JP2004123710A - ホスミドシン誘導体及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ヌクレオチド系抗生物質ホスミドシン誘導体及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ホスミドシンは、ストレプトミセス属の放線菌RK−16株が生産する抗生物質であり、様々な野菜や果物の灰色カビ病の原因菌であるBotrytis cinereaの胞子形成を特異的に阻害する作用をもつものとして単離された(Uramoto, M. et al., J. Antibiot., 44, 375, 1991)。その後、ホスミドシンは下記の構造をもつヌクレオチド系の抗生物質であることが明らかにされた(Phillips, D.R. et al., J.Org. Chem., 58, 854. 1993)。ホスミドシンの構造上の特徴は、ヌクレオチド成分として8−オキソアデノシン−5’−モノリン酸を含むこと、及びアミノ酸成分としてプロリンを含むことであり、さらに各成分がN−アシルリン酸アミド結合で連結されていることにある。
【0003】
【化4】
【0004】
ホスミドシンの生物作用については、温度感受性の癌遺伝子v−srcによって形質転換され、温度変化によって形態が変化したラット腎細胞に対してホスミドシンが形態復帰活性をもつこと、及びホスミドシンが細胞周期の進行をG1期で停止させることが報告され、ホスミドシンが抗癌作用を有することが示唆されている(Matsuura, N. et al., J. Antibiot., 49, 361, 1996)。現在用いられている抗癌剤を細胞周期上の作用点からみると、S期に作用するDNA合成阻害剤又はM期に作用する細胞分裂阻害剤等、活発に増殖している細胞に対して作用するものが多いが、近年、細胞周期のG1期を新たな抗癌剤のターゲットとする動きが盛んであり、G1期で細胞周期を阻害するホスミドシンやその類縁体は新たな抗癌剤としての利用が期待できる(実験医学 増刊「癌と細胞周期 細胞癌化へのプロセス」田矢洋一編集, 2章p.71「細胞周期をターゲットにした抗癌剤」長田裕之)。
【0005】
さらに、ヒト肺繊維芽細胞WI−38をホスミドシンで処理したところ、(1)細胞周期がG1期で停止すること; (2)ホスミドシン処理後の細胞ではホスミドシンの濃度依存的に細胞周期調節因子であるRBタンパク質のリン酸化が阻害されていること; (3)ホスミドシン処理細胞では血清刺激してもサイクリンD1の発現量が増加しないこと; 及び(4)これらのサイクリンD1の発現量減少とRBタンパク質リン酸化が同調していることが示され、ホスミドシンはサイクリンD1の発現量を抑制することでRBタンパク質のリン酸化を阻害することが明らかになった(Kakeya, H. et al., Cancer Res., 58, 704, 1998)。
【0006】
ホスミドシン誘導体の製造方法に関しては、森口らによりホスミドシンの脱メチル体及びそのN6−アセチル体の合成が報告されている(Moriguchi, T. et al., Tetrahedron Lett., 39, 3725, 1998; Moriguchi, T. et al., J. Org. Chem., 64, 8229, 2000: 上記論文ではホスミドシンの脱メチル体を「ホスミドシンB」と呼んでいるが、この物質を最初に報告した長田らの命名に従って本明細書ではこの物質を「ホスミドシンA」と呼ぶ)。この合成は、森口らのアミノアシルアデニレートアナログ合成に関連して達成された(Moriguchi, T. et al., Tetrahedron Lett., 41, 5881, 2000)。また、ホスミドシンA及びN6−アセチル体は8.8−190μMの範囲で各細胞株に対して増殖抑制効果を示し、胃ガン、大腸ガン由来の細胞に対しては他組織由来のがん細胞よりも若干高い増殖抑制効果を示すが、全体としては由来組織によらない特徴的な細胞増殖抑制効果を発揮することが明らかにされた。
【0007】
さらに、ホスミドシンの合成も森口らによって達成され、ホスミドシンはホスミドシンAよりも約10倍活性が高いことが明らかにされた(Sekine, M. et al., J. Org. Synth. Chem. Jpn., 59, 1109, 2000)。もっとも、この合成法は収率が低く、ホスミドシンを大量かつ安定に供給することができないという問題があった。またホスミドシンのリン酸部位のメチルエステルは化学的安定性に乏しく、水溶液中でメチルエステルが分解しやすいという問題を有していることから、高活性で、かつ安定性に優れたホスミドシン誘導体を提供することが望まれていた。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、ホスミドシン及びその誘導体を効率的に製造するための方法を提供することにある。また、本発明の別の課題は、ホスミドシンの誘導体であって、がん細胞に対して優れた細胞増殖抑制効果を有しており、かつ化学的に安定な誘導体を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記の課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、8−オキソアデノシン誘導体とプロリンアミドからN−ホスフィチル化により合成したアミダイト試薬とを反応させ、続いて生成物の酸化を行うことにより、ホスミドシン又はその誘導体の製造用中間体として有用な縮合生成物を極めて効率的に製造できることを見出した。また、上記の反応において酸化に替えて硫化を行うことにより、ホスミドシン誘導体の製造用中間体として有用なホスホロチオエート化合物を得ることができることも見出した。さらに、本発明者らは、これらの製造用中間体からホスミドシンのアルキル置換体及びホスホロチオエート誘導体を製造して、その細胞増殖抑制効果及び物理化学的性状を検討したところ、これらの化合物がホスミドシンと同等の生物活性を有しており、しかもアルキルエステルの分解が全く認めらず、医薬として極めて望ましい性質を有していることを見出した。本発明は上記の知見を基にして完成されたものである。
【0010】
すなわち、本発明は、下記の一般式(I):
【化5】
(式中、R1はC1−8アルキル基を示し;R2は水素原子又は窒素原子の保護基を示し;R3及びR4はそれぞれ独立に水素原子又は水酸基の保護基を示すが、R3及びR4は互いに結合してそれらが結合する2個の酸素原子とともに環を形成してもよく;R5は水素原子又は窒素原子の保護基を示し;XはO又はSを示す。ただし、R1がメチル基であり、かつXがOである場合を除く。)で表される化合物又はその塩を提供するものである。
【0011】
この発明の好ましい態様によれば、R1がC2−8アルキル基であり、R2が水素原子であり、R3及びR4が共に水素原子であり、R5が水素原子であり、XがOである上記化合物又はその塩;及びR1がC1−8アルキル基であり、R2が水素原子であり、R3及びR4が共に水素原子であり、R5が水素原子であり、XがSである上記化合物又はその塩が提供される。
【0012】
別の観点からは、本発明により、化合物IA(上記一般式(I)で表される化合物において、R1がC2−8アルキル基であり、R2が水素原子であり、R3及びR4が共に水素原子であり、R5が水素原子であり、かつXがOであるか、あるいはR1がC1−8アルキル基であり、R2が水素原子であり、R3及びR4が共に水素原子であり、R5が水素原子であり、かつXがSである化合物を意味する)又は生理学的に許容されるその塩を有効成分として含む医薬が提供される。この医薬は抗腫瘍剤として各種の固形癌又は非固形癌の治療に用いることができる。
【0013】
さらに別の観点からは、本発明により、上記の医薬の製造のための上記化合物IA又は生理学的に許容されるその塩の使用、及び、癌の治療方法であって、上記化合物IA又は生理学的に許容されるその塩の治療有効量をヒトを含む哺乳類動物に投与する工程を含む方法が提供される。また、本発明により、上記化合物IA又は生理学的に許容されるその塩を含む癌細胞増殖抑制剤;上記化合物IA又は生理学的に許容されるその塩を含むG1期細胞周期停止剤;上記化合物IA又は生理学的に許容されるその塩を含むRBタンパク質のリン酸化阻害剤が提供される。
【0014】
また、ホスミドシン若しくは上記化合物IA又はそれらの塩の製造のために有用な製造用中間体として、化合物IB(上記一般式(I)で表される化合物において、R1、R2、R3、R4、R5、及びXが上記と同義であり、ただし、R1がC2−8アルキル基であり、R2が水素原子であり、R3及びR4が共に水素原子であり、R5が水素原子であり、かつXがOである場合、及びR1がC1−8アルキル基であり、R2が水素原子であり、R3及びR4が共に水素原子であり、R5が水素原子であり、かつXがSである場合を除く化合物を意味する)又はその塩が提供される。
【0015】
さらに、本発明により、上記化合物IBの製造方法であって、下記の一般式(II):
【化6】
(式中、R12は窒素原子の保護基を示し;R13及びR14はそれぞれ独立に水酸基の保護基を示すが、R13及びR14は互いに結合してそれらが結合する2個の酸素原子とともに環を形成してもよい)で表される化合物と、下記の一般式(III):
【化7】
(式中、R11はC1−8アルキル基を示し;R15は窒素原子の保護基を示し;R16及びR17はそれぞれ独立にC1−8アルキル基を示す)で表される化合物とを反応させ、得られた反応物を酸化又は硫化する工程を含む方法が本発明により提供される。この方法の好ましい態様によれば、上記の一般式(II)で表される化合物と上記の一般式(III)で表される化合物との反応を5−メルカプト−1−メチルテトラゾールの存在下に行うことができる。
【0016】
また、本発明により、ホスミドシン若しくは上記化合物IA又はそれらの塩の製造方法であって、上記化合物IB又はその塩を脱保護する工程を含む方法;及びホスミドシン若しくは上記化合物IA又はそれらの塩の製造方法であって、下記の工程:(a)上記の一般式(II)で表される化合物と上記の一般式(III)で表される化合物とを反応させ、得られた反応物を酸化又は硫化して化合物IBを得る工程、及び(b)上記工程(a)で得られた化合物IBを脱保護する工程を含む方法が提供される。上記一般式(III)で表される化合物は本発明により初めて提供された新規化合物であり、ホスミドシン若しくは上記化合物IA又はそれらの塩の製造用中間体として有用である。
【0017】
さらに、本発明により、ホスミドシン若しくは上記化合物IA又はそれらの塩の製造のための上記化合物IB又はその塩の使用;ホスミドシン若しくは上記化合物IA又はそれらの塩の製造のための上記一般式(II)で表される化合物の使用;ホスミドシン若しくは上記化合物IA又はそれらの塩の製造のための上記一般式(III)で表される化合物の使用;上記化合物IB又はその塩の製造のための上記一般式(II)で表される化合物の使用;及び上記化合物IB又はその塩の製造のための上記一般式(III)で表される化合物の使用が提供される。
【0018】
さらにまた、本発明により、ホスミドシン若しくは上記化合物IA又はそれらの塩の製造用中間体である上記化合物IB又はその塩;ホスミドシン若しくは上記化合物IA又はそれらの塩の製造用中間体である上記一般式(II)で表される化合物;ホスミドシン若しくは上記化合物IA又はそれらの塩の製造用中間体である上記一般式(III)で表される化合物;上記化合物IB又はその塩の製造用中間体である上記一般式(II)で表される化合物;及び上記化合物IB又はその塩の製造用中間体である上記一般式(III)で表される化合物が本発明により提供される。
【0019】
【発明の実施の形態】
本明細書において、アルキル基とは直鎖状、分枝鎖状、環状、又はそれらの組み合わせからなるアルキル基を意味している。アルキル部分を有する他の置換基(例えばアルコキシ基やアラルキル基等)のアルキル部分についても同様である。R1が示すC1−8アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、2−メチルブチル基、1−メチルブチル基、ネオペンチル基、1,2−ジメチルプロピル基、1−エチルプロピル基、n−ヘキシル基、4−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、1−メチルペンチル、3,3−ジメチルブチル基、2,2−ジメチルブチル基、1,1−ジメチルブチル基、1,2−ジメチルブチル基、1,3−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、2−エチルブチル基、1−エチルブチル基、1−エチル−1−メチルプロピル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロプロピルメチル基、シクロブチルメチル基、シクロペンチルメチル基、シクロプロピルエチル基等を例示することができるが、これらに限定されることはない。R11が示すアルキル基についても同様である。
【0020】
R2が示す窒素原子の保護基の種類は特に限定されず、上記一般式(II)で表される化合物と上記一般式(III)で表される化合物との反応において不活性であり、その反応の後に他の官能基に影響を与えずに脱保護できるものであれば、いかなる保護基を用いてもよい。窒素原子の保護基については、例えば、「プロテクティブ・グループス・イン・オーガニック・シンセシス」(Protective Groups in Organic Syntheses, T.W. Green and P.G.M. Wuts, 3rd Ed., 1999, John Wiley& Sons)等に記載された保護基から当業者が適宜選択することが可能である。R2が示す窒素原子の保護基としては、例えば、塩基性条件で安定であり、かつ酸性条件で容易に脱保護可能な保護基を選択することが好ましいが、より具体的には、tert−ブトキシカルボニル(BOC)等の保護基を選択することができる。R12が示す保護基についても同様である。
【0021】
R3及びR4が示す水酸基の保護基の種類は特に限定されず、上記一般式(II)で表される化合物と上記一般式(III)で表される化合物との反応において不活性であり、その反応の後に他の官能基に影響を与えずに脱保護できるものであれば、いかなる保護基を用いてもよい。水酸基の保護基についても、例えば、上記の「プロテクティブ・グループス・イン・オーガニック・シンセシス」等に記載された保護基から当業者が適宜選択することが可能である。R3及びR4が示す水酸基の保護基としては、例えば、塩基性条件で安定であり、かつ酸性条件で容易に脱保護可能な保護基を選択することが好ましいが、例えば、R3及びR4が互いに結合したイソプロピリデン基等を挙げることができる。R13及びR14が示す保護基についても同様である。
【0022】
R5が示す窒素原子の保護基の種類は特に限定されず、上記一般式(II)で表される化合物と上記一般式(III)で表される化合物との反応において不活性であり、その反応の後に他の官能基に影響を与えずに脱保護できるものであれば、いかなる保護基を用いてもよい。例えば、上記の「プロテクティブ・グループス・イン・オーガニック・シンセシス」等に記載された窒素原子の保護基から当業者が適宜選択することが可能である。R5が示す窒素原子の保護基としては、例えば、塩基性条件で安定であり、かつ酸性条件で容易に脱保護可能な保護基を選択することが好ましいが、より具体的には、トリチル(Tr)等の保護基を選択することができる。R15が示す保護基についても同様である。
【0023】
XはO又はSを示すが、一般式(I)で表される化合物において、R1がメチル基であり、かつXがOである化合物は、一般式(I)で表される新規化合物に係る本発明の範囲には包含されない。上記一般式(I)で表される化合物又はその塩は、水和物又は溶媒和物として存在する場合もあるが、本発明の範囲にはこれらの物質も包含される。また、上記一般式(I)で表される化合物は複数の不斉炭素を有しているが、置換基の種類により、さらに1以上の不斉炭素を有する場合がある。そのような複数の不斉炭素の存在に基づく光学活性体やジアステレオマー等の純粋な形態の立体異性体、あるいは任意の立体異性体の混合物又はラセミ体等は、いずれも本発明の範囲に包含される。なお、本明細書において示される化学式における立体表示は絶対配置を示す。
【0024】
本発明により提供される化合物IAは、上記一般式(I)において、R1がC2−8アルキル基であり、R2が水素原子であり、R3及びR4が共に水素原子であり、R5が水素原子であり、かつXがOであるか、あるいはR1がC1−8アルキル基であり、R2が水素原子であり、R3及びR4が共に水素原子であり、R5が水素原子であり、かつXがSである化合物であり、上記一般式(I)に包含される化合物である。この化合物IA又は生理学的に許容されるその塩は、医薬の有効成分として有用である。上記化合物IAは癌細胞増殖抑制作用を有しており、細胞周期をG1期で停止する作用を有していることから、癌の治療のための医薬の有効成分として有用である。いかなる特定の理論に拘泥するわけではないが、上記化合物IAはサイクリンD1の発現量を抑制する作用を有しており、その結果、細胞周期調節因子であるRBタンパク質のリン酸化を阻害することによってGI期で細胞周期を阻害することができる。
【0025】
本発明により提供される医薬は、化合物IA及び生理学的に許容されるその塩、並びにそれらの水和物及びそれらの溶媒和物からなる群から選ばれる物質の1種又は2種以上を有効成分として含み、抗腫瘍剤として各種の固形癌又は非固形癌の治療に用いることができる。本発明の医薬は、経口的又は非経口的にヒトを含む哺乳類動物に投与することができる。本発明の医薬としては、上記の物質をそのまま投与してもよいが、一般的には、上記の物質の1種又は2種以上と、1種又は2種以上の製剤用添加物とを含む医薬組成物を調製して投与することが望ましい。
【0026】
医薬組成物の形態は特に限定されず、投与経路に応じて適宜の形態を選択することが可能である。経口投与に適する医薬組成物としては、例えば、顆粒剤、細粒剤、散剤、硬カプセル剤、軟カプセル剤、シロップ剤、乳剤、懸濁剤、又は液剤等を挙げることができ、非経口投与に適する医薬組成物としては、例えば、静脈内投与、筋肉内投与、若しくは皮下投与用の注射剤、点滴剤、坐剤、経皮吸収剤、経粘膜吸収剤、点鼻剤、点耳剤、点眼剤、吸入剤等を挙げることができる。粉末の形態の医薬組成物として調製された製剤を用時に溶解して注射剤又は点滴剤として使用してもよい。もっとも、医薬組成物の形態はこれらに限定されることはない。
【0027】
医薬用組成物の製造には、固体又は液体の製剤用添加物を用いることができる。製剤用添加物は有機又は無機のいずれであってもよい。経口用の固形の医薬組成物の製造には、例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、着色剤、又は矯味矯臭剤等を用いることができる。賦形剤としては、例えば、乳糖、蔗糖、白糖、ブドウ糖、コーンスターチ、デンプン、タルク、ソルビット、結晶セルロース、デキストリン、カオリン、炭酸カルシウム、又は二酸化ケイ素等を挙げることができる。結合剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、エチルセルロース、メチルセルロース、アラビアゴム、トラガント、ゼラチン、シェラック、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、クエン酸カルシウム、デキストリン、又はペクチン等を挙げることができる。滑沢剤としては、例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ポリエチレングリコール、シリカ、又は硬化直物油等を挙げることができる。着色剤としては、通常医薬への添加が許可されているものであればいずれも使用することができる。矯味矯臭剤としては、ココア末、ハッカ脳、芳香酸、ハッカ油、龍脳、又は桂皮末等を使用することができる。医薬組成物として錠剤や顆粒剤を調製する場合には、糖衣又はゼラチン衣等の適宜のコーティングを施すことができ、必要に応じて防腐剤や抗酸化剤等を添加することもできる。
【0028】
経口投与のための液体の医薬組成物の製造には、一般的に用いられる不活性な希釈剤、例えば水又は植物油等を用いることができ、例えば、湿潤剤、懸濁補助剤、甘味剤、芳香剤、着色剤、又は保存剤等を配合することができる。液体の医薬組成物を調製した後、ゼラチンのような吸収性物質のカプセル中に充填してもよい。液体の医薬組成物の調製に用いられる溶剤又は懸濁剤としては、例えば、水、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ベンジルアルコール、オレイン酸エチル、又はレシチン等を挙げることができる。坐剤の製造に用いられる基剤としては、例えば、カカオ脂、乳化カカオ脂、ラウリン脂、又はウィテップゾール等を挙げることができる。
【0029】
非経口投与のための医薬組成物として注射剤を調製する場合には、担体として、例えば、水、エチルアルコール、マクロゴール、又はプロピレングリコール、あるいはこれらの混合物等を用いることができ、塩酸、クエン酸、酢酸、リン酸、乳酸、乳酸ナトリウム、硫酸、又は水酸化ナトリウム等のpH調節剤、クエン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、又はリン酸ナトリウム等の緩衝剤、ピロ亜硫酸ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸、チオグリコール酸、又はチオ乳酸等の安定化剤等、食塩、ブドウ糖、マンニトール、又はグリセリン等の等張化剤を添加してもよい。また、溶解補助剤、無痛化剤、又は局所麻酔剤等を使用することもできる。
【0030】
軟膏剤やクリーム剤等の形態の外用の医薬組成物を調製する場合には、基剤、安定剤、湿潤剤、及び保存剤等を用いることができ、常法により有効成分である上記物質を混合して医薬組成物を調製することができる。基剤としては、例えば、白色ワセリン、ポリエチレン、パラフィン、グリセリン、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコン、又はベントナイト等を使用することができる。保存剤としては、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、又はパラオキシ安息香酸プロピル等を使用することができる。貼付剤の形態の医薬組成物を調製する場合には、通常の支持体に上記軟膏、クリーム、ゲル又はペースト等を常法により塗布することができる。支持体としては、綿、スフ、若しくは化学繊維等からなる織布又は不織布、軟質塩化ビニル、ポリエチレン、又はポリウレタン等からなるフイルム、あるいは発泡体シート等を好適に使用できる。
【0031】
本発明の医薬の投与量は特に限定されないが、経口投与の場合には、成人一日あたり有効成分である上記化合物IAの質量として通常10〜1,000mg程度である。この投与量を患者の年令、病態、症状に応じて適宜増減することが好ましい。前記一日量は一日に一回、又は適当な間隔をおいて一日に2〜3回に分けて投与してもよく、あるいは数日おきに間歇投与してもよい。注射剤として用いる場合には、成人一日あたり有効成分である化合物IAの質量として5〜500mg程度である。
【0032】
本発明の別の観点から提供される化合物IBは、上記一般式(I)において、R1、R2、R3、R4、R5、及びXが上記と同義であり、ただし、R1がC2−8アルキル基であり、R2が水素原子であり、R3及びR4が共に水素原子であり、R5が水素原子であり、かつXがOである場合、及びR1がC1−8アルキル基であり、R2が水素原子であり、R3及びR4が共に水素原子であり、R5が水素原子であり、かつXがSである場合を除く化合物であり、上記一般式(I)に包含される。この化合物IB又はその塩は、ホスミドシン(上記一般式(I)において、R1がメチル基であり、R2が水素原子であり、R3及びR4が共に水素原子であり、R5が水素原子であり、XがOの場合に相当する化合物である)又は上記化合物IAの製造のための製造用中間体として有用である。
【0033】
化合物IBは、本発明により提供される製造方法に従って、下記のスキームに示す第一工程により製造することができる。また、ホスミドシン及び上記化合物IAは、化合物IBより脱保護を行う第二工程により製造することができる。
【0034】
【化8】
【0035】
第一工程では、上記一般式(II)で表される化合物と上記一般式(III)で表される化合物とを反応させ、得られた反応物を酸化又は硫化する工程を含む。上記の酸化工程によりXがOの化合物を製造することができ、硫化工程によりXがSの化合物を製造することができる。記一般式(II)で表される化合物と上記一般式(III)で表される化合物との反応は、例えば5−メルカプト−1−メチルテトラゾールの存在下に行うことができる(Filippov, D. et al., Tetrahedron Lett., 39,4891, 1998)。酸化工程は、例えばtert−ブチルハイドロパーオキサイドなどの酸化剤を好適に用いることができ、硫化にはN,N,N’,N’−テトラエチルチウラムジスルフィドやS8を用いることができる。
【0036】
もっとも、酸化及び硫化のための試薬はこれらに限定されることはなく、当業者が通常用いられる酸化剤から適宜選択できることは言うまでもない。例えば、「リエージェンツ・フォー・オーガニック・シンセシス」(Reagents for Organic Synthesis, Vol. 1, 1967 to Vol. 16, 1992, John Wiley & Sons)などの成書に記載された酸化剤及び硫化剤を適宜選択し、保護基の性質に関して「プロテクティブ・グループス・イン・オーガニック・シンセシス」(Protective Groups in Organic Syntheses, T.W. Green and P.G.M. Wuts, 3rd Ed., 1999, John Wiley &Sons)を参照することにより、適宜の反応条件を選択することができる。
【0037】
上記一般式(II)で表される化合物と上記一般式(III)で表される化合物との反応は、通常は溶媒の存在下において無水の環境で行うことができ、0℃から溶媒の還流温度までの範囲の温度、好ましくは室温で行うことができる。反応に用いる溶媒は、反応種に対して充分な溶解性を有し、かつ反応において不活性であれば、特に限定されることはない。例えば、アセトニトリルなどのニトリル系溶媒、塩化メチレンやクロロホルムなどの塩素系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル系溶媒などを用いることができる。反応には、一般式(II)で表される化合物に対して一般式(III)で表される化合物を約1〜10モル程度、好ましくは2〜3モル程度を用いることができる。反応はアルゴンや窒素などの不活性ガス下で行うことが望ましい。
【0038】
酸化反応は、上記一般式(II)で表される化合物と上記一般式(III)で表される化合物との反応が終了した後、反応系に酸化剤を加えて0℃から溶媒の還流温度までの範囲の温度、好ましくは室温で行うことができる。酸化剤として、例えばtert−ブチルハイドロパーオキサイドなどを用いる場合には、上記一般式(II)で表される化合物に対して約5〜20モル程度、好ましくは10モル程度の酸化剤を用いることができる。硫化反応は、上記一般式(II)で表される化合物と上記一般式(III)で表される化合物との反応が終了した後、反応系に硫化剤を加えて0℃から溶媒の還流温度までの範囲の温度、好ましくは室温で行うことができる。硫化剤として例えばN,N,N’,N’−テトラエチルチウラムジスルフィドなどを用いる場合には、上記一般式(II)で表される化合物に対して約1〜10モル程度、好ましくは2〜5モル程度の硫化剤を用いることができる。
【0039】
上記の第一工程の後、得られた化合物IBを脱保護反応に付することにより、ホスミドシン又は化合物IAを製造することができるが、脱保護反応は用いた保護基の種類に応じて適宜の反応条件を選択することにより行われる。脱保護の条件は、例えば、「プロテクティブ・グループス・イン・オーガニック・シンセシス」(Protective Groups in Organic Syntheses, T.W. Green and P.G.M. Wuts, 3rd Ed., 1999, John Wiley & Sons)などの成書を参照することにより、当業者は適宜の条件を選択することが可能である。
【0040】
一般式(II)で表される化合物のうち、R12がtert−ブトキシカルボニル基である化合物は公知であり(Sekine, M. et al., J. Org. Synth. Chem. Jpn., 59, 1109, 2000)、文献記載の方法により容易に入手することができる。R12がtert−ブトキシカルボニル基以外の保護基である化合物については、例えば、「プロテクティブ・グループス・イン・オーガニック・シンセシス」(Protective Groups in Organic Syntheses, T.W. Green and P.G.M. Wuts, 3rd Ed., 1999, John Wiley &Sons)を参照することにより、上記スキーム中の第一工程における反応条件を考慮しつつ適宜の保護基を選択することができ、上記刊行物に記載された方法に従って窒素原子上への保護基導入を行うことができる。
【0041】
一般式(III)で表される化合物は、環構成窒素原子がトリチル基などで保護されたプロリンアミドと一般式(IV):R21O−P[N(R24)(R25)][N(R26)(R27)](式中、R21、R24、R25、R26、及びR27はそれぞれ独立にC1−8アルキル基を示す)で表される化合物とを適当な活性化剤、例えば1H−テトラゾール、N,N−ジイソプロピルアンモニウム 1H−テトラゾリデートなどの酸触媒の存在下で反応させて選択的N−ホスフィチル化を行うことにより容易に製造することができる。一般式(IV)において、R24、R25、R26、及びR27はすべて同一のアルキル基であることが好ましく、より好ましいのはこれらの基がすべてイソプロピル基である場合である。一般式(IV)で表される化合物において適宜のC1−8アルキル基をR21として選択することにより、このアルキル基を有する一般式(III)で表されるアミダイト化合物を製造することができ、このアミダイト化合物を用いることにより、R21として選択されたC1−8アルキル基を有する化合物IB並びに化合物IA及びホスミドシンを製造することができる(これらの化合物におけるR1がR21に対応する)。
【0042】
環構成窒素原子が保護されたプロリンアミドと一般式(IV)で表される化合物との反応は、通常は溶媒の存在下において無水の環境で行うことができ、0℃から溶媒の還流温度までの範囲の温度、好ましくは室温で行うことができる。反応に用いる溶媒は、反応種に対して充分な溶解性を有し、かつ反応において不活性であれば、特に限定されることはない。例えば、塩化メチレンやクロロホルムなどの塩素系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル系溶媒、アセトニトリルなどのニトリル系溶媒などを用いることができる。反応には、環構成窒素原子が保護されたプロリンアミド1モルに対して一般式(IV)で表される化合物を約1〜10モル程度、好ましくは1〜3モル程度及び活性化剤を0.1〜10モル程度用いることができる。反応はアルゴンや窒素などの不活性ガス下で行うことが望ましい。
【0043】
上記の製造方法で生成する製造用中間体及び目的化合物は、有機合成化学の分野で通常用いられる分離精製法、例えば、中和、濾過、抽出、乾燥、濃縮、再結晶、各種クロマトグラフィーなどの手段を用いて単離・精製することができるが、製造用中間体を特に精製することなく次の反応に供することも可能である。例えば、化合物IBはリン原子上に不斉があるためジアステレオマーとして得られるが、例えば、酸化生成物であるホスミドシン誘導体については逆相HPLC操作による異性体分取を行うことによりに、いずれのジアステレオマーについても純粋に分離することができる。この方法については実施例に具体的に示した。
【0044】
製造用中間体及び目的化合物の塩を取得したい場合には、反応系から化合物が塩の形態で得られる場合にはそのまま精製すればよく、化合物が遊離形態で得られる場合には、適当な有機溶媒に溶解又は懸濁させ、酸又は塩基を加える方法により塩を形成させればよい。また、塩の形態で得られた化合物を遊離形態の化合物に変換した後、適宜の塩の形態に変換することも可能である。なお、上記の各工程の反応に関して、以下の実施例にはさらに具体的な説明が開示されているので、当業者は、上記の一般的な説明及び実施例に記載された具体的な説明を参照しつつ、反応条件、出発原料、及び反応試薬などを適宜選択し、必要に応じてこれらの方法に適宜の修飾ないし改変を加えることにより、所望の化合物を容易に製造することができる。
【0045】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は下記の実施例に限定されることはない。
実施例1
本発明の化合物を以下のスキームに従って合成した。以下、化合物番号はスキーム中の化合物番号に対応させてある。
【化9】
【0046】
化合物2:
8−オキソアデノシン(1)(5.66 g, 20 mmol)をアセトン(200 mL)中に懸濁させ、アセトンジメチルアセタール(49.2 ml, 400 mmol)及びp−トルエンスルホン酸1水和物(7.61 g, 40 mmol)を加え4時間室温で撹拌した。その後飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(200 ml)を加え、系内を中和した後、溶媒を減圧下留去した。つぎにクロロホルム−イソプロピルアルコール(3:1, v/v)及び飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で抽出し、集めた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧下留去した。得られた残渣をメタノール−トリエチルアミンの混合溶媒(9:1 v/v, 200 mL)に溶解し、二炭酸−ジ−tert−ブチル(5.97 mL, 26 mmol)を加え室温で2時間撹拌した。その後反応系をクロロホルムで希釈し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で有機層を3回洗浄した。回収した有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した後に、溶媒を減圧下留去して、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム−メタノール=100:0−97:3)で精製し、白色フォーム状物質として目的物(2)(6.14 g, 73%)を得た。
1H−NMR (270 MHz, CDCl3) δ 1.29 (3H, s, CH3 of isop), 1.49 (3H, s, CH3 of isop, 1.56 (9H, s, (CH3)3C of Boc), 3.46−3.58 (2H, m, 5’−H), 4.04−4.09(1H, m, 4’−H), 4.87−4.91 (2H, m, 3’−H, 5’−OH), 5.35−5.38 (1H, dd, 2’−H), 5.91−5.92 (1H, d 1’−H), 7.03 (2H, bs, NH2), 8.11 (1H, s, 2−H)
13C NMR (CDCl3) δ 25.49, 27.68, 27.99, 63.41, 81.19, 81.26, 85.16, 87.00, 89.11, 102.08, 113.94, 147.12, 147.87, 149.04, 149.76, 153.07;
【0047】
化合物4
N−トリチルプロリンアミド(3)(2.14 g, 6 mmol)及びN,N−ジイソプロピルアンモニウムテトラゾリド(616 mg, 3.6 mmol)を無水ピリジンで3回、無水トルエンで3回共沸脱水し、無水塩化メチレン(60 mL)に溶解させた。 エチル(N,N,N’,N’−テトライソプロピル)ホスホロジアミダイト(2.46 mL, 9 mmol)を加え、アルゴン雰囲気下室温で3時間撹拌した。反応液をクロロホルムで希釈して5%炭酸水素ナトリウム水溶液で有機層を3回洗浄した。回収した有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧下留去した後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン−酢酸エチル−トリエチルアミン=100:0:1−85:15:1)で精製し、目的物(4a)(2.31 g, 71%)を白色フォーム状物質で得た。
1H−NMR (270 MHz, CDCl3) δ 0.81−1.1.47 (20H, m, 3”−Ha, 4”−H, CH3 of i−Pr, CH3 of POEt), 1.65−1.70 (1H, m, 3”−Hb), 2.97−3.04 (1H, m, 5”−Ha), 3.23−3.27 (1H, m, 5”−Hb), 3.63−3.87 (5H, m, 2”−H, CH2 of POEt, CH of i−Pr)
13C NMR (CDCl3) δ 18.63, 18.70, 18.75, 18.81, 25.65, 25.79, 25.86, 25.96, 26.05, 26.13, 32.50, 32.60, 45.62, 45.81, 45.88, 46.07, 51.94, 56.64, 62.15, 62.50, 67.13, 67.23, 127.72, 129.08, 130.52, 130.56, 145.88, 146.06, 179.65, 179.82;
31P NMR (CDCl3) δ 112.96, 114.49
【0048】
化合物5:
8−オキソアデノシン誘導体(2)(805 mg, 1.9 mmol)及びアミダイト試薬(4a)(2.09 g, 3.6 mmol)を無水アセトニトリルで4回共沸脱水した後、無水アセトニトリル(30 mL)に溶解させ、5−メルカプト−1−メチルテトラゾール(552 mg, 4.75 mmol)を加えてアルゴン雰囲気下室温で1時間撹拌した。その後、6M tert−ブチルハイドロパーオキサイド−デカン溶液(3.17 mL, 19 mmol)を加えて、室温でさらに10分間撹拌した。反応系をクロロホルムで希釈して有機層を蒸留水で3回洗浄した後、回収した有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧下留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン−酢酸エチル−ピリジン=50:50:1−40:60:1)で精製し、目的物(5b)(1.57 g, 95%)を白色フォーム状物質で得た。
1H−NMR (270 MHz, CDCl3) δ 0.81−0.88 (1H, m, 4”−Ha), 1.07−1.50 (9H, m, 4”−Hb, 3”−H, CH3 of isop, CH3 of POEt), 1.54−1.57 (1H, 2s, CH3 of isop), 1.62 (9H, s, (CH3)3C of Boc), 2.96−3.03 (1H, m, 5”−Ha), 3.31−3.36 (1H, m, 5”−Hb), 3.89−3.94 (2H, m, CH2 of POEt), 4.19−4.50 (4H, m, 2”−H, 4’−H, 5’−H), 5.08−5.13 (1H, m, 3’−H), 5.43−5.45 (1H, m, 2’−H), 6.23−6.26 (1H, m, 1’−H), 6.62 (2H, bs, NH2), 7.13−7.32 (9H, m, Ar−H), 7.45−7.67 (6H, m,Ar−H), 8.15−8.16 (1H, 2s, 2−H)
13C NMR (CDCl3) δ 15.93, 16.00, 16.03 16.11, 24.06, 24.10, 24.27, 26.96, 27.75, 30.98, 31.38, 31.44 50.22, 50.39, 50.45, 63.93, 63.97, 64.03, 64.05, 64.80, 65,25, 65.33 67.01, 77.20, 77.95, 78.04, 81.64, 81.83, 82.56, 82.73, 85.38, 85.50, 85.63, 86.30, 86.33, 86.86, 86.92, 101.67, 101.70, 113.65, 113.67, 126.09, 126.22, 127.45, 127.55, 128.86, 142.94, 143.82, 144.31, 147.22, 147.25, 147.80, 148.68, 148.72, 149.53, 149.56, 153.30, 177.18, 177.22, 177.25, 177.29
31P NMR (CDCl3) δ −1.82
【0049】
化合物6:
上記生成物(5a)(1.57 g, 1.81 mmol)を80%ギ酸水溶液(20 mL)に溶解し、室温で12時間撹拌した。反応系を蒸留水で希釈し、酢酸エチルで水層を3回洗浄した後、回収した水層を減圧下留去した。その後、さらに3回蒸留水で共沸した後、残渣をC−18シリカゲル逆相カラムクロマトグラフィー(水−アセトニトリル=100:0−95:5)で精製し、水溶液から凍結乾燥することにより目的物のジアステレオマー(733 mg, 83%)を白色フォーム状物質で得た。ジアステレオマーの分離は分取用HPLC(水−メタノール−トリフルオロ酢酸=93:7:0.1)で行った。流出速度の早い方をfast体、遅い方をslow体とし、水溶液から凍結乾燥することにより、トリフルオロ酢酸の塩としてそれぞれ純粋に分離した。その他のアルキルエステル体(6b,6c, fast or slow)についても同様に合成して分離することができた。
【0050】
6a−fast
1H−NMR (270 MHz, D2O) δ 1.23−1.28 (3H, t, CH3 of POEt), 1.96−2.13 (3H, m, 3”−Ha, 4”−H), 2.42−2.52 (1H, m, 3”−H), 3.34−3.47 (2H, m, 5”−H), 4.10−4.25 (3H, m, 2”−H, CH2 of POEt), 4.31−4.47 (3H, m, 4’−H, 5’−H), 4.63−4.67 (1H, m, 3’−H), 5.02−5.06 (1H, dd, 2’−H), 5.92−5.94 (1H, d, 1’−H), 8.34(1H, s, 2−H)
13C NMR (D2O) δ 17.88, 17.97, 26.16, 31.95, 49.12, 63.04, 63.22, 68.44,68.53, 69.63, 69.71, 72.15, 73.76, 84.26, 84.37, 89.29, 107.05, 112.39,116.68, 120.96, 125.25, 144.55, 146.78, 149.04, 154.84, 164.44, 164.96,165.47, 165.99, 173.92, 173.94
31P NMR (D2O) δ −1.35;
【0051】
6a−slow
1H−NMR (270 MHz, D2O) δ 1.24−1.29 (3H, t, CH3 of POEt), 2.01−2.22 (3H, m, 3”−Ha, 4”−H), 2.44−2.57 (1H, m, 3”−H), 3.35−3.51 (2H, m, 5”−H), 4.11−4.22 (2H, m, CH2 of POEt), 4.27−4.30 (1H, m, 2”−H), 4.39−4.52 (3H, m, 4’−H, 5’−H), 4.65−4.69 (1H, m, 3’−H), 5.08−5.12 (1H, dd, 2’−H), 5.96−5.98 (1H, d, 1’−H), 8.38 (1H, s, 2−H)
13C NMR (D2O) δ 17.80, 17.89, 26.11, 31.89, 49.08, 63.00, 63.19, 68.40,68.49, 69.66, 69.75, 72.18, 73.66, 84.33, 84.42, 89.20, 107.03, 112.50,116.79, 121.08, 125.36, 144.59, 146.81, 148.98, 154.84, 164.50, 165.02,165.54, 166.06, 173.91, 173.93
31P NMR (D2O) δ −1.40
【0052】
6b−fast
1H−NMR (270 MHz, D2O) δ 1.05−1.07 (6H, dd, CH3 of i−Pr), 1.77−1.89 (3H,m, 3”−Ha,4”−H), 2.23−2.29 (1H, m, 3”−Hb), 3.15−3.27 (2H, m, 5”−H), 4.02−4.03 (1H, m, CH of i−Pr), 4.12−4.27 (3H, m, 2”−H, 5’−H), 4.46−4.56 (2H,m, 3’−H, 4’−H), 4.85−4.88 (1H, m, 2’−H), 5.71−5.72 (1H, d, 1’−H), 8.09 (1H, s, 2−H)
13C NMR (D2O) δ 25.24, 25.32, 25.35, 25.42, 26.13, 31.93, 49.09, 63.01,63.20, 69.47, 69.56, 72.12, 73.67, 78.62, 78.71, 84.07, 84.19, 89.23, 106.91, 112.40, 116.68, 120.97, 125.26, 145.98, 148.70, 149.03, 154.88, 164.52, 165.04, 165.56, 166.08, 173.80, 173.8331P NMR (D2O) δ −2.71
【0053】
6b−slow
1H−NMR (270 MHz, D2O) δ 1.25−1.27 (6H, dd, CH3 of i−Pr), 2.01−2.06 (3H,m, 3”−Ha,4”−H), 2.45−2.50 (1H, m, 3”−Hb), 3.41−3.43 (2H, m, 5”−H), 4.24−4.25 (1H, m, CH of i−Pr), 4.31−4.47 (3H, m, 2”−H, 5’−H), 4.64−4.73 (2H, m, 3’−H, 4’−H), 5.08−5.12 (1H, m, 2’−H), 5.92−5.93 (1H, d, 1’−H), 8.31(1H, s, 2−H)
13C NMR (D2O) δ 25.19, 25.27, 25.33, 25.40, 26.12, 31.92, 49.08, 63.00,63.19, 69.53, 69.61, 72.17, 73.57, 78.65, 78.74, 84.18, 84.29, 89.15, 106.93, 112.50, 116.78, 121.07, 125.36, 145.90, 148.57, 149.00, 154.94, 164.56, 165.08, 165.60, 166.12, 173.80, 173.83
31P NMR (D2O) δ −2.80
【0054】
6c−fast
1H−NMR (270 MHz, D2O) δ 0.77−0.82 (3H, t, CH3 of POBu), 1.16−1.27 (2H, m, CH2α of POBu), 1.48−1.55 (2H, m, CH2β of POBu), 1.99−2.10 (3H, m, 3”−Ha, 4”−H), 2.43−2.48 (1H, m, 3”−Hb), 3.39 (2H, m, 5”−H), 4.02−4.09 (2H, m, CH2 of POBu), 4.21 (1H, m, 2”−H), 4.38−4.45 (3H, m, 4’−H, 5’−H), 4.64−4.66 (1H, m, 3’−H), 5.05−5.08 (1H, m, 2’−H), 5.90−5.91 (1H, d, 1’−H),8.24 (1H, s, 2−H)
13C NMR (D2O) δ 15.28, 20.60, 26.13, 31.96, 33.96, 34.06, 49.09, 62.99,63.18, 69.61, 69.68, 71.77, 71.86 72.02, 73.65, 83.97, 84.08, 89.20, 106.87, 112.47, 116.76, 121.04, 125.33, 146.82, 149.04, 149.79, 154.92, 164.61, 165.13, 165.65, 166.17, 173.91, 173,93
31P NMR (D2O) δ −1.15
【0055】
6c−slow
1H−NMR (270 MHz, D2O) δ 0.78−0.84 (3H, t, CH3 of POBu), 1.23−1.28 (2H, m, CH2α of POBu), 1.52−1.54 (2H, m, CH2β of POBu), 2.08 (3H, m, 3”−Ha,4”−H), 2.49 (1H, m, 3”−Hb), 3.43 (2H, m, 5”−H), 4.05−4.08 (2H, m, CH2 of POBu), 4.26 (1H, m, 2”−H), 4.40−4.49 (3H, m, 4’−H, 5’−H), 4.65−4.69 (1H, m, 3’−H), 5.11−5.12 (1H, m, 2’−H), 5.94−5.95 (1H, d, 1’−H), 8.32 (1H,s, 2−H)
13C NMR (D2O) δ 15.27, 20.57, 26.14, 31.95, 33.92, 34.02, 49.09, 62.99,63.18, 69.76, 69.84, 71.76, 71.85, 72.16, 73.60, 84.24, 84.36, 89.13, 106.89, 112.56, 116.85, 121.14, 125.42, 146.11, 148.87, 149.00, 154.94, 164.60, 165.12, 165.64, 166.16, 173.92, 173.94
31P NMR (D2O) δ −1.35
【0056】
化合物7
8−オキソアデノシン誘導体(2)(829 mg, 1.96 mmol)及びアミダイト試薬(4b)(2.08 g, 3.91 mmol)を無水アセトニトリルで4回共沸脱水した後、無水アセトニトリル(30 mL)に溶解し、5−メルカプト−1−メチルテトラゾール(568 mg, 4.89 mmol)を加えアルゴン雰囲気下室温で1時間撹拌した。その後、N,N,N’,N’−テトラエチルチウラムジスルフィド(1.74 g, 5.87 mmol)を加えさらに室温でさらに3時間撹拌した。反応系をクロロホルムで希釈して有機層を蒸留水で3回洗浄した後、回収した有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧下留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム−メタノール−ピリジン=100:0:1−98:2:1)で精製し、溶媒を減圧下留去した後、さらにドライシリカゲル(25 g)を用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン−酢酸エチル−ピリジン=100:0:1−70:30:1)で精製することにより、目的物(7)(1.03 g, 59%)を白色フォーム状物質で得た。
【0057】
1H−NMR (270 MHz, CDCl3) δ 0.62−1.38 (10H, m, 4”−H, 3”−H, CH3 of isop,CH3 of POEt), 1.47−1.50 (3H, 2s, CH3 of isop) 1.54−1.57 (9H, 2s, (CH3)3C of Boc), 2.86−2.95 (1H, m, 5”−Ha), 3.18−3.28 (1H, m, 5”−Hb), 3.82−3.90(2H, m, CH2 of POEt), 4.07−4.45 (4H, m, 2”−H, 4’−H, 5’−H), 5.05 (1H, m,3’−H), 5.36−5.42 (1H, m, 2’−H), 6.17−6.22 (1H, d, 1’−H) 6.48 (2H, bs, NH2) 7.09−7.21 (9H, m, Ar−H), 7.36−7.44 (6H, m, Ar−H), 8.09−8.11 (1H, 2s,2−H)
13C NMR (CDCl3) δ 15.72, 15.78, 15.83, 15.90, 24.08, 24.15, 25.27, 25.31, 26.91, 26.93, 27.79, 31.23, 31.30, 50.38, 50.47, 64.09, 64.17, 64.32,64.40, 65.38, 65.43, 77.25, 81.85, 81.92, 82.83, 82.92, 86.39, 86.41, 87.00, 87.06, 101.72, 101.77, 113.47, 126.28, 127.62, 127.64, 128.87, 143.78, 143.83 147.31, 147.33, 147.91, 148.65, 148.67, 149.54, 153.33, 175.68, 175.76; 31P NMR (CDCl3) δ 63.15, 63.22
【0058】
化合物8:
上記生成物(7)(1.03 g, 1.16 mmol)を80%ギ酸水溶液(10 mL)に溶解し、室温で12時間撹拌した。反応系を蒸留水で希釈し、酢酸エチルで水層を3回洗浄した後、回収した水層を減圧下留去した。その後、さらに3回蒸留水で共沸した後、残渣をC−18シリカゲル逆相カラムクロマトグラフィー(水−アセトニトリル=100:0−96:4)で精製し、水溶液から凍結乾燥することにより目的物のジアステレオマー(8)(209 mg, 36%)を白色フォーム状物質で得た。
1H−NMR (270 MHz, D2O) δ 0.96−1.03 (3H, t, CH3 of POEt) 1.84−1.96 (3H, m, 3”−Ha, 4”−H), 2.19 (1H, m, 3”−H), 3.18−3.27 (2H, m, 5”−H), 3.68−3.85 (3H, m, 2”−H, CH2 of POEt), 3.94−4.08 (3H, m, 4’−H, 5’−H), 4.51−4.59 (1H,m, 3’−H), 5.01−5.06 (1H, dd, 2’−H), 5.70−5.72 (1H, d, 1’−H), 7.91 (1H, s, 2−H)
13C NMR (D2O) δ 17.71, 17.82, 26.44, 32.22, 32.25, 48.87, 64.78, 65.13,65.65, 65.73, 65.83, 67.89, 67.96, 72.37, 72.44, 73.24, 84.26, 84.37, 84.47, 88.90, 88.96, 106.87, 149.04, 149.72, 153.54, 155.26, 177.69, 177.75
31P NMR (D2O) δ 70.00, 70.05
【0059】
試験例1
上記の実施例1で得られた化合物6a〜6c(それぞれについてfast及びslowの異性体)及び化合物8の癌細胞に対する増殖抑制効果を文献記載の方法(Moriguchi, T. et al., Tetrahydron Lett., 41, pp.5881−5885, 2000)に従って測定した。その結果、上記実施例で得られた化合物はいずれもホスミドシンに匹敵する優れた抗腫瘍活性を有していた。
【0060】
【発明の効果】
本発明により提供される一般式(I)に包含される化合物IAはホスミドシンと同等の抗腫瘍活性を有しており、しかも化学的に極めて安定であることから、抗腫瘍剤などの医薬の有効成分として有用である。また、本発明により提供される一般式(I)に包含される化合物IBはホスミドシン又は化合物IAなどの製造のための製造用中間体として有用である。
【発明の属する技術分野】
本発明は、ヌクレオチド系抗生物質ホスミドシン誘導体及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ホスミドシンは、ストレプトミセス属の放線菌RK−16株が生産する抗生物質であり、様々な野菜や果物の灰色カビ病の原因菌であるBotrytis cinereaの胞子形成を特異的に阻害する作用をもつものとして単離された(Uramoto, M. et al., J. Antibiot., 44, 375, 1991)。その後、ホスミドシンは下記の構造をもつヌクレオチド系の抗生物質であることが明らかにされた(Phillips, D.R. et al., J.Org. Chem., 58, 854. 1993)。ホスミドシンの構造上の特徴は、ヌクレオチド成分として8−オキソアデノシン−5’−モノリン酸を含むこと、及びアミノ酸成分としてプロリンを含むことであり、さらに各成分がN−アシルリン酸アミド結合で連結されていることにある。
【0003】
【化4】
【0004】
ホスミドシンの生物作用については、温度感受性の癌遺伝子v−srcによって形質転換され、温度変化によって形態が変化したラット腎細胞に対してホスミドシンが形態復帰活性をもつこと、及びホスミドシンが細胞周期の進行をG1期で停止させることが報告され、ホスミドシンが抗癌作用を有することが示唆されている(Matsuura, N. et al., J. Antibiot., 49, 361, 1996)。現在用いられている抗癌剤を細胞周期上の作用点からみると、S期に作用するDNA合成阻害剤又はM期に作用する細胞分裂阻害剤等、活発に増殖している細胞に対して作用するものが多いが、近年、細胞周期のG1期を新たな抗癌剤のターゲットとする動きが盛んであり、G1期で細胞周期を阻害するホスミドシンやその類縁体は新たな抗癌剤としての利用が期待できる(実験医学 増刊「癌と細胞周期 細胞癌化へのプロセス」田矢洋一編集, 2章p.71「細胞周期をターゲットにした抗癌剤」長田裕之)。
【0005】
さらに、ヒト肺繊維芽細胞WI−38をホスミドシンで処理したところ、(1)細胞周期がG1期で停止すること; (2)ホスミドシン処理後の細胞ではホスミドシンの濃度依存的に細胞周期調節因子であるRBタンパク質のリン酸化が阻害されていること; (3)ホスミドシン処理細胞では血清刺激してもサイクリンD1の発現量が増加しないこと; 及び(4)これらのサイクリンD1の発現量減少とRBタンパク質リン酸化が同調していることが示され、ホスミドシンはサイクリンD1の発現量を抑制することでRBタンパク質のリン酸化を阻害することが明らかになった(Kakeya, H. et al., Cancer Res., 58, 704, 1998)。
【0006】
ホスミドシン誘導体の製造方法に関しては、森口らによりホスミドシンの脱メチル体及びそのN6−アセチル体の合成が報告されている(Moriguchi, T. et al., Tetrahedron Lett., 39, 3725, 1998; Moriguchi, T. et al., J. Org. Chem., 64, 8229, 2000: 上記論文ではホスミドシンの脱メチル体を「ホスミドシンB」と呼んでいるが、この物質を最初に報告した長田らの命名に従って本明細書ではこの物質を「ホスミドシンA」と呼ぶ)。この合成は、森口らのアミノアシルアデニレートアナログ合成に関連して達成された(Moriguchi, T. et al., Tetrahedron Lett., 41, 5881, 2000)。また、ホスミドシンA及びN6−アセチル体は8.8−190μMの範囲で各細胞株に対して増殖抑制効果を示し、胃ガン、大腸ガン由来の細胞に対しては他組織由来のがん細胞よりも若干高い増殖抑制効果を示すが、全体としては由来組織によらない特徴的な細胞増殖抑制効果を発揮することが明らかにされた。
【0007】
さらに、ホスミドシンの合成も森口らによって達成され、ホスミドシンはホスミドシンAよりも約10倍活性が高いことが明らかにされた(Sekine, M. et al., J. Org. Synth. Chem. Jpn., 59, 1109, 2000)。もっとも、この合成法は収率が低く、ホスミドシンを大量かつ安定に供給することができないという問題があった。またホスミドシンのリン酸部位のメチルエステルは化学的安定性に乏しく、水溶液中でメチルエステルが分解しやすいという問題を有していることから、高活性で、かつ安定性に優れたホスミドシン誘導体を提供することが望まれていた。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、ホスミドシン及びその誘導体を効率的に製造するための方法を提供することにある。また、本発明の別の課題は、ホスミドシンの誘導体であって、がん細胞に対して優れた細胞増殖抑制効果を有しており、かつ化学的に安定な誘導体を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記の課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、8−オキソアデノシン誘導体とプロリンアミドからN−ホスフィチル化により合成したアミダイト試薬とを反応させ、続いて生成物の酸化を行うことにより、ホスミドシン又はその誘導体の製造用中間体として有用な縮合生成物を極めて効率的に製造できることを見出した。また、上記の反応において酸化に替えて硫化を行うことにより、ホスミドシン誘導体の製造用中間体として有用なホスホロチオエート化合物を得ることができることも見出した。さらに、本発明者らは、これらの製造用中間体からホスミドシンのアルキル置換体及びホスホロチオエート誘導体を製造して、その細胞増殖抑制効果及び物理化学的性状を検討したところ、これらの化合物がホスミドシンと同等の生物活性を有しており、しかもアルキルエステルの分解が全く認めらず、医薬として極めて望ましい性質を有していることを見出した。本発明は上記の知見を基にして完成されたものである。
【0010】
すなわち、本発明は、下記の一般式(I):
【化5】
(式中、R1はC1−8アルキル基を示し;R2は水素原子又は窒素原子の保護基を示し;R3及びR4はそれぞれ独立に水素原子又は水酸基の保護基を示すが、R3及びR4は互いに結合してそれらが結合する2個の酸素原子とともに環を形成してもよく;R5は水素原子又は窒素原子の保護基を示し;XはO又はSを示す。ただし、R1がメチル基であり、かつXがOである場合を除く。)で表される化合物又はその塩を提供するものである。
【0011】
この発明の好ましい態様によれば、R1がC2−8アルキル基であり、R2が水素原子であり、R3及びR4が共に水素原子であり、R5が水素原子であり、XがOである上記化合物又はその塩;及びR1がC1−8アルキル基であり、R2が水素原子であり、R3及びR4が共に水素原子であり、R5が水素原子であり、XがSである上記化合物又はその塩が提供される。
【0012】
別の観点からは、本発明により、化合物IA(上記一般式(I)で表される化合物において、R1がC2−8アルキル基であり、R2が水素原子であり、R3及びR4が共に水素原子であり、R5が水素原子であり、かつXがOであるか、あるいはR1がC1−8アルキル基であり、R2が水素原子であり、R3及びR4が共に水素原子であり、R5が水素原子であり、かつXがSである化合物を意味する)又は生理学的に許容されるその塩を有効成分として含む医薬が提供される。この医薬は抗腫瘍剤として各種の固形癌又は非固形癌の治療に用いることができる。
【0013】
さらに別の観点からは、本発明により、上記の医薬の製造のための上記化合物IA又は生理学的に許容されるその塩の使用、及び、癌の治療方法であって、上記化合物IA又は生理学的に許容されるその塩の治療有効量をヒトを含む哺乳類動物に投与する工程を含む方法が提供される。また、本発明により、上記化合物IA又は生理学的に許容されるその塩を含む癌細胞増殖抑制剤;上記化合物IA又は生理学的に許容されるその塩を含むG1期細胞周期停止剤;上記化合物IA又は生理学的に許容されるその塩を含むRBタンパク質のリン酸化阻害剤が提供される。
【0014】
また、ホスミドシン若しくは上記化合物IA又はそれらの塩の製造のために有用な製造用中間体として、化合物IB(上記一般式(I)で表される化合物において、R1、R2、R3、R4、R5、及びXが上記と同義であり、ただし、R1がC2−8アルキル基であり、R2が水素原子であり、R3及びR4が共に水素原子であり、R5が水素原子であり、かつXがOである場合、及びR1がC1−8アルキル基であり、R2が水素原子であり、R3及びR4が共に水素原子であり、R5が水素原子であり、かつXがSである場合を除く化合物を意味する)又はその塩が提供される。
【0015】
さらに、本発明により、上記化合物IBの製造方法であって、下記の一般式(II):
【化6】
(式中、R12は窒素原子の保護基を示し;R13及びR14はそれぞれ独立に水酸基の保護基を示すが、R13及びR14は互いに結合してそれらが結合する2個の酸素原子とともに環を形成してもよい)で表される化合物と、下記の一般式(III):
【化7】
(式中、R11はC1−8アルキル基を示し;R15は窒素原子の保護基を示し;R16及びR17はそれぞれ独立にC1−8アルキル基を示す)で表される化合物とを反応させ、得られた反応物を酸化又は硫化する工程を含む方法が本発明により提供される。この方法の好ましい態様によれば、上記の一般式(II)で表される化合物と上記の一般式(III)で表される化合物との反応を5−メルカプト−1−メチルテトラゾールの存在下に行うことができる。
【0016】
また、本発明により、ホスミドシン若しくは上記化合物IA又はそれらの塩の製造方法であって、上記化合物IB又はその塩を脱保護する工程を含む方法;及びホスミドシン若しくは上記化合物IA又はそれらの塩の製造方法であって、下記の工程:(a)上記の一般式(II)で表される化合物と上記の一般式(III)で表される化合物とを反応させ、得られた反応物を酸化又は硫化して化合物IBを得る工程、及び(b)上記工程(a)で得られた化合物IBを脱保護する工程を含む方法が提供される。上記一般式(III)で表される化合物は本発明により初めて提供された新規化合物であり、ホスミドシン若しくは上記化合物IA又はそれらの塩の製造用中間体として有用である。
【0017】
さらに、本発明により、ホスミドシン若しくは上記化合物IA又はそれらの塩の製造のための上記化合物IB又はその塩の使用;ホスミドシン若しくは上記化合物IA又はそれらの塩の製造のための上記一般式(II)で表される化合物の使用;ホスミドシン若しくは上記化合物IA又はそれらの塩の製造のための上記一般式(III)で表される化合物の使用;上記化合物IB又はその塩の製造のための上記一般式(II)で表される化合物の使用;及び上記化合物IB又はその塩の製造のための上記一般式(III)で表される化合物の使用が提供される。
【0018】
さらにまた、本発明により、ホスミドシン若しくは上記化合物IA又はそれらの塩の製造用中間体である上記化合物IB又はその塩;ホスミドシン若しくは上記化合物IA又はそれらの塩の製造用中間体である上記一般式(II)で表される化合物;ホスミドシン若しくは上記化合物IA又はそれらの塩の製造用中間体である上記一般式(III)で表される化合物;上記化合物IB又はその塩の製造用中間体である上記一般式(II)で表される化合物;及び上記化合物IB又はその塩の製造用中間体である上記一般式(III)で表される化合物が本発明により提供される。
【0019】
【発明の実施の形態】
本明細書において、アルキル基とは直鎖状、分枝鎖状、環状、又はそれらの組み合わせからなるアルキル基を意味している。アルキル部分を有する他の置換基(例えばアルコキシ基やアラルキル基等)のアルキル部分についても同様である。R1が示すC1−8アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、2−メチルブチル基、1−メチルブチル基、ネオペンチル基、1,2−ジメチルプロピル基、1−エチルプロピル基、n−ヘキシル基、4−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、1−メチルペンチル、3,3−ジメチルブチル基、2,2−ジメチルブチル基、1,1−ジメチルブチル基、1,2−ジメチルブチル基、1,3−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、2−エチルブチル基、1−エチルブチル基、1−エチル−1−メチルプロピル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロプロピルメチル基、シクロブチルメチル基、シクロペンチルメチル基、シクロプロピルエチル基等を例示することができるが、これらに限定されることはない。R11が示すアルキル基についても同様である。
【0020】
R2が示す窒素原子の保護基の種類は特に限定されず、上記一般式(II)で表される化合物と上記一般式(III)で表される化合物との反応において不活性であり、その反応の後に他の官能基に影響を与えずに脱保護できるものであれば、いかなる保護基を用いてもよい。窒素原子の保護基については、例えば、「プロテクティブ・グループス・イン・オーガニック・シンセシス」(Protective Groups in Organic Syntheses, T.W. Green and P.G.M. Wuts, 3rd Ed., 1999, John Wiley& Sons)等に記載された保護基から当業者が適宜選択することが可能である。R2が示す窒素原子の保護基としては、例えば、塩基性条件で安定であり、かつ酸性条件で容易に脱保護可能な保護基を選択することが好ましいが、より具体的には、tert−ブトキシカルボニル(BOC)等の保護基を選択することができる。R12が示す保護基についても同様である。
【0021】
R3及びR4が示す水酸基の保護基の種類は特に限定されず、上記一般式(II)で表される化合物と上記一般式(III)で表される化合物との反応において不活性であり、その反応の後に他の官能基に影響を与えずに脱保護できるものであれば、いかなる保護基を用いてもよい。水酸基の保護基についても、例えば、上記の「プロテクティブ・グループス・イン・オーガニック・シンセシス」等に記載された保護基から当業者が適宜選択することが可能である。R3及びR4が示す水酸基の保護基としては、例えば、塩基性条件で安定であり、かつ酸性条件で容易に脱保護可能な保護基を選択することが好ましいが、例えば、R3及びR4が互いに結合したイソプロピリデン基等を挙げることができる。R13及びR14が示す保護基についても同様である。
【0022】
R5が示す窒素原子の保護基の種類は特に限定されず、上記一般式(II)で表される化合物と上記一般式(III)で表される化合物との反応において不活性であり、その反応の後に他の官能基に影響を与えずに脱保護できるものであれば、いかなる保護基を用いてもよい。例えば、上記の「プロテクティブ・グループス・イン・オーガニック・シンセシス」等に記載された窒素原子の保護基から当業者が適宜選択することが可能である。R5が示す窒素原子の保護基としては、例えば、塩基性条件で安定であり、かつ酸性条件で容易に脱保護可能な保護基を選択することが好ましいが、より具体的には、トリチル(Tr)等の保護基を選択することができる。R15が示す保護基についても同様である。
【0023】
XはO又はSを示すが、一般式(I)で表される化合物において、R1がメチル基であり、かつXがOである化合物は、一般式(I)で表される新規化合物に係る本発明の範囲には包含されない。上記一般式(I)で表される化合物又はその塩は、水和物又は溶媒和物として存在する場合もあるが、本発明の範囲にはこれらの物質も包含される。また、上記一般式(I)で表される化合物は複数の不斉炭素を有しているが、置換基の種類により、さらに1以上の不斉炭素を有する場合がある。そのような複数の不斉炭素の存在に基づく光学活性体やジアステレオマー等の純粋な形態の立体異性体、あるいは任意の立体異性体の混合物又はラセミ体等は、いずれも本発明の範囲に包含される。なお、本明細書において示される化学式における立体表示は絶対配置を示す。
【0024】
本発明により提供される化合物IAは、上記一般式(I)において、R1がC2−8アルキル基であり、R2が水素原子であり、R3及びR4が共に水素原子であり、R5が水素原子であり、かつXがOであるか、あるいはR1がC1−8アルキル基であり、R2が水素原子であり、R3及びR4が共に水素原子であり、R5が水素原子であり、かつXがSである化合物であり、上記一般式(I)に包含される化合物である。この化合物IA又は生理学的に許容されるその塩は、医薬の有効成分として有用である。上記化合物IAは癌細胞増殖抑制作用を有しており、細胞周期をG1期で停止する作用を有していることから、癌の治療のための医薬の有効成分として有用である。いかなる特定の理論に拘泥するわけではないが、上記化合物IAはサイクリンD1の発現量を抑制する作用を有しており、その結果、細胞周期調節因子であるRBタンパク質のリン酸化を阻害することによってGI期で細胞周期を阻害することができる。
【0025】
本発明により提供される医薬は、化合物IA及び生理学的に許容されるその塩、並びにそれらの水和物及びそれらの溶媒和物からなる群から選ばれる物質の1種又は2種以上を有効成分として含み、抗腫瘍剤として各種の固形癌又は非固形癌の治療に用いることができる。本発明の医薬は、経口的又は非経口的にヒトを含む哺乳類動物に投与することができる。本発明の医薬としては、上記の物質をそのまま投与してもよいが、一般的には、上記の物質の1種又は2種以上と、1種又は2種以上の製剤用添加物とを含む医薬組成物を調製して投与することが望ましい。
【0026】
医薬組成物の形態は特に限定されず、投与経路に応じて適宜の形態を選択することが可能である。経口投与に適する医薬組成物としては、例えば、顆粒剤、細粒剤、散剤、硬カプセル剤、軟カプセル剤、シロップ剤、乳剤、懸濁剤、又は液剤等を挙げることができ、非経口投与に適する医薬組成物としては、例えば、静脈内投与、筋肉内投与、若しくは皮下投与用の注射剤、点滴剤、坐剤、経皮吸収剤、経粘膜吸収剤、点鼻剤、点耳剤、点眼剤、吸入剤等を挙げることができる。粉末の形態の医薬組成物として調製された製剤を用時に溶解して注射剤又は点滴剤として使用してもよい。もっとも、医薬組成物の形態はこれらに限定されることはない。
【0027】
医薬用組成物の製造には、固体又は液体の製剤用添加物を用いることができる。製剤用添加物は有機又は無機のいずれであってもよい。経口用の固形の医薬組成物の製造には、例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、着色剤、又は矯味矯臭剤等を用いることができる。賦形剤としては、例えば、乳糖、蔗糖、白糖、ブドウ糖、コーンスターチ、デンプン、タルク、ソルビット、結晶セルロース、デキストリン、カオリン、炭酸カルシウム、又は二酸化ケイ素等を挙げることができる。結合剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、エチルセルロース、メチルセルロース、アラビアゴム、トラガント、ゼラチン、シェラック、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、クエン酸カルシウム、デキストリン、又はペクチン等を挙げることができる。滑沢剤としては、例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ポリエチレングリコール、シリカ、又は硬化直物油等を挙げることができる。着色剤としては、通常医薬への添加が許可されているものであればいずれも使用することができる。矯味矯臭剤としては、ココア末、ハッカ脳、芳香酸、ハッカ油、龍脳、又は桂皮末等を使用することができる。医薬組成物として錠剤や顆粒剤を調製する場合には、糖衣又はゼラチン衣等の適宜のコーティングを施すことができ、必要に応じて防腐剤や抗酸化剤等を添加することもできる。
【0028】
経口投与のための液体の医薬組成物の製造には、一般的に用いられる不活性な希釈剤、例えば水又は植物油等を用いることができ、例えば、湿潤剤、懸濁補助剤、甘味剤、芳香剤、着色剤、又は保存剤等を配合することができる。液体の医薬組成物を調製した後、ゼラチンのような吸収性物質のカプセル中に充填してもよい。液体の医薬組成物の調製に用いられる溶剤又は懸濁剤としては、例えば、水、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ベンジルアルコール、オレイン酸エチル、又はレシチン等を挙げることができる。坐剤の製造に用いられる基剤としては、例えば、カカオ脂、乳化カカオ脂、ラウリン脂、又はウィテップゾール等を挙げることができる。
【0029】
非経口投与のための医薬組成物として注射剤を調製する場合には、担体として、例えば、水、エチルアルコール、マクロゴール、又はプロピレングリコール、あるいはこれらの混合物等を用いることができ、塩酸、クエン酸、酢酸、リン酸、乳酸、乳酸ナトリウム、硫酸、又は水酸化ナトリウム等のpH調節剤、クエン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、又はリン酸ナトリウム等の緩衝剤、ピロ亜硫酸ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸、チオグリコール酸、又はチオ乳酸等の安定化剤等、食塩、ブドウ糖、マンニトール、又はグリセリン等の等張化剤を添加してもよい。また、溶解補助剤、無痛化剤、又は局所麻酔剤等を使用することもできる。
【0030】
軟膏剤やクリーム剤等の形態の外用の医薬組成物を調製する場合には、基剤、安定剤、湿潤剤、及び保存剤等を用いることができ、常法により有効成分である上記物質を混合して医薬組成物を調製することができる。基剤としては、例えば、白色ワセリン、ポリエチレン、パラフィン、グリセリン、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコン、又はベントナイト等を使用することができる。保存剤としては、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、又はパラオキシ安息香酸プロピル等を使用することができる。貼付剤の形態の医薬組成物を調製する場合には、通常の支持体に上記軟膏、クリーム、ゲル又はペースト等を常法により塗布することができる。支持体としては、綿、スフ、若しくは化学繊維等からなる織布又は不織布、軟質塩化ビニル、ポリエチレン、又はポリウレタン等からなるフイルム、あるいは発泡体シート等を好適に使用できる。
【0031】
本発明の医薬の投与量は特に限定されないが、経口投与の場合には、成人一日あたり有効成分である上記化合物IAの質量として通常10〜1,000mg程度である。この投与量を患者の年令、病態、症状に応じて適宜増減することが好ましい。前記一日量は一日に一回、又は適当な間隔をおいて一日に2〜3回に分けて投与してもよく、あるいは数日おきに間歇投与してもよい。注射剤として用いる場合には、成人一日あたり有効成分である化合物IAの質量として5〜500mg程度である。
【0032】
本発明の別の観点から提供される化合物IBは、上記一般式(I)において、R1、R2、R3、R4、R5、及びXが上記と同義であり、ただし、R1がC2−8アルキル基であり、R2が水素原子であり、R3及びR4が共に水素原子であり、R5が水素原子であり、かつXがOである場合、及びR1がC1−8アルキル基であり、R2が水素原子であり、R3及びR4が共に水素原子であり、R5が水素原子であり、かつXがSである場合を除く化合物であり、上記一般式(I)に包含される。この化合物IB又はその塩は、ホスミドシン(上記一般式(I)において、R1がメチル基であり、R2が水素原子であり、R3及びR4が共に水素原子であり、R5が水素原子であり、XがOの場合に相当する化合物である)又は上記化合物IAの製造のための製造用中間体として有用である。
【0033】
化合物IBは、本発明により提供される製造方法に従って、下記のスキームに示す第一工程により製造することができる。また、ホスミドシン及び上記化合物IAは、化合物IBより脱保護を行う第二工程により製造することができる。
【0034】
【化8】
【0035】
第一工程では、上記一般式(II)で表される化合物と上記一般式(III)で表される化合物とを反応させ、得られた反応物を酸化又は硫化する工程を含む。上記の酸化工程によりXがOの化合物を製造することができ、硫化工程によりXがSの化合物を製造することができる。記一般式(II)で表される化合物と上記一般式(III)で表される化合物との反応は、例えば5−メルカプト−1−メチルテトラゾールの存在下に行うことができる(Filippov, D. et al., Tetrahedron Lett., 39,4891, 1998)。酸化工程は、例えばtert−ブチルハイドロパーオキサイドなどの酸化剤を好適に用いることができ、硫化にはN,N,N’,N’−テトラエチルチウラムジスルフィドやS8を用いることができる。
【0036】
もっとも、酸化及び硫化のための試薬はこれらに限定されることはなく、当業者が通常用いられる酸化剤から適宜選択できることは言うまでもない。例えば、「リエージェンツ・フォー・オーガニック・シンセシス」(Reagents for Organic Synthesis, Vol. 1, 1967 to Vol. 16, 1992, John Wiley & Sons)などの成書に記載された酸化剤及び硫化剤を適宜選択し、保護基の性質に関して「プロテクティブ・グループス・イン・オーガニック・シンセシス」(Protective Groups in Organic Syntheses, T.W. Green and P.G.M. Wuts, 3rd Ed., 1999, John Wiley &Sons)を参照することにより、適宜の反応条件を選択することができる。
【0037】
上記一般式(II)で表される化合物と上記一般式(III)で表される化合物との反応は、通常は溶媒の存在下において無水の環境で行うことができ、0℃から溶媒の還流温度までの範囲の温度、好ましくは室温で行うことができる。反応に用いる溶媒は、反応種に対して充分な溶解性を有し、かつ反応において不活性であれば、特に限定されることはない。例えば、アセトニトリルなどのニトリル系溶媒、塩化メチレンやクロロホルムなどの塩素系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル系溶媒などを用いることができる。反応には、一般式(II)で表される化合物に対して一般式(III)で表される化合物を約1〜10モル程度、好ましくは2〜3モル程度を用いることができる。反応はアルゴンや窒素などの不活性ガス下で行うことが望ましい。
【0038】
酸化反応は、上記一般式(II)で表される化合物と上記一般式(III)で表される化合物との反応が終了した後、反応系に酸化剤を加えて0℃から溶媒の還流温度までの範囲の温度、好ましくは室温で行うことができる。酸化剤として、例えばtert−ブチルハイドロパーオキサイドなどを用いる場合には、上記一般式(II)で表される化合物に対して約5〜20モル程度、好ましくは10モル程度の酸化剤を用いることができる。硫化反応は、上記一般式(II)で表される化合物と上記一般式(III)で表される化合物との反応が終了した後、反応系に硫化剤を加えて0℃から溶媒の還流温度までの範囲の温度、好ましくは室温で行うことができる。硫化剤として例えばN,N,N’,N’−テトラエチルチウラムジスルフィドなどを用いる場合には、上記一般式(II)で表される化合物に対して約1〜10モル程度、好ましくは2〜5モル程度の硫化剤を用いることができる。
【0039】
上記の第一工程の後、得られた化合物IBを脱保護反応に付することにより、ホスミドシン又は化合物IAを製造することができるが、脱保護反応は用いた保護基の種類に応じて適宜の反応条件を選択することにより行われる。脱保護の条件は、例えば、「プロテクティブ・グループス・イン・オーガニック・シンセシス」(Protective Groups in Organic Syntheses, T.W. Green and P.G.M. Wuts, 3rd Ed., 1999, John Wiley & Sons)などの成書を参照することにより、当業者は適宜の条件を選択することが可能である。
【0040】
一般式(II)で表される化合物のうち、R12がtert−ブトキシカルボニル基である化合物は公知であり(Sekine, M. et al., J. Org. Synth. Chem. Jpn., 59, 1109, 2000)、文献記載の方法により容易に入手することができる。R12がtert−ブトキシカルボニル基以外の保護基である化合物については、例えば、「プロテクティブ・グループス・イン・オーガニック・シンセシス」(Protective Groups in Organic Syntheses, T.W. Green and P.G.M. Wuts, 3rd Ed., 1999, John Wiley &Sons)を参照することにより、上記スキーム中の第一工程における反応条件を考慮しつつ適宜の保護基を選択することができ、上記刊行物に記載された方法に従って窒素原子上への保護基導入を行うことができる。
【0041】
一般式(III)で表される化合物は、環構成窒素原子がトリチル基などで保護されたプロリンアミドと一般式(IV):R21O−P[N(R24)(R25)][N(R26)(R27)](式中、R21、R24、R25、R26、及びR27はそれぞれ独立にC1−8アルキル基を示す)で表される化合物とを適当な活性化剤、例えば1H−テトラゾール、N,N−ジイソプロピルアンモニウム 1H−テトラゾリデートなどの酸触媒の存在下で反応させて選択的N−ホスフィチル化を行うことにより容易に製造することができる。一般式(IV)において、R24、R25、R26、及びR27はすべて同一のアルキル基であることが好ましく、より好ましいのはこれらの基がすべてイソプロピル基である場合である。一般式(IV)で表される化合物において適宜のC1−8アルキル基をR21として選択することにより、このアルキル基を有する一般式(III)で表されるアミダイト化合物を製造することができ、このアミダイト化合物を用いることにより、R21として選択されたC1−8アルキル基を有する化合物IB並びに化合物IA及びホスミドシンを製造することができる(これらの化合物におけるR1がR21に対応する)。
【0042】
環構成窒素原子が保護されたプロリンアミドと一般式(IV)で表される化合物との反応は、通常は溶媒の存在下において無水の環境で行うことができ、0℃から溶媒の還流温度までの範囲の温度、好ましくは室温で行うことができる。反応に用いる溶媒は、反応種に対して充分な溶解性を有し、かつ反応において不活性であれば、特に限定されることはない。例えば、塩化メチレンやクロロホルムなどの塩素系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル系溶媒、アセトニトリルなどのニトリル系溶媒などを用いることができる。反応には、環構成窒素原子が保護されたプロリンアミド1モルに対して一般式(IV)で表される化合物を約1〜10モル程度、好ましくは1〜3モル程度及び活性化剤を0.1〜10モル程度用いることができる。反応はアルゴンや窒素などの不活性ガス下で行うことが望ましい。
【0043】
上記の製造方法で生成する製造用中間体及び目的化合物は、有機合成化学の分野で通常用いられる分離精製法、例えば、中和、濾過、抽出、乾燥、濃縮、再結晶、各種クロマトグラフィーなどの手段を用いて単離・精製することができるが、製造用中間体を特に精製することなく次の反応に供することも可能である。例えば、化合物IBはリン原子上に不斉があるためジアステレオマーとして得られるが、例えば、酸化生成物であるホスミドシン誘導体については逆相HPLC操作による異性体分取を行うことによりに、いずれのジアステレオマーについても純粋に分離することができる。この方法については実施例に具体的に示した。
【0044】
製造用中間体及び目的化合物の塩を取得したい場合には、反応系から化合物が塩の形態で得られる場合にはそのまま精製すればよく、化合物が遊離形態で得られる場合には、適当な有機溶媒に溶解又は懸濁させ、酸又は塩基を加える方法により塩を形成させればよい。また、塩の形態で得られた化合物を遊離形態の化合物に変換した後、適宜の塩の形態に変換することも可能である。なお、上記の各工程の反応に関して、以下の実施例にはさらに具体的な説明が開示されているので、当業者は、上記の一般的な説明及び実施例に記載された具体的な説明を参照しつつ、反応条件、出発原料、及び反応試薬などを適宜選択し、必要に応じてこれらの方法に適宜の修飾ないし改変を加えることにより、所望の化合物を容易に製造することができる。
【0045】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は下記の実施例に限定されることはない。
実施例1
本発明の化合物を以下のスキームに従って合成した。以下、化合物番号はスキーム中の化合物番号に対応させてある。
【化9】
【0046】
化合物2:
8−オキソアデノシン(1)(5.66 g, 20 mmol)をアセトン(200 mL)中に懸濁させ、アセトンジメチルアセタール(49.2 ml, 400 mmol)及びp−トルエンスルホン酸1水和物(7.61 g, 40 mmol)を加え4時間室温で撹拌した。その後飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(200 ml)を加え、系内を中和した後、溶媒を減圧下留去した。つぎにクロロホルム−イソプロピルアルコール(3:1, v/v)及び飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で抽出し、集めた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧下留去した。得られた残渣をメタノール−トリエチルアミンの混合溶媒(9:1 v/v, 200 mL)に溶解し、二炭酸−ジ−tert−ブチル(5.97 mL, 26 mmol)を加え室温で2時間撹拌した。その後反応系をクロロホルムで希釈し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で有機層を3回洗浄した。回収した有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した後に、溶媒を減圧下留去して、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム−メタノール=100:0−97:3)で精製し、白色フォーム状物質として目的物(2)(6.14 g, 73%)を得た。
1H−NMR (270 MHz, CDCl3) δ 1.29 (3H, s, CH3 of isop), 1.49 (3H, s, CH3 of isop, 1.56 (9H, s, (CH3)3C of Boc), 3.46−3.58 (2H, m, 5’−H), 4.04−4.09(1H, m, 4’−H), 4.87−4.91 (2H, m, 3’−H, 5’−OH), 5.35−5.38 (1H, dd, 2’−H), 5.91−5.92 (1H, d 1’−H), 7.03 (2H, bs, NH2), 8.11 (1H, s, 2−H)
13C NMR (CDCl3) δ 25.49, 27.68, 27.99, 63.41, 81.19, 81.26, 85.16, 87.00, 89.11, 102.08, 113.94, 147.12, 147.87, 149.04, 149.76, 153.07;
【0047】
化合物4
N−トリチルプロリンアミド(3)(2.14 g, 6 mmol)及びN,N−ジイソプロピルアンモニウムテトラゾリド(616 mg, 3.6 mmol)を無水ピリジンで3回、無水トルエンで3回共沸脱水し、無水塩化メチレン(60 mL)に溶解させた。 エチル(N,N,N’,N’−テトライソプロピル)ホスホロジアミダイト(2.46 mL, 9 mmol)を加え、アルゴン雰囲気下室温で3時間撹拌した。反応液をクロロホルムで希釈して5%炭酸水素ナトリウム水溶液で有機層を3回洗浄した。回収した有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧下留去した後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン−酢酸エチル−トリエチルアミン=100:0:1−85:15:1)で精製し、目的物(4a)(2.31 g, 71%)を白色フォーム状物質で得た。
1H−NMR (270 MHz, CDCl3) δ 0.81−1.1.47 (20H, m, 3”−Ha, 4”−H, CH3 of i−Pr, CH3 of POEt), 1.65−1.70 (1H, m, 3”−Hb), 2.97−3.04 (1H, m, 5”−Ha), 3.23−3.27 (1H, m, 5”−Hb), 3.63−3.87 (5H, m, 2”−H, CH2 of POEt, CH of i−Pr)
13C NMR (CDCl3) δ 18.63, 18.70, 18.75, 18.81, 25.65, 25.79, 25.86, 25.96, 26.05, 26.13, 32.50, 32.60, 45.62, 45.81, 45.88, 46.07, 51.94, 56.64, 62.15, 62.50, 67.13, 67.23, 127.72, 129.08, 130.52, 130.56, 145.88, 146.06, 179.65, 179.82;
31P NMR (CDCl3) δ 112.96, 114.49
【0048】
化合物5:
8−オキソアデノシン誘導体(2)(805 mg, 1.9 mmol)及びアミダイト試薬(4a)(2.09 g, 3.6 mmol)を無水アセトニトリルで4回共沸脱水した後、無水アセトニトリル(30 mL)に溶解させ、5−メルカプト−1−メチルテトラゾール(552 mg, 4.75 mmol)を加えてアルゴン雰囲気下室温で1時間撹拌した。その後、6M tert−ブチルハイドロパーオキサイド−デカン溶液(3.17 mL, 19 mmol)を加えて、室温でさらに10分間撹拌した。反応系をクロロホルムで希釈して有機層を蒸留水で3回洗浄した後、回収した有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧下留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン−酢酸エチル−ピリジン=50:50:1−40:60:1)で精製し、目的物(5b)(1.57 g, 95%)を白色フォーム状物質で得た。
1H−NMR (270 MHz, CDCl3) δ 0.81−0.88 (1H, m, 4”−Ha), 1.07−1.50 (9H, m, 4”−Hb, 3”−H, CH3 of isop, CH3 of POEt), 1.54−1.57 (1H, 2s, CH3 of isop), 1.62 (9H, s, (CH3)3C of Boc), 2.96−3.03 (1H, m, 5”−Ha), 3.31−3.36 (1H, m, 5”−Hb), 3.89−3.94 (2H, m, CH2 of POEt), 4.19−4.50 (4H, m, 2”−H, 4’−H, 5’−H), 5.08−5.13 (1H, m, 3’−H), 5.43−5.45 (1H, m, 2’−H), 6.23−6.26 (1H, m, 1’−H), 6.62 (2H, bs, NH2), 7.13−7.32 (9H, m, Ar−H), 7.45−7.67 (6H, m,Ar−H), 8.15−8.16 (1H, 2s, 2−H)
13C NMR (CDCl3) δ 15.93, 16.00, 16.03 16.11, 24.06, 24.10, 24.27, 26.96, 27.75, 30.98, 31.38, 31.44 50.22, 50.39, 50.45, 63.93, 63.97, 64.03, 64.05, 64.80, 65,25, 65.33 67.01, 77.20, 77.95, 78.04, 81.64, 81.83, 82.56, 82.73, 85.38, 85.50, 85.63, 86.30, 86.33, 86.86, 86.92, 101.67, 101.70, 113.65, 113.67, 126.09, 126.22, 127.45, 127.55, 128.86, 142.94, 143.82, 144.31, 147.22, 147.25, 147.80, 148.68, 148.72, 149.53, 149.56, 153.30, 177.18, 177.22, 177.25, 177.29
31P NMR (CDCl3) δ −1.82
【0049】
化合物6:
上記生成物(5a)(1.57 g, 1.81 mmol)を80%ギ酸水溶液(20 mL)に溶解し、室温で12時間撹拌した。反応系を蒸留水で希釈し、酢酸エチルで水層を3回洗浄した後、回収した水層を減圧下留去した。その後、さらに3回蒸留水で共沸した後、残渣をC−18シリカゲル逆相カラムクロマトグラフィー(水−アセトニトリル=100:0−95:5)で精製し、水溶液から凍結乾燥することにより目的物のジアステレオマー(733 mg, 83%)を白色フォーム状物質で得た。ジアステレオマーの分離は分取用HPLC(水−メタノール−トリフルオロ酢酸=93:7:0.1)で行った。流出速度の早い方をfast体、遅い方をslow体とし、水溶液から凍結乾燥することにより、トリフルオロ酢酸の塩としてそれぞれ純粋に分離した。その他のアルキルエステル体(6b,6c, fast or slow)についても同様に合成して分離することができた。
【0050】
6a−fast
1H−NMR (270 MHz, D2O) δ 1.23−1.28 (3H, t, CH3 of POEt), 1.96−2.13 (3H, m, 3”−Ha, 4”−H), 2.42−2.52 (1H, m, 3”−H), 3.34−3.47 (2H, m, 5”−H), 4.10−4.25 (3H, m, 2”−H, CH2 of POEt), 4.31−4.47 (3H, m, 4’−H, 5’−H), 4.63−4.67 (1H, m, 3’−H), 5.02−5.06 (1H, dd, 2’−H), 5.92−5.94 (1H, d, 1’−H), 8.34(1H, s, 2−H)
13C NMR (D2O) δ 17.88, 17.97, 26.16, 31.95, 49.12, 63.04, 63.22, 68.44,68.53, 69.63, 69.71, 72.15, 73.76, 84.26, 84.37, 89.29, 107.05, 112.39,116.68, 120.96, 125.25, 144.55, 146.78, 149.04, 154.84, 164.44, 164.96,165.47, 165.99, 173.92, 173.94
31P NMR (D2O) δ −1.35;
【0051】
6a−slow
1H−NMR (270 MHz, D2O) δ 1.24−1.29 (3H, t, CH3 of POEt), 2.01−2.22 (3H, m, 3”−Ha, 4”−H), 2.44−2.57 (1H, m, 3”−H), 3.35−3.51 (2H, m, 5”−H), 4.11−4.22 (2H, m, CH2 of POEt), 4.27−4.30 (1H, m, 2”−H), 4.39−4.52 (3H, m, 4’−H, 5’−H), 4.65−4.69 (1H, m, 3’−H), 5.08−5.12 (1H, dd, 2’−H), 5.96−5.98 (1H, d, 1’−H), 8.38 (1H, s, 2−H)
13C NMR (D2O) δ 17.80, 17.89, 26.11, 31.89, 49.08, 63.00, 63.19, 68.40,68.49, 69.66, 69.75, 72.18, 73.66, 84.33, 84.42, 89.20, 107.03, 112.50,116.79, 121.08, 125.36, 144.59, 146.81, 148.98, 154.84, 164.50, 165.02,165.54, 166.06, 173.91, 173.93
31P NMR (D2O) δ −1.40
【0052】
6b−fast
1H−NMR (270 MHz, D2O) δ 1.05−1.07 (6H, dd, CH3 of i−Pr), 1.77−1.89 (3H,m, 3”−Ha,4”−H), 2.23−2.29 (1H, m, 3”−Hb), 3.15−3.27 (2H, m, 5”−H), 4.02−4.03 (1H, m, CH of i−Pr), 4.12−4.27 (3H, m, 2”−H, 5’−H), 4.46−4.56 (2H,m, 3’−H, 4’−H), 4.85−4.88 (1H, m, 2’−H), 5.71−5.72 (1H, d, 1’−H), 8.09 (1H, s, 2−H)
13C NMR (D2O) δ 25.24, 25.32, 25.35, 25.42, 26.13, 31.93, 49.09, 63.01,63.20, 69.47, 69.56, 72.12, 73.67, 78.62, 78.71, 84.07, 84.19, 89.23, 106.91, 112.40, 116.68, 120.97, 125.26, 145.98, 148.70, 149.03, 154.88, 164.52, 165.04, 165.56, 166.08, 173.80, 173.8331P NMR (D2O) δ −2.71
【0053】
6b−slow
1H−NMR (270 MHz, D2O) δ 1.25−1.27 (6H, dd, CH3 of i−Pr), 2.01−2.06 (3H,m, 3”−Ha,4”−H), 2.45−2.50 (1H, m, 3”−Hb), 3.41−3.43 (2H, m, 5”−H), 4.24−4.25 (1H, m, CH of i−Pr), 4.31−4.47 (3H, m, 2”−H, 5’−H), 4.64−4.73 (2H, m, 3’−H, 4’−H), 5.08−5.12 (1H, m, 2’−H), 5.92−5.93 (1H, d, 1’−H), 8.31(1H, s, 2−H)
13C NMR (D2O) δ 25.19, 25.27, 25.33, 25.40, 26.12, 31.92, 49.08, 63.00,63.19, 69.53, 69.61, 72.17, 73.57, 78.65, 78.74, 84.18, 84.29, 89.15, 106.93, 112.50, 116.78, 121.07, 125.36, 145.90, 148.57, 149.00, 154.94, 164.56, 165.08, 165.60, 166.12, 173.80, 173.83
31P NMR (D2O) δ −2.80
【0054】
6c−fast
1H−NMR (270 MHz, D2O) δ 0.77−0.82 (3H, t, CH3 of POBu), 1.16−1.27 (2H, m, CH2α of POBu), 1.48−1.55 (2H, m, CH2β of POBu), 1.99−2.10 (3H, m, 3”−Ha, 4”−H), 2.43−2.48 (1H, m, 3”−Hb), 3.39 (2H, m, 5”−H), 4.02−4.09 (2H, m, CH2 of POBu), 4.21 (1H, m, 2”−H), 4.38−4.45 (3H, m, 4’−H, 5’−H), 4.64−4.66 (1H, m, 3’−H), 5.05−5.08 (1H, m, 2’−H), 5.90−5.91 (1H, d, 1’−H),8.24 (1H, s, 2−H)
13C NMR (D2O) δ 15.28, 20.60, 26.13, 31.96, 33.96, 34.06, 49.09, 62.99,63.18, 69.61, 69.68, 71.77, 71.86 72.02, 73.65, 83.97, 84.08, 89.20, 106.87, 112.47, 116.76, 121.04, 125.33, 146.82, 149.04, 149.79, 154.92, 164.61, 165.13, 165.65, 166.17, 173.91, 173,93
31P NMR (D2O) δ −1.15
【0055】
6c−slow
1H−NMR (270 MHz, D2O) δ 0.78−0.84 (3H, t, CH3 of POBu), 1.23−1.28 (2H, m, CH2α of POBu), 1.52−1.54 (2H, m, CH2β of POBu), 2.08 (3H, m, 3”−Ha,4”−H), 2.49 (1H, m, 3”−Hb), 3.43 (2H, m, 5”−H), 4.05−4.08 (2H, m, CH2 of POBu), 4.26 (1H, m, 2”−H), 4.40−4.49 (3H, m, 4’−H, 5’−H), 4.65−4.69 (1H, m, 3’−H), 5.11−5.12 (1H, m, 2’−H), 5.94−5.95 (1H, d, 1’−H), 8.32 (1H,s, 2−H)
13C NMR (D2O) δ 15.27, 20.57, 26.14, 31.95, 33.92, 34.02, 49.09, 62.99,63.18, 69.76, 69.84, 71.76, 71.85, 72.16, 73.60, 84.24, 84.36, 89.13, 106.89, 112.56, 116.85, 121.14, 125.42, 146.11, 148.87, 149.00, 154.94, 164.60, 165.12, 165.64, 166.16, 173.92, 173.94
31P NMR (D2O) δ −1.35
【0056】
化合物7
8−オキソアデノシン誘導体(2)(829 mg, 1.96 mmol)及びアミダイト試薬(4b)(2.08 g, 3.91 mmol)を無水アセトニトリルで4回共沸脱水した後、無水アセトニトリル(30 mL)に溶解し、5−メルカプト−1−メチルテトラゾール(568 mg, 4.89 mmol)を加えアルゴン雰囲気下室温で1時間撹拌した。その後、N,N,N’,N’−テトラエチルチウラムジスルフィド(1.74 g, 5.87 mmol)を加えさらに室温でさらに3時間撹拌した。反応系をクロロホルムで希釈して有機層を蒸留水で3回洗浄した後、回収した有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧下留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム−メタノール−ピリジン=100:0:1−98:2:1)で精製し、溶媒を減圧下留去した後、さらにドライシリカゲル(25 g)を用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン−酢酸エチル−ピリジン=100:0:1−70:30:1)で精製することにより、目的物(7)(1.03 g, 59%)を白色フォーム状物質で得た。
【0057】
1H−NMR (270 MHz, CDCl3) δ 0.62−1.38 (10H, m, 4”−H, 3”−H, CH3 of isop,CH3 of POEt), 1.47−1.50 (3H, 2s, CH3 of isop) 1.54−1.57 (9H, 2s, (CH3)3C of Boc), 2.86−2.95 (1H, m, 5”−Ha), 3.18−3.28 (1H, m, 5”−Hb), 3.82−3.90(2H, m, CH2 of POEt), 4.07−4.45 (4H, m, 2”−H, 4’−H, 5’−H), 5.05 (1H, m,3’−H), 5.36−5.42 (1H, m, 2’−H), 6.17−6.22 (1H, d, 1’−H) 6.48 (2H, bs, NH2) 7.09−7.21 (9H, m, Ar−H), 7.36−7.44 (6H, m, Ar−H), 8.09−8.11 (1H, 2s,2−H)
13C NMR (CDCl3) δ 15.72, 15.78, 15.83, 15.90, 24.08, 24.15, 25.27, 25.31, 26.91, 26.93, 27.79, 31.23, 31.30, 50.38, 50.47, 64.09, 64.17, 64.32,64.40, 65.38, 65.43, 77.25, 81.85, 81.92, 82.83, 82.92, 86.39, 86.41, 87.00, 87.06, 101.72, 101.77, 113.47, 126.28, 127.62, 127.64, 128.87, 143.78, 143.83 147.31, 147.33, 147.91, 148.65, 148.67, 149.54, 153.33, 175.68, 175.76; 31P NMR (CDCl3) δ 63.15, 63.22
【0058】
化合物8:
上記生成物(7)(1.03 g, 1.16 mmol)を80%ギ酸水溶液(10 mL)に溶解し、室温で12時間撹拌した。反応系を蒸留水で希釈し、酢酸エチルで水層を3回洗浄した後、回収した水層を減圧下留去した。その後、さらに3回蒸留水で共沸した後、残渣をC−18シリカゲル逆相カラムクロマトグラフィー(水−アセトニトリル=100:0−96:4)で精製し、水溶液から凍結乾燥することにより目的物のジアステレオマー(8)(209 mg, 36%)を白色フォーム状物質で得た。
1H−NMR (270 MHz, D2O) δ 0.96−1.03 (3H, t, CH3 of POEt) 1.84−1.96 (3H, m, 3”−Ha, 4”−H), 2.19 (1H, m, 3”−H), 3.18−3.27 (2H, m, 5”−H), 3.68−3.85 (3H, m, 2”−H, CH2 of POEt), 3.94−4.08 (3H, m, 4’−H, 5’−H), 4.51−4.59 (1H,m, 3’−H), 5.01−5.06 (1H, dd, 2’−H), 5.70−5.72 (1H, d, 1’−H), 7.91 (1H, s, 2−H)
13C NMR (D2O) δ 17.71, 17.82, 26.44, 32.22, 32.25, 48.87, 64.78, 65.13,65.65, 65.73, 65.83, 67.89, 67.96, 72.37, 72.44, 73.24, 84.26, 84.37, 84.47, 88.90, 88.96, 106.87, 149.04, 149.72, 153.54, 155.26, 177.69, 177.75
31P NMR (D2O) δ 70.00, 70.05
【0059】
試験例1
上記の実施例1で得られた化合物6a〜6c(それぞれについてfast及びslowの異性体)及び化合物8の癌細胞に対する増殖抑制効果を文献記載の方法(Moriguchi, T. et al., Tetrahydron Lett., 41, pp.5881−5885, 2000)に従って測定した。その結果、上記実施例で得られた化合物はいずれもホスミドシンに匹敵する優れた抗腫瘍活性を有していた。
【0060】
【発明の効果】
本発明により提供される一般式(I)に包含される化合物IAはホスミドシンと同等の抗腫瘍活性を有しており、しかも化学的に極めて安定であることから、抗腫瘍剤などの医薬の有効成分として有用である。また、本発明により提供される一般式(I)に包含される化合物IBはホスミドシン又は化合物IAなどの製造のための製造用中間体として有用である。
Claims (14)
- R1がC2−8アルキル基であり、R2が水素原子であり、R3及びR4が共に水素原子であり、R5が水素原子であり、XがOである上記化合物又はその塩;及びR1がC1−8アルキル基であり、R2が水素原子であり、R3及びR4が共に水素原子であり、R5が水素原子であり、XがSである請求項1に記載の化合物又はその塩。
- 請求項2に記載の化合物及び生理学的に許容されるその塩、並びにそれらの水和物及びそれらの溶媒和物からなる群から選ばれる物質を有効成分として含む医薬。
- 抗腫瘍剤として用いる請求項3に記載の医薬。
- 請求項3に記載の物質を含む癌細胞増殖抑制剤。
- 請求項3に記載の物質を含むG1期細胞周期停止剤。
- 請求項3に記載の物質を含むRBタンパク質のリン酸化阻害剤。
- R1、R2、R3、R4、R5、及びXが上記と同義であり、ただし、R1がC2−8アルキル基であり、R2が水素原子であり、R3及びR4が共に水素原子であり、R5が水素原子であり、かつXがOである場合、及びR1がC1−8アルキル基であり、R2が水素原子であり、R3及びR4が共に水素原子であり、R5が水素原子であり、かつXがSである場合を除く請求項1に記載の化合物又はその塩。
- ホスミドシン若しくは請求項2に記載の化合物又はそれらの塩の製造用中間体である請求項8に記載の化合物又はその塩。
- 上記の一般式(II)で表される化合物と上記の一般式(III)で表される化合物との反応を5−メルカプト−1−メチルテトラゾールの存在下に行う請求項10に記載の方法。
- ホスミドシン若しくは請求項2に記載の化合物又はそれらの塩の製造方法であって、請求項8に記載の化合物又はその塩を脱保護する工程を含む方法。
- ホスミドシン若しくは請求項2に記載の化合物又はそれらの塩の製造方法であって、下記の工程:
(a)請求項10に記載の一般式(II)で表される化合物と請求項10に記載の一般式(III)で表される化合物とを反応させ、得られた反応物を酸化又は硫化して請求項8に記載の化合物又はその塩を得る工程;及び
(b)上記工程(a)で得られた請求項8に記載の化合物又はその塩を脱保護する工程を含む方法。 - 請求項10に記載の一般式(III)で表される化合物。
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