JP2004115350A - ガラス繊維ヤーン用集束剤及びそれを用いたガラス繊維ヤーン - Google Patents
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Abstract
【課題】ガラスクロスの経糸及び/又は緯糸として用いられ、集束性に優れてエアジェット製織時の毛羽発生を防止できるガラス繊維ヤーン用集束剤及びそれを用いたガラス繊維ヤーンを提供する。
【解決手段】平均径3〜6μmであるガラスフィラメント50〜300本を集束してなるストランドに撚りをかけてなり、ガラスクロスの経糸及び/又は緯糸として用いられるガラス繊維ヤーンの前記ストランドの集束に用いる集束剤であって、前記集束剤が、アミロース含量50%以上のエーテル化ハイアミロース澱粉と、植物油と、パラフィンと、乳化剤とを少なくとも含有し、前記植物油と前記パラフィンとの配合割合が、質量部で95〜75:5〜25である。
【選択図】 なし
【解決手段】平均径3〜6μmであるガラスフィラメント50〜300本を集束してなるストランドに撚りをかけてなり、ガラスクロスの経糸及び/又は緯糸として用いられるガラス繊維ヤーンの前記ストランドの集束に用いる集束剤であって、前記集束剤が、アミロース含量50%以上のエーテル化ハイアミロース澱粉と、植物油と、パラフィンと、乳化剤とを少なくとも含有し、前記植物油と前記パラフィンとの配合割合が、質量部で95〜75:5〜25である。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する分野】
本発明は、主としてプリント配線板の基板材料等として使用されるガラスクロスに用いられる、ガラス繊維ヤーンの集束剤及びそれを用いたガラス繊維ヤーンに関する。
【0002】
【従来の技術】
ガラス繊維ヤーンは、繊維径数ミクロンのガラスフィラメント数十本〜千数百本を、集束剤を用いて集束してストランドとし、このストランドに撚りをかけて得られる。そして、このガラス繊維ヤーンは、製織工程によってガラスクロスとなり、このガラスクロスに樹脂を含浸させることによって、繊維強化プラスチック(FRP)製品の補強材として使用されている。
【0003】
近年、このガラスクロスの用途として、特にプリント配線板の基板材料への適用が注目されている。このプリント配線板の製造工程においては、ガラスクロスにエポキシ樹脂等の樹脂を含浸させてプレプリグを形成し、更に、薄い銅箔等が積層されて形成される。このため、銅箔を損傷しないように、ガラスクロスの表面には毛羽等の欠陥が非常に少ないことが要求されている。
【0004】
そして、上記のプリント配線板等に好適に用いられるガラス繊維ヤーンとして、例えばD450(ガラスフィラメントの呼び径5μm、ストランドの番手で11.2g/km)や、C1200(ガラスフィラメントの呼び径4μm、ストランドの番手で4.1g/km)と呼ばれる、比較的細いガラス繊維ヤーンが使用される場合がある。
【0005】
このガラスクロスの製造工程としては、上記のストランドにリング撚糸機等を用いて撚りをかけてガラス繊維ヤ−ンをボビンに巻き取り、その後、エアジェット織機等によって経糸と緯糸とを製織することが行なわれている。
【0006】
したがって、上記のガラス繊維ヤーンにおける一般的な要求性能としては、上記の毛羽発生を防止するための集束性の他、整経工程時の走行性、粉落ちの防止性、製織された後に集束剤や2次サイズ剤を酸化、熱分解等により除去する加熱脱油工程時のヒートクリーニング性等が要求されており、更に、緯糸においては、エアジェット織機において、エアで搬送されてよこ入れされる際の飛走性等が要求されている。
【0007】
このような集束剤に関する従来技術としては、例えば、特許文献1には、粉落ちや毛羽立ちが減少し、適性な硬度を有するヤーンの得られるガラス繊維用集束剤用化工澱粉として、全化工澱粉に対して5〜95重量%の60℃、5%水溶液で1〜5CPSの粘度を有する化工澱粉と同じく95〜5重量%の60℃、5%水溶液で6〜50CPSの粘度を有する化工澱粉とからなる澱粉が記載されており、集束剤として、粘度(分子量)の異なる2種類の化工澱粉を混合して用いることが開示されている。
【0008】
また、粉落ちや毛羽立ちが減少し、集束剤糊液の粘度が安定するガラス繊維用集束剤用化工澱粉として、M.S.値0.15〜0.36にヒドロキシアルキル化され、かつ5%水溶液の60℃粘度が6〜16cpsになるよう架橋処理されたハイアミロースコーンスターチからなる集束剤用の化工澱粉が、特許文献2に開示されている。
【0009】
【特許文献1】
特開平10−72243号公報
【特許文献2】
特開平9−227174号公報
【0010】
【発明が解決しようとしている課題】
上記のような細いガラス繊維ヤーンにおいては、その重量が軽いために緯糸の飛走性は比較的良好である。また、このヤーンを製織して得られるガラスクロスの密度は、22〜56g/m2と低いためにヒートクリニング性も一般に良好である。しかし、細いガラス繊維ヤーンは糸が切れやすいため、特に集束性を向上させて糸切れや毛羽発生を防止することが重要となる。
【0011】
しかしながら、上記の特開平10−72243号公報の集束剤においては、粘度(分子量)の異なる2種類の化工澱粉を混合して用いることにより、粉落ちや毛羽立ちが減少できるものの、植物油の配合割合に対して、パラフィンを多く配合している点により、上記のような細いガラス繊維ヤーンにおいては、集束性が不充分となり、毛羽発生を有効に防止できないという問題があった。
【0012】
また、特開平9−227174号公報の集束剤においては、架橋澱粉を用いることによって粉落ちや毛羽立ちが減少できるものの、やはり植物油の配合割合に対して、パラフィンを多く配合している点により集束性が不充分となり、毛羽発生を有効に防止できないという問題があった。
【0013】
したがって、本発明の目的は、プリント配線板に使用されるガラスクロスの経糸と緯糸とに兼用でき、経糸としては集束性を良好にして糸切れや毛羽発生を防止し、かつ、整経時に安定した走行性が得られる適度な滑り性が得られ、緯糸としては、集束性を良好にして毛羽発生を防止し、かつ、エアジェット製織における飛走性に優れるガラス繊維ヤーン用集束剤及びそれを用いたガラス繊維ヤーンを提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明等は鋭意検討した結果、澱粉としてアミロース含量50%以上のエーテル化ハイアミロース澱粉を用い、更に、油剤となる植物油とパラフィンとを所定の配合割合とすることによって、集束性を向上して毛羽の発生を抑制できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0015】
すなわち、本発明のガラス繊維ヤーン用集束剤は、平均径3〜6μmであるガラスフィラメント50〜300本を集束してなるストランドに撚りをかけてなり、ガラスクロスの経糸及び/又は緯糸として用いられるガラス繊維ヤーンの前記ストランドの集束に用いる集束剤であって、
前記集束剤が、アミロース含量50%以上のエーテル化ハイアミロース澱粉と、植物油と、パラフィンと、乳化剤とを少なくとも含有し、
前記植物油と前記パラフィンとの配合割合が、質量部で95〜75:5〜25であることを特徴とする。
【0016】
上記発明によれば、澱粉としてエーテル化ハイアミロース澱粉を用い、かつ、植物油とパラフィンとからなる油剤全体を100質量部とした場合の、植物油とパラフィンとを上記の配合割合としたので、両者の相乗効果によって、前記のD450やC1200のような細いガラス繊維ヤーンにおいて集束性を向上させ、毛羽発生を効果的に防止することができる。また、付着させるガラス繊維ヤーンが細いので、緯糸の飛走性やヒートクリーニング性も低下することがない。
【0017】
本発明においては、前記エーテル化ハイアミロース澱粉100質量部に対する、前記植物油及びパラフィンの含有量が20〜30質量部であることが好ましい。この配合割合によれば、更に集束性を向上させ、毛羽の発生を抑制することができる。
【0018】
また、本発明においては、前記エーテル化ハイアミロース澱粉が、架橋エーテル化ハイアミロース澱粉であることが好ましい。これにより、前記澱粉の糊化液の粘度が従来の澱粉の場合よりも低くなり、集束剤の粘度も低くなる。従来は、集束剤のストランドへの付着量を多くするために集束剤の固形分割合を高くすると、集束剤の粘度も高くなり、採糸工程での糸切れが増加したが、前記澱粉を用いることにより採糸工程での糸切れを抑制することができる。また、粘度が低いためストランドへの均一な付着が可能となり、少量の付着でも、毛羽の発生を抑制することができる。
【0019】
また、本発明のガラス繊維ヤーンは、上記の本発明の集束剤を、平均径3〜6μmであるガラスフィラメント50〜300本に付着させて集束してなるストランドに撚りをかけてなるガラス繊維ヤーンである。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0021】
本発明のガラス繊維ヤーン用集束剤は、アミロース含量が50%以上のエーテル化ハイアミロース澱粉(以下、エーテル化ハイアミロース澱粉と略称する)と、植物油と、パラフィンと、乳化剤とを少なくとも含有する。
【0022】
まず、本発明に用いる澱粉について説明すると、澱粉はガラスフィラメントを集束するとともに、被膜形成剤として工程中での屈曲、摩擦からガラス繊維ヤーンを保護する目的として用いられる。
【0023】
そして、本発明においては、この澱粉としてエーテル化ハイアミロース澱粉を用いることを第1の特徴としている。
【0024】
本発明においては、エーテル化ハイアミロース澱粉を用いることによって被膜強度を向上させ、集束性を向上させることができ、粉落ちを抑制することができる。また、付着させるガラス繊維ヤーンが細いため、ヒートクリーニング性が低下することがない。これによって、集束性の向上による毛羽防止、ヒートクリーニング性、粉落ち抑制を同時に満足できる。また、澱粉の糊化液を調整する際に、加熱により澱粉が完全に膨潤、溶解しないことから、ストランドの巻き取り工程において集束剤の飛散が少なくなり、ストランドへの付着効率を向上させることができる。
【0025】
澱粉の種類としては特に限定されず、コーンスターチ、タピオカ澱粉、小麦粉澱粉、甘藷澱粉、馬鈴薯澱粉等が使用可能であるが、澱粉以外の不純物が少なく、粒径が小さく、容易に入手できる点からコーンスターチが好ましく用いられる。
【0026】
前記澱粉はエーテル変性されたエーテル化澱粉を用いる。エーテル化としてはカルボキシメチル化、ヒドロキシアルキル化、アルキル化、ベンジル化、カチオンエーテル化などが挙げられるが、なかでもヒドロキシアルキル化が好ましい。前記エーテル化澱粉を用いることにより、糊化開始温度が低くなるので糊化しやすく、また、溶液を安定化することができる。
【0027】
このようなヒドロキシアルキル化は、上記の澱粉に、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、1,2−ブチレンオキシド等を作用させて得られる。
【0028】
また、本発明においては、上記のエーテル化ハイアミロース澱粉が架橋エーテル化ハイアミロース澱粉であることが好ましい。架橋澱粉とは、澱粉の水酸基間に多官能基を結合させた誘導体であり、例えば、ヒドロキシプロピルヒドロキシプロピル架橋デンプン等が挙げられる。
【0029】
本発明においては、上記のエーテル化ハイアミロース澱粉以外に、通常のエーテル化澱粉等を少量含んでいてもよいが、集束性を向上させて毛羽発生を防止するためにエーテル化ハイアミロース澱粉を単独で用いることが好ましい。また、他の澱粉と併用する場合には、エーテル化ハイアミロース澱粉100質量部に対して、20質量部以下の配合量とすることが好ましい。他の澱粉の配合量が20質量部を超えると、集束剤のストランドへの付着効率が低下して付着量が所定量に到達しないので、集束性が低下して毛羽が発生しやすくなる。
【0030】
次に、本発明に用いる油剤について説明する。油剤は主にストランドに潤滑性を付与する目的として用いられる。
【0031】
本発明においては、油剤として、植物油とパラフィンとを併用することを特徴とする。植物油のみでは潤滑性が不足するので、毛羽の発生、飛走性共に好ましくなく、パラフィンを含有させることによって滑り性を付与し、これによって開繊性を付与してエアジェット織機における飛走性を向上させることができる。ただし、パラフィンのみでは、飛走性は向上するものの、逆に開繊が過剰となって毛羽の発生が増加するので、両者を併用する必要がある。
【0032】
植物油としては、特に限定されず、ヤシ油、パーム油、パーム核油、コーン油、綿実油等が挙げられる。また、植物油は不飽和のままでもよく、水素添加して飽和植物油としてもよい。これらは、単独又は2種類以上を混合して用いてもよい。なお、前記植物油は、ラード等の動物油を併用して動植物油として用いることが好ましい。動植物油として用いる場合、後述する植物油の量とは、動植物油の量をいうものとする。
【0033】
パラフィンとしては、融点が50〜60℃であるパラフィンワックスを用いることが好ましい。これによって、整経時の走行性が良好となり毛羽の発生を抑制できる。
【0034】
本発明においては、上記の植物油とパラフィンとの配合割合を、植物油とパラフィンとからなる油剤全体を100質量部とした場合における質量部で、95〜75:5〜25とすることを第2の特徴としている。このようにパラフィンに対する植物油の配合割合を多くすることにより、過剰な滑りを抑制して毛羽の発生を有効に防止することができる。油剤におけるパラフィンの配合割合が5質量%未満であると、充分な滑り性が得られず整経時の走行性が低下し、また製織時の飛走性も低下するので好ましくなく、逆に25質量%を超えると開繊が過剰となり毛羽が発生しやすくなるので好ましくない。
【0035】
また、上記の植物油とパラフィンとからなる油剤の含有量としては、前記澱粉100質量部に対する、前記植物油及び前記パラフィンの含有量が20〜30質量部であることが好ましい。前記植物油及び前記パラフィンの含有量が20質量部未満であると、製織時の緯糸の飛走性が劣るので好ましくなく、30質量部を超えると、集束剤の被膜形成性が劣るため整経時の毛羽が発生しやすくなるので好ましくない。
【0036】
次に、上記の植物油及びパラフィンを乳化するための乳化剤について説明する。本発明においては、上記の植物油の乳化剤とパラフィンの乳化剤とで同一の乳化剤を用いてもよい。また、植物油とパラフィンとを、それぞれより安定した乳化状態とするために別々の乳化剤を用いてもよい。
【0037】
植物油の乳化剤としては、従来公知の非イオン系の界面活性剤等が使用でき、エーテル系、エステル系、エーテルエステル系の乳化剤等がいずれも使用できる。
【0038】
エーテル系乳化剤としては、高級アルコールのエチレンオキサイド付加物であることが好ましい。具体的には、非イオン系の界面活性剤である、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル、及びフェニルエーテル型の乳化剤が挙げられる。
【0039】
エステル系乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンモノステアレート、ポリオキシエチレンモノオレエート等のポリオキシエチレンモノアルキルエステルや、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンセスキオレエート、ソルビタントリオレエート等のソルビタンエステルや、ポリグリセリンオレイン酸エステル、ポリグリセリンラウリン酸エステル、ポリグリセリンステアリン酸エステル等の脂肪酸グリセリンエステルを用いることができる。なかでも脂肪酸グリセリンエステルを用いることが好ましい。
【0040】
エーテルエステル系の乳化剤としては、具体的には、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート等のソルビタンエステルエーテル型の乳化剤等が挙げられる。
【0041】
このうち、エステル系、エーテルエステル系の乳化剤が、ガラス繊維ヤーンの適度な開繊が得られるため好ましく、なかでも、ポリオキシエチレンモノアルキルエステル、ソルビタンエステル、又はソルビタンエステルエーテル型の乳化剤が特に好ましい。
【0042】
本発明において、この植物油の乳化剤の含有量は、植物油及び前記乳化剤の合計量に対して10〜30質量%であることが好ましい。これにより、更に集束性を向上させ、毛羽の発生を抑制することができる。植物油の乳化剤の含有量が10質量%未満では、乳化の状態が不安定となり集束剤がストランドに充分付着しないために毛羽が発生しやすくなり、30質量%を超えると、開繊が過剰となり、整経時及び製織時での毛羽が発生しやすくなる。
【0043】
一方、パラフィンの乳化剤としては、エーテル系乳化剤を少なくとも含む乳化剤が好ましい。これによって、特にパラフィンとエーテル系乳化剤を組み合わせてパラフィンエマルジョンとすることによって、ガラス繊維ヤーンの開繊性を向上させることができる。エーテル系の乳化剤としては、上記の植物油に用いるエーテル系乳化剤と同様の乳化剤が使用できる。
【0044】
また、上記のパラフィンのエーテル系乳化剤の含有量は、パラフィン及びエーテル系乳化剤に対して20〜40質量%が好ましい。これにより過剰な開繊や毛羽の発生を抑制することができる。エーテル系乳化剤の含有量が20質量%未満であると、開繊性が不充分となり、40質量%を超えると、開繊が過剰となって毛羽の発生が増加する。
【0045】
更に、前記パラフィンの乳化剤として、エーテル系乳化剤に加えてエステル系乳化剤を含有することが好ましい。これによれば、更に開繊性が向上するので、少量の添加であっても、エアジェット織機における飛走性を向上させることができる。このような、エステル系乳化剤としては、上記の植物油に用いるエステル系乳化剤と同様の乳化剤が使用できる。
【0046】
なお、上記の植物油の乳化剤、又はパラフィンの乳化剤は、それぞれ単独で用いてもよく、複数の種類を併用してもよい。
【0047】
本発明の集束剤においては、上記の成分以外に他の成分を含んでいても良い。このような成分としては、例えば、カチオン潤滑剤や、防カビ剤の他、シランカップリング剤、その他各種添加剤が挙げられる。
【0048】
上記の集束剤の製造方法としては、従来公知の方法により、澱粉の糊化液に、油剤と乳化剤とを混合して水を分散媒体としてエマルジョン化したものを加え、これに更にその他の成分を混合することにより製造できる。
【0049】
ここで、本発明においては、油剤と乳化剤とで行なう乳化工程において、植物油と、パラフィンと、乳化剤とを一括混合して乳化してもよいが、植物油とパラフィンとが、それぞれに別々に乳化された状態で混合されていることが好ましい。
【0050】
これによれば、植物油と、パラフィンと、乳化剤とを一括して乳化する場合と比較して、植物油と乳化剤、パラフィンと乳化剤の、それぞれで行われた乳化の状態がより安定するので毛羽を効果的に抑制することができる。
【0051】
次に、上記の集束剤を用いて得られる、本発明のガラス繊維ヤーン、及びガラスクロスについて説明する。
【0052】
上記の本発明のガラス繊維ヤーン用集束剤は、平均径3〜6μmであるガラスフィラメント50〜300本を集束してストランドを得る際に、集束剤として付与される。このような平均繊維径、集束本数のストランドとしては、例えば番手が2〜12g/kmのストランドが挙げられる。
【0053】
ストランドに集束剤を付与する方法としては、ロールアプリケーターなどを用いて塗布することができる。集束剤の付着量は、集束剤付着後のストランドの質量を基準として、固形分量で0.5〜2.2質量%の範囲が好ましい。また、集束剤を付与するタイミングは、繊維化後であればいつでも良いが、効率的に付着させるために繊維化直後に付与した方が好ましい。
【0054】
上記の集束剤が付着されたストランドは、更に、撚りがかけられてガラス繊維ヤーンとされ、ガラスクロスの経糸及び/又は緯糸として用いられる。ここで、撚糸には従来公知のリング撚糸機等が使用可能である。撚り数も特に限定されないが、0.1〜2.0回/25mmが好ましく、0.5〜1.0回/25mmが特に好ましい。
【0055】
このようにして得られる代表的なガラス繊維ヤーンの種類としては、例えば、JIS−R3413におけるECD450や、ECC1200(450、1200はガラス繊維ヤーン1ポンド当たりのヤード数の1/100を表わす)と呼ばれるガラス糸が例示できる。
【0056】
上記のガラス繊維ヤーンは、ガラスクロスの経糸として使用される場合には、織機に供給する前に整経工程が行なわれる。整経工程では、織物設計に基づいた本数、順序、長さ、密度、幅などに従って、経糸を巻き取った複数のボビンから一本一本のガラス繊維ヤーンを引き揃えるための作業であるクリール架けが行なわれた後、これら多数の糸を引き出し平行に並べて、一様な張力を与えながら整経ビームに巻き取る。これによって、製織に必要な経糸が整えられる。整経方法は限定されず、部分整経でもよい。
【0057】
そして、本発明の集束剤を用いたガラス繊維ヤーンは集束性に優れるので、この整経工程において毛羽や糸切れの発生が少ない。また、走行テンションが安定しているので、整経時に優れた走行性を得ることができる。更に、整経時の粉落ちも少ない。
【0058】
その後、経糸となる整経ビームと、緯糸となるボビンを織機に装着し、製織工程によりガラスクロスを製造する。織機としては、高速で製織できることからエアジェット織機を用いることが好ましい。そして、本発明の集束剤を用いた緯糸は、エアジェット織機のよこ入れ時における毛羽の発生が少なく、欠点の少ないガラスクロスを提供することができる。
【0059】
上記の製織条件としては、従来公知の条件が使用でき特に限定されない。また、織構造としては特に限定されないが、例えばプリント配線板の基板材料として用いる場合には、平織が好ましく用いられる。
【0060】
このようにして得られる上記のガラスクロスは、表面に毛羽等の欠陥が非常に少なく、主としてプリント配線板の用途に好適に用いることができる。
【0061】
【実施例】
以下、本発明を実施例によって更に詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0062】
集束剤Aの調製
<澱粉糊化液の調製>
エーテル化ハイアミロース澱粉であるヒドロキシプロピル化ハイアミロースコーンスターチ(アミロース含量70〜75%)100質量部を水に分散させて加熱し、95℃で30分間糊化して糊化液を得た。
【0063】
<植物油(動植物油)エマルジョンの調製>
パーム油、ラード及びコーン油を混合してなる動植物油23.0質量部と、乳化剤であるポリオキシエチレンソルビトールテトラオレエート4.0質量部とポリオキシエチレングリコールモノオレエート2.0質量部とを溶融、混合し、80℃の熱水で乳化し、植物油エマルジョンを得た。
【0064】
<パラフィンエマルジョンの調製>
融点54℃のパラフィンワックス3.3質量部と、乳化剤であるポリオキシエチレンステアリルエーテル1.2質量部とポリグリセリンステアリン酸エステル0.6質量部とを溶融、混合し、80℃の熱水で乳化し、パラフィンワックスエマルジョンを得た。
【0065】
<その他添加成分の調製>
テトラエチレンペンタミン(TEPA)及びステアリン酸縮合物酢酸塩からなるカチオン潤滑剤4.5質量部、防カビ剤0.2質量部を熱水に分散した。
【0066】
<集束剤の調製>
上記の澱粉糊化液と、植物油エマルジョンと、パラフィンワックスエマルジョンと、カチオン潤滑剤及び防カビ剤とを混合し、温水を加えて、表1(固形分)に示す配合で、固形分濃度(SC)4.1%の集束剤Aを得た。なお、集束剤Aにおける植物油とパラフィンとの配合割合は、87.5:12.5である。
【0067】
集束剤Bの調製
集束剤Aの澱粉糊化液の調製において、ヒドロキシプロピル化ハイアミロースコーンスターチの代わりに、架橋エーテル化ハイアミロース澱粉である、ヒドロキシプロピルヒドロキシプロピル架橋コーンスターチ(アミロース含量70〜75%)を用いた以外は集束剤Aと同様の調製方法で、表1(固形分)に示す配合で、固形分濃度(SC)5.7%の集束剤Bを得た。
【0068】
集束剤Cの調製
集束剤Aの澱粉糊化液の調製において、ヒドロキシプロピル化ハイアミロースコーンスターチの代わりに、エーテル化澱粉である、ヒドロキシプロピル化コーンスターチ(アミロース含量30%)を用いた以外は集束剤Aと同様の調製方法で、表1(固形分)に示す配合で、固形分濃度(SC)4.1%の集束剤Cを得た。
【0069】
集束剤Dの調製
集束剤Aの澱粉糊化液の調製において、ヒドロキシプロピル化ハイアミロースコーンスターチ100質量部の代わりに、ヒドロキシプロピル化ハイアミロースコーンスターチ50質量部、及びヒドロキシプロピル化コーンスターチ(アミロース含量30%)50質量部を用いた以外は集束剤Aと同様の調製方法で、表1(固形分)に示す配合で、固形分濃度(SC)4.1%の集束剤Dを得た。
【0070】
集束剤Eの調製
集束剤Aと同様の集束剤の調製方法で、表1(固形分)に示す配合で、固形分濃度(SC)4.1%の集束剤Eを得た(植物油とパラフィンとの配合割合は、100:0である)。
【0071】
集束剤Fの調製
集束剤Aと同様の集束剤の調製方法で、表1(固形分)に示す配合で、固形分濃度(SC)4.1%の集束剤Fを得た(植物油とパラフィンとの配合割合は、61.5:38.5である)。
【0072】
集束剤Gの調製
集束剤Aと同様の集束剤の調製方法で、表1(固形分)に示す配合で、固形分濃度(SC)7.0%の集束剤Gを得た。
【0073】
【表1】
【0074】
実施例1
集束剤Aを用いて、平均径5.2μmであるガラスフィラメント200本を集束してストランドを製造した。集束剤Aは、集束剤付与後のガラス繊維ストランドの質量を基準として固形分量で1.0質量%となるように繊維化直後に付与した。次に、このストランドをリング撚糸機を用いて撚糸し、JIS−R3413におけるECD450 1/0 1.0 Zである、実施例1のガラス繊維ヤーンを得た。
【0075】
実施例2
集束剤Bを用いて、平均径4.5μmであるガラスフィラメント100本を集束してストランドを製造した。集束剤Bは、集束剤付与後のガラス繊維ストランドの質量を基準として固形分量で1.7質量%となるように繊維化直後に付与した。次に、このストランドをリング撚糸機を用いて撚糸し、ECC1200 1/0 1.0 Zである、実施例2のガラス繊維ヤーンを得た。
【0076】
比較例1
集束剤Cを用いて、実施例1と同様の製造方法で、JIS−R3413におけるECD450 1/0 1.0 Zである、比較例1のガラス繊維ヤーンを得た。
【0077】
比較例2
集束剤Dを用いて、実施例1と同様の製造方法で、JIS−R3413におけるECD450 1/0 1.0 Zである、比較例2のガラス繊維ヤーンを得た。
【0078】
比較例3
集束剤Eを用いて、実施例1と同様の製造方法で、JIS−R3413におけるECD450 1/0 1.0 Zである、比較例3のガラス繊維ヤーンを得た。
【0079】
比較例4
集束剤Fを用いて、実施例1と同様の製造方法で、JIS−R3413におけるECD450 1/0 1.0 Zである、比較例4のガラス繊維ヤーンを得た。
【0080】
比較例5
集束剤Gを用いて、実施例2同様の製造方法で、ECC1200 1/0 1.0 Zである、比較例5ガラス繊維ヤーンを得た。
【0081】
試験例
実施例1、2、及び比較例1〜5のガラス繊維ヤーンについて、耐屈曲性毛羽を調べ、更に、経糸及び緯糸として用いてエアジェット織機によってガラスクロスを製造し、製織毛羽について調べた。その結果を表2にまとめて示す。
【0082】
なお、耐屈曲性毛羽は経糸の評価項目であり、ヤーンパッケージからガラス繊維ヤーンを引き出し、所定の重りをかけたテンサーに通してガラスヤーンを屈曲させた後に隙間無く管に巻き取り、蛍光灯下で管外層表面全体の毛羽本数を数えた。この操作を10回行ない、その平均値を耐屈曲性毛羽とした。
【0083】
また、製織毛羽は緯糸の評価項目であり、エアジェット織機による製織後のガラスクロスの緯糸から発生した毛羽を目視にて本数を求め、ガラスクロス1m2あたりの毛羽本数を製織毛羽数とした。
【0084】
【表2】
【0085】
表2の結果より、JIS−R3413におけるD450のガラス繊維ヤーンの実施例1においては、比較例1〜4に比べて耐屈曲性毛羽、製織毛羽共に少なく良好であった。
【0086】
これに対して、澱粉としてアミロース含量50%未満のエーテル化澱粉を100%単独で用いた比較例1、及び、エーテル化澱粉とエーテル化ハイアミロース澱粉とを50質量%ずつ含有する比較例2においては、集束性が不足して、耐屈曲性毛羽、製織毛羽、共に実施例1に比べて多かった。また、植物油に対するパラフィンの配合割合が、本発明の規定範囲の下限値未満である比較例3、及び上限値を超える比較例4においては、やはり集束性が不足して、耐屈曲性毛羽、製織毛羽、共に実施例1に比べて増加した。
【0087】
また、C1200のガラス繊維ヤーンの実施例2においても、上記と同様に比較例5に比べて集束性に優れており、耐屈曲性毛羽、製織毛羽共に少なく良好であった。
【0088】
【発明の効果】
以上、本発明によれば、ガラスクロスの経糸及び/又は緯糸として用いられるガラス繊維ヤーンの、エアジェット製織時の毛羽発生を有効に防止できる。したがって、この集束剤を用いたガラス繊維ヤーンは、プリント配線板に用られるガラスクロスに好適に使用できる。
【発明の属する分野】
本発明は、主としてプリント配線板の基板材料等として使用されるガラスクロスに用いられる、ガラス繊維ヤーンの集束剤及びそれを用いたガラス繊維ヤーンに関する。
【0002】
【従来の技術】
ガラス繊維ヤーンは、繊維径数ミクロンのガラスフィラメント数十本〜千数百本を、集束剤を用いて集束してストランドとし、このストランドに撚りをかけて得られる。そして、このガラス繊維ヤーンは、製織工程によってガラスクロスとなり、このガラスクロスに樹脂を含浸させることによって、繊維強化プラスチック(FRP)製品の補強材として使用されている。
【0003】
近年、このガラスクロスの用途として、特にプリント配線板の基板材料への適用が注目されている。このプリント配線板の製造工程においては、ガラスクロスにエポキシ樹脂等の樹脂を含浸させてプレプリグを形成し、更に、薄い銅箔等が積層されて形成される。このため、銅箔を損傷しないように、ガラスクロスの表面には毛羽等の欠陥が非常に少ないことが要求されている。
【0004】
そして、上記のプリント配線板等に好適に用いられるガラス繊維ヤーンとして、例えばD450(ガラスフィラメントの呼び径5μm、ストランドの番手で11.2g/km)や、C1200(ガラスフィラメントの呼び径4μm、ストランドの番手で4.1g/km)と呼ばれる、比較的細いガラス繊維ヤーンが使用される場合がある。
【0005】
このガラスクロスの製造工程としては、上記のストランドにリング撚糸機等を用いて撚りをかけてガラス繊維ヤ−ンをボビンに巻き取り、その後、エアジェット織機等によって経糸と緯糸とを製織することが行なわれている。
【0006】
したがって、上記のガラス繊維ヤーンにおける一般的な要求性能としては、上記の毛羽発生を防止するための集束性の他、整経工程時の走行性、粉落ちの防止性、製織された後に集束剤や2次サイズ剤を酸化、熱分解等により除去する加熱脱油工程時のヒートクリーニング性等が要求されており、更に、緯糸においては、エアジェット織機において、エアで搬送されてよこ入れされる際の飛走性等が要求されている。
【0007】
このような集束剤に関する従来技術としては、例えば、特許文献1には、粉落ちや毛羽立ちが減少し、適性な硬度を有するヤーンの得られるガラス繊維用集束剤用化工澱粉として、全化工澱粉に対して5〜95重量%の60℃、5%水溶液で1〜5CPSの粘度を有する化工澱粉と同じく95〜5重量%の60℃、5%水溶液で6〜50CPSの粘度を有する化工澱粉とからなる澱粉が記載されており、集束剤として、粘度(分子量)の異なる2種類の化工澱粉を混合して用いることが開示されている。
【0008】
また、粉落ちや毛羽立ちが減少し、集束剤糊液の粘度が安定するガラス繊維用集束剤用化工澱粉として、M.S.値0.15〜0.36にヒドロキシアルキル化され、かつ5%水溶液の60℃粘度が6〜16cpsになるよう架橋処理されたハイアミロースコーンスターチからなる集束剤用の化工澱粉が、特許文献2に開示されている。
【0009】
【特許文献1】
特開平10−72243号公報
【特許文献2】
特開平9−227174号公報
【0010】
【発明が解決しようとしている課題】
上記のような細いガラス繊維ヤーンにおいては、その重量が軽いために緯糸の飛走性は比較的良好である。また、このヤーンを製織して得られるガラスクロスの密度は、22〜56g/m2と低いためにヒートクリニング性も一般に良好である。しかし、細いガラス繊維ヤーンは糸が切れやすいため、特に集束性を向上させて糸切れや毛羽発生を防止することが重要となる。
【0011】
しかしながら、上記の特開平10−72243号公報の集束剤においては、粘度(分子量)の異なる2種類の化工澱粉を混合して用いることにより、粉落ちや毛羽立ちが減少できるものの、植物油の配合割合に対して、パラフィンを多く配合している点により、上記のような細いガラス繊維ヤーンにおいては、集束性が不充分となり、毛羽発生を有効に防止できないという問題があった。
【0012】
また、特開平9−227174号公報の集束剤においては、架橋澱粉を用いることによって粉落ちや毛羽立ちが減少できるものの、やはり植物油の配合割合に対して、パラフィンを多く配合している点により集束性が不充分となり、毛羽発生を有効に防止できないという問題があった。
【0013】
したがって、本発明の目的は、プリント配線板に使用されるガラスクロスの経糸と緯糸とに兼用でき、経糸としては集束性を良好にして糸切れや毛羽発生を防止し、かつ、整経時に安定した走行性が得られる適度な滑り性が得られ、緯糸としては、集束性を良好にして毛羽発生を防止し、かつ、エアジェット製織における飛走性に優れるガラス繊維ヤーン用集束剤及びそれを用いたガラス繊維ヤーンを提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明等は鋭意検討した結果、澱粉としてアミロース含量50%以上のエーテル化ハイアミロース澱粉を用い、更に、油剤となる植物油とパラフィンとを所定の配合割合とすることによって、集束性を向上して毛羽の発生を抑制できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0015】
すなわち、本発明のガラス繊維ヤーン用集束剤は、平均径3〜6μmであるガラスフィラメント50〜300本を集束してなるストランドに撚りをかけてなり、ガラスクロスの経糸及び/又は緯糸として用いられるガラス繊維ヤーンの前記ストランドの集束に用いる集束剤であって、
前記集束剤が、アミロース含量50%以上のエーテル化ハイアミロース澱粉と、植物油と、パラフィンと、乳化剤とを少なくとも含有し、
前記植物油と前記パラフィンとの配合割合が、質量部で95〜75:5〜25であることを特徴とする。
【0016】
上記発明によれば、澱粉としてエーテル化ハイアミロース澱粉を用い、かつ、植物油とパラフィンとからなる油剤全体を100質量部とした場合の、植物油とパラフィンとを上記の配合割合としたので、両者の相乗効果によって、前記のD450やC1200のような細いガラス繊維ヤーンにおいて集束性を向上させ、毛羽発生を効果的に防止することができる。また、付着させるガラス繊維ヤーンが細いので、緯糸の飛走性やヒートクリーニング性も低下することがない。
【0017】
本発明においては、前記エーテル化ハイアミロース澱粉100質量部に対する、前記植物油及びパラフィンの含有量が20〜30質量部であることが好ましい。この配合割合によれば、更に集束性を向上させ、毛羽の発生を抑制することができる。
【0018】
また、本発明においては、前記エーテル化ハイアミロース澱粉が、架橋エーテル化ハイアミロース澱粉であることが好ましい。これにより、前記澱粉の糊化液の粘度が従来の澱粉の場合よりも低くなり、集束剤の粘度も低くなる。従来は、集束剤のストランドへの付着量を多くするために集束剤の固形分割合を高くすると、集束剤の粘度も高くなり、採糸工程での糸切れが増加したが、前記澱粉を用いることにより採糸工程での糸切れを抑制することができる。また、粘度が低いためストランドへの均一な付着が可能となり、少量の付着でも、毛羽の発生を抑制することができる。
【0019】
また、本発明のガラス繊維ヤーンは、上記の本発明の集束剤を、平均径3〜6μmであるガラスフィラメント50〜300本に付着させて集束してなるストランドに撚りをかけてなるガラス繊維ヤーンである。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0021】
本発明のガラス繊維ヤーン用集束剤は、アミロース含量が50%以上のエーテル化ハイアミロース澱粉(以下、エーテル化ハイアミロース澱粉と略称する)と、植物油と、パラフィンと、乳化剤とを少なくとも含有する。
【0022】
まず、本発明に用いる澱粉について説明すると、澱粉はガラスフィラメントを集束するとともに、被膜形成剤として工程中での屈曲、摩擦からガラス繊維ヤーンを保護する目的として用いられる。
【0023】
そして、本発明においては、この澱粉としてエーテル化ハイアミロース澱粉を用いることを第1の特徴としている。
【0024】
本発明においては、エーテル化ハイアミロース澱粉を用いることによって被膜強度を向上させ、集束性を向上させることができ、粉落ちを抑制することができる。また、付着させるガラス繊維ヤーンが細いため、ヒートクリーニング性が低下することがない。これによって、集束性の向上による毛羽防止、ヒートクリーニング性、粉落ち抑制を同時に満足できる。また、澱粉の糊化液を調整する際に、加熱により澱粉が完全に膨潤、溶解しないことから、ストランドの巻き取り工程において集束剤の飛散が少なくなり、ストランドへの付着効率を向上させることができる。
【0025】
澱粉の種類としては特に限定されず、コーンスターチ、タピオカ澱粉、小麦粉澱粉、甘藷澱粉、馬鈴薯澱粉等が使用可能であるが、澱粉以外の不純物が少なく、粒径が小さく、容易に入手できる点からコーンスターチが好ましく用いられる。
【0026】
前記澱粉はエーテル変性されたエーテル化澱粉を用いる。エーテル化としてはカルボキシメチル化、ヒドロキシアルキル化、アルキル化、ベンジル化、カチオンエーテル化などが挙げられるが、なかでもヒドロキシアルキル化が好ましい。前記エーテル化澱粉を用いることにより、糊化開始温度が低くなるので糊化しやすく、また、溶液を安定化することができる。
【0027】
このようなヒドロキシアルキル化は、上記の澱粉に、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、1,2−ブチレンオキシド等を作用させて得られる。
【0028】
また、本発明においては、上記のエーテル化ハイアミロース澱粉が架橋エーテル化ハイアミロース澱粉であることが好ましい。架橋澱粉とは、澱粉の水酸基間に多官能基を結合させた誘導体であり、例えば、ヒドロキシプロピルヒドロキシプロピル架橋デンプン等が挙げられる。
【0029】
本発明においては、上記のエーテル化ハイアミロース澱粉以外に、通常のエーテル化澱粉等を少量含んでいてもよいが、集束性を向上させて毛羽発生を防止するためにエーテル化ハイアミロース澱粉を単独で用いることが好ましい。また、他の澱粉と併用する場合には、エーテル化ハイアミロース澱粉100質量部に対して、20質量部以下の配合量とすることが好ましい。他の澱粉の配合量が20質量部を超えると、集束剤のストランドへの付着効率が低下して付着量が所定量に到達しないので、集束性が低下して毛羽が発生しやすくなる。
【0030】
次に、本発明に用いる油剤について説明する。油剤は主にストランドに潤滑性を付与する目的として用いられる。
【0031】
本発明においては、油剤として、植物油とパラフィンとを併用することを特徴とする。植物油のみでは潤滑性が不足するので、毛羽の発生、飛走性共に好ましくなく、パラフィンを含有させることによって滑り性を付与し、これによって開繊性を付与してエアジェット織機における飛走性を向上させることができる。ただし、パラフィンのみでは、飛走性は向上するものの、逆に開繊が過剰となって毛羽の発生が増加するので、両者を併用する必要がある。
【0032】
植物油としては、特に限定されず、ヤシ油、パーム油、パーム核油、コーン油、綿実油等が挙げられる。また、植物油は不飽和のままでもよく、水素添加して飽和植物油としてもよい。これらは、単独又は2種類以上を混合して用いてもよい。なお、前記植物油は、ラード等の動物油を併用して動植物油として用いることが好ましい。動植物油として用いる場合、後述する植物油の量とは、動植物油の量をいうものとする。
【0033】
パラフィンとしては、融点が50〜60℃であるパラフィンワックスを用いることが好ましい。これによって、整経時の走行性が良好となり毛羽の発生を抑制できる。
【0034】
本発明においては、上記の植物油とパラフィンとの配合割合を、植物油とパラフィンとからなる油剤全体を100質量部とした場合における質量部で、95〜75:5〜25とすることを第2の特徴としている。このようにパラフィンに対する植物油の配合割合を多くすることにより、過剰な滑りを抑制して毛羽の発生を有効に防止することができる。油剤におけるパラフィンの配合割合が5質量%未満であると、充分な滑り性が得られず整経時の走行性が低下し、また製織時の飛走性も低下するので好ましくなく、逆に25質量%を超えると開繊が過剰となり毛羽が発生しやすくなるので好ましくない。
【0035】
また、上記の植物油とパラフィンとからなる油剤の含有量としては、前記澱粉100質量部に対する、前記植物油及び前記パラフィンの含有量が20〜30質量部であることが好ましい。前記植物油及び前記パラフィンの含有量が20質量部未満であると、製織時の緯糸の飛走性が劣るので好ましくなく、30質量部を超えると、集束剤の被膜形成性が劣るため整経時の毛羽が発生しやすくなるので好ましくない。
【0036】
次に、上記の植物油及びパラフィンを乳化するための乳化剤について説明する。本発明においては、上記の植物油の乳化剤とパラフィンの乳化剤とで同一の乳化剤を用いてもよい。また、植物油とパラフィンとを、それぞれより安定した乳化状態とするために別々の乳化剤を用いてもよい。
【0037】
植物油の乳化剤としては、従来公知の非イオン系の界面活性剤等が使用でき、エーテル系、エステル系、エーテルエステル系の乳化剤等がいずれも使用できる。
【0038】
エーテル系乳化剤としては、高級アルコールのエチレンオキサイド付加物であることが好ましい。具体的には、非イオン系の界面活性剤である、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル、及びフェニルエーテル型の乳化剤が挙げられる。
【0039】
エステル系乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンモノステアレート、ポリオキシエチレンモノオレエート等のポリオキシエチレンモノアルキルエステルや、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンセスキオレエート、ソルビタントリオレエート等のソルビタンエステルや、ポリグリセリンオレイン酸エステル、ポリグリセリンラウリン酸エステル、ポリグリセリンステアリン酸エステル等の脂肪酸グリセリンエステルを用いることができる。なかでも脂肪酸グリセリンエステルを用いることが好ましい。
【0040】
エーテルエステル系の乳化剤としては、具体的には、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート等のソルビタンエステルエーテル型の乳化剤等が挙げられる。
【0041】
このうち、エステル系、エーテルエステル系の乳化剤が、ガラス繊維ヤーンの適度な開繊が得られるため好ましく、なかでも、ポリオキシエチレンモノアルキルエステル、ソルビタンエステル、又はソルビタンエステルエーテル型の乳化剤が特に好ましい。
【0042】
本発明において、この植物油の乳化剤の含有量は、植物油及び前記乳化剤の合計量に対して10〜30質量%であることが好ましい。これにより、更に集束性を向上させ、毛羽の発生を抑制することができる。植物油の乳化剤の含有量が10質量%未満では、乳化の状態が不安定となり集束剤がストランドに充分付着しないために毛羽が発生しやすくなり、30質量%を超えると、開繊が過剰となり、整経時及び製織時での毛羽が発生しやすくなる。
【0043】
一方、パラフィンの乳化剤としては、エーテル系乳化剤を少なくとも含む乳化剤が好ましい。これによって、特にパラフィンとエーテル系乳化剤を組み合わせてパラフィンエマルジョンとすることによって、ガラス繊維ヤーンの開繊性を向上させることができる。エーテル系の乳化剤としては、上記の植物油に用いるエーテル系乳化剤と同様の乳化剤が使用できる。
【0044】
また、上記のパラフィンのエーテル系乳化剤の含有量は、パラフィン及びエーテル系乳化剤に対して20〜40質量%が好ましい。これにより過剰な開繊や毛羽の発生を抑制することができる。エーテル系乳化剤の含有量が20質量%未満であると、開繊性が不充分となり、40質量%を超えると、開繊が過剰となって毛羽の発生が増加する。
【0045】
更に、前記パラフィンの乳化剤として、エーテル系乳化剤に加えてエステル系乳化剤を含有することが好ましい。これによれば、更に開繊性が向上するので、少量の添加であっても、エアジェット織機における飛走性を向上させることができる。このような、エステル系乳化剤としては、上記の植物油に用いるエステル系乳化剤と同様の乳化剤が使用できる。
【0046】
なお、上記の植物油の乳化剤、又はパラフィンの乳化剤は、それぞれ単独で用いてもよく、複数の種類を併用してもよい。
【0047】
本発明の集束剤においては、上記の成分以外に他の成分を含んでいても良い。このような成分としては、例えば、カチオン潤滑剤や、防カビ剤の他、シランカップリング剤、その他各種添加剤が挙げられる。
【0048】
上記の集束剤の製造方法としては、従来公知の方法により、澱粉の糊化液に、油剤と乳化剤とを混合して水を分散媒体としてエマルジョン化したものを加え、これに更にその他の成分を混合することにより製造できる。
【0049】
ここで、本発明においては、油剤と乳化剤とで行なう乳化工程において、植物油と、パラフィンと、乳化剤とを一括混合して乳化してもよいが、植物油とパラフィンとが、それぞれに別々に乳化された状態で混合されていることが好ましい。
【0050】
これによれば、植物油と、パラフィンと、乳化剤とを一括して乳化する場合と比較して、植物油と乳化剤、パラフィンと乳化剤の、それぞれで行われた乳化の状態がより安定するので毛羽を効果的に抑制することができる。
【0051】
次に、上記の集束剤を用いて得られる、本発明のガラス繊維ヤーン、及びガラスクロスについて説明する。
【0052】
上記の本発明のガラス繊維ヤーン用集束剤は、平均径3〜6μmであるガラスフィラメント50〜300本を集束してストランドを得る際に、集束剤として付与される。このような平均繊維径、集束本数のストランドとしては、例えば番手が2〜12g/kmのストランドが挙げられる。
【0053】
ストランドに集束剤を付与する方法としては、ロールアプリケーターなどを用いて塗布することができる。集束剤の付着量は、集束剤付着後のストランドの質量を基準として、固形分量で0.5〜2.2質量%の範囲が好ましい。また、集束剤を付与するタイミングは、繊維化後であればいつでも良いが、効率的に付着させるために繊維化直後に付与した方が好ましい。
【0054】
上記の集束剤が付着されたストランドは、更に、撚りがかけられてガラス繊維ヤーンとされ、ガラスクロスの経糸及び/又は緯糸として用いられる。ここで、撚糸には従来公知のリング撚糸機等が使用可能である。撚り数も特に限定されないが、0.1〜2.0回/25mmが好ましく、0.5〜1.0回/25mmが特に好ましい。
【0055】
このようにして得られる代表的なガラス繊維ヤーンの種類としては、例えば、JIS−R3413におけるECD450や、ECC1200(450、1200はガラス繊維ヤーン1ポンド当たりのヤード数の1/100を表わす)と呼ばれるガラス糸が例示できる。
【0056】
上記のガラス繊維ヤーンは、ガラスクロスの経糸として使用される場合には、織機に供給する前に整経工程が行なわれる。整経工程では、織物設計に基づいた本数、順序、長さ、密度、幅などに従って、経糸を巻き取った複数のボビンから一本一本のガラス繊維ヤーンを引き揃えるための作業であるクリール架けが行なわれた後、これら多数の糸を引き出し平行に並べて、一様な張力を与えながら整経ビームに巻き取る。これによって、製織に必要な経糸が整えられる。整経方法は限定されず、部分整経でもよい。
【0057】
そして、本発明の集束剤を用いたガラス繊維ヤーンは集束性に優れるので、この整経工程において毛羽や糸切れの発生が少ない。また、走行テンションが安定しているので、整経時に優れた走行性を得ることができる。更に、整経時の粉落ちも少ない。
【0058】
その後、経糸となる整経ビームと、緯糸となるボビンを織機に装着し、製織工程によりガラスクロスを製造する。織機としては、高速で製織できることからエアジェット織機を用いることが好ましい。そして、本発明の集束剤を用いた緯糸は、エアジェット織機のよこ入れ時における毛羽の発生が少なく、欠点の少ないガラスクロスを提供することができる。
【0059】
上記の製織条件としては、従来公知の条件が使用でき特に限定されない。また、織構造としては特に限定されないが、例えばプリント配線板の基板材料として用いる場合には、平織が好ましく用いられる。
【0060】
このようにして得られる上記のガラスクロスは、表面に毛羽等の欠陥が非常に少なく、主としてプリント配線板の用途に好適に用いることができる。
【0061】
【実施例】
以下、本発明を実施例によって更に詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0062】
集束剤Aの調製
<澱粉糊化液の調製>
エーテル化ハイアミロース澱粉であるヒドロキシプロピル化ハイアミロースコーンスターチ(アミロース含量70〜75%)100質量部を水に分散させて加熱し、95℃で30分間糊化して糊化液を得た。
【0063】
<植物油(動植物油)エマルジョンの調製>
パーム油、ラード及びコーン油を混合してなる動植物油23.0質量部と、乳化剤であるポリオキシエチレンソルビトールテトラオレエート4.0質量部とポリオキシエチレングリコールモノオレエート2.0質量部とを溶融、混合し、80℃の熱水で乳化し、植物油エマルジョンを得た。
【0064】
<パラフィンエマルジョンの調製>
融点54℃のパラフィンワックス3.3質量部と、乳化剤であるポリオキシエチレンステアリルエーテル1.2質量部とポリグリセリンステアリン酸エステル0.6質量部とを溶融、混合し、80℃の熱水で乳化し、パラフィンワックスエマルジョンを得た。
【0065】
<その他添加成分の調製>
テトラエチレンペンタミン(TEPA)及びステアリン酸縮合物酢酸塩からなるカチオン潤滑剤4.5質量部、防カビ剤0.2質量部を熱水に分散した。
【0066】
<集束剤の調製>
上記の澱粉糊化液と、植物油エマルジョンと、パラフィンワックスエマルジョンと、カチオン潤滑剤及び防カビ剤とを混合し、温水を加えて、表1(固形分)に示す配合で、固形分濃度(SC)4.1%の集束剤Aを得た。なお、集束剤Aにおける植物油とパラフィンとの配合割合は、87.5:12.5である。
【0067】
集束剤Bの調製
集束剤Aの澱粉糊化液の調製において、ヒドロキシプロピル化ハイアミロースコーンスターチの代わりに、架橋エーテル化ハイアミロース澱粉である、ヒドロキシプロピルヒドロキシプロピル架橋コーンスターチ(アミロース含量70〜75%)を用いた以外は集束剤Aと同様の調製方法で、表1(固形分)に示す配合で、固形分濃度(SC)5.7%の集束剤Bを得た。
【0068】
集束剤Cの調製
集束剤Aの澱粉糊化液の調製において、ヒドロキシプロピル化ハイアミロースコーンスターチの代わりに、エーテル化澱粉である、ヒドロキシプロピル化コーンスターチ(アミロース含量30%)を用いた以外は集束剤Aと同様の調製方法で、表1(固形分)に示す配合で、固形分濃度(SC)4.1%の集束剤Cを得た。
【0069】
集束剤Dの調製
集束剤Aの澱粉糊化液の調製において、ヒドロキシプロピル化ハイアミロースコーンスターチ100質量部の代わりに、ヒドロキシプロピル化ハイアミロースコーンスターチ50質量部、及びヒドロキシプロピル化コーンスターチ(アミロース含量30%)50質量部を用いた以外は集束剤Aと同様の調製方法で、表1(固形分)に示す配合で、固形分濃度(SC)4.1%の集束剤Dを得た。
【0070】
集束剤Eの調製
集束剤Aと同様の集束剤の調製方法で、表1(固形分)に示す配合で、固形分濃度(SC)4.1%の集束剤Eを得た(植物油とパラフィンとの配合割合は、100:0である)。
【0071】
集束剤Fの調製
集束剤Aと同様の集束剤の調製方法で、表1(固形分)に示す配合で、固形分濃度(SC)4.1%の集束剤Fを得た(植物油とパラフィンとの配合割合は、61.5:38.5である)。
【0072】
集束剤Gの調製
集束剤Aと同様の集束剤の調製方法で、表1(固形分)に示す配合で、固形分濃度(SC)7.0%の集束剤Gを得た。
【0073】
【表1】
【0074】
実施例1
集束剤Aを用いて、平均径5.2μmであるガラスフィラメント200本を集束してストランドを製造した。集束剤Aは、集束剤付与後のガラス繊維ストランドの質量を基準として固形分量で1.0質量%となるように繊維化直後に付与した。次に、このストランドをリング撚糸機を用いて撚糸し、JIS−R3413におけるECD450 1/0 1.0 Zである、実施例1のガラス繊維ヤーンを得た。
【0075】
実施例2
集束剤Bを用いて、平均径4.5μmであるガラスフィラメント100本を集束してストランドを製造した。集束剤Bは、集束剤付与後のガラス繊維ストランドの質量を基準として固形分量で1.7質量%となるように繊維化直後に付与した。次に、このストランドをリング撚糸機を用いて撚糸し、ECC1200 1/0 1.0 Zである、実施例2のガラス繊維ヤーンを得た。
【0076】
比較例1
集束剤Cを用いて、実施例1と同様の製造方法で、JIS−R3413におけるECD450 1/0 1.0 Zである、比較例1のガラス繊維ヤーンを得た。
【0077】
比較例2
集束剤Dを用いて、実施例1と同様の製造方法で、JIS−R3413におけるECD450 1/0 1.0 Zである、比較例2のガラス繊維ヤーンを得た。
【0078】
比較例3
集束剤Eを用いて、実施例1と同様の製造方法で、JIS−R3413におけるECD450 1/0 1.0 Zである、比較例3のガラス繊維ヤーンを得た。
【0079】
比較例4
集束剤Fを用いて、実施例1と同様の製造方法で、JIS−R3413におけるECD450 1/0 1.0 Zである、比較例4のガラス繊維ヤーンを得た。
【0080】
比較例5
集束剤Gを用いて、実施例2同様の製造方法で、ECC1200 1/0 1.0 Zである、比較例5ガラス繊維ヤーンを得た。
【0081】
試験例
実施例1、2、及び比較例1〜5のガラス繊維ヤーンについて、耐屈曲性毛羽を調べ、更に、経糸及び緯糸として用いてエアジェット織機によってガラスクロスを製造し、製織毛羽について調べた。その結果を表2にまとめて示す。
【0082】
なお、耐屈曲性毛羽は経糸の評価項目であり、ヤーンパッケージからガラス繊維ヤーンを引き出し、所定の重りをかけたテンサーに通してガラスヤーンを屈曲させた後に隙間無く管に巻き取り、蛍光灯下で管外層表面全体の毛羽本数を数えた。この操作を10回行ない、その平均値を耐屈曲性毛羽とした。
【0083】
また、製織毛羽は緯糸の評価項目であり、エアジェット織機による製織後のガラスクロスの緯糸から発生した毛羽を目視にて本数を求め、ガラスクロス1m2あたりの毛羽本数を製織毛羽数とした。
【0084】
【表2】
【0085】
表2の結果より、JIS−R3413におけるD450のガラス繊維ヤーンの実施例1においては、比較例1〜4に比べて耐屈曲性毛羽、製織毛羽共に少なく良好であった。
【0086】
これに対して、澱粉としてアミロース含量50%未満のエーテル化澱粉を100%単独で用いた比較例1、及び、エーテル化澱粉とエーテル化ハイアミロース澱粉とを50質量%ずつ含有する比較例2においては、集束性が不足して、耐屈曲性毛羽、製織毛羽、共に実施例1に比べて多かった。また、植物油に対するパラフィンの配合割合が、本発明の規定範囲の下限値未満である比較例3、及び上限値を超える比較例4においては、やはり集束性が不足して、耐屈曲性毛羽、製織毛羽、共に実施例1に比べて増加した。
【0087】
また、C1200のガラス繊維ヤーンの実施例2においても、上記と同様に比較例5に比べて集束性に優れており、耐屈曲性毛羽、製織毛羽共に少なく良好であった。
【0088】
【発明の効果】
以上、本発明によれば、ガラスクロスの経糸及び/又は緯糸として用いられるガラス繊維ヤーンの、エアジェット製織時の毛羽発生を有効に防止できる。したがって、この集束剤を用いたガラス繊維ヤーンは、プリント配線板に用られるガラスクロスに好適に使用できる。
Claims (4)
- 平均径3〜6μmであるガラスフィラメント50〜300本を集束してなるストランドに撚りをかけてなり、ガラスクロスの経糸及び/又は緯糸として用いられるガラス繊維ヤーンの前記ストランドの集束に用いる集束剤であって、
前記集束剤が、アミロース含量50%以上のエーテル化ハイアミロース澱粉と、植物油と、パラフィンと、乳化剤とを少なくとも含有し、
前記植物油と前記パラフィンとの配合割合が、質量部で95〜75:5〜25であることを特徴とするガラス繊維ヤーン用集束剤。 - 前記エーテル化ハイアミロース澱粉100質量部に対する、前記植物油及びパラフィンの含有量が20〜30質量部である請求項1記載のガラス繊維ヤーン用集束剤。
- 前記エーテル化ハイアミロース澱粉が、架橋エーテル化ハイアミロース澱粉である請求項1又は2に記載のガラス繊維ヤーン用集束剤。
- 請求項1〜3のいずれか1つに記載の集束剤を、平均径3〜6μmであるガラスフィラメント50〜300本に付着させて集束してなるストランドに撚りをかけてなるガラス繊維ヤーン。
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JP2006213572A (ja) * | 2005-02-04 | 2006-08-17 | Sanwa Denpun Kogyo Kk | ガラス繊維集束剤およびガラス繊維 |
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- 2002-09-30 JP JP2002285019A patent/JP2004115350A/ja active Pending
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