JP2004123868A - ポリトリメチレンテレフタレート樹脂組成物及びその製造方法 - Google Patents

ポリトリメチレンテレフタレート樹脂組成物及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】溶融熱安定性に優れるとともに、溶融滞留時の環状ダイマーの生成及び析出が少なく成形性に優れる上、その成形体が塗料、糊剤の塗布性や、接着性にも優れていることを特徴とするポリトリメチレンテレフタレート樹脂組成物を提供する。
【解決手段】金属化合物触媒の存在下製造された、繰り返し単位の80重量%以上がトリメチレンテレフタレート単位からなり、ポリマー1kg当たりの水酸基末端濃度が0.02〜0.19molの範囲である、極限粘度が0.5dl/g以上のポリトリメチレンテレフタレート樹脂に、下記一般式(I)で表されるリン化合物を、金属化合物触媒に対してリン原子と金属原子とのグラム原子比(P/M)が0.1〜10の範囲であるように溶融混合してなるポリトリメチレンテレフタレート樹脂組成物。
(R)PO(OH)3−m    (I)
(Rはフェニル基、またはカルボキシル基を有するフェニル基であり、mは1〜2である)
【選択図】 選択図なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリトリメチレンテレフタレート樹脂組成物およびその製造方法に関する。さらに詳しくは溶融熱安定性に優れるとともに、製造時および溶融後加工時の環状ダイマーの生成及び析出が少なく成形性に優れる上、その成形体が塗料、糊剤の塗布性や、接着性に優れていることを特徴とするポリトリメチレンテレフタレート樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリエステル、特にポリエチレンテレフタレートは、優れた物理的、化学的特性を有し、繊維、フィルム、その他成形体として広く利用されているが、柔軟性に乏しい。一方、テレフタル酸やテレフタル酸の低級アルコールエステルと1,3−プロパンジオール(トリメチレングリコールともいう)とを溶融重合、又は一旦溶融重合して得たプレポリマーを更に固相重合することで合成されるポリトリメチレンテレフタレートは、柔軟性に優れた素材であり、またガラス転移温度や融点がナイロン6のそれらに近いうえ吸湿による物性への影響が少ないなど、既存の素材では得られない多くの特徴を兼ね備えている。
【0003】
ポリトリメチレンテレフタレートの製造に当たっては、その重縮合反応を円滑に進行させるために触媒が必要であり、種々の金属化合物、特に有機チタン系化合物が触媒として広く使用されている。しかしながらこれら金属化合物を触媒として製造したポリマーを長時間溶融状態で滞留させるとポリマーの熱劣化が進行し、分子量が低下したり、色調が悪化する問題がある。さらに溶融滞留時にオリゴマーが生成する問題がある。オリゴマーの約90重量%は環状ダイマーであるが、環状ダイマーは昇華性、ブリードアウト性を有するために、例えば射出成形では、成形金型に析出してモールドデポジットとなり、成形体の外観や寸法精度を損なったり、成形体を製造した後でもその表面に環状ダイマーがブリードアウトするために塗料や糊剤の塗布性や、接着性が損なわれる。
【0004】
ポリマーの溶融滞留時の熱劣化の問題は、類似骨格を有するポリエチレンテレフタレートと比較してポリトリメチレンテレフタレートの方が、色調の悪化の度合い及び溶融粘度低下率が大きく問題の程度はより深刻である。またオリゴマーに関してもポリエチレンテレフタレートではその存在量が1重量%程度であるのに対してポリトリメチレンテレフタレートでは約2.5〜3.5重量%と多く、更にポリエチレンテレフタレートではこのオリゴマーは環状三量体が大部分で、ポリトリメチレンテレフタレートの環状ダイマーよりも分子量が大きいため昇華性やブリードアウト性が小さい。従って問題の程度はポリトリメチレンテレフタレートの方がより深刻である。
【0005】
ポリトリメチレンテレフタレートの溶融熱安定性を改良する試みとして、特定のチタン化合物とリン化合物を予め反応させて得られる反応生成物を触媒として製造する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、この特許文献の如くチタン化合物とリン化合物を予め反応させて得られる反応生成物を触媒とすると、ポリマーの色調は改良されるものの、重合速度が大幅に低下するため、触媒としてチタン化合物以外に酢酸カルシウムとの併用が必要であったり、多量の触媒を使用する必要があり、溶融熱安定性がかえって低下するなどの問題があった。また、重合に長時間を要し生産性が低下するうえ、実用に足る高重合度のポリマーの製造が得られ難く、その成形体の塗料、糊剤の塗布性や、接着性を再現性よく評価することも困難であった。
【0006】
【特許文献1】
特開2001−278971号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記問題を解決し、溶融熱安定性に優れるとともに、溶融滞留時の環状ダイマーの生成及び析出が少なく成形性に優れる上、その成形体が塗料、糊剤の塗布性や、接着性にも優れていることを特徴とするポリトリメチレンテレフタレート樹脂組成物を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
これらの問題を解決するために、本発明者らはポリトリメチレンテレフタレートの熱劣化の挙動及び環状ダイマーの生成挙動について詳細に解析した結果、ポリマーの熱劣化は水酸基末端の濃度と関係があり、水酸基末端濃度がポリマー1kg当たり0.02mol未満に低下すると色調の悪化など熱劣化が急激に進行することを見出した。水酸基末端濃度の低下に伴い金属化合物触媒の配位状態が変化することによって、熱劣化が促進された可能性がある。我々は金属化合物触媒に起因する熱劣化を防止する技術を鋭意検討した結果、水酸基末端の濃度がポリマー1kg当たり0.02〜0.19molの範囲である極限粘度が0.5dl/g以上のポリトリメチレンテレフタレートに、一般式(1)で表される特定のリン化合物を、金属化合物触媒に対してリン原子と金属原子とのグラム原子比(P/M)が0.1〜10の範囲であるように溶融混合することによって、熱劣化を大幅に低減できることを見出した。さらにこのようにして製造したポリトリメチレンテレフタレート樹脂組成物は、溶融滞留時の環状ダイマーの析出が少ないことを見出した。さらに詳細に検討を行ったところ、溶融滞留時の環状ダイマーの生成量が大幅に低減しており、金属化合物触媒に一般式(1)で表される特定のリン化合物が配位したことによって、環状ダイマーの生成反応が阻害されたものと考えられる。本発明のポリトリメチレンテレフタレート樹脂組成物は、成形体表面への環状ダイマーのブリードアウトも少なく、成形体の塗料、糊剤の塗布性や、接着性が大幅に改良されることを見出し、本発明に到達した。
【0009】
すなわち、本発明は、
(1)金属化合物触媒の存在下製造された、繰り返し単位の80重量%以上がトリメチレンテレフタレート単位からなり、ポリマー1kg当たりの水酸基末端濃度が0.02〜0.19molの範囲である、極限粘度が0.5dl/g以上のポリトリメチレンテレフタレート樹脂に、下記一般式(I)で表されるリン化合物を、金属化合物触媒に対してリン原子と金属原子とのグラム原子比(P/M)が0.1〜10の範囲であるように溶融混合してなるポリトリメチレンテレフタレート樹脂組成物、
(R)PO(OH)3−m    (I)
(Rはフェニル基、またはカルボキシル基を有するフェニル基であり、mは1〜2である)
【0010】
(2)金属化合物触媒の存在下製造される、繰り返し単位の80重量%以上がトリメチレンテレフタレート単位からなる極限粘度が0.5dl/g以上のポリトリメチレンテレフタレート樹脂組成物であって、重縮合反応の進行に伴う水酸基末端濃度の減少により、ポリマー1kg当たりの水酸基末端濃度が0.19mol以下から0.02mol以上の範囲にある任意の段階で、重合装置中に一般式(I)で表されるリン化合物を、金属化合物触媒に対してリン原子と金属原子とのグラム原子比(P/M)が0.1〜10の範囲であるように添加し含有させることを特徴とするポリトリメチレンテレフタレート樹脂組成物の製造方法に関する。
【0011】
本発明のポリトリメチレンテレフタレート樹脂組成物を構成するポリトリメチレンテレフタレートは金属化合物触媒の存在下製造された、繰り返し単位の80重量%以上がトリメチレンテレフタレート単位からなる、ポリマー1kg当たりの水酸基末端濃度が0.02〜0.19molの範囲である、極限粘度が0.5dl/g以上のポリトリメチレンテレフタレートである。
極限粘度が0.5dl/g未満の場合は、成形加工品の強度が低い。極限粘度の上限については特に制限はないが、2dl/gを越える場合は、溶融粘度が高すぎるために成形加工が困難となるので、好ましくは0.7〜1.5dl/g、特に好ましくは0.8〜1.4dl/gであり、最も好ましくは0.85〜1.3dl/gである。
【0012】
本発明のポリトリメチレンテレフタレートの主骨格を形成する原料モノマーとしては、テレフタル酸と1,3−プロパンジオール以外に、繰り返し単位の20重量%未満で他のモノマーを共重合してもよい。共重合するモノマーは、ジオール、ジカルボン酸、ジカルボン酸エステル、ジカルボン酸アミド、オキシカルボン酸など特に制限はない。具体例としてはエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等のジオール、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、5−カリウムスルホイソフタル酸、5−リチウムスルホイソフタル酸、2−ナトリウムスルホイソフタル酸、2−カリウムスルホイソフタル酸、2−リチウムスルホイソフタル酸、4−ナトリウムスルホ−2,6−ナフタレンジカルボン酸、2−ナトリウムスルホ−4−ヒドロキシ安息香酸、5−スルホイソフタル酸テトラブチルホスホニウム等のジカルボン酸及びそのメタノール等の低級アルコールエステル、オキシ酢酸、オキシ安息香酸等のオキシカルボン酸及びそのメタノール等の低級アルコールエステル、更には分子量が200〜100000のポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリオールであってもよい。また必要に応じて2種類以上のエステル形成性モノマーを共重合させてもよい。
【0013】
また、重合過程で生成する共重合成分、例えば、1,3−プロパンジオールのダイマー(ビス(3−ヒドロキシプロピル)エーテル)が共重合されていてもよい。ビス(3−ヒドロキシプロピル)エーテルは、重合過程で1,3−プロパンジオールやポリマー分子末端の3−ヒドロキシプロピル基が更に1,3−プロパンジオールと反応して生成し、そのままポリトリメチレンテレフタレートに共重合してポリトリメチレンテレフタレートの耐光性や耐熱性を低下させるが、適度に共重合されると繊維の染料吸尽率や紡糸安定性を高める効果もある。従って、適度にビス(3−ヒドロキシプロピル)エーテルは共重合されることが好ましく、その共重合比率としては0.01〜2重量%、好ましくは0.04〜1.2重量%である。
【0014】
本発明のポリトリメチレンテレフタレート樹脂組成物の好ましい製造方法は、テレフタル酸及び/又はその低級アルコールエステルと1,3−プロパンジオールを反応させてテレフタル酸の1,3−プロパンジオールエステル及び/又はそのオリゴマーを生成させ、それを重縮合させる方法である。本発明で用いるテレフタル酸、テレフタル酸の低級アルコールエステル、1,3−プロパンジオールは、市販のもの、あるいはポリトリメチレンテレフタレートやポリトリメチレンテレフタレート製品から回収されたものでもよく、好ましくは純度95%以上、更に好ましくは98%以上である。
重合原料であるテレフタル酸やテレフタル酸の低級アルコールエステルに対する1,3−プロパンジオールの仕込み比率はモル比で0.8〜3であることが好ましい。仕込み比率が0.8未満では、エステル交換反応が進行しにくく、また仕込み比率が3より大きくなると融点が低くなるほか、得られたポリマーの白度が低下する傾向がある。好ましくは、1.4〜2.5であり、さらに好ましくは1.5〜2.3である。
【0015】
触媒は反応を円滑に進行させるため必要であり、エステル化反応またはエステル交換反応では、例えばマグネシウム、カルシウム、バリウム、スカンジウム、イットリウム、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、カドミウム、アルミニウム、ゲルマニウム、スズ、鉛、アンチモン、ランタン、セリウム、サマリウム、イッテルビウム等の金属について、ナトリウムメチラート、マグネシウムメチラート、アルミニウムイソプロポキシド、亜鉛グリコキシド、亜鉛フェノキシド、チタンテトラブトキシド、チタンテトライソプロポキシドに代表されるアルコキサイド。及び上記の金属の、酢酸リチウム、酢酸カルシウム、酢酸マグネシウム、酢酸マンガン、酢酸亜鉛、酪酸亜鉛、酢酸スズ、オクチル酸スズ、2−エチルヘキサン酸スズ、酢酸鉛、酢酸アンチモン、蓚酸チタンに代表されるカルボン酸塩。及び上記の金属の、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛に代表される炭酸塩。及び上記の金属の、酸化アンチモン、酸化ゲルマニウム、酸化鉛、酸化スズ、非晶性酸化チタン沈殿物、非晶性酸化チタン/シリカ共沈殿物、非晶性ジルコニア沈殿物に代表される酸化物。及び上記の金属の、塩化亜鉛、ヨウ化亜鉛、塩化スズ、塩化ランタン、塩化サマリウムに代表されるハロゲン化物。及び上記の金属の、硫酸亜鉛、硫酸鉛に代表される硫酸塩。及び、上記の金属の、リン酸亜鉛に代表されるリン酸塩。及びモノブチルスズオキサイド、ジブチルスズオキサイド、モノブチルスズトリオクチルエステル、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジラウレート、スタノキサンに代表されるオルガノスズ化合物等。以上の触媒から選ばれる1種以上を、全カルボン酸成分モノマーに対して0.01〜0.2重量%、好ましくは0.05〜0.12重量%用いることが反応速度、ポリマーの白度、熱安定性を兼ね備え好ましい。
【0016】
反応温度としては200℃から250℃程度で、副生する水やメタノール等のアルコールを留去しながら反応を行うことができる。反応時間は通常2〜10時間、好ましくは2〜4時間である。こうして得られた反応物は、テレフタル酸の1,3−プロパンジオールエステル及び/又はそのオリゴマーである。以上のエステル化反応、エステル交換反応は、必要に応じて2つ以上の反応釜に分けて順次連続的に行ってもよい。
ポリトリメチレンテレフタレート樹脂組成物は、こうして得られたテレフタル酸の1,3−プロパンジオールエステル及び/又はそのオリゴマーを更に重縮合することにより製造することができる。
【0017】
重縮合反応では、必要に応じて更にマグネシウム、カルシウム、バリウム、スカンジウム、イットリウム、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、カドミウム、アルミニウム、ゲルマニウム、スズ、鉛、アンチモン、ランタン、セリウム、サマリウム、イッテルビウム等の金属の、ナトリウムメチラート、マグネシウムメチラート、アルミニウムイソプロポキシド、亜鉛グリコキシド、亜鉛フェノキシド、チタンテトラブトキシド、チタンテトライソプロポキシドに代表されるアルコキサイド。及び上記の金属の、酢酸リチウム、酢酸カルシウム、酢酸マグネシウム、酢酸マンガン、酢酸亜鉛、酪酸亜鉛、酢酸スズ、オクチル酸スズ、2−エチルヘキサン酸スズ、酢酸鉛、酢酸アンチモン、蓚酸チタンに代表されるカルボン酸塩。及び上記の金属の、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛に代表される炭酸塩。及び上記の金属の、酸化アンチモン、酸化ゲルマニウム、酸化鉛、酸化スズ、非晶性酸化チタン沈殿物、非晶性酸化チタン/シリカ共沈殿物、非晶性ジルコニア沈殿物に代表される酸化物。及び上記の金属の、塩化亜鉛、ヨウ化亜鉛、塩化スズ、塩化ランタン、塩化サマリウムに代表されるハロゲン化物。及び上記の金属の、硫酸亜鉛、硫酸鉛に代表される硫酸塩。及び、上記の金属の、リン酸亜鉛に代表されるリン酸塩。及びモノブチルスズオキサイド、ジブチルスズオキサイド、モノブチルスズトリオクチルエステル、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジラウレート、スタノキサンに代表されるオルガノスズ化合物等。以上の触媒から選ばれる1種以上を、全カルボン酸成分モノマーに対して0.01〜0.2重量%、好ましくは0.03〜0.15重量%添加する。この重縮合触媒は、エステル化反応やエステル交換反応で用いた触媒をそのまま使用することも出来るし、新たに追加してもよい。これらの触媒のうち、チタン系の触媒はエステル化反応、エステル交換反応、重縮合反応のいずれにも有効な触媒でありエステル化反応やエステル交換反応段階で添加しておくと、重縮合反応前に新たに添加することなく、あるいは添加するにしても少量で重縮合反応を行うことが出来る点で最も好ましい触媒である。
【0018】
重縮合反応においては、1,3−プロパンジオールや更にはエステル化反応やエステル交換反応で生成した反応系に残存する水やアルコールを効率的に排出させるために、減圧中で重縮合することが好ましく、適用する真空度としては0.0001〜2torr、好ましくは0.01〜0.7torrである。ポリトリメチレンテレフタレートに共重合を行う場合は重合の任意の段階で、コモノマーを添加することが出来る。
【0019】
本発明は、水酸基末端の濃度がポリマー1kg当たり0.02〜0.19molの範囲である、極限粘度が0.5dl/g以上のポリトリメチレンテレフタレートに、一般式(I)で表されるリン化合物を添加し溶融混合することが必要であり、この濃度範囲で存在する水酸基末端が、金属化合物触媒とリン化合物の好ましい配位構造の形成のために有効に作用するものと考えられる。水酸基末端の濃度がポリマー1kg当たり0.19molより大きい場合、一般式(I)で表されるリン化合物は金属化合物触媒と直ちに反応し、凝集して触媒活性が著しく低下するため、リン化合物を添加した後で溶融重合あるいは固相重合を継続して実用に足る高分子量のポリトリメチレンテレフタレートを製造することは困難である。一方、水酸基末端の濃度がポリマー1kg当たり0.02mol未満である場合、溶融熱安定性及び環状ダイマーの改良の程度は充分ではない。水酸基末端濃度がポリマー1kg当たり0.02mol未満であると、金属化合物触媒とリン化合物との反応に先行して金属化合物触媒同士の凝集が進行しており、金属化合物触媒とリン化合物の好ましい配位構造が形成されなかった可能性があるが、まだ明確ではない。ポリマー1kg当たりの水酸基末端濃度が0.02mol〜0.19molの範囲である場合のみ溶融熱安定性を改良し、さらに溶融滞留時の環状ダイマーの析出を低減することが可能となる。また本発明の条件で一般式(I)で表されるリン化合物を添加した場合には、金属化合物触媒の活性が保持されるため、リン化合物の添加後に溶融重合あるいは固相重合を継続することで、さらに高分子量のポリトリメチレンテレフタレートを、生産性を損なうこともなく製造することが可能である。
【0020】
一般式(I)で表されるリン化合物を添加するときの、ポリトリメチレンテレフタレートの水酸基末端の濃度がポリマー1kg当たり0.02mol〜0.19molの範囲であるとき、水酸基末端濃度が高い方が溶融熱安定性がより改良される傾向がある一方、水酸基末端濃度が低い方が溶融滞留時の環状ダイマーの析出量がより低減する傾向及び、成形体の塗料や糊剤の塗布性、接着性がより向上する傾向が認められる。これらの原因はまだ明確ではないが、溶融熱安定性の改良には主に触媒活性の低減が有効であり、環状ダイマーの析出量や成形体の塗料や糊剤の塗布性、接着性の改良には触媒活性の低減以外にも一般式(I)で表される特定の構造を有するリン化合物と金属化合物触媒からなる好ましい配位構造を有する化合物を含有すること自体によるポリマーの極性の改良などの、複数の要因が関与しているものと考えられる。上記の性能のバランスの面から、一般式(I)で表されるリン化合物を添加するときの、ポリトリメチレンテレフタレートのより好ましい水酸基末端濃度はポリマー1kg当たり0.03〜0.16molの範囲であり、さらに好ましくは0.04〜0.12molの範囲であり、最も好ましくは0.05〜0.09molの範囲である。
【0021】
一般式(I)で表される化合物としては、フェニルホスホン酸、メチルホスホン酸、エチルホスホン酸、プロピルホスホン酸、イソプロピルホスホン酸、ブチルホスホン酸、トリルホスホン酸、キシリルホスホン酸、ビフェニリルホスホン酸、ナフチルホスホン酸、アントリルホスホン酸、2−カルボキシフェニルホスホン酸、3−カルボキシフェニルホスホン酸、4−カルボキシフェニルホスホン酸、2,3−ジカルボキシフェニルホスホン酸、2,4−ジカルボキシフェニルホスホン酸、2,5−ジカルボキシフェニルホスホン酸、2,6−ジカルボキシフェニルホスホン酸、3,4−ジカルボキシフェニルホスホン酸、3,5−ジカルボキシフェニルホスホン酸、2,3,4−トリカルボキシフェニルホスホン酸、2,3,5−トリカルボキシフェニルホスホン酸、2,3,6−トリカルボキシフェニルホスホン酸、2,4,5−トリカルボキシフェニルホスホン酸、2,4,6−トリカルボキシフェニルホスホン酸、ジフェニルホスホン酸、ビス(2−カルボキシフェニル)ホスホン酸、ビス(3−カルボキシフェニル)ホスホン酸、ビス(4−カルボキシフェニル)ホスホン酸、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)ホスホン酸、ビス(2,4−ジカルボキシフェニル)ホスホン酸、ビス(2,5−ジカルボキシフェニル)ホスホン酸、ビス(2,6−ジカルボキシフェニル)ホスホン酸、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ホスホン酸、ビス(3,5−ジカルボキシフェニル)ホスホン酸、ビス(2,3,4−トリカルボキシフェニル)ホスホン酸、ビス(2,3,5−トリカルボキシフェニル)ホスホン酸、ビス(2,3,6−トリカルボキシフェニル)ホスホン酸、ビス(2,4,5−トリカルボキシフェニル)ホスホン酸、ビス(2,4,6−トリカルボキシフェニル)ホスホン酸等を挙げることができ、特に成形体の塗料、糊剤の塗布性や、接着性に優れた性能を示す点からフェニルホスホン酸、2,5−ジカルボキシフェニルホスホン酸、ジフェニルホスホン酸を用いることが好ましい。これらのリン化合物は成形体からの環状ダイマーのブリードアウトを低減するという要因以外にも、ポリマーと塗料や糊剤との親和性を改良するという要因も有しているものと考えられる。
【0022】
一般式(I)で表されるリン化合物の添加量は、金属化合物触媒に対してリン原子と金属原子とのグラム原子比(P/M)が0.1〜10の範囲であるように添加し含有させることが必要であり、(P/M)が0.1より小さいと本発明の効果は認められない一方、(P/M)を10より大きくしてもそれ以上の効果は得られず不経済である。(P/M)が0.1〜10の範囲にある場合、リン化合物の添加量が多いほど成形体表面からの環状ダイマーのブリードアウトが低減される傾向があるが、性能とコストの面からより好ましい(P/M)の範囲は0.15〜8であり、さらに好ましい(P/M)の範囲は0.2〜5であり、最も好ましい(P/M)の範囲は0.25〜3である。
【0023】
一般式(I)で表されるリン化合物の添加方法は溶融重合又は、溶融重合及び固相重合により製造された、ポリマー1kg当たりの水酸基末端濃度が0.05〜0.09molの範囲であって一旦冷却固化しペレット等に賦形されたポリマーを、溶融押出や溶融成形等の溶融後加工処理時に、ポリマーを再度溶融可塑化する段階において添加し溶融混合することも可能である。しかしながら本発明の効果を最大に発揮するには、溶融重合によってポリトリメチレンテレフタレートを製造する際、重縮合反応の進行に伴う水酸基末端濃度の減少により、ポリマー1kg当たりの水酸基末端濃度が0.19mol以下から0.02mol以上の範囲にある任意の段階で、ポリマーを冷却固化しペレット等に賦形する以前の溶融状態のままで、一般式(I)で表されるリン化合物を重合系中に添加し溶融混合する方法がより好ましい。また、この方法によればリン化合物を添加した後、そのまま溶融重合又は、溶融重合及び固相重合を継続してさらに高分子量のポリトリメチレンテレフタレートを製造することも可能である。
【0024】
また、一般式(I)で表されるリン化合物の添加時の形態には特に制限はなく、例えばリン化合物を直接溶融状態、固体状態で、または任意の媒体の溶液状態、分散状態で、あるいはリン化合物を高濃度含有する、いわゆるマスターポリマー(マスターバッチ)として重合装置内に添加する方法や、ポリトリメチレンテレフタレートを溶融状態、固体状態、溶液状態、分散状態として、この中にリン化合物を直接溶融状態、固体状態で、または任意の媒体の溶液状態、分散状態で、注入、投入、含浸し次いで溶融混合する方法などが挙げられる。添加は一度に行ってもよいし、2回以上に分割して行ってもよい。
本発明のポリトリメチレンテレフタレート樹脂組成物を製造する際、必要に応じて各種の添加剤、例えば熱安定剤、消泡剤、整色剤、難燃剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、結晶核剤、滑剤、帯電防止剤、蛍光増白剤、例えば酸化チタン等の艶消し剤などを共重合、または混合してもよい。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明は実施例などにより何ら限定されるものではない。尚,実施例中の主な測定値は以下の方法で測定した。
(1)極限粘度
極限粘度[η]は、オストワルド粘度管を用い、35℃、o−クロロフェノールを用いて比粘度ηspと濃度C(g/100ml)の比ηsp/Cを濃度ゼロに外挿し、以下の式に従って求めた。
[η]=lim(ηsp/C)   C→0
【0026】
(2)水酸基末端濃度
ポリマー2mgをHFIP−d/CDCl(容量比1:1)0.5gに溶解して1HNMR(400MHz)で測定した、ポリマー末端の水酸基に対してα位置にあるプロトンと、芳香族環のプロトンのピーク積分値から算出した。
(3)ポリマー中の種々の金属、P量
ポリマーの所定量を塩酸と硝酸の混酸で分解し、内部標準としてイットリウム溶液を添加し定容とした後、JIS G1258に基づき誘導結合プラズマ発光分光法を用いてポリマー中の金属、P量を測定した。
【0027】
(4)溶融熱安定性
ポリマーを直径15cmのステンレスカップに入れて、窒素パージされた電気炉中で、270℃で1時間溶融する。これを氷浴で急冷後、真空乾燥機中で150℃で1時間かけて結晶化したときのポリマーの色調を目視で判定した。
(5)環状ダイマーの含有量
試料0.3gをクロロホルム5mlと(CFCHOH5mlの混合物に溶解させた後、更にクロロホルム5mlを加え、その後アセトニトリルを約80ml加えた。このとき析出した不溶物をろ別し、溶液をすべて集めた。この溶液にアセトニトリルを添加し、200mlの溶液とした。この溶液を高速液体クロマトグラフィーを用いて分析し、環状オリゴマー量を測定した。カラムはμBond asphere 15μ C−18−100A 3.9×190mm(ウオータース社製)を用い、検出器として紫外線242nmの波長を用いた。温度は45℃、流量は1.5ml/minである。
【0028】
(6)塗膜接着性
試料を縦10cm、横10cm、厚み3mmの金型を用いて、260℃に加熱したホットプレスにより、平板状に成形した(溶融時間5分、成形時間5分、70℃冷却時間30分)。この成形体を100℃の温風乾燥機で48時間加熱処理した後、20℃、50%RHの条件下で24時間保持した。これにクリアコート剤(オリジン電気(株)製、プラネットPH−4)を塗工し、120℃で乾燥して20℃、50%RHの条件下で24時間保持した。この塗膜部にカミソリの刃で、1mm間隔で10個×10個の碁盤目状の切れ込みを入れた上からセロハンテープを貼り付けて一気に剥がしたときに剥離せずに残った個数を数えた。
【0029】
【実施例1】
テレフタル酸ジメチル3900g(20.1モル)、1,3−プロパンジオール3420g(45モル)、チタンテトラブトキシド2.34gを板状の撹拌羽根を備えた10Lのオートクレーブに仕込み、220℃でメタノールを留去しながらエステル交換反応を行った。エステル交換反応率は95%であった。エステル交換反応終了後、次いで触媒としてチタンテトラブトキシド1.56g、熱安定剤としてトリメチルホスフェート1.95gを添加し、30分撹拌後、1,3−プロパンジオールを留去しながら0.2torrの真空度で260℃、4時間重縮合反応を行った。ここでオートクレーブのサンプリング口から約2gのポリマーをサンプリングし、次いでフェニルホスホン酸4.0gをオートクレーブ内に添加し、さらに0.2torrの真空度で260℃、30分間重縮合反応を継続した。反応後、得られたポリマーを反応釜底部からロープ状に押出し、切断してペレットを得た。得られたペレットは極限粘度0.82dl/gであり、グラム原子比(P/Ti)は2.61であり、環状ダイマー含有率は2.62%であった。また途中サンプリングしたポリマーの極限粘度は0.71dl/gであり、ポリマー1kg当たりの水酸基末端濃度は0.12molであった。
【0030】
得られたペレットの溶融熱安定性を評価したところ、ポリマーの表面は、ほとんど黄変が認められなかった。
また、得られたペレットを粒径300μm以下に粉砕したパウダー2.71gを、窒素雰囲気下、260℃に温度調節された内径が10cmであり、蓋部が流水によって冷却された円筒状のオートクレーブの底部に均等に敷きつめて溶融した後、直ちに真空度を0.2Torrとして、30分間かけて環状ダイマーを強制的に昇華させた。処理後、オートクレーブの蓋部に析出した環状ダイマーを回収して秤量したところ62mgであった。一方、処理後のポリマーの環状ダイマー含有率は0.32%に低減していた。
また、得られたペレットを成形し、塗膜接着性を評価したところ97/100であった。
【0031】
【比較例1】
実施例1と同じ条件で4時間重縮合反応を行いサンプリングした後、フェニルホスホン酸を添加せずにさらに0.2torrの真空度で260℃、30分間重縮合反応を継続した。反応後、得られたポリマーを反応釜底部からロープ状に押出し、切断してペレットを得た。得られたペレットは極限粘度0.84dl/gであり、環状ダイマー含有率は2.64%であった。また途中サンプリングしたポリマーの極限粘度は0.70dl/gであり、ポリマー1kg当たりの水酸基末端濃度は0.12molであった。
得られたペレットの溶融熱安定性を評価したところ、ポリマーの表面には濃褐色の異物の生成が認められた。
【0032】
また、得られたペレットを粒径300μm以下に粉砕したパウダー2.71gを、窒素雰囲気下、260℃に温度調節された内径が10cmであり、蓋部が流水によって冷却された円筒状のオートクレーブの底部に均等に敷きつめて溶融した後、直ちに真空度を0.2Torrとして、30分間かけて環状ダイマーを強制的に昇華させた。処理後、オートクレーブの蓋部に析出した環状ダイマーを回収して秤量したところ202mgであった。一方、処理後のポリマーの環状ダイマー含有率は1.96%に低減していた。
また、得られたペレットを成形し、塗膜接着性を評価したところ66/100であり、剥離部を光学顕微鏡観察したところ、部分的に針状結晶の析出が認められた。
【0033】
【実施例2】
実施例1と同じ条件で2時間重縮合反応を行いサンプリングし、次いでフェニルホスホン酸4.0gをオートクレーブ内に添加し、さらに0.2torrの真空度で260℃、2時間重縮合反応を継続した。反応後、得られたポリマーを反応釜底部からロープ状に押出し、切断してペレットを得た。得られたペレットは極限粘度0.78dl/gであり、グラム原子比(P/Ti)は2.59であり、環状ダイマー含有率は2.52%であった。また途中サンプリングしたポリマーの極限粘度は0.52dl/gであり、ポリマー1kg当たりの水酸基末端濃度は0.18molであった。
得られたペレットの溶融熱安定性を評価したところ、ポリマーの表面は、ほとんど黄変が認められなかった。
【0034】
また、得られたペレットを粒径300μm以下に粉砕したパウダー2.71gを、窒素雰囲気下、260℃に温度調節された内径が10cmであり、蓋部が流水によって冷却された円筒状のオートクレーブの底部に均等に敷きつめて溶融した後、直ちに真空度を0.2Torrとして、30分間かけて環状ダイマーを強制的に昇華させた。処理後、オートクレーブの蓋部に析出した環状ダイマーを回収して秤量したところ61mgであった。一方、処理後のポリマーの環状ダイマー含有率は0.35%に低減していた。
また、得られたペレットを成形し、塗膜接着性を評価したところ96/100であった。
【0035】
【比較例2】
実施例1と同じ条件で2時間重縮合反応を行いサンプリングした後、フェニルホスホン酸を添加せずに、さらに0.2torrの真空度で260℃、2時間重縮合反応を継続した。反応後、得られたポリマーを反応釜底部からロープ状に押出し、切断してペレットを得た。得られたペレットは極限粘度0.85dl/gであり、環状ダイマー含有率は2.62%であった。また途中サンプリングしたポリマーの極限粘度は0.51dl/gであり、ポリマー1kg当たりの水酸基末端濃度は0.18molであった。
得られたペレットの溶融熱安定性を評価したところ、ポリマーの表面には褐色の異物の生成が認められた。
【0036】
また、得られたペレットを粒径300μm以下に粉砕したパウダー2.71gを、窒素雰囲気下、260℃に温度調節された内径が10cmであり、蓋部が流水によって冷却された円筒状のオートクレーブの底部に均等に敷きつめて溶融した後、直ちに真空度を0.2Torrとして、30分間かけて環状ダイマーを強制的に昇華させた。処理後、オートクレーブの蓋部に析出した環状ダイマーを回収して秤量したところ210mgであった。一方、処理後のポリマーの環状ダイマー含有率は1.88%に低減していた。
また、得られたペレットを成形し、塗膜接着性を評価したところ69/100であった。
【0037】
【比較例3】
実施例1と同じ条件で1時間重縮合反応を行いサンプリングし、次いでフェニルホスホン酸4.0gをオートクレーブ内に添加し、さらに継続の重縮合反応を0.2torrの真空度で260℃で、反応度の参考として撹拌羽根に取り付けたトルクメーターの読み取り値が上昇しないため、6時間まで延長して実施した。反応後、得られたポリマーを反応釜底部からロープ状に押出し、切断してペレットを得た。得られたペレットは極限粘度0.48dl/gであり、グラム原子比(P/Ti)は2.58であり、環状ダイマー含有率は2.98%であった。また途中サンプリングしたポリマーの極限粘度は0.21dl/gであり、ポリマー1kg当たりの水酸基末端濃度は0.36molであった。
得られたペレットの溶融熱安定性を評価したところ、ポリマーの表面にはわずかな黄変が認められた。
【0038】
また、得られたペレットを粒径300μm以下に粉砕したパウダー2.71gを、窒素雰囲気下、260℃に温度調節された内径が10cmであり、蓋部が流水によって冷却された円筒状のオートクレーブの底部に均等に敷きつめて溶融した後、直ちに真空度を0.2Torrとして、30分間かけて環状ダイマーを強制的に昇華させた。処理後、オートクレーブの蓋部に析出した環状ダイマーを回収して秤量したところ269mgであった。一方、処理後のポリマーの環状ダイマー含有率は2.18%に低減していた。
また、得られたペレットを成形し、塗膜接着性を評価したところ43/100であった。
【0039】
【実施例3】
実施例1と同じ条件で4.5時間重縮合反応を行いサンプリングし、次いでフェニルホスホン酸4.0gをオートクレーブ内に添加し、さらに0.2torrの真空度で260℃、30分間重縮合反応を継続した。反応後、得られたポリマーを反応釜底部からロープ状に押出し、切断してペレットを得た。得られたペレットは極限粘度1.00dl/gであり、グラム原子比(P/Ti)は2.60であり、環状ダイマー含有率は2.61%であった。また途中サンプリングしたポリマーの極限粘度は0.86dl/gであり、ポリマー1kg当たりの水酸基末端濃度は0.03molであった。
得られたペレットの溶融熱安定性を評価したところ、ポリマーの表面は、ほとんど黄変が認められなかった。
【0040】
また、得られたペレットを粒径300μm以下に粉砕したパウダー2.71gを、窒素雰囲気下、260℃に温度調節された内径が10cmであり、蓋部が流水によって冷却された円筒状のオートクレーブの底部に均等に敷きつめて溶融した後、直ちに真空度を0.2Torrとして、30分間かけて環状ダイマーを強制的に昇華させた。処理後、オートクレーブの蓋部に析出した環状ダイマーを回収して秤量したところ61mgであった。一方、処理後のポリマーの環状ダイマー含有率は0.29%に低減していた。
また、得られたペレットを成形し、塗膜接着性を評価したところ98/100であった。
【0041】
【比較例4】
実施例1と同じ条件で5時間重縮合反応を行いサンプリングし、次いでフェニルホスホン酸4.0gをオートクレーブ内に添加し、さらに0.2torrの真空度で260℃、30分間重縮合反応を継続した。反応後、得られたポリマーを反応釜底部からロープ状に押出し、切断してペレットを得た。得られたペレットは極限粘度1.10dl/gであり、グラム原子比(P/Ti)は2.60であり、環状ダイマー含有率は2.62%であった。また途中サンプリングしたポリマーの極限粘度は0.93dl/gであり、ポリマー1kg当たりの水酸基末端濃度は0.01molであった。
得られたペレットの溶融熱安定性を評価したところ、ポリマーの表面には褐色の異物の生成が認められた。
【0042】
また、得られたペレットを粒径300μm以下に粉砕したパウダー2.71gを、窒素雰囲気下、260℃に温度調節された内径が10cmであり、蓋部が流水によって冷却された円筒状のオートクレーブの底部に均等に敷きつめて溶融した後、直ちに真空度を0.2Torrとして、30分間かけて環状ダイマーを強制的に昇華させた。処理後、オートクレーブの蓋部に析出した環状ダイマーを回収して秤量したところ219mgであった。一方、処理後のポリマーの環状ダイマー含有率は1.78%に低減していた。
また、得られたペレットを成形し、塗膜接着性を評価したところ69/100であった。
【0043】
【実施例4】
比較例1で得られた極限粘度が0.84dl/gであり、環状ダイマー含有率が2.64%であるポリマーにフェニルホスホン酸を0.20重量%添着混合した。これを、スクリュー径が30mmφ、L/D=50.9の、2つの減圧ゾーンを設けたベント付き二軸押出機を用いて、スクリュー回転数100rpm、樹脂温度260℃、2つの減圧ゾーンの真空度をそれぞれ30torrとして、5kg/hrのフィード量でロープ状に押出し、切断してペレットを得た。ペレットの極限粘度は0.82dl/gであり、グラム原子比(P/Ti)は3.22であり、環状ダイマー含有率は2.42%であった。
得られたペレットの溶融熱安定性を評価したところ、ポリマーの表面は、ほとんど黄変が認められなかった。
【0044】
また、得られたペレットを粒径300μm以下に粉砕したパウダー2.71gを、窒素雰囲気下、260℃に温度調節された内径が10cmであり、蓋部が流水によって冷却された円筒状のオートクレーブの底部に均等に敷きつめて溶融した後、直ちに真空度を0.2Torrとして、30分間かけて環状ダイマーを強制的に昇華させた。処理後、オートクレーブの蓋部に析出した環状ダイマーを回収して秤量したところ60mgであった。一方、処理後のポリマーの環状ダイマー含有率は0.34%に低減していた。
また、得られたペレットを成形し、塗膜接着性を評価したところ97/100であった。
【0045】
【実施例5】
フェニルホスホン酸の添加量を10gに変更した以外、実施例1と同じ方法でポリマーの溶融熱安定性及び環状ダイマーの析出挙動を評価した。得られたペレットは極限粘度0.78dl/gであり、グラム原子比(P/Ti)は6.51であり、環状ダイマー含有率は2.58%であった。
得られたペレットの溶融熱安定性を評価したところ、ポリマーの表面は、ほとんど黄変が認められなかった。
また、得られたペレットを粒径300μm以下に粉砕したパウダー2.71gを、窒素雰囲気下、260℃に温度調節された内径が10cmであり、蓋部が流水によって冷却された円筒状のオートクレーブの底部に均等に敷きつめて溶融した後、直ちに真空度を0.2Torrとして、30分間かけて環状ダイマーを強制的に昇華させた。処理後、オートクレーブの蓋部に析出した環状ダイマーを回収して秤量したところ61mgであった。一方、処理後のポリマーの環状ダイマー含有率は0.32%に低減していた。
また、得られたペレットを成形し、塗膜接着性を評価したところ99/100であった。
【0046】
【実施例6】
フェニルホスホン酸の添加量を1gに変更した以外、実施例1と同じ方法でポリマーの溶融熱安定性及び環状ダイマーの析出挙動を評価した。得られたペレットは極限粘度0.84dl/gであり、グラム原子比(P/Ti)は0.65であり、環状ダイマー含有率は2.62%であった。
得られたペレットの溶融熱安定性を評価したところ、ポリマーの表面は、ほとんど黄変が認められなかった。
また、得られたペレットを粒径300μm以下に粉砕したパウダー2.71gを、窒素雰囲気下、260℃に温度調節された内径が10cmであり、蓋部が流水によって冷却された円筒状のオートクレーブの底部に均等に敷きつめて溶融した後、直ちに真空度を0.2Torrとして、30分間かけて環状ダイマーを強制的に昇華させた。処理後、オートクレーブの蓋部に析出した環状ダイマーを回収して秤量したところ62mgであった。一方、処理後のポリマーの環状ダイマー含有率は0.33%に低減していた。
また、得られたペレットを成形し、塗膜接着性を評価したところ95/100であった。
【0047】
【比較例5】
フェニルホスホン酸の添加量を0.13gに変更した以外、実施例1と同じ方法でポリマーの溶融熱安定性及び環状ダイマーの析出挙動を評価した。得られたペレットは極限粘度0.84dl/gであり、グラム原子比(P/Ti)は0.08であり、環状ダイマー含有率は2.64%であった。
得られたペレットの溶融熱安定性を評価したところ、ポリマーの表面には濃褐色の異物の生成が認められた。
また、得られたペレットを粒径300μm以下に粉砕したパウダー2.71gを、窒素雰囲気下、260℃に温度調節された内径が10cmであり、蓋部が流水によって冷却された円筒状のオートクレーブの底部に均等に敷きつめて溶融した後、直ちに真空度を0.2Torrとして、30分間かけて環状ダイマーを強制的に昇華させた。処理後、オートクレーブの蓋部に析出した環状ダイマーを回収して秤量したところ199mgであった。一方、処理後のポリマーの環状ダイマー含有率は1.81%に低減していた。
また、得られたペレットを成形し、塗膜接着性を評価したところ68/100であった。
【0048】
【実施例7】
実施例1で得られたペレットを205℃、窒素気流下で30時間固相重合を行って、極限粘度0.92dl/g、グラム原子比(P/Ti)は2.60であり、環状ダイマー含有率1.12%のペレットを得た。
得られたペレットの溶融熱安定性を評価したところ、ポリマーの表面は、ほとんど黄変が認められなかった。
また、得られたペレットを粒径300μm以下に粉砕したパウダー2.71gを、窒素雰囲気下、260℃に温度調節された内径が10cmであり、蓋部が流水によって冷却された円筒状のオートクレーブの底部に均等に敷きつめて溶融した後、直ちに真空度を0.2Torrとして、30分間かけて環状ダイマーを強制的に昇華させた。処理後、オートクレーブの蓋部に析出した環状ダイマーを回収して秤量したところ21mgであった。一方、処理後のポリマーの環状ダイマー含有率は0.31%に低減していた。
また、得られたペレットを成形し、塗膜接着性を評価したところ97/100であった。
【0049】
【実施例8】
フェニルホスホン酸4.0gの代わりに、ジフェニルホスホン酸を4.0g添加した以外、実施例1と同じ方法で重合を行った。反応後、得られたポリマーを反応釜底部からロープ状に押出し、切断してペレットを得た。得られたペレットは極限粘度0.83dl/gであり、グラム原子比(P/Ti)は1.87であり、環状ダイマー含有率は2.63%であった。また途中サンプリングしたポリマーの極限粘度は0.71dl/gであり、ポリマー1kg当たりの水酸基末端濃度は0.11molであった。
得られたペレットの溶融熱安定性を評価したところ、ポリマーの表面は、ほとんど黄変が認められなかった。
また、得られたペレットを粒径300μm以下に粉砕したパウダー2.71gを、窒素雰囲気下、260℃に温度調節された内径が10cmであり、蓋部が流水によって冷却された円筒状のオートクレーブの底部に均等に敷きつめて溶融した後、直ちに真空度を0.2Torrとして、30分間かけて環状ダイマーを強制的に昇華させた。処理後、オートクレーブの蓋部に析出した環状ダイマーを回収して秤量したところ65mgであった。一方、処理後のポリマーの環状ダイマー含有率は0.30%に低減していた。
また、得られたペレットを成形し、塗膜接着性を評価したところ98/100であった。
【0050】
【実施例9】
チタンテトラブトキシド2.34g及び1.56gの代わりに、2−エチルヘキサン酸スズをそれぞれ2.78g及び1.85g添加した以外、実施例1と同じ方法で重合を行った。反応後、得られたポリマーを反応釜底部からロープ状に押出し、切断してペレットを得た。得られたペレットは極限粘度0.89dl/gであり、グラム原子比(P/Sn)は2.62であり、環状ダイマー含有率は2.43%であった。また途中サンプリングしたポリマーの極限粘度は0.78dl/gであり、ポリマー1kg当たりの水酸基末端濃度は0.10molであった。
得られたペレットの溶融熱安定性を評価したところ、ポリマーの表面は、ほとんど黄変が認められなかった。
【0051】
また、得られたペレットを粒径300μm以下に粉砕したパウダー2.71gを、窒素雰囲気下、260℃に温度調節された内径が10cmであり、蓋部が流水によって冷却された円筒状のオートクレーブの底部に均等に敷きつめて溶融した後、直ちに真空度を0.2Torrとして、30分間かけて環状ダイマーを強制的に昇華させた。処理後、オートクレーブの蓋部に析出した環状ダイマーを回収して秤量したところ58mgであった。一方、処理後のポリマーの環状ダイマー含有率は0.30%に低減していた。
また、得られたペレットを成形し、塗膜接着性を評価したところ98/100であった。
【0052】
【発明の効果】
本発明は、溶融熱安定性に優れるとともに、溶融滞留時の環状ダイマーの生成及び析出が少なく成形性に優れる上、その成形体が塗料、糊剤の塗布性や、接着性にも優れていることを特徴とするポリトリメチレンテレフタレート樹脂組成物を提供する。

Claims (2)

  1. 金属化合物触媒の存在下製造された、繰り返し単位の80重量%以上がトリメチレンテレフタレート単位からなり、ポリマー1kg当たりの水酸基末端濃度が0.02〜0.19molの範囲である、極限粘度が0.5dl/g以上のポリトリメチレンテレフタレート樹脂に、下記一般式(I)で表されるリン化合物を、金属化合物触媒に対してリン原子と該金属原子Mとのグラム原子比(P/M)が0.1〜10の範囲であるように溶融混合して得られるポリトリメチレンテレフタレート樹脂組成物。
    (R)PO(OH)3−m    (I)
    (Rはフェニル基、またはカルボキシル基を有するフェニル基であり、mは1〜2である)
  2. 金属化合物触媒の存在下製造された、繰り返し単位の80重量%以上がトリメチレンテレフタレート単位からなる極限粘度が0.5dl/g以上のポリトリメチレンテレフタレート樹脂組成物であって、重縮合反応の進行に伴う水酸基末端濃度の減少により、ポリマー1kg当たりの水酸基末端濃度が0.19mol以下から0.02mol以上の範囲にある任意の段階で、重合装置中に一般式(I)で表されるリン化合物を、金属化合物触媒に対してリン原子と金属原子とのグラム原子比(P/M)が0.1〜10の範囲であるように添加し含有させることを特徴とするポリトリメチレンテレフタレート樹脂組成物の製造方法。
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