JP2004126392A - 回折光学素子 - Google Patents
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Abstract
【課題】単色光収差が補正可能で、量産性のある複層型回折光学素子を提供する。
【解決手段】本発明に係る回折光学素子1は、ガラスモールド用のガラスからなるガラスレンズ素子要素10と紫外線硬化樹脂からなる樹脂レンズ要素20と貼り合わせて構成され、このガラスレンズ素子要素10と樹脂レンズ要素20との貼り合わせ面に回折光学面30を形成し、ガラスレンズ素子要素10の外面40又は樹脂レンズ要素20の外面50の少なくともいずれか一方を非球面に形成している。
【選択図】 図1
【解決手段】本発明に係る回折光学素子1は、ガラスモールド用のガラスからなるガラスレンズ素子要素10と紫外線硬化樹脂からなる樹脂レンズ要素20と貼り合わせて構成され、このガラスレンズ素子要素10と樹脂レンズ要素20との貼り合わせ面に回折光学面30を形成し、ガラスレンズ素子要素10の外面40又は樹脂レンズ要素20の外面50の少なくともいずれか一方を非球面に形成している。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、回折光学素子に関し、特に、広波長領域で使用可能な回折光学素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
回折光学素子は、微小間隔(約1mm)当たり数百本程度の細かい等間隔のスリット状もしくは溝状の格子構造を備えて作られた光学素子であり、光が入射されると、スリットや溝のピッチ(間隔)と光の波長とで定まる方向に回折光束を生じさせる性質を有している。このような回折光学素子は種々の光学系に用いられており、例えば、特定次数の回折光を一点に集めてレンズとして使用するものなどが知られている。
【0003】
このような回折光学素子においては、近年、図7(a)および(b)に示される複層型回折光学素子が提案されるようになった。このタイプの回折光学素子は、複数の回折素子要素を積み重ねて同心円状に形成されており、所望の広波長領域(例えば、可視光領域)のほぼ全域で高い回折効率が保たれる、すなわち波長特性が良好であるという特徴を有している。
【0004】
一般に、複層型回折光学素子の構造は、図7(a)および(b)に示すように、互いに異なる第1の回折素子要素110と第2の回折素子要素120とが密着接合されてなり、両回折素子要素110、120の境界には所定形状の回折格子溝130が形成されている。例えば、第1の回折素子要素110はガラスにより構成され、第2の回折素子要素120は樹脂により構成され、同一の回折格子溝130で、これらのガラス110と樹脂120とが貼り合わされた構造をしている。このような構造とすることでガラスや樹脂等からなる通常のレンズとは逆の波長特性、すなわち長波長ほど屈折率が高くなるという性質を利用して、g線(435.8nm)からC線(656.3nm)までの広波長領域で回折効率を90%以上とすることが可能になっている。
【0005】
【特許文献1】
特開平11−287904号公報
【特許文献2】
特開平11−305126号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、図7に示される従来の複層型回折光学素子は、ガラス110の回折格子溝130と反対の面140および樹脂120の回折格子溝130と反対の面である150は、平面又は球面である。このため、光学系中に入れた際、色収差の補正には有効であるが、球面収差や非点収差などの単色光収差の補正にはあまり有効ではない。
【0007】
そして、図7に示される従来の複層型回折光学素子は、通常のガラスおよび熱可塑性樹脂を用いているが、通常のガラスは研削および研磨を行ってその両面を成形しなければならず、生産性があまりよくない。また、熱可塑性樹脂は成型時収縮率が大きいためガラスとの密着性が悪くてなかなか貼り合わせることが難しく、成型装置は大掛かりである。このように通常のガラスおよび熱可塑性樹脂は、量産性に乏しいといった欠点がある。
【0008】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであり、単色光収差が補正可能で、量産性のある複層型回折光学素子を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
このような目的を達成するため、請求項1に記載の回折光学素子は、ガラスモールド用のガラスからなるガラスレンズ素子要素と紫外線硬化樹脂からなる樹脂レンズ要素と貼り合わせて構成される回折光学素子であり、ガラスレンズ素子要素と樹脂レンズ要素との貼り合わせ面に回折光学面を形成し、ガラスレンズ素子要素の外面又は樹脂レンズ要素の外面の少なくともいずれか一方を非球面としたことを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の回折格子は、請求項1に記載の回折光学素子において、回折光学面の回折格子溝の最小ピッチは50μm以上あることを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の回折光学素子は、請求項1又は2に記載の回折光学素子において、回折光学面の回折格子溝の高さをhとしたとき、次式8.0μm≦h≦18.0μmの条件を満足することを特徴とする。
【0012】
請求項4に記載の回折光学素子は、請求項1〜3のいずれかに記載の回折光学素子において、ガラスモールド用のガラスのd線での屈折率をndGとし、アッベ数をνdGとしたとき、次式1.55≦ndG≦1.65および55≦νdG≦65の条件を満足し、かつ、紫外線硬化樹脂のd線での屈折率をndRとし、アッベ数をνdRとしたとき、次式1.50≦ndR≦1.60およびνdR≦45の条件を満足することを特徴とする。
【0013】
請求項5に記載の回折光学素子は、請求項1〜3のいずれかに記載の回折光学素子において、ガラスモールド用のガラスのd線での屈折率をndGとし、アッベ数をνdGとしたとき、次式1.63≦ndG≦1.73および50≦νdG≦60の条件を満足し、かつ、紫外線硬化樹脂のd線での屈折率をndRとし、アッベ数をνdRとしたとき、次式1.58≦ndR≦1.68およびνdR≦35の条件を満足することを特徴とする。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施形態について説明する。図1は、本発明に係る回折光学素子の概念を示すものであり、密着した2層で構成される複層型回折光学素子の模式断面図である。本実施形態における回折光学素子1は、互いに異なる第1の回折素子要素10と第2の回折素子要素20とが密着接合されてなり、両回折素子要素10,20の境界には回折光学面30を構成する所定形状の回折格子溝が形成されている。また、本回折学素子1は光軸方向から見ると円盤状(図1(B)参照)であり、光軸と直交する方向から見ると(すなわち、断面形状)レンズ状(図1(A)参照)に形成されている。
【0015】
本発明の回折光学素子1は、第1および第2の回折素子要素10,20を構成する材質の一方はガラスモールド用のガラスにより構成され、他方は紫外線硬化樹脂により構成される。本実施形態では、第1の回折素子要素10が、ガラスモールド用のガラスにより構成され(以下、ガラスレンズ素子要素10)、第2の回折素子要素20が、紫外線硬化樹脂により構成される(以下、樹脂レンズ要素20)ものとして説明するが、これらは逆であってもよい。このように回折光学素子1において、ガラスモールド用のガラスと紫外線硬化樹脂を使用することで、型押し成型が可能であり、量産性が向上する。
【0016】
また、本発明の回折光学素子1は、ガラスレンズ素子要素10の外面40あるいは樹脂レンズ要素20の外面50の少なくともいずれか一方は、非球面に形成される。本実施例では、図1(A)に示すように、ガラスレンズ素子要素10の外面40および樹脂レンズ要素20の外面50の両面が非球面に形成されている。なお、図1中(A)の点線は、近軸曲率半径を示している。このように形成されるため、回折光学面30により色収差を良好に補正することができるとともに、非球面により基準線収差を良好に補正することが可能になる。
【0017】
なお、このような非球面の形成は、型押し成型により行うため、量産性も非常に良い。従って、上記の回折光学面30で接していないガラスレンズ素子要素10の外面40および樹脂レンズ要素20の外面50の両方を非球面とすれば、量産性において更によい結果を得ることが可能である。
【0018】
本発明の回折光学素子1では、回折光学面30を構成する回折格子溝のピッチ(最小ピッチ)を、50μm以上と大きくすることで、回折格子溝の頂角θを緩やかにすることができる。このように回折格子溝の頂角θを緩やかにしておけば、後述するように、金型(第1の金型60)を用いてガラスレンズ素子要素10を成形するときに、その形状を正確に転写することができるとともに、このように転写成形された回折格子溝上に滴下した紫外線硬化樹脂がガラスレンズ素子要素10上に形成された(転写された)全ての回折格子溝の窪み部分(一例として、図1中aで示す部分)に充分に行き渡るようになるため、入射角に対する回折効率を向上させることが可能になるとともに、所定形状の回折格子溝を容易に製造することが可能となり、ひいては回折光学素子1の生産性を向上させることができるようになる。
【0019】
なお、回折格子溝のピッチ(最小ピッチ)を80μm以上とすれば、回折格子溝の頂角θは更に緩やかになるため、回折光学面30の形成はより一層容易になる。また、ピッチが大きくなれば、角度特性、すなわち入射光線の入射角の変化に対する回折効率の低下の度合いが向上するするため、更によい結果が得ることができるようになる。
【0020】
本発明の回折光学素子は、回折光学面30を構成する回折格子溝の高さをhとしたとき、次式(1)が満足されるように形成される。
【0021】
【数1】
8.0μm≦h≦18.0μm …(1)
【0022】
上記の式(1)は、角度特性に関する条件であり、この条件を満たすようにすることにより、従来の複層型回折光学素子に比して角度特性を向上させることができる。すなわち、回折格子溝の高さhを式(1)の上限値(18.0μm)以下にして回折格子溝の高さを低くすることにより、光透過時の損失を小さくして角度特性を向上させることができる。但し、高さhの値を無制限に小さくすることは厳しい製造精度を満足し得なくなる可能性があるため、式(1)においては高さhに下限値を設けている。ここで、式(1)の下限値を8.5μm、上限を15.0μmとする内の少なくとも1つに限定すると、更によい結果が得られる。
【0023】
また、本発明の回折光学素子1を構成するガラスレンズ素子要素10は、d線での屈折率をndGとし、アッベ数νdGとしたとき、次式(2),(3)を満足するガラスモールド用のガラス材料を用い、かつ、樹脂レンズ要素20は、d線での屈折率をndRとし、アッベ数をνdRとしたとき、次式(4),(5)を満足する紫外線硬化樹脂材料を用いることが好ましい。
【0024】
【数2】
1.55≦ndG≦1.65 …(2)
55≦νdG≦65 …(3)
1.50≦ndR≦1.60 …(4)
νdR≦45 …(5)
【0025】
あるいは、ガラスレンズ素子要素10は次式(6),(7)を満足するガラスモールド用のガラス材料を用い、かつ、樹脂レンズ要素20は次式(8),(9)を満足する紫外線硬化樹脂材料を用いるのもよい。
【0026】
【数3】
1.63≦ndG≦1.73 …(6)
50≦νdG≦60 …(7)
1.58≦ndR≦1.68 …(8)
νdR≦35 …(9)
【0027】
上記の式(2),(3)あるいは式(6),(7)は、多数あるガラスモールド用のガラスの中でも、特に、紫外線硬化樹脂との相性のよい領域を示している。これらの式に指定された領域を外れると、互いに異なる物質(すなわち、ガラスモールド用のガラスと紫外線硬化樹脂)が同一の回折格子溝で接する本発明の複層型回折光学素子1の形状を得ることが難しくなってしまう。ここで、式(2)の下限値を1.57、上限値を1.63、式(3)の下限値を57、上限値を63とする内の少なくとも一つに限定すると、更によい結果が得られる。また同様に、式(6)の下限値を1.65、上限値を1.70、式(7)の下限値を52、上限値を58とする内の少なくとも一つに限定すると、更によい結果が得られる。
【0028】
また、上記の式(4),(5)あるいは式(8),(9)は、得られる回折光学素子1の諸性能を良好に保つための条件である。これらの条件を外れると、ガラスモールド用のガラスと紫外線硬化樹脂とが共通の回折格子溝において接する形状となっていても、回折格子溝の高さhが高くなってしまって角度特性が悪くなったり、あるいは諸波長に対する回折効率が低下してしまったりする。ここで、式(4)の下限値を1.52、上限値を1.58、式(5)の下限値を25とする内の少なくとも一つに限定すると、更によい結果が得られる。また同様に、式(8)の上限値を1.65とするとともに、式(9)の下限値を20、上限値を30とする内の少なくとも一つに限定すると、更によい結果が得られる。
【0029】
次に、本発明に係る回折光学素子1の製造手順について説明する。これには先ず、所定形状の回折格子溝を予め形成してある第1の金型60と、所定の面を予め形成してある第2の金型70とを用意する。また、所定の形状(本実施形態では円盤状とする)に形成され、ガラス転移点以上に加熱されたガラスモールド用のガラス10’を用意する(図2(A)参照)。
【0030】
次に、ガラス転移点以上に加熱した上記ガラスモールド用のガラス10’を第1の金型60および第2の金型70により型押し成形した後、徐々に冷却し、硬化させる(図2(B)参照)。そして、硬化した上記ガラスモールド用のガラス10’を第1および第2の金型60,70より取り出す(図2(C)参照)。これにより、第1の金型60に形成されていた回折格子溝の形状がガラスモールド用のガラス10’に転写されて第1の回折素子要素10(すなわち、ガラスレンズ素子要素10)が形成される。
【0031】
続いて、このようにして作成された第1の回折素子要素10の回折格子溝が形成された面30上に、液状の紫外線硬化樹脂20’を適量滴下する(図2(D)参照)。液状の紫外線硬化樹脂20’において回折格子溝が形成される面30とは反対側の面に、面形成用の第3の金型80を押し当てる(図2(E)参照)。更に、紫外線90を液状の紫外線硬化樹脂20’に照射することで、液状の紫外線硬化樹脂20’を硬化させる(図2(F)参照)。これにより、第1の回折素子要素10に密着接合された第2の回折素子要素20(すなわち、樹脂レンズ素子要素20)が形成される。最後に、面形成用の上記第3の金型80を取り外せば、第1の回折素子要素10(ガラスモールド用のガラス)と第2の回折素子要素20(紫外線硬化樹脂)とから構成される、本発明に係る密着複層型の回折光学素子1が完成する。
【0032】
本発明の回折光学素子1を上記のような手順で製造した場合、回折格子溝を予め形成しておかなければならない金型は1つ(ここでは第1の金型60)でよく、製造コストを低減することができる。また、第1および第2の回折素子要素10,20に形成された両回折格子溝の回折光学素子1が完成する。
【0033】
【実施例】
以下に本発明の実施例を示すが、各実施例において、回折光学面の位相差は、通常の屈折率と後述する非球面式(10)及び(11)とを用いて行う超高屈折率法により計算した。超高屈折率法とは、非球面形状と回折光学面の格子ピッチとの間の一定の等価関係を利用するものであり、本実施例においては回折光学面は超高屈折率法のデータとして、すなわち、後述する非球面式(10),(11)及びその係数により示している。なお、本実施例では収差特性の算出対象として、d線を選んでいる。本実施例において用いたd線の波長は587.6nmであり、スペクトル線に対して設定した屈折率は10001である。
【0034】
各実施例において、非球面は光軸に垂直な方向の高さ(入射高)をhとし、非球面の頂点における接平面から高さhにおける非球面上の位置までの光軸に沿った距離(非球面量)をxとし、基準球面の曲率半径をrとし、近軸曲率半径をRとし、円錐係数をκとし、n次の非球面係数をCnとしたとき、次式(10)及び(11)で表される。
【0035】
【数4】
x=(h2/r)/{1+(1−κ・h2/r2)1/2}+C2y2+C4y4+C6y6+C8y8+C10y10 …(10)
R=1/{(1/r)+2C2} …(11)
【0036】
なお、各実施例において、非球面形状に形成されたレンズ面には、面番号の右側に*印を付している。また、各実施例において、回折光学面30の位相差は、通常の屈折率と上記非球面式(10)及び(11)とを用いて行う超高屈折率法により計算した。
【0037】
(第1実施例)
図3に、本発明の第1実施例に係る回折光学素子1を用いた光学系のレンズ構成を示す。本第1実施例に用いた光学系におけるレンズは、物体側から順に、両凸レンズL1、両凸レンズL2、両凹レンズL3(これら両レンズL2、L3は貼り合わせレンズ)、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL4、物体側に凸面を向けて回折光学面Gfを像側の面に有する正メニスカスレンズL5(これら両レンズL4、L5は貼り合わせレンズ)、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL6、像側に凸面を向けた正メニスカスレンズL7、両凹レンズL8(これらのレンズL7、L8は貼り合わせレンズ)、絞りS、両凹レンズL9、像側に凸面を向けた負メニスカスレンズL10、両凸レンズL11、光学フィルターF1から構成されている。図3中のEMは、像面の位置を示している。
【0038】
下の表1に、本第1実施例における各レンズの諸元を示す。表1において面番号1〜26は図3の1〜26に対応する。また、表1におけるrはレンズ面の曲率半径(非球面の場合には基準球面の曲率半径)を、dはレンズ面の間隔を、νdはアッベ数を、ndはd線に対する屈折率をそれぞれ示している。そして、表1の条件対応値におけるndGはガラスレンズ素子要素10のd線での屈折率を、νdGはガラスレンズ素子要素10のアッベ数を、ndRは樹脂レンズ要素20のd線での屈折率を、νdRは樹脂レンズ要素20のアッベ数をそれぞれ示している。なお、前述の条件式(1)〜(5)に対応する値、すなわち条件対応値も以下に示している。また、以下の全ての諸元値において掲載されている曲率半径r、面間隔d及びその他の長さの単位は、特記のない場合一般に「mm」が使われるが、光学系は比例拡大又は比例縮小しても同等の光学性能が得られるので、単位は「mm」に限定されることなく、他の適当な単位を用いることもできる。以上の表の説明は、以降の他の表においても同様である。
【0039】
なお、表1において、非球面形状に形成されたレンズ面には、面番号の右に*印を付している。本実施例では、面番号8および9に相当する面が回折光学面Gfに相当し、したがって、図3中のレンズL5が、回折光学面Gfを有するレンズ素子(回折光学素子)に相当する。また、面番号8および9には、この回折光学面Gfの諸元を超高屈折率法を用いて示している。
【0040】
【表1】
【0041】
このように第1実施例では、上記条件式(1)〜(5)は全て満たされることが分かる。
【0042】
図4は、d線に対する第1実施例の諸収差図である。各収差図において、FNOはFナンバーを、Yは像高を示している。球面収差図では最大口径に対応するFナンバーの値を示し、非点収差図及び歪曲収差図では像高Yの最大値をそれぞれ示し、コマ収差図では各像高の値を示す。また、非点収差図において、実線はサジタル像面を示し、破線はメリディオナル像面を示している。以上、収差図の説明は他の実施例においても同様である。各収差図から明らかであるように、本第1実施例では、諸収差が良好に補正され、優れた結像性能が確保されていることが分かる。
【0043】
(第2実施例)
図5に、本発明の第2実施例に係る回折光学素子1を用いた光学系のレンズ構成を示す。本第2実施例に用いた光学系におけるレンズは、物体側から順に、両凸レンズL1、両凸レンズL2、両凹レンズL3(これら両レンズL2、L3は貼り合わせレンズ)、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL4、物体側に凸面を向けて回折光学面Gfを像側の面に有する正メニスカスレンズL5(これら両レンズL4、L5は貼り合わせレンズ)、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL6、像側に凹面を向けた正メニスカスレンズL7、両凹レンズL8(これらのレンズL7、L8は貼り合わせレンズ)、絞りS、両凸レンズL9、像側に凸面を向けた負メニスカスレンズL10、両凸レンズL11、光学フィルターF1から構成されている。図5中のEMは像面の位置を示している。
【0044】
下の表2に、本第2実施例における各レンズの諸元を示す。表2における面番号1〜25は図5の1〜25に対応する。なお、表2において、非球面形状に形成されたレンズ面には、面番号の右に*印を付している。本実施例では、面番号9および10に相当する面が回折光学面Gfに相当し、したがって、図5中のレンズL5が、回折光学面Gfを有するレンズ素子(回折光学素子)に相当する。また、面番号9および10には、この回折光学面Gfの諸元を超高屈折率法を用いて示している。
【0045】
【表2】
【0046】
図6は、d線に対する第2実施例の諸収差図である。各収差図から明らかであるように、第2実施例では、諸収差が良好に補正され、優れた結像性能が確保されていることが分かる。
【0047】
なお、ガラスモールド用のガラスと紫外線硬化樹脂との組み合わせは、上述した第1実施例および第2実施例に限らず、ndG=1.6691,νdG=55.4のガラスモールド用のガラスとndR=1.5980,νdR=28.0の紫外線硬化樹脂との組み合わせ、あるいはndG=1.6940、νdG=56.3のガラスモールド用のガラスとndR=1.6350、νdR=22.8の紫外線硬化樹脂との組み合わせも可能である。
【0048】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係る回折光学素子によれば、ガラスモールド用のガラスからなるガラスレンズ素子要素と紫外線硬化樹脂からなる樹脂レンズ要素と貼り合わせて構成され、このガラスレンズ素子要素と樹脂レンズ要素との貼り合わせ面に回折光学面を形成し、ガラスレンズ素子要素の外面又は樹脂レンズ要素の外面の少なくともいずれか一方を非球面に形成している。このため、回折光学面による色収差の補正とともに単色光収差も補正可能で、量産性のある複層型回折光学素子を提供することが可能になった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による複層型回折格子の模式断面図(A)と模式正面図(B)である。
【図2】本発明の回折光学素子の製造工程を(A)から(G)の順で示す図である。
【図3】本発明による第1実施例の光学系の断面図である。
【図4】第1実施例の光学系の諸収差図である。
【図5】本発明による第2実施例の光学系の断面図である。
【図6】第2実施例の光学系の諸収差図である。
【図7】従来の複層型回折格子の模式断面図である。
【符号の説明】
1 回折光学素子
10 ガラスレンズ素子要素
10’ ガラスモールド用のガラス
20 樹脂レンズ要素
20’ 紫外線硬化樹脂
30 回折光学面
40 ガラスレンズ素子要素の外面
50 樹脂レンズ要素の外面
60 第1の金型
70 第2の金型
80 第3の金型
90 紫外線
Gf 回折光学面
【発明の属する技術分野】
本発明は、回折光学素子に関し、特に、広波長領域で使用可能な回折光学素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
回折光学素子は、微小間隔(約1mm)当たり数百本程度の細かい等間隔のスリット状もしくは溝状の格子構造を備えて作られた光学素子であり、光が入射されると、スリットや溝のピッチ(間隔)と光の波長とで定まる方向に回折光束を生じさせる性質を有している。このような回折光学素子は種々の光学系に用いられており、例えば、特定次数の回折光を一点に集めてレンズとして使用するものなどが知られている。
【0003】
このような回折光学素子においては、近年、図7(a)および(b)に示される複層型回折光学素子が提案されるようになった。このタイプの回折光学素子は、複数の回折素子要素を積み重ねて同心円状に形成されており、所望の広波長領域(例えば、可視光領域)のほぼ全域で高い回折効率が保たれる、すなわち波長特性が良好であるという特徴を有している。
【0004】
一般に、複層型回折光学素子の構造は、図7(a)および(b)に示すように、互いに異なる第1の回折素子要素110と第2の回折素子要素120とが密着接合されてなり、両回折素子要素110、120の境界には所定形状の回折格子溝130が形成されている。例えば、第1の回折素子要素110はガラスにより構成され、第2の回折素子要素120は樹脂により構成され、同一の回折格子溝130で、これらのガラス110と樹脂120とが貼り合わされた構造をしている。このような構造とすることでガラスや樹脂等からなる通常のレンズとは逆の波長特性、すなわち長波長ほど屈折率が高くなるという性質を利用して、g線(435.8nm)からC線(656.3nm)までの広波長領域で回折効率を90%以上とすることが可能になっている。
【0005】
【特許文献1】
特開平11−287904号公報
【特許文献2】
特開平11−305126号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、図7に示される従来の複層型回折光学素子は、ガラス110の回折格子溝130と反対の面140および樹脂120の回折格子溝130と反対の面である150は、平面又は球面である。このため、光学系中に入れた際、色収差の補正には有効であるが、球面収差や非点収差などの単色光収差の補正にはあまり有効ではない。
【0007】
そして、図7に示される従来の複層型回折光学素子は、通常のガラスおよび熱可塑性樹脂を用いているが、通常のガラスは研削および研磨を行ってその両面を成形しなければならず、生産性があまりよくない。また、熱可塑性樹脂は成型時収縮率が大きいためガラスとの密着性が悪くてなかなか貼り合わせることが難しく、成型装置は大掛かりである。このように通常のガラスおよび熱可塑性樹脂は、量産性に乏しいといった欠点がある。
【0008】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであり、単色光収差が補正可能で、量産性のある複層型回折光学素子を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
このような目的を達成するため、請求項1に記載の回折光学素子は、ガラスモールド用のガラスからなるガラスレンズ素子要素と紫外線硬化樹脂からなる樹脂レンズ要素と貼り合わせて構成される回折光学素子であり、ガラスレンズ素子要素と樹脂レンズ要素との貼り合わせ面に回折光学面を形成し、ガラスレンズ素子要素の外面又は樹脂レンズ要素の外面の少なくともいずれか一方を非球面としたことを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の回折格子は、請求項1に記載の回折光学素子において、回折光学面の回折格子溝の最小ピッチは50μm以上あることを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の回折光学素子は、請求項1又は2に記載の回折光学素子において、回折光学面の回折格子溝の高さをhとしたとき、次式8.0μm≦h≦18.0μmの条件を満足することを特徴とする。
【0012】
請求項4に記載の回折光学素子は、請求項1〜3のいずれかに記載の回折光学素子において、ガラスモールド用のガラスのd線での屈折率をndGとし、アッベ数をνdGとしたとき、次式1.55≦ndG≦1.65および55≦νdG≦65の条件を満足し、かつ、紫外線硬化樹脂のd線での屈折率をndRとし、アッベ数をνdRとしたとき、次式1.50≦ndR≦1.60およびνdR≦45の条件を満足することを特徴とする。
【0013】
請求項5に記載の回折光学素子は、請求項1〜3のいずれかに記載の回折光学素子において、ガラスモールド用のガラスのd線での屈折率をndGとし、アッベ数をνdGとしたとき、次式1.63≦ndG≦1.73および50≦νdG≦60の条件を満足し、かつ、紫外線硬化樹脂のd線での屈折率をndRとし、アッベ数をνdRとしたとき、次式1.58≦ndR≦1.68およびνdR≦35の条件を満足することを特徴とする。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施形態について説明する。図1は、本発明に係る回折光学素子の概念を示すものであり、密着した2層で構成される複層型回折光学素子の模式断面図である。本実施形態における回折光学素子1は、互いに異なる第1の回折素子要素10と第2の回折素子要素20とが密着接合されてなり、両回折素子要素10,20の境界には回折光学面30を構成する所定形状の回折格子溝が形成されている。また、本回折学素子1は光軸方向から見ると円盤状(図1(B)参照)であり、光軸と直交する方向から見ると(すなわち、断面形状)レンズ状(図1(A)参照)に形成されている。
【0015】
本発明の回折光学素子1は、第1および第2の回折素子要素10,20を構成する材質の一方はガラスモールド用のガラスにより構成され、他方は紫外線硬化樹脂により構成される。本実施形態では、第1の回折素子要素10が、ガラスモールド用のガラスにより構成され(以下、ガラスレンズ素子要素10)、第2の回折素子要素20が、紫外線硬化樹脂により構成される(以下、樹脂レンズ要素20)ものとして説明するが、これらは逆であってもよい。このように回折光学素子1において、ガラスモールド用のガラスと紫外線硬化樹脂を使用することで、型押し成型が可能であり、量産性が向上する。
【0016】
また、本発明の回折光学素子1は、ガラスレンズ素子要素10の外面40あるいは樹脂レンズ要素20の外面50の少なくともいずれか一方は、非球面に形成される。本実施例では、図1(A)に示すように、ガラスレンズ素子要素10の外面40および樹脂レンズ要素20の外面50の両面が非球面に形成されている。なお、図1中(A)の点線は、近軸曲率半径を示している。このように形成されるため、回折光学面30により色収差を良好に補正することができるとともに、非球面により基準線収差を良好に補正することが可能になる。
【0017】
なお、このような非球面の形成は、型押し成型により行うため、量産性も非常に良い。従って、上記の回折光学面30で接していないガラスレンズ素子要素10の外面40および樹脂レンズ要素20の外面50の両方を非球面とすれば、量産性において更によい結果を得ることが可能である。
【0018】
本発明の回折光学素子1では、回折光学面30を構成する回折格子溝のピッチ(最小ピッチ)を、50μm以上と大きくすることで、回折格子溝の頂角θを緩やかにすることができる。このように回折格子溝の頂角θを緩やかにしておけば、後述するように、金型(第1の金型60)を用いてガラスレンズ素子要素10を成形するときに、その形状を正確に転写することができるとともに、このように転写成形された回折格子溝上に滴下した紫外線硬化樹脂がガラスレンズ素子要素10上に形成された(転写された)全ての回折格子溝の窪み部分(一例として、図1中aで示す部分)に充分に行き渡るようになるため、入射角に対する回折効率を向上させることが可能になるとともに、所定形状の回折格子溝を容易に製造することが可能となり、ひいては回折光学素子1の生産性を向上させることができるようになる。
【0019】
なお、回折格子溝のピッチ(最小ピッチ)を80μm以上とすれば、回折格子溝の頂角θは更に緩やかになるため、回折光学面30の形成はより一層容易になる。また、ピッチが大きくなれば、角度特性、すなわち入射光線の入射角の変化に対する回折効率の低下の度合いが向上するするため、更によい結果が得ることができるようになる。
【0020】
本発明の回折光学素子は、回折光学面30を構成する回折格子溝の高さをhとしたとき、次式(1)が満足されるように形成される。
【0021】
【数1】
8.0μm≦h≦18.0μm …(1)
【0022】
上記の式(1)は、角度特性に関する条件であり、この条件を満たすようにすることにより、従来の複層型回折光学素子に比して角度特性を向上させることができる。すなわち、回折格子溝の高さhを式(1)の上限値(18.0μm)以下にして回折格子溝の高さを低くすることにより、光透過時の損失を小さくして角度特性を向上させることができる。但し、高さhの値を無制限に小さくすることは厳しい製造精度を満足し得なくなる可能性があるため、式(1)においては高さhに下限値を設けている。ここで、式(1)の下限値を8.5μm、上限を15.0μmとする内の少なくとも1つに限定すると、更によい結果が得られる。
【0023】
また、本発明の回折光学素子1を構成するガラスレンズ素子要素10は、d線での屈折率をndGとし、アッベ数νdGとしたとき、次式(2),(3)を満足するガラスモールド用のガラス材料を用い、かつ、樹脂レンズ要素20は、d線での屈折率をndRとし、アッベ数をνdRとしたとき、次式(4),(5)を満足する紫外線硬化樹脂材料を用いることが好ましい。
【0024】
【数2】
1.55≦ndG≦1.65 …(2)
55≦νdG≦65 …(3)
1.50≦ndR≦1.60 …(4)
νdR≦45 …(5)
【0025】
あるいは、ガラスレンズ素子要素10は次式(6),(7)を満足するガラスモールド用のガラス材料を用い、かつ、樹脂レンズ要素20は次式(8),(9)を満足する紫外線硬化樹脂材料を用いるのもよい。
【0026】
【数3】
1.63≦ndG≦1.73 …(6)
50≦νdG≦60 …(7)
1.58≦ndR≦1.68 …(8)
νdR≦35 …(9)
【0027】
上記の式(2),(3)あるいは式(6),(7)は、多数あるガラスモールド用のガラスの中でも、特に、紫外線硬化樹脂との相性のよい領域を示している。これらの式に指定された領域を外れると、互いに異なる物質(すなわち、ガラスモールド用のガラスと紫外線硬化樹脂)が同一の回折格子溝で接する本発明の複層型回折光学素子1の形状を得ることが難しくなってしまう。ここで、式(2)の下限値を1.57、上限値を1.63、式(3)の下限値を57、上限値を63とする内の少なくとも一つに限定すると、更によい結果が得られる。また同様に、式(6)の下限値を1.65、上限値を1.70、式(7)の下限値を52、上限値を58とする内の少なくとも一つに限定すると、更によい結果が得られる。
【0028】
また、上記の式(4),(5)あるいは式(8),(9)は、得られる回折光学素子1の諸性能を良好に保つための条件である。これらの条件を外れると、ガラスモールド用のガラスと紫外線硬化樹脂とが共通の回折格子溝において接する形状となっていても、回折格子溝の高さhが高くなってしまって角度特性が悪くなったり、あるいは諸波長に対する回折効率が低下してしまったりする。ここで、式(4)の下限値を1.52、上限値を1.58、式(5)の下限値を25とする内の少なくとも一つに限定すると、更によい結果が得られる。また同様に、式(8)の上限値を1.65とするとともに、式(9)の下限値を20、上限値を30とする内の少なくとも一つに限定すると、更によい結果が得られる。
【0029】
次に、本発明に係る回折光学素子1の製造手順について説明する。これには先ず、所定形状の回折格子溝を予め形成してある第1の金型60と、所定の面を予め形成してある第2の金型70とを用意する。また、所定の形状(本実施形態では円盤状とする)に形成され、ガラス転移点以上に加熱されたガラスモールド用のガラス10’を用意する(図2(A)参照)。
【0030】
次に、ガラス転移点以上に加熱した上記ガラスモールド用のガラス10’を第1の金型60および第2の金型70により型押し成形した後、徐々に冷却し、硬化させる(図2(B)参照)。そして、硬化した上記ガラスモールド用のガラス10’を第1および第2の金型60,70より取り出す(図2(C)参照)。これにより、第1の金型60に形成されていた回折格子溝の形状がガラスモールド用のガラス10’に転写されて第1の回折素子要素10(すなわち、ガラスレンズ素子要素10)が形成される。
【0031】
続いて、このようにして作成された第1の回折素子要素10の回折格子溝が形成された面30上に、液状の紫外線硬化樹脂20’を適量滴下する(図2(D)参照)。液状の紫外線硬化樹脂20’において回折格子溝が形成される面30とは反対側の面に、面形成用の第3の金型80を押し当てる(図2(E)参照)。更に、紫外線90を液状の紫外線硬化樹脂20’に照射することで、液状の紫外線硬化樹脂20’を硬化させる(図2(F)参照)。これにより、第1の回折素子要素10に密着接合された第2の回折素子要素20(すなわち、樹脂レンズ素子要素20)が形成される。最後に、面形成用の上記第3の金型80を取り外せば、第1の回折素子要素10(ガラスモールド用のガラス)と第2の回折素子要素20(紫外線硬化樹脂)とから構成される、本発明に係る密着複層型の回折光学素子1が完成する。
【0032】
本発明の回折光学素子1を上記のような手順で製造した場合、回折格子溝を予め形成しておかなければならない金型は1つ(ここでは第1の金型60)でよく、製造コストを低減することができる。また、第1および第2の回折素子要素10,20に形成された両回折格子溝の回折光学素子1が完成する。
【0033】
【実施例】
以下に本発明の実施例を示すが、各実施例において、回折光学面の位相差は、通常の屈折率と後述する非球面式(10)及び(11)とを用いて行う超高屈折率法により計算した。超高屈折率法とは、非球面形状と回折光学面の格子ピッチとの間の一定の等価関係を利用するものであり、本実施例においては回折光学面は超高屈折率法のデータとして、すなわち、後述する非球面式(10),(11)及びその係数により示している。なお、本実施例では収差特性の算出対象として、d線を選んでいる。本実施例において用いたd線の波長は587.6nmであり、スペクトル線に対して設定した屈折率は10001である。
【0034】
各実施例において、非球面は光軸に垂直な方向の高さ(入射高)をhとし、非球面の頂点における接平面から高さhにおける非球面上の位置までの光軸に沿った距離(非球面量)をxとし、基準球面の曲率半径をrとし、近軸曲率半径をRとし、円錐係数をκとし、n次の非球面係数をCnとしたとき、次式(10)及び(11)で表される。
【0035】
【数4】
x=(h2/r)/{1+(1−κ・h2/r2)1/2}+C2y2+C4y4+C6y6+C8y8+C10y10 …(10)
R=1/{(1/r)+2C2} …(11)
【0036】
なお、各実施例において、非球面形状に形成されたレンズ面には、面番号の右側に*印を付している。また、各実施例において、回折光学面30の位相差は、通常の屈折率と上記非球面式(10)及び(11)とを用いて行う超高屈折率法により計算した。
【0037】
(第1実施例)
図3に、本発明の第1実施例に係る回折光学素子1を用いた光学系のレンズ構成を示す。本第1実施例に用いた光学系におけるレンズは、物体側から順に、両凸レンズL1、両凸レンズL2、両凹レンズL3(これら両レンズL2、L3は貼り合わせレンズ)、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL4、物体側に凸面を向けて回折光学面Gfを像側の面に有する正メニスカスレンズL5(これら両レンズL4、L5は貼り合わせレンズ)、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL6、像側に凸面を向けた正メニスカスレンズL7、両凹レンズL8(これらのレンズL7、L8は貼り合わせレンズ)、絞りS、両凹レンズL9、像側に凸面を向けた負メニスカスレンズL10、両凸レンズL11、光学フィルターF1から構成されている。図3中のEMは、像面の位置を示している。
【0038】
下の表1に、本第1実施例における各レンズの諸元を示す。表1において面番号1〜26は図3の1〜26に対応する。また、表1におけるrはレンズ面の曲率半径(非球面の場合には基準球面の曲率半径)を、dはレンズ面の間隔を、νdはアッベ数を、ndはd線に対する屈折率をそれぞれ示している。そして、表1の条件対応値におけるndGはガラスレンズ素子要素10のd線での屈折率を、νdGはガラスレンズ素子要素10のアッベ数を、ndRは樹脂レンズ要素20のd線での屈折率を、νdRは樹脂レンズ要素20のアッベ数をそれぞれ示している。なお、前述の条件式(1)〜(5)に対応する値、すなわち条件対応値も以下に示している。また、以下の全ての諸元値において掲載されている曲率半径r、面間隔d及びその他の長さの単位は、特記のない場合一般に「mm」が使われるが、光学系は比例拡大又は比例縮小しても同等の光学性能が得られるので、単位は「mm」に限定されることなく、他の適当な単位を用いることもできる。以上の表の説明は、以降の他の表においても同様である。
【0039】
なお、表1において、非球面形状に形成されたレンズ面には、面番号の右に*印を付している。本実施例では、面番号8および9に相当する面が回折光学面Gfに相当し、したがって、図3中のレンズL5が、回折光学面Gfを有するレンズ素子(回折光学素子)に相当する。また、面番号8および9には、この回折光学面Gfの諸元を超高屈折率法を用いて示している。
【0040】
【表1】
【0041】
このように第1実施例では、上記条件式(1)〜(5)は全て満たされることが分かる。
【0042】
図4は、d線に対する第1実施例の諸収差図である。各収差図において、FNOはFナンバーを、Yは像高を示している。球面収差図では最大口径に対応するFナンバーの値を示し、非点収差図及び歪曲収差図では像高Yの最大値をそれぞれ示し、コマ収差図では各像高の値を示す。また、非点収差図において、実線はサジタル像面を示し、破線はメリディオナル像面を示している。以上、収差図の説明は他の実施例においても同様である。各収差図から明らかであるように、本第1実施例では、諸収差が良好に補正され、優れた結像性能が確保されていることが分かる。
【0043】
(第2実施例)
図5に、本発明の第2実施例に係る回折光学素子1を用いた光学系のレンズ構成を示す。本第2実施例に用いた光学系におけるレンズは、物体側から順に、両凸レンズL1、両凸レンズL2、両凹レンズL3(これら両レンズL2、L3は貼り合わせレンズ)、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL4、物体側に凸面を向けて回折光学面Gfを像側の面に有する正メニスカスレンズL5(これら両レンズL4、L5は貼り合わせレンズ)、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL6、像側に凹面を向けた正メニスカスレンズL7、両凹レンズL8(これらのレンズL7、L8は貼り合わせレンズ)、絞りS、両凸レンズL9、像側に凸面を向けた負メニスカスレンズL10、両凸レンズL11、光学フィルターF1から構成されている。図5中のEMは像面の位置を示している。
【0044】
下の表2に、本第2実施例における各レンズの諸元を示す。表2における面番号1〜25は図5の1〜25に対応する。なお、表2において、非球面形状に形成されたレンズ面には、面番号の右に*印を付している。本実施例では、面番号9および10に相当する面が回折光学面Gfに相当し、したがって、図5中のレンズL5が、回折光学面Gfを有するレンズ素子(回折光学素子)に相当する。また、面番号9および10には、この回折光学面Gfの諸元を超高屈折率法を用いて示している。
【0045】
【表2】
【0046】
図6は、d線に対する第2実施例の諸収差図である。各収差図から明らかであるように、第2実施例では、諸収差が良好に補正され、優れた結像性能が確保されていることが分かる。
【0047】
なお、ガラスモールド用のガラスと紫外線硬化樹脂との組み合わせは、上述した第1実施例および第2実施例に限らず、ndG=1.6691,νdG=55.4のガラスモールド用のガラスとndR=1.5980,νdR=28.0の紫外線硬化樹脂との組み合わせ、あるいはndG=1.6940、νdG=56.3のガラスモールド用のガラスとndR=1.6350、νdR=22.8の紫外線硬化樹脂との組み合わせも可能である。
【0048】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係る回折光学素子によれば、ガラスモールド用のガラスからなるガラスレンズ素子要素と紫外線硬化樹脂からなる樹脂レンズ要素と貼り合わせて構成され、このガラスレンズ素子要素と樹脂レンズ要素との貼り合わせ面に回折光学面を形成し、ガラスレンズ素子要素の外面又は樹脂レンズ要素の外面の少なくともいずれか一方を非球面に形成している。このため、回折光学面による色収差の補正とともに単色光収差も補正可能で、量産性のある複層型回折光学素子を提供することが可能になった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による複層型回折格子の模式断面図(A)と模式正面図(B)である。
【図2】本発明の回折光学素子の製造工程を(A)から(G)の順で示す図である。
【図3】本発明による第1実施例の光学系の断面図である。
【図4】第1実施例の光学系の諸収差図である。
【図5】本発明による第2実施例の光学系の断面図である。
【図6】第2実施例の光学系の諸収差図である。
【図7】従来の複層型回折格子の模式断面図である。
【符号の説明】
1 回折光学素子
10 ガラスレンズ素子要素
10’ ガラスモールド用のガラス
20 樹脂レンズ要素
20’ 紫外線硬化樹脂
30 回折光学面
40 ガラスレンズ素子要素の外面
50 樹脂レンズ要素の外面
60 第1の金型
70 第2の金型
80 第3の金型
90 紫外線
Gf 回折光学面
Claims (5)
- ガラスモールド用のガラスからなるガラスレンズ素子要素と紫外線硬化樹脂からなる樹脂レンズ要素と貼り合わせて構成される回折光学素子であり、
前記ガラスレンズ素子要素と前記樹脂レンズ要素との貼り合わせ面に回折光学面を形成し、
前記ガラスレンズ素子要素の外面又は前記樹脂レンズ要素の外面の少なくともいずれか一方を非球面としたことを特徴とする回折光学素子。 - 前記回折光学面の回折格子溝の最小ピッチは50μm以上であることを特徴とする請求項1記載の回折光学素子。
- 前記回折光学面の回折格子溝の高さをhとしたとき、次式
8.0μm≦h≦18.0μm
の条件を満足することを特徴とする請求項1又は2記載の回折光学素子。 - 前記ガラスモールド用のガラスのd線での屈折率をndGとし、アッベ数をνdGとしたとき、次式
1.55≦ndG≦1.65 および
55≦νdG≦65
の条件を満足し、かつ、前記紫外線硬化樹脂のd線での屈折率をndRとし、アッベ数をνdRとしたとき、次式
1.50≦ndR≦1.60 および
νdR≦45
の条件を満足することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の回折光学素子。 - 前記ガラスモールド用のガラスのd線での屈折率をndGとし、アッベ数をνdGとしたとき、次式
1.63≦ndG≦1.73 および
50≦νdG≦60
の条件を満足し、かつ、前記紫外線硬化樹脂のd線での屈折率をndRとし、アッベ数をνdRとしたとき、次式
1.58≦ndR≦1.68 および
νdR≦35
の条件を満足することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の回折光学素子。
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