JP2004115879A - 金属表面に異種物性の粒子、短繊維を接合するための複合金属箔 - Google Patents

金属表面に異種物性の粒子、短繊維を接合するための複合金属箔 Download PDF

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梅村貢
Kazuhisa Senoo
瀬野尾和久
Hironobu Amano
天野浩伸
Taisuke Harada
原田泰典
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Abstract

【課題】金属母材は純度の高いものが要求されることなく、単純な処理で金属母材表面に前記金属母材の表面硬度より高い硬化層を容易に形成する。
【解決手段】前記金属母材より硬度の高い多数の微粒子を金属箔で包み板形状にした金属表面に異種物性の微粒子又は短繊維を接合するための複合金属箔と、この金属箔を温度50℃以上に加熱した金属母材の表面に載せた後、前記金属箔の表面に多数の粒を所要速度でかつ所要投射密度で打ち込んで、前記金属箔と金属母材の表面とを塑性変形させ、これにより、前記金属母材表面に前記金属箔を介在させて前記微粒子を接合する。
【選択図】なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、諸部品を構成している金属母材の機能を高めるために、この金属母材の表面に、この母材よりも硬度の高い特性を有する異種物性の粒子又は短繊維を接合するための複合金属箔及び接合方法に関する。
【0002】
【従来技術と課題】
従来、金属母材の表面硬度を向上させる方法として、いわゆる焼入れ法、溶射法、ライニング・コーティング法やショットピーニング法などがある。しかし、これらの方法では、金属母材は表面活性度の高いものが要求され、しかも多くの処理工程が必要であるなどの問題があった。
【0003】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、その目的は、金属母材は表面活性度の高いものが要求されることなく、単純な処理で金属母材表面の硬度を上げることができる複合金属箔及び接合方法を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために本発明の金属表面に異種物性の微粒子又は短繊維を接合するための複合金属箔は、金属母材の表面に異種物性の粒子又は短繊維を接合するための複合金属箔であって、前記金属母材より硬度の高い多数の微粒子を金属箔で包み板形状、棒状、線状若しくは縄状にしたことを特徴とする。
そして、この複合金属箔は、たとえば、金属母材の表面に高硬度の微粒子を接合するために使用する複合金属箔であって、温度50℃以上に加熱した金属母材の表面に、この金属母材の加熱前の硬度より高い硬度を有する多数の微粒子を金属箔で包み板状、棒状、線状若しくは縄状にして載せ、又は巻きつけた後、前記金属箔の表面に多数の金属粒を所要速度でかつ所要投射密度で打ち込んで、前記金属箔と金属母材の表面とを塑性変形させ、これにより、前記金属母材表面に前記金属箔を介在させて前記微粒子を接合する。
【0005】
上記の目的を達成するために本発明の高硬度微粒子の金属母材表面への接合方法は、50℃以上に加熱した金属母材の表面に、請求項1から請求項12のいずれかひとつの請求項に記載の金属表面に異種物性の微粒子又は短繊維を接合するための複合金属箔を載せた又は巻きつけた後、前記複合金属箔の表面に多数の金属粒あるいは超硬合金粒あるいは金属ガラス粒あるいはセラミックス粒を所要速度でかつ所要投射密度で打ち込んで、前記金属箔と金属母材の表面とを塑性変形させ、これにより、前記金属母材表面に前記金属箔を介在させて前記微粒子を接合することを特徴とする。
【0006】
【発明の実施の形態】
なお、本発明の複合金属箔において、異種物性の微粒子は、金属、超硬合金、無機質、アモルファス或いは金属ガラスその他の異種物性の単一又は複数種類の微粒子でであって、球形状、概略球形状、多角体状、円柱体状を成している。
【0007】
本発明の複合金属箔において、異種物性の微粒子の大きさは、20μm以上3000μm以下とすることができる。
20μm未満では、前記の金属箔上で1乃至3層に堆積させ、均等に包装することが極めて難しく、複合金属箔の製造コストも高くなる。
3000μmより大きいと、粒子の重さにより複合金属箔が変形しやすく、該金属箔の材質によっては破断することもあり、接合工数も多くなり、接合不良の頻度も高くなる。
【0008】
また、前記異種物性の短繊維の材質が炭化珪素、炭化チタン、カ−ボン、アモルファス、金属ガラス若しくはガラスのいずれかひとつ以上とすることができる。さらに、前記異種物性の微粒子が1層から3層とすることができる。
【0009】
そして、前記異種物性の微粒子と金属箔が数層に積層されていることができる。さらにまた、前記金属箔が前記金属母材よりも延性或は融点が低い純アルミニウム若しくはアルミニウム合金とすることができる。
【0010】
一方、本発明の複合金属箔において、前記金属箔の厚さは10μmから300μmであることができる。
10μm未満では、前記の微粒子あるいは短繊維を包むとき破損してしないよう加工することが必要であり、また、接合工程では接合に適合した投射エネルギでない場合は、該金属箔が破壊するからである。
300μmより大きい場合では、該金属箔が接合時に変形しにくいため、大きな投射エネルギが必要であり、不経済である。また、大きな投射エネルギが該金属箔に付与されるため、該金属箔内部の微粒子或は短繊維の材質によって接合時に変更することも発生する。
なお、前記金属箔の厚さが異なるようにすることができる。さらに、前記金属箔の少なくとも1種類が銅若しくはその合金箔、アルミニウム又はその合金箔、又はステンレス箔又はチタン箔又はその合金箔とすることができる。
【00011】
またなお、本発明の接合方法において、金属母材の温度が50℃以下では、金属箔および微粒子を金属母材表面に接合することが著しく困難である。さらに、金属粒の所要投射速度が40m/秒未満では金属箔および微粒子を金属母材表面に接合することが著しく困難である。またなお、金属粒の所要投射密度が30kg/m未満では金属箔および微粒子を金属母材表面に接合することが著しく困難である。
さらに、前記接合処理で打込む粒は概略球形の多数の金属粒あるいは超硬合金粒あるいは金属ガラス粒あるいはセラミックス粒は単一種類が好ましい。また、金属箔面に対してできるだけ直角に対向するように打ち込めば母材との接合はより効率的に行うことができる。また、その材質は、安価である金属粒がより好ましい。
さらに、打ち込む粒の大きさは、選ばないが、複数段で打ち込み場合には、最終的には50μm以上2000μmを用いることが好ましい。
50μm未満では、適度な打ち込み速度を得るために投射装置の翼車の高速回転が必要であり、装置が高くなる。また、2000μmより大きい場合には、打ち込みエネルギが大きいため、前述の金属箔が接着時に一時的に延び、破れ易くなるため、打ち込みエネルギの調整をより精度よく行う必要がある。
【0012】
なお、本発明において金属母材、金属箔およびマスキング手段を真空室内に置いて粒を打ち込むことにより前記金属母材と金属箔を接合する時に発生する空気の巻き込みを防止することができる。
【0013】
【実施例】
図1に示すように、微粒子として粒径約100μmの超硬合金製の球形微粒子1と粒径約80μmの純アルミニウムを体積比8:2で混合した混合微粒子を、金属箔として厚さ20μmのアルミニウム箔2で包囲して板形状の複合金属箔を作成した。次いで、アルミニウム箔2の周囲を挟持手段3で把持する。そして、球形微粒子1を包囲したアルミニウム箔2を、吸引箱4内に配置された表面を機械加工した金属母材としての軟鋼製角棒5の上面に載せ、さらにアルミニウム箔2の上面の一部を、マスキング手段としての板部材6でマスキングする。
【0014】
その後、吸引箱4内を吸引減圧しながら、金属軟鋼製角棒5に温度100℃の熱風を吹き付けて金属軟鋼製角棒5を温度100℃以上に加熱し、さらに金属軟鋼製角棒5および板部材6の上方から金属粒として粒径1mmの鋳鋼製粒を、投射速度50〜100m/秒、投射密度50〜150kg/mで打ち込んだ。
【0015】
こうして表面に球形微粒子1および
アルミニウム箔2を結合した軟鋼製角棒5の表面のSEM写真を図2に示す。図2において、ほぼ中央に位置する概略円形状のものは超硬合金製の微粒子であり、この微粒子を包囲している灰色部はアルミニウム箔部である。また、金属母材部は前記アルミニウム箔部の下方に位置したものである。また、球形微粒子1およびアルミニウム箔2を結合した軟鋼製角棒5の表面硬度はHB130であった。そして、SEM写真からも解るように軟鋼製角棒5とアルミニウム箔2との間には有害な隙間がなく、しかも、球形微粒子1とアルミニウム箔2との間にも剥離と思われる有害な隙間は全くなかった。
【0016】
従って、従来の熱処理方法を適用して高硬度な表面を形成する場合は、熱処理に適合した高級材料の選択と高度な熱処理技術あるいは高度な熱処理プロセス等が必要であるため、製作コストは著しく高価なものになる。しかし、本発明によれば高価な高級母材の選択は不要であり、処理技術や処理プロセスも簡単であるため、製作コストは著しく安く、この発明による効果は極めて大きい。
なお、本発明による接合では前記金属箔と金属母材の表面とを塑性変形させ、これにより、前記金属母材表面に前記金属箔を介在させて前記微粒子を接合する。この際、金属母材の最表面及び金属箔が、打ち込まれる粒の運動エネルギ及びこれらの摩擦エネルギ等により周辺温度のみが上昇する。この温度上昇は、複合金属箔が薄く異種物性粒が小さいときには、接合のために利用することも可能である。
【0017】
またなお、本実施例においては、粒の打ち込みの前に、球形微粒子1を包んだアルミニウム箔2と金属母材料としての軟鋼製角棒5を同時に加熱したが、別々に加熱しても良い。また、熱容量の大きな金属母材を用いる場合には、金属母材のみを加熱して加熱しない金属箔等を載せた後、粒の打ち込みをしても良い。
【0018】
さらに、本実施例では微粒子として粒径約100μmの超硬合金製の球形微粒子1を、金属箔として厚さ20μmのアルミニウム箔2で包囲して板形状の複合金属箔を作成したが、棒状(図3)、線状(図4)若しくは縄状(図5)のような複合箔を作成し、用途に応じて選択して使用することができる。図3、図5及び図6に示すように球形微粒子1としては純アルミニウム微粒子1bを体積換算で5%から30%加えることで、他の微粒子(たとえば、超硬合金製の球形微粒子1cと母材金属との接合がよくなることが確認できた。より好ましくは15%から25体積%の純アルミニウムを加えるとよいことが確認できた。また、太線になっているのは、金属箔を重ねている状態を示している(図3乃至図6)。
【0019】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように本発明は、金属母材の表面に高硬度の微粒子を接合するための複合金属箔及び接合方法であって、
複合金属箔は、金属母材の表面に異種物性の粒子又は短繊維を接合するための複合金属箔であって、前記金属母材より硬度の高い多数の微粒子を金属箔で包み板形状にしたものであり、接合方法は、温度50℃以上に加熱した金属母材の表面に、この金属母材の加熱前の硬度より高い硬度を有する多数の微粒子を金属箔で包み板状にして載せた後、前記金属箔の表面に多数の粒を所要速度でかつ所要投射密度で打ち込んで、前記金属箔と金属母材の表面とを塑性変形させ、これにより、前記金属母材表面に前記金属箔を介在させて前記微粒子を接合する。
従って金属母材は熱処理やその他の表面硬化処理法に適用する母材に比較し、質の高い性質や純度の高いものが要求されることなく、金属母材の表面に硬度向上を目的にした硬化層を容易に形成できることから、優れた実用的効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による接合処理時における金属母材、微粒子入り金属箔、吸引箱等の関係図
【図2】微粒子入りアルミニウム箔と軟鋼製角棒を結合した部分を撮影したSEM写真
【図3】本発明の棒状の複合金属箔の概念図で、(イ)はその斜視図、(ロ)は断面図である。
【図4】本発明の線状の複合金属箔の概念図で、(イ)はその斜視図、(ロ)は断面図である。
【図5】本発明の縄状の複合金属箔の概念図で、(イ)はその斜視図、(ロ)は断面図である。
【図6】本発明の複合金属箔の概念断面図である。
【符号の説明】
1 微粒子
2 金属箔
3 挟持手段
4 吸引箱
5 金属母材
6 マスキング板部材

Claims (15)

  1. 金属母材の表面に異種物性の粒子又は短繊維を接合するための複合金属箔であって、
    前記金属母材より硬度の高い多数の微粒子を金属箔で包み板形状、棒状、線状若しくは縄状にしたことを特徴とする金属表面に異種物性の微粒子又は短繊維を接合するための複合金属箔。
  2. 前記異種物性の微粒子が金属、超硬合金、無機質、アモルファス或いは金属ガラスその他の異種物性の単一又は複数種類の微粒子であり、大きさが20μm以上3000μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の金属表面に異種物性の微粒子又は短繊維を接合するための複合金属箔。
  3. 前記異種物性の短繊維の材質が炭化珪素、炭化チタン、カ−ボン、アモルファス、金属ガラス若しくはガラスのいずれかひとつ以上であることを特徴とする請求項1に記載の金属表面に異種物性の微粒子又は短繊維を接合するための複合金属箔。
  4. 前記異種物性の微粒子が1層から3層であることを特徴とする請求項1に記載の金属表面に異種物性の微粒子又は短繊維を接合するための複合金属箔。
  5. 前記異種物性の微粒子と金属箔が数層に積層されていることを特徴とする請求項1に記載の金属表面に異種物性の微粒子又は短繊維を接合するための複合金属箔。
  6. 前記金属箔が前記金属母材よりも融点が低い純アルミニウム若しくはアルミニウム合金であることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の金属表面に異種物性の微粒子又は短繊維を接合するための複合金属箔。
  7. 前記金属箔が前記金属母材よりも延性がある純アルミニウム若しくはアルミニウム合金であることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の金属表面に異種物性の微粒子又は短繊維を接合するための複合金属箔。
  8. 前記金属箔の厚さが10μmから300μmであることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれかに記載の金属表面に異種物性の微粒子又は短繊維を接合するための複合金属箔。
  9. 前記金属箔の厚さが10μmから300μmであり、かつ形状が棒状、線状若しくは縄状であることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれかに記載の金属表面に異種物性の微粒子又は短繊維を接合するための複合金属箔。
  10. 前記金属箔の厚さが異なっているものを微粒子若しくは短繊維をはさむように組み合わせたことを特徴とする請求項8又は請求項9に記載の金属表面に異種物性の微粒子又は短繊維を接合するための複合金属箔。
  11. 前記金属箔の少なくとも1種類が、アルミニウム又はその合金箔、又はステンレス箔であることを特徴とする請求項1から請求項10のいずれかに記載の金属表面に異種物性の微粒子又は短繊維を接合するための板形状の複合金属箔。
  12. 金属母材の表面に載せた後、上方からの圧力により前記金属母材の表面と共に塑性変形させて前記母材金属に接合するための複合金属箔であって、前記金属母材より硬度の高い金属、超硬合金、無機質、アモルファス或いは金属ガラスその他の多数の微粒子を金属箔で包み板形状、棒状、線状若しくは縄状にしたことを特徴とする金属表面に異種物性の微粒子又は短繊維を接合するための複合金属箔。
  13. 金属母材の表面に高硬度の微粒子を接合する方法であって、
    加熱した金属母材の表面に、請求項1から請求項11のいずれかひとつの請求項に記載の金属表面に異種物性の微粒子又は短繊維を接合するための複合金属箔を載せた後、前記複合金属箔の表面に多数の金属粒あるいは超硬合金粒あるいは金属ガラス粒あるいはセラミックス粒を所要速度でかつ所要投射密度で打ち込んで、前記金属箔と金属母材の表面とを塑性変形させ、これにより、前記金属母材表面に前記金属箔を介在させて前記微粒子を接合することを特徴とする高硬度微粒子の金属母材表面への接合方法。
  14. 前記所要速度は40m/秒以上250m/秒以下であることを特徴とする請求項13に記載の高硬度微粒子の金属母材表面への接合方法。
  15. 前記所要投射密度は30kg/m以上であることを特徴とする請求項13又は請求項14に記載の高硬度微粒子の金属母材表面への接合方法。
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