JP2004119328A - アルカリ一次電池 - Google Patents
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Abstract
【課題】高温貯蔵後の重負荷放電においても良好な放電特性を示す貯蔵特性が優れたアルカリ一次電池を提供する。
【解決手段】正極活物質としてオキシ水酸化ニッケルを含む正極1、負極活物質として亜鉛を含むゲル状負極4、アルカリ電解液およびセパレータを有するアルカリ一次電池において、前記ゲル状負極にイッテルビウム化合物またはエルビウム化合物を添加することによって、アルカリ一次電池を構成する。前記イッテルビウム化合物またはエルビウム化合物の添加量としては、亜鉛に対して金属元素換算で0.004〜3.5質量%であることが好ましい。
【選択図】 図1
【解決手段】正極活物質としてオキシ水酸化ニッケルを含む正極1、負極活物質として亜鉛を含むゲル状負極4、アルカリ電解液およびセパレータを有するアルカリ一次電池において、前記ゲル状負極にイッテルビウム化合物またはエルビウム化合物を添加することによって、アルカリ一次電池を構成する。前記イッテルビウム化合物またはエルビウム化合物の添加量としては、亜鉛に対して金属元素換算で0.004〜3.5質量%であることが好ましい。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、アルカリ一次電池に関し、さらに詳しくは、正極活物質としてオキシ水酸化ニッケルを含み、負極活物質として亜鉛を含むアルカリ一次電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、高出力用途を目的として、オキシ水酸化ニッケルを正極活物質として用いたアルカリ一次電池が開発されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】
特開2000−48827号公報(第2頁)
【0004】
しかしながら、オキシ水酸化ニッケルは自己分解を起こしやすく、その自己分解によって酸素が発生して電池特性を低下させるため、二酸化マンガンを正極活物質として用いた二酸化マンガン系のアルカリ一次電池に比べて、貯蔵特性が劣るという問題があった。
【0005】
このオキシ水酸化ニッケルの自己分解は、高温貯蔵時には特に顕著になり、電池の放電特性を大きく低下させることとなった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記のようなオキシ水酸化ニッケルを正極活物質として用いるアルカリ一次電池の問題点を解決し、高温貯蔵後の重負荷放電においても良好な放電特性を示す貯蔵特性が優れたアルカリ一次電池を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、正極活物質としてオキシ水酸化ニッケルを含む正極、負極活物質として亜鉛を含むゲル状負極、アルカリ電解液およびセパレータを有するアルカリ一次電池において、前記ゲル状負極にイッテルビウム化合物またはエルビウム化合物を添加することによって、前記課題を解決したものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明においては、正極活物質としてオキシ水酸化ニッケルを含み、負極活物質として亜鉛を含むアルカリ一次電池において、前記のように、ゲル状負極にイッテルビウム化合物またはエルビウム化合物を添加するが、それらの添加によって、高温貯蔵後の重負荷放電においても良好な放電特性が得られるほどに貯蔵特性が向上する理由は、現在のところ必ずしも明確ではないが、酸化イッテルビウムを例に挙げて説明すると、次のように考えられる。
【0009】
オキシ水酸化ニッケルはアルカリ水溶液中において不安定で自己分解しやすく、自己分解する際に、酸素ガスを発生する。電池を高温で貯蔵すると、発生する酸素ガスは室温貯蔵時よりも増加する。この酸素ガスが負極の亜鉛粉末を酸化し、高温貯蔵後の重負荷放電特性を低下させる。すなわち、酸素ガスにより亜鉛粉末が酸化され、金属の亜鉛粉末の表面に非導電性の酸化亜鉛皮膜が形成されるため、放電性能が著しく低下する。さらに、オキシ水酸化ニッケルは二酸化マンガンに比べて酸化力が強いため、より強力な酸化剤としても作用し、前記の酸素ガスによる亜鉛の酸化反応を促進する。このように、高温貯蔵後の放電においては、形成された酸化亜鉛皮膜が亜鉛の放電反応を阻害し、特に重負荷放電では著しく悪影響を及ぼし、放電特性を低下させる。
【0010】
しかし、ゲル状負極に酸化イッテルビウムを添加すると、酸化イッテルビウムがアルカリ電解液にわずかに溶解し、そのわずかに溶解した酸化イッテルビウムが亜鉛粉末の表面に存在して、オキシ水酸化ニッケルから発生する酸素ガスと亜鉛との反応を緩和させる。
【0011】
その結果、亜鉛粉末の表面への酸化被膜の形成が抑制され、高温貯蔵後においても優れた重負荷特性を示すようになるのである。このような高温貯蔵後の重負荷特性の低下を抑制する効果は、酸化イッテルビウムだけに限られることなく、例えば、ヨウ化イッテルビウム、塩化イッテルビウム、臭化イッテルビウム、水酸化イッテルビウムなど、酸化イッテルビウム以外のイッテルビウム化合物によっても得られるし、また、酸化エルビウムをはじめ、例えば、ヨウ化エルビウム、塩化エルビウム、臭化エルビウム、水酸化エルビウムなどのエルビウム化合物によっても得られる。
【0012】
ただし、イッテルビウム化合物またはエルビウム化合物の添加量が多くなると、活物質の放電反応を阻害するおそれがあるため、イッテルビウム化合物またはエルビウム化合物の添加量は、亜鉛に対してイッテルビウム化合物またはエルビウム化合物がそれぞれの金属(すなわち、イッテルビウムまたはエルビウム)換算で0.004質量%(亜鉛100質量部に対してそれぞれの金属換算で0.004質量部)以上が好ましく、0.022質量%以上がより好ましく、また3.5質量%以下が好ましく、2.2質量%以下がより好ましい。すなわち、イッテルビウム化合物またはエルビウム化合物の含有量を亜鉛に対してそれぞれの金属換算で0.004質量%以上にすることによって、酸化防止効果を充分に発現させ、3.5質量%以下にすることによって、活物質の放電反応の阻害を抑制する。
【0013】
前記イットリウム化合物とエルビウム化合物は併用することができ、併用する場合のゲル状負極中での添加量は両者の合計で前記範囲にすればよい。
【0014】
本発明において、正極は、オキシ水酸化ニッケルを正極活物質として含むものであれば特に特定のものに限られることはないが、通常、オキシ水酸化ニッケルを含む正極活物質に、例えば黒鉛などの導電助剤と例えばポリテトラフルオロエチレンなどのバインダーとを加えて乾式混合した後、さらにアルカリ水溶液を加えて湿式混合して、アルカリ水溶液を含んだ状態で正極合剤を調製し、そのアルカリ水溶液を含む正極合剤を加圧成形するか、あるいは前記正極活物質と導電助剤とバインダーとを混合してアルカリ水溶液を含まない正極合剤を調製し、そのアルカリ水溶液を含まない加圧成形したものが用いられる。ただし、正極の作製方法は、上記例示の方法に限られることなく、他の方法によってもよい。
【0015】
本発明においては、ゲル状負極にイッテルビウム化合物またはエルビウム化合物を添加するが、そのイッテルビウム化合物またはエルビウム化合物を添加することを除けば、ゲル状負極は従来構成のものでもよく、例えば、負極活物質としての亜鉛と、アルカリ水溶液からなるアルカリ電解液と、ゲル化剤とを混合することによって調製される。そして、イッテルビウム化合物またはエルビウム化合物のゲル状負極への添加は、前記のように、亜鉛とアルカリ電解液とゲル化剤との混合によって調製した通常構成のゲル状負極にイッテルビウム化合物またはエルビウム化合物を添加してもよいし、また、ゲル状負極の調製時にイッテルビウム化合物またはエルビウム化合物を添加して、イッテルビウム化合物またはエルビウム化合物が添加された状態でゲル状負極を調製してもよい。
【0016】
また、アルカリ電解液やセパレータは、従来構成のものを用いることができ、例えば、アルカリ電解液としては、例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウムなどのアルカリ金属の水酸化物の水溶液を用いることができ、セパレータとしては、例えば、ビニロンとレーヨンを主体とする不織布、ビニヨン・レーヨン不織布、ポリアミド不織布、ポリオレフィン・レーヨン不織布、ビニロン紙、ビニロン・リンターパルプ紙、ビニロン・マーセル化パルプ紙などを用いることができる。
【0017】
【実施例】
つぎに、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明はそれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、以下の実施例などにおいて、溶液などの濃度を示す%やイッテルビウム化合物またはエルビウム化合物の添加量を示す%はいずれも質量基準によるものである。
【0018】
実施例1
オキシ水酸化ニッケル100質量部に黒鉛8質量部およびポリテトラフルオロエチレン0.5質量部を加えた後、攪拌機で乾式混合し、得られた混合物に水酸化カリウムを56%含みかつ酸化亜鉛を2.9%含む混合アルカリ水溶液6質量部を加えて湿式混合し、得られた混合物をプレス・粉砕を経た後、造粒して顆粒状正極合剤を得た。この顆粒状正極合剤を金型に充填して加圧することにより円筒状に成形して正極を作製した。得られた円筒状正極を単3形の電池缶内に挿入した後、ビニロンとレーヨンを主体とする不織布からなる公知のアルカリ一次電池用セパレータを筒形に巻いて前記の円筒状正極の内周面に接触するように収納した後、アルカリ電解液として水酸化カリウムを30%含みかつ酸化亜鉛を2%含むアルカリ水溶液をセパレータの繊維の隙間に完全に染み渡るように注入した。
【0019】
ゲル状負極は以下に示すように作製した。前記の水酸化カリウムを30%含みかつ酸化亜鉛を2%含むアルカリ電解液47.2質量部にポリアクリル酸ナトリウム0.57質量部とポリアクリル酸0.35質量部を加え、一晩放置してゲル状にした。このようにして得られたゲル状アルカリ電解液をよく混合し、その中にガスアトマイズ法で作製した35メッシュから200メッシュの粒度分布を持つ亜鉛粉末100質量部と酸化イッテルビウム1質量部(亜鉛に対してイッテルビウムとして0.879%)を添加し、さらによく混合してゲル状負極を得た。このようにして得られたゲル状負極を脱泡した後、上記円筒状セパレータの内周側の空間内に充填し、以後、常法に準じて封口を行い、図1に示す構造で単3形のアルカリ一次電池を作製した。
【0020】
ここで、図1に示す電池について説明すると、前記の正極1は端子付きの正極缶2内に収納されており、この正極缶2内の正極1の内周側にはセパレータ3を介して前記の構成からなるゲル状負極4が充填されている。そして、5は負極集電体、6は封口体、7は金属ワッシャー、8は樹脂ワッシャー、9は絶縁キャップ、10は負極端子板、11は樹脂外装体であるが、負極集電体5以降のものは、いずれも公知の構成からなるものである。
【0021】
実施例2
ゲル状負極として、酸化イッテルビウム3.5質量部(亜鉛に対してイッテルビウムとして3.08%)含有させたものを用いた以外は、実施例1と同様に単3形のアルカリ一次電池を作製した。
【0022】
実施例3
ゲル状負極として、酸化イッテルビウムに代えて酸化エルビウムを1.5質量部(亜鉛に対してエルビウムとして1.31%)含有させた以外は、実施例1と同様に単3形のアルカリ一次電池を作製した。
【0023】
比較例1
ゲル状負極として、酸化イッテルビウムを添加しなかったものを用いた以外は、実施例1と同様に単3形のアルカリ一次電池を作製した。
【0024】
上記実施例1〜3の電池および比較例1の電池の各10個ずつに対して、1分間隔で1Aのパルス電流を10秒間流すパルス放電試験を行い、1Aのパルス電流が流れた時点の電圧が1.0V以下に低下するまでに要するパルス放電の回数を調べ、10個の平均値を求めて、パルス放電特性を評価した。また、前記とは別に、実施例1〜3の電池および比較例1の電池を各20個ずつ準備し、まず、そのうちの10個ずつの電池を1Aの放電電流で放電させて0.9V以下になるまでの放電時間を測定し、その平均時間を貯蔵前の放電時間とし、次に、残りの10個ずつの電池を60℃の恒温槽中に20日間貯蔵し、取り出してから1日室温で冷却後、同じく1Aの放電電流で放電させて0.9V以下になるまでの放電時間を測定し、その平均時間を貯蔵後の放電時間とし、貯蔵前の放電時間に対する貯蔵後の放電時間の割合を容量保持率として求め、高温での電池の貯蔵特性を評価した。その結果を表1に示す。ただし、表1への表示にあたっては、比較例1の電池のパルス放電の回数および容量保持率をそれぞれ100とした時の指数で示す。すなわち、実施例1〜3の電池のパルス放電の回数および容量保持率を比較例1の電池のパルス放電の回数および容量保持率を100とした時の指数で示す。また、表1にはゲル状負極に添加したイッテルビウム化合物またはエルビウム化合物の種類をその化学式で示すとともに、そのゲル状負極への添加量を示す。ただし、添加量は亜鉛に対する金属換算の量で示す。
【0025】
【表1】
【0026】
表1に示す結果から明らかなように、酸化イッテルビウムや酸化エルビウムを添加したゲル状負極を用いた実施例1〜3の電池は、それらを添加していない比較例1の電池と同等のパルス放電回数を有し、かつ、比較例1の電池に比べて貯蔵後の容量保持率が高く貯蔵特性が優れていた。
【0027】
すなわち、本発明の実施例1〜3の電池は、イッテルビウム化合物やエルビウム化合物を添加していない比較例1の電池と同等のパルス放電回数を有していることから、イッテルビウム化合物やエルビウム化合物の添加による放電特性の低下がなく、また、比較例1の電池に比べて、60℃という高温で20日間貯蔵後の1Aという重負荷放電での容量保持率が高く、高温貯蔵後の重負荷放電でも良好な放電特性を示し、貯蔵特性が優れていた。
【0028】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、高温貯蔵後の重負荷放電においても良好な放電特性を示す貯蔵特性が優れたアルカリ一次電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るアルカリ一次電池の一例を模式的に示す部分縦断面図である。
【符号の説明】
1 正極
4 ゲル状負極
【発明の属する技術分野】
本発明は、アルカリ一次電池に関し、さらに詳しくは、正極活物質としてオキシ水酸化ニッケルを含み、負極活物質として亜鉛を含むアルカリ一次電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、高出力用途を目的として、オキシ水酸化ニッケルを正極活物質として用いたアルカリ一次電池が開発されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】
特開2000−48827号公報(第2頁)
【0004】
しかしながら、オキシ水酸化ニッケルは自己分解を起こしやすく、その自己分解によって酸素が発生して電池特性を低下させるため、二酸化マンガンを正極活物質として用いた二酸化マンガン系のアルカリ一次電池に比べて、貯蔵特性が劣るという問題があった。
【0005】
このオキシ水酸化ニッケルの自己分解は、高温貯蔵時には特に顕著になり、電池の放電特性を大きく低下させることとなった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記のようなオキシ水酸化ニッケルを正極活物質として用いるアルカリ一次電池の問題点を解決し、高温貯蔵後の重負荷放電においても良好な放電特性を示す貯蔵特性が優れたアルカリ一次電池を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、正極活物質としてオキシ水酸化ニッケルを含む正極、負極活物質として亜鉛を含むゲル状負極、アルカリ電解液およびセパレータを有するアルカリ一次電池において、前記ゲル状負極にイッテルビウム化合物またはエルビウム化合物を添加することによって、前記課題を解決したものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明においては、正極活物質としてオキシ水酸化ニッケルを含み、負極活物質として亜鉛を含むアルカリ一次電池において、前記のように、ゲル状負極にイッテルビウム化合物またはエルビウム化合物を添加するが、それらの添加によって、高温貯蔵後の重負荷放電においても良好な放電特性が得られるほどに貯蔵特性が向上する理由は、現在のところ必ずしも明確ではないが、酸化イッテルビウムを例に挙げて説明すると、次のように考えられる。
【0009】
オキシ水酸化ニッケルはアルカリ水溶液中において不安定で自己分解しやすく、自己分解する際に、酸素ガスを発生する。電池を高温で貯蔵すると、発生する酸素ガスは室温貯蔵時よりも増加する。この酸素ガスが負極の亜鉛粉末を酸化し、高温貯蔵後の重負荷放電特性を低下させる。すなわち、酸素ガスにより亜鉛粉末が酸化され、金属の亜鉛粉末の表面に非導電性の酸化亜鉛皮膜が形成されるため、放電性能が著しく低下する。さらに、オキシ水酸化ニッケルは二酸化マンガンに比べて酸化力が強いため、より強力な酸化剤としても作用し、前記の酸素ガスによる亜鉛の酸化反応を促進する。このように、高温貯蔵後の放電においては、形成された酸化亜鉛皮膜が亜鉛の放電反応を阻害し、特に重負荷放電では著しく悪影響を及ぼし、放電特性を低下させる。
【0010】
しかし、ゲル状負極に酸化イッテルビウムを添加すると、酸化イッテルビウムがアルカリ電解液にわずかに溶解し、そのわずかに溶解した酸化イッテルビウムが亜鉛粉末の表面に存在して、オキシ水酸化ニッケルから発生する酸素ガスと亜鉛との反応を緩和させる。
【0011】
その結果、亜鉛粉末の表面への酸化被膜の形成が抑制され、高温貯蔵後においても優れた重負荷特性を示すようになるのである。このような高温貯蔵後の重負荷特性の低下を抑制する効果は、酸化イッテルビウムだけに限られることなく、例えば、ヨウ化イッテルビウム、塩化イッテルビウム、臭化イッテルビウム、水酸化イッテルビウムなど、酸化イッテルビウム以外のイッテルビウム化合物によっても得られるし、また、酸化エルビウムをはじめ、例えば、ヨウ化エルビウム、塩化エルビウム、臭化エルビウム、水酸化エルビウムなどのエルビウム化合物によっても得られる。
【0012】
ただし、イッテルビウム化合物またはエルビウム化合物の添加量が多くなると、活物質の放電反応を阻害するおそれがあるため、イッテルビウム化合物またはエルビウム化合物の添加量は、亜鉛に対してイッテルビウム化合物またはエルビウム化合物がそれぞれの金属(すなわち、イッテルビウムまたはエルビウム)換算で0.004質量%(亜鉛100質量部に対してそれぞれの金属換算で0.004質量部)以上が好ましく、0.022質量%以上がより好ましく、また3.5質量%以下が好ましく、2.2質量%以下がより好ましい。すなわち、イッテルビウム化合物またはエルビウム化合物の含有量を亜鉛に対してそれぞれの金属換算で0.004質量%以上にすることによって、酸化防止効果を充分に発現させ、3.5質量%以下にすることによって、活物質の放電反応の阻害を抑制する。
【0013】
前記イットリウム化合物とエルビウム化合物は併用することができ、併用する場合のゲル状負極中での添加量は両者の合計で前記範囲にすればよい。
【0014】
本発明において、正極は、オキシ水酸化ニッケルを正極活物質として含むものであれば特に特定のものに限られることはないが、通常、オキシ水酸化ニッケルを含む正極活物質に、例えば黒鉛などの導電助剤と例えばポリテトラフルオロエチレンなどのバインダーとを加えて乾式混合した後、さらにアルカリ水溶液を加えて湿式混合して、アルカリ水溶液を含んだ状態で正極合剤を調製し、そのアルカリ水溶液を含む正極合剤を加圧成形するか、あるいは前記正極活物質と導電助剤とバインダーとを混合してアルカリ水溶液を含まない正極合剤を調製し、そのアルカリ水溶液を含まない加圧成形したものが用いられる。ただし、正極の作製方法は、上記例示の方法に限られることなく、他の方法によってもよい。
【0015】
本発明においては、ゲル状負極にイッテルビウム化合物またはエルビウム化合物を添加するが、そのイッテルビウム化合物またはエルビウム化合物を添加することを除けば、ゲル状負極は従来構成のものでもよく、例えば、負極活物質としての亜鉛と、アルカリ水溶液からなるアルカリ電解液と、ゲル化剤とを混合することによって調製される。そして、イッテルビウム化合物またはエルビウム化合物のゲル状負極への添加は、前記のように、亜鉛とアルカリ電解液とゲル化剤との混合によって調製した通常構成のゲル状負極にイッテルビウム化合物またはエルビウム化合物を添加してもよいし、また、ゲル状負極の調製時にイッテルビウム化合物またはエルビウム化合物を添加して、イッテルビウム化合物またはエルビウム化合物が添加された状態でゲル状負極を調製してもよい。
【0016】
また、アルカリ電解液やセパレータは、従来構成のものを用いることができ、例えば、アルカリ電解液としては、例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウムなどのアルカリ金属の水酸化物の水溶液を用いることができ、セパレータとしては、例えば、ビニロンとレーヨンを主体とする不織布、ビニヨン・レーヨン不織布、ポリアミド不織布、ポリオレフィン・レーヨン不織布、ビニロン紙、ビニロン・リンターパルプ紙、ビニロン・マーセル化パルプ紙などを用いることができる。
【0017】
【実施例】
つぎに、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明はそれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、以下の実施例などにおいて、溶液などの濃度を示す%やイッテルビウム化合物またはエルビウム化合物の添加量を示す%はいずれも質量基準によるものである。
【0018】
実施例1
オキシ水酸化ニッケル100質量部に黒鉛8質量部およびポリテトラフルオロエチレン0.5質量部を加えた後、攪拌機で乾式混合し、得られた混合物に水酸化カリウムを56%含みかつ酸化亜鉛を2.9%含む混合アルカリ水溶液6質量部を加えて湿式混合し、得られた混合物をプレス・粉砕を経た後、造粒して顆粒状正極合剤を得た。この顆粒状正極合剤を金型に充填して加圧することにより円筒状に成形して正極を作製した。得られた円筒状正極を単3形の電池缶内に挿入した後、ビニロンとレーヨンを主体とする不織布からなる公知のアルカリ一次電池用セパレータを筒形に巻いて前記の円筒状正極の内周面に接触するように収納した後、アルカリ電解液として水酸化カリウムを30%含みかつ酸化亜鉛を2%含むアルカリ水溶液をセパレータの繊維の隙間に完全に染み渡るように注入した。
【0019】
ゲル状負極は以下に示すように作製した。前記の水酸化カリウムを30%含みかつ酸化亜鉛を2%含むアルカリ電解液47.2質量部にポリアクリル酸ナトリウム0.57質量部とポリアクリル酸0.35質量部を加え、一晩放置してゲル状にした。このようにして得られたゲル状アルカリ電解液をよく混合し、その中にガスアトマイズ法で作製した35メッシュから200メッシュの粒度分布を持つ亜鉛粉末100質量部と酸化イッテルビウム1質量部(亜鉛に対してイッテルビウムとして0.879%)を添加し、さらによく混合してゲル状負極を得た。このようにして得られたゲル状負極を脱泡した後、上記円筒状セパレータの内周側の空間内に充填し、以後、常法に準じて封口を行い、図1に示す構造で単3形のアルカリ一次電池を作製した。
【0020】
ここで、図1に示す電池について説明すると、前記の正極1は端子付きの正極缶2内に収納されており、この正極缶2内の正極1の内周側にはセパレータ3を介して前記の構成からなるゲル状負極4が充填されている。そして、5は負極集電体、6は封口体、7は金属ワッシャー、8は樹脂ワッシャー、9は絶縁キャップ、10は負極端子板、11は樹脂外装体であるが、負極集電体5以降のものは、いずれも公知の構成からなるものである。
【0021】
実施例2
ゲル状負極として、酸化イッテルビウム3.5質量部(亜鉛に対してイッテルビウムとして3.08%)含有させたものを用いた以外は、実施例1と同様に単3形のアルカリ一次電池を作製した。
【0022】
実施例3
ゲル状負極として、酸化イッテルビウムに代えて酸化エルビウムを1.5質量部(亜鉛に対してエルビウムとして1.31%)含有させた以外は、実施例1と同様に単3形のアルカリ一次電池を作製した。
【0023】
比較例1
ゲル状負極として、酸化イッテルビウムを添加しなかったものを用いた以外は、実施例1と同様に単3形のアルカリ一次電池を作製した。
【0024】
上記実施例1〜3の電池および比較例1の電池の各10個ずつに対して、1分間隔で1Aのパルス電流を10秒間流すパルス放電試験を行い、1Aのパルス電流が流れた時点の電圧が1.0V以下に低下するまでに要するパルス放電の回数を調べ、10個の平均値を求めて、パルス放電特性を評価した。また、前記とは別に、実施例1〜3の電池および比較例1の電池を各20個ずつ準備し、まず、そのうちの10個ずつの電池を1Aの放電電流で放電させて0.9V以下になるまでの放電時間を測定し、その平均時間を貯蔵前の放電時間とし、次に、残りの10個ずつの電池を60℃の恒温槽中に20日間貯蔵し、取り出してから1日室温で冷却後、同じく1Aの放電電流で放電させて0.9V以下になるまでの放電時間を測定し、その平均時間を貯蔵後の放電時間とし、貯蔵前の放電時間に対する貯蔵後の放電時間の割合を容量保持率として求め、高温での電池の貯蔵特性を評価した。その結果を表1に示す。ただし、表1への表示にあたっては、比較例1の電池のパルス放電の回数および容量保持率をそれぞれ100とした時の指数で示す。すなわち、実施例1〜3の電池のパルス放電の回数および容量保持率を比較例1の電池のパルス放電の回数および容量保持率を100とした時の指数で示す。また、表1にはゲル状負極に添加したイッテルビウム化合物またはエルビウム化合物の種類をその化学式で示すとともに、そのゲル状負極への添加量を示す。ただし、添加量は亜鉛に対する金属換算の量で示す。
【0025】
【表1】
【0026】
表1に示す結果から明らかなように、酸化イッテルビウムや酸化エルビウムを添加したゲル状負極を用いた実施例1〜3の電池は、それらを添加していない比較例1の電池と同等のパルス放電回数を有し、かつ、比較例1の電池に比べて貯蔵後の容量保持率が高く貯蔵特性が優れていた。
【0027】
すなわち、本発明の実施例1〜3の電池は、イッテルビウム化合物やエルビウム化合物を添加していない比較例1の電池と同等のパルス放電回数を有していることから、イッテルビウム化合物やエルビウム化合物の添加による放電特性の低下がなく、また、比較例1の電池に比べて、60℃という高温で20日間貯蔵後の1Aという重負荷放電での容量保持率が高く、高温貯蔵後の重負荷放電でも良好な放電特性を示し、貯蔵特性が優れていた。
【0028】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、高温貯蔵後の重負荷放電においても良好な放電特性を示す貯蔵特性が優れたアルカリ一次電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るアルカリ一次電池の一例を模式的に示す部分縦断面図である。
【符号の説明】
1 正極
4 ゲル状負極
Claims (2)
- 正極活物質としてオキシ水酸化ニッケルを含む正極、負極活物質として亜鉛を含むゲル状負極、アルカリ電解液およびセパレータを有するアルカリ一次電池であって、前記ゲル状負極にイッテルビウム化合物またはエルビウム化合物が添加されていることを特徴とするアルカリ一次電池。
- 前記イッテルビウム化合物またはエルビウム化合物の添加量が、亜鉛に対して金属元素換算で0.004〜3.5質量%であることを特徴とする請求項1記載のアルカリ一次電池。
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JP2020047541A (ja) * | 2018-09-21 | 2020-03-26 | Fdk株式会社 | アルカリ電池用正極合剤 |
-
2002
- 2002-09-30 JP JP2002284799A patent/JP2004119328A/ja not_active Withdrawn
Cited By (3)
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US7910238B2 (en) * | 2006-04-19 | 2011-03-22 | Panasonic Corporation | Alkaline battery |
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