JP2004123588A - メバロラクトンの製造方法 - Google Patents
メバロラクトンの製造方法 Download PDFInfo
- Publication number
- JP2004123588A JP2004123588A JP2002288520A JP2002288520A JP2004123588A JP 2004123588 A JP2004123588 A JP 2004123588A JP 2002288520 A JP2002288520 A JP 2002288520A JP 2002288520 A JP2002288520 A JP 2002288520A JP 2004123588 A JP2004123588 A JP 2004123588A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- tungsten
- hydrogen peroxide
- group
- mevalolactone
- methylpentane
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Pending
Links
Landscapes
- Pyrane Compounds (AREA)
- Low-Molecular Organic Synthesis Reactions Using Catalysts (AREA)
Abstract
【課題】相間移動触媒を用いることなく、またpH調整等の煩雑な操作もなく、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオールを過酸化水素で酸化して、メバロラクトンを製造する方法を提供すること。
【解決手段】タングステンと第IIIb族元素とからなるタングステン化合物、タングステンと第IVb族元素とからなるタングステン化合物、タングステンと第Vb族元素とからなるタングステン化合物、タングステンと酸素を除く第VIb族元素とからなるタングステン化合物およびタングステン金属からなる群から選ばれる少なくとも一種と過酸化水素とを反応せしめてなるタングステン酸化物触媒の存在下に、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオールと過酸化水素とを反応させることを特徴とするメバロラクトンの製造方法。
【選択図】 なし
【解決手段】タングステンと第IIIb族元素とからなるタングステン化合物、タングステンと第IVb族元素とからなるタングステン化合物、タングステンと第Vb族元素とからなるタングステン化合物、タングステンと酸素を除く第VIb族元素とからなるタングステン化合物およびタングステン金属からなる群から選ばれる少なくとも一種と過酸化水素とを反応せしめてなるタングステン酸化物触媒の存在下に、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオールと過酸化水素とを反応させることを特徴とするメバロラクトンの製造方法。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、メバロラクトンの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
メバロラクトンは、天然イソプレノイドの前駆体として知られており、医薬、農薬の合成原料として、また、電子材料として有用である(例えば特許文献1参照。)。その製造方法としては、例えば臭化ナトリウムの存在下、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオールを過酢酸で酸化する方法(例えば非特許文献1参照。)、臭化ナトリウム等の臭化物の存在下、水およびアセトニトリルの混合溶媒中、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオールを次亜塩素酸ナトリウムで酸化する方法(例えば特許文献2参照。)が知られている。しかしながら、前者の方法は、比較的高価で、取扱いに注意を要する過酢酸を用いなければならないという点で、後者の方法は、比較的長い反応時間を要し、生産性が低いという点で、工業的という観点からは、さらなる改善が望まれていた。
【0003】
一方、過酸化水素は、安価で、取扱い容易で、しかも反応後には無害な水となる、クリーンで優れた酸化剤として近年注目を集めており、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオールと過酸化水素とを反応させてメバロラクトンを製造する方法が報告されているが(例えば特許文献3参照。)、相間移動触媒を用いなければならず、またpH調整も必要であり、必ずしも工業的に十分満足し得る方法とは言えなかった。
【0004】
【特許文献1】
特開平10−78658号公報
【特許文献2】
特開2000−38383公報
【特許文献3】
特開2002−80473公報
【非特許文献1】
Bull.Chem.Soc.Jpn.,65,703(1992)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
このような状況のもと、本発明者らは、相間移動触媒を用いることなく、またpH調整等の煩雑な操作もなく、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオールを過酸化水素で酸化して、メバロラクトンを製造する方法について鋭意検討したところ、タングステン金属やホウ化タングステン等のタングステン化合物と過酸化水素を反応せしめてなるタングステン酸化物が、良好な酸化触媒活性を示し、該タングステン酸化物触媒の存在下に、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオールと過酸化水素とを反応させることにより、メバロラクトンが収率よく得られることを見いだし、本発明に至った。
【0006】
【課題を解決するための手段】
すなわち本発明は、タングステンと第IIIb族元素とからなるタングステン化合物、タングステンと第IVb族元素とからなるタングステン化合物、タングステンと第Vb族元素とからなるタングステン化合物、タングステンと酸素を除く第VIb族元素とからなるタングステン化合物およびタングステン金属からなる群から選ばれる少なくとも一種と過酸化水素とを反応せしめてなるタングステン酸化物触媒の存在下に、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオールと過酸化水素とを反応させることを特徴とするメバロラクトンの製造方法を提供するものである。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明に用いられる触媒は、タングステンと第IIIb族元素とからなるタングステン化合物、タングステンと第IVb族元素とからなるタングステン化合物、タングステンと第Vb族元素とからなるタングステン化合物、タングステンと酸素を除く第VIb族元素とからなるタングステン化合物およびタングステン金属からなる群から選ばれる少なくとも一種(以下、タングステン化合物と略記する。)と過酸化水素とを反応せしめてなるタングステン酸化物である。
【0008】
タングステンと第IIIb元素とからなるタングステン化合物としては、例えばホウ化タングステン等が、タングステンと第IVb元素とからなるタングステン化合物としては、例えば炭化タングステン等が、タングステンと第Vb族元素とからなるタングステン化合物としては、例えばチッ化タングステン、リン化タングステン等が、タングステンと酸素を除く第VIb族元素とからなるタングステン化合物としては、例えば硫化タングステン等が挙げられる。かかるタングステン化合物のなかでも、タングステン金属、硫化タングステンが好ましく、タングステン金属が特に好ましい。また、これらタングステン化合物はそれぞれ単独で用いてもよいし、二種以上を混合して用いてもよい。
【0009】
かかるタングステン化合物と過酸化水素とを反応せしめることにより、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオールを酸化して、メバロラクトンを製造するための触媒となるタングステン酸化物が調製される。タングステン化合物と過酸化水素との反応は、通常水溶液中で実施される。もちろん例えばジエチルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、例えば酢酸エチル等のエステル系溶媒、例えばtert−ブタノール等の第三級アルコール系溶媒、例えばアセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル系溶媒等の有機溶媒中または該有機溶媒と水との混合溶媒中で実施してもよい。
【0010】
過酸化水素は、通常水溶液として用いられるが、有機溶媒溶液を用いてもよい。取扱いがより容易であるという点で、過酸化水素水溶液を用いることが好ましい。過酸化水素水溶液もしくは有機溶媒溶液中の過酸化水素濃度は特に制限されないが、容積効率、安全面等を考慮すると、実用的には1〜60重量%である。過酸化水素水溶液は、通常市販のものをそのままもしくは必要に応じて、希釈、濃縮等により濃度調整を行なった後用いればよい。また過酸化水素の有機溶媒溶液は、例えば過酸化水素水溶液を有機溶媒で抽出処理する、もしくは有機溶媒の存在下に蒸留処理する等の手段により調製することができる。
【0011】
タングステン酸化物を調製する際の過酸化水素の使用量は、タングステン化合物に対して、通常3モル倍以上、好ましくは5モル倍以上であり、その上限は特にない。
【0012】
タングステン化合物と過酸化水素との反応は、通常その両者を混合することにより行われ、タングステン化合物と過酸化水素の接触効率を向上させるため、タングステン酸化物調製液中でタングステン化合物が十分分散するよう攪拌しながら反応を行うことが好ましい。またタングステン化合物と過酸化水素の接触効率を高め、タングステン酸化物調製時の制御をより容易にするという点で、例えば粉末状のタングステン酸化物等粒径の小さなタングステン化合物を用いることが好ましい。タングステン酸化物の調製時の調製温度は、通常−10〜100℃である。
【0013】
タングステン化合物と過酸化水素とを水中もしくは有機溶媒中で反応させることにより、タングステン化合物の全部もしくは一部が溶解し、タングステン酸化物を含む均一溶液もしくは懸濁液を調製することができ、該タングステン酸化物を、例えば濃縮処理等により調製液から取り出して、触媒として用いてもよいし、該調製液をそのまま触媒として用いてもよい。
【0014】
かくして得られたタングステン酸化物触媒の存在下に、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオールと過酸化水素とを反応させることにより、メバロラクトンが得られるが、過酸化水素としては、通常水溶液が用いられる。もちろん過酸化水素の有機溶媒溶液を用いてもよい。過酸化水素水溶液もしくは過酸化水素の有機溶媒溶液中の過酸化水素濃度は特に制限されないが、容積効率、安全面等を考慮すると、実用的には1〜60重量%である。
【0015】
過酸化水素の使用量は、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオールに対して、通常1.5〜2.5モル倍であり、好ましくは1.8〜2.2モル倍である。
【0016】
タングステン酸化物触媒の使用量は、タングステン金属として、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオールに対して、通常0.001〜0.95モル倍、好ましくは0.005〜0.1モル倍である。
【0017】
3−メチルペンタン−1,3,5−トリオールと過酸化水素との反応は、無溶媒あるいは水溶媒中で行うが、反応に悪影響を及ぼさない有機溶媒中や水と反応に悪影響を及ぼさない有機溶媒の混合溶媒中で行ってもよい。反応に悪影響を及ぼさない有機溶媒としては、例えばジエチルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジグライム等のエーテル系溶媒、例えば酢酸エチル等のエステル系溶媒、例えばtert−ブタノール等の第三級アルコール系溶媒、例えばアセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル系溶媒等が挙げられ、その使用量は特に制限されない。
【0018】
本反応は、通常タングステン酸化物触媒、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオールおよび過酸化水素を接触、混合させることにより行われるが、例えばタングステン化合物、過酸化水素および3−メチルペンタン−1,3,5−トリオールを接触、混合させて、タングステン酸化物触媒の調製操作と、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオールと過酸化水素との反応を同時並行的に行ってもよい。
【0019】
反応温度は、通常50〜130℃であり、通常常圧条件下で実施されるが、減圧あるいは加圧条件下で実施してもよい。
【0020】
反応終了後、反応液をそのままもしくは必要に応じて、残存する過酸化水素を、例えば亜硫酸ナトリウム等の還元剤で分解した後、濃縮処理、晶析処理等することにより、目的とするメバロラクトンを取り出すことができる。また、反応液に、必要に応じて水および/または水に不溶の有機溶媒を加え、抽出処理し、得られる有機層を濃縮処理もしくは晶析処理することにより、メバロラクトンを取り出すこともできる。取り出したメバロラクトンは、例えば再結晶、カラムクロマトグラフィ等通常の精製方法によりさらに精製してもよい。
【0021】
メバロラクトンを晶析処理により取り出した後の濾液や反応液を抽出処理し、有機層を取り出した後の水層には、本反応のタングステン酸化物触媒を含んでおり、そのままもしくは必要に応じて濃縮処理等を行った後、再度本反応に再使用することができる。
【0022】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこの実施例に限定されない。
【0023】
実施例1
還流冷却管を付した100mLシュレンク管(窒素置換済)に、室温で、タングステン金属(粉末)0.074gおよび30重量%過酸化水素水1.1gを仕込み、内温50℃で、15分攪拌し、触媒液を調製した。該触媒液に、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオール5.4gおよび30重量%過酸化水素水9.5gを仕込み、内温90℃で6時間攪拌、保持した。得られた反応液を冷却し、亜硫酸ナトリウム1gを加え、十分に攪拌し、メバロラクトンを含む反応液を得た。該反応液をエタノールで希釈し、ガスクロマトグラフィにより分析した。メバロラクトンの生成量:4.2g。収率:81%(3−メチルペンタン−1,3,5−トリオール基準)。
【0024】
【発明の効果】
本発明によれば、入手が容易なタングステン金属、ホウ化タングステン等のタングステン化合物と過酸化水素とから、容易に、調製されるタングステン酸化物を触媒に用い、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオールと過酸化水素とを反応させることにより、相間移動触媒を用いることなく、またpH調整の必要もなく、メバロラクトンを製造することができるため、工業的に有利である。
【発明の属する技術分野】
本発明は、メバロラクトンの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
メバロラクトンは、天然イソプレノイドの前駆体として知られており、医薬、農薬の合成原料として、また、電子材料として有用である(例えば特許文献1参照。)。その製造方法としては、例えば臭化ナトリウムの存在下、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオールを過酢酸で酸化する方法(例えば非特許文献1参照。)、臭化ナトリウム等の臭化物の存在下、水およびアセトニトリルの混合溶媒中、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオールを次亜塩素酸ナトリウムで酸化する方法(例えば特許文献2参照。)が知られている。しかしながら、前者の方法は、比較的高価で、取扱いに注意を要する過酢酸を用いなければならないという点で、後者の方法は、比較的長い反応時間を要し、生産性が低いという点で、工業的という観点からは、さらなる改善が望まれていた。
【0003】
一方、過酸化水素は、安価で、取扱い容易で、しかも反応後には無害な水となる、クリーンで優れた酸化剤として近年注目を集めており、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオールと過酸化水素とを反応させてメバロラクトンを製造する方法が報告されているが(例えば特許文献3参照。)、相間移動触媒を用いなければならず、またpH調整も必要であり、必ずしも工業的に十分満足し得る方法とは言えなかった。
【0004】
【特許文献1】
特開平10−78658号公報
【特許文献2】
特開2000−38383公報
【特許文献3】
特開2002−80473公報
【非特許文献1】
Bull.Chem.Soc.Jpn.,65,703(1992)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
このような状況のもと、本発明者らは、相間移動触媒を用いることなく、またpH調整等の煩雑な操作もなく、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオールを過酸化水素で酸化して、メバロラクトンを製造する方法について鋭意検討したところ、タングステン金属やホウ化タングステン等のタングステン化合物と過酸化水素を反応せしめてなるタングステン酸化物が、良好な酸化触媒活性を示し、該タングステン酸化物触媒の存在下に、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオールと過酸化水素とを反応させることにより、メバロラクトンが収率よく得られることを見いだし、本発明に至った。
【0006】
【課題を解決するための手段】
すなわち本発明は、タングステンと第IIIb族元素とからなるタングステン化合物、タングステンと第IVb族元素とからなるタングステン化合物、タングステンと第Vb族元素とからなるタングステン化合物、タングステンと酸素を除く第VIb族元素とからなるタングステン化合物およびタングステン金属からなる群から選ばれる少なくとも一種と過酸化水素とを反応せしめてなるタングステン酸化物触媒の存在下に、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオールと過酸化水素とを反応させることを特徴とするメバロラクトンの製造方法を提供するものである。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明に用いられる触媒は、タングステンと第IIIb族元素とからなるタングステン化合物、タングステンと第IVb族元素とからなるタングステン化合物、タングステンと第Vb族元素とからなるタングステン化合物、タングステンと酸素を除く第VIb族元素とからなるタングステン化合物およびタングステン金属からなる群から選ばれる少なくとも一種(以下、タングステン化合物と略記する。)と過酸化水素とを反応せしめてなるタングステン酸化物である。
【0008】
タングステンと第IIIb元素とからなるタングステン化合物としては、例えばホウ化タングステン等が、タングステンと第IVb元素とからなるタングステン化合物としては、例えば炭化タングステン等が、タングステンと第Vb族元素とからなるタングステン化合物としては、例えばチッ化タングステン、リン化タングステン等が、タングステンと酸素を除く第VIb族元素とからなるタングステン化合物としては、例えば硫化タングステン等が挙げられる。かかるタングステン化合物のなかでも、タングステン金属、硫化タングステンが好ましく、タングステン金属が特に好ましい。また、これらタングステン化合物はそれぞれ単独で用いてもよいし、二種以上を混合して用いてもよい。
【0009】
かかるタングステン化合物と過酸化水素とを反応せしめることにより、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオールを酸化して、メバロラクトンを製造するための触媒となるタングステン酸化物が調製される。タングステン化合物と過酸化水素との反応は、通常水溶液中で実施される。もちろん例えばジエチルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、例えば酢酸エチル等のエステル系溶媒、例えばtert−ブタノール等の第三級アルコール系溶媒、例えばアセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル系溶媒等の有機溶媒中または該有機溶媒と水との混合溶媒中で実施してもよい。
【0010】
過酸化水素は、通常水溶液として用いられるが、有機溶媒溶液を用いてもよい。取扱いがより容易であるという点で、過酸化水素水溶液を用いることが好ましい。過酸化水素水溶液もしくは有機溶媒溶液中の過酸化水素濃度は特に制限されないが、容積効率、安全面等を考慮すると、実用的には1〜60重量%である。過酸化水素水溶液は、通常市販のものをそのままもしくは必要に応じて、希釈、濃縮等により濃度調整を行なった後用いればよい。また過酸化水素の有機溶媒溶液は、例えば過酸化水素水溶液を有機溶媒で抽出処理する、もしくは有機溶媒の存在下に蒸留処理する等の手段により調製することができる。
【0011】
タングステン酸化物を調製する際の過酸化水素の使用量は、タングステン化合物に対して、通常3モル倍以上、好ましくは5モル倍以上であり、その上限は特にない。
【0012】
タングステン化合物と過酸化水素との反応は、通常その両者を混合することにより行われ、タングステン化合物と過酸化水素の接触効率を向上させるため、タングステン酸化物調製液中でタングステン化合物が十分分散するよう攪拌しながら反応を行うことが好ましい。またタングステン化合物と過酸化水素の接触効率を高め、タングステン酸化物調製時の制御をより容易にするという点で、例えば粉末状のタングステン酸化物等粒径の小さなタングステン化合物を用いることが好ましい。タングステン酸化物の調製時の調製温度は、通常−10〜100℃である。
【0013】
タングステン化合物と過酸化水素とを水中もしくは有機溶媒中で反応させることにより、タングステン化合物の全部もしくは一部が溶解し、タングステン酸化物を含む均一溶液もしくは懸濁液を調製することができ、該タングステン酸化物を、例えば濃縮処理等により調製液から取り出して、触媒として用いてもよいし、該調製液をそのまま触媒として用いてもよい。
【0014】
かくして得られたタングステン酸化物触媒の存在下に、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオールと過酸化水素とを反応させることにより、メバロラクトンが得られるが、過酸化水素としては、通常水溶液が用いられる。もちろん過酸化水素の有機溶媒溶液を用いてもよい。過酸化水素水溶液もしくは過酸化水素の有機溶媒溶液中の過酸化水素濃度は特に制限されないが、容積効率、安全面等を考慮すると、実用的には1〜60重量%である。
【0015】
過酸化水素の使用量は、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオールに対して、通常1.5〜2.5モル倍であり、好ましくは1.8〜2.2モル倍である。
【0016】
タングステン酸化物触媒の使用量は、タングステン金属として、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオールに対して、通常0.001〜0.95モル倍、好ましくは0.005〜0.1モル倍である。
【0017】
3−メチルペンタン−1,3,5−トリオールと過酸化水素との反応は、無溶媒あるいは水溶媒中で行うが、反応に悪影響を及ぼさない有機溶媒中や水と反応に悪影響を及ぼさない有機溶媒の混合溶媒中で行ってもよい。反応に悪影響を及ぼさない有機溶媒としては、例えばジエチルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジグライム等のエーテル系溶媒、例えば酢酸エチル等のエステル系溶媒、例えばtert−ブタノール等の第三級アルコール系溶媒、例えばアセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル系溶媒等が挙げられ、その使用量は特に制限されない。
【0018】
本反応は、通常タングステン酸化物触媒、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオールおよび過酸化水素を接触、混合させることにより行われるが、例えばタングステン化合物、過酸化水素および3−メチルペンタン−1,3,5−トリオールを接触、混合させて、タングステン酸化物触媒の調製操作と、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオールと過酸化水素との反応を同時並行的に行ってもよい。
【0019】
反応温度は、通常50〜130℃であり、通常常圧条件下で実施されるが、減圧あるいは加圧条件下で実施してもよい。
【0020】
反応終了後、反応液をそのままもしくは必要に応じて、残存する過酸化水素を、例えば亜硫酸ナトリウム等の還元剤で分解した後、濃縮処理、晶析処理等することにより、目的とするメバロラクトンを取り出すことができる。また、反応液に、必要に応じて水および/または水に不溶の有機溶媒を加え、抽出処理し、得られる有機層を濃縮処理もしくは晶析処理することにより、メバロラクトンを取り出すこともできる。取り出したメバロラクトンは、例えば再結晶、カラムクロマトグラフィ等通常の精製方法によりさらに精製してもよい。
【0021】
メバロラクトンを晶析処理により取り出した後の濾液や反応液を抽出処理し、有機層を取り出した後の水層には、本反応のタングステン酸化物触媒を含んでおり、そのままもしくは必要に応じて濃縮処理等を行った後、再度本反応に再使用することができる。
【0022】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこの実施例に限定されない。
【0023】
実施例1
還流冷却管を付した100mLシュレンク管(窒素置換済)に、室温で、タングステン金属(粉末)0.074gおよび30重量%過酸化水素水1.1gを仕込み、内温50℃で、15分攪拌し、触媒液を調製した。該触媒液に、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオール5.4gおよび30重量%過酸化水素水9.5gを仕込み、内温90℃で6時間攪拌、保持した。得られた反応液を冷却し、亜硫酸ナトリウム1gを加え、十分に攪拌し、メバロラクトンを含む反応液を得た。該反応液をエタノールで希釈し、ガスクロマトグラフィにより分析した。メバロラクトンの生成量:4.2g。収率:81%(3−メチルペンタン−1,3,5−トリオール基準)。
【0024】
【発明の効果】
本発明によれば、入手が容易なタングステン金属、ホウ化タングステン等のタングステン化合物と過酸化水素とから、容易に、調製されるタングステン酸化物を触媒に用い、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオールと過酸化水素とを反応させることにより、相間移動触媒を用いることなく、またpH調整の必要もなく、メバロラクトンを製造することができるため、工業的に有利である。
Claims (6)
- タングステンと第IIIb族元素とからなるタングステン化合物、タングステンと第IVb族元素とからなるタングステン化合物、タングステンと第Vb族元素とからなるタングステン化合物、タングステンと酸素を除く第VIb族元素とからなるタングステン化合物およびタングステン金属からなる群から選ばれる少なくとも一種と過酸化水素とを反応せしめてなるタングステン酸化物触媒の存在下に、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオールと過酸化水素とを反応させることを特徴とするメバロラクトンの製造方法。
- 過酸化水素の使用量が、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオールに対して、1.5〜2.5モル倍の範囲である請求項1に記載のメバロラクトンの製造方法。
- 第IIIb族元素が、ホウ素である請求項1に記載のメバロラクトンの製造方法。
- 第IVb族元素が、炭素である請求項1に記載のメバロラクトンの製造方法。
- 第Vb族元素が、窒素またはリンである請求項1に記載のメバロラクトンの製造方法。
- 酸素を除く第VIb族元素が、硫黄である請求項1に記載のメバロラクトンの製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002288520A JP2004123588A (ja) | 2002-10-01 | 2002-10-01 | メバロラクトンの製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002288520A JP2004123588A (ja) | 2002-10-01 | 2002-10-01 | メバロラクトンの製造方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2004123588A true JP2004123588A (ja) | 2004-04-22 |
Family
ID=32280995
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2002288520A Pending JP2004123588A (ja) | 2002-10-01 | 2002-10-01 | メバロラクトンの製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2004123588A (ja) |
-
2002
- 2002-10-01 JP JP2002288520A patent/JP2004123588A/ja active Pending
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP4306430B2 (ja) | アジピン酸の製造方法 | |
JP2004123588A (ja) | メバロラクトンの製造方法 | |
WO2006080401A1 (ja) | フッ素化プロリン誘導体の製造方法 | |
JPH07330755A (ja) | ピペロナールの製法 | |
JP7094185B2 (ja) | シクロヘキセンオキサイドの製造方法 | |
JP3282357B2 (ja) | ピペロナールの製造法 | |
JP5188475B2 (ja) | 2−(3−ニトロベンジリデン)アセト酢酸イソプロピルの製造方法 | |
JP4066679B2 (ja) | アラルキルケトン類の製造方法とその触媒 | |
JP4000816B2 (ja) | 3−メチルアジピン酸の製造方法 | |
JP3950422B2 (ja) | アザディールス・アルダー反応方法 | |
JP3282386B2 (ja) | ピペロナールの製造方法 | |
CN113754602B (zh) | 一种5,5-二甲基-4,5-二氢异噁唑-3-酮的合成方法 | |
KR102193321B1 (ko) | 베타-트리플루오로메틸 케톤 유도체의 제조방법 | |
KR19990087905A (ko) | 4-(데스-디메틸아미노)-테트라사이클린의제조방법 | |
JP2004137187A (ja) | ビタミンk3の製造方法 | |
KR100493933B1 (ko) | 2-메틸-4-이소티아졸린-3-온 및 이의 염의 제조 방법 | |
KR100234626B1 (ko) | 2-(2,6-디클로로페닐)아미노)페닐아세톡시아세트산의제조방법 | |
JP2003171333A (ja) | ケトン類の製造方法 | |
KR20070114343A (ko) | 비칼루타미드의 제조 방법 | |
JPH1072419A (ja) | tert−ロイシンの製造方法 | |
JP4371416B2 (ja) | 高純度2,4−ジクロロ−3−アルキル−6−tert−ブチルフェノール類およびその製造方法 | |
WO2004009530A1 (ja) | 高純度のエナミン類の製造方法 | |
JP2003277312A (ja) | ラクトン類またはカルボン酸類の製造方法 | |
JP3547498B2 (ja) | ベンゾチアゾロン化合物の製造方法 | |
CN115572747A (zh) | 托匹司他的制备方法 |