JP2004115351A - ガラス繊維ヤーン - Google Patents
ガラス繊維ヤーン Download PDFInfo
- Publication number
- JP2004115351A JP2004115351A JP2002285023A JP2002285023A JP2004115351A JP 2004115351 A JP2004115351 A JP 2004115351A JP 2002285023 A JP2002285023 A JP 2002285023A JP 2002285023 A JP2002285023 A JP 2002285023A JP 2004115351 A JP2004115351 A JP 2004115351A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- sizing agent
- glass fiber
- starch
- mass
- fiber yarn
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Pending
Links
Images
Landscapes
- Surface Treatment Of Glass Fibres Or Filaments (AREA)
- Treatments For Attaching Organic Compounds To Fibrous Goods (AREA)
Abstract
【課題】ガラスクロスの経糸及び/又は緯糸として用いられ、集束性に優れてエアジェット製織時の毛羽発生を防止できるガラス繊維ヤーンを提供する。
【解決手段】平均径3〜5μmであるガラスフィラメント50〜150本に集束剤を付着させて集束してなるストランドに撚りをかけてなり、ガラスクロスの経糸及び/又は緯糸として用いられるガラス繊維ヤーンであって、前記集束剤が、アミロース含量50%以上のエーテル化ハイアミロース澱粉と、植物油と、パラフィンと、乳化剤とを少なくとも含有し、前記集束剤の付着量が、集束剤付着後のガラス繊維ストランドの質量を基準として、固形分量で1.5〜3.0質量%である。
【選択図】 なし
【解決手段】平均径3〜5μmであるガラスフィラメント50〜150本に集束剤を付着させて集束してなるストランドに撚りをかけてなり、ガラスクロスの経糸及び/又は緯糸として用いられるガラス繊維ヤーンであって、前記集束剤が、アミロース含量50%以上のエーテル化ハイアミロース澱粉と、植物油と、パラフィンと、乳化剤とを少なくとも含有し、前記集束剤の付着量が、集束剤付着後のガラス繊維ストランドの質量を基準として、固形分量で1.5〜3.0質量%である。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する分野】
本発明は、主としてプリント配線板の基板材料等として使用されるガラスクロスに用いられるガラス繊維ヤーンに関する。
【0002】
【従来の技術】
ガラス繊維ヤーンは、繊維径数ミクロンのガラスフィラメント数十本〜千数百本を、集束剤を用いて集束してストランドとし、このストランドに撚りをかけて得られる。そして、このガラス繊維ヤーンは、製織工程によってガラスクロスとなり、このガラスクロスに樹脂を含浸させることによって、繊維強化プラスチック(FRP)製品の補強材として使用されている。
【0003】
近年、このガラスクロスの用途として、特にプリント配線板の基板材料への適用が注目されている。このプリント配線板の製造工程においては、ガラスクロスにエポキシ樹脂等の樹脂を含浸させてプレプリグを形成し、更に、薄い銅箔等が積層されて形成される。このため、銅箔を損傷しないように、ガラスクロスの表面には毛羽等の欠陥が非常に少ないことが要求されている。
【0004】
そして、上記のプリント配線板等に好適に用いられるガラス繊維ヤーンとしては、例えば、フィランメントの平均径が5μm以下である、C1200(ガラスフィラメントの呼び径4μm、ストランドの番手で4.1g/km)と呼ばれる、細いガラス繊維ヤーンが使用される場合がある。
【0005】
このガラスクロスの製造工程としては、上記のストランドにリング撚糸機等を用いて撚りをかけてガラス繊維ヤ−ンをボビンに巻き取り、その後、エアジェット織機等によって経糸と緯糸とを製織することが行なわれている。
【0006】
したがって、上記のガラス繊維ヤーンにおける一般的な要求性能としては、上記の毛羽発生を防止するための集束性の他、整経工程時の走行性、粉落ちの防止性、製織された後に集束剤や2次サイズ剤を酸化、熱分解等により除去する加熱脱油工程時のヒートクリーニング性等が要求されており、更に、緯糸においては、エアジェット織機において、エアで搬送されてよこ入れされる際の飛走性等が要求されている。
【0007】
このような集束剤に関する従来技術としては、例えば、特許文献1には、粉落ちや毛羽立ちが減少し、適性な硬度を有するヤーンの得られるガラス繊維用集束剤用化工澱粉として、全化工澱粉に対して5〜95重量%の60℃、5%水溶液で1〜5CPSの粘度を有する化工澱粉と同じく95〜5重量%の60℃、5%水溶液で6〜50CPSの粘度を有する化工澱粉とからなる澱粉が記載されており、集束剤として、粘度(分子量)の異なる2種類の化工澱粉を混合して用いることが開示されている。
【0008】
また、粉落ちや毛羽立ちが減少し、集束剤糊液の粘度が安定するガラス繊維用集束剤用化工澱粉として、M.S.値0.15〜0.36にヒドロキシアルキル化され、かつ5%水溶液の60℃粘度が6〜16cpsになるよう架橋処理されたハイアミロースコーンスターチからなる集束剤用の化工澱粉が、特許文献2に開示されている。
【0009】
【特許文献1】
特開平10−72243号公報
【特許文献2】
特開平9−227174号公報
【0010】
【発明が解決しようとしている課題】
上記のC1200と呼ばれるような、特に細いガラス繊維ヤーンにおいては、その重量が非常に軽いために緯糸の飛走性は良好である。また、このヤーンを製織して得られるガラスクロスの密度は、22〜26g/m2と低いためにヒートクリニング性も一般に良好である。
【0011】
しかし、上記のような特に細いガラス繊維ヤーンにおいては、糸が細くなることによって、ガラス繊維ヤーン単位体積あたりの表面積が増加する。このため、糸種がE225、D450のヤーンと同じ付着量では集束剤の膜厚が薄くなることから、集束性が低下しやすくなる。この集束性が低下することで、糸くせや糸吊りなどが発生しやすくなることから、上記の細いガラス繊維ヤーンにおいては、毛羽や糸切れが発生しやすくなるという問題があった。
【0012】
また、上記の特開平10−72243号公報の集束剤においては、粘度(分子量)の異なる2種類の化工澱粉を混合して用いることにより、粉落ちや毛羽立ちが減少できるものの、植物油の配合割合に対して、パラフィンを多く配合している点により、上記のような細いガラス繊維ヤーンにおいては、集束性が不充分となり、毛羽発生を有効に防止できないという問題があった。
【0013】
また、特開平9−227174号公報の集束剤においては、架橋澱粉を用いることによって粉落ちや毛羽立ちが減少できるものの、やはり植物油の配合割合に対して、パラフィンを多く配合している点により集束性が不充分となり、毛羽発生を有効に防止できないという問題があった。
【0014】
したがって、本発明の目的は、プリント配線板に使用されるガラスクロスの経糸と緯糸とに兼用でき、集束性を良好にして毛羽発生を防止し、かつ、撚糸工程等における糸切れの発生を防止できる、ガラス繊維ヤーン用を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明等は鋭意検討した結果、澱粉としてアミロース含量50%以上のエーテル化ハイアミロース澱粉を用い、更に、集束剤の付着量を従来より多くすることによって、集束性を向上して毛羽の発生を抑制でき、かつ、上記の糸切れも防止できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0016】
すなわち、本発明のガラス繊維ヤーンは、平均径3〜5μmであるガラスフィラメント50〜150本に集束剤を付着させて集束してなるストランドに撚りをかけてなり、ガラスクロスの経糸及び/又は緯糸として用いられるガラス繊維ヤーンであって、
前記集束剤が、アミロース含量50%以上のエーテル化ハイアミロース澱粉と、植物油と、パラフィンと、乳化剤とを少なくとも含有し、
前記集束剤の付着量が、集束剤付着後のガラス繊維ストランドの質量を基準として、固形分量で1.5〜3.0質量%であることを特徴とする。
【0017】
上記発明によれば、集束剤の付着量を上記範囲として従来より多く付着させたので、前記のC1200のような細いガラス繊維ヤーンにおいても集束剤の膜厚が確保され、これによって、集束性を付与しつつ、撚糸工程以降における糸切れを防止することができる。
【0018】
また、澱粉としてエーテル化ハイアミロース澱粉を用いたので、ストランドへの付着効率がよく、集束性を向上させ、毛羽発生を効果的に防止することができる。また、付着させるガラス繊維ヤーンが細いので緯糸の飛走性が低下することがなく、ヒートクリーニング性も低下することかない。
【0019】
本発明においては、前記植物油と前記パラフィンとの配合割合が、植物油とパラフィンとからなる油剤全体を100質量部とした場合における質量部で95〜75:5〜25であることが好ましい。この配合割合によれば、更に集束性を向上させ、毛羽発生を効果的に防止することができる。
【0020】
また、本発明においては、前記エーテル化ハイアミロース澱粉100質量部に対する、前記植物油及びパラフィンの含有量が20〜30質量部であることが好ましい。この配合割合によれば、更に集束性を向上させ、毛羽の発生を抑制することができる。
【0021】
更に、本発明においては、前記エーテル化ハイアミロース澱粉が、架橋エーテル化ハイアミロース澱粉であることが好ましい。これにより、前記澱粉の糊化液の粘度が従来の澱粉の場合よりも低くなり、集束剤の粘度も低くなる。従来は、集束剤のストランドへの付着量を多くするために集束剤の固形分割合を高くすると、集束剤の粘度も高くなり、採糸工程での糸切れが増加したが、前記澱粉を用いることにより採糸工程での糸切れを抑制することができる。また、粘度が低いためストランドへの均一な付着が可能となり、少量の付着でも、毛羽の発生を抑制することができる。更に、付着量の増加による集束剤成分の移行(マイグレーション)や、過剰の集束による開繊性、飛走性の低下を防止することができる。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0023】
本発明のガラス繊維ヤーンを構成するガラスフィラメントの集束に用いる集束剤は、アミロース含量が50%以上のエーテル化ハイアミロース澱粉(以下、エーテル化ハイアミロース澱粉と略称する)と、植物油と、パラフィンと、乳化剤とを少なくとも含有する。
【0024】
澱粉はガラスフィラメントを集束するとともに、被膜形成剤として工程中での屈曲、摩擦からガラス繊維ヤーンを保護する目的として用いられる。
【0025】
そして、本発明においては、この澱粉としてエーテル化ハイアミロース澱粉を用いることを第1の特徴としている。
【0026】
本発明においては、エーテル化ハイアミロース澱粉を用いることによって被膜強度を向上させ、集束性を向上させることができ、粉落ちを抑制することができる。また、澱粉の糊化液を調整する際に、加熱により澱粉が完全に膨潤、溶解しないことから、ストランドの巻き取り工程において集束剤の飛散が少なくなり、ストランドへの付着効率を向上させることができる。
【0027】
澱粉の種類としては特に限定されず、コーンスターチ、タピオカ澱粉、小麦粉澱粉、甘藷澱粉、馬鈴薯澱粉等が使用可能であるが、澱粉以外の不純物が少なく、粒径が小さく、容易に入手できる点からコーンスターチが好ましく用いられる。
【0028】
前記澱粉はエーテル変性されたエーテル化澱粉を用いる。エーテル化としてはカルボキシメチル化、ヒドロキシアルキル化、アルキル化、ベンジル化、カチオンエーテル化などが挙げられるが、なかでもヒドロキシアルキル化が好ましい。前記エーテル化澱粉を用いることにより、糊化開始温度が低くなるので糊化し易く、また、溶液を安定化することができる。
【0029】
このようなヒドロキシアルキル化は、上記の澱粉に、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、1,2−ブチレンオキシド等を作用させて得られる。
【0030】
また、本発明においては、上記のエーテル化ハイアミロース澱粉が架橋エーテル化ハイアミロース澱粉であることが好ましい。架橋澱粉とは、澱粉の水酸基間に多官能基を結合させた誘導体であり、例えば、ヒドロキシプロピルヒドロキシプロピル架橋デンプン等が挙げられる。
【0031】
本発明においては、上記のエーテル化ハイアミロース澱粉以外に、通常のエーテル化澱粉等を少量含んでいてもよいが、集束性を向上させて毛羽発生を防止するためにエーテル化ハイアミロース澱粉を単独で用いることが好ましい。また、他の澱粉と併用する場合には、エーテル化ハイアミロース澱粉100質量部に対して、20質量部以下の配合量とすることが好ましい。他の澱粉の配合量が20質量部を超えると、集束剤のストランドへの付着効率が低下して付着量が所定量に到達しないので、集束性が低下して毛羽が発生しやすくなる。
【0032】
次に、本発明に用いる油剤について説明する。油剤は主にストランドに潤滑性を付与する目的として用いられる。
【0033】
本発明においては、油剤として、植物油とパラフィンとを併用することを特徴とする。植物油のみでは潤滑性が不足するので、毛羽の発生、飛走性共に好ましくなく、パラフィンを含有させることによって滑り性を付与し、これによって開繊性を付与してエアジェット織機における飛走性を向上させることができる。ただし、パラフィンのみでは、飛走性は向上するものの、逆に開繊が過剰となって毛羽の発生が増加するので、両者を併用する必要がある。
【0034】
植物油としては、特に限定されず、ヤシ油、パーム油、パーム核油、コーン油、綿実油等が挙げられる。また、植物油は不飽和のままでもよく、水素添加して飽和植物油としてもよい。これらは、単独又は2種類以上を混合して用いてもよい。なお、前記植物油は、ラード等の動物油を併用して動植物油として用いることが好ましい。動植物油として用いる場合、後述する植物油の量とは、動植物油の量をいうものとする。
【0035】
パラフィンとしては、融点が50〜60℃であるパラフィンワックスを用いることが好ましい。これによって、整経時の走行性が良好となり毛羽の発生を抑制できる。
【0036】
本発明においては、上記の植物油とパラフィンとの配合割合を、植物油とパラフィンとからなる油剤全体を100質量部とした場合における質量部で95〜75:5〜25とすることが好ましい。このようにパラフィンに対する植物油の配合割合を多くすることにより、過剰な滑りを抑制して毛羽の発生を有効に防止することができる。油剤におけるパラフィンの配合割合が5質量%未満であると、充分な滑り性が得られず整経時の走行性が低下し、また製織時の飛走性も低下するので好ましくなく、逆に25質量%を超えると開繊が過剰となり毛羽が発生しやすくなるので好ましくない。
【0037】
また、上記の植物油とパラフィンとからなる油剤の含有量としては、前記澱粉100質量部に対する、前記植物油及び前記パラフィンの含有量が20〜30質量部であることが好ましい。前記植物油及び前記パラフィンの含有量が20質量部未満であると、製織時の緯糸の飛走性が劣るので好ましくなく、30質量部を超えると、集束剤の被膜形成性が劣るため整経時の毛羽が発生しやすくなるので好ましくない。
【0038】
次に、上記の植物油及びパラフィンを乳化するための乳化剤について説明する。本発明においては、上記の植物油の乳化剤とパラフィンの乳化剤とで同一の乳化剤を用いてもよい。また、植物油とパラフィンとを、それぞれより安定した乳化状態とするために別々の乳化剤を用いてもよい。
【0039】
植物油の乳化剤としては、従来公知の非イオン系の界面活性剤等が使用でき、エーテル系、エステル系、エーテルエステル系の乳化剤等がいずれも使用できる。
【0040】
エーテル系乳化剤としては、高級アルコールのエチレンオキサイド付加物であることが好ましい。具体的には、非イオン系の界面活性剤である、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル、及びフェニルエーテル型の乳化剤が挙げられる。
【0041】
エステル系乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンモノステアレート、ポリオキシエチレンモノオレエート等のポリオキシエチレンモノアルキルエステルや、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンセスキオレエート、ソルビタントリオレエート等のソルビタンエステルや、ポリグリセリンオレイン酸エステル、ポリグリセリンラウリン酸エステル、ポリグリセリンステアリン酸エステル等の脂肪酸グリセリンエステルを用いることができる。なかでも脂肪酸グリセリンエステルを用いることが好ましい。
【0042】
エーテルエステル系の乳化剤としては、具体的には、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート等のソルビタンエステルエーテル型の乳化剤等が挙げられる。
【0043】
このうち、エステル系、エーテルエステル系の乳化剤が、ガラス繊維ヤーンの適度な開繊が得られるため好ましく、なかでも、ポリオキシエチレンモノアルキルエステル、ソルビタンエステル、又はソルビタンエステルエーテル型の乳化剤が特に好ましい。
【0044】
本発明において、この植物油の乳化剤の含有量は、植物油及び前記乳化剤の合計量に対して10〜30質量%であることが好ましい。これにより、更に集束性を向上させ、毛羽の発生を抑制することができる。植物油の乳化剤の含有量が10質量%未満では、乳化の状態が不安定となり集束剤がストランドに充分付着しないために毛羽が発生しやすくなり、30質量%を超えると、開繊が過剰となり、整経時及び製織時での毛羽が発生しやすくなる。
【0045】
一方、パラフィンの乳化剤としては、エーテル系乳化剤を少なくとも含む乳化剤が好ましい。これによって、特にパラフィンとエーテル系乳化剤を組み合わせてパラフィンエマルジョンとすることによって、ガラス繊維ヤーンの開繊性を向上させることができる。エーテル系の乳化剤としては、上記の植物油に用いるエーテル系乳化剤と同様の乳化剤が使用できる。
【0046】
また、上記のパラフィンのエーテル系乳化剤の含有量は、パラフィン及びエーテル系乳化剤の合計量に対して20〜40質量%が好ましい。これにより過剰な開繊や毛羽の発生を抑制することができる。エーテル系乳化剤の含有量が20質量%未満であると、開繊性が不充分となり、40質量%を超えると、開繊が過剰となって毛羽の発生が増加する。
【0047】
更に、前記パラフィンの乳化剤として、エーテル系乳化剤に加えてエステル系乳化剤を含有することが好ましい。これによれば、更に開繊性が向上するので、少量の添加であっても、エアジェット織機における飛走性を向上させることができる。このような、エステル系乳化剤としては、上記の植物油に用いるエステル系乳化剤と同様の乳化剤が使用できる。
【0048】
なお、上記の植物油の乳化剤、又はパラフィンの乳化剤は、それぞれ単独で用いてもよく、複数の種類を併用してもよい。
【0049】
本発明の集束剤においては、上記の成分以外に他の成分を含んでいても良い。このような成分としては、例えば、カチオン潤滑剤や、防カビ剤の他、シランカップリング剤、その他各種添加剤が挙げられる。
【0050】
上記の集束剤の製造方法としては、従来公知の方法により、澱粉の糊化液に、油剤と乳化剤とを混合して水を分散媒体としてエマルジョン化したものを加え、これに更にその他の成分を混合することにより製造できる。
【0051】
ここで、本発明においては、油剤と乳化剤とで行なう乳化工程において、植物油と、パラフィンと、乳化剤とを一括混合して乳化してもよいが、植物油とパラフィンとが、それぞれに別々に乳化された状態で混合されていることが好ましい。
【0052】
これによれば、植物油と、パラフィンと、乳化剤とを一括して乳化する場合と比較して、植物油と乳化剤、パラフィンと乳化剤の、それぞれで行われた乳化の状態がより安定するので毛羽を効果的に抑制することができる。
【0053】
次に、上記の集束剤を用いて得られる、本発明のガラス繊維ヤーン、及びガラスクロスについて説明する。
【0054】
本発明のガラス繊維ヤーンは、平均径3〜5μmであるガラスフィラメント50〜150本を集束してストランドを得る際に、上記の集束剤が付与される。このような平均繊維径、集束本数のストランドとしては、例えば番手が2〜12g/kmのストランドが挙げられる。
【0055】
そして、本発明においては、集束剤の付着量は、集束剤付着後のストランドの質量を基準として、固形分量で1.5〜3.0質量%の範囲であり、好ましくは1.6〜2.3質量%であることを第2の特徴としている。集束剤の付着量が1.5質量%未満であると、集束性が低下し、撚糸工程以降における糸切れが多く発生する。また、3.0質量%を越えると、集束性が強くなり過ぎて緯糸に使用する場合の開繊性が低下して、飛走性が悪くなる。
【0056】
ストランドに集束剤を付与する方法としては、ロールアプリケーターなどを用いて塗布することができる。この際の集束剤の粘度としては、4〜15cpsであることが好ましい。粘度が4cps未満であると、集束剤がストランドに付着しにくくなり、上記範囲の付着量が確保できないので好ましくなく、粘度が15cpsを越えると、採糸工程において、フィラメントに集束剤を付与するアプリケータでの糸切れが多発するので好ましくない。
【0057】
集束剤の付着量を上記の範囲とするためには、集束剤の固形分濃度(SC)を従来より高くすることによって可能となるが、それに伴って集束剤の粘度が高くなるので、採糸工程においてアプリケーターでの糸切れが発生しやすくなり、採糸工程での生産性が低下するという問題が発生しやすくなるが、得られたガラス繊維ヤーンは毛羽の発生が極めて少なく、品質としては優れる。
【0058】
また、集束剤成分の澱粉として、前記の架橋エーテル化ハイアミロース澱粉を用いることにより、より低い付着量、具体的には1.5〜1.9質量%であっても集束性が充分に向上できる。これによって、集束剤の濃度か粘度を下げることができるので、集束性を向上しつつアプリケーターでの糸切れを防止でき、更に、採糸工程での生産性にも優れるガラス繊維ヤーンを得ることができる。
【0059】
なお、集束剤を付与するタイミングは、繊維化後であればいつでも良いが、効率的に付着させるために繊維化直後に付与した方が好ましい。
【0060】
上記の集束剤が付着されたストランドは、更に、撚りがかけられてガラス繊維ヤーンとされ、ガラスクロスの経糸及び/又は緯糸として用いられる。ここで、撚糸には従来公知のリング撚糸機等が使用可能である。撚り数も特に限定されないが、0.1〜2.0回/25mmが好ましく、0.5〜1.0回/25mmが特に好ましい。
【0061】
このようにして得られる代表的なガラス繊維ヤーンの種類としては、例えば、ECC1200(1200はガラス繊維ヤーン1ポンド当たりのヤード数の1/100を表わす)と呼ばれるガラス糸が例示できる。
【0062】
上記のガラス繊維ヤーンは、ガラスクロスの経糸として使用される場合には、織機に供給する前に整経工程が行なわれる。整経工程では、織物設計に基づいた本数、順序、長さ、密度、幅などに従って、経糸を巻き取った複数のボビンから一本一本のガラス繊維ヤーンを引き揃えるための作業であるクリール架けが行なわれた後、これら多数の糸を引き出し平行に並べて、一様な張力を与えながら整経ビームに巻き取る。これによって、製織に必要な経糸が整えられる。整経方法は限定されず、部分整経でもよい。
【0063】
そして、本発明の集束剤を用いたガラス繊維ヤーンは集束性に優れるので、この整経工程において毛羽や糸切れの発生が少ない。また、走行テンションが安定しているので、整経時に優れた走行性を得ることができる。更に、整経時の粉落ちも少ない。
【0064】
その後、経糸となる整経ビームと、緯糸となるボビンを織機に装着し、製織工程によりガラスクロスを製造する。織機としては、高速で製織できることからエアジェット織機を用いることが好ましい。そして、本発明の集束剤を用いた緯糸は、エアジェット織機のよこ入れ時における毛羽の発生が少なく、欠点の少ないガラスクロスを提供することができる。
【0065】
上記の製織条件としては、従来公知の条件が使用でき特に限定されない。また、織構造としては特に限定されないが、例えばプリント配線板の基板材料として用いる場合には、平織が好ましく用いられる。
【0066】
このようにして得られる上記のガラスクロスは、表面に毛羽等の欠陥が非常に少なく、主としてプリント配線板の用途に好適に用いることができる。
【0067】
【実施例】
以下、本発明を実施例によって更に詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0068】
集束剤Aの調製
<澱粉糊化液の調製>
エーテル化ハイアミロース澱粉であるヒドロキシプロピル化ハイアミロースコーンスターチ(アミロース含量70〜75%)100質量部を水に分散させて加熱し、95℃で30分間糊化して糊化液を得た。
【0069】
<植物油(動植物油)エマルジョンの調製>
パーム油、ラード及びコーン油を混合してなる動植物油23.0質量部と、乳化剤であるポリオキシエチレンソルビトールテトラオレエート4.0質量部とポリオキシエチレングリコールモノオレエート2.0質量部とを溶融、混合し、80℃の熱水で乳化し、植物油エマルジョンを得た。
【0070】
<パラフィンエマルジョンの調製>
融点54℃のパラフィンワックス3.3質量部と、乳化剤であるポリオキシエチレンステアリルエーテル1.2質量部とポリグリセリンステアリン酸エステル0.6質量部とを溶融、混合し、80℃の熱水で乳化し、パラフィンワックスエマルジョンを得た。
【0071】
<その他添加成分の調製>
テトラエチレンペンタミン(TEPA)及びステアリン酸縮合物酢酸塩からなるカチオン潤滑剤4.5質量部、防カビ剤0.2質量部を熱水に分散した。
【0072】
<集束剤の調製>
上記の澱粉糊化液と、植物油エマルジョンと、パラフィンワックスエマルジョンと、カチオン潤滑剤及び防カビ剤とを混合し、温水を加えて、表1(固形分)に示す配合で、固形分濃度(SC)5.7%の集束剤Aを得た。なお、集束剤Aにおける植物油とパラフィンとの配合割合は、87.5:12.5である。
【0073】
集束剤Bの調整
集束剤Aと同様の集束剤の調製方法で、固形分濃度(SC)6.5%の集束剤Bを得た。
【0074】
集束剤Cの調整
集束剤Aの澱粉糊化液の調製において、ヒドロキシプロピル化ハイアミロースコーンスターチの代わりに、架橋エーテル化ハイアミロース澱粉である、ヒドロキシプロピルヒドロキシプロピル架橋コーンスターチ(アミロース含量70〜75%)を用いた以外は集束剤Aと同様の調製方法で、表1(固形分)に示す配合の、固形分濃度(SC)5.7%の集束剤Cを得た。
【0075】
集束剤Dの調整
集束剤Cと同様の集束剤の調製方法で、表1(固形分)に示す配合の、固形分濃度(SC)5.7%の集束剤Dを得た。
【0076】
集束剤Eの調整
集束剤Aと同様の集束剤の調製方法で、固形分濃度(SC)4.5%の集束剤Eを得た。
【0077】
集束剤Fの調整
集束剤Cと同様の集束剤の調製方法で、固形分濃度(SC)3.5%の集束剤Fを得た。
【0078】
集束剤Gの調整
集束剤Aの澱粉糊化液の調製において、ヒドロキシプロピル化ハイアミロースコーンスターチの代わりに、エーテル化澱粉である、ヒドロキシプロピル化コーンスターチ(アミロース含量30%)を用いた以外は集束剤Aと同様の調製方法で、表1(固形分)に示す配合の、固形分濃度(SC)7.0%の集束剤Gを得た。
【0079】
【表1】
【0080】
実施例1
集束剤Aを用いて、平均径4.5μmであるガラスフィラメント100本を集束したストランドを巻き取ってケーキを製造した。集束剤Aは、集束剤付与後のガラス繊維ストランドの質量を基準として固形分量で1.7質量%となるように繊維化直後に付与した。このケーキから引き出したストランドをリング撚糸機を用いて撚糸し、ECC1200 1/0 1.0 Zである、実施例1のガラス繊維ヤーンを得た。
【0081】
実施例2
集束剤Bを用い、集束剤の付与量が2.0質量%となるように付与した以外は、実施例1と同様の製造方法で、実施例2のガラス繊維ヤーンを得た。
【0082】
実施例3
集束剤Cを用いた以外は実施例1と同様の製造方法で、実施例3のガラス繊維ヤーンを得た。
【0083】
実施例4
集束剤Dを用いた以外は実施例1と同様の製造方法で、実施例4のガラス繊維ヤーンを得た。
【0084】
比較例1
集束剤Eを用い、集束剤の付与量が1.3質量%となるようにした以外は、実施例1と同様の製造方法で、比較例1のガラス繊維ヤーンを得た。
【0085】
比較例2
集束剤Fを用い、集束剤の付与量が1.0質量%となるようにした以外は、実施例1と同様の製造方法で、比較例2のガラス繊維ヤーンを得た。
【0086】
比較例3
集束剤Gを用いた以外は実施例1と同様の製造方法で、比較例3のガラス繊維ヤーンを得た。
【0087】
試験例
実施例1〜4、及び比較例1〜3のガラス繊維ヤーンを得る際に、採糸工程での生産性、及び撚糸ファズリングについて調べた。また、前記ヤーンを経糸として、耐屈曲性毛羽及びワーパー糸切れを調べ、更に、緯糸として用いてエアジェット織機によってガラスクロスを製造し、製織毛羽について調べた。その結果を表2にまとめて示す。
【0088】
採糸工程での生産性は、採糸工程でストランドに集束剤を塗布するアプリケーターにおける糸切れを評価したものであり、◎:糸切れがほとんどない、○:糸切れが若干有り、△:糸切れが多い、×:糸切れが多発してストランドが得られない、の4段階で評価した。
【0089】
撚糸ファズリングは、図1に示すように、ケーキ11から解除されるストランド12がボビン13に巻き取られて撚りがかけられる撚糸工程において、ケーキ11からストランド12が解除される際にフィラメントが切れて、図2に示すように、ケーキ11の端11aに溜まって環状の毛羽14が発生する程度を撚糸終了時に評価したものである。この評価は、少なくとも50個以上のケーキ11を撚糸した際の結果であり、○:ほとんどない、△:若干有り、×:多数発生、の3段階で評価した。
【0090】
耐屈曲性毛羽は経糸の評価項目であり、ヤーンパッケージからガラス繊維ヤーンを引き出し、所定の重りをかけたテンサーに通してガラスヤーンを屈曲させた後に隙間無く管に巻き取り、蛍光灯下で管外層表面全体の毛羽本数を数えた。この操作を10回行ない、その平均値を耐屈曲性毛羽とした。
【0091】
ワーパー糸切れは、経糸の評価項目であり、整経工程における整経ビーム1本の巻き始めから終りまでにおける経糸800本あたりの糸切れを評価し、○:0〜2回、△:3〜19回、×:20回以上、の3段階で評価した。
【0092】
製織毛羽は、緯糸の評価項目であり、エアジェット織機による製織後のガラスクロスの緯糸から発生した毛羽を目視にて本数を求め、ガラスクロス1m2あたりの毛羽本数を製織毛羽数とした。
【0093】
【表2】
【0094】
表2の結果より、実施例1〜4においては、比較例1〜3に比べて耐屈曲性毛羽、製織毛羽共に少なく糸の品質が優れていた。特に、澱粉として架橋ハイアミロースコーンスターチを用いた実施例3、4においては、毛羽の発生や糸切れのみならず、採糸での生産性、撚糸ファズリングにも優れ、品質と共に生産性にも優れていることがわかる。
【0095】
なお、実施例1、2においては、採糸での生産性、及び撚糸ファズリングの評価は比較例1〜3に比べて劣るものの、ガラス繊維ヤーンとしての耐屈曲性毛羽、製織毛羽共に少なく、糸の品質は優れていた。
【0096】
これに対して、集束剤の付着量が本発明の規定範囲の下限値未満である比較例1及び2、澱粉としてアミロース含量50%未満のエーテル化澱粉を用いた比較例3においては、耐屈曲性毛羽が実施例に比べて増加した。
【0097】
なお、比較例2、3では、少量評価における耐屈曲性毛羽が多いため、撚糸ファズリング及びワーパー糸切れの評価に至らなかった。
【0098】
【発明の効果】
以上、本発明によれば、ガラスクロスの経糸及び/又は緯糸として用いられる細いガラス繊維ヤーンの、エアジェット製織時の毛羽発生を有効に防止でき、かつ、採糸工程以降での糸切れも防止できる。したがって、このガラス繊維ヤーンは、プリント配線板に用られるガラスクロスに好適に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例における撚糸ファズリングの評価を行なうための撚糸工程の概略図である。
【図2】図1におけるケーキ付近の拡大図であり、撚糸ファズリングの発生状態を示す図である。
【符号の説明】
11:ケーキ
11a:端
12:ストランド
13:ボビン
14:環状の毛羽
【発明の属する分野】
本発明は、主としてプリント配線板の基板材料等として使用されるガラスクロスに用いられるガラス繊維ヤーンに関する。
【0002】
【従来の技術】
ガラス繊維ヤーンは、繊維径数ミクロンのガラスフィラメント数十本〜千数百本を、集束剤を用いて集束してストランドとし、このストランドに撚りをかけて得られる。そして、このガラス繊維ヤーンは、製織工程によってガラスクロスとなり、このガラスクロスに樹脂を含浸させることによって、繊維強化プラスチック(FRP)製品の補強材として使用されている。
【0003】
近年、このガラスクロスの用途として、特にプリント配線板の基板材料への適用が注目されている。このプリント配線板の製造工程においては、ガラスクロスにエポキシ樹脂等の樹脂を含浸させてプレプリグを形成し、更に、薄い銅箔等が積層されて形成される。このため、銅箔を損傷しないように、ガラスクロスの表面には毛羽等の欠陥が非常に少ないことが要求されている。
【0004】
そして、上記のプリント配線板等に好適に用いられるガラス繊維ヤーンとしては、例えば、フィランメントの平均径が5μm以下である、C1200(ガラスフィラメントの呼び径4μm、ストランドの番手で4.1g/km)と呼ばれる、細いガラス繊維ヤーンが使用される場合がある。
【0005】
このガラスクロスの製造工程としては、上記のストランドにリング撚糸機等を用いて撚りをかけてガラス繊維ヤ−ンをボビンに巻き取り、その後、エアジェット織機等によって経糸と緯糸とを製織することが行なわれている。
【0006】
したがって、上記のガラス繊維ヤーンにおける一般的な要求性能としては、上記の毛羽発生を防止するための集束性の他、整経工程時の走行性、粉落ちの防止性、製織された後に集束剤や2次サイズ剤を酸化、熱分解等により除去する加熱脱油工程時のヒートクリーニング性等が要求されており、更に、緯糸においては、エアジェット織機において、エアで搬送されてよこ入れされる際の飛走性等が要求されている。
【0007】
このような集束剤に関する従来技術としては、例えば、特許文献1には、粉落ちや毛羽立ちが減少し、適性な硬度を有するヤーンの得られるガラス繊維用集束剤用化工澱粉として、全化工澱粉に対して5〜95重量%の60℃、5%水溶液で1〜5CPSの粘度を有する化工澱粉と同じく95〜5重量%の60℃、5%水溶液で6〜50CPSの粘度を有する化工澱粉とからなる澱粉が記載されており、集束剤として、粘度(分子量)の異なる2種類の化工澱粉を混合して用いることが開示されている。
【0008】
また、粉落ちや毛羽立ちが減少し、集束剤糊液の粘度が安定するガラス繊維用集束剤用化工澱粉として、M.S.値0.15〜0.36にヒドロキシアルキル化され、かつ5%水溶液の60℃粘度が6〜16cpsになるよう架橋処理されたハイアミロースコーンスターチからなる集束剤用の化工澱粉が、特許文献2に開示されている。
【0009】
【特許文献1】
特開平10−72243号公報
【特許文献2】
特開平9−227174号公報
【0010】
【発明が解決しようとしている課題】
上記のC1200と呼ばれるような、特に細いガラス繊維ヤーンにおいては、その重量が非常に軽いために緯糸の飛走性は良好である。また、このヤーンを製織して得られるガラスクロスの密度は、22〜26g/m2と低いためにヒートクリニング性も一般に良好である。
【0011】
しかし、上記のような特に細いガラス繊維ヤーンにおいては、糸が細くなることによって、ガラス繊維ヤーン単位体積あたりの表面積が増加する。このため、糸種がE225、D450のヤーンと同じ付着量では集束剤の膜厚が薄くなることから、集束性が低下しやすくなる。この集束性が低下することで、糸くせや糸吊りなどが発生しやすくなることから、上記の細いガラス繊維ヤーンにおいては、毛羽や糸切れが発生しやすくなるという問題があった。
【0012】
また、上記の特開平10−72243号公報の集束剤においては、粘度(分子量)の異なる2種類の化工澱粉を混合して用いることにより、粉落ちや毛羽立ちが減少できるものの、植物油の配合割合に対して、パラフィンを多く配合している点により、上記のような細いガラス繊維ヤーンにおいては、集束性が不充分となり、毛羽発生を有効に防止できないという問題があった。
【0013】
また、特開平9−227174号公報の集束剤においては、架橋澱粉を用いることによって粉落ちや毛羽立ちが減少できるものの、やはり植物油の配合割合に対して、パラフィンを多く配合している点により集束性が不充分となり、毛羽発生を有効に防止できないという問題があった。
【0014】
したがって、本発明の目的は、プリント配線板に使用されるガラスクロスの経糸と緯糸とに兼用でき、集束性を良好にして毛羽発生を防止し、かつ、撚糸工程等における糸切れの発生を防止できる、ガラス繊維ヤーン用を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明等は鋭意検討した結果、澱粉としてアミロース含量50%以上のエーテル化ハイアミロース澱粉を用い、更に、集束剤の付着量を従来より多くすることによって、集束性を向上して毛羽の発生を抑制でき、かつ、上記の糸切れも防止できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0016】
すなわち、本発明のガラス繊維ヤーンは、平均径3〜5μmであるガラスフィラメント50〜150本に集束剤を付着させて集束してなるストランドに撚りをかけてなり、ガラスクロスの経糸及び/又は緯糸として用いられるガラス繊維ヤーンであって、
前記集束剤が、アミロース含量50%以上のエーテル化ハイアミロース澱粉と、植物油と、パラフィンと、乳化剤とを少なくとも含有し、
前記集束剤の付着量が、集束剤付着後のガラス繊維ストランドの質量を基準として、固形分量で1.5〜3.0質量%であることを特徴とする。
【0017】
上記発明によれば、集束剤の付着量を上記範囲として従来より多く付着させたので、前記のC1200のような細いガラス繊維ヤーンにおいても集束剤の膜厚が確保され、これによって、集束性を付与しつつ、撚糸工程以降における糸切れを防止することができる。
【0018】
また、澱粉としてエーテル化ハイアミロース澱粉を用いたので、ストランドへの付着効率がよく、集束性を向上させ、毛羽発生を効果的に防止することができる。また、付着させるガラス繊維ヤーンが細いので緯糸の飛走性が低下することがなく、ヒートクリーニング性も低下することかない。
【0019】
本発明においては、前記植物油と前記パラフィンとの配合割合が、植物油とパラフィンとからなる油剤全体を100質量部とした場合における質量部で95〜75:5〜25であることが好ましい。この配合割合によれば、更に集束性を向上させ、毛羽発生を効果的に防止することができる。
【0020】
また、本発明においては、前記エーテル化ハイアミロース澱粉100質量部に対する、前記植物油及びパラフィンの含有量が20〜30質量部であることが好ましい。この配合割合によれば、更に集束性を向上させ、毛羽の発生を抑制することができる。
【0021】
更に、本発明においては、前記エーテル化ハイアミロース澱粉が、架橋エーテル化ハイアミロース澱粉であることが好ましい。これにより、前記澱粉の糊化液の粘度が従来の澱粉の場合よりも低くなり、集束剤の粘度も低くなる。従来は、集束剤のストランドへの付着量を多くするために集束剤の固形分割合を高くすると、集束剤の粘度も高くなり、採糸工程での糸切れが増加したが、前記澱粉を用いることにより採糸工程での糸切れを抑制することができる。また、粘度が低いためストランドへの均一な付着が可能となり、少量の付着でも、毛羽の発生を抑制することができる。更に、付着量の増加による集束剤成分の移行(マイグレーション)や、過剰の集束による開繊性、飛走性の低下を防止することができる。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0023】
本発明のガラス繊維ヤーンを構成するガラスフィラメントの集束に用いる集束剤は、アミロース含量が50%以上のエーテル化ハイアミロース澱粉(以下、エーテル化ハイアミロース澱粉と略称する)と、植物油と、パラフィンと、乳化剤とを少なくとも含有する。
【0024】
澱粉はガラスフィラメントを集束するとともに、被膜形成剤として工程中での屈曲、摩擦からガラス繊維ヤーンを保護する目的として用いられる。
【0025】
そして、本発明においては、この澱粉としてエーテル化ハイアミロース澱粉を用いることを第1の特徴としている。
【0026】
本発明においては、エーテル化ハイアミロース澱粉を用いることによって被膜強度を向上させ、集束性を向上させることができ、粉落ちを抑制することができる。また、澱粉の糊化液を調整する際に、加熱により澱粉が完全に膨潤、溶解しないことから、ストランドの巻き取り工程において集束剤の飛散が少なくなり、ストランドへの付着効率を向上させることができる。
【0027】
澱粉の種類としては特に限定されず、コーンスターチ、タピオカ澱粉、小麦粉澱粉、甘藷澱粉、馬鈴薯澱粉等が使用可能であるが、澱粉以外の不純物が少なく、粒径が小さく、容易に入手できる点からコーンスターチが好ましく用いられる。
【0028】
前記澱粉はエーテル変性されたエーテル化澱粉を用いる。エーテル化としてはカルボキシメチル化、ヒドロキシアルキル化、アルキル化、ベンジル化、カチオンエーテル化などが挙げられるが、なかでもヒドロキシアルキル化が好ましい。前記エーテル化澱粉を用いることにより、糊化開始温度が低くなるので糊化し易く、また、溶液を安定化することができる。
【0029】
このようなヒドロキシアルキル化は、上記の澱粉に、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、1,2−ブチレンオキシド等を作用させて得られる。
【0030】
また、本発明においては、上記のエーテル化ハイアミロース澱粉が架橋エーテル化ハイアミロース澱粉であることが好ましい。架橋澱粉とは、澱粉の水酸基間に多官能基を結合させた誘導体であり、例えば、ヒドロキシプロピルヒドロキシプロピル架橋デンプン等が挙げられる。
【0031】
本発明においては、上記のエーテル化ハイアミロース澱粉以外に、通常のエーテル化澱粉等を少量含んでいてもよいが、集束性を向上させて毛羽発生を防止するためにエーテル化ハイアミロース澱粉を単独で用いることが好ましい。また、他の澱粉と併用する場合には、エーテル化ハイアミロース澱粉100質量部に対して、20質量部以下の配合量とすることが好ましい。他の澱粉の配合量が20質量部を超えると、集束剤のストランドへの付着効率が低下して付着量が所定量に到達しないので、集束性が低下して毛羽が発生しやすくなる。
【0032】
次に、本発明に用いる油剤について説明する。油剤は主にストランドに潤滑性を付与する目的として用いられる。
【0033】
本発明においては、油剤として、植物油とパラフィンとを併用することを特徴とする。植物油のみでは潤滑性が不足するので、毛羽の発生、飛走性共に好ましくなく、パラフィンを含有させることによって滑り性を付与し、これによって開繊性を付与してエアジェット織機における飛走性を向上させることができる。ただし、パラフィンのみでは、飛走性は向上するものの、逆に開繊が過剰となって毛羽の発生が増加するので、両者を併用する必要がある。
【0034】
植物油としては、特に限定されず、ヤシ油、パーム油、パーム核油、コーン油、綿実油等が挙げられる。また、植物油は不飽和のままでもよく、水素添加して飽和植物油としてもよい。これらは、単独又は2種類以上を混合して用いてもよい。なお、前記植物油は、ラード等の動物油を併用して動植物油として用いることが好ましい。動植物油として用いる場合、後述する植物油の量とは、動植物油の量をいうものとする。
【0035】
パラフィンとしては、融点が50〜60℃であるパラフィンワックスを用いることが好ましい。これによって、整経時の走行性が良好となり毛羽の発生を抑制できる。
【0036】
本発明においては、上記の植物油とパラフィンとの配合割合を、植物油とパラフィンとからなる油剤全体を100質量部とした場合における質量部で95〜75:5〜25とすることが好ましい。このようにパラフィンに対する植物油の配合割合を多くすることにより、過剰な滑りを抑制して毛羽の発生を有効に防止することができる。油剤におけるパラフィンの配合割合が5質量%未満であると、充分な滑り性が得られず整経時の走行性が低下し、また製織時の飛走性も低下するので好ましくなく、逆に25質量%を超えると開繊が過剰となり毛羽が発生しやすくなるので好ましくない。
【0037】
また、上記の植物油とパラフィンとからなる油剤の含有量としては、前記澱粉100質量部に対する、前記植物油及び前記パラフィンの含有量が20〜30質量部であることが好ましい。前記植物油及び前記パラフィンの含有量が20質量部未満であると、製織時の緯糸の飛走性が劣るので好ましくなく、30質量部を超えると、集束剤の被膜形成性が劣るため整経時の毛羽が発生しやすくなるので好ましくない。
【0038】
次に、上記の植物油及びパラフィンを乳化するための乳化剤について説明する。本発明においては、上記の植物油の乳化剤とパラフィンの乳化剤とで同一の乳化剤を用いてもよい。また、植物油とパラフィンとを、それぞれより安定した乳化状態とするために別々の乳化剤を用いてもよい。
【0039】
植物油の乳化剤としては、従来公知の非イオン系の界面活性剤等が使用でき、エーテル系、エステル系、エーテルエステル系の乳化剤等がいずれも使用できる。
【0040】
エーテル系乳化剤としては、高級アルコールのエチレンオキサイド付加物であることが好ましい。具体的には、非イオン系の界面活性剤である、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル、及びフェニルエーテル型の乳化剤が挙げられる。
【0041】
エステル系乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンモノステアレート、ポリオキシエチレンモノオレエート等のポリオキシエチレンモノアルキルエステルや、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンセスキオレエート、ソルビタントリオレエート等のソルビタンエステルや、ポリグリセリンオレイン酸エステル、ポリグリセリンラウリン酸エステル、ポリグリセリンステアリン酸エステル等の脂肪酸グリセリンエステルを用いることができる。なかでも脂肪酸グリセリンエステルを用いることが好ましい。
【0042】
エーテルエステル系の乳化剤としては、具体的には、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート等のソルビタンエステルエーテル型の乳化剤等が挙げられる。
【0043】
このうち、エステル系、エーテルエステル系の乳化剤が、ガラス繊維ヤーンの適度な開繊が得られるため好ましく、なかでも、ポリオキシエチレンモノアルキルエステル、ソルビタンエステル、又はソルビタンエステルエーテル型の乳化剤が特に好ましい。
【0044】
本発明において、この植物油の乳化剤の含有量は、植物油及び前記乳化剤の合計量に対して10〜30質量%であることが好ましい。これにより、更に集束性を向上させ、毛羽の発生を抑制することができる。植物油の乳化剤の含有量が10質量%未満では、乳化の状態が不安定となり集束剤がストランドに充分付着しないために毛羽が発生しやすくなり、30質量%を超えると、開繊が過剰となり、整経時及び製織時での毛羽が発生しやすくなる。
【0045】
一方、パラフィンの乳化剤としては、エーテル系乳化剤を少なくとも含む乳化剤が好ましい。これによって、特にパラフィンとエーテル系乳化剤を組み合わせてパラフィンエマルジョンとすることによって、ガラス繊維ヤーンの開繊性を向上させることができる。エーテル系の乳化剤としては、上記の植物油に用いるエーテル系乳化剤と同様の乳化剤が使用できる。
【0046】
また、上記のパラフィンのエーテル系乳化剤の含有量は、パラフィン及びエーテル系乳化剤の合計量に対して20〜40質量%が好ましい。これにより過剰な開繊や毛羽の発生を抑制することができる。エーテル系乳化剤の含有量が20質量%未満であると、開繊性が不充分となり、40質量%を超えると、開繊が過剰となって毛羽の発生が増加する。
【0047】
更に、前記パラフィンの乳化剤として、エーテル系乳化剤に加えてエステル系乳化剤を含有することが好ましい。これによれば、更に開繊性が向上するので、少量の添加であっても、エアジェット織機における飛走性を向上させることができる。このような、エステル系乳化剤としては、上記の植物油に用いるエステル系乳化剤と同様の乳化剤が使用できる。
【0048】
なお、上記の植物油の乳化剤、又はパラフィンの乳化剤は、それぞれ単独で用いてもよく、複数の種類を併用してもよい。
【0049】
本発明の集束剤においては、上記の成分以外に他の成分を含んでいても良い。このような成分としては、例えば、カチオン潤滑剤や、防カビ剤の他、シランカップリング剤、その他各種添加剤が挙げられる。
【0050】
上記の集束剤の製造方法としては、従来公知の方法により、澱粉の糊化液に、油剤と乳化剤とを混合して水を分散媒体としてエマルジョン化したものを加え、これに更にその他の成分を混合することにより製造できる。
【0051】
ここで、本発明においては、油剤と乳化剤とで行なう乳化工程において、植物油と、パラフィンと、乳化剤とを一括混合して乳化してもよいが、植物油とパラフィンとが、それぞれに別々に乳化された状態で混合されていることが好ましい。
【0052】
これによれば、植物油と、パラフィンと、乳化剤とを一括して乳化する場合と比較して、植物油と乳化剤、パラフィンと乳化剤の、それぞれで行われた乳化の状態がより安定するので毛羽を効果的に抑制することができる。
【0053】
次に、上記の集束剤を用いて得られる、本発明のガラス繊維ヤーン、及びガラスクロスについて説明する。
【0054】
本発明のガラス繊維ヤーンは、平均径3〜5μmであるガラスフィラメント50〜150本を集束してストランドを得る際に、上記の集束剤が付与される。このような平均繊維径、集束本数のストランドとしては、例えば番手が2〜12g/kmのストランドが挙げられる。
【0055】
そして、本発明においては、集束剤の付着量は、集束剤付着後のストランドの質量を基準として、固形分量で1.5〜3.0質量%の範囲であり、好ましくは1.6〜2.3質量%であることを第2の特徴としている。集束剤の付着量が1.5質量%未満であると、集束性が低下し、撚糸工程以降における糸切れが多く発生する。また、3.0質量%を越えると、集束性が強くなり過ぎて緯糸に使用する場合の開繊性が低下して、飛走性が悪くなる。
【0056】
ストランドに集束剤を付与する方法としては、ロールアプリケーターなどを用いて塗布することができる。この際の集束剤の粘度としては、4〜15cpsであることが好ましい。粘度が4cps未満であると、集束剤がストランドに付着しにくくなり、上記範囲の付着量が確保できないので好ましくなく、粘度が15cpsを越えると、採糸工程において、フィラメントに集束剤を付与するアプリケータでの糸切れが多発するので好ましくない。
【0057】
集束剤の付着量を上記の範囲とするためには、集束剤の固形分濃度(SC)を従来より高くすることによって可能となるが、それに伴って集束剤の粘度が高くなるので、採糸工程においてアプリケーターでの糸切れが発生しやすくなり、採糸工程での生産性が低下するという問題が発生しやすくなるが、得られたガラス繊維ヤーンは毛羽の発生が極めて少なく、品質としては優れる。
【0058】
また、集束剤成分の澱粉として、前記の架橋エーテル化ハイアミロース澱粉を用いることにより、より低い付着量、具体的には1.5〜1.9質量%であっても集束性が充分に向上できる。これによって、集束剤の濃度か粘度を下げることができるので、集束性を向上しつつアプリケーターでの糸切れを防止でき、更に、採糸工程での生産性にも優れるガラス繊維ヤーンを得ることができる。
【0059】
なお、集束剤を付与するタイミングは、繊維化後であればいつでも良いが、効率的に付着させるために繊維化直後に付与した方が好ましい。
【0060】
上記の集束剤が付着されたストランドは、更に、撚りがかけられてガラス繊維ヤーンとされ、ガラスクロスの経糸及び/又は緯糸として用いられる。ここで、撚糸には従来公知のリング撚糸機等が使用可能である。撚り数も特に限定されないが、0.1〜2.0回/25mmが好ましく、0.5〜1.0回/25mmが特に好ましい。
【0061】
このようにして得られる代表的なガラス繊維ヤーンの種類としては、例えば、ECC1200(1200はガラス繊維ヤーン1ポンド当たりのヤード数の1/100を表わす)と呼ばれるガラス糸が例示できる。
【0062】
上記のガラス繊維ヤーンは、ガラスクロスの経糸として使用される場合には、織機に供給する前に整経工程が行なわれる。整経工程では、織物設計に基づいた本数、順序、長さ、密度、幅などに従って、経糸を巻き取った複数のボビンから一本一本のガラス繊維ヤーンを引き揃えるための作業であるクリール架けが行なわれた後、これら多数の糸を引き出し平行に並べて、一様な張力を与えながら整経ビームに巻き取る。これによって、製織に必要な経糸が整えられる。整経方法は限定されず、部分整経でもよい。
【0063】
そして、本発明の集束剤を用いたガラス繊維ヤーンは集束性に優れるので、この整経工程において毛羽や糸切れの発生が少ない。また、走行テンションが安定しているので、整経時に優れた走行性を得ることができる。更に、整経時の粉落ちも少ない。
【0064】
その後、経糸となる整経ビームと、緯糸となるボビンを織機に装着し、製織工程によりガラスクロスを製造する。織機としては、高速で製織できることからエアジェット織機を用いることが好ましい。そして、本発明の集束剤を用いた緯糸は、エアジェット織機のよこ入れ時における毛羽の発生が少なく、欠点の少ないガラスクロスを提供することができる。
【0065】
上記の製織条件としては、従来公知の条件が使用でき特に限定されない。また、織構造としては特に限定されないが、例えばプリント配線板の基板材料として用いる場合には、平織が好ましく用いられる。
【0066】
このようにして得られる上記のガラスクロスは、表面に毛羽等の欠陥が非常に少なく、主としてプリント配線板の用途に好適に用いることができる。
【0067】
【実施例】
以下、本発明を実施例によって更に詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0068】
集束剤Aの調製
<澱粉糊化液の調製>
エーテル化ハイアミロース澱粉であるヒドロキシプロピル化ハイアミロースコーンスターチ(アミロース含量70〜75%)100質量部を水に分散させて加熱し、95℃で30分間糊化して糊化液を得た。
【0069】
<植物油(動植物油)エマルジョンの調製>
パーム油、ラード及びコーン油を混合してなる動植物油23.0質量部と、乳化剤であるポリオキシエチレンソルビトールテトラオレエート4.0質量部とポリオキシエチレングリコールモノオレエート2.0質量部とを溶融、混合し、80℃の熱水で乳化し、植物油エマルジョンを得た。
【0070】
<パラフィンエマルジョンの調製>
融点54℃のパラフィンワックス3.3質量部と、乳化剤であるポリオキシエチレンステアリルエーテル1.2質量部とポリグリセリンステアリン酸エステル0.6質量部とを溶融、混合し、80℃の熱水で乳化し、パラフィンワックスエマルジョンを得た。
【0071】
<その他添加成分の調製>
テトラエチレンペンタミン(TEPA)及びステアリン酸縮合物酢酸塩からなるカチオン潤滑剤4.5質量部、防カビ剤0.2質量部を熱水に分散した。
【0072】
<集束剤の調製>
上記の澱粉糊化液と、植物油エマルジョンと、パラフィンワックスエマルジョンと、カチオン潤滑剤及び防カビ剤とを混合し、温水を加えて、表1(固形分)に示す配合で、固形分濃度(SC)5.7%の集束剤Aを得た。なお、集束剤Aにおける植物油とパラフィンとの配合割合は、87.5:12.5である。
【0073】
集束剤Bの調整
集束剤Aと同様の集束剤の調製方法で、固形分濃度(SC)6.5%の集束剤Bを得た。
【0074】
集束剤Cの調整
集束剤Aの澱粉糊化液の調製において、ヒドロキシプロピル化ハイアミロースコーンスターチの代わりに、架橋エーテル化ハイアミロース澱粉である、ヒドロキシプロピルヒドロキシプロピル架橋コーンスターチ(アミロース含量70〜75%)を用いた以外は集束剤Aと同様の調製方法で、表1(固形分)に示す配合の、固形分濃度(SC)5.7%の集束剤Cを得た。
【0075】
集束剤Dの調整
集束剤Cと同様の集束剤の調製方法で、表1(固形分)に示す配合の、固形分濃度(SC)5.7%の集束剤Dを得た。
【0076】
集束剤Eの調整
集束剤Aと同様の集束剤の調製方法で、固形分濃度(SC)4.5%の集束剤Eを得た。
【0077】
集束剤Fの調整
集束剤Cと同様の集束剤の調製方法で、固形分濃度(SC)3.5%の集束剤Fを得た。
【0078】
集束剤Gの調整
集束剤Aの澱粉糊化液の調製において、ヒドロキシプロピル化ハイアミロースコーンスターチの代わりに、エーテル化澱粉である、ヒドロキシプロピル化コーンスターチ(アミロース含量30%)を用いた以外は集束剤Aと同様の調製方法で、表1(固形分)に示す配合の、固形分濃度(SC)7.0%の集束剤Gを得た。
【0079】
【表1】
【0080】
実施例1
集束剤Aを用いて、平均径4.5μmであるガラスフィラメント100本を集束したストランドを巻き取ってケーキを製造した。集束剤Aは、集束剤付与後のガラス繊維ストランドの質量を基準として固形分量で1.7質量%となるように繊維化直後に付与した。このケーキから引き出したストランドをリング撚糸機を用いて撚糸し、ECC1200 1/0 1.0 Zである、実施例1のガラス繊維ヤーンを得た。
【0081】
実施例2
集束剤Bを用い、集束剤の付与量が2.0質量%となるように付与した以外は、実施例1と同様の製造方法で、実施例2のガラス繊維ヤーンを得た。
【0082】
実施例3
集束剤Cを用いた以外は実施例1と同様の製造方法で、実施例3のガラス繊維ヤーンを得た。
【0083】
実施例4
集束剤Dを用いた以外は実施例1と同様の製造方法で、実施例4のガラス繊維ヤーンを得た。
【0084】
比較例1
集束剤Eを用い、集束剤の付与量が1.3質量%となるようにした以外は、実施例1と同様の製造方法で、比較例1のガラス繊維ヤーンを得た。
【0085】
比較例2
集束剤Fを用い、集束剤の付与量が1.0質量%となるようにした以外は、実施例1と同様の製造方法で、比較例2のガラス繊維ヤーンを得た。
【0086】
比較例3
集束剤Gを用いた以外は実施例1と同様の製造方法で、比較例3のガラス繊維ヤーンを得た。
【0087】
試験例
実施例1〜4、及び比較例1〜3のガラス繊維ヤーンを得る際に、採糸工程での生産性、及び撚糸ファズリングについて調べた。また、前記ヤーンを経糸として、耐屈曲性毛羽及びワーパー糸切れを調べ、更に、緯糸として用いてエアジェット織機によってガラスクロスを製造し、製織毛羽について調べた。その結果を表2にまとめて示す。
【0088】
採糸工程での生産性は、採糸工程でストランドに集束剤を塗布するアプリケーターにおける糸切れを評価したものであり、◎:糸切れがほとんどない、○:糸切れが若干有り、△:糸切れが多い、×:糸切れが多発してストランドが得られない、の4段階で評価した。
【0089】
撚糸ファズリングは、図1に示すように、ケーキ11から解除されるストランド12がボビン13に巻き取られて撚りがかけられる撚糸工程において、ケーキ11からストランド12が解除される際にフィラメントが切れて、図2に示すように、ケーキ11の端11aに溜まって環状の毛羽14が発生する程度を撚糸終了時に評価したものである。この評価は、少なくとも50個以上のケーキ11を撚糸した際の結果であり、○:ほとんどない、△:若干有り、×:多数発生、の3段階で評価した。
【0090】
耐屈曲性毛羽は経糸の評価項目であり、ヤーンパッケージからガラス繊維ヤーンを引き出し、所定の重りをかけたテンサーに通してガラスヤーンを屈曲させた後に隙間無く管に巻き取り、蛍光灯下で管外層表面全体の毛羽本数を数えた。この操作を10回行ない、その平均値を耐屈曲性毛羽とした。
【0091】
ワーパー糸切れは、経糸の評価項目であり、整経工程における整経ビーム1本の巻き始めから終りまでにおける経糸800本あたりの糸切れを評価し、○:0〜2回、△:3〜19回、×:20回以上、の3段階で評価した。
【0092】
製織毛羽は、緯糸の評価項目であり、エアジェット織機による製織後のガラスクロスの緯糸から発生した毛羽を目視にて本数を求め、ガラスクロス1m2あたりの毛羽本数を製織毛羽数とした。
【0093】
【表2】
【0094】
表2の結果より、実施例1〜4においては、比較例1〜3に比べて耐屈曲性毛羽、製織毛羽共に少なく糸の品質が優れていた。特に、澱粉として架橋ハイアミロースコーンスターチを用いた実施例3、4においては、毛羽の発生や糸切れのみならず、採糸での生産性、撚糸ファズリングにも優れ、品質と共に生産性にも優れていることがわかる。
【0095】
なお、実施例1、2においては、採糸での生産性、及び撚糸ファズリングの評価は比較例1〜3に比べて劣るものの、ガラス繊維ヤーンとしての耐屈曲性毛羽、製織毛羽共に少なく、糸の品質は優れていた。
【0096】
これに対して、集束剤の付着量が本発明の規定範囲の下限値未満である比較例1及び2、澱粉としてアミロース含量50%未満のエーテル化澱粉を用いた比較例3においては、耐屈曲性毛羽が実施例に比べて増加した。
【0097】
なお、比較例2、3では、少量評価における耐屈曲性毛羽が多いため、撚糸ファズリング及びワーパー糸切れの評価に至らなかった。
【0098】
【発明の効果】
以上、本発明によれば、ガラスクロスの経糸及び/又は緯糸として用いられる細いガラス繊維ヤーンの、エアジェット製織時の毛羽発生を有効に防止でき、かつ、採糸工程以降での糸切れも防止できる。したがって、このガラス繊維ヤーンは、プリント配線板に用られるガラスクロスに好適に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例における撚糸ファズリングの評価を行なうための撚糸工程の概略図である。
【図2】図1におけるケーキ付近の拡大図であり、撚糸ファズリングの発生状態を示す図である。
【符号の説明】
11:ケーキ
11a:端
12:ストランド
13:ボビン
14:環状の毛羽
Claims (4)
- 平均径3〜5μmであるガラスフィラメント50〜150本に集束剤を付着させて集束してなるストランドに撚りをかけてなり、ガラスクロスの経糸及び/又は緯糸として用いられるガラス繊維ヤーンであって、
前記集束剤が、アミロース含量50%以上のエーテル化ハイアミロース澱粉と、植物油と、パラフィンと、乳化剤とを少なくとも含有し、
前記集束剤の付着量が、集束剤付着後のガラス繊維ストランドの質量を基準として、固形分量で1.5〜3.0質量%であることを特徴とするガラス繊維ヤーン。 - 前記植物油と前記パラフィンとの配合割合が、質量部で95〜75:5〜25である請求項1に記載のガラス繊維ヤーン。
- 前記エーテル化ハイアミロース澱粉100質量部に対する、前記植物油及びパラフィンの含有量が20〜30質量部である請求項1又は2に記載のガラス繊維ヤーン。
- 前記エーテル化ハイアミロース澱粉が、架橋エーテル化ハイアミロース澱粉である請求項1〜3のいずれか1つに記載のガラス繊維ヤーン。
Priority Applications (3)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002285023A JP2004115351A (ja) | 2002-09-30 | 2002-09-30 | ガラス繊維ヤーン |
CNB038189348A CN100412019C (zh) | 2002-09-30 | 2003-09-30 | 玻璃纤维纱线用集束剂以及采用该集束剂的玻璃纤维纱线 |
PCT/JP2003/012511 WO2004029355A1 (ja) | 2002-09-30 | 2003-09-30 | ガラス繊維ヤーン用集束剤及びそれを用いたガラス繊維ヤーン |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002285023A JP2004115351A (ja) | 2002-09-30 | 2002-09-30 | ガラス繊維ヤーン |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2004115351A true JP2004115351A (ja) | 2004-04-15 |
Family
ID=32278423
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2002285023A Pending JP2004115351A (ja) | 2002-09-30 | 2002-09-30 | ガラス繊維ヤーン |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2004115351A (ja) |
Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2008069472A (ja) * | 2006-09-13 | 2008-03-27 | Asahi Kasei Electronics Co Ltd | ガラス処理剤水溶液とガラスクロスの表面処理方法 |
WO2013081108A1 (ja) * | 2011-11-30 | 2013-06-06 | 日東紡績株式会社 | ガラス繊維用集束剤及びそれを用いるガラス繊維織物 |
JP2018127752A (ja) * | 2017-02-10 | 2018-08-16 | 旭化成株式会社 | ガラスクロス、プリプレグ、及びプリント配線板 |
KR101985165B1 (ko) * | 2018-12-25 | 2019-06-07 | 홍관기 | 유리섬유 권취장치 |
-
2002
- 2002-09-30 JP JP2002285023A patent/JP2004115351A/ja active Pending
Cited By (5)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2008069472A (ja) * | 2006-09-13 | 2008-03-27 | Asahi Kasei Electronics Co Ltd | ガラス処理剤水溶液とガラスクロスの表面処理方法 |
WO2013081108A1 (ja) * | 2011-11-30 | 2013-06-06 | 日東紡績株式会社 | ガラス繊維用集束剤及びそれを用いるガラス繊維織物 |
JP2018127752A (ja) * | 2017-02-10 | 2018-08-16 | 旭化成株式会社 | ガラスクロス、プリプレグ、及びプリント配線板 |
JP7011396B2 (ja) | 2017-02-10 | 2022-02-10 | 旭化成株式会社 | ガラスクロス、プリプレグ、及びプリント配線板 |
KR101985165B1 (ko) * | 2018-12-25 | 2019-06-07 | 홍관기 | 유리섬유 권취장치 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP2004026605A (ja) | ガラス繊維ヤーン用集束剤及びそれを用いたガラス繊維ヤーン | |
JP6345404B2 (ja) | ガラス繊維用集束剤、それが塗布されたガラス繊維及びガラス繊維製品並びにガラスクロスの製造方法。 | |
US4066106A (en) | Sized woven glass fabric | |
JPS6250426B2 (ja) | ||
JP2002293576A (ja) | ガラス繊維巻糸体の製造方法およびガラス繊維織物の製造方法 | |
KR920009554B1 (ko) | 개선된 유리섬유 텍스타일 스트랜드 | |
US4002445A (en) | Method of forming and sizing glass fibers | |
JP2004035280A (ja) | ガラス繊維ヤーン用集束剤及びそれを用いたガラス繊維ヤーン | |
WO2004029355A1 (ja) | ガラス繊維ヤーン用集束剤及びそれを用いたガラス繊維ヤーン | |
JP2004115351A (ja) | ガラス繊維ヤーン | |
WO2004003283A1 (ja) | ガラス繊維ヤーン用集束剤及びガラス繊維ヤーンの製造方法 | |
JP2004115350A (ja) | ガラス繊維ヤーン用集束剤及びそれを用いたガラス繊維ヤーン | |
JP4449198B2 (ja) | ガラス繊維用集束剤、それにより被覆されたガラス繊維およびそのガラス繊維巻糸体 | |
JP4821294B2 (ja) | ガラス繊維用集束剤 | |
JPH09208268A (ja) | ガラス繊維用集束剤及びガラス繊維織物 | |
CN114436544A (zh) | 一种电子级玻璃纤维用高温淀粉型浸润剂、其制备方法和应用 | |
JP2004027442A (ja) | ガラス繊維ヤーンの製造方法 | |
JP4465902B2 (ja) | ガラス繊維用集束剤 | |
US3932193A (en) | Forming size for textile glass fibers | |
JP2003034556A (ja) | ガラス繊維集束剤 | |
JP3169055B2 (ja) | ガラスクロスの製造方法 | |
JP2004026572A (ja) | ガラス繊維ヤーン用集束剤及びそれを用いたガラス繊維ヤーン | |
JP2001261380A (ja) | ガラス繊維用集束剤及びそれを付着させてなるガラス繊維糸 | |
JP3178504B2 (ja) | ガラス繊維織物用経糸の製造方法及びそれに使用する糊剤 | |
JP2004262713A (ja) | ガラス繊維巻糸体の製造方法 |