JP2004121909A - 有機塩素化合物の処理方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】焼却炉などから排出されるダイオキシン類、PCB類などの毒性の高い有機塩素化合物や、これら毒性化合物の前駆体となるクロロベンゼン類などの有機塩素化合物を簡易に低害化する有機塩素化合物処理方法を提供する。
【解決手段】硫黄及び/または硫黄化合物を含有する多孔性吸着剤(活性炭、アルミナ等)からなる有機塩素化合物処理剤を有機塩素化合物を含有する気体及び/または固体と250℃以上の温度で接触させることにより有機塩素化合物を低害化する。
【選択図】 なし
【解決手段】硫黄及び/または硫黄化合物を含有する多孔性吸着剤(活性炭、アルミナ等)からなる有機塩素化合物処理剤を有機塩素化合物を含有する気体及び/または固体と250℃以上の温度で接触させることにより有機塩素化合物を低害化する。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は焼却炉などから排出されるダイオキシン類、PCB類、クロロベンゼン類などの有害な有機塩素化合物を低害化する処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ゴミ焼却炉などの焼却炉から排出される排ガス及び焼却飛灰には、ダイオキシン類やPCB類などの毒性の高い有機塩素化合物や、これら毒性化合物の前駆体となるクロロベンゼン類などの有機塩素化合物が含有されている。
【0003】
従来、このような有害な有機塩素化合物を含有する排ガスを処理する方法としては、焼却炉煙道中に活性炭などの吸着剤を噴霧する方法や、吸着剤を充填した吸着塔に排ガスを導入する方法が知られている。しかし、これらの方法は、単に排ガス中の有害な有機塩素化合物を活性炭に吸着させて排ガス中から除去するのみで、本質的に有害な有機塩素化合物を低害化するものではなく、ダイオキシン類などの有害な有機塩素化合物を吸着した活性炭は別途低害化処理が必要であった。
【0004】
また、ダイオキシン類などの有害な有機塩素化合物を含有する飛灰を処理する方法としては、1200℃以上の温度で溶融する方法や、無酸素雰囲気で350℃以上の温度で加熱処理する方法が知られている。しかし、これらの方法は、高温での加熱処理を行うための大規模な加熱装置を必要とするため初期コストが高額となり、また既存の焼却施設においては、このような大きな装置をあとから焼却炉に併設することは空間的に困難であった。
【0005】
硫黄化合物は鉛などの重金属と不溶性の硫化物を形成することから、従来より焼却飛灰中の重金属の固定化や、排ガス中の水銀などの揮発性金属の固定化に使用されてきた。硫黄化合物を含有する排ガス浄化剤が提案されている(例えば特許文献1〜3参照)が、これらはいずれも、硫黄化合物による揮発性金属の固定化能を利用したものであり、有機塩素化合物は同時に供給される活性炭などの吸着剤により排ガス中から除去されている。
【0006】
本発明は焼却炉などから排出されるダイオキシン類、PCB類、クロロベンゼン類などの有害な有機塩素化合物を低害化する、硫黄及び/または硫黄化合物を多孔性吸着剤に含有せしめたことを特徴とする有機塩素化合物の処理方法に関する。
【0007】
【特許文献1】
特許第2688620号明細書(特許請求の範囲)
【特許文献2】
特許第2602085号明細書(特許請求の範囲)
【特許文献3】
特許第3187749号明細書(特許請求の範囲)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記のような従来技術の問題点を解決し、簡易にダイオキシン類やPCB類などの毒性の高い有機塩素化合物や、これら毒性化合物の前駆体となるクロロベンゼン類などの有機塩素化合物を低害化する処理方法を提供することを課題とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、これらの課題を解決するために、鋭意検討した結果本発明を完成するに至ったものであり、有機塩素化合物で汚染された気体及び/または固体を低害化できる処理方法を提供するものである。すなわち、硫黄及び/または硫黄化合物を含有する多孔性吸着剤からなる有機塩素化合物処理剤を有機塩素化合物を含有する気体及び/または固体と250℃以上の温度で接触させて有機塩素化合物を低害化することを特徴とする有機塩素化合物の処理方法である。以下に詳細を説明する。
【0010】
本発明の処理方法によって低害化できる有機塩素化合物とは、ダイオキシン類やPCB類などの毒性の高い塩素化合物や、これら毒性化合物の前駆体となるクロロベンゼン類、クロロフェノール類、さらには、発ガン性を有するクロロエチレン類などの揮発性有機塩素化合物、DDTに代表される有機塩素系農薬などである。
【0011】
本発明の処理方法で用いられる有機塩素化合物処理剤は、硫黄及び/または硫黄化合物を活性炭、アルミナなどの多孔性吸着剤に含有せしめたことを特徴とする。有害な有機塩素化合物は、その分子中の塩素が硫黄化合物と反応し、スルフィドあるいはポリスルフィドを形成し、低害化される。硫黄化合物としては、単体硫黄はもちろん、硫化ナトリウム、水硫化ナトリウム、硫化カリウム、水硫化カリウム、硫化アンモニウムなどの硫化アルカリ、水硫化アルカリ化合物が有用に使用できる。
【0012】
本発明の有機塩素化合物処理剤の担体として使用する多孔性吸着剤は、処理しようとする有機塩素化合物を吸着し得るものであれば、特に限定はされない。例えば、活性炭、コークス炭などの炭素系吸着剤や、ゼオライト、シリカ、アルミナなどの無機系吸着剤が有用に使用できる。
【0013】
本発明の処理方法で用いられる有機塩素化合物処理剤は、上述のような硫黄及び/または硫黄化合物を多孔性吸着剤に含有せしめることにより調製される。調製方法は特に限定されず、一般的な担持方法により調製できる。例えば硫黄及び/または硫黄化合物を溶媒に溶解し、これに多孔性吸着剤を浸漬したのち、溶媒を除去する液相担持法、硫黄及び/または硫黄化合物を気化させ、その蒸気を含むガスを多孔性吸着剤に接触させる気相担持法などにより調製される。また、本発明の有機塩素化合物処理剤はその使用方法に適した形状に造粒または破砕しておくことが望ましい。例えば焼却炉煙道中に噴霧して排ガス処理に使用する場合には、噴霧に適するよう粒径を200μm以下に微粉化しておくことが望ましい。この造粒または破砕は、上述の硫黄及び/または硫黄化合物を担持する工程の前であっても、あとであってもかまわない。
【0014】
硫黄及び/または硫黄化合物の含有量は、特に限定されないが、含有量が少ないと十分な効果が得られず、また過剰であると経済的に不利であるばかりでなく、処理剤粒子の固着を招き、操作性を悪化させることがある。好ましくは硫黄分の含有量で1〜30重量%、更に好ましくは5〜20重量%である。
【0015】
本発明の有機塩素化合物の処理方法は、上記の有機塩素化合物処理剤を250℃以上の温度で有機塩素化合物を含有する気体及び/または固体と接触させて有機塩素化合物を低害化することを特徴とする。接触させる温度が250℃未満であると、有機塩素化合物は十分に低害化されない。接触させる温度の上限は特に制限されないが、多孔性吸着剤として活性炭など炭素系吸着剤を使用する場合には、400℃を越えると吸着剤自体が燃焼してしまう危険がある。また、ゼオライトなどの無機多孔性吸着剤を使用する場合には、吸着剤自体が燃焼する危険はないものの、硫黄の沸点を越える温度では爆発の危険があるため、やはり400℃以下の温度で接触させることが、安全上望ましい。
【0016】
例えば、排ガスの浄化においては、ガス温250℃以上の焼却炉煙道中に微粉体状の本発明の有機塩素化合物処理剤を噴霧することで有機塩素化合物を低害化することができる。この際担体とする多孔性吸着剤としては活性炭などの炭素系吸着剤を使用し、噴霧に適するよう粒径を200μm以下としておくことが好ましい。排ガス中の有機塩素化合物を処理するには、希薄な有機塩素化合物を捕集するために、多孔性吸着剤に硫黄及び/または硫黄化合物を含有せしめることが有効である。すなわち、排ガス中の有機塩素化合物は多孔性吸着剤により濃縮されると同時に、吸着剤が反応場として作用し、含有させた硫黄化合物により低害化される。この際、排ガス中の塩化水素、二酸化硫黄などの酸性ガスを中和するために水酸化カルシウムなどの中和剤と混合して同時に噴霧してもかまわない。また、粒状に成形した本発明の有機塩素化合物処理剤を充填した処理塔を設け、これを250℃以上に保持し、除塵後の排ガスを導入することでも有機塩素化合物を低害化することができる。もちろん、この処理塔が微粉状の有機塩素化合物処理剤を充填した流動床方式であってもかまわない。
【0017】
また、飛灰、土壌など固体状の汚染物質の処理においては、汚染物質と有機塩素化合物処理剤をよく混合し、これを250℃以上に保持することで有機塩素化合物を低害化することができる。この際、有機塩素化合物処理剤中の硫黄成分が一部気化し、汚染物質中の重金属と反応して不溶性の硫化物を形成することにより重金属の固定化作用を期待することもできる。
【0018】
【実施例】
以下に実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに制限されるものではない。
【0019】
実施例1
粉末硫黄(キシダ化学製試薬)1.0gを二硫化炭素30.0gに溶解し、活性炭(比表面積:1101m2/g、平均細孔直径:24.5オングストローム(武田薬品工業製、商品名白鷺A))10.0gをこの硫黄溶液に1時間浸せきさせた。この後、溶媒の二硫化炭素を減圧留去し、乾燥させることで硫黄担持活性炭(硫黄9.1重量%含有)を得た。
【0020】
有機塩素化合物の代表としてo−ジクロロベンゼンを用い、ステンレス製の反応管にo−ジクロロベンゼン100mgと上記硫黄担持活性炭2.0gを封入し、300℃で5時間加熱した。
【0021】
反応後、反応管の内容物をトルエンにより抽出し、FID式ガスクロマトグラフ(島津製作所製GC−14A、分析カラム:ジーエルサイエンス製NB−5)により定量分析をおこなった所、未反応のo−ジクロロベンゼンは15mgであった。
【0022】
実施例2
有機塩素化合物の代表として1,2,4−トリクロロベンゼンを用い、ステンレス製の反応管に1,2,4−トリクロロベンゼン125mgと実施例1と同様にして調製した硫黄担持活性炭2.0gを封入し、300℃で5時間加熱した。
【0023】
反応後、反応管の内容物をトルエンにより抽出し、ガスクロマトグラフにより定量分析をおこなった所、未反応の1,2,4−トリクロロベンゼンは6mgであった。
【0024】
実施例3
有機塩素化合物の代表として1,2,3,4−テトラクロロベンゼンを用い、ステンレス製の反応管に1,2,3,4−テトラクロロベンゼン150mgと実施例1と同様にして調製した硫黄担持活性炭2.0gを封入し、300℃で5時間加熱した。
【0025】
反応後、反応管の内容物をトルエンにより抽出し、ガスクロマトグラフにより定量分析をおこなった所、未反応の1,2,3,4−テトラクロロベンゼンは4mgであった。
【0026】
実施例4
硫化ナトリウム九水和物7.5gを純水40.0gに溶解し、活性炭10.0gをこの硫黄溶液に1時間浸せきさせた。この後、溶媒の水を真空排気により除去し、硫化ナトリウム担持活性炭(硫黄分8.1重量%含有)を得た。
【0027】
有機塩素化合物の代表としてo−ジクロロベンゼンを用い、ステンレス製の反応管にo−ジクロロベンゼン100mgと上記硫化ナトリウム担持活性炭2.0gを封入し、300℃で2時間加熱した。
【0028】
反応後、反応管の内容物をトルエンにより抽出し、ガスクロマトグラフにより定量分析をおこなった所、未反応のo−ジクロロベンゼンは63mgであった。
【0029】
実施例5
粉末硫黄1.0gを二硫化炭素30.0gに溶解し、アルミナ(比表面積:128m2/g(住友化学工業製、商品名TA1301))10.0gをこの硫黄溶液に1時間浸せきさせた。この後、溶媒の二硫化炭素を減圧留去し、乾燥させることで硫黄担持アルミナ(硫黄9.1重量%含有)を得た。
【0030】
有機塩素化合物の代表としてo−ジクロロベンゼンを用い、ステンレス製の反応管にo−ジクロロベンゼン100mgと上記硫黄担持アルミナ2.0gを封入し、300℃で5時間加熱した。
【0031】
反応後、反応管の内容物をトルエンにより抽出し、ガスクロマトグラフにより定量分析をおこなった所、未反応のo−ジクロロベンゼンは13mgであった。
【0032】
比較例1
有機塩素化合物の代表としてo−ジクロロベンゼンを用い、ステンレス製の反応管にo−ジクロロベンゼン100mgと、本発明の有機塩素化合物処理剤を調製する際に担体として使用した活性炭2.0gを封入し、300℃で5時間加熱した。
【0033】
反応後、反応管の内容物をトルエンにより抽出し、ガスクロマトグラフにより定量分析をおこなった所、未反応のo−ジクロロベンゼンは98mgであった。
【0034】
比較例2
有機塩素化合物の代表としてo−ジクロロベンゼンを用い、ステンレス製の反応管にo−ジクロロベンゼン100mgと実施例1と同様にして調製した硫黄担持活性炭2.0gを封入し、200℃で5時間加熱した。
【0035】
反応後、反応管の内容物をトルエンにより抽出し、ガスクロマトグラフにより定量分析をおこなった所、未反応のo−ジクロロベンゼンは96mgであった。
【0036】
【発明の効果】
比較例1で明らかなように、有機塩素化合物は活性炭に吸着されただけでは低害化されない。すなわち、焼却炉から排出される排ガスを浄化する方法として現在常法としておこなわれている活性炭などの吸着剤による吸着除去によっては、有害な有機塩素化合物は排ガス中からは除去されるものの、本質的には低害化されていない。本発明の有機塩素処理剤は簡易にダイオキシン類やPCB類などの毒性の高い有機塩素化合物や、これら毒性化合物の前駆体となるクロロベンゼン類などの有機塩素化合物を低害化することができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は焼却炉などから排出されるダイオキシン類、PCB類、クロロベンゼン類などの有害な有機塩素化合物を低害化する処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ゴミ焼却炉などの焼却炉から排出される排ガス及び焼却飛灰には、ダイオキシン類やPCB類などの毒性の高い有機塩素化合物や、これら毒性化合物の前駆体となるクロロベンゼン類などの有機塩素化合物が含有されている。
【0003】
従来、このような有害な有機塩素化合物を含有する排ガスを処理する方法としては、焼却炉煙道中に活性炭などの吸着剤を噴霧する方法や、吸着剤を充填した吸着塔に排ガスを導入する方法が知られている。しかし、これらの方法は、単に排ガス中の有害な有機塩素化合物を活性炭に吸着させて排ガス中から除去するのみで、本質的に有害な有機塩素化合物を低害化するものではなく、ダイオキシン類などの有害な有機塩素化合物を吸着した活性炭は別途低害化処理が必要であった。
【0004】
また、ダイオキシン類などの有害な有機塩素化合物を含有する飛灰を処理する方法としては、1200℃以上の温度で溶融する方法や、無酸素雰囲気で350℃以上の温度で加熱処理する方法が知られている。しかし、これらの方法は、高温での加熱処理を行うための大規模な加熱装置を必要とするため初期コストが高額となり、また既存の焼却施設においては、このような大きな装置をあとから焼却炉に併設することは空間的に困難であった。
【0005】
硫黄化合物は鉛などの重金属と不溶性の硫化物を形成することから、従来より焼却飛灰中の重金属の固定化や、排ガス中の水銀などの揮発性金属の固定化に使用されてきた。硫黄化合物を含有する排ガス浄化剤が提案されている(例えば特許文献1〜3参照)が、これらはいずれも、硫黄化合物による揮発性金属の固定化能を利用したものであり、有機塩素化合物は同時に供給される活性炭などの吸着剤により排ガス中から除去されている。
【0006】
本発明は焼却炉などから排出されるダイオキシン類、PCB類、クロロベンゼン類などの有害な有機塩素化合物を低害化する、硫黄及び/または硫黄化合物を多孔性吸着剤に含有せしめたことを特徴とする有機塩素化合物の処理方法に関する。
【0007】
【特許文献1】
特許第2688620号明細書(特許請求の範囲)
【特許文献2】
特許第2602085号明細書(特許請求の範囲)
【特許文献3】
特許第3187749号明細書(特許請求の範囲)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記のような従来技術の問題点を解決し、簡易にダイオキシン類やPCB類などの毒性の高い有機塩素化合物や、これら毒性化合物の前駆体となるクロロベンゼン類などの有機塩素化合物を低害化する処理方法を提供することを課題とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、これらの課題を解決するために、鋭意検討した結果本発明を完成するに至ったものであり、有機塩素化合物で汚染された気体及び/または固体を低害化できる処理方法を提供するものである。すなわち、硫黄及び/または硫黄化合物を含有する多孔性吸着剤からなる有機塩素化合物処理剤を有機塩素化合物を含有する気体及び/または固体と250℃以上の温度で接触させて有機塩素化合物を低害化することを特徴とする有機塩素化合物の処理方法である。以下に詳細を説明する。
【0010】
本発明の処理方法によって低害化できる有機塩素化合物とは、ダイオキシン類やPCB類などの毒性の高い塩素化合物や、これら毒性化合物の前駆体となるクロロベンゼン類、クロロフェノール類、さらには、発ガン性を有するクロロエチレン類などの揮発性有機塩素化合物、DDTに代表される有機塩素系農薬などである。
【0011】
本発明の処理方法で用いられる有機塩素化合物処理剤は、硫黄及び/または硫黄化合物を活性炭、アルミナなどの多孔性吸着剤に含有せしめたことを特徴とする。有害な有機塩素化合物は、その分子中の塩素が硫黄化合物と反応し、スルフィドあるいはポリスルフィドを形成し、低害化される。硫黄化合物としては、単体硫黄はもちろん、硫化ナトリウム、水硫化ナトリウム、硫化カリウム、水硫化カリウム、硫化アンモニウムなどの硫化アルカリ、水硫化アルカリ化合物が有用に使用できる。
【0012】
本発明の有機塩素化合物処理剤の担体として使用する多孔性吸着剤は、処理しようとする有機塩素化合物を吸着し得るものであれば、特に限定はされない。例えば、活性炭、コークス炭などの炭素系吸着剤や、ゼオライト、シリカ、アルミナなどの無機系吸着剤が有用に使用できる。
【0013】
本発明の処理方法で用いられる有機塩素化合物処理剤は、上述のような硫黄及び/または硫黄化合物を多孔性吸着剤に含有せしめることにより調製される。調製方法は特に限定されず、一般的な担持方法により調製できる。例えば硫黄及び/または硫黄化合物を溶媒に溶解し、これに多孔性吸着剤を浸漬したのち、溶媒を除去する液相担持法、硫黄及び/または硫黄化合物を気化させ、その蒸気を含むガスを多孔性吸着剤に接触させる気相担持法などにより調製される。また、本発明の有機塩素化合物処理剤はその使用方法に適した形状に造粒または破砕しておくことが望ましい。例えば焼却炉煙道中に噴霧して排ガス処理に使用する場合には、噴霧に適するよう粒径を200μm以下に微粉化しておくことが望ましい。この造粒または破砕は、上述の硫黄及び/または硫黄化合物を担持する工程の前であっても、あとであってもかまわない。
【0014】
硫黄及び/または硫黄化合物の含有量は、特に限定されないが、含有量が少ないと十分な効果が得られず、また過剰であると経済的に不利であるばかりでなく、処理剤粒子の固着を招き、操作性を悪化させることがある。好ましくは硫黄分の含有量で1〜30重量%、更に好ましくは5〜20重量%である。
【0015】
本発明の有機塩素化合物の処理方法は、上記の有機塩素化合物処理剤を250℃以上の温度で有機塩素化合物を含有する気体及び/または固体と接触させて有機塩素化合物を低害化することを特徴とする。接触させる温度が250℃未満であると、有機塩素化合物は十分に低害化されない。接触させる温度の上限は特に制限されないが、多孔性吸着剤として活性炭など炭素系吸着剤を使用する場合には、400℃を越えると吸着剤自体が燃焼してしまう危険がある。また、ゼオライトなどの無機多孔性吸着剤を使用する場合には、吸着剤自体が燃焼する危険はないものの、硫黄の沸点を越える温度では爆発の危険があるため、やはり400℃以下の温度で接触させることが、安全上望ましい。
【0016】
例えば、排ガスの浄化においては、ガス温250℃以上の焼却炉煙道中に微粉体状の本発明の有機塩素化合物処理剤を噴霧することで有機塩素化合物を低害化することができる。この際担体とする多孔性吸着剤としては活性炭などの炭素系吸着剤を使用し、噴霧に適するよう粒径を200μm以下としておくことが好ましい。排ガス中の有機塩素化合物を処理するには、希薄な有機塩素化合物を捕集するために、多孔性吸着剤に硫黄及び/または硫黄化合物を含有せしめることが有効である。すなわち、排ガス中の有機塩素化合物は多孔性吸着剤により濃縮されると同時に、吸着剤が反応場として作用し、含有させた硫黄化合物により低害化される。この際、排ガス中の塩化水素、二酸化硫黄などの酸性ガスを中和するために水酸化カルシウムなどの中和剤と混合して同時に噴霧してもかまわない。また、粒状に成形した本発明の有機塩素化合物処理剤を充填した処理塔を設け、これを250℃以上に保持し、除塵後の排ガスを導入することでも有機塩素化合物を低害化することができる。もちろん、この処理塔が微粉状の有機塩素化合物処理剤を充填した流動床方式であってもかまわない。
【0017】
また、飛灰、土壌など固体状の汚染物質の処理においては、汚染物質と有機塩素化合物処理剤をよく混合し、これを250℃以上に保持することで有機塩素化合物を低害化することができる。この際、有機塩素化合物処理剤中の硫黄成分が一部気化し、汚染物質中の重金属と反応して不溶性の硫化物を形成することにより重金属の固定化作用を期待することもできる。
【0018】
【実施例】
以下に実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに制限されるものではない。
【0019】
実施例1
粉末硫黄(キシダ化学製試薬)1.0gを二硫化炭素30.0gに溶解し、活性炭(比表面積:1101m2/g、平均細孔直径:24.5オングストローム(武田薬品工業製、商品名白鷺A))10.0gをこの硫黄溶液に1時間浸せきさせた。この後、溶媒の二硫化炭素を減圧留去し、乾燥させることで硫黄担持活性炭(硫黄9.1重量%含有)を得た。
【0020】
有機塩素化合物の代表としてo−ジクロロベンゼンを用い、ステンレス製の反応管にo−ジクロロベンゼン100mgと上記硫黄担持活性炭2.0gを封入し、300℃で5時間加熱した。
【0021】
反応後、反応管の内容物をトルエンにより抽出し、FID式ガスクロマトグラフ(島津製作所製GC−14A、分析カラム:ジーエルサイエンス製NB−5)により定量分析をおこなった所、未反応のo−ジクロロベンゼンは15mgであった。
【0022】
実施例2
有機塩素化合物の代表として1,2,4−トリクロロベンゼンを用い、ステンレス製の反応管に1,2,4−トリクロロベンゼン125mgと実施例1と同様にして調製した硫黄担持活性炭2.0gを封入し、300℃で5時間加熱した。
【0023】
反応後、反応管の内容物をトルエンにより抽出し、ガスクロマトグラフにより定量分析をおこなった所、未反応の1,2,4−トリクロロベンゼンは6mgであった。
【0024】
実施例3
有機塩素化合物の代表として1,2,3,4−テトラクロロベンゼンを用い、ステンレス製の反応管に1,2,3,4−テトラクロロベンゼン150mgと実施例1と同様にして調製した硫黄担持活性炭2.0gを封入し、300℃で5時間加熱した。
【0025】
反応後、反応管の内容物をトルエンにより抽出し、ガスクロマトグラフにより定量分析をおこなった所、未反応の1,2,3,4−テトラクロロベンゼンは4mgであった。
【0026】
実施例4
硫化ナトリウム九水和物7.5gを純水40.0gに溶解し、活性炭10.0gをこの硫黄溶液に1時間浸せきさせた。この後、溶媒の水を真空排気により除去し、硫化ナトリウム担持活性炭(硫黄分8.1重量%含有)を得た。
【0027】
有機塩素化合物の代表としてo−ジクロロベンゼンを用い、ステンレス製の反応管にo−ジクロロベンゼン100mgと上記硫化ナトリウム担持活性炭2.0gを封入し、300℃で2時間加熱した。
【0028】
反応後、反応管の内容物をトルエンにより抽出し、ガスクロマトグラフにより定量分析をおこなった所、未反応のo−ジクロロベンゼンは63mgであった。
【0029】
実施例5
粉末硫黄1.0gを二硫化炭素30.0gに溶解し、アルミナ(比表面積:128m2/g(住友化学工業製、商品名TA1301))10.0gをこの硫黄溶液に1時間浸せきさせた。この後、溶媒の二硫化炭素を減圧留去し、乾燥させることで硫黄担持アルミナ(硫黄9.1重量%含有)を得た。
【0030】
有機塩素化合物の代表としてo−ジクロロベンゼンを用い、ステンレス製の反応管にo−ジクロロベンゼン100mgと上記硫黄担持アルミナ2.0gを封入し、300℃で5時間加熱した。
【0031】
反応後、反応管の内容物をトルエンにより抽出し、ガスクロマトグラフにより定量分析をおこなった所、未反応のo−ジクロロベンゼンは13mgであった。
【0032】
比較例1
有機塩素化合物の代表としてo−ジクロロベンゼンを用い、ステンレス製の反応管にo−ジクロロベンゼン100mgと、本発明の有機塩素化合物処理剤を調製する際に担体として使用した活性炭2.0gを封入し、300℃で5時間加熱した。
【0033】
反応後、反応管の内容物をトルエンにより抽出し、ガスクロマトグラフにより定量分析をおこなった所、未反応のo−ジクロロベンゼンは98mgであった。
【0034】
比較例2
有機塩素化合物の代表としてo−ジクロロベンゼンを用い、ステンレス製の反応管にo−ジクロロベンゼン100mgと実施例1と同様にして調製した硫黄担持活性炭2.0gを封入し、200℃で5時間加熱した。
【0035】
反応後、反応管の内容物をトルエンにより抽出し、ガスクロマトグラフにより定量分析をおこなった所、未反応のo−ジクロロベンゼンは96mgであった。
【0036】
【発明の効果】
比較例1で明らかなように、有機塩素化合物は活性炭に吸着されただけでは低害化されない。すなわち、焼却炉から排出される排ガスを浄化する方法として現在常法としておこなわれている活性炭などの吸着剤による吸着除去によっては、有害な有機塩素化合物は排ガス中からは除去されるものの、本質的には低害化されていない。本発明の有機塩素処理剤は簡易にダイオキシン類やPCB類などの毒性の高い有機塩素化合物や、これら毒性化合物の前駆体となるクロロベンゼン類などの有機塩素化合物を低害化することができる。
Claims (2)
- 硫黄及び/または硫黄化合物を含有する多孔性吸着剤からなる有機塩素化合物処理剤を有機塩素化合物を含有する気体及び/または固体と250℃以上の温度で接触させることを特徴とする有機塩素化合物の有機塩素化合物低害化処理方法。
- 多孔性吸着剤が活性炭またはアルミナである請求項1記載の有機塩素化合物の処理方法。
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