JP2004108257A - 内燃機関の潤滑装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】内燃機関の各部を潤滑してからクランクケース底部71jに落下して溜った潤滑油を、該クランクケース底部に開口したポンプ吸入口から吸入して潤滑油タンク70に送る回収ポンプと、該オイルタンク70から内燃機関各部に潤滑油を供給する供給ポンプと、前記クランクケース内壁から仕切壁が突出してクランク室59に対して区劃される該クランクケースと一体の潤滑油タンク70とを備えた内燃機関の潤滑装置であって、前記潤滑油タンク70の仕切壁上縁73aから越流した潤滑油を前記回収ポンプの吸入口に導く越流油路75が形成された内燃機関の潤滑装置である。
【選択図】 図10
Description
【発明の属する技術分野】
本願発明は、クランクケース底部に落下して溜った潤滑油を回収ポンプにより潤滑油タンクに送り、この潤滑油タンクから内燃機関の各部に供給する内燃機関において、前記潤滑油タンクから越流した潤滑油を前記回収ポンプの吸入口に導く越流油路を備えた内燃機関の潤滑装置に関するものである。
【0002】
【従来技術】
図35に図示されるように、回収ポンプ01により、内燃機関各部02を潤滑してからクランクケース03の底部に落下して溜った潤滑油をオイルクーラ04に通して冷却した後、潤滑油タンク05に送り、この潤滑油タンク05から供給ポンプ06によりオイルフィルター07を経由して、潤滑や冷却を必要とする内燃機関各部02に潤滑油を供給した内燃機関の潤滑装置(特許文献1参照)があった。
図35に図示の従来の内燃機関の潤滑装置では、潤滑油タンク05に充満した潤滑油がクランクケース03の底部と潤滑油タンク05とを仕切る仕切壁08の上縁を越流してクランクケース03内に還流し、該クランクケース03に溜められるため、クランクケース03内のクランク軸(図示されず)等でもって該クランクケース03に溜められた潤滑油が掻き回わされる結果、内燃機関の動力損失が増大し、また、潤滑油ミストの発生が著しくなり、しかも、クランクケース03の底部に潤滑油が落下する迄の時間がかかる惧れがあった。
【0003】
【特許文献1】
特開2001−73736号(の段落【0018】、および【0027】および図4、図9)
【0004】
【解決しようとする課題】
本願発明は、前述した従来のものの不具合を解消した内燃機関の潤滑装置を提供することを課題としている。
【0005】
【課題を解決するための手段および効果】
本願請求項1に係る発明は、内燃機関の各部を潤滑してからクランクケース底部に落下して溜った潤滑油を、該クランクケース底部に開口したポンプ吸入口から吸入して潤滑油タンクに送る回収ポンプと、該オイルタンクから内燃機関各部に潤滑油を供給する供給ポンプと、前記クランクケース内壁から仕切壁が突出してクランク室に対して区劃される該クランクケースと一体の潤滑油タンクとを備えた内燃機関の潤滑装置であって、前記潤滑油タンクの仕切壁上縁から越流した潤滑油を前記回収ポンプの吸入口に導く越流油路が形成されたことを特徴とするものである。
【0006】
請求項1に係る発明では、潤滑油タンクの仕切壁上縁から越流した潤滑油を回収ポンプの吸入口に導く越流油路が形成されているため、クランクケース内のクランク軸や変速歯車等により潤滑油が掻き回わされることがなくなり、動力損失や、潤滑油ミストの発生が阻止され、しかも直ちに潤滑油がクランクケース底部に達することができる。
【0007】
また、請求項2に係る発明では、潤滑油タンク仕切壁と、クランク室および越流油路を仕切る越流油路壁とで前記越流油路が構成されたため、該越流油路が頗る簡単にかつ低コストで構成される。
【0008】
さらに、請求項3に係る発明では、前記潤滑油タンクは、クランクケース外壁に沿って略三日月型に形成されたため、前記越流油路もこれに近い形状に形成され、潤滑油タンク仕切壁を越流した潤滑油が、乱れを起さずに静かに回収ポンプ吸入口に導かれる結果、潤滑油に気泡が発生することが避けられる。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、図面に図示された本願発明に係る内燃機関付き車両用動力装置1の一実施形態について説明する。本実施形態において上下方向とは、車体上下方向を意味し、前方とは車体前方を意味し、後方とは車体後方を意味し、左右とは前方に向った姿勢における左右を意味している。
【0010】
全体構造
図1に図示されるように、前記内燃機関付き車両用動力装置1を搭載した荒地走行用4輪車0では、車体フレーム2の前後に、それぞれ左右1対の前輪3、後輪4が配設され、該内燃機関付き車両用動力装置1より前後方向に指向した伝動軸5の前後端は、図示されない差動装置および前車軸6、後車軸7を介して前記前輪3、後輪4にそれぞれ連結されており、内燃機関付き車両用動力装置1からの出力により、荒地走行用4輪車0は4輪駆動で走行しうるようになっている。
【0011】
また、前記荒地走行用4輪車0は、前方幅中央部にバーハンドル8を備え、該バーハンドル8に結合されたステアリングシャフト9の下端にステアリング機構10が設けられており、バーハンドル8の旋回操作が、ステアリングシャフト9およびステアリング機構10を介して前輪3に伝達され、荒地走行用4輪車0は、左右へ方向変更されるようになっている。
【0012】
さらに、内燃機関付き車両用動力装置1の上方に位置して車体フレーム2に燃料タンク11が据付けられるとともに、その後方にシート12が取付けられ、内燃機関付き車両用動力装置1の前方に、ファン13、オイルクーラ14が順次配設され、内燃機関付き車両用動力装置1の後方に気化器15およびエアクリーナ16が順次配設され、前記前車軸6、後車軸7はショックアブソーバ17を介して車体フレーム2に支持されている。
【0013】
さらにまた、内燃機関付き車両用動力装置1は、図2、図3および図4に図示されるように、4ストロークサイクル内燃機関20と、静油圧式無段変速機100と、変速駆動軸制御装置150とを備え、該4ストロークサイクル内燃機関20は、図1に図示されるように、シリンダ中心軸が前後に関しては鉛直上方に、図3に図示されるように、左右に関しては、車体後方から前方へ見て鉛直上方から僅かに左方に傾いた状態の頭上弁型プッシュロッド式単気筒の内燃機関であり、前記静油圧式無段変速機100は、図4、図5に図示されるように、斜板式油圧ポンプ110と斜板式油圧モータ130とが前後方向の同一軸線上に配置されて、前記4ストロークサイクル内燃機関20のクランク軸28からの回転速度を変速する変速機であり、前記変速駆動軸制御装置150は、前記斜板式油圧モータ130の斜板式油圧ポンプの斜板角度を変更する駆動部材152を往復動させる変速駆動軸151を有している。
【0014】
また、4ストロークサイクル内燃機関20では、図1および図4に図示されるように、クランクケースが、車幅方向に指向した垂直面を合わせ面として前後方向に亘って4個、すなわち前ケースカバー21、前クランクケース22、後クランクケース23、後ケースカバー24に分割されてなり、前後中央の前クランクケース22、後クランクケース23の上方にシリンダブロック25、シリンダヘッド26、ヘッドカバー27が順次重ねられ、これら前ケースカバー21、前クランクケース22、後クランクケース23、後ケースカバー24、シリンダブロック25、シリンダヘッド26、ヘッドカバー27は図示されないボルト等によって相互に一体的に結合されている。
【0015】
さらに、図3(以下図面中で多数の点が符されている部分は、他の部材との合わせ面を意味している)に図示されるように、前後方向に指向してクランク軸28が前クランクケース22、後クランクケース23に回転自在に枢支され(図4参照)、略上下方向に指向したシリンダブロック25のシリンダ孔29にピストン30が摺動自在に嵌装され、該ピストン30に挿入されたピストンピン30aと、クランク軸28のクランクピン28aとに連結杆31の上下端が回転自在に嵌合されており、シリンダ孔29とシリンダヘッド26とピストン30とで囲まれた燃焼室32内に吸入された混合気の燃焼で発生した燃焼ガスの圧力により、クランク軸28が回転駆動されるようになっている。
【0016】
さらに、シリンダヘッド26には、後方に開口する吸気ポート33と、前方に開口する排気ポート34とが形成され、該吸気ポート33、排気ポート34の燃焼室32側開口を開閉自在に閉塞する吸気弁35、排気弁36が設けられ、該吸気ポート33の後方開口部には、前記気化器15、エアクリーナ16(図1参照)が接続されるとともに、前記排気ポート34の前方開口部には、排気管18を介して図示されない排気浄化装置や消音器等が接続され、図3に図示されるように、点火栓39の電極部39aが燃焼室32に臨むように点火栓39がシリンダヘッド26に螺着されている。
【0017】
そして、前記シリンダブロック25、シリンダヘッド26には、それぞれ冷却フィン37、冷却フィン38が形成されており、走行に伴なう走行風とファン13による冷却風とが該冷却フィン37、38に触れて、4ストロークサイクル内燃機関20が冷却されるとともに、後述するように、シリンダブロック25、シリンダヘッド26内を通過する冷却潤滑油によって4ストロークサイクル内燃機関20が冷却されるようになっている。
【0018】
さらにまた、図3に図示されるように、シリンダブロック25、シリンダヘッド26において、シリンダ孔29より右方に位置してシリンダ孔29と略平行に連通孔40が形成されるとともに、該連通孔40の直下に位置して前クランクケース22、後クランクケース23の頂壁に円形のガイド孔41が形成され、これら連通孔40、ガイド孔41の下方延長線に位置して、カム軸43が前クランクケース22、後クランクケース23の仕切壁67,71に設けられたカム軸枢支孔67c,71cに回転自在に枢支され、前記ガイド孔41に摺動自在に嵌装されたバルブリフタ45は、カム軸43のカム44に当接され、シリンダブロック25、シリンダヘッド26、ヘッドカバー27間の当接面と平行でかつ左右方向に指向してシリンダヘッド26に揺動自在に前後1対のロッカアーム46が図4に図示のロッカシャフト42を介して枢支され、該ロッカアーム46の一端部とバルブリフタ45とにプッシュロッド47が介装され、該ロッカアーム46の他端部は前記吸気弁35、排気弁36の頂端に当接され、図4に図示されるように、前記吸気弁35、排気弁36は、その頂端に装着されたバルブスプリングリテーナ48とシリンダヘッド26のバネ受部26aとにバルブスプリング49が介装され、クランク軸28に嵌着されたドライブスプロケット50(図4参照)と、前記カム軸43に嵌着されるとともに該ドライブスプロケット50の2倍の歯数を有する図示されないドリブンスプロケットとに、図示されないチェンが架渡されており、クランク軸28が回転すると、クランク軸28の2回転に対し1回転の割合でカム軸43が回転駆動され、吸気弁35および排気弁36は、通常の4ストロークサイクル内燃機関と同様なバルブタイミングで、クランク軸28の2回転に対応して1回ずつ開閉されるようになっている。
【0019】
また、図4に図示されるように、クランク軸28の後部には、ドライブスプロケット50の後方に位置してバランサー駆動歯車51がクランク軸28に一体に嵌着され、図3に図示されるように、該クランク軸28の右方に位置して前記バランサー駆動歯車51と噛み合うバランサー歯車52がバランサー軸53を介して前記前クランクケース22、後クランクケース23に枢支され、さらにバランサー駆動歯車51の後方に交流発電機であるACG54が配設されて、該クランク軸28の後端部近傍に該ACG54のロータ54aが嵌着され、さらにその後方のクランク軸28の後端部には、リコイルスタータ55が設けられ、クランク軸28の前部には、ポンプ駆動歯車56が一体に嵌着されるとともに、該ポンプ駆動歯車56の前方に位置してクランク軸28の前端に発進クラッチ57が設けられている。
【0020】
さらに、図4に図示されるように、発進クラッチ57の出力部材であるクラッチアウタ57aに駆動歯車58が一体に嵌着され、図3に図示されるように、前記クランク軸28よりやや上方で左方に位置して静油圧式無段変速機100が、図4に図示のように、前クランクケース22、後クランクケース23内に配設され、図5に図示のように、該静油圧式無段変速機100における斜板式油圧モータ130の油圧モータ回転軸131が、前ケースカバー21と後クランクケース23とに回転自在に枢支され、該油圧モータ回転軸131に斜板式油圧モータ130のモータケーシング132が回転自在に枢支され、該油圧モータ回転軸131に回転自在に枢支されている斜板式油圧ポンプ110のポンプケーシング111に従動力歯車101が一体に取り付けられ、図4に図示のように、該従動力歯車101は前記発進クラッチ57の駆動歯車58に噛合されており、発進クラッチ57の駆動歯車58が回転すると、静油圧式無段変速機100における斜板式油圧ポンプ110のポンプケーシング111が油圧モータ回転軸131を中心に回転駆動されるようになっている。
【0021】
そして、図4に図示されるように、歯車変速機160は後クランクケース23と後ケースカバー24とで囲まれた空間内に配設され、静油圧式無段変速機100の油圧モータ回転軸131に歯車変速機160のメイン軸161がスプライン嵌合され、図3に図示されるように、該メイン軸161に対し左下方向上に位置してカウンタ軸162が配置されるとともに、さらに、該カウンタ軸162およびメイン軸161に対し右下方向上に位置して出力軸163が配置され、これらメイン軸161、カウンタ軸162、出力軸163はそれぞれ後クランクケース23、後ケースカバー24に回転自在に枢支され、前記メイン軸161と一体のメイン歯車165に常時噛み合うカウンタ歯車166が前記カウンタ軸162に回転自在に嵌合され、該カウンタ軸162に相対的に回転できないが軸方向へ摺動しうるようにシフター167が嵌装され、該カウンタ軸162と一体のカウンタ出力歯車168と、出力軸163と一体の歯車169とが噛み合わされており、該シフター167が前記カウンタ歯車166に係合するように図示されない切換機構により前方へ摺動すると、カウンタ歯車166とカウンタ軸162とが連結されて、メイン軸161の回転力が出力軸163に伝達されるようになっている。
【0022】
しかも、図4に図示されるように、前記カウンタ軸162には、シフター167とカウンタ出力歯車168との間に位置してリバースカウンタ歯車170が回転自在に嵌装され、図3に図示されるように、メイン軸161とカウンタ軸162とに隣接してリバース軸164が後クランクケース23、後ケースカバー24(図4参照)に回転自在に枢支され、該リバース軸164と一体の一方の入力歯車171はメイン軸161のメイン歯車165に噛み合わされているとともに、該リバース軸164と一体の他方の出力歯車172はカウンタ軸162のリバースカウンタ歯車170に噛み合わされており、シフター167が後方へ摺動すると、カウンタ出力歯車168とカウンタ軸162とが連結されて、メイン軸161の回転力がリバース軸164、カウンタ軸162を介して出力軸163に逆回転状態で伝達されるようになっている。
【0023】
そして、出力軸163の前後両端は、内燃機関付き車両用動力装置1の前後に配設された伝動軸5に連結されており、出力軸163の回転力が伝動軸5および前車軸6、後車軸7を介して前輪3、後輪4に伝達されるようになっている。
【0024】
また、図3に図示されるように、静油圧式無段変速機100の上方向、左側に変速駆動軸制御装置150が配設され、該変速駆動軸制御装置150の変速駆動軸151の中心線と、静油圧式無段変速機100の油圧モータ回転軸131の中心線とを結んだ面と4ストロークサイクル内燃機関20のシリンダ孔29の中心線とのなす角αは、約10°程度の極めて小さな鋭角になっている。
【0025】
さらに、図3、図4に図示されるように、変速駆動軸制御装置150の変速駆動軸151の長手方向中央部分には雄ネジが形成され、該雄ネジの変速駆動軸151に駆動部材152が螺合され、該駆動部材152は、図5に図示されるように、静油圧式無段変速機100における斜板式油圧モータ130のモータ斜板133より2叉状に突出したアーム部134にピン135を介して揺動自在に連結されている。図5に図示されるように、この変速駆動軸151と一体の歯車153は、減速歯車154の小歯車155に噛み合わされ、該減速歯車154の大歯車156は制御モータ157の回転軸158と一体のピニオン歯車159に噛み合わされており、該制御モータ157の正逆転により、前記駆動部材152が前後に駆動されて、斜板式油圧モータ130のモータケーシング132の傾斜角が制御されるようになっている。
【0026】
さらにまた、図3に図示されるように、変速駆動軸制御装置150の変速駆動軸151と斜板式油圧モータ130の油圧モータ回転軸131とを結ぶ面に対し直交した面に沿い斜板式油圧モータ30の左側に位置して変速レシオ検出センサ102が配設されている。
【0027】
潤滑油ポンプ
次に、潤滑油ポンプ60について説明する。
【0028】
前ケースカバー21、前クランクケース22の前方から後方へ向いて見た図6、図7および前後鉛直面に沿って裁断した図4に図示されるように、潤滑油ポンプ60の前後面が前ケースカバー21の後面と前クランクケース22の前面とにそれぞれ密接して、潤滑油ポンプ60は前ケースカバー21、前クランクケース22に一体に取り付けられ、図32、図33にて拡大して図示されるように、該潤滑油ポンプ60は、同一のポンプ回転軸63上に並んだトロコイド型の回収ポンプ61と供給ポンプ62とよりなり、該両回収ポンプ61、供給ポンプ62は、それぞれポンプ回転軸63に嵌着されたインナーロータ61a,62aと、該インナーロータ61a,62aに噛み合うアウタロータ61b,62bと、該アウタロータ61b,62bを回転自在に包持するポンプボディ61c,62cとよりなり、アウタロータ61b,62bは、インナーロータ61a,62aに対して偏心するとともに、その歯数がインナーロータ61a,62aよりも1枚多く形成されている。
【0029】
潤滑油ポンプ60のポンプ回転軸63に一体に嵌着されたポンプ歯車63aは、図4に図示されるように、クランク軸28と一体のポンプ駆動歯車56に噛み合わされており、クランク軸28の回転に伴なってポンプ回転軸63は回転駆動され、回収ポンプ61では、吸入口61dから潤滑油が吸入されて吐出口61eから吐出され、供給ポンプ62では吸入口62dから潤滑油が吸入されて吐出口62eから吐出されるようになっている。
【0030】
クランクケース
4ストロークサイクル内燃機関20のクランクケースを構成する前ケースカバー21、前クランクケース22、後クランクケース23、後ケースカバー24の具体的構造を説明する。
【0031】
図4、図6に図示されるように、前ケースカバー21にはオイルフィルタ64のフィルタケース65が一体的に形成され、該フィルタケース65にフィルタエレメント66(図4参照)が内蔵されており、フィルタケース65の外周部の流入通路65aからフィルタケース65内に流入した潤滑油がフィルタエレメント66にて濾過された後、その中心油路65bに排出されるようになっている。
【0032】
また、図7、図8に図示されるように、前クランクケース22には、前後幅方向略中央に、該前クランクケース22の前後合わせ面と平行な仕切壁67が一体的に形成され、該仕切壁67にクランク軸28を貫通するためのクランク軸孔67aと、クランクケース内の左側に位置した静油圧式無段変速機100を遊嵌するための変速機遊嵌孔67bと、カム軸43を貫通支持するためのカム軸孔67cと、該カム軸孔67cの下方に位置したバランサー軸53を貫通支持するためのバランサ軸孔67dと、前記変速機遊嵌孔67bを挟んだ上下の位置に、変速駆動軸制御装置150の変速駆動軸151を貫通するための変速駆動軸孔67eと、出力軸163を貫通支持するための出力軸孔67fと、さらに、該カウンタ軸孔67fの下方に位置したクランク室連通孔67gと前記回収ポンプ61の吸入口61dに連通する回収ポンプ吸入連通孔67hと、前記供給ポンプ62の吸入口62dに連通する供給ポンプ吸入連通孔67iと、前記回収ポンプ吸入連通孔67hの直下から左方に亘ってストレーナ下方潤滑油溜め67jとが形成されている。
【0033】
さらに、図7に図示されるように、前クランクケース22において、該前クランクケース22の右側壁22a(図7では左側)に沿い所要間隔を存して仕切壁67より前方に突出したタンク仕切壁68が形成されるとともに、図8に図示されるように、該タンク仕切壁68とは位置を異にするが略これに沿って仕切壁67より後方に突出したタンク仕切壁69が形成され、これらタンク仕切壁68およびタンク仕切壁69でもってクランク室59およびオイルタンク室70が仕切られ、これらタンク仕切壁68、タンク仕切壁69より右外側に位置して仕切壁67にタンク連通孔67k(4個所)が形成されている(仕切壁67にはこれ以外の孔はない)。
【0034】
さらにまた、仕切壁67より後方へ突出したタンク仕切壁69には、図8に図示されるように、クランク室59およびオイルタンク室70を仕切る部分より斜右上方(図8では斜左上方)に延長した延長部分69aに切欠き69bが形成され、タンク仕切壁69の上面に溜った潤滑油が切欠き69bより下方へ流れて、ストレーナ下方潤滑油溜め67jに導かれるようになっている。
【0035】
前クランクケース22の下方両側部には、取り付け孔22bがそれぞれ形成されており、該取り付け孔22bと後クランクケース23の下方両側部の取付け孔23bとを貫通する図示されない棒状部材がゴムブッシュ(図示されず)を介して車体フレーム2に一体に取り付けられるようになっている。
【0036】
また、図9、図10に図示されるように、後クランクケース23には、前クランクケース22と同様に、前後幅方向中央に、該後クランクケース23の前後合わせ面と平行な仕切壁71が一体的に形成され、該仕切壁71にクランク軸28を貫通するためのクランク軸孔71aと、静油圧式無段変速機100における斜板式油圧モータ130の油圧モータ回転軸131を回転自在に枢支するための油圧モータ回転軸孔71bと、カム軸43を貫通支持するためのカム軸孔71cと、該カム軸孔71cの下方に位置したバランサー軸53を貫通支持するためのバランサ軸孔71dと、前記メイン軸161と出力軸163との中間でかつ左側に位置したカウンタ軸162を貫通支持するためのカウンタ軸孔71eと、前記油圧モータ回転軸孔71bの下方位置に、出力軸163を貫通支持するための出力軸孔71fと、該出力軸孔71fの斜右下方に位置したクランク室連通孔71gと、前記メイン軸161と出力軸163との中間でかつ右側に位置したリバース軸164を支持するためのリバース軸孔71m(図10のみ図示)とが形成されている。
【0037】
そして、図9に図示されるように、後クランクケース23には、前記クランクケース22のストレーナ下方潤滑油溜め67jに連通するストレーナ下方潤滑油溜め71jが形成されるとともに、該ストレーナ下方潤滑油溜め71jの上方に回収ポンプ吸入連通孔67hに連通する連通部71hが形成され、該ストレーナ下方潤滑油溜め71jと連通部71hとの間の両側切欠き71lにストレーナ85が嵌装されている。
【0038】
さらに、図9に図示されるように、後クランクケース23において、該後クランクケース23の右側壁23a(図9では左側)に沿い所要間隔を存して仕切壁71より前方へ突出したタンク仕切壁72(タンク仕切壁72の先端面が前記前クランクケース22のタンク仕切壁69の後端面に当接しうる)が形成されるとともに、図10に図示されるように、該タンク仕切壁72とは位置を異にするが略これに沿って仕切壁71より後方へ突出したタンク仕切壁73が形成され、これらタンク仕切壁72、タンク仕切壁73でもってクランク室59およびオイルタンク室70が仕切られ、これらタンク仕切壁72、タンク仕切壁73より右外側に位置して仕切壁71にタンク連通孔71k(6箇所)が形成され、図10に図示されるように、タンク仕切壁73の上端部73aは後クランクケース23の頂壁部23cに接続されず、離れており、タンク仕切壁73の上端部73aと後クランクケース23の頂壁部23cとに間隙73bが形成されている。
【0039】
そして、仕切壁71より前方へ突出したタンク仕切壁72には、図9に図示されるように、斜右上方へ弯曲して延長した延長部分72aに切欠き72bが形成されており、タンク仕切壁72の上面に溜った潤滑油が切欠き72bより下方へ流れて、ストレーナ下方潤滑油溜め71jに導かれるようになっている。
【0040】
さらにまた、図10に図示されるように、後クランクケース23の後部では、仕切壁71の後面から後方へ突出した越流油路壁74が、後クランクケース23の頂壁部23cから下方へ垂下し、前記タンク仕切壁73に対し上方かつ左方に位置して所要の間隔を存するように形成され、該越流油路壁74の下方前端74aは仕切壁71のクランク室連通孔71g迄延長しており、タンク仕切壁73と越流油路壁74とで越流油路75が構成されている。
【0041】
そして、図3、図5に図示されるように、変速駆動軸制御装置150の変速駆動軸151の中心軸上にブリーザ室80が配置され、図5、図9、図23および図25に図示されるように、該ブリーザ室80に対応した後クランクケース23の左側上部(図9では右側上部)には、仕切壁71が存在せず、後クランクケース23の後方合わせ面に面一に一致したブリーザ室底壁76が形成され、前記ブリーザ室80を仕切るブリーザ仕切部77がブリーザ室底壁76より前方へ突設され、該ブリーザ仕切部77には図25に図示されるように切欠き部77aが形成されている。
【0042】
また、ブリーザ室底壁76の略中央部から前方へ突出した軸支部76aにネジ孔76bが形成され、図5に図示される断面がL字状をなしたブリーザ蓋78の頂壁78aの外周縁部78bが、図23に図示されるように、後クランクケース23の左側頂壁23dの内周段部23eに当てがわれ、該ブリーザ蓋78の頂壁78aの中央凹部78cに形成された孔を貫通したボルト79が軸支部76aのネジ孔76bに螺着されており、後クランクケース23の左側頂壁23d、ブリーザ室底壁76、ブリーザ仕切部77およびブリーザ蓋78の折曲壁78dでもってブリーザ室80が構成されるようになっている。
【0043】
さらに、ブリーザ室底壁76には開口76bが形成され、図5に図示されるように、該開口76bにブリーザパイプ81の一端が嵌着されており、該ブリーザパイプ81の他端は図示されないパイプ、ホース等で4ストロークサイクル内燃機関20の吸気系に接続されている。
【0044】
さらにまた、図10に図示される後クランクケース23の仕切壁71より後方へ突出したタンク仕切壁73、越流油路壁74の後端面にその先端面が当接しうる図11に図示のタンク仕切壁82、越流油路壁83が、図11に図示されるように後ケースカバー24の前面に前方へ突出して形成されている。
【0045】
そして、後ケースカバー24には、ACG54が嵌装しうる開口24aが形成され、図12に図示されるように、該開口24aの外周後面には、ACG54のケーシング54bが当接しうる当接部24bが形成されている。
【0046】
シリンダブロック、シリンダヘッド
図13は、前クランクケース22の後面と後クランクケース23の前面とが重ね合わされた平面図であって、前クランクケース22、後クランクケース23に形成された開口22p,23pに、図26に図示のシリンダブロック25の連通孔40の開口25pが合致した状態で、前クランクケース22、後クランクケース23のシリンダブロック合せ面22x,23x上に、シリンダブロック25のシリンダ底部合せ面25xが重ねられ、前クランクケース22、後クランクケース23の頂壁の半円状切欠きでシリンダスリーブ挿入孔22r,23rが形成され、該シリンダスリーブに挿入孔22r,23rにシリンダブロック25のシリンダスリーブ25r(図4参照)が嵌合されるようになっている。
【0047】
また、図29は、シリンダブロック25の頂面図で、シリンダブロック25の連通孔40の開口25pに、図30に図示のシリンダヘッド26の連通孔40の開口26pが合致した状態で、シリンダブロック25のシリンダヘッド合せ面25y上に、シリンダヘッド26のシリンダヘッド底部合せ面26yが重ねられ、これらシリンダヘッド26、シリンダブロック25のボルト孔26a,25aを貫通した図示されない4本のボルトの下端ネジが、図13に図示の前クランクケース22、後クランクケース23のボルト孔22q,23qに螺着されることによって、シリンダブロック25、シリンダヘッド26および前クランクケース22、後クランクケース23が相互に一体的に結合されている。
【0048】
さらに、図3に図示されるように、シリンダヘッド26の頂面にヘッドカバー27の外周面に当接され、図示されないボルト等でヘッドカバー27はシリンダヘッド26に一体に結合されている。
【0049】
潤滑油回路
図34を参照して、本実施形態において、4ストロークサイクル内燃機関20内の潤滑油が内燃機関付き車両用動力装置1の各部にそれぞれ供給される潤滑油回路の概略について説明すると、回収ポンプ61の吸入口61dはストレーナ85を介してクランク室59に接続され、該回収ポンプ61の吐出口61eはオイルクーラ14の吸入口14aに接続され、オイルクーラ14の吐出口14bは、ACG54とシリンダブロック25、シリンダヘッド26とに接続されるとともに、オイルタンク室70に接続されている。
【0050】
また、オイルタンク室70の底部に供給ポンプ62の吸入口62dが接続され、該供給ポンプ62の吐出口62eはオイルフィルタ64の吸入口65aに接続され、該オイルフィルタ64の吐出口65bは静油圧式無段変速機100と4ストロークサイクル内燃機関20と発進クラッチ57とにそれぞれ接続される。
【0051】
さらに、回収ポンプ61、供給ポンプ62の各吐出口61e,62eはリリーフ弁86,87を介してクランク室59、オイルタンク室70にそれぞれ接続されている。
【0052】
次に、前ケースカバー21、前クランクケース22、後クランクケース23、後ケースカバー24内に一体的に構成されるクランク室59とオイルタンク室70とは、前クランクケース22の仕切壁67で前後に仕切られた前方部分では、図7に図示の前クランクケース22のタンク仕切壁68と、前ケースカバー21にてタンク仕切壁68に対応して形成されたタンク仕切壁89とで左右に仕切られ、前クランクケース22の仕切壁67と後クランクケース23の仕切壁71とに挟まれた前後中央部分では、図8に図示の前クランクケース22のタンク仕切壁69と、図9に図示の後クランクケース23のタンク仕切壁72とで左右に仕切られ、後クランクケース23の仕切壁71で前後に仕切られた後方部分では、図10に図示のタンク仕切壁73と、図11に図示のタンク仕切壁82とで左右に仕切られている。
【0053】
また、前方部分のクランク室59と前後中央部分のクランク室59とは、図7、図8に図示されるように、前クランクケース22の仕切壁67に形成されているクランク室連通孔67gおよびストレーナ下方潤滑油溜め67jでもって相互に連通され、前後中央部分のクランク室59と後方部分のクランク室59とは、図9、図10に図示されるように、後クランクケース23の仕切壁71に形成されているクランク室連通孔71gとストレーナ下方潤滑油溜め71jでもって相互に連通されている。
【0054】
さらに、前方部分のオイルタンク室70と前後中央部分のオイルタンク室70とは、図7、図8に図示されるように、前クランクケース22の仕切壁67に形成されているタンク連通孔67k(4個所)でもって相互に連通され、前後中央部分のオイルタンク室70と後方部分のオイルタンク室70とは、図9、図10に図示されるように、後クランクケース23の仕切壁71に形成されているタンク連通孔71k(6個所)でもって相互に連通されている。
【0055】
図34に図示された潤滑油回路に即して、前ケースカバー21、前クランクケース22、後クランクケース23、後ケースカバー24、シリンダブロック25およびシリンダヘッド26内に形成された油路を具体的に説明する。
【0056】
回収ポンプ61の吸入口61dは、図6、図7に図示されるように、前クランクケース22の回収ポンプ吸入連通孔67hに接続されており、潤滑油ポンプ60の回転軸63が回転駆動されると、ストレーナ下方潤滑油溜め67j,71jに溜められた潤滑油は、図9に図示されるようにストレーナ85で濾過された後、後クランクケース23の連通部71hから前クランクケース22の回収ポンプ吸入連通孔67hを経由して回収ポンプ61の吸入口61dに流入されるようになっている。
【0057】
また、回収ポンプ61の吐出口61eは、図6、図14に図示されるように、前ケースカバー21の後方の開口21aに接続され、該開口21aは前方に指向した連通路21bを介して前端開口21cに連通され、該開口21cとオイルクーラ14の流入口14aとは図示されないホース、パイプ等で接続されており、回収ポンプ61の吐出口61eより吐出された潤滑油はオイルクーラ14に送られるようになっている。そして、図14に図示されるように、連通路21bから分岐路21dが岐出され、該分岐路21dにリリーフ弁86が介装されており、連通路21b内の潤滑油圧力が所定の設定圧力以上に高圧になると、リリーフ弁86が動作して、分岐路21dから開口21eを介してクランク室59内に戻るようになっている。
【0058】
さらに、オイルクーラ14の吐出口14bは、図示されないホース、パイプ等を介して図6に図示の前ケースカバー21の返戻口21fに接続され、該返戻口21fは、図15に図示されるように、連通路21gを介して開口21hに連通されるとともに絞り21iを介してオイルタンク室70に連通されている。
【0059】
さらにまた、図6、図7に図示されるように、前ケースカバー21の開口21hと前クランクケース22の開口22hとは相互に合致し、図20に図示されるように、該開口22hは連通路22iを介して開口22jに連通されている。
【0060】
そして、図13に図示されるように、前クランクケース22のシリンダブロック合せ面22xに開口した開口22jは、図26に図示のシリンダブロック25のシリンダ底部合せ面25xの開口25jに合致し、図27に図示されるように、該開口25jは垂直連通路25kを介してシリンダブロック25のシリンダヘッド合わせ面25yの開口25lに連通され、図29および図30に図示されるように、該シリンダブロック25の開口25lはシリンダヘッド26の連通路26lに合致し、該連通路26lの上端は、ヘッドカバー27で囲まれた空間内に露出している。
【0061】
また、図26、図27に図示されるように、垂直連通路25kと平行な垂直連通路25nは前後方向の連通路25mで相互に連通され、該垂直連通路25nの上端開口25oは、シリンダヘッド26の開口26oに合致し、該開口26oの上端もヘッドカバー27で囲まれた空間内に露出している。
【0062】
さらに、図27に図示のシリンダブロック25の垂直連通路25nの下端開口25sは、図13に図示の後クランクケース23の開口23sに連通し、図22に図示されるように、該開口23sは、連通路23tを介して開口23uに連通され、該後クランクケース23の開口23uは、図11に図示の後ケースカバー24の開口24uに連通され、該24uは図24に図示されるように、連通路24vを介して開口24wに連通され、該後ケースカバー24の開口24wは、ACG54のカバ54b(図4参照)に設けられた図示されないACG潤滑油噴出口に連通されている。
【0063】
前述したように、回収ポンプ61により、オイルクーラ14に送られて該オイルクーラ14で冷却された潤滑油は、図15に図示の前ケースカバー21の返戻口21fに送られて連通路21gを通過し、絞り21iを介してオイルタンク室70に噴出され、オイルタンク室70内に溜められる。そしてオイルタンク室70内に溜められた冷却潤滑油は、該オイルタンク室70に開口した供給ポンプ吸入連通孔67iより供給ポンプ62の吸入口62dに吸入され、該供給ポンプ62で加圧された圧力潤滑油は供給ポンプ62の吐出口62eから、図16に図示されるように、前ケースカバー21の吐出口21jに送られるようになっている。
【0064】
図16に図示の前ケースカバー21の吐出口21jは、オイルフィルタ64のフィルタケース65の流入路65aに接続され、図4、図19に図示されるように、該フィルタケース65の吐出路65bは、静油圧式無段変速機100の油圧モータ回転軸131の中心孔131aに接続されるとともに、図4、図19に図示の絞り65cを介してクランク軸28の中心孔68bに接続され、図4に図示されるように、該中心孔68bはクラッチ連通孔68cに連通されており、オイルフィルタ64で濾過された冷却潤滑油は静油圧式無段変速機100、クランク軸28に供給されるようになっている。
【0065】
また、図17に図示されるように、前ケースカバー21では、フィルタケース65のフィルタ室とクランク室59(図面で左側)とを連通する連通路65dにリリーフ弁87が介装され、図18に図示されるように、フィルタケース65の吐出路65bより岐出路65eが岐出され、該岐出路65eにリリーフ弁88が介装されるとともに、該岐出路65eからクランク室59内の発進クラッチ57に向って潤滑油噴出口65fが形成されており、フィルタケース65のフィルタ室内の圧力が所定値を越えると、リリーフ弁87から潤滑油がクランク室59へ吐出され、また、フィルタケース65の吐出路65b内の潤滑油圧力が所定値を越えると、リリーフ弁88からクランク室59へ潤滑油が吐出され、さらに、フィルタケース65の吐出路65b内の潤滑油は潤滑油噴出口65fから発進クラッチ57に向って噴出されるようになっている。
【0066】
図示の実施形態は、前述したように構成されているので、シフター167を前方へ移動させてカウンタ歯車166とカウンタ軸162とを連結した状態において、リコイルスタータ55を操作することにより、4ストロークサイクル内燃機関20を始動させると、4ストロークサイクル内燃機関20は運転状態となり、クランク軸28の回転数が所定回転数を越えると、発進クラッチ57が連結状態となり、静油圧式無段変速機100のポンプケーシング111が回転駆動される。
【0067】
変速駆動軸制御装置150における駆動部材152の軸方向位置に対応して設定された斜板式油圧モータ130のモータ斜板133の傾斜角度の大小に応じて油圧モータ回転軸131が所要の変速レシオで回転駆動され、歯車変速機160にて所定の変速比にカウンタ軸162が減速され、出力軸163から前後の伝動軸5および前車軸6、後車軸7を介して前輪3、後輪4にそれぞれ動力が伝達され、荒地走行用4輪車0は前進することができる。
【0068】
また、図3に図示されるように、静油圧式無段変速機100の斜板式油圧ポンプ110、斜板式油圧モータ130の中心線上の油圧モータ回転軸131と変速駆動軸制御装置150の変動駆動軸151とを結ぶ面がシリンダ孔29の中心線となす角αが、約10°と狭く、かつ4ストロークサイクル内燃機関20の左側において、静油圧式無段変速機100、変速駆動軸制御装置150とが4ストロークサイクル内燃機関20に接近して配置されているため、内燃機関付き車両用動力装置1の幅方向寸法が短かくてコンパクトとなり、従って荒地走行用4輪車0への搭載性が頗る良好である。
【0069】
さらに、変速レシオ検出センサ102が静油圧式無段変速機100の左方外側に配置されているため、荒地走行用4輪車0の左方から変速レシオ検出センサ102の保守・点検・整備を容易に遂行することができる。
【0070】
さらにまた、ブリーザ室80は、クランク室59の左側上方に位置して変速駆動軸制御装置150の変速駆動軸151の延長線上に配置され、その下方に静油圧式無段変速機100が配置されているため、クランク軸28や歯車変速機160の各メイン歯車165、カウンタ歯車166、シフター167、カウンタ出力歯車168、歯車169から飛散した潤滑油滴は、前記静油圧式無段変速機100に遮ぎられて、クランク室59の左側上方迄達することが阻止され、オイルミスト混入率の少ないブローバイガスがブリーザ室80に導入される結果、ブリーザ室80が小容量で足り、しかも構造が簡略化される。
【0071】
しかも、クランク軸28が車体前後方向に指向しているため、ACG54、リコイルスタータ55、発進クラッチ57、歯車変速機160が車両前後方向に配置されることとなり、前述のシリンダ孔29の中心軸の近くに静油圧式無段変速機100、変速駆動軸制御装置150が配置されるとと相俟って、内燃機関付き車両用動力装置1がさらに小型化され、荒地走行用4輪車0の搭載性が一段と改善される。
【0072】
また、図3に図示されるように、静油圧式無段変速機100は、前ケースカバー21、前クランクケース22、後クランクケース23、後ケースカバー24よりなるクランクケース内空間の左側に配置され、オイルタンク室70は該クランクケース内空間の右側に配置されているため、静油圧式無段変速機100とオイルタンク室70内の潤滑油の重量とで内燃機関付き車両用動力装置1の左右重量バランスが取り易い。
【0073】
さらに、図6に図示されるように、前ケースカバー21の内壁面からタンク仕切壁89が突出して一体的に形成され、図7、図8に図示されるように、前クランクケース22の仕切壁67から前後方向へタンク仕切壁68、タンク仕切壁69が突出して一体的に形成され、図9、図10に図示されるように、後クランクケース23の仕切壁71から前後方向へタンク仕切壁72、タンク仕切壁73が突出して一体的に形成され、図11に図示されるように、後ケースカバー24の内壁面からタンク仕切壁82が後方へ突出して一体的に形成されているため、オイルタンク室70を構成するための特別の部品を必要とせず、重量および工数が削減されて、クランクケースの軽量化とコストダウンと剛性向上が可能となる。
【0074】
さらにまた、前クランクケース22の仕切壁67より後方へ突出したタンク仕切壁69(図8参照)と後クランクケース23の仕切壁71より前方へ突出したタンク仕切壁72(図9参照)とで、前クランクケース22、後クランクケース23間にオイルタンク室70が形成されるだけでなく、前ケースカバー21の内壁面から後方へ突出したタンク仕切壁89(図6参照)と前クランクケース22の仕切壁67より前方へ突出したタンク仕切壁68(図7参照)とで、前ケースカバー21、前クランクケース22間にオイルタンク室70が形成され、かつ、後クランクケース23の仕切壁71より後方へ突出したタンク仕切壁73(図10参照)と後ケースカバー24の内壁面から前方へ突出したタンク仕切壁82(図11参照)とで後クランクケース23、後ケースカバー24間にオイルタンク室70が形成されるため、オイルタンク室70の容量は頗る大きい。
【0075】
しかも、前ケースカバー21、前クランクケース22、後クランクケース23、後ケースカバー24を、ダイキャストや鋳造により製造することができるので、さらなる生産性向上とコストダウンを図ることができる。
【0076】
また、クランクケース内の底部のストレーナ下方潤滑油溜め67j,71jに溜った潤滑油をオイルタンク室70に送る回収ポンプ61と、オイルタンク室70から4ストロークサイクル内燃機関20のクランク軸28、発進クラッチ57や静油圧式無段変速機100に潤滑油を送る供給ポンプ62とが同軸上に配置されているため、回収ポンプ61、供給ポンプ62よりなる潤滑油ポンプ60の全体寸法が短縮化されて、潤滑油ポンプ60の小型軽量化が可能となり、しかも、回収ポンプ61、供給ポンプ62間の油路や、潤滑油ポンプ60、オイルタンク室70間の油路が短かくなって、潤滑油ポンプ60のポンプ損失が小さくなる。
【0077】
さらに、オイルタンク室70から4ストロークサイクル内燃機関20の各部および静油圧式無段変速機100に供給される潤滑油を濾過するオイルフィルタ64のフィルタケース65が、オイルタンク室70の前方で、かつ車両前後方向から見てオイルタンク室70と重なる位置に配置されているため、オイルタンク室70とオイルフィルタ64とが接近し、オイルフィルタ64内の潤滑油が、該オイルフィルタ64の連通路65dに介装のリリーフ弁87を介してオイルタンク室70に直ちに還流し、供給ポンプ62のポンプ損失が低い。
【0078】
さらにまた、オイルフィルタ64が前ケースカバー21の前方に位置しているため、図4に図示されるように、オイルフィルタ64の蓋64aを荒地走行用4輪車0の前方から容易に取り外すことができ、フィルタエレメント66の交換を簡単に行なうことができるとともに、オイルフィルタ64の保守・点検・整備を短時間内に楽に遂行することができる。
【0079】
また、濾過された潤滑油を必要とせず、冷却された潤滑油を必要とするシリンダブロック25、シリンダヘッド26やACG54には、オイルフィルタ64を経由せず、オイルクーラ14を通過して冷却された潤滑油をシリンダブロック25、シリンダヘッド26、ACG54へ直接供給するようになっているため、供給ポンプ62の負荷を軽減できるとともに供給ポンプ62の動力損失を大幅に削減することができ、しかも供給ポンプ62を小型化することができる。
【0080】
そして、回収ポンプ61により、オイルクーラ14に送られて該オイルクーラ14で冷却された潤滑油は、図15に図示されるように、前ケースカバー21の返戻口21fから連通路21gを介して開口21hに達し、図20に図示される前クランクケース22の開口22hから連通路22iを介して開口22jに送られ、図13および図26、図27に図示されるように、前クランクケース22の開口22jからシリンダブロック25の底面開口25j、垂直連通路25kを介してシリンダブロック25の頂面開口25lに送られ、さらに図29、図30および図31に図示されるように、シリンダヘッド26の頂面開口26lに達し、該頂面開口26lよりシリンダヘッド26の頂面に潤滑油が流れ出し、シリンダヘッド26から連通孔40を介しクランク室59に落下して還流することにより、シリンダブロック25、シリンダヘッド26が冷却される。
【0081】
また、図27に図示されるように、垂直連通路25kから連通路25mが岐出されているので、垂直連通路25kを上昇した潤滑油の一部は連通路25mより垂直連通路25nに達し、該垂直連通路25nの上方部分を流れる潤滑油は、前述した頂面開口26lを流れた潤滑油と同様に頂面開口26oよりシリンダヘッド26の頂面に流れ出して、連通孔40を介してクランク室59に落下し、シリンダブロック25、シリンダヘッド26が冷却される。
【0082】
さらに、垂直連通路25nの下方部分を流れる潤滑油は、シリンダブロック25の底面開口25sから後クランクケース23の開口23sに達し、図22に図示の連通路23tを介して開口23uに送られ、該開口23uから図24に図示の後ケースカバー24の開口24uから連通路24vを介して開口24wに送られた後、ACG54の潤滑油噴出口より噴出されてACG54が冷却される。
【0083】
さらに、クランク室59から吸上げられて回収ポンプ61によりオイルクーラ14に供給され、該オイルクーラ14にて冷却された冷却潤滑油はオイルフィルタ64に供給されず、直接シリンダブロック25、シリンダヘッド26に供給されるため、シリンダブロック25、シリンダヘッド26は、ファン13によって後方へ送風された冷却風や走行に伴なう走行風が冷却フィン37、冷却フィン38に触れることによる空気冷却のみならず、シリンダブロック25、シリンダヘッド26内を通過する冷却潤滑油による潤滑油冷却される結果、シリンダブロック25、シリンダヘッド26ひいては、燃焼室32の周辺部分が充分に冷却される。
【0084】
さらにまた、オイルクーラ14でもって冷却された潤滑油も、オイルタンク室70を経由せずに、リコイルスタータ54に供給されるため、リコイルスタータ54も充分に冷却される。
【0085】
また、図6に図示の前ケースカバー21の内壁面から後方へ突設されたタンク仕切壁89と、図7に図示の前クランクケース22の仕切壁67から前方へ突設されたタンク仕切壁68との上端縁89a,68aよりも、図10に図示の仕切壁71から後方へ突設されたタンク仕切壁73と、図11に図示の内壁面から前方へ突設されたタンク仕切壁82との上端縁73a,82aが下方に位置し、さらに、前クランクケース22の仕切壁67にタンク連通孔67kが形成されるとともに、後クランクケース23の仕切壁71にタンク連通孔71kが形成されているため、オイルタンク室70内の潤滑油の油面は全て同一の高さに保持されるとともに、オイルタンク室70内の潤滑油は、高さの低いタンク仕切壁73、タンク仕切壁82の上端縁73a,82aより越流油路75、越流油路84内に全て静かに流入することができる。この結果、クランク室59内で潤滑油がクランク軸28に掻き回わされることが阻止され、動力損失や、潤滑油のミスト発生が回避され、しかも、クランク室59の底部のストレーナ下方潤滑油溜め67j,71jに滑らかにかつ静かに導かれて、気泡発生も抑制される。
【0086】
さらに、図10、図11に図示されるように、後クランクケース23、後ケースカバー24とそれぞれ一体的に形成されるタンク仕切壁73、タンク仕切壁82と、越流油路壁74、83とで越流油路75、84が構成されるため、越流油路75、84は、構造が極めて単純化され、コストアップが避けられる。
【0087】
さらにまた、後クランクケース23、後ケースカバー24間におけるオイルタンク室70は、後クランクケース23の右側壁23a(後ケースカバー24の右側壁には符号を付していない)に沿って三日月状に形成されているため、タンク仕切壁73、タンク仕切壁82および越流油路壁74、83もこれに近い形状に形成され、オイルタンク室70の仕切壁上縁73a,82aを越流した潤滑油は、乱れを起さずにクランク室59の底部のストレーナ下方潤滑油溜め67j,71jに導かれる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本願発明に係る内燃機関付き車両用動力装置を搭載した荒地走行用車両の側面図である。
【図2】図1に図示の内燃機関付き車両用動力装置を前方から見た正面図である。
【図3】図1のIII−III線に沿って裁断した内燃機関付き車両用動力装置の横断面図である。
【図4】図1に図示の内燃機関付き車両用動力装置の縦断面図である。
【図5】静油圧式無段変速機の縦断面図である。
【図6】前ケースカバーの前面図である。
【図7】前クランクケースの前面図である。
【図8】前クランクケースの後面図である。
【図9】後クランクケースの前面図である。
【図10】後クランクケースの後面図である。
【図11】後ケースカバーの前面図である。
【図12】後ケースカバーの後面図である。
【図13】前クランクケースと後クランクケースとを合わせた平面図である。
【図14】図6のXIV−XIV線に沿って裁断した断面図である。
【図15】図6のXV−XV線に沿って裁断した断面図である。
【図16】図6のXVI−XVI線に沿って裁断した断面図である。
【図17】図6のXVII−XVII線に沿って裁断した断面図である。
【図18】図6のXVIII−XVIII線に沿って裁断した断面図である。
【図19】図6のXIX−XIX線に沿って裁断した断面図である。
【図20】図7のXX−XX線に沿って裁断した断面図である。
【図21】図7のXXI−XXI線に沿って裁断した断面図である。
【図22】図9の要部拡大図である。
【図23】図10のXXIII−XXIII線に沿って裁断した断面図である。
【図24】図12のXXIV−XXIV線に沿って裁断した断面図である。
【図25】図22のXXV−XXV線に沿って裁断した断面図である。
【図26】シリンダブロックの底面形状を上方から見た平面図である。
【図27】図26のXXVII−XXVII線に沿って裁断した断面図である。
【図28】図27のXXVIII−XXVIII線に沿って裁断した断面図である。
【図29】シリンダブロックの頂面図である。
【図30】シリンダヘッドの底面形状を上方から見た平面図である。
【図31】シリンダヘッドの頂面図である。
【図32】潤滑油ポンプの正面図である。
【図33】図32のXXXIII−XXXIII線に沿って裁断した断面図である。
【図34】本願発明の潤滑油回路の概略を図示した説明図である。
【図35】従来の潤滑油回路の概略を図示した説明図である。
【符号の説明】
0…荒地走行用4輪車、1…内燃機関付き車両用動力装置、2…車体フレーム、3…前輪、4…後輪、5…伝動軸、6…前車軸、7…後車軸、8…バーハンドル、9…ステアリングシャフト、10…ステアリング機構、11…燃料タンク、12…シート、13…ファン、14…オイルクーラ、15…気化器、16…エアクリーナ、17…ショックアブソーバ、18…排気管、
20…4ストロークサイクル内燃機関、21…前ケースカバー、22…前クランクケース、23…後クランクケース、24…後ケースカバー、25…シリンダブロック、26…シリンダヘッド、27…ヘッドカバー、28…クランク軸、29…シリンダ孔、30…ピストン、31…連結杆、32…燃焼室、33…吸気ポート、34…排気ポート、35…吸気弁、36…排気弁、37…冷却フィン、38…冷却フィン、39…点火栓、40…連通孔、41…ガイド孔、42…ロッカシャフト、43…カム軸、44…カム、45…バルブリフタ、46…ロッカアーム、47…プッシュロッド、48…バルブスプリングリテーナ、49…バルブスプリング、50…ドライブスプロケット、51…バランサー駆動歯車、52…バランサー歯車、53…バランサー軸、54…ACG、55…リコイルスタータ、56…ポンプ駆動歯車、57…発進クラッチ、58…駆動歯車、59…クランク室、60…潤滑油ポンプ、61…回収ポンプ、62…供給ポンプ、63…ポンプ回転軸、64…オイルフィルタ、65…フィルタケース、66…フィルタエレメント、67…仕切壁、68…タンク仕切壁、69…タンク仕切壁、70…オイルタンク室、71…仕切壁、72…タンク仕切壁、73…タンク仕切壁、74…越流油路壁、75…越流油路、76…ブリーザ室底壁、77…ブリーザ仕切部、78…ブリーザ蓋、79…ボルト、80…ブリーザ室、81…ブリーザパイプ、82…タンク仕切壁、83…越流油路壁、84…越流油路、85…ストレーナ、86…リリーフ弁、87…リリーフ弁、88…リリーフ弁、89…タンク仕切壁、
100…静油圧式無段変速機、101…従動力歯車、102…変速レシオ検出センサ、
110…斜板式油圧ポンプ、111…ポンプケーシング、
130…斜板式油圧モータ、131…油圧モータ回転軸、132…モータケーシング、133…モータ斜板、134…アーム部、135…ピン、
150…変速駆動軸制御装置、151…変速駆動軸、152…駆動部材、153…歯車、154…減速歯車、155…小歯車、156…大歯車、157…制御モータ、158…回転軸、159…ピニオン歯車、
160…歯車変速機、161…メイン軸、162…カウンタ軸、163…出力軸、164…リバース軸、165…メイン歯車、166…カウンタ歯車、167…シフター、168…カウンタ出力歯車、169…歯車、170…リバースカウンタ歯車、171…入力歯車、172…出力歯車。
Claims (3)
- 内燃機関の各部を潤滑してからクランクケース底部に落下して溜った潤滑油を、該クランクケース底部に開口したポンプ吸入口から吸入して潤滑油タンクに送る回収ポンプと、該オイルタンクから内燃機関各部に潤滑油を供給する供給ポンプと、前記クランクケース内壁から仕切壁が突出してクランク室に対して区劃される該クランクケースと一体の潤滑油タンクとを備えた内燃機関の潤滑装置であって、
前記潤滑油タンクの仕切壁上縁から越流した潤滑油を前記回収ポンプの吸入口に導く越流油路が形成されたことを特徴とする内燃機関の潤滑装置。 - 前記越流油路は、前記潤滑油タンク仕切壁と、前記変速機室および該越流油路を仕切る越流油路壁とで構成されたことを特徴とする請求項1記載の内燃機関の潤滑装置。
- 前記潤滑油タンクは、前記クランクケース外壁に沿って略三日月型に形成されたことを特徴とする請求項2記載の内燃機関の潤滑装置。
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