JP2004122468A - 画像記録物、その形成方法及びそれに用いる液体組成物 - Google Patents
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Abstract
【課題】画像の少なくとも一部に被覆層を形成することで、画像品位、耐ガス性に優れた画像記録物を得ることができ、しかもインクジェット記録装置のノズルの目詰まりを生じさせることがなく、かつ装置の小型化も可能である画像記録物の形成方法を提供すること。
【解決手段】下記一般式(1)で表される構造を有する高分子が水性媒体に溶解した状態で含有される液体組成物を記録媒体の画像がインクジェット記録方法により記録されたインク受容層から形成される画像面に付与し、インク受容層中の多価金属イオンの作用により高分子を不溶化させて画像面上に被覆層を形成する際に、液体組成物の画像面上での固化時間(ΔTc)を5〜200msecに設定する。
−COOA・・・(1)
(但し、式中のAはアルカリ金属、アンモニウム又は有機アンモニウムを表わす。)
【選択図】 なし
【解決手段】下記一般式(1)で表される構造を有する高分子が水性媒体に溶解した状態で含有される液体組成物を記録媒体の画像がインクジェット記録方法により記録されたインク受容層から形成される画像面に付与し、インク受容層中の多価金属イオンの作用により高分子を不溶化させて画像面上に被覆層を形成する際に、液体組成物の画像面上での固化時間(ΔTc)を5〜200msecに設定する。
−COOA・・・(1)
(但し、式中のAはアルカリ金属、アンモニウム又は有機アンモニウムを表わす。)
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はインクジェットによる画像記録物の形成方法および画像記録物、これらに用いる被覆層形成用液体組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
インクジェット記録方式は、インクの微小液滴を種々の作動原理により飛翔させて、紙などの記録媒体に付着させ、画像、文字などを記録するものであるが、高速低騒音、多色化が容易であり、記録パターンの融通性が大きい、現像、定着が不要などの特徴があり、近年、各種画像の記録装置として情報機器をはじめ各種の用途において急速に普及している。更に多色インクジェット方式により形成される画像は、製版方式による多色印刷や、カラー写真方式による印画と比較して遜色のない記録を得ることも可能であり、作成部数が少ない場合には通常の多色印刷や印画によるよりも安価であることから、フルカラー画像記録分野にまで広く応用されつつある。
【0003】
また、近年、ベーマイト構造のアルミナ水和物を用いた塗工層を有する記録媒体が提案されており、例えば、特許文献1にその代表例が開示されている。
【0004】
これらのアルミナ水和物を用いた記録媒体は、アルミナ水和物が正電荷を持っているため、インク染料の定着が良く、発色の良い画像が得られること、更に、画質、特にフルカラー画像における画質及び光沢の点で従来の記録媒体に比べ好ましいなどの長所を有している。
【0005】
しかしながら、上述のごとき染料系インクとアルミナ水和物を用いた記録媒体によって、銀塩プリントに匹敵、またはそれを凌ぐ画質が得られているものの、形成された高画質の画質を長時間維持することに関して、特に、空気中のオゾンガス等の物質による劣化に対しての耐性(耐ガス性)は、満足する性能を有していない場合が生じているのが現状である。
【0006】
得られる記録物の画像耐久性の向上を目的としたものとしては、画像形成後の記録材表面に保護層を設ける方法が開示されている。例えば画像記録物上に保護膜として各種プラスチックフィルムをラミネートする方法が、特許文献2に開示されている。
【0007】
また、特許文献3には、には記録媒体のインク受容層中に熱可塑性高分子からなる微粒子を含有させておき、インク吸収性を保った状態で印字を行った後、上記微粒子を熱や溶剤により溶融、溶解して樹脂皮膜を表面に形成して保護皮膜とする方法が記載されている。
【0008】
被覆層を形成する手段として画像形成方法と同じ方式を用いる例として、特許文献4に、インクジェット方式によりエマルジョン等の膜形成機能を有する樹脂を含む液体組成物を吐出することによって被覆層を形成する方法が開示されている。
【0009】
【特許文献1】
特開平7−232475号公報
【特許文献2】
特開2001−158092号公報
【特許文献3】
特開平10−315448号公報
【特許文献4】
特開2000−225695号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特開平10−315448号公報等に記載の方法では、確かに耐ガス性は良好となるものの、画像の記録装置以外に、ラミネート装置や熱可塑性高分子からなる微粒子の溶融、溶解のための装置を別途設ける必要があり、ランニングコストのアップや装置が大掛かりになってしまう等の問題がある。
【0011】
また、特開2000−225695号公報記載のようなエマルジョンのような自己造膜性を有する樹脂を吐出用の液体に含有させた場合、微細なノズル先端における長期の放置による固化(ノズルつまり)を引き起こしやすい場合がある。
【0012】
更に、このような被覆層形成用の液体組成物をインクジェット記録方法により記録媒体の表面に付与し、被覆層を形成させる場合は、被覆層の形成状態を制御することが難しく、補助液が記録媒体上でレベリングしすぎて干渉模様や光沢ムラを生じてしまったり、逆に干渉模様や光沢ムラ低減を狙ってレベリングを抑制するとガスバリアー性が不十分であったりするといった問題を生じる場合がある。
【0013】
本発明は上記の問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、画像の少なくとも一部に液体組成物をインクジェット記録装置により付与して光沢感に優れる均一な被覆層を形成することで、画像品位、耐ガス性に優れた画像記録物を得ることができ、しかもインクジェット記録装置のノズルの目詰まりを生じさせることがなく、かつ装置の小型化も可能である画像記録物の形成方法及びそれに用いる被覆層形成用の液体組成物を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記の目的は、以下の本発明によって達成される。本発明の画像記録物の形成方法は、画像の少なくとも一部に被覆層を有する画像記録物の形成方法であって、
水性媒体と、下記一般式(1)で表される構造(以下カルボン酸塩と表す)を有する高分子と、を含む液体組成物を用意する工程と、
記録媒体の有するインク受容層にインクジェット記録方法によりインクを付与して形成した画像を有し、該インク受容層中に多価金属イオンを含む画像記録物を用意する工程と、
該記録物の画像上の少なくとも一部に前記液体組成物を付与し、該液体組成物中に含有される高分子を前記インク受容層中に含まれる多価金属イオンにより不溶化させることにより該液体組成物の付与位置に被覆層を形成する工程と、を有し、
前記液体組成物の画像上での固化時間(ΔTc)を5〜200msecとしたことを特徴とする。
−COOA・・・(1)
(但し、式中のAはアルカリ金属、アンモニウム又は有機アンモニウムを表わす。)
本発明の画像記録物は、上記の形成方法によって得られたことを特徴とする。また、本発明の液体組成物は、記録媒体のインク受容層にインクジェット記録方法によりインクを付与して形成された画像の少なくとも一部に被覆層を形成するための液体組成物であって、
水性媒体と、カルボン酸塩を有する高分子と、を含み、該高分子が、前記画像が形成されているインク受容層中の多価金属イオンによって不溶化し得る状態で該水性媒体に溶解しており、前記画像上に付与された際の固化時間(ΔTc)が5〜200msecの範囲にあることを特徴とする。
【0015】
本発明においては、画像の少なくとも一部に付与された液体組成物中に溶解した状態で含まれた高分子が、画像が形成されている記録媒体のインク受容層に含有された多価金属イオンによって不溶化して画像の液体組成物が付与された部分に被覆層が形成される。この被覆層によれば、画像品位を向上させる効果を有することができるとともに、耐ガス性や耐擦性を画像に付与することができる。更に、高分子の不溶化に伴う固化時間が5〜200msecの範囲に設定されていることで、インクジェット記録によって画像上に液体組成物を付与した際でも更に効率的な液体組成物の付与により表面性を制御した被覆層の形成が可能となる。なお、画像上の被覆層の形成位置は、染料などの色材による着色部に限定されず、非着色部であってもよい。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の画像形成方法について詳細に述べる。
【0017】
本発明における画像の形成には、液体にエネルギーを加えて小滴を飛翔させ、記録媒体上に付着させて記録を行なう画像形成方法であるインクジェット記録方法が用いられる。本発明においては後述する被覆層形成用の液体組成物も同様にインクジェット記録方法によって、既に画像が形成された記録媒体上に着弾させる。液体組成物中の高分子による被覆層形成部位は、記録媒体上に形成された画像の着色部(色材による着色部)のみ、着色部と非着色部を含む全面または一部、あるいは着色されていない部分(非着色部)のみでも良い。インクジェット記録方法を用いることで、記録媒体への液体組成物の均一付与が容易となる。更には、液体組成物の付与方法が画像の形成方法と同一であることで、インクジェット記録用ヘッドに液体組成物用のノズルを追加する等、被覆層形成用のユニットを別途設ける必要がないため、被覆層形成用の装置が付加された記録装置の小型化が可能となる。
【0018】
本発明における被覆層形成用の液体組成物は、カルボン酸塩を有する高分子を含む。この高分子は、水性媒体中に溶解しており液体組成物が付与される画像を有する記録媒体のインク受容層中の多価金属イオンの作用により不溶化する。その好ましい態様としては、液体組成物中の高分子が不溶化する多価金属イオン濃度に調整されたインク受容層を有する記録媒体上で高分子を瞬時に不溶化させ、高分子と水性媒体(溶媒成分)を固液分離し、溶媒成分を記録媒体中に吸収させて、記録媒体上に高分子からなる被覆層を形成させる方法を挙げることができる。
【0019】
この被覆層の形成により種々の物理的または化学的な変化から記録画像が保護され、記録画像により高い耐ガス性が付与される。具体的には画像記録後にインクジェット記録方式により高分子を含有する被覆層形成用の液体組成物を、あらかじめ液体組成物中に溶解している高分子が不溶化する多価金属イオン濃度に調整されたインク受容層を有する記録媒体上に付与した際、インク受容層中の多価金属イオンによって液体組成物中の高分子のカルボン酸塩の対イオンが脱離し多価金属イオンを介して水溶性高分子共重合体どうしが会合することで、高分子が不溶化凝集して記録媒体上に結晶性の高い薄膜が形成される。これにより種々の物理的または化学的な変化から記録画像が保護され、記録画像にガスに対する高い堅牢性が得られるのである。
被覆層形成の過程において液体組成物の液滴は、画像上に次々と付与され着弾し、着弾した液滴は隣接位置または同一位置に着弾した他の液滴と互いに合一し一体化することで均一な被覆層を形成していく。
【0020】
本発明では、インクジェット記録方法により液体組成物を記録媒体の画像が記録された面に付与し、その際、記録媒体上での液体組成物の液滴の固化時間をコントロールすることで、ガスバリアー性を有し、かつ高光沢で干渉模様が無いように制御して被覆層を形成することが可能となる。また、画像上の非着色部に被覆層を形成させた場合においても汚れ付着防止等の効果が付与される。
【0021】
本発明者らは検討の結果、インクジェット記録方法により吐出された液体組成物の液滴は、記録媒体上に着弾後、▲1▼変形:記録媒体上で円盤状に変形、▲2▼吸収:液滴中の水分など(水の他、溶剤および高分子以外の水溶性成分など)の記録媒体への吸収、▲3▼固化:液滴中の高分子が不溶化し固化していく、という3つの挙動が同時並行で、あるいは互いに時期的に重複して進行しているものと捉え、この▲2▼の液滴の吸収および▲3▼の液滴の固化と形成される被覆層の表面性との関係についてさらに鋭意検討した結果、被覆層形成の過程において、先に着弾した液滴(第1の液滴)に時間差をおいて後から隣接位置または同一位置に液滴(第2の液滴)を着弾させるときに、第1の液滴について上記▲2▼の吸収または▲3▼の固化のいずれかが終了した後に、第2の液滴を着弾させた場合には、第1の液滴と第2の液滴とが合一せず一体化しないため、完全に均一な被覆層とは表面性の異なる被覆層を形成することがわかり、本発明に至った。すなわち、本発明においては、この液滴が記録媒体上に着弾してから上記▲2▼の吸収または▲3▼の固化のいずれかが終了するまでの時間(固化するまでの時間(ΔTc))が好ましくは5〜200msecの範囲に、より好ましくは10〜150msecの範囲に設定される。本発明において表面性をコントロールした被覆層を形成する際のインクジェット記録方式による記録媒体上への液体組成物の付与方法としては、1列または1列以上のノズル列を用いて複数回の走査により付与する方式と、2列以上のノズル列を用いて一回の走査により付与する方式とが考えられるが、この固化するまでの時間(ΔTc)を5〜200msecとすることで、いずれの付与方式においても表面性をコントロールした被覆層を形成することが可能となる。ここで、本発明において固化するまでの時間(ΔTc)とは、記録媒体上に2つの孤立1ドットの液体組成物の液滴を時間差をおいて少なくとも一部が重なるように付与したときに一体化しなくなるときの時間差である。すなわち、ΔTcより短い時間差で付与された液滴どうしは合一し一体化し、ΔTcより大きい時間差で付与された液滴どうしは合一せず一体化しない。したがって均一な被覆層を形成したい場合には、液体組成物の液滴が付与されるときの時間差よりもΔTcが大きくなるように液体組成物および/または記録媒体を調製して用い、また、均一な被覆層とは表面性の異なる被覆層を形成したい場合には、液体組成物の液滴が付与されるときの時間差よりもΔTcが小さくなるように液体組成物および/または記録媒体を調製して用いる。
【0022】
ΔTcが5msecより小さい場合は、液滴が着弾後円盤状に変形していく過程で、固化してしまう為に、ドット間の隙間部分では液滴どうしが一体化した被覆層を形成することが困難となる場合が多く、言わば「うろこ状」の被覆層となってしまうためガスバリアー性が低くなる。加えて、このような「うろこ状」の被覆層ではその表面は凹凸を有し滑らかでないため光沢感が必要な場合に十分に対応できないことがある。また、レベリング可能な時間内に隣接ドットを吐出するためには、ヘッドのキャリッジスピードを大幅に速くしたり、吐出周波数をより高くとすることや液体組成物の付与量をより多くすることが必要であり、そうした場合には、吐出安定性の低下や液滴のミストの発生による記録装置の吐出口が形成されている面の濡れなどさまざまな問題を生じる。
【0023】
一方、ΔTcが200msecより大きい場合は、液滴の固化が遅いため、液滴どうしが一体化しレベリングされやすく、前記2列以上のノズル列を用いて一回の走査により液滴を付与する方式により被覆層の表面性の制御を行なう場合には十分対応できない場合が生じる。また、記録媒体中にしみ込む高分子の量が増加し、所望とするガスバリアー性を満たすための被覆層の厚みが要求される場合に対して対応できない場合が生じる。
【0024】
液体組成物の液滴の固化時間をコントロールする方法としては、液体組成物に含有させる高分子の種類、分子量、含有量や、溶剤成分の種類、量、また、記録媒体のインク受容層の多価金属イオンの種類や濃度、細孔径、表面平滑性、さらには液体組成物の液滴径などにより可能である。
本発明において、固化時間は時間差をおいて液滴を記録媒体上の同一位置あるいは隣接位置に着弾させ、液滴どうしが合一せず一体化しなくなる時間差を測定することができれば良く、その方法は一つに限定されず、ノズルごとに吐出制御することが可能な吐出観察装置や、ノズルごとの吐出制御の他にキャリッジスピードや走査回数などを制御可能なインクジェット吐出ユニットを有する印字評価装置などを使用することで正確に測定することができる。
【0025】
さらに、本発明では被覆層形成用の液体組成物はそこに含有された高分子が水性媒体に溶解した状態にあるため、エマルジョンのような不可逆的な自己造膜性を有する樹脂を含む場合とは異なり、インクジェット装置のノズル先端における長期の放置による吐出用液体の固化防止に対して有利な特性を得ることができる。
【0026】
本発明で画像記録後の記録媒体表面に形成される被覆層の厚みは、0.05〜1μmの範囲が好ましい。記録媒体上に形成される被覆層の厚みがこれらの範囲を超える場合には、被覆層を形成させるためには液体組成物中の固形分濃度を高めることが必要であり、高濃度にした場合には吐出不安定を生じることがある。被覆層の厚みがこの範囲に満たない場合には十分なガスバリア性が得られないことがある。なお、本発明における被覆層の厚みは、記録物断面の走査型電子顕微鏡観察によって測定できる。
【0027】
次に本発明における被覆層形成用の液体組成物について説明する。液体組成物中のカルボン酸塩を有する高分子としては、液体組成物中に安定して溶解し、かつ記録媒体のインク受容層中の多価金属イオンの作用によって不溶化して安定した層を得るものであり、所定の固化時間の設定を可能とするものであれば特に限定されない。例えば、アクリル酸、メタアクリル酸、マレイン酸、マレイン酸のハーフエステル、イタコン酸等のアクリル酸系単量体の1種以上を用いて得られたビニル共重合体を塩基性物質の添加により可溶化したものが好ましい。
【0028】
この際の塩基性物質としては、特に制限されることなく水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物や、アンモニア水、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミンジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、モルホリン、アミノメチルプロパノール、アミノメチルプロパンジオール、アミノエチルプロパンジオール等があげられる。
【0029】
上記アクリル酸系単量体と共重合させることのできる単量体としては、目的とする特性を有する高分子を形成できるものであれば特に限定されないが、例えば、次のような単量体の少なくとも1種を用いることができる。すなわち、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n−アミル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、n−へキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリレート単量体等があげられる。より高いガスバリア性を有する被覆膜を得る為には、任意の炭素数、好ましくは7〜26の芳香族アルキル基または環状脂肪族アルキル基を含有する単量体からなる単位を有するビニル共重合体であることが更に好ましい。このような単量体としては、例えば、スチレンモノマー、ベンジル(メタ)アクリレート、2−アントリル(メタ)アクリレート、2−(ベンゾイルオキシ)エチル(メタ)アクリレート、2−(5−エチル−2−ピリジル)エチル(メタ)アクリレート、[1,1’−ビフェニル]−4−イル(メタ)アクリレート、7−オキソ−1,3,5−シクロヘプタトリエン−1−イル(メタ)アクリレート、8−キノリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート、1−メチルヘキシル(メタ)アクリレート、1−メチルヘプチル(メタ)アクリレート、2−メチルペンチル(メタ)アクリレート、1−シクロヘキシル−3−アゼチジニル(メタ)アクリレート、9−カルバゾリルメチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル(メタ)アクリレート、3−ニトロフェニル(メタ)アクリレート、1−(3−ペリレニル)エチル(メタ)アクリレート、(3−メチルオキシラニル)メチル(メタ)アクリレート等が挙げられ、これらから選択された少なくとも1種を用いることができる。
【0030】
本発明における対イオン(一般式(1)のA)としては、アルカリ金属、アンモニウム、有機アンモニウムが挙げられ、これらから選択された少なくとも1種を用いることができる。
アルカリ金属としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム等が挙げられ、有機アンモニウムとしては、モノエタノールアンモニウム、ジエタノールアンモニウム、トリエタノールアンモニウム、モノイソプロバノールアンモニウム、ジイソプロバノールアンモニウム、トリイソプロバノールアンモニウム、モノメチルアンモニウム、ジメチルアンモニウム、トリメチルアンモニウム、モノエチルアンモニウム、ジエチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、等のアルキルアンモニウム、アルカノールアンモニウムがあげられる。
【0031】
本発明では、高分子の酸価は、記録媒体のインク受容層中の多価金属イオンの種類や濃度、表面状態、更には高分子を構成する単量体の種類によって変わり、記録媒体上で不溶化するように適宜選択する。具体的には、カルボン酸塩を有する高分子を含む液体組成物を、記録媒体のインク受容層中の多価金属イオン濃度に対応した多価金属イオン濃度の水溶液に滴下したときに、液体組成物中の高分子が不溶化して析出してくるようにカルボン酸塩含有量を調整する。 本発明における高分子の酸価は50から300の範囲が好ましい範囲としてあげられる。50に満たない場合には、固着性の点で問題が生じる場合があり、また、サーマル方式のインクジェットを使用する場合はヒーター上でのコゲの原因となり、安定した吐出性が得られないことがある。一方、300を超えると、紙面上での不溶化がおきにくくなり、被覆層を形成させるため記録媒体のインク受容層中の多価金属イオン濃度を極端に上げなくてはならず、画像の色みが問題となる場合がある。なお、酸価は、JIS K0070に準拠した手法により実測した値に基づく。
【0032】
本発明のカルボン酸塩を有する高分子のガラス転移点(Tg)は好ましくは−50〜130℃の範囲、より好ましくは−40〜130℃の範囲が、更により好ましくは−20〜120℃の範囲があげられる。この範囲を満たすことにより、被覆層のべとつき感や被覆層の折り曲げ等に生じる亀裂等によるガス性低下を抑制することができる。
【0033】
また、本発明の液体組成物のpHは、塩基性物質の添加量やpH調整剤などによって調整され、具体的には、上述のカルボキシル基を有する高分子が水溶化するpHである必要がある。好ましい液体組成物のpHとしては5.4から11.0の範囲が、より好ましくは6.0から11.0の範囲があげられる。液体組成物のpHが11.0を超えるとヘッド等の液体組成物と接触する部材の耐久性が問題となることがあり、液体組成物のpHが5.4に満たない場合には、後述するが、被覆層を形成させるために記録媒体の多価金属イオン濃度を極端に上げなくてはならず、画像の色みを損ねる場合がある。
【0034】
本発明のカルボン酸塩を有する高分子の分子量としては、塩基性物質の添加前の重量平均分子量で1000から100000の範囲、好ましくは1000から50000の範囲が使用できる。重量平均分子量が100000を超えると液体組成物の粘度が高くなる傾向があり、均一な被覆層が得られにくいことがある。また、重量平均分子量が1000に満たないと、充分なガスバリア性を有する被覆層が得られないことがある。ここで重量平均分子量はGPC(Gel PermiationChromatography)により、THF/DMF混合溶媒系でポリスチレン換算値を用いて表す。
【0035】
液体組成物に含有させる高分子の製造法には、通常のラジカル重合法が用を用いることができ、塊状重合、懸濁重合、乳化重合等を用いることができる。溶媒中では、原料モノマー濃度が、好ましくは15.0から35.0質量%の範囲で重合が行われる。この場合の重合開始剤としては、一般的なラジカル重合開始剤を用いることができるが、その中でもアゾ化合物、過酸化物系化合物が好ましい。
【0036】
液体組成物中のカルボン酸塩を有する高分子の含有量としては、例えば塩基性物質などの添加前の比で、液体組成物全量に対して、好ましくは1.0〜15.0質量%である。液体組成物中の高分子の含有量が15.0質量%を超えると、液体組成物の粘度が高くなる傾向があり、固着が問題となることがある。また、1.0質量%に満たないと、充分なガスバリア性を有する被覆層が得られないことがある。特に好ましくは1.0〜6.0質量%の範囲があげられる。
【0037】
本発明における被覆層形成用の液体組成物に使用する溶媒としては水性媒体が用いられる。この水性媒体としては、水単独、または水と水溶性有機溶剤との混合溶媒を用いることができる。特に好適なものは水と水溶性有機溶剤との混合溶媒であって、水溶性有機溶剤として液体組成物の乾燥防止効果を有する多価アルコールを含有するものである。また、水としては、種々のイオンを含有する一般の水でなく、脱イオン水を使用するのが好ましい。
【0038】
水と混合して使用される水溶性有機溶剤としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、イソブチルアルコール等の炭素数1〜4アルキルアルコール類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類;アセトン、ジアセトンアルコール等のケトンまたはケトアルコール類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール、チオジグリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール等のアルキレン基が2〜6個の炭素原子を含むアルキレングリコール類;グリセリン;エチレングリコールメチル(またはエチル)エーテル、ジエチレングリコールメチル(またはエチル)エーテル、トリエチレングリコールモノメチル(またはエチル)エーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテル類;N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等が挙げられる。これらの少なくとも1種を用いることができる。
【0039】
これらの多くの水溶性有機溶剤の中でも、ジエチレングリコール等の多価アルコール、トリエチレングリコールモノメチル(またはエチル)エーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテルが好ましいものである。
【0040】
液体組成物中の前記水溶性有機溶剤は、例えば塩基性物質などの添加前の比で、液体組成物の全質量に対して0〜90質量%、好ましくは5〜70質量%の範囲で適宜添加すればよい。また、水は、例えば塩基性物質などの添加前の比で、液体組成物の全質量に対して9〜99質量%、好ましくは50〜95質量%の範囲で適宜添加すればよい。
【0041】
また、本発明に用いる液体組成物は前記の成分の外に必要に応じて、界面活性剤、粘度調整剤、表面張力調整剤、pH調整剤、防カビ剤、防錆剤等を添加しても良い。
また、本発明の液体組成物には、例えば、装飾(薄いブルー等によるロゴ入れ等)等を目的として色材を含むこともできるが、この場合、色材が被覆層中に存在するため、インク受容層中に存在する色材と比べて、(ロゴ等の)耐ガス性は若干劣る傾向になる。したがって、液体組成物中の色材濃度は好ましくは0.5質量%以下、更に好ましくは0.2質量%以下である。
【0042】
次に、本発明で使用される記録媒体について説明する。
【0043】
本発明では、前述したように記録媒体に形成された画像の少なくとも一部で、被覆層形成用の液体組成物中の高分子を固液分離させる。したがって、記録媒体のインク受容層中の多価金属イオン濃度は、液体組成物中の高分子を不溶化させうる値にコントロールしなくてはならない。具体的な記録媒体のインク受容層中の多価金属イオン濃度は、液体組成物に用いる高分子によって適宜選択させればよいが、好ましい範囲としてはインク受容層中の多価金属イオン濃度が0.01〜1.0(mol/L)、より好ましくは0.04〜0.8(mol/L)の範囲があげられる。インク受容層中の多価金属イオン濃度が0.01mol/L未満の場合には、被覆層形成用の液体組成物の付与中に、あらかじめ形成されている画像のにじみが発生することがあり、更には記録媒体上で液体組成物の高分子を不溶化させるために高分子の酸価を小さくしなくてはならないため充分な吐出安定性が得られないことがある。また、インク受容層中の多価金属イオン濃度が1.0mol/Lを超える場合には、記録画像の色みや耐光性、更には、記録液(染料インク)に対する吸収性が悪くなることがある。
【0044】
なお、本発明においてインク受容層中の多価金属イオン濃度は、下記式により求められる。
多価金属イオン濃度(mol/L)=W×VP
上式中のWおよびVPは、インク受容層1gあたりの多価金属イオン含有量(mmol/g)およびインク受容層1g中の空隙容積(mL/g)をそれぞれ表す。
上記Wは、記録媒体よりインク受容層を適宜取り出した後、蛍光X線測定装置などを用いて測定できる。またVPは、記録媒体上の単位面積あたりのインク受容層体積(V1(ml/m2))、記録媒体上の単位面積あたりのインク受容層質量(H1(g/m2))、およびインク受容層の真密度(D1(ml/g))から、VP=V1/H1−D1として求められる。インク受容層の真密度は、記録媒体よりインク受容層を適宜取り出した後、例えば乾式自動密度計((株)島津製作所製;アキュピック1330)などにより測定できる。
【0045】
本発明においてインク受容層に含有させる多価金属イオンとしては、例えば、マグネシウム、カルシウムなどのアルカリ土類金属、イットリウム、ランタン、セリウムなどの希土類金属、ジルコニウムなどの遷移金属等の多価イオンがあげられ、被覆層形成用の液体組成物中の高分子を不溶化させうるものであれば良い。これらの多価金属イオンから選択した少なくとも1種を用いることができる。
【0046】
インク受容層への多価金属イオンの添加方法としては、作製した記録媒体に所望の多価金属イオン濃度となるように水溶性多価金属塩の水溶液を塗工する方法や、インク受容層を形成するための塗工液中にあらかじめ所望の多価金属イオン濃度となるように金属塩を添加しておき、基材上に塗工液を塗付乾燥してインク受容層を形成する方法等があげられる。
【0047】
本発明で使用される記録媒体の構成としては基材上に顔料を主体とする多孔質インク受容層が設けられたものが好適に使用される。基材としては、適度のサイジングを施した紙、無サイズ紙、レジンコート紙などの紙類、樹脂フィルムのようなシート状物質及び布帛が使用でき、特に制限はない。また、裏面側からのガスの回り込みを考慮して、ラミネートなどによりガス封止したものも好適に用いられる。
【0048】
本発明における記録媒体のインク受容層は、その細孔容積が0.35〜1.0ml/gの範囲になるように形成されるのが好ましく、より好ましくは0.4〜0.9ml/gである。インク受容層の細孔容積が前記範囲より大きい場合は、インク受容層にクラック、粉落ちが発生し、前記範囲よりも小さい場合には、インクの吸収が悪くなり、特に多色印字を行った場合にインク受容層からインクが溢れて画像に滲みが発生し易い場合がある。また、インク受容層のBET比表面積については、50〜300m2/gの範囲が好ましく、より好ましくは100〜300m2/gである。この範囲より小さい場合、インク受容層の光沢性がなくなり、またヘイズが増加するため画像に白モヤがかかったようになる場合がある。また、前記範囲より大きい場合、インク受容層にクラックが生じ易くなる場合がある。前記BET比表面積及び細孔容積は、24時間、120℃で脱気処理した後、窒素吸着脱離方法により求めることができる。
【0049】
上記の物性を示すインク受容層を形成するための材料としては、特に限定されないが、発色性、吸収性の観点から、下記一般式(2)で表されるアルミナ水和物が好ましい例としてあげられる。
Al2O3−n(OH)2n・mH2O・・・(2)
式中、nは0、1、2または3の整数の内のいずれかを表し、mは0〜10、好ましくは0〜5の値を表す。なお、nとmは同時に0とはならない。mH2Oは多くの場合結晶格子の形成に関与しない脱離可能な水相を表すものであるため、mは整数でない値をとることができる。また、この種のアルミナ水和物をか焼するとmは0の値に達することがありうる。
【0050】
前記アルミナ水和物は、製造過程において細孔物性の調整がなされるが、前記インク受容層のBET比表面積、細孔容積を満たすためには、細孔容積が0.3〜1.0ml/gであるアルミナ水和物を用いることが好ましく、より好ましくは0.35〜0.9ml/gである。この範囲の細孔容積を有するアルミナ水和物はインク受容層の細孔容積を前記規定範囲内にする上でより好適である。また、BET比表面積については、50〜350m2/gであるアルミナ水和物を用いることが好ましく、より好ましくは100〜250m2/gである。この範囲のBET比表面積のアルミナ水和物は、インク受容層の比表面積を前記規定範囲にする上でより好適である。
【0051】
インク受容層形成用の分散液の塗付量は乾燥固形分換算で0.5〜60g/m2、より好ましくは5〜45g/m2とすることができ、インク受容層の層厚としては、良好なインク吸収性、解像性を得るには、例えば15μm〜60μm、好ましくは20μm〜55μm、特に好ましくは、25μm〜50μmとすることができる。
【0052】
次に本発明における色材を含む記録液について説明する。本発明において、色材の成分それ自体は公知のものでよく、例えば、直接染料、酸性染料、塩基性染料、反応性染料、食品用色素等に代表される水溶性染料がある。このような水溶性染料は、記録液中において一般には約0.1〜20重量%を占める割合で使用されている。本発明に用いる記録液に使用する溶媒は、水または水と水溶性有機溶剤との混合溶媒であり、前述した被覆層形成用の液体組成物にあげたものが好適なものとして使用される。記録液中の水溶性有機溶剤の含有量は、一般にはインクの全質量に対して質量%で0〜95質量%、好ましくは10〜80質量%、より好ましくは20〜50質量%の範囲である。
【0053】
また、本発明に用いる記録液は前記の成分の外に必要に応じて、界面活性剤、粘度調整剤、表面張力調整剤、pH調整剤、防カビ剤、防錆剤等を包含し得る。
【0054】
【実施例】
次に、本発明における実施例を挙げて説明する。尚、以下の記載で部及び%とあるものは、特に断りのない限り質量基準である。
【0055】
(被覆層形成用液体組成物の製造例)
{液体組成物A}
ラジカル開始剤を用いた溶液重合法により合成したスチレン/アクリル酸共重合体A(St/AA=70/30(wt%)、分子量:0.8万、酸価:220)を用いて、下記組成の液体組成物Aを作成した。なお、塩基性物質としては水酸化カリウムを用い、各液体組成物のpHが9.6となるように添加量は調整した。・スチレン/アクリル酸共重合体A:1.2部
・グリセリン:10部
・ジエチレングリコール:7部
・ポリエチレングリコール(分子量:400):3部
・水:78.8部
【0056】
{液体組成物B〜E}
高分子、溶剤組成、pHを表1に示したようにかえた以外は液体組成物Aと同様にして液体組成物B〜Eを調製した。
【0057】
【表1】
【0058】
(記録媒体の製造)
{記録媒体A}
アルミナ水和物としてDisperal HP13(商品名: CONDEA社製)を純水に混合して固形分が5質量%の分散液とした。次に、これに塩酸を加えpH4に調整してしばらく攪拌した。その後、この分散液を攪拌をしながら95℃まで昇温し、その温度で2時間保持を行なった。次に、苛性ソーダによりpHを9.5に調整し、その後、8時間攪拌保持を行なった。8時間後、分散液の温度を室温に戻し、pHを7.2に調整した。その後、脱塩処理を行い、続いて酢酸を添加して解膠処理してコロイダルゾルを得た。このコロイダルゾルを乾燥して得たアルミナ水和物をX線回折により測定したところ、擬ベーマイト構造を有するものであった。また、この時のBET表面積は、150.2m2/g、細孔容積は0.68(ml/g)であった。なお、比表面積、細孔容積は下記の方法で求めた。
1)細孔容積(PV):120℃で24時間脱気処理した後、窒素吸着脱離法によりカンタクローム社製、「オートソーブI」(商品名)を用いて測定した。
2)BET比表面積(SA):Brunauerらの方法を用いて計算し、求めた。
【0059】
ポリビニルアルコール PVA117(商品名:クラレ社製)を純水に溶解して9質量%の溶液を得た。アルミナ水和物Bのコロイダルゾルを濃縮して17質量%の溶液を得た。上記アルミナ水和物Bのコロイダルゾルとポリビニルアルコール溶液を、アルミナ水和物固形分とポリビニルアルコール固形分が質量比で10:1になるように混合攪拌して、分散液を得た。
【0060】
バライタ層を有する基材のバライタ層上にあらかじめ5wt%のほう酸ナトリウム水溶液をエアナイフコーターで10g/m2塗付した後、上記分散液をダイコートにより乾燥厚30g/m2で塗工した。この時の基材は、秤量150g/m2、ステキヒトサイズ度200秒の繊維状基体上に、硫酸バリウム100質量部に対しゼラチン10質量部からなるバライタ組成物を乾燥質量30g/m2となるように塗工し、カレンダー処理を行ったものである。
【0061】
バライタ層を有する基材上に設けたインク受容層表面にリウエットキャストコーターを用いて、熱湯(80℃)を用いたリウエットキャスト処理を行い、光沢感のある記録媒体を得た。更に押し出しラミネート機により20g/m2となるようにポリエチレンを貼り合せた。記録媒体の表面pHをJAPAN TAPPI No.49−2(塗付法)により測定したところpH7.2であった。この記録媒体上にワイヤーバーにより、塩化カルシウム水溶液を塗工、乾燥して、多価金属イオン濃度0.01mol/Lに調整した記録媒体Aを得た。
【0062】
{記録媒体B〜I}
記録媒体Aの塩化カルシウム(多価金属塩)と多価金属イオン濃度を表2のようにかえた以外は記録媒体Aと同様にして、記録媒体B ̄Iを得た。
【0063】
【表2】
【0064】
実施例1〜9
液体組成物と記録媒体を表3に示した組み合わせで下記評価を行った。記録物断面の走査型電子顕微鏡観察により被覆層の形成が認められた。結果を表3に示す。
【0065】
【表3】
【0066】
(評価方法)
(印字および被覆層形成)
記録信号に応じた熱エネルギーをインクに付与することによりインクを吐出させるオンデマンド型マルチ記録ヘッドを有するインクジェット記録装置キヤノン製BJF660およびBJS600を用いて行った。まず、BJF660にて下記組成のカラーインクの単色印字(100%および90%)を行った後、BJS600(Bkインクタンクに液体組成物を使用)にて、各色インクの印字を行った部位を完全に覆うように同じ方法で液体組成物のベタ印字(90%)を行った。
【0067】
インク組成
・インク染料(Y、M、CまたはBk):5部
・エチレングリコール:10部
・ポリエチレングリコール:10部
・水:75部
インク染料
Y:C.I.アシッドイエロー23
M:C.I.アシッドレッド52
C:C.I.ダイレクトブルー199
Bk:C.I.フードブラック2
【0068】
(被覆層形成性)
上記で作成したブラック単色ベタ部(100%)を、オゾン曝露試験機(スガ試験機社製)に入れて、23℃、60%RHの条件下で、濃度2.9ppmのオゾン中に1時間曝露し、被覆層形成性をドット状の被覆層欠陥にて目視評価した。○:被覆層欠陥無し。
△:スキャン間のつなぎ部分に少し欠陥はあるもののそれ以外は欠陥無し。
×:スキャン間のつなぎ部分以外で被覆層の欠陥有り。
【0069】
(耐ガス性)
上記で作成したブラック単色ベタ部(100%)を、オゾン曝露試験機(スガ試験機社製)に入れて、40℃、60%RHの条件下で、濃度2.9ppmのオゾン中に6時間曝露し、耐ガス性をオゾン暴露試験後の画像濃度変化率(%)で評価した。
耐ガス性(%)=(オゾン暴露試験後画像濃度/オゾン暴露試験前の画像濃度)×100(%)
【0070】
(色み)
上記で作成したシアン単色ベタ部(90%と100%)の色味を下記基準で目視評価した。
○:100%シアンベタ部で色みの変化がない。
△:90%シアンベタ部で色みの変化がない。
×:90%シアンベタ部で若干赤みがかかっている。
実施例10〜18
液体組成物と記録媒体を表4に示した組み合わせにて、下記のように印字および被覆層形成を行い、上記被覆層形成性、耐ガス性、および下記被覆層の表面性について評価を行った。結果を表4に示す。
【0071】
【表4】
【0072】
(印字および被覆層形成)
記録信号に応じた熱エネルギーをインクに付与することによりインクを吐出させるオンデマンド型マルチ記録ヘッドを有するインクジェット記録装置キヤノン製BJF660およびBJF900を用いて行った。まず、BJF660にて下記組成のカラーインクの単色印字(100%および90%)を行った後、BJF900(BkインクタンクおよびCインクタンクに液体組成物を使用)にて、各色インクの印字を行った部位を完全に覆うように、1回走査の印字モードにて液体組成物の印字(Bkインクタンク:100%、Cインクタンク:70%)を行った。
【0073】
インク組成
・インク染料(Y、M、C、Bk):5部
・エチレングリコール:10部
・ポリエチレングリコール:10部
・水:75部
インク染料
Y:C.I.アシッドイエロー23
M:C.I.アシッドレッド52
C:C.I.ダイレクトブルー199
Bk:C.I.フードブラック2
【0074】
(被覆層の表面性)
上記で作成した被覆層の表面を画像を20cmの距離から観察し、下記基準で目視評価した。
◎:干渉模様が見られず良好な画像品位である。
○:干渉模様の存在が確認できるが、画像品位の低下は感じられない。
△:干渉模様の存在が確認でき、やや画像品位の低下が感じられる。
×:干渉模様の存在が目立ち、画像品位の低下が感じられる。
【0075】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、ノズル目詰まりを発生することなく、表面性が制御された被覆層を形成し、耐ガス性に優れた小型化が容易な画像記録物形成方法を提供することが可能である。
【発明の属する技術分野】
本発明はインクジェットによる画像記録物の形成方法および画像記録物、これらに用いる被覆層形成用液体組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
インクジェット記録方式は、インクの微小液滴を種々の作動原理により飛翔させて、紙などの記録媒体に付着させ、画像、文字などを記録するものであるが、高速低騒音、多色化が容易であり、記録パターンの融通性が大きい、現像、定着が不要などの特徴があり、近年、各種画像の記録装置として情報機器をはじめ各種の用途において急速に普及している。更に多色インクジェット方式により形成される画像は、製版方式による多色印刷や、カラー写真方式による印画と比較して遜色のない記録を得ることも可能であり、作成部数が少ない場合には通常の多色印刷や印画によるよりも安価であることから、フルカラー画像記録分野にまで広く応用されつつある。
【0003】
また、近年、ベーマイト構造のアルミナ水和物を用いた塗工層を有する記録媒体が提案されており、例えば、特許文献1にその代表例が開示されている。
【0004】
これらのアルミナ水和物を用いた記録媒体は、アルミナ水和物が正電荷を持っているため、インク染料の定着が良く、発色の良い画像が得られること、更に、画質、特にフルカラー画像における画質及び光沢の点で従来の記録媒体に比べ好ましいなどの長所を有している。
【0005】
しかしながら、上述のごとき染料系インクとアルミナ水和物を用いた記録媒体によって、銀塩プリントに匹敵、またはそれを凌ぐ画質が得られているものの、形成された高画質の画質を長時間維持することに関して、特に、空気中のオゾンガス等の物質による劣化に対しての耐性(耐ガス性)は、満足する性能を有していない場合が生じているのが現状である。
【0006】
得られる記録物の画像耐久性の向上を目的としたものとしては、画像形成後の記録材表面に保護層を設ける方法が開示されている。例えば画像記録物上に保護膜として各種プラスチックフィルムをラミネートする方法が、特許文献2に開示されている。
【0007】
また、特許文献3には、には記録媒体のインク受容層中に熱可塑性高分子からなる微粒子を含有させておき、インク吸収性を保った状態で印字を行った後、上記微粒子を熱や溶剤により溶融、溶解して樹脂皮膜を表面に形成して保護皮膜とする方法が記載されている。
【0008】
被覆層を形成する手段として画像形成方法と同じ方式を用いる例として、特許文献4に、インクジェット方式によりエマルジョン等の膜形成機能を有する樹脂を含む液体組成物を吐出することによって被覆層を形成する方法が開示されている。
【0009】
【特許文献1】
特開平7−232475号公報
【特許文献2】
特開2001−158092号公報
【特許文献3】
特開平10−315448号公報
【特許文献4】
特開2000−225695号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特開平10−315448号公報等に記載の方法では、確かに耐ガス性は良好となるものの、画像の記録装置以外に、ラミネート装置や熱可塑性高分子からなる微粒子の溶融、溶解のための装置を別途設ける必要があり、ランニングコストのアップや装置が大掛かりになってしまう等の問題がある。
【0011】
また、特開2000−225695号公報記載のようなエマルジョンのような自己造膜性を有する樹脂を吐出用の液体に含有させた場合、微細なノズル先端における長期の放置による固化(ノズルつまり)を引き起こしやすい場合がある。
【0012】
更に、このような被覆層形成用の液体組成物をインクジェット記録方法により記録媒体の表面に付与し、被覆層を形成させる場合は、被覆層の形成状態を制御することが難しく、補助液が記録媒体上でレベリングしすぎて干渉模様や光沢ムラを生じてしまったり、逆に干渉模様や光沢ムラ低減を狙ってレベリングを抑制するとガスバリアー性が不十分であったりするといった問題を生じる場合がある。
【0013】
本発明は上記の問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、画像の少なくとも一部に液体組成物をインクジェット記録装置により付与して光沢感に優れる均一な被覆層を形成することで、画像品位、耐ガス性に優れた画像記録物を得ることができ、しかもインクジェット記録装置のノズルの目詰まりを生じさせることがなく、かつ装置の小型化も可能である画像記録物の形成方法及びそれに用いる被覆層形成用の液体組成物を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記の目的は、以下の本発明によって達成される。本発明の画像記録物の形成方法は、画像の少なくとも一部に被覆層を有する画像記録物の形成方法であって、
水性媒体と、下記一般式(1)で表される構造(以下カルボン酸塩と表す)を有する高分子と、を含む液体組成物を用意する工程と、
記録媒体の有するインク受容層にインクジェット記録方法によりインクを付与して形成した画像を有し、該インク受容層中に多価金属イオンを含む画像記録物を用意する工程と、
該記録物の画像上の少なくとも一部に前記液体組成物を付与し、該液体組成物中に含有される高分子を前記インク受容層中に含まれる多価金属イオンにより不溶化させることにより該液体組成物の付与位置に被覆層を形成する工程と、を有し、
前記液体組成物の画像上での固化時間(ΔTc)を5〜200msecとしたことを特徴とする。
−COOA・・・(1)
(但し、式中のAはアルカリ金属、アンモニウム又は有機アンモニウムを表わす。)
本発明の画像記録物は、上記の形成方法によって得られたことを特徴とする。また、本発明の液体組成物は、記録媒体のインク受容層にインクジェット記録方法によりインクを付与して形成された画像の少なくとも一部に被覆層を形成するための液体組成物であって、
水性媒体と、カルボン酸塩を有する高分子と、を含み、該高分子が、前記画像が形成されているインク受容層中の多価金属イオンによって不溶化し得る状態で該水性媒体に溶解しており、前記画像上に付与された際の固化時間(ΔTc)が5〜200msecの範囲にあることを特徴とする。
【0015】
本発明においては、画像の少なくとも一部に付与された液体組成物中に溶解した状態で含まれた高分子が、画像が形成されている記録媒体のインク受容層に含有された多価金属イオンによって不溶化して画像の液体組成物が付与された部分に被覆層が形成される。この被覆層によれば、画像品位を向上させる効果を有することができるとともに、耐ガス性や耐擦性を画像に付与することができる。更に、高分子の不溶化に伴う固化時間が5〜200msecの範囲に設定されていることで、インクジェット記録によって画像上に液体組成物を付与した際でも更に効率的な液体組成物の付与により表面性を制御した被覆層の形成が可能となる。なお、画像上の被覆層の形成位置は、染料などの色材による着色部に限定されず、非着色部であってもよい。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の画像形成方法について詳細に述べる。
【0017】
本発明における画像の形成には、液体にエネルギーを加えて小滴を飛翔させ、記録媒体上に付着させて記録を行なう画像形成方法であるインクジェット記録方法が用いられる。本発明においては後述する被覆層形成用の液体組成物も同様にインクジェット記録方法によって、既に画像が形成された記録媒体上に着弾させる。液体組成物中の高分子による被覆層形成部位は、記録媒体上に形成された画像の着色部(色材による着色部)のみ、着色部と非着色部を含む全面または一部、あるいは着色されていない部分(非着色部)のみでも良い。インクジェット記録方法を用いることで、記録媒体への液体組成物の均一付与が容易となる。更には、液体組成物の付与方法が画像の形成方法と同一であることで、インクジェット記録用ヘッドに液体組成物用のノズルを追加する等、被覆層形成用のユニットを別途設ける必要がないため、被覆層形成用の装置が付加された記録装置の小型化が可能となる。
【0018】
本発明における被覆層形成用の液体組成物は、カルボン酸塩を有する高分子を含む。この高分子は、水性媒体中に溶解しており液体組成物が付与される画像を有する記録媒体のインク受容層中の多価金属イオンの作用により不溶化する。その好ましい態様としては、液体組成物中の高分子が不溶化する多価金属イオン濃度に調整されたインク受容層を有する記録媒体上で高分子を瞬時に不溶化させ、高分子と水性媒体(溶媒成分)を固液分離し、溶媒成分を記録媒体中に吸収させて、記録媒体上に高分子からなる被覆層を形成させる方法を挙げることができる。
【0019】
この被覆層の形成により種々の物理的または化学的な変化から記録画像が保護され、記録画像により高い耐ガス性が付与される。具体的には画像記録後にインクジェット記録方式により高分子を含有する被覆層形成用の液体組成物を、あらかじめ液体組成物中に溶解している高分子が不溶化する多価金属イオン濃度に調整されたインク受容層を有する記録媒体上に付与した際、インク受容層中の多価金属イオンによって液体組成物中の高分子のカルボン酸塩の対イオンが脱離し多価金属イオンを介して水溶性高分子共重合体どうしが会合することで、高分子が不溶化凝集して記録媒体上に結晶性の高い薄膜が形成される。これにより種々の物理的または化学的な変化から記録画像が保護され、記録画像にガスに対する高い堅牢性が得られるのである。
被覆層形成の過程において液体組成物の液滴は、画像上に次々と付与され着弾し、着弾した液滴は隣接位置または同一位置に着弾した他の液滴と互いに合一し一体化することで均一な被覆層を形成していく。
【0020】
本発明では、インクジェット記録方法により液体組成物を記録媒体の画像が記録された面に付与し、その際、記録媒体上での液体組成物の液滴の固化時間をコントロールすることで、ガスバリアー性を有し、かつ高光沢で干渉模様が無いように制御して被覆層を形成することが可能となる。また、画像上の非着色部に被覆層を形成させた場合においても汚れ付着防止等の効果が付与される。
【0021】
本発明者らは検討の結果、インクジェット記録方法により吐出された液体組成物の液滴は、記録媒体上に着弾後、▲1▼変形:記録媒体上で円盤状に変形、▲2▼吸収:液滴中の水分など(水の他、溶剤および高分子以外の水溶性成分など)の記録媒体への吸収、▲3▼固化:液滴中の高分子が不溶化し固化していく、という3つの挙動が同時並行で、あるいは互いに時期的に重複して進行しているものと捉え、この▲2▼の液滴の吸収および▲3▼の液滴の固化と形成される被覆層の表面性との関係についてさらに鋭意検討した結果、被覆層形成の過程において、先に着弾した液滴(第1の液滴)に時間差をおいて後から隣接位置または同一位置に液滴(第2の液滴)を着弾させるときに、第1の液滴について上記▲2▼の吸収または▲3▼の固化のいずれかが終了した後に、第2の液滴を着弾させた場合には、第1の液滴と第2の液滴とが合一せず一体化しないため、完全に均一な被覆層とは表面性の異なる被覆層を形成することがわかり、本発明に至った。すなわち、本発明においては、この液滴が記録媒体上に着弾してから上記▲2▼の吸収または▲3▼の固化のいずれかが終了するまでの時間(固化するまでの時間(ΔTc))が好ましくは5〜200msecの範囲に、より好ましくは10〜150msecの範囲に設定される。本発明において表面性をコントロールした被覆層を形成する際のインクジェット記録方式による記録媒体上への液体組成物の付与方法としては、1列または1列以上のノズル列を用いて複数回の走査により付与する方式と、2列以上のノズル列を用いて一回の走査により付与する方式とが考えられるが、この固化するまでの時間(ΔTc)を5〜200msecとすることで、いずれの付与方式においても表面性をコントロールした被覆層を形成することが可能となる。ここで、本発明において固化するまでの時間(ΔTc)とは、記録媒体上に2つの孤立1ドットの液体組成物の液滴を時間差をおいて少なくとも一部が重なるように付与したときに一体化しなくなるときの時間差である。すなわち、ΔTcより短い時間差で付与された液滴どうしは合一し一体化し、ΔTcより大きい時間差で付与された液滴どうしは合一せず一体化しない。したがって均一な被覆層を形成したい場合には、液体組成物の液滴が付与されるときの時間差よりもΔTcが大きくなるように液体組成物および/または記録媒体を調製して用い、また、均一な被覆層とは表面性の異なる被覆層を形成したい場合には、液体組成物の液滴が付与されるときの時間差よりもΔTcが小さくなるように液体組成物および/または記録媒体を調製して用いる。
【0022】
ΔTcが5msecより小さい場合は、液滴が着弾後円盤状に変形していく過程で、固化してしまう為に、ドット間の隙間部分では液滴どうしが一体化した被覆層を形成することが困難となる場合が多く、言わば「うろこ状」の被覆層となってしまうためガスバリアー性が低くなる。加えて、このような「うろこ状」の被覆層ではその表面は凹凸を有し滑らかでないため光沢感が必要な場合に十分に対応できないことがある。また、レベリング可能な時間内に隣接ドットを吐出するためには、ヘッドのキャリッジスピードを大幅に速くしたり、吐出周波数をより高くとすることや液体組成物の付与量をより多くすることが必要であり、そうした場合には、吐出安定性の低下や液滴のミストの発生による記録装置の吐出口が形成されている面の濡れなどさまざまな問題を生じる。
【0023】
一方、ΔTcが200msecより大きい場合は、液滴の固化が遅いため、液滴どうしが一体化しレベリングされやすく、前記2列以上のノズル列を用いて一回の走査により液滴を付与する方式により被覆層の表面性の制御を行なう場合には十分対応できない場合が生じる。また、記録媒体中にしみ込む高分子の量が増加し、所望とするガスバリアー性を満たすための被覆層の厚みが要求される場合に対して対応できない場合が生じる。
【0024】
液体組成物の液滴の固化時間をコントロールする方法としては、液体組成物に含有させる高分子の種類、分子量、含有量や、溶剤成分の種類、量、また、記録媒体のインク受容層の多価金属イオンの種類や濃度、細孔径、表面平滑性、さらには液体組成物の液滴径などにより可能である。
本発明において、固化時間は時間差をおいて液滴を記録媒体上の同一位置あるいは隣接位置に着弾させ、液滴どうしが合一せず一体化しなくなる時間差を測定することができれば良く、その方法は一つに限定されず、ノズルごとに吐出制御することが可能な吐出観察装置や、ノズルごとの吐出制御の他にキャリッジスピードや走査回数などを制御可能なインクジェット吐出ユニットを有する印字評価装置などを使用することで正確に測定することができる。
【0025】
さらに、本発明では被覆層形成用の液体組成物はそこに含有された高分子が水性媒体に溶解した状態にあるため、エマルジョンのような不可逆的な自己造膜性を有する樹脂を含む場合とは異なり、インクジェット装置のノズル先端における長期の放置による吐出用液体の固化防止に対して有利な特性を得ることができる。
【0026】
本発明で画像記録後の記録媒体表面に形成される被覆層の厚みは、0.05〜1μmの範囲が好ましい。記録媒体上に形成される被覆層の厚みがこれらの範囲を超える場合には、被覆層を形成させるためには液体組成物中の固形分濃度を高めることが必要であり、高濃度にした場合には吐出不安定を生じることがある。被覆層の厚みがこの範囲に満たない場合には十分なガスバリア性が得られないことがある。なお、本発明における被覆層の厚みは、記録物断面の走査型電子顕微鏡観察によって測定できる。
【0027】
次に本発明における被覆層形成用の液体組成物について説明する。液体組成物中のカルボン酸塩を有する高分子としては、液体組成物中に安定して溶解し、かつ記録媒体のインク受容層中の多価金属イオンの作用によって不溶化して安定した層を得るものであり、所定の固化時間の設定を可能とするものであれば特に限定されない。例えば、アクリル酸、メタアクリル酸、マレイン酸、マレイン酸のハーフエステル、イタコン酸等のアクリル酸系単量体の1種以上を用いて得られたビニル共重合体を塩基性物質の添加により可溶化したものが好ましい。
【0028】
この際の塩基性物質としては、特に制限されることなく水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物や、アンモニア水、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミンジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、モルホリン、アミノメチルプロパノール、アミノメチルプロパンジオール、アミノエチルプロパンジオール等があげられる。
【0029】
上記アクリル酸系単量体と共重合させることのできる単量体としては、目的とする特性を有する高分子を形成できるものであれば特に限定されないが、例えば、次のような単量体の少なくとも1種を用いることができる。すなわち、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n−アミル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、n−へキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリレート単量体等があげられる。より高いガスバリア性を有する被覆膜を得る為には、任意の炭素数、好ましくは7〜26の芳香族アルキル基または環状脂肪族アルキル基を含有する単量体からなる単位を有するビニル共重合体であることが更に好ましい。このような単量体としては、例えば、スチレンモノマー、ベンジル(メタ)アクリレート、2−アントリル(メタ)アクリレート、2−(ベンゾイルオキシ)エチル(メタ)アクリレート、2−(5−エチル−2−ピリジル)エチル(メタ)アクリレート、[1,1’−ビフェニル]−4−イル(メタ)アクリレート、7−オキソ−1,3,5−シクロヘプタトリエン−1−イル(メタ)アクリレート、8−キノリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート、1−メチルヘキシル(メタ)アクリレート、1−メチルヘプチル(メタ)アクリレート、2−メチルペンチル(メタ)アクリレート、1−シクロヘキシル−3−アゼチジニル(メタ)アクリレート、9−カルバゾリルメチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル(メタ)アクリレート、3−ニトロフェニル(メタ)アクリレート、1−(3−ペリレニル)エチル(メタ)アクリレート、(3−メチルオキシラニル)メチル(メタ)アクリレート等が挙げられ、これらから選択された少なくとも1種を用いることができる。
【0030】
本発明における対イオン(一般式(1)のA)としては、アルカリ金属、アンモニウム、有機アンモニウムが挙げられ、これらから選択された少なくとも1種を用いることができる。
アルカリ金属としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム等が挙げられ、有機アンモニウムとしては、モノエタノールアンモニウム、ジエタノールアンモニウム、トリエタノールアンモニウム、モノイソプロバノールアンモニウム、ジイソプロバノールアンモニウム、トリイソプロバノールアンモニウム、モノメチルアンモニウム、ジメチルアンモニウム、トリメチルアンモニウム、モノエチルアンモニウム、ジエチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、等のアルキルアンモニウム、アルカノールアンモニウムがあげられる。
【0031】
本発明では、高分子の酸価は、記録媒体のインク受容層中の多価金属イオンの種類や濃度、表面状態、更には高分子を構成する単量体の種類によって変わり、記録媒体上で不溶化するように適宜選択する。具体的には、カルボン酸塩を有する高分子を含む液体組成物を、記録媒体のインク受容層中の多価金属イオン濃度に対応した多価金属イオン濃度の水溶液に滴下したときに、液体組成物中の高分子が不溶化して析出してくるようにカルボン酸塩含有量を調整する。 本発明における高分子の酸価は50から300の範囲が好ましい範囲としてあげられる。50に満たない場合には、固着性の点で問題が生じる場合があり、また、サーマル方式のインクジェットを使用する場合はヒーター上でのコゲの原因となり、安定した吐出性が得られないことがある。一方、300を超えると、紙面上での不溶化がおきにくくなり、被覆層を形成させるため記録媒体のインク受容層中の多価金属イオン濃度を極端に上げなくてはならず、画像の色みが問題となる場合がある。なお、酸価は、JIS K0070に準拠した手法により実測した値に基づく。
【0032】
本発明のカルボン酸塩を有する高分子のガラス転移点(Tg)は好ましくは−50〜130℃の範囲、より好ましくは−40〜130℃の範囲が、更により好ましくは−20〜120℃の範囲があげられる。この範囲を満たすことにより、被覆層のべとつき感や被覆層の折り曲げ等に生じる亀裂等によるガス性低下を抑制することができる。
【0033】
また、本発明の液体組成物のpHは、塩基性物質の添加量やpH調整剤などによって調整され、具体的には、上述のカルボキシル基を有する高分子が水溶化するpHである必要がある。好ましい液体組成物のpHとしては5.4から11.0の範囲が、より好ましくは6.0から11.0の範囲があげられる。液体組成物のpHが11.0を超えるとヘッド等の液体組成物と接触する部材の耐久性が問題となることがあり、液体組成物のpHが5.4に満たない場合には、後述するが、被覆層を形成させるために記録媒体の多価金属イオン濃度を極端に上げなくてはならず、画像の色みを損ねる場合がある。
【0034】
本発明のカルボン酸塩を有する高分子の分子量としては、塩基性物質の添加前の重量平均分子量で1000から100000の範囲、好ましくは1000から50000の範囲が使用できる。重量平均分子量が100000を超えると液体組成物の粘度が高くなる傾向があり、均一な被覆層が得られにくいことがある。また、重量平均分子量が1000に満たないと、充分なガスバリア性を有する被覆層が得られないことがある。ここで重量平均分子量はGPC(Gel PermiationChromatography)により、THF/DMF混合溶媒系でポリスチレン換算値を用いて表す。
【0035】
液体組成物に含有させる高分子の製造法には、通常のラジカル重合法が用を用いることができ、塊状重合、懸濁重合、乳化重合等を用いることができる。溶媒中では、原料モノマー濃度が、好ましくは15.0から35.0質量%の範囲で重合が行われる。この場合の重合開始剤としては、一般的なラジカル重合開始剤を用いることができるが、その中でもアゾ化合物、過酸化物系化合物が好ましい。
【0036】
液体組成物中のカルボン酸塩を有する高分子の含有量としては、例えば塩基性物質などの添加前の比で、液体組成物全量に対して、好ましくは1.0〜15.0質量%である。液体組成物中の高分子の含有量が15.0質量%を超えると、液体組成物の粘度が高くなる傾向があり、固着が問題となることがある。また、1.0質量%に満たないと、充分なガスバリア性を有する被覆層が得られないことがある。特に好ましくは1.0〜6.0質量%の範囲があげられる。
【0037】
本発明における被覆層形成用の液体組成物に使用する溶媒としては水性媒体が用いられる。この水性媒体としては、水単独、または水と水溶性有機溶剤との混合溶媒を用いることができる。特に好適なものは水と水溶性有機溶剤との混合溶媒であって、水溶性有機溶剤として液体組成物の乾燥防止効果を有する多価アルコールを含有するものである。また、水としては、種々のイオンを含有する一般の水でなく、脱イオン水を使用するのが好ましい。
【0038】
水と混合して使用される水溶性有機溶剤としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、イソブチルアルコール等の炭素数1〜4アルキルアルコール類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類;アセトン、ジアセトンアルコール等のケトンまたはケトアルコール類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール、チオジグリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール等のアルキレン基が2〜6個の炭素原子を含むアルキレングリコール類;グリセリン;エチレングリコールメチル(またはエチル)エーテル、ジエチレングリコールメチル(またはエチル)エーテル、トリエチレングリコールモノメチル(またはエチル)エーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテル類;N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等が挙げられる。これらの少なくとも1種を用いることができる。
【0039】
これらの多くの水溶性有機溶剤の中でも、ジエチレングリコール等の多価アルコール、トリエチレングリコールモノメチル(またはエチル)エーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテルが好ましいものである。
【0040】
液体組成物中の前記水溶性有機溶剤は、例えば塩基性物質などの添加前の比で、液体組成物の全質量に対して0〜90質量%、好ましくは5〜70質量%の範囲で適宜添加すればよい。また、水は、例えば塩基性物質などの添加前の比で、液体組成物の全質量に対して9〜99質量%、好ましくは50〜95質量%の範囲で適宜添加すればよい。
【0041】
また、本発明に用いる液体組成物は前記の成分の外に必要に応じて、界面活性剤、粘度調整剤、表面張力調整剤、pH調整剤、防カビ剤、防錆剤等を添加しても良い。
また、本発明の液体組成物には、例えば、装飾(薄いブルー等によるロゴ入れ等)等を目的として色材を含むこともできるが、この場合、色材が被覆層中に存在するため、インク受容層中に存在する色材と比べて、(ロゴ等の)耐ガス性は若干劣る傾向になる。したがって、液体組成物中の色材濃度は好ましくは0.5質量%以下、更に好ましくは0.2質量%以下である。
【0042】
次に、本発明で使用される記録媒体について説明する。
【0043】
本発明では、前述したように記録媒体に形成された画像の少なくとも一部で、被覆層形成用の液体組成物中の高分子を固液分離させる。したがって、記録媒体のインク受容層中の多価金属イオン濃度は、液体組成物中の高分子を不溶化させうる値にコントロールしなくてはならない。具体的な記録媒体のインク受容層中の多価金属イオン濃度は、液体組成物に用いる高分子によって適宜選択させればよいが、好ましい範囲としてはインク受容層中の多価金属イオン濃度が0.01〜1.0(mol/L)、より好ましくは0.04〜0.8(mol/L)の範囲があげられる。インク受容層中の多価金属イオン濃度が0.01mol/L未満の場合には、被覆層形成用の液体組成物の付与中に、あらかじめ形成されている画像のにじみが発生することがあり、更には記録媒体上で液体組成物の高分子を不溶化させるために高分子の酸価を小さくしなくてはならないため充分な吐出安定性が得られないことがある。また、インク受容層中の多価金属イオン濃度が1.0mol/Lを超える場合には、記録画像の色みや耐光性、更には、記録液(染料インク)に対する吸収性が悪くなることがある。
【0044】
なお、本発明においてインク受容層中の多価金属イオン濃度は、下記式により求められる。
多価金属イオン濃度(mol/L)=W×VP
上式中のWおよびVPは、インク受容層1gあたりの多価金属イオン含有量(mmol/g)およびインク受容層1g中の空隙容積(mL/g)をそれぞれ表す。
上記Wは、記録媒体よりインク受容層を適宜取り出した後、蛍光X線測定装置などを用いて測定できる。またVPは、記録媒体上の単位面積あたりのインク受容層体積(V1(ml/m2))、記録媒体上の単位面積あたりのインク受容層質量(H1(g/m2))、およびインク受容層の真密度(D1(ml/g))から、VP=V1/H1−D1として求められる。インク受容層の真密度は、記録媒体よりインク受容層を適宜取り出した後、例えば乾式自動密度計((株)島津製作所製;アキュピック1330)などにより測定できる。
【0045】
本発明においてインク受容層に含有させる多価金属イオンとしては、例えば、マグネシウム、カルシウムなどのアルカリ土類金属、イットリウム、ランタン、セリウムなどの希土類金属、ジルコニウムなどの遷移金属等の多価イオンがあげられ、被覆層形成用の液体組成物中の高分子を不溶化させうるものであれば良い。これらの多価金属イオンから選択した少なくとも1種を用いることができる。
【0046】
インク受容層への多価金属イオンの添加方法としては、作製した記録媒体に所望の多価金属イオン濃度となるように水溶性多価金属塩の水溶液を塗工する方法や、インク受容層を形成するための塗工液中にあらかじめ所望の多価金属イオン濃度となるように金属塩を添加しておき、基材上に塗工液を塗付乾燥してインク受容層を形成する方法等があげられる。
【0047】
本発明で使用される記録媒体の構成としては基材上に顔料を主体とする多孔質インク受容層が設けられたものが好適に使用される。基材としては、適度のサイジングを施した紙、無サイズ紙、レジンコート紙などの紙類、樹脂フィルムのようなシート状物質及び布帛が使用でき、特に制限はない。また、裏面側からのガスの回り込みを考慮して、ラミネートなどによりガス封止したものも好適に用いられる。
【0048】
本発明における記録媒体のインク受容層は、その細孔容積が0.35〜1.0ml/gの範囲になるように形成されるのが好ましく、より好ましくは0.4〜0.9ml/gである。インク受容層の細孔容積が前記範囲より大きい場合は、インク受容層にクラック、粉落ちが発生し、前記範囲よりも小さい場合には、インクの吸収が悪くなり、特に多色印字を行った場合にインク受容層からインクが溢れて画像に滲みが発生し易い場合がある。また、インク受容層のBET比表面積については、50〜300m2/gの範囲が好ましく、より好ましくは100〜300m2/gである。この範囲より小さい場合、インク受容層の光沢性がなくなり、またヘイズが増加するため画像に白モヤがかかったようになる場合がある。また、前記範囲より大きい場合、インク受容層にクラックが生じ易くなる場合がある。前記BET比表面積及び細孔容積は、24時間、120℃で脱気処理した後、窒素吸着脱離方法により求めることができる。
【0049】
上記の物性を示すインク受容層を形成するための材料としては、特に限定されないが、発色性、吸収性の観点から、下記一般式(2)で表されるアルミナ水和物が好ましい例としてあげられる。
Al2O3−n(OH)2n・mH2O・・・(2)
式中、nは0、1、2または3の整数の内のいずれかを表し、mは0〜10、好ましくは0〜5の値を表す。なお、nとmは同時に0とはならない。mH2Oは多くの場合結晶格子の形成に関与しない脱離可能な水相を表すものであるため、mは整数でない値をとることができる。また、この種のアルミナ水和物をか焼するとmは0の値に達することがありうる。
【0050】
前記アルミナ水和物は、製造過程において細孔物性の調整がなされるが、前記インク受容層のBET比表面積、細孔容積を満たすためには、細孔容積が0.3〜1.0ml/gであるアルミナ水和物を用いることが好ましく、より好ましくは0.35〜0.9ml/gである。この範囲の細孔容積を有するアルミナ水和物はインク受容層の細孔容積を前記規定範囲内にする上でより好適である。また、BET比表面積については、50〜350m2/gであるアルミナ水和物を用いることが好ましく、より好ましくは100〜250m2/gである。この範囲のBET比表面積のアルミナ水和物は、インク受容層の比表面積を前記規定範囲にする上でより好適である。
【0051】
インク受容層形成用の分散液の塗付量は乾燥固形分換算で0.5〜60g/m2、より好ましくは5〜45g/m2とすることができ、インク受容層の層厚としては、良好なインク吸収性、解像性を得るには、例えば15μm〜60μm、好ましくは20μm〜55μm、特に好ましくは、25μm〜50μmとすることができる。
【0052】
次に本発明における色材を含む記録液について説明する。本発明において、色材の成分それ自体は公知のものでよく、例えば、直接染料、酸性染料、塩基性染料、反応性染料、食品用色素等に代表される水溶性染料がある。このような水溶性染料は、記録液中において一般には約0.1〜20重量%を占める割合で使用されている。本発明に用いる記録液に使用する溶媒は、水または水と水溶性有機溶剤との混合溶媒であり、前述した被覆層形成用の液体組成物にあげたものが好適なものとして使用される。記録液中の水溶性有機溶剤の含有量は、一般にはインクの全質量に対して質量%で0〜95質量%、好ましくは10〜80質量%、より好ましくは20〜50質量%の範囲である。
【0053】
また、本発明に用いる記録液は前記の成分の外に必要に応じて、界面活性剤、粘度調整剤、表面張力調整剤、pH調整剤、防カビ剤、防錆剤等を包含し得る。
【0054】
【実施例】
次に、本発明における実施例を挙げて説明する。尚、以下の記載で部及び%とあるものは、特に断りのない限り質量基準である。
【0055】
(被覆層形成用液体組成物の製造例)
{液体組成物A}
ラジカル開始剤を用いた溶液重合法により合成したスチレン/アクリル酸共重合体A(St/AA=70/30(wt%)、分子量:0.8万、酸価:220)を用いて、下記組成の液体組成物Aを作成した。なお、塩基性物質としては水酸化カリウムを用い、各液体組成物のpHが9.6となるように添加量は調整した。・スチレン/アクリル酸共重合体A:1.2部
・グリセリン:10部
・ジエチレングリコール:7部
・ポリエチレングリコール(分子量:400):3部
・水:78.8部
【0056】
{液体組成物B〜E}
高分子、溶剤組成、pHを表1に示したようにかえた以外は液体組成物Aと同様にして液体組成物B〜Eを調製した。
【0057】
【表1】
【0058】
(記録媒体の製造)
{記録媒体A}
アルミナ水和物としてDisperal HP13(商品名: CONDEA社製)を純水に混合して固形分が5質量%の分散液とした。次に、これに塩酸を加えpH4に調整してしばらく攪拌した。その後、この分散液を攪拌をしながら95℃まで昇温し、その温度で2時間保持を行なった。次に、苛性ソーダによりpHを9.5に調整し、その後、8時間攪拌保持を行なった。8時間後、分散液の温度を室温に戻し、pHを7.2に調整した。その後、脱塩処理を行い、続いて酢酸を添加して解膠処理してコロイダルゾルを得た。このコロイダルゾルを乾燥して得たアルミナ水和物をX線回折により測定したところ、擬ベーマイト構造を有するものであった。また、この時のBET表面積は、150.2m2/g、細孔容積は0.68(ml/g)であった。なお、比表面積、細孔容積は下記の方法で求めた。
1)細孔容積(PV):120℃で24時間脱気処理した後、窒素吸着脱離法によりカンタクローム社製、「オートソーブI」(商品名)を用いて測定した。
2)BET比表面積(SA):Brunauerらの方法を用いて計算し、求めた。
【0059】
ポリビニルアルコール PVA117(商品名:クラレ社製)を純水に溶解して9質量%の溶液を得た。アルミナ水和物Bのコロイダルゾルを濃縮して17質量%の溶液を得た。上記アルミナ水和物Bのコロイダルゾルとポリビニルアルコール溶液を、アルミナ水和物固形分とポリビニルアルコール固形分が質量比で10:1になるように混合攪拌して、分散液を得た。
【0060】
バライタ層を有する基材のバライタ層上にあらかじめ5wt%のほう酸ナトリウム水溶液をエアナイフコーターで10g/m2塗付した後、上記分散液をダイコートにより乾燥厚30g/m2で塗工した。この時の基材は、秤量150g/m2、ステキヒトサイズ度200秒の繊維状基体上に、硫酸バリウム100質量部に対しゼラチン10質量部からなるバライタ組成物を乾燥質量30g/m2となるように塗工し、カレンダー処理を行ったものである。
【0061】
バライタ層を有する基材上に設けたインク受容層表面にリウエットキャストコーターを用いて、熱湯(80℃)を用いたリウエットキャスト処理を行い、光沢感のある記録媒体を得た。更に押し出しラミネート機により20g/m2となるようにポリエチレンを貼り合せた。記録媒体の表面pHをJAPAN TAPPI No.49−2(塗付法)により測定したところpH7.2であった。この記録媒体上にワイヤーバーにより、塩化カルシウム水溶液を塗工、乾燥して、多価金属イオン濃度0.01mol/Lに調整した記録媒体Aを得た。
【0062】
{記録媒体B〜I}
記録媒体Aの塩化カルシウム(多価金属塩)と多価金属イオン濃度を表2のようにかえた以外は記録媒体Aと同様にして、記録媒体B ̄Iを得た。
【0063】
【表2】
【0064】
実施例1〜9
液体組成物と記録媒体を表3に示した組み合わせで下記評価を行った。記録物断面の走査型電子顕微鏡観察により被覆層の形成が認められた。結果を表3に示す。
【0065】
【表3】
【0066】
(評価方法)
(印字および被覆層形成)
記録信号に応じた熱エネルギーをインクに付与することによりインクを吐出させるオンデマンド型マルチ記録ヘッドを有するインクジェット記録装置キヤノン製BJF660およびBJS600を用いて行った。まず、BJF660にて下記組成のカラーインクの単色印字(100%および90%)を行った後、BJS600(Bkインクタンクに液体組成物を使用)にて、各色インクの印字を行った部位を完全に覆うように同じ方法で液体組成物のベタ印字(90%)を行った。
【0067】
インク組成
・インク染料(Y、M、CまたはBk):5部
・エチレングリコール:10部
・ポリエチレングリコール:10部
・水:75部
インク染料
Y:C.I.アシッドイエロー23
M:C.I.アシッドレッド52
C:C.I.ダイレクトブルー199
Bk:C.I.フードブラック2
【0068】
(被覆層形成性)
上記で作成したブラック単色ベタ部(100%)を、オゾン曝露試験機(スガ試験機社製)に入れて、23℃、60%RHの条件下で、濃度2.9ppmのオゾン中に1時間曝露し、被覆層形成性をドット状の被覆層欠陥にて目視評価した。○:被覆層欠陥無し。
△:スキャン間のつなぎ部分に少し欠陥はあるもののそれ以外は欠陥無し。
×:スキャン間のつなぎ部分以外で被覆層の欠陥有り。
【0069】
(耐ガス性)
上記で作成したブラック単色ベタ部(100%)を、オゾン曝露試験機(スガ試験機社製)に入れて、40℃、60%RHの条件下で、濃度2.9ppmのオゾン中に6時間曝露し、耐ガス性をオゾン暴露試験後の画像濃度変化率(%)で評価した。
耐ガス性(%)=(オゾン暴露試験後画像濃度/オゾン暴露試験前の画像濃度)×100(%)
【0070】
(色み)
上記で作成したシアン単色ベタ部(90%と100%)の色味を下記基準で目視評価した。
○:100%シアンベタ部で色みの変化がない。
△:90%シアンベタ部で色みの変化がない。
×:90%シアンベタ部で若干赤みがかかっている。
実施例10〜18
液体組成物と記録媒体を表4に示した組み合わせにて、下記のように印字および被覆層形成を行い、上記被覆層形成性、耐ガス性、および下記被覆層の表面性について評価を行った。結果を表4に示す。
【0071】
【表4】
【0072】
(印字および被覆層形成)
記録信号に応じた熱エネルギーをインクに付与することによりインクを吐出させるオンデマンド型マルチ記録ヘッドを有するインクジェット記録装置キヤノン製BJF660およびBJF900を用いて行った。まず、BJF660にて下記組成のカラーインクの単色印字(100%および90%)を行った後、BJF900(BkインクタンクおよびCインクタンクに液体組成物を使用)にて、各色インクの印字を行った部位を完全に覆うように、1回走査の印字モードにて液体組成物の印字(Bkインクタンク:100%、Cインクタンク:70%)を行った。
【0073】
インク組成
・インク染料(Y、M、C、Bk):5部
・エチレングリコール:10部
・ポリエチレングリコール:10部
・水:75部
インク染料
Y:C.I.アシッドイエロー23
M:C.I.アシッドレッド52
C:C.I.ダイレクトブルー199
Bk:C.I.フードブラック2
【0074】
(被覆層の表面性)
上記で作成した被覆層の表面を画像を20cmの距離から観察し、下記基準で目視評価した。
◎:干渉模様が見られず良好な画像品位である。
○:干渉模様の存在が確認できるが、画像品位の低下は感じられない。
△:干渉模様の存在が確認でき、やや画像品位の低下が感じられる。
×:干渉模様の存在が目立ち、画像品位の低下が感じられる。
【0075】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、ノズル目詰まりを発生することなく、表面性が制御された被覆層を形成し、耐ガス性に優れた小型化が容易な画像記録物形成方法を提供することが可能である。
Claims (7)
- 画像の少なくとも一部に被覆層を有する画像記録物の形成方法であって、
水性媒体と、下記一般式(1)で表される構造の基を有する高分子と、を含む液体組成物を用意する工程と、
記録媒体の有するインク受容層にインクジェット記録法によりインクを付与して形成した画像を有し、該インク受容層中に多価金属イオンを含む画像記録物を用意する工程と、
該記録物の画像上の少なくとも一部に前記液体組成物を付与し、該液体組成物中に含有される高分子を前記インク受容層中に含まれる多価金属イオンにより不溶化させることにより該液体組成物の付与位置に被覆層を形成する工程と、を有し、
前記液体組成物の画像上での固化時間(ΔTc)を5〜200msecとしたことを特徴とする画像記録物の形成方法:
−COOA・・・(1)
(但し、式中のAはアルカリ金属、アンモニウム又は有機アンモニウムを表わす)。 - 前記インク受容層がアルミナ水和物を含む多孔質インク受容層を有し、かつ前記多価金属イオンとして、アルカリ土類金属イオン、希土類金属イオン及びジルコニウムイオンの少なくとも1種を含む請求項1に記載の形成方法。
- 前記インク受容層中の多価金属イオン濃度が0.01〜1.0(mol/L)の範囲にある請求項1または2に記載の形成方法。
- 前記高分子がアクリル酸系単量体からなる単位を含むビニル共重合体である請求項1〜3のいずれかに記載の形成方法。
- 前記画像の少なくとも一部に形成された被覆層の厚みが、0.05〜1μmの範囲にある請求項1〜4のいずれかに記載の形成方法。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の画像記録物の形成方法によって得られたことを特徴とする画像記録物。
- 記録媒体のインク受容層にインクジェット記録法によりインクを付与して形成された画像の少なくとも一部に被覆層を形成するための液体組成物であって、
水性媒体と、下記一般式(1)で表される構造の基を有する高分子と、を含み、該高分子が、前記画像が形成されているインク受容層中の多価金属イオンによって不溶化し得る状態で該水性媒体に溶解しており、前記画像上に付与された際の固化時間(ΔTc)が5〜200msecの範囲にあることを特徴とする液体組成物:
−COOA・・・(1)
(但し、式中のAはアルカリ金属、アンモニウム又は有機アンモニウムを表わす)。
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