JP2004121026A - グリコシルトランスフェラーゼに対する抗体分子の遺伝子工学的製造法 - Google Patents

グリコシルトランスフェラーゼに対する抗体分子の遺伝子工学的製造法 Download PDF

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Abstract

【課題】グリコシルトランスフェラーゼに対する抗体分子の遺伝子工学的製造法を提供することを課題とする。
【解決手段】う蝕の原因菌であるS. mutansが産生するGTFに対する抗体の重鎖および軽鎖の可変領域をリンカーを介して連結してなる抗体分子をコードする遺伝子が、Bacillus brevis菌にて機能し得る複製領域、プローモーター領域、SD領域およびシグナル領域とともに発現可能なように配置された発現ベクターを構築し、該発現ベクターにてBacillus brevis菌を形質転換し、得られる形質転換体を培養することにより、培養液中に分泌された該抗体分子を効率良く大量に得ることができる。また、得られる抗体分子は、GTF活性、特にシュクラーゼ活性を強力に抑制することができ、う蝕の治療に有効に使用することができる。
【選択図】    なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、う蝕の原因菌であるStreptococcus mutansが産生するグリコシルトランスフェラーゼに対する抗体分子の遺伝子工学的製造法に関する。更に詳細には、Streptococcus mutansが産生するグリコシルトランスフェラーゼに対する抗体の重鎖および軽鎖の可変領域をリンカーを介して連結してなる抗体分子をコードする遺伝子が、Bacillus brevis菌にて機能し得る複製領域、プローモーター領域、SD領域およびシグナル領域とともに発現可能なように配置された発現ベクターを用い、Bacillus brevis菌を宿主として用いて、Streptococcus mutansが産生するグリコシルトランスフェラーゼに対する抗体分子を製造する遺伝子工学的製造法、該製造法に用いる発現ベクターおよび該製造法によって製造される抗体分子に関する。
【0002】
【従来の技術】
う蝕と歯周病は現代人の最も典型的な口腔疾患である。これらの疾患を予防する1つの手だてとしては、免疫を利用したものが考えられ、それらには能動および受動免疫の2つの方法が挙げられる。能動免疫は受動免疫に比べて確かに効果的ではあるものの、全く予想不可能な副作用の点を考えあわせると、医学領域とは異なり、歯科領域でワクチンを用いるということについての社会的コンセンサスが依然として得られていない現状では、後者の受動免疫システムの研究が重要視されている。
このような受動免疫システムの1つとして、歯周病の原因と考えられているPorphyromonas gingivalisのベジクルに由来する赤血球凝集活性作用を、ベジクルに対する抗体分子により抑制して歯周病を治療する試みがなされている。即ち、Porphyromonas gingivalisのベジクル画分をマウスに免疫しマウスより脾臓を摘出し、脾臓細胞とミエローマ細胞とを融合することにより、ベジクル由来の赤血球凝集活性を抑制するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを確立し、該ハイブリドーマから該モノクローナル抗体の重鎖および軽鎖の可変領域をコードする遺伝子を得、この遺伝子をBacillus brevisに導入して可変領域の重鎖および軽鎖からなる抗体分子を発現させ、この抗体分子により、歯周病を治療する試みがなされている(非特許文献1)。
他方、う蝕の原因と考えられているものとしてStreptococcus mutansが産生するグリコシルトランスフェラーゼがあり、グルコシルトランスフェラーゼはショ糖を基質としてこれを分解し、フルクトースとう蝕の直接的原因となるグルカンとを生成する酵素である。また、グルコシルトランスフェラーゼには、水に対して不溶性なグルカンと可溶性なグルカンとを生成する2種類がある。Streptococcus mutansが産生するグリコシルトランスフェラーゼ活性を受動免疫システムにより抑制してう蝕を治療する試みもなされている。即ち、例えば、Streptococcus mutans PS14株より水に不溶性のグリコシルトランスフェラーゼを得、これをマウスに免役し脾臓を摘出後、ミエローマ細胞と融合させせて該グリコシルトランスフェラーゼ活性を抑制するモノクローナル抗体を産生する陽性ハイブリドーマP136を得、このモノクローナル抗体をう蝕の治療に用いる試みもなされている(非特許文献2)。
また、Streptococcus mutans由来の水不溶性グリコシルトランスフェラーゼ活性を抑制するモノクローナル抗体の重鎖および軽鎖の可変領域をコードする遺伝子を大腸菌で発現させて、発現する抗体分子をう蝕の治療に用いる試みも提案されている(非特許文献3 Yasuko Shibata et al., (IADR abstract), J. Dental Res., 76, pp. 104, (1997))。しかしながら、大腸菌にて発現させる場合には、発現した大部分の抗体分子は不溶性の包括体として大腸菌内に存在しており、従ってこのような方法は、十分な量の抗体分子を効率的に得る方法としては、まだ改良すべき点の多い方法といえる。
【0003】
【非特許文献1】
Teruaki Shiroza et al., Biosci. Biotechnol. Biochem., 65(2), 380−395, 2001
【非特許文献2】
Kazuo Fukushima et al., Infect. Immun., 61, 323−328, 1993
【非特許文献3】
Kazuo Fukushima et al., Infect. Immun., 61, 323−328, 1993
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の課題は、う蝕の原因菌であるStreptococcus mutansが産生するグリコシルトランスフェラーゼに対する抗体分子を効率良く大量に製造することのできる遺伝子工学的製造法を提供することにある。
更に本発明の課題は、このような遺伝子工学的製方法に用いる発現ベクターを提供することにある。
更に本発明の課題は、このような遺伝子工学的製造法によって得られる抗体分子を提供することにある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、う蝕の原因菌であるStreptococcus mutansが産生するグリコシルトランスフェラーゼに対する抗体分子の遺伝子工学的製造法であって、
該グリコシルトランスフェラーゼに対する抗体の重鎖および軽鎖の可変領域をリンカーを介して連結してなる抗体分子をコードする遺伝子が、Bacillus brevis菌にて機能し得る複製領域、プローモーター領域、SD領域およびシグナル領域とともに発現可能なように配置された発現ベクターを構築し、該発現ベクターにてBacillus brevis菌を形質転換し、得られる形質転換体を培養し、次いで培養液中に分泌された該抗体分子を回収することからなることを特徴とする、
う蝕の原因菌であるStreptococcus mutansが産生するグリコシルトランスフェラーゼに対する抗体分子の遺伝子工学的製造法である。
更に本発明は、う蝕の原因菌であるStreptococcus mutansが産生するグリコシルトランスフェラーゼに対する抗体の重鎖および軽鎖の可変領域をリンカーを介して連結してなる抗体分子をコードする遺伝子、Staphylococcus aureus由来pUB110の複製領域、Bacillus subtilis由来のα−アミラーゼ遺伝子のプローモーター領域、SD領域およびシグナル領域を含む、該抗体分子を発現するための発現ベクターである。
更に本発明は、上記遺伝子工学的製造法によって製造される、う蝕の原因菌であるStreptococcus mutansが産生するグリコシルトランスフェラーゼに対する抗体分子である。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明の遺伝子工学的製造法で製造の対象とするものは、う蝕の原因菌であるStreptococcus mutansが産生するグリコシルトランスフェラーゼ(GTF)に対する抗体分子あって、該GTFに対する抗体の重鎖および軽鎖の可変領域をリンカーを介して連結してなる抗体分子である。より具体的には、重鎖および軽鎖の可変領域としては、例えば、Streptococcus mutansが産生するGTFであって、ショ糖を基質として水不溶性のグルカンを生成するGTF(GTF−I)に対するモノクローナル抗体(Kazuo Fukushima et. al., Infect. Immun., 61, 323−328, 1993)の重鎖および軽鎖の可変領域(Fv)が挙げられる。これらの重鎖および軽鎖の可変領域は、それぞれ配列表の配列番号1および2に示すアミノ酸配列を有する。あるいは重鎖および軽鎖の可変領域は、配列番号1および2のアミノ酸配列において1個もしくは数個のアミノ酸残基が欠失、置換および/または付加したアミノ酸配列を有する蛋白質であって配列番号1および2に示すアミノ酸配列からなり重鎖および軽鎖の可変領域とそれぞれ同様の機能を有する蛋白質であってもよい。ここで同様の機能を有する蛋白質とは、配列番号1および2に示すアミノ酸配列からなる重鎖および軽鎖の可変領域とそれぞれ同様の抗原結合機能を持ち、リンカーを介して連結して最終的な抗体分子とした時に同様の抗原結合機能を有する蛋白質を指す。
これらの重鎖および軽鎖の可変領域を連結するリンカーとしては、特に限定されず、重鎖と軽鎖の可変領域が一緒になって抗原結合機能を有効に発揮し得るようなペプチドであればよく、例えば、重鎖と軽鎖の可変領域が二本鎖構造を取り易いようにフレキシブルな構造のリンカーが好ましく、例えばグリシン、セリンなどのアミノ酸残基から多く構成されるものが好ましい。このようなリンカーとしては、具体的には、例えば配列番号3に示したアミノ酸配列を有するペプチドが挙げられる。
【0007】
上記した抗体分子をコードする遺伝子としては、具体的には、例えば、GTF−Iに対するモノクローナル抗体の重鎖および軽鎖のFvをそれぞれコードする配列番号1および2に示す塩基配列からなる遺伝子を、リンカーをコードする配列番号3に示す塩基配列からなる遺伝子を介して連結した、抗体分子(single chain Fv: scFv)をコードする遺伝子が挙げられる。このscFvをコードする遺伝子は、例えば、次ぎのようにして得ることができる。即ち、先ずStreptococcus mutansGTF−Iをマウスに免役し、脾臓を摘出後、ミエローマ細胞と融合させることにより、GTF−Iを認識するモノクローナル抗体を分泌する陽性ハイブリドーマを得る(Kazuo Fukushima et al., Infect. Immun. 61, 323−328, 1993)。続いて、Streptococcus mutans GTF−I活性を抑制するscFvをコードする遺伝子の調製を、市販キットマウスscFvモジュール/組換えファージ抗体システムt(ファルマシアバイオテック社製)の手順に従い行なうことができる。上記ハイブリドーマより得たmRNAからcDNAを作製し、さらにPCR、アッセンブルPCR等によりscFvをコードするDNA断片を調製する。これを該キットの付属pCANTABベクターに導入して、図2に示すscFvをコードする遺伝子を含むプラスミドpCANTAB−D3(図2のB)を構築し、このプラスミド中にscFvをコードする遺伝子D3を得ることができる。これらの方法は、Yasuko Shibata et al., Infect. Immun. 66, 2207−2212, 1998.に記載の方法が参照される。
また、上記した配列番号1および2のアミノ酸配列において1個もしくは数個のアミノ酸残基が欠失、置換および/または付加したアミノ酸配列を有する蛋白質から構成される抗体分子をコードする遺伝子は、上記のようにして得られたscFvをコードする遺伝子に対して、例えばMolecular Cloning 2nd Edt., Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)等の基本書に従い、例えば部位特異的突然変異誘発法などを適用することにより容易に得ることができる。
【0008】
本発明の遺伝子工学的製造法では、以上に説明した抗体分子をコードする遺伝子が、Bacillus brevis菌にて機能し得る複製領域、プローモーター領域、SD領域およびシグナル領域とともに発現可能なように配置された発現ベクターを構築する。ここでBacillus brevis菌にて機能し得る複製領域としては、特に限定されず、Bacillus brevis菌にて機能し得る複製領域であればいずれでもよく、例えばStaphylococcus aureus由来のpUB110の複製領域(T. McKenzie et al., Plasmid 15, 93−103, (1986))、グラム陽性細菌由来のpC194の複製領域(S. Horinouchi et al., J. Bacteriol. 150, 815−825, (1982))、グラム陽性細菌由来のpLS5の複製領域(S.A. Lacks et al., J. Mol. Biol. 192, 753−765, (1986))などが挙げられる。Bacillus brevis菌にて機能し得るプローモーター領域、SD領域およびシグナル領域としては、特に限定されず、Bacillus brevis菌にて機能し得るものであれはいずれでもよく、例えばBacillus subtilis由来のα−アミラーゼ遺伝子のプローモーター領域、SD領域およびシグナル領域(Yamazaki, H. et al., J. Bacteriol., 156, 327−337 (1983))、Alkaline Bacillus由来のアミラーゼ遺伝子もしくはプロテアーゼ遺伝子のプローモーター領域、SD領域およびシグナル領域(Akira Tsukamoto et al., Biochem. Biophys. Res.Commun., 151, 25−31, (1988))、Bacillus brevis由来の主要菌体外蛋白質遺伝子のプローモーター領域、SD領域およびシグナル領域(鵜高重三、日本農芸化学会誌、第61巻、669(1987))などが挙げられる。このような領域は、通常、上流側から、即ち5’側から複製領域、プローモーター領域、SD領域およびシグナル領域の順に配置され、シグナル領域の3’側に読み取り枠を揃えて上記した抗体分子をコードする遺伝子が配置される。このように各領域が配置されBacillus brevis菌にて抗体分子が発現可能な発現ベクターの構築は、既に周知の方法によって実施することができ、例えばMolecular Cloning 2nd Edt., Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)等の基本書に記載された方法などが例示される。
【0009】
発現ベクターとしては、具体的には、例えば図4に示す発現ベクターpYS18が挙げられる。pYS18は、複製領域としてpUB110 rep−MO断片、プローモーター領域、SD領域およびシグナル領域として、Bacillus subtilis由来のα−アミラーゼ遺伝子(amyE)のプローモーター領域、SD領域およびシグナル領域を有し、シグナル領域の3’末端側に抗体分子scFvをコードする遺伝子D3が配置されたものである。
この発現ベクターは、図4のBに示すStaphylococcus aureus由来pUB110の複製領域pUB110 rep−MO、カナマイシン耐性遺伝子Kmおよび大腸菌で複製するための複製領域p15Aを有するドナープラスミドpHD17Kと、図4のAに示すBacillus subtilis由来のα−アミラーゼ遺伝子のプローモーター領域、SD領域およびシグナル領域、抗体分子scFvをコードする遺伝子D3、エリスロマイシン耐性遺伝子Em、更に大腸菌で複製するための複製領域p15Aを有するクローニングプラスミドpYS14とを用いてヘテロダイマー法(Teruaki Shiroza et al., Biosci. Biotechnol. Biochem., 65(2), 380−395, 2001)により構築することができる。
【0010】
ヘテロダイマー法は、まず始めに、2つのドナープラスミドpHD17KおよびクローニングプラスミドpYS14を共通の制限酵素Not Iで切断し(図4のAおよびB)、直鎖としたDNA断片を脱リン酸化することなく再びリガーゼ反応に付す。このリガーゼ反応では、ほとんどの断片は単純に再び環状化されるだけであり、元のドナープラスミドあるいはクローニングプラスミドを再生する。しかしながら、ほんのわずかの分子は互いに結合して二量体を形成する。そこでこのリガーゼ反応溶液を組換え能が抑制された大腸菌、例えばJM109株に導入すると、同一複製領域(この場合にはp15A)を持つ異なったプラスミドは同じ大腸菌内には共存できない、というプラスミドの和合性・不和合性の性質から、2つのプラスミドは同一の大腸菌内に共存することはできず、一方のプラスミドは他方を排除する。その結果、再結合されたプラスミドは、エリスロマイシン耐性あるいはカナマイシン耐性のいずれかとなる。そこで、形質転換体をエリスロマシンおよびカナマイシンの両薬剤を含む寒天培地上で選抜することにより、両者が結合したヘテロダイマープラスミドpYS16(図4のC)を持つ大腸菌のみが選択的に得られることとなる。次に、構築されたヘテロダイマープラスミドを他の制限酵素Asc Iで切断し、再環状化し(図4のC)、大腸菌に形質転換し、エリスロマイシンだけを含有する寒天培地で形質転換体を選抜することにより、目的とする発現ベクターpYS18(図4のD)を得ることが可能となる。
【0011】
上記へテロダイマー法に用いたクローニングプラスミドpYS14は、図2に示すように、上記した抗体分子scFvをコードする遺伝子D3を有するプラスミドpCANTAB−D3(図2のB)から構築することができる。即ち、クローニングプラスミドであるpHD10E(図2のA)をBam HIおよびPst Iにて切断し、これに、Bacillus subtilis由来のα−アミラーゼ遺伝子の5’側領域のBam HI−Pst I断片(図2のB、1.3kb)(プロモーター領域、SD領域およびシグナル領域を含む)を導入する。次いで、抗体分子scFvをコードする遺伝子D3をpCANTAB−D3よりHind III−EcoRI断片として回収し、これをクローン化し、PCRの鋳型となるプラスミドpYS12(図2のD)を得る。次いで、抗体分子scFvをコードする遺伝子D3とα−アミラーゼ遺伝子のシグナル領域とが、正しい読み取り枠で連結するようにプライマーを設計してPCRを実施することにより、目的とするクローニングプラスミドpYS14(図2のE)が得られる。
【0012】
クローニングプラスミドpYS14を構築する際に原型プラスミドとして用いたクローニングプラスミドであるpHD10E並びに上記へテロダイマー法に用いたドナープラスミドpHD17Kは、図1のAおよびBに示した方法により構築できる。即ち、プラスミドpResKmNot10Asc(図1のA1)のマルチクローニングサイト(MCS)をBgl IIおよびBam HIにて切断し、pUB110の複製領域pUB110 rep(図1のA2)を導入する。得られるプラスミドを更にBam HIおよびBcl Iにて切断後、pUB110の複製領域のマイナスオリジン領域(MO断片、図1のA3)を導入し、ドナープラスミドpHD17Kを構築することができる。
次に、クローニングプラスミドpYS14を構築する際に原型プラスミドとして用いたクローニングプラスミドであるpHD10Eは、図1のBに示した方法により構築できる。即ち、プラスミドpResKmNotl0Asc(図1のA1)をBgl I IおよびBclIで切断し、そのままリガーゼ反応を行うことによりMCS構造だけを取り除いたプラスミドpResKmNotAsc(図1のB1)を得る。このプラスミドに両端がNot IサイトとなったMCSを導入し、中間体であるプラスミドpResKmNot10NotAsc(図1のB2)を得る。この中間体およびもう1つのプラスミドであるpResEmPvu10(図1のB3)の両者をBam HIおよびBst BIで切断し、それぞれより大断片および小断片を得て、リガーゼ反応後大腸菌に形質転換し、目的とするクローニングプラスミドであるpHD10E(図1のB4)を得ることができる。
【0013】
以上に詳細に説明した方法により、本発明の遺伝子工学的製造法において用いる、抗体分子をコードする遺伝子が、Bacillus brevis菌にて機能し得る複製領域、プローモーター領域、SD領域およびシグナル領域とともに発現可能なように配置された発現ベクターを構築することがでる。かくして構築された発現ベクターにてBacillus brevis菌を形質転換し、得られる形質転換体を培養し、次いで培養液中に分泌された抗体分子を回収することにより、本発明で目的とする抗体分子を大量に効率良く製造することができる。
宿主として用いるBacillus brevis菌としては、例えば、Bacillus brevis HPD31(FERM BP−1087)、Bacillus brevis 47(FERM P−722)、Bacillus brevis H102(FERM BP−1087)などが挙げられる。なかでも、Bacillus brevis HPD31が好ましい。Bacillus brevis菌の形質転換法としては、公知のいずれの方法でもよく、例えば、高橋らの方法(J. Bacteriol., vol.156, 1130, 1983)、高木らの方法(Agric. Biol. Chem., vol.53, 3099, 1989)、鵜高らの方法(Methods in Enzymol. vol.217, 23, 1993)などが挙げられる。得られる形質転換体の培養方法も、公知のいずれの方法でもよい。例えば、Bacillus brevis HPD31を用いた場合には、THB培地で30℃程度で数日間培養を行なう。培養後に、例えば遠心分離、濾過などの公知の方法で菌体と培養液とを分離し、培養液を、例えば塩析、ゲル濾過、イオン交換クロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィーなどの公知の精製法を組み合わせることによって、目的とする抗体分子を大量に得ることができる。
かくして得られる抗体分子は、GTF活性を強力に抑制することができる。GTFは、ショ糖を基質として、これを分解してグルコースとフルクトースとした後、グルコースを重合させてグルカンを生成する。本発明の抗体分子は、ショ糖をグルコースとフルクトースとに分解するシュクラーゼ活性を特に強力に抑制することができる。
【0014】
【実施例】
以下、本発明を、実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例によって何ら限定されるものではない。
実施例1
抗体分子 scFv をコードする遺伝子の構築
Kazuo Fukushima et al., Infect. Immun. 61, 323−328, (1993)に記載の方法に従い、S. mutans由来のGTF−I活性を抑制するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを作成した。
先ずS. mutans PS14株(Kazuo Fukushima et al., Infect. Immun. 61, 323−328,(1993)より精製GTF−Iタンパクを得、これを実験動物であるマウスに免役し、脾臓を摘出後、ミエローマ細胞と融合させることにより不死化細胞株を作製した。次に、ELISAおよび限界希釈などの方法により、抗原として用いたGTF−Iタンパクを認識するモノクローナル抗体を分泌する株をスクリーニングし、陽性ハイブリドーマP136(Kazuo Fukushima et al., Infect. Immun. 61, 323−328, (1993))を得た。本ハイブリドーマからは、S. mutans由来のGTF−I活性を抑制するモノクローナル抗体が分泌生産される。
続いて、Yasuko Shibata et al., Infect. Immun. 66, 2207−2212, 1998に記載の方法に従って、S. mutans GTF−I活性を抑制するscFvをコードする遺伝子の調製を、市販キットマウスscFvモジュール/組換えファージ抗体システム(ファルマシアバイオテック社製)の手順に従い実施した。本ハイブリドーマから、酸グアニジニウムチオシアネート−フェノール−クロロホルム抽出法により全mRNAを抽出した。全mRNAを逆転写反応のテンプレートとして用いた。プライム化ファーストストランド反応混合物を用いてファーストストランドcDNAを合成した。モノクローナル抗体の重鎖および軽鎖のそれぞれの可変領域をコードするcDNAを、マウスScFvモジュール/組換えファージ抗体システム(ファルマシアバイオテック社製)に含まれているプライマー一式を用いて、PCRにより増幅した。増幅したDNAをアガロースゲル電気泳動により精製して、プライマーを除いた。精製されたDNAの塩基配列を公知のジデオキシ法により決定し、モノクローナル抗体の重鎖および軽鎖のそれぞれの可変領域は、配列表の配列番号1および2にそれぞれ示す塩基配列からなることが明らかになった。
重鎖および軽鎖の可変領域をコードするcDNAを、配列番号3に示すリンカーペプチドをコードするDNAリンカーフラグメントを用いてアッセンブルPCRにより、正しい読み取り枠になるように連結して、scFvをコードするDNA断片を調製した。これを付属pCANTABベクターに導入して、scFvをコードするプラスミドpCANTAB−D3(図2のB)を構築した。pCANTAB−D3よりコードされるscFvタンパクは、ファージM13のコートタンパクのリーダ配列と融合した型となっている。また、pCANTAB−D3は、ペプチドtag(E tag)をコードする遺伝子を含んでおり、これを利用してscFvタンパクの同定を抗E−tag抗体によるウエスタンブロットにより行なうことができる。
【0015】
実施例2
抗体分子 scFv の発現ベクター pTS18 のヘテロダイマー法による構築
(1)ドナープラスミド pHD17K の構築
ヘテロダイマー法のためのプラスミドの構築を行なった。ドナープラスミドを構築するために、原型となるプラスミドpResKmNot10Asc(図1のA1)のマルチクローニングサイト(MCS)をBgl IIおよびBam HIにて切断し、pUB110の複製領域pUB110 rep(図1のA2)を導入した。得られたプラスミドを更にBam HIおよびBcl Iにて切断後、pUB110のマイナスオリジン領域(MO断片、図1のA3)を導入し、ドナープラスミドpHD17K(図1のA5、3.6kb)を構築した。なお、原型となるプラスミドpResKmNot10Ascは、Teruaki Shiroza et al., Infect. Immun. 61, 3745−3755, (1993)に記載された、Km903、p15AoriおよびMCSとを結合し、さらに市販AscIリンカーを導入することにより構築した。
(2)クローニングプラスミド pHD10E の構築
次に一般的なクローニングプラスミドの構築のため、原型となるプラスミドpResKmNot10Asc(図1のA1)をBgl IIおよびBcl Iで切断し、そのままリガーゼ反応を行うことによりMCS構造だけを取り除いたプラスミドpResKmNotAsc(図1のB1)を得た。このプラスミドに両端がNott IサイトとなったMCSを導入し、中間体であるプラスミドpResKmNot10NotAsc(図1のB2)を得た。この中間体およびもう1つの原型プラスミドであるpResEmPvu10(図1のB3)の両者をBamHIおよびBst BIで切断し、それぞれより大断片および小断片を電気泳動にて精製し、リガーゼ反応後大腸菌に形質転換した。その結果、一般的なクローニングプラスミドであるpHD10E(図1の4、1.6kb)を得た。なお、中間体であるプラスミドpResKmNot10NotAscは、上記した原型となるプラスミドプラスミドpResKmNot10Ascに市販AscIリンカーを導入することにより構築した。また、中間体であるプラスミドpResEmPvu10は、Teruaki Shiroza et al., Infect. Immun. 61, 3745−3755, (1993)に記載された、Em、p15AoriおよびMCSとを結合することにより構築した。
【0016】
(3)プラスミド pYS14 の構築
クローニングプラスミドであるpHD10E(図2のA)をBam HIおよびPst Iにて切断し、これに、電気泳動により精製したα−アミラーゼ遺伝子の5’側領域のプロモーター領域、SD領域およびシグナル領域を含むBam HI−Pst I断片(図2のC、1.3kb)を導入した。つづいて、scFvタンパクをコードする遺伝子D3を実施例1で構築したpCANTAB−D3(図2のB)より2.0kbのHind III−Eco RI断片として電気泳動にて回収し、数段の操作によりこれをクローン化し、PCRの鋳型となるプラスミドpYS12(図2のD)を得た。
(4)α−アミラーゼ遺伝子のシグナル領域と scFv タンパクをコードする遺伝子 D3 との読み取り枠を合わせた融合
図3のAに示したように、α−アミラーゼ遺伝子のシグナルペプチドの長さは33アミノ酸残基と考えられており、一方、図3のBに示したように、pCANTAB−D3においてコードされるscFvタンパクは、ファージM13のコートタンパクのリーダ配列と融合した型となっている。
そこで、α−アミラーゼ遺伝子(amyE)の分泌を司るシグナル領域とscFvタンパクをコードする構造遺伝子領域とを読み取り枠を合わせた形態(in−frame)で融合するために、以下の2本のPCRプライマーをデザインした。
【0017】
amyEシグナル領域に対して     5’−GGCACTCGCAGCCGCCGGTCC−3’
構造遺伝子D3領域に対して     5’−ATGGCCCAGGTCCAGCTGCAG−3’
図2のDに示したプラスミドpYS12を鋳型とし、パーキンエルマー9600を用いてPCRを行った。それぞれのプライマーは図3のAおよびBの点線で示した領域に結合する。標的領域の増幅には市販宝酒造のPCRキットを用い、以下の条件を採用した。
1)初期変性;94℃、3分。
2)30サイクルの増幅:変性−94℃、1分;プライマーアニーリング−55℃、2分;伸長−72℃、3分。
3)終了時の伸長;72℃、10分。
なお、α−アミラーゼ遺伝子側のプライマーの5’末端には、コードされるアミノ酸には影響を与えない、TをCとしたミスマッチを一カ所導入した。その結果、PCR産物をリガーゼ反応後、大腸菌に形質転換して得られる、設計通り作られたプラスミドには新規にNco Iサイトが導入される(図3のC)。このような工夫により効率よく形質転換体をスクリーニングし、pYS14(E、4.4kb)を得た。塩基配列を確認することにより、本プラスミドは設計通り、両遺伝子が正しくin−frameで融合されており、プロモーター領域、SD領域およびシグナル領域が正しく機能し得るように導入されていることが確認された。
【0018】
(5)ヘテロダイマー法による発現ベクター pYS18 の構築
図4に示したように、ヘテロダイマー法によりキメラプラスミドを構築した。少量のクローニングプラスミドpYS14(図4のA)およびドナープラスミドpHD17K(図4のB)をエッペンドルフチューブに混ぜ、8塩基認識制限酵素であるNot Iにて切断(太い矢印)し、リガーゼ反応後、大腸菌JM109に形質転換した。形質転換体をエリスロマイシンおよびカナマイシンの両薬剤を含む寒天培地上で選抜し、ヘテロダイマープラスミドpYS16(図4のC、7.9kb)を得た。次に本プラスミドをもう1つの8塩基認識制限酵素であるAsc Iにて切断、さらに再結合後、大腸菌JM109に形質転換した。形質転換体をエリスロマイシンのみを含有する寒天培地にて選抜することにより、プロモーター領域、SD領域、シグナル領域およびscFvをコードする遺伝子をscFvが発現可能なように含むキメラなシャトルプラスミドである、pYS18(図4のD、5.9kb)を得た。
【0019】
実施例3
Bacillus brevis 菌による抗体分子 scFv の産生および精製
実施例2で得られた発現ベクターであるキメラシャトルプラスミドpYS18をBacillus brevis HPD31株に形質転換することにより、エリスロマイシン耐性の形質転換体を得た。Bacillus brevis形質転換体は50mg/literのエリスロマイシンを含む、Difco社製Todd Hewitt Broth(THB)にて培養した。全ての精製操作は4℃にて行った。scFvタンパクの同定は抗E−tag抗体によるウエスタンブロットに依った。
Bacillus brevis形質転換体を2リットルのTHB培地に接種し、30℃3日間激しい撹拌を行いながら培養後、遠心により菌体を除いた。
得られた上澄に対し等量の冷エタノールを加え、生じた不溶性物質を遠心により得た。これを200mlのバッファーA(10mM Tris−HCl、pH 8.0、6M尿素)に懸濁し、5リットルの10mM Tris−HCl(pH8.0)に対して透析を行った。透析終了後、予めバッファーAにて平衡化しておいたQ Sepharoseカラム(2.5×25cm)に通した。カラムをバッファーAにて十分洗浄後、吸着タンパクを食塩の濃度勾配(0から0.5M)を含むバッファーAにて溶出した。抗E−tag抗体による陽性画分を集め、最終濃度が30%飽和となるように結晶硫安を加えた。このタンパク溶液を予め30%飽和硫安を含むバッファーAにて平衡化しておいたブチルトヨバールによる疎水クロマト(0.5×10cm)に付した。吸着タンパクは30から0%飽和硫安のグラジエントにより溶出し、抗E−tag抗体による陽性画分を集めた。本カラム操作を繰り返すことにより、他タンパクの混在しない画分を得、これを10mM Tris−HCl(pH8.0)に対して透析を行ない、抗体分子scFvの精製標品を得た。Bacillus brevis形質転換体のTHB培養液2リットルから1mgの精製標品を得た。
最終精製標品のSDS−PAGEおよびウエスタンブロットにより、他のタンパク質の混在の無いことが確認された(図5のA、B、レーン3参照)。
【0020】
実施例4
抗体分子 scFv の性質
実施例3で得られた精製scFv標品を用いてGTF−I活性の抑制活性を定性的アッセイ法および定量的アッセイ法により測定した。
(1)アッセイ法に用いる GTF−I の調製
GTF−Iの精製はKuwahara等の方法(Biosci. Biotechnol. Biochem., 65, 1290−1295, 2001.)に準じ、以下の様に行った。全ての精製操作は4℃にて行った。GTF−Iを精製するための菌株は、S. mutans GS5株由来gtfB遺伝子が導入されたS. anginosus形質転換体KSB8株を使用した(Infect. Immun. 60, 2815−2822, 1993.参照)。本菌株を100mlのTHB培地に接種、37℃、20時間、嫌気培養を行った。遠心により菌体を除き、得られた上澄に対し等量の−80℃冷エタノールを加え一夜置いた。生じた不溶性物質を遠心により得、これをバッファーA(10mM Tris−HCl、pH8.0)に溶解し、同一バッファーで24時間透析を行った。不溶物を遠心により取り除き、上澄に最終濃度が0.2%となるようにTriton X−100を加え、予め0.2% Triton X−100を含むバッファーAで平衡化したDEAE−Bio−Gelカラム(1×50cm)に付した。カラムを十分洗浄後、吸着タンパクを食塩の濃度勾配(0から0.5M)を含むバッファーAにて溶出した。SDS−PAGEによる活性染色などによりGTF−I活性を有するフラクションを得、同一樹脂による再クロマト(0.5×25cm)をTriton X−100無しで行うことにより、精製GTF−I標品を得た。
【0021】
(2)抗体分子 scFv GTF−I に対する抑制活性の定性的アッセイ法および定量的アッセイ法
抗体分子scFvによるGTF−I活性の抑制を定性的アッセイ法および定量的アッセイ法により測定した。
定性的アッセイ法の概略は以下の様である。0.1ユニットの精製GTF−Iを含む100mMリン酸バッファー(pH6.0)溶液に様々な量の精製scFv(2μg、4μg、8μg、16μg)を加え容量を300μlとし、37℃、1時間置く。これに最終濃度が50mMとなるショ糖を加え、最終容量を500μlとして37℃、一夜置き、生成した不溶性グルカンを観察する。
定量的アッセイ法は、Eto等の方法(J. Biol. Chem, 274, 15797−15802, 1999.)に準じてRoche Molecular Biochemicals社製のF−キットを使用して以下の様に行った。10ミリユニットの精製GTF−Iを含む100mMリン酸バッファー(pH6.0)溶液に4μgの精製scFvを加え、容量を200μlとする。これを25℃、1時間置いた後、最終濃度が2.0、4.0、8.0および1.0mMとなる様なショ糖溶液を加え、最終容量を400μlとして37℃、1時間反応させた。F−キットによる定量は、最終容量を1.5mlとする、説明書の1/2スケールで行うこととした。上記反応溶液の50μlを取り、始めにATP等を加え、ブランクとしての吸光度340nmを読み(E0)、続いてヘキソキナーゼおよびグルコース6−リン酸脱水素酵素を加え、10分後に340nmの値を読み取った(E1)。続いてイソメラーゼを加え、さらに10分後の340nmの値を読み取った(E2)。E1−E0が反応溶液中のグルコース量に、また、E2−(E1+E0)がフルクトース量になる。そして、フルクトース量からグルコース量を引いたものがグルカン量となる。ここで、ブランクの値E0は実質的にゼロとみなして差し支えないので、E1をグルコース量に、また、E2−E1をフルクトース量とすることができる。
精製scFv標品を用いてGTF−I活性の抑制を定性的アッセイ法により測定した結果を図6に、定量的アッセイ法により測定した結果を図7に示した。図6および7に示すように、いずれの場合も、精製scFvはGTF−I活性を抑制することが明らかとなった。図7に示す反応条件では、10ミリユニットのGTF−I酵素のシュークラーゼ活性により生成したグルコースのグルカンへの取り込み率は約70%であり、4μgのscFv添加によりその率が50%前後に抑制されることが明らかとなった。
【0022】
【発明の効果】
以上に詳細に説明した通り、う蝕の原因菌であるS. mutansが産生するGFTに対する抗体の重鎖および軽鎖の可変領域をリンカーを介して連結してなる抗体分子をコードする遺伝子が、Bacillus brevis菌にて機能し得る複製領域、プローモーター領域、SD領域およびシグナル領域とともに発現可能なように配置された発現ベクターを構築し、該発現ベクターにてBacillus brevis菌を形質転換し、得られる形質転換体を培養することにより、培養液中に分泌された該抗体分子を効率良く大量に得ることができる。また、得られる抗体分子は、GTF活性、特にシュクラーゼ活性を強力に抑制することができ、う蝕の治療に有効に使用することができる。
【0023】
【配列表】
Figure 2004121026
Figure 2004121026
Figure 2004121026

【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、ドナープラスミドpHD17KおよびクローニングプラスミドpHD10Eの構築を示す。
【図2】図2は、クローニングプラスミドpYS14の構築を示す。
【図3】図3は、α−アミラーゼ遺伝子のシグナル領域と抗体分子scFvをコードする遺伝子とのin−frame融合を達成するためのデザインを示す。
【図4】図4は、ヘテロダイマー法による発現ベクターpYS18の構築を示す。
【図5】図5は、本発明の製造法により得られた抗体分子scFvの電気泳動による分析結果を示す。
【図6】図6は、本発明の製造法により得られた抗体分子scFvのGTF−I活性に対する抑制効果を定性的アッセイ法によるアッセイ結果を示す。
【図7】図7は、本発明の製造法により得られた抗体分子scFvのGTF−I活性に対する抑制効果を定量的アッセイ法によるアッセイ結果を示す。

Claims (6)

  1. う蝕の原因菌であるStreptococcus mutansが産生するグリコシルトランスフェラーゼに対する抗体分子の遺伝子工学的製造法であって、
    該グリコシルトランスフェラーゼに対する抗体の重鎖および軽鎖の可変領域をリンカーを介して連結してなる抗体分子をコードする遺伝子が、Bacillus brevis菌にて機能し得る複製領域、プローモーター領域、SD領域およびシグナル領域とともに発現可能なように配置された発現ベクターを構築し、該発現ベクターにてBacillus brevis菌を形質転換し、得られる形質転換体を培養し、次いで培養液中に分泌された該抗体分子を回収することからなることを特徴とする、
    う蝕の原因菌であるStreptococcus mutansが産生するグリコシルトランスフェラーゼに対する抗体分子の遺伝子工学的製造法。
  2. 抗体分子をコードする遺伝子が、配列表の配列番号1および2のそれぞれのアミノ酸配列からなる、グリコシルトランスフェラーゼに対する抗体の重鎖および軽鎖の可変領域をそれぞれコードする遺伝子、または配列番号1および2のアミノ酸配列において1個もしくは数個のアミノ酸残基が欠失、置換および/または付加したアミノ酸配列を有する蛋白質であって配列番号1および2に示すアミノ酸配列からなる重鎖および軽鎖の可変領域のそれぞれと同様の機能を有する蛋白質をそれぞれコードする遺伝子を、リンカーをコードする遺伝子を介して連結したものである請求項1の遺伝子工学的製造法。
  3. Bacillus brevis菌にて機能し得る複製領域が、Staphylococcus aureus由来pUB110の複製領域であり、プローモーター領域、SD領域およびシグナル領域が、Bacillus subtilis由来のα−アミラーゼ遺伝子のプローモーター領域、SD領域およびシグナル領域である請求項1または2の遺伝子工学的製造法。
  4. 発現ベクターを、Staphylococcus aureus由来pUB110の複製領域を有するドナープラスミドと、Bacillus subtilis由来のα−アミラーゼ遺伝子のプローモーター領域、SD領域およびシグナル領域並びに抗体分子をコードする遺伝子を有するクローニングプラスミドとを用いてヘテロダイマー法により構築する請求項1から3のいずれかに記載の遺伝子工学的製造法。
  5. う蝕の原因菌であるStreptococcus mutansが産生するグリコシルトランスフェラーゼに対する抗体の重鎖および軽鎖の可変領域をリンカーを介して連結してなる抗体分子をコードする遺伝子、Staphylococcus aureus由来pUB110の複製領域、Bacillus subtilis由来のα−アミラーゼ遺伝子のプローモーター領域、SD領域およびシグナル領域を含む、該抗体分子を発現するための発現ベクター。
  6. 請求項1から4のいずれかの遺伝子工学的製造法によって製造される、う蝕の原因菌であるStreptococcus mutansが産生するグリコシルトランスフェラーゼに対する抗体分子。
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