JP2004108946A - ドップラ式超音波流量計、ドップラ式超音波流量計を用いた流量計測方法およびコンピュータプログラム - Google Patents
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Abstract
【構成】被測定流体中の音速をリアルタイムで算出可能な音速算出ユニットをドップラ式超音波流量計の超音波送信手段に近接させて備える。ドップラ式超音波流量計の流体速度分布測定手段は、音速算出ユニットが算出した被測定流体中の音速を用いて流速分布を測定する。超音波送信手段における超音波トランスジューサが兼ねた超音波の発振部と、その発振部とは別体に形成した超音波の受信部とを備えてもよいし、超音波の入射角度を算出する入射角度算出手段を備えてもよい。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、測定領域の流速分布から被測定流体の流量を時間依存で瞬時に測定することが可能なドップラ式超音波流量計およびそれに関連する技術に関する。
【0002】
【先行技術】
非接触で流量を測定可能であるドップラ式超音波流量計については、さまざまな技術が提供されている。(例えば、特開2000−97742号)
【0003】
【特許文献1】
特開2000−97742号
【0004】
この技術は、配管内を流れる被測定流体の流速分布を測定し、時間的に変動する過渡時の流量を応答性に優れている。また、流体の流れが充分に発達していない箇所や流れが三次元になっている場所、例えばエルボ配管やU字状の反転配管のように曲げられた配管の直後でも、被測定流体の流量を効率的に精度よく瞬時に測定できる。それ以前に提供されていた超音波流量計と比較した場合、実験値や経験値などから割り出された「流量補正係数」がなくても正確な測定が可能であるという特徴があり、大きく評価されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
さて、上述のドップラ式超音波流量計が流量の算出に用いる流体中の音速に関しては、経験値、実験値を「定数」として用いたり、テーブルを予め記憶させておいて引用していた。
一方、流体中の音速は、流体の状態に大きく依存する。流体の状態が高温、高圧であったり、気泡が混入していたりすると、実際の音速が変動しているはずであるが、その変動を考慮した流量測定が行えない。
また、非ニュートン流体(チョコレートなど)、油脂類などでは当該流体中の音速に関する実測値が少ないため、流量の算出に生じる誤差が大きくなるおそれがある。
更に、上述のドップラ式流量計は、理論値からの誤差が0.2%程度であるため、0.37%の誤差であっても無視できない。そこで、流体中の音速に基づく誤差をゼロに近づけるための技術が望まれている。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、被測定流体中の音速を経験値や実験値に依存することなくリアルタイムで計測し、その計測結果を用いて流量を計測することにより、より正確な流量を計測する技術を提供することにある。
請求項1から請求項5記載の発明の目的は、被測定流体中の音速をリアルタイムで計測し、その計測結果を用いて流量を計測することにより、より正確な流量を計測可能なドップラ式超音波流量計を提供することにある。
また、請求項6から請求項8記載の発明の目的は、被測定流体中の音速をリアルタイムで計測し、その計測結果を用いて流量を計測することにより、より正確な流量を計測可能な方法を提供することにある。
また、請求項9から請求項11記載の発明の目的は、被測定流体中の音速をリアルタイムで計測し、その計測結果を用いて流量を計測することにより、より正確な流量を計測可能なコンピュータプログラムを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記した課題を解決するため、本願では以下の発明を開示する。
【0008】
(請求項1)
請求項1記載の発明は、所要周波数の超音波パルスを超音波トランスジューサから測定線に沿って流体配管内の被測定流体中へ入射させる超音波送信手段と、被測定流体に入射された超音波パルスのうち測定領域から反射された超音波エコーを受信し、測定領域における被測定流体の流速分布を測定する流体速度分布測定手段と、 前記被測定流体の流速分布に基づいて、前記測定領域における被測定流体の流量を演算する流量演算手段とを備えて被測定流体の流量を測定するドップラ式超音波流量計であって、 被測定流体中の音速をリアルタイムで算出可能な音速算出ユニットを前記超音波送信手段に近接させて備え、 前記流体速度分布測定手段は、音速算出ユニットが算出した被測定流体中の音速を用いて流速分布を測定することとしたドップラ式超音波流量計に係る。
ここで、音速算出ユニットにつき「超音波送信手段に近接させて備え」るとは、ドップラ式超音波流量計の測定領域と同等の測定流体が流れる位置であることをその趣旨とする。
【0009】
(用語説明)
「流量演算手段」は、流量をm(t)とするとき、
【数1】
の演算を行う手段である。
また、上記の式(1)から、流体配管を流れる時間tの流量m(t)は、次式に書き換えることができる。
【数2】
【0010】
なお、配管内を流れる被測定流体の流れが、管軸方向の流れで半径方向や角度θの流れvr,vθを無視できるとすると、vx>>vr=vθとなり、流量計測は簡素化され、次式で表わされる。
【数3】
ここで、αとは、超音波トランスジューサから発振される超音波の入射角度、すなわち管壁への垂線に対してなす角度である。
【0011】
(作用)
まず、被測定流体中の音速をリアルタイムで算出可能な音速算出ユニットが、超音波送信手段の近傍となるように設置する。
続いて、超音波送信手段が、所要周波数の超音波パルスを超音波トランスジューサから測定線に沿って流体配管内の被測定流体中へ入射させる。被測定流体に入射された超音波パルスは、被測定流体中を流れる気泡や固形物などにぶつかると反射する。反射した超音波パルスのうち、測定領域から反射された超音波エコーを受信し、ドップラー効果を利用して流体速度分布測定手段が測定領域における被測定流体の流速分布を測定する。
一方、音速算出ユニットは、被測定流体中の音速をリアルタイムで算出する。流量演算手段は、音速算出ユニットにて算出された音速を用いて前記測定領域における被測定流体の流量を計測する。
【0012】
(請求項2)
請求項2記載の発明は、請求項1に記載のドップラ式超音波流量計を限定したものであり、
音速算出ユニットは、超音波送信手段における超音波トランスジューサが兼ねた超音波の発振部と、 その発振部とは別体に形成した超音波の受信部とを備えて形成したドップラ式超音波流量計に係る。
すなわち、流速分布を測定するために発振する超音波と、音速を測定するために発振する超音波とを兼ねるのである。
【0013】
(作用)
超音波の発振部は、流速分布を測定するために超音波を発振するが、その発信された超音波は、音速算出ユニットにおいて、音速を測定するための超音波としても使用される。このため、装置が簡略化される。
【0014】
(請求項3)
請求項3記載の発明は、請求項2に記載のドップラ式超音波流量計を限定したものであり、
超音波の入射角度を算出する入射角度算出手段を備えたドップラ式超音波流量計に係る。
【0015】
(用語説明)
「入射角度算出手段」とは、受信部の座標検出手段や、発振部と受信部との離間距離や配管の内径や直径などから超音波の入射角度を算出する手段である。前述した式3にて示したように、超音波の入射角度αは、流体配管を流れる時間tの流量m(t)の算出に必要である。
【0016】
(作用)
入射角度算出手段が超音波の入射角度を算出し、流量演算手段は、算出された入射角度を用いて流量を演算する。ここにおいて、入射角は配管材質の音速及び流体の音速からスネルの法則を用いて計算されることが多いが、入射角度を調整できる機構を備えている場合、その機構が自ら算出するのではなく、入射角度算出手段が超音波の入射角度を算出するため、客観的である。
【0017】
(請求項4)
請求項4記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれかに記載のドップラ式超音波流量計を限定したものである。
すなわち、音速測定ユニットは、受信部を発振部に対して移動させる受信部移動機構と、 受信部によって受信した超音波の強度を測定可能な超音波強度測定機構とを備え、 その超音波強度測定機構と受信部移動機構とを用いて超音波の強度が最大となる位置へ受信部を移動させることとしたドップラ式超音波流量計に係る。
【0018】
(作用)
受信部移動機構は、受信部を発振部に対して移動させることができ、超音波強度測定機構は、受信部によって受信した超音波の強度を測定可能である。両者がフィードバック制御しあいながら、超音波の強度が最大となる位置へ受信部を移動させる。これによって、超音波が速度を持った媒質を通過することによる位置の変化を補正することができる。
【0019】
(請求項5)
請求項5記載の発明は、請求項1記載のドップラ式超音波流量計を限定したものである。
すなわち、音速算出ユニットは、超音波の発振部と受信部とを一体とした受発振部として形成するとともに、 その受発振部から発振した超音波が受発振部とは異なる位置に反射してくる場合に、その反射波を受発振部にて受信できるようにするための音響レンズユニットを備えたドップラ式超音波流量計に係る。
【0020】
(用語説明)
「音響レンズ」とは、探触子の圧電素子より前面に配置してある構造体であり、凸面形状を採用することにより探触子から出た超音波を収束させる機能を有する。一般的には、生体での音速に比べ遅い音速約1000m/secのシリコンにて製造しており、凸面形状をとることにより探触子から出た超音波を収束させることができる。
「ユニット」としているのは、受発振部の位置を音響レンズの焦点位置へセッティングしたり、レンズ角度を調整したりする機構を含む趣旨である。更に、超音波の屈折率や大きさを異ならせた複数の音響レンズを備えている場合には、それらの中から適正な屈折率や大きさの音響レンズを抽出したりセッティングしたりする機構などを含む。
「音響レンズ」には、一般には、球面の一部をなす表面を有する音響レンズ(球面レンズ)、いわゆる「かまぼこ型音響レンズ」(円筒形の曲面の一部をなす表面を有するレンズ)などがあり、本請求項の発明では、必要に応じて組み合わせて用いる場合も含む。
【0021】
(作用)
音速算出ユニットにおいては、超音波の発振部と受信部とを一体とした受発振部として形成している。このため、受発振部の設置場所は、超音波の発振部と受信部とが別体で形成されている場合に比べて小さくて済む。
その受発振部から発振した超音波が受発振部とは異なる位置に反射してくる場合には、修正用音響レンズユニットによってその反射波を受発振部にて受信できるように収束させる。そのため、設置場所が限られているような場合でも、音速値を測定可能である。
【0022】
(請求項6)
請求項6記載の発明は、所要周波数の超音波パルスを超音波トランスジューサから測定線に沿って流体配管内の被測定流体中へ入射させる超音波送信手段と、被測定流体に入射された超音波パルスのうち測定領域から反射された超音波エコーを受信し、測定領域における被測定流体の流速分布を測定する流体速度分布測定手段と、 前記被測定流体の流速分布に基づいて、前記測定領域における被測定流体の流量を演算する流量演算手段とを備えて被測定流体の流量を測定するドップラ式超音波流量計を用いた流量計測方法に係る。
すなわち、超音波送信手段に近接させて音速測定ユニットを設置する設置手順と、 音速測定ユニットによって音速を測定する音速測定手順と、 音速測定手順によって測定された音速を用いて流速分布を測定する流速分布測定手順とを備えた流量計測方法である。
【0023】
(請求項7)
請求項7記載の発明は、所要周波数の超音波パルスを超音波トランスジューサから測定線に沿って流体配管内の被測定流体中へ入射させる超音波送信手段と、超音波送信手段における超音波トランスジューサが兼ねた超音波の発振部と、その発振部とは別体に形成した超音波の受信部とを備えた音速算出ユニットと、 被測定流体に入射された超音波パルスのうち測定領域から反射された超音波エコーを受信し、測定領域における被測定流体の流速分布を測定する流体速度分布測定手段と、 前記被測定流体の流速分布に基づいて、前記測定領域における被測定流体の流量を演算する流量演算手段とを備えて被測定流体の流量を測定するドップラ式超音波流量計を用いた流量計測方法に係る。
すなわち、超音波送信手段に近接させて音速測定ユニットを設置する設置手順と、 音速測定ユニットによって音速を測定する音速測定手順と、 超音波の入射角度を算出する入射角度算出手順と、 入射角度算出手順によって算出された超音波の入射角度と音速測定手順によって測定された音速とを用いて流速分布を測定する流速分布測定手順とを備えた流量計測方法である。
【0024】
(請求項8)
請求項8記載の発明は、請求項6または請求項7のいずれかに記載の流量計測方法を限定したものである。
すなわち、音速測定ユニットは、発振部とは別体に形成した超音波の受信部と、 その受信部を発振部に対して移動させる受信部移動機構と、 受信部によって受信した超音波の強度を測定可能な超音波強度測定機構とを備えており、 音速測定手順には、超音波強度測定機構と受信部移動機構とを用いて超音波の強度が最大となる位置へ受信部を移動させる受信部移動手順を含んだ流量計測方法である。
【0025】
(請求項9)
請求項9記載の発明は、所要周波数の超音波パルスを超音波トランスジューサから測定線に沿って流体配管内の被測定流体中へ入射させる超音波送信手段と、被測定流体に入射された超音波パルスのうち測定領域から反射された超音波エコーを受信し、測定領域における被測定流体の流速分布を測定する流体速度分布測定手段と、 前記被測定流体の流速分布に基づいて、前記測定領域における被測定流体の流量を演算する流量演算手段とを備えて被測定流体の流量を測定するドップラ式超音波流量計を用いた流量計測用コンピュータプログラムに係る。
そのプログラムは、音速測定ユニットによって音速を測定する音速測定手順と、 音速算出ユニットが算出した被測定流体中の音速を用いて流速分布を測定する流速分布測定手順とをコンピュータに実行させるためのプログラムである。
【0026】
(請求項10)
請求項10記載の発明は、所要周波数の超音波パルスを超音波トランスジューサから測定線に沿って流体配管内の被測定流体中へ入射させる超音波送信手段と、 超音波送信手段における超音波トランスジューサが兼ねた超音波の発振部と、 その発振部とは別体に形成した超音波の受信部とを備えた音速算出ユニットと、 被測定流体に入射された超音波パルスのうち測定領域から反射された超音波エコーを受信し、測定領域における被測定流体の流速分布を測定する流体速度分布測定手段と、 前記被測定流体の流速分布に基づいて、前記測定領域における被測定流体の流量を演算する流量演算手段とを備えて被測定流体の流量を測定するドップラ式超音波流量計を用いた流量計測用コンピュータプログラムに係る。
そのプログラムは、音速測定ユニットによって音速を測定する音速測定手順と、 超音波の入射角度を算出する入射角度算出手順と、 入射角度算出手順によって算出された超音波の入射角度と音速測定手順によって測定された音速とを用いて流速分布を測定する流速分布測定手順とをコンピュータに実行させるためのプログラムである。
【0027】
(請求項11)
請求項11記載の発明は、請求項9または請求項10のいずれかに記載のコンピュータプログラムを限定したものである。
まず、音速測定ユニットは、発振部とは別体に形成した超音波の受信部と、 その受信部を発振部に対して移動させる受信部移動機構と、 受信部によって受信した超音波の強度を測定可能な超音波強度測定機構とを備えている。そして、音速測定手順には、超音波強度測定機構と受信部移動機構とを用いて超音波の強度が最大となる位置へ受信部を移動させる受信部移動手順を含んだコンピュータプログラムである。
【0028】
請求項9ないし請求項11に係るコンピュータプログラムを、記録媒体へ記憶させて提供することもできる。ここで、「記録媒体」とは、それ自身では空間を占有し得ないプログラムを担持することができる媒体であり、例えば、フレキシブルディスク、ハードディスク、CD−ROM、MO(光磁気ディスク)、DVD−ROM、PDなどである。
また、これらの発明に係るプログラムを格納したコンピュータから、通信回線を通じて他のコンピュータへ伝送することも可能である。
なお、汎用的なコンピュータを備えたドップラ式超音波流量計に対して、上記のような各手段を達成可能であるようなプログラムをプリインストール、あるいはダウンロードすることで、請求項1等に係る機能を備えたドップラ式超音波流量計を形成することも可能である。
【0029】
【発明の実施の形態】
本願発明を、図面および実施形態に基づいて更に詳しく説明する。ここで使用する図面は、図1ないし図5である。
【0030】
(図1)
図1は、ドップラ式超音波流量計と、そのドップラ式超音波流量計に近接させて設置した音速算出ユニットとで構成された第一の実施形態を示す。
【0031】
ドップラ式超音波流量計は、流体配管内を流れる被測定流体(液体や気体)の流速分布を測定し、流量を時間依存で瞬時に測定できるものであり、配管内を流れる被測定流体の流速を非接触で測定する超音波速度分布計測ユニット(以下、Udflowユニットという。)を備える。
Udflowユニットは、被測定流体に測定線に沿って所要周波数(基本周波数f0 )の超音波パルスを送信させる超音波送信手段と、被測定流体に入射された超音波パルスの測定領域から反射された超音波エコーを受信し、測定領域における被測定流体の流速分布を測定する流体速度分布測定手段と、被測定流体12の流速分布に基づいて被測定流体の流量を時間依存で求める流量演算手段としてのマイコン、CPU、MPU等のコンピュータと、このコンピュータからの出力を時系列的に表示可能な表示装置とを有する。
なお、超音波送信手段は、被測定流体に入射された超音波パルスの測定領域から反射された超音波エコーを受信する受信機を兼ねている。
【0032】
超音波送信手段は、図示を省略しているが、所要周波数の超音波パルスを発振させる超音波トランスジューサと、この超音波トランスジューサを加振させる信号発生器としての加振用アンプとを有する。その加振用アンプは、所要の基本周波数f0の電気信号を発生させる発振器(オッシレータ)と、この発振器からの電気信号を所定の時間間隔(1/Frpf)ごとにパルス状に出力するエミッタ(周波数Frpf)とを備えている。そして、この信号発生器である加振用アンプから所要の基本周波数f0のパルス電気信号が超音波トランスジューサへ入力される。
【0033】
超音波トランスジューサは、パルス電気信号の印加により基本周波数f0の超音波パルスが測定線に沿って発振せしめられる。超音波パルスは、例えばパルス幅5mm程度で拡がりをほとんど持たない直進性のビームである。
超音波トランスジューサは送受信器を兼ねており(図中、「発信機兼受信機」と示している)、超音波トランスジューサは発振された超音波パルスが流体中の反射体に当って反射される超音波エコーを受信するようになっている。ここで反射体とは、被測定流体中に一様に含まれる気泡であったり、アルミニウムの微粉末等のパーティクルであったり、または被測定流体とは音響インピーダンスが異なる異物である。
【0034】
超音波トランスジューサに受信された超音波エコーは、図示を省略した反射波レシーバーにて受信され、その反射波レシーバーにてエコー電気信号へ変換される。このエコー電気信号は、増幅器で増幅された後、AD変換器を通ってデジタル化される。そして、デジタル化されたデジタルエコー信号が流速分布計測回路を備えた流速計算装置に入力される。
流速計算装置には、発振用アンプからの基本周波数f0の電気信号がデジタル化されて入力され、両信号の周波数差からドップラシフトに基づく流速の変化を計測し、測定線に沿う測定領域の流速分布を算出している。測定領域の流速分布を超音波の入射角度αで較正することによって、流体配管の横断面における流速分布を計測することができる。
【0035】
さて、音速測定ユニットは、ドップラ式超音波流量計と異なり、超音波の発振部と受信部とを別々に備えている。
発振部となる発信機は、所要の基本周波数f0の電気信号を発生させる発振器と、この発振器からの電気信号を所定の時間間隔(1/Frpf)ごとにパルス状に出力するエミッタ(周波数Frpf)とを備えている。
図中、受信部たる受信機は、実線と想像線とで描いてあるが、受信機が発信機と配管を挟むように配管の反対側に設置する場合を想像線としている。配管の反対側に設置する場合は、配管の材質などによって反射波が弱いような場合などに有効な設置方法となる。
【0036】
以下、実線で描いた受信機の場合を説明する。
受信機には、受信機を発信機の固定位置に対して移動させる受信部移動機構を備えている。この受信部移動機構は、図示を省略しているが、例えば、配管にガイドレールを取り付けて受信器が直線上を移動するようにするとともに、受信器を少しずつ確実に動かすために、ねじが回転する方式の自動移送装置を取り付けることによって形成する。
また、図示を省略しているが、受信した超音波の強度を測定可能な超音波強度測定機構を備えている。そして、その超音波強度測定機構と受信部移動機構とを用いて超音波の強度が最大となる位置へ受信部を移動させる。
【0037】
受信機が受信した反射波は、増幅器で増幅された後、AD変換器を通ってデジタル化される。そして、デジタル化されたデジタルエコー信号を用いて音速計算装置が音速を算出する。この算出は、超音波の発振受信を連続的に行えば、リアルタイムで行うことができる。
算出された音速は、ドップラ式超音波流量計に対して出力され、流量、流速分布などをリアルタイムで算出するのに用いられる。したがって、これまでのドップラ式超音波流量計において、被測定流体中の音速を経験値や実験値では対応できない音速の変動に伴って発生していた測定誤差を吸収することができ、更なる精度向上に貢献する。
【0038】
(図2)
図2は、ドップラ式超音波流量計と、そのドップラ式超音波流量計に近接させて設置した音速算出ユニットとで構成された第二の実施形態を示す。第一の実施形態と大きく異なるのは、音速算出ユニットにおける発信機を、ドップラ式超音波流量計における発信機兼受信機と兼ねている点である。
音速算出ユニットにおける発信機が省略されただけでなく、第一の実施形態では音速測定ユニットにて独自に備えていたAD変換器も、ドップラ式超音波流量計のAD変換器と兼用としている。更に、音速の算出を独自に行っていたコンピュータも省略し、ドップラ式超音波流量計のコンピュータと兼用としている。
【0039】
第二の実施形態では、ドップラ式超音波流量計が備えている各種の機能や装置に依存することによって音速算出ユニットを簡略化している。そのため、装置全体がシンプルとなる。一方、音速を算出するコンピュータを独自に設けていないので、第一の実施形態と比べると、ドップラ式超音波流量計のコンピュータへの負担が大きく、測定頻度を粗くするなどの対応が必要となる場合も出てくる。
【0040】
(図3)
図3は、ドップラ式超音波流量計と、そのドップラ式超音波流量計に近接させて設置した音速算出ユニットとで構成された第三の実施形態を示す。第二の実施形態と大きく異なるのは、音速算出ユニットにおける受信機とドップラ式超音波流量計における発信機兼受信機とによって、超音波の入射角度αを算出することとしている点である。
音速算出ユニットにおける受信機に備えられた受信部移動機構には、ドップラ式超音波流量計における発信機兼受信機に対する座標検知手段を備えており、発振部と受信部との離間距離や配管の内径や直径などから超音波の入射角度αを算出する。このため、客観的である。
【0041】
(図4)
図4は、音速算出ユニットのみを取り出して説明している。この音速算出ユニットが、第一から第三の実施形態にて説明した音速算出ユニットと大きく異なる点は、発振器が受信器を兼ねている点である。このようなことが可能なのは、受信器を兼ねた発振器と配管の外表面との間に、音響レンズを設置しているからである。その音響レンズの焦点位置には、受信器が位置するようにし、発振器が発する超音波の方向と配管の軸方向とが垂直になるように、発振器を設置固定する。
【0042】
配管の半径 が300mm、流速 が40m/s、音速 が490m/s[560K(287℃)、7.1Mpaの飽和蒸気]、壁面あらさが0.03mmである場合に、反射波のずれ を算出してみると、102.7mmとなる。しかし、直径250mmの音響レンズを介すると、受信器を兼ねた発振器において反射波を受信できた。
このような音速算出ユニットとドップラ式流量計とを連動させているので、音速の誤差を吸収することができ、更なる精度向上に貢献する。
【0043】
(図5)
図5もまた、音速算出ユニットのみを取り出して説明している。この音速算出ユニットが、図4にて説明した音速算出ユニットと大きく異なる点は、音響レンズをかまぼこ型音響レンズと球面型音響レンズという2種類採用している点である。配管内面及び外面には曲率がある場合、超音波は配管の表面と外面で屈折するとともに、反射する面でも進行方向が変化する。そのために、受信器を兼ねた発振器へ戻ってくる超音波(反射波)は拡散している。
その拡散した反射波をかまぼこ型音響レンズが収束させ、更に球面型音響レンズを介することによって、補正して受信器を兼ねた発振器において反射波を受信できる。
【0044】
【発明の効果】
請求項1から請求項5記載の発明によれば、被測定流体中の音速をリアルタイムで計測し、その計測結果を用いて流量を計測することにより、より正確な流量を計測可能なドップラ式超音波流量計を提供することができた。
また、請求項6から請求項8記載の発明によれば、被測定流体中の音速をリアルタイムで計測し、その計測結果を用いて流量を計測することにより、より正確な流量を計測可能な方法を提供することができた。
また、請求項9から請求項11記載の発明によれば、被測定流体中の音速をリアルタイムで計測し、その計測結果を用いて流量を計測することにより、より正確な流量を計測可能なコンピュータプログラムを提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】第一の実施形態の構成を示す概念図である。
【図2】第二の実施形態の構成を示す概念図である。
【図3】第三の実施形態の構成を示す概念図である。
【図4】音速測定ユニットの構成についての第一例を示す概念図である。
【図5】音速測定ユニットの構成を示す概念図である。
Claims (11)
- 所要周波数の超音波パルスを超音波トランスジューサから測定線に沿って流体配管内の被測定流体中へ入射させる超音波送信手段と、
被測定流体に入射された超音波パルスのうち測定領域から反射された超音波エコーを受信し、測定領域における被測定流体の流速分布を測定する流体速度分布測定手段と、
前記被測定流体の流速分布に基づいて、前記測定領域における被測定流体の流量を演算する流量演算手段とを備えて被測定流体の流量を測定するドップラ式超音波流量計であって、
被測定流体中の音速をリアルタイムで算出可能な音速算出ユニットを前記超音波送信手段に近接させて備え、
前記流体速度分布測定手段は、音速算出ユニットが算出した被測定流体中の音速を用いて流速分布を測定することとしたドップラ式超音波流量計。 - 音速算出ユニットは、超音波送信手段における超音波トランスジューサが兼ねた超音波の発振部と、 その発振部とは別体に形成した超音波の受信部とを備えて形成した請求項1に記載のドップラ式超音波流量計。
- 超音波の入射角度を算出する入射角度算出手段を備えた請求項2に記載のドップラ式超音波流量計。
- 音速測定ユニットは、受信部を発振部に対して移動させる受信部移動機構と、受信部によって受信した超音波の強度を測定可能な超音波強度測定機構とを備え、
その超音波強度測定機構と受信部移動機構とを用いて超音波の強度が最大となる位置へ受信部を移動させることとした請求項1から請求項3のいずれかに記載のドップラ式超音波流量計。 - 音速算出ユニットは、超音波の発振部と受信部とを一体とした受発振部として形成するとともに、
その受発振部から発振した超音波が受発振部とは異なる位置に反射してくる場合に、その反射波を受発振部にて受信できるようにするための音響レンズユニットを備えた請求項1記載のドップラ式超音波流量計。 - 所要周波数の超音波パルスを超音波トランスジューサから測定線に沿って流体配管内の被測定流体中へ入射させる超音波送信手段と、 被測定流体に入射された超音波パルスのうち測定領域から反射された超音波エコーを受信し、測定領域における被測定流体の流速分布を測定する流体速度分布測定手段と、 前記被測定流体の流速分布に基づいて、前記測定領域における被測定流体の流量を演算する流量演算手段とを備えて被測定流体の流量を測定するドップラ式超音波流量計を用いた流量計測方法であって、
超音波送信手段に近接させて音速測定ユニットを設置する設置手順と、
音速測定ユニットによって音速を測定する音速測定手順と、
音速測定手順によって測定された音速を用いて流速分布を測定する流速分布測定手順とを備えた流量計測方法。 - 所要周波数の超音波パルスを超音波トランスジューサから測定線に沿って流体配管内の被測定流体中へ入射させる超音波送信手段と、 超音波送信手段における超音波トランスジューサが兼ねた超音波の発振部と、 その発振部とは別体に形成した超音波の受信部とを備えた音速算出ユニットと、 被測定流体に入射された超音波パルスのうち測定領域から反射された超音波エコーを受信し、測定領域における被測定流体の流速分布を測定する流体速度分布測定手段と、 前記被測定流体の流速分布に基づいて、前記測定領域における被測定流体の流量を演算する流量演算手段とを備えて被測定流体の流量を測定するドップラ式超音波流量計を用いた流量計測方法であって、
超音波送信手段に近接させて音速測定ユニットを設置する設置手順と、
音速測定ユニットによって音速を測定する音速測定手順と、
超音波の入射角度を算出する入射角度算出手順と、
入射角度算出手順によって算出された超音波の入射角度と音速測定手順によって測定された音速とを用いて流速分布を測定する流速分布測定手順とを備えた流量計測方法。 - 音速測定ユニットは、発振部とは別体に形成した超音波の受信部と、 その受信部を発振部に対して移動させる受信部移動機構と、 受信部によって受信した超音波の強度を測定可能な超音波強度測定機構とを備えており、
音速測定手順には、超音波強度測定機構と受信部移動機構とを用いて超音波の強度が最大となる位置へ受信部を移動させる受信部移動手順を含んだ請求項6または請求項7のいずれかに記載の流量計測方法。 - 所要周波数の超音波パルスを超音波トランスジューサから測定線に沿って流体配管内の被測定流体中へ入射させる超音波送信手段と、 被測定流体に入射された超音波パルスのうち測定領域から反射された超音波エコーを受信し、測定領域における被測定流体の流速分布を測定する流体速度分布測定手段と、 前記被測定流体の流速分布に基づいて、前記測定領域における被測定流体の流量を演算する流量演算手段とを備えて被測定流体の流量を測定するドップラ式超音波流量計を用いた流量計測用コンピュータプログラムであって、
そのプログラムは、音速測定ユニットによって音速を測定する音速測定手順と、
音速算出ユニットが算出した被測定流体中の音速を用いて流速分布を測定する流速分布測定手順とをコンピュータに実行させるためのプログラム。 - 所要周波数の超音波パルスを超音波トランスジューサから測定線に沿って流体配管内の被測定流体中へ入射させる超音波送信手段と、 超音波送信手段における超音波トランスジューサが兼ねた超音波の発振部と、 その発振部とは別体に形成した超音波の受信部とを備えた音速算出ユニットと、 被測定流体に入射された超音波パルスのうち測定領域から反射された超音波エコーを受信し、測定領域における被測定流体の流速分布を測定する流体速度分布測定手段と、 前記被測定流体の流速分布に基づいて、前記測定領域における被測定流体の流量を演算する流量演算手段とを備えて被測定流体の流量を測定するドップラ式超音波流量計を用いた流量計測用コンピュータプログラムであって、
そのプログラムは、音速測定ユニットによって音速を測定する音速測定手順と、
超音波の入射角度を算出する入射角度算出手順と、
入射角度算出手順によって算出された超音波の入射角度と音速測定手順によって測定された音速とを用いて流速分布を測定する流速分布測定手順とをコンピュータに実行させるためのプログラム。 - 音速測定ユニットは、発振部とは別体に形成した超音波の受信部と、 その受信部を発振部に対して移動させる受信部移動機構と、 受信部によって受信した超音波の強度を測定可能な超音波強度測定機構とを備えており、
音速測定手順には、超音波強度測定機構と受信部移動機構とを用いて超音波の強度が最大となる位置へ受信部を移動させる受信部移動手順を含んだ請求項9または請求項10のいずれかに記載のコンピュータプログラム。
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JP2011122920A (ja) * | 2009-12-10 | 2011-06-23 | Tokyo Electric Power Co Inc:The | 流速分布計測方法および流速分布計測装置 |
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- 2002-09-18 JP JP2002272237A patent/JP2004108946A/ja active Pending
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