JP2004135571A - 細胞剥離剤及び細胞シートの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】動物由来の蛋白質を使用せずに培養細胞を高収率(高回収率及び高生存率)で剥離回収できる細胞剥離剤を提供すること。
【解決手段】細胞接着シグナルを現す最小アミノ酸配列を少なくとも1個有するポリペプチド(A)を有する細胞培養基材(K)とこの基材(K)を用いて細胞培養された細胞(S)とを剥離するための細胞剥離剤であって、蛋白質分解酵素の含有量が細胞剥離剤の重量に基づいて0又は0.1重量%以下であることを特徴とする細胞剥離剤を用いる。キレート剤(B)を必須成分として含有してなることが好ましく、(B)としては、ビスカルボキシメチルアミノ基を少なくとも1個有する化合物及び/又はこの塩が好ましく、さらに好ましくはエチレンジアミン四酢酸、ニトロ三酢酸、ウラミル二酢酸及びこれらの金属塩である。
【選択図】なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、細胞剥離剤及び細胞シートの製造方法に関し、さらに詳しくはトリプシンのような蛋白質分解酵素を含有しない細胞剥離剤及び該剥離剤を用いて得られる細胞シートに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、細胞剥離剤としては、トリプシンのような動物由来の蛋白質分解酵素を用いるものが知られている(非特許文献1)。
【0003】
【非特許文献1】
組織培養の技術 第三版、32頁、日本組織培養学会編、朝倉書店発行
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
蛋白質分解酵素は、細胞外蛋白質を分解することによって細胞を基材から剥離するため、細胞活性が低下しやすく、さらに、細胞間の接着に有効な細胞外蛋白質も分解されやすいため、シート状の細胞が得られにくい。また、トリプシンのような動物由来の酵素には、成分未知の蛋白質等が含まれているため、精製工程が必要となり、この精製工程が複雑な上コストがかかる。さらには、動物由来の酵素には、ウィルス感染の危険性があるため、最近注目されている再生医工学においては動物由来の酵素を含まない安全な剥離剤が強く求められている。本発明の目的は、動物由来の蛋白質を使用せずに培養細胞を高収率(高回収率及び高生存率)で剥離回収できる細胞剥離剤(安全性が高くかつシート状の細胞を容易に得ることができる細胞剥離剤)を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、鋭意研究を重ねてきた結果、特定の細胞剥離剤が、特定の細胞培養基材とこの基材を用いて細胞培養した細胞とを容易に剥離することができることを見いだし本発明に到達した。すなわち、本発明の細胞剥離剤は、細胞接着シグナルを現す最小アミノ酸配列を少なくとも1個有するポリペプチド(A)を有する細胞培養基材(K)とこの基材(K)を用いて細胞培養された細胞(S)とを剥離するための細胞剥離剤であって、蛋白質分解酵素の含有量が細胞剥離剤の重量に基づいて0又は0.1重量%以下である点を要旨とする。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明において、細胞接着シグナルを現す最小アミノ酸配列としては、接着シグナルとして働くものであればいずれも使用でき、例えば、株式会社永井出版発行「病態生理」Vol.9、No.7(1990)527頁に記載されているもの等が挙げられる。この中で接着する細胞が多いという点で、Arg Gly Asp配列、Leu Asp Val配列、Arg Glu Asp Val配列(1)、Tyr Ile Gly Ser Arg配列(2)、Pro Asp Ser Gly Arg配列(3)、Arg Tyr Val Val Leu Pro Arg配列(4)、Leu Gly Thr Ile Pro Gly配列(5)、Arg Asn Ile Ala Glu Ile Ile Lys Asp Ile配列(6)、Ile Lys Val Ala Val配列(7)、Leu Arg Glu配列、Asp Gly Glu Ala配列(8)及びHis Ala Val配列からなる群から選ばれる少なくとも1種の配列が好ましく、さらに好ましくはArg Gly Asp配列、Ile Lys Val Ala Val配列(7)及びHis Ala Val配列からなる群から選ばれる少なくとも1種の配列である。なお、アミノ酸配列はアミノ酸3文字表記で現わし、( )内にアミノ酸配列表に対応する配列番号を付記した(以下同様である)。
【0007】
この最小アミノ酸配列の含有量は、1分子中に、少なくとも1個有すればよいが、3個以上が好ましく、さらに好ましくは5個以上、特に好ましくは10個以上であり、また50個以下が好ましく、さらに好ましくは40個以下、特に好ましくは30個以下である。含有量がこの範囲であると、細胞接着活性が高まる他に、本来の細胞機能を維持した状態で細胞の増殖を促進しやすく、さらに本発明の細胞剥離剤による細胞の剥離が容易となる。
【0008】
ポリペプチド(A)の数平均分子量(Mn)は、細胞に対する毒性が低く、接着性能が高いという点で、5,000〜5,000,000が好ましく、さらに好ましくは10,000〜1,000,000、特に好ましくは50,000〜500,000である。すなわち、ポリペプチド(A)の数平均分子量(Mn)は、5,000以上が好ましく、さらに好ましくは10,000以上、特に好ましくは50,000以上であり、また5,000,000以下が好ましく、さらに好ましくは1,000,000以下、特に好ましくは500,000以下である。なお、(A)のMnは、SDS−PAGE法(Naドデシルスルフェイト−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法)で、(A)を水中で展開し、泳動距離を標準物質と比較することによって求められる。
【0009】
ポリペプチド(A)は、細胞接着シグナルを現わす最小アミノ酸配列以外に、(A)の熱安定性が高まるアミノ酸配列{シルクフィブロイン由来のGly Ala Gly Ala Gly Ser配列(9)等}を少なくとも2個有することが好ましく、このアミノ酸配列を3個以上有することがさらに好ましく、5〜30個有することが特に好ましい。
【0010】
ポリペプチド(A)としては、(Gly Ala Gly Ala Gly Ser)配列(10)とArg Gly Asp配列とを有するポリペプチド、(Gly Ala Gly Ala Gly Ser)配列(10)とTyr Ile Gly Ser Arg配列(2)とを有するポリペプチド、(Gly AlaPro (Gly Pro Pro)配列(11)とArg Gly Asp配列とを有するポリペプチド、(Gly Ala Pro (Gly Pro Pro)配列(11)とTyr Ile Gly Ser Arg配列(2)とを有するポリペプチド、及び(Gly Ala Gly Ala Gly Ser)配列(10)とIle Lys Val Ala Val配列(7)とを有するポリペプチド(特表平3−502935号公報)等が挙げられる。
【0011】
市場から入手できるポリペプチド(A)としては、三洋化成工業(株)製プロネクチンF{遺伝子組替大腸菌により製造され、1分子中にArg Gly Asp配列と(Gly Ala Gly Ala Gly Ser)配列(10)とを各々約13個有するMn約11万のポリペプチド}、同プロネクチンFプラス{プロネクチンFをジメチルアミノエチルクロライドと反応させて水溶性にしたもの}、及び同プロネクチンL{遺伝子組替大腸菌により製造され、1分子中にIle Lys Val Ala Val配列(7)と(Gly Ala Gly Ala Gly Ser)配列(10)とを各々約7個有するMn約9万のポリペプチド}等が挙げられる。また、宝酒造(株)製RetroNectin(リコンビナントヒトフィブロネクチンCH−296){ヒトフィブロネクチン細胞接着シグナルであるCS1シグナルと細胞接着ドメインTypeIII及びヘパリン結合ドメインIIを1つずつ有するMn約6万のポリペプチド(Leu Asp Val配列を約1個含有)}、同RGDS−Protein A{Arg Gly Asp配列をProtein A(IgG結合ドメイン)に挿入したMn約3万のポリペプチド}(Arg Gly Asp配列を約1個含有)も(A)として使用可能である。
【0012】
ポリペプチド(A)の製造方法は特に制限されず、ペプチドを合成する従来既知の方法と同様にして製造することができ、有機合成法(固相合成法、液相合成法等)及び生化学的合成法[遺伝子組換微生物(酵母、細菌、大腸菌等)]等によって合成することができる。有機合成法に関しては、日本生化学学会編「続生化学実験講座2、タンパク質の化学(下)」第641〜694頁(昭和62年5月20日;株式会社東京化学同人発行)に記載されている方法等が用いられる。生化学的合成法に関しては、特表平3−502935号公報に記載されている方法等が用いられる。高分子量の(A)を容易に合成できる点で、遺伝子組換微生物による生化学的合成法が好ましく、特に好ましくは遺伝子組換大腸菌を用いて合成する方法である。
【0013】
ポリペプチド(A)の含有量としては、細胞培養基材(K)の培養表面積100cmあたり、0.1μg〜100mgが好ましく、さらに好ましくは1μg〜10mg、特に好ましくは5μg〜1mg、最も好ましくは10μg〜500μgである。すなわち、ポリペプチド(A)の含有量としては、細胞培養基材(K)の培養表面積100cmあたり、0.1μg以上が好ましく、さらに好ましくは1μg以上、特に好ましくは5μg以上、最も好ましくは10μg以上であり、また100mg以下が好ましく、さらに好ましくは10mg以下、特に好ましくは1mg以下、最も好ましくは500μg以下である。なお、培養表面積は、細胞培養基材(K)の表面のうち、培養される細胞が接着し得る表面の表面積を意味する。ここで、細胞が入り込まないような微小な凹凸(例えば、0.1mm以下)は平坦な表面として取扱うが、培養表面積を高める目的でリブ(畝)等が設けてあるものについてはそのリブの表面積を培養表面積に含まれる。また、細胞培養基材(K)の培養表面積は、基材メーカーがカタログに記載している培養容器の培養表面積をそのまま適用できる。
【0014】
細胞培養基材(K)は、培養容器にポリペプチド(A)を有していればよく、培養容器内に練り込まれていてもよく、表面に付着していもよい。培養容器としては特に制限はなく細胞培養に一般に用いられるものが使用でき、プレート、シャーレ、T−フラスコ、ローラーボトル、マイクロキャリアビーズ及びホローファイバー等が用いられる。これらの培養容器の材質としては、細胞培養に使用できるものであればいずれも使用でき、プラスチック、ガラス、天然由来材料(デキストラン、セルロース等)及び無機材料(ヒドロキシアパタイト等)等が挙げられる。
【0015】
細胞培養基材(K)を得る方法としては、培養容器にポリペプチド(A)をコーティング処理する方法、及び(A)を培養容器の原料に練り込んだ後、培養容器に成型する方法等が挙げられる。培養容器へのポリペプチド(A)のコーティング方法としては、(A)を溶媒に溶かした溶液を予め作製し、培養容器に加え、所定のコーティング時間静置した後に余分の溶液を捨て乾燥させるか、余分の溶液を捨てずに乾燥させる方法や、(A)の溶液をローラーボトルに加え、所定のコーティング時間ローラーボトルを回転した後に余分の溶液を捨て乾燥させるか、余分の溶液を捨てずに回転させながら乾燥させる方法、(A)の溶液中にマイクロキャリアビーズを入れて所定のコーティング時間必要に応じて攪拌した後に溶液から取り出し必要に応じて乾燥させる方法、及び(A)の溶液をホローファイバー中に所定のコーティング時間循環させ必要に応じて乾燥させる方法等が挙げられる。
【0016】
ポリペプチド(A)の溶液を作製するために用いられる溶媒としては特に制限はないが、無機塩、有機酸塩、アミノ酸、ビタミン、アルコール、脂質・糖、酸及び/又は塩基を0.1〜50重量%(好ましくは1〜30重量%)含有する水溶液及び水等が使用できる。無機塩としては、ハロゲン化金属塩、硫酸金属塩、リン酸金属塩、硝酸金属塩、炭酸金属塩及び過ハロゲン酸金属等が使用でき、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、塩化カルシウム、硝酸鉄、塩化カリウム、硫酸マグネシウム、炭酸ナトリウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸水素カリウム、硫酸銅、硫酸鉄、塩化リチウム、臭化ナトリウム、臭化リチウム過塩素酸ナトリウム及び過塩素酸リチウム等が挙げられる。
【0017】
有機酸塩としては、蟻酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、酢酸リチウム及び酒石酸ナトリウム等が挙げられる。アミノ酸としては、アルギニン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、バリン、アラニン、アスパラギン、アスパラギン酸、グルタミン酸、プロリン、セリン及びグリシン等が挙げられる。ビタミンとしては、コリン、イノシトール、ニコチンアミド、グルタミン、ビタミンA及びビタミンB12等が挙げられる。アルコールとしては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール及びブタノール等が挙げられる。脂質・糖としては、脂質、単糖、2糖、オリゴ糖、アミノ糖及び酸性糖等が挙げられる。酸としては、無機酸及び炭素数1〜6の有機酸等が使用でき、塩酸、燐酸、酢酸、蟻酸、フェノール及び硫酸等が挙げられる。塩基としては、無機塩基及び炭素数2〜6の有機塩基等が使用でき、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア及びトリエチルアミン等が挙げられる。水としては、蒸留水、イオン交換水、水道水及びイオン交換蒸留水等が挙げられる。これらの溶媒の中で、無機塩、酸及び/又は塩基を含有する水溶液及び水が好ましく、さらに好ましくは無機塩を含有する水溶液及び水、特に好ましくは無機塩を含有する水溶液である。
【0018】
ポリペプチド(A)の溶液の濃度は、溶媒1ml当り、0.01μg〜100mgが好ましく、さらに好ましくは0.1μg〜10mg、特に好ましくは1μg〜1mgである。すなわち、(A)の溶液の濃度は、溶媒1ml当り、0.01μg以上が好ましく、さらに好ましくは0.1μg以上、特に好ましくは1μg以上であり、また100mg以下が好ましく、さらに好ましくは10mg以下、特に好ましくは1mg以下である。コーティング時間としては、用いる細胞培養基材(K)によっても異なるが、30秒〜48時間が好ましく、さらに好ましくは1分〜24時間、特に好ましくは3分〜12時間である。すなわち、コーティング時間としては、30秒以上が好ましく、さらに好ましくは1分以上、特に好ましくは3分以上であり、また48時間以下が好ましく、さらに好ましくは24時間以下、特に好ましくは12時間以下である。必要に応じて行われる乾燥の条件についても特に制限はなく、通常の方法が適用でき、例えば、順風乾燥機や減圧乾燥機等、0〜200℃、0.001Pa〜大気圧の圧力下で、1〜100時間等である。
【0019】
また、必要に応じて行われる乾燥の前又は後で、無機塩を含有する水溶液又は水で通常の方法で洗浄することもできる。また、コーティングの後で、必要に応じて滅菌処理を施してもよい。滅菌方法は特に制限は無く、例えば、放射線(ガンマ線等)滅菌、エチレンオキサイドガス滅菌、オートクレーブ滅菌及び乾熱滅菌等が挙げられる。
【0020】
この細胞培養基材(K)を用いて細胞培養された細胞(S)としては、細胞接着性を有する細胞であれば特に限定されず、ヒト、サル、マウス、ハムスター及びラット等の初代培養細胞や株化細胞等の公知の細胞等が使用でき、用途によって以下の細胞等が含まれる。医薬品を生産する場合、CHO(チャイニーズハムスター卵巣)細胞、Vero(アフリカミドリザル腎形質転換)細胞、MDCK(イヌ腎形質転換)細胞及びWI38(ヒト胎児肺)細胞等が挙げられる。皮膚、軟骨、骨、肝臓、腎臓及び角膜等の再生医療に用いる場合、ヒト由来の幹細胞、内皮細胞、上皮細胞、実質細胞、線維芽細胞及び角質細胞等が挙げられる。動物実験代替のための医薬品スクリーニング、又は眼や皮膚に対する刺激性を評価する場合、ヒト皮膚角化細胞、ヒトやウシの血管内皮細胞、ラット肝細胞及びヒト角膜細胞等が挙げられる。これら細胞(S)の中で、本発明の細胞剥離剤がシート状の細胞(細胞シート)を得るのに最適であるという観点等から、再生医療に用いられるヒト由来の細胞が好ましい。
【0021】
本発明の細胞剥離剤中の蛋白質分解酵素の含有量(重量%)は、細胞剥離剤の重量に基づいて、0又は0.1以下が好ましく、さらに好ましくは0又は0.05以下、特に好ましくは0又は0.005以下、最も好ましくは0である。蛋白質分解酵素の含有量がこの範囲内であると細胞外蛋白質の分解が抑制され、細胞活性が低下し難くくなると共に、細胞がシート状で得られやすくなる。このような蛋白分解酵素としては、トリプシン、プロテアーゼ及びコラゲナーゼ等が挙げられる。なお、蛋白質分解酵素は、市販のプロテアーゼ測定キット等を用いて測定プロトコールに基づいて定量される。プロテアーゼ測定キットとしては、モレキュラープローブ社製EnzChek Protease Assay Kit及びコスモバイオ社製プロテアーゼAssayキット等が挙げられる。
【0022】
本発明の細胞剥離剤には、細胞剥離成分としてキレート剤(B)を必須成分として含有することが好ましい。キレート剤(B)としては、ビスカルボキシメチルアミノ基を少なくとも1個有する化合物(B1)、カルボキシル基及びアミノ基を少なくとも1個ずつ有する化合物(B2)、ジカルボン酸(B3)、アミノ基を少なくとも2個有する化合物(B4)、ヒドロキシル基及びアミノ基を少なくとも1個ずつ有する化合物(B5)、メルカプト基及びアミノ基を少なくとも1個ずつ有する化合物(B6)、β−ジケトン(B7)、並びにこれらの塩(B8)等が使用できる。
【0023】
ビスカルボキシメチルアミノ基を少なくとも1個有する化合物(B1)としては、ジアミノシクロヘキサン四酢酸(DCTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、エチレングリコールビス(2−アミノエチルエーテル)四酢酸(EGTA)、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸(HEDTA)、ニトリロ三酢酸(NTA)、及びウラミル二酢酸(UDA)等が挙げられる。カルボキシル基及びアミノ基を少なくとも1個ずつ有する化合物(B2)としては、α−アラニン、グルタミン酸、チロシン、システイン及びグリシン等が挙げられる。ジカルボン酸(B3)としては、シュウ酸、フタル酸、サリチル酸、酒石酸及びクエン酸等が挙げられる。アミノ基を少なくとも2個有する化合物(B4)としては、フェナントロリン及びジメチルグリオキシム等が挙げられる。ヒドロキシル基及びアミノ基を少なくとも1個ずつ有する化合物(B5)としては、8−ヒドロキシキノリン−5−スルホン酸及びオキシン等が挙げられる。メルカプト基及びアミノ基を少なくとも1個ずつ有する化合物(B6)としては、ジチゾン等が挙げられる。β−ジケトン(B7)としては、アセチルアセトン等が挙げられる。これらの塩(B8)としては、これらのアルカリ金属(ナトリウム、カリウム及びリチウム等)の塩等が挙げられる。これらのうち、EDTA、NTA、UDA及びこれらのアルカリ金属塩が好ましく、さらに好ましくはEDTA及びこのアルカリ金属塩、特に好ましくはEDTAのアルカリ金属塩、最も好ましくはEDTA2ナトリウム塩及びEDTA4ナトリウム塩である。
【0024】
キレート剤(B)をそのまま細胞剥離剤とすることもできるが、細胞剥離剤には、必要により溶媒を含有させることができる。細胞への損傷及び取扱性等の観点から、溶媒に溶解したものが好ましい。溶媒としては特に制限はないが、ポリペプチド(A)の溶液を作製するために用いられる溶媒と同じもの{無機塩、有機酸塩、アミノ酸、ビタミン、アルコール、脂質・糖、酸及び/又は塩基を0.1〜50重量%(好ましくは1〜30重量%)含有する水溶液及び水}等が使用できる。これらの溶媒の中で、無機塩、酸及び/又は塩基を含有する水溶液及び水が好ましく、さらに好ましくは無機塩を含有する水溶液及び水、特に好ましくは無機塩を含有する水溶液である。
【0025】
溶媒を使用する場合、細胞剥離剤中のキレート剤(B)の含有量(mmol)は、溶媒1リットル当り、0.01〜100が好ましく、さらに好ましくは0.1〜10、特に好ましくは0.5〜5である。すなわち、この場合、細胞剥離剤中のキレート剤(B)の含有量(mmol)は、溶媒1リットル当たり、0.01mmol以上が好ましく、さらに好ましくは0.1mmol以上、特に好ましくは0.5mmol以上であり、また100mmol以下が好ましく、さらに好ましくは10mmol以下、特に好ましくは5mmol以下である。
【0026】
細胞培養基材(K)を用いて細胞培養する方法としては特に制限はないが、朝倉書店発行「日本組織培養学会編 組織培養の技術第三版」32頁に記載の方法等が適用でき、細胞培養基材(K)及び細胞と培地(V)とを接触させて、二酸化炭素インキュベーター等の中で放置する方法等が使用できる。
【0027】
培地(V)としても特に制限はなく、血清培地及び無血清培地のいずれもが使用可能である。血清培地としては、用いる細胞及びポリペプチド(A)の種類に応じて、MEM培地、BME培地、DME培地、αMEM培地、IMEM培地、ES培地、DM−160培地、Fisher培地、F12培地、WE培地及びRPMI培地等の朝倉書店発行「日本組織培養学会編 組織培養の技術第三版」581頁に記載の基礎培地に血清を加えたもの等が挙げられる。血清としては、ウシ胎児血清、コウシ血清、ウマ血清、ヒト血清及びニワトリ血清等が使用できる。無血清培地としては、市販の無血清培地[味の素(株)製無血清培地ASF103、同ASF104、同ASF301や、ギブコ社製無血清培地CHO−SFM、同VP−SFM、同OPtiPro−SFM及びCD−SFM等]や、上記基礎培地に栄養成分(グルタミン等)、pH調整剤(炭酸カルシウム、リン酸カルシウム及び炭酸水素ナトリウム等)及びホルモン類(インシュリン等)等を加えたもの等が挙げられる。血清培地を使用した場合、血清中に成分未知の蛋白質等が含まれること、細胞を用いる医薬品生産の場合には精製工程が複雑となりコストがかかること、さらにウィルス感染の危険性があること等の理由から、血清を含まないいわゆる無血清培地が好ましい。
【0028】
培地(V)の使用量(mL)は、用いる細胞培養基材(K)の種類や細胞の種類等によって異なるが、細胞培養基材(K)の培養表面積1cm当り、0.0001〜50が好ましく、さらに好ましくは0.001〜5、特に好ましくは0.01〜0.5である。すなわち、培地(V)の使用量(mL)は、細胞培養基材(K)の培養表面積1cm当り、0.0001以上が好ましく、さらに好ましくは0.001以上、特に好ましくは0.01以上であり、また50以下が好ましく、さらに好ましくは5以下、特に好ましくは0.5以下である。
【0029】
培地には、さらに必要に応じて細胞増殖因子(C)を含有させることができる。細胞増殖因子(C)を含有させることにより、細胞の増殖速度をさらに高めたり、細胞活性を高めたり、細胞が本来有する機能を発現させたりすることができる。細胞増殖因子(C)は細胞を増殖させる活性のある物質であり、FGF、VEGF、HGF、EGF、PDGF、IGF及びBMP等が挙げられ、この他に、例えば財団法人名古屋大学出版会発行「上田実編ティッシュエンジニアリング(1999年)」43〜51頁及び同文献に付記されている参考文献に記載されているもの等も用いられる。これらのうち、細胞の増殖活性が高いものとして、FGF、VEGF、HGF及びEGFが好ましく、さらに好ましくはHGF及びEGFである。
【0030】
細胞増殖因子(C)を使用する場合、(C)の含有量(μg)は、培地1000mLに基づいて、0.001〜50,000が好ましく、さらに好ましくは1〜100、特に好ましくは10〜90である。すなわち、この場合、(C)の含有量(μg)は、培地1000mLに基づいて、0.001以上が好ましく、さらに好ましくは1以上、特に好ましくは10以上であり、また50,000以下が好ましく、さらに好ましくは100以下、特に好ましくは90以下である。(C)の含有量がこの範囲であると、細胞の増殖性がさらに促進される。脂肪増殖因子(C)を培地に添加する方法としては、培地に(C)を直接加える方法や、予め(C)を前記の溶媒に溶解又は分散したものを培地に加える方法等が挙げられる。
【0031】
さらに培地(V)中には必要に応じて、他の成分(D)として、公知の安定化剤(酸化防止剤及び抗菌剤等)等を含有させることができる(組織培養の技術 第三版、19頁、日本組織培養学会編、朝倉書店発行等)。
【0032】
播種する細胞の量としては用いる細胞培養基材(K)の種類やポリペプチド(A)の種類等によって異なるが、細胞培養基材(K)の培養表面積1cm当り、0.1個〜1000万個が好ましく、さらに好ましくは1〜500万個、特に好ましくは100〜100万個である。
【0033】
細胞培養の条件としては特に制限はないが例えば、次のような条件を採用できる。細胞培養の雰囲気は、二酸化炭素と空気の混合物(二酸化炭素:空気の体積混合比=0.1〜40:99.9〜60)等の雰囲気が使用できる。細胞培養温度(℃)としては、細胞増殖が活発に行えるという点で、1〜90が好ましく、さらに好ましくは10〜50である。培養期間は、1時間〜100日間が好ましく、さらに好ましくは1〜36日間である。培地交換しながら細胞培養することが好ましく、その交換頻度としては、1〜7日毎が好ましく、さらに好ましくは2〜3日毎である。この条件に設定された二酸化炭素インキュベーターを使用することが好ましい。培養条件として特に好ましい例としては、二酸化炭素濃度5体積%、37℃の条件で、2〜3日毎に培地交換しながら1〜36日間培養することである。
【0034】
以上の様に、(1)細胞接着シグナルを現す最小アミノ酸配列を少なくとも1個有するポリペプチド(A)を有する細胞培養基材(K)及び培地(V)を用いて細胞培養する工程に次いで、(2)本発明の細胞剥離剤を用いて細胞培養基材(K)と細胞培養された細胞(S)とを剥離する工程を経ることにより、細胞培養された細胞(S)(特に細胞シート)を得ることができる。この(2)の工程としては、細胞培養した後に培地を除去して、細胞培養基材(K)及び細胞培養された細胞(S)をPBS(−)等で1〜5回洗浄し、これと本発明の細胞剥離剤とを接触させながら静置又は振盪させることが含まれ、これにより、細胞培養基材(K)から細胞(S)をシート状又はばらばらの状態で剥離させることができる。なお、PBS(−)とは、pH7.2に調整されたリン酸水素ナトリウム及びリン酸水素カリウムの生理食塩水溶液である。
【0035】
本発明の細胞剥離剤が使用条件において液状の場合{キレート剤(B)と溶媒とからなるもの等}、この使用量(mL)は用いる細胞培養基材(K)の種類や細胞の種類等によって異なるが、細胞培養基材の培養表面積1cm当り、0.0001〜50が好ましく、さらに好ましくは0.001〜5、特に好ましくは0.01〜0.5である。すなわち、この場合、本発明の細胞剥離剤の使用量(mL)は、細胞培養基材の培養表面積1cm当り、0.0001以上が好ましく、さらに好ましくは0.001以上、特に好ましくは0.01以上であり、また50以下が好ましく、さらに好ましくは5以下、特に好ましくは0.5以下である。また、本発明の細胞剥離剤が使用条件において固体の場合{キレート剤(B)と溶媒とからなるもの等}、この使用量(mmol)は用いる細胞培養基材(K)の種類や細胞の種類等によって異なるが、細胞培養基材の培養表面積1cm当り、1×10−9〜5が好ましく、さらに好ましくは1×10−7〜0.05、特に好ましくは5×10−6〜2.5×10−3である。すなわち、この場合、本発明の細胞剥離剤の使用量(mmol)は、細胞培養基材の培養表面積1cm当り、1×10−9以上が好ましく、さらに好ましくは1×10−7以上、特に好ましくは5×10−6以上であり、また5以下が好ましく、さらに好ましくは0.05以下、特に好ましくは2.5×10−3以下である。
【0036】
静置又は振盪させる温度(℃)としては、5〜50が好ましく、さらに好ましくは15〜45、特に好ましくは25〜40である。すなわち、この温度(℃)としては、5℃以上が好ましく、さらに好ましくは15℃以上、特に好ましくは25℃以上であり、また50℃以下が好ましく、さらに好ましくは45℃以下、特に好ましくは40℃以下である。静置又は振盪させる時間(分間)としては、1〜60が好ましく、さらに好ましくは3〜30、特に好ましくは5〜15である。すなわち、この時間(分間)としては、1分間以上が好ましく、さらに好ましくは3分間以上、特に好ましくは5分間以上であり、また60分以下が好ましく、さらに好ましくは30分以下、特に好ましくは15分以下である。
【0037】
細胞(S)と細胞培養基材(K)とを剥離した後、必要に応じて、本発明の細胞剥離剤を除き、PBS(−)又は使用した培地で洗浄することにより目的の細胞(S)(特に細胞シート)が得られる。この細胞(S)(特に細胞シート)は、そのまま又は適当な支持体に貼付することにより再生医療等に応用することができる。また、この細胞(S)(特に細胞シート)は、医薬品の薬効評価や代謝毒性評価等の評価キットに使用することもできる。また、ピペットで吸引及び吐出を繰り返すこと等により、細胞懸濁液を得ることができる。この細胞懸濁液は、そのまま、細胞培養に使用することができる。
【0038】
【実施例】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。なお、以下において、特記しない限り部は重量部を、%は重量%を意味する。
<実施例1>
特表平3−502935号公報中の実施例記載の方法に準じて、(Gly Ala Gly Ala Gly Ser)配列(10)とArg Gly Asp配列とを各々約12個含むMn約11万の遺伝子組換え大腸菌の産生蛋白質”SLPF”を作製した。次いで、SLPFの4.5規定の過塩素酸リチウム溶液(SLPFの濃度;1mg/ml)をPBS(−)でSLPFの濃度が10μg/mlとなるように希釈し、SLPF溶液を作製した。旭テクノグラス製35mmφ細胞培養ディッシュにSLPF溶液を0.5ml加え、室温で1週間放置して乾燥した。さらにPBS(−)2mlで2回洗浄して、SLPFコート細胞培養基材1を得た(SLPFの含有量;培養表面積100cm当たり、52μg)。一方、イヌ腎形質転換(MDCK)細胞を、無血清培地(インビトロジェン製無血清培地GibocOPtiPro−SFMにグルタミンを4mmol/L加えたもの)に細胞濃度:5万個/mLに分散したもの3mlを細胞培養基材1に加え、二酸化炭素と空気の混合物(二酸化炭素/空気=5/95体積比)中、37℃で、細胞培養基材1のほぼ全面を細胞で覆われるまで3日間培養を行なった。
【0039】
無血清培地を除去し、PBS(−)2mlで2回洗浄した後、エチレンジアミン四酢酸2ナトリウム塩0.1部をPBS(−)100部に溶解して調製したエチレンジアミン四酢酸2ナトリウム塩0.1%PBS(−)溶液(剥離液1)1mlを細胞培養基材1に加え、37℃で10分間保持し、剥離液1がこぼれないようにゆるやかな振動を細胞培養基材1に与えたところ、細胞がシート状に剥離した。次いで、剥離液1を除き、PBS(−)2mlで1回洗浄後、無血清培地3mlを加え、ピペットで吸引,吐出を繰り返し、細胞懸濁液を得た。この細胞懸濁液を一部採りトリパンブルーで処理し、1ml当りの死んでいる細胞を発色させその数(死細胞数)を求めた。また、総細胞数を血球盤を用いて顕微鏡下目視により数えた。そして、これらの細胞の数から、下式に従って生存率を求め、総細胞数及び生存率を表1に示した。
【数1】
Figure 2004135571
【0040】
<実施例2>
SLPFの代わりに、特表平3−502935号公報中の実施例記載の方法に準じて、(Gly Ala Gly Ala Gly Ser)配列(10)とIle Lys Val Ala Val配列(7)とを各々約7個含むMn約9万の遺伝子組換え大腸菌の産生蛋白質”SLPL”を作製し、使用すること以外は、実施例1と同様にして、SLPLコート細胞培養基材2を得た(SLPLの含有量;培養表面積100cm当たり、52μg)。そして、実施例1と同様に細胞培養を行った後、実施例1と同様に剥離液1で処理したところ、細胞がシート状に剥離した。実施例1と同様にして細胞懸濁液を得た後、総細胞数及び生存率を求め、その結果を表1に示した。
【0041】
<実施例3>
インビトロジェン社製トリプシン−EDTA溶液(トリプシン濃度;0.25%、EDTA2ナトリウム濃度;0.04%)1部と実施例1で得られた剥離液1の61.5部との混合物(トリプシン濃度;0.004%、EDTA2ナトリウム濃度;0.099%;剥離液2)を、剥離液1の代わりに用いること以外は実施例1と同様に処理をしたところ、細胞がシート状に剥離した。実施例1と同様にして細胞懸濁液を得た後、総細胞数及び生存率を求め、その結果を表1に示した。
【0042】
<実施例4>
インビトロジェン社製トリプシン−EDTA溶液(トリプシン濃度;0.25%、EDTA2ナトリウム濃度;0.04%)1部と実施例1で得られた剥離液1の24部との混合物(トリプシン濃度;0.01%、EDTA2ナトリウム濃度;0.098%;剥離液3)を、剥離液1の代わりに用いること以外は実施例1と同様に処理をしたところ、細胞がシート状に剥離した。そして、実施例1と同様にして細胞懸濁液を得た後、総細胞数及び生存率を求め、その結果を表1に示した。
【0043】
<実施例5>
インビトロジェン社製トリプシン−EDTA溶液(トリプシン濃度;0.25%、EDTA2ナトリウム濃度;0.04%)1部と実施例1で得られた剥離液1の4部との混合物(トリプシン濃度;0.05%、EDTA2ナトリウム濃度;0.088%;剥離液4)を、剥離液1の代わりに用いること以外は実施例1と同様に処理をしたところ、細胞は若干裂け目があるシート状に剥離した。実施例1と同様にして細胞懸濁液を得た後、総細胞数及び生存率を求め、その結果を表1に示した。
【0044】
<比較例1>
剥離剤1の代わりにインビトロジェン社製トリプシン−EDTA溶液(トリプシン濃度;0.25%、EDTA2ナトリウム濃度;0.04%)をそのまま剥離剤5として使用する以外は実施例1と同様に行った。実施例1と同様に細胞培養を行った後、剥離液4を用いて実施例1と同様にして処理したところ、細胞が1個ずつばらばらに剥離し、シート状にはならなかった。そして、大豆トリプシンインヒビターのPBS(−)溶液(濃度;0.5mg/ml)を2ml加えた後、シャーレ内の細胞、剥離液及びインヒビターのPBS(−)溶液の全量を15ml遠沈管に移し、2000rpmで5分間遠心分離を行った。上層を除き、無血清培地3mlを加え、ピペットで吸引及び吐出を繰り返し、細胞懸濁液を得た後、実施例1と同様にして総細胞数及び生存率を求め、その結果を表1に示した。
【0045】
<比較例2>
細胞培養基材1の代わりに、I型コラーゲンをコートした旭テクノグラス製35mmφ細胞培養ディッシュ(IWAKIコラーゲンタイプIコート製品4000−010)を細胞培養基材3として使用すること以外は実施例1と同様にして細胞培養を行った後、実施例1と同様に剥離液1で処理したところ、細胞はほとんど剥離しなかった。そこで、剥離液1を除き、PBS(−)2mlで1回洗浄後、無血清培地3mlを加え、ピペットで吸引,吐出を繰り返したところ、わずかな量の細胞が分散した液を得た。実施例1と同様にして総細胞数及び生存率を求め、その結果を表1に示した。
【0046】
【表1】
Figure 2004135571
【0047】
以上の実施例及び比較例から、本発明の細胞剥離剤と細胞培養基材(K)を用いた場合、簡単に、高収率(従来のトリプシン法より高い回収率で、細胞の生存率も高い)で細胞を剥離回収できることが明らかである。一方、本発明の細胞剥離剤を使用せず、従来の蛋白質分解酵素を用いる細胞剥離剤を使用した場合、シート状の細胞は得られず、さらに細胞の生存率は不十分であった。また、コラーゲンをコートした細胞培養基材を使用した場合、細胞がほとんど剥離せず、細胞はほとんど回収できなかった。すなわち、本発明の細胞剥離剤と細胞培養基材(K)を用いた場合のみ、細胞シートが簡単に得られ、また、高収率(高回収率及び高生存率)で細胞回収ができるのである。
【0048】
【発明の効果】
本発明の細胞剥離剤は、細胞接着シグナルを現す最小アミノ酸配列を1分子中に少なくとも1個有するポリペプチド(A)を含有する細胞培養基材(K)を用いて細胞培養された細胞に対して用いると、細胞(S)を極めて高い収率(高回収率及び高生存率)で剥離回収できる。従って、細胞を傷つけたり、動物製蛋白質等の混入若しくは汚染等もなく、極めて容易かつ効率的に培養細胞を得ることができる。すなわち、本発明の細胞剥離剤を用いることにより、安全性が高くかつシート状の細胞を容易に得ることができる。
【0049】
【配列表】
Figure 2004135571
Figure 2004135571
Figure 2004135571
Figure 2004135571

Claims (8)

  1. 細胞接着シグナルを現す最小アミノ酸配列を少なくとも1個有するポリペプチド(A)を有する細胞培養基材(K)とこの基材(K)を用いて細胞培養された細胞(S)とを剥離するための細胞剥離剤であって、蛋白質分解酵素の含有量が細胞剥離剤の重量に基づいて0又は0.1重量%以下であることを特徴とする細胞剥離剤。
  2. キレート剤(B)を必須成分として含有してなる請求項1に記載の細胞剥離剤。
  3. キレート剤(B)が、ビスカルボキシメチルアミノ基を少なくとも1個有する化合物及び/又はこの塩である請求項1又は2に記載の細胞剥離剤。
  4. キレート剤(B)が、エチレンジアミン四酢酸、ニトロ三酢酸、ウラミル二酢酸及びこれらの金属塩からなる群より選ばれる少なくとも1種のキレート剤である請求項1〜3のいずれかに記載の細胞剥離剤。
  5. (1)細胞接着シグナルを現す最小アミノ酸配列を少なくとも1個有するポリペプチド(A)を有する細胞培養基材(K)及び培地(V)を用いて細胞培養する工程、
    及び(2)請求項1〜4のいずれかに記載の細胞剥離剤を用いて細胞培養基材(K)と細胞培養された細胞(S)とを剥離する工程を含む細胞シートの製造方法。
  6. 培地(V)が無血清培地である請求項5に記載の製造方法。
  7. 細胞接着シグナルを現す最小アミノ酸配列の数が、3〜50個である請求項5又は6に記載の製造方法。
  8. 細胞接着シグナルを現す最小アミノ酸配列が、Arg Gly Asp配列、Leu Asp Val配列、Arg Glu Asp Val配列(1)、Tyr Ile Gly Ser Arg配列(2)、Pro Asp Ser Gly Arg配列(3)、Arg Tyr Val Val Leu Pro Arg配列(4)、Leu Gly Thr Ile Pro Gly配列(5)、Arg Asn Ile Ala Glu Ile Ile LysAsp Ile配列(6)、Ile Lys Val Ala Val配列(7)、Leu Arg Glu配列、Asp Gly Glu Ala配列(8)及びHis Ala Val配列からなる群より選ばれる少なくとも1種の配列である請求項5〜7のいずれかに記載の製造方法。
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