JP2004121161A - 断熱圧縮殺菌方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】耐熱性芽胞菌まで含めて短時間且つ確実に殺菌することができ、食品等の被殺菌素材の品質を損なわず、安価に殺菌できる断熱圧縮殺菌方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の断熱圧縮殺菌方法は、断熱圧縮で発熱する圧力媒体中に被殺菌素材を分散させ、常圧下60℃〜70℃もしくはこれ以上で被殺菌素材の過剰加熱に伴う熱劣化を抑えることができる範囲内の所定の初期温度に加熱し、次いで断熱圧縮を行って急速加熱することで殺菌対象微生物の菌体内に圧力媒体を侵入させ、その後断熱膨張させて殺菌することを特徴とする。
【選択図】 図1
【解決手段】本発明の断熱圧縮殺菌方法は、断熱圧縮で発熱する圧力媒体中に被殺菌素材を分散させ、常圧下60℃〜70℃もしくはこれ以上で被殺菌素材の過剰加熱に伴う熱劣化を抑えることができる範囲内の所定の初期温度に加熱し、次いで断熱圧縮を行って急速加熱することで殺菌対象微生物の菌体内に圧力媒体を侵入させ、その後断熱膨張させて殺菌することを特徴とする。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明が属する技術分野】
本発明は、食品や医薬品等の被殺菌素材に含まれる微生物、細菌等を加圧装置によって断熱圧縮して殺菌もしくは滅菌する断熱圧縮殺菌方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、殺菌方法として、最も簡単で確実、しかも経済的な方法として広く利用されているのは加熱殺菌法である。この加熱殺菌を行う場合、加熱温度を上げて長時間加熱を持続すればよいが、食品に対する熱による変成という問題もあって単純ではない。すなわち、過度の加熱で加熱臭が素材に残り、味や風味、品質等を損なう。とくに熱抵抗力の強い微生物を確実に殺菌しなければならない場合には、過度の加熱処理を行うため加熱臭が生じ、商品価値の低下させてしまう。
【0003】
熱抵抗力は微生物の種類により様々であるが、一般的にバチルス(Bacillus)属の耐熱性芽胞菌(以下、耐熱性胞子)は熱に強く、加熱温度が高くなると、種の死滅から免れるために、菌体内に胞子をつくり、環境が回復するのをまって、耐熱性胞子が出芽するという性質を備えている。このため耐熱性胞子は加熱滅菌を行う上で最も厄介なものである。この種の微生物を含む食品等は単純に加熱するだけでは滅菌できない。
【0004】
ところで、高圧で圧縮されたときに水に伝わるエネルギは、500MPaにおいてモル当り約100calと少なく、化学反応にはまったく関与できないものである。本発明者は、これにヒントを得て、静圧を使った熱変成を伴わない新しい殺菌方法が開発できるのではないか、との観点から、耐熱性胞子まで殺菌するため各種媒体で実験を行い、高粘度の媒体では加圧下で膜組織を通過できず、胞子や細胞の内部(菌体内)に侵入し難いが、水は粘度が低いため、高圧下で菌体の周囲の水が膜組織を通過して、菌体内に侵入し、減圧時に高圧容器内の圧力低下に準じて、菌体内でも膨張を強いられ、細胞膜やスポアコート(以下、膜組織と呼称する。)が内側からの圧力で物理的に破壊されるとの知見を得た。
【0005】
そこで本発明者は、この着想を基に他の発明者らとともに、この耐熱性胞子、とくにバチラス・ステアロサーモフィラス(Bacillus stearothermophilus IFO 12550胞子)を指標と考え、食品や医薬品等に含まれる微生物を、マイナス温度領域もしくは緩慢加熱下で加圧殺菌方法を提案した(特許文献1参照)。
【0006】
本発明者が提案したこの従来の加圧殺菌方法は、微生物菌体内に水を浸透させ、その水を内側から菌体の外側に急激に断熱膨脹させるときに生じる衝撃力で微生物の細胞膜や細胞壁または耐熱性胞子の膜組織を物理的に破壊するものである。すなわち、耐熱性胞子に汚染されている食品や素材を液体中に分散させ、その液体を充分に加圧し、液体を耐熱性胞子内部に浸透させた後、高圧容器の圧力を瞬時に解放する。圧力解放と同時に、耐熱性胞子に浸透した水は瞬時に断熱膨張を強いられる。水の断熱膨張速度は理想状態で秒速1500mと極めて速く、膜組織は内側から外側へ激しく押し出されて破壊される。同時に加える加熱温度条件は、いかなる微生物に対しても80℃未満で殺菌可能である。
【0007】
この加圧殺菌方法は水を圧力媒体とし、バチラス・ステアロサーモフィラスでも少なくとも−25℃以上80℃未満、加圧力は200〜800MPaで、加圧時間は少なくとも60分で殺菌できるものである。そして、この方法は実用化され、とくに欧米においては現在普及段階に入っている。しかし、この加圧殺菌方法は200MPa以上の圧力を必要とし、殺菌の確実性を上げるためにはできるだけ800MPaに近い方もしくはこれより大きい方が望ましく、これを低下させることが新たな課題となった。
【0008】
そこで本発明者は、この方法を基に微生物の生物学的性質を利用して新たな加圧殺菌方法を開発した(特許文献2参照)。この加圧殺菌方法は、60分〜1440分の間バチラス・ステアロサーモフィラスの生物学的防御機能発現温度よりも少し低い温度75℃〜85℃で加熱するとともに、50MPa〜100MPaの加圧を行い、液体を菌体内に浸透させ、その後除圧し、そのとき生じる液体の体積膨張力により微生物の膜組織を破壊するものである。
【0009】
この殺菌方法は本発明者の発見した生物と圧力の関係を最大限生かしたものといえるもので、100℃未満の処理温度で、液体の体積膨張力(断熱膨張力)を利用して殺菌、被殺菌素材に加熱臭が残ることはなく、素材の品質を損なわず、処理温度が低いために、殺菌後の冷却が不必要になるものであった。さらに、微生物の生物学的性質を利用して加圧するため、殺菌圧力を下げることができ、運転経費が少なく、確実で安全な殺菌法であった。
【0010】
【特許文献1】
特開平9−285526号公報
【特許文献2】
特開2002−85030号公報
【発明が解決しようとする課題】
現在一般に実施されている殺菌方法、例えばPETボトル等のプラスチックボトル、ガラス瓶等の飲料水の容器の殺菌においては、一般細菌のほかにバチルス属の細菌やボツリヌス菌まで殺菌する必要があり、過酢酸や過酸化水素などを使って殺菌したり、亜硝酸等で殺菌を行っている。しかし、このような薬剤で殺菌するのは、これら容器洗浄後にも容器内面に吸着されていた微量なものが遅延的に遊離し、食品に移行し、結果として人体に入る可能性があるため、健康面からはある種の矛盾を孕んでいる。こうしたことから、薬剤を使わない殺菌方法と殺菌装置の開発に大きな期待が寄せられている。
【0011】
本発明者の提案した(特許文献2)の加圧殺菌方法はこうした期待にこたえる優れた加圧殺菌方法であった。最強の菌の一つであるバチラス・ステアロサーモフィラスの生物学的性質を利用して加圧するため、殺菌圧力を下げることができ、低温処理のため素材の品質を損なうことがない。しかし、加圧装置とともに、断熱膨張させるための除圧弁が必要で、これが装置の費用を押し上げる傾向があった。ひとつには、除圧弁の動作に違いがあると殺菌力に差が生じるため、精密さ、精度が要求されるからである。そして従来の技術よりは格段に短時間の殺菌が行えるが、それでも60分〜1440分という長い時間が殺菌のためにかかることが課題となった。
【0012】
そこで本発明は、耐熱性芽胞菌まで含めて短時間且つ確実に殺菌することができ、食品等の被殺菌素材の品質を損なわず、安価に殺菌できる断熱圧縮殺菌方法を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
以上説明した問題を解決するための本発明の断熱圧縮殺菌方法は、断熱圧縮で発熱する第1圧力媒体中に直接もしくは該第1圧力媒体の熱が重畳される第2圧力媒体中に被殺菌素材を分散させ、全体を常圧下60℃〜70℃もしくはこれ以上で被殺菌素材の過剰加熱に伴う熱劣化を抑えることができる範囲の所定の初期温度に加熱し、次いで断熱圧縮を行って急速加熱することで殺菌対象微生物の菌体内に該菌体の周囲の圧力媒体を侵入させ、その後断熱膨張させて殺菌することを特徴とする。
【0014】
これにより、耐熱性芽胞菌まで含めて短時間且つ確実に殺菌することができ、食品等の被殺菌素材の品質を損なわず、安価に殺菌することができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
第1の発明は、断熱圧縮で発熱する第1圧力媒体中に直接もしくは該第1圧力媒体の熱が重畳される第2圧力媒体中に被殺菌素材を分散させ、全体を常圧下60℃〜70℃もしくはこれ以上で被殺菌素材の過剰加熱に伴う熱劣化を抑えることができる範囲の所定の初期温度に加熱し、次いで断熱圧縮を行って急速加熱することで殺菌対象微生物の菌体内に該菌体の周囲の圧力媒体を侵入させ、その後断熱膨張させて殺菌することを特徴とする断熱圧縮殺菌方法であり、常圧で60℃〜70℃もしくはこれ以上で被殺菌素材に熱劣化を起こさせない範囲の初期温度にすることで、熱劣化をさけるとともに、殺菌対象微生物の細胞膜や膜組織を形成しているすべての原子の電子軌道を熱膨張させ、互いの原子間距離を拡張させて原子間結合力を弱める。この状態は細胞膜や膜組織が弱まった状態であり、防御機能の弱まった状態となる。この状態で断熱圧縮すると、急速に昇温されることにより、耐熱性微生物を含めてほとんどすべての微生物内に周囲の圧力媒体が侵入する。この状態でその後断熱膨張させると、圧力媒体が膨張し、耐熱性微生物を含めほとんどすべての微生物の細胞膜や膜組織が物理力で破壊される。断熱圧縮と断熱膨張の時間ですみ、きわめて短時間且つ確実に殺菌することができる。被殺菌素材の品質を損なわず、断熱圧縮するため膨張時の負担が軽くなり、安価に殺菌できる。なお、ここで殺菌対象微生物とは微生物、細菌、耐熱性芽胞菌、ウィルス等を包含する総称である。
【0016】
第2の発明は、第1圧力媒体が、第3圧力媒体を介して間接的に第2圧力媒体に熱を供給することを特徴とする請求項1記載の断熱圧縮殺菌方法であり、第3圧力媒体を介すことにより耐熱パウチ等を利用して第1圧力媒体を扱い易くなる。
【0017】
第3の発明は、耐熱性芽胞菌を含む殺菌対象微生物を殺菌する請求項1または2記載の断熱圧縮殺菌方法であって、常圧下85℃〜100℃の初期温度に加熱し、次いで断熱圧縮を行って急速加熱することで指標菌である耐熱性芽胞菌の菌体内に対しても該菌体の周囲の圧力媒体を侵入させ、その後断熱膨張させて耐熱性芽胞菌を含む殺菌対象微生物を殺菌することを特徴とする断熱圧縮殺菌方法であり、常圧で下85℃〜100℃の初期温度にすることで、指標菌である耐熱性胞子を含む殺菌対象微生物の細胞膜や膜組織を形成しているすべての原子の電子軌道を熱膨張させ、互いの原子間距離を拡張させて原子間結合力を弱める。この状態は細胞膜や膜組織が弱まった状態であり、通常の微生物では周囲の圧力媒体が簡単且つ十分に侵入し、指標菌である最強の耐熱性胞子も85℃付近で防御機能が低下して周囲の圧力媒体が浸透する可能な状態となる。この状態で断熱圧縮すると、急速に昇温されることにより、耐熱性胞子を含めてすべての微生物内に圧力媒体が侵入する。この状態でその後断熱膨張させると、圧力媒体が膨張し、指標菌の耐熱性胞子を含めほとんどすべての微生物の細胞膜や膜組織が物理力で破壊される。断熱圧縮と断熱膨張の時間ですみきわめて短時間且つ確実に殺菌することができる。被殺菌素材の品質を損なわず、安価に殺菌できる。なお、ここで指標菌というのは、本明細書においては、この指標菌を殺菌すれば他の菌も含めて滅菌できる菌のことである。
【0018】
第4の発明は、第1圧力媒体が、第1圧力媒体が、断熱圧縮したときに水の温度上昇率より大きい温度上昇率を有する高発熱性媒体であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の断熱圧縮殺菌方法であり、高発熱性媒体の発熱により水以上の温度上昇が起こり、軟化した微生物の細胞膜や膜組織を高発熱性媒体が直接透過するか、または間接的に加熱された第2圧力媒体が軟化した微生物の細胞膜や膜組織を透過して、その後断熱膨張させることにより殺菌を行うことができる。
【0019】
第5の発明は、第2圧力媒体が、フレキシブル容器内に充填された水または調味液または被殺菌素材の含有液成分であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の断熱圧縮殺菌方法であり、フレキシブル容器内の水や調味液や被殺菌素材に含まれた含有液成分、例えば肉汁等が細胞膜や膜組織を透過し、断熱膨張するので水等による破壊力が大きく、しかも食品を安全に殺菌を行うことができる。
【0020】
第6の発明は、高発熱性媒体が、大豆油、オリーブオイル、牛脂、グリコール、グリセロールのいずれかであることを特徴とする請求項4記載の断熱圧縮殺菌方法であり、高発熱性媒体であるとともに細胞膜や膜組織を透過可能な媒体である。
【0021】
第7の発明は、高発熱性媒体を充填した耐熱パウチが、第3圧力媒体中に分散されたことを特徴とする請求項2記載の断熱圧縮殺菌方法であり、耐熱パウチ内に高発熱性媒体を充填するため第1圧力媒体の取り扱いが容易になり、第3圧力媒体を利用でき、第2圧力媒体として、断熱膨張したとき破壊力の大きい主として水または調味液や肉汁などを組み合わせて利用することができる。
【0022】
第8の発明は、耐熱パウチが球状パウチまたは袋状パウチであることを特徴とする請求項7記載の断熱圧縮殺菌方法であり、球状パウチは表面積が大きく熱伝導が効果的に行え、袋状パウチは和紙等で作成することができるため安価で圧力に対する感度が高い耐熱パウチにすることができる。
【0023】
第9の発明は、高圧容器内に断熱材を施してして断熱圧縮を行う請求項1〜8のいずれかに記載の断熱圧縮殺菌方法であり、断熱圧縮のときの急速な上昇を可能にする。
【0024】
(実施の形態1)
以下、本発明の実施の形態1における断熱圧縮殺菌方法を実施できる断熱圧縮殺菌装置の説明を行う。実施の形態1の断熱圧縮殺菌方法は、耐熱性胞子を含む微生物を殺菌することも、それ以外の微生物だけを殺菌することもできるが、説明の都合上、実施の形態1においては耐熱性胞子以外の細菌を殺菌する場合を想定して説明する。耐熱性胞子を含む微生物の殺菌については実施の形態2において説明する。図1は本発明の実施の形態1における断熱圧縮殺菌方法を実施できる断熱圧縮殺菌装置の構成図、図2(a)は図1の断熱圧縮殺菌装置で使用するカプセル状の耐熱パウチの一部破砕説明図、図2(b)は図1の断熱圧縮殺菌装置で使用する袋状の耐熱パウチの一部破砕説明図、図3は断熱圧縮を行ったときの昇温特性の説明図である。
【0025】
図1において、1はステンレス等の耐食性金属からなる高圧容器、1aは高圧容器1の内部にコーティングした断熱材、2は厚板からなる上蓋、3は高圧容器1と上蓋2で形成される高圧室である。上蓋2は締結具でワッシャを介して高圧容器1に固定される。4は、高圧室3の中に充填され、食品等の被殺菌素材と調味液等の水分(実施の形態1の第2圧力媒体)とを空気を含まない状態で充填し、密封したポリプロピレン製等のフレキシブル容器、5はフレキシブル容器4と一緒に圧力媒体(実施の形態1の第3圧力媒体)中に分散される発熱体としての耐熱パウチである。
【0026】
この耐熱パウチ5について図2(a)(b)に基づき説明する。図2(a)において、5aはポリプロピレン製の球状の肉厚の薄い球状パウチ、Aは球状パウチ5a内に充填される大豆油、オリーブオイル等の高発熱性媒体(実施の形態1の第1圧力媒体)である。高発熱性媒体については後で詳述する。球状パウチ5aの素材は熱伝導率の高い材料であればよく、樹脂に限らず、アルミニウムや銅等の金属でも好適である。伝熱面積を増すために球状パウチ5aの半径を小さくするのがよいが、余りに小さくなりすぎると逆に高発熱性媒体Aの量が減るため、5mm〜30mm程度にするのがよい。
【0027】
次に、図2(b)において、5bは和紙等で作成した袋状パウチである。袋状パウチ5b内には球状パウチ5aと同様大豆油、オリーブオイル等の高発熱性媒体Aが充填される。和紙は繊維でメッシュ状になっており、内部に高発熱性媒体Aを充填すると外部の温水(実施の形態1の第3圧力媒体)から加わった圧力は袋状パウチ5b内部に直接伝わり、断熱圧縮したときには発熱する。袋状パウチ5bの外表面に疎水処理等を施すのもよい。
【0028】
6はフレキシブル容器4と耐熱パウチ5を内部に収容するためのアルミニウム製の籠、7は圧力媒体となる水(実施の形態1の第3圧力媒体)を溜めたタンクである。なお、耐熱パウチ5を用いないときには、断熱圧縮したとき大きな発熱量を示す大豆油や、オリーブオイル、水/グリコール(1:1)、水/グリセロール(1:1)等を、フレキシブル容器4を直接圧縮する圧力媒体(実施の形態1の第1圧力媒体)として、被殺菌素材と調味液等(実施の形態1の第2圧力媒体)を加熱するのが好適である。水でも発熱が起こるが、これらの高発熱性媒体を使う方がよい。8はタンク7内の水を0〜800MPaに加圧して高圧室3内に送ることが可能なダイヤフラムポンプ等の容積型の加圧ポンプ、8aは加圧ポンプ8で昇圧した高圧の水を貯める加圧タンク、9は電磁弁、10は除圧弁(動作速度≒0.1秒)である。なお、除圧弁10はとくに精度を問題にしなくとも十分である。電磁弁9を開放すると加圧タンク8aから圧力水が高圧室3内に入って一挙に加圧する。
【0029】
11は高圧室3内の水を常圧下60℃〜70℃、もしくはこれ以上で被殺菌素材に過剰加熱に伴う熱劣化を抑える範囲の初期温度に保つために設けられた熱交換用蛇管、11aは初期加熱用の加熱ヒータである。ここでは、例えば85℃に加熱するものとする。これは上述したように、実施の形態1では説明の都合上、耐熱性胞子以外の菌を殺菌するものとして説明するためである。耐熱性胞子まで含めて殺菌する場合は85℃〜100℃、90℃程度で殺菌すればよい。これについては実施の形態2で説明する。12は初期加熱するための加熱用媒体を循環させる循環ポンプである。この初期温度や断熱圧縮の圧力は微生物ごとに決定される。
【0030】
13は高圧室3内の温度を検出する温度センサ、14は高圧室3内の圧力や上記した加圧タンク8a内の圧力を検出する圧力センサである。15はマイクロコンピュータ等から構成され、圧力センサ14でや温度センサ13で検出された検出信号に基づいて、微生物ごとに決定された初期温度と断熱圧縮を実現できるようにプログラミングされ、加熱ヒータ11aや加圧ポンプ8等を制御する制御部であり、殺菌を行うに当っては、実施の形態1の場合高圧室3内を一旦85℃近傍に加熱し、その後電磁弁9を開放して一緒に高圧室3内全体を断熱圧縮して高発熱性媒体を加熱し、この熱を重畳することによって短時間でフレキシブル容器4内の水や調味液や肉汁等と被殺菌素材を急速に加熱する。なお、この断熱圧縮に伴ってフレキシブル容器4が破裂することはない。除圧時も同様である。
【0031】
この実施の形態1の加圧殺菌装置を使って、フレキシブル容器4に詰めた被殺菌素材を殺菌するときの手順について簡単に説明する。フレキシブル容器4と耐熱パウチ5を高圧容器1内に収容し、制御部15のスタートボタン(図示しない)を押すと、循環ポンプ12と加熱ヒータ11aで初期加熱を行い、85℃近傍に保つ。プログラムに従って加圧ポンプ8の運転が開始され、加圧タンク8a内に例えば720MPaの高圧の圧力媒体を貯められた後、電磁弁9が開かれる。これにより、例えば高圧容器1内は60秒〜90秒で700MPaまで急速に断熱圧縮される。その後制御部15が除圧弁10を開き、一挙に冷却する。これによってフレキシブル容器4に詰めた被殺菌素材は、当初の85℃程度に低下することになる。
【0032】
続いて、以下、本実施の形態1の断熱圧縮殺菌方法の殺菌原理について説明する。(表1)はいろいろの物質の圧力昇温特性である。ここには記載していないが、食用界面活性剤を水に添加したものや、食用オイルを食用界面活性剤とともに水に添加したものも耐熱パウチ5として採用が可能である。
【0033】
【表1】
(表1)によれば、圧力媒体として水を断熱圧縮すると、いわば瞬間的に発熱し、100MPa当り3.0℃(3.0℃/100MPa)で温度上昇することが分かる。同様に、水/グリセロール(1:1)は4.8℃/100MPa、水/グリコール(1:1)は4.5℃/100MPa、オリーブオイルは8.6℃/100MPa、大豆油は9.0℃/100MPaである。
【0034】
従って高圧室3内に充填する圧力媒体を例えば水とした場合、3.0℃/100MPaで温度上昇することになる。図3は水と大豆油をそれぞれ断熱圧縮を行ったときの昇温特性を示している。図3によれば、水を85℃から断熱圧縮したときは、600MPaで18℃高い103℃にまで昇温させていることが分かる。図3の場合、このように初期温度を85℃にすることで、微生物の細胞膜や膜組織が熱の影響を受け、軟化し、弱体化され、断熱圧縮すると急速に昇温されることにより、微生物内に水が侵入する。この状態でその後断熱膨張させると、一般的な微生物の細胞膜や膜組織であれば物理力で破壊される。
【0035】
これに対し、大豆油を使って、85℃、常圧から600MPaまで断熱圧縮を行ったときの上昇温度は、図3に示すように139.0℃になる。この139.0℃という温度であれば、以下説明するように指標菌の耐熱性微生物を含めてほぼすべての微生物内に圧力媒体が侵入し、その後断熱膨張させると、短時間に殺菌が可能である。断熱圧縮したとき、温度上昇が高ければ高いほど、短い時間で殺菌できる。
【0036】
このように、断熱圧縮の発熱と断熱膨張で食品等を殺菌する場合には、水や調味液や肉汁等だけで発熱するよりも、大豆油を使った場合のように高発熱体で加熱する方が効果的である。そこで、本明細書では、断熱圧縮したとき、水よりも温度上昇率が大きい温度上昇率を持った圧力媒体を高発熱性媒体としている。水/グリセロール(1:1)、水/グリコール(1:1)、牛脂、大豆油、これらはすべて4.5℃/100MPa以上であり、高発熱性媒体である。
【0037】
次に、断熱加熱による殺菌と、被殺菌素材が熱変成しないメカニズムについて説明する。上述したように、60℃〜70℃以上被殺菌素材に加熱変成を起こさせない範囲の初期温度にすることで、原子間結合力が弱まり、細胞膜や膜組織が弱まる。この状態で圧縮されると生きている栄養細胞は生命の維持を図るため、細胞膜を介して周囲の水を菌体内に取り込み、内外のバランスをとろうとする。この水を取り込んだ状態で断熱圧縮して急速に昇温されると、微生物内への水の浸透が促進される。なお、一般的な細菌はこの時点までに初期加熱と断熱圧縮による発熱により多数死滅する。
【0038】
この状態でその後断熱膨張させると、死滅を免れていた微生物の菌体内に浸透した水は周囲の減圧に準じ、菌体内で断熱膨張を強いられ、細胞膜や胞子外套を内側から外側に押し出す。その時の応力が細胞膜や膜組織の強度を超えたとき、何れの微生物も破壊され、ほぼ完全に死に至る。理想状態の水の断熱膨張速度は1500m/sと速く、減圧速度が速ければ速いほど、断熱膨張速度が速まり膜組織への衝撃力が強まるものである。
【0039】
なお、このとき、肉や魚等の食品の組織細胞がこの断熱圧縮と断熱膨張の影響を受けて変成しないのは、次のような理由による。すなわち、圧縮されると生きている細胞は生存を脅かされ、細胞膜から周囲の水を菌体内に取り込み、内外のバランスをとろうとするが、死んだ組織細胞は、物質として存在するのみで圧縮されても細胞膜を介しての細胞活動に伴う水の移動は小さい。菌体内に水が浸透することもないし、浸透した水が断熱膨張しないから、細胞が破壊されることもない。これが、通常の加熱殺菌と異なり、断熱圧縮による加熱によって魚等の食品の組織細胞が変成しない理由である。
【0040】
このように実施の形態1の断熱圧縮殺菌方法と断熱圧縮殺菌装置によれば、球状パウチ5aや、和紙等で作成した袋状パウチ5bで大豆油やオリーブオイル等の高発熱性媒体Aを包むことにより耐熱パウチ5を構成するため、急速な温度上昇で短時間で殺菌でき、品質の劣化を起こさない。除圧弁はとくに精度の高いものでなくともよく、全体として安価な断熱圧縮殺菌装置とすることができる。処理温度が比較的に低いために、従来のレトルト食品の殺菌等と異なって殺菌後は60℃〜70℃以上の初期温度相当の温度になり、冷却が不必要になる。
【0041】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2における断熱圧縮殺菌方法を実施できる断熱圧縮殺菌装置の説明を行う。実施の形態2の断熱圧縮殺菌方法は、耐熱性胞子を含む微生物を殺菌することも、それ以外の微生物だけを殺菌することもできるが、説明の都合上、実施の形態2においては耐熱性胞子の細菌を殺菌する場合を想定して説明する。その他の微生物の殺菌については実施の形態1の説明に譲る。図4は本発明の実施の形態1における断熱圧縮殺菌方法を実施できる断熱圧縮殺菌装置の構成図である。実施の形態2の断熱圧縮殺菌装置は、実施の形態1の断熱圧縮殺菌装置と基本的に同様であり、実施の形態1と同一符号は同一構成を示しており、詳細な説明は省略する。
【0042】
図4において、10aは除圧弁(動作速度≒0.1秒)、16は大豆油やオリーブオイル等の高発熱性媒体A(実施の形態2の第1圧力媒体)をアルミニウムや銅等の高熱伝導パイプや高熱伝導容器に充填して積層して敷き詰めた発熱層である。フレキシブル容器4は水(実施の形態2の第3圧力媒体)中に分散される。発熱層16はフレキシブル容器4と交互に積層され、サンドイッチ状になってフレキシブル容器4を急速に加熱する。なお、この高発熱性媒体A(実施の形態2の第1圧力媒体)は、水(実施の形態2の第3圧力媒体)とフレキシブル容器4内の液(実施の形態2の第2圧力媒体)を加えた総液量に対して、少なくとも30%以上の割合(置換率)であることが望ましい。しかし、あまり置換率を上げると、被殺菌素材の量が低下し、実用性がなくなるから65%程度を中心に置換率を定めるのが好ましい。
【0043】
また、発熱層16の間に直接被殺菌素材を充填することも可能である。このときはフレキシブル容器4の外部に充填された他の圧力媒体(実施の形態2の第3圧力媒体)が不用となり、被殺菌素材と内部の液(実施の形態2の第2圧力媒体)に、高発熱性媒体A(実施の形態2の第1圧力媒体)から直接大量の熱が重畳的に加えられる。このような構成を採用するのが、耐熱性胞子を含む微生物を殺菌するときには好適である。
【0044】
以下、実施の形態2の断熱圧縮殺菌装置が、常圧で85℃〜100℃の初期温度にすることで、耐熱性胞子を含む微生物を殺菌する原理について説明する。耐熱性胞子は、約85℃で生物学的防衛機能を発現するため、防衛機能を発現させないという意味では100℃は若干高めであるが、短時間であれば胞子を形成する前に膜組織を熱的に弱めることが可能である。ただ、90℃近傍の初期温度にするのが好ましい。
【0045】
このとき、膜組織を形成している原子の電子軌道が熱膨張を受けて、原子間結合力が弱まる。この状態は膜組織が軟化し弱まった状態であり、圧力媒体が浸透するための指標菌である耐熱性胞子の防御機能の弱まった状態となる。しかも、耐熱性胞子は膜組織から周囲の水を菌体内に取り込み、内外のバランスをとろうとする。この状態で断熱圧縮されると、急速に昇温されることにより、圧力媒体が侵入し、その後断熱膨張させると、耐熱性胞子の膜組織が物理力で破壊される。例えば大豆油の場合、90℃から700MPaを加えることで150℃を越え、水の浸透が確実に起こり断熱膨張で耐熱胞子もほぼ完全に殺菌される。断熱圧縮と断熱膨張の時間だけであり、きわめて短時間且つ確実に殺菌することができる。被殺菌素材の品質を損なわず、安価に殺菌できる。
【0046】
実施の形態2の断熱圧縮殺菌方法と断熱圧縮殺菌装置によれば、発熱層16がフレキシブル容器4と交互に積層され、サンドイッチ状にフレキシブル容器4を瞬間的に加熱するため、フレキシブル容器4を配設するのが容易となり、実用上大きな効果を有す。除圧弁は高精度でなくともよく、断熱膨張で指標菌である耐熱性胞子という最強の微生物まで確実に殺菌を行うことができ、安価な断熱圧縮殺菌装置とすることができる。処理温度が比較的に低いために、レトルト殺菌等と異なって殺菌後の冷却が不必要になる。
【0047】
(実施の形態3)
本発明の実施の形態3における断熱圧縮殺菌方法を実施できる断熱圧縮殺菌装置の説明を行う。実施の形態3の断熱圧縮殺菌装置は、実施の形態1において耐熱パウチ5を設けるのではなく、高圧室3の中に充填されるフレキシブル容器4内の液を自身で発熱する第1圧力媒体とするものである。従って、実施の形態1の断熱圧縮殺菌装置と基本的に同様であり、実施の形態1と同一符号は同一構成を示すから図示はしない。
【0048】
(表1)に示すように牛脂は、断熱熱圧縮を行ったとき、6.0℃/100MPaという高い温度上昇を示す。これは高発熱性媒体として十分利用できるものである。例えば、牛脂を含んだ牛肉と肉汁、あるいは牛肉を調理したものを調味液と共に充填したフレキシブル容器4を高圧室3に収容し、外部に水を加え、全体を90℃までに初期加熱する。その後、700MPaまで断熱圧縮するとフレキシブル容器4は急速に132℃に温度上昇する。これをさらに断熱膨張することにより、牛肉自身の油脂で短時間に確実な殺菌が行える。本実施の形態3においては牛脂を使用したが、これは牛脂に限られず、豚やその他の素材でも可能である。
【0049】
ところで、このような高発熱性媒体は、利用できればそれが望ましいが、フレキシブル容器4内が食品と水だけでも、通常の細菌や微生物は十分の殺菌が可能である。すなわち、高圧室3に収容して水を加え、90℃の初期温度から60秒〜90秒で700MPaまで断熱圧縮すると、111℃となり、高発熱性媒体を使わず単なる水でも殺菌が可能である。これに対し、このとき仮にこの水の50%を大豆油に置換すると、121.5℃にまで加熱でき、65%置換の場合は131℃にすることができる。大豆油に置換することで殺菌効果を上げることができることがわかる。そして、冷却工程を設けなくとも、90℃のレトルト食品とすることができる。
【0050】
実施の形態1の断熱圧縮殺菌装置の場合には、耐熱パウチ5で発熱し、これが熱伝達してフレキシブル容器4を加熱するために1分〜3分を必要としていた。しかし、実施の形態3の場合には直接的加熱でこの時間が不要であるから、60秒〜90秒でで殺菌が可能になる。この直接加熱のため温度上昇が短時間で大きく、耐熱性胞子を含む微生物の殺菌にもっとも適している。きわめて短時間のうちに殺菌が終了し、被殺菌素材の品質を損なうことはない。耐熱パウチ5が不要で安価な殺菌が行える。
【0051】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の断熱圧縮殺菌方法によれば、断熱圧縮と断熱膨張の時間ですみ、きわめて短時間且つ確実に殺菌することができる。被殺菌素材の品質を損なわず、断熱圧縮するため膨張時の負担が軽くなり、安価に殺菌できる。第3圧力媒体を介すことにより耐熱パウチ等を利用して第1圧力媒体を扱い易くなる。常圧で下85℃〜100℃の初期温度にすることで、断熱圧縮すると微生物内に圧力媒体が侵入し、圧力媒体が膨張させると、指標菌の耐熱性胞子を含めほとんどすべての微生物の細胞膜や膜組織が物理力で破壊される。
【0052】
高発熱性媒体の発熱により水以上の温度上昇が起こり、軟化した微生物の細胞膜や膜組織を高発熱性媒体が直接透過するか、または間接的に加熱された第2圧力媒体が軟化した微生物の細胞膜や膜組織を透過して、その後断熱膨張させることにより殺菌を行うことができる。フレキシブル容器内の水や調味液や被殺菌素材に含まれた含有液成分が細胞膜や膜組織を透過し、断熱膨張するので水等による破壊力が大きく、しかも食品を安全に殺菌を行うことができる。
【0053】
高発熱性媒体が、大豆油、オリーブオイル、牛脂、グリコール、グリセロールのいすれかの媒体であるから、高発熱性媒体であるとともに細胞膜や膜組織を透過可能となる。
【0054】
耐熱パウチ内に高発熱性媒体を充填するため、第1圧力媒体の取り扱いが容易になり、第3圧力媒体を利用でき、第2圧力媒体として、断熱膨張したとき破壊力の大きい主として水または調味液や肉汁などを組み合わせて利用することができる。耐熱パウチが球状パウチの場合、表面積が大きく熱伝導が効果的に行え、袋状パウチの場合は、和紙等で作成することができるため安価で圧力に対する感度が高い耐熱パウチにすることができる。
【0055】
高圧容器内に断熱材をコーティングして断熱圧縮を行うから、熱効率が高く、断熱圧縮のときの急速な上昇を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態1における断熱圧縮殺菌方法を実施できる断熱圧縮殺菌装置の構成図
【図2】(a)図1の断熱圧縮殺菌装置で使用するカプセル状の耐熱パウチの一部破砕説明図
(b)図1の断熱圧縮殺菌装置で使用する袋状の耐熱パウチの一部破砕説明図
【図3】断熱圧縮を行ったときの昇温特性の説明図
【図4】本発明の実施の形態1における断熱圧縮殺菌方法を実施できる断熱圧縮殺菌装置の構成図
【符号の説明】
1 高圧容器
1a 断熱材
2 上蓋
3 高圧室
4 フレキシブル容器
5 耐熱パウチ
5a 球状パウチ
5b 袋状パウチ
6は 籠
7 タンク
8 加圧ポンプ
8a 加圧タンク
9 電磁弁
10,10a 除圧弁
11 熱交換用蛇管
11a 加熱ヒータ
12 循環ポンプ
13 温度センサ
14 圧力センサ
15 制御部
16 発熱層
【発明が属する技術分野】
本発明は、食品や医薬品等の被殺菌素材に含まれる微生物、細菌等を加圧装置によって断熱圧縮して殺菌もしくは滅菌する断熱圧縮殺菌方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、殺菌方法として、最も簡単で確実、しかも経済的な方法として広く利用されているのは加熱殺菌法である。この加熱殺菌を行う場合、加熱温度を上げて長時間加熱を持続すればよいが、食品に対する熱による変成という問題もあって単純ではない。すなわち、過度の加熱で加熱臭が素材に残り、味や風味、品質等を損なう。とくに熱抵抗力の強い微生物を確実に殺菌しなければならない場合には、過度の加熱処理を行うため加熱臭が生じ、商品価値の低下させてしまう。
【0003】
熱抵抗力は微生物の種類により様々であるが、一般的にバチルス(Bacillus)属の耐熱性芽胞菌(以下、耐熱性胞子)は熱に強く、加熱温度が高くなると、種の死滅から免れるために、菌体内に胞子をつくり、環境が回復するのをまって、耐熱性胞子が出芽するという性質を備えている。このため耐熱性胞子は加熱滅菌を行う上で最も厄介なものである。この種の微生物を含む食品等は単純に加熱するだけでは滅菌できない。
【0004】
ところで、高圧で圧縮されたときに水に伝わるエネルギは、500MPaにおいてモル当り約100calと少なく、化学反応にはまったく関与できないものである。本発明者は、これにヒントを得て、静圧を使った熱変成を伴わない新しい殺菌方法が開発できるのではないか、との観点から、耐熱性胞子まで殺菌するため各種媒体で実験を行い、高粘度の媒体では加圧下で膜組織を通過できず、胞子や細胞の内部(菌体内)に侵入し難いが、水は粘度が低いため、高圧下で菌体の周囲の水が膜組織を通過して、菌体内に侵入し、減圧時に高圧容器内の圧力低下に準じて、菌体内でも膨張を強いられ、細胞膜やスポアコート(以下、膜組織と呼称する。)が内側からの圧力で物理的に破壊されるとの知見を得た。
【0005】
そこで本発明者は、この着想を基に他の発明者らとともに、この耐熱性胞子、とくにバチラス・ステアロサーモフィラス(Bacillus stearothermophilus IFO 12550胞子)を指標と考え、食品や医薬品等に含まれる微生物を、マイナス温度領域もしくは緩慢加熱下で加圧殺菌方法を提案した(特許文献1参照)。
【0006】
本発明者が提案したこの従来の加圧殺菌方法は、微生物菌体内に水を浸透させ、その水を内側から菌体の外側に急激に断熱膨脹させるときに生じる衝撃力で微生物の細胞膜や細胞壁または耐熱性胞子の膜組織を物理的に破壊するものである。すなわち、耐熱性胞子に汚染されている食品や素材を液体中に分散させ、その液体を充分に加圧し、液体を耐熱性胞子内部に浸透させた後、高圧容器の圧力を瞬時に解放する。圧力解放と同時に、耐熱性胞子に浸透した水は瞬時に断熱膨張を強いられる。水の断熱膨張速度は理想状態で秒速1500mと極めて速く、膜組織は内側から外側へ激しく押し出されて破壊される。同時に加える加熱温度条件は、いかなる微生物に対しても80℃未満で殺菌可能である。
【0007】
この加圧殺菌方法は水を圧力媒体とし、バチラス・ステアロサーモフィラスでも少なくとも−25℃以上80℃未満、加圧力は200〜800MPaで、加圧時間は少なくとも60分で殺菌できるものである。そして、この方法は実用化され、とくに欧米においては現在普及段階に入っている。しかし、この加圧殺菌方法は200MPa以上の圧力を必要とし、殺菌の確実性を上げるためにはできるだけ800MPaに近い方もしくはこれより大きい方が望ましく、これを低下させることが新たな課題となった。
【0008】
そこで本発明者は、この方法を基に微生物の生物学的性質を利用して新たな加圧殺菌方法を開発した(特許文献2参照)。この加圧殺菌方法は、60分〜1440分の間バチラス・ステアロサーモフィラスの生物学的防御機能発現温度よりも少し低い温度75℃〜85℃で加熱するとともに、50MPa〜100MPaの加圧を行い、液体を菌体内に浸透させ、その後除圧し、そのとき生じる液体の体積膨張力により微生物の膜組織を破壊するものである。
【0009】
この殺菌方法は本発明者の発見した生物と圧力の関係を最大限生かしたものといえるもので、100℃未満の処理温度で、液体の体積膨張力(断熱膨張力)を利用して殺菌、被殺菌素材に加熱臭が残ることはなく、素材の品質を損なわず、処理温度が低いために、殺菌後の冷却が不必要になるものであった。さらに、微生物の生物学的性質を利用して加圧するため、殺菌圧力を下げることができ、運転経費が少なく、確実で安全な殺菌法であった。
【0010】
【特許文献1】
特開平9−285526号公報
【特許文献2】
特開2002−85030号公報
【発明が解決しようとする課題】
現在一般に実施されている殺菌方法、例えばPETボトル等のプラスチックボトル、ガラス瓶等の飲料水の容器の殺菌においては、一般細菌のほかにバチルス属の細菌やボツリヌス菌まで殺菌する必要があり、過酢酸や過酸化水素などを使って殺菌したり、亜硝酸等で殺菌を行っている。しかし、このような薬剤で殺菌するのは、これら容器洗浄後にも容器内面に吸着されていた微量なものが遅延的に遊離し、食品に移行し、結果として人体に入る可能性があるため、健康面からはある種の矛盾を孕んでいる。こうしたことから、薬剤を使わない殺菌方法と殺菌装置の開発に大きな期待が寄せられている。
【0011】
本発明者の提案した(特許文献2)の加圧殺菌方法はこうした期待にこたえる優れた加圧殺菌方法であった。最強の菌の一つであるバチラス・ステアロサーモフィラスの生物学的性質を利用して加圧するため、殺菌圧力を下げることができ、低温処理のため素材の品質を損なうことがない。しかし、加圧装置とともに、断熱膨張させるための除圧弁が必要で、これが装置の費用を押し上げる傾向があった。ひとつには、除圧弁の動作に違いがあると殺菌力に差が生じるため、精密さ、精度が要求されるからである。そして従来の技術よりは格段に短時間の殺菌が行えるが、それでも60分〜1440分という長い時間が殺菌のためにかかることが課題となった。
【0012】
そこで本発明は、耐熱性芽胞菌まで含めて短時間且つ確実に殺菌することができ、食品等の被殺菌素材の品質を損なわず、安価に殺菌できる断熱圧縮殺菌方法を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
以上説明した問題を解決するための本発明の断熱圧縮殺菌方法は、断熱圧縮で発熱する第1圧力媒体中に直接もしくは該第1圧力媒体の熱が重畳される第2圧力媒体中に被殺菌素材を分散させ、全体を常圧下60℃〜70℃もしくはこれ以上で被殺菌素材の過剰加熱に伴う熱劣化を抑えることができる範囲の所定の初期温度に加熱し、次いで断熱圧縮を行って急速加熱することで殺菌対象微生物の菌体内に該菌体の周囲の圧力媒体を侵入させ、その後断熱膨張させて殺菌することを特徴とする。
【0014】
これにより、耐熱性芽胞菌まで含めて短時間且つ確実に殺菌することができ、食品等の被殺菌素材の品質を損なわず、安価に殺菌することができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
第1の発明は、断熱圧縮で発熱する第1圧力媒体中に直接もしくは該第1圧力媒体の熱が重畳される第2圧力媒体中に被殺菌素材を分散させ、全体を常圧下60℃〜70℃もしくはこれ以上で被殺菌素材の過剰加熱に伴う熱劣化を抑えることができる範囲の所定の初期温度に加熱し、次いで断熱圧縮を行って急速加熱することで殺菌対象微生物の菌体内に該菌体の周囲の圧力媒体を侵入させ、その後断熱膨張させて殺菌することを特徴とする断熱圧縮殺菌方法であり、常圧で60℃〜70℃もしくはこれ以上で被殺菌素材に熱劣化を起こさせない範囲の初期温度にすることで、熱劣化をさけるとともに、殺菌対象微生物の細胞膜や膜組織を形成しているすべての原子の電子軌道を熱膨張させ、互いの原子間距離を拡張させて原子間結合力を弱める。この状態は細胞膜や膜組織が弱まった状態であり、防御機能の弱まった状態となる。この状態で断熱圧縮すると、急速に昇温されることにより、耐熱性微生物を含めてほとんどすべての微生物内に周囲の圧力媒体が侵入する。この状態でその後断熱膨張させると、圧力媒体が膨張し、耐熱性微生物を含めほとんどすべての微生物の細胞膜や膜組織が物理力で破壊される。断熱圧縮と断熱膨張の時間ですみ、きわめて短時間且つ確実に殺菌することができる。被殺菌素材の品質を損なわず、断熱圧縮するため膨張時の負担が軽くなり、安価に殺菌できる。なお、ここで殺菌対象微生物とは微生物、細菌、耐熱性芽胞菌、ウィルス等を包含する総称である。
【0016】
第2の発明は、第1圧力媒体が、第3圧力媒体を介して間接的に第2圧力媒体に熱を供給することを特徴とする請求項1記載の断熱圧縮殺菌方法であり、第3圧力媒体を介すことにより耐熱パウチ等を利用して第1圧力媒体を扱い易くなる。
【0017】
第3の発明は、耐熱性芽胞菌を含む殺菌対象微生物を殺菌する請求項1または2記載の断熱圧縮殺菌方法であって、常圧下85℃〜100℃の初期温度に加熱し、次いで断熱圧縮を行って急速加熱することで指標菌である耐熱性芽胞菌の菌体内に対しても該菌体の周囲の圧力媒体を侵入させ、その後断熱膨張させて耐熱性芽胞菌を含む殺菌対象微生物を殺菌することを特徴とする断熱圧縮殺菌方法であり、常圧で下85℃〜100℃の初期温度にすることで、指標菌である耐熱性胞子を含む殺菌対象微生物の細胞膜や膜組織を形成しているすべての原子の電子軌道を熱膨張させ、互いの原子間距離を拡張させて原子間結合力を弱める。この状態は細胞膜や膜組織が弱まった状態であり、通常の微生物では周囲の圧力媒体が簡単且つ十分に侵入し、指標菌である最強の耐熱性胞子も85℃付近で防御機能が低下して周囲の圧力媒体が浸透する可能な状態となる。この状態で断熱圧縮すると、急速に昇温されることにより、耐熱性胞子を含めてすべての微生物内に圧力媒体が侵入する。この状態でその後断熱膨張させると、圧力媒体が膨張し、指標菌の耐熱性胞子を含めほとんどすべての微生物の細胞膜や膜組織が物理力で破壊される。断熱圧縮と断熱膨張の時間ですみきわめて短時間且つ確実に殺菌することができる。被殺菌素材の品質を損なわず、安価に殺菌できる。なお、ここで指標菌というのは、本明細書においては、この指標菌を殺菌すれば他の菌も含めて滅菌できる菌のことである。
【0018】
第4の発明は、第1圧力媒体が、第1圧力媒体が、断熱圧縮したときに水の温度上昇率より大きい温度上昇率を有する高発熱性媒体であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の断熱圧縮殺菌方法であり、高発熱性媒体の発熱により水以上の温度上昇が起こり、軟化した微生物の細胞膜や膜組織を高発熱性媒体が直接透過するか、または間接的に加熱された第2圧力媒体が軟化した微生物の細胞膜や膜組織を透過して、その後断熱膨張させることにより殺菌を行うことができる。
【0019】
第5の発明は、第2圧力媒体が、フレキシブル容器内に充填された水または調味液または被殺菌素材の含有液成分であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の断熱圧縮殺菌方法であり、フレキシブル容器内の水や調味液や被殺菌素材に含まれた含有液成分、例えば肉汁等が細胞膜や膜組織を透過し、断熱膨張するので水等による破壊力が大きく、しかも食品を安全に殺菌を行うことができる。
【0020】
第6の発明は、高発熱性媒体が、大豆油、オリーブオイル、牛脂、グリコール、グリセロールのいずれかであることを特徴とする請求項4記載の断熱圧縮殺菌方法であり、高発熱性媒体であるとともに細胞膜や膜組織を透過可能な媒体である。
【0021】
第7の発明は、高発熱性媒体を充填した耐熱パウチが、第3圧力媒体中に分散されたことを特徴とする請求項2記載の断熱圧縮殺菌方法であり、耐熱パウチ内に高発熱性媒体を充填するため第1圧力媒体の取り扱いが容易になり、第3圧力媒体を利用でき、第2圧力媒体として、断熱膨張したとき破壊力の大きい主として水または調味液や肉汁などを組み合わせて利用することができる。
【0022】
第8の発明は、耐熱パウチが球状パウチまたは袋状パウチであることを特徴とする請求項7記載の断熱圧縮殺菌方法であり、球状パウチは表面積が大きく熱伝導が効果的に行え、袋状パウチは和紙等で作成することができるため安価で圧力に対する感度が高い耐熱パウチにすることができる。
【0023】
第9の発明は、高圧容器内に断熱材を施してして断熱圧縮を行う請求項1〜8のいずれかに記載の断熱圧縮殺菌方法であり、断熱圧縮のときの急速な上昇を可能にする。
【0024】
(実施の形態1)
以下、本発明の実施の形態1における断熱圧縮殺菌方法を実施できる断熱圧縮殺菌装置の説明を行う。実施の形態1の断熱圧縮殺菌方法は、耐熱性胞子を含む微生物を殺菌することも、それ以外の微生物だけを殺菌することもできるが、説明の都合上、実施の形態1においては耐熱性胞子以外の細菌を殺菌する場合を想定して説明する。耐熱性胞子を含む微生物の殺菌については実施の形態2において説明する。図1は本発明の実施の形態1における断熱圧縮殺菌方法を実施できる断熱圧縮殺菌装置の構成図、図2(a)は図1の断熱圧縮殺菌装置で使用するカプセル状の耐熱パウチの一部破砕説明図、図2(b)は図1の断熱圧縮殺菌装置で使用する袋状の耐熱パウチの一部破砕説明図、図3は断熱圧縮を行ったときの昇温特性の説明図である。
【0025】
図1において、1はステンレス等の耐食性金属からなる高圧容器、1aは高圧容器1の内部にコーティングした断熱材、2は厚板からなる上蓋、3は高圧容器1と上蓋2で形成される高圧室である。上蓋2は締結具でワッシャを介して高圧容器1に固定される。4は、高圧室3の中に充填され、食品等の被殺菌素材と調味液等の水分(実施の形態1の第2圧力媒体)とを空気を含まない状態で充填し、密封したポリプロピレン製等のフレキシブル容器、5はフレキシブル容器4と一緒に圧力媒体(実施の形態1の第3圧力媒体)中に分散される発熱体としての耐熱パウチである。
【0026】
この耐熱パウチ5について図2(a)(b)に基づき説明する。図2(a)において、5aはポリプロピレン製の球状の肉厚の薄い球状パウチ、Aは球状パウチ5a内に充填される大豆油、オリーブオイル等の高発熱性媒体(実施の形態1の第1圧力媒体)である。高発熱性媒体については後で詳述する。球状パウチ5aの素材は熱伝導率の高い材料であればよく、樹脂に限らず、アルミニウムや銅等の金属でも好適である。伝熱面積を増すために球状パウチ5aの半径を小さくするのがよいが、余りに小さくなりすぎると逆に高発熱性媒体Aの量が減るため、5mm〜30mm程度にするのがよい。
【0027】
次に、図2(b)において、5bは和紙等で作成した袋状パウチである。袋状パウチ5b内には球状パウチ5aと同様大豆油、オリーブオイル等の高発熱性媒体Aが充填される。和紙は繊維でメッシュ状になっており、内部に高発熱性媒体Aを充填すると外部の温水(実施の形態1の第3圧力媒体)から加わった圧力は袋状パウチ5b内部に直接伝わり、断熱圧縮したときには発熱する。袋状パウチ5bの外表面に疎水処理等を施すのもよい。
【0028】
6はフレキシブル容器4と耐熱パウチ5を内部に収容するためのアルミニウム製の籠、7は圧力媒体となる水(実施の形態1の第3圧力媒体)を溜めたタンクである。なお、耐熱パウチ5を用いないときには、断熱圧縮したとき大きな発熱量を示す大豆油や、オリーブオイル、水/グリコール(1:1)、水/グリセロール(1:1)等を、フレキシブル容器4を直接圧縮する圧力媒体(実施の形態1の第1圧力媒体)として、被殺菌素材と調味液等(実施の形態1の第2圧力媒体)を加熱するのが好適である。水でも発熱が起こるが、これらの高発熱性媒体を使う方がよい。8はタンク7内の水を0〜800MPaに加圧して高圧室3内に送ることが可能なダイヤフラムポンプ等の容積型の加圧ポンプ、8aは加圧ポンプ8で昇圧した高圧の水を貯める加圧タンク、9は電磁弁、10は除圧弁(動作速度≒0.1秒)である。なお、除圧弁10はとくに精度を問題にしなくとも十分である。電磁弁9を開放すると加圧タンク8aから圧力水が高圧室3内に入って一挙に加圧する。
【0029】
11は高圧室3内の水を常圧下60℃〜70℃、もしくはこれ以上で被殺菌素材に過剰加熱に伴う熱劣化を抑える範囲の初期温度に保つために設けられた熱交換用蛇管、11aは初期加熱用の加熱ヒータである。ここでは、例えば85℃に加熱するものとする。これは上述したように、実施の形態1では説明の都合上、耐熱性胞子以外の菌を殺菌するものとして説明するためである。耐熱性胞子まで含めて殺菌する場合は85℃〜100℃、90℃程度で殺菌すればよい。これについては実施の形態2で説明する。12は初期加熱するための加熱用媒体を循環させる循環ポンプである。この初期温度や断熱圧縮の圧力は微生物ごとに決定される。
【0030】
13は高圧室3内の温度を検出する温度センサ、14は高圧室3内の圧力や上記した加圧タンク8a内の圧力を検出する圧力センサである。15はマイクロコンピュータ等から構成され、圧力センサ14でや温度センサ13で検出された検出信号に基づいて、微生物ごとに決定された初期温度と断熱圧縮を実現できるようにプログラミングされ、加熱ヒータ11aや加圧ポンプ8等を制御する制御部であり、殺菌を行うに当っては、実施の形態1の場合高圧室3内を一旦85℃近傍に加熱し、その後電磁弁9を開放して一緒に高圧室3内全体を断熱圧縮して高発熱性媒体を加熱し、この熱を重畳することによって短時間でフレキシブル容器4内の水や調味液や肉汁等と被殺菌素材を急速に加熱する。なお、この断熱圧縮に伴ってフレキシブル容器4が破裂することはない。除圧時も同様である。
【0031】
この実施の形態1の加圧殺菌装置を使って、フレキシブル容器4に詰めた被殺菌素材を殺菌するときの手順について簡単に説明する。フレキシブル容器4と耐熱パウチ5を高圧容器1内に収容し、制御部15のスタートボタン(図示しない)を押すと、循環ポンプ12と加熱ヒータ11aで初期加熱を行い、85℃近傍に保つ。プログラムに従って加圧ポンプ8の運転が開始され、加圧タンク8a内に例えば720MPaの高圧の圧力媒体を貯められた後、電磁弁9が開かれる。これにより、例えば高圧容器1内は60秒〜90秒で700MPaまで急速に断熱圧縮される。その後制御部15が除圧弁10を開き、一挙に冷却する。これによってフレキシブル容器4に詰めた被殺菌素材は、当初の85℃程度に低下することになる。
【0032】
続いて、以下、本実施の形態1の断熱圧縮殺菌方法の殺菌原理について説明する。(表1)はいろいろの物質の圧力昇温特性である。ここには記載していないが、食用界面活性剤を水に添加したものや、食用オイルを食用界面活性剤とともに水に添加したものも耐熱パウチ5として採用が可能である。
【0033】
【表1】
(表1)によれば、圧力媒体として水を断熱圧縮すると、いわば瞬間的に発熱し、100MPa当り3.0℃(3.0℃/100MPa)で温度上昇することが分かる。同様に、水/グリセロール(1:1)は4.8℃/100MPa、水/グリコール(1:1)は4.5℃/100MPa、オリーブオイルは8.6℃/100MPa、大豆油は9.0℃/100MPaである。
【0034】
従って高圧室3内に充填する圧力媒体を例えば水とした場合、3.0℃/100MPaで温度上昇することになる。図3は水と大豆油をそれぞれ断熱圧縮を行ったときの昇温特性を示している。図3によれば、水を85℃から断熱圧縮したときは、600MPaで18℃高い103℃にまで昇温させていることが分かる。図3の場合、このように初期温度を85℃にすることで、微生物の細胞膜や膜組織が熱の影響を受け、軟化し、弱体化され、断熱圧縮すると急速に昇温されることにより、微生物内に水が侵入する。この状態でその後断熱膨張させると、一般的な微生物の細胞膜や膜組織であれば物理力で破壊される。
【0035】
これに対し、大豆油を使って、85℃、常圧から600MPaまで断熱圧縮を行ったときの上昇温度は、図3に示すように139.0℃になる。この139.0℃という温度であれば、以下説明するように指標菌の耐熱性微生物を含めてほぼすべての微生物内に圧力媒体が侵入し、その後断熱膨張させると、短時間に殺菌が可能である。断熱圧縮したとき、温度上昇が高ければ高いほど、短い時間で殺菌できる。
【0036】
このように、断熱圧縮の発熱と断熱膨張で食品等を殺菌する場合には、水や調味液や肉汁等だけで発熱するよりも、大豆油を使った場合のように高発熱体で加熱する方が効果的である。そこで、本明細書では、断熱圧縮したとき、水よりも温度上昇率が大きい温度上昇率を持った圧力媒体を高発熱性媒体としている。水/グリセロール(1:1)、水/グリコール(1:1)、牛脂、大豆油、これらはすべて4.5℃/100MPa以上であり、高発熱性媒体である。
【0037】
次に、断熱加熱による殺菌と、被殺菌素材が熱変成しないメカニズムについて説明する。上述したように、60℃〜70℃以上被殺菌素材に加熱変成を起こさせない範囲の初期温度にすることで、原子間結合力が弱まり、細胞膜や膜組織が弱まる。この状態で圧縮されると生きている栄養細胞は生命の維持を図るため、細胞膜を介して周囲の水を菌体内に取り込み、内外のバランスをとろうとする。この水を取り込んだ状態で断熱圧縮して急速に昇温されると、微生物内への水の浸透が促進される。なお、一般的な細菌はこの時点までに初期加熱と断熱圧縮による発熱により多数死滅する。
【0038】
この状態でその後断熱膨張させると、死滅を免れていた微生物の菌体内に浸透した水は周囲の減圧に準じ、菌体内で断熱膨張を強いられ、細胞膜や胞子外套を内側から外側に押し出す。その時の応力が細胞膜や膜組織の強度を超えたとき、何れの微生物も破壊され、ほぼ完全に死に至る。理想状態の水の断熱膨張速度は1500m/sと速く、減圧速度が速ければ速いほど、断熱膨張速度が速まり膜組織への衝撃力が強まるものである。
【0039】
なお、このとき、肉や魚等の食品の組織細胞がこの断熱圧縮と断熱膨張の影響を受けて変成しないのは、次のような理由による。すなわち、圧縮されると生きている細胞は生存を脅かされ、細胞膜から周囲の水を菌体内に取り込み、内外のバランスをとろうとするが、死んだ組織細胞は、物質として存在するのみで圧縮されても細胞膜を介しての細胞活動に伴う水の移動は小さい。菌体内に水が浸透することもないし、浸透した水が断熱膨張しないから、細胞が破壊されることもない。これが、通常の加熱殺菌と異なり、断熱圧縮による加熱によって魚等の食品の組織細胞が変成しない理由である。
【0040】
このように実施の形態1の断熱圧縮殺菌方法と断熱圧縮殺菌装置によれば、球状パウチ5aや、和紙等で作成した袋状パウチ5bで大豆油やオリーブオイル等の高発熱性媒体Aを包むことにより耐熱パウチ5を構成するため、急速な温度上昇で短時間で殺菌でき、品質の劣化を起こさない。除圧弁はとくに精度の高いものでなくともよく、全体として安価な断熱圧縮殺菌装置とすることができる。処理温度が比較的に低いために、従来のレトルト食品の殺菌等と異なって殺菌後は60℃〜70℃以上の初期温度相当の温度になり、冷却が不必要になる。
【0041】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2における断熱圧縮殺菌方法を実施できる断熱圧縮殺菌装置の説明を行う。実施の形態2の断熱圧縮殺菌方法は、耐熱性胞子を含む微生物を殺菌することも、それ以外の微生物だけを殺菌することもできるが、説明の都合上、実施の形態2においては耐熱性胞子の細菌を殺菌する場合を想定して説明する。その他の微生物の殺菌については実施の形態1の説明に譲る。図4は本発明の実施の形態1における断熱圧縮殺菌方法を実施できる断熱圧縮殺菌装置の構成図である。実施の形態2の断熱圧縮殺菌装置は、実施の形態1の断熱圧縮殺菌装置と基本的に同様であり、実施の形態1と同一符号は同一構成を示しており、詳細な説明は省略する。
【0042】
図4において、10aは除圧弁(動作速度≒0.1秒)、16は大豆油やオリーブオイル等の高発熱性媒体A(実施の形態2の第1圧力媒体)をアルミニウムや銅等の高熱伝導パイプや高熱伝導容器に充填して積層して敷き詰めた発熱層である。フレキシブル容器4は水(実施の形態2の第3圧力媒体)中に分散される。発熱層16はフレキシブル容器4と交互に積層され、サンドイッチ状になってフレキシブル容器4を急速に加熱する。なお、この高発熱性媒体A(実施の形態2の第1圧力媒体)は、水(実施の形態2の第3圧力媒体)とフレキシブル容器4内の液(実施の形態2の第2圧力媒体)を加えた総液量に対して、少なくとも30%以上の割合(置換率)であることが望ましい。しかし、あまり置換率を上げると、被殺菌素材の量が低下し、実用性がなくなるから65%程度を中心に置換率を定めるのが好ましい。
【0043】
また、発熱層16の間に直接被殺菌素材を充填することも可能である。このときはフレキシブル容器4の外部に充填された他の圧力媒体(実施の形態2の第3圧力媒体)が不用となり、被殺菌素材と内部の液(実施の形態2の第2圧力媒体)に、高発熱性媒体A(実施の形態2の第1圧力媒体)から直接大量の熱が重畳的に加えられる。このような構成を採用するのが、耐熱性胞子を含む微生物を殺菌するときには好適である。
【0044】
以下、実施の形態2の断熱圧縮殺菌装置が、常圧で85℃〜100℃の初期温度にすることで、耐熱性胞子を含む微生物を殺菌する原理について説明する。耐熱性胞子は、約85℃で生物学的防衛機能を発現するため、防衛機能を発現させないという意味では100℃は若干高めであるが、短時間であれば胞子を形成する前に膜組織を熱的に弱めることが可能である。ただ、90℃近傍の初期温度にするのが好ましい。
【0045】
このとき、膜組織を形成している原子の電子軌道が熱膨張を受けて、原子間結合力が弱まる。この状態は膜組織が軟化し弱まった状態であり、圧力媒体が浸透するための指標菌である耐熱性胞子の防御機能の弱まった状態となる。しかも、耐熱性胞子は膜組織から周囲の水を菌体内に取り込み、内外のバランスをとろうとする。この状態で断熱圧縮されると、急速に昇温されることにより、圧力媒体が侵入し、その後断熱膨張させると、耐熱性胞子の膜組織が物理力で破壊される。例えば大豆油の場合、90℃から700MPaを加えることで150℃を越え、水の浸透が確実に起こり断熱膨張で耐熱胞子もほぼ完全に殺菌される。断熱圧縮と断熱膨張の時間だけであり、きわめて短時間且つ確実に殺菌することができる。被殺菌素材の品質を損なわず、安価に殺菌できる。
【0046】
実施の形態2の断熱圧縮殺菌方法と断熱圧縮殺菌装置によれば、発熱層16がフレキシブル容器4と交互に積層され、サンドイッチ状にフレキシブル容器4を瞬間的に加熱するため、フレキシブル容器4を配設するのが容易となり、実用上大きな効果を有す。除圧弁は高精度でなくともよく、断熱膨張で指標菌である耐熱性胞子という最強の微生物まで確実に殺菌を行うことができ、安価な断熱圧縮殺菌装置とすることができる。処理温度が比較的に低いために、レトルト殺菌等と異なって殺菌後の冷却が不必要になる。
【0047】
(実施の形態3)
本発明の実施の形態3における断熱圧縮殺菌方法を実施できる断熱圧縮殺菌装置の説明を行う。実施の形態3の断熱圧縮殺菌装置は、実施の形態1において耐熱パウチ5を設けるのではなく、高圧室3の中に充填されるフレキシブル容器4内の液を自身で発熱する第1圧力媒体とするものである。従って、実施の形態1の断熱圧縮殺菌装置と基本的に同様であり、実施の形態1と同一符号は同一構成を示すから図示はしない。
【0048】
(表1)に示すように牛脂は、断熱熱圧縮を行ったとき、6.0℃/100MPaという高い温度上昇を示す。これは高発熱性媒体として十分利用できるものである。例えば、牛脂を含んだ牛肉と肉汁、あるいは牛肉を調理したものを調味液と共に充填したフレキシブル容器4を高圧室3に収容し、外部に水を加え、全体を90℃までに初期加熱する。その後、700MPaまで断熱圧縮するとフレキシブル容器4は急速に132℃に温度上昇する。これをさらに断熱膨張することにより、牛肉自身の油脂で短時間に確実な殺菌が行える。本実施の形態3においては牛脂を使用したが、これは牛脂に限られず、豚やその他の素材でも可能である。
【0049】
ところで、このような高発熱性媒体は、利用できればそれが望ましいが、フレキシブル容器4内が食品と水だけでも、通常の細菌や微生物は十分の殺菌が可能である。すなわち、高圧室3に収容して水を加え、90℃の初期温度から60秒〜90秒で700MPaまで断熱圧縮すると、111℃となり、高発熱性媒体を使わず単なる水でも殺菌が可能である。これに対し、このとき仮にこの水の50%を大豆油に置換すると、121.5℃にまで加熱でき、65%置換の場合は131℃にすることができる。大豆油に置換することで殺菌効果を上げることができることがわかる。そして、冷却工程を設けなくとも、90℃のレトルト食品とすることができる。
【0050】
実施の形態1の断熱圧縮殺菌装置の場合には、耐熱パウチ5で発熱し、これが熱伝達してフレキシブル容器4を加熱するために1分〜3分を必要としていた。しかし、実施の形態3の場合には直接的加熱でこの時間が不要であるから、60秒〜90秒でで殺菌が可能になる。この直接加熱のため温度上昇が短時間で大きく、耐熱性胞子を含む微生物の殺菌にもっとも適している。きわめて短時間のうちに殺菌が終了し、被殺菌素材の品質を損なうことはない。耐熱パウチ5が不要で安価な殺菌が行える。
【0051】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の断熱圧縮殺菌方法によれば、断熱圧縮と断熱膨張の時間ですみ、きわめて短時間且つ確実に殺菌することができる。被殺菌素材の品質を損なわず、断熱圧縮するため膨張時の負担が軽くなり、安価に殺菌できる。第3圧力媒体を介すことにより耐熱パウチ等を利用して第1圧力媒体を扱い易くなる。常圧で下85℃〜100℃の初期温度にすることで、断熱圧縮すると微生物内に圧力媒体が侵入し、圧力媒体が膨張させると、指標菌の耐熱性胞子を含めほとんどすべての微生物の細胞膜や膜組織が物理力で破壊される。
【0052】
高発熱性媒体の発熱により水以上の温度上昇が起こり、軟化した微生物の細胞膜や膜組織を高発熱性媒体が直接透過するか、または間接的に加熱された第2圧力媒体が軟化した微生物の細胞膜や膜組織を透過して、その後断熱膨張させることにより殺菌を行うことができる。フレキシブル容器内の水や調味液や被殺菌素材に含まれた含有液成分が細胞膜や膜組織を透過し、断熱膨張するので水等による破壊力が大きく、しかも食品を安全に殺菌を行うことができる。
【0053】
高発熱性媒体が、大豆油、オリーブオイル、牛脂、グリコール、グリセロールのいすれかの媒体であるから、高発熱性媒体であるとともに細胞膜や膜組織を透過可能となる。
【0054】
耐熱パウチ内に高発熱性媒体を充填するため、第1圧力媒体の取り扱いが容易になり、第3圧力媒体を利用でき、第2圧力媒体として、断熱膨張したとき破壊力の大きい主として水または調味液や肉汁などを組み合わせて利用することができる。耐熱パウチが球状パウチの場合、表面積が大きく熱伝導が効果的に行え、袋状パウチの場合は、和紙等で作成することができるため安価で圧力に対する感度が高い耐熱パウチにすることができる。
【0055】
高圧容器内に断熱材をコーティングして断熱圧縮を行うから、熱効率が高く、断熱圧縮のときの急速な上昇を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態1における断熱圧縮殺菌方法を実施できる断熱圧縮殺菌装置の構成図
【図2】(a)図1の断熱圧縮殺菌装置で使用するカプセル状の耐熱パウチの一部破砕説明図
(b)図1の断熱圧縮殺菌装置で使用する袋状の耐熱パウチの一部破砕説明図
【図3】断熱圧縮を行ったときの昇温特性の説明図
【図4】本発明の実施の形態1における断熱圧縮殺菌方法を実施できる断熱圧縮殺菌装置の構成図
【符号の説明】
1 高圧容器
1a 断熱材
2 上蓋
3 高圧室
4 フレキシブル容器
5 耐熱パウチ
5a 球状パウチ
5b 袋状パウチ
6は 籠
7 タンク
8 加圧ポンプ
8a 加圧タンク
9 電磁弁
10,10a 除圧弁
11 熱交換用蛇管
11a 加熱ヒータ
12 循環ポンプ
13 温度センサ
14 圧力センサ
15 制御部
16 発熱層
Claims (9)
- 断熱圧縮で発熱する第1圧力媒体中に直接もしくは該第1圧力媒体の熱が重畳される第2圧力媒体中に被殺菌素材を分散させ、全体を常圧下60℃〜70℃もしくはこれ以上で被殺菌素材の過剰加熱に伴う熱劣化を抑えることができる範囲の所定の初期温度に加熱し、次いで断熱圧縮を行って急速加熱することで殺菌対象微生物の菌体内に該菌体の周囲の圧力媒体を侵入させ、その後断熱膨張させて殺菌することを特徴とする断熱圧縮殺菌方法。
- 前記第1圧力媒体が、第3圧力媒体を介して間接的に前記第2圧力媒体に熱を供給することを特徴とする請求項1記載の断熱圧縮殺菌方法。
- 耐熱性芽胞菌を含む殺菌対象微生物を殺菌する請求項1または2記載の断熱圧縮殺菌方法であって、常圧下85℃〜100℃の初期温度に加熱し、次いで断熱圧縮を行って急速加熱することで指標菌である耐熱性芽胞菌の菌体内に対しても該菌体の周囲の圧力媒体を侵入させ、その後断熱膨張させて耐熱性芽胞菌を含む殺菌対象微生物を殺菌することを特徴とする断熱圧縮殺菌方法。
- 前記第1圧力媒体が、断熱圧縮したときに水の温度上昇率より大きい温度上昇率を有する高発熱性媒体であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の断熱圧縮殺菌方法。
- 前記第2圧力媒体が、フレキシブル容器内に充填された水または調味液または被殺菌素材の含有液成分であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の断熱圧縮殺菌方法。
- 前記高発熱性媒体が、大豆油、オリーブオイル、牛脂、グリコール、グリセロールのいずれかであることを特徴とする請求項4記載の断熱圧縮殺菌方法。
- 高発熱性媒体を充填した耐熱パウチが、前記第3圧力媒体中に分散されたことを特徴とする請求項2記載の断熱圧縮殺菌方法。
- 前記耐熱パウチが球状パウチまたは袋状パウチであることを特徴とする請求項7記載の断熱圧縮殺菌方法。
- 高圧容器内に断熱材を施して断熱圧縮を行う請求項1〜8のいずれかに記載の断熱圧縮殺菌方法。
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- 2002-10-07 JP JP2002293183A patent/JP2004121161A/ja active Pending
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