JP2004115388A - 還元剤およびそれを用いたシラン類の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決課題】ポリハロシランを還元してシラン類を製造するのに好適に用いらる選択率、収率に優れた還元剤を提供する。
【解決手段】アルキルアルミニウムハイドライドを主成分とする還元剤中の微粉状アルミニウムを予め一定量以下まで除去することにより、アルキルアルミニウムハイドライドの作用を何ら損なうことなく、シラン類の収率を大幅に向上させ、かつ、副生物の抑制によって選択率が向上する。
【解決手段】アルキルアルミニウムハイドライドを主成分とする還元剤中の微粉状アルミニウムを予め一定量以下まで除去することにより、アルキルアルミニウムハイドライドの作用を何ら損なうことなく、シラン類の収率を大幅に向上させ、かつ、副生物の抑制によって選択率が向上する。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、モノシラン、ジシラン、トリシラン、モノメチルシラン、ジメチルシラン、トリメチルシラン等のシラン類の製造に好適に使用できる還元剤およびそれを用いたシラン類の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
シラン類は有機合成原料、無機合成原料、燃料、触媒等多数の用途があり、工業的に重要な化合物である。
中でも、メチルシラン類((CH3)nSiH4−n)は数年前からドライ・フォトレジスト材料または、2層レジスト材料として新規半導体材料分野で注目され始めている。
従来から、アルキルアルミニウムハイドライド等を用いて、ポリハロシランを還元し、シラン類を製造する方法は知られている。
【0003】
例えば、特公昭36−517号、英国特許823,483号、独国特許1,055,511号、同1,117,090号公報などにおいて、テトラクロロシランをナトリウムハイドライドで還元する場合に、ジエチルアルミニウムモノクロライドを少量添加することが記載されている。
しかしながら、該ジエチルアルミニウムモノクロライドは、その使用量から明らかなように、ある種の錯体を形成することにより、溶媒に実際上、不溶解であるナトリウムハイドライドを可溶化することによって活性化を図っているに過ぎなかった。
また、例えば、特開平4−224588号公報では、トリメチルクロロシランなどの有機ハロシランをジイソブチルアルミニウムハイドライドのような単一の水素化アルキルアルミニウムで水素化することにより、還元生成物を得るという方法が開示されている。
また、例えば、仏国特許1,499,032号公報においては、ハロシランを純度の高いアルキルアルミニウムハイドライドで還元する方法が記載されている。
【0004】
しかしながらアルキルアルミニウムハイドライドは、工業的には、金属アルミニウムと水素とトリアルキルアルミニウムから合成され、必然的に未反応のトリアルキルアルミニウム及び微粉状アルミニウムを含有する組成物として得られるものであり、安価に入手し得るアルキルアルミニウムハイドライドはこの組成物からなるものが多い。
この組成物をそのまま用いて、ポリハロシランの還元を試みると、生成するシラン類が純度の高いアルキルアルミニウムハイドライドを用いた場合より格段に低いのみならず、ポリハロシランの不十分な還元により生じたと推定されるモノクロロシラン等のハロシラン類や副反応によるエタン等が多量に副生する。
特開昭59−128393号公報には、組成物中のトリアルキルアルミニウムに対して一定量のアルキルアルミニウムハライドを添加することにより、アルキルアルミニウムハイドライドの作用を損なうことなく、シラン類の収率を向上させる方法が記載されている。しかし、組成物中のトリアルキルアルミニウムを反応させる際に、僅かではあるが、有効なアルキルアルミニウムハイドライドが消失してしまう欠点を有し、シラン類の収率悪化の改良として、トリアルキルアルミニウムの無害化に着目しているに過ぎなかった。
【0005】
一方、特開平4−224588号公報にあるような、純度の高いアルキルアルミニウムハイドライドを得るためには、上記組成物を蒸留分離する必要があるが、アルキルアルミニウムハイドライドとトリアルキルアルミニウムはその沸点が非常に接近しているのみならず、一種の共沸混合物を形成する系であるため、蒸留だけで両者を完全に分離することは非常に困難であるばかりでなく、該蒸留時にかなりの量のアルキルアルミニウムハイドライドが分解するという問題点がある。
【0006】
【解決課題】
本発明はポリハロシランを還元してシラン類を製造するのに好適に用いられる高選択率、高収率が得られる還元剤を提供することを目的とする。
【発明を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意研究を行った結果、アルキルアルミニウムハイドライドを主成分とする還元剤中の微粉状アルミニウムを予め一定量以下まで除去することにより、驚くべきことに、アルキルアルミニウムハイドライドの作用を何ら損なうことなく、シラン類の収率を大幅に向上させ、かつ、副生物の抑制によって選択率が向上することを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、
(1) 微粉状アルミニウムの含量がアルキルアルミニウムハイドライドに対して0.01重量%以下であることを特徴とするアルキルアルミニウムハイドライドを主成分とする還元剤。
(2) トリアルキルアルミニウムを更に含有することを特徴とする(1)に記載の還元剤。
(3) 更に一般式(1)で表わされるアルキルアルミニウムハライドをトリアルキルアルミニウム全量をジアルキルアルミニウムモノハライドに変換させるに必要な量(以下、理論必要モルという)添加したことを特徴とする(2)に記載の還元剤。
AlRnX3−n (1)
(式中、Rは炭素数1〜10のアルキル基、nは0、1または、1.5、Xはハロゲン原子を表わす)
(4) アルキルアルミニウムハイドライドがジエチルアルミニウムハイドライドであることを特徴とする(1)〜(3)いずれかに記載の還元剤。
(5) (1)〜(4)いずれかに記載の還元剤を用いてポリハロシランを還元することを特徴とするシラン類の製造方法。
に関する。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明における還元剤の主成分たるアルキルアルミニウムハイドライドとは、一般式R2AlHで表される還元性化合物である。Rは炭素数1〜10のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられる。二つのアルキル基は同一でも、異なっていても良い。上式で示されるアルキルアルミニウムハイドライドのうち、好ましいものを例示すれば、ジメチルアルミニウムハイドライド、ジエチルアルミニウムハイドライド、ジイソブチルアルミニウムハイドライドなどが挙げられる。特に好ましくはジエチルアルミニウムハイドライドが挙げられる。
アルキルアルミニウムハイドライドは、還元剤中50重量%以上含有しているのが好ましく、更に好ましくは65重量%以上である。
【0008】
アルキルアルミニウムハイドライドは、アルミニウム、水素、トリアルキルアルミニウムを原料として製造されるが、未反応の粒径が100μ以下の微粉状アルミニウムが、少なくとも0.05重量%以上、通常、0.5〜2重量%程残存する。本発明においては、微粉状アルミニウムをアルキルアルミニウムハイドライドに対して0.01重量%以下に除去することが肝要である。還元剤中の微粉状アルミニウムの含有量が0.01重量%より多い場合は、残存する微粉状アルミニウムによる作用により、目的物であるシラン類の収率が極端に低下する。
微粉状アルミニウムは、公知の方法にて除去することができる。自然沈降による分離、遠心分離など使用できるが、フィルターを使ったろ過分離が好ましい。5〜10μm以上の微粉末を除去できるフィルターを使用するのが好適である。また、微粉状アルミニウムを除去するための温度、圧力などについては、特に制限がなく、0.01重量%以下の含有量まで低下するために任意に設定できる。
【0009】
本発明における還元剤に含有するトリアルキルアルミニウムは、アルキルアルミニウムハイドライドの製造原料であるトリアルキルアルミニウムが残存しているものであり、一般式R3Alで示される化合物である。この式で、Rは炭素数1〜10のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基などが挙げられる。三つのアルキル基は同一でも、異なっていても良い。上式で示されるトリアルキルアルミニウムのうち、特に含有される可能性の高いものを例示すれば、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムなどが挙げられる。
このようなトリアルキルアルミニウムは、通常、アルキルアルミニウムハイドライドに対し、20〜300モル%程度、該還元剤中に含有されている。
【0010】
本発明の還元剤では、一般式AlRnX3−nで表わされるアルキルアルミニウムハライドを添加するのが好ましい態様である。Rは炭素数1〜10のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基などが挙げられる。Xはハロゲン原子であり、例えば、弗素、塩素、臭素、沃素などである。また、nは0、1または1.5の任意の数字である。
上記一般式で示される化合物のうち、好ましいものを例示すれば、メチルアルミニウムジクロライド、メチルアルミニウムセスキクロライド、エチルアルミニウムジクロライド、エチルアルミニウムセスキクロライド、イソブチルアルミニウムジクロライド、イソブチルアルミニウムセスキクロライド、アルミニウムトリクロライド(塩化アルミニウム)、メチルアルミニウムジブロマイド、メチルアルミニウムセスキブロマイド、エチルアルミニウムジブロマイド、エチルアルミニウムセスキブロマイド、イソブチルアルミニウムジブロマイド、イソブチルアルミニウムセスキブロマイド、アルミニウムトリブロマイド(臭化アルミニウム)などである。これらは単独でまたは、混合して用いられる。
なお、還元剤中のアルキルアルミニウムハイドライド及びトリアルキルアルミニウムのアルキル基と、これに添加されるアルキルアルミニウムハライドのアルキル基は、三者共全て同一であってもよいし、また全て異なっていてもよい。
【0011】
本発明においては、上記のようなアルキルアルミニウムハライドを、上記還元剤中に含有するトリアルキルアルミニウムの全量をジアルキルアルミニウムモノハライドに変化させるのに要する量、すなわち理論必要モルを該組成物に予め添加するのが好ましい。ここで言う理論必要モルは、還元反応に使用する組成物中のトリアルキルアルミニウムの量に対し、これに添加するアルキルアルミニウムハライドに含有されているハロゲン原子の量に応じて算出されるものである。
例えば、ジアルキルアルミニウムハライドは次式のようにトリアルキルアルミニウムと反応してアルキルアルミニウムモノハライドを生じる。
R3Al + AlRX2 → 2AlR2X (2)
従って、アルキルアルミニウムジハライドの場合は、トリアルキルアルミニウムと当量で反応して、アルキルアルミニウムモノハライドを生じることになる。また、実際上、上記(2)式の反応は、ほぼ定量的に進行すると考えてよい。
アルキルアルミニウムハライドの添加量が、このように算定された理論必要モルを超えた場合は、還元剤であるアルキルアルミニウムハイドライドの分解が還元反応中に著しく促進され、目的物であるシラン類の収率が極端に低下する。このような現象は、微粉状アルミニウムを実質的に含有しない組成物を使用した場合は、ほとんど認められないことから、該微粉状アルミニウムの何らかの作用によるものと推定される。一方、算定された理論必要モルより少なく添加した場合は、未反応のトリアルキルアルミニウムによる作用により、目的物であるシラン類の収率が低下する場合がある。
【0012】
上記還元剤にアルキルアルミニウムハライドを添加する方法は任意であり、両者を直接混合してもよいし、いずれか一方、もしくは両者を、適当な溶媒で希釈した後に混合してもよい。通常、両者は液体であるが、一方が固体の場合は、溶媒に溶解させるか、懸濁させて混合すればよい。上記のような還元剤とアルキルアルミニウムハライドを混合するために希釈、溶解、懸濁させる溶媒は、反応原料であるアルキルアルミニウムジハライドや反応生成物であるアルキルアルミニウムモノハライドと反応しない非極性の溶媒が好ましい。このような溶媒として、ヘプタン、オクタン、流動パラフィン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の脂肪族飽和炭化水素や芳香族炭化水素が挙げられる。また、これら使用する溶媒は、予め窒素バブリングなどを施して、十分に脱酸素・脱水したものを使う必要がある。通常、溶媒中の水分は50ppm以下として用いるのが好ましい。該混合のほとんどの場合が、強烈な発熱を伴うので、系が過熱しないように十分注意を払って操作を行う必要がある。具体的には、冷却手段及び攪拌手段を備えた容器にいずれか一方を仕込み、これを冷却・攪拌しつつ、温度制御が可能な範囲の速度で他の一方を添加し、系内温度を40℃程度に保つよう操作するのが好ましい。上記反応自体は非常に速いので、滴下(添加)が完了した時点で、実質的に反応が完結しているとして扱ってもよいが、念のため、10〜20分程度の後、還元反応を行うことが望ましい。なお、懸濁した系の場合には、反応を促進するために、70℃程度に加熱昇温することが好ましい。
【0013】
本発明において、還元剤で還元するポリハロシランは、一般式SinY2n+2で表される化合物である。nは正の整数を表わし、Yはそれぞれ独立にハロゲン原子、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基またはビニール基を表わす。通常、Yの少なくとも一つはハロゲン原子であるが、場合によってはハロゲン原子が全く存在せず、Yの全てがアルキル基、アルコキシ基、アリール基またはビニール基で構成されていても構わない。ハロゲン原子としては、弗素原子、塩素原子、臭素原子、沃素原子などが挙げられ、アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基などが挙げられ、アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、i−ブトキシ基、sec−ブトキシ基等が挙げられ、アリール基としては、フェニル基、p−メチルフェニル基、m−メチルフェニル基、o−メチルフェニル基、p−エチルフェニル基、m−エチルフェニル基、o−エチルフェニル基等が挙げられ、ビニル基としては、ビニル基、アリル基、イソプロペニル基などが挙げられる。
上式で示されるポリハロシランのうち、本発明の実施に特に好ましいものを例示すれば、テトラクロロシラン(四塩化珪素)、ヘキサクロロジシラン、テトラエトキシシラン、ジエチルジクロロシラン、トリクロロシラン、ジクロロシラン、モノクロロシラン、トリメチルクロロシラン、トリエチルクロロシランなどが挙げられる。
【0014】
本発明において、ポリハロシランを還元する反応とは、前記定義したポリハロシランから、シラン類を製造する反応の全てをいう。
従って、例えば、
SiCl4 + 4AlEt2H → SiH4 + 4AlEt2Cl (2)
のような反応はもちろん、例えば、
のようなハロゲンが実質的に関与しない反応も、本発明における還元反応に含まれる。
該還元反応で生成するシラン類とは、上記ポリハロシランから、1つ以上の、または全てのハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基またはビニール基を除去して得られる、少なくとも1つ以上の珪素−水素結合を有するシラン化合物全てが含まれる。
【0015】
該還元反応自体は通常の液−液反応として、公知の手段により行うことができるが、該反応を遂行するに当たって注意すべきことは、反応に関与する原料、還元剤及び生成物質のほとんど全てが、酸素もしくは水分と容易に反応して分解・発火する極めて活性な危険物ばかりであるということである。従って、該反応は、酸素もしくは水分を全く遮断した完全に不活性な雰囲気下で行わなければならない。このため、十分に脱酸素・脱水したヘリウム、ネオン、アルゴンなどの不活性ガスや窒素、水素等の反応系に対し、不活性なガスで、反応系をシールする必要がある。
該還元反応に使用する反応装置は、除熱手段を備えた通常の液−液反応用の攪拌槽型反応器が好ましいが、上述の理由から、反応器はもちろん、配管部、生成シランガス類の凝縮部等を含めて、反応系全体が完全に密閉系として組み立てられる必要がある。
なお、還元反応装置は、上記したアルキルアルミニウム組成物へのアルキルアルミニウムハライドの添加装置としても使用することができるので、両者を兼ねて、該反応装置で該組成物の処理操作を行った後、引き続いてポリハロシラン類を送入して、該還元反応を行うことも可能である。
【0016】
本発明における反応温度は、通常、−30〜100℃、好ましくは0〜80℃、特に好ましくは30〜60℃の範囲に制御する必要がある。反応温度がこれより低い場合は、反応が実質的に進行せず、またこれより高すぎる場合は、アルキルアルミニウムハイドライドが自己分解するばかりでなく、望ましくない副反応が起こるからである。
該還元反応は強度の発熱反応であるから、通常、反応の開始時のみ反応が進行する温度に加熱すればよい。このように、いったん反応が開始すれば、反応熱のみにより自動的に反応は進行するので、冷却操作を行って反応系を所望の反応温度に保持する。なお、反応操作としては、アルキルアルミニウムハイドライドを主成分として含有した還元剤とポリハロシランの両者を反応器に同時に仕込んで反応させる回分操作によってもよいし、また、最初に反応器に一方、例えば、アルキルアルミニウムハイドライドを主成分として含有した還元剤のみを仕込んでおき、これにポリハロシランを添加する半回分操作としてもよい。この方式は、ポリハロシランの添加速度(送入速度)によって反応速度、すなわち反応熱の発生量を制御できる利点がある。もちろん、両者をそれぞれ連続的に反応器に送入し、生成物を連続的に取り出す連続操作とすることもできる。
反応圧力は、通常、常圧で行うが、反応温度または装置との関係で減圧もしかは加圧としてもよい。
【0017】
該還元反応自体は非常に速いので、反応は両者の混合が完了した時点で、実際的には終了していると思われる。従って、例えば、上記半回分操作を行う場合は、ポリハロシランの添加が完了してから、10〜30分程度の熟成を行えば十分である。なお、反応の終了は、シラン類の発生が止まった時点としても検知できるし、発熱が止まって系内温度が降下し始めた点としても簡単に決定できる。また、発生するシラン類によっては、同時に生成するアルキルアルミニウムモノハライドや溶媒などに溶解する場合は、例えば、上記半回分操作を行う場合は、ポリハロシランの添加が完了してから、十分に脱酸素・脱水したヘリウム、ネオン、アルゴン等の不活性ガスで溶解しているシラン類を追い出して回収する必要がある。この時に使用する不活性ガスの流量、追い出し時の温度、圧力などは任意であり、溶解しているシラン類の物性に応じて決定できる。
【0018】
発生したシラン類のガスは、液体窒素等で冷却される凝縮器に導いて、液化または固化して補集する。
本発明における還元反応においては、反応溶媒を用いることは必須ではないが、通常、用いた方が反応が緩やかになり、制御しやすくなるので好ましい。
反応溶媒を用いる場合は、還元反応終了後、生成したアルキルアルミニウムモノハイドライド等を反応系から回収するためには、該アルキルアルミニウムモノハイドライドと反応しない非極性の溶媒が好ましい。このような溶媒として、ヘプタン、オクタン、流動パラフィン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の脂肪族飽和炭化水素や芳香族炭化水素が挙げられる。また、これら使用する溶媒は、予め窒素バブリングなどを施して、十分に脱酸素・脱水したものを使う必要がある。通常、溶媒中の水分は50ppm以下として用いるのが好ましい。
本発明の方法により製造されたシラン類は、特に不純物が少ないので、簡単な精製を施した後、各種の半導体材料用の原料として使用することができる。
【0019】
【実施例】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明する。
実施例1
酸素濃度 10ppm以下に制御した窒素ボックス中で、金属アルミニウムと水素とトリエチルアルミニウムから合成された組成液を常温でガラスフィルターを用いて濾過し、5μ以上の粒子径の微粉状アルミニウムを除去し、ジエチルアルミニウムハイドライド 65重量%、トリエチルアルミニウム 30重量%、流動パラフィンなど 5重量%、微粉状アルミニウム 0.005重量%の組成液を得た。この組成液を予め内部を窒素置換した4つ口フラスコに、窒素バブリングにより50ppm以下の水分に調整した流動パラフィン 20gと上記組成液を18.5g(ジエチルアルミニウムハイドライド 140mmol、トリエチルアルミニウム 48.7mmol)秤量し、マグネチックスターラーで攪拌した。次いで、ガラス製の滴下ロートに、流動パラフィンで希釈した50重量%エチルアルミニウムジクロライドを12.4g(48.7mmol)秤量し、45分間かけて供給した(この時、冷却により反応液温度は35℃以下に調整した)。さらに、供給終了後、15分間攪拌を継続した。
こうして得られた混合液を、予め内部を窒素置換した300mlのSUS製オートクレーブに圧送し、オートクレーブ内を100rpmの回転速度で攪拌しながら、常圧で55℃までに昇温した。
次いで、市販のトリメチルクロロシラン 15.2g(140mmol)をポンプでオートクレーブに1時間で供給した。供給終了後、15分間攪拌を継続した。
さらに、攪拌を継続しながら、オートクレーブ内を70℃まで昇温し、次いで、Heガスを15ml/minの供給速度で3.5時間、ディップで反応液に吹き込み、溶解しているメチルシラン類をストリッピングした。
オートクレ−ブ部より出た生成ガスは液体窒素で−180℃に制御された補集トラップにより全量を固化・回収した。
ストリッピング終了後、補集トラップを常温に戻し、採集した生成ガスの重量確認及びガスクロマトグラフィーで分析したところ、トリメチルシランが選択率99.8モル%、収率 88.7モル%で得られた。その他、痕跡量のジメチルシラン、テトラメチルシラン、エチルジメチルシラン及びトリメチルエチルシランが認められた。
【0020】
実施例2
供給したポリハロシランをトリメチルクロロシランに代えて、テトラクロロロシラン 5.95g(Cl量として、140mmol)にした以外は、実施例1と同様な方法で行った。
補集した生成ガスを分析した結果、シランが選択率 98.9モル%、収率 93.5モル%で得られた。
【0021】
比較例1
使用する組成液中の金属アルミニウムの除去を行わなかった(組成液中に金属アルミニウム 0.5重量%含有)以外は、実施例1と同様な方法で行った。
補集した生成ガスを分析した結果、トリメチルシランが選択率 98.8モル%、収率 71.2モル%で得られた。
【0022】
実施例3
使用する組成液にエチルアルミニウムジクロライドを添加しなかった以外は、実施例1と同様な方法で行った。
補集した生成ガスを分析した結果、トリメチルシランが選択率 99.0モル%、収率 80.2モル%で得られた。
【0023】
【発明の効果】
アルキルアルミニウムハイドライドを主成分とし、さらにトリアルキルアルミニウム及び微粉状アルミニウムを含有してなる組成物を用いてポリハロシランを還元し、シラン類を製造するに当たり、該粗生物中に含まれる微粉状アルミニウムを予め特定量まで除去し、さらに特定のアルキルアルミニウムハライドを特定量予め添加した後、反応を行う。これにより、有用なシラン類を高収率で得られ、産業上、有利である。
【発明の属する技術分野】
本発明は、モノシラン、ジシラン、トリシラン、モノメチルシラン、ジメチルシラン、トリメチルシラン等のシラン類の製造に好適に使用できる還元剤およびそれを用いたシラン類の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
シラン類は有機合成原料、無機合成原料、燃料、触媒等多数の用途があり、工業的に重要な化合物である。
中でも、メチルシラン類((CH3)nSiH4−n)は数年前からドライ・フォトレジスト材料または、2層レジスト材料として新規半導体材料分野で注目され始めている。
従来から、アルキルアルミニウムハイドライド等を用いて、ポリハロシランを還元し、シラン類を製造する方法は知られている。
【0003】
例えば、特公昭36−517号、英国特許823,483号、独国特許1,055,511号、同1,117,090号公報などにおいて、テトラクロロシランをナトリウムハイドライドで還元する場合に、ジエチルアルミニウムモノクロライドを少量添加することが記載されている。
しかしながら、該ジエチルアルミニウムモノクロライドは、その使用量から明らかなように、ある種の錯体を形成することにより、溶媒に実際上、不溶解であるナトリウムハイドライドを可溶化することによって活性化を図っているに過ぎなかった。
また、例えば、特開平4−224588号公報では、トリメチルクロロシランなどの有機ハロシランをジイソブチルアルミニウムハイドライドのような単一の水素化アルキルアルミニウムで水素化することにより、還元生成物を得るという方法が開示されている。
また、例えば、仏国特許1,499,032号公報においては、ハロシランを純度の高いアルキルアルミニウムハイドライドで還元する方法が記載されている。
【0004】
しかしながらアルキルアルミニウムハイドライドは、工業的には、金属アルミニウムと水素とトリアルキルアルミニウムから合成され、必然的に未反応のトリアルキルアルミニウム及び微粉状アルミニウムを含有する組成物として得られるものであり、安価に入手し得るアルキルアルミニウムハイドライドはこの組成物からなるものが多い。
この組成物をそのまま用いて、ポリハロシランの還元を試みると、生成するシラン類が純度の高いアルキルアルミニウムハイドライドを用いた場合より格段に低いのみならず、ポリハロシランの不十分な還元により生じたと推定されるモノクロロシラン等のハロシラン類や副反応によるエタン等が多量に副生する。
特開昭59−128393号公報には、組成物中のトリアルキルアルミニウムに対して一定量のアルキルアルミニウムハライドを添加することにより、アルキルアルミニウムハイドライドの作用を損なうことなく、シラン類の収率を向上させる方法が記載されている。しかし、組成物中のトリアルキルアルミニウムを反応させる際に、僅かではあるが、有効なアルキルアルミニウムハイドライドが消失してしまう欠点を有し、シラン類の収率悪化の改良として、トリアルキルアルミニウムの無害化に着目しているに過ぎなかった。
【0005】
一方、特開平4−224588号公報にあるような、純度の高いアルキルアルミニウムハイドライドを得るためには、上記組成物を蒸留分離する必要があるが、アルキルアルミニウムハイドライドとトリアルキルアルミニウムはその沸点が非常に接近しているのみならず、一種の共沸混合物を形成する系であるため、蒸留だけで両者を完全に分離することは非常に困難であるばかりでなく、該蒸留時にかなりの量のアルキルアルミニウムハイドライドが分解するという問題点がある。
【0006】
【解決課題】
本発明はポリハロシランを還元してシラン類を製造するのに好適に用いられる高選択率、高収率が得られる還元剤を提供することを目的とする。
【発明を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意研究を行った結果、アルキルアルミニウムハイドライドを主成分とする還元剤中の微粉状アルミニウムを予め一定量以下まで除去することにより、驚くべきことに、アルキルアルミニウムハイドライドの作用を何ら損なうことなく、シラン類の収率を大幅に向上させ、かつ、副生物の抑制によって選択率が向上することを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、
(1) 微粉状アルミニウムの含量がアルキルアルミニウムハイドライドに対して0.01重量%以下であることを特徴とするアルキルアルミニウムハイドライドを主成分とする還元剤。
(2) トリアルキルアルミニウムを更に含有することを特徴とする(1)に記載の還元剤。
(3) 更に一般式(1)で表わされるアルキルアルミニウムハライドをトリアルキルアルミニウム全量をジアルキルアルミニウムモノハライドに変換させるに必要な量(以下、理論必要モルという)添加したことを特徴とする(2)に記載の還元剤。
AlRnX3−n (1)
(式中、Rは炭素数1〜10のアルキル基、nは0、1または、1.5、Xはハロゲン原子を表わす)
(4) アルキルアルミニウムハイドライドがジエチルアルミニウムハイドライドであることを特徴とする(1)〜(3)いずれかに記載の還元剤。
(5) (1)〜(4)いずれかに記載の還元剤を用いてポリハロシランを還元することを特徴とするシラン類の製造方法。
に関する。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明における還元剤の主成分たるアルキルアルミニウムハイドライドとは、一般式R2AlHで表される還元性化合物である。Rは炭素数1〜10のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられる。二つのアルキル基は同一でも、異なっていても良い。上式で示されるアルキルアルミニウムハイドライドのうち、好ましいものを例示すれば、ジメチルアルミニウムハイドライド、ジエチルアルミニウムハイドライド、ジイソブチルアルミニウムハイドライドなどが挙げられる。特に好ましくはジエチルアルミニウムハイドライドが挙げられる。
アルキルアルミニウムハイドライドは、還元剤中50重量%以上含有しているのが好ましく、更に好ましくは65重量%以上である。
【0008】
アルキルアルミニウムハイドライドは、アルミニウム、水素、トリアルキルアルミニウムを原料として製造されるが、未反応の粒径が100μ以下の微粉状アルミニウムが、少なくとも0.05重量%以上、通常、0.5〜2重量%程残存する。本発明においては、微粉状アルミニウムをアルキルアルミニウムハイドライドに対して0.01重量%以下に除去することが肝要である。還元剤中の微粉状アルミニウムの含有量が0.01重量%より多い場合は、残存する微粉状アルミニウムによる作用により、目的物であるシラン類の収率が極端に低下する。
微粉状アルミニウムは、公知の方法にて除去することができる。自然沈降による分離、遠心分離など使用できるが、フィルターを使ったろ過分離が好ましい。5〜10μm以上の微粉末を除去できるフィルターを使用するのが好適である。また、微粉状アルミニウムを除去するための温度、圧力などについては、特に制限がなく、0.01重量%以下の含有量まで低下するために任意に設定できる。
【0009】
本発明における還元剤に含有するトリアルキルアルミニウムは、アルキルアルミニウムハイドライドの製造原料であるトリアルキルアルミニウムが残存しているものであり、一般式R3Alで示される化合物である。この式で、Rは炭素数1〜10のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基などが挙げられる。三つのアルキル基は同一でも、異なっていても良い。上式で示されるトリアルキルアルミニウムのうち、特に含有される可能性の高いものを例示すれば、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムなどが挙げられる。
このようなトリアルキルアルミニウムは、通常、アルキルアルミニウムハイドライドに対し、20〜300モル%程度、該還元剤中に含有されている。
【0010】
本発明の還元剤では、一般式AlRnX3−nで表わされるアルキルアルミニウムハライドを添加するのが好ましい態様である。Rは炭素数1〜10のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基などが挙げられる。Xはハロゲン原子であり、例えば、弗素、塩素、臭素、沃素などである。また、nは0、1または1.5の任意の数字である。
上記一般式で示される化合物のうち、好ましいものを例示すれば、メチルアルミニウムジクロライド、メチルアルミニウムセスキクロライド、エチルアルミニウムジクロライド、エチルアルミニウムセスキクロライド、イソブチルアルミニウムジクロライド、イソブチルアルミニウムセスキクロライド、アルミニウムトリクロライド(塩化アルミニウム)、メチルアルミニウムジブロマイド、メチルアルミニウムセスキブロマイド、エチルアルミニウムジブロマイド、エチルアルミニウムセスキブロマイド、イソブチルアルミニウムジブロマイド、イソブチルアルミニウムセスキブロマイド、アルミニウムトリブロマイド(臭化アルミニウム)などである。これらは単独でまたは、混合して用いられる。
なお、還元剤中のアルキルアルミニウムハイドライド及びトリアルキルアルミニウムのアルキル基と、これに添加されるアルキルアルミニウムハライドのアルキル基は、三者共全て同一であってもよいし、また全て異なっていてもよい。
【0011】
本発明においては、上記のようなアルキルアルミニウムハライドを、上記還元剤中に含有するトリアルキルアルミニウムの全量をジアルキルアルミニウムモノハライドに変化させるのに要する量、すなわち理論必要モルを該組成物に予め添加するのが好ましい。ここで言う理論必要モルは、還元反応に使用する組成物中のトリアルキルアルミニウムの量に対し、これに添加するアルキルアルミニウムハライドに含有されているハロゲン原子の量に応じて算出されるものである。
例えば、ジアルキルアルミニウムハライドは次式のようにトリアルキルアルミニウムと反応してアルキルアルミニウムモノハライドを生じる。
R3Al + AlRX2 → 2AlR2X (2)
従って、アルキルアルミニウムジハライドの場合は、トリアルキルアルミニウムと当量で反応して、アルキルアルミニウムモノハライドを生じることになる。また、実際上、上記(2)式の反応は、ほぼ定量的に進行すると考えてよい。
アルキルアルミニウムハライドの添加量が、このように算定された理論必要モルを超えた場合は、還元剤であるアルキルアルミニウムハイドライドの分解が還元反応中に著しく促進され、目的物であるシラン類の収率が極端に低下する。このような現象は、微粉状アルミニウムを実質的に含有しない組成物を使用した場合は、ほとんど認められないことから、該微粉状アルミニウムの何らかの作用によるものと推定される。一方、算定された理論必要モルより少なく添加した場合は、未反応のトリアルキルアルミニウムによる作用により、目的物であるシラン類の収率が低下する場合がある。
【0012】
上記還元剤にアルキルアルミニウムハライドを添加する方法は任意であり、両者を直接混合してもよいし、いずれか一方、もしくは両者を、適当な溶媒で希釈した後に混合してもよい。通常、両者は液体であるが、一方が固体の場合は、溶媒に溶解させるか、懸濁させて混合すればよい。上記のような還元剤とアルキルアルミニウムハライドを混合するために希釈、溶解、懸濁させる溶媒は、反応原料であるアルキルアルミニウムジハライドや反応生成物であるアルキルアルミニウムモノハライドと反応しない非極性の溶媒が好ましい。このような溶媒として、ヘプタン、オクタン、流動パラフィン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の脂肪族飽和炭化水素や芳香族炭化水素が挙げられる。また、これら使用する溶媒は、予め窒素バブリングなどを施して、十分に脱酸素・脱水したものを使う必要がある。通常、溶媒中の水分は50ppm以下として用いるのが好ましい。該混合のほとんどの場合が、強烈な発熱を伴うので、系が過熱しないように十分注意を払って操作を行う必要がある。具体的には、冷却手段及び攪拌手段を備えた容器にいずれか一方を仕込み、これを冷却・攪拌しつつ、温度制御が可能な範囲の速度で他の一方を添加し、系内温度を40℃程度に保つよう操作するのが好ましい。上記反応自体は非常に速いので、滴下(添加)が完了した時点で、実質的に反応が完結しているとして扱ってもよいが、念のため、10〜20分程度の後、還元反応を行うことが望ましい。なお、懸濁した系の場合には、反応を促進するために、70℃程度に加熱昇温することが好ましい。
【0013】
本発明において、還元剤で還元するポリハロシランは、一般式SinY2n+2で表される化合物である。nは正の整数を表わし、Yはそれぞれ独立にハロゲン原子、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基またはビニール基を表わす。通常、Yの少なくとも一つはハロゲン原子であるが、場合によってはハロゲン原子が全く存在せず、Yの全てがアルキル基、アルコキシ基、アリール基またはビニール基で構成されていても構わない。ハロゲン原子としては、弗素原子、塩素原子、臭素原子、沃素原子などが挙げられ、アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基などが挙げられ、アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、i−ブトキシ基、sec−ブトキシ基等が挙げられ、アリール基としては、フェニル基、p−メチルフェニル基、m−メチルフェニル基、o−メチルフェニル基、p−エチルフェニル基、m−エチルフェニル基、o−エチルフェニル基等が挙げられ、ビニル基としては、ビニル基、アリル基、イソプロペニル基などが挙げられる。
上式で示されるポリハロシランのうち、本発明の実施に特に好ましいものを例示すれば、テトラクロロシラン(四塩化珪素)、ヘキサクロロジシラン、テトラエトキシシラン、ジエチルジクロロシラン、トリクロロシラン、ジクロロシラン、モノクロロシラン、トリメチルクロロシラン、トリエチルクロロシランなどが挙げられる。
【0014】
本発明において、ポリハロシランを還元する反応とは、前記定義したポリハロシランから、シラン類を製造する反応の全てをいう。
従って、例えば、
SiCl4 + 4AlEt2H → SiH4 + 4AlEt2Cl (2)
のような反応はもちろん、例えば、
のようなハロゲンが実質的に関与しない反応も、本発明における還元反応に含まれる。
該還元反応で生成するシラン類とは、上記ポリハロシランから、1つ以上の、または全てのハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基またはビニール基を除去して得られる、少なくとも1つ以上の珪素−水素結合を有するシラン化合物全てが含まれる。
【0015】
該還元反応自体は通常の液−液反応として、公知の手段により行うことができるが、該反応を遂行するに当たって注意すべきことは、反応に関与する原料、還元剤及び生成物質のほとんど全てが、酸素もしくは水分と容易に反応して分解・発火する極めて活性な危険物ばかりであるということである。従って、該反応は、酸素もしくは水分を全く遮断した完全に不活性な雰囲気下で行わなければならない。このため、十分に脱酸素・脱水したヘリウム、ネオン、アルゴンなどの不活性ガスや窒素、水素等の反応系に対し、不活性なガスで、反応系をシールする必要がある。
該還元反応に使用する反応装置は、除熱手段を備えた通常の液−液反応用の攪拌槽型反応器が好ましいが、上述の理由から、反応器はもちろん、配管部、生成シランガス類の凝縮部等を含めて、反応系全体が完全に密閉系として組み立てられる必要がある。
なお、還元反応装置は、上記したアルキルアルミニウム組成物へのアルキルアルミニウムハライドの添加装置としても使用することができるので、両者を兼ねて、該反応装置で該組成物の処理操作を行った後、引き続いてポリハロシラン類を送入して、該還元反応を行うことも可能である。
【0016】
本発明における反応温度は、通常、−30〜100℃、好ましくは0〜80℃、特に好ましくは30〜60℃の範囲に制御する必要がある。反応温度がこれより低い場合は、反応が実質的に進行せず、またこれより高すぎる場合は、アルキルアルミニウムハイドライドが自己分解するばかりでなく、望ましくない副反応が起こるからである。
該還元反応は強度の発熱反応であるから、通常、反応の開始時のみ反応が進行する温度に加熱すればよい。このように、いったん反応が開始すれば、反応熱のみにより自動的に反応は進行するので、冷却操作を行って反応系を所望の反応温度に保持する。なお、反応操作としては、アルキルアルミニウムハイドライドを主成分として含有した還元剤とポリハロシランの両者を反応器に同時に仕込んで反応させる回分操作によってもよいし、また、最初に反応器に一方、例えば、アルキルアルミニウムハイドライドを主成分として含有した還元剤のみを仕込んでおき、これにポリハロシランを添加する半回分操作としてもよい。この方式は、ポリハロシランの添加速度(送入速度)によって反応速度、すなわち反応熱の発生量を制御できる利点がある。もちろん、両者をそれぞれ連続的に反応器に送入し、生成物を連続的に取り出す連続操作とすることもできる。
反応圧力は、通常、常圧で行うが、反応温度または装置との関係で減圧もしかは加圧としてもよい。
【0017】
該還元反応自体は非常に速いので、反応は両者の混合が完了した時点で、実際的には終了していると思われる。従って、例えば、上記半回分操作を行う場合は、ポリハロシランの添加が完了してから、10〜30分程度の熟成を行えば十分である。なお、反応の終了は、シラン類の発生が止まった時点としても検知できるし、発熱が止まって系内温度が降下し始めた点としても簡単に決定できる。また、発生するシラン類によっては、同時に生成するアルキルアルミニウムモノハライドや溶媒などに溶解する場合は、例えば、上記半回分操作を行う場合は、ポリハロシランの添加が完了してから、十分に脱酸素・脱水したヘリウム、ネオン、アルゴン等の不活性ガスで溶解しているシラン類を追い出して回収する必要がある。この時に使用する不活性ガスの流量、追い出し時の温度、圧力などは任意であり、溶解しているシラン類の物性に応じて決定できる。
【0018】
発生したシラン類のガスは、液体窒素等で冷却される凝縮器に導いて、液化または固化して補集する。
本発明における還元反応においては、反応溶媒を用いることは必須ではないが、通常、用いた方が反応が緩やかになり、制御しやすくなるので好ましい。
反応溶媒を用いる場合は、還元反応終了後、生成したアルキルアルミニウムモノハイドライド等を反応系から回収するためには、該アルキルアルミニウムモノハイドライドと反応しない非極性の溶媒が好ましい。このような溶媒として、ヘプタン、オクタン、流動パラフィン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の脂肪族飽和炭化水素や芳香族炭化水素が挙げられる。また、これら使用する溶媒は、予め窒素バブリングなどを施して、十分に脱酸素・脱水したものを使う必要がある。通常、溶媒中の水分は50ppm以下として用いるのが好ましい。
本発明の方法により製造されたシラン類は、特に不純物が少ないので、簡単な精製を施した後、各種の半導体材料用の原料として使用することができる。
【0019】
【実施例】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明する。
実施例1
酸素濃度 10ppm以下に制御した窒素ボックス中で、金属アルミニウムと水素とトリエチルアルミニウムから合成された組成液を常温でガラスフィルターを用いて濾過し、5μ以上の粒子径の微粉状アルミニウムを除去し、ジエチルアルミニウムハイドライド 65重量%、トリエチルアルミニウム 30重量%、流動パラフィンなど 5重量%、微粉状アルミニウム 0.005重量%の組成液を得た。この組成液を予め内部を窒素置換した4つ口フラスコに、窒素バブリングにより50ppm以下の水分に調整した流動パラフィン 20gと上記組成液を18.5g(ジエチルアルミニウムハイドライド 140mmol、トリエチルアルミニウム 48.7mmol)秤量し、マグネチックスターラーで攪拌した。次いで、ガラス製の滴下ロートに、流動パラフィンで希釈した50重量%エチルアルミニウムジクロライドを12.4g(48.7mmol)秤量し、45分間かけて供給した(この時、冷却により反応液温度は35℃以下に調整した)。さらに、供給終了後、15分間攪拌を継続した。
こうして得られた混合液を、予め内部を窒素置換した300mlのSUS製オートクレーブに圧送し、オートクレーブ内を100rpmの回転速度で攪拌しながら、常圧で55℃までに昇温した。
次いで、市販のトリメチルクロロシラン 15.2g(140mmol)をポンプでオートクレーブに1時間で供給した。供給終了後、15分間攪拌を継続した。
さらに、攪拌を継続しながら、オートクレーブ内を70℃まで昇温し、次いで、Heガスを15ml/minの供給速度で3.5時間、ディップで反応液に吹き込み、溶解しているメチルシラン類をストリッピングした。
オートクレ−ブ部より出た生成ガスは液体窒素で−180℃に制御された補集トラップにより全量を固化・回収した。
ストリッピング終了後、補集トラップを常温に戻し、採集した生成ガスの重量確認及びガスクロマトグラフィーで分析したところ、トリメチルシランが選択率99.8モル%、収率 88.7モル%で得られた。その他、痕跡量のジメチルシラン、テトラメチルシラン、エチルジメチルシラン及びトリメチルエチルシランが認められた。
【0020】
実施例2
供給したポリハロシランをトリメチルクロロシランに代えて、テトラクロロロシラン 5.95g(Cl量として、140mmol)にした以外は、実施例1と同様な方法で行った。
補集した生成ガスを分析した結果、シランが選択率 98.9モル%、収率 93.5モル%で得られた。
【0021】
比較例1
使用する組成液中の金属アルミニウムの除去を行わなかった(組成液中に金属アルミニウム 0.5重量%含有)以外は、実施例1と同様な方法で行った。
補集した生成ガスを分析した結果、トリメチルシランが選択率 98.8モル%、収率 71.2モル%で得られた。
【0022】
実施例3
使用する組成液にエチルアルミニウムジクロライドを添加しなかった以外は、実施例1と同様な方法で行った。
補集した生成ガスを分析した結果、トリメチルシランが選択率 99.0モル%、収率 80.2モル%で得られた。
【0023】
【発明の効果】
アルキルアルミニウムハイドライドを主成分とし、さらにトリアルキルアルミニウム及び微粉状アルミニウムを含有してなる組成物を用いてポリハロシランを還元し、シラン類を製造するに当たり、該粗生物中に含まれる微粉状アルミニウムを予め特定量まで除去し、さらに特定のアルキルアルミニウムハライドを特定量予め添加した後、反応を行う。これにより、有用なシラン類を高収率で得られ、産業上、有利である。
Claims (5)
- 微粉状アルミニウムの含量がアルキルアルミニウムハイドライドに対して0.01重量%以下であることを特徴とするアルキルアルミニウムハイドライドを主成分とする還元剤。
- トリアルキルアルミニウムを更に含有することを特徴とする請求項1に記載の還元剤。
- 更に一般式(1)で表わされるアルキルアルミニウムハライドをトリアルキルアルミニウム全量をジアルキルアルミニウムモノハライドに変換させるに必要な量を添加したことを特徴とする請求項2に記載の還元剤。
AlRnX3−n (1)
(式中、Rは炭素数1〜10のアルキル基、nは0、1または1.5、Xはハロゲン原子を表わす) - アルキルアルミニウムハイドライドがジエチルアルミニウムハイドライドであることを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載の還元剤。
- 請求項1〜4いずれかに記載の還元剤を用いてポリハロシランを還元することを特徴とするシラン類の製造方法。
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-
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