JP2004117293A - 3次元歪センサブロック、3次元外力測定ユニット、構造体の外力測定方法 - Google Patents
3次元歪センサブロック、3次元外力測定ユニット、構造体の外力測定方法 Download PDFInfo
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Abstract
【解決手段】構造体Kへの3次元歪センサブロック1の設置位置Psを、応力分布から角度変換で得られる位置と角度の関数である応力関数を用いて得られる外力分離領域ZFzなどの重複領域ZZとする。
【選択図】図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、構造体に作用する3次元方向の外力(3軸周りの外トルクを含み、合計6つのこれらの外力、外トルクを「6分力」ともいう。)の全てまたは一部を測定するための3次元歪センサブロック、3次元外力測定ユニット、構造体の外力測定方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
構造体に作用する外力を測定するのに、歪ゲージと呼ばれる歪検知素子を配置した歪センサブロックを、その構造体の内部に設置し、この歪センサブロックから出力される歪信号から、応力を求め、更に外力を算出する方法が知られている。
【0003】
その際、まず、従来の流れとしては、1)構造体を設定し、2)求める応力の正規座標系に沿った特定方向の応力に着目して、3)この座標系を基準として、構造体に作用する外力を想定して負荷し、4)この後に、理論計算および有限要素法による応力解析その他の手段を行い、3つの垂直応力及び3つのせん断応力を計算しておく。
【0004】
ついで、前記の計算結果を元に、構造体の内部に、歪センサブロックを正規座標系XYZ方向に沿った所定の角度に配置されるよう設置し、外力を負荷して、この歪センサブロックから得られる信号出力を計測し、応力を算出して、これに対応した外力を計測するという手順が取られていた。
【0005】
ところが、従来の方法では、1箇所に設けた一つの歪センサブロックで、2つ程度の外力の測定をすることはできたが、3次元方向の6分力全部を高精度で、また、リアルタイムに測定することは出来なかった。
【0006】
例えば、本出願人による先行技術(特許文献1)によれば、有限要素法によって得られた応力分布から、外力の分離率の良い領域を算定し、その領域内に歪センサブロックを設置して、その外力を測定することができた。
【0007】
図7は、その先行技術の原理を概念的に示すもので、(a)は測定対象の構造体の説明図、(b)はセンサブロック設置位置の決定方法の説明図である。
【0008】
この例では、測定対象の構造体として、主構造体である車両本体KMに支持支点Xで支持され、外力作用点である軸受部Oで路面G上を走行するタイヤTを回転可能に支承する懸架装置、サスペンションKを選択している。
【0009】
この構造体、サスペンションKには、図7(b)で示すように、外力として3次元方向の3つの外力Fx、Fy、Fzと、この3次元方向に対応した3軸廻りの外モーメントMx、My、Mzが作用する。
【0010】
ここで、このサスペンションについては、これらの3つの外力は、それぞれ、Fx:車両進行方向の力(路面摩擦力。制動力・駆動力とも呼称する。)、Fy:車両横方向の力(横力)、Fz:鉛直方向の力(荷重・垂直抗力)と定義され、3つの外モーメントは、Mx:x軸回りのモーメント(オーバターニングモーメント)、My:y軸回りのモーメント(転がり抵抗モーメント)、Mz:z軸回りのモーメント(セルフアライニングトルク)と定義されている。
【0011】
この先行技術では、それぞれの外力Fx、Fy、Fz、Mx、My、Mzを測定するのに、これらの外力のそれぞれによって、構造体Kに発生する応力を有限要素法によって算出し、その外力と特定の応力との対応関係が良好となる領域(T例えば、外力Fxを加えた時に、応力σxのみが顕著に表れ、他の応力が発生しない領域。これを、「外力分離領域」という。)を選び出し、ここに、歪センサブロックを設置することによって、その応力を検出して対応した外力を感度良く測定することができた。
【0012】
しかしながら、この方法では、図7(b)に示すように、外力分離領域(ZFx、ZFy、ZFz、ZMx、ZMy、ZMz)は、相互に重なる場合もあるが、たいていは、重なることがないので、それぞれの外力を測定するのに、それぞれの外力分離領域に専用の歪センサブロックをそれぞれ設ける必要があった。つまり、一外力一センサブロックという拘束があった。
【0013】
したがって、この例でいうと、測定対象である構造体(サスペンション)の制動制御のためには、6分力のうち、路面摩擦力Fx、横力Fy、垂直抗力Fz、転がり抵抗モーメントMyの4つの外力を測定する必要があるので、歪センサブロックも図の4つの外力分離領域ZFx、ZFy、ZFz、ZMyにそれぞれ設けなければならなかった。
【0014】
また、本出願人は、前記外にも、複雑な形状で複雑な支持構造の構造体に作用する複数の外力を感度良く測定する先行技術を、特許文献2、特許文献3などで提案しており、それぞれの技術課題を解決するものであったが、前記問題は以前課題として残されていた。
【0015】
【特許文献1】特開2002−22579号公報(段落0054、段落0055、図3、図4)
【特許文献2】特開平7−248272号
【特許文献3】特許第2784711号公報
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記した事情のもとで考え出されたものであって、複雑な形状で、しかも複数の異なる支持支点などを有した構造体に相互に異なった方向から作用する外力を、構造体内部の1箇所に1個埋設設置するだけで感度良く測定することができる3次元歪センサブロック、3次元外力測定ユニット、構造体の外力測定方法を提供することを課題とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、前記問題を解決するのに、従前用いていた有限要素法によって得られる構造体の応力分布に加え、得られた応力分布から座標回転、つまり角度変換して算出される構造体のそれぞれの位置についての応力関数(位置と角度の関数)を3次元歪センサブロックにおける歪検知素子の配置、3次元外力測定ユニットにおける演算処理、構造体の外力測定方法における3次元歪センサブロックの設置位置と角度の決定のそれぞれに最大限利用することを着想し、成果を得たものである。
【0017】
ここで、単に、外力という場合には、上述した6分力をさし、3つの外力と3つの外モーメントを含むものである。
【0018】
請求項1に記載の3次元歪センサブロックは、構造体の内部に埋め込まれ、その埋設位置の応力を測定するための3次元歪センサブロックであって、前記3次元歪センサブロックの外表面を構成するベース面に歪検知素子を配置したセンサセグメントを備え、その設置位置について得られた位置と角度の関数である応力関数を用いて、前記センサセグメントの配置態様を決めることを特徴とする。
【0019】
このものは、センサブロックそのものの構成において、センサセグメントの配置態様をきめるのに、そのセンサブロックを埋設する位置及び角度についての応力関数を用いるものである。これによって、求めたい外力と歪検知素子の歪信号から得られる応力との分離率がよくなり、求めたい外力に対応した歪をより感度良く検知することができる。
【0020】
請求項2に記載の3次元歪センサブロックは、請求項1に記載の3次元歪センサブロックにおいて、互いに平行となる2つのベース面の各々に前記センサセグメントを配置したもので、求めたい外力が4外力以下の場合において、センサセグメントの上記配置態様をきめるのに、そのセンサブロックを埋設する位置及び角度についての応力関数を用いたものである。これによって、ABS(AntilockBraking System)制御等を行なう上で有効とされる3外力(路面摩擦力、横力、および垂直抗力)と転がり抵抗モーメント(ブレーキトルク)を計測することができ、これらをパラメータとした運動方程式を採用することによって、従来手法のような車輪速度をパラメータとした制御と比してその制御精度を向上することができる。
請求項3に記載の3次元歪センサブロックは、請求項1に記載の3次元歪センサブロックにおいて、互いに平行とならない複数のベース面の各々に前記センサセグメントを配置したもので、異なる複数の応力平面上での応力あるいはその分布を求めることを可能としている。
請求項4に記載の3次元歪センサブロックは、請求項1に記載の3次元歪センサブロックにおいて、互いに平行となる2つのベース面の各々に前記センサセグメントを配置したセンサ体を互いに平行とならないように複数個組み合わせることで、異なる平面での平面内応力およびそのセンサセグメントの面外変形による応力を求めることと、2つのセンサ体にて求めた2点での応力から、構造体にはたらく外力、すなわち力およびモーメントを差分あるいはその他の手法によって精度よく求めることを可能としている。
【0021】
請求項5に記載の3次元外力測定ユニットは、3次元歪センサブロックと、信号演算処理回路部とを組み合わせて構成された3次元外力測定ユニットであって、
前記3次元歪センサブロックは、その外表面を構成するベース面に歪検知素子を配置したセンサセグメントを備え、かつ前記各々の歪検知素子は、個別のブリッジ回路を備えており、
前記信号演算処理回路部は、前記それぞれのベース面に配置された歪検知素子から出力される歪信号を応力に演算し変換する歪/応力変換部と、この歪/応力変換部からの応力信号を、前記3次元歪センサブロックの設置位置と設置角度について得られた位置と角度の関数である応力関数を用いて角度変換する応力角度変換部と、この応力角度変換部の出力から、測定すべき外力を演算して出力する外力演算処理部とを備えたことを特徴とする。
【0022】
このものは、3次元歪センサブロックから出力される歪信号の演算処理、つまり、応力角度変換部での演算処理に、応力関数を用いるもので、これにより、歪信号から測定すべき外力に対応した応力を簡単にリアルタイムに算出することができる。
【0023】
請求項6に記載の3次元外力測定ユニットは、請求項5に記載の3次元外力測定ユニットにおいて、前記信号演算処理回路部は、測定すべき外力に応じた複数の出力端子を設け、演算した外力をパラレル出力する構成にしている。
【0024】
請求項7に記載の3次元外力測定ユニットは、請求項5に記載の3次元外力測定ユニットにおいて、前記信号演算処理回路部は、共通の出力端子を設け、演算した外力を、予め定めた所定の順序で循環的に出力する構成にしている。
【0025】
請求項8に記載の3次元外力測定ユニットは、請求項5から7のいずれかに記載の3次元外力測定ユニットにおいて、前記信号演算処理回路部を構成する歪/応力変換部、応力角度変換部、外力計測演算処理部は、演算増幅器を組み合わせて構成されている。
【0026】
請求項9に記載の構造体の外力測定方法は、主構造体に支持され、外部から1点に集中して外力を受ける構造体に作用する外力を、この構造体内に設けた単一の3次元歪センサブロックによって分離計測された応力からリアルタイムに測定するための構造体の外力測定方法であって、
前記3次元歪センサブロックは、その外表面を構成するベース面に歪検知素子を配置したセンサセグメントを備えたものであり、
測定すべきそれぞれの外力について、該外力によって前記構造体内に発生する応力分布を算出し、この応力分布から3次元角度変換によって得られる位置及び角度の関数である応力関数において該外力の独立性、分離率が良い外力分離領域及び外力分離角度を求め、こうして得られた全ての外力分離領域及び外力分離角度の重複領域内から前記3次元歪センサブロックの設置位置及び設置角度を決定することを特徴とする。
【0027】
この測定方法は、構造体への3次元歪センサブロックの設置位置、設置角度の決定に、応力分布から角度変換で得られる応力関数(位置と角度の関数)を用いたものである。
【0028】
これにより、外力分離領域がより広くなり、あるいは、換言すれば、外力分離のための応力関数に角度が変数として導入されたために、分離率のよい場所を選択するための条件が緩和され、複数の外力に対応した外力分離領域の重複領域が獲得できるようになり、ここに歪センサブロックを設ければ、測定すべき外力全てを感度良く測定できる。
【0029】
そこで、歪センサブロックを複数外力が測定できるように、歪検知素子を複数配置した3次元歪センサブロックとし、この3次元歪センサブロックを前記重複領域に設置し、また、その設置角度の決定にも応力関数を用いるようにしたものである。
請求項10に記載の構造体の外力測定方法は、請求項9に記載の構造体の外力測定方法において、前記3次元歪センサブロックの設置角度として得られる結果の一例として、前記主構造体に前記構造体が支持される支持支点と前記構造体に外力が作用する外力作用点とを結ぶ線に対して、前記3次元歪センサブロックの中心軸が平行となるように前記3次元歪センサブロックを設置している。
【0030】
請求項11に記載の3次元外力測定ユニットは、請求項5から8のいずれかに記載の3次元外力測定ユニットおいて、前記3次元歪センサブロックとして、請求項1から4のいずれかに記載の3次元歪センサブロックを用い、請求項9から11のいずれかに記載の構造体の外力測定方法を用いて、該3次元歪センサブロックを設置し、前記主構造体として車両を対象とし、前記構造体として、前記車両の車輪を支持連結する支持部材であるサスペンションを対象とし、
測定すべき外力が、最大限、前記車輪と走行路面との間の接地面に作用する垂直抗力、前記車両の進行方向に加わる路面摩擦力、前記車両の進行方向に直角に作用する横力、前記車両に加わるオーバターニングモーメント、転がり抵抗モーメント、およびセルフアライニングモーメントであることを特徴とする。
【0031】
この3次元外力測定ユニットは、上述の3次元歪センサブロック、構造体の外力測定方法と組み合わせて、測定対象の構造体を車両のサスペンションとし、測定外力を垂直抗力、路面摩擦力、横力、オーバターニングモーメント、転がり抵抗モーメント(ブレーキトルク)、およびセルフアライニングモーメント(トルク)としたものであり、これらの外力を感度良く、リアルタイムに測定することができ、こうして測定された6外力を用いて、車両の制動制御などを良好に行うことができ、例えば、ABS(Antilock Braking System)の性能を格段に向上させることができる。また、車両運動制御を実現するシステムを考えた場合、従来では車輪速度センサ、加速度センサ、ヨーレイトセンサ等の複数のセンサを組み合わせてシステムを構築しなければならないが、本発明では、単一の3次元歪センサブロックのみを装着するだけで上述の外力を計測可能となるので、そのコストを大きく低減させることができる。
【0032】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を説明するが、ここに説明するのは好ましい実施形態の一例であって、本発明の範囲はここに示す実施形態例に限定されるものではない。
【0033】
図1は、本発明に係る構造体の外力測定方法の原理を概念的に示すもので、(a)は3次元歪センサブロック設置位置の決定方法の説明図、(b)は3次元歪センサブロックの設置角度の決定方法の説明図、図2は、本発明に係る構造体の外力測定方法においてセンサブロック設置位置・角度の決定の手順を示すフローチャート、図3本発明に係る構造体の外力測定方法において外力分離領域を得るための応力関数を例示する図である。
【0034】
この外力測定方法は、図7の従来例と同様に、車両のサスペンションを構造体Kとして、3つの外力、路面摩擦力Fx、横力Fy、垂直抗力Fz、3つの外モーメント、オーバターニングモーメントMx、転がり抵抗モーメントMy、セルフアライニングトルクMzをこの構造体K内の1箇所に設置した一個の3次元歪センサブロック1で測定しようとするものである。
【0035】
その詳細は、後述するが、要点は、外力分離領域ZFx、ZFy、ZFz、ZMx、ZMy、ZMzを得るのに、従来のように、単に有限要素法によって算出された応力分布を用いるのではなく、この分布応力毎に座標回転、つまり、角度変換して得られる応力関数(位置と角度の関数)を用いる点である。
【0036】
このようにすると、全ての外力分離領域ZFx、ZFy、ZFz、ZMx、ZMy、ZMzの重複領域ZZを得ることができ、この重複領域ZZでは、それぞれの測定すべき外力Fx、Fy、Fz、Mx、My、Mzにそれぞれ分離率よく対応した応力(垂直応力、せん断応力)が存在しているので、ここに3次元歪センサブロック1を設置すれば、感度良く、測定すべき外力を測定することができる。
【0037】
なお、図1において、符号Psは、重複領域ZZにおいて、最も、感度良く外力を測定できる点として決定された3次元歪センサブロック1の設置位置を示し、線分Φsは、符号Psと交わり、且つ重複領域ZZにおいて最も感度良く外力を測定できる方向として決定された3次元歪センサブロック1の設置角度を示しており、符号2は、3次元歪センサブロック1に配置された歪検知素子、1aは3次元歪センサブロック1の外表面を構成するベース面、SCは3次元歪センサブロック1に配置された歪検知素子2のベース面単位の検知の中心に対応した中心軸である。
【0038】
また、一つのベース面1aに交差して配置された歪検知素子2を一組として、センサセグメントSGといい、この交差角度は、一般には、主応力の方向と、この主応力に対応したせん断応力との間の角度関係から、90度あるいは45度に設定される。
【0039】
また、この図1(b)に示すように、3次元歪センサブロック1の設置位置を重複領域ZZ内の設置位置Psと決定したのち、更に、3次元歪センサブロック1の中心軸SCが、線分Φsと一致するような設置角度をとるように決定すれば良い。
【0040】
なお、この実施例の場合には、応力関数において外力の独立性、分離率が最良となる角度となる線分Φsの方向、つまり、中心軸SCの方向は、構造体(サスペンション)Kが主構造体(不図示)に支持される支持支点Xと、この構造体Kに外力が作用する外力作用点Oを結ぶ直線に平行となっている。
【0041】
このような3次元歪センサブロック1の設置姿勢、設置角度の決定にも後述するように前記応力関数にて、角度をパラメータとした時の応力関数の極大・極小値から、測定したい外力を極大とし、目的外の外力を極小とするような条件を用いており、これにより、更に、必要な外力を感度良く測定することができる。これより、本発明の応力測定方法について、図2のフローチャートを主に用いて、より詳しく説明する。
【0042】
このフローチャートに示されるように、本発明の応力測定方法におけるセンサブロックの設置位置・角度の決定方法は、ステップS1からステップS7までの手順によって構成される。
【0043】
ステップS1:外力が負荷される構造体の体系を設定する。構造体は、計測対象物として車両を選択し、車軸を有する構造体の他に、車軸を有しない形式の構造体、あるいは複雑な形状を有する構造体を設定しても良く、慣例により車両の前後方向をX方向、車輪回転軸方向をY方向、鉛直方向をZ方向(正規座標系)としている。また、同時に構造体の固定方法(拘束条件)を設定する。外力としては、3次元方向の力および3軸回りのトルクの計6外力を想定している。
【0044】
なお、以下では、説明の都合上、図1で説明した構造体に作用する3つの外力路面摩擦力Fx、横力Fy、垂直抗力Fz、3つの外モーメント、オーバターニングモーメントMx、転がり抵抗モーメントMy、セルフアライニングモーメントMzを単に外力F1、F2、F3、・・・、F6と示す。
【0045】
ステップS2:外力F1を加えて、有限要素法によって応力解析を行い、構造体の応力分布を、正規座標系の位置P(X,Y,Z)の関数として得る。ここで、3次元正規座標系においては、各々の位置Pi(i=1〜N)に対する応力群として、外力が加えられた時の垂直応力σx、σy、σzと剪断応力τxy、τyz、τzxが与えられ、全ての位置に対しては応力群Σ(F1,Pi)が付与される。なお、位置Piの個数Nについては、有限要素法で規定される微小要素の数により決定されるものであって、有限要素法については既に公知な技術であるから、ここでの詳細な説明は省略するものとする。
ここで、{St1,St2,St3,St4,St5,St6}は 各応力St1,St2,St3,St4,St5,St6からなる応力群を表し、fx1(F1, Pi)、fy1(F1, Pi)、fz1(F1, Pi)、fxy1(F1, Pi)、fyz1(F1, Pi)、fzx1(F1, Pi)は、
外力F1が加わった時の位置Piをパラメータとする、夫々σx1、σy1、σz1、τxy1、τyz1、及びτzx1の関数を表す。
【0046】
ステップS3:外力F2、F3、・・・、F6を加えて、ステップS2と同様の手段により、各応力群 Σ(F2, Pi)、Σ(F3, Pi)、・・・、Σ(F6, Pi)を得る。すなわち、
Σ(F2, Pi)=G{σx2,σy2, σz2, τxy2, τyz2, τzx2}−−(2)
Σ(F3, Pi)=G{σx3,σy3, σz3, τxy3, τyz3, τzx3}−−(3)
Σ(F4, Pi)=G{σx4,σy4, σz4, τxy4, τyz4, τzx4}−−(4)
Σ(F5, Pi)=G{σx5,σy5, σz5, τxy5, τyz5, τzx5}−−(5)
Σ(F6, Pi)=G{σx6,σy6, σz6, τxy6, τyz6, τzx6}−−(6)
各応力群の構成要素である、σx2、σy2、 σz2、 τxy2、 τyz2、 τzx2、σx3、σy3、 σz3、 τxy3、 τyz3、 τzx3、・・・、σx6、σy6、 σz6、 τxy6、τyz6、τzx6 に対しては、
と記述される。
【0047】
ステップS4: コーシーの座標回転式(岸田敬三著「材料の力学」(1987年培風館)参照)に基づいて、各座標軸X,Y,Zの反時計方向回りに各々の角度A,B,Cを回転させて座標変換を行い、角度群 φ{A,B,C}をパラメータとする事によって、ステップS2およびステップS3で求めた応力群 Σ(F1, Pi)〜Σ(F6, Pi) の変換座標系での変換後応力群、つまり応力関数Σ´(F1, Pi)〜Σ´(F6, Pi)を得る。すなわち、
Σ´(F1, Pi)=G´{σx1´,σy1´, σz1´, τxy1´, τyz1´, τzx1´} −−(7)
Σ´(F2, Pi)=G´{σx2´,σy2´, σz2´, τxy2´, τyz2´, τzx2´} −−(8)
Σ´(F3, Pi)=G´{σx3´,σy3´, σz3´, τxy3´, τyz3´, τzx3´} −−(9)
Σ´(F4, Pi)=G´{σx4´,σy4´, σz4´, τxy4´, τyz4´, τzx4´} −−(10)
Σ´(F5, Pi)=G´{σx5´,σy5´, σz5´, τxy5´, τyz5´, τzx5´} −−(11)
Σ´(F6, Pi)=G´{σx6´,σy6´, σz6´, τxy6´, τyz6´, τzx6´} −−(12)
変換後の応力群の構成要素となる、σx1´、σy1´、σz1´、τxy1´、τyz1´、τzx1´、σx3、σy3、σz3、τxy3、τyz3、τzx3、・・・、σx6´、σy6´、
σz6´、τxy6 、τyz6´、τzx6´は、
と記述される。ここで、A11−Fn〜A33−Fnとは、外力Fn(n=1〜6)が作用した時の、X軸に対する回転角度をA、Y軸に対する回転角度をB、Z軸に対する回転角度をCとしたときに
A11−Fn=cosBcosC、A12−Fn=cosBsinC、A13−Fn=−sinB、
A21−Fn=sinAsinBcosC−cosAsinC、A22−Fn=sinAsinBsinC+cosAcosC、
A23−Fn=sinAcosB、A31−Fn=cosAsinBcosC+sinAsinC、
A32−Fn=cosAsinBsinC−sinAcosC、A33−Fn=cosAcosB
で定義されるものである。
前記式より解るように、変換後の各応力は、変換前の応力(外力Fnと位置Piの関数)に加えて、角度群φ{A,B,C}の関数となっているため、変換前の応力と比較して自由度が増加し、角度群φ{A,B,C}で必要条件を満たすよう最適化する事で、Fn及びPiに対する制約条件が緩和されうる事になる。
【0048】
ステップS5: センサ装着候補位置を選定する前提となる外力分離領域と外力分離角度を算定する。選定の方法としては、応力解析及び角度変換に基づいて応力群を得た後の、応力出力が得られ易く、なおかつ、センサを装着する外的条件として好ましい位置となれば良い。
【0049】
この際、ステップS4で求めた応力関数は、角度群φ{A,B,C}の関数となるため、角度群φ{A,B,C}をパラメータとして各々の応力を記述する。コーシーの式はから三角関数であるため、合成波として表されることになる。このため、合成波の振幅から、極小/極大値が現れる事になる。この応力関数をそれぞれの角度群φ{A,B,C}を独立に変化させて得たものが、図3(a)、(b)、(c)のグラフである。この図によって、それぞれの外力の分離率のよい位置と角度を求めることも可能である。
また、分離率の良い位置Piを求める方法としては、(7)〜(12)式が
Σ´(F1, Pi)=G´{σx1´,(極小), (極小), (極小), (極小), (極小)}、Σ´(F2, Pi)=G´{ (極小),σy2´, (極小), (極小), (極小), (極小)}、Σ´(F3, Pi)=G´{ (極小),(極小), σz3´, (極小), (極小), (極小)}、Σ´(F4, Pi)=G´{ (極小),(極小), (極小), τxy4´, (極小), (極小)}、
Σ´(F5, Pi)=G´{ (極小),(極小), (極小), (極小), τyz5´, (極小)}、
Σ´(F6, Pi)=G´{ (極小),(極小), (極小), (極小), (極小), τzx6´}となる場合は、応力σx1´を検出する応力センサで外力F1を、以下同様にしてσy2´でF2を、σz3´でF3を、τxy4´でF4を、τyz5´でF5を、τzx6´でF6を検出すれば良い事になる。
【0050】
具体例として、図1は実際の構造体(サスペンション)での適用例である。図1では、3次元歪センサブロック1の中心軸SCが、この構造体(サスペンション)Kが主構造体(不図示)に支持される支持支点Xと、この構造体Kに外力が作用する外力作用点Oを結ぶ直線に平行になるようにする事で、τyz´を増大させ、その他の角度変換後応力を低下させ、擬似的ではあるが、上式に近い条件を作り出している事が解った。なお、この角度条件は、具体的な構造体の形状、支持条件に依存して変化するものであるが、一般的な自動車のサスペンションに限定する限り、ほぼそのまま適用可能なものであると考える。
【0051】
ステップS6:こうして得られたそれぞれの外力に対応する外力分離領域ZFx,ZFy,ZFz、ZMx,ZMy,ZMzの重複領域ZZを算出する。ここで外力分離領域ZFx・・・については、領域内の各位置について、対応した外力の分離率が良くなる角度も含まれており、その意味で、外力分離領域の重複領域ZZには、対応した外力の分離率が良くなる角度を重複して含まれている。
【0052】
ステップS7:ステップS6で得られる重複領域ZZ内で、更に、応力関数を用いて、応力計測が可能なセンサ素子位置・角度であるかを判断する。
重複領域のうちから、センサ装着位置を決定するにあたっては、サスペンション組付時のセンサ配線の他部材との干渉がない部分を選定し、なおかつ、装着位置へのセンサ装着孔の加工による構造体の強度計算を行なって、最も強度低下が少ない部分にセンサを装着する。
【0053】
前記方法で位置を決定した後の、センサ装着角度としては、製造時には装着角度誤差が避けられない点を考慮し、例えば図3のグラフから、センサ出力の装着角度誤差マージンが最も広い部分を選定した上で装着角度を決定する。
【0054】
前記の条件を満たす、応力計測が可能な位置・角度であればこれをセンサ装着位置Ps(角度φs)とする。 応力計測が不可能、すなわち、前記の条件を満足しないか、あるいは、外力に対して独立な条件(独立性の条件)が得られず、複数の外力に対して、全ての応力値が同じ値あるいはその倍数となる規則的な傾向を示した場合には、新たなセンサ装着候補位置を選定する。
【0055】
ここで、外力分離領域を得るための種種の方法を説明する。この方法は、ステップS5で用いられるものである。
分離率のよい応力関数を選び出す一般的な方法のひとつとして、(7)、(8)式について、F1とF2で比較して考えた場合、外力F1と、外力F2に対しては以下の条件を満たすものを選び出す方法がある。すなわち、各構成要素のうち、例えばσx1´,σy1´, σx2´,σy2´に対して、
「σx1´=k ×σx2´かつσy1´ =k ×σy2´となるkが存在しない」−(13)
前記(13)は必要条件であり、これは、各構成要素のうち、同種の構成要素が独立であれば良いという条件と等価である。この条件を想定体系全体について記述すれば、
「外力F1からF6のうち、任意の2外力Fp、Fqに対して、
σxp´=k×σxq´ かつσyp´=k×σyq´かつσzp´=k×σzq´かつ
τxyp´=k×τxyq´かつτyzp´=k×τyzq´かつτzxp´=k×τzxq´
となるkが存在しない」 −−(14)
(p=1〜6、q=1〜6、p≠qであり、σxp´、σyp´、σzp´、τxyp´、τyzp´、τzxp´は外力Fpが加えられた際の位置Piでの応力群の構成要素、σxq´、σyq´、σzq´、τxyq´、τyzq´、τzxq´は外力Fqが加えられた際の位置Piでの応力群の構成要素)
という条件になる。
【0056】
前記(14)の条件は、外力を固定した場合には、応力変換前の関数表記、すなわち位置Piのみの関数表記ではX,Y,Zの3変数の為、位置Pi自体に制約条件が必要となる事は自明であるが、応力変換後の関数表記では、X,Y,Zの3変数に、角度群φ{A,B,C}の成分であるA,B,Cの回転角度変数が加わった6変数であるため、角度A,B,Cに対して制約条件(基準)を加えてやる事で、位置変数の制約条件を緩和できることを示している。
【0057】
分離率のよい応力関数を選び出す他の方法を以下に示す。
【0058】
この場合、歪検知素子2(例えば、図1に示した6つの素子)からの歪信号をεa、εb、εc、εd、εe、εfとして、この歪から得られる応力と外力との関係を用いる。
【0059】
A)応力解析により得られた、すべての位置における応力群 Σ(Fn、Pi)={σx(n,i)、σy(n,i)、σz(n,i)、τxy(n,i)、τyz(n,i)、τzx(n,i)}から、各々の歪εx(n,i)、εy(n,i)、εz(n,i)を以下の式にて求める。ここで、
Fn(n=1〜6)は負荷される力(あるいはモーメント)、Pi(i=1〜N)は位置である。
εx(n,i)={σx(n,i)’−ν(σy(n,i)’+σz(n,i)’)}/E
εy(n,i)={σy(n,i)’−ν(σz(n,i)’+σx(n,i)’)}/E
εz(n,i)={σz(n,i)’−ν(σx(n,i)’+σy(n,i)’)}/E
なお、上式での σx(n,i)’、σy(n,i)’、σz(n,i)’ とは、各々、センサ体が位置Piに角度φ(A,B,C)で配置された場合の、正規座標系X、Y、Z軸に対しての垂直応力であり、σx(n,i)’、σy(n,i)’、σz(n,i)’と応力群
Σ(Fn、Pi)との関係は、センサ体の基準線分ΦsとX、Y、Z軸とのなす角度を各々A、B、Cとして、以下で表される。
【0060】
σx(n,i)=σx(n,i)’×(1+cosA)/2
σy(n,i)=σy(n,i)’×(1+cosB)/2
σz(n,i)=σz(n,i)’×(1+cosC)/2
τxy(n,i)=σz(n,i)’×sin(2C)/2
τyz(n,i)=σx(n,i)’×sin(2A)/2
τzx(n,i)=σy(n,i)’×sin(2B)/2
B)A)で求めた歪は、正規座標系のX、Y、Z軸に平行な歪量であるので、これを、歪ゲージを配設する角度として、例えば±45°の角度をつけて配設するとして、ゲージが検出すると予測される歪量 εa〜εfを求める。
【0061】
ここでΔεx、Δεy、Δεzは、基板厚みを考慮した変動量(有限要素法による応力解析にて決定)、νはポアソン比(材料定数、〜0.3)である。
【0062】
C)ある位置Piで外力Fnが加わった時に、予想されるセンサ出力Sr(Fn,Pi)(r=1〜6)は、B)で求めた予測歪量の1次式で表され、以下となる。
【0063】
ここで、Piは固定とすると、上式は36個の未知数ka1、ka2、・・kf6を持つ。これらの未知数を決定するため、外力Fn(n=1〜6)全てを考慮した上で
分離率が良い条件式として、次の36個の条件式を設ける。
【0064】
前記は、分離率1%以下となる条件式であり、これを満たすka1、ka2、・・・kf6の値が存在すれば、Piはセンサ装着位置候補となる。
【0065】
上式を解くため、通常は上式の不等号を等号として連立方程式を解く。36の未知数に対する36の方程式であるため、連立方程式の解は、通常は存在するが、36の式各々が、その他の35の式に対して独立でない場合には解が存在せず、この場合には、センサ装着候補位置とならない。
【0066】
また、前記の解が存在しても、Piが物理的にセンサが装着できない位置であればその位置は、センサ装着候補位置とならない。
【0067】
なお、歪検知素子が4個の場合においては、4未知数の連立方程式となるため、前式(15−1)から(15−36)の式は、以下の(16−1)から(16−16)の式にて表される。
図4は、本発明の3次元外力測定ユニットの一例を示すブロック図である。なお、これよりすでに説明した部分と同じ部分については、同じ符号を付して、重複説明を省略する。
【0068】
この3次元外力測定ユニット5は、2個の歪検知素子2を交差させたセンサセグメントSGを、相互に平行でない3つのベース面に配置した3次元歪センサブロック1と、このセンサブロック1の出力から、必要な外力を測定する信号演算処理回路部3とを備えている。
【0069】
信号演算処理回路部3は、6つの歪検知素子2(2−11、2−12、2−21、2−22、2−31、2−32)のそれぞれと3つの抵抗Rで構成された個別のブリッジ回路31、それぞれの歪検知素子2から出力される歪信号を増幅する歪増幅回路32、増幅された歪信号を応力に演算し変換する歪/応力変換部33と、この歪/応力変換部33からの応力信号を、3次元歪センサブロック1の設置位置と設置角度について得られた応力関数(位置と角度の関数)を用いて角度変換する応力角度変換部34と、この応力角度変換部34の出力から、測定すべき外力(外モーメントを含む。)を演算して出力する外力演算処理部35を備えている。
【0070】
3次元歪センサブロック1のそれぞれのベース面1aに配設される2つの検知素子2は直交している。
【0071】
この信号演算処理回路部3での演算処理の流れは以下の通りである。
【0072】
A)各々の素子出力(抵抗変化)は、ブリッジ回路31を通して電圧変化へと変換される。なお、ブリッジ回路31は、実際には、3次元歪センサブロック1のベース面1a上に対応する歪検知素子2と共に配置されており、これにより、歪検知素子2の温度条件を補償するようにしている。
【0073】
B)ブリッジ回路31を通した出力は、一般的にはμV(マイクロボルト)オーダーの出力であるので、オペアンプ等を用いた歪増幅回路32にて、後段の処理回路で処理しやすい大きさ(1000倍以上)の歪信号εa、εb、εc、εd、εe、εfとする。
【0074】
C)増幅後の歪信号εa、εb、εc、εd、εe、εfは、歪/応力変換部33に入る。ここで、歪信号が応力へ変換される。ここで、所望の応力、例えば、歪信号からせん断応力、垂直応力への変換が行われる。
【0075】
D)歪/応力変換部33の出力(角度変換前の応力)は、センサブロック1の設置位置と角度について得られる(7)〜(12)の応力関数にて定義される、応力角度変換部34を通る。
【0076】
E)応力角度変換部34からの応力の出力は、外力演算処理部35にて外力に変換される。
【0077】
こうして、この3次元外力測定ユニット5は、信号演算処理回路部3の応力角度変換部34で、分離率のよい位置と角度の応力関数を用いているので、簡易な計算で、高い感度で、必要な外力をリアルタイムに測定することができる。
【0078】
この信号演算処理回路部3には、測定すべき外力に応じた複数の出力端子36を設け、演算した外力をパラレル出力する構成にすることができる。また、共通の出力端子37を設け、演算した外力を、予め定めた所定の順序で循環的に出力する、いわゆるシリアル出力とすることができる。
【0079】
また、信号演算処理回路部3を構成する歪増幅回路32には、演算増幅器B1、B2、B3、B4、B5、B11、B12が、歪/応力変換部33にはC1、C2が、、応力角度変換部34には演算増幅器D、外力計測演算処理部35には演算増幅器Eが用いられており、簡易なハード構成で高速演算処理が可能となり、実装基板はカスタムIC化され得る。
【0080】
図5は、本発明の3次元歪センサブロックとその設置態様の一例を示すもので、(a)はその正面図、(b)は側面図である。
【0081】
本発明の3次元歪センサブロック1は、その設置位置と姿勢が決まれば、構造体(サスペンション)Kの1箇所の位置Psに埋設設置することができるので、構造体の強度的、機能的性能に支障となることが少ない。
【0082】
図6は、本発明の3次元歪センサブロックを例示する図である。
3次元歪センサブロック1A、1B、1Cのベース面1aに配置した歪検知素子2は、いわゆる歪ゲージと称されるもので、その素材は、熱膨張係数が低く温度特性が良好なNiCr、あるいは高いゲージ率を持ち歪感度の高いβ―Ta、あるいは歪感度の高い半導体系材料、もしくはバルク材料よりも高感度である結晶構造制御されたBaTiO3系材料に代表されるセラミクス圧電体、あるいは前記の組合せからなる事が望ましい。
【0083】
また、歪センサブロック1の本体材料は、想定する歪量に応じて、構造体と同材料の金属、あるいは熱膨張係数が近い他種の金属、あるいは応力伝達効率が高い高弾性率を持つセラミクス、あるいは高い歪出力となるエポキシ、アクリルに代表される高分子材料、あるいは前記の組み合わせからなる事が望ましい。
【0084】
3次元歪センサブロック1は、図4、5で例示した立方体であってもよいが、求めたい外力が4外力以下の場合において、図6(a)に示す3次元歪センサブロック1Aのように、平板上の互いに平行なベース面1aに2つの歪検知素子2を交差させたセンサセグメントSGをそれそれ配置したものであってもよい。図6(a)は、センサセグメントの上記配置態様をきめるのに、そのセンサブロックを埋設する位置及び角度についての応力関数を用いたものであり、これによって、ABS制御等を行う上で有効とされる3外力(路面摩擦力、横力、および垂直抗力)と転がり抵抗モーメント(ブレーキトルク)を計測することができ、これらをパラメータとした運動方程式を採用することによって、従来手法のような車輪速度をパラメータとした制御と比してその制御精度を向上することができる。
【0085】
また、図6(b)に示す3次元歪センサブロック1Bのように、互いに平行なベース面1aにそれぞれセンサセグメントSGを配置した平板状のセンサ体1bを2個用いて、それぞれのベース面1aが相互に平行にならないように組み合わせたものであってもよい。図6(b)では、ベース面1a上にセンサセグメントSGとして4個の歪検知素子を配置する事で、図6(a)の場合と同様に4外力を測定でき、もう一方のセンサ体に配置された2個の歪検知素子からなるセンサセグメントSG、あるいはこの他の歪検知素子との組み合わせにて、6外力のうちの残り2外力を測定可能とするものである。
また、図6(c)に示す3次元歪センサブロック1Cのように、平板状のセンサ体1b3個を立方体の互いに平行でない面をなすように配置し、各々のベース面1aの片側だけにそれぞれセンサセグメントSGを配置してもよい。
図6(a)から(c)の変形例は、6外力の分離率が良い応力方向を平板状のセンサ体1bを用いて測定するための手法である。
【0086】
重要なのは、それぞれのベース面1aに配置されるセンサセグメントSGの配置態様であり、本発明では、それぞれのセンサセグメントSGの配置態様を、そのセンサブロックを埋設する位置についての応力関数を用いて決めるようにしている。これは、例えば、センサブロック1Aについては、センサ体1bの相互の交差角の決定に応力関数を用いるという意味であり、センサブロック1Cについては、互いに平行なベース面1a上にセンサセグメントSGを配置するということを、応力関数を用いて決めたということである。
【0087】
例えば、せん断歪を測定する場合には、応力関数の外トルクとの分離率がよい配置に、垂直応力を測定する場合には、応力関数の外力との分離率がよい配置とすればよい。
【0088】
これによって、求めたい外力と歪検知素子の歪信号から得られる応力との分離率がよくなり、求めたい外力に対応した歪をより感度良く検知することができる。
【0089】
なお、本発明の3次元歪センサブロック、3次元外力測定ユニット、構造体の外力測定方法は、ここで説明した車両だけでなく、他の複雑な構造体で複数の外力を受けるものについて、例えば、ロボットアーム、医療用の義肢などにも適用可能である。
【0090】
【発明の効果】
請求項1に記載の3次元歪センサブロックによれば、センサブロックそのものの構成において、歪検知素子の配置態様をきめるのに、そのセンサブロックを埋設する位置についての応力関数を用いるものである。これによって、求めたい外力と歪検知素子の歪信号から得られる応力との分離率がよくなり、求めたい外力に対応した歪をより感度良く検知することができる。
【0091】
請求項2に記載の3次元歪センサブロックによれば、請求項1の効果に加え、互いに平行となる2つのベース面の各々に前記センサセグメントを配置し、求めたい外力が4外力以下の場合において、センサセグメントの上記配置態様をきめるのに、そのセンサブロックを埋設する位置及び角度についての応力関数を用いたので、特にABS制御等を行なう上で有効とされる3外力(路面摩擦力、横力、および垂直抗力)と転がり抵抗モーメント(ブレーキトルク)を計測することができ、これらをパラメータとした運動方程式を採用することによって、従来手法のような車輪速度をパラメータとした制御と比してその制御精度を向上することができる。
請求項3に記載の3次元歪センサブロックによれば、請求項1の効果に加え、互いに平行とならない複数のベース面の各々に前記センサセグメントを配置したので、異なる複数の応力平面上での応力あるいはその分布を求めることを可能としている。
請求項4に記載の3次元歪センサブロックによれば、請求項1の効果に加え、互いに平行となる2つのベース面の各々に前記センサセグメントを配置したセンサ体を互いに平行とならないように複数個組み合わせることで、異なる平面での平面内応力およびそのセンサセグメントの面外変形による応力を求めることと、2つのセンサ体にて求めた2点での応力から、構造体にはたらく外力、すなわち力およびモーメントを差分あるいはその他の手法によって精度よく求めることを可能としている。
【0092】
請求項5に記載の3次元外力測定ユニットによれば、3次元歪センサブロックから出力される歪信号の演算処理、つまり、応力角度変換部での演算処理に、応力関数を用いるもので、これにより、歪信号から測定すべき外力に対応した応力を簡単にリアルタイムに算出することができる。
【0093】
請求項6に記載の3次元外力測定ユニットによれば、請求項5の効果に加え、演算した外力をパラレル出力することができる。
【0094】
請求項7に記載の3次元外力測定ユニットによれば、請求項5の効果に加え、共通の出力端子を設け、演算した外力を、予め定めた所定の順序で循環的に出力し、いわゆるシリアル出力することができる。
【0095】
請求項8に記載の3次元外力測定ユニットによれば、請求項5から7の効果に加え、演算増幅器を用いているので、簡易なハード構成で高速演算処理が可能となり、実装基板はカスタムIC化され得る。
【0096】
請求項9に記載の構造体の外力測定方法によれば、構造体への3次元歪センサブロックの設置位置、設置角度の決定に、応力分布から角度変換で得られる応力関数(位置と角度の関数)を用いたので、外力分離領域がより広くなり、あるいは、換言すれば、外力分離のための応力関数に角度が変数として導入されたために、分離率のよい場所を選択するための条件が緩和されため、複数の外力に対応した外力分離領域の重複領域が獲得できるようになり、ここに歪センサブロックを設け、さらに外力分離角度に対応させた設置角度とすれば、測定すべき外力全てを感度良く測定できる。
【0097】
請求項10に記載の構造体の外力測定方法によれば、請求項9の効果に加え、3次元歪センサブロックの設置角度を、支持支点と外力作用点とを結ぶ線に対して、センサブロックの中心軸が平行となる角度と具体的に既定したので、具体的な例において、センサブロックの設置角度を容易に決めることができる。
【0098】
請求項11に記載の3次元外力測定ユニットによれば、上述の3次元歪センサブロック、構造体の外力測定方法と組み合わせて、測定対象の構造体を車両のサスペンションとし、測定外力を最大限、垂直抗力、路面摩擦力、横力、オーバターニングモーメント、転がり抵抗モーメント(ブレーキトルク)、およびセルフアライニングモーメント(トルク)としたものであり、これらの外力を感度良く、リアルタイムに測定することができ、こうして測定された外力を用いて、車両の制動制御などを良好に行うことができ、例えば、ABS(Antilock Braking System)の性能を格段に向上させることができる。また、車両運動制御を実現するシステムを考えた場合、従来では車輪速度センサ、加速度センサ、ヨーレイトセンサ等の複数のセンサを組み合わせてシステムを構築しなければならないが、本発明では、単一の3次元歪センサブロックのみを装着するだけで上述の外力を計測計測可能となるので、そのコストを大きく低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る構造体の外力測定方法の原理を概念的に示すもので、(a)は3次元歪センサブロック設置位置の決定方法の説明図、(b)は3次元歪センサブロックの設置角度の決定方法の説明図
【図2】本発明に係る構造体の外力測定方法においてセンサブロック設置位置・角度の決定の手順を示すフローチャート
【図3】本発明に係る構造体の外力測定方法において外力分離領域を得るための応力関数を例示する図
【図4】本発明の3次元外力測定ユニットの一例を示すブロック図
【図5】本発明の3次元歪センサブロックとその設置態様の一例を示すもので、(a)はその正面図、(b)は側面図
【図6】本発明の3次元歪センサブロックを例示する図
【図7】従来の構造体の外力測定方法の原理を概念的に示すもので、(a)は測定対象の構造体の説明図、(b)はセンサブロック設置位置の決定方法の説明図
【符号の説明】
1 3次元歪センサブロック
1a ベース面
2 歪検知素子(歪ゲージ)
3 信号演算処理回路部
31 ブリッジ回路
32 歪増幅回路
33 歪/応力変換部
34 応力角度変換部
35 外力演算処理部
36 出力端子
37 共通の出力端子
5 3次元外力測定ユニット
A、B、C、D、E 演算増幅器
Fz 垂直荷重
Fx 路面摩擦力
Fy 横力
My ねじりトルク
K 構造体(サスペンション)
KM 主構造体(車両)
O 外力作用点(車軸)
Ps 設置位置
SC 中心軸
SG センサセグメント
X 支持支点
Z 外力分離領域
ZZ 重複領域
φs 設置角度
Φs 線分
Claims (11)
- 構造体の内部に埋め込まれ、その埋設位置の応力を測定するための3次元歪センサブロックであって、
前記3次元歪センサブロックの外表面を構成するベース面に歪検知素子を配置したセンサセグメントを備え、その設置位置について得られた位置と角度の関数である応力関数を用いて、前記センサセグメントの配置態様を決めることを特徴とする3次元歪センサブロック。 - 請求項1に記載の3次元歪センサブロックにおいて、
互いに平行となる2つのベース面の各々に前記センサセグメントを配置したことを特徴とする、3次元歪センサブロック。 - 請求項1に記載の3次元歪センサブロックにおいて、
互いに平行とならない複数のベース面の各々に前記センサセグメントを配置したことを特徴とする、3次元歪センサブロック。 - 請求項1に記載の3次元歪センサブロックにおいて、
互いに平行となる2つのベース面の各々に前記センサセグメントを配置したセンサ体を互いに平行とならないように複数個組み合わせたことを特徴とする3次元歪センサブロック。 - 3次元歪センサブロックと、信号演算処理回路部とを組み合わせて構成された3次元外力測定ユニットであって、
前記3次元歪センサブロックは、その外表面を構成するベース面に歪検知素子を配置したセンサセグメントを備え、かつ前記各々の歪検知素子は、個別のブリッジ回路を備えており、
前記信号演算処理回路部は、前記それぞれのベース面に配置された歪検知素子から出力される歪信号を応力に演算し変換する歪/応力変換部と、この歪/応力変換部からの応力信号を、前記3次元歪センサブロックの設置位置と設置角度について得られた位置と角度の関数である応力関数を用いて角度変換する応力角度変換部と、
この応力角度変換部の出力から、測定すべき外力を演算して出力する外力演算処理部とを備えたことを特徴とする3次元外力測定ユニット。 - 請求項5に記載の3次元外力測定ユニットにおいて、
前記信号演算処理回路部は、測定すべき外力に応じた複数の出力端子を設け、演算した外力をパラレル出力する構成にしている3次元外力測定ユニット。 - 請求項5に記載の3次元外力測定ユニットにおいて、
前記信号演算処理回路部は、共通の出力端子を設け、演算した外力を、予め定めた所定の順序で循環的に出力する構成にしている3次元外力測定ユニット。 - 請求項5から7のいずれかに記載の3次元外力測定ユニットにおいて、
前記信号演算処理回路部を構成する歪/応力変換部、応力角度変換部、外力計測演算処理部は、演算増幅器を組み合わせて構成されている3次元外力測定ユニット。 - 主構造体に支持され、外部から1点に集中して外力を受ける構造体に作用する外力を、この構造体内に設けた単一の3次元歪センサブロックによって分離計測された応力からリアルタイムに測定するための構造体の外力測定方法であって、前記3次元歪センサブロックは、その外表面を構成するベース面に歪検知素子を配置したセンサセグメントを備えたものであり、
測定すべきそれぞれの外力について、該外力によって前記構造体内に発生する応力分布を算出し、この応力分布から3次元角度変換によって得られる位置及び角度の関数である応力関数において該外力の独立性、分離率が良い外力分離領域及び外力分離角度を求め、こうして得られた全ての外力分離領域及び外力分離角度の重複領域内から前記3次元歪センサブロックの設置位置及び設置角度を決定することを特徴とする構造体の外力測定方法。 - 請求項9に記載の構造体の外力測定方法において、
前記3次元歪センサブロックの設置角度を、
前記主構造体に前記構造体が支持される支持支点と前記構造体に外力が作用する外力作用点とを結ぶ線に対して、前記3次元歪センサブロックの中心軸が平行となるような設置角度とすることを特徴とする構造体の外力測定方法。 - 請求項5から8のいずれかに記載の3次元外力測定ユニットおいて、
前記3次元歪センサブロックとして、請求項1から4のいずれかに記載の3次元歪センサブロックを用い、
請求項9から11のいずれかに記載の構造体の外力測定方法を用いて、該3次元歪センサブロックを設置し、前記主構造体として車両を対象とし、前記構造体として、前記車両の車輪を支持連結する支持部材であるサスペンションを対象とし、
測定すべき外力が、最大限、前記車輪と走行路面との間の接地面に作用する垂直抗力、前記車両の進行方向に加わる路面摩擦力、前記車両の進行方向に直角に作用する横力、前記車両に加わるオーバターニングモーメント、転がり抵抗モーメント、およびセルフアライニングモーメントであることを特徴とする3次元外力測定ユニット。
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