JP2004127757A - 燃料電池とガスエンジンとのハイブリッドシステム、および燃料ガスの処理方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】空調用などエネルギー消費量の巨大な用途にも適用可能であり、PEFCが出力を開始するまでのタイムロスを埋め合わすことが可能であり、需要の変化に応じた出力の変更も容易である、PEFCを含むシステムを提供する。
【解決手段】燃料ガスを水素リッチガスに改質する改質装置と、前記改質装置から排出された水素リッチガスを、高純度の水素ガスおよびオフガスに分離する水素分離装置と、前記水素分離装置から排出された高純度の水素ガスを燃料として用いる固体高分子型燃料電池と、前記水素分離装置から排出されたオフガスを燃料として用いるガスエンジンとを含む、燃料電池とガスエンジンとのハイブリッドシステムによって上記課題は解決される。
【選択図】 図1
【解決手段】燃料ガスを水素リッチガスに改質する改質装置と、前記改質装置から排出された水素リッチガスを、高純度の水素ガスおよびオフガスに分離する水素分離装置と、前記水素分離装置から排出された高純度の水素ガスを燃料として用いる固体高分子型燃料電池と、前記水素分離装置から排出されたオフガスを燃料として用いるガスエンジンとを含む、燃料電池とガスエンジンとのハイブリッドシステムによって上記課題は解決される。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、固体高分子型燃料電池とガスエンジンとのハイブリッドシステムに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、自然環境への負荷を大きく抑制する動力源として、燃料電池が注目されている。燃料電池の中では、固体高分子型燃料電池(PEFC)、固体酸化物型燃料電池(SOFC)、メタノール直接型燃料電池(DMFC)などについて、特にPEFCについて、活発な研究開発がされている。燃料電池の中では、電解質の散逸が生じない、作動温度が低いといった特徴と有するPEFCに注目が集まっている。
【0003】
PEFCのエネルギー効率を向上させるためには、PEFCから排出される熱エネルギーが有効に活用されるべきである。例えば、燃料電池自体を貯水容器中に収容してなるシステムを設計することによって、燃料電池の排熱を用いた温水の生産が可能である(特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、PEFCの作動温度は低いため、PEFCから排出される排ガスの温度も70℃程度と低温である。このため、排熱の利用先が、特許文献1に記載されているように温水の生産などに著しく限定される。これでは、社会全体に広くPEFCが導入された場合に、排熱の一部しか利用できず、エネルギー的に非効率的である。また、PEFCは、燃料電池の中では比較的低温で作動するとはいえ、室温から作動温度にまで昇温させるには、ある程度の時間を要する。
このため、PEFCのみでは、電力の需要の発生に迅速に対応できない。
【0005】
ところで、発電源としては、燃料電池であるPEFCの他に、太陽光や風力などの自然エネルギーを用いた発電装置がある。しかしながら、かような自然エネルギーを用いた発電装置は、出力が自然環境に大きく影響される。したがって、需要の変動に応じて発電量を変化させることができない。例えば、太陽光を用いて発電された電力を用いて室内を冷却するとする。しかしながら、日照量は日によって異なるため、電力供給は不安定である。このように、自然エネルギーを用いた発電装置を用いた場合、需要に応じて発電量を変化させることができない。
【0006】
【特許文献1】
特開2002−8674号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明が目的とするところは、空調用などエネルギー消費量の巨大な用途にも適用可能であり、PEFCが出力を開始するまでのタイムラグを埋め合わすことが可能であり、需要の変化に応じた出力の変更も容易である、PEFCを含むシステムを提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、燃料ガスを水素リッチガスに改質する改質装置と、前記改質装置から排出された水素リッチガスを、高純度の水素ガスおよびオフガスに分離する、水素分離装置と、前記水素分離装置から排出された高純度の水素ガスを燃料として用いる固体高分子型燃料電池(PEFC)と、前記水素分離装置から排出されたオフガスを燃料として用いるガスエンジンとを含む、燃料電池とガスエンジンとのハイブリッドシステムである。
【0009】
改質装置によって、燃料ガスを水素リッチガスに改質しても、そのままPEFCで用いることができる程度にまで水素濃度を高めることは困難である。通常、CO、H2O、CH4などの不純物が水素リッチガス中には含まれる。このため、不純物を除去する工程が必要である。一方、本発明のハイブリッドシステムは、不純物を含むガスを燃料として利用するガスエンジンを含む。ガスエンジンは高温のガスを排出するため、この高温のガスを用いて幅広い用途に熱量を有効利用できる。
【0010】
水素ガスを高い濃度で利用しうるガスエンジンは、発電効率が40%前後と非常に高く、通常のエンジンに比べてNOx排出量やSOx排出量も少ない。このため、本発明のハイブリッドシステムは、自然環境への負荷の少ないシステムである。ガスエンジンには、燃料ガスと空気とを混合した後に、混合ガスを圧縮するガスエンジンに加えて、ガスディーゼルエンジンが含まれる。ガスディーゼルエンジンとは、シリンダー内に空気だけを吸入させて圧縮し、高温・高圧の空気中に燃料ガスを噴射して、自己点火または点火装置を用いて燃焼させる方式をいう。ガスディーゼルエンジンは、燃料ガスと空気とを混合した後に混合ガスを圧縮するガスエンジンに比べて、圧縮比を大きくすることが可能であるため、エネルギー効率を向上させうる。このため、燃料電池と共にハイブリッドシステムを構成する対象としては、ガスディーゼルエンジンが特に好ましい。
【0011】
システムの起動時には、十分に高純度な水素ガスをPEFCに供給可能になるまでに、ある程度の時間が必要である。この点、本発明のハイブリッドシステムは、即時に運転可能なガスエンジンを有しており、ガスエンジンは幅広いガス組成に対応可能である。このため、PEFCとガスエンジンとのハイブリッドシステムは、起動時における対応力が高い。例えば、起動初期は、ガスエンジンを主に用いて運転し、PEFCの準備が整い次第PEFCの運転を開始するなどの、状況に応じた運転が可能である。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の第一は、燃料ガスを水素リッチガスに改質する改質装置と、前記改質装置から排出された水素リッチガスを、高純度の水素ガスおよびオフガスに分離する、水素分離装置と、前記水素分離装置から排出された高純度の水素ガスを燃料として用いる固体高分子型燃料電池(PEFC)と、前記水素分離装置から排出されたオフガスを燃料として用いるガスエンジンとを含む、燃料電池とガスエンジンとのハイブリッドシステムである。本発明の第一について、図1を参照しながら説明する。
【0013】
図1は、本発明の一実施形態の概略図である。燃料タンク101に貯蔵された燃料ガスは、必要に応じて、脱硫器103を経て、改質装置105に搬送される。改質装置105では、水蒸気改質反応を利用して、燃料ガスが水素リッチガスに改質される。製造された水素リッチガスは、水素分離装置107に搬送される。水素分離装置107は、PSA(圧力スウィング吸着)など高純度の水素ガスを分離し得る装置である。水素分離装置107において、水素リッチガスは、高純度の水素ガスとオフガスとに分離される。オフガスとは、水素リッチガスから高純度の水素ガスを分離した際の、残りのガスを意味する。
【0014】
高純度の水素ガスは、水素ガス搬送ライン109を経て、PEFC111に搬送される。場合によっては、シフト触媒が充填されたシフト変成装置や、選択酸化触媒が充填された選択酸化装置が、水素分離装置107とPEFC111との間に設けられてもよい。PEFC111には、別途、酸化剤が酸化剤搬送ライン113を通じて供給される。酸化剤は通常は空気である。PEFC111において、水素リッチガスおよび酸化剤を用いて発電が行われる。また、PEFC111からは、70℃程度の排ガスおよび発電反応によって生成した水が、排出ライン115を経て排出される。
【0015】
他方、水素分離装置107からは、オフガスが、オフガス搬送ライン117を経て、ガスエンジン119に搬送される。また、酸素源としての空気が、給気ライン121を経てガスエンジン119に供給される。ガスエンジン119においては、オフガス中に含まれる水素ガスやメタンガスなどの燃料、および、空気中に含まれる酸素を用いて、燃焼反応が進行し、化学的エネルギーが機械的エネルギーとして取り出される。機械的エネルギーは、必要に応じて発電機を利用することにより、電気的エネルギー(電力)として取り出される。電気的エネルギーがガスエンジン119の作動によって取り出される場合には、必要に応じて、太陽光や風力の自然エネルギーを利用する発電機123が、電力供給源として併用される。
【0016】
ガスエンジン119からは、燃焼反応によって生成した排ガスが排ガス搬送ライン125によって、排出される。ガスエンジン119から排出される排ガスは、300〜500℃の高温の熱エネルギーを有している。必要に応じて、排ガスの有する排熱を利用してシャーベットアイスを作製する氷蓄熱システム127が設けられる。氷蓄熱システム127に含まれる吸収式冷凍機129は、冷媒温度を−8〜―2℃程度の低温に冷却する。この冷媒を用いて、製氷熱交換器131において、水が過冷却される。作製された過冷却水は氷蓄熱層133に放出され、氷蓄熱層133においてシャーベット状の氷として保存される。氷は解氷熱交換器などを用いて冷媒として利用される。以下、各構成について詳細に説明する。
【0017】
本発明において燃料ガスとは、改質装置によって改質されて水素リッチガスを生成しうるガスをいう。最終的にPEFCの燃料として用いられる燃料ガスとしては、メタンを含有するガスが一般に用いられる。メタンを含有するガスの具体例としては、天然ガス、都市ガス、コークス炉ガス、精油所ガスなどが挙げられる。天然ガスとは自然現象に伴って発生するガスをいう。天然ガスには、火山、温鉱泉、油田その他の地帯で地下より産生するガスなどが含まれる。都市ガスとは、都市において中央の供給源から導管によって各需要者に送られる燃料ガスをいう。コークス炉ガスとは、石炭を乾留するときに発生するガスをいう。精油所ガスとは、精油所において石油精製に際して副生するガスをいう。精油所ガスには、スタビライズドガス、熱分解ガス、コーキングガス、ビスブレーキングガス、接触分解ガス、接触改質ガスなどが含まれる。天然ガス、都市ガス、コークス炉ガス、精油所ガスなどは、現代社会において大量に供給されるため、燃料として好都合である。
【0018】
燃料ガスは、燃料タンク101に一旦貯蔵され、燃料搬送ラインを通じて搬送されるのが一般的であるが、この態様に限定されない。場合によっては、コークス炉などの燃料発生源から、燃料タンク101を経ずに、脱硫器103や改質装置105に供給してもよい。なお、本明細書においては、便宜上、「燃料ガス」とは、改質装置105に供給されるまでのガスを意味する。従って、脱硫器103によって、若干組成が変化した場合も、燃料ガスの概念に包含される。
【0019】
本発明のハイブリッドシステムは、燃料ガスを加圧する圧縮機(図示せず)を含んでいてもよい。圧縮機を用いて燃料ガスを加圧すると、当然燃料ガスの占有体積が減少する。このため、圧縮機を用いて燃料ガスを加圧することによって、必要に応じて設置される脱硫器103などの後工程の装置を小型化できる。なお、圧縮機を経た燃料ガスの圧力は、脱硫器103および改質装置105での操作圧力に応じて適宜決定される。
【0020】
圧縮機は、特に制限されるべきものではなく、従来公知の圧縮機を使用できる。例えば、ダイアフラム式圧縮機、往復動圧縮機、可動翼圧縮機、ねじ式圧縮機、ラジアル圧縮機、ターボ圧縮機、軸流圧縮機など)が使用されうる。
【0021】
本発明のハイブリッドシステムは、必要に応じて、改質装置105へのガス搬送ライン上に脱硫器103を有していてもよい。燃料ガスは、不純物として硫黄を有している場合がある。後工程で用いられる水蒸気改質触媒、吸着剤などが硫黄によって被毒される可能性がある場合には、燃料ガスを脱硫することが好ましい。
脱硫器103においては、後工程で用いられる触媒や吸着剤の種類に応じて、脱硫の度合いが制御される。通常は、硫黄濃度が、1vol.ppb以下、好ましくは0.1vol.ppb以下、より好ましくは0.05vol.ppb以下にまで下げられる。この程度硫黄濃度を低下させると、硫黄による水蒸気改質触媒および吸着剤の被毒が、抑制される。
【0022】
本発明に用いることのできる脱硫器103は、特に制限されるべきものではない。例えば、特開平8−257369号公報、特開2002−212575号公報に記載されている従来公知の脱硫器を適宜利用することができる。脱硫器103に充填される脱硫剤も、特に制限されるべきものではなく、従来公知の各種脱硫剤を利用することができる。2種以上の脱硫剤を組み合わせてもよい。例えば、脱硫器の入口側から、水添脱硫触媒および酸化亜鉛系吸着剤の順序で2層の脱硫剤を充填した形態、水添脱硫触媒、酸化亜鉛系吸着剤および高次脱硫剤の順序で3層の脱硫剤を充填した形態などが例示できる。好ましくは、上記3層の脱硫剤を充填した形態が用いられる。
【0023】
本発明のハイブリッドシステムは、改質装置105を含む。改質装置は、改質装置に供給された水蒸気および酸素含有ガスを用いて、燃料ガスを水蒸気改質および部分酸化する装置をいう。水蒸気改質によって、燃料ガス中の水素濃度が高められる。水蒸気改質は、水蒸気改質触媒の存在下で進行する。改質装置105からは、高温の水素リッチガスが排出される。供給されるガスが、CH4である場合には、CH4+2H2O→3H2+CO2によって、CH4が水素および二酸化炭素に改質される。理論的には、所定の水蒸気を供給すれば生成する成分は、水素および二酸化炭素のみとなるが、実際系においては、水素および二酸化炭素以外の成分も混在する。水蒸気改質されずに残存するメタンや、使用されずに残存した水蒸気、燃料ガス中に元来存在していたプロパンなどが含まれる。
【0024】
改質された水素リッチガスをPEFCのみに用いる場合には、これらの不純物を除去しなければならない。特に一酸化炭素は、PEFCにおいて触媒として用いられる白金の触媒毒であるため、数十ppm以下にまで除去される必要がある。このため、改質された水素リッチガス中のCOを除去するために、COシフト反応を利用してCOを除去するCO変成器、および、選択酸化触媒を利用してCOを除去する選択酸化装置などが用いられる。PEFCに用いられる高純度の水素ガスは、PSA装置などのガス分離装置を用いて供給されうる。しかしながら、ガス分離装置を用いて高純度の水素ガスを分離した場合、その他の成分が廃棄されてしまい、エネルギー効率は著しく低下する。本発明のハイブリッドシステムは、水素リッチガス中に含まれるメタンや水素を有効活用するガスエンジンを含む。このため、PSAなどの水素分離装置を用いて高純度の水素ガスを分離する形式を採用しても、水素分離装置のオフガスが有効に活用される。また、水素分離装置単独で、PEFCに使用できる高濃度の水素ガスが供給されうる場合には、CO変成器および/または選択酸化装置を除去することも可能である。
【0025】
本発明に用いられる改質装置105の種類は、特に制限されるべきものではない。公知の改質装置が、改質装置105として用いられ得る。例えば、天然ガスから、メタノールやジメチルエーテルを合成するGTL(Gas to liquid)技術を適宜用い得る。なお、改質装置に関しては、特開2000−084410公報などに記載されている公知の知見を参照しうる。改質装置の能力は、本発明のハイブリッドシステムの実施態様に応じて決定される。ガスエンジンに相当量のオフガスを流す場合には、改質される水素量が低くてもよい。ガスエンジンが、PEFCの補助装置として用いられるのであれば、極力水素ガスに改質してもよい。
【0026】
改質装置は、水蒸気改質触媒の存在下で水蒸気改質反応と部分酸化反応とを同時に行う装置構成を有していてもよい。また、改質装置は、部分酸化反応を行って必要な熱量を補った後に水蒸気改質触媒の存在下で水蒸気改質反応を行う装置構成を有していてもよい。反応形式は、特に制限はなく、固定床式、移動床式、流動床式などが採用される。一般的には、固定床式の反応器が用いられる。
【0027】
改質装置105に充填される水蒸気改質触媒も、従来公知のものが適宜使用されうる。ただし、新規な水蒸気改質触媒を使用しても勿論よい。水蒸気改質触媒には、金属酸化物からなる担体にロジウム、ルテニウム、イリジウム、ニッケル、パラジウム、白金、銅、亜鉛などの触媒金属の1種または2種以上を担持させたモノリス触媒などが含まれる。ただし、これらに制限されるわけではない。担体としての金属化合物には、Mg、Ca、Ba、Zn、Al、Zr、Laなどの金属を1種または2種以上含む金属酸化物が含まれる。金属酸化物の具体例としては、マグネシア(MgO)、酸化カルシウム(CaO)、酸化バリウム(BaO)、酸化亜鉛(ZnO)、アルミナ(Al2O3)、ジルコニア(ZrO2)、酸化ランタン(La2O3)などの単一金属酸化物、MgO/CaO、MgO/BaO、MgO/ZnO、MgO/Al2O3、MgO/ZrO2、CaO/BaO、CaO/ZnO、CaO/Al2O3などの複合金属酸化物が挙げられる。また、担体形状ないし構造に関しても、特に制限されるべきものではなく、ハニカム構造などが利用できる。
【0028】
改質装置105から排出された水素リッチガスは、水素分離装置107に搬送される。なお、本明細書において「水素リッチガス」とは、改質装置によって水素濃度が高められたガスを意味し、改質装置から排出された後、水素分離装置によって水素が分離されるまでが、水素リッチガスと定義される。また、「高純度の水素ガス」とは、水素分離装置によって水素濃度が非常に高められた水素含有ガスをいう。「オフガス」とは、水素リッチガスから、水素分離装置によって分離された高純度の水素ガスを差し引いた残りの成分からなるガスをいう。
【0029】
水素分離装置107は、供給されるガスから、高純度の水素ガスを分離し、残りのガスをオフガスとして排出する装置であれば、特に限定されない。水素分離装置としては、PSA装置や水素ガス分離膜が用いられ得る。PSA装置は、水素以外のガスを優先的に吸着する1種以上の吸着剤が充填された吸着塔からなる。
吸着塔に設けられた自動切替弁の開閉操作によって、所定のサイクルタイムで吸着操作と脱着操作とが繰り返し行われ、高純度の水素ガスが分離される。PSA装置については、特に限定はなく、特開2002−212575号公報などに記載されている公知の知見を必要に応じて参照できる。以下、PSA装置を水素分離装置として用いる態様に関して説明するが、PSA装置以外の水素分離装置も使用されうる。水素ガス分離膜を用いる際にも、各種公知技術を適宜参照できる(例えば、特開2002−154880号公報参照)。
【0030】
PSA装置には、PEFC111に高純度の水素ガスを搬送するための水素ガス搬送ライン109、および、ガスエンジン119にオフガスを搬送するためのオフガス搬送ライン117が取り付けられている。これらのラインは、図1に示すように、水素分離装置107が、水素ガス搬送ライン口およびオフガス搬送ライン口をそれぞれ有していても良い。多塔式のPSA装置を用いて連続的に高純度の水素ガスおよびオフガスを取り出す場合には、水素分離装置107から排出される箇所においては1つのラインを共有して、途中で水素ガス搬送ラインおよびオフガス搬送ラインに分岐してもよい。水素分離装置がPSA装置である場合には、オフガスは、吸着塔において吸着したガス分子を、脱着させるときに発生するガスである。
【0031】
PSAのオフガスは、ガスエンジンに用いられる。ガスエンジンは、水素ガスを有効に利用して作動する機関であるため、オフガス中に一定量の水素ガスが含まれていることはむしろ好都合である。オフガスの成分は、ガスエンジンが好適に作動するように制御される。そのためには、PSA装置は、高純度の水素ガスを最大限分離しなくてもよい。つまり、PSA装置の水素分離能力を最大限活用すると、ガスエンジンに供給される水素量が不足する場合には、PSA装置の分離能力を敢えて低下させてもよい。これにより、所定量の水素をガスエンジンに供給しうる。燃料ガスまたは水素リッチガスを、水素分離装置107を経ずに、ガスエンジン119に供給するためのバイパスライン(図示せず)が設けられても良い。
【0032】
PSA装置の構成は、ハイブリッドシステムの実施態様に応じて、決定される。設備投資や装置の占有面積を減少させる観点からは、一段式PSA装置が好ましく、一塔式PSA装置がより好ましい。
【0033】
一段式PSA装置を用いる場合には、多段式PSA装置を用いる場合と比較して、相対的に得られる高純度の水素ガス量は、減少する。しかしながら、一段式または一塔式のPSA装置を用いる場合であっても、同等の吸着塔を用いている限り、同等の純度の水素ガスを得ることが可能である。従って、得られる水素ガス量が減少しても、一定量の高純度の水素ガスをPEFCに供給し得る。燃料ガス体積に対してPEFCに供給される水素ガス量が少なくても、ガスエンジンでエネルギーが有効利用される。これは、ガスエンジンとPEFCとを含むハイブリッドシステムを構築することによって、生じる効果である。
【0034】
なお、本願において、一段式PSA装置とは、PSA装置に供給された水素リッチガスが、一つの吸着塔に供給されてガス分離される形式を意味する。また、二段式PSA装置とは、PSA装置に供給された水素リッチガスが、第一の吸着塔において処理された後、第一の吸着塔から排出されたガスをさらに第二の吸着塔において処理する形式を意味する。また、一塔式PSA装置とは、PSA装置に配置される吸着塔が一塔である場合を意味する。従って、一塔式PSA装置は、必然的に一段式PSA装置となる。本願においては、オフガス中にある程度の水素が混入していても良いため、一塔式PSA装置にすることも可能である。
【0035】
吸着塔に充填される吸着剤は、供給される水素リッチガスによって適宜選択される。所望の濃度の水素ガスが所望量得られるように、吸着剤の種類および量を決定する。吸着塔には、(i)脱湿剤、(ii)炭素系吸着剤、(iii)ゼオライト系吸着剤などが充填される。
【0036】
(i)脱湿剤は、導入される水素リッチガスから水分を除去するために充填され、通常は、吸着塔の最下部に充填される。脱質材としては、活性アルミナ、シリカゲルなどが用いられる。
【0037】
(ii)炭素系吸着剤は、脱湿後の、二酸化炭素およびメタンを主として吸着する。通常は、炭素系吸着剤は、脱湿剤の上部かつ後述のゼオライト系吸着剤の下部に配置される。
【0038】
(iii)ゼオライト系吸着剤は、二酸化炭素および一酸化炭素を主として吸着する。ゼオライト系吸着剤の中では、5A型、13X型などのゼオライト系吸着剤が有効である。通常は、ゼオライト系吸着剤は、炭素系吸着剤の上部に充填される。ゼオライト系吸着剤は、CO濃度が高い場合に、特に有効である。
【0039】
改質装置105から排出された水素リッチガスは、水素ガス搬送ライン109を経て、最終的に、PEFC111に搬送される。必要であれば、水素分離装置107とPEFC111との間に、CO変成器(図示せず)や選択酸化装置(図示せず)が設けられていてもよい。しかしながら、本発明は、これらの装置を設けずとも、高いエネルギー効率で、PEFCを含むシステムを運転しうる。可能であれば、これらの装置は除去されることが好ましい。CO変成器や選択酸化触媒がない、PEFCを含むシステムを構築することによって、設備コストを大きく削減しうる。
【0040】
高純度の水素ガスは、最終的にPEFC111に搬送される。PEFCは、電解質が固体の高分子からなることを特徴とする燃料電池である。PEFCにおいては、アノードに高純度の水素ガスが供給される。一方、カソードには酸化剤搬送ライン113を通じて、酸素が供給される。通常は、空気が酸素源として供給される。水素および酸素を用いて発電が行われ、電力として取り出される。また、PEFCからは、排ガスまたは排水が排出ライン115を通じて排出される。排ガスまたは排水は、必要に応じて活用される。
【0041】
PEFCの寿命を長くするためには、PEFCは定常運転されることが好ましい。PEFCのみからなる電力供給システムにおいては、電力需要の変動に対応するために、PEFCの出力を変動させざるを得ないこともある。本発明のハイブリッドシステムは、出力の変更が比較的容易なガスエンジンを有している。このため、PEFCの出力を一定に保った上で、エネルギー需要の変化に迅速かつ容易に対応しうる。
【0042】
一方、改質装置105のオフガスは、オフガス搬送ライン117を経て、ガスエンジン119に供給される。
【0043】
ガスエンジン119は、燃料として水素ガスを含むガスを利用するエンジンである。燃料噴射系を除けば、一般に広く知られているガソリンエンジンと本質的には同じ構造である。ガスエンジンは、発電効率が約40%と高い上、軽油ディーゼルエンジンにおいて問題となっているSOx、NOxの排出量も少ない。また、粒子状物質も生じない。さらに、水素成分が多い場合は、水素と酸素との燃焼反応は、水を生じるだけであるので、CO2による地球温暖化の防止にも役立つ。このように、本発明で用いられるガスエンジンは、非常に環境負荷の少ないエンジンである。したがって、かようなエンジンを含む本発明のハイブリッドシステムは、環境適合性が非常に高いシステムである。また、ガスエンジンは耐久性にも優れるため、ガスエンジンを含むハイブリッドシステムは、保守や維持が容易である。かような特徴は、実際のプラント設計においては、経済上非常に大きな利点である。さらに、水素ガスはメタンガスに比べて着火性が著しく高いため、ガスエンジンに供給される燃料中に水素ガスが含まれていると、燃焼性が向上する。リーンバーン状態でも安定して燃焼し、NOxや煤の発生量を低減しうる。圧縮比を高くすることもでき、エネルギー変換効率が著しく改善されうる。
【0044】
本発明のガスエンジンにおけるリーンバーンについて説明する。リーンバーン状態とは、エンジンに燃料と空気を混入させる時に空気を過剰にして燃焼された状態をいい、リーンバーンは希薄燃焼とも呼ばれる。空気を過剰にして燃焼させた場合、NOx、煤、黒鉛などの生成が少なく、非常に環境負荷が低い。また、燃焼の大部分が燃焼するので、エネルギー的に無駄が少ない。しかしながら、空気量が薄すぎると着火しにくい欠点がある。点火プラグの電圧を上げて、強制的に着火させることもできるが、使用電圧の高い点火プラグの寿命は短くなる。ところが本発明においては、着火性の高い水素ガスが混在している。この水素ガスの作用によって、エンジン内部での着火が促進され、リーンバーン状態の実現が容易である。点火プラグの近傍の水素ガス濃度が高くなるように水素ガスを供給すると、この効果がさらに大きい。
【0045】
ガスエンジンとしては、ガスディーゼルエンジンが好適に用いられる。ガスディーゼルエンジンは、PSAのオフガスに含まれる程度の量の水素を用いて、効率よく作動しうる。このため、ガスエンジンの中ではガスディーゼルエンジンが好ましい。ガスエンジンには、燃料ガスと空気とを混合した後に混合ガスを圧縮するガスエンジンに加えて、ガスディーゼルエンジンが含まれる。混合ガスを圧縮するガスエンジンにおいては、予め燃料ガスと空気とが混合され、混合気が燃焼室に供給される。その後、点火プラグを用いて燃焼反応が引き起こされる。燃料ガスと空気とからなる混合ガスを用いるガスエンジンにおいては、定容燃焼が生じる。一方、ガスディーゼルエンジンとは、シリンダー内に空気だけを吸入させて圧縮し、高温・高圧の空気中に燃料ガスを噴射して、自己点火または点火装置を用いて燃焼させる方式をいう。ガスディーゼルエンジンにおいては、定圧燃焼が生じる。予め燃料ガスと空気とを混合させるガスエンジンにおいては、圧縮比は18程度であるが、ガスディーゼルエンジンにおいては、圧縮比を20〜25程度にまで上昇させ得る。このため、ガスディーゼルエンジンを用いると、エネルギー効率をより向上させうる。例えば、ガスディーゼルエンジンを用いて発電する場合には、発電効率が向上する。これらの理由により、燃料電池と共にハイブリッドシステムを構成する対象としては、ガスディーゼルエンジンが特に好ましい。
【0046】
ガスエンジンによってもたらされる他の利点は、システム起動時の高い適応力である。システムの起動時には、十分に高純度な水素ガスをPEFCに供給可能になるまでに、ある程度の時間が必要である。この点、本発明のハイブリッドシステムは、即時に運転可能なガスエンジンを有しており、ガスエンジンは幅広いガス組成に対応可能である。このため、PEFCとガスエンジンとのハイブリッドシステムは、起動時における対応力が高い。例えば、起動初期は、ガスエンジンを主に用いて運転し、PEFC用の高純度水素ガス製造の準備が整い次第PEFCの運転を開始するなどの、状況に応じた運転が可能である。
【0047】
燃料として水素分離装置のオフガスを利用するガスエンジンであれば、特にガスエンジンの態様は限定されない。各種公知技術を参照して、設置環境に適したガスエンジンを用いればよい。ガスエンジンによる発電量を、より容易に制御するために、ガスエンジンは複数台設けられてもよい。
【0048】
ガスエンジンは、低濃度の水素を含む燃料を利用可能である。したがって、通常は低濃度の水素を含む水素分離装置のオフガスが、燃料として好適に用いられる。ガスエンジンに用いられる燃料ガスの組成は、ガスエンジンによって決定される。ガスエンジンに供給されるオフガスは、オフガス全体に対して、好ましくは0.5〜60体積%、より好ましくは10〜20体積%の水素ガスを含む。かような範囲の水素ガスを含むオフガス含む燃料によって、効率的な燃焼反応がガスエンジンで進行し、ガスエンジンの発電効率が向上する。ガスエンジン119に供給されるオフガスは、必要に応じて組成の調整が行われてもよい。例えば、燃焼効率が向上するように、高純度の水素ガスを、水素ガス搬送ライン109から供給してもよい。なお、水素分離装置のオフガス以外のガスが添加されているガスも、水素分離装置のオフガスが含まれる限り、本明細書においては「水素分離装置のオフガス」の概念に含まれる。
【0049】
ここで、ガスエンジンの一実施形態を、図2を用いて説明する。図2は、ガスエンジンの一実施形態の断面模式図である。オフガス搬送ライン117を経て供給される水素分離装置のオフガスは、オフガス噴射装置201によって、燃焼室203に供給される。別途、給気ライン121を経て供給される酸素源としての空気は、燃焼室203に供給される。燃焼室203での点火プラグ206を用いた燃焼によって、シリンダー205が運動し、化学的エネルギーが機械的エネルギーとして取り出される。図2では、オフガスは燃焼室203に入る前に導入空気と予備混合される。即ち、燃料ガスと空気とを混合した後に、混合ガスを圧縮するガスエンジンを表している。しかしながら、ガスエンジンは、かような形態に限定されない。ガスディーゼルエンジンにおいては、予め導入空気のみが燃焼室203に吸入される。そして、吸入された空気を圧縮した後、点火プラグ206の位置に設けられた燃料噴射弁(図示せず)から事前圧縮したオフガスを噴射する。燃焼は、自己点火によって引き起こされてもよい。場合によっては、点火プラグを設けて、強制的な点火によって燃焼反応を開始させてもよい。
【0050】
機械的エネルギーとして取り出されたエネルギーは、好ましくはガスエンジンのシリンダーの動力を用いる発電機を用いて、電気的エネルギーに変換される。
電気的エネルギーは、貯蓄が容易である上、使用用途も幅広い。このため、電気的エネルギーに変換することによって、ハイブリッドシステムを様々な用途のエネルギー源として用いうる。
【0051】
ガスエンジン119によって取り出されたエネルギーを、発電機を用いて電気的エネルギーに転換する場合には、ハイブリッドシステムは、自然エネルギーを利用する発電機(以下、「自然発電機」とも記載)をさらに含むことが好ましい。
自然発電機には、太陽電池を利用する太陽光発電機、風力を利用する風力発電機、地熱を利用する地熱発電機、水力を利用する水力発電機などが含まれる。自然発電機は、周辺環境や気候の変動によって大きな影響を受けるため、季節や時間帯によって発電量が大きく変化する。一方、電力需要も、季節や時間帯によって大きく変化する。自然発電機による電力供給が、電力需要を常に上回っているのであれば、特に問題は生じない。しかしながら、常に自然発電機による電力供給が電力需要を上回るためには、自然発電機を電力需要の最大値にあわせて設計する必要がある。かような自然発電機は、持っている能力の一部しか利用されない時間帯が大部分となり、設備コストや保守点検コストを考慮すると、非効率である。
【0052】
例えば、電力需要の最大値が100である場合に、一定出力50のPEFCおよび自然発電機を用いて電力供給する場合、自然発電機による電力供給の最小値が50を上回るように設計する必要がある。しかしながら、自然発電機は、発電能力が大きく変化するため、電力供給の最小値が50を上回るためには、場合によっては、最大発電能力が150となるように設計する必要が生じるかも知れない。これでは、自然発電機の規模が、必要以上に大規模になってしまい、非常に不経済である。
【0053】
これに対して、自然発電機のみでなく、ガスエンジン119のエネルギーを利用する、発電機(以下、「ガスエンジン発電機」と記載)を併用する場合について考察する。ガスエンジン発電機によって供給される電力は、コークス炉の操業に応じて決定されるため、自然発電機と比較して、一定の電力を供給しうる。したがって、常に30の電力を供給することも可能である。この場合、自然発電機は、電力供給の最小値が20を上回るように設計されればよい。この場合、前述と同様のケースであれば、自然発電機は最大発電能力が60となるように設計すればよい。つまり、自然発電機とガスエンジン発電機とを組み合わせることによって、自然発電機の必要以上の巨大化を抑制しうる。
【0054】
ガスエンジン119からは、排ガス搬送ライン125を通じて、300〜500℃の高温の排ガスが排出される。排出された高温の排ガスは、好ましくはシステム全体のエネルギー効率を向上させるために、さらに熱的に利用される。ガスエンジンから排出される排ガスは高温であるため、様々な用途に排熱が用いられうる。
このため、本発明のハイブリッドシステムは、PEFCのみのシステムを比較して、社会に普及しやすいといえる。熱利用の形態は、特に限定されない。好ましくは、本発明のハイブリッドシステムは、ガスエンジン119の排熱を利用してシャーベットアイスを作製する氷蓄熱システム127を含む。氷蓄熱システムとは、ガスエンジン119の排熱を利用してシャーベットアイスを作製するシステムをいう。また、シャーベットアイスとは、過冷却水が氷と水とに変化する際に生じる、シャーベット状の氷を意味する。
【0055】
ガスエンジンの排熱を利用してシャーベットアイスを作製するには、各種冷凍機を利用することができる。冷凍機の中では、吸収式冷凍機129が好ましい。吸収式冷凍機は、主駆動源として動力を必要とせず、熱を直接利用する熱駆動形の冷凍機であり、電力消費量少ない。吸収式冷凍機は、一重効用、二重効用、複数の温度レベルに対応する一・二重効用など各種吸収式冷凍機が用いられうる。排ガスの温度や冷凍機に所望する能力に応じて、吸収式冷凍機は選択される。また、排熱の形態によっても吸収式冷凍機の再生器の構造が異なる。ガスエンジンの排ガスの熱を回収した温水を熱源として用いる場合には、温水吸収式冷凍機が用いられる。蒸気を熱源として用いる場合には、蒸気吸収式冷凍機が用いられる。
蒸気吸収式冷凍機には、0.1〜0.2MPa程度の蒸気を熱源とする一重効用吸収式冷凍機、0.4〜1.0MPa程度の蒸気を熱源とする二重効用吸収式冷凍機などがある。ガスエンジンのジャケット温水も、併せて熱源として利用してもよい。
【0056】
氷蓄熱システム127においては、冷凍機を用いて冷媒をまず−8〜―2℃程度の低温に冷却する。この冷媒を用いて、氷蓄熱層133の水を、製氷熱交換器131において熱交換し、水を−2℃程度にまで過冷却する。過冷却された水は、氷蓄熱層133に放出され、放出時の衝撃によってシャーベット状の氷となり、最終的には氷蓄熱層133の水のうち、40〜60%がシャーベットアイスとして貯蔵される。ガスエンジン119の排ガスの有するエネルギーをシャーベットアイスとして取り出すことによって、エネルギーの使用用途が拡大する。排ガス量はガスエンジンの稼動状態によって変化し、また、排熱量も一定とは限らない。シャーベットアイスとして貯蔵することによって、所望するときに、所望量の冷熱を利用することが可能になる。
【0057】
例えば、シャーベットアイスは、夏季日中に室内温度を低下させるために用いることができる。これにより、日中の電力消費量を低減させうる。
【0058】
また、タービンの圧縮機の圧縮効率を高めるために、シャーベットアイスの有する冷熱を利用してもよい。圧縮機の圧縮効率は、圧縮される気体の温度が高いと、圧縮効率が低下し、発電効率が低下する。この問題を解決するために、シャーベットアイスを用いてもよい。シャーベットアイスが利用される圧縮機は、他のシステムに属する圧縮器であってもよいし、本発明のハイブリッドシステムに属する圧縮機であってもよい。本発明のハイブリッドシステムに属する圧縮機、例えば、ガスエンジンの燃料および/または空気の圧縮機に用いられると、ハイブリッドシステムの総合エネルギー効率をより向上させうる。
【0059】
本発明の第二は、燃料ガスを水素リッチガスに改質する工程(1)と、前記水素リッチガスを高純度の水素ガスおよびオフガスに分離する工程(2)と、前記高純度の水素ガスを燃料として、固体高分子型燃料電池を用いて発電する工程(3)と、前記オフガスを、ガスエンジンで燃焼させる工程(4)とを含む、燃料ガスの処理方法である。本発明の第二は、本発明の第一で説明した形式で、燃料ガスを処理する方法である。したがって、方法の実施にあたり、用いられる装置や条件などは、本発明の第一の説明において説明した通りであり、以下の説明においては、主な工程についてのみ簡単に説明する。
【0060】
ガスエンジンに供給されるオフガスは、水素ガスを好ましくは0.5〜60体積%、より好ましくは10〜20体積%含むことが好ましい。かような範囲の水素ガスを含むオフガス含む燃料によって、効率的な燃焼反応がガスエンジンで進行し、ガスエンジンの発電効率が向上する。
【0061】
本発明の燃料ガスの処理方法は、ガスエンジンを用いて発電する工程(5)をさらに含むことが好ましい。具体的には、ガスエンジンのシリンダーの運動を、電力に変換する発電機が含まれる。発電機についての説明は、本発明の第一において説明した通りである。
【0062】
本発明の燃料ガスの処理方法は、ガスエンジンの排熱を利用してシャーベットアイスを作製する工程(6)をさらに含むことが好ましい。好ましくは、シャーベットアイスは、吸収式冷凍機を利用して作製される。シャーベットアイスを作製する方法、冷凍機等については、本発明の第一において説明した通りである。
【0063】
【発明の効果】
本発明のハイブリッドシステムは、不純物を含むガスを燃料として利用するガスエンジンを含む。ガスエンジンは高温のガスを排出するため、この高温のガスを用いて幅広い用途に熱量を有効利用できる。また、本発明のハイブリッドシステムは、即時に運転可能なガスエンジンを有しているため、起動時における対応力が高い。さらに、水素ガスを利用するガスエンジンは、発電効率が40%前後と非常に高く、NOx排出量やSOx排出量も極めて少ない。このため、本発明のハイブリッドシステムは、自然環境への負荷の少ないシステムである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態の概略図である。
【図2】ガスエンジンの一実施形態の断面模式図である。
【符号の説明】
101…ガスタンク、103…脱硫器、105…改質装置、107…水素分離装置、109…水素ガス搬送ライン、111…高分子固体型燃料電池(PEFC)、113…酸化剤搬送ライン、115…排出ライン、117…オフガス搬送ライン、119…ガスエンジン、121…給気ライン、123…自然エネルギーを利用する発電機、125…排ガス搬送ライン、127…氷蓄熱システム、129…吸収式冷凍機、131…製氷熱交換器、133…氷蓄熱層、201…オフガス噴射装置、203…燃焼室、205…シリンダー、206…点火プラグ。
【発明の属する技術分野】
本発明は、固体高分子型燃料電池とガスエンジンとのハイブリッドシステムに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、自然環境への負荷を大きく抑制する動力源として、燃料電池が注目されている。燃料電池の中では、固体高分子型燃料電池(PEFC)、固体酸化物型燃料電池(SOFC)、メタノール直接型燃料電池(DMFC)などについて、特にPEFCについて、活発な研究開発がされている。燃料電池の中では、電解質の散逸が生じない、作動温度が低いといった特徴と有するPEFCに注目が集まっている。
【0003】
PEFCのエネルギー効率を向上させるためには、PEFCから排出される熱エネルギーが有効に活用されるべきである。例えば、燃料電池自体を貯水容器中に収容してなるシステムを設計することによって、燃料電池の排熱を用いた温水の生産が可能である(特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、PEFCの作動温度は低いため、PEFCから排出される排ガスの温度も70℃程度と低温である。このため、排熱の利用先が、特許文献1に記載されているように温水の生産などに著しく限定される。これでは、社会全体に広くPEFCが導入された場合に、排熱の一部しか利用できず、エネルギー的に非効率的である。また、PEFCは、燃料電池の中では比較的低温で作動するとはいえ、室温から作動温度にまで昇温させるには、ある程度の時間を要する。
このため、PEFCのみでは、電力の需要の発生に迅速に対応できない。
【0005】
ところで、発電源としては、燃料電池であるPEFCの他に、太陽光や風力などの自然エネルギーを用いた発電装置がある。しかしながら、かような自然エネルギーを用いた発電装置は、出力が自然環境に大きく影響される。したがって、需要の変動に応じて発電量を変化させることができない。例えば、太陽光を用いて発電された電力を用いて室内を冷却するとする。しかしながら、日照量は日によって異なるため、電力供給は不安定である。このように、自然エネルギーを用いた発電装置を用いた場合、需要に応じて発電量を変化させることができない。
【0006】
【特許文献1】
特開2002−8674号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明が目的とするところは、空調用などエネルギー消費量の巨大な用途にも適用可能であり、PEFCが出力を開始するまでのタイムラグを埋め合わすことが可能であり、需要の変化に応じた出力の変更も容易である、PEFCを含むシステムを提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、燃料ガスを水素リッチガスに改質する改質装置と、前記改質装置から排出された水素リッチガスを、高純度の水素ガスおよびオフガスに分離する、水素分離装置と、前記水素分離装置から排出された高純度の水素ガスを燃料として用いる固体高分子型燃料電池(PEFC)と、前記水素分離装置から排出されたオフガスを燃料として用いるガスエンジンとを含む、燃料電池とガスエンジンとのハイブリッドシステムである。
【0009】
改質装置によって、燃料ガスを水素リッチガスに改質しても、そのままPEFCで用いることができる程度にまで水素濃度を高めることは困難である。通常、CO、H2O、CH4などの不純物が水素リッチガス中には含まれる。このため、不純物を除去する工程が必要である。一方、本発明のハイブリッドシステムは、不純物を含むガスを燃料として利用するガスエンジンを含む。ガスエンジンは高温のガスを排出するため、この高温のガスを用いて幅広い用途に熱量を有効利用できる。
【0010】
水素ガスを高い濃度で利用しうるガスエンジンは、発電効率が40%前後と非常に高く、通常のエンジンに比べてNOx排出量やSOx排出量も少ない。このため、本発明のハイブリッドシステムは、自然環境への負荷の少ないシステムである。ガスエンジンには、燃料ガスと空気とを混合した後に、混合ガスを圧縮するガスエンジンに加えて、ガスディーゼルエンジンが含まれる。ガスディーゼルエンジンとは、シリンダー内に空気だけを吸入させて圧縮し、高温・高圧の空気中に燃料ガスを噴射して、自己点火または点火装置を用いて燃焼させる方式をいう。ガスディーゼルエンジンは、燃料ガスと空気とを混合した後に混合ガスを圧縮するガスエンジンに比べて、圧縮比を大きくすることが可能であるため、エネルギー効率を向上させうる。このため、燃料電池と共にハイブリッドシステムを構成する対象としては、ガスディーゼルエンジンが特に好ましい。
【0011】
システムの起動時には、十分に高純度な水素ガスをPEFCに供給可能になるまでに、ある程度の時間が必要である。この点、本発明のハイブリッドシステムは、即時に運転可能なガスエンジンを有しており、ガスエンジンは幅広いガス組成に対応可能である。このため、PEFCとガスエンジンとのハイブリッドシステムは、起動時における対応力が高い。例えば、起動初期は、ガスエンジンを主に用いて運転し、PEFCの準備が整い次第PEFCの運転を開始するなどの、状況に応じた運転が可能である。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の第一は、燃料ガスを水素リッチガスに改質する改質装置と、前記改質装置から排出された水素リッチガスを、高純度の水素ガスおよびオフガスに分離する、水素分離装置と、前記水素分離装置から排出された高純度の水素ガスを燃料として用いる固体高分子型燃料電池(PEFC)と、前記水素分離装置から排出されたオフガスを燃料として用いるガスエンジンとを含む、燃料電池とガスエンジンとのハイブリッドシステムである。本発明の第一について、図1を参照しながら説明する。
【0013】
図1は、本発明の一実施形態の概略図である。燃料タンク101に貯蔵された燃料ガスは、必要に応じて、脱硫器103を経て、改質装置105に搬送される。改質装置105では、水蒸気改質反応を利用して、燃料ガスが水素リッチガスに改質される。製造された水素リッチガスは、水素分離装置107に搬送される。水素分離装置107は、PSA(圧力スウィング吸着)など高純度の水素ガスを分離し得る装置である。水素分離装置107において、水素リッチガスは、高純度の水素ガスとオフガスとに分離される。オフガスとは、水素リッチガスから高純度の水素ガスを分離した際の、残りのガスを意味する。
【0014】
高純度の水素ガスは、水素ガス搬送ライン109を経て、PEFC111に搬送される。場合によっては、シフト触媒が充填されたシフト変成装置や、選択酸化触媒が充填された選択酸化装置が、水素分離装置107とPEFC111との間に設けられてもよい。PEFC111には、別途、酸化剤が酸化剤搬送ライン113を通じて供給される。酸化剤は通常は空気である。PEFC111において、水素リッチガスおよび酸化剤を用いて発電が行われる。また、PEFC111からは、70℃程度の排ガスおよび発電反応によって生成した水が、排出ライン115を経て排出される。
【0015】
他方、水素分離装置107からは、オフガスが、オフガス搬送ライン117を経て、ガスエンジン119に搬送される。また、酸素源としての空気が、給気ライン121を経てガスエンジン119に供給される。ガスエンジン119においては、オフガス中に含まれる水素ガスやメタンガスなどの燃料、および、空気中に含まれる酸素を用いて、燃焼反応が進行し、化学的エネルギーが機械的エネルギーとして取り出される。機械的エネルギーは、必要に応じて発電機を利用することにより、電気的エネルギー(電力)として取り出される。電気的エネルギーがガスエンジン119の作動によって取り出される場合には、必要に応じて、太陽光や風力の自然エネルギーを利用する発電機123が、電力供給源として併用される。
【0016】
ガスエンジン119からは、燃焼反応によって生成した排ガスが排ガス搬送ライン125によって、排出される。ガスエンジン119から排出される排ガスは、300〜500℃の高温の熱エネルギーを有している。必要に応じて、排ガスの有する排熱を利用してシャーベットアイスを作製する氷蓄熱システム127が設けられる。氷蓄熱システム127に含まれる吸収式冷凍機129は、冷媒温度を−8〜―2℃程度の低温に冷却する。この冷媒を用いて、製氷熱交換器131において、水が過冷却される。作製された過冷却水は氷蓄熱層133に放出され、氷蓄熱層133においてシャーベット状の氷として保存される。氷は解氷熱交換器などを用いて冷媒として利用される。以下、各構成について詳細に説明する。
【0017】
本発明において燃料ガスとは、改質装置によって改質されて水素リッチガスを生成しうるガスをいう。最終的にPEFCの燃料として用いられる燃料ガスとしては、メタンを含有するガスが一般に用いられる。メタンを含有するガスの具体例としては、天然ガス、都市ガス、コークス炉ガス、精油所ガスなどが挙げられる。天然ガスとは自然現象に伴って発生するガスをいう。天然ガスには、火山、温鉱泉、油田その他の地帯で地下より産生するガスなどが含まれる。都市ガスとは、都市において中央の供給源から導管によって各需要者に送られる燃料ガスをいう。コークス炉ガスとは、石炭を乾留するときに発生するガスをいう。精油所ガスとは、精油所において石油精製に際して副生するガスをいう。精油所ガスには、スタビライズドガス、熱分解ガス、コーキングガス、ビスブレーキングガス、接触分解ガス、接触改質ガスなどが含まれる。天然ガス、都市ガス、コークス炉ガス、精油所ガスなどは、現代社会において大量に供給されるため、燃料として好都合である。
【0018】
燃料ガスは、燃料タンク101に一旦貯蔵され、燃料搬送ラインを通じて搬送されるのが一般的であるが、この態様に限定されない。場合によっては、コークス炉などの燃料発生源から、燃料タンク101を経ずに、脱硫器103や改質装置105に供給してもよい。なお、本明細書においては、便宜上、「燃料ガス」とは、改質装置105に供給されるまでのガスを意味する。従って、脱硫器103によって、若干組成が変化した場合も、燃料ガスの概念に包含される。
【0019】
本発明のハイブリッドシステムは、燃料ガスを加圧する圧縮機(図示せず)を含んでいてもよい。圧縮機を用いて燃料ガスを加圧すると、当然燃料ガスの占有体積が減少する。このため、圧縮機を用いて燃料ガスを加圧することによって、必要に応じて設置される脱硫器103などの後工程の装置を小型化できる。なお、圧縮機を経た燃料ガスの圧力は、脱硫器103および改質装置105での操作圧力に応じて適宜決定される。
【0020】
圧縮機は、特に制限されるべきものではなく、従来公知の圧縮機を使用できる。例えば、ダイアフラム式圧縮機、往復動圧縮機、可動翼圧縮機、ねじ式圧縮機、ラジアル圧縮機、ターボ圧縮機、軸流圧縮機など)が使用されうる。
【0021】
本発明のハイブリッドシステムは、必要に応じて、改質装置105へのガス搬送ライン上に脱硫器103を有していてもよい。燃料ガスは、不純物として硫黄を有している場合がある。後工程で用いられる水蒸気改質触媒、吸着剤などが硫黄によって被毒される可能性がある場合には、燃料ガスを脱硫することが好ましい。
脱硫器103においては、後工程で用いられる触媒や吸着剤の種類に応じて、脱硫の度合いが制御される。通常は、硫黄濃度が、1vol.ppb以下、好ましくは0.1vol.ppb以下、より好ましくは0.05vol.ppb以下にまで下げられる。この程度硫黄濃度を低下させると、硫黄による水蒸気改質触媒および吸着剤の被毒が、抑制される。
【0022】
本発明に用いることのできる脱硫器103は、特に制限されるべきものではない。例えば、特開平8−257369号公報、特開2002−212575号公報に記載されている従来公知の脱硫器を適宜利用することができる。脱硫器103に充填される脱硫剤も、特に制限されるべきものではなく、従来公知の各種脱硫剤を利用することができる。2種以上の脱硫剤を組み合わせてもよい。例えば、脱硫器の入口側から、水添脱硫触媒および酸化亜鉛系吸着剤の順序で2層の脱硫剤を充填した形態、水添脱硫触媒、酸化亜鉛系吸着剤および高次脱硫剤の順序で3層の脱硫剤を充填した形態などが例示できる。好ましくは、上記3層の脱硫剤を充填した形態が用いられる。
【0023】
本発明のハイブリッドシステムは、改質装置105を含む。改質装置は、改質装置に供給された水蒸気および酸素含有ガスを用いて、燃料ガスを水蒸気改質および部分酸化する装置をいう。水蒸気改質によって、燃料ガス中の水素濃度が高められる。水蒸気改質は、水蒸気改質触媒の存在下で進行する。改質装置105からは、高温の水素リッチガスが排出される。供給されるガスが、CH4である場合には、CH4+2H2O→3H2+CO2によって、CH4が水素および二酸化炭素に改質される。理論的には、所定の水蒸気を供給すれば生成する成分は、水素および二酸化炭素のみとなるが、実際系においては、水素および二酸化炭素以外の成分も混在する。水蒸気改質されずに残存するメタンや、使用されずに残存した水蒸気、燃料ガス中に元来存在していたプロパンなどが含まれる。
【0024】
改質された水素リッチガスをPEFCのみに用いる場合には、これらの不純物を除去しなければならない。特に一酸化炭素は、PEFCにおいて触媒として用いられる白金の触媒毒であるため、数十ppm以下にまで除去される必要がある。このため、改質された水素リッチガス中のCOを除去するために、COシフト反応を利用してCOを除去するCO変成器、および、選択酸化触媒を利用してCOを除去する選択酸化装置などが用いられる。PEFCに用いられる高純度の水素ガスは、PSA装置などのガス分離装置を用いて供給されうる。しかしながら、ガス分離装置を用いて高純度の水素ガスを分離した場合、その他の成分が廃棄されてしまい、エネルギー効率は著しく低下する。本発明のハイブリッドシステムは、水素リッチガス中に含まれるメタンや水素を有効活用するガスエンジンを含む。このため、PSAなどの水素分離装置を用いて高純度の水素ガスを分離する形式を採用しても、水素分離装置のオフガスが有効に活用される。また、水素分離装置単独で、PEFCに使用できる高濃度の水素ガスが供給されうる場合には、CO変成器および/または選択酸化装置を除去することも可能である。
【0025】
本発明に用いられる改質装置105の種類は、特に制限されるべきものではない。公知の改質装置が、改質装置105として用いられ得る。例えば、天然ガスから、メタノールやジメチルエーテルを合成するGTL(Gas to liquid)技術を適宜用い得る。なお、改質装置に関しては、特開2000−084410公報などに記載されている公知の知見を参照しうる。改質装置の能力は、本発明のハイブリッドシステムの実施態様に応じて決定される。ガスエンジンに相当量のオフガスを流す場合には、改質される水素量が低くてもよい。ガスエンジンが、PEFCの補助装置として用いられるのであれば、極力水素ガスに改質してもよい。
【0026】
改質装置は、水蒸気改質触媒の存在下で水蒸気改質反応と部分酸化反応とを同時に行う装置構成を有していてもよい。また、改質装置は、部分酸化反応を行って必要な熱量を補った後に水蒸気改質触媒の存在下で水蒸気改質反応を行う装置構成を有していてもよい。反応形式は、特に制限はなく、固定床式、移動床式、流動床式などが採用される。一般的には、固定床式の反応器が用いられる。
【0027】
改質装置105に充填される水蒸気改質触媒も、従来公知のものが適宜使用されうる。ただし、新規な水蒸気改質触媒を使用しても勿論よい。水蒸気改質触媒には、金属酸化物からなる担体にロジウム、ルテニウム、イリジウム、ニッケル、パラジウム、白金、銅、亜鉛などの触媒金属の1種または2種以上を担持させたモノリス触媒などが含まれる。ただし、これらに制限されるわけではない。担体としての金属化合物には、Mg、Ca、Ba、Zn、Al、Zr、Laなどの金属を1種または2種以上含む金属酸化物が含まれる。金属酸化物の具体例としては、マグネシア(MgO)、酸化カルシウム(CaO)、酸化バリウム(BaO)、酸化亜鉛(ZnO)、アルミナ(Al2O3)、ジルコニア(ZrO2)、酸化ランタン(La2O3)などの単一金属酸化物、MgO/CaO、MgO/BaO、MgO/ZnO、MgO/Al2O3、MgO/ZrO2、CaO/BaO、CaO/ZnO、CaO/Al2O3などの複合金属酸化物が挙げられる。また、担体形状ないし構造に関しても、特に制限されるべきものではなく、ハニカム構造などが利用できる。
【0028】
改質装置105から排出された水素リッチガスは、水素分離装置107に搬送される。なお、本明細書において「水素リッチガス」とは、改質装置によって水素濃度が高められたガスを意味し、改質装置から排出された後、水素分離装置によって水素が分離されるまでが、水素リッチガスと定義される。また、「高純度の水素ガス」とは、水素分離装置によって水素濃度が非常に高められた水素含有ガスをいう。「オフガス」とは、水素リッチガスから、水素分離装置によって分離された高純度の水素ガスを差し引いた残りの成分からなるガスをいう。
【0029】
水素分離装置107は、供給されるガスから、高純度の水素ガスを分離し、残りのガスをオフガスとして排出する装置であれば、特に限定されない。水素分離装置としては、PSA装置や水素ガス分離膜が用いられ得る。PSA装置は、水素以外のガスを優先的に吸着する1種以上の吸着剤が充填された吸着塔からなる。
吸着塔に設けられた自動切替弁の開閉操作によって、所定のサイクルタイムで吸着操作と脱着操作とが繰り返し行われ、高純度の水素ガスが分離される。PSA装置については、特に限定はなく、特開2002−212575号公報などに記載されている公知の知見を必要に応じて参照できる。以下、PSA装置を水素分離装置として用いる態様に関して説明するが、PSA装置以外の水素分離装置も使用されうる。水素ガス分離膜を用いる際にも、各種公知技術を適宜参照できる(例えば、特開2002−154880号公報参照)。
【0030】
PSA装置には、PEFC111に高純度の水素ガスを搬送するための水素ガス搬送ライン109、および、ガスエンジン119にオフガスを搬送するためのオフガス搬送ライン117が取り付けられている。これらのラインは、図1に示すように、水素分離装置107が、水素ガス搬送ライン口およびオフガス搬送ライン口をそれぞれ有していても良い。多塔式のPSA装置を用いて連続的に高純度の水素ガスおよびオフガスを取り出す場合には、水素分離装置107から排出される箇所においては1つのラインを共有して、途中で水素ガス搬送ラインおよびオフガス搬送ラインに分岐してもよい。水素分離装置がPSA装置である場合には、オフガスは、吸着塔において吸着したガス分子を、脱着させるときに発生するガスである。
【0031】
PSAのオフガスは、ガスエンジンに用いられる。ガスエンジンは、水素ガスを有効に利用して作動する機関であるため、オフガス中に一定量の水素ガスが含まれていることはむしろ好都合である。オフガスの成分は、ガスエンジンが好適に作動するように制御される。そのためには、PSA装置は、高純度の水素ガスを最大限分離しなくてもよい。つまり、PSA装置の水素分離能力を最大限活用すると、ガスエンジンに供給される水素量が不足する場合には、PSA装置の分離能力を敢えて低下させてもよい。これにより、所定量の水素をガスエンジンに供給しうる。燃料ガスまたは水素リッチガスを、水素分離装置107を経ずに、ガスエンジン119に供給するためのバイパスライン(図示せず)が設けられても良い。
【0032】
PSA装置の構成は、ハイブリッドシステムの実施態様に応じて、決定される。設備投資や装置の占有面積を減少させる観点からは、一段式PSA装置が好ましく、一塔式PSA装置がより好ましい。
【0033】
一段式PSA装置を用いる場合には、多段式PSA装置を用いる場合と比較して、相対的に得られる高純度の水素ガス量は、減少する。しかしながら、一段式または一塔式のPSA装置を用いる場合であっても、同等の吸着塔を用いている限り、同等の純度の水素ガスを得ることが可能である。従って、得られる水素ガス量が減少しても、一定量の高純度の水素ガスをPEFCに供給し得る。燃料ガス体積に対してPEFCに供給される水素ガス量が少なくても、ガスエンジンでエネルギーが有効利用される。これは、ガスエンジンとPEFCとを含むハイブリッドシステムを構築することによって、生じる効果である。
【0034】
なお、本願において、一段式PSA装置とは、PSA装置に供給された水素リッチガスが、一つの吸着塔に供給されてガス分離される形式を意味する。また、二段式PSA装置とは、PSA装置に供給された水素リッチガスが、第一の吸着塔において処理された後、第一の吸着塔から排出されたガスをさらに第二の吸着塔において処理する形式を意味する。また、一塔式PSA装置とは、PSA装置に配置される吸着塔が一塔である場合を意味する。従って、一塔式PSA装置は、必然的に一段式PSA装置となる。本願においては、オフガス中にある程度の水素が混入していても良いため、一塔式PSA装置にすることも可能である。
【0035】
吸着塔に充填される吸着剤は、供給される水素リッチガスによって適宜選択される。所望の濃度の水素ガスが所望量得られるように、吸着剤の種類および量を決定する。吸着塔には、(i)脱湿剤、(ii)炭素系吸着剤、(iii)ゼオライト系吸着剤などが充填される。
【0036】
(i)脱湿剤は、導入される水素リッチガスから水分を除去するために充填され、通常は、吸着塔の最下部に充填される。脱質材としては、活性アルミナ、シリカゲルなどが用いられる。
【0037】
(ii)炭素系吸着剤は、脱湿後の、二酸化炭素およびメタンを主として吸着する。通常は、炭素系吸着剤は、脱湿剤の上部かつ後述のゼオライト系吸着剤の下部に配置される。
【0038】
(iii)ゼオライト系吸着剤は、二酸化炭素および一酸化炭素を主として吸着する。ゼオライト系吸着剤の中では、5A型、13X型などのゼオライト系吸着剤が有効である。通常は、ゼオライト系吸着剤は、炭素系吸着剤の上部に充填される。ゼオライト系吸着剤は、CO濃度が高い場合に、特に有効である。
【0039】
改質装置105から排出された水素リッチガスは、水素ガス搬送ライン109を経て、最終的に、PEFC111に搬送される。必要であれば、水素分離装置107とPEFC111との間に、CO変成器(図示せず)や選択酸化装置(図示せず)が設けられていてもよい。しかしながら、本発明は、これらの装置を設けずとも、高いエネルギー効率で、PEFCを含むシステムを運転しうる。可能であれば、これらの装置は除去されることが好ましい。CO変成器や選択酸化触媒がない、PEFCを含むシステムを構築することによって、設備コストを大きく削減しうる。
【0040】
高純度の水素ガスは、最終的にPEFC111に搬送される。PEFCは、電解質が固体の高分子からなることを特徴とする燃料電池である。PEFCにおいては、アノードに高純度の水素ガスが供給される。一方、カソードには酸化剤搬送ライン113を通じて、酸素が供給される。通常は、空気が酸素源として供給される。水素および酸素を用いて発電が行われ、電力として取り出される。また、PEFCからは、排ガスまたは排水が排出ライン115を通じて排出される。排ガスまたは排水は、必要に応じて活用される。
【0041】
PEFCの寿命を長くするためには、PEFCは定常運転されることが好ましい。PEFCのみからなる電力供給システムにおいては、電力需要の変動に対応するために、PEFCの出力を変動させざるを得ないこともある。本発明のハイブリッドシステムは、出力の変更が比較的容易なガスエンジンを有している。このため、PEFCの出力を一定に保った上で、エネルギー需要の変化に迅速かつ容易に対応しうる。
【0042】
一方、改質装置105のオフガスは、オフガス搬送ライン117を経て、ガスエンジン119に供給される。
【0043】
ガスエンジン119は、燃料として水素ガスを含むガスを利用するエンジンである。燃料噴射系を除けば、一般に広く知られているガソリンエンジンと本質的には同じ構造である。ガスエンジンは、発電効率が約40%と高い上、軽油ディーゼルエンジンにおいて問題となっているSOx、NOxの排出量も少ない。また、粒子状物質も生じない。さらに、水素成分が多い場合は、水素と酸素との燃焼反応は、水を生じるだけであるので、CO2による地球温暖化の防止にも役立つ。このように、本発明で用いられるガスエンジンは、非常に環境負荷の少ないエンジンである。したがって、かようなエンジンを含む本発明のハイブリッドシステムは、環境適合性が非常に高いシステムである。また、ガスエンジンは耐久性にも優れるため、ガスエンジンを含むハイブリッドシステムは、保守や維持が容易である。かような特徴は、実際のプラント設計においては、経済上非常に大きな利点である。さらに、水素ガスはメタンガスに比べて着火性が著しく高いため、ガスエンジンに供給される燃料中に水素ガスが含まれていると、燃焼性が向上する。リーンバーン状態でも安定して燃焼し、NOxや煤の発生量を低減しうる。圧縮比を高くすることもでき、エネルギー変換効率が著しく改善されうる。
【0044】
本発明のガスエンジンにおけるリーンバーンについて説明する。リーンバーン状態とは、エンジンに燃料と空気を混入させる時に空気を過剰にして燃焼された状態をいい、リーンバーンは希薄燃焼とも呼ばれる。空気を過剰にして燃焼させた場合、NOx、煤、黒鉛などの生成が少なく、非常に環境負荷が低い。また、燃焼の大部分が燃焼するので、エネルギー的に無駄が少ない。しかしながら、空気量が薄すぎると着火しにくい欠点がある。点火プラグの電圧を上げて、強制的に着火させることもできるが、使用電圧の高い点火プラグの寿命は短くなる。ところが本発明においては、着火性の高い水素ガスが混在している。この水素ガスの作用によって、エンジン内部での着火が促進され、リーンバーン状態の実現が容易である。点火プラグの近傍の水素ガス濃度が高くなるように水素ガスを供給すると、この効果がさらに大きい。
【0045】
ガスエンジンとしては、ガスディーゼルエンジンが好適に用いられる。ガスディーゼルエンジンは、PSAのオフガスに含まれる程度の量の水素を用いて、効率よく作動しうる。このため、ガスエンジンの中ではガスディーゼルエンジンが好ましい。ガスエンジンには、燃料ガスと空気とを混合した後に混合ガスを圧縮するガスエンジンに加えて、ガスディーゼルエンジンが含まれる。混合ガスを圧縮するガスエンジンにおいては、予め燃料ガスと空気とが混合され、混合気が燃焼室に供給される。その後、点火プラグを用いて燃焼反応が引き起こされる。燃料ガスと空気とからなる混合ガスを用いるガスエンジンにおいては、定容燃焼が生じる。一方、ガスディーゼルエンジンとは、シリンダー内に空気だけを吸入させて圧縮し、高温・高圧の空気中に燃料ガスを噴射して、自己点火または点火装置を用いて燃焼させる方式をいう。ガスディーゼルエンジンにおいては、定圧燃焼が生じる。予め燃料ガスと空気とを混合させるガスエンジンにおいては、圧縮比は18程度であるが、ガスディーゼルエンジンにおいては、圧縮比を20〜25程度にまで上昇させ得る。このため、ガスディーゼルエンジンを用いると、エネルギー効率をより向上させうる。例えば、ガスディーゼルエンジンを用いて発電する場合には、発電効率が向上する。これらの理由により、燃料電池と共にハイブリッドシステムを構成する対象としては、ガスディーゼルエンジンが特に好ましい。
【0046】
ガスエンジンによってもたらされる他の利点は、システム起動時の高い適応力である。システムの起動時には、十分に高純度な水素ガスをPEFCに供給可能になるまでに、ある程度の時間が必要である。この点、本発明のハイブリッドシステムは、即時に運転可能なガスエンジンを有しており、ガスエンジンは幅広いガス組成に対応可能である。このため、PEFCとガスエンジンとのハイブリッドシステムは、起動時における対応力が高い。例えば、起動初期は、ガスエンジンを主に用いて運転し、PEFC用の高純度水素ガス製造の準備が整い次第PEFCの運転を開始するなどの、状況に応じた運転が可能である。
【0047】
燃料として水素分離装置のオフガスを利用するガスエンジンであれば、特にガスエンジンの態様は限定されない。各種公知技術を参照して、設置環境に適したガスエンジンを用いればよい。ガスエンジンによる発電量を、より容易に制御するために、ガスエンジンは複数台設けられてもよい。
【0048】
ガスエンジンは、低濃度の水素を含む燃料を利用可能である。したがって、通常は低濃度の水素を含む水素分離装置のオフガスが、燃料として好適に用いられる。ガスエンジンに用いられる燃料ガスの組成は、ガスエンジンによって決定される。ガスエンジンに供給されるオフガスは、オフガス全体に対して、好ましくは0.5〜60体積%、より好ましくは10〜20体積%の水素ガスを含む。かような範囲の水素ガスを含むオフガス含む燃料によって、効率的な燃焼反応がガスエンジンで進行し、ガスエンジンの発電効率が向上する。ガスエンジン119に供給されるオフガスは、必要に応じて組成の調整が行われてもよい。例えば、燃焼効率が向上するように、高純度の水素ガスを、水素ガス搬送ライン109から供給してもよい。なお、水素分離装置のオフガス以外のガスが添加されているガスも、水素分離装置のオフガスが含まれる限り、本明細書においては「水素分離装置のオフガス」の概念に含まれる。
【0049】
ここで、ガスエンジンの一実施形態を、図2を用いて説明する。図2は、ガスエンジンの一実施形態の断面模式図である。オフガス搬送ライン117を経て供給される水素分離装置のオフガスは、オフガス噴射装置201によって、燃焼室203に供給される。別途、給気ライン121を経て供給される酸素源としての空気は、燃焼室203に供給される。燃焼室203での点火プラグ206を用いた燃焼によって、シリンダー205が運動し、化学的エネルギーが機械的エネルギーとして取り出される。図2では、オフガスは燃焼室203に入る前に導入空気と予備混合される。即ち、燃料ガスと空気とを混合した後に、混合ガスを圧縮するガスエンジンを表している。しかしながら、ガスエンジンは、かような形態に限定されない。ガスディーゼルエンジンにおいては、予め導入空気のみが燃焼室203に吸入される。そして、吸入された空気を圧縮した後、点火プラグ206の位置に設けられた燃料噴射弁(図示せず)から事前圧縮したオフガスを噴射する。燃焼は、自己点火によって引き起こされてもよい。場合によっては、点火プラグを設けて、強制的な点火によって燃焼反応を開始させてもよい。
【0050】
機械的エネルギーとして取り出されたエネルギーは、好ましくはガスエンジンのシリンダーの動力を用いる発電機を用いて、電気的エネルギーに変換される。
電気的エネルギーは、貯蓄が容易である上、使用用途も幅広い。このため、電気的エネルギーに変換することによって、ハイブリッドシステムを様々な用途のエネルギー源として用いうる。
【0051】
ガスエンジン119によって取り出されたエネルギーを、発電機を用いて電気的エネルギーに転換する場合には、ハイブリッドシステムは、自然エネルギーを利用する発電機(以下、「自然発電機」とも記載)をさらに含むことが好ましい。
自然発電機には、太陽電池を利用する太陽光発電機、風力を利用する風力発電機、地熱を利用する地熱発電機、水力を利用する水力発電機などが含まれる。自然発電機は、周辺環境や気候の変動によって大きな影響を受けるため、季節や時間帯によって発電量が大きく変化する。一方、電力需要も、季節や時間帯によって大きく変化する。自然発電機による電力供給が、電力需要を常に上回っているのであれば、特に問題は生じない。しかしながら、常に自然発電機による電力供給が電力需要を上回るためには、自然発電機を電力需要の最大値にあわせて設計する必要がある。かような自然発電機は、持っている能力の一部しか利用されない時間帯が大部分となり、設備コストや保守点検コストを考慮すると、非効率である。
【0052】
例えば、電力需要の最大値が100である場合に、一定出力50のPEFCおよび自然発電機を用いて電力供給する場合、自然発電機による電力供給の最小値が50を上回るように設計する必要がある。しかしながら、自然発電機は、発電能力が大きく変化するため、電力供給の最小値が50を上回るためには、場合によっては、最大発電能力が150となるように設計する必要が生じるかも知れない。これでは、自然発電機の規模が、必要以上に大規模になってしまい、非常に不経済である。
【0053】
これに対して、自然発電機のみでなく、ガスエンジン119のエネルギーを利用する、発電機(以下、「ガスエンジン発電機」と記載)を併用する場合について考察する。ガスエンジン発電機によって供給される電力は、コークス炉の操業に応じて決定されるため、自然発電機と比較して、一定の電力を供給しうる。したがって、常に30の電力を供給することも可能である。この場合、自然発電機は、電力供給の最小値が20を上回るように設計されればよい。この場合、前述と同様のケースであれば、自然発電機は最大発電能力が60となるように設計すればよい。つまり、自然発電機とガスエンジン発電機とを組み合わせることによって、自然発電機の必要以上の巨大化を抑制しうる。
【0054】
ガスエンジン119からは、排ガス搬送ライン125を通じて、300〜500℃の高温の排ガスが排出される。排出された高温の排ガスは、好ましくはシステム全体のエネルギー効率を向上させるために、さらに熱的に利用される。ガスエンジンから排出される排ガスは高温であるため、様々な用途に排熱が用いられうる。
このため、本発明のハイブリッドシステムは、PEFCのみのシステムを比較して、社会に普及しやすいといえる。熱利用の形態は、特に限定されない。好ましくは、本発明のハイブリッドシステムは、ガスエンジン119の排熱を利用してシャーベットアイスを作製する氷蓄熱システム127を含む。氷蓄熱システムとは、ガスエンジン119の排熱を利用してシャーベットアイスを作製するシステムをいう。また、シャーベットアイスとは、過冷却水が氷と水とに変化する際に生じる、シャーベット状の氷を意味する。
【0055】
ガスエンジンの排熱を利用してシャーベットアイスを作製するには、各種冷凍機を利用することができる。冷凍機の中では、吸収式冷凍機129が好ましい。吸収式冷凍機は、主駆動源として動力を必要とせず、熱を直接利用する熱駆動形の冷凍機であり、電力消費量少ない。吸収式冷凍機は、一重効用、二重効用、複数の温度レベルに対応する一・二重効用など各種吸収式冷凍機が用いられうる。排ガスの温度や冷凍機に所望する能力に応じて、吸収式冷凍機は選択される。また、排熱の形態によっても吸収式冷凍機の再生器の構造が異なる。ガスエンジンの排ガスの熱を回収した温水を熱源として用いる場合には、温水吸収式冷凍機が用いられる。蒸気を熱源として用いる場合には、蒸気吸収式冷凍機が用いられる。
蒸気吸収式冷凍機には、0.1〜0.2MPa程度の蒸気を熱源とする一重効用吸収式冷凍機、0.4〜1.0MPa程度の蒸気を熱源とする二重効用吸収式冷凍機などがある。ガスエンジンのジャケット温水も、併せて熱源として利用してもよい。
【0056】
氷蓄熱システム127においては、冷凍機を用いて冷媒をまず−8〜―2℃程度の低温に冷却する。この冷媒を用いて、氷蓄熱層133の水を、製氷熱交換器131において熱交換し、水を−2℃程度にまで過冷却する。過冷却された水は、氷蓄熱層133に放出され、放出時の衝撃によってシャーベット状の氷となり、最終的には氷蓄熱層133の水のうち、40〜60%がシャーベットアイスとして貯蔵される。ガスエンジン119の排ガスの有するエネルギーをシャーベットアイスとして取り出すことによって、エネルギーの使用用途が拡大する。排ガス量はガスエンジンの稼動状態によって変化し、また、排熱量も一定とは限らない。シャーベットアイスとして貯蔵することによって、所望するときに、所望量の冷熱を利用することが可能になる。
【0057】
例えば、シャーベットアイスは、夏季日中に室内温度を低下させるために用いることができる。これにより、日中の電力消費量を低減させうる。
【0058】
また、タービンの圧縮機の圧縮効率を高めるために、シャーベットアイスの有する冷熱を利用してもよい。圧縮機の圧縮効率は、圧縮される気体の温度が高いと、圧縮効率が低下し、発電効率が低下する。この問題を解決するために、シャーベットアイスを用いてもよい。シャーベットアイスが利用される圧縮機は、他のシステムに属する圧縮器であってもよいし、本発明のハイブリッドシステムに属する圧縮機であってもよい。本発明のハイブリッドシステムに属する圧縮機、例えば、ガスエンジンの燃料および/または空気の圧縮機に用いられると、ハイブリッドシステムの総合エネルギー効率をより向上させうる。
【0059】
本発明の第二は、燃料ガスを水素リッチガスに改質する工程(1)と、前記水素リッチガスを高純度の水素ガスおよびオフガスに分離する工程(2)と、前記高純度の水素ガスを燃料として、固体高分子型燃料電池を用いて発電する工程(3)と、前記オフガスを、ガスエンジンで燃焼させる工程(4)とを含む、燃料ガスの処理方法である。本発明の第二は、本発明の第一で説明した形式で、燃料ガスを処理する方法である。したがって、方法の実施にあたり、用いられる装置や条件などは、本発明の第一の説明において説明した通りであり、以下の説明においては、主な工程についてのみ簡単に説明する。
【0060】
ガスエンジンに供給されるオフガスは、水素ガスを好ましくは0.5〜60体積%、より好ましくは10〜20体積%含むことが好ましい。かような範囲の水素ガスを含むオフガス含む燃料によって、効率的な燃焼反応がガスエンジンで進行し、ガスエンジンの発電効率が向上する。
【0061】
本発明の燃料ガスの処理方法は、ガスエンジンを用いて発電する工程(5)をさらに含むことが好ましい。具体的には、ガスエンジンのシリンダーの運動を、電力に変換する発電機が含まれる。発電機についての説明は、本発明の第一において説明した通りである。
【0062】
本発明の燃料ガスの処理方法は、ガスエンジンの排熱を利用してシャーベットアイスを作製する工程(6)をさらに含むことが好ましい。好ましくは、シャーベットアイスは、吸収式冷凍機を利用して作製される。シャーベットアイスを作製する方法、冷凍機等については、本発明の第一において説明した通りである。
【0063】
【発明の効果】
本発明のハイブリッドシステムは、不純物を含むガスを燃料として利用するガスエンジンを含む。ガスエンジンは高温のガスを排出するため、この高温のガスを用いて幅広い用途に熱量を有効利用できる。また、本発明のハイブリッドシステムは、即時に運転可能なガスエンジンを有しているため、起動時における対応力が高い。さらに、水素ガスを利用するガスエンジンは、発電効率が40%前後と非常に高く、NOx排出量やSOx排出量も極めて少ない。このため、本発明のハイブリッドシステムは、自然環境への負荷の少ないシステムである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態の概略図である。
【図2】ガスエンジンの一実施形態の断面模式図である。
【符号の説明】
101…ガスタンク、103…脱硫器、105…改質装置、107…水素分離装置、109…水素ガス搬送ライン、111…高分子固体型燃料電池(PEFC)、113…酸化剤搬送ライン、115…排出ライン、117…オフガス搬送ライン、119…ガスエンジン、121…給気ライン、123…自然エネルギーを利用する発電機、125…排ガス搬送ライン、127…氷蓄熱システム、129…吸収式冷凍機、131…製氷熱交換器、133…氷蓄熱層、201…オフガス噴射装置、203…燃焼室、205…シリンダー、206…点火プラグ。
Claims (16)
- 燃料ガスを水素リッチガスに改質する改質装置と、
前記改質装置から排出された水素リッチガスを、高純度の水素ガスおよびオフガスに分離する、水素分離装置と、
前記水素分離装置から排出された高純度の水素ガスを燃料として用いる固体高分子型燃料電池と、
前記水素分離装置から排出されたオフガスを燃料として用いるガスエンジンと、
を含む、燃料電池とガスエンジンとのハイブリッドシステム。 - 前記燃料ガスは、メタンを含有するガスであることを特徴とする請求項1に記載のハイブリッドシステム。
- 前記燃料ガスは、天然ガス、都市ガス、コークス炉ガスまたは精油所ガスであることを特徴とする請求項2に記載のハイブリッドシステム。
- 前記ガスエンジンは、ガスディーゼルエンジンであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のハイブリッドシステム。
- 前記ガスエンジンによって発電する発電機をさらに含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のハイブリッドシステム。
- 自然エネルギーを利用する発電機をさらに含むことを特徴とする請求項5に記載のハイブリッドシステム。
- 前記ガスエンジンの排熱を利用してシャーベットアイスを作製する氷蓄熱システムをさらに含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のハイブリッドシステム。
- 前記氷蓄熱システムは、吸収式冷凍機を有することを特徴とする請求項7に記載のハイブリッドシステム。
- 燃料ガスを水素リッチガスに改質する工程(1)と、
前記水素リッチガスを高純度の水素ガスおよびオフガスに分離する工程(2)と、
前記高純度の水素ガスを燃料として、固体高分子型燃料電池を用いて発電する工程(3)と、
前記オフガスを、ガスエンジンで燃焼させる工程(4)と、
を含む、燃料ガスの処理方法。 - 前記燃料ガスは、メタンを含有するガスであることを特徴とする請求項9に記載の燃料ガスの処理方法。
- 前記燃料ガスは、天然ガス、都市ガス、コークス炉ガスまたは精油所ガスであることを特徴とする請求項10に記載の燃料ガスの処理方法。
- 前記ガスエンジンは、ガスディーゼルエンジンであることを特徴とする請求項9〜11のいずれか1項に記載の燃料ガスの処理方法。
- 前記ガスエンジンに供給されるオフガスは、水素ガスを0.5〜60体積%含むことを特徴とする請求項9〜12のいずれか1項に記載の燃料ガスの処理方法。
- 前記ガスエンジンを用いて発電する工程(5)をさらに含むことを特徴とする請求項9〜13のいずれか1項に記載の燃料ガスの処理方法。
- 前記ガスエンジンの排熱を利用してシャーベットアイスを作製する工程(6)をさらに含むことを特徴とする請求項9〜14のいずれか1項に記載の燃料ガスの処理方法。
- 前記シャーベットアイスは、吸収式冷凍機を利用して作製されることを特徴とする請求項15に記載のコークス炉ガスの処理方法。
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