JP2004115654A - 光重合開始剤マイクロカプセル含有紫外線硬化型剥離インクおよびこれを用いた剥離シート - Google Patents
光重合開始剤マイクロカプセル含有紫外線硬化型剥離インクおよびこれを用いた剥離シート Download PDFInfo
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Abstract
【課題】保存中に粘度上昇や硬化が発生せず、シート基材面に紫外線硬化型剥離インク層を積層し、そして紫外線照射すると、紫外線硬化型剥離インク層を硬化できる紫外線硬化型剥離インクおよびそれを用いた剥離シートの提供。
【解決手段】光重合開始剤マイクロカプセルを含有する紫外線硬化型剥離インクは保存中に粘度上昇や硬化が発生しないが、この剥離インクをシート基材面の所定部に塗工して剥離インク層を積層した剥離シートの剥離インク層中のマイクロカプセルを加圧するなどして破壊したり、あるいは光重合開始剤の透過性を向上させた後、紫外線照射すれば剥離インク層を硬化させることができる。
【選択図】 図1
【解決手段】光重合開始剤マイクロカプセルを含有する紫外線硬化型剥離インクは保存中に粘度上昇や硬化が発生しないが、この剥離インクをシート基材面の所定部に塗工して剥離インク層を積層した剥離シートの剥離インク層中のマイクロカプセルを加圧するなどして破壊したり、あるいは光重合開始剤の透過性を向上させた後、紫外線照射すれば剥離インク層を硬化させることができる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光重合開始剤マイクロカプセル含有紫外線硬化型剥離インクおよびこれを用いた剥離シートに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、剥離剤として一般的に使用されているシリコーンは、ソルベント系が使用されていたが、近年の環境問題に対する意識の高まりにより、欧米を中心に脱溶剤化が促進されてきており、近年、溶剤を使用しないシリコーン100%のソルベントレス系の紫外線硬化型シリコーンが注目されている。しかし、ソルベントレス系の紫外線硬化型シリコーンに光重合開始剤を所定量配合したインクは、保存中に光重合成分の反応が進行して粘度が上昇して取り扱い性、塗工性が阻害される問題があった。
【0003】
本発明者は前記問題を解決するために、シート基材面に光重合開始剤含有インクからなるアンダーコート層を設け、その上に光重合開始剤を含有しないソルベントレス系の紫外線硬化型剥離インク層を設けることを提案した(特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】
特願2002−221936号
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、シート基材面に光重合開始剤含有インクからなるアンダーコート層を設け、その上に光重合開始剤を含有しないソルベントレス系の紫外線硬化型剥離インク層を設ける方法は手間がかかり煩雑であるという問題があった。
【0006】
本発明の第1の目的は、このような従来の問題を解決し、シート基材面に光重合開始剤含有インクからなるアンダーコート層を設けなくてもよく、しかも保存中に光重合成分の反応が進行して粘度上昇や硬化するなどの問題が発生しない紫外線硬化型剥離インクを提供することであり、
本発明の第2の目的は、シート基材面に、この紫外線硬化型剥離インク層が形成された剥離シートを提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者は前記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、光重合開始剤を例えば芯物質とするマイクロカプセルを含有する紫外線硬化型剥離インクを用いることにより、目的を達成し得ることを見い出して本発明を完成するに至った。
【0008】
本発明の請求項1は、光重合開始剤マイクロカプセルを含有することを特徴とする紫外線硬化型剥離インクである。
【0009】
本発明の紫外線硬化型剥離インクは、光重合開始剤を例えば芯物質として含むマイクロカプセルを含有するので、保存中に太陽光や蛍光燈の光に当たったりしても粘度上昇や硬化などの問題が発生しない。保存性がよいので本発明の紫外線硬化型剥離インクは低粘度で使用する剥離インクとして単独で取り扱うことができる。そして、シート基材面に本発明の紫外線硬化型剥離インクを塗工し、本発明の紫外線硬化型剥離インク層を積層し、そして加圧してこの剥離インク層中のマイクロカプセルを破壊したり、加熱してこの剥離インク層中のマイクロカプセルを膨張させて破壊したり、あるいは加湿してこの剥離インク層中のマイクロカプセルを破壊したり、あるいは塗工前や塗工中にマイクロカプセルを破壊したり、あるいはマイクロカプセルを破壊しなくても加圧・加熱・加湿などにより光重合開始剤の透過性を向上させ、光重合開始剤を光重合成分を含む連続相中に放出・拡散させた後、紫外線照射すれば、破壊されたマイクロカプセルから移行した光重合開始剤が、励起されて作用して、光重合成分の重合反応を起こし、紫外線硬化型剥離インク層を硬化させることができるとともに、紫外線硬化型剥離インク層とシート基材との界面での反応が著しくなり密着性が改善されて強固に接着する。
【0010】
本発明の請求項2は、請求項1記載の紫外線硬化型剥離インクにおいて、前記光重合開始剤マイクロカプセルが加熱により破壊されて光重合開始剤を放出するものであることを特徴とする。
【0011】
公知の加熱ロール、加熱炉、温風吹き付け、赤外線照射などの加熱手段により、光重合開始剤マイクロカプセルを加熱して破壊して光重合開始剤を放出・拡散させ、紫外線照射すれば、紫外線硬化型接着剤層を容易に硬化させることができる。
【0012】
本発明の請求項3は、請求項1記載の紫外線硬化型剥離インクにおいて、前記光重合開始剤マイクロカプセルが加圧により破壊されて光重合開始剤を放出するものであることを特徴とする。
【0013】
公知の加圧ロール、プレスなどの加圧手段により、光重合開始剤マイクロカプセルを加圧して破壊して光重合開始剤を放出・拡散させ、紫外線照射すれば、紫外線硬化型接着剤層を容易に硬化させることができる。
【0014】
本発明の請求項4は、シート基材面の所定部に、請求項1から請求項3のいずれかに記載の紫外線硬化型剥離インク層が積層されてなることを特徴とする剥離シートである。
【0015】
本発明の剥離シートは、構成が簡単で安価であり、この紫外線硬化型剥離インク層中のマイクロカプセルを前記のようにして破壊したり、あるいはマイクロカプセルを破壊しなくても加圧・加熱・加湿などにより光重合開始剤の透過性を向上させ、光重合開始剤を光重合成分を含む連続相中に放出・拡散させた後、紫外線照射すれば、破壊されたマイクロカプセルから移行した光重合開始剤が、励起されて作用して、光重合成分の重合反応を起こし硬化させることができるとともに、紫外線硬化型剥離インク層とシート基材との界面での反応が著しくなり密着性が改善されて強固に接着できる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の態様を詳細に説明する。
図1は、本発明の剥離シートの一実施例を示す断面説明図である。
本発明の剥離シート1は、シート基材2面の所定部に、光重合開始剤を芯物質として含むマイクロカプセル3を含有する本発明の紫外線硬化型剥離インクを塗工して紫外線硬化型剥離インク層4が積層されている。本発明の紫外線硬化型剥離インクは、光重合開始剤が芯物質としてマイクロカプセル3中に含まれていて連続相中の光重合成分と接触しないので、紫外線硬化型剥離インクの保存中に粘度が上昇したり硬化したりしない。
そして、本発明の剥離シート1を加圧するなどしてこの剥離インク層4中のマイクロカプセル3を破壊し、光重合開始剤を光重合成分を含む連続相中に放出・拡散させた後、剥離シート1の例えば上方から紫外線硬化型剥離インク層4に紫外線を照射すれば、光重合開始剤が励起されて作用して、光重合成分の重合反応を起こし、紫外線硬化型剥離インク層4を硬化できる。また、紫外線硬化型剥離インク層4とシート基材2間の密着性が改善されて強固に接着する。
【0017】
紫外線硬化型剥離インク層4の形成方法は刷毛塗りなど手動で塗工する方法でも自動的に塗工する方法でもあるいはこれらの組み合わせでもよく特に限定されないが、オフセット印刷機をもって印刷する方法は好ましく、例えばグラビアコーター、フレキソコーター、エアナイフコーター、バーコーターなどの塗工手段によりシート基材2面の少なくとも一方の面の所定部に本発明の紫外線硬化型剥離インクを塗工し、必要に応じて乾燥し、紫外線照射により硬化させて紫外線硬化型剥離インク層4を形成する。塗工量は特に限定されないが、例えば0.5〜30g/m2 、好ましくは3〜20g/m2 、さらに好ましくは5〜15g/m2 とする。
【0018】
本発明で用いる紫外線硬化型剥離インクは特に限定されるものではなく、従来公知の紫外線硬化型剥離インクでよく、市販品を用いることができる。具体的には、例えばシリコーン系、フッ素系、アルキルペンダント系、長鎖アルキル系などを挙げることができる。公知のソルベントレス系の紫外線硬化型シリコーンは好ましく使用できる。
【0019】
本発明で用いる光重合開始剤としては、従来公知のものでよく、例えば、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−メチル−1−プロパン−1−オン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1−ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド−ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイドなどが挙げられる。
これらの光重合開始剤は、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0020】
本発明で用いる光重合開始剤マイクロカプセルの壁材は、例えば、ゼラチン、ポリアミド、ポリウレタン、ポリエステル、ポリ尿素、ポリスルホンアミド、ポリスルホネート、ポリウレアなどである。また、カプセル生成手段においては、従来から慣用されている方法、例えば、インサイチュ法、界面重合法、コアセルベーション法、あるいは、オリフィス法も用いることができる。例えば、光重合開始剤を芯物質とし、酸触媒および乳化・分散剤的機能を有するスチレン無水マレイン酸共重合体の部分加水分解物と、ポリマーを形成する反応成分としてメラミンまたは尿素とホルマリン、あるいは、これらの初期重縮合物を用い、インサイチュ法によってメラミンまたは尿素−ホルマリン樹脂をカプセル壁材として形成し、マイクロカプセルを水系に分散生成させたマイクロカプセルの水系分散液を用いることができる。
上記の例においては、光重合開始剤を芯物質としたマイクロカプセルの例を示したが、これに限定されず、例えば壁材中に光重合開始剤を含有させることもできる。
【0021】
本発明の紫外線硬化型剥離インクには、必要に応じて、公知の添加剤を添加することができる。添加剤としては、例えば、粘度調整剤、老化防止剤、pH調節剤、消泡剤、各種安定剤、着色剤、グリセリンなどのロール転写性向上剤などを挙げることができる。
【0022】
本発明で用いるシート基材の素材としては、ガラス繊維、アルミナ繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維などの無機または有機繊維からなる織布、不織布、マット、紙(例えば、上質紙、中質紙、合成紙、各種再生紙、アート紙、コート紙、ミラーコート紙、コンデンサー紙、パラフィン紙、その他の紙の他に、それにオーバーコート層(保護層)をもつ用紙など)、シート状物あるいはこれらを組み合わせたもの、あるいはこれらに樹脂ワニスを含浸させて成形した複合物、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリイミド系樹脂、エチレン・ビニルアルコール共重合体、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂などのプラスチック、あるいはこれらにコロナ放電処理、プラズマ処理、紫外線照射処理、電子線照射処理、フレームプラズマ処理およびオゾン処理などの表面処理を施したもの、などの公知のものから選択して用いることができる。
【0023】
【実施例】
次に、実施例により本発明を更に詳しく述べるが、この発明の主旨と範囲に反することなしに、広範に異なる実施態様を構成することができることは明白なので、この発明は前記の特許請求の範囲において限定した以外は、これらの特定の実施態様に制約されるものではない。
【0024】
(光重合開始剤マイクロカプセルAの調製)
スチレン無水マレイン酸共重合体(商品名:Scripset−520、モンサント社製)を水酸化ナトリウムとともに溶解し、これを5質量%、pH4.5に調製した水溶液200質量部中に、フタル酸ジブチル(DBP)180質量部中にカチオン光重合開始剤(商品名:CG−24−61、チバ−ガイギー社製)20質量部を溶解させた液200質量部を乳化および分散させて平均粒子径6μmの乳化物を得る。この乳化物に、メラミン−ホルムアルデヒド初期重縮合物(商品名:Sumirez Resin513、住友化学社製)60質量部を加え、系の温度を75℃にて2時間撹拌し、本発明で用いる光重合開始剤マイクロカプセルAの分散液を得た。
【0025】
(光重合開始剤マイクロカプセルBの調製)
アジピン酸ビス2−エチルヘキシル(DOA)162質量部中にカチオン光重合開始剤(商品名:CG−24−61、チバ−ガイギー社製)18質量部を溶解させた液180質量部に、壁材としてイソシアネート(商品名:タケネートD−520、三井武田ケミカル社製)を50質量部(固形分)を加え撹拌する。この液を部分鹸化ポリビニルアルコール(鹸化度88%)(商品名:PVA−217、クラレ社製)の6質量水溶液200質量部中に、乳化および分散させて平均粒子径7μmの乳化物を得る。この乳化物に、蒸留水150質量部を加えて均一化した後、撹拌しながら50℃に昇温し、3時間カプセル化反応を行わせて目的の、本発明で用いる光重合開始剤マイクロカプセルBの分散液を得た。
【0026】
(実施例1)
温風送風機を付けたタンク容量2リットルのプラネタリーミキサ(形式:PLM−2、井上製作所製)にマイクロカプセルAの分散液を150質量部(固形分換算)と、UVカチオン重合型シリコーン(商品名:シリコリースPOLY200、荒川化学工業社製)170質量部とUVカチオン重合型シリコーン助剤(商品名:シリコリースRCA200、荒川化学工業社製)30質量部とを加えて混合する。充分に混合した液を45℃に加温し、撹拌しながら温風(出口温度50℃)を送り、蒸発した水蒸気を外部へ拡散させた。この状態を4時間保ちながら水分を除去し、水分量を1質量%以下に下げ、本発明の紫外線硬化型剥離インクを得た。
得られた本発明の紫外線硬化型剥離インクをシャーレ(直径90mm、高さ15mm)に8mm厚になるように入れ、このシャーレを水平真空版焼機(型式:P−802−G、大日本スクリーン製造社製)のガラス板上に置いた後、シャーレから紫外線ランプまでの距離を1mに調整し、120秒間紫外線を照射し、照射後の試料を観察したが、系の増粘や硬化は発生していなかった。
【0027】
本発明の紫外線硬化型剥離インクをフォーム上質紙(シート基材)(連量55kg)上に、3g/m2 になるように塗工を行った。この塗工に際しては、剥離インクをチューブポンプで送液し、その送液ポンプのローラーで加圧してマイクロカプセルを破壊させ光重合開始剤を光重合成分へ拡散させた。得られた紫外線硬化型剥離インク層に紫外線ランプ(高圧水銀ランプ、オゾンレス、160w/cm、2灯)を用いて紫外線を照射して硬化処理して、本発明の剥離シートを得た。本発明の剥離シートの前記剥離インク層は充分に硬化が進んでおりベタ付きはなかった。
この本明の剥離シートの前記剥離インク層に対する粘着力が約600N/mとなるように粘着剤(商品名:BPW4960、東洋インキ製造社製)を塗布したラベルを300g/m2 の荷重をかけて23℃、50%RHの雰囲気中で3日放置後、島津製作所製オートグラフAGS50でラベルの剥離力を測定したところ、剥離力は4.8N/mであった。
【0028】
(実施例2)
実施例1で使用したマイクロカプセルAの分散液の代わりにマイクロカプセルBの分散液を使用した以外は実施例1と同様にして本発明の紫外線硬化型剥離インクを得た。
得られた本発明の紫外線硬化型剥離インクを用いて実施例1と同様にして紫外線照射したが、系の増粘や硬化は発生していなかった。
【0029】
本発明の紫外線硬化型剥離インクをフォーム上質紙(シート基材)(連量55kg)上に、3g/m2 になるように塗工を行った。この紫外線硬化型剥離インク層を瞬間的に230℃に加熱しマイクロカプセル中の光重合開始剤を光重合成分を含む連続相へ拡散させた。得られた紫外線硬化型剥離インク層に紫外線ランプ(高圧水銀ランプ、オゾンレス、160w/cm、2灯)を用いて紫外線を照射して硬化処理して、本発明の剥離シートを得た。本発明の剥離シートの前記剥離インク層は充分に硬化が進んでおりベタ付きはなかった。
この本明の剥離シートの前記剥離インク層に対する粘着力が約600N/mとなるように粘着剤(商品名:BPW4960、東洋インキ製造社製)を塗布したラベルを300g/m2 の荷重をかけて23℃、50%RHの雰囲気中で3日放置後、島津製作所製オートグラフAGS50でラベルの剥離力を測定したところ、剥離力は5.1N/mであった。
続いて3日放置後のラベルを段ボールへ貼付し23℃、50%RHの雰囲気中で2時間放置後、90度剥離にて剥離を行ったところ、段ボールが紙剥けを起こしたため、充分な接着力を有していることが確認された。
【0030】
(実施例3)
実施例1で使用したUVカチオン重合型シリコーン助剤を他のUVカチオン重合型シリコーン助剤(商品名:シリコリースRCA250、荒川化学工業社製)に変更した以外は実施例1と同様にして本発明の紫外線硬化型剥離インクを得た。
得られた本発明の紫外線硬化型剥離インクを用いて実施例1と同様にして紫外線照射したが、系の増粘や硬化は発生していなかった。
【0031】
本発明の紫外線硬化型剥離インクをフォーム上質紙(シート基材)(連量55kg)上に、3g/m2 になるように塗工を行った。この塗工に際しては、剥離インクをチューブポンプで送液し、その送液ポンプのローラーで加圧してマイクロカプセルを破壊させ光重合開始剤を光重合成分を含む連続相へ拡散させた。得られた紫外線硬化型剥離インク層に紫外線ランプ(高圧水銀ランプ、オゾンレス、160w/cm、2灯)を用いて紫外線を照射して硬化処理して、本発明の剥離シートを得た。本発明の剥離シートの前記剥離インク層は充分に硬化が進んでおりベタ付きはなかった。
この本明の剥離シートの前記剥離インク層に対する粘着力が約600N/mとなるように粘着剤(商品名:BPW4960、東洋インキ製造社製)を塗布したラベルを300g/m2 の荷重をかけて23℃、50%RHの雰囲気中で3日放置後、島津製作所製オートグラフAGS50でラベルの剥離力を測定したところ、剥離力は45.1N/mであった。
続いて3日放置後のラベルを段ボールへ貼付し23℃、50%RHの雰囲気中で2時間放置後、90度剥離にて剥離を行ったところ、段ボールが紙剥けを起こしたため、充分な接着力を有していることが確認された。
【0032】
(実施例4)
実施例2で使用したUVカチオン重合型シリコーン助剤を他のUVカチオン重合型シリコーン助剤(商品名:シリコリースRCA250、荒川化学工業社製)に変更した以外は実施例1と同様にして本発明の紫外線硬化型剥離インクを得た。
得られた本発明の紫外線硬化型剥離インクを用いて実施例1と同様にして紫外線照射したが、系の増粘や硬化は発生していなかった。
【0033】
本発明の紫外線硬化型剥離インクをフォーム上質紙(シート基材)(連量55kg)上に、3g/m2 になるように塗工を行った。この塗工に際しては、剥離インクをチューブポンプで送液し、その送液ポンプのローラーで加圧してマイクロカプセルを破壊させ光重合開始剤を光重合成分を含む連続相へ拡散させた。得られた紫外線硬化型剥離インク層に紫外線ランプ(高圧水銀ランプ、オゾンレス、160w/cm、2灯)を用いて紫外線を照射して硬化処理して、本発明の剥離シートを得た。本発明の剥離シートの前記剥離インク層は充分に硬化が進んでおりベタ付きはなかった。
この本明の剥離シートの前記剥離インク層に対する粘着力が約600N/mとなるように粘着剤(商品名:BPW4960、東洋インキ製造社製)を塗布したラベルを300g/m2 の荷重をかけて23℃、50%RHの雰囲気中で3日放置後、島津製作所製オートグラフAGS50でラベルの剥離力を測定したところ、剥離力は53.7N/mであった。
続いて3日放置後のラベルを段ボールへ貼付し23℃、50%RHの雰囲気中で2時間放置後、90度剥離にて剥離を行ったところ、段ボールが紙剥けを起こしたため、充分な接着力を有していることが確認された。
【0034】
(比較例1)
実施例1で使用したマイクロカプセルAの分散液を使用せず、ホウ素系カチオン光重合開始剤(商品名:CATA211、荒川化学工業社製)を6質量部(有効成分量)と、UVカチオン重合型シリコーン(商品名:シリコリースPOLY200、荒川化学工業社製)170質量部とUVカチオン重合型シリコーン助剤(商品名:シリコリースRCA200、荒川化学工業社製)30質量部を充分に撹拌混合して比較の光重合開始剤含有紫外線硬化型剥離インクを得た。
得られた比較の光重合開始剤含有紫外線硬化型剥離インクを用いて実施例1と同様にして紫外線照射したところ、完全に系が硬化しており、使用することができなかった。
【0035】
【発明の効果】
本発明の請求項1の紫外線硬化型剥離インクは、光重合開始剤マイクロカプセルを含有するので、保存中に太陽光や蛍光燈の光に当たったりしても粘度上昇や硬化などの問題が発生せず、保存性がよいので低粘度で使用する剥離インクとして単独で取り扱うことができ、そして、シート基材面に本発明の紫外線硬化型剥離インクを塗工し、紫外線硬化型剥離インク層を積層し、そして加圧・加熱・加湿するなどしてこの剥離インク層中のマイクロカプセルを破壊したり、塗工前や塗工中にマイクロカプセルを破壊したり、あるいはマイクロカプセルを破壊しなくても加圧・加熱・加湿などにより光重合開始剤の透過性を向上させ、光重合開始剤を光重合成分を含む連続相中に放出・拡散させた後、紫外線照射すれば、破壊されたマイクロカプセルから移行した光重合開始剤が、励起されて作用して、光重合成分の重合反応を起こし、紫外線硬化型剥離インク層を硬化できるとともに、紫外線硬化型剥離インク層とシート基材との界面での反応が著しくなり密着性が改善されて強固に接着するという顕著な効果を奏する。
【0036】
本発明の請求項2は、請求項1記載の紫外線硬化型剥離インクにおいて、前記光重合開始剤マイクロカプセルが加熱により破壊されて光重合開始剤を放出するものであるので、公知の加熱ロール、加熱炉、温風吹き付け、赤外線照射などの加熱手段により、光重合開始剤マイクロカプセルを加熱して破壊して光重合開始剤を放出・拡散させ、紫外線照射すれば、紫外線硬化型剥離インク層を容易に硬化させることができるというさらなる顕著な効果を奏する。
【0037】
本発明の請求項3は、請求項1記載の紫外線硬化型剥離インクにおいて、前記光重合開始剤マイクロカプセルが加圧により破壊されて光重合開始剤を放出するものであるので、公知の加圧ロール、プレスなどの加圧手段により、光重合開始剤マイクロカプセルを加圧して破壊して光重合開始剤を放出・拡散させ、紫外線照射すれば、紫外線硬化型剥離インク層を容易に硬化させることができるというさらなる顕著な効果を奏する。
【0038】
本発明の請求項4の剥離シートは、シート基材面の所定部に、請求項1から請求項3のいずれかに記載の紫外線硬化型剥離インク層が積層されてなるので、構成が簡単で安価であり、この紫外線硬化型剥離インク層中のマイクロカプセルを前記のようにして破壊したり、あるいはマイクロカプセルを破壊しなくても加圧・加熱・加湿などにより光重合開始剤の透過性を向上させ、光重合開始剤を光重合成分を含む連続相中に放出・拡散させた後、紫外線照射すれば、破壊されたマイクロカプセルから移行した光重合開始剤が、励起されて作用して、光重合成分の重合反応を起こし硬化できるとともに、紫外線硬化型剥離インク層とシート基材との界面での反応が著しくなり密着性が改善されて強固に接着できるという顕著な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の剥離シートの一実施例を示す断面説明図である。
【符号の説明】
1 本発明の剥離シート
2 シート基材
3 マイクロカプセル
4 光重合開始剤マイクロカプセル含有紫外線硬化型剥離インク層
【発明の属する技術分野】
本発明は、光重合開始剤マイクロカプセル含有紫外線硬化型剥離インクおよびこれを用いた剥離シートに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、剥離剤として一般的に使用されているシリコーンは、ソルベント系が使用されていたが、近年の環境問題に対する意識の高まりにより、欧米を中心に脱溶剤化が促進されてきており、近年、溶剤を使用しないシリコーン100%のソルベントレス系の紫外線硬化型シリコーンが注目されている。しかし、ソルベントレス系の紫外線硬化型シリコーンに光重合開始剤を所定量配合したインクは、保存中に光重合成分の反応が進行して粘度が上昇して取り扱い性、塗工性が阻害される問題があった。
【0003】
本発明者は前記問題を解決するために、シート基材面に光重合開始剤含有インクからなるアンダーコート層を設け、その上に光重合開始剤を含有しないソルベントレス系の紫外線硬化型剥離インク層を設けることを提案した(特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】
特願2002−221936号
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、シート基材面に光重合開始剤含有インクからなるアンダーコート層を設け、その上に光重合開始剤を含有しないソルベントレス系の紫外線硬化型剥離インク層を設ける方法は手間がかかり煩雑であるという問題があった。
【0006】
本発明の第1の目的は、このような従来の問題を解決し、シート基材面に光重合開始剤含有インクからなるアンダーコート層を設けなくてもよく、しかも保存中に光重合成分の反応が進行して粘度上昇や硬化するなどの問題が発生しない紫外線硬化型剥離インクを提供することであり、
本発明の第2の目的は、シート基材面に、この紫外線硬化型剥離インク層が形成された剥離シートを提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者は前記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、光重合開始剤を例えば芯物質とするマイクロカプセルを含有する紫外線硬化型剥離インクを用いることにより、目的を達成し得ることを見い出して本発明を完成するに至った。
【0008】
本発明の請求項1は、光重合開始剤マイクロカプセルを含有することを特徴とする紫外線硬化型剥離インクである。
【0009】
本発明の紫外線硬化型剥離インクは、光重合開始剤を例えば芯物質として含むマイクロカプセルを含有するので、保存中に太陽光や蛍光燈の光に当たったりしても粘度上昇や硬化などの問題が発生しない。保存性がよいので本発明の紫外線硬化型剥離インクは低粘度で使用する剥離インクとして単独で取り扱うことができる。そして、シート基材面に本発明の紫外線硬化型剥離インクを塗工し、本発明の紫外線硬化型剥離インク層を積層し、そして加圧してこの剥離インク層中のマイクロカプセルを破壊したり、加熱してこの剥離インク層中のマイクロカプセルを膨張させて破壊したり、あるいは加湿してこの剥離インク層中のマイクロカプセルを破壊したり、あるいは塗工前や塗工中にマイクロカプセルを破壊したり、あるいはマイクロカプセルを破壊しなくても加圧・加熱・加湿などにより光重合開始剤の透過性を向上させ、光重合開始剤を光重合成分を含む連続相中に放出・拡散させた後、紫外線照射すれば、破壊されたマイクロカプセルから移行した光重合開始剤が、励起されて作用して、光重合成分の重合反応を起こし、紫外線硬化型剥離インク層を硬化させることができるとともに、紫外線硬化型剥離インク層とシート基材との界面での反応が著しくなり密着性が改善されて強固に接着する。
【0010】
本発明の請求項2は、請求項1記載の紫外線硬化型剥離インクにおいて、前記光重合開始剤マイクロカプセルが加熱により破壊されて光重合開始剤を放出するものであることを特徴とする。
【0011】
公知の加熱ロール、加熱炉、温風吹き付け、赤外線照射などの加熱手段により、光重合開始剤マイクロカプセルを加熱して破壊して光重合開始剤を放出・拡散させ、紫外線照射すれば、紫外線硬化型接着剤層を容易に硬化させることができる。
【0012】
本発明の請求項3は、請求項1記載の紫外線硬化型剥離インクにおいて、前記光重合開始剤マイクロカプセルが加圧により破壊されて光重合開始剤を放出するものであることを特徴とする。
【0013】
公知の加圧ロール、プレスなどの加圧手段により、光重合開始剤マイクロカプセルを加圧して破壊して光重合開始剤を放出・拡散させ、紫外線照射すれば、紫外線硬化型接着剤層を容易に硬化させることができる。
【0014】
本発明の請求項4は、シート基材面の所定部に、請求項1から請求項3のいずれかに記載の紫外線硬化型剥離インク層が積層されてなることを特徴とする剥離シートである。
【0015】
本発明の剥離シートは、構成が簡単で安価であり、この紫外線硬化型剥離インク層中のマイクロカプセルを前記のようにして破壊したり、あるいはマイクロカプセルを破壊しなくても加圧・加熱・加湿などにより光重合開始剤の透過性を向上させ、光重合開始剤を光重合成分を含む連続相中に放出・拡散させた後、紫外線照射すれば、破壊されたマイクロカプセルから移行した光重合開始剤が、励起されて作用して、光重合成分の重合反応を起こし硬化させることができるとともに、紫外線硬化型剥離インク層とシート基材との界面での反応が著しくなり密着性が改善されて強固に接着できる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の態様を詳細に説明する。
図1は、本発明の剥離シートの一実施例を示す断面説明図である。
本発明の剥離シート1は、シート基材2面の所定部に、光重合開始剤を芯物質として含むマイクロカプセル3を含有する本発明の紫外線硬化型剥離インクを塗工して紫外線硬化型剥離インク層4が積層されている。本発明の紫外線硬化型剥離インクは、光重合開始剤が芯物質としてマイクロカプセル3中に含まれていて連続相中の光重合成分と接触しないので、紫外線硬化型剥離インクの保存中に粘度が上昇したり硬化したりしない。
そして、本発明の剥離シート1を加圧するなどしてこの剥離インク層4中のマイクロカプセル3を破壊し、光重合開始剤を光重合成分を含む連続相中に放出・拡散させた後、剥離シート1の例えば上方から紫外線硬化型剥離インク層4に紫外線を照射すれば、光重合開始剤が励起されて作用して、光重合成分の重合反応を起こし、紫外線硬化型剥離インク層4を硬化できる。また、紫外線硬化型剥離インク層4とシート基材2間の密着性が改善されて強固に接着する。
【0017】
紫外線硬化型剥離インク層4の形成方法は刷毛塗りなど手動で塗工する方法でも自動的に塗工する方法でもあるいはこれらの組み合わせでもよく特に限定されないが、オフセット印刷機をもって印刷する方法は好ましく、例えばグラビアコーター、フレキソコーター、エアナイフコーター、バーコーターなどの塗工手段によりシート基材2面の少なくとも一方の面の所定部に本発明の紫外線硬化型剥離インクを塗工し、必要に応じて乾燥し、紫外線照射により硬化させて紫外線硬化型剥離インク層4を形成する。塗工量は特に限定されないが、例えば0.5〜30g/m2 、好ましくは3〜20g/m2 、さらに好ましくは5〜15g/m2 とする。
【0018】
本発明で用いる紫外線硬化型剥離インクは特に限定されるものではなく、従来公知の紫外線硬化型剥離インクでよく、市販品を用いることができる。具体的には、例えばシリコーン系、フッ素系、アルキルペンダント系、長鎖アルキル系などを挙げることができる。公知のソルベントレス系の紫外線硬化型シリコーンは好ましく使用できる。
【0019】
本発明で用いる光重合開始剤としては、従来公知のものでよく、例えば、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−メチル−1−プロパン−1−オン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1−ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド−ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイドなどが挙げられる。
これらの光重合開始剤は、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0020】
本発明で用いる光重合開始剤マイクロカプセルの壁材は、例えば、ゼラチン、ポリアミド、ポリウレタン、ポリエステル、ポリ尿素、ポリスルホンアミド、ポリスルホネート、ポリウレアなどである。また、カプセル生成手段においては、従来から慣用されている方法、例えば、インサイチュ法、界面重合法、コアセルベーション法、あるいは、オリフィス法も用いることができる。例えば、光重合開始剤を芯物質とし、酸触媒および乳化・分散剤的機能を有するスチレン無水マレイン酸共重合体の部分加水分解物と、ポリマーを形成する反応成分としてメラミンまたは尿素とホルマリン、あるいは、これらの初期重縮合物を用い、インサイチュ法によってメラミンまたは尿素−ホルマリン樹脂をカプセル壁材として形成し、マイクロカプセルを水系に分散生成させたマイクロカプセルの水系分散液を用いることができる。
上記の例においては、光重合開始剤を芯物質としたマイクロカプセルの例を示したが、これに限定されず、例えば壁材中に光重合開始剤を含有させることもできる。
【0021】
本発明の紫外線硬化型剥離インクには、必要に応じて、公知の添加剤を添加することができる。添加剤としては、例えば、粘度調整剤、老化防止剤、pH調節剤、消泡剤、各種安定剤、着色剤、グリセリンなどのロール転写性向上剤などを挙げることができる。
【0022】
本発明で用いるシート基材の素材としては、ガラス繊維、アルミナ繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維などの無機または有機繊維からなる織布、不織布、マット、紙(例えば、上質紙、中質紙、合成紙、各種再生紙、アート紙、コート紙、ミラーコート紙、コンデンサー紙、パラフィン紙、その他の紙の他に、それにオーバーコート層(保護層)をもつ用紙など)、シート状物あるいはこれらを組み合わせたもの、あるいはこれらに樹脂ワニスを含浸させて成形した複合物、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリイミド系樹脂、エチレン・ビニルアルコール共重合体、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂などのプラスチック、あるいはこれらにコロナ放電処理、プラズマ処理、紫外線照射処理、電子線照射処理、フレームプラズマ処理およびオゾン処理などの表面処理を施したもの、などの公知のものから選択して用いることができる。
【0023】
【実施例】
次に、実施例により本発明を更に詳しく述べるが、この発明の主旨と範囲に反することなしに、広範に異なる実施態様を構成することができることは明白なので、この発明は前記の特許請求の範囲において限定した以外は、これらの特定の実施態様に制約されるものではない。
【0024】
(光重合開始剤マイクロカプセルAの調製)
スチレン無水マレイン酸共重合体(商品名:Scripset−520、モンサント社製)を水酸化ナトリウムとともに溶解し、これを5質量%、pH4.5に調製した水溶液200質量部中に、フタル酸ジブチル(DBP)180質量部中にカチオン光重合開始剤(商品名:CG−24−61、チバ−ガイギー社製)20質量部を溶解させた液200質量部を乳化および分散させて平均粒子径6μmの乳化物を得る。この乳化物に、メラミン−ホルムアルデヒド初期重縮合物(商品名:Sumirez Resin513、住友化学社製)60質量部を加え、系の温度を75℃にて2時間撹拌し、本発明で用いる光重合開始剤マイクロカプセルAの分散液を得た。
【0025】
(光重合開始剤マイクロカプセルBの調製)
アジピン酸ビス2−エチルヘキシル(DOA)162質量部中にカチオン光重合開始剤(商品名:CG−24−61、チバ−ガイギー社製)18質量部を溶解させた液180質量部に、壁材としてイソシアネート(商品名:タケネートD−520、三井武田ケミカル社製)を50質量部(固形分)を加え撹拌する。この液を部分鹸化ポリビニルアルコール(鹸化度88%)(商品名:PVA−217、クラレ社製)の6質量水溶液200質量部中に、乳化および分散させて平均粒子径7μmの乳化物を得る。この乳化物に、蒸留水150質量部を加えて均一化した後、撹拌しながら50℃に昇温し、3時間カプセル化反応を行わせて目的の、本発明で用いる光重合開始剤マイクロカプセルBの分散液を得た。
【0026】
(実施例1)
温風送風機を付けたタンク容量2リットルのプラネタリーミキサ(形式:PLM−2、井上製作所製)にマイクロカプセルAの分散液を150質量部(固形分換算)と、UVカチオン重合型シリコーン(商品名:シリコリースPOLY200、荒川化学工業社製)170質量部とUVカチオン重合型シリコーン助剤(商品名:シリコリースRCA200、荒川化学工業社製)30質量部とを加えて混合する。充分に混合した液を45℃に加温し、撹拌しながら温風(出口温度50℃)を送り、蒸発した水蒸気を外部へ拡散させた。この状態を4時間保ちながら水分を除去し、水分量を1質量%以下に下げ、本発明の紫外線硬化型剥離インクを得た。
得られた本発明の紫外線硬化型剥離インクをシャーレ(直径90mm、高さ15mm)に8mm厚になるように入れ、このシャーレを水平真空版焼機(型式:P−802−G、大日本スクリーン製造社製)のガラス板上に置いた後、シャーレから紫外線ランプまでの距離を1mに調整し、120秒間紫外線を照射し、照射後の試料を観察したが、系の増粘や硬化は発生していなかった。
【0027】
本発明の紫外線硬化型剥離インクをフォーム上質紙(シート基材)(連量55kg)上に、3g/m2 になるように塗工を行った。この塗工に際しては、剥離インクをチューブポンプで送液し、その送液ポンプのローラーで加圧してマイクロカプセルを破壊させ光重合開始剤を光重合成分へ拡散させた。得られた紫外線硬化型剥離インク層に紫外線ランプ(高圧水銀ランプ、オゾンレス、160w/cm、2灯)を用いて紫外線を照射して硬化処理して、本発明の剥離シートを得た。本発明の剥離シートの前記剥離インク層は充分に硬化が進んでおりベタ付きはなかった。
この本明の剥離シートの前記剥離インク層に対する粘着力が約600N/mとなるように粘着剤(商品名:BPW4960、東洋インキ製造社製)を塗布したラベルを300g/m2 の荷重をかけて23℃、50%RHの雰囲気中で3日放置後、島津製作所製オートグラフAGS50でラベルの剥離力を測定したところ、剥離力は4.8N/mであった。
【0028】
(実施例2)
実施例1で使用したマイクロカプセルAの分散液の代わりにマイクロカプセルBの分散液を使用した以外は実施例1と同様にして本発明の紫外線硬化型剥離インクを得た。
得られた本発明の紫外線硬化型剥離インクを用いて実施例1と同様にして紫外線照射したが、系の増粘や硬化は発生していなかった。
【0029】
本発明の紫外線硬化型剥離インクをフォーム上質紙(シート基材)(連量55kg)上に、3g/m2 になるように塗工を行った。この紫外線硬化型剥離インク層を瞬間的に230℃に加熱しマイクロカプセル中の光重合開始剤を光重合成分を含む連続相へ拡散させた。得られた紫外線硬化型剥離インク層に紫外線ランプ(高圧水銀ランプ、オゾンレス、160w/cm、2灯)を用いて紫外線を照射して硬化処理して、本発明の剥離シートを得た。本発明の剥離シートの前記剥離インク層は充分に硬化が進んでおりベタ付きはなかった。
この本明の剥離シートの前記剥離インク層に対する粘着力が約600N/mとなるように粘着剤(商品名:BPW4960、東洋インキ製造社製)を塗布したラベルを300g/m2 の荷重をかけて23℃、50%RHの雰囲気中で3日放置後、島津製作所製オートグラフAGS50でラベルの剥離力を測定したところ、剥離力は5.1N/mであった。
続いて3日放置後のラベルを段ボールへ貼付し23℃、50%RHの雰囲気中で2時間放置後、90度剥離にて剥離を行ったところ、段ボールが紙剥けを起こしたため、充分な接着力を有していることが確認された。
【0030】
(実施例3)
実施例1で使用したUVカチオン重合型シリコーン助剤を他のUVカチオン重合型シリコーン助剤(商品名:シリコリースRCA250、荒川化学工業社製)に変更した以外は実施例1と同様にして本発明の紫外線硬化型剥離インクを得た。
得られた本発明の紫外線硬化型剥離インクを用いて実施例1と同様にして紫外線照射したが、系の増粘や硬化は発生していなかった。
【0031】
本発明の紫外線硬化型剥離インクをフォーム上質紙(シート基材)(連量55kg)上に、3g/m2 になるように塗工を行った。この塗工に際しては、剥離インクをチューブポンプで送液し、その送液ポンプのローラーで加圧してマイクロカプセルを破壊させ光重合開始剤を光重合成分を含む連続相へ拡散させた。得られた紫外線硬化型剥離インク層に紫外線ランプ(高圧水銀ランプ、オゾンレス、160w/cm、2灯)を用いて紫外線を照射して硬化処理して、本発明の剥離シートを得た。本発明の剥離シートの前記剥離インク層は充分に硬化が進んでおりベタ付きはなかった。
この本明の剥離シートの前記剥離インク層に対する粘着力が約600N/mとなるように粘着剤(商品名:BPW4960、東洋インキ製造社製)を塗布したラベルを300g/m2 の荷重をかけて23℃、50%RHの雰囲気中で3日放置後、島津製作所製オートグラフAGS50でラベルの剥離力を測定したところ、剥離力は45.1N/mであった。
続いて3日放置後のラベルを段ボールへ貼付し23℃、50%RHの雰囲気中で2時間放置後、90度剥離にて剥離を行ったところ、段ボールが紙剥けを起こしたため、充分な接着力を有していることが確認された。
【0032】
(実施例4)
実施例2で使用したUVカチオン重合型シリコーン助剤を他のUVカチオン重合型シリコーン助剤(商品名:シリコリースRCA250、荒川化学工業社製)に変更した以外は実施例1と同様にして本発明の紫外線硬化型剥離インクを得た。
得られた本発明の紫外線硬化型剥離インクを用いて実施例1と同様にして紫外線照射したが、系の増粘や硬化は発生していなかった。
【0033】
本発明の紫外線硬化型剥離インクをフォーム上質紙(シート基材)(連量55kg)上に、3g/m2 になるように塗工を行った。この塗工に際しては、剥離インクをチューブポンプで送液し、その送液ポンプのローラーで加圧してマイクロカプセルを破壊させ光重合開始剤を光重合成分を含む連続相へ拡散させた。得られた紫外線硬化型剥離インク層に紫外線ランプ(高圧水銀ランプ、オゾンレス、160w/cm、2灯)を用いて紫外線を照射して硬化処理して、本発明の剥離シートを得た。本発明の剥離シートの前記剥離インク層は充分に硬化が進んでおりベタ付きはなかった。
この本明の剥離シートの前記剥離インク層に対する粘着力が約600N/mとなるように粘着剤(商品名:BPW4960、東洋インキ製造社製)を塗布したラベルを300g/m2 の荷重をかけて23℃、50%RHの雰囲気中で3日放置後、島津製作所製オートグラフAGS50でラベルの剥離力を測定したところ、剥離力は53.7N/mであった。
続いて3日放置後のラベルを段ボールへ貼付し23℃、50%RHの雰囲気中で2時間放置後、90度剥離にて剥離を行ったところ、段ボールが紙剥けを起こしたため、充分な接着力を有していることが確認された。
【0034】
(比較例1)
実施例1で使用したマイクロカプセルAの分散液を使用せず、ホウ素系カチオン光重合開始剤(商品名:CATA211、荒川化学工業社製)を6質量部(有効成分量)と、UVカチオン重合型シリコーン(商品名:シリコリースPOLY200、荒川化学工業社製)170質量部とUVカチオン重合型シリコーン助剤(商品名:シリコリースRCA200、荒川化学工業社製)30質量部を充分に撹拌混合して比較の光重合開始剤含有紫外線硬化型剥離インクを得た。
得られた比較の光重合開始剤含有紫外線硬化型剥離インクを用いて実施例1と同様にして紫外線照射したところ、完全に系が硬化しており、使用することができなかった。
【0035】
【発明の効果】
本発明の請求項1の紫外線硬化型剥離インクは、光重合開始剤マイクロカプセルを含有するので、保存中に太陽光や蛍光燈の光に当たったりしても粘度上昇や硬化などの問題が発生せず、保存性がよいので低粘度で使用する剥離インクとして単独で取り扱うことができ、そして、シート基材面に本発明の紫外線硬化型剥離インクを塗工し、紫外線硬化型剥離インク層を積層し、そして加圧・加熱・加湿するなどしてこの剥離インク層中のマイクロカプセルを破壊したり、塗工前や塗工中にマイクロカプセルを破壊したり、あるいはマイクロカプセルを破壊しなくても加圧・加熱・加湿などにより光重合開始剤の透過性を向上させ、光重合開始剤を光重合成分を含む連続相中に放出・拡散させた後、紫外線照射すれば、破壊されたマイクロカプセルから移行した光重合開始剤が、励起されて作用して、光重合成分の重合反応を起こし、紫外線硬化型剥離インク層を硬化できるとともに、紫外線硬化型剥離インク層とシート基材との界面での反応が著しくなり密着性が改善されて強固に接着するという顕著な効果を奏する。
【0036】
本発明の請求項2は、請求項1記載の紫外線硬化型剥離インクにおいて、前記光重合開始剤マイクロカプセルが加熱により破壊されて光重合開始剤を放出するものであるので、公知の加熱ロール、加熱炉、温風吹き付け、赤外線照射などの加熱手段により、光重合開始剤マイクロカプセルを加熱して破壊して光重合開始剤を放出・拡散させ、紫外線照射すれば、紫外線硬化型剥離インク層を容易に硬化させることができるというさらなる顕著な効果を奏する。
【0037】
本発明の請求項3は、請求項1記載の紫外線硬化型剥離インクにおいて、前記光重合開始剤マイクロカプセルが加圧により破壊されて光重合開始剤を放出するものであるので、公知の加圧ロール、プレスなどの加圧手段により、光重合開始剤マイクロカプセルを加圧して破壊して光重合開始剤を放出・拡散させ、紫外線照射すれば、紫外線硬化型剥離インク層を容易に硬化させることができるというさらなる顕著な効果を奏する。
【0038】
本発明の請求項4の剥離シートは、シート基材面の所定部に、請求項1から請求項3のいずれかに記載の紫外線硬化型剥離インク層が積層されてなるので、構成が簡単で安価であり、この紫外線硬化型剥離インク層中のマイクロカプセルを前記のようにして破壊したり、あるいはマイクロカプセルを破壊しなくても加圧・加熱・加湿などにより光重合開始剤の透過性を向上させ、光重合開始剤を光重合成分を含む連続相中に放出・拡散させた後、紫外線照射すれば、破壊されたマイクロカプセルから移行した光重合開始剤が、励起されて作用して、光重合成分の重合反応を起こし硬化できるとともに、紫外線硬化型剥離インク層とシート基材との界面での反応が著しくなり密着性が改善されて強固に接着できるという顕著な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の剥離シートの一実施例を示す断面説明図である。
【符号の説明】
1 本発明の剥離シート
2 シート基材
3 マイクロカプセル
4 光重合開始剤マイクロカプセル含有紫外線硬化型剥離インク層
Claims (4)
- 光重合開始剤マイクロカプセルを含有することを特徴とする紫外線硬化型剥離インク。
- 前記光重合開始剤マイクロカプセルが加熱により破壊されて光重合開始剤を放出するものであることを特徴とする請求項1記載の紫外線硬化型剥離インク。
- 前記光重合開始剤マイクロカプセルが加圧により破壊されて光重合開始剤を放出するものであることを特徴とする請求項1記載の紫外線硬化型剥離インク。
- シート基材面の所定部に、請求項1から請求項3のいずれかに記載の紫外線硬化型剥離インク層が積層されてなることを特徴とする剥離シート。
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