JP2004122333A - 走査型プローブの制御装置、該制御装置を用いた加工装置及び加工方法、観察装置 - Google Patents
走査型プローブの制御装置、該制御装置を用いた加工装置及び加工方法、観察装置 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】共振周波数で微小振動するプローブを、試料表面に近接させた際に、該探針先端が試料表面に接触するのを抑制することができる走査型プローブの制御装置、観察装置、及び加工時に探針先端との間に電圧を印加する場合においても、探針先端を試料表面に近接させて、安定な電界を印加することが可能となる加工装置、加工方法を提供すること。
【解決手段】導電性の微小探針の先端を加工対象である試料表面に対して非接触に制御するプローブを有する走査型プローブの制御装置において、プローブをトーションモードで加振させるように構成し、該制御装置を用いて探針先端を試料表面に近接させ、試料表面との間に電圧を印加して加工する加工装置または加工方法を構成する。
【選択図】 図3
【解決手段】導電性の微小探針の先端を加工対象である試料表面に対して非接触に制御するプローブを有する走査型プローブの制御装置において、プローブをトーションモードで加振させるように構成し、該制御装置を用いて探針先端を試料表面に近接させ、試料表面との間に電圧を印加して加工する加工装置または加工方法を構成する。
【選択図】 図3
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、探針と試料を接近させることによって生じる物理現象を利用した走査型プローブの制御装置、該制御装置を用いた加工装置及び加工方法、観察装置に関し、特に探針と試料との間に働く原子間力を測定し、それらの信号の変化から観察対象物表面の微細な凹凸を非接触で計測するとともに、探針先端から微小領域に何らかのエネルギーを注入することによりその微小領域を加工する加工装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、探針と試料とを接近させ、その時に生じる物理現象(トンネル現象、原子間力等)を利用して、物質表面及び表面近傍の電子構造を直接観察できる走査型プローブ顕微鏡(以下SPMと略す)が開発され、単結晶、非晶質を問わず様々な物理量の実空間像を高い分解能で測定できるようになっている。
中でも走査型原子間力顕微鏡(以下AFMと呼ぶ)は探針先端の原子と試料上の原子の間の微弱な作用力(原子間力:Atomic Force)を検出して試料表面の凹凸を測定するために、探針や試料に導電性や磁性等の特殊な性質を必要とせず、絶縁物とりわけ最近では有機物等の形状の測定等に効力を発揮している。
【0003】
また、AFMには大きく分けて、原子間力が斥力の状態で用いるものと引力の状態で用いるものと2種類があり、前者をコンタクトモードAFM、後者をノンコンタクトモードAFMと言うことがある。
コンタクトモードAFMは測定対象と探針先端との斥力を測定する。この場合の斥力は探針先端と測定対象表面との距離変化に対して非常に大きく変化し、したがってその力を受けるプローブ(探針を支える部分)の歪み量が大きく感度が大きいために測定システムへの負荷が小さくて済む。しかしながら、探針と測定表面は非常に接近しており、その力は測定表面や探針先端に、時として弾性変形以上の影響を与え、試料や探針先端に損傷を与えることがある。
前述の有機物、とりわけ生体物質など柔らかい試料の測定に対してはその影響が大きく、プローブおよび探針先端により対象物を変形したり破壊したりするために精度良い観察ができない。
【0004】
一方、ノンコンタクトモードAFMは探針先端と測定対象表面との間の原子間引力を測定するが、その引力は、探針先端と測定対象表面との距離がコンタクトモードより大きい状態から働くために、探針先端と測定対象表面の両方に対する影響が非常に小さい。したがって、ノンコンタクトモードAFMは上記のコンタクトモードAFMの欠点を持たないため、柔らかい試料の測定には有用である。しかしながらノンコンタクトモードは、力の変化が探針先端と試料表面との間の距離変化に対してあまり敏感でないことが挙げられる。そのために一般的にはカンチレバータイプのプローブを共振周波数で微小振動させ、微小引力変化が探針先端に働いた場合の振動状態の変化(周波数ずれや位相ずれ等)をモニタすることにより間接的に測定している。そのため、当然のことながら測定システムは複雑になり、また加えてプローブを振動させるための加振機構も必要になっている。
【0005】
因みに、現在最も一般的に用いられているAFMは両モードともに光てこ方式である(例えば、非特許文献1参照)。この方式は、プローブとして数10〜数100μmの長さのカンチレバーの先端探針を設け、そのカンチレバーの探針と反対側にレーザ光を照射し、その反射光の方向を測定することによって、探針が試料からの原子間力を受けたことによるカンチレバーの微小なたわみ量をてこの原理で拡大し、測定できるように構成されている。
【0006】
また、一方で走査型プローブ顕微鏡は最近になって、その原理、装置構成を用いて、ナノメートルオーダーの加工を行なう方法にも用いられており、実際に装置としての報告も行なわれている。
この加工の最もわかりやすい方法としては、弾性体に支持された探針を試料表面に接触させた状態で探針と試料表面を相対的に移動させることにより試料表面に加工を施す切削加工方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この方法によれば導電性の薄膜に溝を掘って電気的に絶縁層を形成することによって配線パターンを作ったり、素子自体を作ったりすることができる。しかしながら実際には、摩擦による探針先端の変化や切削くずの影響などにより、精度の良い加工をするためには条件の設定(探針や加工対象の材料・材質の選定、探針先端の対象材料への押しつけ条件など)を検討することが必要になる。
【0007】
次に、比較的簡単で近年着目されている方法としては、走査型トンネル顕微鏡を用いた導電性の加工対象への局所的な変成効果を利用する方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。実際に報告されている例としては、導電性の探針と加工対象である導電性の薄膜(絶縁体基板上の半導体薄膜や金属薄膜など)との間に電圧を印加し、それによって加工対象を局所的に酸化することにより電気的に絶縁パターンを形成し、配線や素子を作るというものである。
また同様な例として、非接触による加工も可能である(例えば、非特許文献2参照)。
また、電子線リソグラフィの一種として、リソグラフィ用の有機薄膜をシリコン基板上に累積し、プローブでアクセス、バイアスを印加することによってパターンを形成させるというものも報告されている(例えば、非特許文献3参照)。以上のような方法を用いることにより、ナノメートルオーダーの構造を形成できるため、そのような構造による新しい機能をもったデバイスなども考案されるようにもなってきている。
【0008】
【特許文献1】特開平10−340700号公報
【特許文献2】特開平9−172213号公報
【非特許文献1】T.R.Albrecht,J.Appl.Phys.69(2)668頁
【非特許文献2】APPLIED PHYSICS LETTERS,76巻,23号,3427頁
【非特許文献3】THIN SOLID FILMS,327〜329巻,690〜693頁
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
以上に示したようにプローブ顕微鏡の方法により観察や加工が可能であるが、これらにより加工をする場合には、必ず加工位置を探す必要がある。そのための行程としては、
・加工エリアを決める。
・加工エリアの表面状態を把握する。
・加工開始位置を決定する。
・加工する。
・加工が正常に行なわれたかどうかを調べる。
という手順が、一般的には必要である。
【0010】
したがって、加工をする場合は必ず何度もそのエリアを観察する必要が生じる。加えて、エリアの観察ではラスタ走査によってプローブを試料表面に対してスキャンし、隈無く観察するのが一般的であり、その際のプローブの走行距離は、実際に加工するための走行距離よりもかなり長くなってしまう。加工や観察では、なるべく探針先端と試料等にダメージを与えないことが必要である。従って、加工および観察過程において非接触AFMを使用する必要がある。
【0011】
しかしながら、従来のノンコンタクトの方式においては、前述したようにカンチレバータイプのプローブを共振周波数で振動させて用いられることから、探針先端を試料表面に近接させると、試料表面の方向にかなりの振動幅で振動しているプローブの探針先端が試料表面と接触し、探針先端が劣化する等の弊害が生じるため、探針先端が接触しない距離以上に離して用いることが必要であった。
【0012】
特に、探針先端と加工対象表面との間の電圧印加による加工をするような場合、探針先端を加工対象表面に近接させると、上記したように加工対象表面の方向に振動しているプローブの探針先端が加工対象表面と接触するため、これを所定距離以上離すと、加工時に安定な電界が印加されず、加工安定性や加工効率の低下を招いてしまうという問題を有していた。すなわち、従来の方式のカンチレバー型のプローブをその1次の共振周波数において撓み振動させその振動状態の変化を検出する場合、探針先端と加工対象表面との距離はその探針部分で数10nm以上の範囲で振動してしまうため、結果としてプローブと加工表面との間にできる電界が、プローブの振動に伴い非常に大きく変化してしまうこととなり、加工時に安定な電界が印加されず、加工安定性や加工効率の低下を招いてしまうということとなる。
【0013】
そこで、本発明は、上記課題を解決し、共振周波数で微小振動するプローブを、試料表面に近接させた際に、該探針先端が試料表面に接触するのを抑制することができる走査型プローブの制御装置、観察装置を提供すること、及び加工時に探針先端との間に電圧を印加する場合においても、探針先端を試料表面に近接させて、安定な電界を印加することが可能となる加工装置、加工方法を提供することを目的とするものである。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明は、つぎのように構成した走査型プローブの制御装置、該制御装置を用いた加工装置及び加工方法、観察装置を提供するものである。
本発明の走査型プローブの制御装置は、共振周波数で微小振動させ、導電性の微小探針の先端を試料表面に対して非接触に制御するプローブを有する走査型プローブの制御装置において、
前記プローブをトーションモードで加振するための加振手段と、
前記加振手段を動作させる加振駆動信号を生成する駆動信号生成手段と、
前記プローブの振動周波数を検出する振動周波数検出手段と、
前記振動周波数検出手段で検出された周波数を参照して前記微小探針の先端と
前記試料表面との距離を制御する距離制御手段と、
前記プローブを試料表面に対して走査するプローブ走査手段と、を有することを特徴としている。
また、本発明の加工装置は、共振周波数で微小振動させ、導電性の微小探針の先端を加工対象である試料表面に対して非接触に制御するプローブを有する走査型プローブの制御装置を上記本発明の走査型プローブの制御装置で構成し、電圧の印加により前記試料表面を加工する加工装置であって、
前記導電性探針と前記試料との間に電圧を印加する電圧印加手段と、
加工パターンを解析することにより、前記プローブの走査方向を前記導電性探針の振動方向と適合するように制御する走査方向制御手段と、を有することを特徴としている。
また、本発明の加工方法は、共振周波数で微小振動させ、導電性の微小探針の先端を加工対象である試料表面に対して非接触に制御するプローブを有する走査型プローブの制御装置に上記本発明の走査型プローブの制御装置を用い、前記探針先端を前記試料表面に近接させ、前記試料表面との間に電圧を印加して加工する加工方法であって、
前記試料表面の加工時において、与えられた加工パターンを解析し、前記プローブの走査方向を前記導電性探針の振動方向と適合するように制御することを特徴としている。
また、本発明の観察方法は、前記した本発明の走査型プローブの制御装置によって構成したことを特徴としている。
【0015】
【発明の実施の形態】
上記構成を適用して、導電性の微小探針の先端を加工対象である試料表面に対して非接触に制御するプローブを有する走査型プローブの制御装置において、プローブをトーション(ねじれ)モードで加振させるように構成し、該制御装置を用いて探針先端を試料表面に近接させ、試料表面との間に電圧を印加して加工する加工装置または加工方法を構成することで、安定した加工電圧を探針・加工表面間に印加することが可能となる。
また、それにより加工電流の変化量を抑えることが可能となり、加工信号のパスに寄生した容量やインダクタンスの影響を低減することが可能となって、安定した加工条件を実現することができる。以上の結果として。探針先端の劣化を抑え、探針の寿命を延ばし、安定した加工を実現することができる。
【0016】
以下、本発明の実施の形態について図を用いて説明する。
図1に示したものが本発明の実施のためのシステム構成を示したブロック図である。
探針101を先端に持つカンチレバー型のプローブ102にレーザ105から出たレーザ光を照射し、プローブ上で反射した光をフォトダイオード106により検出することで、探針101先端と加工試料(加工対象基板)103表面の距離をプローブの状態変化で検出する。
本発明の検出は例えば図2に示すような三角型のカンチレバープローブを用いて実現される。厚さTで幅がWの梁をその先端で合わせたような形をしており、全体の長さがLで梁の先端部分に導電性の探針が設けられている。導電性探針への電気的なコンタクトは、梁自体が導電性を持つもので構成しても良いし、配線によっても実現できる。どちらについても半導体プロセスなどで構成が可能である。
【0017】
通常の非接触AFMにおいては、探針先端と対象表面との力の相互作用の大きさを梁の1次の共振モード、すなわち撓み振動の振動状態変化(共振周波数変化あるいは振幅)を測定することによって測定する。しかしながらこの場合、プローブの探針先端と対象表面との距離が数10nm程度の振動するため、その間の電界も振動に伴い大きく変化する。
この電界の変化は加工時の流れる電流に大きく変化を及ぼすため、この電流変化により加工安定性が低下してしまう。すなわち、加工信号を印加するパスはインダクタンスや寄生容量を持つため、電流の急激な変化により安定した加工エネルギーの供給が困難になってしまっているためである。また加工は探針先端と対象表面との距離が最小になった近辺でのみ行われるために加工効率も低下することになる。
【0018】
そこで、本実施の形態ではプローブのトーション振動モード、すなわちねじれ振動を用いて加工を行なう。図2に示すような三角型のカンチレバーを用いる場合を説明する。このプローブは三角形に出た梁の先端に円すい形の導電性探針を備えている。下方の図は上方の図を横から見たもので、近年ではシリコン等で半導体プロセスによって容易に作製できる。
【0019】
このプローブを所定の周波数によって加振すると図3の様な振動を発現する。図3は図2のA矢印方向から見たものである。プローブのトーション振動により探針先端が左右に振動していることを示している。
探針先端は左右に振動すると同時に上下にも微小振動を行なうが、その大きさは探針高さとその振動角度によるが、これらはプローブの機械定数などにより決定される。
プローブの先端に図3(a)の実線矢印に示す様にレーザー光を照射し、トーションモードで加振すると図3(b)、(c)の実線矢印の様に角度を変化させる。この角度の変化を遠方のフォトダイオードで検出することによって、プローブの振動状態を検出することが可能である。例えば図5に示すように探針先端と試料表面との距離を横軸に、縦軸に周波数変化量をとると表面に近づくに従い、振動周波数は低下していることが判る。すなわち通常の非接触AFMと同様の特性を示す。
【0020】
図1に戻り動作の説明をする。
フォトダイオード106で検出された信号はプリアンプ107を通して周波数検出部108に送られる。周波数検出器108は、後に詳述するが、プローブ加振信号をアンプ109を通して加振用アクチュエータ104に印加する。
また、周波数検出部108で検出した周波数信号は信号処理部111およびZ制御部113に送られる。Z制御部113では、検出された周波数信号が設定周波数になるように探針101先端と加工試料103表面の距離をフィードバック制御する。Z制御部113はZ方向(探針先端−加工表面方向)のステージ駆動信号をアンプ114を通してXYZステージ119のZアクチュエータに印加する。
【0021】
探針101先端が試料表面と、原子間力などの相互作用を起こすことによってプローブの共振周波数がシフトするため、そのシフト量を一定にする制御をかけることによって、探針先端と加工表面との間の平均距離を一定にすることが可能となる。
また、探針先端と加工表面との間の平均距離を一定にしながら、XY方向(加工表面に平行な方向)に相対的にプローブを掃引することによって、Z方向の制御信号或いは周波数シフト量を計測し、表面の凹凸情報を得ることも可能である。
【0022】
信号処理部111は周波数検出部108の出力する周波数シフト量信号とZ制御部113の出力する制御量を受け取り、それらを処理し、視覚データなどを作成して次段の出力装置112へ出力する。出力装置112は例えばCRTなどのモニタやメモリなどのストレージデバイスである。
【0023】
次に本発明のもう一つ特徴的な部分である加工制御部分について説明する。
探針101先端と加工試料103の間に電圧を印加することにより加工する加工方法においては、探針101或いは加工試料103に電圧を印加することになる。
図1に示すシステムの場合には、加工試料103を接地しプローブバイアス印加部110によりプローブ102を通して探針101に電圧を印加している。プローブバイアス印加部110は加工制御部116により、その印加タイミング、印加時間等が制御される。加工制御部116は加工データ入力部115により入力された加工データを参照して、プローブバイアス印加部110とXY走査制御部117および回転台120に制御信号を送出する。
XY走査制御部117は加工制御部116からの制御信号によりプローブと基板の相対的なXY方向の位置決め及び走査を行ない、回転台120は同じく加工制御部116の制御信号によりZ軸に対して平行にXYZステージ119を回転する。このとき探針101の先端位置は回転台120の回転軸近辺にアライメントすることが望ましい。
上記の加工制御について以下詳述する。
【0024】
図4(a)に示すようにプローブがトーション(ねじれ)動作を起こすと、探針先端は距離dの間で振動を起こす。従ってバイアス印加による加工などを行なう場合にプローブの掃引方向によっては加工可能な線の太さが異なることになる。すなわち図4(b)(c)に示すように、探針先端の振動方向に直角の方向であれば線幅d程度の加工になり、振動方向に平行であれば線幅は探針先端で規定される最小線幅lの加工になる。
これらの特徴を用いて効率よく高精細な加工を行なうためには、大きな面積や太い線状の加工には先端の振動方向に直角の方向のプローブ掃引を用い、細かい部分の加工には振動と平行な方向の掃引を用いることが必要である。
【0025】
例えば図7の様なパターンを加工する場合を考える。dとlについてl<s<d、l<t<d、uvwxyz>dという関係がある場合には、s、tのラインは必ず探針先端の振動と平行方向に掃引しながら幅lで加工する必要がある。
また、大きい面積(たとえばuvで囲まれた長方形)の場合には振動と直角方向に掃引しながら幅dにより加工すると効率的である。ここで仮に四角形uvにおいてu<vの場合にはvの方向に掃引するという条件を付けたとすれば図7(a)のパターンの加工は、始めに(b)の縞模様で示した部分を加工し(縦縞は探針振動方向と直角方向の掃引により加工、横縞は平行方向の掃引により加工)、点線部分は加工しない。
【0026】
次に(c)の様に、加工表面とプローブを相対的に90°回転し、同様に加工する。これをフローで示すと図6になる。加工開始によって加工データを取り込み、ある方向での成分(細線と太線)を抽出し加工、次に90°回転させてその方向での成分の抽出を行ない加工をする。こうすることによって図7に示すようなパターンについての加工が効率よく実現される。
【0027】
【実施例】
つぎに、本発明の実施例について説明する。
導電性レバーとして半導体プロセスを用いて製作された長さL=100μm、幅W=10μm、厚さT=2μmのシリコンカンチレバーを用い、導電性を得るためにPt薄膜をスパッタによりプローブ表面に堆積させ、その上に探針として高さ10μm程度のPtによる円錐形の構造をスピント法により形成した。
このプローブに機械的な衝撃を加えて、トーション方向の共振周波数をスペクトルアナライザで測定したところ1520kHzであった。大気中でのQ値は400程度であったため、加工時は10−3Torr程度まで減圧することによって概ね10000程度まで向上させた。
加工対象となる試料としてはシリコン上に累積したレジスト薄膜(PMPMA;ポリメチルフェニルメタクリレート)を用い、SPMリソグラフィを行なった。プローブと基板であるシリコンウェハとの間に20V程度(基板を正とする)を印加することによりパターンの形成を行なった。
【0028】
その他の回路部分の設定については以下の通りである。
図1における周波数検出部108は一般に市販されている汎用PLL(Phase Locked Loop)を用い、信号処理部111にはA/D変換インターフェイスを持ったパーソナルコンピュータを用いた。
出力装置112としてはCRTモニタである。Z制御部113はコンベンショナルなPID制御をアナログ回路で実現したもので、デバイスなどはいづれも市販の低ノイズのオペアンプ(OP27相当)を用いている。回路はエラー生成のためのコンパレータ、アンプ、LPF、HPFおよび積分器よりなる。
【0029】
加工制御部116は制御信号出力のためのインターフェイスを持ったパーソナルコンピュータを用いており、本実施例ではパラレルポートの信号出力により制御している。実際は信号処理部111と加工制御部116は同じ一台のコンピュータを用いているが、別なコンピュータを用いても良いし、加工制御についてはDSP等の信号処理回路により構成してもよい。
【0030】
また、加工データ入力部115は、本実施例ではパーソナルコンピュータのキーボードやマウスなどによってグラフィックデータとしては加工データを構成している。回転台120はDCサーボモータとエンコーダを組み合わせて所定の解像度で回転位置決めを行なっており、XYZステージは100μm×100μm×10μmのレンジで駆動可能なピエゾ駆動タイプのステージを用いている。XYは1nm、Zは0.1nmの位置決め精度を持っている。
プローブ背面からフォトダイオードの受光部までの距離が10cmとなっており、フォトダイオード受光面での反射スポットの距離が0.5mm程度となり、これより換算すると10μmの高さを持つ探針先端に対して振動幅は50nm程度となっていることが予想される。
【0031】
以上の構成を用いて、周波数シフト量を−3Hzに設定し、Z方向の距離制御を行なって加工を行なったところ、探針先端振動方向に平行方向加工時には1nm幅、垂直方向加工時には約40nm幅の加工が可能であることが判った。
加工の安定性は従来の撓み方向振動を用いた位置制御の場合よりも探針寿命で10倍程度向上したが、これは加工時の印加電流の変動として、従来の撓み方向の位置制御における加工時の5%程度に抑えられていることによるものと考えられ、電流パスのインダクタンスや寄生容量の影響を低減した系が実現されたことを示すものである。
【0032】
【発明の効果】
本発明の構成によれば、共振周波数で微小振動するプローブを、試料表面に近接させた際に、該探針先端が試料表面に接触するのを抑制することができる走査型プローブの制御装置及びそれを用いた観察装置を実現することができる。
また、このような制御装置を用いることにより、加工時に探針先端との間に電圧を印加する場合においても、探針先端を試料表面に近接させて、安定な電界を印加することが可能となる加工装置及び加工方法を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態におけるシステム構成を示すブロック図。
【図2】本発明の実施の形態におけるシステムに用いられるプローブの構成を示す図。
【図3】本発明の実施の形態におけるトーション(ねじれ)モードの動作を説明する図。
【図4】本発明の実施の形態におけるトーション(ねじれ)モードによる加工を説明する図。
【図5】本発明の実施の形態における探針先端と加工対象表面との距離に対する共振周波数の変化の一例を示す図。
【図6】本発明の実施の形態における加工手順を説明するフロー図。
【図7】本発明の実施の形態における加工パターンの一例と、加工手順を示す図。
【符号の説明】
101:探針
102:プローブ
103:加工試料
104:加振用アクチュエータ
105:レーザ
106:フォトダイオード
107:プリアンプ
108:周波数検出部
109:アンプ
110:プローブバイアス印加部
111:信号処理部
112:出力装置
113:Z制御部
114:アンプ
115:加工データ入力部
116:加工制御部
117:XY走査制御部
119:XYZステージ
120:回転台
【発明の属する技術分野】
本発明は、探針と試料を接近させることによって生じる物理現象を利用した走査型プローブの制御装置、該制御装置を用いた加工装置及び加工方法、観察装置に関し、特に探針と試料との間に働く原子間力を測定し、それらの信号の変化から観察対象物表面の微細な凹凸を非接触で計測するとともに、探針先端から微小領域に何らかのエネルギーを注入することによりその微小領域を加工する加工装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、探針と試料とを接近させ、その時に生じる物理現象(トンネル現象、原子間力等)を利用して、物質表面及び表面近傍の電子構造を直接観察できる走査型プローブ顕微鏡(以下SPMと略す)が開発され、単結晶、非晶質を問わず様々な物理量の実空間像を高い分解能で測定できるようになっている。
中でも走査型原子間力顕微鏡(以下AFMと呼ぶ)は探針先端の原子と試料上の原子の間の微弱な作用力(原子間力:Atomic Force)を検出して試料表面の凹凸を測定するために、探針や試料に導電性や磁性等の特殊な性質を必要とせず、絶縁物とりわけ最近では有機物等の形状の測定等に効力を発揮している。
【0003】
また、AFMには大きく分けて、原子間力が斥力の状態で用いるものと引力の状態で用いるものと2種類があり、前者をコンタクトモードAFM、後者をノンコンタクトモードAFMと言うことがある。
コンタクトモードAFMは測定対象と探針先端との斥力を測定する。この場合の斥力は探針先端と測定対象表面との距離変化に対して非常に大きく変化し、したがってその力を受けるプローブ(探針を支える部分)の歪み量が大きく感度が大きいために測定システムへの負荷が小さくて済む。しかしながら、探針と測定表面は非常に接近しており、その力は測定表面や探針先端に、時として弾性変形以上の影響を与え、試料や探針先端に損傷を与えることがある。
前述の有機物、とりわけ生体物質など柔らかい試料の測定に対してはその影響が大きく、プローブおよび探針先端により対象物を変形したり破壊したりするために精度良い観察ができない。
【0004】
一方、ノンコンタクトモードAFMは探針先端と測定対象表面との間の原子間引力を測定するが、その引力は、探針先端と測定対象表面との距離がコンタクトモードより大きい状態から働くために、探針先端と測定対象表面の両方に対する影響が非常に小さい。したがって、ノンコンタクトモードAFMは上記のコンタクトモードAFMの欠点を持たないため、柔らかい試料の測定には有用である。しかしながらノンコンタクトモードは、力の変化が探針先端と試料表面との間の距離変化に対してあまり敏感でないことが挙げられる。そのために一般的にはカンチレバータイプのプローブを共振周波数で微小振動させ、微小引力変化が探針先端に働いた場合の振動状態の変化(周波数ずれや位相ずれ等)をモニタすることにより間接的に測定している。そのため、当然のことながら測定システムは複雑になり、また加えてプローブを振動させるための加振機構も必要になっている。
【0005】
因みに、現在最も一般的に用いられているAFMは両モードともに光てこ方式である(例えば、非特許文献1参照)。この方式は、プローブとして数10〜数100μmの長さのカンチレバーの先端探針を設け、そのカンチレバーの探針と反対側にレーザ光を照射し、その反射光の方向を測定することによって、探針が試料からの原子間力を受けたことによるカンチレバーの微小なたわみ量をてこの原理で拡大し、測定できるように構成されている。
【0006】
また、一方で走査型プローブ顕微鏡は最近になって、その原理、装置構成を用いて、ナノメートルオーダーの加工を行なう方法にも用いられており、実際に装置としての報告も行なわれている。
この加工の最もわかりやすい方法としては、弾性体に支持された探針を試料表面に接触させた状態で探針と試料表面を相対的に移動させることにより試料表面に加工を施す切削加工方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この方法によれば導電性の薄膜に溝を掘って電気的に絶縁層を形成することによって配線パターンを作ったり、素子自体を作ったりすることができる。しかしながら実際には、摩擦による探針先端の変化や切削くずの影響などにより、精度の良い加工をするためには条件の設定(探針や加工対象の材料・材質の選定、探針先端の対象材料への押しつけ条件など)を検討することが必要になる。
【0007】
次に、比較的簡単で近年着目されている方法としては、走査型トンネル顕微鏡を用いた導電性の加工対象への局所的な変成効果を利用する方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。実際に報告されている例としては、導電性の探針と加工対象である導電性の薄膜(絶縁体基板上の半導体薄膜や金属薄膜など)との間に電圧を印加し、それによって加工対象を局所的に酸化することにより電気的に絶縁パターンを形成し、配線や素子を作るというものである。
また同様な例として、非接触による加工も可能である(例えば、非特許文献2参照)。
また、電子線リソグラフィの一種として、リソグラフィ用の有機薄膜をシリコン基板上に累積し、プローブでアクセス、バイアスを印加することによってパターンを形成させるというものも報告されている(例えば、非特許文献3参照)。以上のような方法を用いることにより、ナノメートルオーダーの構造を形成できるため、そのような構造による新しい機能をもったデバイスなども考案されるようにもなってきている。
【0008】
【特許文献1】特開平10−340700号公報
【特許文献2】特開平9−172213号公報
【非特許文献1】T.R.Albrecht,J.Appl.Phys.69(2)668頁
【非特許文献2】APPLIED PHYSICS LETTERS,76巻,23号,3427頁
【非特許文献3】THIN SOLID FILMS,327〜329巻,690〜693頁
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
以上に示したようにプローブ顕微鏡の方法により観察や加工が可能であるが、これらにより加工をする場合には、必ず加工位置を探す必要がある。そのための行程としては、
・加工エリアを決める。
・加工エリアの表面状態を把握する。
・加工開始位置を決定する。
・加工する。
・加工が正常に行なわれたかどうかを調べる。
という手順が、一般的には必要である。
【0010】
したがって、加工をする場合は必ず何度もそのエリアを観察する必要が生じる。加えて、エリアの観察ではラスタ走査によってプローブを試料表面に対してスキャンし、隈無く観察するのが一般的であり、その際のプローブの走行距離は、実際に加工するための走行距離よりもかなり長くなってしまう。加工や観察では、なるべく探針先端と試料等にダメージを与えないことが必要である。従って、加工および観察過程において非接触AFMを使用する必要がある。
【0011】
しかしながら、従来のノンコンタクトの方式においては、前述したようにカンチレバータイプのプローブを共振周波数で振動させて用いられることから、探針先端を試料表面に近接させると、試料表面の方向にかなりの振動幅で振動しているプローブの探針先端が試料表面と接触し、探針先端が劣化する等の弊害が生じるため、探針先端が接触しない距離以上に離して用いることが必要であった。
【0012】
特に、探針先端と加工対象表面との間の電圧印加による加工をするような場合、探針先端を加工対象表面に近接させると、上記したように加工対象表面の方向に振動しているプローブの探針先端が加工対象表面と接触するため、これを所定距離以上離すと、加工時に安定な電界が印加されず、加工安定性や加工効率の低下を招いてしまうという問題を有していた。すなわち、従来の方式のカンチレバー型のプローブをその1次の共振周波数において撓み振動させその振動状態の変化を検出する場合、探針先端と加工対象表面との距離はその探針部分で数10nm以上の範囲で振動してしまうため、結果としてプローブと加工表面との間にできる電界が、プローブの振動に伴い非常に大きく変化してしまうこととなり、加工時に安定な電界が印加されず、加工安定性や加工効率の低下を招いてしまうということとなる。
【0013】
そこで、本発明は、上記課題を解決し、共振周波数で微小振動するプローブを、試料表面に近接させた際に、該探針先端が試料表面に接触するのを抑制することができる走査型プローブの制御装置、観察装置を提供すること、及び加工時に探針先端との間に電圧を印加する場合においても、探針先端を試料表面に近接させて、安定な電界を印加することが可能となる加工装置、加工方法を提供することを目的とするものである。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明は、つぎのように構成した走査型プローブの制御装置、該制御装置を用いた加工装置及び加工方法、観察装置を提供するものである。
本発明の走査型プローブの制御装置は、共振周波数で微小振動させ、導電性の微小探針の先端を試料表面に対して非接触に制御するプローブを有する走査型プローブの制御装置において、
前記プローブをトーションモードで加振するための加振手段と、
前記加振手段を動作させる加振駆動信号を生成する駆動信号生成手段と、
前記プローブの振動周波数を検出する振動周波数検出手段と、
前記振動周波数検出手段で検出された周波数を参照して前記微小探針の先端と
前記試料表面との距離を制御する距離制御手段と、
前記プローブを試料表面に対して走査するプローブ走査手段と、を有することを特徴としている。
また、本発明の加工装置は、共振周波数で微小振動させ、導電性の微小探針の先端を加工対象である試料表面に対して非接触に制御するプローブを有する走査型プローブの制御装置を上記本発明の走査型プローブの制御装置で構成し、電圧の印加により前記試料表面を加工する加工装置であって、
前記導電性探針と前記試料との間に電圧を印加する電圧印加手段と、
加工パターンを解析することにより、前記プローブの走査方向を前記導電性探針の振動方向と適合するように制御する走査方向制御手段と、を有することを特徴としている。
また、本発明の加工方法は、共振周波数で微小振動させ、導電性の微小探針の先端を加工対象である試料表面に対して非接触に制御するプローブを有する走査型プローブの制御装置に上記本発明の走査型プローブの制御装置を用い、前記探針先端を前記試料表面に近接させ、前記試料表面との間に電圧を印加して加工する加工方法であって、
前記試料表面の加工時において、与えられた加工パターンを解析し、前記プローブの走査方向を前記導電性探針の振動方向と適合するように制御することを特徴としている。
また、本発明の観察方法は、前記した本発明の走査型プローブの制御装置によって構成したことを特徴としている。
【0015】
【発明の実施の形態】
上記構成を適用して、導電性の微小探針の先端を加工対象である試料表面に対して非接触に制御するプローブを有する走査型プローブの制御装置において、プローブをトーション(ねじれ)モードで加振させるように構成し、該制御装置を用いて探針先端を試料表面に近接させ、試料表面との間に電圧を印加して加工する加工装置または加工方法を構成することで、安定した加工電圧を探針・加工表面間に印加することが可能となる。
また、それにより加工電流の変化量を抑えることが可能となり、加工信号のパスに寄生した容量やインダクタンスの影響を低減することが可能となって、安定した加工条件を実現することができる。以上の結果として。探針先端の劣化を抑え、探針の寿命を延ばし、安定した加工を実現することができる。
【0016】
以下、本発明の実施の形態について図を用いて説明する。
図1に示したものが本発明の実施のためのシステム構成を示したブロック図である。
探針101を先端に持つカンチレバー型のプローブ102にレーザ105から出たレーザ光を照射し、プローブ上で反射した光をフォトダイオード106により検出することで、探針101先端と加工試料(加工対象基板)103表面の距離をプローブの状態変化で検出する。
本発明の検出は例えば図2に示すような三角型のカンチレバープローブを用いて実現される。厚さTで幅がWの梁をその先端で合わせたような形をしており、全体の長さがLで梁の先端部分に導電性の探針が設けられている。導電性探針への電気的なコンタクトは、梁自体が導電性を持つもので構成しても良いし、配線によっても実現できる。どちらについても半導体プロセスなどで構成が可能である。
【0017】
通常の非接触AFMにおいては、探針先端と対象表面との力の相互作用の大きさを梁の1次の共振モード、すなわち撓み振動の振動状態変化(共振周波数変化あるいは振幅)を測定することによって測定する。しかしながらこの場合、プローブの探針先端と対象表面との距離が数10nm程度の振動するため、その間の電界も振動に伴い大きく変化する。
この電界の変化は加工時の流れる電流に大きく変化を及ぼすため、この電流変化により加工安定性が低下してしまう。すなわち、加工信号を印加するパスはインダクタンスや寄生容量を持つため、電流の急激な変化により安定した加工エネルギーの供給が困難になってしまっているためである。また加工は探針先端と対象表面との距離が最小になった近辺でのみ行われるために加工効率も低下することになる。
【0018】
そこで、本実施の形態ではプローブのトーション振動モード、すなわちねじれ振動を用いて加工を行なう。図2に示すような三角型のカンチレバーを用いる場合を説明する。このプローブは三角形に出た梁の先端に円すい形の導電性探針を備えている。下方の図は上方の図を横から見たもので、近年ではシリコン等で半導体プロセスによって容易に作製できる。
【0019】
このプローブを所定の周波数によって加振すると図3の様な振動を発現する。図3は図2のA矢印方向から見たものである。プローブのトーション振動により探針先端が左右に振動していることを示している。
探針先端は左右に振動すると同時に上下にも微小振動を行なうが、その大きさは探針高さとその振動角度によるが、これらはプローブの機械定数などにより決定される。
プローブの先端に図3(a)の実線矢印に示す様にレーザー光を照射し、トーションモードで加振すると図3(b)、(c)の実線矢印の様に角度を変化させる。この角度の変化を遠方のフォトダイオードで検出することによって、プローブの振動状態を検出することが可能である。例えば図5に示すように探針先端と試料表面との距離を横軸に、縦軸に周波数変化量をとると表面に近づくに従い、振動周波数は低下していることが判る。すなわち通常の非接触AFMと同様の特性を示す。
【0020】
図1に戻り動作の説明をする。
フォトダイオード106で検出された信号はプリアンプ107を通して周波数検出部108に送られる。周波数検出器108は、後に詳述するが、プローブ加振信号をアンプ109を通して加振用アクチュエータ104に印加する。
また、周波数検出部108で検出した周波数信号は信号処理部111およびZ制御部113に送られる。Z制御部113では、検出された周波数信号が設定周波数になるように探針101先端と加工試料103表面の距離をフィードバック制御する。Z制御部113はZ方向(探針先端−加工表面方向)のステージ駆動信号をアンプ114を通してXYZステージ119のZアクチュエータに印加する。
【0021】
探針101先端が試料表面と、原子間力などの相互作用を起こすことによってプローブの共振周波数がシフトするため、そのシフト量を一定にする制御をかけることによって、探針先端と加工表面との間の平均距離を一定にすることが可能となる。
また、探針先端と加工表面との間の平均距離を一定にしながら、XY方向(加工表面に平行な方向)に相対的にプローブを掃引することによって、Z方向の制御信号或いは周波数シフト量を計測し、表面の凹凸情報を得ることも可能である。
【0022】
信号処理部111は周波数検出部108の出力する周波数シフト量信号とZ制御部113の出力する制御量を受け取り、それらを処理し、視覚データなどを作成して次段の出力装置112へ出力する。出力装置112は例えばCRTなどのモニタやメモリなどのストレージデバイスである。
【0023】
次に本発明のもう一つ特徴的な部分である加工制御部分について説明する。
探針101先端と加工試料103の間に電圧を印加することにより加工する加工方法においては、探針101或いは加工試料103に電圧を印加することになる。
図1に示すシステムの場合には、加工試料103を接地しプローブバイアス印加部110によりプローブ102を通して探針101に電圧を印加している。プローブバイアス印加部110は加工制御部116により、その印加タイミング、印加時間等が制御される。加工制御部116は加工データ入力部115により入力された加工データを参照して、プローブバイアス印加部110とXY走査制御部117および回転台120に制御信号を送出する。
XY走査制御部117は加工制御部116からの制御信号によりプローブと基板の相対的なXY方向の位置決め及び走査を行ない、回転台120は同じく加工制御部116の制御信号によりZ軸に対して平行にXYZステージ119を回転する。このとき探針101の先端位置は回転台120の回転軸近辺にアライメントすることが望ましい。
上記の加工制御について以下詳述する。
【0024】
図4(a)に示すようにプローブがトーション(ねじれ)動作を起こすと、探針先端は距離dの間で振動を起こす。従ってバイアス印加による加工などを行なう場合にプローブの掃引方向によっては加工可能な線の太さが異なることになる。すなわち図4(b)(c)に示すように、探針先端の振動方向に直角の方向であれば線幅d程度の加工になり、振動方向に平行であれば線幅は探針先端で規定される最小線幅lの加工になる。
これらの特徴を用いて効率よく高精細な加工を行なうためには、大きな面積や太い線状の加工には先端の振動方向に直角の方向のプローブ掃引を用い、細かい部分の加工には振動と平行な方向の掃引を用いることが必要である。
【0025】
例えば図7の様なパターンを加工する場合を考える。dとlについてl<s<d、l<t<d、uvwxyz>dという関係がある場合には、s、tのラインは必ず探針先端の振動と平行方向に掃引しながら幅lで加工する必要がある。
また、大きい面積(たとえばuvで囲まれた長方形)の場合には振動と直角方向に掃引しながら幅dにより加工すると効率的である。ここで仮に四角形uvにおいてu<vの場合にはvの方向に掃引するという条件を付けたとすれば図7(a)のパターンの加工は、始めに(b)の縞模様で示した部分を加工し(縦縞は探針振動方向と直角方向の掃引により加工、横縞は平行方向の掃引により加工)、点線部分は加工しない。
【0026】
次に(c)の様に、加工表面とプローブを相対的に90°回転し、同様に加工する。これをフローで示すと図6になる。加工開始によって加工データを取り込み、ある方向での成分(細線と太線)を抽出し加工、次に90°回転させてその方向での成分の抽出を行ない加工をする。こうすることによって図7に示すようなパターンについての加工が効率よく実現される。
【0027】
【実施例】
つぎに、本発明の実施例について説明する。
導電性レバーとして半導体プロセスを用いて製作された長さL=100μm、幅W=10μm、厚さT=2μmのシリコンカンチレバーを用い、導電性を得るためにPt薄膜をスパッタによりプローブ表面に堆積させ、その上に探針として高さ10μm程度のPtによる円錐形の構造をスピント法により形成した。
このプローブに機械的な衝撃を加えて、トーション方向の共振周波数をスペクトルアナライザで測定したところ1520kHzであった。大気中でのQ値は400程度であったため、加工時は10−3Torr程度まで減圧することによって概ね10000程度まで向上させた。
加工対象となる試料としてはシリコン上に累積したレジスト薄膜(PMPMA;ポリメチルフェニルメタクリレート)を用い、SPMリソグラフィを行なった。プローブと基板であるシリコンウェハとの間に20V程度(基板を正とする)を印加することによりパターンの形成を行なった。
【0028】
その他の回路部分の設定については以下の通りである。
図1における周波数検出部108は一般に市販されている汎用PLL(Phase Locked Loop)を用い、信号処理部111にはA/D変換インターフェイスを持ったパーソナルコンピュータを用いた。
出力装置112としてはCRTモニタである。Z制御部113はコンベンショナルなPID制御をアナログ回路で実現したもので、デバイスなどはいづれも市販の低ノイズのオペアンプ(OP27相当)を用いている。回路はエラー生成のためのコンパレータ、アンプ、LPF、HPFおよび積分器よりなる。
【0029】
加工制御部116は制御信号出力のためのインターフェイスを持ったパーソナルコンピュータを用いており、本実施例ではパラレルポートの信号出力により制御している。実際は信号処理部111と加工制御部116は同じ一台のコンピュータを用いているが、別なコンピュータを用いても良いし、加工制御についてはDSP等の信号処理回路により構成してもよい。
【0030】
また、加工データ入力部115は、本実施例ではパーソナルコンピュータのキーボードやマウスなどによってグラフィックデータとしては加工データを構成している。回転台120はDCサーボモータとエンコーダを組み合わせて所定の解像度で回転位置決めを行なっており、XYZステージは100μm×100μm×10μmのレンジで駆動可能なピエゾ駆動タイプのステージを用いている。XYは1nm、Zは0.1nmの位置決め精度を持っている。
プローブ背面からフォトダイオードの受光部までの距離が10cmとなっており、フォトダイオード受光面での反射スポットの距離が0.5mm程度となり、これより換算すると10μmの高さを持つ探針先端に対して振動幅は50nm程度となっていることが予想される。
【0031】
以上の構成を用いて、周波数シフト量を−3Hzに設定し、Z方向の距離制御を行なって加工を行なったところ、探針先端振動方向に平行方向加工時には1nm幅、垂直方向加工時には約40nm幅の加工が可能であることが判った。
加工の安定性は従来の撓み方向振動を用いた位置制御の場合よりも探針寿命で10倍程度向上したが、これは加工時の印加電流の変動として、従来の撓み方向の位置制御における加工時の5%程度に抑えられていることによるものと考えられ、電流パスのインダクタンスや寄生容量の影響を低減した系が実現されたことを示すものである。
【0032】
【発明の効果】
本発明の構成によれば、共振周波数で微小振動するプローブを、試料表面に近接させた際に、該探針先端が試料表面に接触するのを抑制することができる走査型プローブの制御装置及びそれを用いた観察装置を実現することができる。
また、このような制御装置を用いることにより、加工時に探針先端との間に電圧を印加する場合においても、探針先端を試料表面に近接させて、安定な電界を印加することが可能となる加工装置及び加工方法を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態におけるシステム構成を示すブロック図。
【図2】本発明の実施の形態におけるシステムに用いられるプローブの構成を示す図。
【図3】本発明の実施の形態におけるトーション(ねじれ)モードの動作を説明する図。
【図4】本発明の実施の形態におけるトーション(ねじれ)モードによる加工を説明する図。
【図5】本発明の実施の形態における探針先端と加工対象表面との距離に対する共振周波数の変化の一例を示す図。
【図6】本発明の実施の形態における加工手順を説明するフロー図。
【図7】本発明の実施の形態における加工パターンの一例と、加工手順を示す図。
【符号の説明】
101:探針
102:プローブ
103:加工試料
104:加振用アクチュエータ
105:レーザ
106:フォトダイオード
107:プリアンプ
108:周波数検出部
109:アンプ
110:プローブバイアス印加部
111:信号処理部
112:出力装置
113:Z制御部
114:アンプ
115:加工データ入力部
116:加工制御部
117:XY走査制御部
119:XYZステージ
120:回転台
Claims (6)
- 共振周波数で微小振動させ、導電性の微小探針の先端を試料表面に対して非接触に制御するプローブを有する走査型プローブの制御装置において、
前記プローブをトーションモードで加振するための加振手段と、
前記加振手段を動作させる加振駆動信号を生成する駆動信号生成手段と、
前記プローブの振動周波数を検出する振動周波数検出手段と、
前記振動周波数検出手段で検出された周波数を参照して前記微小探針の先端と
前記試料表面との距離を制御する距離制御手段と、
前記プローブを試料表面に対して走査するプローブ走査手段と、
を有することを特徴とする走査型プローブの制御装置。 - 共振周波数で微小振動させ、導電性の微小探針の先端を加工対象である試料表面に対して非接触に制御するプローブを有する走査型プローブの制御装置を請求項1に記載の走査型プローブの制御装置で構成し、電圧の印加により前記試料表面を加工する加工装置であって、
前記導電性探針と前記試料との間に電圧を印加する電圧印加手段と、
加工パターンを解析することにより、前記プローブの走査方向を前記導電性探針の振動方向と適合するように制御する走査方向制御手段と、
を有することを特徴とする加工装置。 - 前記プローブ走査手段は、平行移動による位置決めと、回転移動による位置決めが可能に構成されていることを特徴とする請求項2に記載の加工装置。
- 共振周波数で微小振動させ、導電性の微小探針の先端を加工対象である試料表面に対して非接触に制御するプローブを有する走査型プローブの制御装置に請求項1に記載の走査型プローブの制御装置を用い、前記探針先端を前記試料表面に近接させ、前記試料表面との間に電圧を印加して加工する加工方法であって、
前記試料表面の加工時において、与えられた加工パターンを解析し、前記プローブの走査方向を前記導電性探針の振動方向と適合するように制御することを特徴とする加工方法。 - 前記プローブ走査手段によって、平行移動による位置決めをし、または回転移動による位置決めをすることを特徴とする請求項4に記載の加工方法。
- 共振周波数で微小振動させ、導電性の微小探針の先端を観察対象である試料表面に対して非接触に制御するプローブを有する走査型プローブの制御装置を備え、試料表面を観察する観察装置において、前記走査型プローブの制御装置を請求項1に記載の走査型プローブの制御装置によって構成したことを特徴とする観察装置。
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