JP2004118002A - チップ状成膜部品の製造方法 - Google Patents
チップ状成膜部品の製造方法 Download PDFInfo
- Publication number
- JP2004118002A JP2004118002A JP2002283220A JP2002283220A JP2004118002A JP 2004118002 A JP2004118002 A JP 2004118002A JP 2002283220 A JP2002283220 A JP 2002283220A JP 2002283220 A JP2002283220 A JP 2002283220A JP 2004118002 A JP2004118002 A JP 2004118002A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- film
- substrate
- chip
- multilayer film
- thickened
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Withdrawn
Links
Images
Landscapes
- Optical Filters (AREA)
Abstract
【課題】薄い基板に対して極めて多くの膜数を成膜するに当って、基板や膜の変形や損傷等を生じさせないようにする。
【解決手段】増厚基板1に多層膜体4Pを形成し、この多層膜体4Pに、各チップ状成膜部品2となるように格子状の切り込みCを入れて、光学多層膜4に分離し、次いで増厚基板1をホルダ部材6に貼り付けて、多層膜体4Pを形成した面とは反対側の面を研磨して、基板3の厚みとし、さらに研磨した面に反射防止膜5を形成し、この反射防止膜5を形成した側を切断して、チップ状成膜部品2が得られる。
【選択図】 図1
【解決手段】増厚基板1に多層膜体4Pを形成し、この多層膜体4Pに、各チップ状成膜部品2となるように格子状の切り込みCを入れて、光学多層膜4に分離し、次いで増厚基板1をホルダ部材6に貼り付けて、多層膜体4Pを形成した面とは反対側の面を研磨して、基板3の厚みとし、さらに研磨した面に反射防止膜5を形成し、この反射防止膜5を形成した側を切断して、チップ状成膜部品2が得られる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光学ガラスやセラミック、さらには金属、樹脂等からなる薄い基板の表裏両面に成膜を行った上で、所望の大きさに切断・分離したチップ状成膜部品の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
例えば、光通信や光情報処理装置等においては、波長選択フィルタ、偏光子、旋光子等の光学的機能部品が設けられる。これらの光学的機能部品としては、例えば光学ガラスの表面に光学多層膜を形成したもので構成されるものがある。光学多層膜は光学ガラスの片面だけに形成する場合もあるが、反対側の面には反射防止膜等、他の光学多層膜が形成され、従って光学ガラスの両面に膜付けが行われるのが一般的である。
【0003】
前述したような光学素子、例えば、波長選択フィルタ等は、平行平面板からなる光学ガラスを基板として、この基板の表面に低屈折率膜と高屈折率膜とを交互に積層したものから構成される。ここで、多層膜における低屈折率膜は、通常、二酸化ケイ素の薄膜からなり、高屈折率膜は、例えばタンタル、チタン等の金属酸化物の薄膜とし、通常は、これら低屈折率膜と高屈折率膜とからなる多層膜は少なくとも20層以上とするが、膜の層数を多くすればその分だけ光学的な特性が向上する。特に、光通信や光情報処理装置等といったより高い精度が要求される機器に装着される光学素子は、50層以上、より好ましくは200層乃至それ以上の多層膜としたものが要求される。また、基板の多層膜形成面とは反対側の面に形成される反射防止膜は4〜8層程度の層数とする。
【0004】
ところで、基板表面に薄膜を形成すると、内部応力が生じることになることは従来から知られている(例えば、特許文献1参照。)。従って、多層膜の膜の層数が多くなればなるほど、内部応力が大きくなり、基板に反り等の変形が発生し、大判の基板に成膜した後にチップ状の光学部品となるように切断する際に、多層膜による内部応力により破損したり、割れや欠けが生じたりすることになる。
【0005】
以上の点に鑑みて、前述した特許文献1では、基板において、最終製品としての光学素子の大きさとなるように切断する切断線に沿ったマスクパターンを形成して、このマスクパターンの上から膜付けを行うように構成している。また、同様の理由から、予め基板に切断線に沿った溝を形成しておき、この溝内にワイヤや磁性粒体からなるマスク材料を装着した状態で成膜を行い、所定の層数の膜付けが完了した後に、マスク材料を取り除く方式も知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【0006】
【特許文献1】
特開平11−12605号公報(第1頁、第4−5頁、図1)
【特許文献2】
特開平9−277395号公報(第3−4頁、図1)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、各種の機器類に装着される関係から、前述した各光学素子に対する小型化、コンパクト化、また軽量化の要求が強くなってきている。例えば、光ディスクの書き込み及び読み取りヘッドに装着される光学部品においては、設置されるスペースの関係から、またヘッドの軽量化の点等から、小型で軽量な光学素子とするのがより望ましい。
【0008】
前述した従来技術のように、広い基板に対して光学部品毎にマスクした状態でその全面にわたって膜付けする場合、基板がある程度の厚みを有し、かつ膜数が比較的少ないときには有効であるが、基板の厚みを薄くし、かつ100層以上というように膜数が極めて多いと、やはり内部応力が残留して、マスクを除去する際等において、割れや欠け等の発生を防止できないことがある。また、成膜後にマスクを除去することになるが、このマスク除去作業時に多層膜を損傷させる可能性がある等といった問題点もある。
【0009】
本発明は以上の点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、薄い基板に対して極めて多くの膜数を成膜するに当って、基板や膜の変形や損傷等を生じさせないようにすることにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
前述した目的を達成するために、本発明によるチップ状成膜部品の製造方法に関する第1の発明は、薄い基板の一側面に多層膜を形成した第1の成膜面で、反対側面にも成膜がなされた第2の成膜面としたチップ状成膜部品の製造方法であって、少なくとも前記第1の成膜面に所定層数の膜付けを行っても変形しない厚みとした増厚基板を用いて、この増厚基板の前記第1の成膜面に多層膜を形成する第1の成膜工程と、前記増厚基板の前記第1の成膜面に対して、最終製品としてのチップ状成膜部品の縦横寸法となる間隔に格子状で、少なくとも実質的に多層膜の厚みに相当する深さの切り込みを入れる多層膜切り込み工程と、前記増厚基板の多層膜形成面をホルダ部材に固着して、反対側面を前記基板の薄さとなるように研磨する基板研磨工程と、このようにして研磨した第2の成膜面に成膜する第2の成膜工程と、この基板を前記各チップ状成膜部品に分割するチップ化工程とからなることをその特徴とする。
【0011】
また、第2の発明としては、薄い基板の一側面に多層膜を形成した第1の成膜面で、反対側面にも成膜がなされた第2の成膜面としたチップ状成膜部品を製造するために、少なくとも前記第1の成膜面に所定層数の膜付けを行っても変形しない厚みとした増厚基板を用いて、この増厚基板の前記第1の成膜面に多層膜を形成する第1の成膜工程と、前記増厚基板の前記第1の成膜面に対して、最終製品としてのチップ状成膜部品の縦横寸法となる間隔に格子状で、実質的に多層膜の厚みに相当する深さの切り込みを入れる多層膜切り込み工程と、前記増厚基板の多層膜形成面をホルダ部材に固着して、反対側面を前記基板の薄さとなるように研磨する基板研磨工程と、このようにして研磨した第2の成膜面に成膜する第2の成膜工程と、基板を、前記第2の成膜面側から前記切り込みに対応する位置で切断して、前記ホルダ部材から各チップ状成膜部品を剥離するチップ化工程とからなることを特徴としている。
【0012】
さらに、薄い基板の一側面に多層膜を形成した第1の成膜面で、反対側面にも成膜がなされた第2の成膜面としたチップ状成膜部品の製造方法に関する第3の発明としては、少なくとも前記第1の成膜面に所定層数の膜付けを行っても変形しない厚みとした増厚基板を用いて、この増厚基板の前記第1の成膜面に多層膜を形成する第1の成膜工程と、前記増厚基板に対して、前記第1の成膜面側から、最終製品としてのチップ状成膜部品の縦横寸法となる間隔に格子状で、多層膜の厚みと基板の厚みとの合計の厚み以上の深さを有する切り込みを入れる多層膜切り込み工程と、前記増厚基板の多層膜形成面をホルダ部材に固着して、反対側面を前記基板の薄さとなるまで研磨する基板研磨工程と、このようにして研磨した第2の成膜面に成膜する第2の成膜工程と、この基板を前記ホルダ部材から剥離して前記各チップ状成膜部品となるように分離するチップ化工程とからなることを特徴としている。
【0013】
ここで、基板は、光学ガラス、セラミック、金属、樹脂等であり薄型のものである。成膜された部品において、基板は主に膜を保持する機能を発揮するものである場合が多い。従って、部品の小型化、軽量化を図るには、基板はできるだけ薄い方が望ましい。特に、光学ガラスを基板とする場合には、その部品は光を透過させるものであるから、光の減衰を防止するという観点からも、薄肉化が望ましい。いずれの材質を用いるにしても、基板を薄くすればするほど、強度的に脆弱になり、割れたり、欠けたりすることにもなり、また変形の可能性も高くなる。しかしながら、増厚基板の状態で成膜を行うことから、また増厚基板の状態で第1の成膜面側から少なくとも多層膜に切り込みを入れて、内部に残留する応力を解放することから、多層膜を形成した基板の変形や損傷等を防止できる。
【0014】
多層膜の積層数としては、例えば50層を越えるもの、特に光学的な特性等を向上させるために、200層乃至それ以上の層数とすることができる。多層膜の層数が多くなればなるほど、増厚基板の厚みを大きくすることによって、成膜時における内部応力により変形や損傷等が発生しない耐久性を持たせることができる。
【0015】
基板において、前述した多層膜の形成面とは反対側の面を第2の成膜面として、この面にも膜付けが行われる。従って、この第2の成膜面への膜付けを行う前の段階で、基板の厚みを調整しなければならない。この基板の厚みを調整するために、ホルダ部材に固着させて、第2の成膜面となる側を研磨する。既に、多層膜側において、内部応力が解放された状態となっているので、極めて薄くなるように、具体的には、厚みが1mm乃至それ以下の厚みにしても、最終製品として形成されるまで、損傷、変形等が生じることはない。
【0016】
この研磨を行う際に多層膜を形成した増厚基板はホルダ部材に固着させるが、固着方式としては、通常、接着剤によるものが一般的であるが、接着以外にも種々の固着方式を採用することができる。例えば、クランプ、真空吸着等があり、また基板が金属等の磁性材料からなる場合には、磁気吸引力によりホルダ部材に固着させるようにしても良い。
【0017】
第2の成膜面側における膜の層数に応じて基板の最小厚みが異なってくる。第2の成膜面に形成される膜の層数が20層以下であれば、基板の厚みを1mm以下とすることができる。ただし、数十層以上、あるいは第1の成膜面に形成された層数と実質的に同じ層の膜を形成する場合には、その分だけ基板に厚みを持たせて、強度を保持する。
【0018】
第1の成膜面側に切り込みを入れる際において、切り込み深さは最低限多層膜の膜厚に実質的に相当する分とする。多層膜のみに切り込みを入れる場合には、第2の成膜面に膜付けが行われた後、この第2の成膜面側から切断してチップ状成膜部品とする。ここで、多層膜は完全にカットされることが望ましいが、基底部に多少の切り残しが存在していても、格別の差し支えはない。一方、第1の成膜面側の切り込みの深さを多層膜の厚みと最終的な基板の厚みとの合計の寸法乃至それ以上とすることもでき、この場合には研磨によりチップ状成膜部品に分割される。従って、第2の成膜面への成膜を行った後、ホルダ部材から剥離すれば、個々のチップ状成膜部品が得られることになる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態について説明する。ここで、本実施の形態では、基板としての光学ガラスの表裏両面に膜付けをすることにより、波長選択フィルタや偏光板等の光学部品の製造について説明する。ただし、本発明は基板としては光学ガラス以外にも、種々の基板を含むものであり、また部品としての機能も前述したものに限定されない。
【0020】
まず、図1に部品の材料としての増厚基板1と、製品としてのチップ状成膜部品2との外観を示す。この図から明らかなように、増厚基板1には同図に仮想線で示したように、マトリックス状にチップ部品の形成部を有するものである。最終製品としてのチップ状成膜部品2は光学ガラスからなる薄い基板3の一面側に100〜200層乃至それ以上の各膜数からなる光学多層膜4が形成された第1の成膜面3aで、反対側の面は4〜6層程度の層の膜からなる反射防止膜5が形成された第2の成膜面3bとなっている。また、基板3の厚みは増厚基板1の厚みに対して1/10前後の寸法を有している。
【0021】
光学多層膜4は厚みの大きな増厚基板1の状態で多層膜体4Pとして成膜される。これが図2に示した第1の成膜工程である。ここで、膜付け方法としては、真空蒸着によるのが一般的であるが、それ以外にもスパッタリング、CVD等各種の方法によることもできる。また、光学多層膜4の一例としては、二酸化ケイ素からなる低屈折率膜と、チタンやタンタル等の金属酸化物からなる高屈折率膜とを交互に積層させたもので構成したものである。
【0022】
増厚基板1に対して多層膜体4Pを形成すると、基板1に対して圧縮(または引っ張り)方向の応力が生じる。そして、膜が多層に重ね合わせられると、その層数分だけ内部に応力が残留して蓄積する。しかしながら、増厚基板1はこの残留応力に十分耐えられる厚みを有するもの、例えば光学多層膜を低屈折率膜と高屈折率膜とを交互に積層して、全体として200層となし、全体の膜厚が20〜30μmとなるときには、増厚基板1の厚みは10mm程度であれば、増厚基板1が変形したり、損傷したりすることはない。なお、増厚基板1に対しては必要以上の厚みを持たせないようにするのが、後続の研磨工程における研磨効率等の点で望ましい。
【0023】
次の工程は、この多層膜体4Pを形成した増厚基板1に対して、この多層膜体4Pに切り込みを入れる多層膜切り込み工程である。この多層膜切り込みは、多層膜体4Pの状態では残留・蓄積している応力を解放するために行なわれる。残留応力が問題となるのは広い面積に対して膜付けした場合であり、例えば1〜2mm角毎の光学多層膜4には、実質的に圧縮や引っ張り等といった応力が生じることはない。そして、広い面積に成膜した多層膜体4Pとしても、前述した寸法の小区画に分離・分割して光学多層膜4とすれば、残留応力が解放乃至低減されて、変形や割れ、欠け等の問題が生じなくなる。
【0024】
そこで、図3に示したように、最終製品としてのチップ状成膜部品2の外形形状と一致するように、図1に仮想線で示した格子状の切り込みCを入れる。この切り込みCの深さは、多層膜体4Pにおいて、光学多層膜4の小区画となるように分割するためであり、従ってその膜厚とほぼ同じ深さとする。これによって、チップ状成膜部品2の光学多層膜4となるように分離されるが、必ずしも全体にわたって完全に光学多層膜4が切れていなければならないのではなく、例えば部分的に数層程度の切り残しがあっても残留応力の解放という点で格別の問題とはならない。
【0025】
多層膜体4Pに切り込みを入れて光学多層膜4とした後、図4に示したように、この光学多層膜4側の面をホルダ部材6に接着剤7を用いて貼り付けて固着し、増厚基板1の光学多層膜4とは反対側の面を研磨加工することによって、図5に示したように、チップ状成膜部品2の基板3の厚みにまで研磨する。ここで、ホルダ部材6としては、その表面が正確に平面度を有する硬質の部材であれば、その材質は格別問題とならない。例えば、ガラス製であっても、またセラミック製等であっても良い。ただし、接着剤7との馴染みがなければならないのは当然である。また、研磨方式は、光学ガラスの研磨装置として従来から広く用いられているものを適用できる。
【0026】
而して、増厚基板1を研磨することによって、基板1に所望の厚みを持たせることができる。例えば、基板1の厚みを1mm乃至それ以下にまで薄くすることができる。基板1の実際の機能としては、光学多層膜4を保持するためのものであるから、厚みを薄くすることによって、小型化、軽量化が図られるだけでなく、基板1を光が通過する際における減衰を抑制するという点でも望ましい。また、増厚基板1は研磨により所望の厚みに整えられることから、基板研磨工程ではできるだけ研磨量を少なくする方が望ましい。従って、増厚基板1の厚みとしては、光学多層膜4として成膜される膜総数及び膜材料等を総合勘案して、成膜工程で反り等の変形が生じない最小限の厚みに設定するのが好ましい。
【0027】
研磨工程を経ることによって、所定の厚みを有する基板3の第1の成膜面3aに光学多層膜4が成膜され、第2の成膜面3bは研磨により鏡面状態となったものが得られる。そこで、この第2の成膜面3bに成膜を行う第2の成膜工程に入る。この第2の成膜面3bに膜付けが行なわれるのは、反射防止膜5を形成するためである。この反射防止膜5は、通常、4〜6層程度の膜数で形成することができる。
【0028】
この第2の成膜工程も、第1の成膜工程と同様、真空蒸着によるが、またスパッタリング、CVD等で行うこともできる。ただし、第1の成膜工程では、膜強度を極めて高くするために、増厚基板1を加熱状態にして行うのが望ましいが、第2の成膜工程では、ホルダ部材6に接着剤7で基板3を固着させた状態で行うので、接着剤7が軟化しない温度に保持する必要がある。接着剤7の種類にもよるが、その溶融温度以下の低温状態、具体的には、150℃以下、望ましくは80℃程度で成膜する。
【0029】
このようにして、図6に示したように、基板3の第1,第2の成膜面3a,3bに成膜がなされると、図7に示したように、各チップ状成膜部品2となるように切断する。ここで、予め第1の成膜面3a側の光学多層膜4に切り込みが入っているので、切断は第2の成膜面3bにおける反射防止膜5側からこの切り込みに届く位置まで行うことになる。ここで、既に説明した多層膜切り込み工程で、膜の層数が極めて多いことから生じる光学多層膜4の残留応力が解放されて、実質的に応力のない状態となっているので、切断によって、チップ状成膜部品2に割れや欠け等の損傷を生じることはない。
【0030】
而して、この切断工程でも、また多層膜切り込み工程でも、各種のカッタ工具を用いて行うことができるが、例えばダイシングソーを用いて行うことができる。この場合、カッタの厚みは、多層膜切り込み工程の方を厚くする方が望ましい。これによって、切断工程において切り込みCに対してカッタの厚み差分のずれがあっても、切断線を一致させることができる。従って、製品の歩留まりを向上させるために、切断工程ではできるだけ薄いカッタを用い、多層膜切り込み工程で用いられるカッタはそれの1.5倍前後の厚みとすれば、切断工程時における誤差を有効に吸収できる。
そして、最後に、接着剤7を溶剤で溶解させる等によって、ホルダ部材6からチップ状成膜部品2を分離する。これがチップ化工程であり、分離されたチップ状成膜部品2は洗浄等の工程を経て最終製品となる。このチップ状成膜部品2のサイズとしては、厚みが約1mm乃至それ以下で、縦横の寸法が2mm以下というような小さいものとすることができる。
【0031】
また、前述した多層膜切り込み工程において、図8に示したように、切り込み深さを多層膜体4Pの厚みだけでなく、さらに増厚基板1にも切り込むようになし、この増厚基板1への切り込み深さを、光学多層膜4と同図に仮想線で示した基板3の厚み分との合計の厚みT以上とすることもできる。そうすると、図9に示したように、研磨工程を経たときに、既に基板3の分割がなされる。ただし、各基板3はホルダ部材6に接着されているので、研磨の段階ではばらばらになることはない。従って、ホルダ部材6に貼り付けた状態で第2の成膜面3bへの反射防止膜5の膜付けを行うことができる。この場合、切り込みの幅がある程度広くなっておれば、反射防止膜5は切り込み形成部で遮断され、この切り込みを越えて架橋することはない。そして、第2の成膜が終了した後、接着剤7を溶剤で溶融させる等により各チップ状成膜部品2が得られる。
【0032】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、薄い基板に対して極めて多くの膜数を成膜しても、基板や膜の変形、損傷等を生じさせることがない等の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の一形態を示すものであって、増厚基板とチップ状成膜部品の外観図である。
【図2】第1の膜付け工程として、増厚基板に光学多層膜の膜付けを行った状態を示す説明図である。
【図3】多層膜切り込み工程として、光学多層膜を形成した増厚基板に対して多層膜切り込み部を形成した状態を示す説明図である。
【図4】光学多層膜を形成した増厚基板をホルダ部材に貼り付けた状態を示す説明図である。
【図5】研磨工程として、増厚基板を研磨して基板の厚みとした状態を示す説明図である。
【図6】第2の成膜工程として、基板に反射防止膜を形成した状態を示す説明図である。
【図7】チップ化工程として、基板を切断した状態を示す説明図である。
【図8】本発明の他の方法における多層膜切り込み工程として、光学多層膜から増厚基板にまで切り込みを入れた状態を示す説明図である。
【図9】図8の切り込み部が形成された増厚基板を研磨した状態を示す説明図である。
【符号の説明】
1 増厚基板
2 チップ状成膜部品
3 基板
3a 第1の成膜面
3b 第2の成膜面
4 光学多層膜
4P 多層膜体
5 反射防止膜
6 ホルダ部材
7 接着剤
C 切り込み
【発明の属する技術分野】
本発明は、光学ガラスやセラミック、さらには金属、樹脂等からなる薄い基板の表裏両面に成膜を行った上で、所望の大きさに切断・分離したチップ状成膜部品の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
例えば、光通信や光情報処理装置等においては、波長選択フィルタ、偏光子、旋光子等の光学的機能部品が設けられる。これらの光学的機能部品としては、例えば光学ガラスの表面に光学多層膜を形成したもので構成されるものがある。光学多層膜は光学ガラスの片面だけに形成する場合もあるが、反対側の面には反射防止膜等、他の光学多層膜が形成され、従って光学ガラスの両面に膜付けが行われるのが一般的である。
【0003】
前述したような光学素子、例えば、波長選択フィルタ等は、平行平面板からなる光学ガラスを基板として、この基板の表面に低屈折率膜と高屈折率膜とを交互に積層したものから構成される。ここで、多層膜における低屈折率膜は、通常、二酸化ケイ素の薄膜からなり、高屈折率膜は、例えばタンタル、チタン等の金属酸化物の薄膜とし、通常は、これら低屈折率膜と高屈折率膜とからなる多層膜は少なくとも20層以上とするが、膜の層数を多くすればその分だけ光学的な特性が向上する。特に、光通信や光情報処理装置等といったより高い精度が要求される機器に装着される光学素子は、50層以上、より好ましくは200層乃至それ以上の多層膜としたものが要求される。また、基板の多層膜形成面とは反対側の面に形成される反射防止膜は4〜8層程度の層数とする。
【0004】
ところで、基板表面に薄膜を形成すると、内部応力が生じることになることは従来から知られている(例えば、特許文献1参照。)。従って、多層膜の膜の層数が多くなればなるほど、内部応力が大きくなり、基板に反り等の変形が発生し、大判の基板に成膜した後にチップ状の光学部品となるように切断する際に、多層膜による内部応力により破損したり、割れや欠けが生じたりすることになる。
【0005】
以上の点に鑑みて、前述した特許文献1では、基板において、最終製品としての光学素子の大きさとなるように切断する切断線に沿ったマスクパターンを形成して、このマスクパターンの上から膜付けを行うように構成している。また、同様の理由から、予め基板に切断線に沿った溝を形成しておき、この溝内にワイヤや磁性粒体からなるマスク材料を装着した状態で成膜を行い、所定の層数の膜付けが完了した後に、マスク材料を取り除く方式も知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【0006】
【特許文献1】
特開平11−12605号公報(第1頁、第4−5頁、図1)
【特許文献2】
特開平9−277395号公報(第3−4頁、図1)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、各種の機器類に装着される関係から、前述した各光学素子に対する小型化、コンパクト化、また軽量化の要求が強くなってきている。例えば、光ディスクの書き込み及び読み取りヘッドに装着される光学部品においては、設置されるスペースの関係から、またヘッドの軽量化の点等から、小型で軽量な光学素子とするのがより望ましい。
【0008】
前述した従来技術のように、広い基板に対して光学部品毎にマスクした状態でその全面にわたって膜付けする場合、基板がある程度の厚みを有し、かつ膜数が比較的少ないときには有効であるが、基板の厚みを薄くし、かつ100層以上というように膜数が極めて多いと、やはり内部応力が残留して、マスクを除去する際等において、割れや欠け等の発生を防止できないことがある。また、成膜後にマスクを除去することになるが、このマスク除去作業時に多層膜を損傷させる可能性がある等といった問題点もある。
【0009】
本発明は以上の点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、薄い基板に対して極めて多くの膜数を成膜するに当って、基板や膜の変形や損傷等を生じさせないようにすることにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
前述した目的を達成するために、本発明によるチップ状成膜部品の製造方法に関する第1の発明は、薄い基板の一側面に多層膜を形成した第1の成膜面で、反対側面にも成膜がなされた第2の成膜面としたチップ状成膜部品の製造方法であって、少なくとも前記第1の成膜面に所定層数の膜付けを行っても変形しない厚みとした増厚基板を用いて、この増厚基板の前記第1の成膜面に多層膜を形成する第1の成膜工程と、前記増厚基板の前記第1の成膜面に対して、最終製品としてのチップ状成膜部品の縦横寸法となる間隔に格子状で、少なくとも実質的に多層膜の厚みに相当する深さの切り込みを入れる多層膜切り込み工程と、前記増厚基板の多層膜形成面をホルダ部材に固着して、反対側面を前記基板の薄さとなるように研磨する基板研磨工程と、このようにして研磨した第2の成膜面に成膜する第2の成膜工程と、この基板を前記各チップ状成膜部品に分割するチップ化工程とからなることをその特徴とする。
【0011】
また、第2の発明としては、薄い基板の一側面に多層膜を形成した第1の成膜面で、反対側面にも成膜がなされた第2の成膜面としたチップ状成膜部品を製造するために、少なくとも前記第1の成膜面に所定層数の膜付けを行っても変形しない厚みとした増厚基板を用いて、この増厚基板の前記第1の成膜面に多層膜を形成する第1の成膜工程と、前記増厚基板の前記第1の成膜面に対して、最終製品としてのチップ状成膜部品の縦横寸法となる間隔に格子状で、実質的に多層膜の厚みに相当する深さの切り込みを入れる多層膜切り込み工程と、前記増厚基板の多層膜形成面をホルダ部材に固着して、反対側面を前記基板の薄さとなるように研磨する基板研磨工程と、このようにして研磨した第2の成膜面に成膜する第2の成膜工程と、基板を、前記第2の成膜面側から前記切り込みに対応する位置で切断して、前記ホルダ部材から各チップ状成膜部品を剥離するチップ化工程とからなることを特徴としている。
【0012】
さらに、薄い基板の一側面に多層膜を形成した第1の成膜面で、反対側面にも成膜がなされた第2の成膜面としたチップ状成膜部品の製造方法に関する第3の発明としては、少なくとも前記第1の成膜面に所定層数の膜付けを行っても変形しない厚みとした増厚基板を用いて、この増厚基板の前記第1の成膜面に多層膜を形成する第1の成膜工程と、前記増厚基板に対して、前記第1の成膜面側から、最終製品としてのチップ状成膜部品の縦横寸法となる間隔に格子状で、多層膜の厚みと基板の厚みとの合計の厚み以上の深さを有する切り込みを入れる多層膜切り込み工程と、前記増厚基板の多層膜形成面をホルダ部材に固着して、反対側面を前記基板の薄さとなるまで研磨する基板研磨工程と、このようにして研磨した第2の成膜面に成膜する第2の成膜工程と、この基板を前記ホルダ部材から剥離して前記各チップ状成膜部品となるように分離するチップ化工程とからなることを特徴としている。
【0013】
ここで、基板は、光学ガラス、セラミック、金属、樹脂等であり薄型のものである。成膜された部品において、基板は主に膜を保持する機能を発揮するものである場合が多い。従って、部品の小型化、軽量化を図るには、基板はできるだけ薄い方が望ましい。特に、光学ガラスを基板とする場合には、その部品は光を透過させるものであるから、光の減衰を防止するという観点からも、薄肉化が望ましい。いずれの材質を用いるにしても、基板を薄くすればするほど、強度的に脆弱になり、割れたり、欠けたりすることにもなり、また変形の可能性も高くなる。しかしながら、増厚基板の状態で成膜を行うことから、また増厚基板の状態で第1の成膜面側から少なくとも多層膜に切り込みを入れて、内部に残留する応力を解放することから、多層膜を形成した基板の変形や損傷等を防止できる。
【0014】
多層膜の積層数としては、例えば50層を越えるもの、特に光学的な特性等を向上させるために、200層乃至それ以上の層数とすることができる。多層膜の層数が多くなればなるほど、増厚基板の厚みを大きくすることによって、成膜時における内部応力により変形や損傷等が発生しない耐久性を持たせることができる。
【0015】
基板において、前述した多層膜の形成面とは反対側の面を第2の成膜面として、この面にも膜付けが行われる。従って、この第2の成膜面への膜付けを行う前の段階で、基板の厚みを調整しなければならない。この基板の厚みを調整するために、ホルダ部材に固着させて、第2の成膜面となる側を研磨する。既に、多層膜側において、内部応力が解放された状態となっているので、極めて薄くなるように、具体的には、厚みが1mm乃至それ以下の厚みにしても、最終製品として形成されるまで、損傷、変形等が生じることはない。
【0016】
この研磨を行う際に多層膜を形成した増厚基板はホルダ部材に固着させるが、固着方式としては、通常、接着剤によるものが一般的であるが、接着以外にも種々の固着方式を採用することができる。例えば、クランプ、真空吸着等があり、また基板が金属等の磁性材料からなる場合には、磁気吸引力によりホルダ部材に固着させるようにしても良い。
【0017】
第2の成膜面側における膜の層数に応じて基板の最小厚みが異なってくる。第2の成膜面に形成される膜の層数が20層以下であれば、基板の厚みを1mm以下とすることができる。ただし、数十層以上、あるいは第1の成膜面に形成された層数と実質的に同じ層の膜を形成する場合には、その分だけ基板に厚みを持たせて、強度を保持する。
【0018】
第1の成膜面側に切り込みを入れる際において、切り込み深さは最低限多層膜の膜厚に実質的に相当する分とする。多層膜のみに切り込みを入れる場合には、第2の成膜面に膜付けが行われた後、この第2の成膜面側から切断してチップ状成膜部品とする。ここで、多層膜は完全にカットされることが望ましいが、基底部に多少の切り残しが存在していても、格別の差し支えはない。一方、第1の成膜面側の切り込みの深さを多層膜の厚みと最終的な基板の厚みとの合計の寸法乃至それ以上とすることもでき、この場合には研磨によりチップ状成膜部品に分割される。従って、第2の成膜面への成膜を行った後、ホルダ部材から剥離すれば、個々のチップ状成膜部品が得られることになる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態について説明する。ここで、本実施の形態では、基板としての光学ガラスの表裏両面に膜付けをすることにより、波長選択フィルタや偏光板等の光学部品の製造について説明する。ただし、本発明は基板としては光学ガラス以外にも、種々の基板を含むものであり、また部品としての機能も前述したものに限定されない。
【0020】
まず、図1に部品の材料としての増厚基板1と、製品としてのチップ状成膜部品2との外観を示す。この図から明らかなように、増厚基板1には同図に仮想線で示したように、マトリックス状にチップ部品の形成部を有するものである。最終製品としてのチップ状成膜部品2は光学ガラスからなる薄い基板3の一面側に100〜200層乃至それ以上の各膜数からなる光学多層膜4が形成された第1の成膜面3aで、反対側の面は4〜6層程度の層の膜からなる反射防止膜5が形成された第2の成膜面3bとなっている。また、基板3の厚みは増厚基板1の厚みに対して1/10前後の寸法を有している。
【0021】
光学多層膜4は厚みの大きな増厚基板1の状態で多層膜体4Pとして成膜される。これが図2に示した第1の成膜工程である。ここで、膜付け方法としては、真空蒸着によるのが一般的であるが、それ以外にもスパッタリング、CVD等各種の方法によることもできる。また、光学多層膜4の一例としては、二酸化ケイ素からなる低屈折率膜と、チタンやタンタル等の金属酸化物からなる高屈折率膜とを交互に積層させたもので構成したものである。
【0022】
増厚基板1に対して多層膜体4Pを形成すると、基板1に対して圧縮(または引っ張り)方向の応力が生じる。そして、膜が多層に重ね合わせられると、その層数分だけ内部に応力が残留して蓄積する。しかしながら、増厚基板1はこの残留応力に十分耐えられる厚みを有するもの、例えば光学多層膜を低屈折率膜と高屈折率膜とを交互に積層して、全体として200層となし、全体の膜厚が20〜30μmとなるときには、増厚基板1の厚みは10mm程度であれば、増厚基板1が変形したり、損傷したりすることはない。なお、増厚基板1に対しては必要以上の厚みを持たせないようにするのが、後続の研磨工程における研磨効率等の点で望ましい。
【0023】
次の工程は、この多層膜体4Pを形成した増厚基板1に対して、この多層膜体4Pに切り込みを入れる多層膜切り込み工程である。この多層膜切り込みは、多層膜体4Pの状態では残留・蓄積している応力を解放するために行なわれる。残留応力が問題となるのは広い面積に対して膜付けした場合であり、例えば1〜2mm角毎の光学多層膜4には、実質的に圧縮や引っ張り等といった応力が生じることはない。そして、広い面積に成膜した多層膜体4Pとしても、前述した寸法の小区画に分離・分割して光学多層膜4とすれば、残留応力が解放乃至低減されて、変形や割れ、欠け等の問題が生じなくなる。
【0024】
そこで、図3に示したように、最終製品としてのチップ状成膜部品2の外形形状と一致するように、図1に仮想線で示した格子状の切り込みCを入れる。この切り込みCの深さは、多層膜体4Pにおいて、光学多層膜4の小区画となるように分割するためであり、従ってその膜厚とほぼ同じ深さとする。これによって、チップ状成膜部品2の光学多層膜4となるように分離されるが、必ずしも全体にわたって完全に光学多層膜4が切れていなければならないのではなく、例えば部分的に数層程度の切り残しがあっても残留応力の解放という点で格別の問題とはならない。
【0025】
多層膜体4Pに切り込みを入れて光学多層膜4とした後、図4に示したように、この光学多層膜4側の面をホルダ部材6に接着剤7を用いて貼り付けて固着し、増厚基板1の光学多層膜4とは反対側の面を研磨加工することによって、図5に示したように、チップ状成膜部品2の基板3の厚みにまで研磨する。ここで、ホルダ部材6としては、その表面が正確に平面度を有する硬質の部材であれば、その材質は格別問題とならない。例えば、ガラス製であっても、またセラミック製等であっても良い。ただし、接着剤7との馴染みがなければならないのは当然である。また、研磨方式は、光学ガラスの研磨装置として従来から広く用いられているものを適用できる。
【0026】
而して、増厚基板1を研磨することによって、基板1に所望の厚みを持たせることができる。例えば、基板1の厚みを1mm乃至それ以下にまで薄くすることができる。基板1の実際の機能としては、光学多層膜4を保持するためのものであるから、厚みを薄くすることによって、小型化、軽量化が図られるだけでなく、基板1を光が通過する際における減衰を抑制するという点でも望ましい。また、増厚基板1は研磨により所望の厚みに整えられることから、基板研磨工程ではできるだけ研磨量を少なくする方が望ましい。従って、増厚基板1の厚みとしては、光学多層膜4として成膜される膜総数及び膜材料等を総合勘案して、成膜工程で反り等の変形が生じない最小限の厚みに設定するのが好ましい。
【0027】
研磨工程を経ることによって、所定の厚みを有する基板3の第1の成膜面3aに光学多層膜4が成膜され、第2の成膜面3bは研磨により鏡面状態となったものが得られる。そこで、この第2の成膜面3bに成膜を行う第2の成膜工程に入る。この第2の成膜面3bに膜付けが行なわれるのは、反射防止膜5を形成するためである。この反射防止膜5は、通常、4〜6層程度の膜数で形成することができる。
【0028】
この第2の成膜工程も、第1の成膜工程と同様、真空蒸着によるが、またスパッタリング、CVD等で行うこともできる。ただし、第1の成膜工程では、膜強度を極めて高くするために、増厚基板1を加熱状態にして行うのが望ましいが、第2の成膜工程では、ホルダ部材6に接着剤7で基板3を固着させた状態で行うので、接着剤7が軟化しない温度に保持する必要がある。接着剤7の種類にもよるが、その溶融温度以下の低温状態、具体的には、150℃以下、望ましくは80℃程度で成膜する。
【0029】
このようにして、図6に示したように、基板3の第1,第2の成膜面3a,3bに成膜がなされると、図7に示したように、各チップ状成膜部品2となるように切断する。ここで、予め第1の成膜面3a側の光学多層膜4に切り込みが入っているので、切断は第2の成膜面3bにおける反射防止膜5側からこの切り込みに届く位置まで行うことになる。ここで、既に説明した多層膜切り込み工程で、膜の層数が極めて多いことから生じる光学多層膜4の残留応力が解放されて、実質的に応力のない状態となっているので、切断によって、チップ状成膜部品2に割れや欠け等の損傷を生じることはない。
【0030】
而して、この切断工程でも、また多層膜切り込み工程でも、各種のカッタ工具を用いて行うことができるが、例えばダイシングソーを用いて行うことができる。この場合、カッタの厚みは、多層膜切り込み工程の方を厚くする方が望ましい。これによって、切断工程において切り込みCに対してカッタの厚み差分のずれがあっても、切断線を一致させることができる。従って、製品の歩留まりを向上させるために、切断工程ではできるだけ薄いカッタを用い、多層膜切り込み工程で用いられるカッタはそれの1.5倍前後の厚みとすれば、切断工程時における誤差を有効に吸収できる。
そして、最後に、接着剤7を溶剤で溶解させる等によって、ホルダ部材6からチップ状成膜部品2を分離する。これがチップ化工程であり、分離されたチップ状成膜部品2は洗浄等の工程を経て最終製品となる。このチップ状成膜部品2のサイズとしては、厚みが約1mm乃至それ以下で、縦横の寸法が2mm以下というような小さいものとすることができる。
【0031】
また、前述した多層膜切り込み工程において、図8に示したように、切り込み深さを多層膜体4Pの厚みだけでなく、さらに増厚基板1にも切り込むようになし、この増厚基板1への切り込み深さを、光学多層膜4と同図に仮想線で示した基板3の厚み分との合計の厚みT以上とすることもできる。そうすると、図9に示したように、研磨工程を経たときに、既に基板3の分割がなされる。ただし、各基板3はホルダ部材6に接着されているので、研磨の段階ではばらばらになることはない。従って、ホルダ部材6に貼り付けた状態で第2の成膜面3bへの反射防止膜5の膜付けを行うことができる。この場合、切り込みの幅がある程度広くなっておれば、反射防止膜5は切り込み形成部で遮断され、この切り込みを越えて架橋することはない。そして、第2の成膜が終了した後、接着剤7を溶剤で溶融させる等により各チップ状成膜部品2が得られる。
【0032】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、薄い基板に対して極めて多くの膜数を成膜しても、基板や膜の変形、損傷等を生じさせることがない等の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の一形態を示すものであって、増厚基板とチップ状成膜部品の外観図である。
【図2】第1の膜付け工程として、増厚基板に光学多層膜の膜付けを行った状態を示す説明図である。
【図3】多層膜切り込み工程として、光学多層膜を形成した増厚基板に対して多層膜切り込み部を形成した状態を示す説明図である。
【図4】光学多層膜を形成した増厚基板をホルダ部材に貼り付けた状態を示す説明図である。
【図5】研磨工程として、増厚基板を研磨して基板の厚みとした状態を示す説明図である。
【図6】第2の成膜工程として、基板に反射防止膜を形成した状態を示す説明図である。
【図7】チップ化工程として、基板を切断した状態を示す説明図である。
【図8】本発明の他の方法における多層膜切り込み工程として、光学多層膜から増厚基板にまで切り込みを入れた状態を示す説明図である。
【図9】図8の切り込み部が形成された増厚基板を研磨した状態を示す説明図である。
【符号の説明】
1 増厚基板
2 チップ状成膜部品
3 基板
3a 第1の成膜面
3b 第2の成膜面
4 光学多層膜
4P 多層膜体
5 反射防止膜
6 ホルダ部材
7 接着剤
C 切り込み
Claims (3)
- 薄い基板の一側面に多層膜を形成した第1の成膜面で、反対側面にも成膜がなされた第2の成膜面としたチップ状成膜部品の製造方法において、
少なくとも前記第1の成膜面に所定層数の膜付けを行っても変形しない厚みとした増厚基板を用いて、この増厚基板の前記第1の成膜面に多層膜を形成する第1の成膜工程と、
前記増厚基板の前記第1の成膜面に対して、最終製品としてのチップ状成膜部品の縦横寸法となる間隔に格子状で、少なくとも実質的に多層膜の厚みに相当する深さの切り込みを入れる多層膜切り込み工程と、
前記増厚基板の多層膜形成面をホルダ部材に固着して、反対側面を前記基板の薄さとなるように研磨する基板研磨工程と、
このようにして研磨した第2の成膜面に成膜する第2の成膜工程と、
この基板を前記各チップ状成膜部品に分割するチップ化工程と
からなるチップ状成膜部品の製造方法。 - 薄い基板の一側面に多層膜を形成した第1の成膜面で、反対側面にも成膜がなされた第2の成膜面としたチップ状成膜部品の製造方法において、
少なくとも前記第1の成膜面に所定層数の膜付けを行っても変形しない厚みとした増厚基板を用いて、この増厚基板の前記第1の成膜面に多層膜を形成する第1の成膜工程と、
前記増厚基板の前記第1の成膜面に対して、最終製品としてのチップ状成膜部品の縦横寸法となる間隔に格子状で、実質的に多層膜の厚みに相当する深さの切り込みを入れる多層膜切り込み工程と、
前記増厚基板の多層膜形成面をホルダ部材に固着して、反対側面を前記基板の薄さとなるように研磨する基板研磨工程と、
このようにして研磨した第2の成膜面に成膜する第2の成膜工程と、
基板を、前記第2の成膜面側から前記切り込みに対応する位置で切断して、前記ホルダ部材から各チップ状成膜部品を剥離するチップ化工程と
からなるチップ状成膜部品の製造方法。 - 薄い基板の一側面に多層膜を形成した第1の成膜面で、反対側面にも成膜がなされた第2の成膜面としたチップ状成膜部品の製造方法において、
少なくとも前記第1の成膜面に所定層数の膜付けを行っても変形しない厚みとした増厚基板を用いて、この増厚基板の前記第1の成膜面に多層膜を形成する第1の成膜工程と、
前記増厚基板に対して、前記第1の成膜面側から、最終製品としてのチップ状成膜部品の縦横寸法となる間隔に格子状で、多層膜の厚みと基板の厚みとの合計の厚み以上の深さを有する切り込みを入れる多層膜切り込み工程と、
前記増厚基板の多層膜形成面をホルダ部材に固着して、反対側面を前記基板の薄さとなるまで研磨する基板研磨工程と、
このようにして研磨した第2の成膜面に成膜する第2の成膜工程と、
この基板を前記ホルダ部材から剥離して前記各チップ状成膜部品となるように分離するチップ化工程と
からなるチップ状成膜部品の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002283220A JP2004118002A (ja) | 2002-09-27 | 2002-09-27 | チップ状成膜部品の製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002283220A JP2004118002A (ja) | 2002-09-27 | 2002-09-27 | チップ状成膜部品の製造方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2004118002A true JP2004118002A (ja) | 2004-04-15 |
Family
ID=32277144
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2002283220A Withdrawn JP2004118002A (ja) | 2002-09-27 | 2002-09-27 | チップ状成膜部品の製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2004118002A (ja) |
-
2002
- 2002-09-27 JP JP2002283220A patent/JP2004118002A/ja not_active Withdrawn
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
US20070211339A1 (en) | Polarized light splitting device and method for manufacturing the same | |
EP1825510A1 (fr) | Procede de fabrication collective de microstructures a elements superposes | |
US7544392B2 (en) | Method for producing multilayer optical device | |
JP2010128477A (ja) | 光学部品の製造方法及び光学部品 | |
CN109273586A (zh) | 一种压电晶片及其制作方法 | |
JP2007033861A (ja) | 接着剤の剥離方法、光学素子の製造方法、プリズムの製造方法及び当該製造方法により製造されたプリズム | |
JPWO2003044573A1 (ja) | 光学フィルタ、この光学フィルタの製造方法およびこの光学フィルタを用いた光学装置ならびにこの光学フィルタの収納構造 | |
WO2017179283A1 (ja) | 赤外線吸収ガラス板及びその製造方法、並びに固体撮像素子デバイス | |
JP2006276313A (ja) | 光学フィルタの製造方法 | |
JP7259301B2 (ja) | 偏光子及び光アイソレータ | |
KR20110017379A (ko) | 마이크로스케일 광학 구조 제조 방법 | |
JP2004118002A (ja) | チップ状成膜部品の製造方法 | |
JP2000040677A (ja) | 半導体素子の製造方法 | |
JP4655659B2 (ja) | 光学素子の製造方法 | |
JP2007193132A (ja) | 光学部品の製造方法 | |
JP2004361878A (ja) | チップ状成膜部品の製造方法 | |
JP2008203851A (ja) | ウエハーの接着工程を用いるグレースケールマスクの製造方法 | |
JP2007279693A (ja) | 偏光変換素子とその製造方法 | |
JP4273945B2 (ja) | 複合プリズムの製造方法 | |
JP2019211702A (ja) | 光学素子および光学装置 | |
JP2003315535A (ja) | 光学素子、光学素子の製造方法及び光学装置 | |
JP4776907B2 (ja) | 光学フィルタの製造方法 | |
JP2003307616A (ja) | 誘電体多層膜フィルタとその製造方法 | |
JP2004077717A (ja) | 誘電体多層膜フィルタ素子の製造方法及び誘電体多層膜フィルタ素子を有する光部品 | |
JP2003315533A (ja) | 誘電多層膜からなる干渉フィルタの製造方法 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20050705 |
|
A761 | Written withdrawal of application |
Effective date: 20080623 Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A761 |
|
A977 | Report on retrieval |
Effective date: 20080625 Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 |