JP4103567B2 - マルチルーメンカテーテル - Google Patents
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Description
【発明が属する技術分野】
本発明は、緊急血液透析などの透析療法に使用されるマルチルーメンカテーテルに関する。
【0002】
【従来の技術】
緊急血液透析などにおいては、脱血ルーメン、返血ルーメンおよびガイドワイヤー挿入用ルーメンを有する多重ルーメンカテーテルが用いられる(例えば、特許文献1参照。)。これらのカテーテルは、透析処置終了後にも血管内に留置されることがあり、この場合、脱血ルーメンおよび返血ルーメンに残存する血液による血栓が形成され、これらのルーメンが閉塞して血流不良が発生するという問題がある。
そこで、このような問題を解消するために、カテーテルの非透析時の血管内留置に際しては、脱血ルーメンおよび返血ルーメンにヘパリンを充填する、ヘパリンロックと呼ばれる処置が施される。しかし、ヘパリンロックを行ったとしても、これらのルーメンは血管内に開口する脱血孔および返血孔を有しているため、該脱血孔または返血孔よりそれぞれのルーメンに血液が侵入して血栓が形成されるおそれがあった。
【0003】
そこで、血栓の形成を防いでヘパリンロックを確実に維持するために、脱血ルーメンを有する外筒と、該外筒に内挿された返血ルーメンを有する内筒とからなり、該外筒を内筒に対して摺動させて外筒先端部の脱血孔を内筒先端の拡径部に嵌着させることにより、該脱血孔を閉塞しうる機構を設けたカテーテルが提案されている(例えば、特許文献2参照。)。また、該脱血孔および/または返血孔に対応する位置に孔が設けられたシースをカテーテルを覆うように被せ、該シースを回動させて、脱血孔および/または返血孔とシースの孔の位置をずらすことにより、該脱血孔または返血孔を閉塞しうる機構を設けたカテーテルも提案されている(例えば、特許文献3参照。)。
前記カテーテルはいずれも、脱血孔はシースにより閉塞されるため、脱血ルーメンのヘパリンロックは確実に維持される。しかし、該カテーテルは返血ルーメンがガイドワイヤー挿入用ルーメンと兼用されており、該返血ルーメンは先端において先端側へ向かって開口しているため、上記したシースの摺動または回動によって該開口を閉鎖することはできない。したがって、該返血ルーメンのヘパリンロックは確実なものとならず、従来のカテーテルと同様、血液の侵入により血栓が形成されるおそれがある。
【0004】
一方、脱血孔および返血孔の両方を完全に閉塞しうる構造を有するカテーテルも開発されている(例えば、特許文献4参照。)。該カテーテルは、脱血ルーメン、返血ルーメンおよびガイドワイヤー挿入用ルーメンがそれぞれ別個に設けられ、かつ、脱血孔および返血孔が共にカテーテル側面に設けられており、該脱血孔および返血孔に対応する位置に孔が設けられたシースを該カテーテルを覆うように被せた構造を有する。該カテーテルによれば、シースの回動またはスライドにより脱血孔および返血孔が共にシースによって閉塞されるため、脱血ルーメンおよび返血ルーメンの両方のルーメンのヘパリンロックが確実に維持される。
しかし、このようなカテーテルは、カテーテルの上にさらにシースが被せられているため、従来のシースを有さないカテーテルに比べて径が大きくなり、使用する際に患者にかかる負担が大きくなる。また、従来のカテーテルと同程度の径を有するように設計すると、脱血ルーメンおよび/または返血ルーメンの流量が減少してしまい、透析処置に影響を及ぼすおそれがある。
また、このようなシースが被せられたカテーテルは、シースとカテーテルの間隙の液密性がその全長にわたって保持されなければ、該間隙に血液が侵入して血栓が形成され、シースの回動やスライドが不可能になるおそれがある。しかし、このようなシースとカテーテルの間隙の液密性を、カテーテルを体内に留置する間、保持し続けることは非常に困難である。
【0005】
【特許文献1】
特許第2832722号公報
【特許文献2】
特開平9−253214号公報
【特許文献3】
特開平9−253215号公報
【特許文献4】
特開2001−137350号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記事情に鑑み、本発明は従来のカテーテルと同程度の流量を確保しながらカテーテルの径を増加させることなく、またシースとカテーテルの間隙に液密性を保持させる必要がなく、ヘパリンロックを確実に維持することができるマルチルーメンカテーテルを提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために種々鋭意検討した結果、カテーテルの脱血孔および返血孔を閉塞しうるシースによって脱血ルーメンおよび返血ルーメンを構成することにより、カテーテル全体の壁部分を減少させることができ、かつ、シースとカテーテルの間隙の液密性を保持する必要がなくなり、その結果、上記課題を解決しうるマルチルーメンカテーテルを提供できることを見出した。
【0008】
すなわち、本発明は、脱血ルーメンおよび返血ルーメンを構成する内腔、軸方向先端側へ向かって開口し該脱血ルーメンをカテーテル外部と連通しうる脱血孔、および該脱血孔よりも先端側で軸方向先端側へ向かって開口し該返血ルーメンをカテーテル外部と連通しうる返血孔を備えた外管と、ガイドワイヤー挿入用ルーメンを構成する内腔およびテーパー形状の先端チップを備えた内管とを有してなり、該内管は該外管に対して摺動可能に内挿されており、該内管の先端チップと該外管の先端部とが接合された時に、該脱血孔における脱血ルーメンとカテーテル外部との連通および該返血孔における返血ルーメンとカテーテル外部との連通が遮断されうるマルチルーメンカテーテルである。
【0009】
【作用】
本発明のマルチルーメンカテーテルは、外管がシースの役割を果たしながら内部に脱血ルーメンおよび返血ルーメンを構成し、ガイドワイヤー挿入用ルーメンを構成する内管が該外管に内挿される構造を有してなる。この構造により、従来のカテーテルに比べて、カテーテルの壁部分の割合が増加することなく、シースを備えたカテーテルを提供することができる。したがって、本発明のマルチルーメンカテーテルは、従来のカテーテルと同程度の径で前記構成を有することができ、患者にかかる負担が大きくなることも、脱血ルーメンおよび返血ルーメンの流量を減少させることもない。
また、本発明のマルチルーメンカテーテルは、脱血孔および返血孔の閉塞が、内管の先端チップと外管との接合によるものであるため、カテーテルとシースの間隙が存在しない。したがって、従来のカテーテルのように、シースとカテーテルの間隙の液密性を保持しうるような構造設計を行う必要が全くない。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明のマルチルーメンカテーテルを添付図面に示す好適な実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれらの説明に限定されるものではない。
図1および図2は本発明のマルチルーメンカテーテルの第一の実施例の、脱血孔および返血孔における連通が遮断されない状態を示す図であり、図4および図5は図1に示されるマルチルーメンカテーテルの、脱血孔および返血孔における連通が遮断された状態を示す図である。図6および8は本発明のマルチルーメンカテーテルの第二の実施例を示す図である。
【0011】
図1〜5を用いて、本発明のマルチルーメンカテーテルの第一の実施例を主として説明する。
図1および図4の本発明のマルチルーメンカテーテル1の側面図に示されるように、本発明のマルチルーメンカテーテル1は脱血ルーメンおよび返血ルーメンを構成する内腔、脱血孔23および返血孔24を備える外管2と、ガイドワイヤー挿入用ルーメンを構成する内腔と先端チップ31とを備える内管3とを有してなる。本明細書中、先端とは、患者の体内に挿入される側(図中左側)を指し、基端とは、患者の体外に配置されるコネクター等が設けられる側(図中右側)を指す。
【0012】
図2は図1に示されるマルチルーメンカテーテル1の先端部分拡大断面図であり、図3は図1に示されるマルチルーメンカテーテル1のA−A線拡大断面図である。また、図5は図4に示されるマルチルーメンカテーテル1の先端部分拡大断面図である。
図2および図3に示されるように、本発明のマルチルーメンカテーテル1における外管2は、断面形状が好ましくは略円形の管であって、その内腔は脱血ルーメン21および返血ルーメン22を構成している。該脱血ルーメン21は、外管2の先端において該外管2の軸方向先端側へ向かって開口する脱血孔23により、カテーテル1外部と流体連通しうる。該返血ルーメン22もまた、外管2の先端において該外管2の軸方向先端側へ向かって開口する返血孔24により、カテーテル1外部と流体連通しうる。
【0013】
前記返血孔24は、前記脱血孔23よりも先端側に設けられることが好ましい。ここで該返血孔24と脱血孔23との距離は、5〜70mmであることが好ましく、20〜30mmであることがより好ましい。該距離が70mmよりも長いと、後述する外管2と先端チップ31とを接合させるための摺動距離が長くなり、操作が困難になる。また、該距離が5mmよりも短いと、返血孔24から排出された血液が脱血孔23より吸引されるおそれがあり、透析効率が低くなる可能性がある。
【0014】
前記外管2は、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエステル、フッ素樹脂、シリコーン樹脂等の可撓性樹脂など、柔軟性および引張強さを有する樹脂により形成されることが好ましい。また、該外管2の形成方法としては、押出成形などが好ましく用いられる。
前記外管2の全長は、患者の皮膚から血管まで留置するのに十分な長さであり、例えば100〜300mmに設定される。該外管2の寸法は、外管2を構成する材料により適宜選択されるが、例えば外径が3〜5mm、内径が2〜4.6mm、厚みが0.2〜0.5mmである。該外管2の外径がこれより大きいと、患者の体内への導入時に患者に与える苦痛が大きくなり、該外管2の内径がこれより小さいと、内部を流通する血液流量が減少し、透析治療効率が悪くなる。また、該外管2の厚みは、患者の体内への導入時にキンクしたり、引き裂けたりするおそれのない十分な強度を有する範囲で、内部を流通する血液流量を減少させないように極力薄く形成されることが好ましい。
【0015】
前記外管2は、後述する内管3が摺動可能に内挿されてカテーテル1を構成するために、基端部に図1に示されるような接続部25が接続されている。該接続部25は、外管2の基端部と熱溶着などの手段により接続される中空の管である。該接続部25は、脱血ルーメン21および返血ルーメン22と連通し、内管3を内挿しうる大きさの内腔を有してなる。該接続部25は、脱血ルーメン21より流入した血液を透析装置に導き、該血液を返血ルーメン22より再び患者に戻すため、例えば図1に示される脱血チューブ251や返血チューブ252、これらのチューブ251および252を透析装置に接続するためのコネクター253および254の他、透析処置を行うために必要な公知の部品を備えてなる。
前記接続部25は、ポリウレタン、シリコーン樹脂等の可撓性樹脂など、外管2を構成する樹脂と同様の樹脂で形成される。また、該接続部25の形成方法としては、射出成形が好ましく用いられる。
【0016】
前記内管3は前記外管2に内挿される管であって、その内腔はガイドワイヤー挿入用ルーメン32を構成している。該内管3の先端部には、先端側へ向かって外径が減少するテーパー形状の先端チップ31が形成される。該先端チップ31は、その内部に該ガイドワイヤー挿入用ルーメン32と連通しうる通路311が形成されている。さらに該先端チップ31内部の通路311の先端は、該先端チップ31の先端において内管3の軸方向先端側へ向かって開口する開口部33により、カテーテル1外部と連通しうる。また、該内管3の基端部は、前記接続部25に内挿されており、そのさらに基端部には図1に示されるような可動部34が接続されている。該内管3を構成する材料およびその形成方法としては、前記外管2と同様のものが好ましく用いられる。
【0017】
前記可動部34は、内管3の基端部と接着あるいはインサート成形することにより接続される中空の管である。該可動部34は、ガイドワイヤー挿入用ルーメン32と連通しうる内腔を有してなる。該可動部34は前記接続部25の基端側に摺動可能に配置されるものであり、該可動部34の先端側の内径は該接続部25の基端側の外径よりも僅かに大きく設定される。該可動部34は、該ガイドワイヤー挿入用ルーメン32にガイドワイヤーを導入するためのガイドワイヤー挿入用チューブ341やコネクター342を備えてなる。
【0018】
図6は本発明のマルチルーメンカテーテル1の第二の実施例の、脱血孔および返血孔における連通が遮断されない状態を示す先端部分拡大側面図であり、図7は図6に示されるマルチルーメンカテーテル1のB−B線拡大断面図である。また、図8は図6に示されるマルチルーメンカテーテル1脱血孔および返血孔における連通が遮断された状態を示す先端部分拡大側面図である。
前記内管3は前記外管2に内挿されて使用される際、該内管3は図3に示されるように該外管2の脱血ルーメン21内に挿入されていてもよいし、図示されないが、該外管2の返血ルーメン22内に挿入されていてもよい。また、図6〜8の本発明のマルチルーメンカテーテル1の第二の実施例で示されるように、外管2に脱血ルーメン21および返血ルーメン22とは別に内管挿入用ルーメン26が設けられ、前記内管3は該内管挿入用ルーメン26内に挿入されるものであってもよい。該外管2内の内管挿入用ルーメン26が設けられる位置は、図7に示されるように脱血ルーメン21と返血ルーメン22との境目の中央部付近であってもよいし、該境目の端部であってもよい。また、該内管挿入用ルーメン26は、該外管2の脱血ルーメン21内または返血ルーメン22内に設けられるものであってもよい。該内管挿入用ルーメン26の断面形状は特に限定されないが、好ましくは内管3の断面形状と同じ形状で、その内径が該内管3の外径よりもわずかに大きいものである。
【0019】
図1、図2および図6で示されるように、透析処置を行っている時には、前記外管2の脱血ルーメン21は脱血孔23を介してカテーテル1外部と連通しており、返血ルーメン22は返血孔24を介してカテーテル1外部と連通している。
一方、透析処置を行っていない時は、該脱血ルーメン21及び返血ルーメン22内にヘパリンが導入されてヘパリンロックされるが、この時図2、図4および図8で示されるように、可動部34が接続部25に対して基端側へ摺動し、外管2の先端部が先端チップ31の基端部と液密に接合することにより、該脱血孔23および返血孔24におけるカテーテル1外部との連通が遮断される。したがって、該カテーテル1が長期間体内に留置された場合であっても、該脱血孔23より脱血ルーメン21に、あるいは返血孔24より返血ルーメン22内に血液が侵入して血栓が形成されるおそれがなく、ヘパリンロックが確実に維持される。
【0020】
前記先端チップ31の基端部および外管2の先端部は、それらの接合により前記脱血孔23および返血孔24におけるカテーテル1内外の連通を遮断するものであれば、その形状は特に限定されない。図示されるように、該脱血孔23および返血孔24がマルチルーメンカテーテル1の長手軸に対して垂直に交わる面上に形成される場合も、図示されないが、該脱血孔23および返血孔24がマルチルーメンカテーテル1の長手軸に対して鈍角を有するように交わる面上に形成される場合も、先端チップ31の基端部の形状は、該脱血孔23および返血孔24と液密に接合し得るように適宜変更される。図示される接合面を有するマルチルーメンカテーテル1のように、脱血孔23および返血孔24が同時に先端チップ31と接合するように、先端チップ31の基端部が階段状に形成されていれば、該脱血孔23および返血孔24における連通を遮断するために必要とされる可動部34の摺動距離を最大限に短くすることができるため、操作がより容易になって好ましい。
【0021】
本発明のマルチルーメンカテーテル1には、前記脱血孔23および返血孔24におけるカテーテル1内外の連通が遮断されない状態、すなわち透析処置を行っている時の配置で前記外管2および内管3を保持しうるように、接続部25と可動部34とを固定するためのロック機構が設けられていてもよい。該ロック機構としては、接続部25外表面に設けられた突部と可動部34に設けられた軸方向に延びる溝との係合による機構などが好ましく用いられる。
また、該マルチルーメンカテーテル1には、前記脱血孔23および返血孔24におけるカテーテル1内外の連通が遮断された状態、すなわち透析処置を行っていない時の内管3の先端チップ31と前記外管2とが接合された状態で、前記外管2および内管3を保持しうるように、接続部25と可動部34とを固定するためのロック機構が設けられていてもよい。該ロック機構としては、前記透析処置を行う時の配置を保持するロック機構と同様の機構が好ましく用いられる。
前記透析処置を行う時の配置を保持しうるロック機構、および透析処置を行っていない時の配置を保持しうるロック機構は、両方がカテーテル1に設けられることが好ましい。この場合のロック機構としては、例えば接続部25外表面に設けられた突部と、可動部34に設けられた軸方向に延びる溝との係合であって、該溝の形状が両端が軸に垂直な方向に曲がったコの字型や、両端が広い面積を有し中間部が狭い面積を有するダンベル型などである機構が挙げられる。
【0022】
なお、前記先端チップ31内部の通路311を除いた部分が中空である場合、本発明のマルチルーメンカテーテル1は、外管2と先端チップ31が接合し、脱血孔23および返血孔24におけるカテーテル1外部との連通が遮断された状態において、脱血ルーメン21と返血ルーメン22とは脱血孔23および返血孔24を介して液体連通することができる。したがって、ヘパリンの導入後に脱血ルーメン21あるいは返血ルーメン22に血液が残存していたとしても、一方のルーメンよりヘパリン等の液体を導入して該液体を他方のルーメンより排出することができるため、該ルーメン内に残存する血液を効果的に洗い流すことが可能である。この構成により、カテーテル1の患者体内への留置がより長期間に亘って安全に行われることができる。
【0023】
次に、本発明のマルチルーメンカテーテル1の使用方法について、図1〜図5を用いて説明する。
まず、本発明のマルチルーメンカテーテル1は図4および図5に示されるように、内管3の先端チップ31が外管2と接合された状態で患者の体内に導入される。該カテーテル1の導入の際には、公知の手段により、先端が血管内に、基端が体外に配置されるように予め患者に導入されたガイドワイヤーの基端部を先端チップ31の開口部33から挿入し、該ガイドワイヤーに沿って該カテーテル1が血管内に挿入される。この動作により、該ガイドワイヤーの基端部は、先端チップ31内部の通路311およびガイドワイヤー挿入用ルーメン32を通って可動部34に進入し、ガイドワイヤー挿入用チューブ341を経てコネクター342より突出する。所定の位置までカテーテル1が挿入されれば、カテーテル1内のガイドワイヤーは該コネクター342を介して引き抜かれ、テープなどで患者の体に該カテーテル1を固定する。該カテーテル1表面に翼4等が設けられていれば、前記固定はより長期間に亘って確実に維持され好ましい。該ガイドワイヤー挿入用チューブ341は任意の手段により一時閉塞されるが、該チューブ341内には閉塞前にヘパリンが導入されてもよい。
【0024】
患者の血管内に挿入されたカテーテル1は、透析処置を開始するに際して、脱血チューブ251のコネクター253および返血チューブ252のコネクター254を介して透析装置に接続される。次いで、図1および図2に示される状態になるように可動部34が接続部25に対して先端側へ摺動せしめられる。これにより、図2に示されるように前記先端チップ31と外管2との接合が解除され、脱血ルーメン21が脱血孔23を介してカテーテル1外部と連通し、返血ルーメン23が返血孔24を介してカテーテル1外部と連通する。
透析処置が開始されると、血液は脱血孔23を通って脱血ルーメン21に進入し、脱血チューブ251を介して透析装置に送られる。該透析装置において処理された血液は返血チューブ252より返血ルーメン22に進入し、返血孔24を通って血管内に返戻される。
【0025】
透析処置終了後、前記コネクター253および254が透析装置と切り離された後、脱血ルーメン21および返血ルーメン22にヘパリンが充填される。次いで、図4および図5に示される状態になるように可動部34が接続部25に対して基端側へ摺動せしめられる。これにより、図5に示されるように前記先端チップ31と外管2とが液密に接合され、脱血ルーメン21の脱血孔23におけるカテーテル1外部との連通および返血ルーメン22の返血孔24におけるカテーテル1外部との連通が遮断される。
このとき、該脱血ルーメン21内および返血ルーメン22内に血液が残存している場合等、必要が有れば一方のルーメンよりヘパリン等の液体を導入して、該液体を他方のルーメンより排出し、両ルーメン内に残存する血液を洗い流してもよい。その後、前記脱血チューブ251および返血チューブ252は任意の手段により閉塞され、次の透析処置開始まで該カテーテル1は血管内に留置される。
【0026】
前記透析処置は繰り返し行われ、その都度、可動部34は接続部25に対して先端側または基端側に摺動せしめられる。該可動部34および接続部25に接続されるチューブなどの部品は、脱血ルーメン21、返血ルーメン22およびガイドワイヤー挿入用ルーメン32と連通しているが、必要に応じて連通を遮断する部材が適宜設けられることにより、血管内留置時における菌の混入や液体の漏出を防止することができる。
【0027】
【発明の効果】
本発明のマルチルーメンカテーテルは、従来のカテーテルでは外側に設けられていた脱血孔および返血孔を閉塞する手段(シース)が、脱血ルーメンを構成する外管を兼用しているため、断面における壁部分の割合が増加せず、カテーテルの径が増加して患者への負担を大きくすることも、血液流量を減少させることもない。また、従来のカテーテルのようにカテーテルとシースとの間隙が存在しないため、該間隙の液密性を保持しうるような構造設計を行う必要もない。
また、本発明のマルチルーメンカテーテルは、透析処置を行わない時には先端チップと外管の接合により、脱血ルーメンおよび返血ルーメンがカテーテル外部から遮断されるため、脱血孔および返血孔が血液に暴露されず、血液が該ルーメンに侵入して血栓を形成するおそれがない。また、脱血ルーメンおよび返血ルーメンは、外部から遮断された状態においても脱血孔および返血孔を介してカテーテル内で連通しているため、該ルーメンに血液が残存しても、一方のルーメンよりヘパリンなどの液体を導入し、該液体を他方のルーメンより排出することにより、両ルーメンを効果的に洗い流すことができる。これにより、カテーテル内に血液が残存するおそれがなく、ヘパリンロックを確実に維持することができるため、患者の血管内に長期間に亘って安全に留置することが可能である。
さらに、本発明のマルチルーメンカテーテルは、先端チップと外管との接合により脱血孔および返血孔におけるカテーテル外部との連通が同時に遮断される形状とすることにより、脱血ルーメンおよび返血ルーメンを外部から遮断するために必要な可動部の摺動距離が短くなるため、より容易に操作を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のマルチルーメンカテーテルの第一の実施例の、脱血孔および返血孔における連通が遮断されない状態を示す側面図である。
【図2】 図1に示すマルチルーメンカテーテルの先端部分拡大断面図である。
【図3】 図1に示すマルチルーメンカテーテルのA−A線拡大断面図である。
【図4】 図1に示すマルチルーメンカテーテルの、脱血孔および返血孔における連通が遮断された状態を示す側面図である。
【図5】 図4に示すマルチルーメンカテーテルの先端部分拡大断面図である。
【図6】 本発明のマルチルーメンカテーテルの第二の実施例の、脱血孔および返血孔における連通が遮断されない状態を示す先端部分拡大図である。
【図7】 図6に示すマルチルーメンカテーテルのB−B線拡大断面図である。
【図8】 図6に示すマルチルーメンカテーテルの、第脱血孔および返血孔における連通が遮断された状態を示す先端部分拡大図である。
【符号の説明】
1 マルチルーメンカテーテル
2 外管
21 脱血ルーメン
22 返血ルーメン
23 脱血孔
24 返血孔
3 内管
31 先端チップ
32 ガイドワイヤー挿入用ルーメン
Claims (6)
- 脱血ルーメンおよび返血ルーメンを構成する内腔、軸方向先端側へ向かって開口し該脱血ルーメンをカテーテル外部と連通しうる脱血孔、および該脱血孔よりも先端側で軸方向先端側へ向かって開口し該返血ルーメンをカテーテル外部と連通しうる返血孔を備えた外管と、ガイドワイヤー挿入用ルーメンを構成する内腔およびテーパー形状の先端チップを備えた内管とを有してなり、該内管は該外管に対して摺動可能に内挿されており、該内管の先端チップと該外管の先端部とが接合された時に、該脱血孔および該返血孔が閉塞されうるマルチルーメンカテーテル。
- 前記内管は、前記外管の脱血ルーメン内に挿入されてなる請求項1記載のマルチルーメンカテーテル。
- 前記内管は、前記外管の返血ルーメン内に挿入されてなる請求項1記載のマルチルーメンカテーテル。
- 前記外管の内腔には、さらに前記内管挿入用ルーメンが設けられ、前記内管は該内管挿入用ルーメン内に挿入されてなる請求項1記載のマルチルーメンカテーテル。
- 前記外管の基端部には中空の管である接続部が接続されており、前記内管の基端部には中空の管であり前記接続部の基端側に摺動可能に配置される可動部が接続されており、前記外管の脱血ルーメンが脱血孔を介してカテーテル外部と連通し、かつ返血ルーメンが返血孔を介してカテーテル外部と連通している状態で、前記外管および内管を保持するために接続部と可動部とを固定するためのロック機構が設けられてなる請求項1〜4のいずれかに記載のマルチルーメンカテーテル。
- 前記外管の基端部には中空の管である接続部が接続されており、前記内管の基端部には中空の管であり前記接続部の基端側に摺動可能に配置される可動部が接続されており、前記脱血孔および返血孔が閉塞された状態で、前記外管および内管を保持するために接続部と可動部とを固定するためのロック機構が設けられてなる請求項1〜5のいずれかに記載のマルチルーメンカテーテル。
Priority Applications (7)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
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