JP2004127560A - 有機el表示装置 - Google Patents

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内山 則和
Shoko Nishizawa
西澤 昌紘
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谷口 真紀
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Abstract

【課題】発光部からの光を、光散乱なく、しかも簡単な構成で、効率よく外部に取り出す。
【解決手段】透明基板の一方の面の各画素領域に、少なくとも透明電極、有機EL層、前記透明電極とは異なる他の電極が順次積層されて形成され、前記透明基板の他方の面の前記各画素領域に相当する領域に、複数の微小マイクロレンズの集合からなる全反射回避層が形成されている。
【選択図】  図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、有機EL(Electro Luminescence)表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
たとえばアクティブ・マトリクス型の有機EL表示装置は、透明基板の一方の側の面のマトリクス状に配置される各画素領域のうち、一方向に配列される一の画素群を選択すると同時に、選択された該画素群の各画素の画素電極に映像信号に対応した電圧を印加するようにしている。
前記画素電極は対向電極とともに有機EL層を介在させて形成され、該有機EL層は前記各電極のうち一方の電極から他方の電極へ流れる電流の強弱に応じた発光がなされるようになっている。
そして、該有機EL層からの光は前記透明基板を通して観察者の眼に到るように構成されるのが通常である。
このため、前記画素電極は前記有機EL層からの光を前記透明基板側へ導くためたとえばITO(Indium Tin Oxide)等の透光性の材料で形成されるとともに、前記対向電極は金属等の非透光性の材料で形成されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、このような構成からなる有機EL表示装置において、その有機EL層(発光部)からの光は、画素電極、透明基板等の互いに光屈折率の異なる複数の材料を通して観察者の眼に届く経路を経ることから、該光の全てが観察者の眼に届くことなく、一部有機EL層側へ反射されてしまうという不都合が指摘されていた。
すなわち、発光部からの光のうち、各材料層の界面で屈折率の差による影響によって臨界角以上の光が、内部に閉じ込められて観察者側に出射されないという現象が発生する。
このような現象を回避させるため、透明基板の観察側の面に光散乱手段あるいは各画素領域毎にマイクロレンズを設けたりしたものが知られている。
【0004】
しかし、前者の場合、外部からの照射光も同時に散乱させてしまい結果的にコントラストが低下してしまう不都合が生じ、後者の場合、各画素領域にマイクロレンズの形成において困難さがともなうという不都合が生じていた。そして、複数画素領域毎に該マイクロレンズを形成する方法も考えられるが、その大きさは数μmオーダとなってしまい、前記光散乱手段と同様に、外部からの照射光を散乱させてしまうことになる。
このため、発光部からの光のうち、各材料層の界面での屈折率差によって内部に閉じ込められる光を、光散乱なく、しかも簡単な構成で、効率よく外部に取り出す方法の有無が検討された。
本発明は、このような事情に基づいてなされたもので、その目的は、発光部からの光を、光散乱なく、しかも簡単な構成で、効率よく外部に取り出すことのできる有機EL表示装置を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、以下のとおりである。
手段1.
本発明による有機EL表示装置は、たとえば、透明基板の一方の面の各画素領域に、少なくとも透明電極、有機EL層、前記透明電極とは異なる他の電極が順次積層されて形成され、前記透明基板の他方の面の前記各画素領域に相当する領域に、複数の微小マイクロレンズの集合からなる全反射回避層が形成されていることを特徴とするものである。
【0006】
手段2.
本発明による有機EL表示装置は、たとえば、手段1の構成を前提とし、前記全反射回避層は、半球状の微小マイクロレンズの集合から構成されていることを特徴とするものである。
【0007】
手段3.
本発明による有機EL表示装置は、たとえば、手段1の構成を前提とし、前記全反射回避層は、表面に複数の微小凹部の集合が形成された第1の層と、該微小凹部内に載置される球状材料の集合からなる第2の層から構成されていることを特徴とするものである。
【0008】
手段4.
本発明による有機EL表示装置は、たとえば、手段1の構成を前提とし、前記全反射回避層の屈折率は該全反射回避層と接する層の屈折率以上であることを特徴とするものである。
【0009】
手段5.
本発明による有機EL表示装置は、たとえば、透明基板の一方の面の各画素領域に、少なくとも全反射回避層、透明電極、有機EL層、前記透明電極とは異なる他の電極が順次積層されて形成され、前記全反射回避層はその透明電極側の面にて、該透明電極が複数の微小マイクロレンズの集合体を構成する複数の微小凹部が形成されていることを特徴とするものである。
【0010】
手段6.
本発明による有機EL表示装置は、たとえば、手段5の構成を前提とし、前記全反射回避層の屈折率は透明電極の屈折率よりも小さいことを特徴とするものである。
【0011】
手段7.
本発明による有機EL表示装置は、たとえば、透明基板の一方の面の各画素領域に、少なくとも全反射回避層、透明電極、有機EL層、前記透明電極とは異なる他の電極が順次積層されて形成され、前記全反射回避層は、表面に複数の微小凹部の集合が形成された第1の層と、該微小凹部内に載置される半球状材料の集合からなる第2の層から構成されていることを特徴とするものである。
【0012】
手段8.
本発明による有機EL表示装置は、たとえば、手段7の構成を前提とし、第1の層の屈折率は第2の層の屈折率よりも小さいことを特徴とするものである。
【0013】
手段9.
本発明による有機EL表示装置は、たとえば、透明基板の一方の面の各画素領域に、少なくとも第1の全反射回避層、透明電極、有機EL層、前記透明電極とは異なる他の電極が順次積層されて形成され、前記第1の全反射回避層はその透明電極側の面にて、該透明電極が複数の微小マイクロレンズの集合体を構成する複数の微小凹部が形成され、かつ、前記透明基板の他方の面の前記各画素領域に相当する領域に、複数の微小マイクロレンズの集合からなる第2の全反射回避層が形成されていることを特徴とするものである。
【0014】
手段10.
本発明による有機EL表示装置は、たとえば、手段1ないし9のうちいずれかの構成を前提とし、前記微小マイクロレンズは、表面が球面、三角錐、四角錐、多角錐の形状のうちいずれかをなすことを特徴とするものである。
なお、本発明は以上の構成に限定されず、本発明の技術思想を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明による有機EL表示装置の実施例を図面を用いて説明をする。
《全体の構成》
図2は、本発明による有機EL表示装置の全体の一実施例を示す平面図である。
まず、僅かなギャップを保って互いに対向配置される一対の基板SUB1、SUB2があり、一方の基板SUB1に対する他方の基板SUB2の固着はたとえば該基板SUB2の周辺に形成されたシール材SLによってなされている。
ここで、基板SUB1はたとえばガラス等のような透光性のそれからなり、基板SUB2はたとえば金属等のような非透光性のそれからなっている。
【0016】
シール材SLによって囲まれた前記一方の基板SUB1の基板SUB2側の面には、そのx方向に延在しy方向に並設されたゲート信号線GLとy方向に延在しx方向に並設されたドレイン信号線DLとが形成されている。
各ゲート信号線GLと各ドレイン信号線DLとで囲まれた領域は画素領域を構成するとともに、これら各画素領域のマトリクス状の集合体は画像表示部ARを構成するようになっている。このため、前記シール材SLは該画像表示部ARを囲むようにして形成されている。
【0017】
また、x方向に並設される各画素領域のそれぞれにはそれら各画素領域内に走行された共通の対向電圧信号線CLが形成されている。この対向電圧信号線CLは各画素領域の後述する対向電極CTに映像信号に対して基準となる電圧を供給するための信号線となるものである。なお、この対向電圧信号線CLおよび対向電極CTは、後述の《画素の構成》の説明から明らかとなるように、画像表示部ARの全域に、換言すれば各画素領域に共通に形成した対向電極CTを形成することによって構成され、前記対向電圧信号線CLとの境界は明確に区別できないものとなっている。
【0018】
各画素領域には、その片側のゲート信号線GLからの走査信号によって作動される薄膜トランジスタTFTと、この薄膜トランジスタTFTを介して片側のドレイン信号線DLからの映像信号が供給される画素電極PXが形成されている。この画素電極PXは、前記対向電極CTとともに発光材料層(有機EL層)FLRを挟持して形成され、該発光材料層FLRに流れる電流の強弱に応じて該発光材料層FLRを発光させるようになっている。
【0019】
前記ゲート信号線GLのそれぞれの一端は前記シール材SLを超えて延在され、その延在端は走査信号駆動回路Vの出力端子が接続される端子を構成するようになっている。また、前記走査信号駆動回路Vの入力端子は液晶表示パネルの外部に配置されたプリント基板(図示せず)からの信号が入力されるようになっている。
走査信号駆動回路Vは複数個の半導体装置からなり、互いに隣接する複数のゲート信号線GLどおしがグループ化され、これら各グループ毎に一個の半導体装置があてがわれるようになっている。この半導体層は、たとえば、透明基板SUB1と前記プリント基板との間を跨って接続されるいわゆるテープキャリア方式の半導体装置から構成されている。
【0020】
同様に、前記ドレイン信号線DLのそれぞれの一端は前記シール材SLを超えて延在され、その延在端は映像信号駆動回路Heの出力端子が接続される端子を構成するようになっている。また、前記映像信号駆動回路Heの入力端子は液晶表示パネルの外部に配置されたプリント基板(図示せず)からの信号が入力されるようになっている。
この映像信号駆動回路Heも複数個の半導体装置からなり、互いに隣接する複数のドレイン信号線DLどおしがグループ化され、これら各グループ毎に一個の半導体装置があてがわれるようになっている。この半導体層は、たとえば、透明基板SUB1と前記プリント基板との間を跨って接続されるいわゆるテープキャリア方式の半導体装置から構成されている。
【0021】
前記各ゲート信号線GLは、走査信号駆動回路Vからの走査信号によって、その一つが順次選択されるようになっている。
また、前記各ドレイン信号線DLのそれぞれには、映像信号駆動回路Heによって、前記ゲート信号線GLの選択のタイミングに合わせて映像信号が供給されるようになっている。
【0022】
なお、走査信号駆動回路Vおよび映像信号駆動回路Heを構成する前記半導体装置として、透明基板SUB1とプリント基板(図示せず)との間を跨って接続されるいわゆるテープキャリア方式の半導体装置を示したものであるが、たとえば、透明基板SUB1に搭載された半導体装置、さらに、前記薄膜トランジスタTFTの半導体層が多結晶シリコン(p−Si)から構成される場合、透明基板SUB1面に前記多結晶シリコンからなる半導体素子を配線層とともに形成されたものであってもよい。
【0023】
《画素の構成》
図3は、本発明による有機EL表示装置においてマトリクス状に配置された各画素のうち一つの画素の構成を示した平面図である。したがって、該画素に隣接する上下、左右の各画素も同様な構成となっている。また、図1は図3のI−I線における断面図を示している。
【0024】
まず、透明基板SUB1の主表面にはたとえばSiOあるいはSiN等からなる下地層GWが形成されている(図1参照)。この下地層GWは透明基板SUB1に含まれるイオン性不純物が後述の薄膜トランジスタTFTに影響を及ぼすのを回避するために形成されている。
そして、この下地層GWの表面の画素領域のたとえば左下の個所にx方向に延在するたとえばポリシリコン層からなる半導体層PSが形成されている。この半導体層PSは薄膜トランジスタTFTの半導体層となるものである。
【0025】
さらに、この半導体層PSをも被って該基板SUB1の表面には絶縁膜GIが形成されている。この絶縁膜GIは薄膜トランジスタTFTの形成領域においてゲート絶縁膜として機能するものである。
この絶縁膜GIの表面にはそのx方向に延在しy方向に並設されるゲート信号線GLが形成されている。このゲート信号線GLは後述のドレイン信号線DLとで前記画素領域を画するようにして形成される。
【0026】
また、このゲート信号線GLは、その一部において前記半導体層PSのほぼ中央部を横切るようにして延在される延在部が形成され、この延在部は薄膜トランジスタTFTのゲート電極GTとして機能するようになっている。
なお、このゲート電極GTの形成後にはそれをマスクとして不純物イオンが打ち込まれ、該ゲート電極GTの直下を除く他の領域の前記半導体層PSの部分は低抵抗化されるようになっている。
【0027】
ゲート信号線GL(ゲート電極GT)をも被って前記透明基板SUBの表面には絶縁膜INが形成されている。この絶縁膜INは後述のドレイン信号線DLの形成領域においてゲート信号線GLに対する層間絶縁膜としての機能を有する。そして、絶縁膜INの表面にはそのy方向に延在されx方向に並設されるドレイン信号線DLが形成されている。このドレイン信号線DLの一部はそれに近接される前記半導体層PSの一端部にまで延在され、絶縁膜INおよび絶縁膜GIを貫通して予め形成されたスルーホールTH1を通して該半導体層PSと接続されている。すなわち、ドレイン信号線DLの前記延在部は薄膜トランジスタTFTのドレイン電極SD1として機能する。
また、前記半導体層PSの他端部には絶縁膜INおよび絶縁膜GIを貫通して予め形成されたスルーホールTH2を通して接続されたソース電極SD2が形成され、このソース電極SD2は後述の画素電極PXと接続させるため比較的面積の大きな延在部を有している。
【0028】
そして、このようにドレイン信号線DL(ドレイン電極SD1)、ソース電極SD2が形成された基板SUBの表面には絶縁膜ILが形成されている。
この絶縁膜ILの上面には、各画素領域の僅かな周辺を除く中央に画素電極PXが形成され、この画素電極PXは該絶縁膜ILに形成したスルーホールTH3を通して前記薄膜トランジスタTFTのソース電極SD2と接続されている。
【0029】
なお、この画素電極PXは後述する発光材料層FLRからの光を透明基板SUB1側に導くため、たとえば、ITO(Indium Tin Oxide)、ITZO(IndiumTin Zinc Oxide)、IZO(Indium Zinc Oxide)、SnO(酸化スズ)、In(酸化インジウム)等からなる透光性の導電層で構成されている。
【0030】
そして、この画素電極PXの前記絶縁膜IL側の面には、該絶縁膜IL側に多数の凸部を有し、これにより微小マイクロレンズML1の機能を併せもっている。この画素電極PXにおいて絶縁膜IL側に凸部を有するのは、後に詳述するように、予め前記絶縁膜ILの表面に多数の凹部を有する材料層OBが形成されているためである。
さらに、この画素電極PXは、その製造に起因して該絶縁膜ILと反対側の面には前記凸部に対応する箇所に凹部が形成された形状をなしている。
【0031】
また、このように画素電極PXが形成された透明基板SUB1の表面には、該画素電極PXの周辺部を若干被い、その中央部を露出させるバンク膜BNKが形成されている。このバンク膜BNKはたとえば有機材料層から構成され、隣接する他の画素領域のバンク膜BNKと一体に形成されている。
さらに、前記バンク膜BNKおよびこのバンク膜BNKから露出されている画素電極PXの表面には発光材料層FLRが形成されている。
【0032】
この場合、該発光材料層FLRは少なくも前記画素電極PXの上層に形成されることから、該画素電極PXの表面の凹部内にも形成され、その画素電極PXと接触する面には多数の凸部が形成されるようにして積層されることになる。
この発光材料層FLRは、図中に示される画素領域においては、赤、青、緑のうちいずれかの色を発光させる材料からなり、該画素領域を含んで図中y方向に並設される他の各画素領域に共通に形成されている。
なお、図中の画素領域に対して両脇に位置づけられる他の画素領域には、それぞれ前記赤、青、緑のうち残りの光を発光させる発光材料層FLRが形成され、やはり、図中y方向に並設される他の各画素領域に共通に形成されている。
【0033】
なお、前記発光材料層FLRは、少なくとも前記画素電極PXとの間に、たとえばホール注入層と称される層を介在させて形成されていてもよいことはもちろんである。発光の効率を良好にできるからである。
そして、これら発光材料層FLRの上面には各画素領域に共通な対向電極CTが形成されている。この対向電極CTはたとえば金属材料で構成され、前記画素電極PXに供給される映像信号線に対して基準となる電圧が印加されるようになっている。
【0034】
画素電極PXに供給される映像信号によって、対向電極CTの間に介在された発光材料層FLRに電流が流れ、該発光材料層FLRが該電流値に応じて発光するようになる。この光は画素電極PX、絶縁膜IL、絶縁膜IN、絶縁膜GI、および透明基板SUB1を介して観察者側へ照射されるようになる。
ここで、このように構成された透明基板SUB1の上述した加工面とは反対側の面、すなわち、観察側の面の少なくとも画像表示部ARに相当する領域において、微小マイクロレンズML2が形成されている。この微小マイクロレンズML2の詳細については次に説明する。
【0035】
《微小マイクロレンズ》
(1)透明基板SUB1の観察側の面に形成される微小マイクロレンズML2
図1の丸枠B内に示す微小マイクロレンズML2は、光の集光を目的とするものではなく、屈折率の異なる層の積層によって、光の入射側の層と光の出射側の層(空気も含む)との界面で生じる全反射(光のロス分となる)を極力低減させるため、光の入射側の層においてその表面に凹凸を形成したものとなっている。
【0036】
すなわち、図4(a)に示すように、光の入射側の層において屈折率が高く、光の出射側の層において屈折率が低い材料の場合、それらの界面において、光の入射側の層に凸面を有するように形成することによって、光の入射側の層から光の出射側の層へ進行する光は、そのほとんどが前記界面にて全反射することなく光路を形成するようになる。換言すれば、光の入射側の層を透過する光はそのロス分が全くなく光の出射側の層へ導かれることになる。
【0037】
ちなみに、図4(b)に示すように、光の入射側の層と光の出射側の層との界面に凸面を有することなく、平坦に形成されている場合、その平坦面に垂線に対して臨界角以上の方向から入射された光は前記界面で全反射され、この全反射された光がロス分となってしまうことになる。
【0038】
このことから、光の屈折率の高い層側に設ける凸面は、その面が必ずしも球面である必要はなく、たとえば三角錐、四角錐状等の多角錐状に形成されていてもよく、また、各凸面が画素領域内において一定の形状からなっている必要もない。
【0039】
また、上述した目的から、一つの微小マイクロレンズの大きさはφ10〜200nm、高さが5〜100nm程度で、一画素領域内に多数並設された構成としている。一方の層から他方の層への光の入射においてそれらの界面に生じる全反射を画素領域の全域に亘って低減させるに最適となるからである。
【0040】
すなわち、たとえば、一画素領域の大きさ、あるいはそれ以上の大きさに対応させた一つのマイクロレンズを形成した場合、その製造過程において中央部に平坦な部分が形成されることが多く、この部分にて全反射を防止することが困難であるという現象が生じる。また、前述した大きさ、高さよりも小さなマイクロレンズを形成した場合、光の散乱が多くなり、画面全体に白みがかかってコントラストが低下してしまうことになることが判明する。
なお、微小マイクロレンズML2の材料としては、たとえばシリコン酸化膜(たとえばSiO)、あるいは樹脂が適当である。しかし、これらの材料に限定されることはない。
【0041】
(2)透明基板SUB1の画素形成面側に形成される微小マイクロレンズML1
図1の丸枠A内に示す微小マイクロレンズML1も、光の集光を目的とするものではなく、屈折率の異なる層の積層によって、光の入射側の層と光の出射側の層との界面で生じる全反射を極力低減させるため、光の出射側の層においてその表面に凸面を形成したものとなっている。
【0042】
すなわち、図1の丸枠A内に示すように、透明基板SUB1の表面側に画素電極PXからなる微小マイクロレンズML1の凸部に対応するようにして凹部を有する材料層OBを形成し、この材料層OBの上面に画素電極PXを構成する透明材料層を形成している。この場合の該透明材料層の形成はたとえばスパッタリング法で行なっている。
【0043】
この場合、発光材料層FLR(発光部)からの光は該透明材料層(画素電極PXに相当する)、凹部を有する材料層OB、および透明基板SUB1を経て出射されるようになっている。また、凹部を有する材料層OBの材料は、その屈折率が前記透明材料層の屈折率よりも小さなものが選定されている。
【0044】
このようにした場合でも、透明材料層(画素電極PXに相当する)と凹部を有する材料層OBの界面において、該透明材料層に凸面を有するように形成されることになり、図4で説明したと同様に、該透明材料層から凹部を有する材料層OBへ進行する光は、そのほとんどが前記界面にて全反射することなく光路を形成するようになる。換言すれば、結果的に前記透明材料層の表面に微小マイクロレンズが形成されたことになる。
このため、該凹部は必ずしもその表面が球面である必要はなく、三角錐、四角錐状等の多角錐状に形成されていてもよく、また、各凹部が画素領域内において一定の形状からなっている必要もない。
【0045】
また、上述した目的から、一つの微小マイクロレンズML1の大きさはφ10〜200nm、高さが5〜100nm程度で、一画素領域内に多数並設された構成としている。一方の層から他方の層への光の入射においてそれらの界面に生じる全反射を画素領域の全域に亘って低減させるに最適となるからである。
凹部を有する材料層の材料としては、たとえばシリコン酸化膜(たとえばSiO)が適当である。しかし、これらの材料に限定されることはない。
【0046】
なお、前記の構成において、凹部を有する材料層OBと透明材料層(画素電極PXに相当する)との間に他の介在層を設けても同様の効果を奏するようにすることができる。
この場合の介在層としては、その屈折率が前記透明材料層と同じかそれよりも大きい値のものを選定すればよい。
このような材料として、たとえば酸化錫、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化インジウム、酸化タンタル、酸化ニオブ、酸化チタン、窒化アルミニウムがあり、少なくともこれらのうち一種を用いて介在層を形成することができる。
【0047】
《拡散反射率との関係》
図5(a)は、上述した微小マイクロレンズML1、ML2の径(nm)と拡散反射率(%)との関係を示したグラフである。
同図において微小マイクロレンズの径が大きくなるにつれ拡散反射率が大きくなる傾向にある。しかし、ある値以下の場合には該拡散反射率は急激に上昇することはないが、該値以上になって急激に上昇する特性を示している。
また、図5(b)は、図5(a)の一部拡大を示したグラフで、拡散反射率が1%前後の部分を示している。
拡散反射率が1%を越えると、表示画面の暗部が白く浮き上がりコントラストの低下を引き起こすことになり、また、それが目視で認識できることから、該拡散反射率が1%以下に設定することが望ましい。
このことから、微小マイクロレンズの径は200nm以下が好ましく、このため、一画素領域には多数の微小マイクロレンズの集合体として形成されることになる。
【0048】
実施例2.
図6は、本発明による有機EL表示装置の他の実施例を示す構成図で、図1の丸枠A内の部分に対応している。
図1の丸枠A内の部分と比較して異なる構成は、画素電極PXの絶縁膜ILと反対側の面が平坦化されていることにある。
これは、多数の凹部が形成された材料層OBの面に、たとえばスパッタリング方法により画素電極PXを形成する際に、該画素電極PXの厚さを比較的大きくすることによって、その表面に前記材料層の凹部を顕在化させることなく形成することができる。
この場合にあっても、画素電極PXにおいて、その透明基板SUB1側の面に微小マイクロレンズML1を形成できることから、このように構成してもよいことはもちろんである。
【0049】
実施例3.
図7は、本発明による有機EL表示装置の他の実施例を示す構成図で、図1の丸枠B内の部分に対応している。
図1の丸枠B内の部分と比較して異なる構成は、透明基板SUB1の表面に形成されたたとえば樹脂層からなる材料層OCをまず形成し、この材料層OCの表面に微粒子からなる多数の球体CMがその約半分程度に埋め込まれて配置されるように構成されている。これによって、図1の丸枠B内に示した微小マイクロレンズML2と同様の機能を有する微小マイクロレンズを形成することができる。
なお、上述した各有機EL表示装置は、いずれも透明基板SUB1の表裏面のそれぞれに微小マイクロレンズを形成したものであるが、その一方だけであってもよいことはいうまでもない。
なお、前記材料層OCとその表面に形成される多数の球体CMは、それ自体として独立に形成され、すなわちフィルム状の部材として形成され、それが透明基板SUB1の観察側の面に貼付されて形成されたものであってもよいことはいうまでもない。
【0050】
実施例4.
この実施例では、上記有機EL表示装置の製造方法を示し、このうち透明基板SUB1の観察側の面に形成される微小マイクロレンズML2、および透明基板SUB1の画素形成面側に形成される微小マイクロレンズML1の形成方法の一実施例を示す。
ここで、透明基板SUB1として、少なくとも画素電極PXを形成する手前の段階のものを用意する。
そして、粒径約100nmの酸化シリコン(SiO)粒子1%、エトキシシラン加水分解物0.5%、エタノール40%、エチレングリコール1%、水残部で構成する溶液をたとえば引き上げ法あるいはスピン塗布法により前記透明基板SUB1の観察側の面に塗布し、160℃で30分遠赤外線過熱炉で焼成し微小マイクロレンズML2を形成する。
また、粒径約50nmのポリスチレン樹脂粒子0.6%、エトキシシラン加水分解物0.5%、エタノール80%、水残部で構成する溶液を、透明基板SUB1の画素形成面側にたとえば引き上げ法あるいはスピン塗布法により塗布し、その塗布膜の表面を遠赤外線過熱炉で400℃で30分焼成することによりポリスチレン樹脂を加熱分解し凹部を形成する。
その後、たとえばスパッタ法あるいはスピン塗布法によりたとえばITO等からなる透明電極PXを形成する。該画素電極PXは前記凹部内に凸部が形成される微小マイクロレンズML1としての機能を有することになる。
このように各微小マイクロレンズML1、ML2を形成することにより、光の取り出し効率は対策を施さないものに比べ4倍となることが確認される。
【0051】
実施例5.
この実施例も、透明基板SUB1の観察側の面に形成される微小マイクロレンズML2、および透明基板SUB1の画素形成面側に形成される微小マイクロレンズML1の形成方法を示すものである。
まず、透明基板SUB1として、少なくとも画素電極PXを形成する手前の段階のものを用意する。
そして、該透明基板SUB1の観察側の面に、粒径70〜100nmの酸化シリコン(SiO)粒子1%、エタノール10%、エチレングリコール1%、水残部で構成する溶液をたとえばスピン塗布法により塗布した後、エトキシシラン加水分解物0.5%、エタノール85%、エトキシエタノール10%、水残部で構成する溶液をたとえばスピン塗布法により塗布し、160℃で30分遠赤外線過熱炉で焼成し微小マイクロレンズML2を形成する。
次に、粒径約50nmのアクリル樹脂粒子0.6%、エトキシシラン加水分解物0.5%、エタノール80%、水残部で構成する溶液を、透明基板SUB1の画素領域を形成する面にたとえば引き上げ法により塗布し、この塗布膜を遠赤外線過熱炉で400℃で30分焼成することによりポリスチレン樹脂を加熱分解し凹部を形成する。
さらに、スパッタ法によりたとえばITO膜からなる画素電極PXを形成する。該画素電極PXは前記凹部内に凸部が形成される微小マイクロレンズML1としての機能を有することになる。
このように各微小マイクロレンズML1、ML2を形成することにより、光の取り出し効率は対策を施さないものに比べ3倍となった。
【0052】
実施例6.
この実施例も、透明基板SUB1の観察側の面に形成される微小マイクロレンズML2、および透明基板SUB1の画素形成面側に形成される微小マイクロレンズML1の形成方法を示すものである。
透明基板SUB1の観察側の面に熱硬化樹脂を塗布し、その上にφ100nmの酸化シリコン(SiO)粒子を散乱配置した後、160℃で30分加熱硬化させ透明基板上に微小マイクロレンズML2を形成する。
粒径約50nmのアクリル樹脂粒子0.6%、エトキシシラン加水分解物0.5%、エタノール80%、水残部で構成する溶液を、透明基板SUB1の画素を形成する面に、たとえば引き上げ法により塗布し、この塗布膜を遠赤外線過熱炉で400℃で30分焼成することによりポリスチレン樹脂を加熱分解し凹部を形成する。
さらに、たとえはスパッタ法によりITO膜からなる画素電極PXを形成する。該画素電極PXは前記凹部内に凸部が形成される微小マイクロレンズML1としての機能を有することになる。
このように各微小マイクロレンズML1、ML2を形成することにより、光の取り出し効率は対策を施さないものに比べ3倍となった。
【0053】
実施例7.
この実施例も、透明基板SUB1の観察側の面に形成される微小マイクロレンズML2、および透明基板SUB1の画素形成面側に形成される微小マイクロレンズML1の形成方法を示すものである。
ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルム(PETフィルム)上に光硬化樹脂を塗布し、その上にφ100nmの酸化シリコン(SiO)粒子を散乱配置した後光硬化させる。これにより、表面に微小マイクロレンズML2が形成されたフィルムを得る。
透明基板SUB1の観察側の面に、前記フィルムをそのマイクロレンズが外面となるようにアクリル系接着剤で貼り合わせる。
次に、粒径約50nmのアクリル樹脂粒子0.6%、エトキシシラン加水分解物0.5%、エタノール80%、水残部で構成する溶液を、透明基板SUB1の画素形成領域側の面にたとえば引き上げ法により塗布し、この塗布膜を遠赤外線過熱炉で400℃で30分焼成することによりポリスチレン樹脂を加熱分解し凹部を形成する。
さらに、たとえばスパッタ法によりITO膜等からなる画素電極PXを形成する。該画素電極PXは前記凹部内に凸部が形成される微小マイクロレンズML1としての機能を有することになる。
このように各微小マイクロレンズML1、ML2を形成することにより、光の取り出し効率は対策を施さないものに比べ3倍となった。
なお、前記フィルムは偏光層や位相差層が形成されたものであってもよく、前記フィルムの貼りあわせは透明基板SUB1に画素の形成を完了させた後であってもよい。
【0054】
実施例8.
この実施例も、透明基板SUB1の観察側の面に形成される微小マイクロレンズ、および透明基板SUB1の画素形成面側に形成される微小マイクロレンズの形成方法を示すものである。
まず、透明基板SUB1の観察側の面には、実施例4に示したと同様に微小マイクロレンズML2を形成する。
次に、粒径約50nmのアクリル樹脂粒子0.6%、エトキシシラン加水分解物0.5%、エタノール80%、水残部で構成する溶液を、透明基板の画素形成側の面にたとえば引き上げ法により塗布し、この塗布膜を遠赤外線過熱炉で400℃で30分焼成することによりポリスチレン樹脂を加熱分解し凹部を形成する。
この凹部の上にたとえば酸化スズをたとえばCVD法により形成して画素電極PXを得る。該画素電極PXは前記凹部内に凸部が形成される微小マイクロレンズML1としての機能を有することになる。
このように各微小マイクロレンズML1、ML2を形成することにより、光の取り出し効率は対策を施さないものに比べ4倍となった。
【0055】
なお、上述した各有機EL表示装置の製造方法は、いずれも透明基板SUB1の表裏面のそれぞれに微小マイクロレンズを形成したものであるが、その一方だけであってもよいことはいうまでもない。
【0056】
【発明の効果】
以上説明したことから明らかなように、本発明による有機EL表示装置によれば、その発光部からの光を、光散乱なく、しかも簡単な構成で、効率よく外部に取り出すことができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による有機EL表示装置の画素の一実施例を示す構成図で、図3のI−I線における断面図に相当する。
【図2】本発明による有機EL表示装置の全体構成の一実施例を示す平面図である。
【図3】本発明による有機EL表示装置の画素の一実施例を示す構成図である。
【図4】本発明による有機EL表示装置の効果を示す説明図である。
【図5】本発明による有機EL表示装置の効果を示すグラフである。
【図6】本発明による有機EL表示装置の画素の他の実施例を示す断面図である。
【図7】本発明による有機EL表示装置の画素の他の実施例を示す断面図である。
【符号の説明】
SUB1…透明基板、GL…ゲート信号線、DL…ドレイン信号線、TFT…薄膜トランジスタ、PX…画素電極、FLR…発光材料層FLR、CT…対向電極、ML1、ML2…微小マイクロレンズ。

Claims (10)

  1. 透明基板の一方の面の各画素領域に、少なくとも透明電極、有機EL層、前記透明電極とは異なる他の電極が順次積層されて形成され、
    前記透明基板の他方の面の前記各画素領域に相当する領域に、複数の微小マイクロレンズの集合からなる全反射回避層が形成されていることを特徴とする有機EL表示装置。
  2. 前記全反射回避層は、半球状の微小マイクロレンズの集合から構成されていることを特徴とする請求項1に記載の有機EL表示装置。
  3. 前記全反射回避層は、表面に複数の微小凹部の集合が形成された第1の層と、該微小凹部内に載置される球状材料の集合からなる第2の層から構成されていることを特徴とする請求項1に記載の有機EL表示装置。
  4. 前記全反射回避層の屈折率は該全反射回避層と接する層の屈折率以上であることを特徴とする請求項1に記載の有機EL表示装置。
  5. 透明基板の一方の面の各画素領域に、少なくとも全反射回避層、透明電極、有機EL層、前記透明電極とは異なる他の電極が順次積層されて形成され、
    前記全反射回避層はその透明電極側の面にて、該透明電極が複数の微小マイクロレンズの集合体を構成する複数の微小凹部が形成されていることを特徴とする有機EL表示装置。
  6. 前記全反射回避層の屈折率は透明電極の屈折率よりも小さいことを特徴とする請求項5に記載の有機EL表示装置。
  7. 透明基板の一方の面の各画素領域に、少なくとも全反射回避層、透明電極、有機EL層、前記透明電極とは異なる他の電極が順次積層されて形成され、
    前記全反射回避層は、表面に複数の微小凹部の集合が形成された第1の層と、該微小凹部内に載置される半球状材料の集合からなる第2の層から構成されていることを特徴とする有機EL表示装置。
  8. 第1の層の屈折率は第2の層の屈折率よりも小さいことを特徴とする請求項7に記載の有機EL表示装置。
  9. 透明基板の一方の面の各画素領域に、少なくとも第1の全反射回避層、透明電極、有機EL層、前記透明電極とは異なる他の電極が順次積層されて形成され、
    前記第1の全反射回避層はその透明電極側の面にて、該透明電極が複数の微小マイクロレンズの集合体を構成する複数の微小凹部が形成され、
    かつ、前記透明基板の他方の面の前記各画素領域に相当する領域に、複数の微小マイクロレンズの集合からなる第2の全反射回避層が形成されていることを特徴とする有機EL表示装置。
  10. 前記微小マイクロレンズは、表面が球面、三角錐、四角錐、多角錐の形状のうちいずれかをなすことを特徴とする請求項1から請求項9のうちいずれかに記載の有機EL表示装置。
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