JP2004136065A - マルチルーメンカテーテル - Google Patents
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Abstract
【解決手段】脱血ルーメン21を構成する内腔、側面に設けられた該脱血ルーメン21をカテーテル1外部と連通しうる脱血孔22、および先端部に設けられたテーパー形状の先端チップ23を備えた外管2と、返血ルーメン31を構成する内腔、および該返血ルーメン31をカテーテル1外部と連通しうる返血孔32を備えた内管3とを有してなり、該内管3は該外管2に対して摺動可能でかつ該内管3の返血孔32が該先端チップ23により閉鎖されうるように内挿され、該内管3の外周面上に該外管2の脱血孔22を直接または間接的に閉鎖しうる封止部材5が設けられ、該内管3の摺動により脱血孔22および返血孔32が開閉されるマルチルーメンカテーテル1である。
【選択図】 図1
Description
【発明が属する技術分野】
本発明は、緊急血液透析などの透析療法に使用されるマルチルーメンカテーテルに関する。
【0002】
【従来の技術】
急性腎不全など場合に行われる緊急血液透析には、脱血ルーメン、返血ルーメンおよびガイドワイヤー挿入用ルーメンを有する多重ルーメンカテーテルが用いられる(例えば、特許文献1、2または3参照。)。これらのカテーテルは、透析処置終了後にも血管内に留置されることがあり、脱血ルーメンおよび返血ルーメンに残存する血液による血栓が形成され、これらのルーメンが閉塞して血流不良が発生するという問題がある。
そこで、このような問題を解消するために、カテーテルの非透析時の血管内留置に際しては、脱血ルーメンおよび返血ルーメンにヘパリンを充填する、ヘパリンロックと呼ばれる処置が施される。しかし、ヘパリンロックを行ったとしても、これらのルーメンは血管内に開口する脱血孔および返血孔を有しているため、該脱血孔または返血孔よりルーメンに血液が侵入して血栓が形成されるおそれがあった。
【0003】
そこで、血栓の形成を防いでヘパリンロックを確実に維持するために、脱血ルーメンを有する外筒と、該外筒に内挿された返血ルーメンを有する内筒とからなり、該外筒を内筒に対して摺動させて外筒先端部の脱血孔を内筒先端の拡径部に嵌着させることにより、該脱血孔を閉塞しうる機構を設けたカテーテルが提案されている(例えば、特許文献4参照。)。また、該脱血孔および/または返血孔に対応する位置に孔が設けられたシースをカテーテルを覆うように被せ、該シースを回動させて、脱血孔および/または返血孔とシースの孔の位置をずらすことにより、該脱血孔または返血孔を閉塞しうる機構を設けたカテーテルも提案されている(例えば、特許文献5参照。)。
前記カテーテルはいずれも、脱血孔はシースにより閉塞されるため、脱血ルーメンのヘパリンロックは確実に維持される。しかし、該カテーテルは返血ルーメンがガイドワイヤー挿入用ルーメンと兼用されており、該返血ルーメンは先端において先端側へ向かって開口しているため、上記したシースの摺動または回動によって該開口を閉鎖することはできない。したがって、該返血ルーメンのヘパリンロックは確実なものとならず、従来のカテーテルと同様、血液の侵入により血栓が形成されるおそれがある。
【0004】
一方、脱血孔および返血孔の両方を閉塞しうる構造を有するカテーテルも開発されている(例えば、特許文献6参照。)。該カテーテルは、脱血ルーメン、返血ルーメンおよびガイドワイヤー挿入用ルーメンがそれぞれ別個に設けられ、かつ、脱血孔および返血孔が共にカテーテル側面に設けられており、該脱血孔および返血孔に対応する位置に孔が設けられたシースを該カテーテルを覆うように被せた構造を有する。該カテーテルによれば、シースの回動またはスライドにより脱血孔および返血孔が共にシースによって閉塞されるため、脱血ルーメンおよび返血ルーメンの両方のルーメンのヘパリンロックが確実に維持される。
しかし、このようなカテーテルは、カテーテルの上にさらにシースが被せられているため、従来のシースを有さないカテーテルに比べて径が大きくなり、使用する際に患者への負担が大きくなる。また、従来のカテーテルと同程度の径を有するように設計すると、脱血ルーメンおよび/または返血ルーメンの流量が減少してしまい、透析処置に影響を及ぼすおそれがある。
また、このようなシースが被せられたカテーテルは、その全長に亘ってシースとカテーテルの間隙の液密性が保持されなければ、該間隙に血液が侵入して血栓が形成され、シースの回動やスライドが不可能になるおそれがある。しかし、このようなカテーテル全長に亘るシースとカテーテルの間隙の液密性を、カテーテルを体内に留置する間保持し続けることは非常に困難である。
さらに、該カテーテルが体内に留置される間、該カテーテルに設けられるガイドワイヤー挿入用ルーメンは常に血管内部と連通しているため、例え該ルーメンがヘパリンロックされていたとしても、血液の侵入により該ルーメン内に血栓が形成されるおそれがある。
【0005】
【特許文献1】
特許第2832722号公報
【特許文献2】
特許第3124807号公報
【特許文献3】
特開平6−339529号公報
【特許文献4】
特開平9−253214号公報
【特許文献5】
特開平9−253215号公報
【特許文献6】
特開2001−137350号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記事情に鑑み、本発明はカテーテルの径を増加させずに従来のカテーテルと同程度の血液流量を確保でき、かつ、ヘパリンロックを確実に維持することができるマルチルーメンカテーテルを提供することを目的とする。さらに、該カテーテルはその全長に亘ってシースとカテーテルの間隙に液密性を保持させる必要がなく、かつ、カテーテル内部における血栓形成を確実に防止しうるものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために種々鋭意検討した結果、カテーテルの脱血孔および返血孔を閉塞しうるシースによって脱血ルーメンを構成することにより、カテーテル全体の壁部分を減少させることができ、その結果、上記課題を解決しうるマルチルーメンカテーテルを提供できることを見出した。
【0008】
すなわち、本発明は、
(1) 脱血ルーメンを構成する内腔、側面に設けられた該脱血ルーメンをカテーテル外部と連通しうる脱血孔、および先端部に設けられたテーパー形状の先端チップを備えた外管と、返血ルーメンを構成する内腔、および該返血ルーメンをカテーテル外部と連通しうる返血孔を備えた内管とを有してなり、該内管は該外管に対して摺動可能でかつ該内管の返血孔が該先端チップにより閉鎖されうるように内挿され、該内管の外周面上に該外管の脱血孔を直接または間接的に閉鎖しうる封止部材が設けられ、該内管の摺動により脱血孔および返血孔が開閉されるマルチルーメンカテーテル、
(2) 前記外管および/または先端チップには、返血孔において返血ルーメンとカテーテル外部とを流体連通させうる通路が設けられてなる前記(1)記載のマルチルーメンカテーテル、
(3) 前記内管内にガイドワイヤー挿入用ルーメンが画成されてなり、前記先端チップには該ガイドワイヤー挿入用ルーメンと連通し、かつ該ガイドワイヤー挿入用ルーメンに挿入されるガイドワイヤーを先端部から外部へ突出させうる通路が設けられてなる前記(1)または(2)記載のマルチルーメンカテーテル、
(4) 前記先端チップに設けられたガイドワイヤーを突出させうる通路には、さらにガイドワイヤー挿入用ルーメンとカテーテル外部との連通を遮断しうるための連通遮断機構が設けられてなる前記(3)記載のマルチルーメンカテーテル、
(5) 前記内管の摺動は、カテーテルの軸方向のスライドである前記(1)〜(4)のいずれかに記載のマルチルーメンカテーテル、
(6) 前記封止部材は、前記外管の脱血孔を直接閉鎖しうる位置に設けられてなる前記(5)に記載のマルチルーメンカテーテル、
(7) 前記内管の摺動は、カテーテルの軸を中心とする回動である前記(1)〜(4)のいずれかに記載のマルチルーメンカテーテル、
(8) 前記封止部材は、前記外管の脱血孔を内管の側面で閉鎖しうるように内管の外周面上に設けられてなる前記(7)記載のマルチルーメンカテーテル、
(9) 前記内管の返血孔は、先端で軸方向先端側に向かって開口する孔である前記(1)〜(8)のいずれかに記載のマルチルーメンカテーテル、
(10) 前記内管の返血孔は、該内管側面で開口する側孔である前記(1)〜(8)のいずれかに記載のマルチルーメンカテーテル、
(11) 前記脱血孔および返血孔が開口した状態で、外管および内管の配置を保持するためのロック機構が設けられてなる前記(1)〜(10)のいずれかに記載のマルチルーメンカテーテル、
(12) 前記脱血孔および返血孔が閉鎖された状態で、外管および内管の配置を保持するためのロック機構が設けられてなる前記(1)〜(11)のいずれかに記載のマルチルーメンカテーテル
に関する。
【0009】
【作用】
本発明のマルチルーメンカテーテルは、外管の脱血孔および内管の返血孔が閉鎖された状態で患者の体内に導入される。このとき、該カテーテルにガイドワイヤーが内挿された状態で患者への挿入が行われてもよい。透析処置を行う時には、内管を摺動させて該脱血孔および返血孔を開口させ、該外管の脱血ルーメンおよび内管の返血ルーメンに血液を流通させる。透析処置終了後、該外管の脱血ルーメンおよび該内管の返血ルーメンにおいて、内部に残留する血液がヘパリンなどの血液非凝固性を有する液体に置換され、次いで該内管を摺動させて再度脱血孔および返血孔を閉鎖する。したがって、次に透析処置を行う時まで該マルチルーメンカテーテルを患者の体内に留置しても、該脱血ルーメンおよび返血ルーメンに血液が流入して該ルーメン内で血栓が形成されるおそれはない。
また、このようなマルチルーメンカテーテルは、従来のシースが被せられたカテーテルと比較して、シース内の空間を脱血ルーメンとして利用していることになるため、カテーテル径を増加させることなく該脱血ルーメンおよび返血ルーメンにおける血液流量を維持することを可能としている。
さらに、本発明のマルチルーメンカテーテルは、ガイドワイヤー挿入用ルーメンが画成された場合、該ガイドワイヤー挿入用ルーメンとカテーテル外部との連通を遮断しうる連通遮断機構を設けることにより、脱血ルーメンおよび返血ルーメンのみならず、ガイドワイヤー挿入用ルーメンにおける血栓形成も確実に防止することができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明のマルチルーメンカテーテルを添付図面に示す好適な実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれらの説明に限定されるものではない。図1および図2は本発明のマルチルーメンカテーテルの第一の実施例の、透析処置を行う時の状態を示す断面図であり、図3および図4は図1のマルチルーメンカテーテルの、透析処置を行わない時の状態を示す断面図である。また、図5〜8は本発明のマルチルーメンカテーテルの第2の実施例の、透析処置を行う時の状態を示す断面図であり、図9および図10は図5のマルチルーメンカテーテルの、透析処置を行わない時の状態を示す断面図である。さらに、図11は図5に示すマルチルーメンカテーテルの先端部分拡大斜視図である。
図1に示されるように、本発明のマルチルーメンカテーテル1は脱血ルーメンを構成する内腔21と脱血孔22と先端チップ23を備える外管2と、返血ルーメンを構成する内腔31と返血孔32とを備える内管3とを有してなる。本明細書中、先端とは患者の体内に留置される側(図中左側)を指し、基端とは患者の体外に配置されるコネクター等が設けられる側(図中右側)を指す。
【0011】
前記外管2は、断面形状が略円形の管であって、その内腔は脱血ルーメン21を構成している。該脱血ルーメン21は外管2の側面に設けられた脱血孔22により、カテーテル1外部と流体連通しうる。該外管2の先端部には、テーパー形状の先端チップ23が形成され、該外管2の基端部には、外管2と内管3とを接続してマルチルーメンカテーテル1を構成するための接続部24が設けられている。
前記脱血孔22の形状は、円形や楕円形等であることが好ましく、またその大きさは脱血ルーメンの断面積と同じ程度であることが好ましい。
【0012】
前記外管2は、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエステル、フッ素樹脂、シリコーン樹脂等の可撓性樹脂など、柔軟性および引張強さを有する樹脂により形成されることが好ましい。また、該外管2の形成方法としては、押出成形などが好ましく用いられる。
該外管2の全長は、患者の皮膚から血管にかけて留置するのに十分な長さであり、例えば100〜300mmに設定される。該外管2の寸法は、外管2を構成する材料により適宜選択されるが、例えば外径が3〜5mm、内径が2〜4.6mm、厚みが0.2〜0.5mmである。該外管2の外径がこれより大きいと、マルチルーメンカテーテル1を患者の体内への導入する際に患者に与える苦痛が大きくなり、該外管2の内径がこれより小さいと、内腔を流通する血液流量が減少し、透析治療効率が悪くなる。また、該外管2の厚みは、マルチルーメンカテーテル1が患者の体内への導入時にキンクしたり、引き裂けたりするおそれのない十分な強度を有する範囲で、内部を流通する血液流量を減少させないように極力薄く形成されることが好ましい。
【0013】
前記接続部24は、外管2の基端部と熱溶着などの手段により接続される中空の管である。該接続部24は、脱血ルーメン21と連通し、内管3を内挿しうる大きさの内腔を有してなる。該接続部24は、脱血ルーメン21より流入した血液を透析装置に導くため、例えば図1に示されるチューブ241や、コネクター242及び41の他、透析処置を行うために必要な公知の部品を備えてなる。
該接続部24は、ポリウレタン、シリコーン樹脂等の可撓性樹脂など、外管2を構成する樹脂と同様の樹脂で形成される。また、該接続部24の形成方法としては、射出成形が好ましく用いられる。
【0014】
前記内管3は外管2に内挿される管であって、その内腔は返血ルーメン31を構成している。該返血ルーメン31は返血孔32により、カテーテル1外部と流体連通しうる。
図示されるように、該返血孔32は、該内管3の先端において内管3の軸方向先端側へ向かって開口する孔であってもよいし、図示されないが、該内管3の側面で開口する側孔であってもよい。該返血孔32の形状は、血液の排出に支障がない形状であれば特に限定されないが、先端側へ向かって開口する場合は略円形の孔であることが好ましく、側孔である場合は円形や楕円形等、脱血孔22と同様の形状があげられる。
【0015】
該内管3の返血孔32は、透析処置を行う時であっても、透析処置を行わない時であっても、脱血孔22よりも先端側に配置されることが好ましい。また、該返血孔32と脱血孔22との距離は、5mm以上であることが好ましく、20mm以上であることがより好ましい。該距離が5mmよりも短いと、返血孔32から排出された血液が脱血孔22より吸引されるおそれがあり、透析効率が低くなる可能性がある。
該内管3を構成する材料および該内管3の形成方法としては、該外管2と同様のものが好ましく用いられる。
【0016】
前記外管2の先端部に設けられる先端チップ23は、先端側へ向かって外径が減少するテーパー形状を有するものであり、ポリウレタン、シリコーン樹脂等の可撓性樹脂など、外管2を構成する樹脂と同様の樹脂で形成される。該先端チップ23は、単体で形成された後に接着や熱溶着等の公知の方法によって該外管2と接続されてもよいし、外管2と一体成形されてもよい。
該先端チップ23は、外管2に内挿される内管3の返血孔32を開閉しうるものであり、その形状は内管3の返血孔32の位置や形状、内管3の摺動方法に合わせて適宜変更することが可能である。例えば、図1に示すような先端側へ向かって開口する返血孔32の場合、該返血孔32により返血ルーメン31とカテーテル1外部とが流体連通しうるように、該先端チップ23には所定位置に通路231が設けられていてもよい。該通路231は、先端チップ23と外管2との接続部に設けられていてもよいし、該返血孔32が内管3の側孔である場合には外管2に設けられていてもよい。また、図3に示すように、返血孔32が閉鎖される時には、内管3が先端チップ23に当接するように摺動せしめられることにより該返血孔32を直接閉鎖しうる壁232が形成されていてもよい。
【0017】
本発明のマルチルーメンカテーテル1は、患者への挿入時に内部にガイドワイヤーを挿通した状態で使用する場合もある。該ガイドワイヤーは内管3の返血ルーメン31内に挿通されてもよいが、図5に示すように、別途ガイドワイヤー挿入用ルーメン4が形成され、該ルーメン4内に挿通されてもよい。このようにガイドワイヤーを挿通する場合、前記外管2先端に設けられる先端チップ23は中空の部材であって、その内腔は該ガイドワイヤー挿入用ルーメン4と連通しているガイドワイヤー挿入用通路233を形成している必要がある。さらに該先端チップ23のガイドワイヤー挿入用通路233は、該先端チップ23の先端においてマルチルーメンカテーテル1の軸方向先端側へ向かって開口する開口部234により、カテーテル1外部と連通しうるものである。
該ガイドワイヤー挿入用ルーメン4を構成するために用いられる材料およびその形成方法としては、前記外管2と同様のものが好ましく用いられる。
【0018】
マルチルーメンカテーテル1に前記ガイドワイヤー挿入用ルーメン4が形成される場合、前記内管3の基端部には可動部33が設けられていてもよい。該可動部33は、図5に示すように前記返血ルーメン31とガイドワイヤー挿入用ルーメン4とが一つの内管3内に画成される場合には、該ルーメン31および4にチューブ331やコネクター332及び41等を接続するために用いられ、また該ガイドワイヤー挿入用ルーメン4が内管3に内挿される別の管の内腔により形成される場合には、該管と内管3等とを接続するために用いられうる。
該可動部33は、内管3と接着あるいはインサート成形することにより接続される中空の管である。該可動部33は、返血ルーメン31およびガイドワイヤー挿入用ルーメン4と連通しうる内腔を有してなる。該可動部33の先端部は前記接続部24の基端部に摺動可能に内挿または外挿されるものであってもよい。該可動部33を構成する材料やその形成方法は、前記接続部24と同様のものが用いられる。
【0019】
図5に示されるように、マルチルーメンカテーテル1にガイドワイヤー挿入用ルーメン4が形成される場合、前記先端チップ23の開口部234付近には、図11にも示されるように、該ガイドワイヤー挿入用ルーメン4とカテーテル1外部との連通を遮断するための連通遮断機構25が設けられていてもよい。
前記連通遮断機構25は、マルチルーメンカテーテル1が患者の体内に留置されている場合であって、ガイドワイヤー挿入用ルーメン4が使用されていない時に、該ガイドワイヤー挿入用ルーメン4内に血液が侵入して血栓が形成されることを防止しうるものであり、かつ、該ガイドワイヤー挿入用ルーメン4が使用されている時には、該ガイドワイヤー挿入用ルーメン4とカテーテル1外部とを連通しうるものである。
前記連通遮断機構25の一例としては、図11に示されるような、スリット251が設けられた弾性体があげられる。該弾性体は、ガイドワイヤー挿入用ルーメン4内に導入されるガイドワイヤーや薬液などにより該スリット251が容易に開口するが、該ガイドワイヤー挿入用ルーメン4不使用時にはスリット251が液密に閉塞するような自己閉塞性を有している。
【0020】
このような弾性体の材料としては、シリコーン、合成ポリイソプレンゴム、天然ゴム、ブチルゴム、クロロプレンゴム、ウレタンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、エチレンプロピレンゴム、アクリルゴム、フッ素ゴム、熱可塑性エラストマー等のゴム弾性材があげられる。該弾性体は、公知の方法により該ガイドワイヤー挿入用ルーメン4の開口部234付近、好ましくはガイドワイヤー挿入用通路233の先端部に固定される。
前記弾性体の形状は特に限定されず、該ガイドワイヤー挿入用ルーメン4とカテーテル1外部との連通を液密に遮断しうるものであればよい。また、前記スリット251の形状は、図11に示される直線型の他、十字型、円弧型などであってもよい。
前記弾性体は、より好ましくは、ガイドワイヤー挿入用通路233に固定された時に、基端側に凹部が形成され、該凹部にスリット251が設けられる。このような構成により、該ガイドワイヤー挿入用ルーメン4内に導入されたガイドワイヤーや薬液がより小さい抵抗でカテーテル1外部へと導出される。
【0021】
本発明のマルチルーメンカテーテル1において、内管3の外周面上には封止部材5が設けられる。該封止部材5は外管2の脱血孔22を直接または間接的に閉鎖しうるものである。
該脱血孔22を直接閉鎖しうる封止部材5の一例を図1〜4に示す。これらの図で示されるマルチルーメンカテーテル1は、内管3が外管2に対してマルチルーメンカテーテル1の軸方向に摺動しうるように構成されたものである。該内管3が外管2に対して基端側に摺動させられた時、すなわち内管3の返血孔32が開口された時には、図1および図1のA−A線断面図である図2に示されるように、封止部材5は外管2の脱血孔22よりも基端側に位置し、該脱血孔22を開口させる。一方、該内管3が外管2に対して最も先端側まで摺動させられた時には、図3および図3のB−B線断面図である図4に示されるように、該内管3の返血孔32は先端チップ23の壁232に当接することにより閉鎖され、該外管2の脱血孔22は封止部材5により閉鎖される。
封止部材5は、図3および図4に示す状態において、内管3の外周面上で該外管2の脱血孔22が閉鎖されるような位置に設けられる。該封止部材5の形状としては、外周面が外管2の内壁に沿っており、かつ内周面が内管3の外壁に沿っている筒状で内部に空隙を有するもの等、該封止部材5が直接脱血孔22を液密に封鎖し、脱血ルーメン21内の液の流通を妨げないものであれば特に限定されない。該封止部材5はこのように単独で使用されてもよいし、図4に示すように内管3の外周面から外方へ突出した支持部34によって、封止部材5を外管2内周面に当接させて使用してもよい。また、内管3に該支持部34を設けた場合は、封止部材5は筒状に限らず、半筒状など脱血孔22を封鎖しうるに足る面積を有しておればよい。
【0022】
前記脱血孔22を間接的に閉鎖しうる封止部材5の一例を図5〜10に示す。これらの図で示されるマルチルーメンカテーテル1は、内管3が外管2に対してマルチルーメンカテーテル1の軸を中心として摺動、つまり回動しうるように構成されたものである。
該封止部材5は外管2の脱血孔22から先端側で、内管3と外管2との間隙を埋めるように設けられている。具体的には、該脱血孔22よりも先端側では、図5のC−C線断面図である図6で示されるように、封止部材5は内管3と外管2との間隙を完全に埋めるように設けられる。また、脱血孔22付近では、図5のD−D線断面図である図7で示されるように、封止部材5は内管3と外管2との間隙のうち、返血ルーメン31側のみを埋めるように設けられ、残りの部分は脱血ルーメン21として用いられる。脱血孔22よりも基端側には封止部材5は設けられないため、図5のE−E線断面図である図8で示されるように、内管3と外管2との間隙は全て脱血ルーメン21として用いられる。
透析処置を行う時には、図5に示されるように、内管3の返血孔32は先端チップ23と外管2との接続部に設けられた通路231上に位置しており、返血ルーメン31はカテーテル1外部と流体連通している。この時、脱血孔22も開口しており、該封止部材5は該流体連通を妨げない位置に配置される。透析処置を行わない時には、図5で示される位置から、該内管3がカテーテル1の軸を中心として90度摺動し、図9で示されるような状態になる。この状態においては、封止部材5は通路231を封鎖し、さらに内管3の返血孔32は先端チップ23の壁面232に当接することにより閉鎖されることにより、返血ルーメン31とカテーテル1外部との流体連通は阻止される。また、図9のF−F線断面図である図10で示されるように、脱血孔22は封止部材5および内管3の一部により閉鎖される。
図10に示される状態で、前記脱血孔22が内管3の外周面のみにより閉鎖されうるような形状または大きさである場合、封止部材5は内管3を外管2の内周面に液密に接することを助けることになり、間接的に脱血孔22を閉鎖する。
【0023】
前記封止部材5の材料としては、ポリウレタンや塩化ビニルなどの熱可塑性樹脂や、熱可塑性エラストマー、シリコーン樹脂などが好ましく用いられる。また、該封止部材5の作成方法としては、射出成形やインサート成形などがあげられる。該封止部材5は、例えば射出成形された後、内管3の外周面に溶剤接着することにより、内管3の外周面に配置される。
また、前記した内管3の外管2に対する摺動を液密に行うために、該内管3と外管2との間にシール手段6が設けられていてもよい。該シール手段6としては、例えばOリングやシールパッキン等があげられる。
【0024】
本発明のマルチルーメンカテーテル1には、図1および図5に示されるような外管2および内管3を透析処置を行う時の配置で確実に保持しうるように、外管2と内管3とを固定するためのロック機構が設けられていてもよい。該ロック機構としては、例えば該可動部33の先端部が接続部24の基端部に摺動可能に内挿される場合、両部材の重なり合う部分において、該接続部24外周面に設けられた突部と該可動部33に設けられた軸方向に延びる溝とが係合する機構などがあげられる。
また、該マルチルーメンカテーテル1には、図3および図9に示されるような外管2および内管3を透析処置を行わない時の配置で確実に保持しうるように、外管2と内管3とを固定するためのロック機構が設けられていてもよい。該ロック機構としては、前記透析処置を行う時の配置を保持するロック機構と同様の機構が好ましく用いられる。
前記透析処置を行う時の配置を保持しうるロック機構、および透析処置を行わない時の配置を保持しうるロック機構は、両方がカテーテル1に設けられることが好ましい。この場合のロック機構としては、例えば前記接続部24外周面に設けられた突部と、可動部33に設けられた軸方向に延びる溝との係合であって、該溝の形状が両端が軸に垂直な方向に曲がったコの字型や、両端が広い面積を有し中間部が狭い面積を有するダンベル型などである機構が挙げられる。
【0025】
次に、本発明のマルチルーメンカテーテル1の使用方法について説明する。
まず、本発明のマルチルーメンカテーテル1は図3および図9に示されるように、脱血孔22および返血孔32が閉鎖された状態で患者の体内に導入される。マルチルーメンカテーテル1の導入の際にガイドワイヤーを用いる場合には、公知の手段により、先端が血管内に基端が体外に配置されるように予め患者に導入されたガイドワイヤーの基端部を、先端チップ23の開口234よりガイドワイヤー挿入用ルーメン4内に挿入し、該ガイドワイヤーに沿って該カテーテル1が血管内に挿入される。この動作により、ガイドワイヤーの基端部はガイドワイヤー挿入用ルーメン4を通って可動部33に進入し、コネクター41より突出する。患者の体内の所定位置までカテーテル1が挿入されれば、該カテーテル1内のガイドワイヤーは該コネクター41より基端側へと引き抜かれ、テープなどで患者の体に該カテーテル1を固定される。該カテーテル1表面に翼等が設けられていれば、前記固定はより長期間に亘って確実に維持され好ましい。
該先端チップ23のガイドワイヤー挿入用通路233に連通遮断機構25が設けられている場合、ガイドワイヤー挿入用ルーメン4は該連通遮断機構25により閉塞されるが、この時、該ガイドワイヤー挿入用ルーメン4にはヘパリンが導入されてもよい。
【0026】
患者の血管内に挿入されたカテーテル1は、透析処置を開始するに際して、脱血チューブ241のコネクター242および返血チューブ331のコネクター332が透析装置に接続される。次いで、図1および図5に示されるように、内管3が外管2に対して軸方向に摺動、または外管2の軸を中心に回動することにより、脱血孔22および返血孔32が開口する。これにより、脱血ルーメン21が脱血孔22を介してカテーテル1外部と連通し、返血ルーメン31が返血孔32を介してカテーテル1外部と連通する。
透析処置が開始されると、血液は脱血孔22を通って脱血ルーメン21に進入し、脱血チューブ241を介して透析装置に送られる。該透析装置において処理された血液は返血ルーメン31に進入し、返血孔32を通って血管内に返戻される。
【0027】
透析処置終了後、マルチルーメンカテーテル1が透析装置と切り離された後、脱血ルーメン21および返血ルーメン31にヘパリンが充填される。次いで、内管3が外管2に対して再び摺動せしめられて、図3および図9に示されるように脱血孔22および返血孔32が閉鎖され、脱血ルーメン21の脱血孔22におけるカテーテル1外部と連通および返血ルーメン31の返血孔32におけるカテーテル1外部と連通が遮断される。その後、次の透析処置開始まで、該カテーテル1は血管内に留置される。
【0028】
前記透析処置は繰り返し行われ、その都度、内管3は外管2に対して摺動せしめられる。該接続部24および可動部33に接続されるチューブやコネクター等の部品は、脱血ルーメン21、返血ルーメン31およびガイドワイヤー挿入用ルーメン4と連通しているが、必要に応じて連通を遮断する部材が適宜設けられることにより、血管内留置時における菌の混入や液体の漏出を防止することができる。
【0029】
【発明の効果】
本発明のマルチルーメンカテーテルは、従来のカテーテルでは外側に設けられていた脱血孔および返血孔を閉塞する手段(シース)が、脱血ルーメンを構成する外管を兼用しているため、断面における壁部分の割合が増加せず、患者の苦痛の原因となるカテーテルの径の増加や、血液流量を減少を防止することができる。また、従来のカテーテルのようにカテーテルとシースとの間隙が存在しないため、カテーテルの全長に亘って該間隙の液密性を保持しうるような構造設計を行う必要もない。
また、本発明のマルチルーメンカテーテルは、透析処置を行わない時には内管の摺動によって容易に脱血孔および返血孔が閉鎖されて脱血ルーメンおよび返血ルーメンがカテーテル外部から遮断されるため、脱血孔および返血孔が血液に暴露されず、血液が該ルーメンに侵入して血栓を形成するおそれがない。さらに、本発明のマルチルーメンカテーテルにガイドワイヤー挿入用ルーメンが画成される場合は、該ガイドワイヤー挿入用ルーメンとカテーテル外部との連通を遮断する連通遮断機構が設けられることにより、脱血ルーメンおよび返血ルーメンのみならず、ガイドワイヤー挿入用ルーメンにおける血栓形成も確実に防止することができる。したがって、本発明のマルチルーメンカテーテルはヘパリンロックを確実に維持することができ、患者の血管内に長期間に亘って安全に留置することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のマルチルーメンカテーテルの第一の実施例の、透析処置を行う時の状態を示す断面図である。
【図2】図1に示すマルチルーメンカテーテルのA−A線断面図である。
【図3】図1に示すマルチルーメンカテーテルの、透析処置を行わない時の状態を示す断面図である。
【図4】図3に示すマルチルーメンカテーテルのB−B線断面図である。
【図5】本発明のマルチルーメンカテーテルの第二の実施例の、透析処置を行う時の状態を示す断面図である。
【図6】図5に示すマルチルーメンカテーテルのC−C線断面図である。
【図7】図5に示すマルチルーメンカテーテルのD−D線断面図である。
【図8】図5に示すマルチルーメンカテーテルのE−E線断面図である。
【図9】図5に示すマルチルーメンカテーテルの、透析処置を行わない時の状態を示す断面図である。
【図10】図9に示すマルチルーメンカテーテルのF−F線断面図である。
【図11】図5に示すマルチルーメンカテーテルの先端部分拡大斜視図である。
【符号の説明】
1 マルチルーメンカテーテル
2 外管
21 脱血ルーメン
22 脱血孔
23 先端チップ
3 内管
31 返血ルーメン
32 返血孔
4 ガイドワイヤー挿入用ルーメン
5 封止部材
Claims (12)
- 脱血ルーメンを構成する内腔、側面に設けられた該脱血ルーメンをカテーテル外部と連通しうる脱血孔、および先端部に設けられたテーパー形状の先端チップを備えた外管と、返血ルーメンを構成する内腔、および該返血ルーメンをカテーテル外部と連通しうる返血孔を備えた内管とを有してなり、該内管は該外管に対して摺動可能でかつ該内管の返血孔が該先端チップにより閉鎖されうるように内挿され、該内管の外周面上に該外管の脱血孔を直接または間接的に閉鎖しうる封止部材が設けられ、該内管の摺動により脱血孔および返血孔が開閉されるマルチルーメンカテーテル。
- 前記外管および/または先端チップには、返血孔において返血ルーメンとカテーテル外部とを流体連通させうる通路が設けられてなる請求項1記載のマルチルーメンカテーテル。
- 前記内管内にガイドワイヤー挿入用ルーメンが画成されてなり、前記先端チップには該ガイドワイヤー挿入用ルーメンと連通し、かつ該ガイドワイヤー挿入用ルーメンに挿入されるガイドワイヤーを先端部から外部へ突出させうる通路が設けられてなる請求項1または2記載のマルチルーメンカテーテル。
- 前記先端チップに設けられたガイドワイヤーを突出させうる通路には、さらにガイドワイヤー挿入用ルーメンとカテーテル外部との連通を遮断しうるための連通遮断機構が設けられてなる請求項3記載のマルチルーメンカテーテル。
- 前記内管の摺動は、カテーテルの軸方向のスライドである請求項1〜4のいずれかに記載のマルチルーメンカテーテル。
- 前記封止部材は、前記外管の脱血孔を直接閉鎖しうる位置に設けられてなる請求項5に記載のマルチルーメンカテーテル。
- 前記内管の摺動は、カテーテルの軸を中心とする回動である請求項1〜4のいずれかに記載のマルチルーメンカテーテル。
- 前記封止部材は、前記外管の脱血孔を内管の側面で閉鎖しうるように内管の外周面上に設けられてなる請求項7記載のマルチルーメンカテーテル。
- 前記内管の返血孔は、先端で軸方向先端側に向かって開口する孔である請求項1〜8のいずれかに記載のマルチルーメンカテーテル。
- 前記内管の返血孔は、該内管側面で開口する側孔である請求項1〜8のいずれかに記載のマルチルーメンカテーテル。
- 前記脱血孔および返血孔が開口した状態で、外管および内管の配置を保持するためのロック機構が設けられてなる請求項1〜10のいずれかに記載のマルチルーメンカテーテル。
- 前記脱血孔および返血孔が閉鎖された状態で、外管および内管の配置を保持するためのロック機構が設けられてなる請求項1〜11のいずれかに記載のマルチルーメンカテーテル。
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