JP2004136315A - ダイカスト鋳造装置及びダイカスト鋳造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】鋳込みスリーブ内におけるガス量を減少させると共に溶湯とガスの接触面積を小さくすることにより、溶湯への酸化物やガスの巻き込みを防止して高品質な鋳造品を簡便且つ低設備コストで得ることができるダイカスト鋳造装置及びダイカスト鋳造方法を提供すること。
【解決手段】金型キャビティCに連通する鋳込みスリーブ5と、鋳込みスリーブ5の上部に形成された溶湯導入開口51を介して突出して設けられた溶湯供給管9と、溶湯供給管9へ所定量の溶湯Mを供給する溶湯供給手段7と、鋳込みスリーブ5内を摺動し鋳込みスリーブ5に供給された溶湯Mを金型キャビティCへ注入するプランジャー6とを備え、プランジャー6のプランジャーチップ63が鋳込みスリーブ5の溶湯導入開口51を閉塞したとき、鋳込みスリーブ5内のプランジャーチップ63前方部分が前記所定量の溶湯Mで80%以上充満されるように構成されているダイカスト鋳造装置、及びかかる装置を用いた鋳造方法である。
【選択図】図1
【解決手段】金型キャビティCに連通する鋳込みスリーブ5と、鋳込みスリーブ5の上部に形成された溶湯導入開口51を介して突出して設けられた溶湯供給管9と、溶湯供給管9へ所定量の溶湯Mを供給する溶湯供給手段7と、鋳込みスリーブ5内を摺動し鋳込みスリーブ5に供給された溶湯Mを金型キャビティCへ注入するプランジャー6とを備え、プランジャー6のプランジャーチップ63が鋳込みスリーブ5の溶湯導入開口51を閉塞したとき、鋳込みスリーブ5内のプランジャーチップ63前方部分が前記所定量の溶湯Mで80%以上充満されるように構成されているダイカスト鋳造装置、及びかかる装置を用いた鋳造方法である。
【選択図】図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、アルミニウム合金やマグネ合金等の溶湯を鋳込みスリーブに自動給湯して鋳造品を鋳造するダイカスト鋳造装置及びダイカスト鋳造方法に関し、より詳しくは、例えば、溶湯供給管を通じて鋳込みスリーブの先端部分に導入された溶湯をプランジャーで金型キャビティ内に鋳込んだ後、金型キャビティ内の溶湯を加圧して鋳造品を製造するダイカスト鋳造装置及びダイカスト鋳造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、図11に示すように、固定金型101と可動金型102によって形成される金型キャビティPに、溶融されたアルミニウム合金等の溶湯を注入し、冷却して鋳造品を鋳造するアルミニウム合金等のダイカスト鋳造装置においては、金型キャビティPに溶湯を供給する場合、ラドル104によって溶湯保持炉内に保持される溶湯を汲み取り、鋳込みスリーブ105の上部の入口穴から注湯する方法が採用されているが、鋳込みスリーブ105上部の入口穴を大きくし、また、鋳込みスリーブ自体の長さも長くせざるを得なかった。かかる鋳込みスリーブ105を用いる場合、1回分の鋳込みスリーブ105に注湯される溶湯量は、鋳込みスリーブ105及びその先端に設けられた湯溜部P1の容積の和に比較して大幅に小さく、注湯された溶湯が鋳込みスリーブ105を充満することなく、溶湯上方の大きな空気溜まりにより湯面が酸化されやすい上に、溶湯と鋳込みスリーブ105との接触面積も大きくなって冷却され、凝固層が発生しやすかった。また、プランジャー106が前進して金型キャビティPに溶湯を充填するとき、鋳込みスリーブ105内の溶湯湯面が波立ち、溶湯上方の空気溜まりから空気を巻き込んでしまうとともに、溶湯湯面の酸化膜もが混入し、加えて、発生した凝固層がプランジャー106の前進の抵抗となって実質的な鋳込み力の低下を来たし、不良鋳造製品発生の原因となっていた。
【0003】
一方、本発明者は、酸化物の混入やガスの巻き込みを防止する竪型鋳込み方法として、下側の固定金型と上側の可動金型と固定金型の下側において射出装置を設け、固定金型に鋳込鋳込みスリーブの内径よりも小径の縦方向の円形ゲートを設け、円形ゲートへの挿入部の直径が円形ゲート内径よりもわずかに小さい径のピンを可動金型に摺動自在に設けてピンを円形ゲート内を昇降させ得るように設け、可動金型の円形ゲート上部に設けた円形の溜部の入口の直径を鋳込時に円形ゲートから噴出する溶湯噴流の直径よりも大きく、溜部の天井高さを前記溶湯噴流の到達高さよりも高くした竪型鋳込装置を用いて、溶湯を金型の金型キャビティ内へ鋳込み、溶湯が金型キャビティ内を充填したらピンを突出させて押湯作用を行わせる方法を提案した(特許文献1)。この方法は、酸化物の混入やガスの巻き込みあるいは溶湯凝固時に発生するひけ巣をある程度防止しうる点では優れているといえるものの、高圧鋳込みのために大きい射出力及び型締力を必要とし、コストの高い設備が必要とされていた。
【0004】
【特許文献1】
特開平10−146663号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明はかかる実状に鑑みてなされたものであり、本発明の課題は、鋳込みスリーブ内におけるガス量を減少させると共に溶湯とガスの接触面積を小さくすることにより、溶湯への酸化物やガスの巻き込みを防止して高品質な鋳造品を簡便且つ低設備コストで得ることができるダイカスト鋳造装置及びダイカスト鋳造方法を提供することにある。
【0006】
【問題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、鋳込みスリーブの上部に形成された溶湯導入開口を介して突出して設けられた溶湯供給管から所定量の溶湯を鋳込みスリーブ内に供給し、鋳込みスリーブ内を鋳込みスリーブの後退限から前方に摺動するプランジャーを前進させて溶湯導入開口を閉塞した時、前記所定量の溶湯で鋳込みスリーブ内の前方をほぼ充満させ、かかる溶湯をさらに前進するプランジャーにより金型キャビティへ注入することにより、溶湯表面が波立たず、酸化物の混入及びガスの巻き込みを防止して高品質な鋳造品を簡便且つ低設備コストで得ることができることを見い出し、本発明を完成するに至った。
さらに、本発明者は、鋳込みスリーブに連通する鋳込みスリーブ内径より大きい内径の湯溜部を設けた場合に、湯溜部側壁に発生した凝固層をプランジャーが加圧しない結果、プランジャー前進時の抵抗が小さくなり、かつ小さい加圧力で溶湯を充分に加圧することが可能となることを見い出し、また、溶湯が充満した金型キャビティ内を加圧手段で加圧することにより、凝固時におけるひけ巣の発生が防止できることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち本発明は、金型キャビティに連通する鋳込みスリーブと、該鋳込みスリーブの上部に形成された溶湯導入開口を介して突出して設けられた溶湯供給管と、該溶湯供給管へ所定量の溶湯を供給する溶湯供給手段と、前記鋳込みスリーブ内を摺動し鋳込みスリーブに供給された溶湯を前記金型キャビティへ注入するプランジャーとを備えたダイカスト鋳造装置であって、前記プランジャーのプランジャーチップが前記鋳込みスリーブの溶湯導入開口を閉塞したとき、鋳込みスリーブ内のプランジャーチップ前方部分が前記所定量の溶湯で80%以上充満されるように構成されていることを特徴とするダイカスト鋳造装置(請求項1)や、金型キャビティが、その入口に鋳込みスリーブ内径より大きい内径の湯溜部を備えていることを特徴とする請求項1記載のダイカスト鋳造装置(請求項2)や、湯溜部が、鋳込みスリーブ端部から漸次拡大するテーパー形状に形成されていることを特徴とする請求項2記載のダイカスト鋳造装置(請求項3)や、金型キャビティが、金型キャビティ内に注入された溶湯を加圧する加圧手段用溶湯溜を備えていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載のダイカスト鋳造装置(請求項4)や、金型キャビティ内の溶湯を加圧する手段が、加圧ピンであることを特徴とする請求項4記載のダイカスト鋳造装置(請求項5)や、溶湯導入開口が、鋳込みスリーブの先端近傍に設けられていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか記載のダイカスト鋳造装置(請求項6)や、溶湯導入開口が、固定盤により固定された固定金型側に設けられていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか記載のダイカスト鋳造装置(請求項7)や、鋳込みスリーブが、ほぼ水平に固定金型に固定されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか記載のダイカスト鋳造装置(請求項8)や、金型キャビティが、ガス排出通路を備え、該ガス排出通路の近傍に該ガス排出通路に連通した溶湯凝固ゾーン用空隙が設けられていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか記載のダイカスト鋳造装置(請求項9)や、溶湯供給管が、その入口に溶湯受入漏斗を備えると共に、金型スリーブに形成された溶湯導入開口から斜め上方に向かって傾斜して設けられていることを特徴とする請求項1〜9のいずれか記載のダイカスト鋳造装置(請求項10)に関する。
【0008】
また本発明は、金型キャビティに連通する鋳込みスリーブと、該鋳込みスリーブの上部に形成された溶湯導入開口を介して突出して設けられた溶湯供給管と、該溶湯供給管へ所定量の溶湯を供給する溶湯供給手段と、前記鋳込みスリーブ内を摺動し鋳込みスリーブに供給された溶湯を前記金型キャビティへ注入するプランジャーとを備えたダイカスト鋳造装置を用いるダイカスト鋳造方法であって、溶湯供給手段により溶湯供給管を通じて1回につき所定量の溶湯を鋳込みスリーブに導入し、次いで、鋳込みスリーブ内を摺動するプランジャーを前進させて、該プランジャーのプランジャーチップが鋳込みスリーブ内の溶湯導入開口を閉塞したとき、鋳込みスリーブ内のプランジャーチップ前方部分を前記所定量の溶湯で80%以上充満し、さらに、プランジャーを前進させて、溶湯を金型キャビティへ注入・加圧して、ガスの巻込みの少ない鋳造品を鋳造することを特徴とするダイカスト鋳造方法(請求項11)や、溶湯を金型キャビティへ注入した後、金型キャビティ内の溶湯を加圧ピンで加圧して、凝固時にひけ巣の発生が少なく鋳造品を鋳造することを特徴とする請求項11記載のダイカスト鋳造方法(請求項12)や、鋳造品が、薄肉で大型のアルミニウム合金鋳造品又はマグネシウム合金鋳造品であることを特徴とする請求項11又は12記載のダイカスト鋳造方法(請求項13)に関する。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明のダイカスト鋳造装置としては、金型キャビティに連通する鋳込みスリーブと、該鋳込みスリーブの上部に形成された溶湯導入開口を介して突出して設けられた溶湯供給管と、該溶湯供給管へ所定量の溶湯を供給する溶湯供給手段と、前記鋳込みスリーブ内を摺動し鋳込みスリーブに供給された溶湯を前記金型キャビティへ注入するプランジャーとを備え、前記プランジャーのプランジャーチップが前記鋳込みスリーブの溶湯導入開口を閉塞したとき、鋳込みスリーブ内のプランジャーチップ前方部分が前記所定量の溶湯で80%以上充満されるように構成されている鋳造装置であれば特に制限されるものではなく、本発明のダイカスト鋳造装置によれば、溶湯供給手段から所定量の溶湯を鋳込みスリーブ内に供給し、プランジャーのプランジャーチップが鋳込みスリーブ内の溶湯導入開口を閉塞したとき、鋳込みスリーブ内のプランジャーチップの前方部分がほぼ溶湯で充満されるように構成されているので、酸化物やガスの巻き込みの少ない製品特性を有する鋳造品を好適に鋳造することができる。かかる鋳造品としては特に限定されるものではなく、良品を製造することが困難なアルミニウム合金鋳造品、マグネシウム合金鋳造品等の軽金属合金鋳造品等であっても好適に製造することができ、良品を製造することがより困難な凝固収縮が大きいアルミニウム合金鋳造品であっても好適に製造することができる。
【0010】
金型キャビティに好ましくは湯溜部を介して連通する鋳込みスリーブは、断熱性の高いセラミック等からなることが、溶湯の温度低下を抑制し、凝固層の発生を抑制できる点から好ましい。また、鋳込みスリーブの上部に形成される溶湯導入開口は、金型キャビティに近い方の鋳込みスリーブの先端近傍や、固定盤により固定された固定金型側に設けることが好ましく、これにより、プランジャーのプランジャーチップが鋳込みスリーブ内の溶湯導入開口を閉塞したときの鋳込みスリーブ内のプランジャーチップ前方部分の内容積を調整することができ、1回の鋳造に必要な注湯量で、鋳込みスリーブ内のプランジャーチップ前方を溶湯でほぼ充満(80%以上)することができる。なお、溶湯の圧力上昇は、溶湯の金型キャビティ充満完了に近い点から起こるので、その時プランジャー先端は金型キャビティ入口の湯溜部にあり、セラミック鋳込みスリーブに内圧がかかり破損することはない。
【0011】
本発明においては、上記のようにプランジャーのプランジャーチップが前記鋳込みスリーブの溶湯導入開口を閉塞したとき、鋳込みスリーブ内のプランジャーチップ前方部分が、一回につき供給される所定量の溶湯で80vol%以上充満されることが必要であるが、85%以上充満されることがより好ましく、90%以上充満されることがさらに好ましく、95%以上充満されることが特に好ましい。これにより、鋳込みスリーブ内におけるガス量を少なくすると共に溶湯とガスの接触面積を小さくして酸化物やガスの巻き込みを防止することができる。具体的に、例えば、湯溜部を鋳込みスリーブの前方に設けて、鋳込みスリーブ内のプランジャーチップが溶湯導入開口を閉塞したときの鋳込みスリーブ内のプランジャーチップ前方の体積と湯溜部の鋳込みスリーブの最高位置水平面以下の内容積との総和が1回の鋳造に必要な注湯量に近くなるように構成して、鋳込みスリーブ内のプランジャーチップ前方部分を溶湯で80%以上充満とすることが好ましい。なお、鋳込みスリーブ内のプランジャーチップ前方部分が100%に充満されると共に溶湯供給管内に溶湯が存在する状態であってもよく、その場合には、プランジャーチップを前進させるときに、金型キャビティからの真空吸引排気を活用することにより、溶湯供給管内に溶湯を残存させることなく1回に供給されたすべての溶湯を金型キャビティに移動させることができる。
【0012】
また、前記湯溜部は、鋳込みスリーブ内径より大きい内径の湯溜部であることが好ましく、鋳込みスリーブ端部から漸次拡大するテーパー形状に形成されている湯溜部であることが、湯溜部側壁に発生した凝固層をプランジャーが加圧しないので、プランジャー前進時の抵抗が小さくなり、かつ小さい加圧力で溶湯を充分に加圧することが可能になるので好ましい。かかる湯溜部は、サイドゲートを介して金型キャビティと連通させることができる。また、プランジャーチップを前進させて溶湯を湯溜部から金型キャビティ製品部に注入する際、プランジャー進行方向から45〜90°、好ましくは75〜90°方向を変えて金型キャビティ内に溶湯を導入することができるよう構成することにより、プランジャー前面が湯溜部内の湯面を直接押すことなく、溶湯湯面の波立ちを抑え、ガスの巻き込みを最小限に抑えることができる。
【0013】
また、前記溶湯供給管は、鋳込みスリーブの上部に形成された溶湯導入開口を介して突出して設けられていれば特に制限されるものではなく、その形状も特に制限されず、直線状であっても曲線状であってもよく、その入り口が鋳込みスリーブより上方に設けられて、他の手段を用いることなく重力により鋳込みスリーブ内に溶湯を導入できるよう構成することが簡便に原料を供給することができることから好ましい。さらに、給湯ラドル等からの材料の供給を容易にすべく、その入り口に溶湯受入漏斗を設け、鋳込みスリーブに形成された溶湯導入開口から斜め上方に向かって傾斜して設けられていることがより好ましい。ここで、溶湯導入開口を形成する鋳込みスリーブの上部とは、鋳込みスリーブ内のプランジャーチップ前方部分を溶湯で80%以上充満できる範囲の上部をいう。なお、溶湯供給管は、アルミ溶湯に濡れない断熱性の高いセラミック等からなることが好ましく、必要に応じて外部から加熱することが好ましい。
この溶湯供給管に原料を供給する前記溶湯供給手段としては特に限定されるものではなく、従来用いられている給湯ラドルでよいが、溶湯表面の酸化膜の混入を防止できる装置の活用が望ましい。
【0014】
前記鋳込みスリーブに導入された溶湯を金型キャビティへ注入するためのプランジャーとしては、鋳込みスリーブ内を気密下に摺動しうるプランジャーチップ(プランジャーヘッド)と、前記プランジャーチップを進退させることができるプランジャーロッドを有するものを例示することができ、プランジャーロッドの往復動の駆動源としては、油圧シリンダーやサーボモーター等を挙げることができる。プランジャーチップは、その後退限が鋳込みスリーブに形成された溶湯導入開口の後方側近傍であるように構成されることが速やかに注湯しうることから好ましく、また、鋳込みスリーブの前方に湯溜部が設けられている場合には、鋳込み完了時プランジャーチップが湯溜部内に押し込まれるので、このとき、プランジャーチップの後端が鋳込みスリーブ内に残るようにしておくことが好ましい。
【0015】
前記金型キャビティとしては特に制限されるものではないが、薄肉で大型の鋳造品を鋳造することができる金型キャビティが好ましい。また、金型キャビティは、金型キャビティ内に注入された溶湯を加圧する加圧手段用溶湯溜を有していることが好ましい。加圧手段としては、閉塞された金型キャビティ内に充填されている溶湯を加圧することにより凝固時にひけ巣の発生を抑制しうる手段であれば特に制限されるものではなく、例えば、金型キャビティの金型キャビティ製品部を形成する可動金型に摺動自在に配設された加圧ピンを例示することができる。金型キャビティ内の溶湯の凝固時に、かかる加圧ピンを金型キャビティ内側方向に前進させて溶湯を加圧して凝固収縮体積を補填し、ひけ巣の発生を抑制することができる。即ち、凝固時に約7%収縮するアルミニウムを含むアルミニウム合金等の凝固収縮が大きい軽金属合金からなる鋳造品、特に薄肉で大型のアルミニウム合金鋳造品を鋳造する場合であっても、ひけ巣の発生を抑制して高品質の鋳造品を鋳造することができる。なお、加圧ピンは、その進出速度を金型キャビティ製品部内の溶湯の凝固収縮速度に適応した速度になるようにプログラム制御を行う等、加圧速度を調節することにより、小さい型締め力のプレス装置でバリ吹きを防止しながらひけ巣の発生を防止することができる。この加圧ピンは複数設けることもでき、各加圧ピンの摺動部等にすべてシールパッキングを設置し金型外部からの空気の漏入を防止することが好ましい。
【0016】
また、金型キャビティは、溶湯充填時に金型キャビティ内に存在するガスを排出することができるガス排出通路と、該ガス排出通路に連通して近傍に設けられた溶湯凝固ゾーン用空隙を有するものが好ましく、ガス排出通路としては、可動金型中を貫通しているガス排出孔(真空吸引通路)と、ガス排出空隙又はガス排出溝とを有して構成されるものが好ましい。このガス排出通路からの真空吸引ガス排出は、内部に残るガスを排出するだけで真空負圧は低く、金型合わせ面に簡単なシールなどの工夫を行い残留バリの除去・掃除などで挟み込み防止の管理に注意することにより外気が流入することを防止することができる。また、型締完了後(次の鋳込前)にこのガス排出通路を利用してN2ガスなどの不活性ガスを金型キャビティ内及び鋳込みスリーブ内に送入することにより、溶湯の酸化を防止することができる。
【0017】
前記ガス排出通路のガス排出空隙又はガス排出溝としては、先湯が流入しない大きさや構造のものが好ましく、例えば、ガス排出空隙としては、加圧ピンの外周面と可動金型内周面との間に加圧ピンと同心に形成された、加圧ピンの外周面と可動金型内周面との間隔が0.2〜0.5mm程度のガス排出空隙を具体的に挙げることができ、前記ガス排出溝としては加圧ピンの外周面に軸線状に伸びたガス排出溝を具体的に挙げることができる。これらのガス排出通路は、ガスの残存しやすい位置、例えば、金型キャビティの上部に設置することが好ましい。また、前記溶湯凝固ゾーン用空隙としては、ガス排出空隙又はガス排出溝を介してガス排出孔に連通している溶湯凝固ゾーン用空隙を例示することができ、かかる溶湯凝固ゾーン用空隙としては、加圧ピンの外周面と可動金型内周面との間に加圧ピンと同心に形成された、加圧ピンの外周面と可動金型内周面との間隔が0.5〜2.5mm程度であって、10〜40mm程度の深さ(長さ)を有する溶湯凝固ゾーンとなる空隙を具体的に例示することができる。溶湯凝固ゾーン用空隙を溶湯の温度や鋳込み速度に適合した寸法に設計製作しておくことにより、溶湯が充填された時に先湯がこの空隙部分で冷却凝固してガス排出空隙やガス排出溝に侵入することを防止することができる。
【0018】
【実施例】
本発明を適用した実施例を以下図面を参照して説明するが、本発明の技術的範囲はこれらに限定されるものではない。図1は本発明の一実施形態に係るダイカスト鋳造装置を示す概略断面図、図2は図1に示す本発明の一実施形態に係るダイカスト鋳造装置における金型キャビティの部分拡大による加圧ピンの動作説明図であり、図3〜10は図1に示す本発明の一実施形態に係るダイカスト鋳造装置の作動状態を示す説明図である。
【0019】
図1〜図10に示される本発明の一実施形態に係るダイカスト鋳造装置は、固定盤に固定される合金鋼製の固定金型1と、固定金型1に圧着される可動金型2と、固定金型1と可動金型2との間に形成される金型キャビティCに溶湯を注入するための鋳込みスリーブ5と、鋳込みスリーブ5内を往復動するプランジャー6と、鋳込みスリーブ5に溶湯を供給するためのその入口に溶湯受入漏斗8を備えた溶湯供給管9と、1回につき所定量の溶湯Mを給湯する給湯ラドル7と、金型キャビティC内の溶湯を加圧する加圧ピン11とを有し、金型キャビティCに溶湯を自動的に鋳込み、冷却して鋳造品を製造するものである。なお、図示されていないが、ダイカスト装置には溶湯冷却後、金型キャビティCから鋳造品10を取り出すための型開きを行う型締装置等が設けられている。
【0020】
鋳込みスリーブ5は、ダイカスト鋳造装置の金型キャビティCに連通されるように固定盤3を貫通し、略水平に固定金型1に固定された、溶湯Mを金型キャビティCへ給湯する円管であって、金型キャビティCよりの先端近傍付近の管壁上部には、鋳込みスリーブ5に溶湯を供給する溶湯供給管9を接続するための溶湯導入開口51が形成され、かかる溶湯導入開口51を介して接続部品91により溶湯供給管9が接続されている。また、鋳込みスリーブ5の前方には、鋳込みスリーブ端部から漸次拡大するテーパー形状の湯溜部C1が設けられ、湯溜部C1はサイドゲートC2を介して金型キャビティCの製品部に連通している。このとき、鋳込みスリーブ5の内径を従来のものより小径とすることにより、鋳込みスリーブ5内における溶湯の充満度を高くし、ガスの体積を小さくしてガスの巻き込みを排除すると共に、鋳込みスリーブ5の内壁にその周囲を接して気密下の摺動するプランジャーの作用面積を小さくして同一の鋳込み圧力を小さい駆動力で得ることを可能としている。すなわち、鋳込みスリーブ5内のプランジャーチップ63前方の体積と、湯溜部C1の鋳込みスリーブ5の最高位置水平面以下との内容積の総和を、1回の鋳造に必要な注湯量により近づけることを可能としてガスの巻き込み等を防止している。
【0021】
鋳込みスリーブ5へ溶湯Mを注湯する溶湯供給管9は、その入口に溶湯受入漏斗8を備えると共に、金型スリーブに形成された溶湯導入開口から斜め上方に向かって傾斜して設けられており、かかる溶湯受入漏斗8から給湯ラドル7によって1回分の溶湯Mが供給される。この場合、給湯ラドル7の湯面に発生した酸化膜が混入供給される恐れがあるが、特殊な網などを用いることによりその多くを除去することができる。
また、鋳込みスリーブ5内を往復動するプランジャー6は、鋳込みスリーブ5に供給された溶湯Mを金型キャビティCへ押し出すものであり、油圧シリンダー61によって駆動される小径のプランジャーロッド62と、プランジャーロッド62の先端に設けられ鋳込みスリーブ5内を摺動する鋳込みスリーブ5の内径と略同一径であり、その先端面(前面)が溶湯Mを押し出す作用面となるプランジャーチップ63とを有する。プランジャーチップ63の軸方向の長さは、進出限において後端が鋳込みスリーブ5内に残り、一方、後退限に配置されるときには、鋳込みスリーブ5の管壁上部に設けられる溶湯導入開口51を閉塞せず、その先端が溶湯導入開口51の直前(後方近傍)に位置するような長さであって、溶湯供給管9から溶湯Mが鋳込みスリーブ5へ導入されている間は溶湯導入開口51の全面を開放させ、鋳込みスリーブ5への溶湯Mの供給が終了して前方へ移動することにより、溶湯導入開口51を閉塞しながら、鋳込みスリーブ5へ供給された溶湯Mを前方へ押し出す。
【0022】
また、金型キャビティCの製品部の一端には、加圧ピン用油圧シリンダー12の駆動により加圧ピン用湯溜14に進出して金型キャビティC内の溶湯を加圧する加圧ピン11が設けられている。また、図2(a)〜(d)に示すように、加圧ピン11の周部には、ガス排出孔(真空吸引通路)13に連通したガス排出空隙131及び溶湯凝固ゾーン空隙141が設けられている。図2(a)に示すように、鋳込みスリーブ5への注湯前及び注湯時においては、ガス排出孔13からN2ガスなどの不活性ガスを金型キャビティC及び鋳込みスリーブ5内に送入することにより溶湯の酸化を防止することができる。なお、この導入される不活性ガスはガス排気口92から排出され、溶湯の流れを妨害しないようにしている(図1参照)。また、図2(b)に示すように、注湯後には真空吸引通路13からガス及び溶湯を吸引し、図2(c)に示すように溶湯を溶湯凝固ゾーン空隙まで導く。その後、溶湯の凝固と共に、図2(d)に示すように、加圧ピンを押し出すことにより加圧してひけ巣の発生を防止する。
【0023】
このような構成のダイカスト鋳造装置を用いたダイカスト鋳造法について以下説明する。
図3に示すように、金型キャビティCや鋳込みスリーブ5に溶湯が残存せず、装置内部がN2ガス等の不活性ガスで置換されている状態から、給湯ラドル7によって鋳造1回分に必要な注湯量の溶湯を溶湯受入漏斗8から供給し、溶湯供給管9を通して鋳込みスリーブ5内へ導入する。このとき、図4に示すように、鋳込みスリーブ5及び湯溜部C1に入った溶湯の湯面は、鋳込みスリーブ5の最高位置水平面よりわずか低く、鋳込みスリーブ5内のプランジャーチップ63前方部分が溶湯でほぼ充満(80%以上)された状態となる。従って、鋳込みスリーブ5内のガスの体積は小さく、かつガスの大部分はN2ガスと置換されていて、O2ガスの残存量は少なく、溶湯との接触面積も小さいので、溶湯の表面酸化を防止することができる。
【0024】
溶湯の導入が完了すると、図5に示すように、油圧バルブを開いて油圧シリンダー61を作動させることにより、プランジャーロッド62を介してプランジャーチップ63を前進させて、溶湯導入開口51を閉塞する。図6に示すように、プランジャー6がさらに前進すると、湯溜部C1内の溶湯面はそのテーパー形状に沿って上昇し、プランジャーチップ63前面が湯面を直接押すことなく、波立つことなく残存ガスをサイドゲートC2を通じて金型キャビティC内に導入するので溶湯へのガスの巻き込みを抑えることができる。また、仮に金型キャビティCの湯溜部C1の内壁に凝固層が発生した場合でも、プランジャーチップ6によって金型キャビティC内に押し出されることはなく、金型キャビティCへの凝固層の混入を防止すると共に、凝固層による抵抗も少なくプランジャーの加圧力も有効に活用される。図7に示すように、プランジャーチップ63がさらに前進することにより金型キャビティCに溶湯が充填される。
【0025】
金型キャビティへの溶湯の充填が完了し溶湯の冷却が始まると、溶湯の凝固収縮が生起するため、プランジャー66での加圧下、図8及び図2(c),(d)に示すように、加圧ピン用油圧シリンダー12により加圧ピン11を作動させる。プランジャー6による加圧のみでは金型キャビティCの端部までの圧力伝達が難しいが、加圧ピン11を作動させて加圧することで、全面的に凝固収縮によるひけ巣のない緻密な組織の鋳造品を得ることができる。金型キャビティCの溶湯の冷却凝固が完了後、図9及び図10に示すように、型開きを行い可動金型で持ち出された製品素材を各加圧ピン及び押し出しピンによって押し出し取り出すことができる。
【0026】
【発明の効果】
本発明のダイカスト鋳造装置及びダイカスト鋳造方法によれば、鋳込みスリーブ内におけるガス量を減少させると共に溶湯とガスの接触面積を小さくすることにより、溶湯への酸化物やガスの巻き込みを防止して高品質な鋳造品を簡便且つ低設備コストで得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係るダイカスト鋳造装置の概略縦断面図である。
【図2】図1に示す本発明の一実施形態に係るダイカスト鋳造装置における金型キャビティの部分拡大による加圧ピンの動作説明図である。
【図3】図1に示す本発明の一実施形態に係るダイカスト鋳造装置の作動状態を示す説明図で、鋳込み前の状態を示す。
【図4】図1に示す本発明の一実施形態に係るダイカスト鋳造装置の作動状態を示す説明図で、鋳込みスリーブ内へ溶湯を供給した状態を示す。
【図5】図1に示す本発明の一実施形態に係るダイカスト鋳造装置の作動状態を示す説明図で、プランジャーチップで溶湯導入開口を閉塞した状態を示す。
【図6】図1に示す本発明の一実施形態に係るダイカスト鋳造装置の作動状態を示す説明図で、図5に示す状態からさらにプランジャーを前進させた状態を示す。
【図7】図1に示す本発明の一実施形態に係るダイカスト鋳造装置の作動状態を示す説明図で、溶湯を金型キャビティ内へ充填した状態を示す。
【図8】図1に示す本発明の一実施形態に係るダイカスト鋳造装置の作動状態を示す説明図で、金型キャビティ内の溶湯が加圧された状態を示す。
【図9】図1に示す本発明の一実施形態に係るダイカスト鋳造装置の作動状態を示す説明図で、溶湯の充填冷却が完了し型が開いた状態を示す。
【図10】図1に示す本発明の一実施形態に係るダイカスト鋳造装置の作動状態を示す説明図で、製品を取り出す状態を示す。
【図11】(A)は従来の一般的なダイカスト鋳造装置の概略縦断面図であり、(B)は(A)におけるB−B’断面図である。
【符号の説明】
1……固定金型
2……可動金型
3……固定盤
5……鋳込みスリーブ
6……プランジャー
7……給湯ラドル
8……溶湯受入漏斗
9……溶湯供給管
10……鋳造品
11……加圧ピン
12……加圧ピン用油圧シリンダー
13……ガス排出孔
14……加圧ピン用湯溜
51……溶湯導入開口
61……プランジャー用油圧シリンダー
62……プランジャーロッド
63……プランジャーチップ
66……プランジャー
91……接続部品
92……ガス排気口
C……金型キャビティ
C1……湯溜部
C2……サイドゲート
M……溶湯
【発明の属する技術分野】
本発明は、アルミニウム合金やマグネ合金等の溶湯を鋳込みスリーブに自動給湯して鋳造品を鋳造するダイカスト鋳造装置及びダイカスト鋳造方法に関し、より詳しくは、例えば、溶湯供給管を通じて鋳込みスリーブの先端部分に導入された溶湯をプランジャーで金型キャビティ内に鋳込んだ後、金型キャビティ内の溶湯を加圧して鋳造品を製造するダイカスト鋳造装置及びダイカスト鋳造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、図11に示すように、固定金型101と可動金型102によって形成される金型キャビティPに、溶融されたアルミニウム合金等の溶湯を注入し、冷却して鋳造品を鋳造するアルミニウム合金等のダイカスト鋳造装置においては、金型キャビティPに溶湯を供給する場合、ラドル104によって溶湯保持炉内に保持される溶湯を汲み取り、鋳込みスリーブ105の上部の入口穴から注湯する方法が採用されているが、鋳込みスリーブ105上部の入口穴を大きくし、また、鋳込みスリーブ自体の長さも長くせざるを得なかった。かかる鋳込みスリーブ105を用いる場合、1回分の鋳込みスリーブ105に注湯される溶湯量は、鋳込みスリーブ105及びその先端に設けられた湯溜部P1の容積の和に比較して大幅に小さく、注湯された溶湯が鋳込みスリーブ105を充満することなく、溶湯上方の大きな空気溜まりにより湯面が酸化されやすい上に、溶湯と鋳込みスリーブ105との接触面積も大きくなって冷却され、凝固層が発生しやすかった。また、プランジャー106が前進して金型キャビティPに溶湯を充填するとき、鋳込みスリーブ105内の溶湯湯面が波立ち、溶湯上方の空気溜まりから空気を巻き込んでしまうとともに、溶湯湯面の酸化膜もが混入し、加えて、発生した凝固層がプランジャー106の前進の抵抗となって実質的な鋳込み力の低下を来たし、不良鋳造製品発生の原因となっていた。
【0003】
一方、本発明者は、酸化物の混入やガスの巻き込みを防止する竪型鋳込み方法として、下側の固定金型と上側の可動金型と固定金型の下側において射出装置を設け、固定金型に鋳込鋳込みスリーブの内径よりも小径の縦方向の円形ゲートを設け、円形ゲートへの挿入部の直径が円形ゲート内径よりもわずかに小さい径のピンを可動金型に摺動自在に設けてピンを円形ゲート内を昇降させ得るように設け、可動金型の円形ゲート上部に設けた円形の溜部の入口の直径を鋳込時に円形ゲートから噴出する溶湯噴流の直径よりも大きく、溜部の天井高さを前記溶湯噴流の到達高さよりも高くした竪型鋳込装置を用いて、溶湯を金型の金型キャビティ内へ鋳込み、溶湯が金型キャビティ内を充填したらピンを突出させて押湯作用を行わせる方法を提案した(特許文献1)。この方法は、酸化物の混入やガスの巻き込みあるいは溶湯凝固時に発生するひけ巣をある程度防止しうる点では優れているといえるものの、高圧鋳込みのために大きい射出力及び型締力を必要とし、コストの高い設備が必要とされていた。
【0004】
【特許文献1】
特開平10−146663号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明はかかる実状に鑑みてなされたものであり、本発明の課題は、鋳込みスリーブ内におけるガス量を減少させると共に溶湯とガスの接触面積を小さくすることにより、溶湯への酸化物やガスの巻き込みを防止して高品質な鋳造品を簡便且つ低設備コストで得ることができるダイカスト鋳造装置及びダイカスト鋳造方法を提供することにある。
【0006】
【問題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、鋳込みスリーブの上部に形成された溶湯導入開口を介して突出して設けられた溶湯供給管から所定量の溶湯を鋳込みスリーブ内に供給し、鋳込みスリーブ内を鋳込みスリーブの後退限から前方に摺動するプランジャーを前進させて溶湯導入開口を閉塞した時、前記所定量の溶湯で鋳込みスリーブ内の前方をほぼ充満させ、かかる溶湯をさらに前進するプランジャーにより金型キャビティへ注入することにより、溶湯表面が波立たず、酸化物の混入及びガスの巻き込みを防止して高品質な鋳造品を簡便且つ低設備コストで得ることができることを見い出し、本発明を完成するに至った。
さらに、本発明者は、鋳込みスリーブに連通する鋳込みスリーブ内径より大きい内径の湯溜部を設けた場合に、湯溜部側壁に発生した凝固層をプランジャーが加圧しない結果、プランジャー前進時の抵抗が小さくなり、かつ小さい加圧力で溶湯を充分に加圧することが可能となることを見い出し、また、溶湯が充満した金型キャビティ内を加圧手段で加圧することにより、凝固時におけるひけ巣の発生が防止できることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち本発明は、金型キャビティに連通する鋳込みスリーブと、該鋳込みスリーブの上部に形成された溶湯導入開口を介して突出して設けられた溶湯供給管と、該溶湯供給管へ所定量の溶湯を供給する溶湯供給手段と、前記鋳込みスリーブ内を摺動し鋳込みスリーブに供給された溶湯を前記金型キャビティへ注入するプランジャーとを備えたダイカスト鋳造装置であって、前記プランジャーのプランジャーチップが前記鋳込みスリーブの溶湯導入開口を閉塞したとき、鋳込みスリーブ内のプランジャーチップ前方部分が前記所定量の溶湯で80%以上充満されるように構成されていることを特徴とするダイカスト鋳造装置(請求項1)や、金型キャビティが、その入口に鋳込みスリーブ内径より大きい内径の湯溜部を備えていることを特徴とする請求項1記載のダイカスト鋳造装置(請求項2)や、湯溜部が、鋳込みスリーブ端部から漸次拡大するテーパー形状に形成されていることを特徴とする請求項2記載のダイカスト鋳造装置(請求項3)や、金型キャビティが、金型キャビティ内に注入された溶湯を加圧する加圧手段用溶湯溜を備えていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載のダイカスト鋳造装置(請求項4)や、金型キャビティ内の溶湯を加圧する手段が、加圧ピンであることを特徴とする請求項4記載のダイカスト鋳造装置(請求項5)や、溶湯導入開口が、鋳込みスリーブの先端近傍に設けられていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか記載のダイカスト鋳造装置(請求項6)や、溶湯導入開口が、固定盤により固定された固定金型側に設けられていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか記載のダイカスト鋳造装置(請求項7)や、鋳込みスリーブが、ほぼ水平に固定金型に固定されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか記載のダイカスト鋳造装置(請求項8)や、金型キャビティが、ガス排出通路を備え、該ガス排出通路の近傍に該ガス排出通路に連通した溶湯凝固ゾーン用空隙が設けられていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか記載のダイカスト鋳造装置(請求項9)や、溶湯供給管が、その入口に溶湯受入漏斗を備えると共に、金型スリーブに形成された溶湯導入開口から斜め上方に向かって傾斜して設けられていることを特徴とする請求項1〜9のいずれか記載のダイカスト鋳造装置(請求項10)に関する。
【0008】
また本発明は、金型キャビティに連通する鋳込みスリーブと、該鋳込みスリーブの上部に形成された溶湯導入開口を介して突出して設けられた溶湯供給管と、該溶湯供給管へ所定量の溶湯を供給する溶湯供給手段と、前記鋳込みスリーブ内を摺動し鋳込みスリーブに供給された溶湯を前記金型キャビティへ注入するプランジャーとを備えたダイカスト鋳造装置を用いるダイカスト鋳造方法であって、溶湯供給手段により溶湯供給管を通じて1回につき所定量の溶湯を鋳込みスリーブに導入し、次いで、鋳込みスリーブ内を摺動するプランジャーを前進させて、該プランジャーのプランジャーチップが鋳込みスリーブ内の溶湯導入開口を閉塞したとき、鋳込みスリーブ内のプランジャーチップ前方部分を前記所定量の溶湯で80%以上充満し、さらに、プランジャーを前進させて、溶湯を金型キャビティへ注入・加圧して、ガスの巻込みの少ない鋳造品を鋳造することを特徴とするダイカスト鋳造方法(請求項11)や、溶湯を金型キャビティへ注入した後、金型キャビティ内の溶湯を加圧ピンで加圧して、凝固時にひけ巣の発生が少なく鋳造品を鋳造することを特徴とする請求項11記載のダイカスト鋳造方法(請求項12)や、鋳造品が、薄肉で大型のアルミニウム合金鋳造品又はマグネシウム合金鋳造品であることを特徴とする請求項11又は12記載のダイカスト鋳造方法(請求項13)に関する。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明のダイカスト鋳造装置としては、金型キャビティに連通する鋳込みスリーブと、該鋳込みスリーブの上部に形成された溶湯導入開口を介して突出して設けられた溶湯供給管と、該溶湯供給管へ所定量の溶湯を供給する溶湯供給手段と、前記鋳込みスリーブ内を摺動し鋳込みスリーブに供給された溶湯を前記金型キャビティへ注入するプランジャーとを備え、前記プランジャーのプランジャーチップが前記鋳込みスリーブの溶湯導入開口を閉塞したとき、鋳込みスリーブ内のプランジャーチップ前方部分が前記所定量の溶湯で80%以上充満されるように構成されている鋳造装置であれば特に制限されるものではなく、本発明のダイカスト鋳造装置によれば、溶湯供給手段から所定量の溶湯を鋳込みスリーブ内に供給し、プランジャーのプランジャーチップが鋳込みスリーブ内の溶湯導入開口を閉塞したとき、鋳込みスリーブ内のプランジャーチップの前方部分がほぼ溶湯で充満されるように構成されているので、酸化物やガスの巻き込みの少ない製品特性を有する鋳造品を好適に鋳造することができる。かかる鋳造品としては特に限定されるものではなく、良品を製造することが困難なアルミニウム合金鋳造品、マグネシウム合金鋳造品等の軽金属合金鋳造品等であっても好適に製造することができ、良品を製造することがより困難な凝固収縮が大きいアルミニウム合金鋳造品であっても好適に製造することができる。
【0010】
金型キャビティに好ましくは湯溜部を介して連通する鋳込みスリーブは、断熱性の高いセラミック等からなることが、溶湯の温度低下を抑制し、凝固層の発生を抑制できる点から好ましい。また、鋳込みスリーブの上部に形成される溶湯導入開口は、金型キャビティに近い方の鋳込みスリーブの先端近傍や、固定盤により固定された固定金型側に設けることが好ましく、これにより、プランジャーのプランジャーチップが鋳込みスリーブ内の溶湯導入開口を閉塞したときの鋳込みスリーブ内のプランジャーチップ前方部分の内容積を調整することができ、1回の鋳造に必要な注湯量で、鋳込みスリーブ内のプランジャーチップ前方を溶湯でほぼ充満(80%以上)することができる。なお、溶湯の圧力上昇は、溶湯の金型キャビティ充満完了に近い点から起こるので、その時プランジャー先端は金型キャビティ入口の湯溜部にあり、セラミック鋳込みスリーブに内圧がかかり破損することはない。
【0011】
本発明においては、上記のようにプランジャーのプランジャーチップが前記鋳込みスリーブの溶湯導入開口を閉塞したとき、鋳込みスリーブ内のプランジャーチップ前方部分が、一回につき供給される所定量の溶湯で80vol%以上充満されることが必要であるが、85%以上充満されることがより好ましく、90%以上充満されることがさらに好ましく、95%以上充満されることが特に好ましい。これにより、鋳込みスリーブ内におけるガス量を少なくすると共に溶湯とガスの接触面積を小さくして酸化物やガスの巻き込みを防止することができる。具体的に、例えば、湯溜部を鋳込みスリーブの前方に設けて、鋳込みスリーブ内のプランジャーチップが溶湯導入開口を閉塞したときの鋳込みスリーブ内のプランジャーチップ前方の体積と湯溜部の鋳込みスリーブの最高位置水平面以下の内容積との総和が1回の鋳造に必要な注湯量に近くなるように構成して、鋳込みスリーブ内のプランジャーチップ前方部分を溶湯で80%以上充満とすることが好ましい。なお、鋳込みスリーブ内のプランジャーチップ前方部分が100%に充満されると共に溶湯供給管内に溶湯が存在する状態であってもよく、その場合には、プランジャーチップを前進させるときに、金型キャビティからの真空吸引排気を活用することにより、溶湯供給管内に溶湯を残存させることなく1回に供給されたすべての溶湯を金型キャビティに移動させることができる。
【0012】
また、前記湯溜部は、鋳込みスリーブ内径より大きい内径の湯溜部であることが好ましく、鋳込みスリーブ端部から漸次拡大するテーパー形状に形成されている湯溜部であることが、湯溜部側壁に発生した凝固層をプランジャーが加圧しないので、プランジャー前進時の抵抗が小さくなり、かつ小さい加圧力で溶湯を充分に加圧することが可能になるので好ましい。かかる湯溜部は、サイドゲートを介して金型キャビティと連通させることができる。また、プランジャーチップを前進させて溶湯を湯溜部から金型キャビティ製品部に注入する際、プランジャー進行方向から45〜90°、好ましくは75〜90°方向を変えて金型キャビティ内に溶湯を導入することができるよう構成することにより、プランジャー前面が湯溜部内の湯面を直接押すことなく、溶湯湯面の波立ちを抑え、ガスの巻き込みを最小限に抑えることができる。
【0013】
また、前記溶湯供給管は、鋳込みスリーブの上部に形成された溶湯導入開口を介して突出して設けられていれば特に制限されるものではなく、その形状も特に制限されず、直線状であっても曲線状であってもよく、その入り口が鋳込みスリーブより上方に設けられて、他の手段を用いることなく重力により鋳込みスリーブ内に溶湯を導入できるよう構成することが簡便に原料を供給することができることから好ましい。さらに、給湯ラドル等からの材料の供給を容易にすべく、その入り口に溶湯受入漏斗を設け、鋳込みスリーブに形成された溶湯導入開口から斜め上方に向かって傾斜して設けられていることがより好ましい。ここで、溶湯導入開口を形成する鋳込みスリーブの上部とは、鋳込みスリーブ内のプランジャーチップ前方部分を溶湯で80%以上充満できる範囲の上部をいう。なお、溶湯供給管は、アルミ溶湯に濡れない断熱性の高いセラミック等からなることが好ましく、必要に応じて外部から加熱することが好ましい。
この溶湯供給管に原料を供給する前記溶湯供給手段としては特に限定されるものではなく、従来用いられている給湯ラドルでよいが、溶湯表面の酸化膜の混入を防止できる装置の活用が望ましい。
【0014】
前記鋳込みスリーブに導入された溶湯を金型キャビティへ注入するためのプランジャーとしては、鋳込みスリーブ内を気密下に摺動しうるプランジャーチップ(プランジャーヘッド)と、前記プランジャーチップを進退させることができるプランジャーロッドを有するものを例示することができ、プランジャーロッドの往復動の駆動源としては、油圧シリンダーやサーボモーター等を挙げることができる。プランジャーチップは、その後退限が鋳込みスリーブに形成された溶湯導入開口の後方側近傍であるように構成されることが速やかに注湯しうることから好ましく、また、鋳込みスリーブの前方に湯溜部が設けられている場合には、鋳込み完了時プランジャーチップが湯溜部内に押し込まれるので、このとき、プランジャーチップの後端が鋳込みスリーブ内に残るようにしておくことが好ましい。
【0015】
前記金型キャビティとしては特に制限されるものではないが、薄肉で大型の鋳造品を鋳造することができる金型キャビティが好ましい。また、金型キャビティは、金型キャビティ内に注入された溶湯を加圧する加圧手段用溶湯溜を有していることが好ましい。加圧手段としては、閉塞された金型キャビティ内に充填されている溶湯を加圧することにより凝固時にひけ巣の発生を抑制しうる手段であれば特に制限されるものではなく、例えば、金型キャビティの金型キャビティ製品部を形成する可動金型に摺動自在に配設された加圧ピンを例示することができる。金型キャビティ内の溶湯の凝固時に、かかる加圧ピンを金型キャビティ内側方向に前進させて溶湯を加圧して凝固収縮体積を補填し、ひけ巣の発生を抑制することができる。即ち、凝固時に約7%収縮するアルミニウムを含むアルミニウム合金等の凝固収縮が大きい軽金属合金からなる鋳造品、特に薄肉で大型のアルミニウム合金鋳造品を鋳造する場合であっても、ひけ巣の発生を抑制して高品質の鋳造品を鋳造することができる。なお、加圧ピンは、その進出速度を金型キャビティ製品部内の溶湯の凝固収縮速度に適応した速度になるようにプログラム制御を行う等、加圧速度を調節することにより、小さい型締め力のプレス装置でバリ吹きを防止しながらひけ巣の発生を防止することができる。この加圧ピンは複数設けることもでき、各加圧ピンの摺動部等にすべてシールパッキングを設置し金型外部からの空気の漏入を防止することが好ましい。
【0016】
また、金型キャビティは、溶湯充填時に金型キャビティ内に存在するガスを排出することができるガス排出通路と、該ガス排出通路に連通して近傍に設けられた溶湯凝固ゾーン用空隙を有するものが好ましく、ガス排出通路としては、可動金型中を貫通しているガス排出孔(真空吸引通路)と、ガス排出空隙又はガス排出溝とを有して構成されるものが好ましい。このガス排出通路からの真空吸引ガス排出は、内部に残るガスを排出するだけで真空負圧は低く、金型合わせ面に簡単なシールなどの工夫を行い残留バリの除去・掃除などで挟み込み防止の管理に注意することにより外気が流入することを防止することができる。また、型締完了後(次の鋳込前)にこのガス排出通路を利用してN2ガスなどの不活性ガスを金型キャビティ内及び鋳込みスリーブ内に送入することにより、溶湯の酸化を防止することができる。
【0017】
前記ガス排出通路のガス排出空隙又はガス排出溝としては、先湯が流入しない大きさや構造のものが好ましく、例えば、ガス排出空隙としては、加圧ピンの外周面と可動金型内周面との間に加圧ピンと同心に形成された、加圧ピンの外周面と可動金型内周面との間隔が0.2〜0.5mm程度のガス排出空隙を具体的に挙げることができ、前記ガス排出溝としては加圧ピンの外周面に軸線状に伸びたガス排出溝を具体的に挙げることができる。これらのガス排出通路は、ガスの残存しやすい位置、例えば、金型キャビティの上部に設置することが好ましい。また、前記溶湯凝固ゾーン用空隙としては、ガス排出空隙又はガス排出溝を介してガス排出孔に連通している溶湯凝固ゾーン用空隙を例示することができ、かかる溶湯凝固ゾーン用空隙としては、加圧ピンの外周面と可動金型内周面との間に加圧ピンと同心に形成された、加圧ピンの外周面と可動金型内周面との間隔が0.5〜2.5mm程度であって、10〜40mm程度の深さ(長さ)を有する溶湯凝固ゾーンとなる空隙を具体的に例示することができる。溶湯凝固ゾーン用空隙を溶湯の温度や鋳込み速度に適合した寸法に設計製作しておくことにより、溶湯が充填された時に先湯がこの空隙部分で冷却凝固してガス排出空隙やガス排出溝に侵入することを防止することができる。
【0018】
【実施例】
本発明を適用した実施例を以下図面を参照して説明するが、本発明の技術的範囲はこれらに限定されるものではない。図1は本発明の一実施形態に係るダイカスト鋳造装置を示す概略断面図、図2は図1に示す本発明の一実施形態に係るダイカスト鋳造装置における金型キャビティの部分拡大による加圧ピンの動作説明図であり、図3〜10は図1に示す本発明の一実施形態に係るダイカスト鋳造装置の作動状態を示す説明図である。
【0019】
図1〜図10に示される本発明の一実施形態に係るダイカスト鋳造装置は、固定盤に固定される合金鋼製の固定金型1と、固定金型1に圧着される可動金型2と、固定金型1と可動金型2との間に形成される金型キャビティCに溶湯を注入するための鋳込みスリーブ5と、鋳込みスリーブ5内を往復動するプランジャー6と、鋳込みスリーブ5に溶湯を供給するためのその入口に溶湯受入漏斗8を備えた溶湯供給管9と、1回につき所定量の溶湯Mを給湯する給湯ラドル7と、金型キャビティC内の溶湯を加圧する加圧ピン11とを有し、金型キャビティCに溶湯を自動的に鋳込み、冷却して鋳造品を製造するものである。なお、図示されていないが、ダイカスト装置には溶湯冷却後、金型キャビティCから鋳造品10を取り出すための型開きを行う型締装置等が設けられている。
【0020】
鋳込みスリーブ5は、ダイカスト鋳造装置の金型キャビティCに連通されるように固定盤3を貫通し、略水平に固定金型1に固定された、溶湯Mを金型キャビティCへ給湯する円管であって、金型キャビティCよりの先端近傍付近の管壁上部には、鋳込みスリーブ5に溶湯を供給する溶湯供給管9を接続するための溶湯導入開口51が形成され、かかる溶湯導入開口51を介して接続部品91により溶湯供給管9が接続されている。また、鋳込みスリーブ5の前方には、鋳込みスリーブ端部から漸次拡大するテーパー形状の湯溜部C1が設けられ、湯溜部C1はサイドゲートC2を介して金型キャビティCの製品部に連通している。このとき、鋳込みスリーブ5の内径を従来のものより小径とすることにより、鋳込みスリーブ5内における溶湯の充満度を高くし、ガスの体積を小さくしてガスの巻き込みを排除すると共に、鋳込みスリーブ5の内壁にその周囲を接して気密下の摺動するプランジャーの作用面積を小さくして同一の鋳込み圧力を小さい駆動力で得ることを可能としている。すなわち、鋳込みスリーブ5内のプランジャーチップ63前方の体積と、湯溜部C1の鋳込みスリーブ5の最高位置水平面以下との内容積の総和を、1回の鋳造に必要な注湯量により近づけることを可能としてガスの巻き込み等を防止している。
【0021】
鋳込みスリーブ5へ溶湯Mを注湯する溶湯供給管9は、その入口に溶湯受入漏斗8を備えると共に、金型スリーブに形成された溶湯導入開口から斜め上方に向かって傾斜して設けられており、かかる溶湯受入漏斗8から給湯ラドル7によって1回分の溶湯Mが供給される。この場合、給湯ラドル7の湯面に発生した酸化膜が混入供給される恐れがあるが、特殊な網などを用いることによりその多くを除去することができる。
また、鋳込みスリーブ5内を往復動するプランジャー6は、鋳込みスリーブ5に供給された溶湯Mを金型キャビティCへ押し出すものであり、油圧シリンダー61によって駆動される小径のプランジャーロッド62と、プランジャーロッド62の先端に設けられ鋳込みスリーブ5内を摺動する鋳込みスリーブ5の内径と略同一径であり、その先端面(前面)が溶湯Mを押し出す作用面となるプランジャーチップ63とを有する。プランジャーチップ63の軸方向の長さは、進出限において後端が鋳込みスリーブ5内に残り、一方、後退限に配置されるときには、鋳込みスリーブ5の管壁上部に設けられる溶湯導入開口51を閉塞せず、その先端が溶湯導入開口51の直前(後方近傍)に位置するような長さであって、溶湯供給管9から溶湯Mが鋳込みスリーブ5へ導入されている間は溶湯導入開口51の全面を開放させ、鋳込みスリーブ5への溶湯Mの供給が終了して前方へ移動することにより、溶湯導入開口51を閉塞しながら、鋳込みスリーブ5へ供給された溶湯Mを前方へ押し出す。
【0022】
また、金型キャビティCの製品部の一端には、加圧ピン用油圧シリンダー12の駆動により加圧ピン用湯溜14に進出して金型キャビティC内の溶湯を加圧する加圧ピン11が設けられている。また、図2(a)〜(d)に示すように、加圧ピン11の周部には、ガス排出孔(真空吸引通路)13に連通したガス排出空隙131及び溶湯凝固ゾーン空隙141が設けられている。図2(a)に示すように、鋳込みスリーブ5への注湯前及び注湯時においては、ガス排出孔13からN2ガスなどの不活性ガスを金型キャビティC及び鋳込みスリーブ5内に送入することにより溶湯の酸化を防止することができる。なお、この導入される不活性ガスはガス排気口92から排出され、溶湯の流れを妨害しないようにしている(図1参照)。また、図2(b)に示すように、注湯後には真空吸引通路13からガス及び溶湯を吸引し、図2(c)に示すように溶湯を溶湯凝固ゾーン空隙まで導く。その後、溶湯の凝固と共に、図2(d)に示すように、加圧ピンを押し出すことにより加圧してひけ巣の発生を防止する。
【0023】
このような構成のダイカスト鋳造装置を用いたダイカスト鋳造法について以下説明する。
図3に示すように、金型キャビティCや鋳込みスリーブ5に溶湯が残存せず、装置内部がN2ガス等の不活性ガスで置換されている状態から、給湯ラドル7によって鋳造1回分に必要な注湯量の溶湯を溶湯受入漏斗8から供給し、溶湯供給管9を通して鋳込みスリーブ5内へ導入する。このとき、図4に示すように、鋳込みスリーブ5及び湯溜部C1に入った溶湯の湯面は、鋳込みスリーブ5の最高位置水平面よりわずか低く、鋳込みスリーブ5内のプランジャーチップ63前方部分が溶湯でほぼ充満(80%以上)された状態となる。従って、鋳込みスリーブ5内のガスの体積は小さく、かつガスの大部分はN2ガスと置換されていて、O2ガスの残存量は少なく、溶湯との接触面積も小さいので、溶湯の表面酸化を防止することができる。
【0024】
溶湯の導入が完了すると、図5に示すように、油圧バルブを開いて油圧シリンダー61を作動させることにより、プランジャーロッド62を介してプランジャーチップ63を前進させて、溶湯導入開口51を閉塞する。図6に示すように、プランジャー6がさらに前進すると、湯溜部C1内の溶湯面はそのテーパー形状に沿って上昇し、プランジャーチップ63前面が湯面を直接押すことなく、波立つことなく残存ガスをサイドゲートC2を通じて金型キャビティC内に導入するので溶湯へのガスの巻き込みを抑えることができる。また、仮に金型キャビティCの湯溜部C1の内壁に凝固層が発生した場合でも、プランジャーチップ6によって金型キャビティC内に押し出されることはなく、金型キャビティCへの凝固層の混入を防止すると共に、凝固層による抵抗も少なくプランジャーの加圧力も有効に活用される。図7に示すように、プランジャーチップ63がさらに前進することにより金型キャビティCに溶湯が充填される。
【0025】
金型キャビティへの溶湯の充填が完了し溶湯の冷却が始まると、溶湯の凝固収縮が生起するため、プランジャー66での加圧下、図8及び図2(c),(d)に示すように、加圧ピン用油圧シリンダー12により加圧ピン11を作動させる。プランジャー6による加圧のみでは金型キャビティCの端部までの圧力伝達が難しいが、加圧ピン11を作動させて加圧することで、全面的に凝固収縮によるひけ巣のない緻密な組織の鋳造品を得ることができる。金型キャビティCの溶湯の冷却凝固が完了後、図9及び図10に示すように、型開きを行い可動金型で持ち出された製品素材を各加圧ピン及び押し出しピンによって押し出し取り出すことができる。
【0026】
【発明の効果】
本発明のダイカスト鋳造装置及びダイカスト鋳造方法によれば、鋳込みスリーブ内におけるガス量を減少させると共に溶湯とガスの接触面積を小さくすることにより、溶湯への酸化物やガスの巻き込みを防止して高品質な鋳造品を簡便且つ低設備コストで得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係るダイカスト鋳造装置の概略縦断面図である。
【図2】図1に示す本発明の一実施形態に係るダイカスト鋳造装置における金型キャビティの部分拡大による加圧ピンの動作説明図である。
【図3】図1に示す本発明の一実施形態に係るダイカスト鋳造装置の作動状態を示す説明図で、鋳込み前の状態を示す。
【図4】図1に示す本発明の一実施形態に係るダイカスト鋳造装置の作動状態を示す説明図で、鋳込みスリーブ内へ溶湯を供給した状態を示す。
【図5】図1に示す本発明の一実施形態に係るダイカスト鋳造装置の作動状態を示す説明図で、プランジャーチップで溶湯導入開口を閉塞した状態を示す。
【図6】図1に示す本発明の一実施形態に係るダイカスト鋳造装置の作動状態を示す説明図で、図5に示す状態からさらにプランジャーを前進させた状態を示す。
【図7】図1に示す本発明の一実施形態に係るダイカスト鋳造装置の作動状態を示す説明図で、溶湯を金型キャビティ内へ充填した状態を示す。
【図8】図1に示す本発明の一実施形態に係るダイカスト鋳造装置の作動状態を示す説明図で、金型キャビティ内の溶湯が加圧された状態を示す。
【図9】図1に示す本発明の一実施形態に係るダイカスト鋳造装置の作動状態を示す説明図で、溶湯の充填冷却が完了し型が開いた状態を示す。
【図10】図1に示す本発明の一実施形態に係るダイカスト鋳造装置の作動状態を示す説明図で、製品を取り出す状態を示す。
【図11】(A)は従来の一般的なダイカスト鋳造装置の概略縦断面図であり、(B)は(A)におけるB−B’断面図である。
【符号の説明】
1……固定金型
2……可動金型
3……固定盤
5……鋳込みスリーブ
6……プランジャー
7……給湯ラドル
8……溶湯受入漏斗
9……溶湯供給管
10……鋳造品
11……加圧ピン
12……加圧ピン用油圧シリンダー
13……ガス排出孔
14……加圧ピン用湯溜
51……溶湯導入開口
61……プランジャー用油圧シリンダー
62……プランジャーロッド
63……プランジャーチップ
66……プランジャー
91……接続部品
92……ガス排気口
C……金型キャビティ
C1……湯溜部
C2……サイドゲート
M……溶湯
Claims (13)
- 金型キャビティに連通する鋳込みスリーブと、該鋳込みスリーブの上部に形成された溶湯導入開口を介して突出して設けられた溶湯供給管と、該溶湯供給管へ所定量の溶湯を供給する溶湯供給手段と、前記鋳込みスリーブ内を摺動し鋳込みスリーブに供給された溶湯を前記金型キャビティへ注入するプランジャーとを備えたダイカスト鋳造装置であって、前記プランジャーのプランジャーチップが前記鋳込みスリーブの溶湯導入開口を閉塞したとき、鋳込みスリーブ内のプランジャーチップ前方部分が前記所定量の溶湯で80%以上充満されるように構成されていることを特徴とするダイカスト鋳造装置。
- 金型キャビティが、その入口に鋳込みスリーブ内径より大きい内径の湯溜部を備えていることを特徴とする請求項1記載のダイカスト鋳造装置。
- 湯溜部が、鋳込みスリーブ端部から漸次拡大するテーパー形状に形成されていることを特徴とする請求項2記載のダイカスト鋳造装置。
- 金型キャビティが、金型キャビティ内に注入された溶湯を加圧する加圧手段用溶湯溜を備えていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載のダイカスト鋳造装置。
- 金型キャビティ内の溶湯を加圧する手段が、加圧ピンであることを特徴とする請求項4記載のダイカスト鋳造装置。
- 溶湯導入開口が、鋳込みスリーブの先端近傍に設けられていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか記載のダイカスト鋳造装置。
- 溶湯導入開口が、固定盤により固定された固定金型側に設けられていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか記載のダイカスト鋳造装置。
- 鋳込みスリーブが、ほぼ水平に固定金型に固定されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか記載のダイカスト鋳造装置。
- 金型キャビティが、ガス排出通路を備え、該ガス排出通路の近傍に該ガス排出通路に連通した溶湯凝固ゾーン用空隙が設けられていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか記載のダイカスト鋳造装置。
- 溶湯供給管が、その入口に溶湯受入漏斗を備えると共に、金型スリーブに形成された溶湯導入開口から斜め上方に向かって傾斜して設けられていることを特徴とする請求項1〜9のいずれか記載のダイカスト鋳造装置。
- 金型キャビティに連通する鋳込みスリーブと、該鋳込みスリーブの上部に形成された溶湯導入開口を介して突出して設けられた溶湯供給管と、該溶湯供給管へ所定量の溶湯を供給する溶湯供給手段と、前記鋳込みスリーブ内を摺動し鋳込みスリーブに供給された溶湯を前記金型キャビティへ注入するプランジャーとを備えたダイカスト鋳造装置を用いるダイカスト鋳造方法であって、溶湯供給手段により溶湯供給管を通じて1回につき所定量の溶湯を鋳込みスリーブに導入し、次いで、鋳込みスリーブ内を摺動するプランジャーを前進させて、該プランジャーのプランジャーチップが鋳込みスリーブ内の溶湯導入開口を閉塞したとき、鋳込みスリーブ内のプランジャーチップ前方部分を前記所定量の溶湯で80%以上充満し、さらに、プランジャーを前進させて、溶湯を金型キャビティへ注入・加圧して、ガスの巻込みの少ない鋳造品を鋳造することを特徴とするダイカスト鋳造方法。
- 溶湯を金型キャビティへ注入した後、金型キャビティ内の溶湯を加圧ピンで加圧して、凝固時にひけ巣の発生が少なく鋳造品を鋳造することを特徴とする請求項11記載のダイカスト鋳造方法。
- 鋳造品が、薄肉で大型のアルミニウム合金鋳造品又はマグネシウム合金鋳造品であることを特徴とする請求項11又は12記載のダイカスト鋳造方法。
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JP2002302297A JP2004136315A (ja) | 2002-10-16 | 2002-10-16 | ダイカスト鋳造装置及びダイカスト鋳造方法 |
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JP2011131265A (ja) * | 2009-12-25 | 2011-07-07 | Hitachi Metals Ltd | 真空ダイカスト装置および真空ダイカスト方法 |
FR2960169A1 (fr) * | 2010-05-20 | 2011-11-25 | Peugeot Citroen Automobiles Sa | Goulotte d'alimentation d'une douille d'injection pour le moulage sous pression |
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2002
- 2002-10-16 JP JP2002302297A patent/JP2004136315A/ja active Pending
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