別手段は、センサ部からの衝撃力情報に基づいて、車両衝突時の衝撃方向毎の衝撃力成分に分離演算する演算手段と、センサ部からの乗員重量情報に基づいて、車両の各座席に搭乗する乗員の有無や乗員が子供であるかを判断する判断手段とにより構成される。
【0021】
このように本願発明によれば、車両サスペンション構造体に装着されたセンサ部単体のみで、車両衝突時の衝撃力とその衝撃方向を直接的に検知するものであり、センサ部等を含めた部品点数の削減により、装置システム自体の簡素化とコスト低減を実現することができる。
【0022】
また、センサ部は、車両衝突時の衝撃力に応じてサスペンション構造体に作用する剪断応力の変化を検知するものであるので、その検知精度を向上することができる共に、従来例のような積分演算やカルマンフィルタ等の整形処理による時間遅れが生じず、応答性の高いリアルタイムなエアバッグ制御が可能である。これにより、車両衝突時の衝撃を効果的に抑制してそのダメージから乗員を保護するという極めて安全性の高いエアバッグ装置を提供することができる。
【0023】
さらに、車両の衝突形態をセンサ部から得られる衝撃方向より識別することができるので、オフセット衝突やORD衝突に代表される不規則衝突、側面からの衝突といった実際の衝突事故に多く見られる幾つかの衝突形態が複合した状況にも対応した適切なエアバッグの制御を実現することができるという格別な効果を備える。
【0024】
さらに、上記のセンサ部は、車両衝突時の衝撃力やその衝撃方向だけでなく、車輌サスペンション構造体に作用する垂直抗力の変動から車両に搭乗する乗員の有無、あるいは着座している乗員が子供や幼児のように体重の軽い人であるかを認識することができるので、乗員の着座姿勢やシートベルトの張力による影響を一切受けないことからも、エアバッグの制御精度及び安全性をより一層向上させることができる。
【0025】
本願発明のその他の特徴及び利点は、貼付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかになろう。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下、本願発明の好ましい実施の形態を、図示を参照して具体的に説明する。なお、ここに示すのは好ましい実施形態の一例であって、特許請求の範囲はここに示す実施例に限定されるものではない。
【0027】
図1は、本願発明に係わる自動車エアバッグ装置全体の構成を示した説明図であって、車両の各タイヤ1a〜1dに対応して、応力検知センサ3a〜3dが設けられている。応力検知センサ3a〜3dは、各タイヤ1a〜1dを支持するサスペンション構造体(ステアリングナックル)2a〜2dの内部に埋設固着されており、路面とタイヤ間に作用する路面摩擦力、垂直抗力及び横力を、ステアリングナックル2a〜2dに伝達される剪断応力の変化として検知する。応力検知センサ3a〜3dによって検出される応力検知信号は、増幅回路、ROM、RAM等により構成される公知の電子制御回路(ECU)4に入力され、増幅処理を含む所定の信号処理が行なわれる。
【0028】
電子制御回路4は、内部演算処理の結果に基づいて、運転座席及び助手席に装着されたエアバッグ5a〜5dのガス発生装置6a〜6dの点火タイミングを制御し、エアバッグ5a〜5dに点火タイミングに応じた膨張用ガス圧力を供給する。エアバッグ5a〜5dは、それぞれ袋形状として、車両のハンドル中央(5a)、助手席側のインストルメントパネル(5b)、及び各座席のシートバック(5c、5d)にそれぞれ折り畳まれて収納されている。また、エアバッグ5a〜5dには、膨張した際に、乗員と接触して圧縮されるまで内圧を一定とするように、膨張用ガスを大気中に逃すベントホール8が形成されている。
【0029】
ガス発生装置6a〜6dには、点火装置の点火によりガス発生剤が発火して膨張用ガスを発生する2個のガス発生部材7a、7bをそれぞれ設ける構成としており、これら2個のガス発生部材7a、7bの点火タイミングを2段階に制御することで、エアバッグ5a〜5dに供給されるガス圧を調整する。具体的には、2個のガス発生部材7a、7bの点火タイミング接近させることにより、エアバッグ5a〜5dに供給される膨張用ガスの圧力を高くして、逆に点火タイミングを大きくずらすにつれて、エアバッグ5a〜5dに供給する膨張用ガスの圧力を低くすることができる。なお、ガス発生部材7a、7bの点火タイミングのずれとしては、1/1000秒単位で調整することができ、図2に示すように、車両衝突時の衝撃の大きさに応じて点火の段階を変更することによって、エアバッグ5a〜5dの展開速度を制御することができる。
【0030】
なお、図1では、車両の運転座席及び助手席のそれぞれ2箇所にエアバッグを設ける構成としたが、これに限定されるものではなく、例えば後部座席のシートバックにもそれぞれエアバッグを設けて、側面衝突による衝撃を緩和する構成にしても良い。
【0031】
次に、各タイヤ1a〜1dを支持するサスペンション構造体2a〜2dに装着される応力検知センサの構成と計測原理について説明する。図3は、本願発明に係わる自動車エアバッグ装置における応力検知センサ3の構成を示した概観図である。なお、ここでは1輪に対する応力検知センサのみを図示しているが、その他の車輪についても同様の構成を備えているものとし、これ以降の説明において、各符号の添字は省略する。
【0032】
応力検知センサ3は、たとえばサスペンション構造体2と同等の機械的性質を備える金属材料、セラミック系材料若しくは樹脂材料からなる平板形状の基体10と、その表面に形成された抵抗薄膜からなる4個の歪感知部11、12、13、14とから構成される。ここで、歪感知部とは、基体10にある一方向からの外力が負荷された場合、その外力により発生する内部歪に対応して、歪感知部の抵抗薄膜が変形することによる電気抵抗変動を出力値として検出するものであり、一般的には市販の金属抵抗体若しくは半導体プロセスによる薄膜技術を利用するものが知られているが、それに限るものではない。
【0033】
なお、歪感知部11と12及び13と14は、それぞれが基体10の貼着面の中心線に対して互いに45°の傾きを為して直交するように配置されている。また、歪感知11と12、13と14とは、各々面対称な位置関係を有するように配設されている。さらに、図3には図示していないが、各歪感知部11〜14の両端には、たとえばAl配線から構成される導体の一端が接続されており、これら導体の他端は、基体15の外部に設けられるブリッジ回路15に接続されている。
【0034】
図4は、本願発明に係わる自動車エアバッグ装置における信号処理回路であって、応力検知センサ3の歪感知部11〜14は、それぞれ3個の定抵抗素子16と組み合わさって1つのブリッジ回路15を構成している。すなわち、信号処理回路内部には、各歪感知部11〜14に対応した4つのブリッジ回路が存在する。各ブリッジ回路15は、増幅回路17と直流電源19に接続され、さらに演算回路18に電気的に接続されている。
【0035】
ここで、応力検知センサ3に応力が作用することに伴って、歪感知部11〜14は、基体10の面内に生じる歪みを検知する。この歪みにより生じる各歪感知部の微小な抵抗変動は、それに対応するブリッジ回路15によって電圧信号に変換され、さらに増幅回路17を介して応力に比例した電圧信号に増幅される。演算回路18では、各増幅回路17より出力される電圧信号を総括してロジック演算が処理される。具体的には、演算回路18は、増幅回路17から出力された各電圧信号を加減算するロジック演算手段と、ロジック演算手段により演算された電圧信号を歪量に換算する歪量換算手段と、さらに換算された歪量に対応した外力に変換する力演算手段とから構成されている。なお、ここでのロジック演算手段としては、剪断応力を算出するための公知の演算手法を採用すれば良い。
【0036】
このような歪感知部の構成を備える応力検知センサを採用することによって、車両衝突時の衝突形態とその衝撃の大きさ、各座席毎の乗員の乗車状況とを直接且つ精度良く検知することができる。以下に、その理由について理論的に考察する
【0037】
車両が他の車両若しくはガードレール等の建築物に衝突した瞬間、路面とタイヤ間の接地面には、車両全体に作用する衝撃力が各輪毎のサスペンションを介してタイヤに伝達されることによって、その衝撃力に対する反力としての路面摩擦力F及び横力Sが作用する。換言すると、路面摩擦力Fと横力Sは、車両衝突時の衝撃力に対する分力成分であると言うことができる。車両衝突時、路面摩擦力F及び横力Sには、通常の車両走行時とは明らかに異なる急激な変動が発生することが確認されており、衝撃力の大きさに応じて瞬間的に極めて大きな値を示す傾向にある。また、車両の衝突形態については、路面摩擦力Fと横力Sとの間をなす角(ベクトル角)を求めることによって車両の衝突方向が明らかとなり、衝突形態を導き出すことができる。すなわち、路面摩擦力F及び横力Sを随時監視し、各輪毎の路面摩擦力F及び横力Sを比較することによって、車両衝突時の衝撃の大きさや衝突形態を瞬時に特定することができる。
【0038】
さらに、各座席毎の乗員の乗車状況については、路面とタイヤ間に作用する垂直抗力Nの変動から識別することが可能になる。乗員を含めた車両重量は、前後左右の四輪に配分されて路面に作用しており、その車両重量に対する反力として垂直抗力Nが発生する。すなわち、乗員が着座する位置(座席)に応じて各輪毎の垂直抗力Nの変化量は異なるのであって、その変化量を随時監視することによって、各座席毎の乗員の乗車状況を識別することが可能になる。
【0039】
図5は、本願発明に係わるエアバッグ装置における応力検知センサ3のサスペンション構造体への装着例であって、本実施形態では、乗車用に多く用いられるマルチリンク型ダブルウィッシュボーン式サスペンション構造を例にとって説明する。ステアリングナックル2は、タイヤ1を支持するサスペンション構造体であって、応力検知センサ3は、ステアリングナックル2に形成された孔20、21、22に対し、それぞれ所定の位置と所定の姿勢で埋設固定される。
【0040】
いま、車両進行方向に平行な軸をx、タイヤの軸芯方向、すなわち車幅方向に平行な軸をy、x軸とy軸の双方に直交する軸をzと仮想すると、タイヤ1と路面との間に存在する接地面を力点とした路面摩擦力F(x軸方向)、横力S(y軸方向)及び垂直抗力N(z軸方向)がベクトル的に合算された状態で、ステアリングナックル2に同時に作用する。これら各軸方向の力のうち、例えば路面摩擦力Fのみを剪断応力として分離測定しようとする場合、図5に示すように応力検知センサ3を配設すれば良い。すなわち、x軸方向に沿って孔20をステアリングナックル2に設け、その内部に、基体10の歪感知部11〜14が形成された面をx−y平面に対して並行となるような姿勢で、応力検知センサ3を内蔵すればよい。
【0041】
一方、横力Sを剪断応力として分離計測しようとする場合には、図5に示したように、y軸方向に沿って孔21を設け、その内部に、基体10の歪感知部11〜14が形成された面をy−z平面に対して並行となるような姿勢で、応力検知センサ3を内蔵すればよい。また、垂直抗力Nに対しても同様にして、z軸に沿って孔22を設け、その内部に、基体10の歪感知部11〜14が形成された面をx−z平面に対して並行となるような姿勢で、応力検知センサ3を内蔵すればよい。
【0042】
次に、応力検知センサ3の固定位置に関してであるが、孔20〜22は、それぞれステアリングナックル2に存在する応力中心帯を内包する位置に形成されており、応力検知センサ3は、応力中心帯と一致するか、あるいはその近傍に配設される。ここで応力中心帯とは、ステアリングナックル2に同時且つ複数の方向から外力が作用した時の内部応力の分布を考えた場合、測定を目的とする方向の外力による応力成分が存在し、且つそれ以外の方向の外力に作用する内部応力の影響が無いか若しくは極めて小さいような分布帯であると定義される。この応力中心帯を求めるに際しては、例えば計算力学的手法の一つとされる有限要素法を用いたFEM(finite element method)解析を利用する手法が一般的である。すなわち、ステアリングナックル2に作用する各軸方向の力が単独で作用した場合の剪断応力分布図をFEM解析によって求め、たとえば路面摩擦力Fのみを計測しようとする場合においては、x−y平面におけるその他の方向力(垂直抗力Nや横力S)による応力分布図を重ね合わせて、両外力による剪断応力が共に最小である範囲を決定し、その決定範囲と、x−y平面における路面摩擦力Fによる剪断応力分布図とを照合して、路面摩擦力Fによる剪断応力のみが最大に検知される最適位置を含むように決定すればよい。横力Sを計測する場合においても、対象となる平面をy−z平面に変更することで、同様のステップを踏むことによって最適位置が決定される。すなわち、y−z平面における他の方向力(路面摩擦力Fや垂直抗力N)による応力分布図を重ね合わせて、両外力による剪断応力が共に最小である範囲を決定し、その決定された範囲と、y−z平面における横力Sの剪断応力分布図とを照合して、横力Sによる剪断応力のみが最大に検知される最適位置を含むように決定すればよい。また、垂直抗力Nを計測する場合においても、同様のステップを踏まえることにより、x−z平面における他の方向力(路面摩擦力Fや横力S)による剪断応力の影響が最小であり、且つ垂直抗力Nによる剪断応力が最大に検知される最適位置が決定される(特開平7−35632号公報参照)。
【0043】
このようにして応力検知センサ3の装着位置及び姿勢を決定することによって、測定すべき方向の力以外に外力による影響を良好に排除でき、干渉誤差の少ない剪断応力の測定、換言すると路面摩擦力Fや垂直抗力N、横力Sを高精度に分離検出することができる。また、これら路面摩擦力Fや横力S、垂直抗力Nを用いることによって、車両衝突時の衝撃力や衝撃方向(形態)、乗員の乗車状況を直接的且つ定量的に示すことが可能となり、エアバッグの制御の精度向上を実現することができる。さらに、材料力学の分野から、剪断応力はそれに作用する構造体の同一断面内において一様に分布する事が公知であることから、このような剪断応力を計測対象として選定することで、力点とは異なるステアリングナックル2に応力検知センサ3を配設しても、その計測精度をより一層向上させることが出来る。
【0044】
なお、本実施形態では、3つの平板形状の応力検知センサを採用することにより、衝撃方向及び各衝撃方向毎の衝撃力を検出するようにしたが、たとえば図6に示すような立方体形状の基体25を備える応力検知センサ26を用いて、歪検知部11〜14をx−y平面、x−z平面、及びy−z平面に並行な各面にそれぞれ構成することによって、1つの応力検知センサで衝撃方向及び各衝撃方向毎の衝撃力を検出するようにしても良い(特開平4−331336号公報参照)。
【0045】
図7は、本願発明に係わる自動車エアバッグ装置において実現される回路ブロック図であって、この自動車エアバッグ装置は、エアバッグ装置システム全体を制御するCPU(central processing unit)30、CPU30のワークメモリとして用いられるRAM(random accessmemory)31、各種プログラムやデータ等が格納されたROM(read only memory)32、およびCPU30とセンサやモニタなどの入出力機器との間の信号授受を制御するインターフェース33を備えている。インターフェース33には、入力されるアナログ信号をデジタル信号に変換する機能や、出力するデジタル信号をアナログ信号に変換する機能などを有しており、インターフェース33には、車両のタイヤと路面との間に作用する路面摩擦力Fに比例した電圧信号を出力する路面摩擦力センサ34と、横力Sに比例した電圧信号を出力する横力センサ35と、垂直抗力Nに比例した電圧信号を出力する垂直抗力センサ36と、エアバッグ5の展開膨張を促すガス発生部材7a、7bの点火タイミングを制御するガス発生装置6とが接続されている。なお、ここでの路面摩擦力センサ34及び横力センサ35、垂直抗力センサ36については、前述した応力検知センサ3と同様の構成を備えるものであり、各輪毎に設置されている。
【0046】
図8は、CPU30がROM32に格納されたプログラムに基づいて動作することにより実現される仮想的な回路ブロック図であって、CPU30は、P演算手段40、Θ演算手段41、乗車状況識別手段42、エアバッグ選定手段43及びガス圧制御手段44を実現している。これらの回路は、車両のイグニッションスイッチがON状態に移行することにより、CPU30がROM32に格納されているプログラムを実行することによって実現される。
【0047】
P演算手段40は、路面摩擦力センサ34及び横力センサ35からインターフェイス33を介して入力される路面摩擦力Fと横力Sとに基づいて、各輪毎の衝撃力P=√(F2+S2)を演算する。
【0048】
Θ演算手段41は、路面摩擦力センサ34及び横力センサ35からインターフェイス33を介して入力される路面摩擦力Fと横力Sとに基づいて、車両の衝突方向Θ=tan−1(F/S)を演算する。
【0049】
乗車状況識別手段42は、垂直抗力センサ36からインターフェイス33を介して入力される各輪毎の垂直抗力Nに基づいて、乗員の各座席シート毎の乗車状況を識別し、エアバッグ選定手段44に着座状況識別信号を出力する。具体的には、車両に誰も乗車していない状況での各輪毎の垂直抗力NOを基準値として、車両に乗員が着座したときの各輪毎の垂直抗力Nと基準値NOとを比較し、その変化率ΔN=(N−NO)/NOが予め定められた閾値aよりも小さい場合、第1の閾値aよりも小さな垂直抗力の変化率ΔNを示した車輪に応じて、座席シートに子供や幼児といった体重の軽い人が着座していると判別する。
【0050】
図9は、各座席シート毎の乗員の着座状況に対する垂直抗力の変化率ΔNの分布を示す説明図であって、エアバッグの起動において最も問題とされる助手席に子供が着座した場合の一例に示す。運転座席には体重60kgの大人が常に着座しており、条件1では助手席に大人、条件2では助手席に子供、条件3では助手席に子供且つ後部座席右に大人、条件4では助手席に子供且つ後部座席左に大人がそれぞれ着座しているものと想定する。大人の体重は全て60kgとしており、子供の体重は大人の半分の30kgとする。ΔNFRは前輪右側、ΔNFLは前輪左側、ΔNRRは後輪右側、ΔNRLは後輪左側の垂直抗力Nの変化率をそれぞれ示している。図9より明らかなように、前輪左側の垂直抗力の変化率ΔNFLに着目すると、助手席に大人が着座している状況(条件1ではΔNFL=12%)と比して、助手席に子供が着座している状況では、後部座席に大人が着座している如何に係わらず、その変化率は2〜3%と小である。また、後部座席に乗員が誰も乗車していない状況では、ΔNRR及びΔNRLは何れも6%程度であるのに対し、例えば条件3のように後部座席右側に大人が着座するとΔNRRは14%に増加する。一方、条件4のように後輪座席左側に大人が着座する状況では、条件3とは反対にΔNRLが14%に増加する。すなわち、第1の閾値aを10%の付近に設けることで、各輪毎の垂直抗力の変化率ΔNFR、ΔNFL、ΔNRR、ΔNRLを第1の閾値aとそれぞれ比較することによって、第1の閾値aよりも小さな変化率を示す側の座席シートに子供が着座しているか若しくは誰も着座していない状況であると識別することができる。
【0051】
エアバッグ選定手段43は、Θ演算手段41からの車両の衝突方向Θに基づいて、車両の衝突形態に応じた最適なエアバッグ5の起動を選定し、エアバッグ起動信号を生成する。具体的には、Θ演算手段41から出力された路面摩擦力Fと横力Sとの間をなす角度Θに基づいて車両の衝突方向を特定し、その衝突方向に相当するエアバッグの展開膨張を決定する。例えば、路面摩擦力Fと横力Sとが図10に示すような関係を有する場合、そのときの角度Θは、左回りを正とすると+30°を出力するので、車両は前方左30度の方向から衝突されたと判断することができる。また、角度Θ=+90°であった場合は、車両は左方向から側面衝突されたと判断することができ、助手席側に装着されたエアバッグ5b、5dの展開膨張を決定すればよい。
【0052】
さらにエアバッグ選定手段43は、乗車状況識別手段42からの着座状況識別信号に基づいて、乗員の着座状況に応じた最適なエアバッグ5の起動を選定し、エアバッグ生成信号を生成する。具体的には、乗員状況識別手段42から垂直抗力の変化率ΔNに応じて出力される着座状況識別信号により、助手席シートに子供や幼児が着座しているか、あるいは誰も着座していないと判断された場合には、助手席側のエアバッグ5b、5dを展開膨張しないと決定する。なお、乗員の着座状況に応じて選定されたエアバッグの起動については、上述した衝突形態に応じて決定されたエアバッグの起動よりも優先されるものであって、図10に示すように左前方から車両が衝突されたと判断したとしても、助手席シートに誰も搭乗していないか子供や幼児が着座していると判断される場合においては、助手席側エアバッグ5b、5dの展開膨張は実施されない。
【0053】
ガス圧制御手段44は、路面摩擦力センサ34からの路面摩擦力情報と、横力センサ35からの横力情報と、P演算手段40からの衝撃力Pと、エアバッグ選定手段43からのエアバッグ起動信号とに基づいて、ガス発生装置6から発生する膨張用ガスの内圧値を制御する。具体的には、P演算手段40からの衝撃力Pに基づいてエアバッグ5の内圧目標値P*=P/Aを算出して、エアバッグ選定手段43からのエアバッグ起動信号に応じて展開膨張が決定された各座席シート毎のエアバッグ5に対し、ガス発生部材7a、7bの相互点火時期を調整しつつ、エアバッグ5の内圧目標値P*に応じた膨張用ガスを提供する。ここで、Aとはエアバッグ5と乗員の頭胸部との接触面積を表わしており、この接触面積Aは、乗員の体重の大小に係わらず個人差はほとんど無いと推定されることから、予め定められた定数としてROM32に保存されており、例えばA=0.13m2とする。
【0054】
また、ガス圧制御手段44は、エアバッグ5の内圧目標値P*に応じた複数の第2の閾値bを備えており、演算された内圧目標値P*と第2の閾値bとを比較することによって、そのの大小関係からガス発生部材7b、7bの点火タイミングを決定する。第2の閾値bとしては、たとえば高衝撃用b1、中衝撃用b2、及び低衝撃用b3の3段階に区分された所定値が求められており、ROM32に格納されている。ここで高衝撃用の閾値b1は中衝撃用の閾値b2よりも大きく、中衝撃用の閾値b2は低衝撃用の閾値b3よりも大きいという関係を有している。
【0055】
従って、演算された内圧目標値P*と第2の閾値bとを比較して、内圧目標値P*が高衝撃用閾値b1よりも大きい場合には、車両衝突の際の衝撃が非常に大きく一刻も早くエアバッグを展開させる必要があるものと判断して、ガス発生装置6はガス発生部材7bと7bを同時に着火させ、最大のエアバッグ5の展開速度を得るように制御すればよい。また、内圧目標値P*が低衝撃用閾値b3よりも小さい場合には、車両衝突の際の衝撃が小さく軽微なものであり、従来のようにエアバッグ5に最大の膨張圧力を供給すれば、逆にエアバッグ5の展開に伴う衝撃によって乗員に危害を及ぼすと判断して、ガス発生部材7bと7bの着火タイミングを大きくずらしてエアバッグ5に供給される膨張用ガスの作動圧力を抑制する。内圧目標値P*が中衝撃用閾値b2より大きく且つ高衝撃用閾値b1よりも小さい、若しくは低衝撃用閾値b3よりも大きく且つ中衝撃用閾値b2よりも小さい場合でも同様であって、内圧目標値P*と第2の閾値bとの大小関係に応じて、ガス発生部材7bと7bとの着火タイミングを変化させることによって、最適な展開速度でエアバッグ5を膨張させる。なお、ガス発生部材7b、7bの着火タイミングについては、内圧目標値P*に応じて予め実験的に求められており、たとえば内圧目標値P*が中〜高衝撃用閾値の範囲にある場合には5m秒、低〜高衝撃用閾値の範囲にある場合には10m秒、低衝撃用閾値以下である場合には50m秒と設定すればよい。
【0056】
すなわち、路面摩擦力センサ34、横力センサ35及び垂直抗力センサ36は、車両の車輪と走行路面との間に作用する路面摩擦力Fに応じた路面摩擦力情報と、横力Sに応じた横力情報と、垂直抗力Nに応じた垂直抗力情報とを得ることができる任意数のセンサ部を構成している。P演算手段40は、センサ部からの路面摩擦力情報と横力情報とに基づいた衝撃力Pを演算する衝撃力演算手段を構成している。Θ演算手段41は、センサ部からの路面摩擦力情報と横力情報とに基づいた車両の衝突角度Θを演算する衝突角度演算手段を構成している。乗員状況識別手段42は、センサ部からの垂直抗力情報に基づいて各座席シート毎の重量変化率ΔNを演算する重量変化率演算手段を構成している。
【0057】
エアバッグ選定手段43は、衝突角度演算手段から演算された衝突角度Θに基づいて車両の衝突形態を特定する衝突形態判断手段を構成している。エアバッグ選定手段43は、衝突形態判断手段により特定された車両の衝突形態に応じて、最適なエアバッグの起動を選定するエアバッグ起動判断手段を構成している。さらにエアバッグ選定手段43は、重量変化率演算手段より演算された重量変化率ΔNが、各座席シートに着座している乗員の重量に応じた閾値よりも小さければ、それに相当する座席シートのエアバッグを展開膨張させないエアバッグ制御手段を構成している。
【0058】
ガス圧制御手段44は、衝撃力演算手段により演算された衝撃力Pに応じたエアバッグ5の内圧目標値P*を演算する内圧目標値演算手段を構成している。さらにガス圧制御手段44は、内圧目標値演算手段により演算された内圧目標値P*と予め定められた第2の閾値との大小関係を比較することによって、ガス発生装置6に格納されているガス発生部材7a、7bの着火タイミングを調整する着火時期制御手段を構成している。
【0059】
なお、本実施形態では、エアバッグ5の内圧目標値P*を求めるに当たって、P演算手段40からの衝撃力Pを用いる構成としたが、衝撃力Pの代わりに路面摩擦力センサ34からの路面摩擦力F及び横力センサ35からの横力Sを用いても良い。すなわち、路面摩擦力Fは、衝撃力Pに対する車両の前後方向の分力であるから、内圧目標値PF *=F/Aを算出して、車両のハンドル中央及び助手席側のインストルメントパネルに収納されたエアバッグ5a、5bの作動圧力が演算された内圧目標値PF *になるように、ガス発生部材7a、7bの着火タイミングを制御して、エアバッグ5a、5bを展開膨張させてもよい。また、各座席のシートバックに収納されているエアバッグ5c、5dについては、衝撃力Pの横方向の分力である横力Sを用いて内圧目標値PS *=S/Aを算出し、エアバッグ5c、5dの作動圧力が内圧目標値PS *になるように、ガス発生部材7a、7bの着火タイミングを制御して、エアバッグ5c、5dを展開膨張させればよい。
【0060】
さらに、本実施形態では、内圧目標値P*に対して3段階の第2の閾値bを設けてる構成としたが、それに限るものではなく、任意数の第2の閾値bを更に細かく設定して、その設定された第2の閾値と内圧目標値P*との大小関係に応じてガス発生部材7a、7bの着火タイミングを制御する構成としても良い。
【図面の簡単な説明】
【図1】本願発明に係わる自動車エアバッグ装置の構成を示した概略図である。
【図2】本願発明に係わる自動車エアバッグ装置の作動に関する説明図である。
【図3】本願発明に係わる自動車エアバッグ装置における応力検知センサの概観図である。
【図4】本願発明に係わる自動車エアバッグ装置における信号処理回路図である。
【図5】本願発明に係わる自動車エアバッグ装置における応力検知センサの配置説明図である。
【図6】本願発明に係わる自動車エアバッグ装置における別の実施形態での応力検知センサの概観図である。
【図7】本願発明に係わる自動車エアバッグ装置における回路ブロック図である。
【図8】本願発明に係わる自動車エアバッグ装置に備えられたCPUにより実現される仮想的な回路ブロック図である。
【図9】各座席シートに着座する乗員重量に対する垂直抗力の変化率を示す説明図である。
【図10】車両が左前方よりオフセット衝突された時における衝撃力と衝撃角度の時系列変化を示したグラフである。
【符号の説明】
1 タイヤ
2 サスペンション構造体(ステアリングナックル)
3 応力検知センサ
4 電子制御回路(ECU)
5 エアバッグ
6 ガス発生装置
7 ガス発生部材
30 CPU
31 RAM
32 ROM
33 インターフェイス
34 路面摩擦力センサ
35 横力センサ
36 垂直抗力センサ
40 P演算手段
41 Θ演算手段
42 乗車状況識別手段
43 エアバッグ選定手段
44 ガス圧制御手段
【発明の属する技術分野】
本発明は、衝突等に伴う車両事故発生による衝撃から乗員を保護し、そのダメージを効果的に抑制する自動車エアバッグ装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、車両には衝突時の衝撃から乗員を保護するためのエアバッグ装置が搭載されている。このエアバッグ装置は、車両衝突時の衝撃力に応じた衝撃力情報を検知するセンサを有し、このセンサにより検出した衝撃力情報に基づいて起動され、起動時にはガス発生器から噴出する高圧ガスをエアバッグの内部に導入することにより、エアバッグを乗員に向けて急速に膨張展開させ、乗員を着座位置で拘束し、衝突時の衝撃を緩和させるようにしたものである。また、車両の衝突形態には正突や斜突、オフセット衝突等さまざまな衝突形態があるが、例えば特開2000−296755号公報に記載の発明では、車両の前部に設けられた複数の加速度センサからなるフロントセンサ30から出力された減速度信号G′(t)のそれぞれの立ち上がり変化に基づいて車両の衝突形態を特定し、車両中心のフロアトンネルに設けられたフロアセンサ32からの減速度信号G(t)と車両の衝突形態に応じて特定された閾値とを比較することによってエアバッグ装置の起動の是非を判定することによって、車両の衝突形態に応じた適正なエアバッグを展開させる構成が開示されている。
【0003】
一方では、エアバッグの展開による衝撃が車両に搭乗する子供や幼児等体重の軽い人に対して危害を与えるという報告も広くなされており、例えば特開平11−001153号公報に記載の発明では、車両の座席シートに着座した搭乗者の体重を座席シート下に設けられた荷重センサが検知して、その検知信号に応じてエアバッグ装置のガス発生量を制御することによって、エアバッグの展開速度を抑制する構成が開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来例では、様々な車両の衝突形態を特定するために多数の加速度センサを設ける構成としなければならず、装置自体の複雑化を招くと共にコスト的にも高価になるという問題があった。
【0005】
また、フロントセンサ30を構成する加速度センサは、車両の前後方向の減速度しか検知しておらず、オフセット衝突やORD衝突に代表される不規則衝突または側面からの衝突に対しては、精度の高い識別が困難である。さらに、従来のエアバッグ装置では、各加速度センサからの減速度信号の立ち上がりや最大値、若しくは時間積分値をそれぞれ比較することによって種々の衝突形態を特定する構成としているが、これらはあくまでも1つの衝突形態のみが車両に発生した場合の前後方向の減速度の変化傾向に基づくものであって、実際の衝突事故のように幾つかの衝突形態が複合的に発生する状況に対応したものではない。
【0006】
さらに、加速度センサから得られた減速度信号を、エアバッグの起動に係わる制御パラメータとして使用するためには、衝突発生から終了までに要する時間だけ時間積分やカルマンフィルタによる整形処理等の演算処理を施して、衝突発生からの速度変化(減速速度)に変換する必要がある。換言すると、衝突発生から終了するまでに要する時間として、予め設定された時間だけエアバッグの起動タイミングが遅れることを意味しており、リアルタイムな制御判断を実行することはできず、場合によっては車両衝突時にエアバッグ装置による乗員への十分な保護が果たせない危険性を備えている。
【0007】
また、従来例では、車両に搭乗する乗員が子供であるかを判別するために、上記の加速度センサとは別個に、座席シート下に設けられた荷重センサからの出力を利用する構成としているが、乗員の着座姿勢やシートベルトの張力の影響を受けて荷重センサの出力傾向が大きく変動するため、乗員の有無や乗員の体重を正確に判定することができない。例えば、幼児の安全を確保するためのチャイルドシートは一般にシートベルトを利用して座席シートに固定する構成となっているので、チャイルドシートの自重及びシートベルトの張力による荷重がセンサに作用し、これに起因して座席シート及びチャイルドシートに乗員が着座していないにも係わらず乗員が着座していると誤って判定したり、チャイルドシートに幼児が着座している状況において大人が着座していると誤判定される危険性がある。
【0008】
本願発明は、上記した事情のもとで考え出されたものであって、車両衝突時の衝撃力の大きさとその方向(衝撃形態)を単一のセンサで直接且つリアルタイムに検知し、車両衝突からエアバッグ装置の起動までの時間遅れが無く、乗員が被るダメージを効果的に抑制すると共に、同一センサからの出力信号から乗員の乗車状況を判別して、誤判定の無い適正なエアバッグのみの起動を実現する自動車用エアバッグ装置を提供することを、その課題とする。
【0009】
【発明の開示】
上記課題を解決するため、本願発明では、次の技術的手段を講じている。
【0010】
本願発明の第1の側面によれば、車両衝突時に乗員へのダメージを軽減させる複数のエアバッグを備えた自動車エアバッグ装置において、車両衝突時の衝撃力に応じた衝撃力情報と、車両の各座席に搭乗する乗員重量に応じた乗員重量情報とを直接的に検知することができるセンサ部と、センサ部から得られる衝撃力情報と乗員重量情報とに基づいて、衝突時の衝撃方向と各衝撃方向毎の衝撃力、及び各座席毎の乗員の乗車状況を求める衝突状況識別手段と、衝突状況識別手段からの衝撃方向及び衝撃方向毎の衝撃力、乗員重量に応じて、乗員へのダメージの軽減に最適なエアバッグを選定し作動させる制御手段とを備える、自動車エアバッグ装置を提供する。
【0011】
本願発明の好適な実施の形態によれば、制御手段は、衝突状況認識手段によって求められた衝撃方向と乗員の乗車状況とに基づいて、複数のエアバッグのうち、最適なエアバッグの起動を決定するエアバッグ選定手段と、衝突状況識別手段によって求められた衝撃力と乗員の乗車状況とに基づいて、選定されたエアバッグのガス爆発圧力を調整する調整手段とを備える。
【0012】
乗員の乗車状況とは、例えば車両の運転座席、助手座席、後部右座席及び後部左座席それぞれに対し、乗員の着座の有無、子供や幼児等の体重の軽い人が着座しているか否かといった各座席毎の着座状況を意味する。
【0013】
本願発明の好適な実施の形態によれば、エアバッグのガス圧力調整手段は、衝突状況識別手段から得られる衝突時の各衝撃方向毎の衝撃力の大小関係と、乗員の乗車状況とに基づいて、選定されたエアバッグの膨張速度を制御する。
【0014】
本願発明の好適な実施の形態によれば、センサ部は、車両衝突時に作用する衝撃力と、各座席毎の乗員の乗車に応じて作用する垂直抗力とを、車両サスペンション構造体に作用する剪断応力として検知する応力検知センサである。
【0015】
本願発明の更に好適な実施の形態によれば、応力検知センサは、車両サスペンション構造体の任意の位置に設けられた孔内部に埋設固定されており、孔は、車両サスペンション構造体に存在する応力中心帯に内包する位置に形成される。
【0016】
応力中心帯とは、構造体、例えば本願発明ではサスペンション構造体(ステアリングナックル)を指すものであるが、これに複数方向からの外力が作用したときの内部応力の分布を考えた場合、測定を目的とする方向成分の外力による応力のみが存在し、且つそれ以外の方向成分の外力により作用する内部応力の影響が無いか、若しくは極めて小さいような分布帯を示すものである。
【0017】
本願発明の更に好適な実施の形態によれば、応力検知センサは、車両サスペンション構造体と同等の金属材質若しくはセラミック系材料、樹脂材料からなる立方体あるいは平板形状の基体の表面に歪検知部が形成されることにより構成され、その歪検知部の貼着面が、孔の中心軸に対して垂直な互いに向かい合う二面であって、その中心面に対して面対称となる位置に歪検知部が形成される。
【0018】
応力検知センサとしては、基体にある一方向から外力が負荷された場合、この外力により発生する内部歪に対応して、歪感知部の抵抗薄膜が変形することによる電気抵抗変動を出力値として検知する歪ゲージ式を用いることができるが、これに限るものではない。
【0019】
本願発明の好適な実施の形態によれば、応力検知センサは、少なくとも二軸の歪検知部により構成され、かつ両者が車両サスペンション構造体に作用する剪断方向に対して互いに45°の傾きを為して直交する関係にある。
【0020】
本願発明の好適な実施の形態によれば、衝突状況識別手段は、センサ部からの衝撃力情報に基づいて、車両衝突時の衝撃方向毎の衝撃力成分に分離演算する演算手段と、センサ部からの乗員重量情報に基づいて、車両の各座席に搭乗する乗員の有無や乗員が子供であるかを判断する判断手段とにより構成される。
【0021】
このように本願発明によれば、車両サスペンション構造体に装着されたセンサ部単体のみで、車両衝突時の衝撃力とその衝撃方向を直接的に検知するものであり、センサ部等を含めた部品点数の削減により、装置システム自体の簡素化とコスト低減を実現することができる。
【0022】
また、センサ部は、車両衝突時の衝撃力に応じてサスペンション構造体に作用する剪断応力の変化を検知するものであるので、その検知精度を向上することができる共に、従来例のような積分演算やカルマンフィルタ等の整形処理による時間遅れが生じず、応答性の高いリアルタイムなエアバッグ制御が可能である。これにより、車両衝突時の衝撃を効果的に抑制してそのダメージから乗員を保護するという極めて安全性の高いエアバッグ装置を提供することができる。
【0023】
さらに、車両の衝突形態をセンサ部から得られる衝撃方向より識別することができるので、オフセット衝突やORD衝突に代表される不規則衝突、側面からの衝突といった実際の衝突事故に多く見られる幾つかの衝突形態が複合した状況にも対応した適切なエアバッグの制御を実現することができるという格別な効果を備える。
【0024】
さらに、上記のセンサ部は、車両衝突時の衝撃力やその衝撃方向だけでなく、車輌サスペンション構造体に作用する垂直抗力の変動から車両に搭乗する乗員の有無、あるいは着座している乗員が子供や幼児のように体重の軽い人であるかを認識することができるので、乗員の着座姿勢やシートベルトの張力による影響を一切受けないことからも、エアバッグの制御精度及び安全性をより一層向上させることができる。
【0025】
本願発明のその他の特徴及び利点は、貼付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかになろう。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下、本願発明の好ましい実施の形態を、図示を参照して具体的に説明する。なお、ここに示すのは好ましい実施形態の一例であって、特許請求の範囲はここに示す実施例に限定されるものではない。
【0027】
図1は、本願発明に係わる自動車エアバッグ装置全体の構成を示した説明図であって、車両の各タイヤ1a〜1dに対応して、応力検知センサ3a〜3dが設けられている。応力検知センサ3a〜3dは、各タイヤ1a〜1dを支持するサスペンション構造体(ステアリングナックル)2a〜2dの内部に埋設固着されており、路面とタイヤ間に作用する路面摩擦力、垂直抗力及び横力を、ステアリングナックル2a〜2dに伝達される剪断応力の変化として検知する。応力検知センサ3a〜3dによって検出される応力検知信号は、増幅回路、ROM、RAM等により構成される公知の電子制御回路(ECU)4に入力され、増幅処理を含む所定の信号処理が行なわれる。
【0028】
電子制御回路4は、内部演算処理の結果に基づいて、運転座席及び助手席に装着されたエアバッグ5a〜5dのガス発生装置6a〜6dの点火タイミングを制御し、エアバッグ5a〜5dに点火タイミングに応じた膨張用ガス圧力を供給する。エアバッグ5a〜5dは、それぞれ袋形状として、車両のハンドル中央(5a)、助手席側のインストルメントパネル(5b)、及び各座席のシートバック(5c、5d)にそれぞれ折り畳まれて収納されている。また、エアバッグ5a〜5dには、膨張した際に、乗員と接触して圧縮されるまで内圧を一定とするように、膨張用ガスを大気中に逃すベントホール8が形成されている。
【0029】
ガス発生装置6a〜6dには、点火装置の点火によりガス発生剤が発火して膨張用ガスを発生する2個のガス発生部材7a、7bをそれぞれ設ける構成としており、これら2個のガス発生部材7a、7bの点火タイミングを2段階に制御することで、エアバッグ5a〜5dに供給されるガス圧を調整する。具体的には、2個のガス発生部材7a、7bの点火タイミング接近させることにより、エアバッグ5a〜5dに供給される膨張用ガスの圧力を高くして、逆に点火タイミングを大きくずらすにつれて、エアバッグ5a〜5dに供給する膨張用ガスの圧力を低くすることができる。なお、ガス発生部材7a、7bの点火タイミングのずれとしては、1/1000秒単位で調整することができ、図2に示すように、車両衝突時の衝撃の大きさに応じて点火の段階を変更することによって、エアバッグ5a〜5dの展開速度を制御することができる。
【0030】
なお、図1では、車両の運転座席及び助手席のそれぞれ2箇所にエアバッグを設ける構成としたが、これに限定されるものではなく、例えば後部座席のシートバックにもそれぞれエアバッグを設けて、側面衝突による衝撃を緩和する構成にしても良い。
【0031】
次に、各タイヤ1a〜1dを支持するサスペンション構造体2a〜2dに装着される応力検知センサの構成と計測原理について説明する。図3は、本願発明に係わる自動車エアバッグ装置における応力検知センサ3の構成を示した概観図である。なお、ここでは1輪に対する応力検知センサのみを図示しているが、その他の車輪についても同様の構成を備えているものとし、これ以降の説明において、各符号の添字は省略する。
【0032】
応力検知センサ3は、たとえばサスペンション構造体2と同等の機械的性質を備える金属材料、セラミック系材料若しくは樹脂材料からなる平板形状の基体10と、その表面に形成された抵抗薄膜からなる4個の歪感知部11、12、13、14とから構成される。ここで、歪感知部とは、基体10にある一方向からの外力が負荷された場合、その外力により発生する内部歪に対応して、歪感知部の抵抗薄膜が変形することによる電気抵抗変動を出力値として検出するものであり、一般的には市販の金属抵抗体若しくは半導体プロセスによる薄膜技術を利用するものが知られているが、それに限るものではない。
【0033】
なお、歪感知部11と12及び13と14は、それぞれが基体10の貼着面の中心線に対して互いに45°の傾きを為して直交するように配置されている。また、歪感知11と12、13と14とは、各々面対称な位置関係を有するように配設されている。さらに、図3には図示していないが、各歪感知部11〜14の両端には、たとえばAl配線から構成される導体の一端が接続されており、これら導体の他端は、基体15の外部に設けられるブリッジ回路15に接続されている。
【0034】
図4は、本願発明に係わる自動車エアバッグ装置における信号処理回路であって、応力検知センサ3の歪感知部11〜14は、それぞれ3個の定抵抗素子16と組み合わさって1つのブリッジ回路15を構成している。すなわち、信号処理回路内部には、各歪感知部11〜14に対応した4つのブリッジ回路が存在する。各ブリッジ回路15は、増幅回路17と直流電源19に接続され、さらに演算回路18に電気的に接続されている。
【0035】
ここで、応力検知センサ3に応力が作用することに伴って、歪感知部11〜14は、基体10の面内に生じる歪みを検知する。この歪みにより生じる各歪感知部の微小な抵抗変動は、それに対応するブリッジ回路15によって電圧信号に変換され、さらに増幅回路17を介して応力に比例した電圧信号に増幅される。演算回路18では、各増幅回路17より出力される電圧信号を総括してロジック演算が処理される。具体的には、演算回路18は、増幅回路17から出力された各電圧信号を加減算するロジック演算手段と、ロジック演算手段により演算された電圧信号を歪量に換算する歪量換算手段と、さらに換算された歪量に対応した外力に変換する力演算手段とから構成されている。なお、ここでのロジック演算手段としては、剪断応力を算出するための公知の演算手法を採用すれば良い。
【0036】
このような歪感知部の構成を備える応力検知センサを採用することによって、車両衝突時の衝突形態とその衝撃の大きさ、各座席毎の乗員の乗車状況とを直接且つ精度良く検知することができる。以下に、その理由について理論的に考察する
【0037】
車両が他の車両若しくはガードレール等の建築物に衝突した瞬間、路面とタイヤ間の接地面には、車両全体に作用する衝撃力が各輪毎のサスペンションを介してタイヤに伝達されることによって、その衝撃力に対する反力としての路面摩擦力F及び横力Sが作用する。換言すると、路面摩擦力Fと横力Sは、車両衝突時の衝撃力に対する分力成分であると言うことができる。車両衝突時、路面摩擦力F及び横力Sには、通常の車両走行時とは明らかに異なる急激な変動が発生することが確認されており、衝撃力の大きさに応じて瞬間的に極めて大きな値を示す傾向にある。また、車両の衝突形態については、路面摩擦力Fと横力Sとの間をなす角(ベクトル角)を求めることによって車両の衝突方向が明らかとなり、衝突形態を導き出すことができる。すなわち、路面摩擦力F及び横力Sを随時監視し、各輪毎の路面摩擦力F及び横力Sを比較することによって、車両衝突時の衝撃の大きさや衝突形態を瞬時に特定することができる。
【0038】
さらに、各座席毎の乗員の乗車状況については、路面とタイヤ間に作用する垂直抗力Nの変動から識別することが可能になる。乗員を含めた車両重量は、前後左右の四輪に配分されて路面に作用しており、その車両重量に対する反力として垂直抗力Nが発生する。すなわち、乗員が着座する位置(座席)に応じて各輪毎の垂直抗力Nの変化量は異なるのであって、その変化量を随時監視することによって、各座席毎の乗員の乗車状況を識別することが可能になる。
【0039】
図5は、本願発明に係わるエアバッグ装置における応力検知センサ3のサスペンション構造体への装着例であって、本実施形態では、乗車用に多く用いられるマルチリンク型ダブルウィッシュボーン式サスペンション構造を例にとって説明する。ステアリングナックル2は、タイヤ1を支持するサスペンション構造体であって、応力検知センサ3は、ステアリングナックル2に形成された孔20、21、22に対し、それぞれ所定の位置と所定の姿勢で埋設固定される。
【0040】
いま、車両進行方向に平行な軸をx、タイヤの軸芯方向、すなわち車幅方向に平行な軸をy、x軸とy軸の双方に直交する軸をzと仮想すると、タイヤ1と路面との間に存在する接地面を力点とした路面摩擦力F(x軸方向)、横力S(y軸方向)及び垂直抗力N(z軸方向)がベクトル的に合算された状態で、ステアリングナックル2に同時に作用する。これら各軸方向の力のうち、例えば路面摩擦力Fのみを剪断応力として分離測定しようとする場合、図5に示すように応力検知センサ3を配設すれば良い。すなわち、x軸方向に沿って孔20をステアリングナックル2に設け、その内部に、基体10の歪感知部11〜14が形成された面をx−y平面に対して並行となるような姿勢で、応力検知センサ3を内蔵すればよい。
【0041】
一方、横力Sを剪断応力として分離計測しようとする場合には、図5に示したように、y軸方向に沿って孔21を設け、その内部に、基体10の歪感知部11〜14が形成された面をy−z平面に対して並行となるような姿勢で、応力検知センサ3を内蔵すればよい。また、垂直抗力Nに対しても同様にして、z軸に沿って孔22を設け、その内部に、基体10の歪感知部11〜14が形成された面をx−z平面に対して並行となるような姿勢で、応力検知センサ3を内蔵すればよい。
【0042】
次に、応力検知センサ3の固定位置に関してであるが、孔20〜22は、それぞれステアリングナックル2に存在する応力中心帯を内包する位置に形成されており、応力検知センサ3は、応力中心帯と一致するか、あるいはその近傍に配設される。ここで応力中心帯とは、ステアリングナックル2に同時且つ複数の方向から外力が作用した時の内部応力の分布を考えた場合、測定を目的とする方向の外力による応力成分が存在し、且つそれ以外の方向の外力に作用する内部応力の影響が無いか若しくは極めて小さいような分布帯であると定義される。この応力中心帯を求めるに際しては、例えば計算力学的手法の一つとされる有限要素法を用いたFEM(finite element method)解析を利用する手法が一般的である。すなわち、ステアリングナックル2に作用する各軸方向の力が単独で作用した場合の剪断応力分布図をFEM解析によって求め、たとえば路面摩擦力Fのみを計測しようとする場合においては、x−y平面におけるその他の方向力(垂直抗力Nや横力S)による応力分布図を重ね合わせて、両外力による剪断応力が共に最小である範囲を決定し、その決定範囲と、x−y平面における路面摩擦力Fによる剪断応力分布図とを照合して、路面摩擦力Fによる剪断応力のみが最大に検知される最適位置を含むように決定すればよい。横力Sを計測する場合においても、対象となる平面をy−z平面に変更することで、同様のステップを踏むことによって最適位置が決定される。すなわち、y−z平面における他の方向力(路面摩擦力Fや垂直抗力N)による応力分布図を重ね合わせて、両外力による剪断応力が共に最小である範囲を決定し、その決定された範囲と、y−z平面における横力Sの剪断応力分布図とを照合して、横力Sによる剪断応力のみが最大に検知される最適位置を含むように決定すればよい。また、垂直抗力Nを計測する場合においても、同様のステップを踏まえることにより、x−z平面における他の方向力(路面摩擦力Fや横力S)による剪断応力の影響が最小であり、且つ垂直抗力Nによる剪断応力が最大に検知される最適位置が決定される(特開平7−35632号公報参照)。
【0043】
このようにして応力検知センサ3の装着位置及び姿勢を決定することによって、測定すべき方向の力以外に外力による影響を良好に排除でき、干渉誤差の少ない剪断応力の測定、換言すると路面摩擦力Fや垂直抗力N、横力Sを高精度に分離検出することができる。また、これら路面摩擦力Fや横力S、垂直抗力Nを用いることによって、車両衝突時の衝撃力や衝撃方向(形態)、乗員の乗車状況を直接的且つ定量的に示すことが可能となり、エアバッグの制御の精度向上を実現することができる。さらに、材料力学の分野から、剪断応力はそれに作用する構造体の同一断面内において一様に分布する事が公知であることから、このような剪断応力を計測対象として選定することで、力点とは異なるステアリングナックル2に応力検知センサ3を配設しても、その計測精度をより一層向上させることが出来る。
【0044】
なお、本実施形態では、3つの平板形状の応力検知センサを採用することにより、衝撃方向及び各衝撃方向毎の衝撃力を検出するようにしたが、たとえば図6に示すような立方体形状の基体25を備える応力検知センサ26を用いて、歪検知部11〜14をx−y平面、x−z平面、及びy−z平面に並行な各面にそれぞれ構成することによって、1つの応力検知センサで衝撃方向及び各衝撃方向毎の衝撃力を検出するようにしても良い(特開平4−331336号公報参照)。
【0045】
図7は、本願発明に係わる自動車エアバッグ装置において実現される回路ブロック図であって、この自動車エアバッグ装置は、エアバッグ装置システム全体を制御するCPU(central processing unit)30、CPU30のワークメモリとして用いられるRAM(random accessmemory)31、各種プログラムやデータ等が格納されたROM(read only memory)32、およびCPU30とセンサやモニタなどの入出力機器との間の信号授受を制御するインターフェース33を備えている。インターフェース33には、入力されるアナログ信号をデジタル信号に変換する機能や、出力するデジタル信号をアナログ信号に変換する機能などを有しており、インターフェース33には、車両のタイヤと路面との間に作用する路面摩擦力Fに比例した電圧信号を出力する路面摩擦力センサ34と、横力Sに比例した電圧信号を出力する横力センサ35と、垂直抗力Nに比例した電圧信号を出力する垂直抗力センサ36と、エアバッグ5の展開膨張を促すガス発生部材7a、7bの点火タイミングを制御するガス発生装置6とが接続されている。なお、ここでの路面摩擦力センサ34及び横力センサ35、垂直抗力センサ36については、前述した応力検知センサ3と同様の構成を備えるものであり、各輪毎に設置されている。
【0046】
図8は、CPU30がROM32に格納されたプログラムに基づいて動作することにより実現される仮想的な回路ブロック図であって、CPU30は、P演算手段40、Θ演算手段41、乗車状況識別手段42、エアバッグ選定手段43及びガス圧制御手段44を実現している。これらの回路は、車両のイグニッションスイッチがON状態に移行することにより、CPU30がROM32に格納されているプログラムを実行することによって実現される。
【0047】
P演算手段40は、路面摩擦力センサ34及び横力センサ35からインターフェイス33を介して入力される路面摩擦力Fと横力Sとに基づいて、各輪毎の衝撃力P=√(F2+S2)を演算する。
【0048】
Θ演算手段41は、路面摩擦力センサ34及び横力センサ35からインターフェイス33を介して入力される路面摩擦力Fと横力Sとに基づいて、車両の衝突方向Θ=tan−1(F/S)を演算する。
【0049】
乗車状況識別手段42は、垂直抗力センサ36からインターフェイス33を介して入力される各輪毎の垂直抗力Nに基づいて、乗員の各座席シート毎の乗車状況を識別し、エアバッグ選定手段44に着座状況識別信号を出力する。具体的には、車両に誰も乗車していない状況での各輪毎の垂直抗力NOを基準値として、車両に乗員が着座したときの各輪毎の垂直抗力Nと基準値NOとを比較し、その変化率ΔN=(N−NO)/NOが予め定められた閾値aよりも小さい場合、第1の閾値aよりも小さな垂直抗力の変化率ΔNを示した車輪に応じて、座席シートに子供や幼児といった体重の軽い人が着座していると判別する。
【0050】
図9は、各座席シート毎の乗員の着座状況に対する垂直抗力の変化率ΔNの分布を示す説明図であって、エアバッグの起動において最も問題とされる助手席に子供が着座した場合の一例に示す。運転座席には体重60kgの大人が常に着座しており、条件1では助手席に大人、条件2では助手席に子供、条件3では助手席に子供且つ後部座席右に大人、条件4では助手席に子供且つ後部座席左に大人がそれぞれ着座しているものと想定する。大人の体重は全て60kgとしており、子供の体重は大人の半分の30kgとする。ΔNFRは前輪右側、ΔNFLは前輪左側、ΔNRRは後輪右側、ΔNRLは後輪左側の垂直抗力Nの変化率をそれぞれ示している。図9より明らかなように、前輪左側の垂直抗力の変化率ΔNFLに着目すると、助手席に大人が着座している状況(条件1ではΔNFL=12%)と比して、助手席に子供が着座している状況では、後部座席に大人が着座している如何に係わらず、その変化率は2〜3%と小である。また、後部座席に乗員が誰も乗車していない状況では、ΔNRR及びΔNRLは何れも6%程度であるのに対し、例えば条件3のように後部座席右側に大人が着座するとΔNRRは14%に増加する。一方、条件4のように後輪座席左側に大人が着座する状況では、条件3とは反対にΔNRLが14%に増加する。すなわち、第1の閾値aを10%の付近に設けることで、各輪毎の垂直抗力の変化率ΔNFR、ΔNFL、ΔNRR、ΔNRLを第1の閾値aとそれぞれ比較することによって、第1の閾値aよりも小さな変化率を示す側の座席シートに子供が着座しているか若しくは誰も着座していない状況であると識別することができる。
【0051】
エアバッグ選定手段43は、Θ演算手段41からの車両の衝突方向Θに基づいて、車両の衝突形態に応じた最適なエアバッグ5の起動を選定し、エアバッグ起動信号を生成する。具体的には、Θ演算手段41から出力された路面摩擦力Fと横力Sとの間をなす角度Θに基づいて車両の衝突方向を特定し、その衝突方向に相当するエアバッグの展開膨張を決定する。例えば、路面摩擦力Fと横力Sとが図10に示すような関係を有する場合、そのときの角度Θは、左回りを正とすると+30°を出力するので、車両は前方左30度の方向から衝突されたと判断することができる。また、角度Θ=+90°であった場合は、車両は左方向から側面衝突されたと判断することができ、助手席側に装着されたエアバッグ5b、5dの展開膨張を決定すればよい。
【0052】
さらにエアバッグ選定手段43は、乗車状況識別手段42からの着座状況識別信号に基づいて、乗員の着座状況に応じた最適なエアバッグ5の起動を選定し、エアバッグ生成信号を生成する。具体的には、乗員状況識別手段42から垂直抗力の変化率ΔNに応じて出力される着座状況識別信号により、助手席シートに子供や幼児が着座しているか、あるいは誰も着座していないと判断された場合には、助手席側のエアバッグ5b、5dを展開膨張しないと決定する。なお、乗員の着座状況に応じて選定されたエアバッグの起動については、上述した衝突形態に応じて決定されたエアバッグの起動よりも優先されるものであって、図10に示すように左前方から車両が衝突されたと判断したとしても、助手席シートに誰も搭乗していないか子供や幼児が着座していると判断される場合においては、助手席側エアバッグ5b、5dの展開膨張は実施されない。
【0053】
ガス圧制御手段44は、路面摩擦力センサ34からの路面摩擦力情報と、横力センサ35からの横力情報と、P演算手段40からの衝撃力Pと、エアバッグ選定手段43からのエアバッグ起動信号とに基づいて、ガス発生装置6から発生する膨張用ガスの内圧値を制御する。具体的には、P演算手段40からの衝撃力Pに基づいてエアバッグ5の内圧目標値P*=P/Aを算出して、エアバッグ選定手段43からのエアバッグ起動信号に応じて展開膨張が決定された各座席シート毎のエアバッグ5に対し、ガス発生部材7a、7bの相互点火時期を調整しつつ、エアバッグ5の内圧目標値P*に応じた膨張用ガスを提供する。ここで、Aとはエアバッグ5と乗員の頭胸部との接触面積を表わしており、この接触面積Aは、乗員の体重の大小に係わらず個人差はほとんど無いと推定されることから、予め定められた定数としてROM32に保存されており、例えばA=0.13m2とする。
【0054】
また、ガス圧制御手段44は、エアバッグ5の内圧目標値P*に応じた複数の第2の閾値bを備えており、演算された内圧目標値P*と第2の閾値bとを比較することによって、そのの大小関係からガス発生部材7b、7bの点火タイミングを決定する。第2の閾値bとしては、たとえば高衝撃用b1、中衝撃用b2、及び低衝撃用b3の3段階に区分された所定値が求められており、ROM32に格納されている。ここで高衝撃用の閾値b1は中衝撃用の閾値b2よりも大きく、中衝撃用の閾値b2は低衝撃用の閾値b3よりも大きいという関係を有している。
【0055】
従って、演算された内圧目標値P*と第2の閾値bとを比較して、内圧目標値P*が高衝撃用閾値b1よりも大きい場合には、車両衝突の際の衝撃が非常に大きく一刻も早くエアバッグを展開させる必要があるものと判断して、ガス発生装置6はガス発生部材7bと7bを同時に着火させ、最大のエアバッグ5の展開速度を得るように制御すればよい。また、内圧目標値P*が低衝撃用閾値b3よりも小さい場合には、車両衝突の際の衝撃が小さく軽微なものであり、従来のようにエアバッグ5に最大の膨張圧力を供給すれば、逆にエアバッグ5の展開に伴う衝撃によって乗員に危害を及ぼすと判断して、ガス発生部材7bと7bの着火タイミングを大きくずらしてエアバッグ5に供給される膨張用ガスの作動圧力を抑制する。内圧目標値P*が中衝撃用閾値b2より大きく且つ高衝撃用閾値b1よりも小さい、若しくは低衝撃用閾値b3よりも大きく且つ中衝撃用閾値b2よりも小さい場合でも同様であって、内圧目標値P*と第2の閾値bとの大小関係に応じて、ガス発生部材7bと7bとの着火タイミングを変化させることによって、最適な展開速度でエアバッグ5を膨張させる。なお、ガス発生部材7b、7bの着火タイミングについては、内圧目標値P*に応じて予め実験的に求められており、たとえば内圧目標値P*が中〜高衝撃用閾値の範囲にある場合には5m秒、低〜高衝撃用閾値の範囲にある場合には10m秒、低衝撃用閾値以下である場合には50m秒と設定すればよい。
【0056】
すなわち、路面摩擦力センサ34、横力センサ35及び垂直抗力センサ36は、車両の車輪と走行路面との間に作用する路面摩擦力Fに応じた路面摩擦力情報と、横力Sに応じた横力情報と、垂直抗力Nに応じた垂直抗力情報とを得ることができる任意数のセンサ部を構成している。P演算手段40は、センサ部からの路面摩擦力情報と横力情報とに基づいた衝撃力Pを演算する衝撃力演算手段を構成している。Θ演算手段41は、センサ部からの路面摩擦力情報と横力情報とに基づいた車両の衝突角度Θを演算する衝突角度演算手段を構成している。乗員状況識別手段42は、センサ部からの垂直抗力情報に基づいて各座席シート毎の重量変化率ΔNを演算する重量変化率演算手段を構成している。
【0057】
エアバッグ選定手段43は、衝突角度演算手段から演算された衝突角度Θに基づいて車両の衝突形態を特定する衝突形態判断手段を構成している。エアバッグ選定手段43は、衝突形態判断手段により特定された車両の衝突形態に応じて、最適なエアバッグの起動を選定するエアバッグ起動判断手段を構成している。さらにエアバッグ選定手段43は、重量変化率演算手段より演算された重量変化率ΔNが、各座席シートに着座している乗員の重量に応じた閾値よりも小さければ、それに相当する座席シートのエアバッグを展開膨張させないエアバッグ制御手段を構成している。
【0058】
ガス圧制御手段44は、衝撃力演算手段により演算された衝撃力Pに応じたエアバッグ5の内圧目標値P*を演算する内圧目標値演算手段を構成している。さらにガス圧制御手段44は、内圧目標値演算手段により演算された内圧目標値P*と予め定められた第2の閾値との大小関係を比較することによって、ガス発生装置6に格納されているガス発生部材7a、7bの着火タイミングを調整する着火時期制御手段を構成している。
【0059】
なお、本実施形態では、エアバッグ5の内圧目標値P*を求めるに当たって、P演算手段40からの衝撃力Pを用いる構成としたが、衝撃力Pの代わりに路面摩擦力センサ34からの路面摩擦力F及び横力センサ35からの横力Sを用いても良い。すなわち、路面摩擦力Fは、衝撃力Pに対する車両の前後方向の分力であるから、内圧目標値PF *=F/Aを算出して、車両のハンドル中央及び助手席側のインストルメントパネルに収納されたエアバッグ5a、5bの作動圧力が演算された内圧目標値PF *になるように、ガス発生部材7a、7bの着火タイミングを制御して、エアバッグ5a、5bを展開膨張させてもよい。また、各座席のシートバックに収納されているエアバッグ5c、5dについては、衝撃力Pの横方向の分力である横力Sを用いて内圧目標値PS *=S/Aを算出し、エアバッグ5c、5dの作動圧力が内圧目標値PS *になるように、ガス発生部材7a、7bの着火タイミングを制御して、エアバッグ5c、5dを展開膨張させればよい。
【0060】
さらに、本実施形態では、内圧目標値P*に対して3段階の第2の閾値bを設けてる構成としたが、それに限るものではなく、任意数の第2の閾値bを更に細かく設定して、その設定された第2の閾値と内圧目標値P*との大小関係に応じてガス発生部材7a、7bの着火タイミングを制御する構成としても良い。
【図面の簡単な説明】
【図1】本願発明に係わる自動車エアバッグ装置の構成を示した概略図である。
【図2】本願発明に係わる自動車エアバッグ装置の作動に関する説明図である。
【図3】本願発明に係わる自動車エアバッグ装置における応力検知センサの概観図である。
【図4】本願発明に係わる自動車エアバッグ装置における信号処理回路図である。
【図5】本願発明に係わる自動車エアバッグ装置における応力検知センサの配置説明図である。
【図6】本願発明に係わる自動車エアバッグ装置における別の実施形態での応力検知センサの概観図である。
【図7】本願発明に係わる自動車エアバッグ装置における回路ブロック図である。
【図8】本願発明に係わる自動車エアバッグ装置に備えられたCPUにより実現される仮想的な回路ブロック図である。
【図9】各座席シートに着座する乗員重量に対する垂直抗力の変化率を示す説明図である。
【図10】車両が左前方よりオフセット衝突された時における衝撃力と衝撃角度の時系列変化を示したグラフである。
【符号の説明】
1 タイヤ
2 サスペンション構造体(ステアリングナックル)
3 応力検知センサ
4 電子制御回路(ECU)
5 エアバッグ
6 ガス発生装置
7 ガス発生部材
30 CPU
31 RAM
32 ROM
33 インターフェイス
34 路面摩擦力センサ
35 横力センサ
36 垂直抗力センサ
40 P演算手段
41 Θ演算手段
42 乗車状況識別手段
43 エアバッグ選定手段
44 ガス圧制御手段
Claims (8)
- 車両衝突時に乗員へのダメージを軽減させる複数のエアバッグを備えた自動車エアバッグ装置において、
車両衝突時の衝撃力に応じた衝撃力情報と、前記車両の各座席に搭乗する乗員重量に応じた乗員重量情報とを直接的に検知することができるセンサ部と、
前記センサ部から得られる前記衝撃力情報と前記乗員重量情報とに基づいて、衝突時の衝撃方向と各衝撃方向毎の衝撃力、及び前記各座席毎の乗員の乗車状況を求める衝突状況識別手段と、
前記衝突状況識別手段からの前記衝撃方向及び前記衝撃方向毎の衝撃力、前記乗員重量に応じて、前記乗員へのダメージの軽減に最適なエアバッグを選定し作動させる制御手段とを備えることを特徴とした、自動車エアバッグ装置。 - 前記制御手段は、
前記衝突状況認識手段によって求められた前記衝撃方向と前記乗員の乗車状況とに基づいて、前記複数のエアバッグのうち、最適なエアバッグの起動を決定するエアバッグ選定手段と、
前記衝突状況識別手段によって求められた衝撃力と前記乗員の乗車状況とに基づいて、前記選定されたエアバッグのガス爆発圧力を調整する調整手段とを備えることを特徴とした、請求項1に記載の自動車エアバッグ装置。 - 前記エアバッグのガス圧力調整手段は、
前記衝突状況識別手段から得られる前記衝突時の各衝撃方向毎の衝撃力の大小関係と、前記乗員の乗車状況とに基づいて、前記選定されたエアバッグの膨張速度を制御する構成を含むことを特徴とした、請求項2に記載の自動車用エアバッグ装置。 - 前記センサ部は、
前記車両衝突時に作用する衝撃力と、前記各座席毎の乗員の乗車に応じて作用する垂直抗力とを、車両サスペンション構造体に作用する剪断応力として検知する応力検知センサであることを特徴とする、請求項1に記載の自動車エアバッグ装置。 - 前記応力検知センサは、
前記車両サスペンション構造体の任意の位置に設けられた孔内部に埋設固定されており、
前記孔は、前記車両サスペンション構造体に存在する応力中心帯に内包する位置に形成されることを特徴とする、請求項4に記載の自動車エアバッグ装置。 - 前記応力検知センサは、
前記車両サスペンション構造体と同等の金属材質若しくはセラミック系材料、樹脂材料からなる立方体あるいは平板形状の基体の表面に歪検知部が形成されることにより構成され、
その歪検知部の貼着面が、前記孔の中心軸に対して垂直な互いに向かい合う二面であって、その中心面に対して面対称となる位置に前記歪検知部が形成されることを特徴とする、請求項4または5に記載の自動車エアバッグ装置。 - 前記応力検知センサは、
少なくとも二軸の歪検知部により構成され、かつ両者が前記車両サスペンション構造体に作用する剪断方向に対して互いに45°の傾きを為して直交する関係にあることを特徴とする、請求項4乃至6の何れかに記載の自動車エアバッグ装置。 - 前記衝突状況識別手段は、
前記センサ部からの前記衝撃力情報に基づいて、車両衝突時の衝撃方向毎の衝撃力成分に分離演算する演算手段と、
前記センサ部からの乗員重量情報に基づいて、前記車両の各座席に搭乗する乗員の有無や乗員が子供であるかを判断する判断手段とにより構成されることを特徴とした、請求項1に記載の自動車エアバッグ装置。
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-
2002
- 2002-10-17 JP JP2002340127A patent/JP2004136861A/ja active Pending
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