JP2004110037A - 光ファイバケーブル及び光ファイバ・リボンからなる光ファイバ伝送の損失緩衝方法と偏波分散の低減方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 外側のジャケットと外側のジャケット内に配された光ファイバ・リボンとを有していて、該リボンは複数の光ファイバからなり、かつ光ファイバの上に少なくとも2つの異なるマトリックス・コーティングが配されていて、それらのコーティングが互いに異なる特性をもち、さらにその2つのマトリックス・コーティングがアンダーコートとオーバーコートとからなっていて、アンダーコートはおおよそ-60℃からおおよそ120℃の範囲にわたるガラス転移温度を、オーバーコートはおおよそ90℃からおおよそ150℃の範囲にわたるガラス転移温度を有する光ファイバケーブル。
【選択図】 図3
Description
より高いビット率の伝送システムの開発に伴い、それに必要な光学特性を持つ新しい光ファイバの設計が求められてくる。つまり高いビット率(例えば40Gbits/sec以上)に対応でき、E、C、L、およびU-バンド帯、つまりそれぞれ1360〜1460、1530〜1565、1565〜1625および1625〜1675ナノメートルの波長帯での効率的な伝送が可能な光ファイバである。
光ファイバのマイクロベンディングに起因する光伝送損失の増加は、光ファイバ開発の当初から問題視され、議論されてきている。またマイクロベンド損失は光の波長が長くなると実質的に増加することも公知である。したがってより高いビット率で、かつ遠距離伝送のために伝送バンド帯は波長の長い方向へ着実に移行してきた。
これらの光ファイバはより大きな有効面積をもち、またしばしば必要な減衰レベルに収まらない傾向がある。
さらにそのような光ファイバは、偏波分散(PMD)に敏感に影響されることがある。
図1および図2は、それぞれ製造用巻き枠、およびある値のマイクロベンドを与えるべく試験的に心棒に巻いた代表的な12心光ファイバ・リボンの減衰スペクトルの比較を示す。図1および図2は、L−およびU−バンド帯近傍で減衰レベルの顕著な増加と変動を示す。
すなわち外側のポリマー層およびその外層とガラス光ファイバの間に配置された少なくとも一つの軟らかい緩衝層であって、その緩衝層は低いガラス転移温度を持つポリマーで構成され、好ましくは0℃〜-60℃の温度範囲で熱的に誘起される光通信媒体のマイクロベンド損失を約0.5db/km以下に保持するに十分な厚さを有している。
さらにマイクロベンド損失を0.5dB/km以上少なくし、0℃〜-60度の温度範囲外でも効率よく動作可能であることが望ましい。さらにカインらのケーブルのマイクロベンド損失は、信号波長が約1300ナノメータ(nm)の時に低減されるが、より広い温度範囲と1300ナノメータ(nm)より長い波長域でマイクロベンド損失が減少することが望ましい。
このように産業界にはファイバのマイクロベンド/変形に関連する前述の、あるいはその他の特性の不十分さ、不足に対する果てのない要求がある。
尚、本願発明の好ましい実施例において、前記アンダーコートは軟らかいコーティングであり、オーバーコートはより硬いコーティングでもよい。
このようにしてなる本願発明の光ファイバ伝送における損失緩衝方法によれば、光ファイバ伝送に際してその光損失を低減できる。
このようにしてなる本願発明の光ファイバ伝送における偏波分散の低減方法によれば、光ファイバ伝送に際してその偏波分散を低減できる。
尚、図面の構成要素は必ずしも寸法通りではなく、代わりに本願発明の本質を明瞭に例示するために強調していることもある。さらに参照図においては、いくつかの図面にまたがって対応する部分を数字で示している。
本願発明は光ファイバ・リボン構造において、マトリックス・コーティングが二重、あるいは多重層のもの、およびそのリボン構造のケーブルを含む。
好ましくは、その層は少なくとも1つの比較的軟らかい内側の層と、少なくとも1つの比較的硬い外側の層を含む。それは、光ファイバの構造でしばしば使われる1次、および2次コーティングに類似している。マトリックス層の重要な特性は、それらの厚さの比、弾性率の比、およびそれらのガラス転移温度(Tg)の違いである。
図3は、本願発明の光ファイバ・リボン10の実施例の横断面図を示す。光ファイバ・リボン10は少なくとも2心の光ファイバ11、1次アンダーコート13、および少なくとも1つの2次オーバーコート12を含む。好ましくは、光ファイバ11はその外側の層が互いに接するようにして水平に配される。光ファイバ11の周囲には、それぞれの光ファイバ11を被覆し、かつその間の隙間を埋める1次のアンダーコート材13が配される。アンダーコート13の上、および周囲にはオーバーコート12が配される。
図3の光ファイバ・リボン10は12心の光ファイバ・リボンを示すが、本願発明の光ファイバ・リボン10としては何心の光ファイバのものでもよく、2心、4心、6心、8心、12心、および/あるいは24心を含むが、これに限定されるものではない。
好ましい実施例において、アンダーコートの総厚23は約300ミクロン(μm)であり、その結果であるリボン総厚24は約340ミクロン(μm)である。
また対応するtanδ(δtan)曲線を図7に示す。図7のtanδのピークは、一般的には材料のガラス転移温度を示し、その温度で材料はゴム状からガラス状態に変化する。
例えば、上記のようにUV硬化型のマトリックスAは、樹脂、希釈材と光反応開始剤からなる混合物であってもよい。樹脂には、脂肪族、あるいは芳香族ウレタン・アクリレ−ト、および/あるいはエポキシ・アクリレ−ト/メタクリレ−トが含まれる。
光反応開始剤としては、例えば1−ヒドロキシル基フェニルケトン、2−エトキシアセトフェノン、アセトフェノン、ベンゾフェノン、ベンゾイン、アントラキノン、およびベンジル・ジメチル・ケタールなどのケトン化合物であってもよい。
マトリックスAは、例えば約50-90重量%の樹脂、約5-10%の希釈材、および約1-10%の光反応開始材を含む。マトリックス材の剥離特性を改善するためにシリコン、あるいはフッ素原子を含む添加物を加えてもよい。適当な材料の実例として、イリノイ州エルジンのDSM Desotech社により製造、販売されるDSM9−109TMがある。
本願発明は、決してこの材料に限定されるものではなく、むしろ本願明細書において一覧に示す仕様を満たすどのようなマトリックス材も含まれる点に留意する必要がある。
ゴム状のアンダーコート13は、外部および/あるいは熱的負荷を受けるときに、それがガラス状の材料に加えられるよりもより効果的な緩衝効果を光ファイバにもたらす。
好ましい実施例においては、オーバーコート12とアンダーコート13は、ガラス転移温度Tgの大きな違い、および大きな弾性率比をもつ2つの異なるUVアクリル酸塩材である。
本願発明の好ましい実施例においては、アンダーコート13のTgは約-60℃から約120℃の範囲にある。またアンダーコート13のTgは約-43℃から約85℃の範囲であってもよい。好ましくはオーバーコート12はより高いTgを持ち、光ファイバケーブルが作動する、より広い温度範囲に対応するためにTgを上積みする。
光ファイバ11と、好ましくは「ゴム質の状態の」アンダーコート13とがガラス質のより硬い外側のシェルによって保護されるようオーバーコート12はTg以下の温度で作動させることが望ましい。したがって2つのコーティングのガラス転移温度は約200℃くらい異なることもあり得る。
アンダーコート13の弾性率は、室温において約1メガパスカル(MPa)から1ギガパスカル(GPa)までの幅広い範囲の値を取り得る。
オーバーコート12の弾性率は、約10メガパスカル(MPa)から1ギガパスカル(GPa)までの幅広い範囲の値を取り得る。
・総オーバーコート厚さ(24): 340ミクロン(μm)
・オーバーコートに対するアンダーコートの比(22:21): 1.25 ・オーバーコート・マトリックスに対するアンダーコートの弾性率の比: 1.00
図9に、さらには図10に明確に詳しく示されるように、本発明の光ファイバ・リボン10のL−バンド帯における減衰は、従来技術による一層マトリックスの12心光ファイバ・リボンと比較して約0.09デシベル/キロメートル(dB/km)低減される。
このように、光ファイバ・リボンの多層マトリックス設計は、減衰を低減し、伝送損失、特にマイクロベンド現象に起因するより高い波長での伝送損失を緩衝すると結論付けることが出来る。
好ましい実施例の方法により提供される2つのマトリックス・コーティングはアンダーコート13、およびオーバーコート12を含む。アンダーコート13は個々の光ファイバ11をコートし、かつ光ファイバの間の隙間を埋める。そして、オーバーコート12は、アンダーコート13の上、およびその周囲に配されて光ファイバ・リボン10を形成する。
光ファイバ・リボン10のアンダーコート13、およびオーバーコート12は上記の特性を備えている。好ましい実施例においては、アンダーコート13とオーバーコート12は光ファイバ11の波長帯域がL−バンド、つまり約1625nmで作動するとき、減衰を少なくとも0.09dB/km低減する。
さらに、二重、あるいは多重マトリックス設計は、業界で言われる光ファイバのミッド・スパン・アクセス要求をに適うものである。
さらに、二重、あるいは多重マトリックス・リボン設計は、業界標準の単心、あるいは多心融着接続の要求にも適している。このように、本発明のリボン設計は損失を軽減するだけでなく、業界標準に沿いながら、他の多くの利点を有する。
11 光ファイバ
12 オーバーコート
13 アンダーコート
Claims (11)
- 外側のジャケットと、該外側のジャケット内に配された光ファイバ・リボン(10)とを有していて、前記リボンは1本以上の光ファイバ(11)からなり、該光ファイバ・リボンは光ファイバの上に少なくとも2つの異なるマトリックス・コーティング(12、13)が配されていて、該コーティングが互いに異なる特性をもち、さらに該2つのマトリックス・コーティングがアンダーコート(13)とオーバーコート(12)とからなっていて、アンダーコートはおおよそ-60℃からおおよそ120℃の範囲にわたるガラス転移温度を有し、オーバーコートはおおよそ90℃からおおよそ150℃の範囲にわたるガラス転移温度を有することを特徴とする光ファイバケーブル。
- 前記光ファイバ(11)は、波長帯域がC−バンド、L−バンド、およびU−バンドの少なくともひとつにおいて伝送することを特徴とする請求項1記載の光ファイバケーブル。
- 前記アンダーコート(13)が個々の光ファイバ(11)をコートし、かつ光ファイバの隙間を充填していて、かつオーバーコート(12)がアンダーコートの上、および周囲に配され、それによって光ファイバ・リボン(10)を形成していることを特徴とする請求項1記載の光ファイバケーブル。
- 前記アンダーコート(13)は軟らかいコーティングであり、オーバーコート(12)は硬いコーティングであり、そのアンダーコートとオーバーコートはそれらのガラス転移温度に大きな差を有し、2つのコーティングのガラス転移温度の差は最高でおおよそ200℃までであることを特徴とする請求項3記載の光ファイバケーブル。
- 前記アンダーコートのガラス転移温度が前記オーバーコートのガラス転移温度よりも低いことを特徴とする請求項4記載の光ファイバケーブル。
- 前記アンダーコート(13)と前記オーバーコート(12)とがそれぞれ異なる弾性率を持ち、室温におけるアンダーコートの弾性率がおおよそ1メガパスカル(MPa)からおおよそ1ギガパスカル(GPa)の範囲であり、かつ室温におけるオーバーコートの弾性率がおおよそ10MPaからおおよそ1GPaの範囲であることを特徴とする請求項3記載の光ファイバケーブル。
- 室温における前記オーバーコートの弾性率に対する前記アンダーコートの弾性率の比がおおよそ1.000からおおよそ0.005の範囲にあることを特徴とする請求項6記載の光ファイバケーブル。
- 前記アンダーコート(13)と前記オーバーコート(12)はそれぞれ光ファイバ全体にわたるカバーを形成し、かつアンダーコートのカバー(22)は、オーバーコートのカバー(21)とは異なる厚さであり、かつオーバーコートによるカバーに対するアンダーコートによる光ファイバのカバーの比がおおよそ0.5からおおよそ2.0の範囲にあることを特徴とする請求項1記載の光ファイバケーブル。
- 前記アンダーコートの厚さがおおよそ300ミクロンであり、総リボン厚さがおおよそ340ミクロンであることを特徴とする請求項3記載の光ファイバケーブル。
- 光ファイバ・リボンにおいて、該リボンが複数の光ファイバからなり、該光ファイバ・リボンは光ファイバの上に少なくとも2つの異なるマトリックス・コーティングが配され、それらのコーティングが互いに異なる特性をもち、さらにその2つのマトリックス・コーティングがアンダーコートとオーバーコートとからなり、アンダーコートはおおよそ-60℃からおおよそ120℃の範囲にわたるガラス転移温度を有し、オーバーコートはおおよそ90℃からおおよそ150℃の範囲にわたるガラス転移温度を有し、かつ波長帯域がC−バンド、L−バンド、およびU−バンドの少なくともひとつにおいて伝送することを特徴とする光ファイバ・リボンを設けることからなる光ファイバ伝送における損失緩衝方法。
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