JP2004130422A - エアーブラスト装置用噴射ノズル - Google Patents
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Abstract
【課題】エアーブラスト装置、又はその設備の大型化や、噴射材の材質や、圧縮気体の消費量を変更せずに、加工深さ(加工量)を増大させて加工効率の向上を図り、トータルコストを削減した高性能なエアーブラスト装置用噴射ノズルの提供をする。
【解決手段】平均粒径が260μm以下の噴射材を使用するエアーブラスト装置用噴射ノズルにおいて、該噴射ノズル6の噴射管4のスロープ部4Aの内角αを70度以上、150度以下にして圧縮気体噴射口2Aから噴射されている圧縮気体流へ吸引導入(混合)される噴射材の位置が、圧縮気体噴射口2Aの出口の噴射速度が減速されない領域とし、圧縮気体導入管2の先端角部と噴射管4のスロープ部4Aの内面との隙間Sを使用する噴射材の平均粒径の3.0倍以上、2.0mm以下にする。
【選択図】 図1
【解決手段】平均粒径が260μm以下の噴射材を使用するエアーブラスト装置用噴射ノズルにおいて、該噴射ノズル6の噴射管4のスロープ部4Aの内角αを70度以上、150度以下にして圧縮気体噴射口2Aから噴射されている圧縮気体流へ吸引導入(混合)される噴射材の位置が、圧縮気体噴射口2Aの出口の噴射速度が減速されない領域とし、圧縮気体導入管2の先端角部と噴射管4のスロープ部4Aの内面との隙間Sを使用する噴射材の平均粒径の3.0倍以上、2.0mm以下にする。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、金属、ガラス、樹脂等よりなる部品をワーク(被加工物)とし、該ワークの表面に研磨用の噴射材を圧縮気体と混合して噴射しブラスト加工を施すエアーブラスト装置に用いる噴射ノズルに関するものであって、特に、噴射材の粒径と材質、及び圧縮気体の流量を換えずにブラスト加工をしてその加工深さ(加工量)を増大させて加工効率の向上を図ることを目的とした噴射ノズルに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来のエアーブラスト装置に用いられている噴射ノズルは、その内部構成を図3に示すように、噴射ノズル16は、開口中心線をV字形とした噴射材導入ポート11と先端に圧縮気体噴射口12Aを有しその外形をテーパー部12Bを形成した圧縮気体導入管12と、前記噴射材導入ポート11と圧縮気体導入管12と該その交叉部近傍に噴射材導入室13を形成し、該噴射材導入室13に挿通した前記圧縮気体導入管12の開口中心延長線上に、前記圧縮気体噴射口12Aと対向する一端に内角α1が30度〜60度の円錐形状を成すスロープ部14Aを形成し他端に噴射材と圧縮気体が混合された混合気体を噴射する混合気体噴射口14Bを形成した噴射管14を一体化するホルダー15とから成り、前記圧縮気体導入管12の先端角部と噴射管14のスロープ部14Aの内面との間に形成する隙間S1は各メーカーとも4mm〜5mm近傍であり、且つ、前記スロープ部14Aの内角α1(30度〜60度)は、各メーカーによって様々であって、前記圧縮気体導入管12の圧縮気体噴射口12Aの開口中心点と、前記噴射管14の開口中心線にスロープ部14A内面の接線を延長した交点との距離が、前記圧縮気体導入管12の内径D1の4倍以上である。
【0003】
前記、図3に示す噴射ノズルの内部構成を同じくした開示文献は、例えば、特許文献1(特開平9−295267号公報)や、実用新案文献1(実用新案登録第3017429号公報)があって、その開示文献について説明する。
【0004】
特許文献1(特開平9−295267号公報)は、エジェクタノズル3より供給される高圧エアーによる負圧によって研磨材導入ポート7より研磨材9が高速で吸引されるブラストガン本体1の負圧室5の室壁に金属製ライナによる保護層2でもって研磨材9の衝突による耐磨耗処理を施した噴射ノズルである。
【0005】
実用新案文献1(実用新案登録第3017429号公報)は、研磨材供給管20の中心線の延長を、駆動流流路36又は駆動流噴射ノズル30、及び混合流流路46又は混合管40の中心線に交差しない位置にし、研磨材導入室50内の研磨材に旋回流を生じさせることにより常に均一な密度で良好な加工効果(均一な加工精度)を得た噴射ノズルである。
【0006】
前記のように、従来のエアーブラスト装置に用いる噴射ノズルには、耐摩耗性を施したものや、噴射材を均一な密度で噴射する構造としたものはあるが、噴射材の粒径と材質、及び圧縮気体の流量を変更せずに、噴射ノズル内への噴射材の吸引と、圧縮空気と噴射材の混合と、噴射と、から成る噴射プロセスに基づき噴射ノズルの内部構造を究明して加工深さ(加工量)を増大させ加工効率の向上を図ったものはない。
【0007】
【特許文献1】
特開平9−295267号公報
【0008】
【実用新案文献1】
実用新案登録第3017429号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
エアーブラスト装置、又はその設備の大型化や、噴射材の材質や、圧縮気体の消費量を変更せずに、噴射ノズル内への噴射材の吸引と噴射ノズル内での圧縮気体と噴射材の混合とその混合気体の噴射プロセスを究明し、加工深さ(加工量)を増大と加工時間の短縮を図りトータルコストを削減した高性能なエアーブラスト装置用噴射ノズルの提供をすることにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、前記課題を解決するために成されたもので、発明者らは、噴射ノズル内への噴射材の吸引と、圧縮空気と噴射材の混合と、噴射と、から成る噴射プロセスにおいて、噴射ノズル内への噴射材の高速導入と、噴射材を高速噴射させる圧縮気体流への噴射材の導入位置を検討し、噴射ノズル内の構成要件を下記に示すように決定した。
【0011】
請求項1に係る発明のエアーブラスト装置用噴射ノズルは、噴射材導入ポートと、先端部に圧縮気体噴射口及びその外周にテーパー部を有する圧縮気体導入管と、を各々の開口中心線がV字形となるように形成すると共に、その交叉部近傍に噴射材導入室を形成し、該噴射材導入室に挿通した前記圧縮気体導入管の圧縮気体噴射口の開口中心延長線上に、該圧縮気体噴射口と対向する一方に円錐形状のスロープ部を形成し他方に噴射材と圧縮気体が混合された混合気体を噴射する混合気体噴射口を形成した噴射管を、そのスロープ部の内面と前記圧縮気体導入管の先端角部との間に隙間を形成させて一体化したホルダーとから成る噴射ノズルにおいて、前記噴射管のスロープ部の内角を、70゜以上、150゜以下にし、前記圧縮気体導入管の圧縮気体噴射口の開口中心点と、前記噴射管の開口中心線にスロープ部内面の接線を延長した交点との距離を、前記圧縮気体導入管の内径の1.0倍以上、4.5倍以下にしたことを特徴とする。
【0012】
請求項2に係る発明のエアーブラスト装置用噴射ノズルは、請求項1において、使用する噴射材の平均粒径が260μm以下であって、圧縮気体導入管の先端角部と、噴射管のスロープ部の内面との隙間を、使用する噴射材の平均粒径の3.0倍以上、2.0mm以下にしたことを特徴とする。
【0013】
請求項3に係る発明のエアーブラスト装置用噴射ノズルは、請求項1、又は請求項2において、ホルダーの噴射材導入ポートの開口中心線と圧縮気体導入管の開口中心線とが成す角度を、噴射管のスロープ部の内角の0.5倍以下、0.5倍−20度以上とし、圧縮気体導入管の先端のテーパー部のテーパー角度を、前記ホルダーの噴射材導入ポートの開口中心線と圧縮気体導入管の開口中心線との成す角度より小さくしたことを特徴とする。
【0014】
【発明の実施の形態】
下記に、本発明の好ましい一実施例を図1に示して説明する。
【0015】
【実施例】
図1は、本発明の一実施形態を示すエアーブラスト装置用噴射ノズルの断面図であって、噴射材導入ポート1の開口中心線と、先端に内径が4mmの圧縮気体噴射口2Aを有しその外周に噴射材の流れをスムーズにするためのテーパー角度が10度(請求項3に記載の、ホルダー5の噴射材導入ポート1の開口中心線と圧縮気体導入管2の開口中心線とが成す角度γ以下)のテーパー部2Bを形成した圧縮気体導入管2の開口中心線との開角を35度(請求項3に記載の、スロープ部4Aの内角αに対し0.5倍以下、0.5倍−20度)のV字形とし、その交叉部近傍に噴射材導入室3を形成し、該噴射材導入室3内に挿通した前記圧縮気体導入管2の開口中心延長線上に、前記圧縮気体噴射口2Aと対向する一端に内角αを110度(請求項1に記載の、噴射管4のスロープ部4Aの内角αを70゜以上、150゜以下)にした円錐形状のスロープ部4Aを形成し、他端に噴射材と圧縮気体が混合された混合気体を噴射する内径が8mmの混合気体噴射口4Bを形成した長さ60mmの噴射管4を、前記圧縮気体導入管2の先端角部と前記スロープ部4Aの内面との間に使用する噴射材が#60(平均粒径≒260μm、粒度分布≒425μm〜180μm)以下において、2.0mmの隙間S(請求項2に記載の、使用する噴射材の平均粒径が260μm以下であって、圧縮気体導入管の先端角部と、噴射管のスロープ部の内面との隙間を、使用する噴射材の平均粒径の3.0倍以上、2.0mm以下)を形成させて一体化したホルダー5とから成る噴射ノズル6である。
【0016】
このように構成された噴射ノズル6は、圧縮気体導入管2の圧縮気体噴射口2Aの開口中心点と噴射管4の開口中心線にスロープ部4A内面の接線を延長した交点との距離が、請求項1に記載の圧縮気体噴射口2Aの内径(4mm)の1.0倍(4mm)以上、4.5倍(18mm)以下の範囲内の5mmであって、噴射材導入室3よりスロープ部4Aの内面に沿って噴射管4内へ導入される噴射材の噴射速度を高速化させる設定条件を満足させるものであってその詳細は後記に示す。
【0017】
また、ホルダー5の噴射材導入ポート1の開口中心線と圧縮気体導入管2の開口中心線との成す角度γを35度とし、圧縮気体導入管2の先端のテーパー部2Bのテーパー角度βを10度とする。前者の角度γと後者のテーパー角度βの組み合わせは、前記請求項3の設定条件を満足しているもので圧縮気体の吸引作用で負圧状態となる噴射材導入室3内への噴射材の吸引導入、及び噴射材導入室3内からスロープ部4Aを通過し噴射管4内への噴射材の吸引導入の流路抵抗を少なくするものである。
【0018】
以下、前記の図1に示す本発明の好ましい一実施例に至るまでの検討結果とその経緯を示す。
【0019】
噴射ノズル6の圧縮気体導入管2の圧縮気体噴射口2Aから噴射管4内に噴射される圧縮気体の挙動について、例えば、株式会社工業調査会発行の「改訂増補入門粉体トラブル工学」P204〜P205に記載の文献を基に作成した理論図が図2であって、図2を基に圧縮気体の挙動理論を下記に示す。
【0020】
圧縮気体導入管2の圧縮気体噴射口2Aの内径をDとした圧縮気体導入管2に圧力が0.09MPa以上の圧縮気体を導入すると、圧縮気体噴射口2Aの先端の開口中心点から4.5Dの区間に音速に近似する圧縮気体噴射口2Aの出口速度を保持して減速しないゾーン(「ポテンシャル・ゾーン」と云う)と、4.5D〜5.5Dの区間に前記ポテンシャル・ゾーンに吸引された噴射材を圧縮気体と混合するゾーン(「転移ゾーン」と云う)と、5.5D以上の区間に前記転移ゾーンで均一に混合された圧縮気体と噴射材が等速となるゾーン(「等速ゾーン」と云う)とを形成する。
【0021】
最大の加工深さ(加工量)を得るためには、前記、圧縮気体導入管2の圧縮気体噴射口2Aから噴射される圧縮気体の挙動理論から、噴射材導入室3に吸引されている噴射材を、圧縮気体の噴射速度を最大に付与することができるポテンシャル・ゾーンに導入される構造とすると共に、圧縮気体導入管2の先端角部と噴射管4のスロープ部4Aの内面との間を通過する噴射材の吸引流速が高速となる隙間Sを設定する必要がある。
【0022】
以下、噴射ノズル6の噴射管4のスロープ部4Aの内角αが、150度、110度、70度、50度、30度、圧縮気体噴射口2Aの先端角部と噴射管4のスロープ部4Aの内面の隙間Sが、5mm、4mm、3mm、2mm、1mm、0.5mm、について検討する。
【0023】
【試験例1】
前記、検討する5種類の噴射ノズル6の内、噴射管4のスロープ部4Aの内角αが最大の150度と、最小の30度の、圧縮気体噴射口2Aの先端角部と噴射管4のスロープ部4A内面の隙間Sが、5mm、4mm、3mm、2mm、1mm、0.5mmについて、前記スロープ部4Aの内角αの違いによる各隙間Sの吸引流速を検討した。
【0024】
その検討方法は、圧縮気体導入管2より0.25MPaの圧縮気体を供給して噴射材導入ポート1より吸引された大気流量を測定し、その大気流量を圧縮気体噴射口2Aの先端角部と噴射管4のスロープ部4A内面の隙間Sが形成する面積で除して隙間Sの吸引流速とした。その結果を表1に示す。
【0025】
【表1】
【0026】
表1より、噴射管4のスロープ部4Aの内角αが150度における圧縮気体噴射口2Aの先端角部と噴射管4のスロープ部4A内面の隙間Sの5.0mm〜0.5mmの6段階(条件1−1〜条件1−6)、及び前記内角αが30度における前記隙間Sの5.0mm〜0.5mmの6段階(条件1−7〜条件1−12)の吸引流速を比較すれば、スロープ部4Aの内角α(150度と30度)の違いによる各隙間S(5.0mm〜0.5mmの6段階)の吸引流速の差は殆どなく、結論として、噴射管4のスロープ部4Aの内角αが圧縮気体噴射口2Aの先端角部と噴射管4のスロープ部4A内面の隙間Sの吸引流速に与える影響は殆どないことが判明した。
【0027】
しかしながら、噴射管4のスロープ部4Aの内角αが150度と30度の双方とも、隙間Sが2.0mm(内角αが150度:条件1−4、内角αが30度:条件1−10)において吸引流速が急激に増大し、その後、隙間Sが狭くなるに従って(内角αが150度:条件1−5〜条件1−6、同30度:条件1−11〜条件1−12)徐々に増加する傾向であって、噴射管4に導入する噴射材の吸引流速を速めるためには、圧縮気体噴射口2Aの先端角部と噴射管4のスロープ部4A内面との隙間Sを2mm以下にする必要があることが示唆される。
【0028】
尚、本試験例1において、隙間Sが未確認である0.5mm以下の吸引流速は隙間Sが限りなくゼロに近づくまで増加傾向となることが推測されるが、設定可能な最も狭い隙間Sは使用する噴射材の粒径に関係するもので、後記の試験例3で検討することとする。
【0029】
【試験例2】
次に、表2に示す噴射加工条件で、#600(平均粒径≒24μm、粒度分布≒57μm〜17μm)、材質が酸化アルミニウムの噴射材を使用し、導入圧縮気体噴射口2Aの先端角部と噴射管4のスロープ部4A内面との隙間Sを前記試験例1に示すように吸引流速が急激に増大した2.0mm、とし、スロープ部4Aの内角αを150度、110度、70度、50度、30度、とした場合の加工深さ(加工量)を検討した結果を下記表3に示す。
【0030】
【表2】
【0031】
【表3】
【0032】
表3に示すように、噴射管4のスロープ部4Aの内角αが150度である条件2−1の加工深さは115μm、内角αが110度である条件2−2の加工深さは117μm、内角αが70度である条件2−3の加工深さは116μm、内角αが50度である条件2−4の加工深さは105μm、内角αが30度である条件2−5の加工深さは90μmと更に少なかった。
【0033】
上記の結果より、噴射管4のスロープ部4Aの内角αが、70度以下の場合にはその角度が小さくなるに従って加工深さ(加工量)が少なくなるが、内角αが内角αを70度以上、150度では安定し増大した加工深さ(加工量)を得ることができ、特に110度において最も好ましい結果を得た。
【0034】
【試験例3】
次に、前記表2に示す噴射加工条件で、#600(平均粒径≒24μm、粒度分布≒57μm〜17μm)、材質が酸化アルミニウムの噴射材を使用し、前記試験2で最も加工深さ(加工量)を多くすることができた噴射管4のスロープ部4Aの内角αが110度と、最も加工深さが浅かった30度の噴射ノズル6を用い、前記試験例1で確認が取れなかった圧縮気体導入管2の圧縮気体噴射口2Aの先端角部と噴射管4のスロープ部4Aの内面との隙間Sを1.0mm、0.5mm、0.2mm、についての加工深さ(加工量)の検討をし、その結果を比較のために前記試験2で得た隙間Sが2.0mmの結果(条件2−2、条件2−5)を併記したその一覧を下記の表4に示す。
【0035】
【表4】
【0036】
表4より、噴射管4のスロープ部4Aの内角αが110度において、圧縮気体導入管2の圧縮気体噴射口2Aの先端角部と噴射管4のスロープ部4Aの内面との隙間Sが2.0mmである条件2−2の加工深さは117μm、同隙間Sが1.0mmである条件3−1の加工深さは124μm、同隙間Sが0.5mmである条件3−2の加工深さは129μm、同隙間Sが0.2mmである条件3−3の加工深さは132μmであって、隙間Sが2.0mm〜0.2mmでは加工深さが増加傾向であった。
【0037】
前記、最小の隙間Sが0.2mmであっても加工深さが増加傾向にあったのは、隙間S(0.2mm)が使用された噴射材(#600:粒度分布≒57μm〜17μm)の平均粒径(24μm)の3倍(0.072mm)以上であり、本発明に係る隙間Sと噴射材の平均粒径との関係が、隙間Sの最小条件(請求項2に記載の、圧縮気体導入管2の先端角部と、噴射管4のスロープ部4A内面との隙間Sを使用する噴射材の平均粒径の3.0倍以上)を満足しているからである。
【0038】
また、噴射管4のスロープ部4Aの内角αが30度において、圧縮気体導入管2の圧縮気体噴射口2Aの先端角部と噴射管4のスロープ部4A内面との隙間Sが2.0mmである条件2−5の加工深さは90μm、同隙間Sが1.0mmである条件3−4の加工深さは103μm、同隙間Sが0.5mmである条件3−5の加工深さは110μm、同隙間Sが0.2mmである条件3−6の加工深さは72μmであって、隙間Sが0.2mmにおいて加工深さが減少している。
【0039】
隙間Sが0.2mmになると加工深さが減少したのは、本発明の請求項1に記載の圧縮気体導入管2の圧縮気体噴射口2Aの開口中心点と、前記噴射管4の開口中心線にスロープ部4A内面の接線を延長した交点との距離が27mmであって、圧縮気体導入管2の圧縮気体噴射口2Aから噴射されている圧縮気体に噴射材が吸引されて導入(混合)する位置が、前記ポテンシャル・ゾーンとなる圧縮気体導入管2の内径D(4mm)の1倍(4mm)以上、4.5倍(18mm)以下から外れていることが影響していることを示唆する。
【0040】
【試験例4】
次に、前記表2に示す噴射加工条件で、噴射材が、材質が酸化アルミニウム、で粒径が#60(平均粒径≒260μm、粒度分布≒425μm〜180μm)と、材質が酸化アルミニウム、粒径が#1000(平均粒径≒15.5μm、粒度分布≒42.0μm〜9.5μm)の2種類を使用し、圧縮気体導入管2の圧縮気体噴射口2Aの先端角部と噴射管4のスロープ部4A内面との隙間Sを2.0mmとし、噴射管4のスロープ部4Aの内角αが、前記、試験例3で使用した110度と、30度との加工深さの検討をした結果に、比較のために前記試験例2で得られた噴射材の材質が酸化アルミニウム、粒径が#600(平均粒径≒24μm、粒度分布≒57μm〜17μm)の結果(条件2−2、条件2−5)を併記した一覧を下記表5に示す。
【0041】
【表5】
【0042】
表5より、噴射材の粒径が#60において噴射管4のスロープ部4Aの内角αが110度(条件4−1)と30度(条件4−2)の加工深さが3,012μmと、2,744μmであって、噴射材の粒径が#600において同内角αが110度(条件2−2)の加工深さが117μm、同内角αが30度(条件2−5)の加工深さが90μm、噴射材の粒径が#1000において同内角αが110度(条件4−3)の加工深さが26μm、同内角αが30度(条件4−4)の加工深さが19μmであった。
【0043】
噴射管4のスロープ部4Aの内角αが110度と30度の噴射ノズル6を用いて#60、#600、#1000の噴射材を噴射した結果、総ての噴射材においてスロープ部4Aの内角αが30度よりも110度の加工深さ(加工量)が上回っていた。その増加率は、#60において14.5%、#60において58.1%、#1000において62.5%であって、内角αが30度の噴射ノズル6と比較して110度の噴射ノズル6の方が噴射材の粒径が細かくなるほど加工深さ(加工量)の増加率が高くなる傾向であって、使用する噴射材の粒径が細かくなるほど加工効率が高くなることを示唆する。
【0044】
また、前記試験例3にも示した本発明に係る圧縮気体導入管2の圧縮気体噴射口2Aから噴射されている圧縮気体流に噴射材が吸引導入(混合)する位置が、前記ポテンシャル・ゾーンから外れるスロープ部4Aの内角αが30度の噴射ノズル6と、ポテンシャル・ゾーン内に位置する110度の噴射ノズル6の違いが結果として表れたのであって、この噴射管4のスロープ部4Aの内角αの延長線がポテンシャル・ゾーン内に位置することにより、平均粒径が260μm(#60)の粗粒の噴射材から平均粒径が15.5μm(#1000)の微細の噴射材まで広範囲に加工深さ(加工量)を増加させることができる。
【0045】
【発明の効果】
以上の説明で明らかのように、本発明は平均粒径が260μm以下の噴射材を使用するエアーブラスト装置用噴射ノズルにおいて、その噴射ノズルの噴射管のスロープ部内角を70度以上、150度以下にし、圧縮気体導入管の先端角部と前記噴射管のスロープ部の内面との間の隙間を使用する噴射材の平均粒径の3.0倍以上、2.0mm以下とすれば、圧縮気体導入管の圧縮気体噴射口から噴射されている圧縮気体の吸引力により噴射ノズル内の噴射材導入室を経て前記圧縮気体噴射口から噴射されている圧縮気体流へ吸引導入(混合)される噴射材の位置が、圧縮気体噴射口の出口の噴射速度が減速されない領域に吸引導入されることとなるから、その圧縮気体流が持つ噴射速度を噴射材に最大限に付与することができワークの加工深さ(加工量)を増大させることができるもので、エアーブラスト装置、又はその設備の大型化や、噴射材の材質や、圧縮気体の消費量を変更せずに加工効率の向上によりトータルコストが削減でき、工業的価値極めて大なものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例を示すエアーブラスト装置用噴射ノズルの断面図である。
【図2】噴射ノズルの圧縮気体導入管から噴射管に向けて噴射される圧縮気体の挙動を示す理論説明図である。
【図3】代表的な従来のエアーブラスト装置用噴射ノズルの断面図である。
【符号の説明】
1 噴射材導入ポート
2 圧縮気体導入管
2A 圧縮気体噴射口
2B 圧縮気体導入管のテーパー部
3 噴射材導入室
4 噴射管
4A スロープ部
4B 混合気体噴射口
5 ホルダー
6 噴射ノズル
D 内径(圧縮気体噴射口)
S 隙間(圧縮気体噴射口の先端角部とスロープ部の内面)
α 内角(スロープ部)
β テーパー角度(テーパー部)
γ 角度(噴射材導入ポートと圧縮気体導入管)
【発明の属する技術分野】
本発明は、金属、ガラス、樹脂等よりなる部品をワーク(被加工物)とし、該ワークの表面に研磨用の噴射材を圧縮気体と混合して噴射しブラスト加工を施すエアーブラスト装置に用いる噴射ノズルに関するものであって、特に、噴射材の粒径と材質、及び圧縮気体の流量を換えずにブラスト加工をしてその加工深さ(加工量)を増大させて加工効率の向上を図ることを目的とした噴射ノズルに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来のエアーブラスト装置に用いられている噴射ノズルは、その内部構成を図3に示すように、噴射ノズル16は、開口中心線をV字形とした噴射材導入ポート11と先端に圧縮気体噴射口12Aを有しその外形をテーパー部12Bを形成した圧縮気体導入管12と、前記噴射材導入ポート11と圧縮気体導入管12と該その交叉部近傍に噴射材導入室13を形成し、該噴射材導入室13に挿通した前記圧縮気体導入管12の開口中心延長線上に、前記圧縮気体噴射口12Aと対向する一端に内角α1が30度〜60度の円錐形状を成すスロープ部14Aを形成し他端に噴射材と圧縮気体が混合された混合気体を噴射する混合気体噴射口14Bを形成した噴射管14を一体化するホルダー15とから成り、前記圧縮気体導入管12の先端角部と噴射管14のスロープ部14Aの内面との間に形成する隙間S1は各メーカーとも4mm〜5mm近傍であり、且つ、前記スロープ部14Aの内角α1(30度〜60度)は、各メーカーによって様々であって、前記圧縮気体導入管12の圧縮気体噴射口12Aの開口中心点と、前記噴射管14の開口中心線にスロープ部14A内面の接線を延長した交点との距離が、前記圧縮気体導入管12の内径D1の4倍以上である。
【0003】
前記、図3に示す噴射ノズルの内部構成を同じくした開示文献は、例えば、特許文献1(特開平9−295267号公報)や、実用新案文献1(実用新案登録第3017429号公報)があって、その開示文献について説明する。
【0004】
特許文献1(特開平9−295267号公報)は、エジェクタノズル3より供給される高圧エアーによる負圧によって研磨材導入ポート7より研磨材9が高速で吸引されるブラストガン本体1の負圧室5の室壁に金属製ライナによる保護層2でもって研磨材9の衝突による耐磨耗処理を施した噴射ノズルである。
【0005】
実用新案文献1(実用新案登録第3017429号公報)は、研磨材供給管20の中心線の延長を、駆動流流路36又は駆動流噴射ノズル30、及び混合流流路46又は混合管40の中心線に交差しない位置にし、研磨材導入室50内の研磨材に旋回流を生じさせることにより常に均一な密度で良好な加工効果(均一な加工精度)を得た噴射ノズルである。
【0006】
前記のように、従来のエアーブラスト装置に用いる噴射ノズルには、耐摩耗性を施したものや、噴射材を均一な密度で噴射する構造としたものはあるが、噴射材の粒径と材質、及び圧縮気体の流量を変更せずに、噴射ノズル内への噴射材の吸引と、圧縮空気と噴射材の混合と、噴射と、から成る噴射プロセスに基づき噴射ノズルの内部構造を究明して加工深さ(加工量)を増大させ加工効率の向上を図ったものはない。
【0007】
【特許文献1】
特開平9−295267号公報
【0008】
【実用新案文献1】
実用新案登録第3017429号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
エアーブラスト装置、又はその設備の大型化や、噴射材の材質や、圧縮気体の消費量を変更せずに、噴射ノズル内への噴射材の吸引と噴射ノズル内での圧縮気体と噴射材の混合とその混合気体の噴射プロセスを究明し、加工深さ(加工量)を増大と加工時間の短縮を図りトータルコストを削減した高性能なエアーブラスト装置用噴射ノズルの提供をすることにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、前記課題を解決するために成されたもので、発明者らは、噴射ノズル内への噴射材の吸引と、圧縮空気と噴射材の混合と、噴射と、から成る噴射プロセスにおいて、噴射ノズル内への噴射材の高速導入と、噴射材を高速噴射させる圧縮気体流への噴射材の導入位置を検討し、噴射ノズル内の構成要件を下記に示すように決定した。
【0011】
請求項1に係る発明のエアーブラスト装置用噴射ノズルは、噴射材導入ポートと、先端部に圧縮気体噴射口及びその外周にテーパー部を有する圧縮気体導入管と、を各々の開口中心線がV字形となるように形成すると共に、その交叉部近傍に噴射材導入室を形成し、該噴射材導入室に挿通した前記圧縮気体導入管の圧縮気体噴射口の開口中心延長線上に、該圧縮気体噴射口と対向する一方に円錐形状のスロープ部を形成し他方に噴射材と圧縮気体が混合された混合気体を噴射する混合気体噴射口を形成した噴射管を、そのスロープ部の内面と前記圧縮気体導入管の先端角部との間に隙間を形成させて一体化したホルダーとから成る噴射ノズルにおいて、前記噴射管のスロープ部の内角を、70゜以上、150゜以下にし、前記圧縮気体導入管の圧縮気体噴射口の開口中心点と、前記噴射管の開口中心線にスロープ部内面の接線を延長した交点との距離を、前記圧縮気体導入管の内径の1.0倍以上、4.5倍以下にしたことを特徴とする。
【0012】
請求項2に係る発明のエアーブラスト装置用噴射ノズルは、請求項1において、使用する噴射材の平均粒径が260μm以下であって、圧縮気体導入管の先端角部と、噴射管のスロープ部の内面との隙間を、使用する噴射材の平均粒径の3.0倍以上、2.0mm以下にしたことを特徴とする。
【0013】
請求項3に係る発明のエアーブラスト装置用噴射ノズルは、請求項1、又は請求項2において、ホルダーの噴射材導入ポートの開口中心線と圧縮気体導入管の開口中心線とが成す角度を、噴射管のスロープ部の内角の0.5倍以下、0.5倍−20度以上とし、圧縮気体導入管の先端のテーパー部のテーパー角度を、前記ホルダーの噴射材導入ポートの開口中心線と圧縮気体導入管の開口中心線との成す角度より小さくしたことを特徴とする。
【0014】
【発明の実施の形態】
下記に、本発明の好ましい一実施例を図1に示して説明する。
【0015】
【実施例】
図1は、本発明の一実施形態を示すエアーブラスト装置用噴射ノズルの断面図であって、噴射材導入ポート1の開口中心線と、先端に内径が4mmの圧縮気体噴射口2Aを有しその外周に噴射材の流れをスムーズにするためのテーパー角度が10度(請求項3に記載の、ホルダー5の噴射材導入ポート1の開口中心線と圧縮気体導入管2の開口中心線とが成す角度γ以下)のテーパー部2Bを形成した圧縮気体導入管2の開口中心線との開角を35度(請求項3に記載の、スロープ部4Aの内角αに対し0.5倍以下、0.5倍−20度)のV字形とし、その交叉部近傍に噴射材導入室3を形成し、該噴射材導入室3内に挿通した前記圧縮気体導入管2の開口中心延長線上に、前記圧縮気体噴射口2Aと対向する一端に内角αを110度(請求項1に記載の、噴射管4のスロープ部4Aの内角αを70゜以上、150゜以下)にした円錐形状のスロープ部4Aを形成し、他端に噴射材と圧縮気体が混合された混合気体を噴射する内径が8mmの混合気体噴射口4Bを形成した長さ60mmの噴射管4を、前記圧縮気体導入管2の先端角部と前記スロープ部4Aの内面との間に使用する噴射材が#60(平均粒径≒260μm、粒度分布≒425μm〜180μm)以下において、2.0mmの隙間S(請求項2に記載の、使用する噴射材の平均粒径が260μm以下であって、圧縮気体導入管の先端角部と、噴射管のスロープ部の内面との隙間を、使用する噴射材の平均粒径の3.0倍以上、2.0mm以下)を形成させて一体化したホルダー5とから成る噴射ノズル6である。
【0016】
このように構成された噴射ノズル6は、圧縮気体導入管2の圧縮気体噴射口2Aの開口中心点と噴射管4の開口中心線にスロープ部4A内面の接線を延長した交点との距離が、請求項1に記載の圧縮気体噴射口2Aの内径(4mm)の1.0倍(4mm)以上、4.5倍(18mm)以下の範囲内の5mmであって、噴射材導入室3よりスロープ部4Aの内面に沿って噴射管4内へ導入される噴射材の噴射速度を高速化させる設定条件を満足させるものであってその詳細は後記に示す。
【0017】
また、ホルダー5の噴射材導入ポート1の開口中心線と圧縮気体導入管2の開口中心線との成す角度γを35度とし、圧縮気体導入管2の先端のテーパー部2Bのテーパー角度βを10度とする。前者の角度γと後者のテーパー角度βの組み合わせは、前記請求項3の設定条件を満足しているもので圧縮気体の吸引作用で負圧状態となる噴射材導入室3内への噴射材の吸引導入、及び噴射材導入室3内からスロープ部4Aを通過し噴射管4内への噴射材の吸引導入の流路抵抗を少なくするものである。
【0018】
以下、前記の図1に示す本発明の好ましい一実施例に至るまでの検討結果とその経緯を示す。
【0019】
噴射ノズル6の圧縮気体導入管2の圧縮気体噴射口2Aから噴射管4内に噴射される圧縮気体の挙動について、例えば、株式会社工業調査会発行の「改訂増補入門粉体トラブル工学」P204〜P205に記載の文献を基に作成した理論図が図2であって、図2を基に圧縮気体の挙動理論を下記に示す。
【0020】
圧縮気体導入管2の圧縮気体噴射口2Aの内径をDとした圧縮気体導入管2に圧力が0.09MPa以上の圧縮気体を導入すると、圧縮気体噴射口2Aの先端の開口中心点から4.5Dの区間に音速に近似する圧縮気体噴射口2Aの出口速度を保持して減速しないゾーン(「ポテンシャル・ゾーン」と云う)と、4.5D〜5.5Dの区間に前記ポテンシャル・ゾーンに吸引された噴射材を圧縮気体と混合するゾーン(「転移ゾーン」と云う)と、5.5D以上の区間に前記転移ゾーンで均一に混合された圧縮気体と噴射材が等速となるゾーン(「等速ゾーン」と云う)とを形成する。
【0021】
最大の加工深さ(加工量)を得るためには、前記、圧縮気体導入管2の圧縮気体噴射口2Aから噴射される圧縮気体の挙動理論から、噴射材導入室3に吸引されている噴射材を、圧縮気体の噴射速度を最大に付与することができるポテンシャル・ゾーンに導入される構造とすると共に、圧縮気体導入管2の先端角部と噴射管4のスロープ部4Aの内面との間を通過する噴射材の吸引流速が高速となる隙間Sを設定する必要がある。
【0022】
以下、噴射ノズル6の噴射管4のスロープ部4Aの内角αが、150度、110度、70度、50度、30度、圧縮気体噴射口2Aの先端角部と噴射管4のスロープ部4Aの内面の隙間Sが、5mm、4mm、3mm、2mm、1mm、0.5mm、について検討する。
【0023】
【試験例1】
前記、検討する5種類の噴射ノズル6の内、噴射管4のスロープ部4Aの内角αが最大の150度と、最小の30度の、圧縮気体噴射口2Aの先端角部と噴射管4のスロープ部4A内面の隙間Sが、5mm、4mm、3mm、2mm、1mm、0.5mmについて、前記スロープ部4Aの内角αの違いによる各隙間Sの吸引流速を検討した。
【0024】
その検討方法は、圧縮気体導入管2より0.25MPaの圧縮気体を供給して噴射材導入ポート1より吸引された大気流量を測定し、その大気流量を圧縮気体噴射口2Aの先端角部と噴射管4のスロープ部4A内面の隙間Sが形成する面積で除して隙間Sの吸引流速とした。その結果を表1に示す。
【0025】
【表1】
【0026】
表1より、噴射管4のスロープ部4Aの内角αが150度における圧縮気体噴射口2Aの先端角部と噴射管4のスロープ部4A内面の隙間Sの5.0mm〜0.5mmの6段階(条件1−1〜条件1−6)、及び前記内角αが30度における前記隙間Sの5.0mm〜0.5mmの6段階(条件1−7〜条件1−12)の吸引流速を比較すれば、スロープ部4Aの内角α(150度と30度)の違いによる各隙間S(5.0mm〜0.5mmの6段階)の吸引流速の差は殆どなく、結論として、噴射管4のスロープ部4Aの内角αが圧縮気体噴射口2Aの先端角部と噴射管4のスロープ部4A内面の隙間Sの吸引流速に与える影響は殆どないことが判明した。
【0027】
しかしながら、噴射管4のスロープ部4Aの内角αが150度と30度の双方とも、隙間Sが2.0mm(内角αが150度:条件1−4、内角αが30度:条件1−10)において吸引流速が急激に増大し、その後、隙間Sが狭くなるに従って(内角αが150度:条件1−5〜条件1−6、同30度:条件1−11〜条件1−12)徐々に増加する傾向であって、噴射管4に導入する噴射材の吸引流速を速めるためには、圧縮気体噴射口2Aの先端角部と噴射管4のスロープ部4A内面との隙間Sを2mm以下にする必要があることが示唆される。
【0028】
尚、本試験例1において、隙間Sが未確認である0.5mm以下の吸引流速は隙間Sが限りなくゼロに近づくまで増加傾向となることが推測されるが、設定可能な最も狭い隙間Sは使用する噴射材の粒径に関係するもので、後記の試験例3で検討することとする。
【0029】
【試験例2】
次に、表2に示す噴射加工条件で、#600(平均粒径≒24μm、粒度分布≒57μm〜17μm)、材質が酸化アルミニウムの噴射材を使用し、導入圧縮気体噴射口2Aの先端角部と噴射管4のスロープ部4A内面との隙間Sを前記試験例1に示すように吸引流速が急激に増大した2.0mm、とし、スロープ部4Aの内角αを150度、110度、70度、50度、30度、とした場合の加工深さ(加工量)を検討した結果を下記表3に示す。
【0030】
【表2】
【0031】
【表3】
【0032】
表3に示すように、噴射管4のスロープ部4Aの内角αが150度である条件2−1の加工深さは115μm、内角αが110度である条件2−2の加工深さは117μm、内角αが70度である条件2−3の加工深さは116μm、内角αが50度である条件2−4の加工深さは105μm、内角αが30度である条件2−5の加工深さは90μmと更に少なかった。
【0033】
上記の結果より、噴射管4のスロープ部4Aの内角αが、70度以下の場合にはその角度が小さくなるに従って加工深さ(加工量)が少なくなるが、内角αが内角αを70度以上、150度では安定し増大した加工深さ(加工量)を得ることができ、特に110度において最も好ましい結果を得た。
【0034】
【試験例3】
次に、前記表2に示す噴射加工条件で、#600(平均粒径≒24μm、粒度分布≒57μm〜17μm)、材質が酸化アルミニウムの噴射材を使用し、前記試験2で最も加工深さ(加工量)を多くすることができた噴射管4のスロープ部4Aの内角αが110度と、最も加工深さが浅かった30度の噴射ノズル6を用い、前記試験例1で確認が取れなかった圧縮気体導入管2の圧縮気体噴射口2Aの先端角部と噴射管4のスロープ部4Aの内面との隙間Sを1.0mm、0.5mm、0.2mm、についての加工深さ(加工量)の検討をし、その結果を比較のために前記試験2で得た隙間Sが2.0mmの結果(条件2−2、条件2−5)を併記したその一覧を下記の表4に示す。
【0035】
【表4】
【0036】
表4より、噴射管4のスロープ部4Aの内角αが110度において、圧縮気体導入管2の圧縮気体噴射口2Aの先端角部と噴射管4のスロープ部4Aの内面との隙間Sが2.0mmである条件2−2の加工深さは117μm、同隙間Sが1.0mmである条件3−1の加工深さは124μm、同隙間Sが0.5mmである条件3−2の加工深さは129μm、同隙間Sが0.2mmである条件3−3の加工深さは132μmであって、隙間Sが2.0mm〜0.2mmでは加工深さが増加傾向であった。
【0037】
前記、最小の隙間Sが0.2mmであっても加工深さが増加傾向にあったのは、隙間S(0.2mm)が使用された噴射材(#600:粒度分布≒57μm〜17μm)の平均粒径(24μm)の3倍(0.072mm)以上であり、本発明に係る隙間Sと噴射材の平均粒径との関係が、隙間Sの最小条件(請求項2に記載の、圧縮気体導入管2の先端角部と、噴射管4のスロープ部4A内面との隙間Sを使用する噴射材の平均粒径の3.0倍以上)を満足しているからである。
【0038】
また、噴射管4のスロープ部4Aの内角αが30度において、圧縮気体導入管2の圧縮気体噴射口2Aの先端角部と噴射管4のスロープ部4A内面との隙間Sが2.0mmである条件2−5の加工深さは90μm、同隙間Sが1.0mmである条件3−4の加工深さは103μm、同隙間Sが0.5mmである条件3−5の加工深さは110μm、同隙間Sが0.2mmである条件3−6の加工深さは72μmであって、隙間Sが0.2mmにおいて加工深さが減少している。
【0039】
隙間Sが0.2mmになると加工深さが減少したのは、本発明の請求項1に記載の圧縮気体導入管2の圧縮気体噴射口2Aの開口中心点と、前記噴射管4の開口中心線にスロープ部4A内面の接線を延長した交点との距離が27mmであって、圧縮気体導入管2の圧縮気体噴射口2Aから噴射されている圧縮気体に噴射材が吸引されて導入(混合)する位置が、前記ポテンシャル・ゾーンとなる圧縮気体導入管2の内径D(4mm)の1倍(4mm)以上、4.5倍(18mm)以下から外れていることが影響していることを示唆する。
【0040】
【試験例4】
次に、前記表2に示す噴射加工条件で、噴射材が、材質が酸化アルミニウム、で粒径が#60(平均粒径≒260μm、粒度分布≒425μm〜180μm)と、材質が酸化アルミニウム、粒径が#1000(平均粒径≒15.5μm、粒度分布≒42.0μm〜9.5μm)の2種類を使用し、圧縮気体導入管2の圧縮気体噴射口2Aの先端角部と噴射管4のスロープ部4A内面との隙間Sを2.0mmとし、噴射管4のスロープ部4Aの内角αが、前記、試験例3で使用した110度と、30度との加工深さの検討をした結果に、比較のために前記試験例2で得られた噴射材の材質が酸化アルミニウム、粒径が#600(平均粒径≒24μm、粒度分布≒57μm〜17μm)の結果(条件2−2、条件2−5)を併記した一覧を下記表5に示す。
【0041】
【表5】
【0042】
表5より、噴射材の粒径が#60において噴射管4のスロープ部4Aの内角αが110度(条件4−1)と30度(条件4−2)の加工深さが3,012μmと、2,744μmであって、噴射材の粒径が#600において同内角αが110度(条件2−2)の加工深さが117μm、同内角αが30度(条件2−5)の加工深さが90μm、噴射材の粒径が#1000において同内角αが110度(条件4−3)の加工深さが26μm、同内角αが30度(条件4−4)の加工深さが19μmであった。
【0043】
噴射管4のスロープ部4Aの内角αが110度と30度の噴射ノズル6を用いて#60、#600、#1000の噴射材を噴射した結果、総ての噴射材においてスロープ部4Aの内角αが30度よりも110度の加工深さ(加工量)が上回っていた。その増加率は、#60において14.5%、#60において58.1%、#1000において62.5%であって、内角αが30度の噴射ノズル6と比較して110度の噴射ノズル6の方が噴射材の粒径が細かくなるほど加工深さ(加工量)の増加率が高くなる傾向であって、使用する噴射材の粒径が細かくなるほど加工効率が高くなることを示唆する。
【0044】
また、前記試験例3にも示した本発明に係る圧縮気体導入管2の圧縮気体噴射口2Aから噴射されている圧縮気体流に噴射材が吸引導入(混合)する位置が、前記ポテンシャル・ゾーンから外れるスロープ部4Aの内角αが30度の噴射ノズル6と、ポテンシャル・ゾーン内に位置する110度の噴射ノズル6の違いが結果として表れたのであって、この噴射管4のスロープ部4Aの内角αの延長線がポテンシャル・ゾーン内に位置することにより、平均粒径が260μm(#60)の粗粒の噴射材から平均粒径が15.5μm(#1000)の微細の噴射材まで広範囲に加工深さ(加工量)を増加させることができる。
【0045】
【発明の効果】
以上の説明で明らかのように、本発明は平均粒径が260μm以下の噴射材を使用するエアーブラスト装置用噴射ノズルにおいて、その噴射ノズルの噴射管のスロープ部内角を70度以上、150度以下にし、圧縮気体導入管の先端角部と前記噴射管のスロープ部の内面との間の隙間を使用する噴射材の平均粒径の3.0倍以上、2.0mm以下とすれば、圧縮気体導入管の圧縮気体噴射口から噴射されている圧縮気体の吸引力により噴射ノズル内の噴射材導入室を経て前記圧縮気体噴射口から噴射されている圧縮気体流へ吸引導入(混合)される噴射材の位置が、圧縮気体噴射口の出口の噴射速度が減速されない領域に吸引導入されることとなるから、その圧縮気体流が持つ噴射速度を噴射材に最大限に付与することができワークの加工深さ(加工量)を増大させることができるもので、エアーブラスト装置、又はその設備の大型化や、噴射材の材質や、圧縮気体の消費量を変更せずに加工効率の向上によりトータルコストが削減でき、工業的価値極めて大なものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例を示すエアーブラスト装置用噴射ノズルの断面図である。
【図2】噴射ノズルの圧縮気体導入管から噴射管に向けて噴射される圧縮気体の挙動を示す理論説明図である。
【図3】代表的な従来のエアーブラスト装置用噴射ノズルの断面図である。
【符号の説明】
1 噴射材導入ポート
2 圧縮気体導入管
2A 圧縮気体噴射口
2B 圧縮気体導入管のテーパー部
3 噴射材導入室
4 噴射管
4A スロープ部
4B 混合気体噴射口
5 ホルダー
6 噴射ノズル
D 内径(圧縮気体噴射口)
S 隙間(圧縮気体噴射口の先端角部とスロープ部の内面)
α 内角(スロープ部)
β テーパー角度(テーパー部)
γ 角度(噴射材導入ポートと圧縮気体導入管)
Claims (3)
- 噴射材導入ポートと、先端部に圧縮気体噴射口及びその外周にテーパー部を有する圧縮気体導入管と、を各々の開口中心線がV字形となるように形成すると共に、その交叉部近傍に噴射材導入室を形成し、該噴射材導入室に挿通した前記圧縮気体導入管の圧縮気体噴射口の開口中心延長線上に、該圧縮気体噴射口と対向する一方に円錐形状のスロープ部を形成し他方に噴射材と圧縮気体が混合された混合気体を噴射する混合気体噴射口を形成した噴射管を、そのスロープ部の内面と前記圧縮気体導入管の先端角部との間に隙間を形成させて一体化したホルダーとから成る噴射ノズルにおいて、前記噴射管のスロープ部の内角を70度以上、150度以下にし、前記圧縮気体導入管の圧縮気体噴射口の開口中心点と、前記噴射管の開口中心線にスロープ部の内面の接線を延長した交点との距離を、圧縮気体導入管の内径の1.0倍以上、4.5倍以下にしたことを特徴とするエアーブラスト装置用噴射ノズル。
- 使用する噴射材の平均粒径が260μm以下であって、圧縮気体導入管の先端角部と、噴射管のスロープ部の内面との隙間を、使用する噴射材の平均粒径の3.0倍以上、2.0mm以下にしたことを特徴とする請求項1に記載のエアーブラスト装置用噴射ノズル。
- ホルダーの噴射材導入ポートの開口中心線と圧縮気体導入管の開口中心線とが成す角度を、噴射管のスロープ部の内角の0.5倍以下、0.5倍−20度以上とし、圧縮気体導入管の先端のテーパー部のテーパー角度を、前記ホルダーの噴射材導入ポートの開口中心線と圧縮気体導入管の開口中心線との成す角度より小さくしたことを特徴とする請求項1、又は請求項2に記載のエアーブラスト装置用噴射ノズル。
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CN110253444A (zh) * | 2019-06-14 | 2019-09-20 | 上海江南长兴造船有限责任公司 | 一种船用外场冲砂方法 |
CN110270933A (zh) * | 2019-06-14 | 2019-09-24 | 上海江南长兴造船有限责任公司 | 一种真空吸管及采用该真空吸管的冲砂装置 |
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